説明

計量吸入器における使用のための安定化調製物

【課題】生物活性薬剤が必要な患者の肺気道への生物活性薬剤の効率的な送達を有利に可能にする方法および調製物を提供すること。
【解決手段】1つ以上の生物活性薬剤の肺送達のための呼吸器用安定分散物であって、該分散物は、少なくとも1つの生物活性薬剤を含む複数の穿孔化微細構造物が分散されている懸濁媒体を含み、ここで、該懸濁媒体は、少なくとも1つのプロペラントを含み、かつ該穿孔化微細構造物に実質的に浸透する、呼吸器用安定分散物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、気道を通して患者に生物活性薬剤を投与するための処方物および方法に関する。より詳細には、本発明は、好ましくは、肺、経鼻、または局所経路を用いて、エアロゾル化を介して投与される懸濁媒体中に、穿孔微細構造物の相対的に安定な分散物を含む、方法、システムおよび組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
標的化薬物送達手段は、薬学的化合物の毒性またはバイオアベイラビリティが問題である場合、特に望ましい。作用部位に化合物を効果的に沈着させる特定の薬物送達方法および組成物は、毒性副作用を最少化し、投与必要物を低減し、そして治療費用を低減するために潜在的に役立つ。このことについて、肺への薬物送達のためのそのようなシステムの開発は、長い間、製薬産業の目的であった。
【0003】
肺気道へ局所的に薬物を送達するために現在使用されている3つの最も一般的なシステムは、乾燥粉末吸入器(DPI)、計量吸入器(MDI)、およびネブライザである。MDIは、吸入投与の最も一般的な方法であり、可溶化形態で、または分散物として医薬品を送達するために使用され得る。代表的には、MDIは、デバイスの作動の際に気道にエアロゾル化医薬品を押し込む、Freonまたは蒸気圧が比較的高い他の噴霧体を含む。MDIとは異なり、DPIは、一般に乾燥粉末形態の医薬品を肺に導入する患者の吸入努力に全体的に依存する。最後に、ネブライザは、液状溶液にエネルギーを与えることによって、吸入されるべき医薬品エアロゾルを形成する。より最近には、フルオロケミカル媒体を使用する、液体通気または肺洗浄の間の薬物の直接的肺送達もまた探究されている。これらの方法および関連するシステムの各々が、選択された状況下で有効であることが判明し得るが、処方の限界を含む固有の欠点によって、それらの使用が限定され得る。
【0004】
1950年代半ばの計量吸入器の導入から、吸入が、喘息患者の気道への局所的な気管支拡張剤およびステロイド剤の最も広範に使用される投与経路になった。気管支拡張剤の経口投与に比較すると、MDIを介する吸入は、作用の迅速な開始および全身的な副作用の起こりにくさを提供する。
【0005】
MDIは、その製造において用いられるプロペラントシステムの推進力に依存する。伝統的には、プロペラントシステムは、クロロフルオロカーボン(CFC)の混合物から構成され、これは、所望の蒸気圧および懸濁物安定性を提供するように選択される。現在、Feron 11、Feron 12、およびFeron 114のようなCFCは、吸入投与のためのエアロゾル処方物において最も広範に用いられるプロペラントである。このようなシステムは、可溶化された薬物を送達するために使用され得る一方、選択された生物活性薬剤は、代表的には、分散物を提供するために微細な粒子の形態で組み込まれる。このようなシステムにおける凝集の問題を最小にするかまたは回避するために、生物活性薬剤の表面をコーティングして、エアロゾルプロペラントで粒子を湿潤させることを補助するために界面活性剤がしばしば使用される。実質的に均質な分散物を維持するためにこのようにして界面活性剤を使用することは、懸濁物を「安定化する」といわれる。
【0006】
不運なことに、伝統的なクロロフルオロカーボンプロペラントは、いまや、成層圏のオゾンを減少させると考えられ、結果として段階的に廃止されている。次には、これは、いわゆる環境にやさしいプロペラントを使用する、肺薬物送達のためのエアロゾル処方物の開発を導いてきた。CFCと比較してオゾンを減少させる可能性が最小であると考えられるプロペラントのクラスは、ペルフルオロ化化合物(PFC)およびヒドロフルオロアルカン(HFA)である。これらのクラスの選択された化合物は生体適合性プロペラントとして有効に機能し得る一方、CFC中で薬物懸濁物を安定化させることにおいて有効である多くの界面活性剤は、もやはこれらの新たなプロペラントシステムにおいて有効ではない。HFA中の界面活性剤の可溶性が減少するにつれて、薬物粒子とHFAとの間の界面への界面活性剤の分散は、非常にゆっくりとなり、これは、医薬品の粒子の乏しい湿潤化および懸濁物安定性の損失を導く。HFAプロペラント中での界面活性剤のこの減少した安定性は、任意の組み込まれた生物活性薬剤に関して、効力の減少を生じるようである。
【0007】
より詳細には、プロペラント中の医薬品懸濁物は、急激に凝集する傾向がある。懸濁された物質の粒子サイズが調節できず、そして凝集が起こる場合、エアロゾル容器のバルブ孔(orifice)が詰まって、分配デバイスを作動できなくし得るか、または測定バルブが使用される場合、不正確にさせ得る。この所望されない凝集またはフロキュレーションによって、特に、非常に強力で低い用量の医薬品の場合に所望されない結果を導き得る、不適切な投与量を導き得る。さらに、粒子凝集はまた、懸濁物の急速なクリーム化または沈降を導く。生じた相分離は、一般的に、使用直前にMDIデバイスを激しく振盪することによって解決される。しかし、患者のコンプライアインスは、制御することが困難であり、そして多くの市販の懸濁物は、非常に不安定であるために、振盪と使用との間のほんのわずな遅れによって不均一な投与量に影響し得る。
【0008】
環境に適合可能なプロペラントを使用して、安定化分散物を形成することに関連した困難を克服するための先行技術の取り組みは、一般的に、HFA混和共溶媒(すなわち、エタノール)の添加および/または種々の界面活性剤システムの含有を包含する。例えば、いくつかの試みが、HFAプロペラント中の界面活性剤の可溶性を増加させることによって懸濁物安定性を改善することに対処してきた。このために、米国特許第5,118,494号、WO91/11173およびWO92/00107は、懸濁物安定性を改善するためのHFA可溶性フッ化界面活性剤の使用を開示する。他のフッ化共溶媒とのHFAプロペラントの混合物はまた、WO91/04011に開示される。
【0009】
安定化における他の試みは、非フッ化界面活性剤の含有を含んでいた。これに関して、米国特許第5,492,688号は、いくつかの親水性界面活性剤(9.6以上の親水性/親油性平衡を有する)が医薬品懸濁物を安定化させるために十分なHFA中での可溶性を有することを開示する。従来の非フッ化MDI界面活性剤(例えば、オレイン酸、レシチン)の可溶性の増加もまた、伝えるところによれば、米国特許第5,683,677号および同第5,605,674号、ならびにWO95/17195において記載されるように、アルコールのような共溶媒を使用することによって達成され得る。不運なことに、以前に議論された先行技術の共溶媒システムと同様に、粒子間の斥力を単に増加させることが、MDI調製物のような非水性分散物において非常に有効な安定化機構であるとは証明されてない。
【0010】
前述の界面活性剤システムに加えて、環境に適合可能なシステムにおいて安定化分散物を提供するためにいくつかの他の試みが行われてきた。例えば、カナダ国特許出願第2,036,844号は、熱変性アルブミン中にカプセル化されたプロカテロールを含有する懸濁物の使用を記載する。伝えるところによれば、この懸濁物は、カプセル化された薬剤の徐放を提供する。安定なシステムを提供する別の試みは、カナダ国特許出願第2,136,704号に記載され、これは、噴霧乾燥した生成物および水素化プロペラントを含有する医薬品エアロゾル処方物を開示する。この粉末は、粒子斥力およびカウンターバランス(counterbalance)引力を増加させるように、低レベルの界面活性剤成分を明らかに含む。同様に、PCT国際公開番号第97/44012号は、静電的引力をカウンターバランスする「適切な斥力」を生成するために、低レベルの界面活性剤を取り込む粉末を含む懸濁システムを記載する。なお別のシステムは、PCT国際公開第97/36574号において記載される。これは、計量吸入器において粉末を使用することを議論する。これらのシステムにおいて、可溶性界面活性剤は、別々にシステムに添加されて医薬品粉末を安定化させるようである。前述のシステムの各々は、明らかに先行技術の概念に基づいており、この概念は、懸濁物の安定性が、天然の粒子の引力をカウンターバランスする斥力を提供することによって主として達成されるというものである。このような試みにもかかわらず、良好な乾燥処方物安定性の要求基準を満たし得る一方で、MDIについて今まで増加し続けている規制基準をも同時に満たし得る、広範に適用可能な処方物アプローチを開発し得なかったことが明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、生物活性薬剤が必要な患者の肺気道への生物活性薬剤の効率的な送達を有利に可能にする方法および調製物を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、エアロゾル化のために適切な安定化調製物およびそれが必要な患者の肺気道への引き続いた投与を提供することである。
【0013】
本発明のなおさらなる目的は、計量吸入器における使用に適合可能な安定化分散物を提供することおよびデバイスの耐用期間の間再現可能な投与レベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1) 1つ以上の生物活性薬剤の肺送達のための呼吸器用安定分散物であって、該分散物は、少なくとも1つの生物活性薬剤を含む複数の穿孔化微細構造物が分散されている懸濁媒体を含み、ここで、該懸濁媒体は、少なくとも1つのプロペラントを含み、かつ該穿孔化微細構造物に実質的に浸透する、呼吸器用安定分散物。
(項目2) 上記プロペラントが、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、ペルフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される化合物を含む、項目1に記載の分散物。
(項目3) 上記穿孔化微細構造物が界面活性剤を含む、項目1に記載の分散物。
(項目4) 上記界面活性剤が、リン脂質、非イオン性界面活性剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、生体適合性フッ化界面活性剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目3に記載の分散物。
(項目5) 上記穿孔化微細構造物が、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー338、オレイン酸およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるポロキサマーを含む、項目3または4に記載の分散物。
(項目6) 上記界面活性剤がリン脂質である、項目3または4に記載の分散物。
(項目7) 上記リン脂質が、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ベヘノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目6に記載の分散物。
(項目8) 上記穿孔化微細構造物が、約10%w/wを超える界面活性剤を含む、項目3〜7のいずれかに記載の分散物。
(項目9) 上記穿孔化微細構造物が中空多孔性ミクロスフェアを含む、項目1〜8のいずれかに記載の分散物。
(項目10) 上記空気力学的平均直径が0.5μmと5μmとの間である、項目1〜9のいずれかに記載の分散物。
(項目11) 生物活性薬剤が、エアロゾル化後に30%を超える微細粒子割合を有する、項目1〜10のいずれかに記載の分散物。
(項目12) 上記生物活性薬剤が、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、肺界面活性剤、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗コリン作用剤、麻酔剤、抗結核剤、画像化剤、心臓血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルス性ベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1〜11のいずれかに記載の分散物。
(項目13) 生物活性薬剤の肺投与のためのシステムであって:
流体リザーバ;
該流体リザーバと操作可能に連結した測定バルブ;および
該流体リザーバ中の安定化分散物であって、ここで該安定化分散物は、少なくとも1つの生物活性薬剤を含む複数の穿孔化微細構造物が分散された懸濁媒体を含み、ここで該懸濁媒体は、少なくとも1つのプロペラントを含み、かつ該穿孔化微細構造物に実質的に浸透する、分散物を備える、システム。
(項目14) 上記流体リザーバが、加圧エアロゾル容器を含み、ここで、上記測定バルブが、作動の際にエアロゾルの形態の上記生物活性薬剤の薬学的に受容可能な量を分配するように調節される、項目13に記載のシステム。
(項目15) 上記プロペラントが、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、ペルフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される化合物を含む、項目13または14に記載のシステム。
(項目16) 上記穿孔化微細構造物が界面活性剤を含む、項目13〜15のいずれかに記載のシステム。
(項目17) 上記界面活性剤が、リン脂質、非イオン性界面活性剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、生体適合性フッ化界面活性剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目16に記載のシステム。
(項目18) 上記界面活性剤がリン脂質を含む、項目16または17に記載のシステム。
(項目19) 上記リン脂質が、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ベヘノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目18に記載のシステム。
(項目20) 上記穿孔化微細構造物が、約10%w/wを超える界面活性剤を含む、項目16〜19のいずれかに記載のシステム。
(項目21) 上記穿孔化微細構造物が中空多孔性ミクロスフェアを含む、項目13〜20のいずれかに記載のシステム。
(項目22) 上記多孔性微細構造物の空気力学的平均直径が、0.5μmと5μmとの間である、項目13〜21のいずれかに記載のシステム。
(項目23) 上記生物活性薬剤が、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、肺界面活性剤、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗コリン作用剤、麻酔剤、抗結核剤、画像化剤、心臓血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルス性ベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目13〜22のいずれかに記載のシステム。
(項目24) 呼吸器用安定分散物を形成するための方法であって:
少なくとも1つの生物活性薬剤を含む複数の穿孔化微細構造物を、少なくとも1つのプロペラントを含む所定の容量の懸濁媒体と組み合わせて、呼吸器用ブレンドを提供する工程であって、ここで該懸濁媒体は該穿孔化微細構造物に浸透する、工程;および
該呼吸器用ブレンドを混合し、実質的に均質な呼吸器用分散物を提供する工程、を包含する、方法。
(項目25) 上記プロペラントが、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、ペルフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される化合物を含む、項目24に記載の方法。
(項目26) 上記穿孔化微細構造物が界面活性剤を含む、項目24または25に記載の方法。
(項目27) 上記界面活性剤が、リン脂質、非イオン性界面活性剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、生体適合性フッ化界面活性剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目26に記載の方法。
(項目28) 上記界面活性剤がリン脂質を含む、項目26または27に記載の方法。
(項目29) 上記リン脂質が、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ベヘノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目28に記載の方法。
(項目30) 上記穿孔化微細構造物が、約10%w/wを超える界面活性剤を含む、項目26〜29のいずれかに記載の方法。
(項目31) 上記穿孔化微細構造物が中空多孔性ミクロスフェアを含む、項目24〜30のいずれかに記載の方法。
(項目32) 上記多孔性微細構造物の空気力学的平均直径が、0.5μmと5μmとの間である、項目24〜31のいずれかに記載の方法。
(項目33) 上記生物活性薬剤が、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、肺界面活性剤、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗コリン作用剤、麻酔剤、抗結核剤、画像化剤、心臓血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルス性ベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目24〜32のいずれかに記載の方法。
(項目34) 生物活性薬剤の肺送達のための安定化分散物の製造におけるプロペラントの使用であって、これによって該安定化分散物は、計量吸入器を使用してエアロゾル化されて、それが必要な患者の肺気道の少なくとも一部へ投与されるエアロゾル化医薬品を提供し、該安定化分散物は、少なくとも1つの生物活性薬剤を含む複数の穿孔化微細構造物が分散された懸濁媒体を含み、ここで該懸濁媒体は、少なくとも1つのプロペラントを含み、かつ該穿孔化微細構造物に実質的に浸透する、使用。
