説明

計器の制御プロセスの開発のための方法および装置

計器(5)の制御プロセス開発方法及び装置を開示する。本方法は、複数の事前に定義されたコマンドから1又は複数のコマンドを選択し、選択された1又は複数のコマンドの1以上が目的にリンクしたコマンドとされる第1ステップ(130)と、選択された1又は複数のコマンドを組合わせて制御プロセスを作成する第2ステップ(120、130、140)とを含む。事前に定義されたコマンドは計器(5)動作制御用の制御部を有し、事前に定義されたコマンドの1以上はコマンドの目的制御用の目的部を有す。計器(5)の制御プロセス開発用装置は、複数のコマンド個々の複数の制御パラメータを記憶する第1メモリ(25)と、複数のコマンドの情報を表示する表示デバイス(20)と、複数のコマンドのあるものを選択するための選択デバイス(30)と、複数のコマンドから選択されたものを組合わせて制御プロセスを作成するためのプロセッサ(15)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計器の制御プロセスの開発のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的サンプルの分析用計器は、今日の実験室環境では一般的なものである。こうしたシステムの一例は、スウェーデンのウプサラにあるBiacore社(ウエブサイト:http://www.biacore.com)によって、リアル・タイムで行われる小分子の結合技術の分析のために製作されている。この分析は表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくバイオセンサ技術を使用して行われる。これらのシステムは、食品分析の他に、薬品発見産業や生命科学研究で使用されている。こうした計器には、それらの機能を制御し、生成された結果を分析するためのソフトウェアが供給される。
【0003】
欧州特許出願EP−A−1061372(Hitachi)は、生物学的サンプル分析用装置の別の例を示している。この特許出願の中で説明されている装置は、反応容器を含めた複数の測定チャネルのある分析モジュールを備える。測定チャネルのために較正情報および品質管理情報を生成するデータ処理手段が提供されている。しかしながらこの装置は、計器のユーザが生物学的サンプルの分析方法を変更できるような手段を開示するものではない。
【0004】
生物学的サンプルの分析のためのその他の装置は、PCT出願WO02/086794(Sequenom)で開示されているような質量分析器である。この特許出願の装置は、データの取得および分析のためのシステムを含む。この装置は、データを収集し、特定の事前に定義されたデータ基準と比較した後に装置を調整することができる方法を提供する。しかしながらこの装置は、ディベロッパが計器のユーザのために生物学的サンプルの分析方法を変更するか、またはプログラムすることができるような手段を提供するものではない。
【0005】
米国特許第6594588号(Thermo Bio Analysis Corpに譲渡された)は、複数のウィンドウを備えたグラフィック・ユーザ・インターフェース(GUI)による実験室情報を処理するためのシステムおよび方法を教示する。GUIおよびユーザの入力によって、プロセッサが順々に実行する作業の順序が定められる。
【0006】
このThermo Bio Analysis Corpの特許のシステムは、ワークフローによってサンプル上で行われるイベントを定義するというコンセプトを備えている。ユーザはワークフロー・ノードに対応するグラフィック・ツールを使用して、マクロ的なワークフローを構築することができる。
【0007】
ワークフロー・ノードのうちの特定のものは、いわゆる「イベント」を支援することができる。これらのイベントは事前に定義されたイベントであるか、またはユーザの定義するイベントであってよく、各ノードに関連するテーブルに記憶される。ワークフローが処理される時、システムは適切なテーブルを読み取り、テーブルで指定された種類のオブジェクトを作成する。明細書の記述から、これらのオブジェクトは特定の作業を実行するための命令であってよいことがわかる(明細書の記述の中で挙げられる例は部分サンプル(aliquots)の分離である)。
【0008】
このThermo Bio Analysis Corpの特許で説明されるシステムのユーザは、様々な異なるコマンド(オブジェクト)から、実験室用計器を管理するようにワークフローを構築する。これらのコマンドのうちのいくつかは計器の動作を制御するが、コマンドの目的はユーザによってプログラムされなければならない。
【0009】
米国特許第5369566号(Beckmann Instrumentsに譲渡された)もまた、実験室のワークステーションのためのプログラム可能なコントローラに関する。ユーザは分析を実行するためのいわゆる「メソッド」を構築する。このメソッドは「プロシージャ」から作られており、「プロシージャ」は「関数」として構築される。関数はテンプレートから構築される。作成した関数は同じまたは異なるプロシージャにおいて後で使用するために記憶させてもよい。関数はユーザが一連の質問に答えることによってオペレーティング・システムにより作成される。
