説明

記憶装置のデータ消去方法、データ消去プログラムおよびデータ消去装置

【課題】 本発明は、記憶装置のデータ消去に関し、より詳細には対象の記憶装置の使用領域を判定し、使用領域のみに消去用のデータを書き込むデータ消去方法に関する。
【解決手段】 本発明のデータ消去方法は、指定された消去モードを取得する消去モード取得手順と、記憶装置から総ライトバイト数を読み取る総ライト数読取手順と、書込み回数が2回以上で総ライトバイト数が所定数以下の場合に、ユーザ記憶領域の使用領域と未使用領域と判定する使用領域判定手順と、使用領域に消去用書込みデータを書込み、未使用領域はスキップする消去用データ書込み手順と、使用領域判定手順と消去用データ書込み手順とを順次実施して、ユーザ記憶領域全体のデータ消去を行うデータ消去手順とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記憶装置のデータ消去に関し、より詳細にはデータ消去対象の記憶装置に適用する消去モードと記憶装置に書込みされた総ライトバイト数が所定の条件に合致する場合にユーザ記憶領域の使用領域を判定し、使用領域のみに消去用のデータを書き込むことによりデータ消去時間の短時間化を可能とする記憶装置のデータ消去方法、データ消去プログラムおよびデータ消去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
個人情報や機密情報などの情報流出が大きな社会問題となっている。情報流出は、例えばファイル共有ソフトウェアの不正利用によるものや、そのソフトウェアを媒介するウィルスによるもの、悪意による記録媒体の持ち出しなど多様化している。情報流出の一つに、PC(Personal Computer)の入れ換えに伴って古いPCを廃棄業者や再利用業者に引き渡した場合に、その古いPCが内蔵する記憶装置から情報が流出する場合がある。
【0003】
古いPCを廃棄業者や再利用業者に引き渡す場合には、引渡しの前にPCの利用者によって記憶装置のファイル消去が行なわれるか、もしくはそれぞれの業者によりデータの消去が行なわれる。この場合に、単にファイルを消去コマンドにより消去したり、フォーマットを行ってデータ消去したとすることは危険である。いずれにおいても記憶装置に書き込まれたデータは記憶装置上に依然として残っているからである。例えば、ファイル消去の場合は、FAT(File Allocation Table)に書かれているファイルの格納アドレスを消去するのみで、実際に記録されているファイルのデータを消去している訳ではない。このような場合に、例えば市販されているデータ復元ソフトを用いて記憶装置に記録されているデータを取り出すことは可能である。
【0004】
最も安全にデータを消去する方法は、ユーザ記憶領域全体を意味のないデータに書き替えてしまうことであり、このための規格が定められている。図7はこの規格の例を示すもので、書込み回数と消去用の書込みパターンを示している。例えば、NSA標準(米国国防総省NSA規格)では、乱数を発生させてその値を2回書込み、そのあとにゼロを1回書込むこと(即ち、合計3回の書込み)が定められている。図7には示さなかったが、書込み回数が35回という規格もある。
【0005】
記憶装置からの情報流出は、記憶装置の修理の場合にも同様に起り得る。このような場合は、例えば顧客の前で顧客の指定に基づいた消去法で消去用のデータの書込みを行うこともある。
【0006】
記憶装置のデータ空間は、図8に示すように大きく分けてシステム空間とユーザ空間とに分けられる。システム空間、即ちシステム記憶領域は記憶装置の制御部が用いる記憶領域で、例えばディフェクトリストや統計情報(ログデータ)、コントローラ制御情報等の情報を持っている。ユーザはこのシステム記憶領域の使用は出来ない。ユーザ空間、即ちユーザ記憶領域はユーザに開放されており、図8はこのユーザ記憶領域を各ヘッドに対してシリンダを割り当てた状態を模式的に示している。ユーザはこのユーザ記憶領域に対して論理アドレスを基に読み書き(リード/ライト)できる。ユーザ記憶領域の一部はスペアシリンダになっており、不良のトラック等が発生した場合にそのトラックを使用せずに、このスペアシリンダの領域を代替として用いるようになっている。
【0007】
なお、上記に示した流出の情報は、このユーザ記憶領域に書き込まれたデータである。
【0008】