(項目35) 上記プロペラントが、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、ペルフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される化合物を含む、項目34に記載の使用。
(項目36) 上記穿孔化微細構造物が界面活性剤を含む、項目34または35に記載の使用。
(項目37) 上記界面活性剤が、リン脂質、非イオン性界面活性剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、生体適合性フッ化界面活性剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目36に記載の使用。
(項目38) 上記界面活性剤がリン脂質を含む、項目36または37に記載の使用。
(項目39) 上記リン脂質が、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ベヘノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目38に記載の使用。
(項目40) 上記穿孔化微細構造物が、約10%w/wを超える界面活性剤を含む、項目36〜39のいずれかに記載の使用。
(項目41) 上記穿孔化微細構造物が中空多孔性ミクロスフェアを含む、項目36〜40のいずれかに記載の使用。
(項目42) 上記多孔性微細構造物の空気力学的平均直径が、0.5μmと5μmとの間である、項目36〜41のいずれかに記載の使用。
(項目43) 上記生物活性薬剤が、エアロゾル化後に30%を超える微細粒子割合を有する、項目36〜42のいずれかに記載の使用。
(項目44) 上記生物活性薬剤が、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、肺界面活性剤、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗コリン作用剤、麻酔剤、抗結核剤、画像化剤、心臓血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルス性ベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目36〜43のいずれかに記載の使用。
(項目45) 計量吸入器を使用して生物活性薬剤の効率的な肺沈着を増加させる方法であって:
約5μm未満の空気力学的平均直径を有する複数の穿孔化微細構造物と、該生物活性薬剤を会合させる工程;
該穿孔化微細構造物をプロペラントを含む懸濁媒体中に分散させて、呼吸器用分散物を提供する工程;および
該呼吸器用分散物を計量吸入器に充填する工程であって、ここで、該充填した計量吸入器が、作動の際に約20%w/wを超える微細粒子割合を提供する、工程、を包含する、方法。
(項目46) ファンデルワールス引力を低減することによって、分散物を安定化するための方法であって:
複数の穿孔化微細構造物を提供する工程;および
該穿孔化微細構造物を、少なくとも1つのプロペラントを含む懸濁媒体と組み合わせる工程であって、ここで該懸濁媒体および該穿孔化微細構造物は、約0.5未満の屈折率の差分値を提供するように選択される、工程、を包含する、方法。
(項目47) 1つ以上の生物活性薬剤の肺送達のための呼吸器用分散物であって、該分散物は、約20%w/wを超える界面活性剤および少なくとも1つの生物活性薬剤を含む複数の微粒子が分散されている懸濁媒体を含み、ここで該懸濁媒体は、少なくとも1つのプロペラントを含む、分散物。
(項目48) 上記プロペラントが、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン、ペルフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される化合物を含む、項目47に記載の分散物。
(項目49) 上記界面活性剤がリン脂質を含む、項目47または48に記載の分散物。
(項目50) 上記生物活性薬剤が、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、肺界面活性剤、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、抗コリン作用剤、麻酔剤、抗結核剤、画像化剤、心臓血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルス性ベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、項目47〜49のいずれかに記載の分散物。
(項目51) 1つ以上の生物活性薬剤の肺送達のための方法であって:
1つ以上の生物活性薬剤を含む複数の穿孔化微細構造物が分散されている懸濁媒体を含む、呼吸器用安定分散物を含む、加圧リザーバを提供する工程であって、ここで該懸濁媒体はプロペラントを含み、かつ該穿孔化微細構造物に実質的に透過する、工程;
加圧リザーバにおいて圧力を開放することによって該呼吸器用分散物をエアロゾル化して、該穿孔化微細構造物を含むエアロゾル化医薬品を提供する工程;および
治療的に有効な量の該エアロゾル化医薬品を、それが必要な患者の肺気道の少なくとも一部に投与する工程、を包含する、方法。
【0015】
(発明の要旨)
これらおよび他の目的は、本明細書中に開示された発明および本願発明によって提供される。そのために、本発明の方法および関連する組成物は、安定化調製物を使用する生物活性薬剤の改善された送達を広範に提供する。好ましくは、この生物活性薬剤は、気道を介して患者に投与するための形態である。より詳細には、本発明は、安定化分散物(安定化呼吸器分散物ともいわれる)および吸入システム(このような分散物およびその個々の成分を含む計量吸入器を含む)の形成およびその使用を提供する。標的化薬物送達のための先行技術の処方物とは異なり、本発明は、新規の技術を使用して、分散した成分間の引力を減少させ、かつ密度の差異を減少させ、それによって、フロキュレーション、沈降またはクリーム化による、開示された分散物の分解を遅延させる。このように、開示された安定な調製物は、計量吸入器による均一な用量送達を容易にし、かつより濃縮された分散物を可能にする。
【0016】
本発明の安定化調製物は、中空および/または多孔性の穿孔化微細構築物の使用によってこれらおよび他の利点を提供する。穿孔化微細構造物は、先行技術の分散調製物に顕著な、ファンデルワールス力のような分子引力を実質的に減少させる。特に、取り囲む流体媒体が浸透または充填される穿孔化(または多孔性の)微細構造物もしくは微粒子または懸濁媒体の使用は、粒子間の破壊性引力を有意に減少させる。さらに、分散物の成分は、分極率の差異(すなわち、減少Hamaker定数差分)を最小にするように、さらに調製物を安定化するように選択され得る。相対的に高密度の固体粒子または非多孔性粒子(代表的には、微粉にされた)を含む処方物とは異なり、本発明の分散物は、穿孔化微粒子によって規定される粒子の密度と懸濁媒体の密度との間の差異はわずかしか有さず、実質的に同質である。
【0017】
安定化調製物の形成に関連する、これまで価値が認められていなかった利点に加えて、穿孔化構造および対応する大きな表面積によって、微細構造物を、吸入の間に気体の流れによって、匹敵するサイズの非穿孔化粒子より容易に運ばれることが可能になる。次いで、これは、本発明の穿孔化微粒子が、微粉化された粒子または相対的に非多孔性のマイクロスフェアのような非穿孔化構造物よりも効率的に患者の肺へ運ばれることを可能にする。
【0018】
これらの利点を考慮して、本発明の分散物は、肺気道の少なくとも一部への生物活性調製物の投与を含む吸入治療に特に適合性である。本適用の目的のために、肺送達が意図されるこれらの安定化分散物は、呼吸器用分散物とよばれ得る。特に好ましい実施態様において、そのような呼吸器用分散物は、環境に適合可能なプロペラントを含み、そして生物活性薬剤を、それが必要な患者の肺気道または鼻道に効率的に送達するために、計量吸入器と組み合わせて使用される。
【0019】
従って、好ましい実施態様において、本発明は、1つ以上の生物活性薬物の肺送達または鼻送達のための安定な呼吸器用分散物を提供し、この分散物は、少なくとも1つの生物活性薬剤を含む複数の穿孔化微細構造物が分散している懸濁媒体を含み、ここで上記懸濁媒体は、少なくとも1つのプロペラントを含み、かつ上記穿孔化微細構造物に実質的に浸透する。
【0020】
本発明のすべての実施態様について、穿孔化微細構造物は、安定化分散物の形成に必要な物理学的特性を提供する、任意の生体適合性の材料から形成され得る。このことについて、微細構造物は、孔、空隙、欠陥または他の間隙空間を含み、これは、流体懸濁媒体が粒子の境界を自由に浸透または灌流することを可能にするため、分散成分間の密度の差異を減少させるかまたは最小にする。さらに、これらの拘束を仮定すると、任意の材料または構造が、微細構造マトリクスを形成するために使用され得ることが理解される。選択された材料に関して、微細構造物が少なくとも1つの界面活性剤を取り込むことが望ましい。好ましくは、この界面活性剤は、肺での使用について認可されたリン脂質または他の界面活性剤を含む。構造に関して、本発明の特に好ましい実施態様は、大きな内部空隙を規定する比較的薄い多孔性壁を有する噴霧乾燥した中空マイクロスフェアを取り入れるが、他の空隙含有構造物または穿孔化構造物が同様に意図される。
【0021】
上記で議論された穿孔化微細構造物とともに、本発明の安定化分散物は、連続相懸濁媒体をさらに含む。プロペラントとして作用する適切な蒸気圧を有する任意の生体適合性懸濁媒体が使用され得ることは本発明の利点である。特に好ましい懸濁媒体は、計量吸入器における使用に適合性である。一般的に、本発明の懸濁媒体における使用のために適切なプロペラントは、室温での圧力下で液化され得、そして吸入または局所適用する際に安全であり、毒物学的に無害でかつ副作用がないプロペラント気体である。さらに、選択された懸濁媒体が、懸濁された穿孔化微細構造物に関して、比較的非反応性であることが望ましい。このことについて、適合性のプロペラントは、一般的に、ヒドロフルオロアルカンプロペラントを含み得る。特定の好ましいプロペラントとしては、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(CFCHF)(HFA−134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン(CFCHFCF)(HFA−227)、ペルフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
本発明は、以下の工程を包含する、安定化分散物を形成する方法をさらに提供することが認識される:
少なくとも1つの生物活性薬剤を含む複数の穿孔化微細構造物を、少なくとも1つのプロペラントを含有する所定の容量の懸濁媒体と組み合わせて、呼吸器用ブレンドを提供する工程であって、ここでこの懸濁媒体は、この穿孔化微細構造物に浸透する、工程;および
この呼吸器用ブレンドを混合し、実質的に均質の呼吸器用分散物を提供する工程。
【0023】
上記に簡潔に述べられ(そして以下でより詳細に記載され)るように、形成された分散物の安定性は、穿孔化微細構造物と懸濁媒体との間のHamaker定数の差分を減少または最小にすることによって、さらに増加され得る。当業者は、Hamaker定数が、屈折率に比例する傾向があることを認識する。このことについて、本発明は、以下の工程を包含するファンデルワールス引力を低減することによって、分散物をさらに安定化することに関する好ましい実施態様を提供する:
複数の穿孔化微細構造物を提供する工程;および
この穿孔化微細構造物を、少なくとも1つのプロペラントを含む懸濁媒体と組み合わせる工程であって、ここでこの懸濁媒体およびこの穿孔化微細構造物は、約0.5未満の屈折率の差分値を提供するように選択される、工程。
【0024】
分散物の形成および安定化とともに、本発明はさらに、計量吸入器を使用する、少なくとも1つの生物活性薬剤の肺送達に関する。本明細書中に記載される用語「生物活性薬剤」とは、患者における疾患の存在もしくは非存在を診断するための方法、および/または患者における疾患を処置するための方法のような、事実上、治療的または診断的である適用に関連して使用される物質をいう。この生物活性薬剤は、穿孔化微細構造物に組み込まれるか、それとブレンドされるか、その表面にコーティングされるか、またはそうでなければそれと会合され得る。
【0025】
従って、本発明は、生物活性薬剤を肺送達するための安定化分散物の製造における、プロペラントの使用を提供する。これによって、安定化分散物は、計量吸入器を用いてエアロゾル化されて、エアロゾル化された医薬品が必要な患者の肺気道の少なくとも一部に投与されるエアロゾル化された医薬品を提供する。この安定化分散物は、少なくとも1つの生物活性薬剤を含む複数の穿孔化微細構造物が分散されている懸濁媒体を含む。ここで、この懸濁媒体は、少なくとも1つのプロペラントを含み、かつ上記穿孔化微細構造物に実質的に浸透する。
【0026】
本発明のなお別の局面は、以下の工程を含む、1つ以上の生物活性薬剤を肺送達するための方法を提供する:
1つ以上の生物活性薬剤を含む複数の穿孔化微細構造物が分散されている懸濁媒体を含有する呼吸器用安定分散物を含む加圧リザーバを提供する工程であって、ここで、上記の懸濁媒体はプロペラントを含み、かつ上記の穿孔化微細構造物に実質的に浸透する、工程;
上記呼吸器用分散物を、加圧リザーバにおける圧力を開放することによってエアロゾル化して、上記穿孔化微細構造物を含むエアロゾル化した医薬品を提供する工程;および
治療的有効量の上記のエアロゾル化した医薬品をそれが必要な患者の肺気道の少なくとも一部に投与する工程。
【0027】
好ましくは、開示された穿孔化微細構造物によって提供される空気力学的特性に起因して、本発明は、選択された生物活性薬剤を気管支気道へ送達することにおいて特に効率的であることが理解される。このように、別の局面において、本発明は、以下の工程を含む、計量吸入器を用いて生物活性薬剤の有効な肺沈着を増加させるための方法を提供する:
上記の生物活性薬剤と、約5μm未満の空気力学的平均直径を有する複数の穿孔化微細構造物とを会合させる工程;
上記の穿孔化微細構造物をプロペラントを含む懸濁媒体中に分散させて、呼吸器用分散物を提供する工程;および
上記の呼吸器用分散物を計量吸入器に充填する工程であって、ここで、上記の充填された計量吸入器が作動の際に約20%w/wを超える微細粒子割合を提供する、工程。
【0028】
投与に関して、本発明の別の局面は、患者に1つ以上の生物活性薬剤を投与するためのシステムに関する。好ましい実施態様において、このシステムは、計量吸入器を含む。従って、本発明はさらに、以下を含む、生物活性薬剤の肺投与のためのシステムを提供する:
流体リザーバ;
上記の流体リザーバに操作可能に連結された測定バルブ;および
上記流体リザーバ中の安定化分散物であって、この安定化分散物は、少なくとも1つの生物活性薬剤を含む複数の穿孔化微細構造物が分散されている懸濁媒体を含み、ここで上記の懸濁媒体は、少なくとも1つのプロペラントを含み、かつ上記の穿孔化微細構造物に実質的に浸透する。
【0029】
適合性の生物活性薬剤に関して、当業者は、任意の治療剤または診断剤が本発明の安定化分散物に組み込まれ得ることを理解する。例えば、この生物活性薬剤は、抗アレルギー剤、気管支拡張剤、気管支収縮剤、肺界面活性剤、鎮痛剤、抗生物質、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗コリン作用剤、マスト細胞インヒビター、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、麻酔剤、抗結核剤、画像化剤、心臓血管剤、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルス性ベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。上記に示されるように、選択された生物活性薬剤は、穿孔化微細構造物の単独の構造成分として使用され得る。逆に、穿孔化微細構造物は、組み込まれた生物活性薬剤に加えて、1つ以上の成分(すなわち、構造物質、界面活性剤、賦形剤など)を含有し得る。特に好ましい実施態様において、穿孔化微細構造物は、組み込まれた生物活性薬剤とともに、相対的に高濃度(約10%w/wを超える)の界面活性剤を含む。
【0030】
このように、本発明の別の局面は、約20%w/wを超える界面活性剤および少なくとも1つの生物活性薬剤を含有する複数の微粒子が分散されている懸濁媒体を含む1つ以上の生物活性薬剤の肺送達のための呼吸器用分散物を提供し、ここで上記の懸濁媒体は、少なくとも1つのプロペラントを含む。当業者は、他の物理化学的特徴に起因して、取り込まれた高界面活性剤粒子の形態は、分散物を実質的に不安定化することなく変化し得ることを理解する。このように、安定化分散物は、それらが比較的低い多孔性を示すか、または実質的に固体であるとしても、このような微粒子を伴って形成され得る。すなわち、本発明の好ましい実施態様は、高レベルの界面活性剤と会合した、穿孔化微細構造物またはミクロスフェアを含むが、受容可能な分散物は、同じ界面活性剤濃度の多孔性が比較的低い粒子を使用して形成され得る。このことについて、そのような実施態様は、本発明の範囲内であることが特に意図される。
【0031】
上述の成分に加えて、安定化分散物は、必要に応じて1つ以上の添加剤を含んで、安定性をさらに増強するか、または生体適合性を増加し得る。例えば、種々の界面活性剤、共溶媒、浸透圧調節剤(osmotic agent)、安定剤、キレート剤、緩衝剤、粘度調節剤、溶解度改変剤、および塩は、穿孔化微細構造物、懸濁媒体、またはその両方と組み合わせられ得る。そのような添加剤の使用は、当業者に理解され、そして薬剤の特定の量、比率、および型が、過度な実験なしに経験的に決定され得る。
【0032】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、その好ましい例示的な実施態様の以下の詳細な説明の考慮から当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1−1】図1A1〜1F2は、噴霧乾燥供給物に存在するフルオロカーボン発泡剤対リン脂質の比(PFC/PC)の変動の関数としての、粒子形態における変化を示す。走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡技術を用いて作製された顕微鏡写真は、FCの非存在下、または低いPFC/PC比では、硫酸ゲンタマイシンを含む、生じる噴霧乾燥した微細構造物が、特に、中空性でも多孔性でもないことを示す。逆に、高PFC/PC比は、粒子は、多くの孔を含み、そして実質的に中空であり、薄い壁を有する。
