説明

計測装置、計測方法および計測プログラム

【課題】3点曲げ試験から得られる変位−荷重曲線から材料が降伏応力を超えた後の応力ひずみ特性を精度よく求めること。
【解決手段】本実施例にかかる計測装置100は、試験片に対する3点曲げ試験の試験結果を取得し、弾性率推定部130が試験結果に含まれる荷重と変位との関係を示す曲線の傾きに基づいて試験片の弾性率を算出する。そして、降伏応力推定部140が、試験片に加える荷重と変位との理論値を異なる摩擦係数毎に算出し、算出した各理論値のうち、試験結果との誤差が最小となる理論値を判定するとともに、判定した理論値と試験結果とを基にして降伏応力を算出する。また、パラメータ推定部150が、弾性率および降伏応力に基づいて試験片の応力とひずみとの関係を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片の応力とひずみとの関係を計測するに関する計測装置、計測方法および計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、携帯電話等の電子機器をはじめとする各種構造材料は、通常降伏応力以下で使用することを前提としてこれまで設計が行われてきたため、線形材料物性(縦弾性係数=ヤング率)の線形材料特性を把握することで構造設計が可能であった。しかしながら、近年、装置の小型化や薄型化が進み、材料の降伏応力を超えて応力が作用することも考慮して設計を行う必要性が高まっている。
【0003】
材料が降伏応力を超えて塑性変形後に示す材料特性として応力ひずみ特性がある。図31は、アルミニウム合金の応力ひずみ線図の一例を示す図である。図31に示すように、初期の応力とひずみとは原点を通過する線形の比例関係を示す(フックの法則が成り立つ)が、降伏応力以上では、応力とひずみの関係は線形ではなくなり、図31に示すような曲線に変化する。図31に示す例では、約350MPa以上で応力とひずみの関係が線形ではなくなる。線形領域を超えた場合の応力とひずみの関係を表す材料特性が応力ひずみ物性であり、材料毎に固有の物性値である。
【0004】
これまでの応力ひずみ線図の測定については、例えば金属材料については、JISZ2241(金属材料引張試験方法)に基づき、JIS2201(金属材料引張試験片)に準拠する引張り試験片を作成し、引張り試験により測定する方法が最も一般的な試験法である(例えば、特許文献1参照)。該試験方法では、最初に試験片作成時の無負荷状態での初期標点間距離L(mm)を規定し、荷重P(N)負荷時の標点間距離L’(mm)を逐次各荷重を変化させる毎にPとL’を計測し、公称ひずみεを式(1)により算出する。
【数1】

【0005】
また、応力σについては試験片の初期断面A=w(幅)×t(厚さ)と各荷重Pから式(2)より算出する。
【数2】

【0006】
しかしながら、JISZ2201に定義されているような試験片はかなり大型の試験片であり、多くの材料を必要とする。図32は、代表的な1号試験片の一例を示す図である。このため、電子機器などに使用される、金やその化合物などの希少金属や高価な樹脂材料などの計測に対しては、多大なコストを必要とし現実的ではないという課題がある。また、薄膜材料のように、非常に薄くしか製造できない材料に対しては試験片の作成が困難であるという課題がある。更に、ビスマス系金属化合物や一部樹脂材料のような脆性材料に対して、引張り試験時に材料の伸びがほとんど無いため、引張り試験を精度よく実施することが困難であるといった課題がある。
【0007】
また、応力ひずみ線図の線形部分の材料特性については、以下に示す曲げ試験により、曲げ弾性率として弾性係数を求める方法、すなわち3点曲げ試験がある。図33は、3点曲げ試験を説明するための図である。3点曲げ試験では、両端支持梁に集中荷重Pを負荷した場合のたわみδが弾性率に反比例して、荷重に比例するという特性により、式(3)に基づいてたわみδを算出する。
【数3】

【0008】
また、式(3)を弾性率Eについて解いた
【数4】

より、たわみδと荷重Pから弾性率を求める方法もある。ただし、式(3)および式(4)において、Iは試験片の断面2次モーメントであり、I=bh/12によって表すことが出来る。また、bは試験片の幅、hは試験片の厚さを示す。例えば、JISH7406には繊維強化材料の曲げ試験方法の規定が定められている。
【0009】
曲げ試験では、引張り試験と比較して容易に荷重と変形量をコントロールできるため、引張り試験より容易に弾性率の計測が可能である。特に、同程度の大きさの試験片で引張り試験を行う場合よりも変形量を大きくとることができるので、より変形測定精度の低い測定装置でも容易に精度よく弾性率を計測することが可能となる。
【0010】
例えば、厚さ1mm、幅10mm、長さ100mmの長方形状のアルミ試験片(弾性率約70000MPa)では、1mmの伸びを得るために必要な荷重は引張り試験の場合は
【数5】

より、7000N(約700kgf)の荷重が必要になる。
【0011】
一方、同じ試験片を用いた曲げ試験で同じ1mmの変位(たわみ)を得る場合の荷重は、式(4)より得られる
【数6】