【0010】
国際特許出願WO−A−03/102854(Appleraに譲渡された)は、複数の生物学的計器を制御および監視するためのシステムおよび方法を教示する。この発明は、少なくとも1つのサンプル・アナライザとデータ・プロセッサとを有する実験室用の制御および通信システムを実装する(2頁、30〜31行)。サンプル・アナライザは制御システムから、事前に設定されたコマンドのリストの少なくとも1つから選択されたコマンドを受信し、サンプル・アナライザを作動させるための形式にコマンドを変換する(3頁、2〜3行)。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1061372号明細書
【特許文献2】国際公開第WO02/086794号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6594588号明細書
【特許文献4】米国特許第5369566号明細書
【特許文献5】国際公開第03/102854号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ディベロッパに、計器の動作を制御するためのソフトウェアを開発する手段を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、計器を制御するためのソフトウェアの開発の後に一貫性チェックするものを提供することである。
【0013】
さらに、本発明のさらなる目的は、計器の出力の分析を単純化することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のこれらの目的およびその他の目的は、1つまたは複数の事前に定義されたコマンドを選択する第1ステップと、選択された前記1つまたは複数のコマンドを使用して制御プロセスを作成する第2ステップとを有する方法を提供することによって解決される。
【0015】
事前に定義されたコマンドは計器の動作を制御するための制御部を有し、事前に定義されたコマンドの少なくとも1つは指定された目的を示す目的部を有する。このような個々の動作(コマンド)としては、開始プロセス、調整プロセス、サンプル処理プロセス、終了プロセス等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。指定された目的(目的部)を有するコマンドは目的にリンクされたコマンドとして示される。異なる目的にリンクされたコマンドは同一の計器制御部を有してもよく、コマンドの目的のみで異なっていてもよい。そうした一例は、計器への液体の注入である。全く同じ計器制御部(すなわち液体の注入)であっても、「捕捉注入(capture−inject)」および「サンプル注入(sample−inject)」のような異なるコマンドの一部となりうる。「捕捉注入」コマンドの目的は、計器に分析の準備をさせる(例えば計器に2つの結合パートナーのうちの1つを捕捉させる)ことであり、一方で「サンプル注入」コマンドの目的は、未知のサンプルが、計器ですでに捕捉された結合パートナーと相互に作用するかどうかを見つけることであってよい。個々の動作はまた、計器の動作が一時的に停止される中断または待機プロセスであってもよい。本方法において、ディベロッパは可能なコマンドのメニューから1つまたは複数のコマンドを選択し、かくして、計器のために制御プロセスを作成する機会を与えられる。このことによって、計器の制御には相当程度の柔軟性が与えられる。
【0016】
目的部は、選択された事前に定義されたコマンドの一貫性を確実にするために使用することができる。一貫性チェックは、ディベロッパによって開発された方法が首尾一貫しており、信頼できるものであることを確実にする。目的部は実験の結果の評価にも使用することができる。特に、結果は事前に定義されたコマンドの目的によって、異なる方法で評価される必要があるかもしれない。
【0017】
すべてのコマンドが目的部を有していなくてもよいことに留意されたい。一部のコマンドは一貫性についてチェックされることを必要としない(またはチェックされることができない)。本発明の好ましい実施形態では、コマンドの大半は目的にリンクしている(すなわち目的部を有している)。より好ましくは、コマンドの少なくとも約75%(特には約90%)が目的にリンクされる。
【0018】
本発明の一実施形態では、選択された事前に定義されたコマンドのうちの少なくとも1つは、1つまたは複数のサイクルにまとめられる。「サイクル」という用語の使用は、必ずしもコマンドが反復して連続することを示すことを意味するわけでない。コマンドのサイクルは1回行われるか、または数回行われることが可能である。このことによって、制御プロセスのプログラミングに相当程度の柔軟性が与えられる。ディベロッパは、反復されるコマンドのサイクルを作成するために、選択された1つまたは複数のコマンドから複数を選択することがさらに可能となる。このことは、サンプルの測定を反復して行わせ、通常の測定を制御下で行わせるために特に有効である。
