説明

記憶装置、サーボ情報書込み方法、シーク制御方法および制御回路

【課題】ヘッドが1本の記憶媒体においても、境界となるシリンダを正しく検出し、サーボ品質の劣化を防止することを課題とする。
【解決手段】記憶装置は、インナー側からダブルサーボで書き込まれてアウター側から書き込まれたサーボ情報で上書きされていないサーボ情報を用いて検出した境界となる所定のシリンダ情報から、アウター側からノーマルサーボで書き込まれたサーボ情報を用いて検出した境界となる所定のシリンダ情報と差し引いた差分を抽出し、所定のシリンダよりインナー側のトラックにヘッドがオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に抽出された差分を加算したサーボ情報をヘッドを用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いてヘッドの位置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インナー側から書き込まれたサーボ情報とアウター側から書き込まれたサーボ情報との境界が存在する記憶媒体に対して、書き込まれたサーボ情報を復調してシリンダ情報を取得してデータの読み書きを行うヘッドの位置を制御する記憶装置、サーボ情報書込み方法、シーク制御方法および制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスクなどの記憶媒体の記録密度が格段に向上している。これによって、記憶装置の小型化や記録容量の拡大を図ることが可能となり、記憶装置の利便性が高まってきている。
【0003】
このような高密度化された記憶媒体では、目標とするトラックにヘッドを正確に位置付けるために、トラック番号やヘッドのトラック中心に対する相対的位置を復調するためのサーボ・パターン(サーボマーク)などの情報であるサーボ情報がSTW(サーボトラックライター)によって書き込まれる。このSTWは、記憶媒体のOuter側またはInner側からの一方向からサーボ情報を書き込む。そして、記憶装置などの制御装置は、このサーボ情報を用いて、記憶媒体からデータの読み書きを行うヘッドの自動制御を行う(特許文献1参照)。
【0004】
このSTWを用いたサーボ情報の書き込みでは、サイドフリンジといわれるイレーズによる記憶媒体に書き込まれたサーボ品質の劣化が発生し、ヘッドによるサーボ情報読み込み時のサーボマークミスやグレーコード(Graycode)の誤検出などが問題になっている。サイドフリンジは、サーボ情報を記憶媒体に書き込むライトヘッドの磁界漏れ(書き広がり)によるもので、図15に示すように、ヘッドのヨー角(YAW角)とSTWの送り方向に密接に関係している。具体的には、図16に示すように、Outer方向に書くとOuter側が、Inner方向に書くとInner側がサイドフリンジの影響が大きく、イレーズ部分が大きくなり、サーボ品質が大きく劣化する。近年高TPI(Track Per Inch:トラック密度)化がますます進む中、このサーボ品質の劣化によるサーボ情報のエラーレート悪化やヘッドのPosition品質悪化が無視できなくなっている。なお、図15は、ヨー角とSTWの送り方向の関係を示す図であり、図16は、STWの送り方向におけるイレーズ部分を説明するための図である。
【0005】
このようなサーボ品質の劣化によるエラーレート悪化やPosition品質悪化などを防止する手法として、Outer側ではInner側にSTWヘッドを送りながらサーボ情報を書き込み、Inner側ではOuter側にSTWヘッドを送りながらサーボ情報を書き込む両方向STWが用いられている。この両方向STWを用いることで、Outer側から書き込んだサーボ情報とInner側から書き込んだサーボ情報との境界が存在することとなる。この境界は、サーボ情報を書き込む再の環境の変化などで、一致せずに時間方向、半径方向にずれてしまい、このずれがサーボ未検出あるいは誤検出を発生させる原因となっている(図17参照)。そして、両方向STWを用いるには、この境界部(境界となるシリンダ:境界シリンダ)に書き込まれたサーボ情報を正確に読み出しまたは検出処理するための補正処理が必要であるため、この境界部を精度よく検出することが重要である。なお、図17は、書き込まれたサーボ情報の時間方向、半径方向のずれを示す図である。
【0006】
【特許文献1】特許第2645182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来の技術では、ヘッドが1本の記憶媒体においては、境界となるシリンダを正しく検出することができないために、サーボ品質の劣化によるサーボ情報のエラーレート悪化やヘッドのPosition品質悪化が発生するという課題があった。具体的には、一般的に記憶媒体の両面で境界シリンダを変えており、ヘッド間ずれ測定を数Zoneで行って境界シリンダを計算で算出しているため、ヘッドを1本しか搭載していないハードディスクなどの記憶媒体では、境界となるトラック(またはシリンダ)を求めることができない。その結果、境界部(境界となるシリンダ:境界シリンダ)に書き込まれたサーボ情報を正確に読み出しまたは検出処理するためのサーボ情報の補正処理を実施することができず、サーボ品質の劣化によるサーボ情報のエラーレート悪化やヘッドのPosition品質悪化が発生する。
【0008】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、ヘッドが1本の記憶媒体においても、境界となるトラックを正しく検出し、サーボ品質の劣化を防止することが可能である記憶装置、サーボ情報書込み方法、シーク制御方法および制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理により前記所定のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれた記憶媒体と、前記記憶媒体に書き込まれた情報を読み出すヘッドと、前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれたサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第一境界検出部と、前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれて前記第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第二境界検出部と、前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出する差分抽出部と、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダと、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダとの間を、ヘッドが移動してオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に前記差分抽出部により抽出された差分を加算または減算したサーボ情報を前記ヘッドを用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いて前記ヘッドの位置を制御するヘッド位置制御部と、を備えてなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記差分抽出手段により抽出された差分が負の値であった場合に、負の値が検出されたシリンダ情報が存在する記憶媒体であることを外部に通知するリジェクト部を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記記憶媒体は、前記第一サーボ書込み処理において、前記第二サーボ書込み処理で上書きされない方のサーボ情報が特殊なマークパターンを用いて書き込まれた記憶媒体であって、前記ヘッド位置制御部は、前記記憶媒体において、前記特殊なマークパターンで書き込まれたサーボ情報を、前記ヘッドの位置制御に用いないことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記ヘッド位置制御部は、前記記憶媒体において、前記アウター側境界検出部により検出された所定のシリンダ付近をスキップして、ユーザ領域として使用しないように、前記ヘッドの位置を制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理により前記所定のシリンダでサーボ情報が重なって記憶媒体に書き込むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記差分検出部は、前記記憶媒体の複数箇所で、前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記の発明において、前記ヘッドが、前記第二サーボ書込み処理で書き込まれたサーボ情報上の所定のシリンダ情報を追従しながら、前記第一サーボ書込み処理で書き込まれたサーボ情報であって、前記第二サーボ書込み処理で上書きされていないサーボ情報上のシリンダ情報を読み取ることで、前記差分抽出部は、前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記の発明において、所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理により前記所定のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれた記憶媒体と、前記記憶媒体に書き込まれた情報を読み出すヘッドと、前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれたサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第一境界検出工程と、前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれて前記第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第二境界検出工程と、前記第一境界検出工程により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出工程により検出されたシリンダ情報との差分を抽出する差分抽出工程と、を有する記憶装置のシーク制御方法であって、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダと、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダとの間を、ヘッドが移動してオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に前記差分抽出工程により抽出された差分を加算または減算したサーボ情報を前記ヘッドを用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いて前記ヘッドを目標位置にシークすることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記の発明において、前記記憶装置が、さらに、前記ヘッドを支持するアクチュエータと、電流を通電することで前記アクチュエータをシークさせるボイスコイルモータとを有し、シーク時に目標位置と現在位置が一致しない場合に、前記電流値を微量変化させることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記の発明において、さらに、目標位置と現在位置とから位置誤差を演算し、前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記の発明において、所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理により前記所定のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれた記憶媒体上で、前記記憶媒体に書き込まれた情報を読み出すヘッドをシークさせる制御回路であって、前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれたサーボ情報を、前記記憶媒体に書き込まれた情報を読み出すヘッドにより読み出して検出する第一境界検出部と、前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれて前記第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第二境界検出部と、前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出する差分抽出部と、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダと、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダとの間を、ヘッドが移動してオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に前記差分抽出部により抽出された差分を加算または減算したサーボ情報を前記ヘッドを用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いて前記ヘッドの位置を制御するヘッド位置制御部と、を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ヘッドが1本の記憶媒体においても、境界となるシリンダを正しく検出し、サーボ品質の劣化を防止することが可能である。