説明

計算機エミュレーション装置、計算機及びプログラム

【課題】正しい操作手順を示す教材を作成すること。
【解決手段】計算式を入力するための入力部14と、所定の演算子と、キーボードの入力キーに対応する文字からなる文字列とを対応付けて記憶する記憶部13と、記憶部13に記憶された演算子が入力部14により入力された計算式中に含まれる場合、当該計算式中に含まれる演算子と対応する文字列を記憶部13から読み出し、計算式中に含まれる演算子を読み出された文字列に変換し、当該変換された文字列を含む計算式を、キーボードの入力キーの操作手順情報に対応するキー操作列として記憶部13に読み出し可能に記憶させるCPU11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計算機エミュレーション装置、計算機及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、関数計算などの多様多種な計算処理が行える関数電卓と称する小型電子計算機を、計算の学習用として利用することが行われている。
【0003】
このような関数電卓は、例えば、PC(Personal Computer)上で機能するエミュレータによって模倣動作させることができる。
【0004】
図12は、関数電卓のエミュレータをPC上で機能させた場合の動作画面を示す図である。これによれば、PC画面上の左側に関数電卓を模倣表示したエミュレーション画面GEが表示され、そのキーボードKBの所望の入力キーをマウスカーソルによってクリック操作することで、当該キー操作に応じた計算処理が実行され、計算動作の内容がディスプレイDPに表示される。また、この際、キーボードKBにおけるキー入力の履歴データをログデータとして記憶部に記録し、当該記録されたログデータをログ画面GLに表示させることができる。
【0005】
例えば、図12に示す動作画面において、キーボードKBを介して計算練習が実行されると、計算結果の解データと予め登録された正解データとの一致/不一致が比較判断されOK表示又はNG表示がログ画面GL上に表示される技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。これにより、ログ画面GL上の練習問題に従った計算結果の解データが正解か否かを簡単に確認することができる。
【0006】
ところで、関数電卓の操作方法を説明するために、どのようなキー操作を行うべきかを記載した教材を作成することが行われている。この教材の作成にあたって、ログデータを利用することができれば、教材作成の手間を省くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−116509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ログデータは、キー入力の履歴をそのまま再現したデータである。このため、キー入力の途中でタイプミスがあった場合や、不要な操作を経てキー入力された場合なども、全てのキー入力の履歴として記録されてしまう。したがって、キー入力されたログデータを教材に使用すると、不要なデータも含んでしまうこととなるため、正しい操作手順を示す教材に適用することはできなかった。
【0009】
また、例えば、PCと通信接続された外部装置から数式などのデータを受信し、当該受信されたデータを教材に使用する場合もある。この場合、受信されたデータは、外部装置において既に入力された入力済みのデータであるので、PCにログデータとしては記録されていない。したがって、PCに記録されていないデータを抽出して教材に利用することはできない。このため、外部装置からデータを受信した場合、正しい操作手順を示す教材を作成することは難しかった。
【0010】
本発明の課題は、正しい操作手順を示す教材を作成することを可能とする計算機エミュレーション装置、情報処理システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明の計算機エミュレーション装置は、
計算機のキーボード及び表示部を表示画面上に模倣表示させ、当該キーボードの指示に応じた計算動作の内容を前記表示部に表示させる計算機エミュレーション装置であって、
計算式を入力するための入力手段と、
所定の演算子と、前記キーボードの入力キーに対応する文字からなる文字列とを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された演算子が前記入力手段により入力された計算式中に含まれる場合、当該計算式中に含まれる前記演算子と対応する前記文字列を前記記憶手段から読み出し、前記計算式中に含まれる前記演算子を前記読み出された文字列に変換し、当該変換された文字列を含む前記計算式を、前記キーボードの入力キーの操作手順情報に対応するキー操作列として前記記憶手段に読み出し可能に記憶させる制御手段と、
