説明

計量装置

【課題】コイルオーバーフローが発生したことを検知することで応答性を下げることなく系外品の次工程への流出を防止することができる計量装置を提供すること。
【解決手段】電磁コイルおよびこの電磁コイルに電力を印加するコイル印加部とを有し、被計量物Wによる負荷と電磁コイルに流す電流で発生する力とを平衡させ、このとき電磁コイルに流れる電流値を測定して秤量信号として出力する電磁平衡式の秤量手段21と、電磁コイル84に印加された電圧を検出するコイル印加電圧検出部98と、コイル印加電圧検出部98により検出された電圧が飽和しているか否かを判定するコイル印加電圧飽和判定部99と、コイル印加電圧飽和判定部99が電圧が飽和していると判定したとき、秤量手段21からの秤量信号が異常であると判定する制御手段74と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物を計量して良否を判定する計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品等の生産ラインにおいては、生産ラインに組み込まれ、生産される物品が前段から順次搬入され、搬入された物品を搬送しながら計量し、後段に搬出または選別手段により生産ラインから排除する計量装置が用いられている。この種の計量装置としては、電磁平衡式秤の構成を有するものであって、秤量台と、荷重変化による秤量台の所定位置からの変位を検出する位置検出手段と、荷重に対抗する力を秤量台に与える電磁コイルと、位置検出手段からの検出信号を受け、荷重に応じた制御電圧を出力する制御電圧出力手段と、制御電圧に応じた電流で電磁コイルを駆動し、秤量台の所定位置からの変位を抑制する電流変換回路と、を備え、突発的な入力があった場合でも、電磁コイルに流れる電流を制御電圧に速やかに追従して変化させるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−77024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の計量装置にあっては、周辺振動により計量誤差が生じることがある。特にフォークリフトが通ったり、人による振動など突発的に大きな振動がある場合は、計量誤差が発生して軽量品が正量品として計量され系外品が次の工程に流れてしまうことがある。特に、高速高精度計量が必要なラインで使用されることが多い電磁平衡式秤においては、サーボ制御により秤可動部位置を電磁力で制御し、秤可動部位置の操作量を得るためのコイル電流を物品の重さに換算しているが、突発的な大きな振動によりコイル印加電圧が操作量に対して飽和すると、コイル印加電圧の波形がクリップして切れてしまうオーバーフロー状態となってしまい、正確な測定ができなくなってしまうという問題があった。
【0005】
具体的には、図5に示すように、コイル印加電圧がオーバーフローしているとき、コイル印加電圧が予め定められた限界を超えることはできずに波形がクリップするため、計量波形の振幅が小さくなり計量値が正常値より軽めに出てしまうという問題があった。ここで、突発的な大きな振動とは、通常の10〜20倍もの大きな振動であり、このような振動に対応するために限界を高く設定するためには電磁コイルを強力なものにしなければならず、コストの増加等を招いてしまう。したがって、コイル印加電圧に限界を設定する必要があり、これによりコイルへの電流にも限界が設定されることとなる。
【0006】
また、例えば、コイル印加電圧のフィードバック制御系のゲインを下げることによりコイル印加電圧のオーバーフローを回避することが考えられるが、その場合、応答性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
また、コイル電流から物品の計量値を算出する回路には、A/D変換前にローパスフィルタなどにより固有振動などの高い周波数をカットするようになっているため、フィルタにより波形が減衰するため、コイル電流をA/D変換した値からではコイルオーバーフローを検出できず、また、ローパスフィルタを入れないとA/D変換部への入力範囲に対してオーバーフローしてしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、コイルオーバーフローが発生したことを検知することで応答性を下げることなく系外品の次工程への流出を防止することができる計量装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る計量装置は、電磁コイルおよび該電磁コイルに電力を印加するコイル印加部とを有し、被計量物による負荷と前記電磁コイルに流す電流で発生する力とを平衡させ、このとき前記電磁コイルに流れる電流値を測定して秤量信号として出力する電磁平衡式の秤量手段と、前記秤量信号を受け被計量物の計