また、サーボ品質の高い記憶媒体を用いることができる結果、記憶媒体の高TPI化に貢献することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る記憶装置、サーボ情報書込み方法、シーク制御方法および制御回路の実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本実施例で用いる主要な用語、本実施例に係る記憶装置の概要および特徴、記憶装置の構成および処理の流れを順に説明し、最後に本実施例に対する種々の変形例を説明する。
【実施例1】
【0022】
[用語の説明]
まず最初に、本実施例で用いる主要な用語を説明する。「記憶装置」とは、データを記録するディスクと、ディスクにデータのリードやライトを行うヘッドと、ヘッドを所定の位置に移動させるためにアームを回動させるボイス・コイル・モータ(VCM)と、これらを制御する制御用回路とで主に構成される装置のことである。「記憶装置」においては、SPM(スピンドルモータ)によりディスクが一定の回転数で回転し、その上をヘッドが浮上しながら、データのリードやライトを行う。
【0023】
ところで、データのリードは、ヘッドがディスクの所定の位置に位置決めされ、所定の位置に記録されたデータをリードすることによって実現される。また、データのライトは、ヘッドがディスクの所定の位置に位置決めされ、所定の位置にデータをライトすることによって実現される。このようなヘッドの位置決めは、記憶装置のマイクロ・コントロール・ユニット(MCU)によって制御される。
【0024】
ヘッドの位置制御を行う「MCU」は、ディスクにおいて、ホスト・コンピュータにおける処理に利用されるデータである「ユーザデータ」の他に記憶される「サーボ制御用データ」を読み込んで位置制御を行う。この「サーボ制御用データ」には、ディスクにおける位置情報などが記録されているので、ヘッドによってリードされた「サーボ情報(サーボ制御用データ)」が「MCU」に送信されると、「MCU」は、ヘッドの現在位置を計算する。次に、「MCU」は、ヘッドの現在位置に基づいてフィルタ計算を行い、フィルタ計算で得られた制御値によって、VCMを制御する。VCMは、上記したように、ヘッドを所定の位置に移動させる駆動部であるので、VCMが制御されると、ヘッドの位置決めが制御されることになる。
【0025】
このように、「MCU」は、ディスクに記憶される「サーボ情報」をリードしてフィルタ計算を行うことでヘッドの位置制御を行うため、「サーボ情報」を正確にリードすることが記憶装置におけるヘッドの位置決め制御にとって重要である。また、ディスクにおいて「サーボ情報」が正確に書き込まれていなければ、ヘッドの位置制御の際に、「MCU」によって読み出される「サーボ情報」も正確性を欠くこととなるため、「ディスク」に「サーボ情報」を正確に書き込むことも重要である。
【0026】
[記憶装置の概要および特徴]
次に、図1を用いて、実施例1に係る記憶装置の概要および特徴を説明する。図1は、実施例1に係る記憶装置の概要と特徴を説明するための図である。
【0027】
この記憶装置は、インナー側から書き込まれたサーボ情報とアウター側から書き込まれたサーボ情報との境界が存在する記憶媒体に対して、書き込まれたサーボ情報を復調してシリンダ情報を取得してデータの読み書きを行うヘッドの位置を制御することを概要とするものであり、特に、ヘッドが1本の記憶媒体においても、境界となるシリンダを正しく検出し、サーボ品質の劣化を防止することが可能である点に主たる特徴がある。
【0028】
この主たる特徴を具体的に説明すると、記憶装置は、インナーシリンダからアウター側の所定のシリンダに向けて二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、第一サーボ書込み処理後、アウターシリンダからインナー側の所定のシリンダに向けて、第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、第一サーボ書込み処理と第二サーボ書込み処理により所定のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれた記憶媒体を受け付ける(図1の(1)参照)。本実施例では、最インナーシリンダのトラックをグレーコード「10000Track」、最アウターシリンダのトラックをグレーコード「1000Track」として説明する。また、ここで示す所定のシリンダとは、第一サーボ書込み処理と第二サーボ書込み処理とによって書き込まれたサーボ情報の「境界」となる。
【0029】
具体的には、記憶装置は、最インナーシリンダであるグレーコード(10000Track)から所定のシリンダ(境界)まで、二つの同じサーボ情報が並行して書き込まれ、最インナーシリンダから書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするように最アウターシリンダであるグレーコード(1000Track)から境界まで、一つのサーボ情報が書き込まれた記憶媒体を受け付ける。
【0030】
例えば、記憶装置は、グレーコード(10000Track)から境界(5007Track)まで、「SV0・SV0(ダブル)、SV1・SV1(ダブル)、・・・」と二つの同じサーボ情報を並行して書き込むダブルサーボでサーボ情報が書き込まれ、最インナーシリンダから書き込まれた「SV0、SV1、SV2・・・」を上書きするように、一つのサーボ情報を書き込むノーマルサーボでグレーコード(1000Track)から境界までサーボ情報が書き込まれたディスクを受け付ける。
【0031】
つまり、記憶装置は、最アウターシリンダ(1000Track)から境界(5007.5Track)まではノーマルサーボでサーボ情報が書き込まれ、境界付近ではアウター側から書き込まれたサーボ情報と最インナーシリンダから書き込まれたダブルサーボ(分身)との二重にサーボ情報が書き込まれ、最インナーシリンダ(10000Track)から境界(5007.5Track)まではダブルサーボで二重にサーボ情報が書き込まれたディスクを受け付ける。
【0032】
なお、ここでは、このディスク11には、最アウターシリンダから書き込まれるサーボ情報と、最インナーシリンダから書き込まれるサーボ情報との境界としてグレーコード「5007」Trackが設定されている。また、予めインナー側全てダブルサーボで書き込まれている必要はなく、境界近傍のみダブルサーボで書き込まれていればよい。
【0033】
そして、記憶装置は、受け付けられた記憶媒体における境界のシリンダ情報を、第二サーボ書込み処理により書き込まれたサーボ情報をヘッドにより読み出して検出する(図1の(2)の(1)参照)。具体的に例を挙げて説明すると、記憶装置は、受け付けられたディスクの最アウターシリンダから書き込まれたサーボ情報を復調して、境界となるシリンダ情報「グレーコード「5007」Track」を検出する。この境界となるグレーコード「5007」Trackは、最インナーシリンダから書き込まれたサーボ情報を境界近傍で上書きしているために確定した境界となる。つまり、ユーザ領域としては、アウター側からはグレーコード「5007」Trackが境界となり、インナー側からはグレーコード「5008」Trackが境界となる。
【0034】
続いて、記憶装置は、受け付けられた記憶媒体において、境界のシリンダ情報を、第一サーボ書込み処理により書き込まれて第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報をヘッドにより読み出して検出する(図1の(2)の(2)参照)。上記した例で具体的に説明すると、記憶装置は、受け付けられたディスクにおいて、最インナーシリンダからダブルサーボで書き込まれてノーマルサーボで上書きされていないサーボ情報を復調して、境界となるシリンダ情報「グレーコード「6007.5」Track」を検出する。ここで、検出されたグレーコード「6007.5」Trackは、図1の(2)の(1)で検出された境界となるグレーコード「5007」Trackに相当するトラック情報であり、ユーザ領域(Userシリンダ)としては同じトラック番号を示していることとなるが、サーボ情報を書き込むSTW(サーボトラックライタ)の環境変化や外乱などにより同じ値となっていない。
【0035】
ここで、図2を用いて、境界付近においてダブルサーボを検出する手法について説明する。図2は、境界付近におけるダブルサーボ検出手法の例を示す図である。図2の(1)に示すように、記憶装置は、通常、ServoGate(SG)の間隔でサーボ情報をリードして復調し、ヘッドを制御する。ところが、通常、このSGの間隔は、ノーマルサーボ(ダブルサーボでない通常のサーボ情報)の間隔と同じであるため、ダブルサーボで書き込まれたサーボ情報をリードすることができない。そこで、図2の(2)に示すように、記憶装置は、境界付近において、アウター側から書き込まれたサーボで境界付近までシークし、境界ではSGを通常の2倍にすることで、アウター側から書き込まれたサーボ情報(ノーマルサーボ)だけでなく、インナー側から書き込まれてアウター側で上書きされていないサーボ情報(ダブルサーボ)もリードして復調することができる。
【0036】
そして、記憶装置は、最インナーシリンダから書き込まれたサーボ情報を用いて検出されたシリンダ情報から、最アウターシリンダから書き込まれたサーボ情報を用いて検出されたシリンダ情報を差し引いた差分を抽出する(図1の(2)の(3)参照)。上記した例で具体的に説明すると、記憶装置は、最インナーシリンダから書き込まれたサーボ情報を用いて検出されたグレーコード「6007.5」Trackから、最アウターシリンダから書き込まれたサーボ情報を用いて検出されたグレーコード「5007」Trackを差し引いた差分「1000.5」を抽出する。
【0037】
その後、記憶装置は、所定のシリンダである境界よりインナー側のトラックにヘッドがオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に抽出された差分を加算したサーボ情報をヘッドを用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いてヘッドの位置を制御する(図1の(2)の(4)参照)。
【0038】
上記した例で具体的に説明すると、ユーザ領域としては、サーボ情報は連続的な数値となっているため、検出された境界「5007」Trackよりインナー側では、「5008Track、5009Track、・・・」となっている。そして、「5007」Track以降は、アウター側から書き込まれるサーボ情報が書き込まれていないため、インナー側から書き込まれたサーボ情報を復調してヘッドの位置を制御する必要がある。ところが、図1の(2)の(3)で算出したように、インナー側とアウター側とで書き込まれたサーボ情報には、「1000.5」分のずれが存在している。そのため、例えば、ユーザ領域として「5008」Trackにヘッドがオントラックした場合には、インナー側から書き込まれたサーボ情報「6008.5」Trackを復調する必要がある。つまり、記憶装置は、境界となるグレーコード「5007」Trackよりインナー側にヘッドがオントラックした場合、ユーザ領域としてのサーボ情報に差分「1000.5」を加算したサーボ情報をリード・復調して、ヘッドの位置を制御する。