を備える。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の計算機エミュレーション装置において、
前記記憶手段が記憶する前記演算子には、
複数種類の前記文字列と対応付けられた演算子が含まれ、
前記制御手段は、
前記記憶手段に記憶された複数種類の文字列と対応付けられた演算子が前記入力手段により入力された計算式中に含まれる場合、被演算データが複数の演算要素を含むか否かに基づいて、前記複数種類の文字列の中から文字列を選択し、当該選択された文字列を前記記憶手段から読み出す。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の計算機エミュレーション装置において、
前記制御手段は、
前記入力手段により入力された計算式の解を演算し、当該演算された解及び前記計算式のうち、1次元表示の部分はテキストデータとして前記記憶手段に読み出し可能に記憶させ、2次元表示の部分は画像データとして前記記憶手段に読み出し可能に記憶させる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の計算機エミュレーション装置において、
前記記憶手段に記憶された前記キー操作列を読み出し、当該読み出されたキー操作列を文書編集用の文書エディタに貼り付け、当該貼り付けられたキー操作列を、前記キーボードの入力キーの操作手順情報に変換する変換制御手段をさらに備える。
【0015】
請求項5に記載の発明の計算機は、
計算式を入力するための入力手段と、
所定の演算子と、前記キーボードの入力キーに対応する文字からなる文字列とを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された演算子が前記入力手段により入力された計算式中に含まれる場合、当該計算式中に含まれる前記演算子と対応する前記文字列を前記記憶手段から読み出し、前記計算式中に含まれる前記演算子を前記読み出された文字列に変換し、当該変換された文字列を含む前記計算式を、前記キーボードの入力キーの操作手順情報に対応するキー操作列として前記記憶手段に読み出し可能に記憶させる制御手段と、
を備える。
【0016】
請求項6に記載の発明のプログラムは、
計算機のキーボード及び表示部を表示画面上に模倣表示させ、当該キーボードの指示に応じた計算動作の内容を前記表示部に表示させる計算機エミュレーションプログラムであって、
コンピュータを、
計算式を入力するための入力手段、
所定の演算子と、前記キーボードの入力キーに対応する文字からなる文字列とを対応付けて記憶する記憶手段、
前記記憶手段に記憶された演算子が前記入力手段により入力された計算式中に含まれる場合、当該計算式中に含まれる前記演算子と対応する前記文字列を前記記憶手段から読み出し、前記計算式中に含まれる前記演算子を前記読み出された文字列に変換し、当該変換された文字列を含む前記計算式を、前記キーボードの入力キーの操作手順情報に対応するキー操作列として前記記憶手段に読み出し可能に記憶させる制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、正しい操作手順を示す教材を作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る実施の形態の計算機エミュレーション装置1の内部構成を示す図である。
【図2】計算機エミュレータプログラム内の構成を示す図である。
【図3】演算子変換テーブルを示す図である。
【図4】キーフォントテーブルを示す図である。
【図5】前記計算機エミュレーション装置1におけるキー操作列出力処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】前記計算機エミュレーション装置1におけるキー操作列出力処理に伴う表示動作及び内部動作を示す図(その1)である。
【図7】前記計算機エミュレーション装置1におけるキー操作列出力処理に伴う表示動作及び内部動作を示す図(その2)である。
【図8】前記計算機エミュレーション装置1におけるキー操作列算出処理を示すフローチャートである。
【図9】キー操作列出力処理によりテキストデータと画像データとが出力される例を示す図である。
【図10】貼り付け処理を示すフローチャートである。
【図11】貼り付け処理に伴う表示動作を示す図である。