PCの廃棄・譲渡情報のデータ消去に対するガイドラインが出されている。これには上述した記憶装置としてのハードディスクのデータ消去に対する考え方や技術的解説が記載され、PC関連事業者が遵守すべき指針が示されている(非特許文献1)。
【0009】
データの消去(即ち、消去用データの書込み)には多くの時間を要するが、光ディスク装置について効率的に行う方法が提案さている。この提案は、書き替え可能なDVD−RW(Digital Versatile Disc-ReWritable)などの光ディスクにおいて、データ消去対象の光ディスクのリードインエリアに記録された最終記録位置情報を読出し、光ディスクの最内周から最終記録位置までのデータ消去を行い、最終記録位置より後の領域に対してデータ消去を実施しない、とする発明である。従来は、データ領域全体に対してデータ消去を行っていたが、本提案により未使用領域に対するデータ消去を不要にできることから短時間でデータ消去できる、とするものである(特許文献1)。
【非特許文献1】「パソコンの廃棄・譲渡時におけるハードディスク上のデータ消去に関するガイドライン」、2002年8月、社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)、http://it.jeita.or.jp/perinfo/committee/pc/HDDdata/、2007.11.1
【特許文献1】特開2005−166179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に述べたように、記憶装置はファイルを消去してもデータは記憶装置に残っており、情報流出の防止としての意味を成さず消去用のデータをデータ領域全領域に書き替えることが望ましい。
【0011】
しかしながら、ユーザ記憶領域全領域に渡って消去用データに書き替えるためには多くの時間を要するという問題がある。特に最近では記憶装置の記憶容量は増大の一途をたどっており、1台の記憶装置の消去用データの書き替えに数時間を要するという問題がある。さらに、情報流出に対するセキュリティをより高めるために複数回に渡って消去用データを書き込むことを行えば、より多くの時間を要することになる。
【0012】
本発明は、記憶装置の使用領域を判定して、使用領域にのみ消去用データの書込みを行い、使用領域以外の領域、即ち未使用領域は書込みをスキップすることでデータ消去の短時間化を図ったデータ消去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の記憶装置のデータ消去方法、データ消去プログラムおよびデータ消去装置は以下のように構成される。
(1)第1の発明
第1の発明の記憶装置のデータ消去方法は、図1に示すように消去モード取得手順10、総ライト数読取手順20、使用領域判定手順30、消去用データ書込み手順40およびデータ消去手順50から構成する。図1は、各手順の前に入力されるもの、あるいは手順実施前の状態と、各手順の後に手順を実施したあとの状態とを示している。各手順の内容は以下に示す通りである。
【0014】
消去モード取得手順10は、指定された消去モードを取得する。消去モードは、記憶装置のデータ消去法であり、例えば図7に示した簡易方式とかNSA標準などである。この消去モードの指定はオペレータ等によってなされる。
【0015】
総ライト数読取手順20は、データ消去対象の記憶装置のシステム記憶領域から総ライトバイト数を読み取る。前述のように、記憶装置のシステム記憶領域には統計情報(ログデータ)が記録されており、その中の一つに記憶装置に書き込まれたデータ量(ライトバイト数)が記録されている。
【0016】
使用領域判定手順30は、消去モードに対応して消去用書込みデータと消去用書込みデータの書込み回数とを記憶したデータ消去テーブルを参照して、取得した書込み回数が2回以上であり、且つ読み取った総ライトバイト数が所定数以下の場合に、前記記憶装置のユーザ記憶領域から所定バイト数を読み取り、所定バイト数のデータと記憶装置の工場出荷時のデータパターンとを照合して等しければ未使用領域と判定し、等しくなければ使用領域と判定する。工場出荷時のデータパターンは、特殊の場合を除いてオール”0”である。
【0017】
消去用データ書込み手順40は、判定の結果が使用領域の場合は所定バイト数を読み取ったユーザ記憶領域に消去モードに該当する書込み回数に基づいて消去モードの消去用書込みデータを書込み、未使用領域の場合はその書込みをスキップする。
【0018】
データ消去手順50は、使用領域判定手順30と消去用データ書込み手順40とを順次実施して、ユーザ記憶領域全体のデータ消去を行う。
