説明

計算装置および計算方法

【課題】ウインドウを用いて画像の評価値を算出する際に、処理時間の増大を回避しつつ、ウインドウの大きさの変更に容易に対応する。
【解決手段】ラスタスキャンの順番に従って移動するウインドウに含まれる複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データのそれぞれに、当該画素のウインドウ内の位置に応じて相互に異なる複数の関数のそれぞれを適用することによって算出した複数の値の和をウインドウの位置毎に評価値として算出する計算装置であって、画像を構成する複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データのそれぞれをラスタスキャンの順番に従って1つずつ受け付けて複数の関数のそれぞれを適用して複数の値のそれぞれを算出し、ウインドウに含まれる複数の画素のいずれかを示す画素データに、複数の関数のうち当該画素の当該ウインドウ内の位置に応じた関数を適用した値が算出される度に加算していくことにより、当該ウインドウの評価値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を評価するための評価値を算出する計算装置および計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像識別やコンピュータビジョン(Computer Vision)の分野では、例えば画像の特徴量を把握するために画像の評価値を算出することがある。
【0003】
画像の評価値を算出する方法の一例として、矩形型の画像を構成する複数の画素の一部を取り出すための所定の大きさの領域(以降、ウインドウという)を画像に設定する方法が挙げられる。
【0004】
ウインドウを設定して画像の特徴量をAdaboost識別器を用いて把握するための方法が例えば、非特許文献1の「3.4ラスタスキャン方式による人検出」に記載されている。
【0005】
この方法によれば、ラスタスキャンの順番に従って移動するウインドウを画像に設定し、ウインドウに含まれる複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データのそれぞれに、当該画素のウインドウ内の位置に応じて相互に異なる複数の関数のそれぞれを適用することによって複数の値を算出する。そして、算出された複数の値の和がウインドウの位置毎に評価値として出力される。
【0006】
なお、ラスタスキャンとは、画像を構成する複数の画素のそれぞれを行方向に左から右へスキャンし、その後、次の行の左から右へスキャンすることを繰り返して行う走査方式のことである。
【0007】
ここで、ラスタスキャンの順番に従って移動するウインドウを画像に設定することによって画像の評価値を算出する方法について説明する。
【0008】
図3は、ラスタスキャンの順番に従って移動するウインドウを画像に設定することによって画像の評価値を算出する方法を説明するための図であり、(a)は評価の対象となる画像の一例を示す図、(b)はウインドウの一例を示す図、(c)は(b)に示すウインドウが移動する様子を示す図である。ここでは、画像の行方向の画素数をLとし、ウインドウの大きさを行方向および列方向ともに2画素分とした場合について説明する。
【0009】
ウインドウはまず、画像を構成する複数の画素のうち、画素データv1,v2,vL+1,vL+2によって示される画素に設定される。
【0010】
これにより、画素データv1には図3(b)に示す関数h11,h12,h21,h22のうちの関数h11が適用される。同様に、画素データv2には関数h12が適用され、画素データvL+1には関数h21が適用され、画素データvL+2には関数h22が適用される。この状態が図3(c)の上段に示されている。このときの評価値wL+2は、(h11(v1)+h12(v2)+h21(vL+1)+h22(vL+2))となる。
【0011】
そして、ウインドウがラスタスキャンの順番に従って移動する。その結果、ウインドウは、画像を構成する複数の画素のうち、画素データv2,v3,vL+2,vL+3によって示される画素に設定される。
【0012】
これにより、画素データv2には図3(b)に示す関数h11,h12,h21,h22のうちの関数h11が適用される。同様に、画素データv3には関数h12が適用され、画素データvL+2には関数h21が適用され、画素データvL+3には関数h22が適用される。この状態が図3(c)の下段に示されている。このときの評価値wL+3は、(h11(v2)+h12(v3)+h21(vL+2)+h22(vL+3))となる。
【0013】
上述した動作により、ラスタスキャンの順番に従ってウインドウを移動させた場合の評価値wtがウインドウの位置毎に算出されていく。つまり、1つの画像について、ウインドウを移動させた回数と同じ数の評価値が算出されることになる。
【0014】
次に、図3に示した方法を実現するための計算装置の構成および動作について説明する。
【0015】