【図12】関数電卓のエミュレータをPC上で機能させた場合の従来の動作画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態の一例を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0020】
図1〜図12を参照して、本発明に係る実施の形態を説明する。先ず、図1を参照して、本発明に係る計算機エミュレーション装置1の内部構成を説明する。計算機エミュレーション装置1は、グラフ描画機能を備えた関数電卓の計算機エミュレータプログラムをインストールしたPCによって実施される。すなわち、PCが計算機エミュレーション装置1としての機能を有する。
【0021】
図1に示すように、計算機エミュレーション装置1は、制御部であるCPU(Central Processing Unit)11と、主記憶部であるRAM(Random Access Memory)12と、記憶部13と、入力部14と、表示部15と、記憶媒体読み取り部16と、通信部17と、を備えて構成されている。
【0022】
CPU11は、計算機エミュレーション装置1の各部を中央制御する。具体的には、CPU11は、記憶部13に記憶されているシステムプログラム及び各種アプリケーションプログラムの中から指定されたプログラムをRAM12に展開し、RAM12に展開されたプログラムとの協働で、各種処理を実行する。
【0023】
具体的には、CPU11は、後述するキー操作列出力プログラムとの協働により、記憶部13に記憶された演算子が入力部14により入力された計算式中に含まれる場合、当該計算式中に含まれる演算子と対応する文字列を記憶部13から読み出し、計算式中に含まれる演算子を読み出された文字列に変換する。そして、CPU11は、当該変換された文字列を含む計算式を、表示部15に模倣表示された計算機のキーボード(図12参照)の入力キーの操作手順に対応するキー操作列として記憶部13に読み出し可能に記憶させる。
【0024】
RAM12は、情報を一時的に格納する揮発性のメモリであり、実行される各種プログラムやこれら各種プログラムに係るデータ等を格納する複数のワークエリアを有する。
【0025】
記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Flash Solid State Drive)等により構成される不揮発性のメモリである。記憶部13は、各種プログラム及び各種データを記憶する。記憶部13には、計算機エミュレータプログラム、文書作成プログラム及び各種処理プログラムが記憶される。
【0026】
計算機エミュレータプログラムは、グラフ描画機能を備えた関数電卓のエミュレータプログラムである。文書作成プログラムは、各種文書を作成することのできるプログラムであり、本実施の形態においては、学習教材の作成のために用いられる。文書作成プログラムには、貼り付けプログラム(図10参照)が含まれる。また、フォント設定に応じて各種のフォント形式で文字を表示させることができ、キーフォントテーブルを読み込めば、キーフォントを表示することも可能である。各種処理プログラムは、PCを動作させるための様々なプログラムである。
【0027】
入力部14は、カーソルキー、文字・数字入力キー及び各種機能キーなどを備えたキーボードを含む構成とし、操作者によりキーボードで押下された押下信号をCPU11に出力する。また、入力部14は、マウスなどのポインティングデバイスを含む構成としてもよい。例えば、図11に示す動作画面において、入力部14を介して、キーボードKBの入力キーがクリック操作されることにより、計算式が入力される。
【0028】
表示部15は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)等で構成され、CPU11からの表示信号に従って画面表示を行う。例えば、計算機エミュレータプログラムが動作されると、表示部15には、図11に示す計算機のキーボードKB及び計算機の表示部(ディスプレイDP)を模倣表示した動作画面が表示される。
【0029】
記録媒体読み取り部16は、CD(Compact Disc)、メモリカードなどの外部記録媒体の読み取り機構等を備え、CPU11の指示により、セットされる外部記録媒体に記録された情報を読み取る。
【0030】
通信部17は、接続される通信ネットワーク上の外部機器と情報を送受信する。
【0031】
次に、図2を参照して、計算機エミュレータプログラムの内部構成について説明する。図2に示すように、計算機エミュレータプログラムには、キー操作列出力プログラム(図5参照)、演算子変換テーブル(図3参照)、キーフォントテーブル(図4参照)が含まれる。キー操作列出力プログラム、演算子変換テーブル及びキーフォントテーブルの詳細な説明については、後述する。