【0019】
本発明の他の実施形態では、ディベロッパは1つまたは複数のサイクルを選択し、ブロックを作成するためにサイクルを組み合わせることができる。ブロックは、特定の目的を有するコマンドの連続である。
【0020】
本方法は、コマンドの選択の一貫性をチェックするステップもまた提供する。上述のように、このことによって、ディベロッパが互換性のないコマンドを一緒に組み合わせないことが確実になる。一貫性のチェックは、コマンドの各々に関連する一貫性コマンド規則を使用することによって行われる。ブロック中のコマンドの一貫性もまた、一貫性ブロック規則を使用することによってチェックすることが可能である。
【0021】
本方法は、計器の外部にあるデバイスを駆動するために1つまたは複数の外部コマンドを選択するステップもまた含む。これらの外部コマンドはインターフェースに通すことが可能であり、その他の計器、装置またはデバイスを制御プロセスに接続されるようにする。
【0022】
本発明の目的はまた、計器の制御プロセスの開発のための装置を提供することによって解決される。装置は複数の事前に定義されたコマンドのうちの個々のものについての複数の制御パラメータを記憶するための第1メモリと、複数の事前に定義されたコマンドに関連する情報を表示するための表示デバイスとを有する。装置はさらに、複数の事前に定義されたコマンドのうちのあるものを選択するための選択デバイスを有し、複数の事前に定義されたコマンドのうちの選択されたものを処理するためのプロセッサを使用する。選択された事前に定義されたコマンドは、共に制御プロセスを形成する。
【0023】
上で説明したように、この装置を使用することで、計器のための制御プロセスを、計器のユーザによる使用のためにディベロッパによって簡単に作成することができる。
【0024】
最後に、本発明の目的はまた、本発明の方法を使用して開発された制御プロセスにより制御される、分析を実行するための計器を提供することによって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、実験の実行のための計器5の概要を示す。計器5は実験が実行される実験ステーション10を備える。実験の種類としては、(食品加工などの)検定、分析または品質管理が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0026】
計器5は実験を制御し、データを収集するためのプロセッサ15を有する。キーボード、マウス、グラフィック・パッドまたはその類似物などのデータ入力デバイス30が計器5に接続され、計器5のユーザがコマンドまたはデータを入力または選択し、それによって計器5によって実行された実験を制御できるようにする。視覚表示ユニットまたはプリンタなどのデータ表示デバイス20もまた計器5に接続される。データ表示デバイス20は実験ステージョン10によって生成されたデータを表示する。データ表示デバイス20はまた、データ入力デバイス30およびプロセッサ15と共に、実験ステーション10の制御プロセスを開発するために使用することもできる。
【0027】
実験ステーション10は、サンプルについて実験を実行するための多数のデバイスのうちの1つまたは複数であってもよい。例えば、実験ステーション10は質量分析器、マイクロアレイ、表面プラズモン共鳴実験を実行するための装置、またはそれらの組合せであってよいが、これらに限定されるわけではない。制御プロセスは計器5の全体の動作、したがって実験ステーション10によって実行される実験を制御するために開発されなければならない。先行技術では、制御プロセスは通常、実験ステーション10に事前にプログラムされており、ユーザは限られた範囲の選択肢を持つのみである。上で論じたように、制御プロセスを開発または変更する機会がディベロッパに与えられた先行技術が知られている。しかしながら、この先行技術は一貫性チェックを開示していない。本発明の計器5は、適切なチェックによって実験を実行するためのより広い範囲の選択肢をユーザに提供することができる。
【0028】
実験ステーション10には、事前にプログラムされたコマンドのセットを記憶するメモリ25が設けられる。事前にプログラムされたコマンドのセットは、実験ステーション10の各々について特有のものである。この事前にプログラムされたコマンドのセットに由来する1つまたは複数のコマンドは、コマンドのサイクルを形成するためにグループ化される。コマンドのサイクルはブロックとしてまとめられる。ブロックは実験ステーション10の動作の特定の状況を制御する。例えば、あるブロックは実験ステーション10を開始または初期化するプロセスであってよい。他のブロックは実験ステーション10でサンプルについての実験を行うものであってもよい。同様に、実験ステーション10での制御による実験を行うブロックを開発してもよい。
【0029】