図4は、図3に示した方法を実現するための計算装置の構成の一例を示す図である。また、図5は、図4に示した計算装置100の動作を説明するためのフローチャートである。
【0016】
図4に示す計算装置100は、1ワード分の画素データを格納できる容量のレジスタ101a〜104aのそれぞれを有する計算器101〜104と、(L−2)ワード分の画素データを格納できるシフトレジスタ105と、加算器106〜108とを備えている。
【0017】
図4および図5を参照しながら、図3に示した方法を実現するための計算装置の動作について説明する。
【0018】
まず、計算装置100は、制御変数iを定義し、iを1とする(ステップS101)。
【0019】
次に、時刻t=iにおいて計算器101は、ラスタスキャンの順番に従って画素データvtを受け付けてレジスタ101aに格納する(ステップS102)。
【0020】
そして、制御変数iが(i+1)に更新される(ステップS103)。
【0021】
次に、制御変数iが(L+3)よりも小さいかどうかを判定する(ステップS104)。
【0022】
ステップS104における判定の結果、制御変数iが(L+3)よりも小さな場合、ステップS102の動作へ遷移する。この場合、レジスタ101aに格納されている画素データvtは画素データvt-1としてレジスタ102aに格納される。
【0023】
一方、ステップS104における判定の結果、制御変数iが(L+3)以上である場合には、計算器101〜104のそれぞれは、レジスタ101a〜104aのそれぞれに格納された画素データに関数を適用することによって値を算出する(ステップS105)。具体的には、計算器104は、h11(vt-L-1)を算出し、計算器103は、h12(vt-L)を算出し、計算器102は、h21(vt-1)を算出し、計算器101は、h22(vt)を算出することになる。
【0024】
そして、計算器101および計算器102は、算出した値を加算器106へ出力し、計算器103および計算器104は、算出した値を加算器107へ出力する。
【0025】
次に、加算器106は、計算器101および計算器102のそれぞれから出力された値を加算して加算器108へ出力する。
【0026】
また、加算器107は、計算器103および計算器104のそれぞれから出力された値を加算して加算器108へ出力する。
【0027】
そして、加算器108は、評価値wt=h11(vt-L-1)+h12(vt-L)+h21(vt-1)+h22(vt)を算出して出力する(ステップS106)。
【0028】
そして、時刻t=iにおいて計算器101は、画素データvtを受け付けてレジスタ101aに格納する。これにより、レジスタ104aに格納された画素データvt-L-2は削除されることになる(ステップS107)。
【0029】
次に、制御変数iが(i+1)に更新される(ステップS108)。
【0030】
以降、ステップS105〜S108の処理が繰り返され、ウインドウの位置毎に複数の評価値wtのそれぞれが順次算出されて出力される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】「複数の特徴量間の関連性に着目したBoostingによる物体検出」信学技報, vol. 108, no. 484, PRMU2008-247, pp. 43-54, 2009年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
図4に示した計算装置100において、ウインドウに含まれる複数の画素を示す複数の画素データうち、時刻tにおいて受け付けた画素データvt以外の画素データvt-L-1,vt-L,vt-1は、関数h11,h12,h21,h22のうちのいずれかまたは複数の関数が時刻tよりも前に適用されている。
【0033】
ところが、当該ウインドウにおいては、画素データと適用する関数との組み合わせは、これまでにないものとなる。そのため、ウインドウの大きさに応じたN個の値を新たに算出し、そのN個の値の和を評価値として算出する必要がある。この場合、少なくともlog2Nに相当する段数に加算器を配置した加算器のツリーが必要となる。
【0034】
ここで、ウインドウを大きくした場合、加算器のツリーの段数が増え、処理時間が増大してしまうという問題点がある。
【0035】
また、加算器のツリーは、遅延を最適化するために階層構造となっている。そのため、ウインドウの大きさを変更した場合、FPGA(Field Programmable Gate Array)等に配置された配線の変更の影響範囲が全体に渡ることになる。
【0036】
この場合、FPGA等のプログラマブルロジック部品で計算装置を構築しても、柔軟性を迅速に発揮できなくなり、ウインドウの大きさを変更したことによる再設計や最適化にかかる手間が大きくなってしまう。
【0037】
つまり、ウインドウの大きさの変更に容易に対応することができないという問題点がある。
【0038】