から、2.8N(280gf)となり、計測精度や荷重負荷コストに関して曲げ試験が有利であることは上記例から明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−232709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、3点曲げ試験から得られる変位−荷重曲線からでは材料が降伏応力を超えた後の応力ひずみ特性を求めることが出来ないという問題があった。
【0014】
曲げ試験では、微小な荷重で大きな変位を得ることが可能であり、また引張り試験で不向きな非常に薄い薄膜状の試験片でも曲げ変形を求めることができ、材料物性試験が可能である。一方で、上述したように引張り試験法では材料に一定の応力(σ=P/A)を負荷し、材料の伸びδ=L’−Lからひずみε=δ/Lを計算し、応力ひずみ関係を直接的に求めることが可能だが、曲げ試験では曲げ変位δと荷重Pの関係からは直接的に応力ひずみ関係を求めることが出来ないという問題がある。これは応力ひずみ関係が非線形となり、変位とたわみの関係から元の応力ひずみ関係を推定することが困難なためである。
【0015】
応力とひずみ関係が線形範囲の場合には応力とひずみ関係はフックの法則σ=Eεが成り立つ。また、応力と外荷重についても比例定数をkとして比例関係σ=kP(引張りの場合はσ=P/A、曲げ試験の場合はσ=M/Z=PL/(4Z)=3PL/(2bh))が成り立つ。ここでZは試験片の断面係数であり、Z=bh/6によって表すことができる。
【0016】
同様にひずみと変位の関係も比例定数をkとして比例関係ε=kδ(引張り試験の場合ε=δ/L、曲げ試験の場合ε=6δh/L)にあるため計測が容易な変位δと荷重Pから応力とひずみはそれぞれ推定可能である。
【0017】
応力ひずみ関係が非線形あっても、応力と荷重にσ=kPの比例関係が成り立てば、荷重から応力の推定が可能であるが、材料降伏後の荷重と応力の関係は比例関係にならず、材料の応力ひずみ線図に従い、非線形に変化する。具体的には、∫σ・y・dA=M=PL/4の関係が成り立つ。
【0018】
降伏応力以上の応力が作用した場合、試験片の中立軸(これは長方形断面を有する均一材の場合、試験片の厚さ方向中央部となる)からの厚さ方向の距離yに応じて材料内部の応力は応力ひずみ線図に従って非線形に変化するため、最大応力σと外荷重Pの関係も非線形に変化する。
【0019】
その一方で、ひずみと変位の関係については、変位δがあまり大きくない場合には、応力が降伏応力を超え非線形の応力ひずみ関係となった場合でも、上述したような比例関係が成立する。具体的に、曲げ試験ではε=6δh/Lとなる。
【0020】
しかしながら、ひずみと変位の関係についても、変位が大きくなった場合には線形関係が成立しなくなる。従って、大変形でなおかつ非線形な応力ひずみ関係にある試験の場合には様々な非線形関係が同時に発生するため容易に変位δと荷重Pから元材料の応力・ひずみ関係を推定することは出来なかった。
【0021】
一方で、上記とは逆に材料の非線形応力ひずみ関係が既知であり、材料の試験片形状、荷重条件が明確に与えられている場合に荷重と変位の関係を推定することは可能である。簡単のためにひずみと変位との関係が線形の場合で説明すると、最初にある変位量δを与えるとこれに応じてε=6δh/Lの関係からひずみを計算できる。
【0022】
次に、応力ひずみ線図関係からひずみεに対応した応力σを求める。最後に∫σ(y)・y・dy=M=PLの関係から、応力の積分計算を実行し、変位δに必要な荷重Pを求めることができ、δとPの対応関係が計算可能である。また、変位と応力の関係が非線形になった場合でも、同様の手順により、変位δを所与として与え、次にひずみεを反復計算により求め、応力ひずみ関係からひずみεに対応した応力σを求める。最後に∫σ(y)・y・dy=M=PLの関係から、応力の積分計算を実行し、変位δに必要な荷重Pを求めるという手順で計算可能である。
【0023】
以上のように、応力−ひずみ関係が既知であれば、3点曲げ試験の荷重−変位関係を求めることが可能であるが、荷重−変位関係が既知であっても、応力−ひずみ関係を求めることができない。しかしながら、何らかの方法により真の応力−ひずみ関係に近い応力−ひずみ関係が少数のパラメータで再現されていれば、荷重−変位関係から応力−ひずみ関係の推定値を算出することができる。
【0024】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、3点曲げ試験から得られる変位−荷重曲線から材料が降伏応力を超えた後の応力ひずみ特性を精度よく求めることができる計測装置、計測方法および計測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この計測装置は、試験片に対する3点曲げ試験の試験結果を取得し、当該試験結果に含まれる荷重と変位との関係を示す曲線の傾きに基づいて前記試験片の弾性率を算出する弾性率算出部と、前記試験片の端が支持されている場合に、前記試験片に加える荷重と変位との理論値を異なる摩擦係数毎に算出し、算出した各理論値のうち、前記試験結果との誤差が最小となる理論値を判定する理論値判定部と、前記理論値判定部に判定された理論値と前記試験結果とを基にして、当該理論値と前記試験結果との誤差が規定値以上となる荷重を降伏開始荷重として判定し、判定した降伏開始荷重に基づいて前記試験片の降伏応力を算出する降伏応力算出部と、前記弾性率および前記降伏応力に基づいて、前記試験片の応力とひずみとの関係を算出する応力ひずみ算出部とを備えたことを要件とする。
【発明の効果】
【0026】
この計測装置によれば、3点曲げ試験から得られる変位−荷重曲線から試験片(材料)が降伏応力を超えた後の応力ひずみ特性を精度よく求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本実施例1にかかる計測装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は、荷重変位測定データのデータ構造の一例を示す図である。
【図3】図3は、図2に示した荷重変位測定データに対応する荷重変位曲線を示す図である。
【図4】図4は、荷重変位曲線を模式的に示した図である。
【図5】図5は、初期データ調整部の処理を説明するための図である。
【図6】図6は、初期データ調整部による曲線のシフトを説明するための図である。
【図7】図7は、調整済みデータのデータ構造の一例を示す図である。
【図8】図8は、図7に示した調整済みデータから得られた傾きを示す図である。
【図9】図9は、試験片の寸法の一例を示す図である。
【図10】図10は、変位と荷重との実測値および理論値を示す図である。
【図11】図11は、降伏応力の計算結果を示す図である。
【図12】図12は、各水準の組合せを示す図である。
【図13】図13は、図12のNo.1のケースに対応したσとεの関係を示す図である。
【図14】図14は、試験片の諸元を示す図である。
【図15】図15は、有限要素法の解析モデルを示す図(1)である。
【図16】図16は、有限要素法の解析モデルを示す図(2)である。
【図17】図17は、FEM解析結果と実測値との関係を示す図である。
【図18】図18は、FEM解析結果による荷重と変位との関係を示す図である。
【図19】図19は、No.1のケースに対応したFEM解析結果と実測値との関係を示す図である。
【図20】図20は、No.1のケースに対応したFEM解析結果による荷重と変位との関係を示す図である。
【図21】図21は、管理テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【図22】図22は、応力ひずみ線図出力部が出力する応力ひずみ線図の一例を示す図である。
【図23】図23は、本実施例1にかかる計測装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図24】図24は、3点曲げ変位荷重計算処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図25】図25は、初期データ補正処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図26】図26は、弾性率推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図27】図27は、形状非線形理論解計算処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図28】図28は、降伏応力計算処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図29】図29は、パラメータ推定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図30】図30は、実施例にかかる計測装置に対応するコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
【図31】図31は、アルミニウム合金の応力ひずみ線図の一例を示す図である。
【図32】図32は、代表的な1号試験片の一例を示す図である。
【図33】図33は、3点曲げ試験を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明にかかる計測装置、計測方法および計測プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
まず、本実施例1にかかる計測装置の構成について説明する。図1は、本実施例1にかかる計測装置の構成を示す機能ブロック図である。図1に示すように、この計測装置100は、3点曲げ変位荷重計測部110と、初期データ調整部120と、弾性率推定部130と、降伏応力推定部140と、パラメータ推定部150と、FEM解析部160と、応力ひずみ線出力部170とを有する。
【0030】
3点曲げ変位荷重計測部110は、図33に示したような3点曲げ試験装置を制御して3点曲げ試験を実行し、荷重と変位との関係を示す荷重変位測定データを取得する処理部である。図2は、荷重変位測定データのデータ構造の一例を示す図である。また、図3は、図2に示した荷重変位測定データに対応する荷重変位曲線を示す図である。3点曲げ変位荷重計測部110は、荷重変位測定データを初期データ調整部120に出力する。
【0031】