ブロックは名称、プロセスの種類、温度またはその他の条件などの変数またはパラメータの入力を必要としてもよいことに留意されたい。以下で説明するように、これらの変数はユーザが制御プロセスを実行し、実験ステーション10で実験を行う場合、リアル・タイムで獲得される。
【0030】
少なくとも2種類のブロックがあってもよい。あるブロックは、1度だけ生じるか、または繰り返してもよい最高位のサブプロセスである。1度だけ生じるこうしたブロックの例としては、先に述べた開始プロセスが挙げられる。他のブロックは、別のプロセスにおいて一定間隔で実施され、別のブロックにおいてネストされた、反復性のサブプロセスであってよい。
【0031】
図2は、これらのブロックの例を示す。実験を行うための制御プロセスは、実験を初期化するために、実験ステーション10で実験を開始するときに1度実行されるコマンドを有する開始ブロック50を備える。開始ブロック50に関連するコマンドが実行された後、サンプル・ブロック60のコマンドが実行される。サンプル・ブロック60のコマンドは1つまたは複数のサンプルについて実行される実験に関連するものとすることができ、何度か反復される。サンプル・ブロック60内には、コントロールブロック70が存在する。コントロールブロック70はコントロールについての実験を実行するコマンドを有する。本発明の一実施形態で、コントロールブロック70のコマンドは20個のサンプル・ブロック60毎にその後で実行される。
【0032】
図3は、ディベロッパによる制御プロセスの開発を示す。プロセッサ15または他のコンピュータが、制御プロセスを作成するためのプログラムを提供することに留意されたい。十分なアクセス権を持つディベロッパのみが、制御プロセスの作成を許可される。通常のユーザは、最終制御プロセス、すなわち最終的に開発された制御プロセスを実行することのみが可能である。通常のユーザは、実験を行うために必要とされる場合にのみ、最終制御プロセスにデータを付加する権利が与えられている。
【0033】
ディベロッパは検定などの実験を行うために制御プロセスを作成し、ポイント100で開始する。ステップ110で、ディベロッパは最終的な制御プロセスに必要とされるブロックを選択する。各ブロックは目的を有する。ディベロッパはプロセスを開発するためにグラフィック・ユーザ・インターフェースを使用することができる。グラフィック・ユーザ・インターフェースは表示デバイス20に表示され、ディベロッパは情報または命令を入力するために入力デバイス30を使用する。グラフィック・ユーザ・インターフェースの例はスクリーン・ショットとして図4および5に示されている。
【0034】
図4は、ブロックの選択用に表示デバイス20に表示されるスクリーン・ショットの一例である。これはディベロッパによって作成されたいくつかのブロック(準備(Preparation)、DBAを使用したサンプル(Samples using DBA)、コントロールサンプル(Control Samples))を示す。この例では、これらのブロックは「検定ステップ(assay steps)」と名づけられている。コントロールサンプル(Control Samples)なる検定ステップ(assay steps)は、DBAを使用したサンプル(Samples using DBA)なる検定ステップの一部を構成する反復性の検定ステップ(またはブロック)である。スクリーン・ショットの最上段に示すように、この検定ステップは、DBAを使用したサンプル(Samples using DBA)なる検定ステップが少なくとも10回行われた後にその都度、当該DBAを使用したサンプル(Samples using DBA)なるステップの中で実行される。
【0035】
スクリーン・ショットの下半分に、選択された検定ステップ(この例ではコントロールサンプル(Control Samples)なる検定ステップ(assay steps))の詳細が示される。この検定ステップを実行する場合、実験ステーション10の温度は25℃に設定しなければならないということがわかる。スクリーン・ショットの下半分に、検定ステップの目的が示される。
【0036】
各検定ステップは、その検定ステップに関連する1つまたは複数のサイクルを有する。準備(Preparation)なる検定ステップは、それに関連する1つのサイクルであるサンプル・サイクル(Sample Cycle)を有する。DBAを使用したサンプル(Samples using DBA)なる検定ステップは、それに関連するサンプル・サイクル(Sample Cycle)を有する。コントロールサンプル(Control Samples)なる検定ステップもまたそれに関連するサンプル・サイクル(Sample Cycle)を有する。サイクルのプログラミング方法は以下で概説する。この段階では、全てのサンプル・サイクル(Sample Cycle)によって実行される動作は、異なる検定ステップで生じていても、すべてが互いに同一であることに留意されたい。
【0037】