量値を算出する計量手段と、前記計量手段が算出した計量値と良否判定基準とを比較して被計量物の良否を判定する良否判定手段と、前記電磁コイルに印加された電圧を検出するコイル印加電圧検出手段と、前記コイル印加電圧検出手段により検出された電圧が飽和しているか否かを判定するコイル印加電圧飽和判定手段と、前記コイル印加電圧飽和判定手段が電圧が飽和していると判定したとき、前記秤量手段からの秤量信号が異常であると判定する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成により、制御手段により、コイル印加電圧飽和判定手段が電圧が飽和(オーバーフロー)していると判定したとき、秤量手段からの秤量信号が異常であると判定されるので、被計量物が良品と誤判定されて次工程に流出することを防止することができる。また、コイル印加電圧飽和判定手段により電磁コイルのオーバーフローを検出するため、コイル印加電圧のフィードバック制御系のゲインを下げる必要が無く、応答性が下がることを防止することができる。
【0011】
したがって、コイルオーバーフローが発生したことを検知することで応答性を下げることなく系外品の次工程への流出を防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る計量装置は、前記コイル印加電圧検出手段が、前記電磁コイルに直列に接続された電流検出抵抗の電圧に基づいて、前記電磁コイルに印加された電圧を検出することを特徴とする。
【0013】
この構成により、コイルオーバーフローが発生したことを検知することで応答性を下げることなく系外品の次工程への流出を防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る計量装置は、前記コイル印加電圧検出手段が、前記コイル印加部の出力電圧を検出することにより、前記電磁コイルに印加された電圧を検出することを特徴とする。
【0015】
この構成により、コイルオーバーフローが発生したことを検知することで応答性を下げることなく系外品の次工程への流出を防止することができる。
【0016】
また、本発明に係る計量装置は、被計量物を所定の搬送条件により前記秤量手段に搬入および搬出する搬送手段と、前記搬送手段から搬出された被計量物を、前記良否判定手段による判定結果が不良であった場合に前記搬送手段から排出する選別手段と、を備え、前記制御手段が、前記秤量手段からの秤量信号が異常であると判定したとき、被計量物を排出するよう前記選別手段を制御することを特徴とする。
【0017】
この構成により、コイルオーバーフローの発生時には、秤量信号が異常であると判定されて被計量物が排出されるので、系外品の次工程への流出を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、コイルオーバーフローが発生したことを検知することで応答性を下げることなく系外品の次工程への流出を防止することができる計量装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る計量装置の概要を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る計量装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る計量装置の搬送部を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る計量装置の秤量手段を示す図である。
【図5】従来の計量装置のコイルオーバーフローの状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る計量装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1〜図4は、本発明に係る計量装置の一実施の形態を示している。
【0022】
図1〜図4に示すように、計量装置1は、装置本体部2と、搬送部3と、搬入センサ4とを備えて構成されている。また、計量装置1の後段には選別部5が接続されている。
【0023】
計量装置1は、生産ラインの一部を構成するベルトコンベア14の下流側に設置されており、所定の間隔で矢印A方向に順次搬入されてくる肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物Wの重量を測定し、得られた測定値を測定結果として出力するようになっている。さらに、予め設定された重量の上限および下限の基準値とそれぞれ比較し、得られた測定値が基準値の範囲内にあるか否かを判定して範囲内のものを良品とし、範囲外のものを不良品として良否判定したり、複数の基準値に対応して重量ランク判定をするようになっていてもよい。また、測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果は、表示手段10に表示されるとともに、計量装置1の後段に接続された選別部5に出力されるようになっている。選別部5では、計量装置1が出力した測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果に応じて被計量物Wを振り分けるようになっている。