なお、ユーザが3点曲げ試験を行い、試験結果を計測装置100に入力しても構わない。この場合、3点曲げ変位荷重計測部110は、入力装置(図示略)を介してユーザから試験結果を取得し、取得した試験結果を荷重変位測定データとして初期データ調整部120に出力する。
【0032】
図4は、荷重変位曲線を模式的に示した図である。3点曲げ試験などで荷重変位を計測する場合、いくつかの領域が現れる。図4に示す例では、領域1〜領域4の領域が現れている。
【0033】
領域1では、負荷が微小な初期の範囲であり、荷重と変位との関係が直線関係とならず、非線形なカーブが現れる場合がある。これは、装置のガタや加圧治具と試験片との接触エリアが加圧と共に徐々に増加するため、装置の変位量と加圧力とが初期では比例しないことなどが原因で現れるものである。
【0034】
領域2では、荷重と変位との関係が直線関係となり、応力とひずみがフックの法則により比例するエリアとなる。領域2では、荷重と変位との関係から弾性計数を計算することが出来る。
【0035】
領域3では、荷重と変位が大きくなり、幾何学的な非線形の影響を無視できなくなる。また、見かけ上、剛性が高く見える領域が出てくることがある。これは、応力とひずみとの関係が線形でも、ひずみと変位との関係または荷重と変位との関係が非線形になるためである。領域3は、幾何学的非線形、または形状非線形のエリアとよばれている。領域3では、荷重と変位との関係から弾性計数を計算すると誤差が大きくなる。
【0036】
領域4では、負荷した荷重に対して変位が大きく発生する。これは、応力とひずみとの関係が非線形となり、応力ひずみ線図に従って、荷重に比べて変位が大きく発生するためである。
【0037】
ただし、荷重負荷条件や試験片・加圧治具の形状などの諸要因により、様々なケースが考えられる。例えば、領域1がほとんど現れないケース、塑性による領域4が観測されないケース、領域3と領域4の境界がはっきりしないケース、領域3が現れず、領域2に連続して領域4に移行するケース、領域2がほとんどみられず領域1、3が連続的に現れるケースなどさまざまな組合せが考えられる。
【0038】
図1の説明に戻ると、初期データ調整部120は、荷重変位測定データを取得した場合に、荷重変位測定データに含まれる領域1を除去する、すなわち、荷重変位測定データのうち領域1に対応したデータを除去する処理部である。初期データ調整部120は、領域1を除去した荷重変位測定データを弾性率推定部130に出力する。以下の説明において、領域1を除去した荷重変位測定データを調整済みデータと表記する。
【0039】
以下において、初期データ調整部120の処理を具体的に説明する。ここでは、領域1を除去する第1,2の処理について順に説明する。所期データ調整部120は、第1の処理を行って領域1を除去しても良いし、第2の処理を行って領域2を除去しても良い。
【0040】
まず、領域1を除去する第1の処理について説明する。第1の処理において、所期データ調整部120は、荷重変位測定データ(荷重変位曲線)を直線近似し、近似直線とオリジナル曲線との交点を求め、最初の交点以下のデータを削除する。
【0041】
図5は、初期データ調整部120の処理を説明するための図である。具体的に、初期データ調整部120は、荷重変位曲線を近似して近似直線を算出し、荷重変位曲線と近似直線との交点を求める。
【0042】
そして、初期データ調整部120は、求めた交点のうち最も荷重の小さい交点を第1の交点とし、荷重変位測定データから第1の交点よりも小さいデータを削除する。以下の説明において、荷重変位測定データから第1の交点よりも小さいデータを削除したものを第1の削除済みデータと表記する。
【0043】
続いて、初期データ調整部120は、第1の削除済みデータを直線近似し(第1の削除済みデータの内、初期M<例えば、M=10>ポイントのデータから直線近似し)、近似した直線とX座標線(荷重軸)との交点を求める。
【0044】
そして、初期データ調整部120は、求めた交点の座標がX座標原点となるように第1の削除済みデータの曲線をシフトする。図6は、初期データ調整部120による曲線のシフトを説明するための図である。同図に示すように、第1の削除済みデータの曲線の初期値が、交点にシフトしている。初期データ調整部120は、シフトした曲線のデータを調整済みデータとして弾性率推定部130に出力する。図7は、調整済みデータのデータ構造の一例を示す図である。
【0045】
次に、領域1を除去する第2の処理について説明する。第2の処理において、初期データ調整部120は、荷重変位測定データをいくつかのエリアにL分割し、初期エリアデータを削除することで調整済みデータを作成する。
【0046】
具体的に、初期データ調整部120は、荷重変位測定データ(荷重変位曲線)をいくつかのエリアに分割し(例えば、10分割する)、分割した各エリアの内、初期エリア(荷重と変位との値が最も小さいエリア)を削除する。以下の説明において、荷重変位測定データから初期エリアを削除したものを第2の削除済みデータと表記する。
【0047】
続いて、初期データ調整部120は、第2の削除済みデータを直線近似し(第2の削除済みデータの内、初期M<例えば、M=10>ポイントのデータから直線近似し)、近似した直線とX座標線(荷重軸)との交点を求める。
【0048】
そして、初期データ調整部120は、求めた交点の座標がX座標原点となるように第1の削除済みデータの曲線をシフトする。初期データ調整部120は、シフトした曲線のデータを調整済みデータとして弾性推定部130に出力する。
【0049】
弾性率推定部130は、調整済みデータを取得した場合に、取得した調整済みデータに含まれる直線領域の傾きに基づいて弾性率を推定する処理部である。以下において、弾性率推定部130の処理を具体的に説明する。
【0050】
弾性率推定部130は、まず、初期データ(図7の1段目のデータ)と初期データの次のデータとなる2ポイントデータ(図7の2段目のデータ)と結んだ直線の傾きAを計算する。次に、弾性率推定部130は、初期データと、2ポイントデータと、3ポイントデータ(図7の3段目のデータ)の3点に対する近似直線を最小二乗法を用いて算出し、算出した近似直線の傾きAを算出する。
【0051】
次に、弾性率推定部130は、初期データと、2ポイントデータと、3ポイントデータと、4ポイントデータ(図7の4段目のデータ)の4点に対する近似直線を最小二乗法を用いて算出し、算出した近似直線の傾きAを算出する。以下同様に初期データからk(kは自然数)ポイントデータを用いて傾きAを算出する。弾性率推定部130は、A〜Aのデータを用いて弾性率の推定を行う。
【0052】
弾性率推定部130は、
=(A+A+・・・+A)/k・・・(7)
に示すように、A〜Aの各データの平均値をkが増加するたびに計算し、計算結果をBとする。弾性率推定部130は、kが増加するたびにAとBとを比較し、A>Bがあるp回連続で続いた場合(例えば、p=3)、AとBの計算を打ち切り、直線の傾きAをBk−pに固定する。
【0053】
得られた弾性の傾きAから、弾性率は、式(3)および式(4)から以下の式(8)で推定することが出来る。
E=L/(48AI)・・・(8)
【0054】
式(8)において、Lは試験片の支持長さ、Iは断面2次モーメント(I=bh/12)である。すなわち、弾性率推定部130は、式(8)を用いて弾性率を算出し、算出した弾性率および調整済みデータを降伏応力推定部140に出力する。なお、弾性率推定部130は、試験片寸法や試験固定条件等の情報を、入力装置(図示略)を介して取得する。また、試験片の真の弾性率が既知である場合には、既知の弾性率を用いることで、弾性率算出にかかる処理を省略することができる。
【0055】
以下に、弾性率推定部130が、図7に示した調整済みデータを用いて弾性率を算出する処理を具体的に説明する。図8は、図7に示した調整済みデータから得られた傾きを示す図である。弾性率推定部130は、初期データ(図7の1段目のデータ)と初期データの次のデータとなる2ポイントデータ(図7の2段目のデータ)と結んだ直線の傾きAを計算すると「5.954648」となる。そして、式(7)より、Bは、「5.954648」となる(図8の1段目参照)。図8の1段目では、A=Bとなる。
【0056】
次に、弾性率推定部130は、初期データと、2ポイントデータと、3ポイントデータ(図7の3段目のデータ)の3点に対する近似直線を、最小二乗法を用いて算出する。算出した近似直線の傾きAを算出すると「5.42414」となる。そして、式(7)より、Bは、「5.689394」となる(図8の2段目参照)。図8の2段目では、A<Bとなる。
【0057】
次に、弾性率推定部130は、初期データと、2ポイントデータと、3ポイントデータと、4ポイントデータ(図7の4段目のデータ)の4点に対する近似直線を、最小二乗法を用いて算出する。算出した近似直線の傾きAを算出すると「5.14938」となる。そして、式(7)より、Bは、「5.509389」となる(図8の3段目参照)。図8の3段目では、A<Bとなる。
【0058】
次に、弾性率推定部130は、初期データと、2ポイントデータと、3ポイントデータと、4ポイントデータと、5ポイントデータ(図7の5段目のデータ)の5点に対する近似直線を、最小二乗法を用いて算出する。算出した近似直線の傾きAを算出すると「4.86427」となる。そして、式(7)より、Bは、「5.34811」となる(図8の4段目参照)。図8の4段目では、A<Bとなる。
【0059】
およびBを算出した時点で、3回連続してBがAの値を上回ったので、AをBに固定する(A=5.954648にする)。そして、弾性率推定部130は、式(8)を利用して弾性率を算出する。図9は、試験片の寸法の一例を示す図である。図9に示す試験片の寸法と、A=5.954648とを基にして弾性率を算出すると、E=17196.6kgf/mmとなる。
【0060】
図1の説明に戻ると、降伏応力推定部140は、弾性率と調整済みデータを取得した場合に、取得した弾性率と調整済みデータとを基にして降伏応力を算出する処理部である。降伏応力推定部140は、弾性率と降伏応力とをパラメータ推定部150に出力する。以下において、降伏応力推定部140の処理を具体的に説明する。まず、降伏応力推定部140は、調整済みデータで得られた弾性率から幾何学的非線形の効果を分離する。
【0061】
3点曲げ試験における幾何学的非線形効果が含まれる場合の集中荷重Fと反りuについては大変形理論式から以下の式(9)により表される。
【数7】