【図1−2】図1A1〜1F2は、噴霧乾燥供給物に存在するフルオロカーボン発泡剤対リン脂質の比(PFC/PC)の変動の関数としての、粒子形態における変化を示す。走査電子顕微鏡および透過電子顕微鏡技術を用いて作製された顕微鏡写真は、FCの非存在下、または低いPFC/PC比では、硫酸ゲンタマイシンを含む、生じる噴霧乾燥した微細構造物が、特に、中空性でも多孔性でもないことを示す。逆に、高PFC/PC比は、粒子は、多くの孔を含み、そして実質的に中空であり、薄い壁を有する。
【図2】図2は、好ましい中空性/多孔性形態を示す、クロモリンナトリウムを含む穿孔化微細構造物の走査電子顕微鏡画像である。
【図3】図3A〜3Dは、市販のクロモリンナトリウム処方物(Intal,Rhone−Poulenc−Rorer)と比較して、本発明の分散物によって提供された増強した経時的安定性を示す写真である。この写真において、左側の市販の処方物は急速に分離する一方で、本発明の教示に従って形成した右側の分散物は、さらに時間がたっても依然として安定なままである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
本発明は、多くの異なる形態で具体化され得るが、本発明の原理を例示するその特定の例示的な実施態様が、本明細書中に開示される。本発明は例示された特定の実施態様によって限定されないことが強調されるべきである。
【0035】
上記のように、本発明は、生物活性薬剤を送達するために有利に使用され得る安定化懸濁物の形成を可能にする方法および組成物を提供する。この懸濁物の増強された安定性は、懸濁された粒子の間のファンデルワールス引力を低下させること、および懸濁媒体と粒子との間の密度の差異を減少させることによって主に達成される。本明細書中の教示に従って、懸濁物安定性の増加は、穿孔化微細構造物中を操作することによって付与され得、次いで、穿孔化微細構造物は、適合性の懸濁媒体中に分散される。このことについて、穿孔化微細構造物は、好ましくは、孔、空隙、中空、欠陥または他の間隙空間を含み、これは、流体懸濁媒体が粒子境界を自由に透過するか、または灌流することを可能にする。特に好ましい実施態様は、中空および多孔性の両方である、外観がほとんど蜂の巣状または泡沫状である穿孔化微細構造物を含む。特に好ましい実施態様において、穿孔化微細構造は、噴霧乾燥された中空多孔性のマイクロスフェアを含む。
【0036】
本明細書に関して、用語「穿孔化微細構造物」および「穿孔化微粒子」とは、本明細書中の教示に従って懸濁媒体全体に分散された多孔性生成物(好ましくは、生物活性薬剤を含む)を記載するために使用される。従って、この用語は、文脈の状況からそうでないことが示されない限り、本明細書全体をとおして相互交換可能に使用され得る。
【0037】
穿孔化微細構造物が懸濁媒体(すなわち、プロペラント)中に配置される場合、懸濁媒体は、粒子に浸透し得、これによって、「均一分散物(homodispersion)」を生成し、ここで、連続相および分散相の両方が実質的に区別不能である。規定されたまたは「実質的な」粒子(すなわち、微粒子マトリクスによって制限された容量を含む粒子)が、懸濁される媒体のほぼ全体を構成し、粒子を凝集(フロキュレーション)させる力は、最小にされる。従って、規定された粒子と連続相との間の密度の差異は、微細構造物に媒体を充填させることによって最小にされ、このことによって、粒子のクリーム化または沈降を効率的に遅延させる。このように、本発明の安定化懸濁物は、吸入治療に特に適合性であり、そして計量吸入器(MDI)とともに使用されて、用量の再現性を改善し、MDIバルブの詰まりを低減させ、微細粒子割合を増加させ、かつ咽頭への沈着および生じる副作用を減少させ得る。
【0038】
吸入治療のための代表的な先行技術の懸濁物は、粒子間の静電気的斥力を増加させるために、固体微粉化粒子および少量(<1%w/w)の界面活性剤(例えば、レシチン、Span−85、オレイン酸)を含む。明確な対照において、本発明の懸濁物は、粒子間の引力を減少させるよりむしろ、粒子間の斥力を増加させないように設計される。非水性媒体中でフロキュレーションさせる主な力は、ファンデルワールス引力である。ファンデルワールス力は、起源が量子力学的であり、そしてゆらぎ双極子間の引力(すなわち、誘導双極子−誘導双極子相互作用)として可視化され得る。分散力は非常に短距離であり、原子間の距離の6乗と比例する。2つの巨視的物体が互いに接近する場合、原子間の分散物引力は合計になる。得られる力は、かなりより長距離であり、そして相互作用する物体の外形に依存する。
【0039】
より詳細には、2つの球状粒子について、ファンデルワールスポテンシャルVの大きさは以下:
【0040】
【数1】

によって近似され得、ここでAeffは、粒子および媒体の性質の説明をする有効Hamaker定数であり、Hは、粒子間の距離であり、そしてRおよびRは、球状粒子1および2の半径である。有効Hamaker定数は、分散した粒子と懸濁媒体との分極率の差異に比例し:
【0041】
【数2】

ここで、ASMおよびAPARTは、それぞれ、懸濁媒体および粒子についてのHamaker定数である。懸濁された粒子および分散媒体の性質が類似するにつれて、ASMおよびAPARTの大きさはより近くなり、そしてAeffおよびVはより小さくなる。すなわち、懸濁媒体に関連するHamaker定数と、分散された粒子に関連するHamaker定数との間の差異を低減させることによって、有効Hamaker定数(および対応するファンデルワールス引力)は低減され得る。
【0042】
Hamaker定数における差異を最小にする1つの方法は、「均質分散物」を作製することであり、すなわち連続相および分散相の両方を上で議論されるように本質的に区別不可能にすることである。有効Hamaker定数を低減するように粒子の形態を開発することに加えて、(穿孔化微細構造物を規定する)構造マトリクスの成分は、好ましくは、選択された懸濁媒体のHamaker定数に比較的近いHamaker定数を示すように選択される。このことについて、懸濁媒体および微粒子成分のHamaker定数の実際の値を使用して、分散物成分の適合性を決定し、そして調製物の安定性に関する良好な指標を提供し得る。あるいは、測定可能なHamaker定数と一致する、容易に識別可能な特徴的な物理学的値を使用して、比較的適合性な穿孔化微細構造成分および懸濁媒体を選択し得る。
【0043】
このことについて、多くの化合物の屈折率の値が、対応するHamaker定数と比例する傾向があることが見出されている。従って、容易に測定可能な屈折率の値は、懸濁媒体および粒子賦形剤のどの組み合わせが、比較的低い有効Hamaker定数および関連する安定性を有する分散物を提供するかに関して、かなり良好な指標を提供するために使用され得る。化合物の屈折率は、広範に利用可能であるか、または容易に誘導されるので、そのような値の使用は、過度な実験なしに本発明に従う安定化分散物の形成を可能にすることが理解される。例示のみの目的のために、開示される分散物と適合性のいくつかの化合物の屈折率を、すぐ下の表1に提供する:
【0044】
【表1】

上記の適合性分散物成分と一致して、当業者は、成分が約0.5未満の屈折率差分を有する分散物の形成が好ましいことを理解する。すなわち、懸濁媒体の屈折率は、好ましくは、穿孔化粒子または微細構造物に関し、約0.5以内の屈折率である。懸濁媒体および粒子の屈折率が、直接的に測定され得るか、または各それぞれの相における主要な成分の屈折率を使用して近似され得ることがさらに理解される。穿孔化微細構造物について、主要な成分は、重量パーセントに基づいて決定され得る。懸濁媒体について、主要な成分は、代表的には、容量パーセントに基づいて誘導される。本発明の選択された実施態様において、屈折率の差分値は、好ましくは、約0.45未満、約0.4未満、約0.35未満、または約0.3未満でさえある。より低い屈折率差分が、より大きな分散物安定性を意味すると仮定すると、特に好ましい実施態様は、約0.28未満、約0.25未満、約0.2未満、約0.15未満、または約0.1未満でさえある屈折率差分を含む。本開示が与えられれば、当業者は、どの賦形剤が特に適合性であるかを過度の実験を伴わずに決定し得ると考えられる。好ましい賦形剤の最終的な選択はまた、他の因子(生体適合性、規制状態、製造の容易さ、および費用を含む)によって影響される。
【0045】
懸濁媒体中で可溶性である賦形剤(すなわち、界面活性剤)を必要とする安定化懸濁物を提供する先行技術の試みとは対照的に、本発明は、少なくとも一部には、中空多孔性微細構造物の構造マトリクス内に生物活性薬剤および賦形剤を固定することによって安定化分散物を提供する。従って、本発明において有用な好ましい賦形剤は、懸濁媒体において実質的に不溶性である。そのような条件下では、例えばレシチンのような界面活性剤でさえ、本発明における界面活性剤の特性を有するとは考えられない。なぜなら、界面活性剤の性能は、懸濁媒体において両親媒性物質が妥当に可溶性であることが必要であるからである。不溶性賦形剤の使用はまた、オストワルド熟成による粒子の成長の可能性を低減させる。
【0046】
先に議論されるように、粒子と連続相との間の密度の差異の最小化は、懸濁媒体が粒子容量のほとんどを構成するような、微細構造物の穿孔化および/または中空性質に大きく依存する。本明細書中で使用する用語「粒子容量」は、粒子が固体である場合、取り込まれた中空/多孔性粒子によって置換される懸濁媒体の容量(すなわち、粒子の境界によって規定される容量)に対応する。説明の目的のために、そして上記に議論するように、これらの流体が充填された粒子の容量は、「実質的粒子」とよばれ得る。好ましくは、生物活性薬剤/賦形剤シェルまたはマトリクスの平均容量(すなわち、穿孔化微細構造物によって実際に置換される媒体の容量)は、平均の粒子容量の70%未満(または、実質的粒子の70%未満)を含む。より好ましくは、微粒子マトリクスの容量は、平均粒子容量の約50%未満、約40%未満、約30%未満、または約20%未満さえ含む。さらにより好ましくは、シェル/マトリクスの平均容量は、平均粒子容量の約10%未満、約5%未満、または約3%未満を含む。当業者は、そのようなマトリクスまたはシェル容量が、代表的には、中に見出される懸濁媒体によって圧倒的に示される実質的な粒子密度にほとんど寄与しないことを理解する。当然のことながら、選択された実施態様において、穿孔化微細構造物を形成するために使用される賦形剤は、得られるマトリクスまたはシェルの密度が、周囲の懸濁媒体の密度に近似するように選択され得る。
【0047】
そのような微細構造物の使用は、実質的粒子の見かけの密度が、ファンデルワールス引力を実質的に排除して、懸濁媒体の密度に接近するのを可能にすることが理解される。さらに、先に議論されるように、微粒子マトリクスの成分は、好ましくは、できる限り多くの他の事項を考慮して、懸濁媒体の密度に近似するように選択される。従って、本発明の好ましい実施態様において、実質的粒子および懸濁媒体は、約0.6g/cm未満の密度差異を有する。すなわち、実質的粒子(マトリクスの境界によって規定される)の平均密度は、懸濁媒体の約0.6g/cm以内である。より好ましくは、実質的粒子の平均密度は、選択された懸濁媒体の0.5、0.4、0.3、または0.2g/cm以内である。さらにより好ましい実施態様において、密度差分は、約0.1未満、約0.05未満、約0.01未満、または約0.005g/cm未満でさえある。
【0048】
上記の利点に加えて、中空多孔性粒子の使用は、懸濁物中に非常に高い容量割合の粒子を含む自由流動(free−flowing)分散物の形成を可能にする。密なパッキングに接近する容量割合での先行技術の分散物の処方は、一般的に分散物の粘弾性挙動における劇的な増加を生じることが理解されるべきである。このタイプの流体力学的挙動は、MDI適用には適切ではない。当業者は、粒子の容量割合が、粒子の見かけの容量(すなわち、粒子容量)とシステムの総容量との比として規定され得ることを理解する。各システムは、最大の容量割合またはパッキング割合を有する。例えば、単純な立方体配置での粒子は、0.52という最大のパッキング割合に達するが、面心立方/六方最密構造での粒子は、約0.74という最大パッキング割合に達する。非球形粒子または多分散システムについて、誘導される値は異なる。従って、最大パッキング割合は、頻繁に、所定のシステムについて経験的パラメーターであると考えられる。
【0049】
ここで、驚くべきことに、本発明の多孔性構造物が、密なパッキングに接近する高容量割合でさえ、望ましくない粘弾性挙動を示さないことが見出された。対照的に、それらは依然として、固体微粒子を含む類似の懸濁物と比較してほとんどまたは全く降伏応力を有さない、自由流動の低粘性懸濁物のままである。開示される懸濁物の低粘性は、少なくとも大部分が、流体充填中空多孔性粒子間のファンデルワールス引力が比較的低いことに起因すると考えられる。このように、選択された実施態様において、開示された分散物の容量割合は、約0.3を越える。他の実施態様は、0.3〜約0.5のオーダー、または0.5〜約0.8のオーダーのパッキング値を有し得、より高い値は、密なパッキング状態に接近する。さらに、粒子沈殿は、容量割合が密なパッキングに接近する場合に自然に減少する傾向にあるので、比較的濃縮された分散物の形成は、処方物の安定性をさらに増大させ得る。
【0050】
本発明の方法および組成物は、比較的濃縮された懸濁物を形成するために使用され得るが、安定化因子は、かなり低いパッキング容量で等しく十分に作用し、そしてそのような分散物は、本開示の範囲内にあることが意図される。このことについて、低い容量割合を含む分散物は、先行技術を使用して安定化することが非常に困難であることが理解される。逆に、本明細書中に記載されるように生物活性薬剤を含む穿孔化微細構造物を取り込む分散物が、低い容量割合でさえ特に安定である。従って、本発明は、安定化分散物、特に呼吸器用分散物が、0.3未満の容量割合で形成され、そして使用されることを可能にする。いくつかの好ましい実施態様において、容量割合は、約0.0001〜0.3、より好ましくは0.001〜0.01である。さらに他の好ましい実施態様は、約0.01〜約0.1の容量割合を有する安定化懸濁物を含む。
【0051】
本発明の穿孔化微細構造物はまた、微粉化生物活性薬剤の希薄懸濁物を安定化するために使用され得る。そのような実施態様において、穿孔化微細構造物は、懸濁物における粒子の容量割合を増大するために添加され得、それによってクリーム化または沈殿に関する懸濁物安定性を増大する。さらに、これらの実施態様において、取り込まれた微細構造物はまた、微粉化薬物粒子の密な接近(凝集)を防ぐ際に作用し得る。そのような実施態様において取り込まれる穿孔化微細構造物は、必ずしも生物活性薬剤を含まないことが理解されるべきである。むしろ、それらは、種々の賦形剤(界面活性剤を含む)を除いて形成され得る。
【0052】
本明細書をとおして示されるように、本発明の分散物は、好ましくは、安定化されている。より広範な意味において、用語「安定化分散物」とは、生物活性薬剤の効率的な送達を提供するのに要求される程度まで、凝集、フロキュレーション、またはクリーム化に耐える任意の分散物を意味することが考えられる。当業者は、所定の分散物の安定性を評価するために使用され得るいくつかの方法が存在することを理解する一方で、本発明の目的のために好ましい方法が、クリーム化時間または沈降時間を測定することを包含する。このことについて、クリーム化時間は、懸濁された薬物粒子が、懸濁媒体の1/2容量までクリーム化するまでの時間として規定される。同様に、沈降時間は、粒子が液体媒体の1/2容量が沈降するのにかかる時間として規定され得る。調製物のクリーム化時間を測定する、1つの比較的単純な方法は、封着したガラスバイアル中に粒子懸濁物を提供することである。バイアルは、比較的均質な分散物を提供するように攪拌または振盪され、次いで、これをとっておいて、適切な機器を用いるか、または肉眼的検査によって観察する。次いで、懸濁された粒子が懸濁媒体の1/2容量までクリーム化する(すなわち、懸濁媒体の上部1/2に対して生じる)のに必要な時間、または1/2容量内に沈降する(すなわち、媒体の底部1/2内に沈降する)のに必要な時間が記述される。1分間を超えるクリーム化時間を有する懸濁処方物が好ましく、適切な安定性を示す。より好ましくは、安定化分散物は、1、2、5、10、15、20または30分間を超えるクリーム化時間を備える。特定の好ましい実施態様において、安定化分散物は、約1、1.5、2、2.5、または3時間を超えるクリーム化時間を示す。実質的に等しい沈降時間は、適合性の分散物の指標である。
【0053】
最終的な組成または正確なクリーム化時間に関係なく、本発明の呼吸器用安定分散物は、好ましくは、複数の穿孔化微細構造物、または懸濁媒体中に分散もしくは懸濁された微粒子を含む。このような場合、穿孔化微細構造物は、空隙、孔、欠陥、中空、空間、間隙空間、開口部、穿孔、または穴を示すか、規定するか、または含む構造マトリクスを含み、これは、周囲の懸濁媒体が、微細構造物に自由に浸透、充填、または充満するのを可能にする。穿孔化微細構造物の絶対的な形状(形態とは対照的に)は、一般には重要ではなく、そして所望の安定性特徴を提供する任意の全体的な構造が、本発明の範囲内にあることが意図される。従って、好ましい実施態様は、およそマイクロスフェアの形状を含み得る。しかし、陥没した粒子、変形した粒子、または砕けた粒子もまた適合性である。このただし書きによって、本発明の特に好ましい実施態様が、噴霧乾燥した中空多孔性ミクロスフェアを含むことが理解される。
【0054】
投与の際に、分散物安定性を最大にし、そして分布を最適化するために、穿孔化微細構造物の平均の幾何学的粒子サイズは、好ましくは約0.5〜50μm、より好ましくは1〜30μmである。大きな粒子(すなわち、50μmを越える)は使用されるべきではないことが理解される。なぜなら、大きな粒子は、凝集するか、懸濁物から分離して容器のバルブまたは孔を詰まらせる傾向にあり得るからである。特に好ましい実施態様において、穿孔化微細構造物の平均の幾何学粒子サイズ(または直径)は、20μm未満または10μm未満である。より好ましくは、平均の幾何学直径は約5μm未満、なおより好ましくは、約2.5μm未満である。特に好ましい実施態様において、穿孔化微細構造物は、直径が約1〜10μmの乾燥中空多孔性マイクロスフェアシェルの粉末を含み、約0.1μm〜約0.5μmのシェル厚を有する。分散物および構造マトリクス成分の粒子の濃度が、選択された粒子サイズの送達特徴を最適化するように調整され得ることは、本発明の特定の利点である。
【0055】