【0039】
このように、実施例1に係る記憶装置は、両方STWを用いてアウター側とインナー側とのそれぞれからサーボ情報が書き込まれた記憶媒体であっても、アウター側とインナー側との差分を読み替えて、正確なサーボ情報を検出することができる結果、上記した主たる特徴のごとく、ヘッドが1本の記憶媒体においても、境界となるシリンダを正しく検出し、サーボ品質の劣化を防止することが可能である。
【0040】
[記憶装置の構成]
次に、図3を用いて、図1に示した記憶装置の構成を説明する。図3は、実施例1に係る記憶装置の構成を示すブロック図である。図3に示すように、この記憶装置10は、ディスク11と、ヘッド12と、VCM(ボイスコントロールモータ)13と、RDC(リードライトチャネル)20と、RAM30と、SVC(サーボコントローラ)40と、HDC(ハードディスクコントローラ)50と、MCU(マイクロ・コントロール・ユニット)60とから構成される。
【0041】
ディスク11は、インナーシリンダからアウター側の所定のシリンダに向けて二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、第一サーボ書込み処理後、最アウターシリンダからインナー側の所定のシリンダに向けて、第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされて書き込まれたサーボ情報とユーザデータとを記録する。なお、本実施例では、最インナーシリンダをグレーコード「10000Track」、最アウターシリンダをグレーコード「1000Track」として説明する。
【0042】
具体的には、ディスク11は、金属またはガラス製の円盤(ディスク)状の基板に磁性膜を形成した円盤であり、ユーザデータおよびサーボ情報を磁気で記録する媒体であり、最インナーシリンダであるグレーコード(10000Track)から所定のシリンダである境界(5007Track)まで、二つの同じサーボ情報が並行して書き込まれ、最インナーシリンダから書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするように最アウターシリンダであるグレーコード(1000Track)から境界まで、一つのサーボ情報が書き込まれた記憶媒体である。
【0043】
例えば、ディスク11は、図4に示すように、サーボ情報として、「PreAmble、SM、Frame、Graycode、バースト情報」から構成される「ServoFrame」を記憶する。ここで、ユーザデータとは、ホスト・コンピュータ100における処理に利用されるデータのことであり、サーボ情報とは、ヘッド12の位置決め制御に利用されるデータのことである。ディスク11は、ヘッド12によって、記録しているデータ(ユーザデータおよびサーボ情報)をリードされたり、データ(ユーザデータ)をライトされたりする。なお、ここでは、このディスク11には、第一サーボ書込み処理によって最アウターシリンダのトラックから書き込まれるサーボ情報と、第二サーボ書込み処理によって最インナーシリンダのトラックから書き込まれるサーボ情報との境界としてグレーコード「5007」Trackが設定されている。つまり、このディスク11は、グレーコード「5007」Trackを境界として、最アウターシリンダから一つのサーボ情報が書き込まれ、最インナーシリンダから二つの同じサーボ情報が並行して書き込まれている。なお、図4は、書き込まれるサーボ情報の例を示す図である。
【0044】
ヘッド12は、ディスク11にデータのリード・ライトやディスクに記憶されるサーボ情報のリードを行う。具体的には、ヘッド12は、磁気を電気信号に変換する素子で形成され、回転するディスク11の上を浮上しながら、データのリード・ライトやサーボ情報のリードを行う。例えば、ヘッド12は、ディスク11に磁気で記録されたユーザデータおよびサーボ情報をリードし、電気信号に変換したデータを、図示しないヘッド・アンプを介して、RDC20に送信する。
【0045】
ここで、ヘッド12が、ディスク11上の所定の位置でユーザデータのリードやライトを行うためには、ヘッド12がディスク11上の所定の位置に位置決めされるようにヘッド12の位置決め制御が行われる必要がある。このようなヘッド12の位置決め制御は、VCM13、SVC40およびMCU60によって実現される。
【0046】
VCM13は、ヘッド12の位置決め制御を行う。具体的には、VCM13は、ヘッドを動かすディスク駆動部を動作させるモータであり、モータを回転することで、ヘッド12の位置決め制御を行う。また、VCM13は、SVC40に接続され、MCU60によって制御される。
【0047】
RDC20は、主に、ディスク11からリードされたユーザデータやサーボ情報のコード復調を行い、また、ディスク11にライトするユーザデータのコード変調を行う。具体的には、RDC20は、ユーザデータをディスク11に書き込むための変調回路や、サーボ情報からディスクにおける位置情報などを取り出す復調回路など備えている。
【0048】
RAM30は、データを一時的に記憶する。具体的には、RAM30は、MCU60に接続され、読み出されたサーボ情報などのデータを、一時的に記憶するランダム・アクセス・メモリである。
【0049】
SVC40は、主に、図示しないスピンドル・モータ(SPM:Spindle Motor)とVCM13とを駆動制御する。具体的には、SVC40は、ディスク11を回転させるためのモータであるスピンドル・モータを駆動するパワー回路や、ヘッド12の位置決め制御を行うVCM13を駆動するパワー回路などを備え、図示しないスピンドル・モータと、VCM13と、HDC50と、MCU60とに接続される。例えば、SVC40は、MCU60からヘッドの位置制御情報を示す制御値の入力を受け付け、この制御値に基づいてVCM13を制御する。
【0050】
HDC50は、主に、ホスト・コンピュータ100と記憶装置10とのインタフェース制御や、各機能部のインタフェース制御を行う。具体的にはHDC50は、ホスト・コンピュータ100と記憶装置10との間で転送されるデータのエラーを訂正するエラー訂正回路や、ホスト・コンピュータ100と記憶装置10との間のインタフェースや、RDC20とMCU60との間のインタフェースなどを制御するインタフェース制御回路などを備え、ホスト・コンピュータ100と、SVC40と、RDC20と、MCU60とに接続される。
【0051】
例えば、HDC50は、ホスト・コンピュータ100からデータのリード・ライト指示を受け付けると、RDC20に送信してデータを書き込んだり、データをホスト・コンピュータ100へ送信したりする。また、例えば、HDC50は、位置制御のためにヘッド12に供給される電流をRDC20から受け付けて、後述するMCU60に出力したりする。
【0052】
MCU60は、各種の処理手順などを規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、主に、記憶装置10全体の制御や、ヘッド12の位置決め制御を行うとともに、特に本発明に密接に関連するものとしては、アウター側境界検出部61と、インナー側境界検出部62と、差分抽出部63と、ヘッド位置制御部64と、リジェクト部65とを備える。但し、アウター側境界検出部61と、インナー側境界検出部62と、差分抽出部63と、ヘッド位置制御部64と、リジェクト部65は必ずしも一つのMCUに格納されている必要はなく、複数の回路に分けられていてもよい。
【0053】
かかるアウター側境界検出部61は、受け付けられたディスク11において境界となるトラック情報を、第二サーボ書込み処理により書き込まれたサーボ情報をヘッドにより読み出して検出する。具体的に例を挙げて説明すると、ディスク11には、グレーコード(5007)Trackを境界として、二つの並行したサーボ情報(ダブルサーボ)が最インナーシリンダから書き込まれ、ダブルサーボの一つのサーボ情報を上書きするように最アウターシリンダから一つのサーボ情報(ノーマルサーボ)が書き込まれている。
【0054】
そして、アウター側境界検出部61は、予め定められた境界となるシリンダまでヘッドを制御する指示をSVC40に出力し、SVC40は、指示された通りにVCM13を駆動させてヘッド12を境界となるシリンダにオントラックする。続いて、ヘッド12は、オントラックされた第二サーボ書込み処理によって書き込まれたサーボ情報をリードしてRDC20に出力し、RDC20は、入力されたサーボ情報を復調するとともに、復調したデータをHDC50を介してアウター側境界検出部61に出力する。その後、アウター側境界検出部61は、復調されて入力された情報から境界となるシリンダ情報「グレーコード「5007」Track」を検出するとともに、抽出されたグレーコード「5007」Trackを後述する差分抽出部63に出力する。この境界となるグレーコード「5007」Trackは、最インナーシリンダから書き込まれたサーボ情報を境界近傍で上書きしているために確定した境界となる。
【0055】
インナー側境界検出部62は、受け付けられたディスク11において境界となるシリンダ情報を、第一サーボ書込み処理により書き込まれて第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報をヘッド12により読み出して検出する。上記した例で具体的に説明すると、インナー側境界検出部62は、アウター側境界検出部61で説明した手法と同様に、SVC40に対してヘッドの位置制御を指示し、その後、ヘッド12によりリードされたサーボ情報をRDC20とHDC50とを介して受け付ける。
【0056】
そして、インナー側境界検出部62は、ディスク11の最インナーシリンダから第一サーボ書込み処理によってダブルサーボで書き込まれて、最アウターシリンダから第二サーボ書込み処理によって書き込まれたノーマルサーボで上書きされていないサーボ情報「SV0(ダブル)など」を復調して、境界となるシリンダ情報「グレーコード「6007.5」Track」を検出するとともに、抽出されたグレーコード「6007.5」Trackを後述する差分抽出部63に出力する。ここで、検出されたグレーコード「6007.5」Trackは、アウター側境界検出部61により検出された境界となるグレーコード「5007」Trackに相当するシリンダ情報であり、ユーザ領域(Userシリンダ)としては同じトラック番号を示していることとなるが、サーボ情報を書き込むSTW(サーボトラックライタ)の環境変化や外乱などにより同じ値となっていない。
【0057】
差分抽出部63は、インナー側境界検出部62により検出されたシリンダ情報から、アウター側境界検出部61により検出されたシリンダ情報を差し引いた差分を抽出する。上記した例で具体的に説明すると、差分抽出部63は、インナー側境界検出部62から入力されたグレーコード「6007.5」Trackから、アウター側境界検出部61から入力されたグレーコード「5007」Trackを差し引いた差分「1000.5」を抽出するとともに、抽出した差分を後述するヘッド位置制御部64に出力する。また、インナー側境界検出部62により検出されたシリンダ情報から、アウター側境界検出部61により検出されたシリンダ情報を差し引いた差分が「負の値」になった場合には、差分抽出部63は、当該差分が「負の値」になったことを後述するリジェクト部65に通知する。
【0058】
ヘッド位置制御部64は、境界よりインナー側のトラックにヘッド12がオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に差分抽出部63により抽出された差分を加算したサーボ情報をヘッド12を用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いてヘッド12の位置を制御する。
【0059】
