説明

記入情報表示装置

【課題】対向配置された2つの電極間を帯電性粒子が移動することにより情報を表示するものにおいて情報の記入から表示までの時間を短縮する。
【解決手段】タッチパネル部50における接触点に対向する点から半径a内の領域について、透明電極21側に引き寄せられていた帯電性粒子33を表示電極11側に引き寄せて表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない状態にしておき、その後、その領域においてタッチパネル部50にて接触点が検出された場合に、その接触点に配置された表示電極11に対して、表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない帯電性粒子33が表示電極11側に完全に引き寄せられるのに十分な電圧を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記入された情報を表示する記入情報表示装置に関し、特に、対向配置された2つの電極間を帯電性粒子が移動することにより情報を表示するものにおいて情報の記入から表示までの時間を短縮する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、書籍や新聞等に掲載される内容をコンテンツとして記憶、表示可能な電子ブックが販売されている。このような電子ブックとしては、例えば、有機EL素子を用いて情報を表示するものがあり、薄型でありながらも情報の可変表示が可能であることから、今後のさらなる普及が予想される(例えば、特許文献1参照。)。このような電子ブックとしては、有機EL素子を用いたものではなく、対向配置された2つの電極間を帯電性粒子が移動することにより情報を表示する電気泳動表示方式によるものも考えられており、電気泳動表示方式によるものは、電源を切断した後でも表示状態を維持することができることから、有機EL素子を用いたものに比べて消費電力の面で優れている。
【0003】
上記のような電子ブックにおいては、近年、情報を表示するだけではなく、情報を書き込むことを可能な構成とすることにより、表示されたコンテンツにメモを記入可能としたものが考えられている。電子ブックにおいて情報の記入を可能とするためには、上述したような電気泳動表示を行う情報表示層上に、接触領域を検出するタッチパネル部を積層し、タッチパネル部にて接触が検出された領域に対向する電極に、情報表示層にて情報を表示するための電圧を印加することにより、ペン等によって記入された情報を表示することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−2920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような電気泳動表示方式を用いたものにおいては、対向配置された2つの電極をその電極に印加された電圧に応じて帯電性粒子が移動することによって情報が表示されることになるが、2つの電極間を帯電性粒子が移動するための時間がかかるため、ペン等によって情報を記入してからその情報が表示されるまでにタイムラグが生じ、それにより、操作者が情報を記入した時点においてその情報が認識されているのかわからず、また、筆記の軌跡が即時に表示されないことから、記入する情報のバランスがとりにくいという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、対向配置された2つの電極間を帯電性粒子が移動することにより情報を表示するものにおいて情報の記入から表示までの時間を短縮することができる記入情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、
記入情報を表示する記入情報表示装置であって、
複数の電極からなる第1の電極層と、前記第1の電極層と対向配置された第2の電極層とを具備し、前記複数の電極に第1及び第2の電圧のいずれか一方が選択的に印加された場合に該電圧に応じて帯電性粒子が前記第1の電極層と前記第2の電極層とのいずれか一方に引き寄せられることにより、前記第1の電圧が印加された電極に対向する領域と前記第2の電圧が印加された電極に対向する領域とで互いに異なる色を表示する情報表示層と、
前記情報表示層上に該情報表示層にて表示される色を透視可能に積層され、表面における接触点を検出するタッチパネル部と、
前記複数の電極のうち、前記情報表示層の前記タッチパネル部にて検出された接触点に対向する点から所定の範囲内の領域のうち前記記入情報を表示するための色を表示していない領域に配置された電極に、該電極に対向する領域にて前記帯電性粒子が、前記第1及び第2の電極層のいずれにも引き寄せられていない状態とするための電圧を印加するプレドライブ処理と、前記プレドライブ処理を行った領域について、その後、前記タッチパネル部にて検出された接触点に対向する点に配置された電極に、前記記入情報を表示するための色を表示する電圧を印加するとともに、前記タッチパネル部にて検出された接触点に対向する点から前記所定の範囲の領域外となった領域に配置された電極に、当該領域の表示状態を前記プレドライブ処理が行われる直前の表示状態に戻すための電圧を印加する実ドライブ処理とを行う表示制御手段とを有する。