本明細書を通して議論されるように、微細構造物の多孔度は、分散物の安定性を確立することにおいて重要な役割を果たし得る。このことについて、穿孔化微細構造物の平均多孔度は、最新の画像化技術に連結された電子顕微鏡によって測定され得る。より詳細には、穿孔化微細構造物の代表的サンプルの電子顕微鏡写真が得られ得、調製物の多孔度を定量するためにデジタルで解析され得る。このような方法論は、当該分野で周知であり、過度の実験をすることなく行われ得る。
【0056】
本発明の目的のために、穿孔化微細構造物の平均多孔度(すなわち、内部および/または中心の空隙に対して開いている粒子表面積の百分率)は、約0.5%〜約80%の範囲に及び得る。より好ましい実施態様において、平均多孔度は、約2%〜約40%の範囲に及ぶ。選択された製造パラメーターに基づいて、平均多孔度は微細構造物表面積の約2%、5%、10%、15%、20%、25%、または30%を越え得る。他の実施態様において、微細構造物の平均多孔度は、約40%、50%、60%、70%または80%をすら越え得る。孔自体に関して、それらは、代表的には約5nm〜約400nmのサイズに及び、平均孔サイズは、好ましくは約20nm〜約200nmの範囲である。特に好ましい実施態様において、平均孔サイズは、約50nm〜約100nmの範囲である。図1A1〜1F2において理解され得、そして以下により詳細に議論されるように、孔サイズおよび多孔度は、取り込まれた成分および製造パラメーターの注意深い選択によって綿密に制御され得ることが本発明の有意な利点である。
【0057】
幾何学的構造とともに、微細構造物の穿孔化(perforated)もしくは多孔性および/または中空設計はまた、MDIの作動の際に得られるエアロゾルの特性において重要な役割を果たす。このことについて、穿孔化構造、および分散された微粒子の比較的高い表面積は、それらが、匹敵するサイズの非穿孔化粒子よりもずっと容易に、かつより長い距離で吸入の間に気体の流動とともに運ばれるのを可能にする。それらの高い多孔度のために、粒子の密度は、顕著に1.0g/cm未満であり、代表的には0.5g/cm未満であり、より頻繁には0.1g/cmのオーダーであり、そして0.01g/cmほど小さい。幾何学的粒子サイズとは異なり、穿孔化微細構造物の空気力学粒子サイズdaerは、以下の粒子密度ρ:dser=dgeoρに実質的に依存し、ここでdgeoは、幾何学的直径である。0.1g/cmの粒子密度について、daerは、dgeoよりおよそ3倍小さく、肺の末梢領域への増加した粒子沈着、および相応して咽頭へのより少ない沈着をもたらす。このことについて、穿孔化微細構造物の平均の空気力学的直径は、好ましくは約5μm未満であり、より好ましくは約3μm未満であり、特に好ましい実施態様においては、約2μm未満である。そのような粒子分布は、投与される薬剤の深部肺沈着を増加させるように作用する。
【0058】
引き続いて実施例において示されるように、本発明のエアロゾル処方物の粒子サイズ分布は、カスケードインパクションのような従来技術によって、または飛行時間型分析方法によって測定可能である。加圧吸入における放出される用量の決定は、提唱された米国薬局方方法(Phamacopeial Previews、22(1996)3065;これは、本明細書中において参考として援用される)に従って行われた。これらおよび関連する技術は、エアロゾルの「微細粒子割合」(これは、肺に効果的に沈着されるようである粒子に対応する)が計算されるのを可能にする。本明細書中で使用される語句「微細粒子割合」とは、8段階のAndersenカスケードインパクターのうちのプレート2〜7上の吹出し口から、作動毎に送達される活性な医薬品の総量の百分率をいう。そのような測定に基づいて、本発明の処方物は、穿孔化微細構造物のうちの約20重量%以上(w/w)の微細粒子割合を好ましくは有する。より好ましくは、それらは、約25%〜80%w/w、そしてさらにより好ましくは約30〜70%w/wの微細粒子割合を示す。選択された実施態様において、本発明は、好ましくは、約30重量%、約40%重量、約50重量%、約60重量%、約70重量%、または約80重量%を越える微細粒子割合を含む。
【0059】
さらに、先行技術の調製物と比較した場合、本発明の処方物が、インパクター誘導ポート上ならびにプレート0および1上に比較的低い沈着率を示すこともまた見出されている。これらの成分の沈着は、ヒトの咽頭における沈着と関連する。より詳細には、市販のCFC吸入器は、総用量の約40〜70%(w/w)の咽頭沈着をシミュレートしたが、本発明の処方物は、代表的には、約20%w/w未満で沈着する。従って、本発明の好ましい実施態様は、約40%w/w、35%w/w、30%w/w、25%w/w、20%w/w、15%w/w、または10%w/w未満の咽頭沈着をシミュレートする。当業者は、本発明が提供した咽頭沈着の有意な減少によって、咽頭刺激およびカンジダ症のような、関連する局所的な副作用の対応する減少が生じることを理解する。
【0060】
本発明によって提供された有利な沈着プロファイルに関して、MDIプロペラントは、代表的には、懸濁された粒子をデバイスから咽頭後方に向かって高速で押し出す(force)ことが周知である。先行技術の処方物は、代表的には、有意な百分率の大きな粒子および/または凝集物を含むので、放出される用量の2/3以上ほどは、咽頭に衝突し得る。さらに、上記に議論されるように、本発明の安定化分散物は、投与の際に、驚くほど低い咽頭沈着しか生じない。特定の理論のいずれにも拘束されることを望まないが、本発明によって提供された咽頭沈着の減少が、粒子凝集の減少、ならびに取り込まれた微細構造物の中空および/または多孔性形態から生じるようである。すなわち、分散された微細構造物の中空および多孔性性質は、ちょうど中空/多孔性ホイッフルボールが野球のボールより遅く進むように、プロペラントの流れにおける粒子の速度を低下させる。従って、咽頭の後方に衝突するかまたは固着するよりむしろ、比較的遅く進む粒子が患者のよる吸入に供される。従って、実質的により高い百分率の、投与される生物活性薬剤は、効率的に吸収され得る肺気道に沈着する。
【0061】
どの構造および/またはサイズ分布が、穿孔化微細構造物について最終的に選択されるとしても、規定構造マトリクスの組成物は、多くの生体適合性材料のいずれか1つを含み得る。本明細書中で使用される用語「構造マトリクス」または「微細構造物マトリクス」は、等価であり、そして上記に説明したように安定化分散物の形成を促進する複数の空隙、開口部、中空、欠陥、孔、穴、亀裂などを規定する穿孔化微細構造物を形成する任意の固体材料を意味すると考えられることが理解される。構造マトリクスは、水性環境において、可溶性でも不溶性でもよい。好ましい実施態様において、構造マトリクスによって規定される穿孔化微細構造物は、少なくとも1つの界面活性剤を取り込む噴霧乾燥された中空多孔性ミクロスフェアを含む。他の選択された実施態様のために、粒子材料は、懸濁を補助するポリマー、界面活性剤、または他の化合物で1回以上コーティングされ得る。
【0062】
より一般には、穿孔化微細構造物は、選択された懸濁媒体に関して比較的安定であり、そして好ましくは不溶性である任意の生体適合性材料から形成され得、そして必要とされる穿孔化構造を提供し得る。広範な種々の材料が、粒子を形成するために使用され得るが、特に好ましい実施態様において、構造マトリクスは、リン脂質またはフッ化界面活性剤のような界面活性剤と会合されるか、またはそれを含む。必要とはされないが、適合性界面活性剤の取り込みは、呼吸器用分散物の安定性を改善し、肺沈着を増大し、そして懸濁物の調製を容易にし得る。さらに、成分を変更することによって、構造マトリクスの密度は、周囲の媒体の密度に近似し、そしてさらに分散物を安定化するように調整され得る。最後に、以下でさらに詳細に議論されるように、穿孔化微細構造物は、好ましくは少なくとも1つの生物活性薬剤を含む。
【0063】
上記に示されるように、本発明の穿孔化微細構造物は、必要に応じて、1つ以上の界面活性剤と会合されるか、またはそれらを含み得る。さらに、混和できる界面活性剤が、必要に応じて懸濁媒体液相と組み合わされ得る。本発明を実施するために必要ではないが、界面活性剤の使用は、さらに、分散物安定性を増大し得るか、処方手順を簡便にし得るか、または投与の際のバイオアベイラビリティーを増大し得ることが当業者によって理解される。MDIに関しては、界面活性剤は、測定バルブを潤滑にするように作用し、このことによって、バルブ作動および分散される用量の正確性の一貫した再現性を確実にする。当然のことながら、界面活性剤の組み合わせ(液相中での1つ以上の界面活性剤の使用、および穿孔化微細構造物と会合した1つ以上の界面活性剤の使用を含む)は、本発明の範囲内にあることが意図される。「〜と会合されるか、または〜を含む」によって、構造マトリクスまたは穿孔化微細構造物が、界面活性剤を取り込み得るか、それを吸着し得るか、それを吸収し得るか、それでコーティングされ得るか、またはそれらによって形成され得ることを意味する。
【0064】
広い意味において、本発明における使用のために適切な界面活性剤は、構造マトリクスと懸濁媒体との間の界面に層を形成することによって、呼吸器用安定分散物の形成および維持を補助する任意の化合物または組成物を含む。界面活性剤は、共界面活性剤の場合においてのように、単一の化合物または化合物の任意の組み合わせを含み得る。特に好ましい界面活性剤は、プロペラント中で実質的に不溶性であり、フッ化されておらず、そして飽和脂質および不飽和脂質、非イオン性界面活性剤、非イオン性ブロックコポリマー、イオン性界面活性剤、ならびにそのような薬剤の組み合わせからなる群より選択される。上記の界面活性剤に加えて、適切な(すなわち、生体適合性)フッ化界面活性剤は、本明細書中の教示と適合性であり、そして所望の安定化調製物を提供するために使用され得ることが強調されるべきである。
【0065】
天然の供給源および合成供給源の両方由来の脂質(リン脂質を含む)は、本発明と特に適合性であり、そして構造マトリクスを形成するために種々の濃度で使用され得る。一般に、適合性脂質は、約40℃を越えるゲルから液晶への相転移を有する脂質を含む。好ましくは、取り込まれた脂質は、比較的長い鎖(すなわち、C16〜C22)の飽和脂質であり、そしてより好ましくはリン脂質を含む。開示される安定化調製物において有用な例示的リン脂質は、卵ホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、短鎖ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、糖脂質、ガングリオシドGM1、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸、カルジオリピン;脂質保有ポリマー鎖(例えば、ポリエチレングリコール、キチン、ヒアルロン酸、またはポリビニルピロリドン);脂質保有スルホン化単糖類、脂質保有スルホン化二糖類、および脂質保有スルホン化多糖類;脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸);コレステロール、コレステロールエステル、およびコレステロールヘミスクシネートを含む。それらの優れた生体適合性特徴に起因して、リン脂質ならびにリン脂質およびポロキサマーの組み合わせは、本明細書中に開示される安定化分散物における使用に特に適切である。
【0066】
適合性非イオン性界面活性剤は以下を含む:ソルビタントリオレアート(Span(登録商標)85)、ソルビタンセスキオレアート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、およびポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアートを含むソルビタンエステル、オレイルポリオキシエチレン(2)エーテル、ステアリルポリオキシエチレン(2)エーテル、ラウリルポリオキシエチレン(4)エーテル、グリセロールエステル、ならびにスクロースエステル。他の適切な非イオン性界面活性剤は、McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents(McPublishing Co.,Glen Rock、New Jersey)(これは、本明細書中においてその全体が援用される)を用いて容易に同定され得る。好ましいブロックコポリマーは、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのジブロックコポリマーおよびトリブロックコポリマーを含み、これには、ポロキサマー188(Pluronic(登録商標)F−68)、ポロキサマー407(Pluronic(登録商標)F−127)、およびポロキサマー338が挙げられる。スルホスクシネートナトリウムのようなイオン性界面活性剤および脂肪酸セッケンもまた利用され得る。好ましい実施態様において、微細構造物は、オレイン酸またはそのアルカリ性塩を含み得る。
【0067】
上記の界面活性剤に加えて、カチオン性界面活性剤または脂質は、RNAまたはDNAの送達の場合において特に好ましい。適切なカチオン性脂質の例には以下が挙げられる:DOTMA、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N,−トリメチルアンモニウムクロリド;DOTAP、1,2−ジオレイルオキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン;ならびにDOTB、1,2−ジオレイル−3−(4’−トリメチルアンモニオ)ブタノイル−sn−グリセロール。ポリリジンのようなポリカチオン性アミノ酸およびポリアルギニンもまた意図される。
【0068】
当業者はさらに、広範な界面活性剤が、必要に応じて本発明と組み合わせて使用され得ることを理解する。さらに、所定の適用のために最適な界面活性剤またはその組み合わせは、過度な実験を必要としない経験的研究によって容易に決定され得る。懸濁媒体における任意の取り込まれた界面活性剤の好ましい不溶性は、関連する表面活性を劇的に減少することがさらに理解される。このように、これらの材料が、水性生物活性表面(例えば、肺における水性低相(aqueous hypophase))を収縮させる前に界面活性剤様特徴を有するか否かは議論の余地がある。最後に、以下でより詳細に議論されるように、多孔性粒子を含む界面活性剤はまた、構造マトリクスを形成するように処理する間に使用される前駆体水中油型エマルジョン(すなわち、噴霧乾燥供給ストック)の形成において有用であり得る。
【0069】
先行技術の処方物とは異なり、驚くべきことに、比較的高いレベルの界面活性剤(すなわち、リン脂質)の取り込みが、開示される分散物の安定性を増大するために使用され得ることが見出された。すなわち、重量対重量に基づいて、穿孔化微細構造物の構造マトリクスは、比較的高いレベルの界面活性剤を含み得る。このことについて、穿孔化微細構造物は、好ましくは、約1%w/w、約5%w/w、約10%w/w、約15%w/w、約18%w/w、または約20%w/wすら超える界面活性剤を含む。より好ましくは、穿孔化微細構造物は、約25%w/w、約30%w/w、約35%w/w、約40%w/w、約45%w/w、または約50%w/wを越える界面活性剤を含む。なお他の例示的な実施態様は、穿孔化微細構造物を含み、ここで界面活性剤は、約55%w/w、約60%w/w、約65%w/w、約70%w/w、約75%w/w、約80%w/w、約85%w/w、約90%w/w、または約95%w/wすら越えて存在する。選択された実施態様において、穿孔化微細構造物は、本質的に100%w/wの界面活性剤(例えば、リン脂質)を含む。当業者は、このような場合において、構造マトリクスの平衡(適用可能である場合)は、好ましくは、生物活性薬剤または非界面活性賦形剤もしくは添加物を含むことを理解する。
【0070】
このような界面活性剤レベルが穿孔化微細構造物において好ましく使用されるが、それらは、比較的非多孔性、または実質的に固体の粒子を含む安定化されたシステムを提供するために使用され得る。すなわち、好ましい実施態様は、高レベルの界面活性剤と会合した穿孔化微細構造物またはマイクロスフェアを含むが、受容可能な分散物が、同じ界面活性剤濃度の比較的低い多孔度の粒子(すなわち、約10%w/wまたは20%w/wより大きい)を用いて形成され得る。このことについて、そのような実施態様は、本発明の範囲内にあることが特に意図される。
【0071】
本発明の他の好ましい実施態様において、穿孔化微細構造物を規定する構造マトリクスは、必要に応じて、合成もしくは天然のポリマーまたはそれらの組み合わせを含む。このことについて、有用なポリマーは、ポリラクチド、ポリラクチド−グリコリド、シクロデキストリン、ポリアクリレート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ酸無水物、ポリラクタム、ポリビニルピロリドン、ポリサッカリド(デキストラン、デンプン、キチン、キトサンなど)、ヒアルロン酸、タンパク質(アルブミン、コラーゲン、ゼラチンなど)を含む。当業者は、適切なポリマーを選択することによって、呼吸器用分散物の送達プロファイルが、生物活性薬剤の有効性を最適化するために調整され得ることを理解する。
【0072】
上記のポリマー材料および界面活性剤に加えて、エアロゾル処方物に他の賦形剤を添加して、ミクロスフェアの剛直性、薬物送達および沈着、貯蔵寿命、および患者の受容性を改善することが望ましくあり得る。そのような任意の賦形剤としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:着色剤、味覚マスキング剤、緩衝剤、吸湿剤、抗酸化剤、および化学的安定剤。さらに、種々の賦形剤は、粒子マトリクスに取り込まれるか、またはそれに添加され、穿孔化微細構造物(すなわち、ミクロスフェア)の構造および形状を提供し得る。これらの賦形剤は、単糖類、二糖類、および多糖類を含む炭水化物を含み得るがこれらに限定されない。例えば、デキストロース(無水および一水和物)、ガラクトース、マンニトール、D−マンノース、ソルビトール、ソルボースなどのような単糖類;ラクトース、マルトース、スクロース、トレハロースなどのような二糖類;ラフィノースなどのような三糖類;ならびにデンプン(ヒドロキシエチルデンプン)、シクロデキストリン、およびマルトデキストリンのような他の炭水化物。アミノ酸もまた適切な賦形剤であり、グリシンが好ましい。炭水化物およびアミノ酸の混合物は、さらに、本発明の範囲内であると考えられる。無機塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム)、有機塩(例えば、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、塩酸トロメタミン)の両方、および緩衝剤を含むこともまた意図される。
【0073】