【0032】
次に、図3を参照して、演算子変換テーブル21について説明する。図3に示すように、演算子変換テーブル21は、演算子22と、優先情報23と、文字列24とを有し、それぞれが対応付けて記憶されている。
【0033】
演算子22は、入力された数式に含まれる演算子を示す。例えば、図3に示すように演算子22が√(〜)である場合、√が演算子に該当する。また、(〜)は、演算子の演算対象である被演算データに該当する。
【0034】
優先情報23は、演算子を文字列に変換する際の優先情報を示す。例えば、図3に示すように、演算子22が(〜)/(・・・)である場合、(〜)/(・・・)に対して、2つの文字列(〜)A・・・$と、A〜%・・・$とが対応付けて記憶されている。このとき、例えば、被演算データ(〜)が図6(a)に示す(√(2+3×6))であったとする。この場合、√(2+3×6)は、√に対する演算のみで実現されるので、1つの演算要素で構成される。すなわち、優先情報23は、「(〜)が1つの演算要素」となる。この場合、(〜)/(・・・)は、文字列(〜)A・・・$へ優先的に変換される。
また、例えば、被演算データ(〜)が図7(a)に示す(√(2+3)×6)であったとする。この場合、√(2+3)×6は、√に対する演算と、×6の乗算とで実現されるので、2つの演算要素で構成される。すなわち、優先情報23は、「(〜)が複数の演算要素」となる。この場合、(〜)/(・・・)は、文字列A〜%・・・$に優先的に変換される。
【0035】
文字列24は、関数電卓のキーボードKB(図12参照)の入力キー(例えば、「×」等の入力キー:図4に示すキーフォントに相当)に対応する文字32(図4参照)からなる文字列である。
【0036】
以上のような優先情報23を持つことで、複数のキー操作で同じ演算が表現できる場合には、より自然な入力に近いキー操作に対応する文字からなる文字列に変換することができる。例えば上記のように分数を表現する場合には、先に分子を入力してから分数記号に相当するキーフォントを入力しその後分母を入力する方法1と、先に分数記号に相当するキーフォントを入力してから分子と分母を入力する方法2とがある。
分子が1つの演算要素である場合には方法1の方が自然である。従って上記の通り、方法1に対応する文字列(〜)A・・・$が優先される。一方、分子が複数の演算要素である場合に方法1を用いるためには、分子全体を括弧で括って入力した上で分数記号に相当するキーフォントを入力する必要があり面倒であるので、この場合には方法2の方が自然となる。従って上記の通り、方法2に対応する文字列A〜%・・・$が優先される。
【0037】
次に、図4を参照して、キーフォントテーブル31について説明する。図4に示すように、キーフォントテーブル31は、文字32と、キーフォント33とを有し、それぞれが対応付けて記憶されている。
【0038】
文字32は、文字列24を構成する文字である。キーフォント33は、関数電卓のキーボードKB(図12参照)の入力キーを示すフォントデータである。
【0039】
次に、図5〜図9を参照して、計算機エミュレーション装置1で実行されるキー操作列出力処理を説明する。キー操作列出力処理は、ユーザにより入力された計算式のキー操作列を算出し、算出されたキー操作列を記憶部13に記憶させる処理である。
【0040】
計算機エミュレーション装置1において、例えば、ユーザにより入力部14を介してキー操作列出力処理の実行指示が入力されたことをトリガとして、記憶部13から読み出されて適宜RAM12に展開されたキー操作列出力プログラムと、CPU11との協働でキー操作列出力処理が実行される。
【0041】
先ず、計算機エミュレータプログラムが起動される(ステップS1)。計算機エミュレータプログラムが起動されると、例えば、図12に示すように、計算機エミュレータプログラムの動作画面が表示部15に表示される。そして、計算機エミュレータプログラムの動作画面において、入力部14を介して、ユーザによる計算式の入力が受け付けられる。そして、入力された計算式が表示される(ステップS2)。具体的には、ユーザにより入力された計算式がログ画面GL(図12参照)に表示される。
【0042】
ステップS2の実行後、入力された計算式の計算が実行され、実行された計算の計算結果が表示される(ステップS3)。例えば、図6(a)又は図7(a)に示すような計算式及び計算結果(計算式の解)がログ画面GL(図12参照)に表示される。
【0043】