上記した例で具体的に説明すると、境界となるグレーコード「5007」Trackよりアウター側にヘッド12がオントラックした場合、最アウターシリンダ(グレーコード「1000」Track)から書き込まれたサーボ情報しか存在せず、また、最アウターシリンダから境界となるグレーコード「5007」Trackまでは連続的なサーボ情報が書き込まれているため、ヘッド位置制御部64は、最アウターシリンダから書き込まれたサーボ情報を復調して得られた情報に基づいて、SVC40、VCM13を制御・駆動することで、ヘッド12の位置制御を行う。
【0060】
一方、境界となるグレーコード「5007」Trackよりインナー側にヘッド12がオントラックした場合、最インナーシリンダ(グレーコード「10000」Track)から書き込まれたサーボ情報しか存在せず、また、インナー側とアウター側とで書き込まれたサーボ情報には「1000.5」分のずれが存在しているために、境界(グレーコード「5007」Track)から最インナーシリンダまでは連続的な数値となっていない。例えば、ユーザ領域で「5010」Trackに対応するサーボ情報は「6010.5」Trackとなる。つまり、ユーザ領域で「5010」Trackにヘッドがオントラックした場合に、リードされるべきサーボ情報は、「5010」Trackではなく「6010.5」Trackとなる。そのため、ヘッド位置制御部64は、境界となるグレーコード「5007」Trackよりインナー側にヘッドがオントラックした場合、ユーザ領域としてのサーボ情報に差分抽出部63により抽出された差分「1000.5」を加算したサーボ情報「グレーコード「6007.5」Track」をリード・復調して、ヘッド12の位置を制御する。
【0061】
リジェクト部65は、差分抽出部63により抽出された差分が負の値であった場合に、負の値が検出されたトラック情報が存在する記憶媒体であることをホストや製造設備などの外部に通知する。そして、その記憶媒体をリジェクトして使用しないようにする。なお、ドライブに媒体排出機能がある場合は排出して外部に通知しても良い。
【0062】
具体的に説明すると、インナー側境界検出部62により検出されたトラック情報から、アウター側境界検出部61により検出されたトラック情報を差し引いた差分が「負の値」になった場合には、二重シリンダが存在することとなる。上記した例で説明すると、インナー側境界検出部62から入力されたグレーコードから、アウター側境界検出部61から入力されたグレーコードを差し引いた差分「―1000」となった場合、境界「5007Track」から「4007Track」までのグレーコードが、境界よりアウター側とインナー側の両方で存在していることとなる。そのため、「5007Track」から「4007Track」までのいずれかのトラックをサーチする場合に、アウター側とインナー側が存在するため、正しくサーチすることができない。したがって、差分抽出部63により抽出された差分が負の値であった場合に、リジェクト部65は、負の値が検出されたトラック情報が存在する記憶媒体をリジェクトする。
【0063】
[記憶装置による処理]
次に、図5を用いて、記憶装置による境界検出処理を説明する。図5は、実施例1に係る記憶装置における境界検出処理の流れを示すフローチャートである。
【0064】
(境界検出処理の流れ)
図5に示すように、境界となる境界シリンダ検出開始指示をホスト・コンピュータ100などから入力されると(ステップS501肯定)、記憶装置10は、アウター側の境界となる境界シリンダへヘッド12をシークする(ステップS502)。
【0065】
具体的に例を挙げると、境界となるシリンダ検出開始指示をホスト・コンピュータ100などから入力されると、記憶装置10のMCU60は、SVC40やVCM13を駆動させて、アウター側の境界となる境界シリンダヘッド12をシークする。ここで、アウター側の境界となる情報は、管理者などによって予めMCU60に設定されており、記憶媒体が入力されて、境界シリンダ検出開始指示を受け付けた記憶装置10は、MCU60により境界シリンダへヘッド12をシークさせることができる。
【0066】
そして、ヘッド12により境界シリンダにおけるサーボ情報がリードされて復調が完了すると(ステップS503肯定)、記憶装置10は、リードされて復調されたサーボ情報からシリンダ情報を検出する(ステップS504)。
【0067】
具体的に例を挙げると、境界シリンダにシークされてオントラックされたヘッド12は、オントラックしたサーボ情報をリードしてRDC20に出力し、RDC20は、入力されたサーボ情報を復調してHDC50を介してMCU60に出力する。そして、このデータを受け付けたMCU60のアウター側境界検出部61は、受け付けたデータからシリンダ情報「グレーコード「5007」Track」を検出して差分抽出部63に出力する。
【0068】
続いて、記憶装置10は、サーボマーク検出パターンをダブルサーボ用に設定してインナー側の境界となる境界シリンダへヘッド12をシークし(ステップS505)、ヘッド12により境界シリンダにおけるサーボ情報がリードされて復調が完了すると(ステップS506肯定)、記憶装置10は、リードされて復調されたサーボ情報からシリンダ情報を検出(取得)する(ステップS507)。
【0069】
具体的に例を挙げると、サーボマーク検出パターンをダブルサーボ用に設定してインナー側の境界となる境界シリンダにシークされてオントラックされたヘッド12は、オントラックしたサーボ情報をリードしてRDC20に出力し、RDC20は、入力されたサーボ情報を復調してHDC50を介してMCU60に出力する。そして、このデータを受け付けたMCU60のインナー側境界検出部62は、受け付けたデータからシリンダ情報「グレーコード「6007.5」Track」を検出して差分抽出部63に出力する。
【0070】
その後、サーボマーク検出パターンをノーマルサーボ用に設定して(ステップS508)、1周分のサーボ情報を取得すると(ステップS509肯定)、記憶装置10は、境界シリンダにおける差分を計算する(ステップS510)。
【0071】
具体的に例を挙げると、サーボマーク検出パターンをノーマルサーボ用に設定して1周分のサーボ情報を取得すると、記憶装置10の差分抽出部63は、インナー側境界検出部62から受け付けた境界シリンダ情報「グレーコード「6007.5」Track」から、アウター側境界検出部61から受け付けた境界シリンダ情報「グレーコード「5007」Track」を差し引いた差分「1000.5」を抽出して、これをヘッド位置制御部64に通知する。
【0072】
(ヘッド位置制御処理の流れ)
次に、図6を用いて、記憶装置によるヘッド位置制御処理を説明する。図6は、実施例1に係る記憶装置におけるヘッド位置制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0073】
図6に示すように、シーク動作が開始されると(ステップS601肯定)、記憶装置10は、シーク先が境界シリンダよりアウター側である場合には(ステップS602肯定)、そのままシーク動作を開始して(ステップS603)、ヘッド12を目標トラックに到達させる(ステップS605)。
【0074】
一方、シーク先が境界シリンダよりアウター側でない場合、つまり、シーク先が境界シリンダよりインナー側である場合(ステップS602否定)、記憶装置10は、差分抽出部63により抽出された差分分を読み替えて(ステップS604)、シーク動作を開始して(ステップS603)、ヘッド12を目標トラックに到達させる(ステップS605)。
【0075】
上記した例で具体的に説明すると、シーク先が境界シリンダ「5007Track」よりアウター側である、例えば、シーク先が「5000Track」などの場合、記憶装置10のヘッド位置制御部64は、そのままシーク動作を開始して(ステップS603)、ヘッド12を目標トラックに到達させる。
【0076】
一方、シーク先が境界シリンダ「5007Track」よりインナー側である、例えば、シーク先が「6010Track」などの場合、記憶装置10のヘッド位置制御部64は、差分抽出部63により抽出された差分「1000.5Track」分を読み替えて、つまり、シーク先を「6010Track」から「7010.5Track」に読み替えて、ヘッド12を目標トラックに到達させる。
【0077】
[実施例1による効果]
このように、実施例1によれば、インナーシリンダからアウター側の所定のシリンダに向けて二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、第一サーボ書込み処理後、アウターシリンダからインナー側の所定のシリンダに向けて、第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、第一サーボ書込み処理と第二サーボ書込み処理により所定のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれたディスク11と、ディスク11に書き込まれた情報を読み出すヘッド12と、ディスク11において、所定のシリンダ情報を、第二サーボ書込み処理により書き込まれたサーボ情報をヘッド12により読み出して検出し、また、ディスク11において、所定のシリンダ情報を、第一サーボ書込み処理により書き込まれて第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報をヘッド12により読み出して検出し、インナー側から検出されたシリンダ情報から、アウターから検出されたシリンダ情報を差し引いた差分を抽出し、所定のシリンダよりインナー側のトラックにヘッドがオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に抽出された差分を加算したサーボ情報をヘッド12を用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いてヘッド12の位置を制御するので、ヘッドが1本の記憶媒体においても、境界となるシリンダを正しく検出し、サーボ品質の劣化を防止することが可能である。また、サーボ品質の高いディスク11を用いることができる結果、ディスク11の高TPI化に貢献することが可能である。
【0078】
また、実施例1によれば、抽出された差分が負の値であった場合に、負の値が検出されたシリンダ情報が存在するディスク11をリジェクトするので、二重シリンダが存在する記憶媒体を検出することが可能である。その結果、二重シリンダが存在した場合に発生する、例えば、アウター側からサーチしたトラック番号とインナー側からサーチしたトラック番号とが異なるなどの不都合を取り除くことが可能である。
【実施例2】
【0079】
ところで、実施例1では、境界付近において、アウター側から書き込まれたノーマルサーボとインナー側から書き込まれたダブルサーボとの差分を求めることで、サーボ情報を読み替える場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、アウター側とインナー側とのそれぞれからサーボ情報が書き込まれたことで発生する相対偏心量を算出して、サーボ情報を読み替えることもできる。
【0080】
[実施例2に係る記憶装置の概要]
そこで、実施例2では、図7〜図9を用いて、相対偏心量をさらに算出して、サーボ情報を読み替える場合について説明する。図7は、実施例2に係る記憶装置の概要を説明するための図である。
【0081】
まず、相対偏心量について説明する。両方向STWを行ってサーボ情報を書き込んだ場合、アウター側から書いたサーボとインナー側から書いたサーボの境界が存在する。この境界は、STW中の環境変化などで、ぴったりとは一致せずに時間方向、半径方向にずれてしまい、サーボ未検出あるいは誤検出が発生する可能性が大きい。そこで、実施例1で説明したように、境界付近ではダブルサーボを用いて境界の補正を実施している。
【0082】
ところが、両方向STWを実施する場合、インナー、アウターからそれぞれ書くわけだが、境界部分ではWriteする時間がずれてしまう。その為、温度管理された状態でも境界Write時の温度差が生じてしまう。この温度差によってアーム長が微妙に変化し、偏心量のずれが生じる。その結果、相対偏心が発生する。相対偏心がある場合、Seek中に境界を跨ぐと目標位置と実位置がずれてしまい、過補正によりSeek電流が暴れてしまう。その為、この両方向STWを装置で使いこなすには、相対偏心の補正が重要となる。
【0083】
