説明

計測回路及びそれを用いた計測装置

【課題】入力エネルギーを計測する装置において、LSIの実装面積を削減すると同時に装置を小型化できる計測回路及びそれを用いた計測装置を提供する。
【解決手段】入力エネルギーを電気信号に変換する検出素子群19と、前記電気信号を波形整形して入力波形が設定した閾値を超えたことを示すトリガ信号を生成すると共にピークの波高値を保持するアナログ信号処理回路39と、前記波高値をデジタル信号に変換するA/D変換器50と、アナログ信号処理回路39とA/D変換器50を制御して入力位置と波高値を取得してデータを送出するデジタル信号処理回路79とで構成する。前記検出素子群19は、検出範囲をマトリクス状に分割して、互いに直交して延びるX軸検出信号17とY軸検出信号18が出力されるマイクロストリップ型検出素子群とし、アナログLSI及びデジタルLSIの入出力信号ピン数及び計測回路を削減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測技術に関し、特に、検出素子により放射線等の入力エネルギーを計測するための計測回路および計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に、従来の基本的な計測回路の構成を示す。従来の検出素子11は、入力エネルギーを電気信号12に変換してアナログ信号処理回路30に送る。アナログ信号処理回路30は、波形整形回路31、トリガ生成回路32及びピークホールド回路33を有する。波形整形回路31は、電気信号12を波形整形して、トリガ生成回路32は波形整形した入力波形が設定した閾値を越えたかどうかを判断し、閾値を越えた場合はピークホールド回路33が波高値を保持すると共に、トリガ生成回路32がデジタル信号処理回路70へトリガ信号51を送る。デジタル信号処理回路70は、トリガ検出回路71、データ読出回路72、トリガリセット回路73及びデータ出力回路74を有する。トリガ検出回路71はトリガ信号51を受け取ると、データ読出回路72がA/D変換器50に対して読出制御信号53を制御してピークホールドした波高値52をデジタル信号54に変換し、データ出力回路74へ送る。2次元入力位置は、検出素子11から個々に出力される電気信号12を受けたトリガ生成回路32が生成するトリガ信号51によって一意的に特定される。データ出力回路74は検出データ90を出力する。なお、読出動作が完了すると、トリガリセット回路73は、トリガリセット信号により、読み出しを完了したトリガ生成回路32及びピークホールド回路33をリセットする。
【0003】
図2に、前記した計測回路を搭載した従来の計測装置の例を示す。従来の計測装置に搭載される検出素子群10は、従来の検出素子11を2次元または3次元配置したものである。アナログLSI40は、複数の検出素子11からの電気信号12を受けるために複数のアナログ信号処理回路30を有しており、検出素子11ごとのトリガ信号51及び波高値52を出力する。なお、波高値52は、アナログLSIでセレクトして出力する場合もある。デジタルLSI80は、複数のトリガ信号51を受けるために複数のデジタル信号処理回路70を有しており、検出データ90をデータ収集装置100へ送出する。なお、複数の検出データ90をデジタルLSI80が纏めてデータ収集装置100へ送出する場合もある。データ収集装置100は、検出データ90をバッファリングし、制御信号91によりデータ補正を行ってからデータ制御装置110へデータ101を送出する。データ制御装置110は、計測回路を制御すると共に、データ収集装置100からのデータ101を解析して内部メモリへ格納する。なお、データ制御装置110は、データ101を別の装置へ転送する機能を有している場合もある。データ表示装置130は、インターフェース111を介して計測装置の制御及び状態を表示すると共に、解析したデータを画面に表示する。
【0004】
なお、データ収集装置100、データ制御装置110、データ表示装置130は離れた場所に設置して遠隔操作するようになっている場合もある。
【0005】
上述のような構成は、例えば、X線などの放射線を検出する計測回路及び計測装置で用いられている場合について、「放射線技術学シリーズ・核医学検査技術学、第46−48頁及び第89−90頁」で記載されている。
【0006】
【非特許文献1】大西英雄・松本政典・増田一孝 共編:「放射線技術学シリーズ・核医学検査技術学」、第46−48頁、第89−90頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、検出素子の微細化により検出素子の集積度が向上してきており、同一計測範囲でも検出位置をより細かく計測することが可能となっているが、検出素子の増加によりアナログLSI及びデジタルLSIの数も増える傾向にある。
【0008】
しかし、計測装置の小型化を進める上ではアナログLSI及びデジタルLSIを含めた計測回路の実装面積削減は必須であるが、LSIの高集積化や実装部品の削減だけでは限界がある。
