説明

計量装置

【課題】前後症に関わっている物品を作業者が特定することが可能な計量装置を得る。
【解決手段】計量装置1は、組合せ計量機10から排出され包装機20で包装された物品Qの重量を計量する計量装置であって、直近の所定期間内における計量値の遷移を示すグラフ8を表示する表示部7と、連続する2個の物品Qの合計計量値が所定の基準値V0の略2倍で、かつ、その2個の物品Qの一方の計量値が基準値V0を超え、他方の計量値が基準値V0未満となっている事象を検出する演算部6とを備え、グラフ8において、その事象に関わる物品Qの計量値は、他の計量値と識別可能に強調表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の物品製造ラインにおいては、組合せ計量機から排出された物品が包装機によって包装され、包装後の物品の重量が計量装置によってチェックされる。ここで、組合せ計量機から包装機に向けて物品を排出するタイミングと、包装機において包材をシールするタイミングとが適正値からずれた場合には、組合せ計量機から一括して排出された物品が、包装機において、連続する2個の袋内に分割されて包装されるという異常(以下「前後症」と称する)が発生する。下記特許文献1には、組合せ計量機の組合せ算出値と、計量装置の計量値とに基づいて、前後症の発生を検出し得る包装計量システムが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−229611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された包装計量システムにおいて、前後症の発生が検出された場合には、「前後症が発生しました」又は「前後症が度々発生しております」といった文字メッセージが、計量装置の表示画面に表示される。しかし、前後症が発生していることが報知されるのみであるため、連続して供給される複数の物品のうちのどの物品が前後症に関わっているのかを、作業者は特定することができない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みて成されたものであり、前後症に関わっている物品を作業者が特定することが可能な計量装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る計量装置は、計量機から排出され包装機で包装された物品の重量を計量する計量装置であって、直近の所定期間内における計量値の遷移を示すグラフを表示する表示手段と、連続する2個の物品の合計計量値が所定の基準値の略2倍で、かつ、前記2個の物品の一方の計量値が前記基準値を超え、他方の計量値が前記基準値未満となっている事象を検出する検出手段とを備え、前記グラフにおいて、前記事象に関わる物品の計量値は、他の計量値と識別可能に強調表示されることを特徴とするものである。
【0007】
第1の態様に係る計量装置によれば、表示手段には、直近の所定期間内における計量値の遷移を示すグラフが表示される。そして、そのグラフにおいて、前後症に関わっている可能性がある物品の計量値は、他の計量値と識別可能に強調表示される。従って、作業者は、グラフを視認することによって、包装機から連続して供給される複数の物品のうち、前後症に関わっている可能性がある物品を容易に特定することが可能となる。
【0008】
本発明の第2の態様に係る計量装置は、第1の態様に係る計量装置において特に、前記検出手段は、各物品の計量値と、前記所定の基準値とを比較する、第1の比較部と、連続する2個の物品の計量値を加算することにより、合計計量値を求める加算部と、前記合計計量値と、所定の下限値及び所定の上限値とを比較する、第2の比較部と、前記第1の比較部の比較結果と、前記第2の比較部の比較結果とに基づいて、前記事象の有無を判定する判定部とを有することを特徴とするものである。
【0009】
第2の態様に係る計量装置によれば、前後症の発生が疑われる事象を、高精度に検出することが可能となる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る計量装置は、第2の態様に係る計量装置において特に、前記判定部は、前記第1の比較部の比較結果において、計量値が前記基準値未満となる比較結果と、前記基準値を超える比較結果とが交互に連続し、かつ、前記第2の比較部の比較結果において、合計計量値が前記所定の下限値以上かつ前記所定の上限値以下となる判定結果が連続する場合に、前記計量機から排出された物品が前記包装機において連続する2個の袋内に分割されて包装されていると判定することを特徴とするものである。
【0011】
第3の態様に係る計量装置によれば、前後症の発生を高精度に検出することが可能となる。
【0012】
本発明の第4の態様に係る計量装置は、第1の態様に係る計量装置において特に、前記検出手段は、各物品の計量値と、第1の下限値及び第1の上限値とを比較する、第1の比較部と、連続する2個の物品の計量値を加算することにより、合計計量値を求める加算部と、前記合計計量値と、第2の下限値及び第2の上限値とを比較する、第2の比較部と、前記第1の比較部の比較結果と、前記第2の比較部の比較結果とに基づいて、前記事象の有無を判定する判定部とを有することを特徴とするものである。