次に、図7を用いて、相対偏心量をさらに算出して、サーボ情報を読み替えてヘッドを制御する例にについて説明する。実施例1で説明したように、境界(5007Track)では、アウター側から書き込まれたノーマルサーボ(5007Track)とインナー側から書き込まれたダブルサーボ(6007.5Track)とにずれが生じている。さらに、サーボ情報書込み時の温度変化などでヘッドのアーム長が変化し、図7に示すように、アウター側から書き込まれたノーマルサーボ(5007Track)とインナー側から書き込まれたダブルサーボ(6007.5Track)との間には、相対偏心が発生しているため、アウター側から書き込まれたノーマルサーボとインナー側から書き込まれたダブルサーボとの差分は、必ずしも「1000.5」Trackと一致しない。具体的に例を挙げれば、時刻「t」においてダブルサーボを読み込んだ場合、当該サーボ情報は「6007.5」Trackではなく「Z(例えば、6007.9)」などとなる。つまり、同じサーボ情報を読み込んだとしても、時間によって読み出されるサーボ情報が異なることとなる。
【0084】
そこで、記憶装置10は、境界シリンダでのノーマルサーボとダブルサーボの各サーボフレームでのシリンダ情報を測定し、測定した値をDFT(離散フーリエ変換:Discrete Fourier Transform)してSin成分とCos成分とを求め、これらのSin成分とCos成分とか相対偏心量を算出し、算出した相対偏心量分を読み替えてヘッドの制御を行う。
【0085】
具体的に例を挙げて説明すると、記憶装置10のアウター側境界検出部61は、ディスク11における境界シリンダであるグレーコード「5007Track」を、アウター側書き込まれたノーマルサーボをヘッド12により読み出して検出する。続いて、記憶装置10のインナー側境界検出部62は、ディスク11における境界となるグレーコードを、インナー側書き込まれたダブルサーボをヘッド12により読み出して検出する。そして、差分算出部63は、アウター側境界検出部61により読み出されたシリンダ情報とインナー側境界検出部62により読み出されたシリンダ情報との差分を算出する。記憶装置10は、アウター側境界検出部61によりノーマルサーボを検出し、インナー側境界検出部62によりダブルサーボを検出して差分を抽出する一連の流れを、境界付近(アウター側では5007Track、インナー側では6007.5トラック)のトラック1週分について行う。
【0086】
そして、記憶装置10の差分抽出部63は、境界付近のトラック1週分について上記した手法を行うことで、検出時間ごとに対応付けられた1週分の差分(「Pos(x):x=0、1、2、3・・・」)を抽出できたことになる。そこで、差分抽出部63は、得られた1週分の差分値を周波数解析(DFT)することで、相対偏心を含むサーボ情報(図7に示した実線(A))を表す関数として「Z=Asinθ+Bcosθ」を算出する。なお、記憶装置10は、算出した関数のうち記憶装置特有の変数となる「A」と「B」とのみを記憶し、「θ」については、一般的な記憶装置で記憶されている位置決め情報を用いるので、記憶する必要はない。
【0087】
その後、記憶装置10のヘッド位置制御部64は、ヘッド12が境界を跨ぐ場合、つまち、境界よりもインナー側のサーボ情報を読み出す場合、算出した「Z=Asinθ+Bcosθ」から相対偏心量を求め、求めた相対偏心量分を読み替えてヘッド12の位置を制御する。例えば、ヘッド位置制御部64は、境界よりもインナー側のサーボ情報「5010」Trackにヘッドがオントラックした場合、算出した「Z=Asinθ+Bcosθ」から相対偏心量「1000.8」を求め、求めた相対偏心量分を読み替えた「6010.8」Trackのサーボ情報を用いてヘッド12の位置を制御する。このように相対偏心量を求めて、求めた相対偏心量分を読み替えることで、ヘッド12の位置をより正確に制御することができる。
【0088】
[処理の流れ(実施例2)]
次に、図8と図9とを用いて、実施例2に係る処理の流れを説明する。図8は、実施例2に係る記憶装置における相対偏心量算出処理の流れを示すフローチャートであり、図9は、実施例2に係る記憶装置におけるヘッド位置制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0089】
(相対偏心量算出処理の流れ)
図8に示すように、境界付近における相対偏心量算出開始指示をホスト・コンピュータ100などから入力されると(ステップS801肯定)、記憶装置10は、アウター側の境界となる境界シリンダへヘッド12をシークする(ステップS802)。
【0090】
具体的に例を挙げると、境界付近における相対偏心量算出開始指示をホスト・コンピュータ100などから入力されると、記憶装置10のMCU60は、SVC40やVCM13を駆動させて、アウター側の境界となる境界シリンダヘッド12をシークする。ここで、アウター側の境界となる情報は、管理者などによって予めMCU60に設定されており、記憶媒体が入力されて、境界シリンダ検出開始指示を受け付けた記憶装置10は、MCU60により境界シリンダへヘッド12をシークさせることができる。
【0091】
そして、ヘッド12により境界シリンダにおけるサーボ情報がリードされて復調が完了すると(ステップS803肯定)、記憶装置10は、リードされて復調されたサーボ情報からシリンダ情報(Positon)を取得する(ステップS804)。
【0092】
具体的に例を挙げると、境界シリンダにシークされてオントラックされたヘッド12は、オントラックしたサーボ情報をリードしてRDC20に出力し、RDC20は、入力されたサーボ情報を復調してHDC50を介してMCU60に出力する。そして、このデータを受け付けたMCU60のアウター側境界検出部61は、受け付けたデータからシリンダ情報「グレーコード「5007」Track」を検出して差分抽出部63に出力する。
【0093】
続いて、記憶装置10は、サーボマーク検出パターンをダブルサーボ用に設定してインナー側の境界となる境界シリンダへヘッド12をシークし(ステップS805)、ヘッド12により境界シリンダにおけるサーボ情報がリードされて復調が完了すると(ステップS807肯定)、記憶装置10は、リードされて復調されたサーボ情報からシリンダ情報を取得する(ステップS808)。
【0094】
具体的に例を挙げると、サーボマーク検出パターンをダブルサーボ用に設定してインナー側の境界となる境界シリンダにシークされてオントラックされたヘッド12は、オントラックしたサーボ情報をリードしてRDC20に出力し、RDC20は、入力されたサーボ情報を復調してHDC50を介してMCU60に出力する。そして、このデータを受け付けたMCU60のインナー側境界検出部62は、受け付けたデータからシリンダ情報「グレーコード「6007.7」Trackを検出して差分抽出部63に出力する。
【0095】
その後、サーボマーク検出パターンをノーマルサーボ用に設定して(ステップS809)、1周分のサーボ情報を取得すると(ステップS810肯定)、記憶装置10は、相対偏心量を計算する(ステップS811)。
【0096】
具体的に例を挙げると、サーボマーク検出パターンをノーマルサーボ用に設定して1周分のサーボ情報を取得すると、記憶装置10の差分抽出部63は、インナー側境界検出部62から受け付けた境界シリンダ情報「グレーコード「6007.7」Track」から、アウター側境界検出部61から受け付けた境界シリンダ情報「グレーコード「5007」Track」を差し引いた差分「1000.5」を抽出する。上記した一連の流れを実施することで、差分抽出部63は、差分として「1000.4」、「1000.5」、「1000.7」、「1000.8」・・・「−1000.8」、「−1000.7」、「−1000.6」、「−1000.5」・・・などを算出し、これらから相対偏心を表す関数「Z=Asinθ+Bcosθ」を求める。
【0097】
(ヘッド位置制御処理の流れ)
次に、図9を用いて、実施例2に係る記憶装置によるヘッド位置制御処理を説明する。図9は、実施例2に係る記憶装置におけるヘッド位置制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0098】
図9に示すように、シーク動作が開始され(ステップS901肯定)、記憶装置10は、ヘッド12がオントラックしたサーボ情報を復調して(ステップS902)、当該サーボ情報(ヘッド12の位置)が境界よりもインナー側かアウター側かを判定する(ステップS903)。
【0099】
具体的に例を挙げると、記憶装置10のヘッド位置制御部64は、ヘッド12のシークを行い、ヘッド12がオントラックしたサーボ情報を復調して、ヘッド12の位置が境界(「5007」Track)よりもインナー側かアウター側かを判定する。
【0100】
そして、ヘッド12の位置が境界よりもインナー側であった場合(ステップS903肯定)、記憶装置10は、サーボセクタの相対偏心を計算し(ステップS904)、相対偏心分を読み替えて(ステップS905)、シーク制御を実施する(ステップS906)。
【0101】
具体的に例を挙げると、ヘッド12の位置が境界(「5007」Track)よりもインナー側の「5010」Trackと判定された場合、記憶装置10は、算出した関数「Z=Asinθ+Bcosθ」を用いて相対偏心を計算し(例えば、1000.4)、相対偏心分(1000.4)を読み替えたサーボ情報(6010.4)を用いてシーク制御を実施する。
【0102】
一方、ヘッド12の位置が境界よりもアウター側であった場合(ステップS903否定)、記憶装置10は、ヘッド12の位置をそのままシーク制御する(ステップS906)。
【0103】
そして、記憶装置10は、シークが完了したか否かを判定し(ステップS907)、シークが完了した場合(ステップS907肯定)、処理を終了し、シークが完了していない場合(ステップS907否定)、ステップS902に戻り、ステップS902以降の処理を実行する。
【0104】
[実施例2による効果]
このように、実施例2によれば、境界付近において、インナー側から書き込まれたダブルサーボとアウター側から書き込まれたノーマルサーボとの差分だけでなく、インナー側とアウター側との双方からサーボ情報を書き込むことで発生する相対偏心量を算出して、算出した相対偏心量分を読み替えたサーボ情報を用いて、ヘッド12の位置を制御するので、ヘッド12の位置をより正確に制御することができる。
【0105】
また、実施例2によれば、ヘッド12のシーク時の過補正による異常な電流を流すことを防止することが可能である。例えば、図10に示すように、境界を跨いだシーク時のVCM電流およびPos(Position)において、相対偏心量を補正した(2)の場合の方が、相対偏心量を補正していない(1)の場合に比べて、安定していることがわかる。特に、相対偏心が最大になるシリンダでは、相対偏心量を補正した(2)の場合のVCM電流およびPos(Position)がより安定する。つまり、ヘッド12のシーク時の過補正による異常な電流を流すことを防止することが可能である。なお、図10は、シーク時の過補正による異常な電流の例を説明するための図である。
【0106】
なお、実施例2では、境界付近(5007Track)のトラック1週分の差分を算出してから相対偏心量を表す関数を求める場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、境界付近(5007Track)のトラックのおけるいくつかの差分を算出してから相対偏心量を表す関数を求めることもできる。
【実施例3】
【0107】
ところで、実施例2では、算出した相対偏心量分を読み替えたサーボ情報を用いてヘッドの位置を制御する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、算出した相対偏心量分を読み替えたサーボ情報(最終目標位置)と推定したヘッドの推定位置との差分を抽出して、差分を徐々に読み替えていくことでヘッドの位置を最終目標位置に到達するように制御することもできる。
【0108】
[実施例3に係る記憶装置の概要]
そこで、実施例3では、図11と図12とを用いて、ヘッドの実位置と推定した推定位置との差分を抽出して、差分を徐々に読み替えていくことでヘッドの位置を目標位置に到達するように制御する場合について説明する。図11は、実施例3に係る記憶装置の概要を説明するための図である。
【0109】
この記憶装置10は、磁気ディスク装置などに一般的に利用されているヘッド12に供給される電流からヘッドの位置を推定する推定器を備えている。そして、記憶装置10は、実施例2と同様の手法を用いてインナー側ダブルサーボの相対偏心量を表す関数「Z=Asinθ+Bcosθ」を算出し、時間成分を周波数成分に計算し直したこの関数を用いて相対偏心量「Z(例えば、6007Track)」を求める。