ステップS3の実行後、ユーザから入力部14を介して教材作成指示が受け付けられたか否かが判別される(ステップS4)。ステップS4において、教材作成指示が受け付けられなかったと判別された場合(ステップS4;NO)、キー操作列出力処理は終了される。ステップS4において、教材作成指示が受け付けられたと判別された場合(ステップS4;YES)、キー操作列算出処理が実行される(ステップS5)。
【0044】
ここで、図8を参照して、キー操作列算出処理について説明する。
先ず、キー操作列出力処理のステップS2において表示された計算式全体が1次元表示からなるか否かが判別される(ステップS11)。ここで、1次元表示とは、横方向1列に数値や演算子等が配された表示を指し、「+」、「×」等の演算子、整数、小数などで表される1列の表示形態のことをいう。例えば、図9(a)に示す「1+」の部分は、1次元表示に該当する。また、2次元表示とは、1次元表示とは異なり、上下方向に2以上の数値や演算子等が配された表示を指し、括線を隔てて上に分子、下に分母を配してなる分数や、添え字付きのΣなどが該当する。例えば、図9(a)に示す「1/2」の部分は、2次元表示に該当する。
【0045】
ステップS11において否と判別された場合(ステップS11;NO)、計算式が1次元表示からなるデータに変換され、末尾に「p」が付加される(ステップS12)。例えば、図6(b)又は図7(b)に示すように、計算式が1次元表示からなるデータに変換される。そして、変換された式の末尾に「p」が付加される。この「p」の付加は、後述する貼り付け処理においてキーフォント「=」を末尾に付加するための処理である。なお、図6(b)や図7(b)は内部処理を明示するために図示したものであり、表示部15に表示される内容を示したものではない。図6(c)〜図6(e)、図7(c)〜図7(e)も同様である。
【0046】
ステップS12の実行後、演算子変換テーブル21の演算子22が参照され、演算子変換テーブル21に記憶されている演算子22が計算式に含まれるか否かが判別される(ステップS13)。ステップS13において、演算子変換テーブル21に記憶されている演算子22が計算式に含まれないと判別された場合(ステップS13;NO)、キー操作列算出処理は終了され、キー操作列出力処理に戻る。
【0047】
ステップS13において、演算子変換テーブル21に記憶されている演算子22が計算式に含まれると判別された場合(ステップS13;YES)、演算子22に対応する文字列が複数あるか否かが判別される(ステップS14)。例えば、計算式に演算子22として(〜)/(・・・)が含まれる場合、演算子変換テーブル21(図3参照)には、当該演算子(〜)/(・・・)に対応する文字列は(〜)A・・・$と、A〜%・・・$と2つ(複数)記憶されている。この場合、本ステップではYESと判別される。
【0048】
ステップS14において、対応する文字列が複数ないと判別された場合(ステップS14;NO)、後述するステップS16に移行される。
【0049】
ステップS14において、対応する文字列が複数あると判別された場合(ステップS14;YES)、優先情報の条件に応じて文字列が決定される(ステップS15)。例えば、ステップS12により図6(b)に示す計算式に変換されていた場合、被演算データである分子の(〜)は√(2+3×6)となる。この場合、被演算データは、演算要素が1つしかないので、文字列(〜)A・・・$が優先的に選択され、当該選択された文字列(〜)A・・・$が記憶部13から読み出される。そして、演算子22は、読み出された文字列(〜)A・・・$に変換される。
また、ステップS12により図7(b)に示す計算式に変換されていた場合、被演算データである分子の(〜)は、√(2+3)×6となる。この場合、被演算データは、演算要素が2つあるので、文字列A〜%・・・$が優先的に選択され、当該選択された文字列A〜%・・・$が記憶部13から読み出される。そして、演算子22は、読み出された文字列A〜%・・・$に変換される。
【0050】
ステップS15の実行後、コマンド(演算子)が対応する文字列に変換される(ステップS16)。例えば、ステップS12により、計算式が図6(b)に示す式に変換された場合、先ず、演算子22である×が対応する文字列Oに変換される。具体的には、記憶部13に記憶されている演算子変換テーブル21から文字列Oが読み出され、演算子22である×が読み出された文字列Oに変換される。これにより、計算式は√(2+3O6)/(4O6)pとなる(図6(c)参照)。そして、演算子√(〜)がs〜$に変換される。具体的には、計算式はs2+3O6$/(4O6)pとなる(図6(d)参照)。そして、優先情報の「(〜)が1つの演算要素」に対応する文字列に変換される。具体的には、計算式はs2+3O6$A4O6$pとなる(図6(e)参照)。
【0051】