なお他の好ましい実施態様は、接触点での滞留時間を延長するか、または粘膜(mucosae)を介する透過を増強する荷電した種を含み得るか、またはそれでコーティングされ得る穿孔化微細構造物を含む。例えば、アニオン性荷電は、粘膜接着に有利であることが公知であるが、カチオン性荷電は、遺伝物質のような負に荷電した生物活性薬剤と、形成された微粒子を会合させるために使用され得る。荷電は、ポリアクリル酸、ポリリジン、ポリ乳酸、およびキトサンのようなポリアニオン性またはポリカチオン性材料の会合または取り込みを介して与えられ得る。
【0074】
上記の成分に加えてか、またはそれの代わりに、穿孔化微細構造物は、好ましくは少なくとも1つの生物活性薬剤を含む。本明細書中で使用される「生物活性薬剤」とは、その性質が治療的または診断的である適用と組み合わせて、例えば患者における疾患の存在もしくは非存在を診断するための方法において、および/または患者における疾患を処置するための方法において使用される物質をいう。本発明に従う使用のための特に好ましい生物活性薬剤は、喘息のような呼吸器障害の吸入治療による処置における使用のための抗アレルギー剤、ペプチド、およびタンパク質、気管支拡張剤、および抗炎症ステロイドを含む。
【0075】
本発明の穿孔化微細構造物が、1つ以上の生物活性薬剤を排他的に(すなわち、100%w/w)含み得ることが理解される。しかし、選択された実施態様において、穿孔化微細構造物は、その活性に依存して、かなり少ない生物活性薬剤を取り込み得る。従って、高度に活性な材料について、穿孔化微細構造物は、0.001重量%ほど少なく取り込み得るが、約0.1%w/wを越える濃度が好ましい。本発明の他の実施態様は、約5%w/w、約10%w/w、約15%w/w、約20%w/w、約25%w/w、約30%w/w、または約40%w/wすら越える生物活性薬剤を含み得る。なおより好ましくは、穿孔化微細構造物は、約50%w/w、約60%w/w、約70%w/w、約75%w/w、約80%w/w、または約90%w/wすら超える生物活性薬剤を含み得る。特に好ましい実施態様において、最終的な呼吸器用安定分散物は、望ましくは、微粒子マトリクスの重量と比較して、約40%w/w〜60%w/w、より好ましくは50%w/w〜70%w/w、さらにより好ましくは60%w/w〜90%w/wの生物活性薬剤を含む。本発明の安定化分散物に取り込まれる生物活性薬剤の正確な量は、選択される薬剤、必要な用量、および取り込みのために実際に使用される薬物の形態に依存する。当業者は、そのような決定が、本発明の教示と組み合わせて、周知の薬理学的技術を使用することによってなされ得ることを理解する。
【0076】
従って、本明細書中の教示と関連してエアロゾル化された医薬品の形態で投与され得る生物活性薬剤は、選択されたプロペラント中で比較的不溶性であり、そして生理学的に有効な量での肺の取り込みに供する形態で提示され得る任意の薬物を含む。適合性生物活性薬剤は、親水性呼吸器剤および親油性呼吸器剤、気管支拡張剤、抗生物質、抗ウイルス剤、肺界面活性剤、抗炎症剤、ステロイド、抗ヒスタミン剤、ロイコトリエンインヒビターまたはアンタゴニスト、抗コリン作用剤、抗腫瘍剤、麻酔剤、酵素、心臓血管剤、DNAおよびRNAを含む遺伝物質、ウイルス性ベクター、免疫活性剤、画像化剤、ワクチン、免疫抑制剤、ペプチド、タンパク質、およびそれらの組み合わせを含む。本発明に従うエアロゾル化医薬品を使用する投与のための特に好ましい生物活性薬剤は、喘息のような呼吸器障害の吸入治療による処置における使用のためのマスト細胞インヒビター(抗アレルギー剤)、気管支拡張剤、および抗炎症性ステロイド(例えば、クロモリン酸塩(例えば、ナトリウム塩)、およびアルブテロール(例えば、硫酸塩))を含む。全身送達(例えば、糖尿病または多発性硬化症のような自己免疫疾患の処置のための全身循環への生物活性薬剤の送達)のために、ペプチドおよびタンパク質が特に好ましい。
【0077】
例示的な医薬品または生物活性薬剤は、例えば、以下から選択され得る:鎮痛剤(例えば、コデイン、ジヒドロモルフィン、エルゴタミン、フェンタニール、またはモルヒネ);狭心症製剤(例えば、ジルチアゼム);マスト細胞インヒビター(例えば、クロモリンナトリウム);抗感染剤(例えば、セファロスポリン、マクロライド、キノリン、ペニシリン、ストレプトマイシン、スルホンアミド、テトラサイクリン、およびペンタミジン);抗ヒスタミン剤(例えば、メタピリレン);抗炎症剤(例えば、フルチカゾンプロピオネート、二プロピオン酸ベクロメタゾン、フルニソリド、ブデソニド、トリペダン(tripedane)、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン(prednisilone)、デキサメタゾン、ベタメタゾン、またはトリアムシノロンアセトニド);鎮咳剤(例えば、ノスカピン);気管支拡張剤(例えば、エフェドリン、アドレナリン、フェノテロール、フォルモテロール、イソプレナリン、メタプロテレノール、サルブタモール、アルブテロール、サルメテロール、テルブタリン);利尿剤(例えば、アミロライド);抗コリン作用剤(例えば、イプラトロピウム(ipatropium)、アトロピン、またはオキシトロピウム);肺界面活性剤(例えば、Surfaxin、Exosurf、Survanta);キサンチン(例えば、アミノフィリン、テオフィリン、カフェイン);治療用タンパク質およびペプチド(例えば、DNAse、インスリン、グルカゴン、LHRH、ナファレリン、ゴセレリン、ロイプロリド、インターフェロン、rhu IL−1レセプター、マクロファージ活性化因子(例えば、リンホカインおよびムラミルジペプチド)、オピオイドペプチド、神経ペプチド(例えば、エンケファリン(enkaphalin))、エンドルフィン、レニンインヒビター、コレシストキニン、DNAse、成長ホルモン、ロイコトリエンインヒビターなど。さらに、RNA配列またはDNA配列を含む生物活性薬剤、特に遺伝子治療、遺伝子ワクチン接種、遺伝子寛容化、またはアンチセンス適用のために有用なRNA配列またはDNA配列を含む生物活性薬剤は、本明細書中に記載されるような開示される分散物に取り込まれ得る。代表的なDNAプラスミドは、pCMVβ(Genzyme Corp、Framington、MAから入手可能)、およびpCMV−β−gal(酵素β−ガラクトシダーゼをコードする、E.coli Lac−Z遺伝子に連結したCMVプロモーター)を含む。
【0078】
選択された生物活性薬剤は、所望の効力を提供し、選択された製造技術と適合性である任意の形態の穿孔化微細構造物を含むか、それと会合させられ得るか、またはその中に取り込まれ得る。本明細書中に使用される用語「会合する」または「会合している」は、構造マトリクスまたは穿孔化微細構造物が、生物活性薬剤を含み得るか、取り込み得るか、吸着し得るか、吸収し得るかそれでコーティングされ得るか、またはそれによって形成され得ることを意味する。適切な場合、医薬品は、塩(例えば、アルカリ金属塩、またはアミン塩、または酸添加塩として)の形態で、またはエステルとして、または溶媒化物(水和物)として使用され得る。このことについて、生物活性薬剤の形態は、医薬品の活性および/または安定性を最適化し、そして/あるいは懸濁媒体における医薬品の可溶性を最小化するように選択され得る。本発明に従うエアロゾル化処方物は、所望の場合、2つ以上の活性成分の組み合わせを含み得ることがさらに理解される。薬剤は、単一種の穿孔化微細構造物中で組み合わせて、または懸濁媒体中で合わされる別々の種の穿孔化微細構造物において個々に提供され得る。例えば、2つ以上の生物活性薬剤は、単一供給ストック調製物で取り込まれ、そして噴霧乾燥され、複数の医薬品を含む単一の微細構造物種を提供し得る。逆に、個々の医薬品は、別個のストックに添加され、そして別々に噴霧乾燥され、異なる組成を有する複数の微細構造物種を提供し得る。これらの個々の種は、任意の所望の割合でプロペラント媒体に添加され得、そして下記のようにエアロゾル送達システムに置かれ得る。さらに、上記に簡潔に記載されるように、穿孔化微細構造物(関連する医薬品を有するか、または有さない)は、1つ以上の従来の微粉化された生物活性薬剤と組み合わされて、所望の分散物安定性を提供し得る。
【0079】
上記に基づいて、広範な種々の生物活性薬剤が、開示される安定化分散物において取り込まれ得ることが当業者によって理解される。従って、上記の好ましい生物活性薬剤の列挙は、例示のみであり、限定されることは意図しない。適切な量の生物活性薬剤および投薬のタイミングは、既存の情報に従って、過度な実験を伴わずに処方物について決定され得ることが当業者によってまた、理解される。
【0080】
上記の経過から理解されるように、種々の成分が、本発明の穿孔化微細構造物と会合させられるか、またはそれに取り込まれ得る。同様に、いくつかの技術が使用され、適切な形態(すなわち、穿孔化構造)および密度を有する微粒子を提供し得る。他の方法の中で、本発明と適合性の穿孔化微細構造物は、凍結乾燥、噴霧乾燥、多重エマルジョン、微粉化、または結晶化を含む技術によって形成され得る。これらの技術の多くの基礎の概念が先行技術において周知であり、そして本明細書中の教示を考慮すれば、所望の穿孔化微細構造物を提供するようにそれらを適合させるために過度な実験を必要としないことがさらに理解される。
【0081】
いくつかの手順は、一般に本発明と適合性であるが、特に好ましい実施態様は、代表的には噴霧乾燥によって形成される穿孔化微細構造物を含む。周知のように、噴霧乾燥は、液体供給物を乾燥した微粒子形態に変える1工程プロセスである。薬学的適用に関して、噴霧乾燥は、吸入を含む種々の投与経路のための粉末化材料を提供するために使用されていることが理解される。例えば、M.SacchettiおよびM.M.Van Oort、Inhalation Aerosols:Physical and Biological Basis for Therapy、A.J.Hichey編、Marcel Dekkar、New York、1996(これは、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0082】
一般に、噴霧乾燥は、高度に分散された液体と十分な容量の加熱空気を一緒にして、液体小滴の蒸発および乾燥を生じることからなる。噴霧乾燥または供給される調製物(または、供給ストック)は、選択される噴霧乾燥装置を使用して霧状にされ得る任意の溶液、コース懸濁物、スラリー、コロイド分散物、またはペーストであり得る。代表的には、供給物は、溶媒を蒸発させ、そして乾燥させた産物をコレクターに運搬する濾過された暖かい空気流に噴霧される。次いで、使用された空気は、溶媒とともに排気される。当業者は、いくつかの異なる型の装置が、所望の産物を提供するために使用され得ることを理解する。例えば、Buchi Ltd.またはNiro Corp.によって製造された市販の噴霧乾燥器は、所望のサイズの粒子を有効に生じる。これらの噴霧乾燥器、特にそれらの噴霧器は、特殊な適用(すなわち、二重ノズル技術を使用する2つの溶液の同時噴霧)のために改変またはカスタマイズされ得ることがさらに理解される。より詳細には、油中水型エマルジョンは、1つのノズルから噴霧され得、そしてマンニトールのような抗接着剤を含む溶液は、第2のノズルから同時噴霧され得る。他の場合において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)ポンプを使用するオーダーメード設計されたノズルを介して供給溶液を押し出すことが望ましくあり得る。正確な形態および/または組成を含む微細構造物が生成されるという条件で、装置の選択は重要ではなく、そして本明細書中の教示を考慮して、当業者に明らかである。
【0083】
得られる噴霧乾燥粉末化粒子は、代表的には形状がほぼ球状であり、サイズがほぼ一様であり、そして頻繁に中空であるが、取り込まれた医薬品および噴霧乾燥条件に依存して、形状においてある程度の不規則性が存在し得る。多くの場合において、噴霧乾燥されたミクロスフェアの分散物安定性は、膨張剤(または発泡剤)がそれらの生成において使用される場合に、より有効であるようである。特に好ましい実施態様は、分散相または連続相(他の相は、性質が水性である)として膨張剤を有するエマルジョンを含み得る。膨張剤は、好ましくは、例えば約5,000〜15,000psiの圧力で市販のミクロフルイダイザーを使用して、界面活性剤溶液を用いて分散される。このプロセスは、好ましくは取り込まれた界面活性剤によって安定化され、代表的には水性連続相中に分散された水不混和性発泡剤のサブミクロンの小滴を含むエマルジョンを形成する。この技術および他の技術を使用するそのような分散物の形成は、当業者に一般的であり、そして周知である。発泡剤は、好ましくはフッ化化合物(例えば、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロオクチルブロミド、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロブチルエタン)であり、これは、一般に中空多孔性の空気力学的に軽いマイクロスフェアを残したまま、噴霧乾燥プロセスの間に蒸発する。以下でより詳細に議論されるように、他の適切な発泡剤は、クロロホルム、Freons、および炭化水素を含む。窒素ガスおよび二酸化炭素はまた、適切な発泡剤であることが意図される。
【0084】
穿孔化微細構造物は、好ましくは上記の発泡剤を使用して形成されるが、いくつかの場合において、発泡剤は必要とされず、そして医薬品および界面活性剤の水性分散物が直接的に噴霧乾燥されることが理解される。そのような場合において、処方物は、中空な、比較的多孔性の微粒子の形成を一般に生じるプロセス条件(例えば、上昇した温度)を受け入れ得る。さらに、医薬品は、そのような技術における使用について特に適切にする特別な物理化学的特性(例えば、高い結晶化度、上昇した融点、表面活性など)を有し得る。
【0085】
発泡剤が使用される場合、穿孔化微細構造物の多孔度の程度は、発泡剤の性質、供給ストックにおける濃度(すなわち、エマルジョンとして)、および噴霧乾燥条件に少なくとも一部は依存するようである。多孔度の制御に関して、驚くべきことに、これまで発泡剤として理解されていない化合物の使用は、特に望ましい特徴を有する穿孔化微細構造物を提供し得ることが見出されている。より詳細には、本発明のこの新規かつ予測不能な局面において、比較的高い(すなわち、約60℃を越える)沸点を有するフッ化化合物が、吸入治療に特に適切である微粒子を生成するために使用され得ることが見出されている。このことについて、約70℃、約80℃、約90℃、または約95℃さえ越える沸点を有するフッ化発泡剤を使用することが可能である。特に好ましい発泡剤は、水の沸点を越える(すなわち、100℃を越える)沸点を有する(例えば、ペルフルブロン、ペルフルオロデカリン)。さらに、比較的低い水溶性(<10−6M)を有する発泡剤は好ましい。なぜなら、それらは0.3μm未満の平均加重粒子直径を有する安定なエマルジョン分散物の生成を可能にするからである。上記に示したように、これらの発泡剤は、好ましくは、噴霧乾燥前に乳化供給ストックにおいて取り込まれる。本発明の目的のために、この供給ストックはまた、好ましくは1つ以上の生物活性薬剤、1つ以上の界面活性剤、または1つ以上の賦形剤を含む。当然のことながら、上記の成分の組み合わせはまた、本発明の範囲内である。
【0086】
いずれの方法でも本発明を限定しないが、水性供給成分が噴霧乾燥の間に蒸発するので、それは粒子の表面で薄い殻を残すことが仮定される。噴霧乾燥の最初の瞬間の間に形成される、得られる粒子壁または殻は、何百ものエマルジョン小滴(約200〜300nm)として沸点が高い任意の発泡剤をトラップするようである。乾燥プロセスが続くにつれて、粒子内の圧力が増加し、それによって取り込まれる発泡剤の少なくとも一部を蒸発させ、そしてそれを比較的薄い殻を通させる。この通気またはガス放出は、殻内の孔または他の欠陥の形成を明らかに導く。同時に、残りの粒子成分(いくらかの発泡剤を含む可能性がある)は、粒子が凝固する場合に内部から表面に移動する。この移動は、明らかに、増加した内部粘性によって引き起こされる質量移動に対する抵抗の増加の結果として、乾燥プロセスの間に明らかに遅くなる。一旦移動が止まると、粒子は、乳化剤が存在する小胞、空胞、または空隙を残して凝固する。孔の数、それらのサイズ、および得られる壁の厚さは、選択された発泡剤の性質(すなわち、沸点)、エマルジョンにおけるその濃度、総固体濃度、および噴霧乾燥条件に大部分が依存する。
【0087】
驚くべきことに、これらの沸点が比較的高い発泡剤の実質的な量が、得られる噴霧乾燥産物において保持され得ることが見出されている。すなわち、噴霧乾燥された穿孔化微細構造物は、5%w/w、10%w/w、20%w/w、30%w/w、または40%w/wでさえあるほどの多くの発泡剤を含み得る。そのような場合において、より高い産生収率は、残りの発泡剤によって引き起こされる増加した粒子密度の結果として得られた。この保持されたフッ化発泡剤が、穿孔化微細構造物の表面特徴を改変し得、そして呼吸器用分散物の安定性をさらに増大し得ることが当業者によって理解される。逆に、残りの発泡剤は、減圧オーブンにおける生成後蒸発工程で容易に除去され得る。必要に応じて、孔は、生物活性薬剤および減圧下で形成されたミクロスフェアから除去され得る賦形剤を噴霧乾燥することによって形成され得る。
【0088】
いずれにしても、供給ストックにおける発泡剤の代表的な濃度は、5%w/vと100%w/vとの間であり、より好ましくは約20%w/vと90%w/vとの間である。他の実施態様において、発泡剤濃度は、好ましくは、約10%w/v、約20%w/v、約30%w/v、約40%w/v、約50%w/v、または約60%w/vすら越える。なお他の供給ストックエマルジョンは、70%w/v、80%w/v、90%w/v、または95%w/vでさえある選択された高沸点の化合物も含み得る。
【0089】
好ましい実施態様において、供給において使用される発泡剤の濃度を同定する別の方法は、前駆エマルジョンにおける、安定化界面活性剤(すなわち、リン脂質)の濃度に対する発泡剤の濃度の比として提供することである。ペルフルオロオクチルブロミドのようなフルオロカーボン発泡剤およびホスファチジルコリンについて、この比は、ペルフルオロカーボン/ホスファチジルコリン比(またはPFC/PC比)とよばれ得る。例としてホスファチジルコリンが使用されるが、適切な界面活性剤が、そのかわりに代用され得ることが理解される。いかなる場合でも、PFC/PC比は、代表的には約1〜約60の範囲に及び、そしてより好ましくは約10〜約50の範囲に及ぶ。好ましい実施態様に関して、比は、一般に約5、約10、約20、約25、約30、約40、または約50すら越える。このことについて、図1は、発泡剤として沸点が比較的高いフルオロカーボンである種々の量のペルフルオロオクチルブロミド(PFC)を使用し、ホスファチジルコリン(PC)から形成された穿孔化微細構造物を撮った一連の写真を示す。PFC/PC比は、写真の各サブセット(すなわち、1A〜1F)の下で提供される。形成および画像化条件は、以下の実施例IおよびIIにおいてより詳細に議論される。顕微鏡写真に関して、左側の欄はインタクトな微細構造物を示すが、右側の欄は同じ調製物からの破壊された微細構造物の横断面図を示す。