式(9)において、αは軸方向の境界条件で決まる定数であり、l=L/2である。また、両端のX軸方向変位を0に固定する境界条件の場合には、式(9)を近似的に
【数8】

で表すことが出来る。
【0062】
式(10)において、反りuが試験片の厚さhと比較して微小量である場合は右辺の第2項を無視できるので、集中荷重Fと反りuとの関係は、
【数9】

で表すことが出来る。式(11)は、式(3)に示した線形梁理論の解にほぼ等しい。
【0063】
反対に、反りuが試験片の厚さhと比較して大きい場合には、右辺の第1項を魅し出来るので、集中荷重Fと反りuとの関係は、
【数10】

で表すことが出来る。
【0064】
また、式(12)から変位uを計算すると
【数11】

となる。式(13)に示すように、反りuは、集中荷重Fの3乗根に比例する。
【0065】
一方で、両端をフリーまたは一定荷重で拘束した場合には、荷重と反りuとの関係は、上述した式(9)で表すことができる。両端を一定荷重Tで拘束した場合には、αを
【数12】

で求め、式(14)の算出結果を式(9)に代入することで変位(反り)を算出する。両端をフリー端とした場合には、摩擦係数μとすると、T=μFの荷重が作用するので、これを式(14)に代入し、これを式(9)に代入することで反りuを計算できる。
【0066】
摩擦係数μは、試験片と試験片のおかれる支持台間の表面状態によるので、測定前に一定値に定めることは困難である。そこで本件では、曲げ試験結果から測定された変位負荷曲線(調整済みデータ)から以下の手順にて摩擦係数μを推定する。
【0067】
まず、降伏応力推定部140は、変位負荷曲線のうち幾何学的非線形が支配的となるエリアを判定する。特に、幾何学的非線形が支配的となるエリアが存在しない場合、あるいは、判定できない場合には、初期値として、全データ中の前半部分のエリアを該当エリアとして判定する。
【0068】
降伏応力推定部140は、摩擦係数μの初期値を0(μ=0)として式(9)、式(14)から論理変位uを各実測荷重F毎に計算する。降伏応力推定部140は、実測変位uと論理変位uに対する荷重F毎に差分の2乗和を取り、誤差2乗和Δを算出する。
【0069】
そして、降伏応力推定部140は、摩擦係数μに差分Δμ(Δμは、例えば0.1)を加え、上述した誤差2乗和Δを算出する処理を、摩擦係数μが規定値になるまで繰り返す。降伏効力推定部140は、摩擦係数μ毎に算出した誤差2乗和Δをそれぞれ比較し、誤差2乗和Δの値が最小となる摩擦係数μを真の摩擦係数として判定する。
【0070】
調整済みデータにおける荷重と変位の関係は、測定誤差を除いて式(9)〜式(13)で計算することが出来る。式(9)〜式(13)で計算した変位と実測変位との乖離がある場合、その差分は材料の非線形応力ひずみ特性によってもたらされるものと考えられる。実測変位が測定誤差の影響を無視して式(9)〜式(13)の計算結果とほとんど一致する場合は、非線形応力ひずみ特性(塑性)の影響はでていないので、塑性域の応力ひずみ関係を推定することは出来ない。
【0071】
ここで、降伏応力推定部140が、弾性率(E=17196.6kgf/mm)を用いて幾何学的非線形(大変形)を考慮した反りの理論値を式(9)および式(14)から計算した場合について説明する。また、一例として、本実施例の測定は端をフリーとしているので、摩擦係数μ=0.5として端部の張力Tを算出した。図10は、変位と荷重との実測値および理論値を示す図である。図10に示すように、荷重0.6kgf程度から理論値と実測値との乖離が見られるので、これ以降の荷重で材料の降伏が発生し、応力ひずみ効果が表れている。
【0072】
次に、降伏応力推定部140が降伏応力を算出する処理について説明する。降伏応力推定部140は、調整済みデータと幾何学的非線形を考慮した荷重変位曲線の理論値(図10参照)とを基にして降伏応力を算出する。
【0073】
試験片の材料に降伏応力のような非線形の応力ひずみ効果が無い場合、実測値は理論値と一致する。降伏応力推定部140は、図10に示した理論値と実測値との誤差が予め定めたβパーセント(例えば、10パーセント)以上となる荷重のうち、最小の荷重を降伏開始荷重Fとして判定する。
【0074】
試験片の材料が完全弾塑性対と仮定すると降伏後の応力域の応力は材料の降伏応力Yに等しく一定である。試験片(サンプル)の降伏域厚さをh0とすると、モーメントの釣り合いから
【数13】

が成立する。
【0075】
一方で、3点曲げ試験における最大モーメントMは、
【数14】

で表される。また、荷重Fが降伏開始荷重Fと等しいとき、式(15)と式(16)とは等しくなる。更に、荷重Fが降伏開始荷重Fと等しいとき、降伏域厚さh0とhのβ%とが等しい(h0=βh)と仮定すると、式(15)および式(16)から降伏応力Yは、
【数15】

によって表すことが出来る。
【0076】
図11は、降伏応力の計算結果を示す図である。図11に示すように、荷重「0.581kgf」において、実測値(変位)が「2.500mm」となり、理論値(変位)が「2.447mm」となり、理論値の誤差が「2.141」となる。かかる荷重「0.581kgf」を降伏開始荷重Fとすると、式(15)および式(16)から降伏応力Yは「2.141kgf/mm」となる。
【0077】
図1の説明に戻ると、パラメータ推定部150は、弾性率Eと降伏応力Yとを取得した場合に、RamBerg-Osgood式近似によるパラメータ推定を行い、
【数16】