【0024】
装置本体部2は、秤量手段21と、総合制御部7と、表示手段10と、設定手段11と、これらの各部を収納する収納筐体2aとにより構成されている。
【0025】
搬送部3は、ベルトコンベア14から矢印A方向に搬入されてくる被計量物Wを所定の搬送条件により搬送するようになっている。被計量物Wは、助走コンベア31により測定するのに最適な速度になるよう加速または減速されて搬送され、秤量コンベア32によりさらに搬送され、搬送されている間に重量が秤量手段21により計量されるようになっている。秤量コンベア32は、被計量物を所定の搬送条件により搬送するようになっている。また、被計量物Wは、計量の後にさらに後段の選別部5に搬送され、振り分けられるようになっている。
【0026】
搬送部3は、助走コンベア31および秤量コンベア32により構成されている。助走コンベア31は、前段のベルトコンベア14から搬送されてきた被計量物Wが秤量コンベア32に移動する前に、被計量物Wの助走を行うものであり、2つのローラ31a、31cと、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト31bとにより構成されている。秤量コンベア32は、被計量物Wの計量を行う秤量手段21の上部に支持されており、2つのローラ32a、32cとこれらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト32bとにより構成されている。
【0027】
搬入センサ4は、一対の投光部4aおよび受光部4bからなる透過形光電センサで構成されており、助走コンベア31と秤量コンベア32との間に配置されている。具体的には、投光部4aは、搬送ベルト32bの装置本体部2側に配置され、受光部4bは、搬送ベルト32bの他の側面側で投光部4aに対向するように配置されており、被計量物Wが投光部4aおよび受光部4bの間を通過すると被計量物Wにより受光部4bが遮光されるので被計量物Wの搬入が開始されたことが検出されるようになっている。検出された搬入開始の信号は、装置本体部2内の総合制御部7に出力されるようになっている。
【0028】
秤量手段21は、秤量コンベア32を支持し被計量物Wの荷重に基づいて秤量信号を出力する荷重センサであり、電磁平衡式秤の構成を有し、被計量物Wが秤量コンベア32で搬送されている間に、秤量手段21に加わる荷重を測定するようになっている。
【0029】
具体的には、秤量手段21は、図4に示すように、秤量コンベア32とともに上下する吊り板85と、吊り板85を懸架する平行バネ86と、一端が吊り板85に固定されたさお82と、さお82を支持する支点81と、さお82の他端の位置を検出する位置センサ83と、さお82の他端に力を作用させる磁石88付きの電磁コイル84と、電磁コイル84を駆動するコイル印加部92と、位置センサ83からの検出信号に基づいてPID制御等のサーボ制御によりコイル印加部92を制御するサーボ制御部91と、を備えている。なお、平行バネ86は、その一端側は吊り板85に固定されているが、他端側は支点81および電磁コイル84との共通基台87に固定されており、ロバーバル機構を構成している。
【0030】
秤量手段21としての電磁平衡式秤においては、無負荷時にさお82の平衡をとっておき、被計量物Wが秤量コンベア32に載ると支点81回りのバランスが崩れて、さお82が図中右上がりに傾こうとするが、この傾きを位置センサ83により検出し、傾きをゼロとするように電磁コイル84に電流を流すことにより、この電流は被計量物Wの重量に比例するので、重量値にグラム換算することができるようになっている。すなわち、被計量物Wの質量による負荷と、磁石88と電磁コイル84に流す電流で発生する力を平衡させ、このとき電磁コイル84に流れる電流値を被検査物Wの重量として測定している。
【0031】
総合制御部7は、信号処理手段71、計量手段72、記憶手段73、制御手段74、良否判定手段76、モード切替手段77、コイル印加電圧検出部98、コイル印加電圧飽和判定部99、を備えている。
【0032】