【0008】
上記のように構成された本発明においては、情報を記入するためにタッチパネル部にペン等を接触させると、まず、表示制御手段においてプレドライブ処理が行われる。プレドライブ処理においては、第1の電極層を構成する複数の電極のうち、情報表示層のタッチパネル部にて検出された接触点に対向する点から所定の範囲内の領域のうち記入情報を表示するための色を表示していない領域に配置された電極に、その電極に対向する領域にて帯電性粒子が、第1及び第2の電極層のいずれにも引き寄せられていない状態とするための電圧が印加される。その領域においては、記入情報を表示するための色を表示していないことから、帯電性粒子は、第1及び第2の電極層のうち、その領域にて記入情報を表示するための色を表示しないようになる電極層側に引き寄せられているが、このプレドライブ処理により、帯電性粒子は、第1及び第2の電極層のうち、その領域にて記入情報を表示するための色を表示するようになる電極層側に引き寄せられ始めた状態となる。その後、表示制御手段において実ドライブ処理が行われる。実ドライブ処理においては、プレドライブ処理の後、プレドライブ処理が行われた領域について、タッチパネル部にて検出された接触点に対向する点に配置された電極に、記入情報を表示するための色を表示する電圧が印加されるとともに、タッチパネル部にて検出された接触点に対向する点から所定の範囲の領域外となった領域に配置された電極に、その領域の表示状態をプレドライブ処理が行われる直前の表示状態に戻すための電圧が印加される。プレドライブ処理が行われた領域においては、帯電性粒子が、第1及び第2の電極層のうち、その領域にて記入情報を表示するための色を表示するようになる電極層側に引き寄せられ始めた状態となっているので、その領域に対向する電極に、記入情報を表示するための色を表示する電圧が印加された場合、帯電性粒子の移動距離が短くなり、それにより、電圧が印加されてから記入情報が表示されるまでの時間が短縮されることになる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明においては、情報を記入するためにタッチパネル部にペン等を接触させると、まず、複数の電極のうち、情報表示層のタッチパネル部にて検出された接触点に対向する点から所定の範囲内の領域のうち記入情報を表示するための色を表示していない領域に配置された電極に、その電極に対向する領域にて帯電性粒子が、第1及び第2の電極層のいずれにも引き寄せられていない状態とするための電圧を印加するプレドライブ処理を行い、その後、プレドライブ処理を行った領域について、タッチパネル部にて検出された接触点に対向する点に配置された電極に、記入情報を表示するための色を表示する電圧を印加するとともに、タッチパネル部にて検出された接触点に対向する点から所定の範囲の領域外となった領域に配置された電極に、その領域の表示状態をプレドライブ処理が行われる直前の表示状態に戻すための電圧を印加する実ドライブ処理とを行う構成としたため、実際に情報が記入されることによって接触点が検出された領域においては、プレドライブ処理において、帯電性粒子が、第1及び第2の電極層のうち、その領域にて記入情報を表示するための色を表示するようになる電極層側に引き寄せられ始めた状態となっているので、その領域に対向する電極に、記入情報を表示するための色を表示する電圧が印加された場合、帯電性粒子の移動距離が短くなり、情報の記入から表示までの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の記入情報表示装置の実施の一形態を示す図であり、(a)は全体の積層状態を示す図、(b)は(a)に示したA部拡大図、(c)は(a)に示した表示制御基板の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示した可変表示部の動作を説明するための図である。
【図3】図1に示した記入情報表示装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1に示した記入情報表示装置にて記入情報が表示される際の表面の状態及びその状態を示す断面図である。
【図5】図1に示した表示電極に対する電圧の印加時間と可変表示部における表示色との関係を説明するための図であり、(a)は表示電極にプラスの電圧を印加した場合の印加時間と表示色との関係を示すグラフ、(b)は表示電極に一定時間だけプラスの電圧を印加する場合の波形図、(c)は表示電極に、透明電極側に引き寄せられていた帯電性粒子が表示電極側に引き寄せられるために十分な時間プラスの電圧を印加する場合の波形図である。
【図6】図1に示した記入情報表示装置にて予め情報が表示されている状態から情報を記入していく際の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の記入情報表示装置の実施の一形態を示す図であり、(a)は全体の積層状態を示す図、(b)は(a)に示したA部拡大図、(c)は(a)に示した表示制御基板60の構成を示す機能ブロック図である。