同一サイクルのさらなる例として、実験ステーション10に液体を注入するためのサイクルについて考える。制御プロセスの間、異なる液体を異なる回数注入することができる。ある時点で洗浄溶液が注入される。別の時点ではサンプル溶液が注入される。このような同一サイクルは、コマンドの中に同じ制御部を有し、計器10の制御に際して同じ動作を実行する。実験ステーション10に注入される液体が異なるだけであって、したがって目的が異なり、ゆえに目的部が異なるということになる。
【0038】
図3の次のステップ120で、ブロック(検定ステップ)の実行順序が決定される。図4に示されるとおり、検定ステップは特定の回数反復されることが可能であり(この場合は反復されない)、検定ステップの反復の順序(すなわち順次、段階的、無作為といった順序)もまた示される。したがって、ディベロッパは適切なボックスを選択すること、および/または必要とされる値を入力することによって適切な値を選択する。図2のブロックに関して述べたように、ディベロッパはどの検定ステップが最上位の検定ステップであり、どの検定ステップが反復の検定ステップであるかを表示することもできる。
【0039】
ブロック(検定ステップ)が作成された後、サイクルの作成が必要となる(ステップ130)。サイクルはブロックを実行することであり、コマンドのセットから作成される。事前に定義されたコマンドは、図5のグラフィカル・ユーザ・インターフェースに示される(捕捉(Capture)、持ち越し(Carry-over)、拡張(Enhancement)、その他(Other)、再生(Regeneration)、サンプル(Sample)、溶剤修正(Solvent Correction))。サンプル・サイクル(Sample Cycle)用に図示された例中、ディベロッパはそのサイクルに必要な事前に定義されたコマンドを選択することができる。
【0040】
図5のスクリーン・ショットで示される例では、サンプル・サイクル(Sample Cycle)のために3つの事前に定義されたコマンドが選ばれている。これらはサンプル(Sample)、再生(Regeneration)および持ち越し(Carry-over)である。スクリーン・ショットの右下に、ディベロッパは選択された事前に定義されたコマンドによって使用されるパラメータの詳細を見ることができ、必要なときに必要なように値を変更することができる。
【0041】
事前に定義されたコマンドは、プロセッサ15によって実験ステーション10を動作させるために必要なすべてのソフトウェアまたは命令を含む。これらの事前に定義されたコマンドは事前にプログラムされており、制御プロセスのディベロッパによって変更されることは不可能である。
【0042】
図6にサイクル作成プロセスの他の表示のスクリーン・ショットが示す。この場合、ディベロッパはサイクルに必要とされる変数を入力する。
【0043】
図3のステップ140で、サイクルはブロックにリンクされる。先に説明したように、1つのサイクルは2つ以上のブロックに結び付けられることが可能である。ブロックの各種類は、それに関連する一貫性規則を有する。これらの一貫性規則は、計器5の各々でサイクルが正しく実行され、サイクルが互いに一貫していることを確実にする。例えば、図7に示す本発明の一例では、ブロックはサイクルに結び付けられていない。この場合、エラー・メッセージが発行され、ディベロッパは制御プロセスを修正することができる。
【0044】
さらに、事前に定義されたコマンドの各々はそれらに関連する一貫性規則を有する。この一貫性規則は、事前に定義されたコマンドの連続が正しく実行され、内的に一貫性があることを確実にする。
【0045】
最終ステップ150で、ユーザはサイクルに必要とされる変数を入力しなければならず、それらは、ディベロッパによって、すなわち実験の検定ステップで実行されるべきサンプルのために、定義されたものである(図6参照)。ユーザはまた、制御プロセスを実行するための命令を与える前に、制御プロセスを実行するために生成されたすべてのサイクルを備えた実行リストも見ることができる。
【0046】
図8に関する第1の例は、本発明をより明確に説明するのに役立つ。制御プロセスは準備ブロック210、溶剤修正ブロック220およびサンプル・ブロック230の少なくとも3つのブロックを備える。準備ブロック210及び溶剤修正ブロック220は、それらにリンクされたサイクル240及び250(詳述せず)を各々有する。
【0047】
サンプル・ブロック230はそれにリンクされた少なくとも1つのサイクル260を有する。サイクル260は、それにリンクされた少なくとも5つのコマンド:待機270、注入275、洗浄280、注入285、待機290を有する。待機270コマンドと待機290コマンドとは同じものである。注入275コマンドと注入285コマンドとは、同じ機能を行うという意味で同じものである。しかしながら、それらは異なる目的を持つことができる。
【0048】