(2)第2の発明
第1の発明のデータ消去方法がユーザ記憶領域から所定バイト数を読み取り、その所定バイト数読み取ったユーザ記憶領域に対して使用領域と未使用領域を判定し、使用領域には消去用書込みデータを書込み、未使用領域はスキップするものであった。これに対し、第2の発明の記憶装置のデータ消去方法は、ユーザ記憶領域全体に対してまず使用領域を判定してそのアドレスを記憶しておき、その後に記憶したアドレスに対して消去用書込みデータを書き込むものである。
【0019】
第2の発明の消去モード取得手順と総ライト数読取手順は、第1の発明の消去モード取得手順10と総ライト数読取手順20とそれぞれ同様であるので説明を省略する。
【0020】
使用領域判定手順は、消去モードに対応して消去用書込みデータと消去用書込みデータの書込み回数とを記憶したデータ消去テーブルを参照して、取得した書込み回数が2回以上であり、且つ前記読み取った総ライトバイト数が所定数以下の場合に、記憶装置のユーザ記憶領域から所定バイト数を読み取り、所定バイト数のデータと記憶装置の工場出荷時のデータパターンとを照合して等しくなければ所定バイト数を読み取ったユーザ記憶領域のアドレスを記憶することをユーザ記憶領域全体に対して実施する。
【0021】
消去用データ書込み手順は、記憶したユーザ記憶領域のアドレスに、消去モードに該当する書込み回数に基づいてその消去モードの消去用書込みデータを書込む。
(3)第3の発明
第3の発明の記憶装置のデータ消去方法は、第1の発明の使用領域判定手順と消去用データ書込み手順における読み取りの所定バイト数は、1トラック以上に相当するバイト数である、ことを特徴とする。
(4)第4の発明
第4の発明の記憶装置のデータ消去を行うデータ消去プログラムは、第1の発明の消去モード取得手順10、総ライト数読取手順20、使用領域判定手順30、消去用データ書込み手順40およびデータ消去手順50をコンピュータに実行させるものである。
(5)第5の発明
第5の発明の記憶装置のデータ消去装置は、データ消去テーブル、消去モード取得手段、総ライト数読取手段、使用領域判定手段、消去用データ書込み手段およびデータ消去手段を有することを特徴とするものである。
【0022】
データ消去テーブルは、記憶装置のデータ消去法である消去モードに対応して消去用書込みデータとその消去用書込みデータの書込み回数とを記憶したテーブルである。
【0023】
消去モード取得手段は、指定された消去モードを取得する。
【0024】
総ライト数読取手段は、データ消去対象の記憶装置のシステム記憶領域から総ライトバイト数を読み取る。
【0025】
使用領域判定手段は、データ消去テーブルを参照して、取得した書込み回数が2回以上であり、且つ読み取った総ライトバイト数が所定数以下の場合に、記憶装置のユーザ記憶領域から所定バイト数を読み取り、所定バイト数のデータと記憶装置の工場出荷時のデータパターンとを照合して等しければ未使用領域と判定し、等しくなければ使用領域と判定する。
【0026】
消去用データ書込み手段は、判定の結果が使用領域の場合は所定バイト数を読み取ったユーザ記憶領域に消去モードに該当する書込み回数に基づいてその消去モードの消去用書込みデータを書込み、未使用領域の場合は書込みをスキップする。
【0027】
データ消去手段は、使用領域判定手段と消去用データ書込み手段とを順次実施して、ユーザ記憶領域全体のデータ消去を行う。
【発明の効果】
【0028】
上述した本発明によれば、次に示す効果が得られる。
【0029】
第1の発明により、未使用領域に対して消去用データを書き込むことを行わないので、その分の時間短縮が図れ、効率のよいデータ消去方法の提供ができる。
【0030】
第2の発明により、第1の発明と同様の効果が得られるデータ消去方法の提供ができる。
【0031】
第3の発明により、使用領域を判定する読み取りのデータ数を1トラック以上としたので、効率のよいデータサイズで判定ができ、また消去用データの書込みができる。
【0032】
第4の発明により、第1の発明と同様の効果を有するデータ消去プログラムの提供ができる。
【0033】
第5の発明により、第1の発明と同様の効果を有するデータ消去装置の提供ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の記憶装置のデータ消去方法、データ消去プログラムおよびデータ消去装置を、図2〜図6を用いて説明する。なお、ここでは、データ消去対象の記憶装置としてハードディスク装置を例としている。