【0013】
本形態は図1に示すように、ベース基材12上に第1の電極層を構成する複数の表示電極11が形成された表示装置用電極基板10と、ガラスや透明フィルム等からなる透明基板22の一方の面に第2の電極層である透明電極(例えば、ITO)21が形成されてなる透明導電膜基板20との間に可変表示部30が挟み込まれて構成された情報表示層40の一方の面に、タッチパネル部50が積層されるとともに、タッチパネル部50とは反対側に表示制御手段となる表示制御基板60が積層されて構成されている。すなわち、情報表示層40においては、第1の電極層を構成する表示電極11と第2の電極層である透明電極21とが、可変表示部30を介して対向配置されている。
【0014】
表示電極11は、ベース基材12上にマトリックス状に形成されており、表示制御基板60による制御によって、第1の電圧となるプラスの電圧と第2に電圧となるマイナスの電圧のいずれか一方が選択的に印加される。
【0015】
可変表示部30は図1(b)に示すように、隔壁31とシール層34とで囲まれた領域に、帯電性粒子33が分散した隔壁内液体32が収容されて構成されている。そして、表示装置用電極基板10、可変表示部30及び透明導電膜基板20は、透明電極21と表示電極11とが、隔壁31とシール層34とで囲まれた領域に収容された隔壁内液体32を介して対向するように積層されている。なお、隔壁31は、底部と、可変表示部30の外周部となる側部と、側部で囲まれた領域を、例えば130μm□で複数の領域に区画するための壁部とからなり、底部とは反対側の面が開口した形状となっている。そして、底部側が表示装置用電極基板10に対向するように積層されており、開口した側にシール層34が積層されている。なお、図1に示したものにおいては、説明を簡単にするために、可変表示部30の区画された領域と表示電極11とが1対1に対応しているが、1対1に対応しているものには限らない。
【0016】
タッチパネル部50は、透明な材料から構成されることによって、可変表示部30にて表示される色を透視可能になっており、周知の技術によって表面における接触点を検出することができるものである。
【0017】
表示制御基板60は図1(c)に示すように、表示電極11及び透明電極21に電圧を印加する電極制御部61と、タッチパネル部50にて接触点として検出された座標を検出する座標検出部62と、表示電極11に対する電圧の印加状態を記憶するメモリ63とが設けられている。
【0018】
以下に、上述した可変表示部30の動作について説明する。
【0019】
図2は、図1に示した可変表示部30の動作を説明するための図である。
【0020】
図1に示した可変表示部30においては、表示電極11に印加される電圧に応じて情報が表示されることになる。
【0021】
図2に示す可変表示部30において、電極制御部61の制御によって、透明電極21をGND電位とし、また、図中左側の表示電極11にマイナスの電圧を印加するとともに、図中右側の表示電極11にプラスの電圧を印加する。
【0022】
すると、隔壁31及びシール層34で囲まれた領域に収容された隔壁内液体32が誘電性物質からなり、帯電性粒子33がマイナス電位に帯電しているものであることから、帯電性粒子33が隔壁内液体32内をクーロン力で移動し、図2に示すように、マイナスの電圧が印加された表示電極11が形成された領域においては帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられ、プラスの電圧が印加された表示電極11が形成された領域においては帯電性粒子33が表示電極11側に引き寄せられる。
【0023】
そして、隔壁内液体32が黒色の染料または顔料で着色されており、帯電性粒子33が高屈折率の光散乱成分を含むため、この記入情報表示装置を透明導電膜基板20側から見た場合、図中左側の表示電極11に対向する領域が白色に見え、図中右側の表示電極11に対向する領域が黒色に見えるようになる。
【0024】
以下に、上述した記入情報表示装置の動作について説明する。
【0025】
図3は、図1に示した記入情報表示装置の動作を説明するためのフローチャートである。また、図4は、図1に示した記入情報表示装置にて記入情報が表示される際の表面の状態及びその状態を示す断面図である。
【0026】
初期状態として、図1に示した記入情報表示装置において、電極制御部61の制御により、透明電極21をGND電位とするとともに全ての表示電極11にマイナスの電圧が印加されている。それにより、図4(b)に示すように、可変表示部30の全ての表示電極11に対向する領域において帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられた状態となり、図4(a)に示すように、タッチパネル部50上の全ての領域が白色表示となっている。
【0027】
この状態から、タッチペン70を用いて情報を記入するために、タッチパネル部50上の情報の書き出しの領域にタッチペン70の先端を接触させると、タッチパネル部50にてその接触点が検出される(ステップS1)。