本発明は、ウインドウを用いて画像の評価値を算出する際に、処理時間の増大を回避しつつ、ウインドウの大きさの変更に容易に対応することができる計算装置および計算方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0039】
上記目的を達成するために本発明の計算装置は、画像を構成する複数の画素のうち、ラスタスキャンの順番に従って移動する所定の大きさの領域であるウインドウに含まれる複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データのそれぞれに、当該画素の前記ウインドウ内の位置に応じて相互に異なる複数の関数のそれぞれを適用することによって算出した複数の値の和を前記ウインドウの位置毎に評価値として算出する計算装置であって、
前記画像を構成する複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データのそれぞれをラスタスキャンの順番に従って1つずつ受け付け、該受け付けた画素データに前記複数の関数のそれぞれを適用することによって複数の値のそれぞれを算出し、前記ウインドウに含まれる複数の画素のいずれかを示す画素データに、前記複数の関数のうち当該画素の当該ウインドウ内の位置に応じた関数を適用した値が算出される度に、該算出された値を加算していくことにより、当該ウインドウの前記評価値を算出する。
【0040】
また、上記目的を達成するために本発明の計算方法は、画像を構成する複数の画素のうち、ラスタスキャンの順番に従って移動する所定の大きさの領域であるウインドウに含まれる複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データのそれぞれに、当該画素の前記ウインドウ内の位置に応じて相互に異なる複数の関数のそれぞれを適用することによって算出した複数の値の和を前記ウインドウの位置毎に評価値として算出する計算装置における計算方法であって、
前記画像を構成する複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データのそれぞれをラスタスキャンの順番に従って1つずつ受け付ける処理と、
前記受け付けた画素データに前記複数の関数のそれぞれを適用することによって複数の値のそれぞれを算出する処理と、
前記ウインドウに含まれる複数の画素のいずれかを示す画素データに、前記複数の関数のうち当該画素の当該ウインドウ内の位置に応じた関数を適用した値が算出される度に、該算出された値を加算していくことにより、当該ウインドウの前記評価値を算出する処理と、を有する。
【発明の効果】
【0041】
本発明は以上説明したように構成されているので、評価値を算出するために、加算器のツリーのような大域的構造を計算装置に適用する必要がない。
【0042】
従って、ウインドウを用いて画像の評価値を算出する際に、処理時間の増大を回避しつつ、ウインドウの大きさの変更に容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の計算装置の実施の一形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した計算装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】ラスタスキャンの順番に従って移動するウインドウを画像に設定することによって画像の評価値を算出する方法を説明するための図であり、(a)は評価の対象となる画像の一例を示す図、(b)はウインドウの一例を示す図、(c)は(b)に示すウインドウが移動する様子を示す図である。
【図4】図3に示した方法を実現するための計算装置の構成の一例を示す図である。
【図5】図4に示した計算装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ここでは、画像の行方向の画素数をLとし、ウインドウの大きさを行方向および列方向ともに2画素分とした場合について説明する。
【0045】
図1は、本発明の計算装置の実施の一形態の構成を示すブロック図である。
【0046】
図1を参照すると、本実施形態の計算装置には、図4に示したような加算器のツリーが含まれていない。
【0047】
図4に示した計算装置100において加算器のツリーが必要であったのは、時刻tにおいてh11(vt-L-1),h12(vt-L),h21(vt-1),h22(vt)を並列化して算出し、さらに、これらの値の和を評価値として算出するためであった。
【0048】
ここで、画素データvt-L-1,vt-L,vt-1,vtのそれぞれが図4に示した計算装置100にて受け付けられる時刻は、順番に、時刻(t−L−1)、(t−L)、(t−1)、tである。図4に示した計算装置100では、シフトレジスタ105を用いて遅延させることにより、画素データvt-L-1,vt-L,vt-1,vtのそれぞれに相互に異なる関数h11,h12,h21,h22を適用した。
【0049】
本実施形態の計算装置10は、画素データvtを受け付けると、h11(vt)、h12(vt)、h21(vt)、h22(vt)の全てを算出する点が図4に示した計算装置100と異なる。以下に、本実施形態の計算装置の構成および動作について説明する。