【0110】
そして、記憶装置10は、算出した最終目標位置である相対偏心量「Z(例えば、6007Track)」と推定器により推定されたヘッド12の推定位置との差分を抽出し、この差分に比率(100%)を乗じて最終目標位置に加算した値を目標位置としてヘッド12に供給する電流値を微量変化させて位置を制御する。続いて、記憶装置10は、最終目標位置と推定器により推定された推定位置との差分を抽出し、この差分に比率(90%)を乗じて最終目標位置に加算した値を目標位置としてヘッド12に供給する電流値を微量変化させて位置を制御する。このように、最終目標位置と推定器により推定された推定位置との差分を抽出し、この差分に比率(100%〜0%)を乗じて最終目標位置に加算した値を目標位置としてヘッド12を段階的に制御してすることで、最終目標位置「6007Track」にヘッド12を徐々に近づけていく。
【0111】
[実施例3による処理]
次に、図12を用いて、実施例3に係る記憶装置における処理の流れを説明する。図12は、実施例3に係る記憶装置におけるシーク処理の流れを示すフローチャートである。
【0112】
図12に示すように、シーク制御が開始されると(ステップS1201肯定)、憶装置10は、ヘッド12がオントラックしたサーボ情報を復調して(ステップS1202)、当該ヘッド12が境界を跨いだか否かを判定する(ステップS1203)。
【0113】
具体的に例を挙げると、記憶装置10のヘッド位置制御部64は、ヘッド12のシークを行い、ヘッド12がオントラックしたサーボ情報を復調して、ヘッド12の位置が境界(「5007」Track)跨いだかを判定する。
【0114】
そして、ヘッド12の位置が境界を跨いだ場合(ステップS1203肯定)、記憶装置10は、実位置と推定位置との差分を計算する(ステップS1204)。
【0115】
具体的に例を挙げると、ヘッド12の位置が境界(「5007」Track)跨いだ場合、記憶装置10の差分抽出部63は、最終目標位置である相対偏心量「Z(例えば、6007Track)」を算出し、算出した最終目標位置と推定器により推定された推定位置との差分を抽出してヘッド位置制御部64に通知する。
【0116】
その後、記憶装置10は、目標位置を計算し(ステップS1205)、計算した目標位置にシーク制御を実施して(ステップS1206)、目標位置算出しに使用した比率を変更し(ステップS1207)、変更した比率が「0%」になるまで(ステップS1308否定)、ステップS1205に戻って目標位置を計算して、ヘッド12をシーク制御する。
【0117】
具体的に例を挙げると、記憶装置10のヘッド位置制御部64は、差分抽出部63から受け付けた差分に比率(100%)を乗じて最終目標位置に加算した値を目標位置としてヘッド12を制御する。その後、ヘッド位置制御部64は、最終目標位置と推定器により推定された推定位置との差分を抽出し、この差分に比率(100%〜0%)を乗じて最終目標位置に加算した値を目標位置としてヘッド12に供給する電流値を微量変化させて位置を段階的に制御してすることで、最終目標位置「6007Track」にヘッド12を徐々に近づけていく。なお、比率をどのような割合で変更していくかは、管理者などにより任意に設定することができる。
【0118】
そして、ヘッド位置制御部64は、変更した比率が「0%」になると(ステップS1208肯定)、つまり、最終目標位置にヘッドが到達すると、シーク制御を終了する(ステップS1209)。
【0119】
一方、ステップS1203に戻り、ヘッド12が境界を跨がない場合(ステップS1203否定)、記憶装置10は、シーク制御を実施して(ステップS1210)、ステップS1102以降の処理を繰り返す。
【0120】
[実施例3による効果]
このように、実施例3によれば、相対偏心量を算出し算出した相対偏心量分を読み替えたサーボ情報(最終目標位置)と推定したヘッドの推定位置との差分を抽出して、差分分を徐々に読み替えていくことでヘッドの位置を最終目標位置に到達するように制御することができる結果、ヘッド12のシーク時の過補正による異常な電流を流すことを強固に防止することが可能である。
【実施例4】
【0121】
ところで、本発明では、ヘッド12が境界を跨ぐのに際して、複数のトラック間をシーク制御するコアス制御から微妙な位置をシーク制御するファイン制御に制御手法が変更された場合に、目標位置に到達するように、ヘッド12を階段状に徐々に制御するようにすることもできる。
【0122】
具体的に例を挙げれば、図13に示すように、ヘッド12が境界を跨ぐのに際して、複数のトラック間をシーク制御するコアス制御から微妙な位置をシーク制御するファイン制御に制御手法が変更された場合に、目標位置に到達するように、ヘッド12を階段状に徐々に制御することができる。なお、図13は、ヘッド12が境界を跨ぐのに際して、コアス制御からファイン制御に制御手法が変更された場合に、ヘッド12を階段状に徐々に制御する例を説明するための図である。
【0123】
例えば、実施例3で説明した推定器を用いて実施した場合を例にして説明する。ここでは、乗算する比率を「80、60、40、20、0」、目標位置と水平にヘッド12を移動する時間を「0.2ms」とする。
【0124】
この場合、記憶装置10は、算出した最終目標位置である相対偏心量「Z(例えば、6007Track)」と推定器により推定されたヘッド12の推定位置との差分を抽出し、この差分に比率(80%)を乗じて最終目標位置に加算した値を目標位置として、ヘッド12に供給する電流値を微量変化させて位置をヘッド12の位置を制御し、そして、「0.2ms」間同じ位置をキープする。
【0125】
その後、記憶装置10は、算出した最終目標位置「Z」と推定器により推定されたヘッド12の推定位置との差分を抽出し、この差分に比率(60%)を乗じて最終目標位置に加算した値を目標位置としてヘッド12を制御し、そして、「0.2ms」間同じ位置をキープする。
【0126】
この上記した手法を比率が「0%」になるまで繰り返す。つまり、記憶装置10は、算出した最終目標位置である相対偏心量「Z(例えば、6007Track)」と推定器により推定されたヘッド12の推定位置との差分を抽出し、この差分に比率を乗じた位置にヘッド12を制御して、その位置を予め指定された時間分推移させることで、最終目標位置である相対偏心量「Z(例えば、6007Track)」に階段状に徐々にヘッド12を近付けていくことができる。この結果、ヘッド12の位置をきめ細かに制御するために、ヘッド12に供給する電流値を微量変化させる必要があるファイン制御においても、ヘッド12のシーク時の過補正による異常な電流を流すことを強固に防止することが可能である。
【実施例5】
【0127】
さて、これまで本発明の実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下に示すように、(1)時間ずれ量の検出、(2)特殊なマークパターンを用いたダブルサーボ、(3)境界付近を未使用領域化、(4)境界の位置、(5)システム構成等にそれぞれ区分けして異なる実施例を説明する。
【0128】
(1)時間ずれ量の検出
例えば、本発明では、第一サーボ書込み処理において書き込まれた二つの同じサーボ情報を並行したダブルサーボのうち、第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報を用いることで、第一サーボ書込み処理と第二サーボ書込み処理とのそれぞれで書き込まれたサーボ情報の時間ずれ量も求めることができる。
【0129】
具体的には、図14に示すように、SV0(ダブル)は、SV0とSV1との中間に書き込まれているため、サーボ間隔の二分の一の時間に書き込まれていることとなる。そのため、アウターのSV0とインナーのSV0(ダブル)との時間を測定することにより、インナー側のSV0とアウター側のSV0との時間ずれを求めることができる。また、時間ずれ測定は、一周で各サーボ情報から求めると、より精度を高くすることができる。なお、図7は、時間ずれ量を算出する手法の例を示す図である。
【0130】
(2)特殊なマークパターンを用いたダブルサーボ
また、本発明は、第一サーボ書込み処理において、第二サーボ書込み処理で上書きされない方のサーボ情報が特殊なマークパターンを用いて書き込まれたディスクを用いることもできる。つまり、第一サーボ書込み処理において書き込まれる二つの同じサーボ情報を並行したダブルサーボのうち、第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報に通常使用されない特殊なマークパターンを用いることもできる。
【0131】
そうすることで、ヘッド位置制御部64は、特殊なマークパターンで書き込まれたサーボ情報を、ヘッド12の位置制御に用いることができないので、ダブルサーボで書き込まれて上書きされていないサーボ情報を誤って使用しないようにすることができる結果、当該ディスクにデータの書き込みが行われた後でも、ダブルサーボで書き込まれて上書きされていないサーボ情報を書き込まれた状態で存在させることができ、境界となるシリンダを正しく検出し、サーボ品質の劣化を防止することが可能である。
【0132】
(3)境界付近を未使用領域化
また、本発明は、ディスク11において、アウター側境界検出部61により検出された所定のシリンダ付近(境界付近)をスキップして、ユーザ領域として使用しないように、ヘッド12の位置を制御することもできる。具体的に例を挙げると、ヘッド位置制御部64は、アウター側境界検出部61により検出された5007Trackの前後2Track分を未使用領域としてディスクの管理領域に登録し、スキップ制御を行うようにして、ユーザ領域として使用しないように、ヘッド12の位置を制御する。
【0133】
このようにすることで、境界となるシリンダへのデータの書込みを防止することができる結果、当該ディスク11にデータの書き込みが行われた後でも、境界付近に書き込まれたサーボ情報を書き込まれた状態で存在させることができ、境界となるシリンダを正しく検出し、サーボ品質の劣化を防止することが可能である。
【0134】
(4)境界の位置
また、本発明は、境界となる所定のシリンダをヨー角0度付近にしたディスク11を用いることもできる。具体的には、インナーシリンダからアウター側のヨー角0度付近のシリンダに向けて二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、第一サーボ書込み処理後、アウターシリンダからインナー側のヨー角0度付近のシリンダに向けて、第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、ヨー角0度付近のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれたディスク11を用いることもできる。
【0135】
このようなディスクを用いることで、ヨー角0度以外の場合、R/WGapの差が大きくなるため、未使用とすべき領域も大きくなるが、ヨー角0度のシリンダについては、Read/Writeが同じシリンダで行われるため、無駄なトラックが少ない。その結果、Readコアが境界部に存在する場合に発生するサーボマークミスや誤検出、また、グレーコードの誤検出、バースト情報の誤検出によるヘッドのPositionが不安定になることを防止することが可能である。
【0136】
(5)システム構成等
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。また、上記の実施例では、CPUのファームウェアプログラムにより実現する手法を説明したが、この発明はこれに限られるものではなく、その他の構成により実現する手法にも、この発明を同様に適用することができる。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示(例えば、図2など)のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる(例えば、アウター側境界検出部61とインナー側境界検出部62とを統合して構成することができるなど)。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、MCU(もしくは、CPUやMPUなどの処理装置)および当該MCU(もしくは、CPUやMPUなどの処理装置)にて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0137】