【0028】
そして、座標検出部62において、タッチパネル部50にて検出された接触点の座標が検出され、電極制御部61の制御により、検出された座標に基づいてその接触点に対向して配置された表示電極11が認識され、接触点に対向する点から半径a内の領域を所定の範囲内としてその範囲内に配置された表示電極11にプラスの電圧が印加される(ステップS2)。すると、プラスの電圧が印加された表示電極11に対向する領域においては、透明電極21側に引き寄せられていた帯電性粒子33が表示電極11側に引き寄せられていく。なお、半径aは、後述するように、タッチペン70によって情報が記入されてからその情報が表示されるまでの時間が所定の時間以上とならないようなものに任意に設定可能である。
【0029】
表示電極11にプラスの電圧が印加されてから一定時間が経過した後(ステップS3)、プラスの電圧が印加された表示電極11のうち、タッチパネル部50にて検出された接触点に対向して配置された表示電極11以外の表示電極11に対する電圧の印加が停止される(ステップS4)。
【0030】
そして、タッチパネル部50にて検出された接触点に対向して配置された表示電極11に対するプラスの電圧の印加時間が、透明電極21側に引き寄せられていた帯電性粒子33が表示電極11側に引き寄せられるために十分な時間となると、図4(d)に示すように、タッチパネル部50にて検出された接触点に対向する領域においては帯電性粒子33が表示電極11側に引き寄せられた状態となり、また、その接触点から半径a内の領域においては、表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない状態となる。それにより、図4(c)に示すように、タッチパネル部50にて検出された接触点においては黒色表示となり、また、その接触点から半径a内の領域は黒色と白色の中間色の灰色表示となり、その他の領域は白色表示となる。
【0031】
ここで、表示電極11に対する電圧の印加時間と可変表示部30における表示色との関係について説明する。
【0032】
図5は、図1に示した表示電極11に対する電圧の印加時間と可変表示部30における表示色との関係を説明するための図であり、(a)は表示電極11にプラスの電圧を印加した場合の印加時間と表示色との関係を示すグラフ、(b)は表示電極11に一定時間だけプラスの電圧を印加する場合の波形図、(c)は表示電極11に、透明電極21側に引き寄せられていた帯電性粒子33が表示電極11側に引き寄せられるために十分な時間プラスの電圧を印加する場合の波形図である。
【0033】
図5(a)に示すように、図1に示した記入情報表示装置の可変表示部30における表示色は、表示電極11に対する電圧の印加時間とともに変化する。そのため、可変表示部30における表示色が、上述したように帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられていることにより白色となっている状態において、表示電極11にプラスの電圧を印加すると、その印加時間とともに帯電性粒子33が表示電極11側に引き寄せられていき、可変表示部30における表示色が黒色に変化していく。
【0034】
この際、表示電極11と透明電極21のいずれか一方の側に引き寄せられていた帯電性粒子33が隔壁内液体32内を移動して反対側に引き寄せられるまでにある程度の時間がかかるため、上述したような表示電極11に対する電圧の印加を、パルスを用いて小刻みに行うことにより、黒表示から白表示に変化する領域と、白表示から黒表示に変化する領域とで、表示の変化にずれが肉眼で認識されてしまうことを回避している。
【0035】
そして、プラスの電圧が印加された表示電極11のうち、タッチパネル部50にて検出された接触点に対向して配置された表示電極11以外の表示電極11に対しては、図5(b)に示すように、プラスの電圧が印加されてから、透明電極21側に引き寄せられていた帯電性粒子33が表示電極11側に引き寄せられていき、表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない状態となるまでの一定時間が経過するまで、プラスの電圧がパルスとなって印加される。
【0036】
また、タッチパネル部50にて検出された接触点に対向して配置された表示電極11に対しては、図5(c)に示すように、プラスの電圧が印加されてから、透明電極21側に引き寄せられていた帯電性粒子33が表示電極11側に引き寄せられるために十分な時間が経過するまで、プラスの電圧がパルスとなって印加される。
【0037】
