説明

記憶装置の制御装置、磁気記憶媒体、記憶装置及び記憶装置のオフセット量決定方法

【課題】DTMであっても、記憶素子と再生素子との間のオフセット量を容易に決定することができる。
【解決手段】トラック33と、隣接するトラック33間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置したDTM3Aであって、DTM3Aの一部領域に、磁気ヘッド部の記憶素子と再生素子との間のオフセット量を測定する際に使用するオフセット量測定領域35を配置し、オフセット量を測定する際に、オフセット量測定領域35上に、記憶素子の中心位置でのオフセット測定データXの書き込みを確保できるように、オフセット量測定領域35内に、隣接するトラック33間を横断して、オフセット測定データXの書き込み及び再生を可能にする横断トラック36を配置するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記憶媒体にデータを書き込み、又はデータを再生するための磁気ヘッド部の記憶素子と再生素子との間のオフセット量を決定する記憶装置の制御装置、磁気記憶媒体、記憶装置及び記憶装置のオフセット量決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば記憶装置としてのハードディスクは、パソコンの記憶装置やハードディスクドライブ(以下、単にHDDと称する)レコーダ等の記憶装置として使用されている。そして、その記憶密度は、年々、高くなっているのが現状である。
【0003】
そこで、近年では、長手記録方式から垂直磁気記録方式に変更することで、更なる記憶密度の改善が図られている。
【0004】
また、更なる記憶密度を改善する策として、ディスクリートトラックメディア(Discreet Track Media:以下、単にDTMと称する)やビットパターンメディア(Bit Patterned Media:以下、単にBPMと称する)等の様々な媒体に対する研究開発が盛んに行われている。
【0005】
図14は、一般的なDTM内部のデータトラック及びサーボパターンの配置を端的に示す平面模式図、図15は、一般的なDTM内部のトラック及びガード帯の配置関係を端的に示す一部破断した模式図である。
【0006】
図14に示すDTM200は、データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック201及び、これら複数のデータトラック201間に配置し、データトラック201の位置情報を再生可能にするサーボパターン202を含むトラック203と、隣接するトラック203間を磁気的に分離するガード帯204とを同心円状に交互に配置するものである。
【0007】
図15に示すDTM200では、隣接するトラック203間を磁気的に分離するガード帯204を配置することで、ガード帯204に応じて隣接するトラック203へのサイドイレーズを抑制することで、物理的溝形状記憶密度の改善を図ることができる。
【0008】
また、図16は、一般的なBPM内部のトラック及びガード帯の配置関係を端的に示す一部破断した模式図である。
【0009】
図16に示すBPM210は、隣接するトラック211間をトラッキング方向に磁気的に分離するだけでなく、ダウントラック方向、すなわちビット長手方向にも磁気的に分離する非連続のデータトラック212の配置構成とすることで、トラック密度のみならず、ビット密度の改善を図るものである。
【0010】
また、従来のHDD装置においては、実装する磁気記憶媒体のデータトラックにデータを書き込む記憶素子及び、データトラックに書き込んだデータを再生する再生素子を備えた磁気ヘッド部を備え、記憶素子と再生素子との間には数十μmの距離がある。
【0011】
従来のHDD装置においては、実装する磁気記憶媒体が連続膜の磁気記録層であるため、記憶素子を通じてオフセット測定データを書き込んだ後、磁気ヘッド部をトラッキング方向に移動しながら再生素子を通じて再生出力し、オフセット測定データを書き込んだ書き込み位置に対する再生出力が最大となる再生位置までのズレ量(距離)を、再生素子と記憶素子との間のオフセット量として決定するものである。
【0012】
従って、従来のHDD装置によれば、再生素子と記憶素子との間のオフセット量に基づき、データトラックに対する再生素子及び記憶素子の位置決めを円滑に行うことができる。
【0013】
【特許文献1】特開平9−45025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来のHDD装置によれば、連続膜の磁気記録層を備えた磁気記憶媒体においてはデータトラックに対してオフセット測定データを書き込んだ後、磁気ヘッド部をトラッキング方向に移動しながら再生素子を通じて再生出力し、オフセット測定データを書き込んだ書き込み位置に対する再生出力が最大となる再生位置までの距離を再生素子と記憶素子との間のオフセット量として決定するようにしたが、DTMやBPM等の磁気記憶媒体においてはデータトラックのトラック位置が固定、しかも、隣接するトラック間にガード帯があるため、データトラックの中心にオフセット測定データを確実に書き込む必要がある。
【0015】
従って、従来のHDD装置によれば、隣接するトラック間にガード帯があるDTMやBPM等の磁気記憶媒体においては、磁気ヘッド部の記憶素子と再生素子との間のオフセット量を決定するのは難しい。
【0016】
本発明は上記点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、隣接するトラック間にガード帯を備えたDTMやBPM等の磁気記憶媒体であっても、磁気ヘッド部の記憶素子と再生素子との間のオフセット量を容易に決定することができる記憶装置の制御装置、磁気記憶媒体、記憶装置及び記憶装置のオフセット量決定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
開示装置は、データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック及び、これら複数のデータトラック間に配置し、前記データトラックの位置情報を再生可能にするサーボパターンを含むトラックと、隣接するトラック間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置し、磁気ヘッド部の記憶素子と再生素子との間のオフセット量を測定するためのオフセット測定データに関わる前記記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断するように横断トラックを形成したオフセット量測定領域を有する磁気記憶媒体を回転駆動する回転駆動制御部と、前記磁気記憶媒体に対して、前記磁気ヘッド部をトラッキング方向に移動制御する磁気ヘッド駆動制御部と、オフセット量測定開始信号を検出すると、前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと共に、前記トラッキング方向での前記記憶素子の書き込み位置を記憶する書き込み制御部と、