信号処理手段71は、秤量手段21からの秤量信号を受け所定の信号処理条件に基づいて信号処理して信号処理済信号を出力するようになっていて、アナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器を備えている。具体的には、信号処理手段71は、秤量手段21からの秤量信号に対して、種類や特性の異なる複数のローパスフィルタから選択したフィルタを用いて、秤量信号の低周波成分のみを信号処理済信号として通過させるようになっている。なお、信号処理手段71が選択するローパスフィルタは、1つの場合、または、複数を組み合わせたものの場合がある。このローパスフィルタとしては、FIR(Finite Impulse Response)フィルタと、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタとがある。ここで、FIRフィルタは、インパルス応答波形が入力された場合に、ある決まった時間(有限時間)だけ出力を出す有限インパルス応答フィルタであり、IIRフィルタは、無限にインパルス応答波形の減衰波形を出力する無限インパルス応答フィルタである。
【0033】
ここで、FIRフィルタは、A/D変換器によりディジタル信号に変換された秤量信号に対して、所定の低周波成分を通過するローパスフィルタを構成し、単純平均化処理や高知の窓関数を用いた重み付け平均化処理を行うようになっている。IIRフィルタは、スイッチトキャパシタフィルタのように特性変更が可能なハードウェアを用いて秤量手段21からの秤量信号(アナログ秤量信号)を直接受けて処理済信号をA/D変換器に出力するアナログフィルタで構成してもよいし、A/D変換器からのディジタル秤量信号(図示せず)を受けるディジタルフィルタで構成してもよい。
【0034】
信号処理手段71は、具体的には、図4に示すように、秤量手段21の電磁コイル84に流れる電流を検出するために電磁コイル84に直列に接続された電流検出抵抗93と、検出された信号を増幅する増幅器94と、増幅された信号をフィルタ処理するアナログフィルタ95と、フィルタ処理された信号をデジタル変換するA/D変換器96と、デジタル変換された信号をフィルタ処理するフィルタ97と、を備えている。
【0035】
計量手段72は、信号処理手段71が出力する信号処理済信号に基づいて被計量物Wの計量値を算出(グラム換算)するようになっている。また、計量手段72においては、搬入センサ4によって被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから所定の基準時間Tkが経過し、秤量手段21から秤量信号が出力された被計量物Wに対して、計量値を算出するようになっている。計量手段72により算出された個々の重量は、記憶手段73に算出データとして記憶されるようになっている。
【0036】
計量手段72は、搬入センサ4によって被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから予め設定された基準時間Tkが経過したときに計量を行うようになっている。ここで、基準時間Tkは、搬入センサ4で被計量物Wが秤量コンベア32に搬入を開始したことを検出してから、被計量物Wが秤量コンベア32に完全に乗り移り、さらに秤量手段21から出力された秤量信号が安定するまでに必要な時間を意味する。具体的には、基準時間Tkは、秤量コンベア32の速度(m/min)、秤量コンベア32の矢印B方向の長さ(mm)および被計量物Wの搬送方向である矢印B方向の長さ(mm)、被計量物Wのサイズやラインの処理能力、その他の条件などに基づいて設定される。また、図3に示すように、基準時間Tkが経過すると、被計量物Wは、搬入開始検出位置PからLだけ移動して質量測定位置Pに到達し、計量が行われる。
【0037】
なお、計量手段72においては、被計量物Wの品種(特に、サイズ)に応じて、その測定範囲、測定能力および検査精度などの検査条件(パラメータ)が選択されるようになっており、被計量物Wの品種に応じて、例えば、測定範囲が6g〜600g、測定能力が最大150個/minで選択されるようになっている。この場合、被計量物Wの1個当たりの基準時間Tkは、最小400msecに設定されていることになり、基準時間Tkは400msec以上であればよいが、被計量物Wのサイズ、ラインの処理能力、生産その他の条件により設定されるようになっている。基準時間Tkは、400msecに近いほど短時間で測定されるので検査効率は高まり、遠くなるほど検査時間はかかるが、秤量コンベア32上を安定して搬送されるようになるから計量精度は高まることになる。
【0038】
また、被計量物Wの品種に応じて、例えば、測定範囲が1g〜300g、測定能力が最大600個/minで選択されるようになっている。測定能力が最大600個/minであると、被計量物Wの1個当たりの測定時間は最小100msecに設定されていることになり、被計量物Wのサイズ、ラインの処理能力、生産やその他の条件により設定されるようになっている。この基準時間Tkは、100msecに近いほど短時間で測定されるので検査効率は高まり、遠くなるほど検査時間はかかるが、秤量コンベア32上を安定して搬送されるようになるから計量精度は高まる。このように、計量手段72においては、被計量物Wの品種に応じて、その範囲、能力などの検査条件(パラメータ)が選択される。