このように、図1に示した記入情報表示装置の電極制御部61においては、ベース基材12上に形成された複数の表示電極11のうち、タッチパネル部50にて検出された接触点から半径a内の領域に対向して配置された表示電極11に、透明電極21側に引き寄せられていた帯電性粒子33が表示電極11側に引き寄せられていき、表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない状態となるまでの一定時間だけプラスの電圧が印加されることとなり、表示制御基板60におけるこの処理をプレドライブ処理と称する。なお、本形態においては、表示電極11に対して電圧の印加時間を用いて、透明電極21側に引き寄せられていた帯電性粒子33が表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない状態としているが、表示電極11に対して、透明電極21側に引き寄せられていた帯電性粒子33が表示電極11側に完全に引き寄せられるための電圧よりも低い電圧を印加することにより、透明電極21側に引き寄せられていた帯電性粒子33が表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない状態とすることも考えられる。これらを含めて、プレドライブ処理においては、ベース基材12上に形成された複数の表示電極11のうち、タッチパネル部50にて検出された接触点から半径a内の領域に対向して配置された表示電極11に、透明電極21側に引き寄せられていた帯電性粒子33が表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない状態とするための電圧を印加することになる。
【0038】
その後、プレドライブ処理が行われた領域、すなわち、帯電性粒子33が表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない状態となることにより灰色表示となっている領域について、タッチパネル部50にて接触点が検出された場合(ステップS5)、座標検出部62においてその接触点の座標が検出され、電極制御部61の制御により、検出された座標に基づいてその接触点に対向して配置された表示電極11が認識され、その表示電極11に対して、表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない帯電性粒子33が表示電極11側に完全に引き寄せられるのに十分な時間プラスの電圧が印加される(ステップS6)。すると、図4(f)に示すように、表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない帯電性粒子33が表示電極11側に完全に引き寄せられ、図4(e)に示すように、プレドライブ処理によって灰色表示となっている領域のうち、その後にタッチペン50にて接触した領域が黒表示となり、それにより、タッチペン50による記入情報83が黒色で表示されることになる。
【0039】
このように、タッチパネル部50における接触点から半径a内の領域について、透明電極21側に引き寄せられていた帯電性粒子33を表示電極11側に引き寄せて表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない状態にしておき、その後、その領域においてタッチパネル部50にて接触点が検出された場合に、その接触点に対向して配置された表示電極11に対して、表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない帯電性粒子33が表示電極11側に完全に引き寄せられるのに十分なプラスの電圧を印加するので、情報を記入するためにタッチパネル部50にタッチペン70の先端が接触した場合に、帯電性粒子33の移動距離が短くなり、それにより、情報の記入から表示までの時間を短縮することができる。
【0040】
また、プレドライブ処理が行われた領域、すなわち、帯電性粒子33が表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない状態となることにより灰色表示となっている領域について、その後にタッチパネル50にて検出された接触点から半径aよりも離れた領域、すなわち、半径aによる所定の範囲外となった領域においては(ステップS7)、電極制御部61の制御によって、その領域に配置された表示電極11に対してマイナスの電圧が印加される(ステップS8)。すると、図4(f)に示すように、表示電極11と透明電極21のいずれにも引き寄せられていない帯電性粒子33が透明電極21側に引き寄せられ、図4(e)に示すように、プレドライブ処理によって灰色表示となっている領域のうち、その後にタッチペン50にて接触されなかった領域の表示状態が、灰色表示となる直前の白色表示に戻される。なお、表示制御基板60においては、表示電極11に対する電圧の印加状態がメモリ63に記憶されているため、電極制御部61においては、メモリ63を参照し、プレドライブ処理が行われた領域に配置された表示電極11のうち、その後にタッチパネル50にて検出された接触点から半径aよりも離れた領域に配置された表示電極11に対して、その領域の表示状態をプレドライブ処理が行われる直前の表示状態に戻すための電圧を印加することになる。
【0041】