なお、上記の実施例で説明したヘッド位置制御方法は、コンピュータとしてのディスク装置におけるマイクロ・コントロール・ユニットで実行することによって実現することができる。これらのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0138】
(付記1)所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理により前記所定のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれた記憶媒体と、
前記記憶媒体に書き込まれた情報を読み出すヘッドと、
前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれたサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第一境界検出部と、
前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれて前記第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第二境界検出部と、
前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出する差分抽出部と、
前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダと、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダとの間を、ヘッドが移動してオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に前記差分抽出部により抽出された差分を加算または減算したサーボ情報を前記ヘッドを用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いて前記ヘッドの位置を制御するヘッド位置制御部と、
を備えてなることを特徴とする記憶装置。
【0139】
(付記2)前記差分抽出手段により抽出された差分が負の値であった場合に、負の値が検出されたシリンダ情報が存在する記憶媒体であることを外部に通知するリジェクト部を備えたことを特徴とする付記1に記載の記憶装置。
【0140】
(付記3)前記記憶媒体は、前記第一サーボ書込み処理において、前記第二サーボ書込み処理で上書きされない方のサーボ情報が特殊なマークパターンを用いて書き込まれた記憶媒体であって、
前記ヘッド位置制御部は、前記記憶媒体において、前記特殊なマークパターンで書き込まれたサーボ情報を、前記ヘッドの位置制御に用いないことを特徴とする付記1または2に記載の記憶装置。
【0141】
(付記4)前記ヘッド位置制御部は、前記記憶媒体において、前記アウター側境界検出部により検出された所定のシリンダ付近をスキップして、ユーザ領域として使用しないように、前記ヘッドの位置を制御することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の記憶装置。
【0142】
(付記5)前記記憶媒体は、インナーシリンダまたはアウターシリンダからヨー角0度付近のシリンダに向けて二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、逆方向からヨー角0度付近のシリンダに向けて、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理によりヨー角0度付近のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれてなることを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の記憶装置。
【0143】
(付記6)所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理により前記所定のシリンダでサーボ情報が重なって記憶媒体に書き込むことを特徴とするサーボ情報書込み方法。
【0144】
(付記7)前記第一サーボ書込み処理において記憶媒体にサーボ情報を書き込む際に、前記第二サーボ書込み処理で上書きされない方のサーボ情報に特殊なマークパターンを用いることを特徴とする付記6に記載のサーボ情報書込み方法。
【0145】
(付記8)前記所定のシリンダをヨー角0度付近として、前記第一サーボ書込み処理と第二サーボ書込み処理とのそれぞれによりサーボ情報を記憶媒体に書き込むことを特徴とする付記6または7に記載のサーボ情報書込み方法。
【0146】
(付記9)記憶媒体の所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み部と、
前記第一サーボ書込み部により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み部とを、
備えたことを特徴とするサーボ情報書込み装置。
【0147】
(付記10)前記第一サーボ書込み部は、前記第二サーボ書込み部で上書きされない方のサーボ情報に特殊なマークパターンを用いることを特徴とする付記9に記載のサーボ情報書込み装置。
【0148】
(付記11)前記第一サーボ書込み部は、インナーシリンダ又はアウターシリンダからヨー角0度付近の所定のシリンダに向けてサーボ情報を書き込み、
前記第二サーボ書込み部は、前記第一サーボ書込み部によりサーボ情報が書き込まれた記憶媒体に対して、逆方向からヨー角0度付近の所定のシリンダに向けて、前記第一サーボ書込み部により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込むことを特徴とする付記9または10に記載のサーボ情報書込み装置。
【0149】
(付記12)前記差分検出部は、前記記憶媒体の複数箇所で、前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出することを特徴とする付記1に記載の記憶装置。
【0150】
(付記13)前記ヘッドが、前記第二サーボ書込み処理で書き込まれたサーボ情報上の所定のシリンダ情報を追従しながら、前記第一サーボ書込み処理で書き込まれたサーボ情報であって、前記第二サーボ書込み処理で上書きされていないサーボ情報上のシリンダ情報を読み取ることで、前記差分抽出部は、前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出することを特徴とする付記12に記載の記憶装置。
【0151】
(付記14) 所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理により前記所定のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれた記憶媒体と、前記記憶媒体に書き込まれた情報を読み出すヘッドと、前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれたサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第一境界検出工程と、前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれて前記第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第二境界検出工程と、前記第一境界検出工程により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出工程により検出されたシリンダ情報との差分を抽出する差分抽出工程と、を有する記憶装置のシーク制御方法であって、
前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダと、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダとの間を、ヘッドが移動してオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に前記差分抽出工程により抽出された差分を加算または減算したサーボ情報を前記ヘッドを用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いて前記ヘッドを目標位置にシークすることを特徴とするシーク制御方法。
【0152】
(付記15)前記差分検出工程は、前記記憶媒体の複数箇所で、前記第一境界検出工程により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出工程により検出されたシリンダ情報との差分を抽出することを特徴とする付記14に記載のシーク制御方法。
【0153】
(付記16)前記ヘッドが、前記第二サーボ書込み処理で書き込まれたサーボ情報上の所定のシリンダ情報を追従しながら、前記第一サーボ書込み処理で書き込まれたサーボ情報であって、前記第二サーボ書込み処理で上書きされていないサーボ情報上のシリンダ情報を読み取ることで、前記差分抽出工程は、前記第一境界検出工程により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出工程により検出されたシリンダ情報との差分を抽出することを特徴とする付記15に記載のシーク制御方法。
【0154】
(付記17)前記記憶装置が、さらに、前記ヘッドを支持するアクチュエータと、電流を通電することで前記アクチュエータをシークさせるボイスコイルモータとを有し、
シーク時に目標位置と現在位置が一致しない場合に、前記電流値を微量変化させることを特徴とする付記14に記載のシーク制御方法。
【0155】
(付記18)付記14〜17に記載のシーク制御方法であって、
さらに、目標位置と現在位置とから位置誤差を演算し、
前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行することを特徴とするシーク制御方法。
【0156】
(付記19)所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理により前記所定のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれた記憶媒体上で、前記記憶媒体に書き込まれた情報を読み出すヘッドをシークさせる制御回路であって、
前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれたサーボ情報を、前記記憶媒体に書き込まれた情報を読み出すヘッドにより読み出して検出する第一境界検出部と、
前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれて前記第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第二境界検出部と、
前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出する差分抽出部と、
前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダと、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダとの間を、ヘッドが移動してオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に前記差分抽出部により抽出された差分を加算または減算したサーボ情報を前記ヘッドを用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いて前記ヘッドの位置を制御するヘッド位置制御部と、
を備えてなることを特徴とする制御回路。
【0157】
(付記20)前記差分検出部は、前記記憶媒体の複数箇所で、前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出することを特徴とする付記19に記載の制御回路。
【0158】