実験ステーション10に外部モジュールを付加することもまた可能である。外部モジュールには、少なくとも1つのコマンドによりアドレス可能なAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)が設けられる。コマンドは必要なパラメータなどの情報を外部モジュールに与える。
【0049】
制御プロセスの作成が完了すると、このシステムの開発で使用されるソフトウェアは、一例ではMicrosoft .NETコードで実施され、計器5のメモリ25に記憶もされる。次いで、計器のユーザは制御プロセスを呼び出し、任意の必要とされるパラメータを入力した後で実験を行わなければならない。
【0050】
結果の事後処理はプロセッサ15で実行するか、または他の装置へダウンロードすることができる。結果の事後処理の方法は、実験ステーション10によって測定されるデータへのアクセスだけでなく、ブロック、サイクルおよびコマンドに関する実験の定義へのアクセスもまた有してよい。事前に定義されたコマンドの少なくとも一部は目的にリンクしているので、事後処理の方法は、(例えばサンプル注入275の近くのデータだけが表示されるように、図面のプロットの軸の設定を自動的に調節するような)データに適応されるガイダンスを提供することができる。
【0051】
本発明の他の例を図9に示す。計器5は4つのフロー・セル(1、2、3および4で示す)を使用しており、これらは以下の組合せ、すなわち1、2、3、4、1+2、3+4、1+2+3+4でアドレス可能である。計器5の一例はBiacore3000システムである(Biacore3000システムは、2004年11月10日アクセスのhttp://www.biacore.com/pdf/products/bc3000/Biacore 3000PIS.pdfの製品情報パンフレットで説明されている)。1つの壊れやすい分子と1つの丈夫な分子とに相互に作用する50個のサンプル分子を含む測定が実行されると仮定する。測定は以下のプロトコルに従って設計される。
【0052】
第1ステップで、壊れやすい分子はフロー・セル1およびフロー・セル3の中で固定される。丈夫な分子はフロー・セル2およびフロー・セル4の中で固定される。
【0053】
準備ブロック310は先に述べたように実行される。
【0054】
次いで、サンプル・ブロック320が実行される。サンプル・ブロック320では以下のサイクル330が50回反復される。
ステップ410で分析のためのフロー・セルが選択される。このステップで、分析のために選択されるフロー・セルの部分集合が定義される。一例では、サイクルの最初の25回の反復はフロー・セル1およびフロー・セル2を使用し、後の25回の反復はフロー・セル3およびフロー・セル4を使用する。このことは、壊れやすい分子が破壊されずに測定を通じてリガンドとして存在する可能性を高める。
ステップ420で、安定した系を得るために待機ステップが実行される。
ステップ430で、選択されたフロー・セルの部分集合(すなわちフロー・セル1およびフロー・セル2、またはフロー・セル3およびフロー・セル4)に1つのサンプル分子が注入される。
ステップ440でシステムは洗浄される。
ステップ450で、フロー・セルのうちの1つが選択され、そのために再生ステップが実行される。1つの壊れやすい分子と1つの丈夫な分子とがあるために、丈夫な分子だけが再生ステップに耐えると予想される。したがって最初の25回の反復の間、フロー・セル2が選択される。後の25回の反復の間、フロー・セル4が選択される。このこともまた、壊れやすい分子が破壊されずに実験中を通してリガンドとして存在する可能性を高める。
ステップ460で、現時点の選択されたフロー・セルの1つに、再生溶液が注入される。
【0055】
実験結果を評価する場合、目的にリンクしたコマンドによってユーザをガイドすることができる。ステップ410および450で実行される動作は本質的に同じものであるが、ステップ410の目的は現時点の実験領域を定義することであり、ステップ450の目的は壊れやすい分子を保護することである。ゆえに、フロー・セルのうち選択された2つのものから生じた結果は、ステップ450の後、別々に処理されなければならない。
【0056】
さらに、ステップ430および460で実行される動作は本質的に同じものである。ステップ430の目的はサンプル分子を注入することであり、このことは、サンプル分子についての情報がステップ430付近で見つけ出されるということを意味する。再生ステップ460は計器5の基準線の状態を復元することを目的とし、まったく異なる方法で評価されなければならない。
【0057】
事前に定義されたコマンドに目的を加えることによって、計器の制御ソフトウェアはコマンドの連続の一貫性をチェックする。例えば、フロー・セル選択のステップ450がサンプル注入ステップ430の前に実行される場合、計器の制御ソフトウェアは、サンプル注入ステップ430が実験領域の中ですべてのフロー・セルには行き届かないということをユーザに知らせることができる。実験が実行された後、得られたデータの評価を著しく単純化することができる。評価ソフトウェアはサンプル注入に関連するすべてのデータを自動的に収集し、ユーザにそれらを表示することができ、それによりユーザによって引き起こされるエラーのリスクは最小限に抑えられる。