に含まれるパラメータn、αを特定する処理部である。式(18)におけるパラメータn、αを特定することで、弾性率および降伏応力(3点曲げ試験の結果)から応力とひずみとの関係を算出することが可能となる。パラメータ推定部150は、パラメータn、αを特定した後に、特定した各パラメータ、弾性率、降伏応力の情報を応力ひずみ線出力部170に出力する。
【0078】
以下において、パラメータ推定部150の処理を具体的に説明する。応力とひずみとの関係を示す式は、上記した式(18)等が提案されている。ここでは、式(18)を例として、これらの複雑なモデル式のパラメータを決定する方法について説明する。
【0079】
式(18)において、n、αは未定定数であり、これらが求める材料物性値となる。また、式(18)中の弾性率E、降伏応力Yは、弾性率推定部130、降伏応力推定部140によりそれぞれ算出されている。式(18)に含まれる未知パラメータを算出する場合には、変数変換を行っても簡単に線形近似できないため、線形最小2乗法でパラメータを同定することは困難である。
【0080】
そこで、本実施例1では、近似多項式を用いて近似的にパラメータn、αを推定する方法を提案する。未知の材料物性値を持つ測定対象物(試験片)に関してはパラメータ既知の材料から類似材料を選択し、初期材料物性値を予測し、材料物性値の初期値を初期予測値(α0、n0)とする。
【0081】
パラメータ推定部150は、測定対象物の初期予測値を基準として、各材料パラメータを+、−方向に何割(例えば、5%〜100%)が変動させた水準を何水準か設定する。例えば、パラメータnに関しては、初期予測値「n0」の値を10とし、±50%変動させた水準値5、10、15を設定する。同様に、パラメータαの値についても初期予測値を基準として何水準か設定を行う。
【0082】
例えば、パラメータ(物性値)n、αの水準を3水準とし、下記のように設定する。
パラメータn(水準1=n1、水準2=n2、水準3=n3)
パラメータα(水準1=α1、水準2=α2、水準3=α3)
【0083】
パラメータ推定部150は、各パラメータの水準を組合せ、組合せた水準を式(17)に代入し、ひずみεと応力σとの関係を算出する。例えば、材料の物性値が(α3、n3)等の場合について算出する。応力σの値は、応力ひずみ線図がある程度正しく推定できるように、例えば、降伏応力Yの計算値の2倍の値を上限として、降伏応力Y〜2Yを10分割する。そして、パラメータ推定部150は、式(18)に基づいて、各σi(σ1=Y、・・・σ10=2Y)について対応するεiを算出する。
【0084】
変動幅は、経験的に所定の範囲を指定する。まったく不明な場合には、一律元物性値の何%かの変動(例えば、50%の変動)を与える。パラメータ推定部150は、各パラメータの水準の組合せ(例えば、α2、n3)を式(18)に代入し、仮想的な応力とひずみとの関係(応力ひずみカーブ)を算出する。
【0085】
パラメータ推定部150は、仮想的な応力とひずみとの関係をFEM解析部160に出力し、FEM解析部160から変位と荷重との関係を取得する。本実施例1に示す例では、未知のパラメータがnとαの2種類であり、各パラメータの水準が3種類ずつである。従って、パラメータ推定部150は、総当りで9ケースの仮想的な応力とひずみとの関係を算出し、各ケースに対応した変位と負荷との関係を保持する。
【0086】
パラメータ推定部150は、各荷重Fiでの変位uiの実測値と、各ケースに対応する有限要素解析に基づき算出された変位ui’との比較を行い、ケース毎に変位uiと変位ui’との誤差を算出する。そして、パラメータ推定部150は、ケース毎に、各荷重Fiでの誤差を2乗和する。
【0087】
パラメータ推定部150は、各ケースにおけるパラメータの水準と、誤差の2乗和に基づいて実測値と各計算値との誤差2乗値とパラメータ間の近似式を作成する。近似式は最小2乗法などを用いて行う。近似式は以下に示すような各材料物性値の多項式で行うこともできるし、それ以外のより一般的な関数(三角関数、対数関数、指数関数など)を用いて表現してもよい。
(誤差)=a+an+bα+bα+cnα+C・・・(19)
式(19)においてa、a、b、b、c、Cは最小2乗法により決定される定数であり、n、αは材料物性値である。
【0088】
パラメータ推定部150は、式(19)の誤差2乗値を最小化する誤差最小化原理に基づいて、実測値との誤差を最小化するパラメータn、αの同定を行う。誤差2乗値を最小化する材料物性値n、αの決定は逐次2次計画法などの汎用的な数理計画法のアルゴリズムを用いて行うか、その他、これに類する最適化アルゴリズム(遺伝的アルゴリズム、焼き鈍し法など)を用いて行うことも可能である。
【0089】
ここで、弾性率E=17196.6kgf/mm、降伏応力Y=74.325kgf/mm、パラメータαの初期値α0=0.5、パラメータnの初期値n0=10とし、各パラメータの各水準をα1=0.25、α2=0.5、α3=1、n1=5、n2=10、n3=15に設定した場合に算出されるパラメータα、nについて説明する。
【0090】
図12は、各水準の組合せを示す図である。図12に示すように、各水準の組合せは全部で9ケース存在する。パラメータ推定部150は、No.1〜9の順にαとnを式(18)に代入し、それぞれのケースに対応したσとεとの関係を算出する。
【0091】
図13は、図12のNo.1のケースに対応したσとεの関係を示す図である。降伏応力Y=74.325と求められているので、Y〜2Yまでの間を10分割して各σi(σ1=Y、・・・σ10=2Y)について対応するεiを計算する。パラメータ推定部150は、No.2〜9のケースに対しても、No.1のケースと同様にして、各σiに対応するεiをそれぞれ算出する。
【0092】
また、弾性率はE=17196.6kgf/mmであるので、得られた弾性率と図12に対応した応力ひずみ線図から一定荷重を負荷した場合の試験片の反りを有限要素法により計算する。試験片の寸法などの諸元を図14に示す。図14は、試験片の諸元を示す図である。図14に示すように、試験片の長さが20mm、幅が10mm、厚さが0.125mmとなっている。
【0093】
図15および図16は、有限要素法の解析モデルを示す図である。図15に示すように、メッシュ分割した後に対象性を考慮した1/4モデルとして作成し、図16に示すような拘束・荷重条件を実測の荷重条件にあわせて、モデル中に付加する。
【0094】
図17は、FEM解析結果と実測値との関係を示す図であり、図18は、FEM解析結果による荷重と変位との関係を示す図である。FEM解析例として応力ひずみ線図をまったく付加しない幾何学的非線形性を考慮した解析結果を算出すると、図17、図18の関係が得られる。また、図17、図18の解析結果は、大変形理論解に類似している。本解析は非線形解析可能な商用ソルバABAQUSを用いて行ったが、非線形解析の可能な有限要素解析ソフトであれば、同様の解析が可能である。(ABAQUS入力解析ファイルサンプル mage4n.inp 荷重0.1kgfの場合)
【0095】
パラメータ推定部150は、図12のNo.1のケースに基づいて、仮の応力ひずみ線図を求め、求めた応力ひずみ線図から、一定荷重を付加した場合の試験片の反り(変位)を有限要素法により算出する。図19は、No.1のケースに対応したFEM解析結果と実測値との関係を示す図であり、図20は、No.1のケースに対応したFEM解析結果による荷重と変位との関係を示す図である。(ABAQUS入力解析ファイルサンプル mage4n.inp 荷重0.1kgfの場合)
【0096】
図17と図19とを比較すると変化が無いが、わずかに荷重0.6kgf、0.8kgfにおいて差が発生している。なお、図20では、各荷重に対応したFEM解析結果と実測値との関係のほかに、各荷重のFEM解析結果と実測値との差分を2乗した結果(残差2乗)を含んでいる。図20を参照すると、実測値とFEM解析結果との誤差は、荷重0.8kgfの場合に他の荷重の場合と比較して大きくなっている。なお、No.1のケースにおける残差2乗の和は、2.92となっている。
【0097】