また、ステップS12により、計算式が図7(b)に示す式に変換された場合、先ず、演算子×が対応する文字列Oに変換される。具体的には、計算式は(√(2+3)O6)/(4O6)pとなる(図7(c)参照)。そして、演算子√(〜)がs〜$に変換される。具体的には、計算式は(s2+3$O6/(4O6)pとなる(図7(d)参照)。そして、優先情報の「(〜)が複数の演算要素」に対応する文字列に変換される。具体的には、計算式は、As2+3$O6%A4O6$pとなる(図7(e)参照)。
【0052】
ステップS16の実行後、文字列が参照され、末尾の「p」の直前に「$」があるか否かが判別される(ステップS17)。ステップS17において、末尾の「p」の直前に「$」がないと判別された場合(ステップS17;NO)、キー操作列算出処理は終了され、キー操作列出力処理に戻る。
【0053】
ステップS17において、末尾の「p」の直前に「$」があると判別された場合(ステップS17;YES)、その「$」が削除される(ステップS18)。例えば、図6(f)又は図7(f)に示すように、「$」が削除される。ステップS18の実行後、キー操作列算出処理は終了され、キー操作列出力処理に戻る。
このステップS18における処理は、計算式の末尾「p」の直前の「$」は不要であるために行われる。すなわち、文字「$」に対応するキーフォント「右矢印」は、演算子の中の数値を編集する状態から抜け出すためのキーを表現しており、計算式が後に続く場合には必要であるが、文字「p」に対応するキーフォント「=」の直前には不要であるので、削除するものである。
【0054】
図5に戻り、ステップS5の実行後、算出結果がキー操作列として出力される(ステップS6)。すなわち、算出結果(例えば、図6(f)又は図7(f)に示すような、変換された文字列を含む計算式)が表示部15に表示され、キーボードKB(図12参照)の入力キーの操作手順情報(後述する図11(c)に示すキーフォントの列)に対応するキー操作列として記憶部13に記憶される。具体的には、図6(f)に示すs2+3O6$A4O6p又は図7(f)に示すAs2+3$O6%4O6pがキー操作列として記憶部13に記憶される。
【0055】
ステップS6の実行後、ステップS2において入力されて表示されたエミュレータ画面内の計算式及び解のうち、1次元表示の部分がテキストデータ、2次元表示の部分が画像データとして出力され、それぞれ記憶部13に記憶される(ステップS7)。ステップS7の実行後、キー操作列出力処理は終了される。
【0056】
次に、図10を参照して、貼り付け処理について説明する。貼り付け処理は、キー操作列出力処理により記憶部13に記憶されたキー操作列を文書エディタに貼り付け、当該貼り付けられたキー操作列をキーフォントに変換して、入力キーの操作手順を作成する処理である。
【0057】
先ず、文書作成プログラムが起動される(ステップS21)。これにより、文書を作成するための文書エディタが表示部15に表示される。
【0058】
ステップS21の実行後、ユーザにより入力部14を介してエミュレータ画面の貼り付け指示が受け付けられたか否かが判別される(ステップS22)。具体的には、上述したステップS7において出力された計算式及び解からなるデータを文書エディタに貼り付ける指示がユーザにより入力部14を介して受け付けられたか否かが判別される。
【0059】
ステップS22において、エミュレータ画面の貼り付け指示がなかったと判別された場合(ステップS22;NO)、後述するステップS24に移行される。ステップS22において、エミュレータ画面の貼り付け指示があったと判別された場合(ステップS22;YES)、テキストデータと画像データとが併せて貼り付けられる(ステップS23)。例えば、図9(a)で説明したテキストデータ及び画像データが記憶部13に記憶されていた場合、図9(b)に示すように、テキストデータ「1+」と画像データ「1/2」及び「3/2」とが文書エディタに併せて貼り付けられる。
また、例えば、図7(a)に示すような数式及び解が画像データとして記憶されていた場合、図11(a)に示すように、画像データのみが文書エディタに貼り付けられる。
【0060】
ステップS23の実行後、ユーザにより入力部14を介して、キー操作列の貼り付け指示が受け付けられたか否かが判別される(ステップS24)。ステップS24において、キー操作列の貼り付け指示がなかったと判別された場合(ステップS24;NO)、貼り付け処理は終了される。
【0061】
ステップS24において、キー操作列の貼り付け指示が受け付けられたと判別された場合(ステップS24;YES)、キー操作列が貼り付けられる(ステップS25)。例えば、キー操作列出力処理により、図6(f)に示すキー操作列s2+3O6$A4O6pが記憶部13に記憶されていた場合、当該キー操作列s2+3O6$A4O6pが記憶部13から読み出されて、文書エディタに貼り付けられる(図11(b)参照)。