(実施形態その1)
本発明の実施形態その1を、図2〜図4を用いて説明する。実施形態その1は第1と第3−5の発明に対応するものである。
【0035】
なお、本実施の形態においては、パーソナルコンピューター、ワークステーション等の汎用的な目的で使用される計算機上で実行するコンピュータプログラムにより実現する形態を示す。本発明のデータ消去方法およびデータ消去装置は、処理装置、主記憶装置、入出力装置などから構成される計算機上で、コンピュータプログラムとして実行して実現される。また、このコンピュータプログラムは、本発明のデータ消去プログラムでもある。そして、このコンピュータプログラムは、フロッピーディスクやCD−ROM等の可搬型媒体やネットワーク接続された他の計算機の主記憶装置や補助記憶装置等に格納されて提供される。そして、本発明のコンピュータプログラムは、可搬型媒体から直接計算機の主記憶装置にロードされ、または、補助記憶装置を備えた計算機においては可搬型媒体から一旦補助記憶装置にコピーまたはインストール後に、主記憶装置にロードされて実行する。
【0036】
まず、図2は、本発明によるデータ消去装置100の構成を示すもので、全体を制御する主制御部110、オペーレタからデータ消去モード等の情報を取得するキーボード130、オペレータにデータ消去モードの入力を促したり、データ消去の開始、終了等を表示するディスプレイ140、データ消去対象のハードディスク装置150、キーボード130やディスプレイ140、ハードディスク装置150に対して制御を行う入出力制御部120、主メモリ160上で実行されるデータ消去プログラム170および消去モードに対応して消去用書込みデータの書込み回数とそのデータのパターンを記憶したデータ消去テーブル180から構成する。
【0037】
データ消去テーブル180の内容は、例えば前述した図7に示されるものである。
【0038】
データ消去プログラム170は、メインプログラムの下に消去モード/総ライト数取得部171、使用領域判定部172および消去データ書込み部173の3つの主要なプログラムモジュールで構成する。それぞれのプログラムモジュールについて概要を述べる。
【0039】
消去モード/総ライト数取得部171は、オペレータがキーボード130から入力した消去モードの情報(例えば簡易方式やNSA標準など)を取得すると共に、データ消去対象のハードディスク装置150のシステム記憶領域にアクセスして、ハードディスク装置150が出荷されてからユーザによって書き込まれたデータ数(総ライトデータ数)を読み取る。
【0040】
使用領域判定部172は、取得した消去モードの消去用書込みデータの書込み回数が2回以上であるかどうかを、データ消去テーブル180を参照して調べる。さらに、読み取った総ライト数が所定の値以下かどうかを調べる。そして、消去用データの書込み回数が2回以上で総ライト数が所定の値以下である場合は、ユーザ記憶領域から1トラック相当から64Kブロック相当のバイトを読み取り、そのデータがオール”0”かどうかを調べ、オール”0”なら未使用領域、オール”0”でなければ使用領域と判定する。
【0041】
消去用データ書込み部173は、使用領域と判定された領域に対して、データ消去テーブル180を参照して取得した消去モードに対応する消去用書込みデータと書込み回数に基づいて、64Kバイト読み取ったユーザ記憶領域に書き込む。未使用領域の場合は書込みを行わずにスキップする。
【0042】
使用領域判定部172と消去用データ書込み部173は、ユーザ記憶領域全体に渡って実施され、この制御はメインプログラムで行われる。
【0043】
次に、本発明に基づいた処理フローを図3と図4を用いて説明する。ここでは各処理のステップをSnnnと表示している。
【0044】
まず、図3において高速モードフラグ(FMF)を初期化して”0”とする。この高速モードフラグは、後述する書込み回数と総ライト数が条件を満たしたときに高速モードフラグを”1”として高速でデータ消去(未使用領域をスキップして、利用領域のみを書込む)行い、そうでないときは高速モードフラグを”0”として従来方法による書込み(ユーザ記憶領域全体の消去用書込みデータを書込む)を行うときに用いるフラグである(S100)。
【0045】