(付記21)前記ヘッドが、前記第二サーボ書込み処理で書き込まれたサーボ情報上の所定のシリンダ情報を追従しながら、前記第一サーボ書込み処理で書き込まれたサーボ情報であって、前記第二サーボ書込み処理で上書きされていないサーボ情報上のシリンダ情報を読み取ることで、前記差分抽出部は、前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出することを特徴とする付記19に記載の制御回路。
【0159】
(付記22)前記制御回路が、さらに、前記ヘッドを支持するアクチュエータと、電流を通電することで前記アクチュエータをシークさせるボイスコイルモータとに接続され、
シーク時に目標位置と現在位置が一致しない場合に、前記電流値を微量変化させることを特徴とする付記19に記載の制御回路。
【0160】
(付記23)付記19〜22に記載の制御回路であって、
さらに、目標位置と現在位置とから位置誤差を演算し、
前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行することを特徴とする制御回路。
【産業上の利用可能性】
【0161】
以上のように、本発明に係る記憶装置、サーボ情報書込み方法、シーク制御方法および制御回路は、インナー側から書き込まれたサーボ情報とアウター側から書き込まれたサーボ情報との境界が存在する記憶媒体に対して、書き込まれたサーボ情報を復調してシリンダ情報を取得してデータの読み書きを行うヘッドの位置を制御することに有用であり、特に、ヘッドが1本の記憶媒体においても、境界となるシリンダを正しく検出し、サーボ品質の劣化を防止することに適する。
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】実施例1に係る記憶装置の概要と特徴を説明するための図である。
【図2】境界付近におけるダブルサーボ検出手法の例を示す図である。
【図3】実施例1に係る記憶装置の構成を示すブロック図である。
【図4】書き込まれるサーボ情報の例を示す図である。
【図5】実施例1に係る記憶装置における境界検出処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例1に係る記憶装置におけるヘッド位置制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施例2に係る記憶装置の概要を説明するための図である。
【図8】実施例2に係る記憶装置における相対偏心量算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】実施例2に係る記憶装置におけるヘッド位置制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】シーク時の過補正による異常な電流の例を説明するための図である。
【図11】実施例3に係る記憶装置の概要を説明するための図である。
【図12】実施例3に係る記憶装置におけるシーク処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】ヘッド12が境界を跨ぐのに際して、コアス制御からファイン制御に制御手法が変更された場合に、ヘッド12を階段状に徐々に制御する例を説明するための図である。
【図14】時間ずれ量を算出する手法の例を示す図である。
【図15】ヨー角とSTWの送り方向の関係を示す図である。
【図16】STWの送り方向におけるイレーズ部分を説明するための図である。
【図17】書き込まれたサーボ情報の時間方向、半径方向のずれを示す図である。
【符号の説明】
【0163】
10 記憶装置
11 ディスク
12 ヘッド
13 VCM
20 RDC
30 RAM
40 SVC
50 HDC
60 MCU
61 アウター側境界検出部
62 インナー側境界検出部
63 差分抽出部
64 ヘッド位置制御部
65 リジェクト部
100 ホスト・コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理により前記所定のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれた記憶媒体と、
前記記憶媒体に書き込まれた情報を読み出すヘッドと、
前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれたサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第一境界検出部と、
前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれて前記第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第二境界検出部と、
前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出する差分抽出部と、
前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダと、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダとの間を、ヘッドが移動してオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に前記差分抽出部により抽出された差分を加算または減算したサーボ情報を前記ヘッドを用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いて前記ヘッドの位置を制御するヘッド位置制御部と、
を備えてなることを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
前記差分抽出手段により抽出された差分が負の値であった場合に、負の値が検出されたシリンダ情報が存在する記憶媒体であることを外部に通知するリジェクト部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の記憶装置。
【請求項3】
前記記憶媒体は、前記第一サーボ書込み処理において、前記第二サーボ書込み処理で上書きされない方のサーボ情報が特殊なマークパターンを用いて書き込まれた記憶媒体であって、
前記ヘッド位置制御部は、前記記憶媒体において、前記特殊なマークパターンで書き込まれたサーボ情報を、前記ヘッドの位置制御に用いないことを特徴とする請求項1または2に記載の記憶装置。
【請求項4】
前記ヘッド位置制御部は、前記記憶媒体において、前記アウター側境界検出部により検出された所定のシリンダ付近をスキップして、ユーザ領域として使用しないように、前記ヘッドの位置を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の記憶装置。
【請求項5】
所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理により前記所定のシリンダでサーボ情報が重なって記憶媒体に書き込むことを特徴とするサーボ情報書込み方法。
【請求項6】
前記差分検出部は、前記記憶媒体の複数箇所で、前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出することを特徴とする請求項1に記載の記憶装置。
【請求項7】
前記ヘッドが、前記第二サーボ書込み処理で書き込まれたサーボ情報上の所定のシリンダ情報を追従しながら、前記第一サーボ書込み処理で書き込まれたサーボ情報であって、前記第二サーボ書込み処理で上書きされていないサーボ情報上のシリンダ情報を読み取ることで、前記差分抽出部は、前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出することを特徴とする請求項6に記載の記憶装置。
【請求項8】
所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理により前記所定のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれた記憶媒体と、前記記憶媒体に書き込まれた情報を読み出すヘッドと、前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれたサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第一境界検出工程と、前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれて前記第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第二境界検出工程と、前記第一境界検出工程により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出工程により検出されたシリンダ情報との差分を抽出する差分抽出工程と、を有する記憶装置のシーク制御方法であって、
前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダと、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダとの間を、ヘッドが移動してオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に前記差分抽出工程により抽出された差分を加算または減算したサーボ情報を前記ヘッドを用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いて前記ヘッドを目標位置にシークすることを特徴とするシーク制御方法。
【請求項9】
前記記憶装置が、さらに、前記ヘッドを支持するアクチュエータと、電流を通電することで前記アクチュエータをシークさせるボイスコイルモータとを有し、
シーク時に目標位置と現在位置が一致しない場合に、前記電流値を微量変化させることを特徴とする請求項8に記載のシーク制御方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載のシーク制御方法であって、
さらに、目標位置と現在位置とから位置誤差を演算し、
前記目標位置近傍に到達したことを検出して、フォローイング制御に切り替え、フォローイング制御を実行することを特徴とするシーク制御方法。
【請求項11】
所定のシリンダを含む近傍領域において、二つの同じサーボ情報を並行して書き込む第一サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた二つのサーボ情報のうち一つのサーボ情報を上書きするようにサーボ情報を書き込む第二サーボ書込み処理がなされ、前記第一サーボ書込み処理と前記第二サーボ書込み処理により前記所定のシリンダでサーボ情報が重複して書き込まれた記憶媒体上で、前記記憶媒体に書き込まれた情報を読み出すヘッドをシークさせる制御回路であって、
前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれたサーボ情報を、前記記憶媒体に書き込まれた情報を読み出すヘッドにより読み出して検出する第一境界検出部と、
前記記憶媒体において、前記所定のシリンダのシリンダ情報を、前記第一サーボ書込み処理により書き込まれて前記第二サーボ書込み処理において上書きされていないサーボ情報を前記ヘッドにより読み出して検出する第二境界検出部と、
前記第一境界検出部により検出されたシリンダ情報と、前記第二境界検出部により検出されたシリンダ情報との差分を抽出する差分抽出部と、
前記第一サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダと、前記第二サーボ書込み処理により書き込まれた所定のシリンダとの間を、ヘッドが移動してオントラックした場合に、当該オントラックされた位置に前記差分抽出部により抽出された差分を加算または減算したサーボ情報を前記ヘッドを用いて読み出して、読み出したサーボ情報を用いて前記ヘッドの位置を制御するヘッド位置制御部と、
を備えてなることを特徴とする制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−76184(P2009−76184A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282446(P2007−282446)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】