【0039】
記憶手段73は、記憶媒体などから構成されており、秤量コンベア32による被計量物Wの所定の搬送条件、および信号処理手段71における所定の信号処理条件を含む条件パラメータを被計量物Wの品種に対応させて記憶するようになっている。記憶手段73には、被計量物Wの品種毎に付された各品種番号に対応して、搬送速度、LPF(Low Pass Filter)特性が記憶されている。また、記憶手段73には、被計量物Wの良否を判定するための良品範囲が記憶されている。搬送速度は、被計量物Wを搬送する搬送部3の速度であり、LPF特性は、どのような特性のローパスフィルタであるかを示すものであり、良品範囲とは、良品と判定される被計量物Wの重量の範囲である。これらの記憶情報は、設定手段11からの設定操作または外部機器との接続により予め記憶されるようになっている。記憶手段73は、計量値、良品判定結果等の種々のデータを記憶するようになっている。
【0040】
制御手段74は、被計量物Wの品種に応じて記憶手段73から所定の搬送条件および所定の信号処理条件を読み出して秤量コンベア32および信号処理手段71をそれぞれ制御するようになっている。また、記憶手段73に記憶している複数の品種に対応する条件パラメータを順次切り替えて搬送部3および信号処理手段71を制御するようになっている。また、制御手段74は、図示しないモータの回転速度(rpm)を駆動制御して、搬送部3による被計量物Wの搬送速度を制御するようになっている。
【0041】
良否判定手段76は、被計量物Wの良否を判定するものであり、判定回路などから構成され、計量手段72が算出した計量値と良否判定基準とを比較して被計量物Wの良否を判定するようになっている。具体的には、良否判定手段76は、計量手段72から出力された被計量物Wの重量信号を受けると、記憶手段73に予め記憶されている重量の上限値Gaおよび下限値Gbを読み出し、算出した被計量物Wの重量と上限値Gaおよび下限値Gbとをそれぞれ比較し、上限値Gaおよび下限値Gbで決定される重量の許容範囲内に被計量物Wの重量が入っているか否かを判定するようになっている。
【0042】
良否判定手段76において判定された判定結果は、表示手段10に出力され、良品または不良品として表示されるようになっている。また、判定結果は、計量装置1の後段に接続された選別部5に出力され、被計量物Wが良品または不良品として選別されるようになっている。さらに、この判定結果は、記憶手段73に出力され、各被計量物Wについての判定結果が記憶されるようになっている。
【0043】
モード切替手段77は、制御手段74に指令を出し、計量装置1の動作モードを、運転モードと設定モードとの間で切り替えるものである。ここで、運転モードとは、計量装置1が被計量物Wの計量、重量の算出および良否判定を行う通常の動作モードのことであり、設定モードとは、運転モードの動作のための各種パラメータの設定をしたり、運転モードの動作を正常に行うことができるか否かの動作確認のための動作モードである。モード切替手段77は、設定手段11からの入力操作に応じて動作モードを設定モードに切り替えたり、または、装置の運転開始時に動作モードを設定モードに切り替えるようになっている。
【0044】
コイル印加電圧検出部98は、A/D変換器やコンパレータ等から構成され、電磁コイル84に印加された電圧を検出するようになっている。
【0045】
具体的には、コイル印加電圧検出部98は、電磁コイル84に直列に接続された電流検出抵抗93の電圧を増幅器100で増幅した信号に基づいて、電磁コイル84に印加された電圧を検出している。なお、コイル印加電圧検出部98は、コイル印加部92の出力電圧を検出することにより、電磁コイル84に印加された電圧を検出してもよい。
【0046】
コイル印加電圧飽和判定部99は、コイル印加電圧検出部98により検出された電圧が飽和(オーバーフロー)しているか否かを判定するようになっている。コイル印加電圧飽和判定部99は、例えば、電圧が所定の閾値を超越した場合に、電圧が飽和したと判定する。
【0047】
制御手段74は、コイル印加電圧飽和判定部99が電圧が飽和していると判定したとき、秤量手段21からの秤量信号が異常であると判定するようになっている。また、選別部5を計量装置1の一部として構成して制御手段74により選別部5が直接的に制御される場合、制御手段74は、秤量手段21からの秤量信号が異常であると判定したとき、被計量物Wを排出するよう選別部5を制御する。
【0048】