次に、オペレータから指定された(キーボード130から入力された)消去モードを取得する。データ消去テーブル180を参照して、該当する消去モードの書込み回数が2回以上であるかどうかを調べ、2回以上であった場合はデータ消去対象のハードディスクのシステム記憶領域の統計情報から総ライト数を読み取る。そして、総ライト数が所定値より小さい場合は、データ消去を高速に行うためFMFを”1”とする。書込み回数が2回未満で(即ち、1回)、総ライト数が所定値以上の場合は、FMFを”0”のままステップS180に進む。書込み回数が2回以上としたのは、書込み回数が多い程使用領域の判定が1回で済むので書込み時間を短縮する効果が大きいからである。逆に書込み回数が1回の場合は従来方法に較べて使用領域を判定する処理が必要となり、効果が少ないからである。また、総ライト数が多いと使用領域を判定しても結局未使用領域が少ないため書込みをスキップする程度が少なくなり、効果が得られないからである(S110−S170)。
【0046】
続いて、論理ブロックアドレス(LBA)を”0”と初期化し、消去用データ書込みループに入る。消去用データ書込みループにおいて、FMFが”1”の場合はユーザ記憶領域から所定ブロック(BL)数を読み取り、そのデータがオール”0”かどうかを調べる。オール”0”でなかった場合(即ち、使用領域)、消去用データ書込みルーチンその1によって取得した消去モードに対応した消去用書込みデータをその消去モードの書込み回数に基づいて所定ブロック読み取ったユーザ記憶領域に書き込む。書込みの後にLBAを所定ブロック(BL)分カウントアップし、消去用データ書込みループの先頭に戻る。また、ユーザ記憶領域から所定ブロック数を読み取ったデータがオール”0”であった場合は、未使用領域であるので、消去用書込みデータの書込みを行わずに(即ち、スキップし)、LBAをBL分カウントアップし、消去用データ書込みループの先頭に戻る。この消去用データ書込みループはユーザ記憶領域に渡って実施され、終了となる(S180−S230)。
【0047】
続いて、消去用データ書込みルーチンその1の処理フローを図4を用いて説明する。最初に、オペレータ等から指定された消去モードに対応する書込み回数をNに設定し、これから実行する書込みの回数をカウントするカウンタiを”0”に初期化する(S300、S310)。
【0048】
カウンタをカウントアップし(i=i+1)、i回目の書込み用データをデータ消去テーブル180を参照して作業記憶領域にセットする(記憶する)。例えば、NSA標準のように1回目データがランダムデータであるとき、乱数を発生させて作業記憶領域にセットする。ここでは、作業記憶領域の記憶容量は先の所定のブロック数に合わせておく。そして、作業記憶領域のデータを所定のブロック数読み取ったユーザ記憶領域に書き込む。ステップS320からS350まで書込み回数分この処理を繰り返して終了する。消去用書込みデータが1回目と2回目がランダムデータで3回目が”0”である場合、ステップS330にセットされるデータは回数に応じて変わることになる(S320−S350)。
(実施形態その2)
次に、実施形態その2を、図5と図6を用いて説明する。実施形態その2は第2の発明に対応するものである。
【0049】
まず、図5においてオペレータ等から指定された消去モードを取得する。データ消去テーブル180を参照して、取得した消去モードの書込み回数が2回以上であるかどうかを調べ、2回以上であった場合はデータ消去対象のハードディスクのシステム記憶領域のログ情報から総ライト数を読み取る。そして、総ライト数が所定値より小さい場合は、LBA(論理ブロックアドレス)を”0”と初期化し、使用領域のLBA抽出ループに入る(S500−S560)。
【0050】
消去用データ書込みループにおいて、ユーザ記憶領域から所定ブロック(BL)数を読み取り、そのデータがオール”0”かどうかを調べる。オール”0”でない場合(即ち、使用領域)は、そのLBAを記憶領域MLBA(n)に記憶し、LBAをBL分カウントアップする。オール”0”の場合(即ち、未使用領域)は、MLBA(n)に記憶せずにスキップする。この処理をユーザ記憶領域全体に実施し、消去データ書込みルーチンその2に進む。ステップS520で書込み回数が2回未満(即ち、1回)の場合と、とS550で総ライト数が所定値以上の場合は、MLBA(n)にユーザ記憶領域を先の所定ブロック数で分割して求めたLBAを記憶する。その後に消去データ書込みルーチンその2に進む。MLBA(n)にはユーザ記憶領域の先頭からのBL分間隔の値の論理ブロックアドレスが記憶されることになる。即ち、MLBA(n)には、BL、2×BL、3×BL、4×BL・・・の値が記憶される(S570−S600)。
【0051】