パラメータ推定部150は、図12のNo.2〜9のケースに対してもNo.1のケースと同様にして、残差2乗の和を算出し、No.1〜9のケース毎に、αの水準、nの水準、残差2乗の和とを対応付けた管理テーブルを生成する。図21は、管理テーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【0098】
パラメータ推定部150は、図21に示したα、nを説明変数、残差2乗の和を被説明変数として重回帰分析を行うことで、残差2乗の和ρをαとnの2次近似式で表すと
ρ=2.959−0.1136α+0.0624α−0.00301n+0.000067n
となる。パラメータ推定部150は、ρの値(式(19)の誤差の2乗に対応)が最小となるα、nを最適化アルゴリズムにより算出すると、α=1、n=15が算出される。
【0099】
図1の説明に戻ると、FEM解析部160は、パラメータ推定部150から仮想的な応力とひずみとの関係を取得した場合に、一定荷重を付加した場合の試験片の反り(変位)を算出し、算出結果(FEM解析結果)をパラメータ推定部150に出力する処理部である。
【0100】
応力ひずみ線図出力部170は、弾性率、降伏応力、パラメータα、nを取得した場合に、式(18)に基づいて応力ひずみ線図を作成し、作成した応力ひずみ線図をプリンタ、モニタ等の外部装置に出力する処理部である。図22は、応力ひずみ線図出力部170が出力する応力ひずみ線図の一例を示す図である。
【0101】
次に、本実施例1にかかる計測装置100の処理手順について説明する。図23は、本実施例1にかかる計測装置100の処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、この計測装置100は、3点曲げ変位荷重計測部110が、3点曲げ変位荷重計測処理を行い(ステップS101)、初期データ調整部120が、初期データ補正処理を行う(ステップS102)。
【0102】
そして、弾性率推定部130が、弾性率推定処理を行い(ステップS103)、降伏応力推定部140が、形状非線形理論解計算処理を実行し(ステップS104)、降伏応力計算処理を実行する(ステップS105)。
【0103】
続いて、パラメータ推定部150が、パラメータ推定処理を実行し(ステップS106)、応力ひずみ線出力部170が、応力ひずみ線図を生成し(ステップS107)、応力ひずみ線図を出力する(ステップS108)。
【0104】
次に、図23のステップS101に示した3点曲げ変位荷重計算処理について説明する。図24は、3点曲げ変位荷重計算処理の処理手順を示すフローチャートである。図24に示すように、3点曲げ変位荷重計算部110は、試験片が設定された場合に(ステップS201)、試験片の測定条件を取得する(ステップS202)。
【0105】
そして、3点曲げ変位荷重計測部110は、試験装置を制御して、荷重と変位との関係を計測し(ステップS203)、荷重変位曲線を決定する(ステップS204)。
【0106】
次に、図23のステップS102に示した初期データ補正処理について説明する。図25は、初期データ補正処理の処理手順を示すフローチャートである。図25に示すように、初期データ調整部120は、荷重変位測定データを取得し、データ数が20以下であるか否かを判定する(ステップS301)。
【0107】
初期データ調整部120は、データ数が20以下の場合には(ステップS302,Yes)、第2の処理を選択し(ステップS303)、荷重変位測位データを複数のエリアに分割し(ステップS304)、初期エリアのデータを削除する(ステップS305)。
【0108】
そして、初期データ調整部120は、残りのデータに対して最小2乗近似を行って直線を算出し(ステップS306)、算出した直線とX座標線との交点を求め(ステップS307)、交点の座標がX座標の原点となるようにデータをシフトする(ステップS308)。
【0109】
ところで、初期データ調整部120は、荷重変位測定データのデータ数が20よりも大きい場合には(ステップS302,No)、第1の処理または第2の処理を選択する(ステップS309)。第2の処理を選択した場合には(ステップS310,No)、ステップS304に移行する。
【0110】
一方、第1の処理を選択した場合には(ステップS310,Yes)、初期データ調整部120は、荷重変位測定データに対して最小2乗近似を行って直線を算出し(ステップS311)、近似直線と荷重変位測定データに対応した曲線との交点を検出する(ステップS312)。そして、初期データ調整部120は、交点よりも小さいデータを削除し(ステップS313)、ステップS306に移行する。
【0111】
次に、図23のステップS103に示した弾性率推定処理について説明する。図26は、弾性率推定処理の処理手順を示すフローチャートである。図26に示すように、弾性率推定部130は、Pmaxを指定(あるいは、管理者からPmaxを取得)し(ステップS401)、I=0、k=0、P=0を初期値とし、傾きAを計算する(ステップS402)。ステップS402において、弾性率推定部130は、Δu/ΔFによりAを算出する。
【0112】
続いて、弾性率推定部130は、I=I+1、k=k+1とし、傾きAと傾き平均Bとを算出し(ステップS403)、AがBよりも大きいか否かを判定し(ステップS404)、AがB以下の場合には(ステップS405,No)、ステップS403に移行する。
【0113】
一方、弾性率推定部130は、AがBよりも大きい場合には(ステップS405,Yes)、P=P+1とし(ステップS406)、PがPmaxよりも大きいか否かを判定する(ステップS407)。PがPmaxよりも大きくない場合には(ステップS408,No)、ステップS403に移行する。一方、PがPmaxよりも大きい場合には(ステップS408,Yes)、弾性率EをBk−pに設定する(ステップS409)。
【0114】
次に、図23のステップS104に示した形状非線形理論解計算処理について説明する。図27は、形状非線形理論解計算処理の処理手順を示すフローチャートである。図27に示すように、降伏応力推定部140は、調整済みデータ、弾性率、試験片固定条件を取得し(ステップS501)、固定条件は、両端固定か両端支持かを判定する(ステップS502)。
【0115】
固定条件が両端固定の場合には(ステップS503,Yes)、降伏応力推定部140は、式(10)または式(13)に基づいて理論変位(反り)を算出する(ステップS504)。一方、固定条件が両端支持の場合には(ステップS503,No)、実測値(調整済みデータ)の幾何学非線形エリアを指定する(ステップS505)。
【0116】
降伏応力推定部140は、μ=0、Δμ=0.1、k=0、μmax=1を初期値に設定し(ステップS506)、式(9)、式(14)に基づいて、理論変位uを算出し(ステップS507)、誤差2乗和Δを算出する(ステップS508)。Δは、Σ(u−u(i=1〜m)により算出される。
【0117】
降伏応力推定部140は、μ=μ+Δμ、k=k+1に設定し(ステップS509)、μがμmaxよりも小さいか否かを判定し(ステップS510)、μがμmax以上の場合には(ステップS511,No)、ステップS507に移行する。
【0118】
一方、μmaxがμよりも大きい場合には(ステップS511,Yes)、Δの最小値を与えるμを摩擦係数として算出し(ステップS512)、式(9)、式(14)から理論変位(反り)を算出する(ステップS513)。
【0119】
次に、図23のステップS105に示した降伏応力計算処理について説明する。図28は、降伏応力計算処理の処理手順を示すフローチャートである。図28に示すように、降伏応力推定部140は、変位の理論値を取得し(ステップS601)、変位の実測値と理論地との誤差を比較する(ステップS602)。ステップS601において、実測値をy0、理論値をyとすると誤差dは、100×(y−y0)/y0により算出される。
【0120】
降伏応力推定部140は、誤差閾値β%を取得し(ステップS603)、誤差が誤差閾値以上か否かを判定し(ステップS604)、誤差が誤差閾値β%未満の場合には(ステップS605,No)、ステップS602に移行する。降伏応力推定部140は、誤差が誤差閾値β%以上の場合には(ステップS605,Yes)、降伏応力を算出する(ステップS606)。
【0121】