【0009】
そこで、本発明は、入力エネルギーを計測する装置において、LSIの実装面積を削減すると同時に装置を小型化できる計測回路及びそれを用いた計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、下記に示すような特徴を有する。
【0011】
(1)本発明の計測回路は、入力エネルギーを電気信号に変換する検出素子を所定の配列で配置した検出素子群と、前記電気信号を波形整形して入力波形が設定した閾値を超えたことを示すトリガ信号を生成すると共にピークの波高値を保持するアナログLSIと、前記波高値をデジタル信号に変換するA/D変換器と、前記アナログLSIと前記A/D変換器を制御して入力位置と波高値を取得してデータを送出するデジタルLSIとを具備し、前記検出素子群は、検出範囲をマトリクス状に分割して、前記マトリクス内で複数の検出素子に対し互いに直交して延びるX軸検出信号とY軸検出信号が出力される複数のマイクロストリップ型検出素子で構成されていることを特徴とする。
【0012】
例えば、n×nの検出素子群を有する場合、図2の検出素子群10であればアナログ信号処理回路への入力はn必要になるが、マイクロストリップ型検出素子を用いることで2nで済むことになり、アナログLSIへの入力信号ピン数の削減、及び波形整形回路やトリガ生成回路、ピークホールド回路などを削減できる。
【0013】
なお、上述したマイクロストリップ型検出素子群の配置方法については、後述する本発明の実施例の中で説明する。
【0014】
(2)前記構成の計測回路において、前記アナログLSIが、複数のトリガ信号を結線オアしたグループトリガ信号と、前記複数のトリガ信号を外部から選択して出力するセレクトトリガ信号と、複数のピークホールドされた波高値を外部から選択して出力するセレクト波高値信号を出力することを特徴とする。
【0015】
トリガ信号及び波高値信号をアナログLSI内でセレクトして出力することで、アナログLSI及びデジタルLSIの入出力信号ピン数を削減できる。
【0016】
なお、上述したアナログLSIの制御方法については、後述する本発明の実施例の中で説明する。
【0017】
(3)本発明の計測装置は、入力エネルギーを電気信号に変換する検出素子を所定の配列で配置した検出素子群と、前記電気信号を波形整形して入力波形が設定した閾値を超えたことを示すトリガ信号を生成すると共にピークの波高値を保持するアナログLSIと、前記波高値をデジタル信号に変換するA/D変換器と、前記アナログ信号処理回路と前記A/D変換器を制御して入力位置と波高値を取得してデータを送出するデジタルLSIとを備えた計測回路と、前記データをバッファリングし、データ補正を行うデータ収集装置と、前記計測回路を制御すると共に、前記データ収集装置からのデータを解析して内部メモリに格納するデータ制御装置と、前記計測回路の制御状態および前記データ制御装置で解析したデータを表示するデータ表示装置とを有する計測装置において、前記検出素子群が、検出範囲をマトリクス状に分割して、前記マトリクス内で複数の検出素子に対し互いに直交して延びるX軸検出信号とY軸検出信号が出力される複数のマイクロストリップ型検出素子で構成されていることを特徴とする。
【0018】
(4)前記構成の計測装置において、前記アナログLSIは、複数のトリガ信号を結線オアしたグループトリガ信号と、前記複数のトリガ信号を外部から選択して出力するセレクトトリガ信号と、複数のピークホールドされた波高値を外部から選択して出力するセレクト波高値信号を出力することを特徴とする。
【0019】
(5)前記構成の計測装置において、前記計測回路が、前記データ収集装置、前記データ制御装置および前記データ表示装置によって遠隔操作されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、入力エネルギーを計測する装置において、アナログLSI及びデジタルLSIの入出力信号ピン数及び計測回路を削減することで、LSIの実装面積を削減すると同時に装置を小型化できる計測回路及びそれを用いた計測装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳述する。
【0022】
図3は、本発明の一実施例である計測回路の概略構成を示す図である。本実施例の計測回路は、マイクロストリップ型検出素子群19とアナログ信号処理回路39とA/D変換器50とデジタル信号処理回路79で構成される。以下、本発明の計測回路の各構成を説明する。
【0023】
図4は、図3で示したマイクロストリップ型検出素子群19の概略構成を示す図である。なお、図4では、3×3の2次元配置したマイクロストリップ型検出素子群を一例として説明する。
【0024】