【0058】
事前に定められたコマンドのそれぞれの目的についての知識がなければ、このような一貫性チェックおよび評価サポートには、実質的により多くの資源と人の介入を必要とする。目的部を使用することによる上記一貫性チェックは、先に述べた一貫性規則を使用することによる一貫性チェックに付け加えられる。
【0059】
上述の内容は、本発明の原理の例示とみなされ、当業者には多数の変更形態が考えられるので、本発明を、上記したものと寸分違わぬ構成および動作に限定することを意図するものではない。すべての適切な変更形態および均等物は、特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実験システムの概要を示す図である。
【図2】制御プロセスの概略図である。
【図3】制御プロセスの作成の流れ図である。
【図4】ブロックの作成で使用されるスクリーン・ショットを示す図である。
【図5】サイクルの作成で使用されるスクリーン・ショットを示す図である。
【図6】変数、溶液およびサンプルを定義するために使用されるスクリーン・ショットを示す図である。
【図7】一貫性チェック・プロセスの規則を示す図である。
【図8】本発明の一例を示す図である。
【図9】本発明の別の例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器(5)の制御プロセスの開発のための方法であって、
複数の事前に定義されたコマンドから1つまたは複数のコマンドを選択する第1ステップ(130)と、
選択された前記1つまたは複数のコマンドを使用して制御プロセスを作成する第2ステップ(120、130、140)とを含み、
前記事前に定義されたコマンドが計器の動作を制御するための制御部と前記コマンドの目的を制御するための目的部とを有し、選択された前記1つまたは複数のコマンドのうちの少なくとも1つが前記目的部を有するものである、方法。
【請求項2】
選択された前記1つまたは複数の事前に定義されたコマンドのうちの少なくとも1つは、1つまたは複数のサイクルにまとめられる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択された前記1つまたは複数の事前に定義されたコマンドの選択の一貫性をチェックするステップ(140)をさらに含む請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
事前に定義されたコマンドの選択の一貫性をチェックする前記ステップ(140)は、選択された前記1つまたは複数の事前に定義されたコマンドのうちの各々に関連する一貫性指示規則をチェックすることを含んでなる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2ステップは、1つまたは複数のサイクルを選択してブロックを作成することをさらに含む請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2ステップは、前記1つまたは複数のサイクルのうちの少なくともいくつかを組み合わせて、反復するサイクルのセットを作成することを含む請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ブロックの一貫性をチェックするステップ(140)をさらに含む請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブロックの一貫性をチェックする前記ステップ(140)は、前記ブロックに関連する一貫性ブロック規則をチェックすることを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
1つまたは複数の事前に定義されたコマンドを選択して、前記計器(5)を初期化するための初期化ブロックを作成することをさらに含む請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
選択された前記1つまたは複数の事前に定義されたコマンドのうちの少なくとも2つは実質的に同じものである請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
選択された前記1つまたは複数の事前に定義されたコマンドの組合せの順序は、少なくとも部分的に無作為に選択される請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1つまたは複数の事前に定義されたコマンドを選択する前記ステップは、前記計器(5)の外部にある外部デバイスにアドレスするための外部コマンドを選択するステップを含む請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