【0062】
ステップS25の実行後、フォント設定がキーフォント用に設定されたか否かが判別される(ステップS26)。具体的には、ユーザにより入力部14を介して文書エディタにおけるフォント設定をキーフォント設定とする旨の操作入力が受け付けられたか否かに基づいて、本ステップの判別が行われる。
【0063】
ステップS26において、フォント設定がキーフォント用に設定されていないと判別された場合(ステップS26;NO)、貼り付け処理は終了される。ステップS26において、フォント設定がキーフォント用に設定されたと判別された場合(ステップS26;YES)、キーフォントに変換表示される(ステップS27)。例えば、ステップS25において、キー操作列s2+3O6$A4O6pが貼り付けられていた場合、キーフォントテーブル31が参照され、キーフォント列が文字と対応するキーフォントに変換される。具体的には、図11(c)に示すように、キー操作列がキーフォントに変換され、変換されたキーフォントからなるキーフォントの列(入力キーの操作手順情報)が文書エディタ上に作成される。ステップS27の実行後、貼り付け処理は終了される。
【0064】
以上、本実施の形態によれば、変換された文字列を含む計算式を、キーボードの操作キーの操作手順情報に対応するキー操作列として読み出し可能に記憶部13に記憶する。このため、記憶部13に記憶されたキー操作列を読み出すことで、正しい操作手順を示す教材を作成することができる。例えば、キー操作列を読み出して、当該読み出したキー操作列を文書エディタに貼り付け、当該貼り付けられたキー操作列を、キーボードの入力キーの操作手順情報に変換することで、正しい操作手順を示す教材を作成することができる。
【0065】
また、簡素なキー操作列を記憶部13に記憶させるため、記憶部13に記憶されたキー操作列を読み出すことで、簡素な操作手順を示す教材を作成することができる。例えば、図7(a)に示す√(2+3)×6/(4×6)の数式において、分数記号である演算子「/」の被演算データ√(2+3)×6は、√(2+3)及び×6の2つの演算要素がある。この場合、分子の被演算データ√(2+3)×6を入力してから分数記号「/」を入力する場合よりも、最初に分数記号「/」を入力した後に、分子の被演算データ√(2+3)×6を入力する方が操作の手順としては複雑にならない。このため、被演算データが複数の演算要素を含む場合は、文字列「A〜%・・・$」が選択され、記憶部13に記憶される。そして、記憶された文字列「A〜%・・・$」が読み出されることで、簡潔な操作手順の作成が可能となる。
【0066】
また、解及び計算式のうち、2次元表示の部分は、画像データとして記憶部13に読み出し可能に記憶される。このため、例えば、複雑な2次元表示の解や計算式があった場合であっても、記憶部13に記憶された画像データを読み出して、文書エディタに貼り付けることにより、教材を作成することができる。このため、ユーザは、教材作成の際、複雑な2次元の解や計算式を入力したり、編集したりする負担を軽減することができる。
【0067】
なお、上記実施の形態における記述は、本発明に係る計算機エミュレーション装置、計算機及びプログラムの一例であり、これに限定されるものではない。
【0068】
例えば、上記実施の形態では、同一のPC上でキー操作列出力処理及び貼り付け処理を動作させることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、PC上で動作されたキー操作出力処理により記憶された記憶情報(キー操作列、テキストデータ、画像データ等)を、記録媒体読み取り部16を介して外部記録媒体に記憶し、当該記憶された記憶情報を外部装置に記憶させ、当該外部装置上で貼り付け処理を動作させることとしてもよい。
【0069】
また、キー操作列出力処理により記憶された情報を、通信部17を介してPCと通信接続された外部装置に送信し、当該外部装置上で貼り付け処理を動作させることとしてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、キー操作出力処理は、PC上で動作させることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、キー操作出力処理を計算機で動作させ、当該キー操作出力処理により記憶された記憶情報を、PC等により読み出して貼り付け処理を動作させることとしてもよい。
【0071】