【0013】
第4の態様に係る計量装置によれば、前後症の発生が疑われる事象を、高精度に検出することが可能となる。
【0014】
本発明の第5の態様に係る計量装置は、第4の態様に係る計量装置において特に、前記判定部は、前記第1の比較部の比較結果において、計量値が前記第1の下限値未満となる比較結果と、前記上限値を超える比較結果とが交互に連続し、かつ、前記第2の比較部の比較結果において、合計計量値が前記第2の下限値以上かつ前記第2の上限値以下となる判定結果が連続する場合に、前記計量機から排出された物品が前記包装機において連続する2個の袋内に分割されて包装されていると判定することを特徴とするものである。
【0015】
第5の態様に係る計量装置によれば、前後症の発生を高精度に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、包装機から連続して供給される複数の物品のうち、前後症に関わっている物品を作業者が容易に特定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る計量装置1の構成を概略的に示す図である。計量装置1は、取り込みコンベア2、計量コンベア3、振り分けコンベア4、ロードセル等の計量部5、コンピュータ等の演算部6(検出手段)、及び、液晶表示装置等の表示部7を備えている。計量部5は、計量コンベア3上を搬送されている物品Q(図1におけるQ0,Q1)の重量を計量する。
【0019】
計量装置1の前段には包装機20が配設されており、包装機20の前段には組合せ計量機10が配設されている。組合せ計量機10においては、下端の排出ゲート11を開くことによって、予め設定された目標重量(又はそれに近い重量)の物品Qが、一括して包装機20に向けて落下供給される。排出ゲート11は、所定のタイミングで開閉動作を繰り返す。
【0020】
包装機20は、上面が開口した半袋状に包材21が成形された状態で、組合せ計量機10からの物品Qの供給を待機している。組合せ計量機10から排出された物品Qは、半袋状に成形された包材21内に収容される。その後、包材21の開口上面が横シールされることによって、密封された袋内に物品Qが包装される。また、横シールされた部分が横方向に沿って切断されることによって、包装完了後の物品Qが包材21から分離される。包装機20においては、排出ゲート11の開閉タイミングに同期した所定のタイミングで、横シール処理が実行される。
【0021】
ここで、排出ゲート11の開閉動作のタイミング、及び包装機20の横シール処理のタイミングの一方が設定値からずれた場合には、組合せ計量機10から一括して排出された物品Qが、包装機20において、連続する2個の袋内に分割されて包装されるという異常(前後症)が発生する。前後症が発生した場合には、図1において砂地のハッチングを用いて示すように、連続する2個の物品Qのうちの一方の物品Q0が少量となり、他方の物品Q1が過量となる。
【0022】
包装機20から排出された物品Q0,Q1は、搬送コンベア30によって搬送されて、計量装置1の取り込みコンベア2に間欠的に供給される。計量コンベア3には、取り込みコンベア2から複数の物品Q0,Q1が間欠的に供給され、振り分けコンベア4には、計量コンベア3から複数の物品Q0,Q1が間欠的に供給される。計量部5は、計量コンベア3上を搬送されている1個の物品Qの重量を計量する。
【0023】
図2は、演算部6の構成の一部を示すブロック図である。演算部6は、比較部60,61、記憶部62、加算部63、及び判定部64を有している。
【0024】
比較部60には、物品Qの目標重量に相当する所定の基準値V0が、予め教示されている。また、比較部61には、基準値V0の2倍値未満の所定の下限値VL2と、基準値V0の2倍値超の所定の上限値VH2とが、予め教示されている。例えば、基準値V0が「100グラム」に設定されている場合に、下限値VL2は「190グラム」に設定され、上限値VH2は「210グラム」に設定される。
【0025】
計量部5から出力された計量信号S1(t)は、比較部60、記憶部62、及び加算部63に入力される。比較部60は、計量信号S1(t)で与えられる計量値と、基準値V0とを比較する。ここで、計量対象が物品Q0である場合には、計量値は基準値V0未満となり、計量対象が物品Q1である場合には、計量値は基準値V0超となる。比較部60は、比較結果に関する信号S4を出力する。信号S4は判定部64に入力される。
【0026】
記憶部62には、前回の物品Qに関する計量信号、つまり計量部5から直前に出力された計量信号S1(t−1)が記憶されている。加算部63は、計量部5から入力された計量信号S1(t)と、記憶部62から読み出した計量信号S1(t−1)とを加算し、その加算結果に関する信号S5を出力する。信号S5は比較部61に入力される。