マイクロストリップ型検出素子1は、入力エネルギーを電気信号に変換してX軸用検出信号15とY軸用検出信号16を出力する。2次元配置したマイクロストリップ型検出素子群19は、X軸方向及びY軸方向に並んだもの同士の検出信号を結線オアした複数のX軸検出信号17とY軸検出信号18を出力する。入力位置は、X軸検出信号17とY軸検出信号18の交点から特定する。3×3のマイクロストリップ型検出素子群19を用いる場合、図2の検出素子群10であればアナログLSIへの入力は9本必要になるが、マイクロストリップ型検出素子1を用いることで6本となり、アナログLSIへの入力信号ピン数、波形整形回路、トリガ生成回路、ピークホールド回路などが削減できる。
【0025】
図5は、図3で示したアナログ信号処理回路39の概略構成を示す図である。なお、図5では、3×3のマイクロストリップ型検出素子群を対象とした場合のアナログ信号処理回路を一例として説明する。
【0026】
波形整形回路31は、複数のX軸検出信号17とY軸検出信号18を波形整形し、トリガ生成回路32は波形整形した入力波形が設定した閾値を越えたかどうかを判断し、閾値を越えた場合はピークホールド回路33がピークの波高値を保持する。波形整形回路31とトリガ生成回路32とピークホールド回路33は、入力されるX軸検出信号及びY軸検出信号毎に実装される。X軸側のトリガ生成回路32から出力されているトリガ信号51は結線オアされてX軸側トリガ信号62として出力し、Y軸側のトリガ生成回路32から出力されているトリガ信号51は結線オアされてY軸側トリガ信号63として出力する。各トリガ信号はトリガセレクト回路60に入力され、外部からのセレクト信号66によって各トリガ信号は選択されてトリガセレクト信号64として出力される。
【0027】
また、ピークホールドされた各波高値52は波高値選択回路61に入力され、外部からのセレクト信号66によって各波高値52は選択されてセレクト波高値信号65として出力される。グループ化されたX軸とY軸のトリガ生成回路及びピークホールド回路のリセットは、リセット信号55にて一括して行う。3×3の検出素子を用いる場合、図2のアナログLSIであればトリガ信号は検出素子毎に9本出力しているが、本発明におけるアナログ信号処理回路では、X軸、Y軸側トリガ信号の2本となり、アナログLSI及びデジタルLSIの入出力信号ピン数を削減できる。
【0028】
図6は、図3で示したA/D変換器50とデジタル信号処理回路79の概略構成を示す図である。トリガ検出回路71は、X軸側トリガ信号62とY軸側トリガ信号63の同時性を判断する。トリガ検出回路がトリガの同時性を検出すると、トリガ読出回路75がセレクト信号66を制御してアナログLSIからX軸トリガ信号及びY軸トリガ信号を選択したセレクトトリガ信号64として順次読み出す。トリガ読出回路75が読み出したセレクトトリガ信号64でトリガを検出したら、データ読出回路72がA/D変換器50に対して読出制御信号53を制御して、セレクト信号66によって選択されたセレクト波高値信号65をデジタル信号54に変換しデータ出力回路74へ送る。2次元入力位置情報は、位置特定回路76がX軸トリガ信号とY軸トリガ信号から交点を判断して特定する。データ出力回路74は、検出データ90を出力する。なお、読出動作が完了すると、リセット回路73がグループ化したX軸及びY軸の各トリガ生成回路及びピークホールド回路を一括してトリガリセット信号55によりリセットする。
【0029】
図7に、かかる計測回路を搭載した本発明の計測装置の一実施例を示す。アナログLSI40は複数のアナログ信号処理回路39を有し、デジタルLSI80は複数のデジタル信号処理回路79を有する。計測回路は、図2と同じく、データ収集装置100とデータ制御装置110とデータ表示装置130に接続している。図中、2は、本発明の計測装置に搭載されるマイクロストリップ型検出素子群を示す。
【0030】
なお、データ収集装置100、データ制御装置110、データ表示装置130は、離れた場所に設置して遠隔操作することも可能である。また、検出素子を3次元化した検出素子群と、3次元化に対応したアナログLSIとデジタルLSIとデータ収集装置とデータ制御装置とデータ表示装置を有するように構成してもよい。
【0031】
以上、本発明を上述した実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更しうることは言うまでもない。
【0032】
以上詳述したように、本発明によれば、マイクロストリップ型検出素子を用いることで、アナログLSIの入出力信号ピン数及び制御回路を削減することができる。また、トリガ信号及び波高値信号をアナログLSI内でセレクトして出力することで、アナログLSI及びデジタルLSIの入出力信号ピン数を削減することができる。入出力信号ピン数及び制御回路の削減により、LSI実装面積の削減と同時に装置の小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の基本的な計測回路の構成を示す図。
【図2】図1の計測回路を搭載した従来の計測装置の構成を示す図。