このように、図1に示した記入情報表示装置の電極制御部61においては、プレドライブ処理が行われた領域について、その後、タッチパネル部50にて接触点が検出された場合、その接触点に対向して配置された表示電極11に対して、可変表示部30にて黒色表示されるための電圧が印加され、また、タッチパネル50にて検出された接触点から半径aよりも離れた領域、すなわち、半径aによる所定の範囲外となった領域に対向して配置された表示電極11に対して、その領域の表示状態をプレドライブ処理が行われる直前の表示状態に戻すための電圧が印加されることとなり、表示制御基板60におけるこの処理を実ドライブ処理と称する。
【0042】
なお、プレドライブ処理が行われた後においても、タッチペン70によるタッチパネル部50の接触点に対するプレドライブ処理は、上記同様に行われ、それにより、図4(e)に示すように、タッチペン70によるタッチパネル部50の接触点から半径a内の領域においては、灰色表示されることになる。
【0043】
上述した実施の形態においては、記入情報表示装置にて何も表示されていない状態からタッチペン70を用いて情報を記入し、その記入情報のみを表示する場合を例に挙げて説明したが、情報表示層40が上述したように情報の表示が可能なものであることから、実際には、情報表示層40にて予め情報が表示された状態において、その情報に対するメモ等を記入することになる。
【0044】
図6は、図1に示した記入情報表示装置にて予め情報が表示されている状態から情報を記入していく際の動作を説明するための図である。
【0045】
図6に示すように、図1に示した記入情報表示装置においては、ベース基材12上に形成された複数の表示電極11のうち、表示する情報に応じた表示電極11のみにプラスの電圧が印加されることによって黒色表示部51が形成されている場合がある。そして、上述したようなタッチパネル部50にて検出された接触点から半径a内の領域がこの黒色表示部51にかかっている場合、黒色表示部51においてはタッチペン70による接触点となった場合であっても、表示色を変化させる必要がない。そのため、電極制御部61においては、図6(a)に示すように、黒色表示部51に対向する表示電極11については、タッチパネル部50にて検出された接触点から半径a内の領域となった場合でも、上述したプレドライブ処理を行って灰色表示とせず、記入情報を表示するための黒色を表示していない領域、すなわち、白色表示となっている領域のみについて、上述したプレドライブ処理を行うこととなる。
【0046】
そして、その後、上述した実ドライブ処理を行うことにより、図6(b)に示すように、プレドライブ処理によって灰色表示となっている領域のうちタッチペン50にて接触した領域が黒表示となり、それにより、タッチペン50による記入情報83が黒色で表示されることになる。
【符号の説明】
【0047】
10 表示装置用電極基板
11 表示電極
12 ベース基材
20 透明導電膜基板
21 透明電極
22 透明基板
30 可変表示部
31 隔壁
32 隔壁内液体
33 帯電性粒子
34 シール層
40 情報表示層
50 タッチパネル部
51 黒色表示部
60 表示制御基板
61 電極制御部
62 座標検出部
63 メモリ
70 タッチペン
81 接触点
82 周囲領域
83 記入情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記入情報を表示する記入情報表示装置であって、
複数の電極からなる第1の電極層と、前記第1の電極層と対向配置された第2の電極層とを具備し、前記複数の電極に第1及び第2の電圧のいずれか一方が選択的に印加された場合に該電圧に応じて帯電性粒子が前記第1の電極層と前記第2の電極層とのいずれか一方に引き寄せられることにより、前記第1の電圧が印加された電極に対向する領域と前記第2の電圧が印加された電極に対向する領域とで互いに異なる色を表示する情報表示層と、
前記情報表示層上に該情報表示層にて表示される色を透視可能に積層され、表面における接触点を検出するタッチパネル部と、
前記複数の電極のうち、前記情報表示層の前記タッチパネル部にて検出された接触点に対向する点から所定の範囲内の領域のうち前記記入情報を表示するための色を表示していない領域に配置された電極に、該電極に対向する領域にて前記帯電性粒子が、前記第1及び第2の電極層のいずれにも引き寄せられていない状態とするための電圧を印加するプレドライブ処理と、前記プレドライブ処理を行った領域について、その後、前記タッチパネル部にて検出された接触点に対向する点に配置された電極に、前記記入情報を表示するための色を表示する電圧を印加するとともに、前記タッチパネル部にて検出された接触点に対向する点から前記所定の範囲の領域外となった領域に配置された電極に、当該領域の表示状態を前記プレドライブ処理が行われる直前の表示状態に戻すための電圧を印加する実ドライブ処理とを行う表示制御手段とを有する記入情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−150119(P2011−150119A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10886(P2010−10886)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】