【0090】
図1において容易に理解され得るように、より高いPFC/PC比の使用は、より中空かつ多孔性の性質の構造を提供する。より詳細には、約4.8を越えるPFC/PC比を使用する方法は、本明細書中において開示される分散物と特に適合性である構造を提供する傾向があった。同様に、図2(以下の実施例IVにおいてより詳細に議論される顕微鏡写真)は、沸点がより高い発泡剤(この場合は、ペルフルオロデカリン)を使用することによって得られた好ましい多孔性形態を示す。
【0091】
沸点が比較的高い発泡剤は、本発明の1つの好ましい局面を含むが、より従来の発泡剤または膨張剤もまた、適合性の穿孔化微細構造物を提供するために使用され得ることが理解される。一般に、膨張剤は、噴霧乾燥または生成後プロセス間のある点で気体になる任意の物質であり得る。適切な薬剤は以下を含む:1.室温で溶液を飽和するために使用される水溶液(例えば、メチレンクロリド、アセトン、および二硫化炭素)との限定された混和性を有する溶解された低沸点(100℃未満)の溶媒。
2.室温および上昇圧(例えば、3バール)で溶液を飽和するために使用される気体(例えば、COまたはN)。次いで、小滴は、1気圧および100℃にて気体で過飽和される。
3.例えば以下のような不混和性低沸点(100℃未満)液体のエマルジョン:Freon 113、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロブタン、ペンタン、ブタン、FC−11、FC−11B1、FC−11B2、FC−12B2、FC−21、FC−21B1、FC−21B2、FC−31B1、FC−113A、FC−122、FC−123、FC−132、FC−133、FC−141、FC−141B、FC−142、FC−151、FC−152、FC−1112、FC−1121、およびFC−1131。
【0092】
これらの沸点がより低い膨張剤に関して、それらは、代表的には、界面活性剤溶液の約1%w/v〜80%w/vの量で供給ストックに添加される。約30%w/vの膨張剤は、本発明の安定化分散物を形成するために使用され得る噴霧乾燥粉末を生じることが見出されている。
【0093】
どの発泡剤が最終的に選択されるかに関係なく、適合性の穿孔化微細構造物が、Buechiミニ噴霧乾燥器(モデルB−191、Switzerland)を使用して、特に効率的に生成され得ることが見出された。当業者に理解されるように、噴霧乾燥器の入口温度および出口温度は重要ではないが、所望の粒子サイズを提供し、そして所望の活性の医薬品を有する産物を生じるようなレベルである。このことについて、入口温度および出口温度は、供給ストックの処方物成分および組成の融点特徴に依存して調整される。従って、入口温度は、60℃と170℃との間であり得、出口温度は、供給物の組成および所望の微粒子特徴に依存して約40℃〜約120℃であり得る。好ましくは、これらの温度は、入口について90℃〜120℃であり、そして出口について60℃〜90℃である。噴霧乾燥装置において使用される流速は、一般に1分あたり約3ml〜1分あたり約15mlである。噴霧器空気流速は、1時間あたり1,200リットル〜1時間あたり約3,900リットルの間の値を変動する。市販の噴霧乾燥器が当業者に周知であり、そして任意の特定の分散物についての適切な設定は、以下の実施例を十分に参照して標準的な経験的試験を介して容易に決定され得る。当然のことながら、条件は、タンパク質またはペプチドのような、より大きな分子において生物学的活性を保存するように調整され得る。
【0094】
本発明の特に好ましい実施態様は、リン脂質のような界面活性剤および少なくとも1つの生物活性薬剤を含む、噴霧乾燥調製物を含む。他の実施態様において、噴霧乾燥調製物は、任意の選択された界面活性剤に加えて、例えば炭水化物(すなわち、グルコース、ラクトース、またはデンプン)のような親水性部分を含む賦形剤をさらに含み得る。このことについて、種々のデンプンおよび誘導体化デンプンは、本発明における使用のために適切である。他の随意の成分は、従来の粘性改変剤、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液)、または他の従来の生体適合性緩衝剤またはpH調整剤(例えば、酸または塩基)、および浸透圧調節剤(等張性、高浸透圧性、または低浸透圧性を提供する)を含み得る。適切な塩の例は、リン酸ナトリウム(一塩基酸および二塩基酸の両方)、塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、および他の生理学的に受容可能な塩を含む。
【0095】
どの成分が選択されても、粒子生成における第1の工程は、代表的には供給ストック調製を含む。好ましくは、選択された薬物は、濃縮溶液を生成するために水中に溶解される。薬物はまた、特に水不溶性薬剤の場合において、エマルジョン中に直接的に分散され得る。あるいは、薬物は、固体微粒子分散物の形態で取り込まれ得る。使用される薬物の濃度は、最終的な粉末において必要とされる薬物の用量、ならびにMDI薬物懸濁物の性能(例えば、微細粒子用量)に依存する。必要とされる場合、共界面活性剤(例えば、ポロキサマー188またはスパン180)は、この付属の溶液に添加され得る。さらに、糖およびデンプンのような賦形剤もまた、添加され得る。
【0096】
選択された実施態様において、水中油型エマルジョンは、次いで別々の容器中に形成される。使用される油は、好ましくはフルオロカーボン(例えば、ペルフルオロオクチルブロミド、ペルフルオロデカリン)であり、これは、長鎖飽和リン脂質のような界面活性剤を使用してエマルジョン形成される。例えば、1グラムのリン脂質は、適切な高せん断機械式ミキサー(例えば、Ultra−TurraxモデルT−25ミキサー)を使用して、8000rpmで2〜5分間、150gの加熱蒸留水(例えば、60℃)中にホモジナイズされ得る。代表的には、5〜25gのフルオロカーボンは、混合しながら分散界面活性剤溶液に滴下される。次いで、得られる水中ペルフルオロカーボンエマルジョンは、粒子サイズを小さくするために、高圧ホモジナイザーを使用して処理される。代表的には、エマルジョンは、12,000〜18,000psi(5つの別々の通過)で処理され、そして50〜80℃で保持される。
【0097】
次いで、薬物溶液およびペルフルオロカーボンエマルジョンは、組み合わされ、そして噴霧乾燥器の中に供給される。代表的には、2つの調製物は混和性である。なぜなら、エマルジョンは好ましくは水性連続相を含むからである。生物活性薬剤は、本議論の目的のために別々に溶解されるが、他の実施態様において、生物活性薬剤はエマルジョン中に直接的に溶解(または分散)され得ることが理解される。そのような場合において、生物活性エマルジョンは、別々の薬物調製物と合わせることなしに、単に噴霧乾燥される。
【0098】
いかなる場合でも、作動条件(例えば、入口温度および出口温度、供給速度、噴霧圧、乾燥空気の流速、ならびにノズル構造)は、得られる乾燥微細構造物の必要とされる粒子サイズおよび生成収量を生じるために、製造業者のガイドラインに従って調整され得る。例示的な設定は、以下のとおりである:空気入口温度、60℃と170℃との間;空気出口温度、40℃と120℃との間;供給速度、1分あたり3mlと約15mlとの間;ならびに吸引設定、100%、および噴霧空気流速、1,200L/時間と2,800L/時間との間。適切な装置および処理条件の選択は、本明細書中の教示を考慮して、十分に当業者の範囲内であり、そして過度な実験を伴うことなく達成され得る。これら、および実質的に等価な方法の使用は、肺へのエアロゾル沈着に適切な粒子直径を有する、中空、多孔性の、空気力学的に軽いミクロスフェアの形成を提供することが理解される。
【0099】
噴霧乾燥とともに、本発明の穿孔化微細構造物は、凍結乾燥によって形成され得る。当業者は、凍結乾燥は、組成物が凍結された後に水が組成物から昇華する凍結乾燥プロセスであることを理解する。凍結乾燥プロセスと関連する特定の利点は、水溶液において比較的不安定である生物学的製剤および薬剤が、上昇した温度なしに乾燥され得(それによって、有害な熱効果を除去する)、次いで安定性の問題がほとんどない乾燥状態で保存され得るということである。本発明に関して、そのような技術は、生理学的活性を損なうことなく、穿孔化微細構造物へのペプチド、タンパク質、遺伝物質、ならびに他の天然高分子および合成高分子の取り込みと特に適合性である。凍結乾燥した微粒子を提供するための方法は、当業者に公知であり、そして本明細書中の教示に従って分散適合可能微細構造物を提供するために、過度な実験を明らかに必要としない。従って、凍結乾燥プロセスが、所望の多孔度およびサイズを有する微細構造物を提供するために使用され得る程度で、それらは、本明細書中の教示に従い、そして本発明の範囲内にあることが明白に意図される。
【0100】
前述の技術に加えて、本発明の穿孔化微細構造物はまた、二重エマルジョン法を使用して形成され得る。二重エマルジョン法において、最初に医薬品は、超音波処理またはホモジナイゼーションによって、有機溶媒(例えば、塩化メチレン)に溶解されるポリマーに分散される。次いで、この第1のエマルジョンは、ポリビニルアルコールのようなエマルジョン剤を含む連続水相中に多重エマルジョンを形成することによって安定化される。次いで、有機溶媒は、従来技術および装置を使用してエバポレーションまたは抽出によって除去される。得られるミクロスフェアは、本発明に従って、適切な懸濁媒体とそれらを組み合わせる前に、洗浄され、濾過され、そして乾燥される。
【0101】
上記に広範に議論されるように、本発明の安定化分散物は、連続相懸濁媒体をさらに含む。プロペラントとして作用するように適切な蒸気圧を有する、任意の生物適合性の懸濁媒体を使用し得ることは、本発明の利点である。特に好ましい懸濁媒体は、計量吸入器における使用に適合性である。すなわち、それらは、測定バルブの作動および関連した圧力開放の際にエアロゾルを形成し得る。一般的に、選択された懸濁媒体は、生体適合性であり(すなわち、比較的非毒性)、そして生物活性薬剤を含む、懸濁された穿孔化微細構造物に関して非反応性であるべきである。好ましくは、懸濁媒体は、穿孔化ミクロスフェアに取り込まれる任意の成分についての実質的な溶媒として作用しない。本発明の選択された実施態様は、フルオロカーボン(他のハロゲンと置換されるものを含む)、ヒドロフルオロアルカン、ペルフルオロカーボン、炭化水素、アルコール、エーテル、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される懸濁媒体を含む。懸濁媒体は、特定の特性を付与するために選択された種々の化合物の混合物を含み得ることが理解される。
【0102】
本発明の懸濁媒体における使用のために特に適切なプロペラントは、室温における圧力下で液化され得、そして吸入または局所的使用の際に安全、毒物学的に無害、かつ副作用がないプロペラントガスである。このことについて、適合性のプロペラントは、計量吸入器の作動の際にエアロゾルを効率的に形成するために十分な蒸気圧を有する、炭化水素、フルオロカーボン、水素含有フルオロカーボンまたはそれらの混合物を含み得る。代表的には、ヒドロフルオロアルカン、すなわちHFAとよばれるプロペラントが特に適合性である。適切なプロペラントとしては、例えば、短鎖炭化水素、例えば、CHClF、CClCHClF、CFCHClF、CHFCClF、CHClFCHF、CFCHClおよびCClFCHのようなC1−4水素含有クロロフルオロカーボン;例えば、CHFCHF、CFCHF、CHFCHおよびCFCHFCFのようなC1−4水素含有フルオロカーボン(例えば、HFA);ならびにCFCFおよびCFCFCFのようなペルフルオロカーボンが挙げられる。好ましくは、単一のペルフルオロカーボンまたは水素含有フルオロカーボンがプロペラントとして使用される。プロペラントとして特に好ましいものは、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(CFCHF)(HFA−134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン(CFCHFCF)(HFA−227)、ペルフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン、1,1−ジフルオロエタン、およびそれらの組み合わせである。処方物は、成層圏のオゾンを減少させる成分を含まないことが望ましい。特に、処方物は、CClF、CCl、およびCFCClのようなクロロフルオロカーボンを実質的に含まないことが望ましい。
【0103】
懸濁媒体において有用である特定のフルオロカーボンまたはフッ化化合物のクラスとしては、以下が挙げられるが、それらに限定されない:フルオロヘプエタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテルおよびフルオロトリエチルアミン。これらの化合物は、単独で、またはより揮発性のプロペラントと組み合わせて使用され得ることが理解される。このような化合物が一般的に環境に安全、かつ生物学的に非反応性であることは別の利点である。
【0104】
前述のフルオロカーボンおよびヒドロフルオロアルカンに加えて、種々のクロロフルオロカーボンおよび代替のフッ化化合物はまた、本明細書中の教示に従う懸濁媒体として使用され得る。このことについて、FC−11(CCL3F)、FC−11B1(CBrCl2F)、FC−11B2(CBr2ClF)、FC−12B2(CF2Br2)、FC−21(CHCl2F)、FC−21B1(CHBrClF)、FC−21B2(CHBr2F)、FC−31B1(CH2BrF)、FC−113A(CCl3CF3)、FC−122(CClF2CHCl2)、FC−123(CF3CHCl2)、FC−132(CHClFCHClF)、FC−133(CHClFCHF2)、FC−141(CH2ClCHClF)、FC−141B(CCl2FCH3)、FC−142(CHF2CH2Cl)、FC−151(CH2FCH2Cl)、FC−152(CH2FCH2F)、FC−1112(CClF=CClF)、FC−1121(CHCl=CFCl)、およびFC−1131(CHCl=CHF)は全て、可能な付随する環境的な懸念にもかかわらず、本明細書中の教示に適合性である。このように、これらの化合物の各々が、本発明の呼吸器用安定分散物を形成するように、単独で、または他の化合物(すなわち、あまり揮発性でないフルオロカーボン)と組み合わせて使用され得る。
【0105】
可能な媒体の組み合わせに関して、比較的揮発性の化合物は、蒸気圧がより低い成分と混合されて、分散された生物活性薬剤の安定性をさらに改善するか、またはそれのバイオアベイラビリティーをさらに増強するように選択された特異化された物理学的特性を有する懸濁媒体を提供し得る。好ましい実施態様において、より低い蒸気圧の化合物は、約25℃より高い沸点を有するフッ化化合物(例えば、フルオロカーボン)を含む。懸濁媒体における使用のための特に好ましい、蒸気圧がより低いフッ化化合物は、ペルフルオロオクチルブロミドC17Br(PFOBまたはペルフルブロン)、ジクロロフルオロオクタンC16Cl、ペルフルオロオクチルエタンC17(PFOE)、ペルフルオロデシルブロミドC1021Br(PFDB)またはペルフルオロブチルエタンCから構成され得る。好ましくは、これらの蒸気圧がより低い化合物は、比較的低レベルで存在する。このような化合物は、直接懸濁媒体に添加されてもよいし、穿孔化微細構造物と会合されていてもよい。
【0106】
同様に、上記に示されるように、安定化分散物が、さらなる共溶媒またはアジュバントを使用することなく、HFAまたはPFCプロペラント中に形成され得ることが、本発明の利点である。従って、選択された実施態様において、処方物は、使用されるプロペラントより、極性が高い潜在的に反応性の液体成分を実質的に含まない。これは、大部分は、共溶媒またはアジュバントの存在が懸濁媒体における穿孔化粒子の可溶性を潜在的に増加させ、これによって、経時的に粒子形態および粒子サイズを変化させ得るからである(オストワルド熟成による成長)。しかし、穿孔化微細構造物の組成またはプロペラントの選択に依存して、蒸気圧を調節するためまたは投与効率を増加させるために適切な共溶媒またはアジュバントを含むことが所望され得る。このように、懸濁媒体を含有するHFAプロペラントは、粒子の安定性に悪影響を及ぼさない限り、アジュバントまたは共溶媒をさらに含み得ることが明白に意図される。例えば、プロパン、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタンまたはジアルキルエーテル(例えば、ジメチルエーテル)は、懸濁媒体に組み込まれ得る。同様に、懸濁媒体は、揮発性フルオロカーボンを含み得る。一般的に、プロペラントの50%w/wまで、炭化水素またはフルオロカーボンのような揮発性アジュバントを含み得る。より詳細には、懸濁媒体は、約40%w/w、約30%w/w、約20%w/w、または約10%w/w未満の共溶媒またはアジュバントを含む。
【0107】
当業者は、所望の蒸気圧および/または粘性を明らかに示さない、本発明において適切に実施される他の化合物を容易に決定し得ることがさらに理解される。むしろ、蒸気圧または粘性の好ましい範囲外の特定の化合物が、MDIの作動の際に、所望のエアロゾル化された医薬品を提供するのであれば、使用され得ることが理解される。
【0108】
本発明の安定化懸濁物または分散物は、選択された懸濁媒体における微細構造物の分散によって調製され得、次いで、それらは容器またはリザーバに配置され得る。このことについて、本発明の安定化調製物は、最終的な所望の分散物濃度を生成するために十分な量で成分を単に組み合わせることによって作製され得る。微細構造物は、機械的エネルギーがなくても容易に分散するが、分散を補助するエネルギーの適用(例えば、超音波処理または攪拌)は、本発明の範囲内であることが明確に意図される。あるいは、成分は、単に振盪するか、または他の型の攪拌によって混合され得る。このプロセスは、好ましくは、懸濁物の安定性における任意の水分の悪影響を取り除くような無水の条件下で行われる。一旦形成されると、分散物は、低減されたフロキュレーションまたは沈降の受けやすさを有する。
【0109】
本発明の調製物によって提供される顕著な安定性は、図3A〜3Dにおいて写真で示される。ここで、本発明に従って調製されたMDI処方物は、(以下の実施例XVIIIでより十分に示されるように)市販のMDI処方物と比較される。振盪して0秒後、30秒後、60秒後、および2時間後に撮影した写真の各々において、市販の処方物は左側、そして本発明に従って形成された穿孔化微細構造物分散物は右側である。市販のクロモリンナトリウム処方物は、混合して30秒後にクリーム化を示したが、噴霧乾燥した粒子において2時間という長い時間の後でもクリーム化がほとんど見られない。さらに、4時間後、穿孔化微細構造物の処方物において、クリーム化はほとんど見られなかった(示さず)。この例示は、明らかに安定性を示し、これは、適合性材料の中空多孔性粒子が懸濁媒体で充填された場合(すなわち、均質分散物の形態で)、達成され得る。