表示手段10は、図1に示すように、装置本体部2の搬送部3側の上端部に設けられ、液晶ディスプレイなどの表示デバイスで構成される。表示手段10は、計量装置1の動作モードが運転モードのときにおいては、計量装置1の動作状態、被計量物Wの計量値、良否判定結果を表示し、計量装置1の動作モードが設定モードのときにおいては、パラメータの設定や動作確認に関する表示をするようになっている。なお、表示手段10は、表示された数字、文字などがタッチ操作により入力されるタッチパネルとして構成し、設定手段11と一体化した構成にしてもよい。
【0049】
選別部5は、計量装置1の後段に接続されており、選別機構部5aおよび搬送ベルト5bにより構成されている。選別機構部5aは、例えば、押し出し型の選別機構により構成されている。選別機構部5aは、良品と不良品とを選別できるものであればよく、フリッパ機構、ドロップアウト機構、エアジェット機構などの選別機構で構成してもよい。選別機構部5aは、上流の秤量コンベア32から搬送される被計量物Wが搬送ベルト5bで矢印B方向に搬送されている間に、不良品と判定された被計量物Wに対して搬送ベルト5bの側面方向への押し出しやジェットエアの吹き付けを行うようになっており、不良の被計量物Wを搬送ベルト5b上から排出し、良品の被計量物Wと区別することにより選別を行っている。また、搬送ベルト5bは、ローラ5cおよびローラ5cに対向して配置されるローラ(不図示)と、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルトとして構成されており、測定を終了した被計量物Wを所定の速度で下流側に搬送するようになっている。
【0050】
次に、本実施の形態に係る計量装置1の動作を説明する。
【0051】
被計量物Wは、助走コンベア31により測定するのに最適な速度になるよう加速または減速されて搬送され、秤量コンベア32により搬送されている間に重量が秤量手段21により計量される。
【0052】
秤量手段21は、秤量コンベア32に被計量物Wの搬入が開始されてから所定のタイミングで被計量物Wの計量値を算出するが、このときに突発的な大きな振動が計量装置1に入力されると、計量値は誤差を含んだものとなる。
【0053】
そこで、コイル印加電圧検出部98が、電磁コイル84に印加された電圧を検出し、コイル印加電圧飽和判定部99が、検出された電圧が飽和しているか否かを判定し、電圧が飽和している場合には、制御手段74が、秤量手段21からの秤量信号が異常であると判定するとともに、被計量物Wを排出するよう選別部5を制御している。
【0054】
なお、上記の実施の形態では、計量装置1は、被計量物Wを搬送しながら計量するようになっているが、本発明は、被計量物Wを搬送する助走コンベア31および秤量コンベア32を備えない構成においても適用することができる。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態に係る計量装置1では、電磁コイル84およびこの電磁コイル84に電力を印加するコイル印加部92とを有し、被計量物Wによる負荷と電磁コイル84に流す電流で発生する力とを平衡させ、このとき電磁コイル84に流れる電流値を測定して秤量信号として出力する電磁平衡式の秤量手段21と、秤量信号を受け被計量物Wの計量値を算出する計量手段72と、計量手段72が算出した計量値と良否判定基準とを比較して被計量物Wの良否を判定する良否判定手段76と、電磁コイル84に印加された電圧を検出するコイル印加電圧検出部98と、コイル印加電圧検出部98により検出された電圧が飽和しているか否かを判定するコイル印加電圧飽和判定部99と、コイル印加電圧飽和判定部99が電圧が飽和していると判定したとき、秤量手段21からの秤量信号が異常であると判定する制御手段74と、を備えたことを特徴とする。
【0056】
この構成により、制御手段74により、コイル印加電圧飽和判定部99が電圧が飽和(オーバーフロー)していると判定したとき、秤量手段21からの秤量信号が異常であると判定されるので、被計量物Wが良品と誤判定されて次工程に流出することを防止することができる。また、コイル印加電圧飽和判定部99により電磁コイル84のオーバーフローを検出するため、サーボ制御部91のゲインを下げる必要が無く、応答性が下がることを防止することができる。
【0057】
したがって、コイルオーバーフローが発生したことを検知することで応答性を下げることなく系外品の次工程への流出を防止することができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る計量装置1では、コイル印加電圧検出部98が、電磁コイル84に直列に接続された電流検出抵抗93の電圧に基づいて、電磁コイル84に印加された電圧を検出することを特徴とする。
【0059】
この構成により、コイルオーバーフローが発生したことを検知することで応答性を下げることなく系外品の次工程への流出を防止することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係る計量装置1では、コイル印加電圧検出部98が、コイル印加部92の出力電圧を検出することにより、電磁コイル84に印加された電圧を検出することを特徴とする。