選択された前記1つまたは複数の事前に定義されたコマンドのうちの1つまたは複数で使用するために、1つまたは複数の変数を入力するステップをさらに含む請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記計器(5)は実験室用計器であり、前記制御プロセスは実験ステーション(10)で実験を行うためのプロセスである請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記計器は食品の品質管理を行うための品質管理計器であり、前記制御プロセスは品質管理プロセスである請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
計器(5)の制御プロセスの開発のための装置であって、
複数の事前に定義されたコマンドのうちの個々のものについての複数の制御パラメータを記憶するための第1メモリ(25)と、
前記複数の事前に定義されたコマンドに関連する情報を表示するための表示デバイス(20)と、
前記複数の事前に定義されたコマンドのうちのあるものを選択するための選択デバイス(30)と、
前記複数の事前に定義されたコマンドのうちの選択されたものを処理して制御プロセスを作成するためのプロセッサ(15)とを備え、
前記複数の事前に定義されたコマンドは計器の動作を制御するための制御部を有し、前記複数の事前に定義されたコマンドのうちの少なくとも1つが前記コマンドの目的を制御するための目的部を有するものである、装置。
【請求項17】
前記第1メモリ(25)は、前記複数の事前に定義されたコマンドのうちの個々のものに関連するコマンド一貫性規則をさらに記憶する請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記プロセッサ(15)は、前記複数の事前に定義されたコマンドのうちの選択されたものの組合せの一貫性をさらにチェックする請求項16または17に記載の装置。
【請求項19】
ブロックの詳細を記憶するための第2メモリ(25)をさらに備え、前記ブロックが、制御プロセスのために事前に定義された前記コマンドのうちの複数のあるものから構成される請求項16から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記第2メモリ(25)は、前記ブロックに関連するブロック一貫性規則をさらに記憶する請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記プロセッサ(15)は、前記ブロックの一貫性をさらにチェックする請求項19または20に記載の装置。
【請求項22】
外部デバイスへの1つまたは複数のインターフェースをさらに備える請求項16から21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記計器(5)は実験室用計器である請求項16から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記計器(5)は食品の品質管理測定を行う請求項16から22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記計器(5)は事後処理用分析機器をさらに備える請求項16から24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
請求項1から15の一項に記載の方法によって開発される制御プロセスにより制御される、分析を行うための計器(5)。
【請求項27】
前記制御プロセスでの使用のために変数を入力する手段(30)をさらに備える請求項26に記載の計器(5)。
【請求項28】
事後処理用分析機器をさらに備える請求項26または27の一項に記載の計器(5)。
【請求項29】
複数の事前に定義されたコマンドから1つまたは複数のコマンドを選択する第1ステップと、
選択された前記1つまたは複数のコマンドを使用して制御プロセスを作成する第2ステップとを備え、
前記事前に定義されたコマンドが計器の動作を制御するための制御部と前記コマンドの目的を制御するための目的部とを有し、選択された前記1つまたは複数のコマンドのうちの少なくとも1つが前記目的部を有する方法、
を実行するためのコンピュータで実行可能な命令を有するコンピュータで読み取り可能な媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−520703(P2007−520703A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549902(P2006−549902)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013917
【国際公開番号】WO2005/071422
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(506246829)
【氏名又は名称原語表記】BIACORE AB
【住所又は居所原語表記】Rapsgatan 7, S−754 50 Uppsala,Sweden
【Fターム(参考)】