【0110】
他の成分は、本発明の薬学的組成物中に含まれ得ることもまた理解される。例えば、浸透圧調節剤、安定化剤、キレート剤、緩衝剤、吸湿剤、粘性調節剤、塩類および糖類は、最大耐用期間および投与の容易さについて安定化分散物を良好に調整するために添加され得る。このような成分は、懸濁媒体に直接添加され得るか、分散された穿孔化微細構造物と会合され得るか、またはそれに組み込まれ得る。無菌性、等張性、および生体適合性のような考慮すべき事柄は、開示された組成物に従来の添加物を使用することを左右し得る。このような薬剤の使用は、当業者に理解され、そして特定の量、割合、および薬剤の型は、過度の実験を伴うことなく、経験的に決定され得る。
【0111】
製薬の分野の当業者に周知の従来のバルク製造法および機械は、MDIについての充填されたキャニスタまたはリザーバの商業的製造のために大きなバッチスケールで調製するために使用され得る。例えば、MDIに伴って、1つのバルク製造方法において、測定バルブは、空のキャニスタまたはリザーバを提供するように、アルミニウム上に圧着される。穿孔化微粒子は、充填容器に添加され、そして液化されたプロペラント(分散媒体)が、充填容器を介して、製造容器へ加圧充填される。呼吸器用ブレンドまたは薬物懸濁物は、充填機械に再循環する前に混合されて、次いで、安定化分散物のアリコートを、測定バルブを介してリザーバへ充填する。代表的には、薬学的使用のために調製されたバッチにおいて、各充填されたキャニスタは、重量検査され、バッチ番号がコードされ、販売試験前に保存する前にトレイにパッキングされる。
【0112】
他の実施態様において、穿孔化微粒子は、空のリザーバに導入され、次いで、測定バルブに圧着シールされる。次いで、リザーバまたはキャニスタには、バルブステムによって過剰圧力によってHFAプロペラントが充填される。なお別の実施態様において、安定化分散物は、キャニスタまたはリザーバ外で調製され得、次いで、冷却充填技術によって導入され得る。次いで、キャニスタは、圧着シールされる。当業者は、選択された充填手順が、少なくともある程度、選択されたバルブの型に依存することを理解する。
【0113】
キャニスタは、一般的に、プラスチック、もしくはプラスチックコーティングされたガラス瓶、または好ましくは、金属缶、もしくは例えば、必要に応じて、陽極処理、ラーカーコーティング、および/またはプラスチックコーティングされ得るアルミニウム缶のような、使用されるプロペラントの蒸気圧に耐え得る容器またはリザーバを備え得る。ここで、この容器は、測定バルブに近接している。測定バルブは、1回の作動につき、測定された量の処方物を送達するように設計される。このバルブは、バルブを介したプロペラントのもれを防ぐようにガスケットを組み込む。このガスケットは、例えば、低密度ポリエチレン、クロロブチル、黒色および白色のブタジエン−アクリルニトリルゴム、ブチルゴムおよびネオプレンのような、任意の適切なエラストマー材料を含み得る。適切なバルブは、エアロゾル産業において周知の製造業者、例えば、Valois,France(例えば、DFIO、DF30、DF31/50ACT、DF60)、Bespak plc,LTK(例えば、BK300、BK356)および3M−Neotechnic Ltd.,LIK(例えば、Spraymiser)から市販される。
【0114】
充填されたキャニスタの各々は、患者の肺または鼻腔へ医薬品を投与するために計量吸入器を形成するために使用する前に、適切なチャネリングデバイスに、従来どおり取り付けられる。適切なチャネリングデバイスは、例えば、バルブアクチュエータおよび円筒型または円錐状通路を備え、そこを介して医薬品は、充填されたキャニスタから測定バルブを介して、患者の鼻または口へ送達され得る(例えば、マウスピースアクチュエータ)。計量吸入器は、一定の単位投与量の医薬品を、例えば、1回の作動につき、10〜5000μgの範囲の生物活性薬剤を送達するように設計される。代表的には、単一の充填されたキャニスタは、数十回またはさらに数百回の射出または用量を提供する。
【0115】
本発明の計量吸入器における使用のための安定化調製物は、無菌、プレパッケージ、またはキット形態で医師または他の健康管理のプロに有利に供給され得ることが理解される。より詳細には、処方物は、投与の準備ができている、充填されたMDIリザーバまたはキャニスタとして供給され得る。このようなキットは、多くの充填されたキャニスタを、好ましくは、使い捨てのアクチュエータとともに含み得る。次いで、このことについて、患者は、特定の処置期間の間にキャニスタを変更または交換し得る。このようなキットは、アクチュエータと一体になったか、またはそれが添えられた単一の充填されたキャニスタを含み得ることもまた理解される。あるいは、その調製物は、使い捨てMDIデバイスで供給され得ることもまた理解される。
【0116】
生物活性薬剤の投与は、穏やかな、中程度な、もしくは重篤な、急性もしくは慢性症状の処置または予防処置のために示され得る。さらに生物活性薬剤は、局所または全身の状態または障害を処置するために投与され得る。投与される正確な用量は、患者の年齢および状態、使用される特定の医薬品、ならびに投与頻度に依存し、そして最終的には、主治医の裁量であることが理解される。生物活性薬剤の組み合わせが使用される場合、組み合わせの各成分の用量は、一般的に、単独で使用される場合に各成分について使用される用量と同じである。
【0117】
本明細書中全体をとおして議論されるように、本明細書中で開示される安定化分散物は、好ましくは、計量吸入器を用いるようなエアロゾル化によって患者の肺または肺気道に投与される。MDIは、当該分野で周知であり、過度の実験を伴うことなく、本願の分散物の投与のために容易に使用され得る。呼吸で作動されたMDIならびに開発されたもしくは開発されている他の型の改善を含むMDIはまた、安定化分散物および本発明と適合性であり、そしてこのように、それらは、本発明の範囲内であることが意図される。しかし、好ましい実施態様において、安定化分散物は、多くの異なる投与経路を使用して投与され得、これらの投与経路としては、局所、経鼻、肺、または経口が挙げられるが、これらに限定されないことが強調されるべきである。このような経路は、当業者に周知であること、ならびに投薬および投与手順が本発明の安定化分散物を容易に誘導し得ることが当業者に理解される。
【0118】
気管支気道にエアロゾル化した医薬品をより効率的に送達することは、いくつかの重要な臨床的意味を有する。このような利点には、臨床結果を引き出すために必要とされるエアロゾル化された材料の量が減少することに起因して、診断および治療のコストが低減されること;所望の部位(すなわち、肺または気管支)でのより少量、より効果的、かつより効率的な患者への投薬;ならびに咽頭における沈着がより少ないことに起因して、副作用が低減されることがある。このような利点は、次に、患者のコンプライアンスを全体的に増加させることを補助し得る。
【0119】
上記の説明は、以下の実施例を参照にしてより十分に理解される。しかし、そのような実施例は、本発明を実施する好ましい方法の単なる例示であり、そして本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0120】
(I:硫酸ゲンタマイシンの中空多孔性粒子の噴霧乾燥による調製)
40〜60mlの以下の溶液を、噴霧乾燥のために調製した:50%w/w水素化ホスファチジルコリン、E−100−3(Lipoid KG,Ludwigshafen,Germany)
50%w/w硫酸ゲンタマイシン(Amersco,Solon,OH)
ペルフルオロオクチルブロミド、ペルフルブロン(perflubron)(NMK,Japan)
脱イオン水。
【0121】
硫酸ゲンタマイシンを含む穿孔化微細構造を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi,Flawil,Switzerland)を用いる噴霧乾燥技術によって、以下の条件で調製した;吸入:100%、入口温度:85℃;出口温度:61℃;供給ポンプ:10%;N流:2,800L/時間。粉末多孔度の変動を、発泡剤濃度の関数として実験した。
【0122】
1:1w/w比のホスファチジルコリン(PC)を含むペルフルオロオクチルブロミドの水中フルオロカーボンエマルジョン、および硫酸ゲンタマイシンを、PFC/PC比のみを変化させて調製した。水素化卵ホスファチジルコリン(1.3g)を、Ultra−Turraxミキサー(モデルT−25)を用いて、8000rpmにて2〜5分間(T=60〜70℃)、25mLの脱イオン水中に分散した。0〜40gの範囲のペルフルブロンを、混合の間に滴下した(T=60〜70℃)。添加を完了した後、水中フルオロカーボンエマルジョンを、さらに4分以上の間混合した。次いで、得られた粗調製エマルジョンを、Avestin(Ottawa,Canada)ホモジナイザーを用いて高圧下で、15,000psiにて5回通過させて均質化した。硫酸ゲンタマイシンを、約4〜5mLの脱イオン水に溶解し、続いて、噴霧乾燥プロセスの直前にペルフルブロンエマルジョンと混合した。次に、ゲンタマイシン粉末を、上記の条件を用いて、噴霧乾燥によって得た。遊離の流出した淡黄色粉末を、ペルフルブロンを含む全てのエマルジョンについて得た。種々の処方物の各々についての収率は、35%〜60%の範囲であった。
【0123】
(II:硫酸ゲンタマイシンの噴霧乾燥した粉末の形態)
粉末形態、多孔度の程度、および産生収率の強力な依存性を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、PFC/PC比の関数として観察した。これらの観察を例示する一連の6つのSEM顕微鏡写真(1A1〜1F1と標示した)を、図1の左カラムに示す。これらの顕微鏡写真において見られるように、多孔度および表面粗度は、発泡剤の濃度に非常に依存することが見出され、ここで孔の表面粗度、数およびサイズは、PFC/PC比の増加とともに増加した。例えば、ペルフルオロオクチルブロミドを欠く処方物は、非常に凝集されかつガラスバイアルの表面に容易に接着するようである微細構造物を産生した。同様に、平滑で球状の形状をした微粒子を、比較的少量(PFC/PC比=1.1または2.2)の発泡剤を使用した場合に得た。PFC/PC比が増加するにつれて、多孔度および表面粗度は劇的に増加した。
【0124】
図1の右カラムに示されるように、微細構造物の中空性質もまた、さらなる発泡剤の取り込みによって増強された。より詳細には、1A2〜1F2と標示した一連の6つの顕微鏡写真は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって明らかにされたように、破砕された微細構造物の断面を示す。これらの画像の各々を、左カラムの対応するSEM顕微鏡写真を生成するために使用したのと同じ微細構造物調製物を用いて生成した。得られた穿孔化微細構造物の中空性質および壁厚の両方は、選択した発泡剤の濃度に大きく依存するようであった。すなわち、PFC/PC比が増加するにつれて調製物の中空性質は増加するようであり、そして粒子壁の厚さは減少するようであった。図1A2〜1C2において見られ得るように、実質的に、固体の構造を、フルオロカーボン発泡剤をわずかに含むかまたは全く含まない処方物から得た。逆に、約45という比較的高いPFC/PC比を用いて生成した穿孔化微細構造物(図1F2に示した)は、非常に中空であり、約43.5〜261nmの範囲の比較的薄い壁を有ることが判明した。
【0125】
(III:硫酸アルブテロールの中空多孔性粒子の噴霧乾燥による調製)
中空多孔性硫酸アルブテロール粒子を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi,Flawil,Switzerland)を用いる噴霧乾燥技術によって、以下のスプレー条件で調製した;吸入:100%、入口温度:85℃;出口温度:61℃;供給ポンプ:10%;N流;2,800L/時間。供給溶液を、噴霧乾燥の直前に、2つの溶液AおよびBを混合することによって調製した。
【0126】
溶液A:20gの水を使用して、1gの硫酸アルブテロール(Accurate Chemical,Westbury,NY)および0.021gのポロキサマー188NFグレード(BASF,Mount Olive,NJ)を溶解した。
【0127】
溶液B:リン脂質によって安定化した水中フルオロカーボンエマルジョンを、以下の様式で調製した。1gのリン脂質EPC−100−3(Lipoid KG,Ludwigshafen,Germany)を、150gの加熱脱イオン水(T=50〜60℃)中で、Ultra−Turraxミキサー(モデルT−25)を用いて、8000rpmにて2〜5分間(T=60〜70℃)均質化した。25gのペルフルオロオクチルブロミド(Atochem,Paris,France)を、混合の間に滴下した。フルオロカーボンを添加した後、エマルジョンを4分以上の間混合した。次いで、得られた粗エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(Avestin,Ottawa,Canada)に、18,000psiにて5回通過させた。
【0128】
溶液AおよびBをあわせ、そして上記の条件下で噴霧乾燥器に供給した。自由に流動する白色粉末を、サイクロンセパレーターにて回収した。中空多孔性硫酸アルブテロール粒子は、飛行時間型分析法(Aerosizer,Amherst Process Instruments,Amherst,MA)によって決定された場合、1.18±1.42μmという容量重みつけ平均空気力学的直径を有した。走査型電子顕微鏡(SEM)分析は、粉末が球状かつ高度に多孔性であることを示した。粉末のタップ密度が、0.1g/cm未満であることを決定した。
【0129】
この前述の実施例は、多数の薬学的薬剤のいずれか1つを効率的に取り込み得る薬物送達プラットフォームとして、本発明の固有の多様性を例示するのに役立つ。この原理は、次の実施例においてさらに例示される。
【0130】
(IV:クロモリンナトリウムの中空多孔性粒子の噴霧乾燥による調製)
クロモリンナトリウムを含む穿孔化微細構造物を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi,Flawil,Switzerland)を用いる噴霧乾燥技術によって、以下のスプレー条件下で調製した;吸入:100%、入口温度:85℃;出口温度:61℃;供給ポンプ:10%;N流;2,800L/時間。供給溶液を、噴霧乾燥の直前に、2つの溶液AおよびBを混合することによって調製した。
【0131】
溶液A:20gの水を使用して、1gのクロモリンナトリウム(Sigma Chemical Co,St.Louis,MO)および0.021gのポロキサマー188NFグレード(BASF,Mount Olive,NJ)を溶解した。
【0132】
溶液B:リン脂質によって安定化した水中フルオロカーボンエマルジョンを、以下の様式で調製した。1gのリン脂質EPC−100−3(Lipoid KG,Ludwigshafen,Germany)を、150gの加熱脱イオン水(T=50〜60℃)中で、Ultra−Turraxミキサー(モデルT−25)を用いて、8000rpmにて2〜5分間(T=60〜70℃)均質化した。27gのペルフルオロデカリン(Air Products,Allentown,PA)を、混合の間に滴下した。フルオロカーボンを添加した後、エマルジョンを少なくとも4分の間混合した。次いで、得られた粗エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(Avestin,Ottawa,Canada)に、18,000psiにて5回通過させた。
【0133】
溶液AおよびBをあわせ、そして上記の条件下で噴霧乾燥器に供給した。自由に流動する淡黄色粉末を、サイクロンセパレーターにて回収した。中空多孔性クロモリンナトリウム粒子は、飛行時間型分析法(Aerosizer,Amherst Process Instruments,Amherst,MA)によって決定した場合、1.23±1.31μmという容量重みつけ平均空気力学的直径を有した。図2に示すように、走査型電子顕微鏡(SEM)分析は、粉末が中空かつ多孔性の両方であることを示した。粉末のタップ密度が、0.1g/cm未満であることを決定した。
【0134】
(V:BDPの中空多孔性粒子の噴霧乾燥による調製)
二プロピオン酸ベクロメタゾンジ(BDP)粒子を含む穿孔化微細構造物を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi,Flawil,Switzerland)を用いる噴霧乾燥技術によって、以下のスプレー条件下で調製した;吸入:100%、入口温度:85℃;出口温度:61℃;供給ポンプ:10%;N流;2,800L/時間。供給ストックを、噴霧乾燥の直前に、0.11gのラクトースを水中フルオロカーボンエマルジョンと混合することによって調製した。エマルジョンを、以下に記載の技術によって調製した。
【0135】
74mgのBDP(Sigma,Chemical Co.,St.Louis,MO)、0.5gのEPC−100−3(Lipoid KG,Ludwigshafen,Germany)、15mgのオレイン酸ナトリウム(Sigma)、および7mgのポロキサマー188(BASF,Mount Olive,NJ)を、2mlの加熱メタノールに溶解した。次いで、このメタノールをエバポレートして、リン脂質/ステロイド混合物の薄いフィルムを得た。次いで、リン脂質/ステロイド混合物を、64gの加熱脱イオン水(T=50〜60℃)中に、Ultra−Turraxミキサー(モデルT−25)を用いて、8000rpmにて2〜5分間(T=60〜70℃)分散した。8gのペルフルブロン(Atochem,Paris,France)を、混合の間に滴下した。添加を完了した後、エマルジョンを4分以上の間さらに混合した。次いで、得られた粗エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(Avestin,Ottawa,Canada)に、18,000psiにて5回通過させた。次いで、このエマルジョンを使用して、上記のように噴霧乾燥した供給ストックを形成した。自由に流動する白色粉末を、サイクロンセパレーターにて回収した。中空多孔性BDP粒子は、0.1g/cm未満のタップ密度を有した。
【0136】
(VI:TAAの中空多孔性粒子の噴霧乾燥による調製)