次に、図23のステップS106に示したパラメータ推定処理について説明する。図29は、パラメータ推定処理の処理手順を示すフローチャートである。図29に示すように、パラメータ推定部150は、調整済みデータ(反りの実測値)、弾性率、降伏応力を取得し(ステップS701)、パラメータα、nの初期物性値を設定する(ステップS702)。
【0122】
パラメータ推定部150は、各パラメータの水準を設定し(ステップS703)、水準の組合せを決定し(ステップS704)、有限要素法を用いて、各ケースに対応した荷重と変位との関係を算出し(ステップS705)、実測値と理論値との誤差比較を行い、パラメータα、nを算出する(ステップS706)。
【0123】
上述してきたように、本実施例にかかる計測装置100は、試験片に対する3点曲げ試験の試験結果を取得し、弾性率推定部130が試験結果に含まれる荷重と変位との関係を示す曲線の傾きに基づいて試験片の弾性率を算出する。そして、降伏応力推定部140が、試験片に加える荷重と変位との理論値を異なる摩擦係数毎に算出し、算出した各理論値のうち、試験結果との誤差が最小となる理論値を判定するとともに、判定した理論値と試験結果とを基にして降伏応力を算出する。また、パラメータ推定部160が、弾性率および降伏応力に基づいて試験片の応力とひずみとの関係を算出するので、3点曲げ試験から得られる変位−荷重曲線から材料が降伏応力を超えた後の応力ひずみ特性を精度よく求めることができる。
【0124】
ところで、本実施例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部あるいは一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0125】
また、実施例に示した計測装置100の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部がCPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0126】
図30は、実施例に示した計測装置100に対応するコンピュータのハードウェア構成を示す図である。図30に示すように、このコンピュータ(計測装置)10は、入力装置11、モニタ12、RAM(Random Access Memory)13、ROM(Read Only Memory)14、3点曲げ試験を行う試験装置15、記憶媒体からデータを読み取る媒体読取装置16、CPU(Central Processing Unit)17、HDD(Hard Disk Drive)18をバス19で接続している。
【0127】
そして、HDD18には、上述した計測装置100の機能と同様の機能を発揮する計測プログラム18bが記憶されている。CPU17が、計測プログラム18bを読み出して実行することにより、計測プロセス17aが起動される。ここで、計測プロセス17aは、図1に示した3点曲げ変位荷重計測部110、初期データ調整部120、弾性率推定部130、降伏応力推定部140、パラメータ推定部150、FEM解析部160、応力ひずみ線出力部170に対応する。
【0128】
なお、HDD18は、試験片の寸法、試験片の固定条件等を含む各種データ18aを記憶している。CPU17は、HDD18に記憶された各種データ18aをRAM13に読み出し、各種データ13aおよび試験装置15の試験結果に基づいて、試験片にかかる応力とひずみとの関係を算出する。
【0129】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0130】
(付記1)試験片に対する3点曲げ試験の試験結果を取得し、当該試験結果に含まれる荷重と変位との関係を示す曲線の傾きに基づいて前記試験片の弾性率を算出する弾性率算出部と、
前記試験片の端が支持されている場合に、前記試験片に加える荷重と変位との理論値を異なる摩擦係数毎に算出し、算出した各理論値のうち、前記試験結果との誤差が最小となる理論値を選択する理論値選択部と、
前記理論値選択部に選択された理論値と前記試験結果とを基にして、当該理論値と前記試験結果との誤差が規定値以上となる荷重を降伏開始荷重として判定し、判定した降伏開始荷重に基づいて前記試験片の降伏応力を算出する降伏応力算出部と、
前記弾性率および前記降伏応力に基づいて、前記試験片の応力とひずみとの関係を算出する応力ひずみ算出部と
を備えたことを特徴とする計測装置。
【0131】
(付記2)前記弾性率算出部は、前記曲線の異なる地点での傾きを順次算出し、前記傾きを算出する度に各地点の傾きの平均値と各地点の傾きとを比較して、各地点の傾きのうち、前記平均値を所定回数連続で上回る傾きを判定することで前記弾性率を算出することを特徴とする付記1に記載の計測装置。
【0132】
(付記3)前記理論値選択部は、前記試験片の端が固定されている場合に、前記試験片の寸法および弾性率に基づいて単一の理論値を算出することを特徴とする付記1または2に記載の計測装置。
【0133】
(付記4)前記応力ひずみ算出部は、応力とひずみとの関係を示す所定のモデル式に前記弾性率および前記降伏応力を代入し、前記モデル式に含まれる未定定数の値を順次変更しながら、応力とひずみとの関係を算出する第1算出部と、有限要素法を用いて前記応力とひずみとの関係から前記試験片に加える荷重と当該荷重に対する変位との理論値をそれぞれ算出し、算出した理論値と前記試験結果との誤差が最小となる理論値に対応する未定定数の値を特定する第2算出部と、前記第2算出部が算出した未定定数の値を前記モデル式に代入することで、前記試験片の応力とひずみとの関係を算出する第3算出部とを備えたことを特徴とする計測装置。
【0134】
(付記5)計測装置が、
試験片に対する3点曲げ試験の試験結果を試験装置から取得し、当該試験結果に含まれる荷重と変位との関係を示す曲線の傾きに基づいて前記試験片の弾性率を算出する弾性率算出ステップと、
前記試験片の端が支持されている場合に、前記試験片に加える荷重と変位との理論値を異なる摩擦係数毎に算出し、算出した各理論値のうち、前記試験結果との誤差が最小となる理論値を選択する理論値選択ステップと、
前記理論値選択ステップにおいて選択された理論値と前記試験結果とを基にして、当該理論値と前記試験結果との誤差が規定値以上となる荷重を降伏開始荷重として判定し、判定した降伏開始荷重に基づいて前記試験片の降伏応力を算出する降伏応力算出ステップと、
前記弾性率および前記降伏応力に基づいて、前記試験片の応力とひずみとの関係を算出する応力ひずみ算出ステップと
を含んだことを特徴とする計測方法。
【0135】
(付記6)前記弾性率算出ステップは、前記曲線の異なる地点での傾きを順次算出し、前記傾きを算出する度に各地点の傾きの平均値と各地点の傾きとを比較して、各地点の傾きのうち、前記平均値を所定回数連続で上回る傾きを判定することで前記弾性率を算出することを特徴とする付記5に記載の計測方法。
【0136】
(付記7)前記理論値選択ステップは、前記試験片の端が固定されている場合に、前記試験片の寸法および弾性率に基づいて単一の理論値を算出することを特徴とする付記5または6に記載の計測方法。
【0137】
(付記8)前記応力ひずみ算出ステップは、応力とひずみとの関係を示す所定のモデル式に前記弾性率および前記降伏応力を代入し、前記モデル式に含まれる未定定数の値を順次変更しながら、応力とひずみとの関係を算出する第1算出ステップと、有限要素法を用いて前記応力とひずみとの関係から前記試験片に加える荷重と当該荷重に対する変位との理論値をそれぞれ算出し、算出した理論値と前記試験結果との誤差が最小となる理論値に対応する未定定数の値を特定する第2算出ステップと、前記第2算出ステップが算出した未定定数の値を前記モデル式に代入することで、前記試験片の応力とひずみとの関係を算出する第3算出ステップとを含んだことを特徴とする計測方法。
【0138】
(付記9)試験片に対する3点曲げ試験の試験結果を試験装置から取得し、当該試験結果に含まれる荷重と変位との関係を示す曲線の傾きに基づいて前記試験片の弾性率を算出する弾性率算出手順と、
前記試験片の端が支持されている場合に、前記試験片に加える荷重と変位との理論値を異なる摩擦係数毎に算出し、算出した各理論値のうち、前記試験結果との誤差が最小となる理論値を判定する理論値判定手順と、