上記でMLBA(n)にLBAが記憶された後に消去データ書込みルーチンその2に進み、MLBA(n)に記憶されたLBAを基に消去用書込みデータを書き込む(S610)。
【0052】
次に、消去データ書込みルーチンその2のフローを図6を用いて説明する。最初に、オペレータから指定された消去モードの書込み回数をNに設定し、これから実行する書込みの回数をカウントするカウンタiを”0”に初期化する(S700、S710)。
【0053】
カウンタをカウントアップし(i=i+1)、i回目の書込み用データをデータ消去テーブル180を参照してBLの記憶領域に合わせた作業記憶領域にセットし、消去用データ書込みループに進む。最初はi=1であるので、1回目の消去用書込みデータが作業領域にセットされる(S720、S730)。
【0054】
消去用データ書込みループにおいて、MLBA(n)から記憶したLBAを取り出し、このLBAのユーザ記憶領域に作業領域にセットした消去用書込みデータを書き込む。書込み後は消去用データ書込みループの先頭に戻り、MLBA(n)から次に記憶したLBAを取り出し、同様に書込みを行う。MLBA(n)に記憶したLBAがなくなる迄これを繰り返すことにより、使用領域と判定された領域は消去用書込みデータが書き込まれることになる。あるいは、図5のS520とS550で条件に合わなかった場合にユーザ記憶領域全体に消去用書込みデータを書き込むこと(即ち、従来の全領域への書込み)がこのループで行われる。これで1回目の書込みが終了したことになり、次に2回目の消去用書込みデータの書込みを行う。ステップS720に戻り、iが1つカウントアップされi=2となり、作業領域には2回目の消去用書込みデータがセットされる。このようにして、指定された書込み回数の書込みを行って終了となる(S740−S760)。
【0055】
実施形態その1およびその2において、使用領域の判定はソフト、またはハードで判定することができるがいずれの方法であってもよい。
【0056】
また、工場出荷時のデータパターンがメーカーあるいはメーカーの機種毎によって異なるようであれば、これらに対応した工場出荷時のデータパターンを予め記憶しておき、データ消去対象のハードディスクのシステム記憶領域に記録されているメーカー名あるいはメーカー名と機種名を読み出し、工場出荷時のデータパターンを取得するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の原理図である。
【図2】データ消去装置の構成例である。
【図3】データ消去の処理フロー例(実施形態その1)である。
【図4】消去用書込みルーチンその1の処理フロー例である。
【図5】データ消去の処理フロー例(実施形態その2)である。
【図6】消去用書込みルーチンその2の処理フロー例である。
【図7】消去用書込みデータのパターン例である。
【図8】ハードディスク装置のデータ空間である。
【符号の説明】
【0058】
100 データ消去装置
110 主制御装置
120 入出力制御装置
130 キーボード
140 ディスプレイ
150 ハードディスク装置
160 主メモリ
170 データ消去プログラム
171 消去モード/総ライト数取得部
172 使用領域判定部
173 消去用データ書込み部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された、記憶装置のデータ消去法である消去モードを取得する消去モード取得手順と、
データ消去対象の記憶装置のシステム記憶領域から総ライトバイト数を読み取る総ライト数読取手順と、
消去モードに対応して消去用書込みデータと該消去用書込みデータの書込み回数とを記憶したデータ消去テーブルを参照して、前記取得した書込み回数が2回以上であり、且つ前記読み取った総ライトバイト数が所定数以下の場合に、前記記憶装置のユーザ記憶領域から所定バイト数を読み取り、該所定バイト数のデータと該記憶装置の工場出荷時のデータパターンとを照合して等しければ未使用領域と判定し、等しくなければ使用領域と判定する使用領域判定手順と、
前記判定の結果が使用領域の場合は前記所定バイト数を読み取ったユーザ記憶領域に前記消去モードに該当する書込み回数に基づいて該消去モードの消去用書込みデータを書込み、未使用領域の場合は該書込みをスキップする消去用データ書込み手順と、
前記使用領域判定手順と前記消去用データ書込み手順とを順次実施して、ユーザ記憶領域全体のデータ消去を行うデータ消去手順と
を有することを特徴とする記憶装置のデータ消去方法。