【0050】
本実施形態の計算装置10は図1に示すように、1ワード分の画素データを格納できる容量のレジスタ11a〜14aのそれぞれを有する計算器11〜14と、(L−2)ワード分の画素データを格納できるシフトレジスタ15とを備えている。
【0051】
計算器11〜14のそれぞれは、画像を構成する複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データvtのそれぞれをラスタスキャンの順番に従ってクロックサイクル毎に1つずつ受け付ける。そして、計算器11〜14のそれぞれは、受け付けた画素データvtに、ウインドウ内の位置に応じて相互に異なる複数の関数h11,h12,h21,h22のそれぞれを適用することによってh11(vt),h12(vt),h21(vt),h22(vt)のそれぞれを算出する。そして、計算器11〜14のそれぞれは、予め決められた処理を実行する。この処理の詳細については後述する動作フローにおいて説明する。
【0052】
以下に、上記のように構成された計算装置の動作について説明する。
【0053】
図2は、図1に示した計算装置10の動作を説明するためのフローチャートである。
【0054】
まず、計算装置10は、制御変数iを定義し、制御変数iを1とする(ステップS1)。
【0055】
次に、時刻t=iにおいて計算器11〜14のそれぞれは、ラスタスキャンの順番に従って画素データvtを1つ受け付け、受け付けた画素データvtに相互に異なる複数の関数h11,h12,h21,h22のそれぞれを適用することによってh11(vt),h12(vt),h21(vt),h22(vt)のそれぞれを算出する(ステップS2)。
【0056】
そして、計算器11は、算出したh11(vt)をレジスタ11aに格納する(ステップS3)。
【0057】
ここで、制御変数iが(i+1)に更新される(ステップS4)。
【0058】
次に、時刻t=iにおいて計算器11〜14のそれぞれは、ラスタスキャンの順番に従って次の画素データvtを受け付け、受け付けた画素データvtに相互に異なる複数の関数h11,h12,h21,h22のそれぞれを適用することによってh11(vt),h12(vt),h21(vt),h22(vt)のそれぞれを算出する(ステップS5)。
【0059】
そして、計算器11は、レジスタ11aに格納されたh11(vt)をh11(vt-1)として計算器12へ出力するとともに、ステップS5において算出したh11(vt)をレジスタ11aに格納する(ステップS6)。
【0060】
また、計算器12は、計算器11から出力されたh11(vt-1)を受け付け、受け付けたh11(vt-1)と、ステップS5において算出したh12(vt)との合計値(h11(vt-1)+h12(vt))をレジスタ12aに格納する(ステップS7)。つまり、計算器12は、評価値wtの一部である(h11(vt-1)+h12(vt))を算出したことになる。
【0061】
ここで、制御変数iが(i+1)に更新される(ステップS8)。
【0062】
次に、時刻t=iにおいて計算器11〜14のそれぞれは、ラスタスキャンの順番に従って次の画素データvtを受け付け、受け付けた画素データvtに相互に異なる複数の関数h11,h12,h21,h22のそれぞれを適用することによってh11(vt),h12(vt),h21(vt),h22(vt)のそれぞれを算出する(ステップS9)。
【0063】
そして、計算器11は、レジスタ11aに格納されたh11(vt)をh11(vt-1)として計算器12へ出力するとともに、ステップS9において算出したh11(vt)をレジスタ11aに格納する(ステップS10)。
【0064】
また、計算器12は、レジスタ12aに格納された(h11(vt-1)+h12(vt))を(h11(vt-1-1)+h12(vt-1))としてシフトレジスタ15へ出力する。
【0065】
次に、計算器12は、計算器11から出力されたh11(vt-1))を受け付け、受け付けたh11(vt-1)と、ステップS9において算出したh12(vt)との合計値(h11(vt-1)+h12(vt))をレジスタ12aに格納する(ステップS11)。
【0066】
そして、計算器12から出力された(h11(vt-1-1)+h12(vt-1))は、シフトレジスタ15の入力端に格納される(ステップS12)。
【0067】
ここで、制御変数iが(i+1)に更新される(ステップS13)。
【0068】
次に、制御変数iが(L+1)よりも小さいかどうかが判定される(ステップS14)。
【0069】
ステップS14における判定の結果、制御変数iが(L+1)よりも小さな場合、ステップS9の動作へ遷移する。
【0070】
一方、ステップS14における判定の結果、制御変数iが(L+1)以上である場合には、時刻t=iにおいて計算器11〜14のそれぞれは、ラスタスキャンの順番に従って次の画素データvtを受け付け、受け付けた画素データvtに相互に異なる複数の関数h11,h12,h21,h22のそれぞれを適用することによってh11(vt),h12(vt),h21(vt),h22(vt)のそれぞれを算出する(ステップS15)。