前記理論値判定手順において判定された理論値と前記試験結果とを基にして、当該理論値と前記試験結果との誤差が規定値以上となる荷重を降伏開始荷重として判定し、判定した降伏開始荷重に基づいて前記試験片の降伏応力を算出する降伏応力算出手順と、
前記弾性率および前記降伏応力に基づいて、前記試験片の応力とひずみとの関係を算出する応力ひずみ算出手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする計測プログラム。
【0139】
(付記10)前記弾性率算出手順は、前記曲線の異なる地点での傾きを順次算出し、前記傾きを算出する度に各地点の傾きの平均値と各地点の傾きとを比較して、各地点の傾きのうち、前記平均値を所定回数連続で上回る傾きを判定することで前記弾性率を算出することを特徴とする付記9に記載の計測プログラム。
【0140】
(付記11)前記理論値判定手順は、前記試験片の端が固定されている場合に、前記試験片の寸法および弾性率に基づいて単一の理論値を算出することを特徴とする付記9または10に記載の計測プログラム。
【0141】
(付記12)前記応力ひずみ算出手順は、応力とひずみとの関係を示す所定のモデル式に前記弾性率および前記降伏応力を代入し、前記モデル式に含まれる未定定数の値を順次変更しながら、応力とひずみとの関係を算出する第1算出手順と、有限要素法を用いて前記応力とひずみとの関係から前記試験片に加える荷重と当該荷重に対する変位との理論値をそれぞれ算出し、算出した理論値と前記試験結果との誤差が最小となる理論値に対応する未定定数の値を特定する第2算出手順と、前記第2算出手順が算出した未定定数の値を前記モデル式に代入することで、前記試験片の応力とひずみとの関係を算出する第3算出手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする計測プログラム。
【符号の説明】
【0142】
10 コンピュータ
11 入力装置
12 モニタ
13 RAM
13a,18a 各種データ
14 ROM
15 試験装置
16 媒体読取装置
17 CPU
18 HDD
18b 計測プログラム
100 計測装置
110 3点曲げ変位荷重計測部
120 初期データ調整部
130 弾性率推定部
140 降伏応力推定部
150 パラメータ推定部
160 FEM解析部
170 応力ひずみ線出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片に対する3点曲げ試験の試験結果を取得し、当該試験結果に含まれる荷重と変位との関係を示す曲線の傾きに基づいて前記試験片の弾性率を算出する弾性率算出部と、
前記試験片の端が支持されている場合に、前記試験片に加える荷重と変位との理論値を異なる摩擦係数毎に算出し、算出した各理論値のうち、前記試験結果との誤差が最小となる理論値を選択する理論値選択部と、
前記理論値選択部に選択された理論値と前記試験結果とを基にして、当該理論値と前記試験結果との誤差が規定値以上となる荷重を降伏開始荷重として判定し、判定した降伏開始荷重に基づいて前記試験片の降伏応力を算出する降伏応力算出部と、
前記弾性率および前記降伏応力に基づいて、前記試験片の応力とひずみとの関係を算出する応力ひずみ算出部と
を備えたことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記弾性率算出部は、前記曲線の異なる地点での傾きを順次算出し、前記傾きを算出する度に各地点の傾きの平均値と各地点の傾きとを比較して、各地点の傾きのうち、前記平均値を所定回数連続で上回る傾きを判定することで前記弾性率を算出することを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記理論値選択部は、前記試験片の端が固定されている場合に、前記試験片の寸法および弾性率に基づいて単一の理論値を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記応力ひずみ算出部は、応力とひずみとの関係を示す所定のモデル式に前記弾性率および前記降伏応力を代入し、前記モデル式に含まれる未定定数の値を順次変更しながら、応力とひずみとの関係を算出する第1算出部と、有限要素法を用いて前記応力とひずみとの関係から前記試験片に加える荷重と当該荷重に対する変位との理論値をそれぞれ算出し、算出した理論値と前記試験結果との誤差が最小となる理論値に対応する未定定数の値を特定する第2算出部と、前記第2算出部が算出した未定定数の値を前記モデル式に代入することで、前記試験片の応力とひずみとの関係を算出する第3算出部とを備えたことを特徴とする計測装置。
【請求項5】
計測装置が、
試験片に対する3点曲げ試験の試験結果を試験装置から取得し、当該試験結果に含まれる荷重と変位との関係を示す曲線の傾きに基づいて前記試験片の弾性率を算出する弾性率算出ステップと、
前記試験片の端が支持されている場合に、前記試験片に加える荷重と変位との理論値を異なる摩擦係数毎に算出し、算出した各理論値のうち、前記試験結果との誤差が最小となる理論値を選択する理論値選択ステップと、
前記理論値選択ステップにおいて選択された理論値と前記試験結果とを基にして、当該理論値と前記試験結果との誤差が規定値以上となる荷重を降伏開始荷重として判定し、判定した降伏開始荷重に基づいて前記試験片の降伏応力を算出する降伏応力算出ステップと、
前記弾性率および前記降伏応力に基づいて、前記試験片の応力とひずみとの関係を算出する応力ひずみ算出ステップと
を含んだことを特徴とする計測方法。
【請求項6】
前記弾性率算出ステップは、前記曲線の異なる地点での傾きを順次算出し、前記傾きを算出する度に各地点の傾きの平均値と各地点の傾きとを比較して、各地点の傾きのうち、前記平均値を所定回数連続で上回る傾きを判定することで前記弾性率を算出することを特徴とする請求項5に記載の計測方法。
【請求項7】
前記理論値選択ステップは、前記試験片の端が固定されている場合に、前記試験片の寸法および弾性率に基づいて単一の理論値を算出することを特徴とする請求項5または6に記載の計測方法。
【請求項8】
前記応力ひずみ算出ステップは、応力とひずみとの関係を示す所定のモデル式に前記弾性率および前記降伏応力を代入し、前記モデル式に含まれる未定定数の値を順次変更しながら、応力とひずみとの関係を算出する第1算出ステップと、有限要素法を用いて前記応力とひずみとの関係から前記試験片に加える荷重と当該荷重に対する変位との理論値をそれぞれ算出し、算出した理論値と前記試験結果との誤差が最小となる理論値に対応する未定定数の値を特定する第2算出ステップと、前記第2算出ステップが算出した未定定数の値を前記モデル式に代入することで、前記試験片の応力とひずみとの関係を算出する第3算出ステップとを含んだことを特徴とする計測方法。
【請求項9】
試験片に対する3点曲げ試験の試験結果を試験装置から取得し、当該試験結果に含まれる荷重と変位との関係を示す曲線の傾きに基づいて前記試験片の弾性率を算出する弾性率算出手順と、
前記試験片の端が支持されている場合に、前記試験片に加える荷重と変位との理論値を異なる摩擦係数毎に算出し、算出した各理論値のうち、前記試験結果との誤差が最小となる理論値を判定する理論値判定手順と、
前記理論値判定手順において判定された理論値と前記試験結果とを基にして、当該理論値と前記試験結果との誤差が規定値以上となる荷重を降伏開始荷重として判定し、判定した降伏開始荷重に基づいて前記試験片の降伏応力を算出する降伏応力算出手順と、
前記弾性率および前記降伏応力に基づいて、前記試験片の応力とひずみとの関係を算出する応力ひずみ算出手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする計測プログラム。
【請求項10】
前記弾性率算出手順は、前記曲線の異なる地点での傾きを順次算出し、前記傾きを算出する度に各地点の傾きの平均値と各地点の傾きとを比較して、各地点の傾きのうち、前記平均値を所定回数連続で上回る傾きを判定することで前記弾性率を算出することを特徴とする請求項9に記載の計測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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