【図3】本発明の一実施例である計測回路の構成を説明する図。
【図4】図3のマイクロストリップ型検出素子群の構成を示す図。
【図5】図3のアナログ信号処理回路の構成を示す図。
【図6】図3のA/D変換器及びデジタル信号処理回路の構成を示す図。
【図7】本発明の計測回路を搭載した計測装置の一実施例の構成を説明する図。
【符号の説明】
【0034】
1…マイクロストリップ型検出素子、2…本発明の計測装置に搭載されるマイクロストリップ型検出素子群、10…従来の計測装置に搭載される検出素子群、11…従来の検出素子、12…検出素子から出力される電気信号、15…検出素子から出力されるX軸用検出信号、16…検出素子から出力されるY軸用検出信号、17…X軸検出信号、18…Y軸検出信号、19…マイクロストリップ型検出素子群、30…従来のアナログ信号処理回路、31…波形整形回路、32…トリガ生成回路、33…ピークホールド回路、39…本発明の一実施例におけるアナログ信号処理回路、40…アナログLSI、50…A/D変換器、51…検出器毎のトリガ信号、52…波高値信号、53…A/D変換器への制御信号、54…デジタル変換した波高値信号、55…トリガリセット信号、62…結線オアしたX軸側トリガ信号、63…結線オアしたY軸側トリガ信号、64…セレクトトリガ信号、65、セレクト波高値信号、66…セレクト信号、70…従来のデジタル信号処理回路、71…トリガ検出回路、72…データ読み出し回路、73、トリガリセット回路、74…データ出力回路、75…トリガ読出回路、76…位置特定回路、79…本発明の一実施例におけるデジタル信号処理回路、80…デジタルLSI、90…検出データ、100…データ収集装置、101…データ制御装置とデータ収集装置のインターフェース、110…データ制御装置、111…データ制御装置とデータ表示装置のインターフェース、130…データ表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力エネルギーを電気信号に変換する検出素子を所定の配列で配置した検出素子群と、前記電気信号を波形整形して入力波形が設定した閾値を超えたことを示すトリガ信号を生成すると共にピークの波高値を保持するアナログLSIと、前記波高値をデジタル信号に変換するA/D変換器と、前記アナログLSIと前記A/D変換器を制御して入力位置と波高値を取得してデータを送出するデジタルLSIとを具備し、前記検出素子群は、検出範囲をマトリクス状に分割して、前記マトリクス内で複数の検出素子に対し互いに直交して延びるX軸検出信号とY軸検出信号が出力される複数のマイクロストリップ型検出素子で構成されていることを特徴とする計測回路。
【請求項2】
請求項1に記載された計測回路において、前記アナログLSIは、複数のトリガ信号を結線オアしたグループトリガ信号と、前記複数のトリガ信号を外部から選択して出力するセレクトトリガ信号と、複数のピークホールドされた波高値を外部から選択して出力するセレクト波高値信号を出力することを特徴とする計測回路。
【請求項3】
入力エネルギーを電気信号に変換する検出素子を所定の配列で配置した検出素子群と、前記電気信号を波形整形して入力波形が設定した閾値を超えたことを示すトリガ信号を生成すると共にピークの波高値を保持するアナログLSIと、前記波高値をデジタル信号に変換するA/D変換器と、前記アナログ信号処理回路と前記A/D変換器を制御して入力位置と波高値を取得してデータを送出するデジタルLSIとを備えた計測回路と、前記データをバッファリングし、データ補正を行うデータ収集装置と、前記計測回路を制御すると共に、前記データ収集装置からのデータを解析して内部メモリに格納するデータ制御装置と、前記計測回路の制御状態および前記データ制御装置で解析したデータを表示するデータ表示装置とを有する計測装置において、前記検出素子群が、検出範囲をマトリクス状に分割して、前記マトリクス内で複数の検出素子に対し互いに直交して延びるX軸検出信号とY軸検出信号が出力される複数のマイクロストリップ型検出素子で構成されていることを特徴とする計測装置。
【請求項4】
請求項3に記載の計測装置において、前記アナログLSIは、複数のトリガ信号を結線オアしたグループトリガ信号と、前記複数のトリガ信号を外部から選択して出力するセレクトトリガ信号と、複数のピークホールドされた波高値を外部から選択して出力するセレクト波高値信号を出力することを特徴とする計測装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の計測装置において、前記計測回路が、前記データ収集装置、前記データ制御装置および前記データ表示装置によって遠隔操作されることを特徴とする計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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