【0071】
そして、計算器11は、レジスタ11aに格納されたh11(vt)をh11(vt-1)として計算器12へ出力するとともに、ステップS15において算出したh11(vt)をレジスタ11aに格納する(ステップS16)。
【0072】
また、計算器12は、レジスタ12aに格納された(h11(vt-1)+h12(vt))を(h11(vt-1-1)+h12(vt-1))としてシフトレジスタ15へ出力する。
【0073】
次に、計算器12は、計算器11から出力されたh11(vt-1)を受け付け、受け付けたh11(vt-1)と、ステップS15において算出したh12(vt)との合計値(h11(vt-1)+h12(vt))をレジスタ12aに格納する(ステップS17)。
【0074】
そして、計算器12から出力された(h11(vt-1-1)+h12(vt-1))は、シフトレジスタ15の入力端に格納される(ステップS18)。
【0075】
ここで、この時刻においては、ステップS12においてシフトレジスタ15の入力端に格納された(h11(vt-1-1)+h12(vt-1))がシフトレジスタ15の出力端に現れ、(h11(vt-1-(L-2)-1)+h12(vt-(L-2)-1))として計算器13へ出力される。
【0076】
計算器13は、シフトレジスタ15から出力されたh11(vt-1-(L-2)-1)+h12(vt-(L-2)-1))を受け付ける。
【0077】
そして、計算器13は、受け付けた(h11(vt-1-(L-2)-1)+h12(vt-(L-2)-1))と、ステップS15において算出したh21(vt)とを加算してレジスタ13aに格納する(ステップS19)。つまり、計算器13は、評価値wtの一部である(h11(vt-L)+h12(vt-L+1)+h21(vt))を算出したことになる。
【0078】
そして、制御変数iが(i+1)に更新される(ステップS20)。
【0079】
次に、時刻t=iにおいて計算器11〜14のそれぞれは、ラスタスキャンの順番に従って次の画素データvtを受け付け、受け付けた画素データvtに相互に異なる複数の関数h11,h12,h21,h22のそれぞれを適用することによってh11(vt),h12(vt),h21(vt),h22(vt)のそれぞれを算出する(ステップS21)。
【0080】
そして、計算器11は、レジスタ11aに格納されたh11(vt)をh11(vt-1)として計算器12へ出力するとともに、ステップS21において算出したh11(vt)をレジスタ11aに格納する(ステップS22)。
【0081】
また、計算器12は、レジスタ12aに格納された(h11(vt-1)+h12(vt))を(h11(vt-1-1)+h12(vt-1))としてシフトレジスタ15へ出力する。
【0082】
次に、計算器12は、計算器11から出力されたh11(vt-1)を受け付け、受け付けたh11(vt-1)と、ステップS21において算出したh12(vt)との合計値(h11(vt-1)+h12(vt))をレジスタ12aに格納する(ステップS23)。
【0083】
そして、計算器12から出力された(h11(vt-1-1)+h12(vt-1))は、シフトレジスタ15の入力端に格納される(ステップS24)。
【0084】
ここで、この時刻においても、ステップS12においてシフトレジスタ15の入力端に格納された(h11(vt-1-1)+h12(vt-1))がシフトレジスタ15の出力端に現れ、(h11(vt-1-(L-2)-1)+h12(vt-(L-2)-1))として計算器13へ出力される。
【0085】
計算器13は、シフトレジスタ15から出力されたh11(vt-1-(L-2)-1)+h12(vt-(L-2)-1))を受け付ける。
【0086】
そして、計算器13は、レジスタ13aに格納された(h11(vt-1-(L-2)-1)+h12(vt-(L-2)-1)+h21(vt))を、(h11(vt-1-(L-2)-1-1)+h12(vt-(L-2)-1-1)+h21(vt-1))として計算器14へ出力する。
【0087】
それとともに、計算器13は、受け付けた(h11(vt-1-(L-2)-1)+h12(vt-(L-2)-1))と、ステップS21において算出したh21(vt)とを加算してレジスタ13aに格納する(ステップS25)。
【0088】
次に、計算器14は、計算器13から出力された(h11(vt-1-(L-2)-1-1)+h12(vt-(L-2)-1-1)+h21(vt-1))を受け付ける。
【0089】
そして、計算器14は、受け付けた(h11(vt-1-(L-2)-1-1)+h12(vt-(L-2)-1-1)+h21(vt-1))と、ステップS21において算出したh22(vt)とを加算することにより、評価値wt=(h11(vt-L-1)+h12(vt-L)+h21(vt-1)+h22(vt))を算出して出力する(ステップS26)。
【0090】