【0027】
比較部61は、信号S5で与えられる重量値と、下限値VL2及び上限値VH2とを比較し、比較結果に関する信号S6を出力する。信号S6は判定部64に入力される。判定部64は、信号S4,S6に基づいて、前後症の発生(又はその可能性)の有無を判定する。
【0028】
図3は、前後症が発生している場合における、比較部60,61の比較結果(信号S4,S6)の遷移を示す図である。前後症が発生している場合、計量コンベア3には、少量品である物品Q0と過量品である物品Q1とが交互に連続して供給される。そのため、図3に示すように、信号S4で与えられる比較結果は、「少量」と「過量」とが交互に連続したものとなる。但し、図3における「少量」とは、計量値が基準値V0未満であることを意味し、「過量」とは、計量値が基準値V0超であることを意味する。
【0029】
また、発生している異常が前後症だけである場合は、一の袋内に収容されるはずの物品Qの一部が、次の袋内に収容されるだけであるため、信号S6で与えられる重量値は、下限値VL2以上かつ上限値VH2以下の範囲内に収まる。従って、図3に示すように、信号S6で与えられる比較結果は、「適量」が連続したものとなる。
【0030】
よって、判定部64は、信号S4,S6に基づいて、連続する2個の物品Qの合計計量値が基準値V0の略2倍(つまり下限値VL2以上で上限値VH2以下)であり、かつ、その2個の物品の計量値の一方が基準値V0を超え、他方が基準値V0未満となっている事象を検出することにより、前後症の発生の可能性があると判定することができる。
【0031】
また、判定部64は、比較部60から入力された信号S4において、計量値が基準値V0未満となる比較結果と、計量値が基準値V0を超える比較結果とが交互に連続し、かつ、比較部61から入力された信号S6において、連続する2個の物品Qの合計計量値が、下限値VL2以上かつ上限値VH2以下となる判定結果が連続する場合に、前後症が発生している(又はその可能性が高い)と判定することができる。
【0032】
判定部64は、判定結果と、各物品Qの計量値とを、データS2として表示部7に入力する。図4は、表示部7における表示例を示す図である。表示部7には、直近の所定期間内における計量値の遷移を示すグラフ8が表示される。グラフ8においては、計量値を示す丸印のプロットが折れ線によって繋がれることにより、表示部7を視認する作業者が計量値の遷移を把握しやすいように表示されている。また、判定部64によって前後症の発生の可能性があると判定された物品に関しては、その計量値が四角印のプロットで強調表示されている。また、判定部64によって前後症が発生している(又はその可能性が高い)と判定された物品に関しては、その計量値が星印のプロットで強調表示されている。なお、作業者がより識別しやすいように、丸印と四角印と星印とで異なる着色を施しても良い。
【0033】
このように本実施の形態に係る計量装置1によれば、表示部7には、直近の所定期間内における計量値の遷移を示すグラフ8が表示される。そして、そのグラフ8において、前後症に関わっている可能性がある(又は可能性が高い)物品Qの計量値は、他の計量値と識別可能に強調表示される。従って、作業者は、グラフ8を視認することによって、包装機20から連続して供給される複数の物品Qのうち、前後症に関わっている可能性がある(又は可能性が高い)物品Qを容易に特定することが可能となる。
【0034】
<変形例>
図5は、変形例に係る演算部6の構成の一部を示すブロック図である。比較部60には、基準値V0未満の下限値VL1と、基準値V0を超える上限値VH1とが、予め教示されている。例えば、基準値V0が「100グラム」に設定されている場合に、下限値VL1は「90グラム」に設定され、上限値VH1は「110グラム」に設定される。計量装置1においては、各物品Qの良/不良を判定する際の指標として、下限許容値及び上限許容値が用いられるが、下限値VL1及び上限値VH1は、下限許容値及び上限許容値に等しくても良いし、そうでなくても良い。演算部6のその他の構成は図2と同様である。
【0035】
計量部5から出力された計量信号S1(t)は、比較部60、記憶部62、及び加算部63に入力される。比較部60は、計量信号S1(t)で与えられる計量値と、下限値VL1及び上限値VH1とを比較し、その比較結果に関する信号S4を出力する。信号S4は判定部64に入力される。なお、記憶部62、加算部63、及び比較部61の処理は、上記実施の形態と同様である。
【0036】
判定部64は、信号S4,S6に基づいて、連続する2個の物品Qの合計計量値が基準値V0の略2倍であり(つまり下限値VL2以上で上限値VH2以下)、かつ、その2個の物品Qの計量値の一方が下限値VL1未満であり、他方が上限値VH1を超えている事象を検出することにより、前後症の発生の可能性があると判定することができる。
【0037】