【0061】
この構成により、コイルオーバーフローが発生したことを検知することで応答性を下げることなく系外品の次工程への流出を防止することができる。
【0062】
また、本実施の形態に係る計量装置1では、被計量物Wを所定の搬送条件により秤量手段21に搬入および搬出する搬送部3と、搬送部3から搬出された被計量物Wを、良否判定手段76による判定結果が不良であった場合に搬送部3から排出する選別部5と、を備え、制御手段74が、秤量手段21からの秤量信号が異常であると判定したとき、被計量物Wを排出するよう選別部5を制御することを特徴とする。
【0063】
この構成により、コイルオーバーフローの発生時には、秤量信号が異常であると判定されて被計量物Wが排出されるので、系外品の次工程への流出を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明に係る計量装置は、コイルオーバーフローが発生したことを検知することで応答性を下げることなく系外品の次工程への流出を防止することができるという効果を有し、肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物を計量して良否を判定する計量装置として有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 計量装置
3 搬送部(搬送手段)
5 選別部(選別手段)
7 総合制御部
10 表示手段
11 設定手段
14 ベルトコンベア
21 秤量手段
31 助走コンベア
32 秤量コンベア
71 信号処理手段
72 計量手段
73 記憶手段
74 制御手段
76 良否判定手段
77 モード切替手段
81 支点
82 さお
83 位置センサ
84 電磁コイル
85 吊り板
86 平行バネ
87 共通基台
88 磁石
91 サーボ制御部
92 コイル印加部
93 電流検出抵抗
94、100 増幅器
95 アナログフィルタ
96 A/D変換器
97 フィルタ
98 コイル印加電圧検出部(コイル印加電圧検出手段)
99 コイル印加電圧飽和判定部(コイル印加電圧飽和判定手段)
W 被計量物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁コイル(84)および該電磁コイルに電力を印加するコイル印加部(92)とを有し、被計量物(W)による負荷と前記電磁コイルに流す電流で発生する力とを平衡させ、このとき前記電磁コイルに流れる電流値を測定して秤量信号として出力する電磁平衡式の秤量手段(21)と、
前記秤量信号を受け被計量物の計量値を算出する計量手段(72)と、
前記計量手段が算出した計量値と良否判定基準とを比較して被計量物の良否を判定する良否判定手段(76)と、
前記電磁コイルに印加された電圧を検出するコイル印加電圧検出手段(98)と、
前記コイル印加電圧検出手段により検出された電圧が飽和しているか否かを判定するコイル印加電圧飽和判定手段(99)と、
前記コイル印加電圧飽和判定手段が電圧が飽和していると判定したとき、前記秤量手段からの秤量信号が異常であると判定する制御手段(74)と、を備えたことを特徴とする計量装置。
【請求項2】
前記コイル印加電圧検出手段が、前記電磁コイルに直列に接続された電流検出抵抗の電圧に基づいて、前記電磁コイルに印加された電圧を検出することを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記コイル印加電圧検出手段が、前記コイル印加部の出力電圧を検出することにより、前記電磁コイルに印加された電圧を検出することを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項4】
被計量物を所定の搬送条件により前記秤量手段に搬入および搬出する搬送手段(3)と、
前記搬送手段から搬出された被計量物を、前記良否判定手段による判定結果が不良であった場合に前記搬送手段から排出する選別手段(5)と、を備え、
前記制御手段が、前記秤量手段からの秤量信号が異常であると判定したとき、被計量物を排出するよう前記選別手段を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−173247(P2012−173247A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38243(P2011−38243)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(302046001)アンリツ産機システム株式会社 (238)