上述した動作フローでは、1つの評価値wtが算出されるまでの動作について説明したが、実際には、1つの評価値wtを算出する動作がウインドウの位置毎に並行して実行されている。つまり、上述したステップS20〜S26の動作が繰り返されることにより、時刻t=(L+2)以降、画素データvtが受け付けられる度に、1つの評価値wtが算出されて出力されていくことになる。
【0091】
このように本実施形態において計算装置10は、画像を構成する複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データのそれぞれをラスタスキャンの順番に従って1つずつ受け付け、受け付けた画素データに複数の関数のそれぞれを適用することによって複数の値のそれぞれを算出し、ウインドウに含まれる複数の画素のいずれかを示す画素データに、複数の関数のうち当該画素の当該ウインドウ内の位置に応じた関数を適用した値が算出される度に、算出された値を加算していくことにより、当該ウインドウの評価値を算出する。
【0092】
これにより、評価値wtを算出するために、加算器のツリーのような大域的構造を計算装置に適用する必要がない。そのため、1つの評価値wtを算出するまでの時間は、ウインドウの大きさによらず、画素データvtを受け付けてから一定(常に加算器1つ分)の遅延となる。
【0093】
また、計算装置の構造を単純化することができる。そのため、FPGA等のコンフィギュレーション変更によってウインドウの大きさを変える場合には、設計上の単位構造の繰り返しを延長、縮小および接続替えするだけで済み、再設計や最適化にかかる手間が抑制される。これにより、FPGA等のプログラマブルロジック部品で計算装置を構築することによる柔軟性を迅速に発揮させることができる。
【0094】
さらに、コンフィギュレーションを変更することなくウインドウの大きさを変更する(動的変更を行う)場合でも、配線の変更の影響範囲を局所化することができる。そのため、配線を切り替える手順が単純化され、FPGA等への収容効率が高くなる。
【0095】
従って、ウインドウを用いて画像の評価値を算出する際に、処理時間の増大を回避しつつ、ウインドウの大きさの変更に容易に対応することができる。
【符号の説明】
【0096】
10 計算装置
11〜14 計算器
11a〜14a レジスタ
15 シフトレジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を構成する複数の画素のうち、ラスタスキャンの順番に従って移動する所定の大きさの領域であるウインドウに含まれる複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データのそれぞれに、当該画素の前記ウインドウ内の位置に応じて相互に異なる複数の関数のそれぞれを適用することによって算出した複数の値の和を前記ウインドウの位置毎に評価値として算出する計算装置であって、
前記画像を構成する複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データのそれぞれをラスタスキャンの順番に従って1つずつ受け付け、該受け付けた画素データに前記複数の関数のそれぞれを適用することによって複数の値のそれぞれを算出し、前記ウインドウに含まれる複数の画素のいずれかを示す画素データに、前記複数の関数のうち当該画素の当該ウインドウ内の位置に応じた関数を適用した値が算出される度に、該算出された値を加算していくことにより、当該ウインドウの前記評価値を算出する計算装置。
【請求項2】
画像を構成する複数の画素のうち、ラスタスキャンの順番に従って移動する所定の大きさの領域であるウインドウに含まれる複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データのそれぞれに、当該画素の前記ウインドウ内の位置に応じて相互に異なる複数の関数のそれぞれを適用することによって算出した複数の値の和を前記ウインドウの位置毎に評価値として算出する計算装置における計算方法であって、
前記画像を構成する複数の画素のそれぞれを示す複数の画素データのそれぞれをラスタスキャンの順番に従って1つずつ受け付ける処理と、
前記受け付けた画素データに前記複数の関数のそれぞれを適用することによって複数の値のそれぞれを算出する処理と、
前記ウインドウに含まれる複数の画素のいずれかを示す画素データに、前記複数の関数のうち当該画素の当該ウインドウ内の位置に応じた関数を適用した値が算出される度に、該算出された値を加算していくことにより、当該ウインドウの前記評価値を算出する処理と、を有する計算方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−118920(P2012−118920A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270427(P2010−270427)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】