【請求項2】
指定された、記憶装置のデータ消去法である消去モードを取得する消去モード取得手順と、
データ消去対象の記憶装置のシステム記憶領域から総ライトバイト数を読み取る総ライト数読取手順と、
消去モードに対応して消去用書込みデータと該消去用書込みデータの書込み回数とを記憶したデータ消去テーブルを参照して、前記取得した書込み回数が2回以上であり、且つ前記読み取った総ライトバイト数が所定数以下の場合に、前記記憶装置のユーザ記憶領域から所定バイト数を読み取り、該所定バイト数のデータと該記憶装置の工場出荷時のデータパターンとを照合して等しくなければ該所定バイト数を読み取ったユーザ記憶領域のアドレスを記憶することを該ユーザ記憶領域全体に対して実施する使用領域判定手順と、
前記記憶したユーザ記憶領域のアドレスに、前記消去モードに該当する書込み回数に基づいて該消去モードの消去用書込みデータを書込む消去用データ書込み手順と
を有することを特徴とする記憶装置のデータ消去方法。
【請求項3】
前記使用領域判定手順と前記消去用データ書込み手順における読み取りの所定バイト数は、1トラック以上に相当するバイト数である
ことを特徴とする請求項1に記載の記憶装置のデータ消去方法。
【請求項4】
記憶装置のデータ消去を行うデータ消去プログラムであって、
指定された、記憶装置のデータ消去法である消去モードを取得する消去モード取得手順と、
データ消去対象の記憶装置のシステム記憶領域から総ライトバイト数を読み取る総ライト数読取手順と、
消去モードに対応して消去用書込みデータと該消去用書込みデータの書込み回数とを記憶したデータ消去テーブルを参照して、前記取得した書込み回数が2回以上であり、且つ前記読み取った総ライトバイト数が所定数以下の場合に、前記記憶装置のユーザ記憶領域から所定バイト数を読み取り、該所定バイト数のデータと該記憶装置の工場出荷時のデータパターンとを照合して等しければ未使用領域と判定し、等しくなければ使用領域と判定する使用領域判定手順と、
前記判定の結果が使用領域の場合は前記所定バイト数を読み取ったユーザ記憶領域に前記消去モードに該当する書込み回数に基づいて該消去モードの消去用書込みデータを書込み、未使用領域の場合は該書込みをスキップする消去用データ書込み手順と、
前記使用領域判定手順と前記消去用データ書込み手順とを順次実施して、ユーザ記憶領域全体のデータ消去を行うデータ消去手順と
をコンピュータに実行させるためのデータ消去プログラム。
【請求項5】
記憶装置のデータ消去法である消去モードに対応して、消去用書込みデータと該消去用書込みデータの書込み回数とを記憶したデータ消去テーブルと、
指定された消去モードを取得する消去モード取得手段と、
データ消去対象の記憶装置のシステム記憶領域から総ライトバイト数を読み取る総ライト数読取手段と、
前記データ消去テーブルを参照して、前記取得した書込み回数が2回以上であり、且つ前記読み取った総ライトバイト数が所定数以下の場合に、前記記憶装置のユーザ記憶領域から所定バイト数を読み取り、該所定バイト数のデータと該記憶装置の工場出荷時のデータパターンとを照合して等しければ未使用領域と判定し、等しくなければ使用領域と判定する使用領域判定手段と、
前記判定の結果が使用領域の場合は前記所定バイト数を読み取ったユーザ記憶領域に前記消去モードに該当する書込み回数に基づいて該消去モードの消去用書込みデータを書込み、未使用領域の場合は該書込みをスキップする消去用データ書込み手段と、
前記使用領域判定手段と前記消去用データ書込み手段とを順次実施して、ユーザ記憶領域全体のデータ消去を行うデータ消去手段と
を有することを特徴とする記憶装置のデータ消去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−129247(P2009−129247A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304529(P2007−304529)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
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1.フロッピー
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
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