トリアムシノロンアセトニド(TAA)粒子を含む穿孔化微細構造物を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi,Flawil,Switzerland)を用いる噴霧乾燥技術によって、以下のスプレー条件下で調製した:吸入:100%、入口温度:85℃;出口温度:61℃;供給ポンプ:10%;N流;2,800L/時間。供給ストックを、噴霧乾燥の直前に、0.57gのラクトースを水中フルオロカーボンエマルジョンと混合することによって調製した。エマルジョンを、以下に記載の技術によって調製した。
【0137】
100mgのTAA(Sigma,Chemical Co.,St.Louis,MO)、0.56gのEPC−100−3(Lipoid KG,Ludwigshafen,Germany)、25mgのオレイン酸ナトリウム(Sigma)、および13mgのポロキサマー188(BASF,Mount Olive,NJ)を、2mlの加熱メタノールに溶解した。次いで、このメタノールをエバポレートして、リン脂質/ステロイド混合物の薄いフィルムを得た。次いで、リン脂質/ステロイド混合物を、64gの加熱脱イオン水(T=50〜60℃)中に、Ultra−Turraxミキサー(モデルT−25)を用いて、8000rpmにて2〜5分間(T=60〜70℃)分散した。8gのペルフルブロン(Atochem,Paris,France)を、混合の間に滴下した。フルオロカーボンを添加した後、エマルジョンを少なくとも4分間混合した。次いで、得られた粗エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(Avestin,Ottawa,Canada)に、18,000psiにて5回通過させた。次いで、このエマルジョンを使用して、上記のように噴霧乾燥した供給ストックを形成した。自由に流動する白色粉末を、サイクロンセパレーターにて回収した。中空多孔性TAA粒子は、0.1g/cm未満のタップ密度を有した。
【0138】
(VII:DNaseIの中空多孔性粒子の噴霧乾燥による調製)
中空多孔性DNaseI粒子を、B−191 Mini Spray−Drier(Buechi,Flawil,Switzerland)を用いる噴霧乾燥技術によって、以下の条件で調製した:吸引:100%、入口温度:85℃;出口温度:61℃;供給ポンプ:10%;N流;2,800L/時間。供給物を、噴霧乾燥の直前に、2つの溶液AおよびBを混合することによって調製した。
【0139】
溶液A:20gの水を使用して、0.5gのヒト膵臓DNaseI(Calbiochem,San Diego CA)および0.012gのポロキサマー188NFグレード(BASF,Mount Olive,NJ)を溶解した。
【0140】
溶液B:リン脂質によって安定化した水中フルオロカーボンエマルジョンを、以下の方法で調製した。リン脂質として0.52gのEPC−100−3(Lipoid KG,Ludwigshafen,Germany)を、87gの加熱脱イオン水(T=50〜60℃)中で、Ultra−Turraxミキサー(モデルT−25)を用いて、8000rpmにて2〜5分間(T=60〜70℃)均質化した。13gのペルフルブロン(Atochem,Paris,France)を、混合の間に滴下した。フルオロカーボンを添加した後、エマルジョンを少なくとも4分間混合した。次いで、得られた粗エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(Avestin,Ottawa,Canada)に、18,000psiにて5回通過させた。
【0141】
溶液AおよびBをあわせ、そして上記の条件下で噴霧乾燥器に供給した。自由に流動する淡黄色粉末を、サイクロンセパレーターにて回収した。中空多孔性DNaseI粒子は、飛行時間型分析法(Aerosizer,Amherst Process Instruments,Amherst,MA)によって決定された場合、1.29±1.40μmという容量重みつけ平均空気力学的直径を有した。走査型電子顕微鏡(SEM)分析は、粉末が中空かつ多孔性の両方であることを示した。粉末のタップ密度が、0.1g/cm未満であることを決定した。
【0142】
前述の実施例は、種々の生物活性薬剤を用いる本発明の特別な適合性をさらに示す。すなわち、比較的小さな、頑丈な化合物(例えば、ステロイド)に加えて、本発明の調製物は、タンパク質および遺伝物質のようなより大きな、もろい分子を効率的に組み込むために処方され得る。
【0143】
(VIII:水中ガスエマルジョンの中空多孔性粉末の噴霧乾燥による調製)
以下の溶液を注射用蒸留水を用いて調製した:溶液1:3.9%w/v m−HESヒドロキシエチルデンプン(Ajinomoto,Tokyo,Japan)
3.25%w/v 塩化ナトリウム(Mallinckrodt,St.Louis,MO)
2.83%w/v リン酸ナトリウム(二塩基性)(Mallinckrodt,St.Louis,MO)
0.42%w/v リン酸ナトリウム(一塩基性)(Mallinckrodt,St.Louis,MO)
溶液2:0.45%w/v ポロキサマー188(BASF,Mount Olive,NJ)
1.35%w/v 水素化卵ホスファチジルコリン、EPC−3(Lipoid KG,Ludwigshafen,Germany)
溶液1の成分を、攪拌プレートを用いて温水中に溶解した。溶液2の界面活性剤を、高せん断ミキサーを使用して水中に分散させた。溶液を乳化の後に合わせ、そして噴霧乾燥前に窒素で飽和させた。
【0144】
得られた乾燥し、自由流動する、中空球状産物は、平均粒子直径が2.6±1.5μmであった。この粒子は、SEMで測定されたように、球状かつ多孔性であった。
【0145】
以前の実施例は、広範な種々の発泡剤(ここでは、窒素)が所望の形態を示す微細構造物を提供するために使用され得るという点を示す。実際、本発明の主な利点の1つは、生物学的活性(すなわち、タンパク質を用いて)を保持するか、または選択された多孔度を有する微細構造物を生成するように、形成条件を変更する能力である。
【0146】
(IX:中空多孔性粒子を含む計量吸入器の調製)
実施例I、III、IV、V、VI、およびVIIにおいて調製した、予め重量測定した量の中空多孔性粒子を、10mlのアルミニウム缶に配置して、そして減圧オーブン中で40℃で3〜4時間、窒素流下で乾燥した。缶に充填された粉末の量を、治療効果が必要とされる薬物量によって決定した。この後、この缶をDF31/50 act 50 I バルブ(Valois of America,Greenwich,CT)を用いて圧着シールし、HFA−134a(DuPont,Wilmington,DE)プロペラントをステムを介した加圧によって充填した。缶中のプロペラントの量を、充填前後の缶の重さを測定することによって決定した。
【0147】
(X:MDI性能を評価するためのAndersenインパクター試験)
次いで、実施例IXにおいて調製されたMDIを、一般的に受け入れられている薬学的手順を使用して試験した。利用した方法は、米国薬局方(USP)手順(Pharmacopeial Previews(1996)22:3065−3098、これは、本明細書中に参考として援用される)に従った。5回分の射出を廃棄した後、Andersonインパクター中、試験MDIから20回の射出をを行った。
【0148】
(抽出手順)全てのプレート、誘導ポート、およびアクチュエータからの抽出を、10mLの適切な溶媒を用いて閉鎖したバイアル中で行った。フィルターを設置したがアッセイしなかった。なぜなら、ポリアクリルバインダーは、分析を妨げたからである。質量バランスおよび粒子サイズ分布傾向によって、フィルター上の沈着が無視できるほど少ないことが示された。メタノールを二プロピオン酸ベクロメタゾンおよびトリアムシノロンアセトニドの抽出のために使用した。脱イオン水を硫酸アルブテロール、クロモリンナトリウム、およびDNaseIのために使用した。アルブテロールMDIについては、0.5mlの1N塩化ナトリウムをプレート抽出物に添加して、アルブテロールを、フェノラート形態に変換するために使用した。
【0149】
(定量手順)全ての薬物を、ブランクとして抽出溶媒を用いた外部標準曲線と比較して、吸収分光法(Beckman DU640分光光度計)によって定量した。二プロピオン酸ベクロメタゾンおよびトリアシノロンアセトニドを238nmでのプレート抽出物の吸光度を測定することによって定量した。アルブテロールMDIを243nmでの抽出物の吸光度を測定することによって定量した一方、クロモリンナトリウムを326nmでの吸光度ピークを使用して定量した。DNase定量を、Bio−Radマイクロタイタープレート(Bio−Rad Protein Assay Dye Reagent Concentrate)を使用して、DNase標準曲線に対してタンパク質アッセイ技術によって行った。
【0150】
(算出手順)各MDIについて、ステム(成分−3)、アクチュエータ(−2)、誘導ポート(−1)、およびプレート(0〜7)における薬物質量を上記のように定量した。微細粒子用量および微細粒子割合を上記で参照されたUSP方法に従って算出した。咽頭沈着を、誘導ポートおよびプレート0およびプレート1において見出された薬物質量として規定した。平均質量空気力学的直径(MMAD)および幾何的標準直径(GSD)を、2パラメーターあてはめルーチンを使用することによって対数正規分布に実験的累積関数をあてはめることによって評価した。これらの実験結果を引き続く実施例に示す。
【0151】
(XI:アルブテロールMDI処方物についてのAndersenカスケードインパクター結果)
2つの市販の処方物、Proventil HFAおよびVentolin、ならびに実施例IIIに従って調製した類似の噴霧乾燥中空多孔性粉末についてのカスケードインパクター試験の結果を以下の表に示す。Alliance処方物を、上記の実施例IXにおいて記載したように調製した。Proventil HFA(Key Pharmaceuticals)を供給するアクチュエータを中空/多孔性粒子MDIの性能を評価するために使用した。全ての場合において、各Andersenインパクター試験の前にアクチュエータを洗浄して、乾燥させた。結果をすぐ下の表IIに示す。
【0152】
【表2】

Proventil HFAおよびVentolinは、性能が非常に類似していることが見出され、微細粒子割合が約45%、咽頭沈着が約55μg、微細粒子用量が約47μg、MMADが約2.4μmおよびGSDが約2.0であった。噴霧乾燥された中空多孔性粒子を使用して処方されたMDIは、実質的に高い微細粒子割合(約80%)および有意により低い咽頭沈着(約15μg)を有した。
【0153】
(XII:アルブテロールMDI処方物についてのAndersenカスケードインパクターの結果:性能に対する懸濁物濃度の効果)
実施例IIIおよびIXに従って調製した硫酸アルブテロールMDI分散物を、微細粒子割合、MMAD、GSD、および微細粒子用量について粒子が有し得る効果を決定するために、異なる分散物濃度で研究した。0.78%w/w、0.46%w/w、0.32%w/w、および0.25%w/wの噴霧乾燥した中空多孔性粉末をHFA134a中に含有するMDIを研究した。そしてそれらの結果を以下の表IIIにまとめて示す。
【0154】
【表3】

同様の性能が、微細粒子割合、MMAD、およびGSDに関して、MDIの全体的な濃度範囲にわたって観察された。22.1〜ほぼ62μgの範囲の微細粒子用量が観察された。これらの結果は、広範な用量が微細粒子割合の損失も咽頭沈着の増加も全くなく送達され得ることを明らかに示す。実際の観点からは、このことは、低用量および高用量両方のMDI適用について有利で有り得る。
【0155】
(XIII:クロモリンナトリウムMDI処方物についてのAndersenカスケードインパクターの結果)
市販製品(Intal,Rhone−Poulenc Rorer)ならびに実施例IVおよびIXに従って調製した類似の噴霧乾燥中空多孔性粉末についてのカスケードインパクター試験の結果を、下記の表IVに示す。
【0156】
【表4】

穿孔化微細構造物を用いて処方したMDIは、Intalと比較して優れたエアロゾル性能を有することが見出された。匹敵する微細粒子用量において、噴霧乾燥したクロモリン処方物は、実質的により高い微細粒子割合(約67%)および有意に減少した咽頭沈着(6倍)ならびにより小さなMMAD値を有した。本発明によって提供される効率的な送達は、投与された穿孔化微細構造物の量(300μg)が、投与されたIntal(登録商標)用量(800μg)のほぼ1/3であったにもかかわらず、先行技術の市販の処方物とほぼ同じである微細粒子用量を可能にしたことに注意することが重要である。
【0157】
(XIV:二プロピオン酸ベクロメタゾンMDI処方物についてのAndersenカスケードインパクターの結果)
市販の処方物(Venceril、Schering Corp.)ならびに実施例VおよびIXに従って調製した類似の噴霧乾燥中空多孔性粉末のMDI処方物についてのカスケードインパクター試験の結果を以下の表Vに列挙する。
【0158】
【表5】

等価な微細粒子用量において、噴霧乾燥中空多孔性粒子を用いて処方されたMDIは、Vancerilと比較して優れたエアロゾル性能を有していることが見出された。噴霧乾燥二プロピオン酸ベクロメタゾン処方物は、Vancerilよりも実質的に高い微細粒子割合(35%に対して約56%)、および有意に低い咽頭沈着(約3倍)を有した。MMADは、噴霧乾燥した処方物についてわずかに高いことが見出された。
【0159】
(XV:トリアムシノロンアセトニドMDI処方物についてのAndersenカスケードインパクターの結果)
トリアムシノロンアセトニドの市販の処方物(Azmacort,Rhone−Poulenc)ならびに実施例VIおよびIXに従って調製したTAAの中空多孔性粒子のMDI処方物の比較を、以下に詳述する。Azmacortは、局所的な刺激およびカンジダ症を引き起こす、咽頭におけるステロイド沈着を制限するために組み込み型スペーサーデバイスを含む。結果を、すぐ下の表VIに示す。
【0160】
【表6】

AzmacortにおけるTAAの最初の用量の約2/3は、スペーサーデバイスにおいて失われた。残りの用量の約2/3が咽頭に沈着した。最初の200μgのうちわずか11.5%、すなわち23μgが、肺に利用可能であった。対照的に、スペーサーデバイスなしで投与された本発明の穿孔化微細構造物は、高い効率で等価な用量で、デバイスにおける物質の損失は1桁少なく、そして咽頭へほぼ3倍低く沈着した。増加した効率に起因して、23μgという必要な微細粒子用量を送達するために、4倍少ないTAAしか必要としない。これらの結果は、本発明の処方物が肺へのステロイドの送達において煩わしいスペーサーデバイスについての必要性を除去し得ることを示す。
【0161】
(XVI:DNaseI MDI処方物についてのAndersenカスケードインパクター結果)
実施例VIIに従って調製されたDNaseIの中空多孔性粒子を用いて、実施例IXにおけるように処方されたMDIの吸入特性を、Andersenカスケードインパクターを使用して評価した。76%の微細粒子割合、および3.31μmのMMADが観察された。噴霧乾燥したDNaseI粉末の活性を、ゲル電気泳動を使用してDNAを切断する能力について評価した。純粋な(neat)DNaseI粒子と噴霧乾燥したDNaseI粒子との間に、差異は認められなかった。
【0162】
(XVII:MDI性能に対する粉末多孔度の効果)
粉末多孔度が懸濁物安定性および空気力学的直径に対して有する効果を試験するために、MDIを、実施例Iに記載のようにゲンタマイシン処方物を含有する穿孔化微細構造物の種々の調製物を用いて調製した。HFA 134a中の0.48重量%噴霧乾燥粉末を含むMDIを研究した。実施例Iに示されるように、噴霧乾燥粉末は、種々の多孔度を示す。透明なガラスバイアルに処方物を充填して目視試験した。
【0163】
懸濁物安定性および平均容量重み付け空気力学的直径の強い依存性が、PFC/PC比および/または多孔度の関数として観察された。多孔度が上昇するにつれて容量重み付け平均空気力学的直径(VMAD)は減少し、懸濁物安定性は増加した。SEMおよびTEM技術によって間断がなく(solid)かつ滑らかな様相を呈する粉末は、懸濁物安定性が最も悪く、そして最大の空気力学的平均直径を有した。高度に多孔性かつ中空の穿孔化微細構造物を用いて処方したMDIは、クリーム化に対する最大の耐性および最小の空気力学的直径を有した。実施例Iにおいて生成された乾燥粉末の測定したVMAD値を、すぐ下の表VIIに示す。
【0164】
【表7】

(XVIII:クロモリンナトリウム処方物における沈降速度の比較)
市販のIntal(登録商標)処方物(Rhone−Poulenc Rorer)ならびに実施例IVおよびIXに従って調製したHFA−134aにおいて処方された噴霧乾燥中空多孔性粒子(すなわち、図2を参照のこと)のクリーム化速度の比較を、図3A〜3Dに示す。振盪して0秒後、30秒後、60秒後、および2時間後に撮影した写真の各々において、市販の処方物は左側であり、そして本発明に従って形成された穿孔化微細構造物分散物は右側である。市販のIntal処方物は混合して30秒以内に沈降を示すのに対して、噴霧乾燥した粒子は2時間後もほとんど沈降が示されない。さらに、穿孔化微細構造物処方物は4時間後でもほとんど沈降が認められなかった(示さず)。この実施例によって、中空多孔性粒子が懸濁媒体で充填された場合(すなわち、均質分散物の形成において)に達成され得る密度平衡が明らかに示される。
【0165】
当業者は、本発明がその精神または中心的なその特性から逸脱することなく他の特定の形態を具体化され得ることをさらに理解する。このことにおいて、本発明の前述の説明は、その例示的な実施態様のみを開示し、他のバリエーションが本発明の範囲内であると意図されることが理解される。従って、本発明は、本明細書中に詳細に記載された特定の実施態様に限定されず、むしろ、本発明の範囲および内容を示すものとして、添付の請求の範囲を参照するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載される発明。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−47615(P2010−47615A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274003(P2009−274003)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【分割の表示】特願2000−513560(P2000−513560)の分割
【原出願日】平成10年9月29日(1998.9.29)
【出願人】(500138043)ネクター セラピューティックス (32)
【Fターム(参考)】