また、判定部64は、比較部60から入力された信号S4において、計量値が下限値VL1未満となる比較結果と、計量値が上限値VH1を超える比較結果とが交互に連続し、かつ、比較部61から入力された信号S6において、連続する2個の物品Qの合計計量値が、下限値VL2以上かつ上限値VH2以下となる判定結果が連続する場合に、前後症が発生している(又はその可能性が高い)と判定することができる。
【0038】
判定部64は、判定結果と、各物品Qの計量値とを、データS2として表示部7に入力する。図6は、表示部7における表示例を示す図である。上記実施の形態と同様に、表示部7には、直近の所定期間内における計量値の遷移を示すグラフ8が表示される。また、グラフ8においては、計量値を示す丸印のプロットが折れ線によって繋がれることにより、表示部7を視認する作業者が計量値の遷移を把握しやすいように表示されている。また、判定部64によって前後症が発生している(又はその可能性が高い)と判定された物品Qに関しては、その計量値が星印のプロットで強調表示されている。なお、上記実施の形態と同様に、判定部64によって前後症の発生の可能性があると判定された物品Qに関しては、その計量値を四角印のプロットで強調表示しても良い。また、作業者がより識別しやすいように、丸印と四角印と星印とで異なる着色を施しても良い。
【0039】
本変形例によっても、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態に係る計量装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】演算部の構成の一部を示すブロック図である。
【図3】前後症が発生している場合における、比較部の比較結果の遷移を示す図である。
【図4】表示部における表示例を示す図である。
【図5】変形例に係る演算部の構成の一部を示すブロック図である。
【図6】表示部における表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 計量装置
5 計量部
6 演算部
7 表示部
8 グラフ
10 組合せ計量機
20 包装機
60,61 比較部
62 記憶部
63 加算部
64 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量機から排出され包装機で包装された物品の重量を計量する計量装置であって、
直近の所定期間内における計量値の遷移を示すグラフを表示する表示手段と、
連続する2個の物品の合計計量値が所定の基準値の略2倍で、かつ、前記2個の物品の一方の計量値が前記基準値を超え、他方の計量値が前記基準値未満となっている事象を検出する検出手段と
を備え、
前記グラフにおいて、前記事象に関わる物品の計量値は、他の計量値と識別可能に強調表示される、計量装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
各物品の計量値と、前記所定の基準値とを比較する、第1の比較部と、
連続する2個の物品の計量値を加算することにより、合計計量値を求める加算部と、
前記合計計量値と、所定の下限値及び所定の上限値とを比較する、第2の比較部と、
前記第1の比較部の比較結果と、前記第2の比較部の比較結果とに基づいて、前記事象の有無を判定する判定部と
を有する、請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記第1の比較部の比較結果において、計量値が前記基準値未満となる比較結果と、前記基準値を超える比較結果とが交互に連続し、かつ、前記第2の比較部の比較結果において、合計計量値が前記所定の下限値以上かつ前記所定の上限値以下となる判定結果が連続する場合に、前記計量機から排出された物品が前記包装機において連続する2個の袋内に分割されて包装されていると判定する、請求項2に記載の計量装置。
【請求項4】
前記検出手段は、
各物品の計量値と、第1の下限値及び第1の上限値とを比較する、第1の比較部と、
連続する2個の物品の計量値を加算することにより、合計計量値を求める加算部と、
前記合計計量値と、第2の下限値及び第2の上限値とを比較する、第2の比較部と、
前記第1の比較部の比較結果と、前記第2の比較部の比較結果とに基づいて、前記事象の有無を判定する判定部と
を有する、請求項1に記載の計量装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記第1の比較部の比較結果において、計量値が前記第1の下限値未満となる比較結果と、前記上限値を超える比較結果とが交互に連続し、かつ、前記第2の比較部の比較結果において、合計計量値が前記第2の下限値以上かつ前記第2の上限値以下となる判定結果が連続する場合に、前記計量機から排出された物品が前記包装機において連続する2個の袋内に分割されて包装されていると判定する、請求項4に記載の計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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