また、上記の実施の形態における計算機エミュレーション装置1の各構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
1 計算機エミュレーション装置
11 CPU
12 RAM
13 記憶部
14 入力部
15 表示部
16 記録媒体読み取り部
17 通信部
21 演算子変換テーブル
22 演算子
23 優先情報
24 文字列
31 キーフォントテーブル
32 文字
33 キーフォント
DP ディスプレイ
GE エミュレーション画面
GL ログ画面
KB キーボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機のキーボード及び表示部を表示画面上に模倣表示させ、当該キーボードの指示に応じた計算動作の内容を前記表示部に表示させる計算機エミュレーション装置であって、
計算式を入力するための入力手段と、
所定の演算子と、前記キーボードの入力キーに対応する文字からなる文字列とを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された演算子が前記入力手段により入力された計算式中に含まれる場合、当該計算式中に含まれる前記演算子と対応する前記文字列を前記記憶手段から読み出し、前記計算式中に含まれる前記演算子を前記読み出された文字列に変換し、当該変換された文字列を含む前記計算式を、前記キーボードの入力キーの操作手順情報に対応するキー操作列として前記記憶手段に読み出し可能に記憶させる制御手段と、
を備える計算機エミュレーション装置。
【請求項2】
前記記憶手段が記憶する前記演算子には、
複数種類の前記文字列と対応付けられた演算子が含まれ、
前記制御手段は、
前記記憶手段に記憶された複数種類の文字列と対応付けられた演算子が前記入力手段により入力された計算式中に含まれる場合、被演算データが複数の演算要素を含むか否かに基づいて、前記複数種類の文字列の中から文字列を選択し、当該選択された文字列を前記記憶手段から読み出す請求項1に記載の計算機エミュレーション装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記入力手段により入力された計算式の解を演算し、当該演算された解及び前記計算式のうち、1次元表示の部分はテキストデータとして前記記憶手段に読み出し可能に記憶させ、2次元表示の部分は画像データとして前記記憶手段に読み出し可能に記憶させる請求項1又は2に計算機エミュレーション装置。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶された前記キー操作列を読み出し、当該読み出されたキー操作列を文書編集用の文書エディタに貼り付け、当該貼り付けられたキー操作列を、前記キーボードの入力キーの操作手順情報に変換する変換制御手段をさらに備える請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の計算機エミュレーション装置。
【請求項5】
計算式を入力するための入力手段と、
所定の演算子と、前記キーボードの入力キーに対応する文字からなる文字列とを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された演算子が前記入力手段により入力された計算式中に含まれる場合、当該計算式中に含まれる前記演算子と対応する前記文字列を前記記憶手段から読み出し、前記計算式中に含まれる前記演算子を前記読み出された文字列に変換し、当該変換された文字列を含む前記計算式を、前記キーボードの入力キーの操作手順情報に対応するキー操作列として前記記憶手段に読み出し可能に記憶させる制御手段と、
を備える計算機。
【請求項6】
計算機のキーボード及び表示部を表示画面上に模倣表示させ、当該キーボードの指示に応じた計算動作の内容を前記表示部に表示させる計算機エミュレーションプログラムであって、
コンピュータを、
計算式を入力するための入力手段、
所定の演算子と、前記キーボードの入力キーに対応する文字からなる文字列とを対応付けて記憶する記憶手段、
前記記憶手段に記憶された演算子が前記入力手段により入力された計算式中に含まれる場合、当該計算式中に含まれる前記演算子と対応する前記文字列を前記記憶手段から読み出し、前記計算式中に含まれる前記演算子を前記読み出された文字列に変換し、当該変換された文字列を含む前記計算式を、前記キーボードの入力キーの操作手順情報に対応するキー操作列として前記記憶手段に読み出し可能に記憶させる制御手段、
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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