前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御部を通じて前記磁気ヘッド部の前記再生素子の中心位置を、前記書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力する再生制御部と、前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の再生位置として特定し、前記記憶素子の書き込み位置及び前記再生素子の再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離としてオフセット量を決定するオフセット量決定部とを有することを要件とする。
【0018】
また、開示の媒体は、データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック及び、これら複数のデータトラック間に配置し、前記データトラックの位置情報を再生可能にするサーボパターンを含むトラックと、隣接するトラック間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置した磁気記憶媒体であって、この磁気記憶媒体の一部領域に、前記磁気記憶媒体にデータを書き込む記憶装置の記憶素子と前記磁気記憶媒体に書き込んだデータを再生する前記記憶装置の再生素子との間のオフセット量を測定する際に使用するオフセット量測定領域を配置し、前記オフセット量を測定する際に、前記オフセット量測定領域上に前記記憶素子の中心位置でのオフセット測定データの書き込みを確保できるように、前記オフセット量測定領域内に、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断して、前記オフセット測定データの書き込み及び再生を可能にする横断トラックを配置したことを要件とする。
【0019】
また、開示装置は、データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック及び、これら複数のデータトラック間に配置し、前記データトラックの位置情報を再生可能にするサーボパターンを含むトラックと、隣接するトラック間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置し、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断して、オフセット測定データの書き込み及び再生を可能にする横断トラックを形成したオフセット量測定領域を備えた磁気記憶媒体と、前記磁気記憶媒体にデータを書き込む記憶素子及び、前記磁気記憶媒体からデータを再生する再生素子を備えた磁気ヘッド部と、前記磁気記憶媒体を回転駆動する回転駆動制御部と、前記磁気ヘッド部をトラッキング方向に移動制御する磁気ヘッド駆動制御部と、オフセット量測定開始信号を検出すると、前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと共に、前記トラッキング方向の前記記憶素子の書き込み位置を記憶する書き込み制御部と、前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御部を通じて前記磁気ヘッド部の前記再生素子の中心位置を、前記書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力する再生制御部と、前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の再生位置とし、前記記憶素子の書き込み位置及び前記再生素子の再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離としてオフセット量を決定するオフセット量決定部とを有することを要件とする。
【0020】
また、開示方法は、データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック及び、これら複数のデータトラック間に配置し、前記データトラックの位置情報を再生可能にするサーボパターンを含むトラックと、隣接するトラック間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置し、磁気ヘッド部の記憶素子と再生素子との間のオフセット量を測定するためのオフセット測定データに関わる前記記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断するように横断トラックを形成したオフセット量測定領域を備えた磁気記憶媒体を回転駆動する回転駆動制御ステップと、前記磁気記憶媒体に対して、前記磁気ヘッド部をトラッキング方向に移動制御する磁気ヘッド駆動制御ステップと、オフセット量測定開始信号を検出すると、前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部にオフセット測定データを書き込むと共に、前記トラッキング方向での前記記憶素子の書き込み位置を記憶する書き込み制御ステップと、前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御ステップを通じて前記磁気ヘッド部の前記再生素子の中心位置を、前記書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力する再生制御ステップと、前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の再生位置とし、前記記憶素子の書き込み位置及び前記再生素子の再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離としてオフセット量を決定するオフセット量決定ステップとを含むことを要件とする。
【発明の効果】
【0021】
開示装置によれば、オフセット測定データに関わる記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、ガード帯を介して隣接するトラック間を横断する横断トラックを形成した磁気記憶媒体を実装することで、記憶素子と再生素子との間のオフセット量の測定に際して、記憶素子の中心位置がトラック中心位置になくても、横断トラックの一部にオフセット測定データが必ず書き込まれるようにしたので、記憶素子の書き込み位置に対する、再生出力が最大ピーク値の再生素子の再生位置を認識することができ、その結果、記憶素子と再生素子との間のオフセット量を簡単に決定することができるという効果を奏する。
【0022】
また、開示媒体によれば、オフセット測定データに関わる記憶素子の中心位置での書き込みを確保できるように、ガード帯を介して隣接するトラック間を横断する横断トラックを配置するようにしたので、この磁気記憶媒体を実装した記憶装置側では、記憶素子と再生素子との間のオフセット量の測定に際して、記憶素子の中心位置がトラック中心位置になくても、横断トラックの一部にオフセット測定データが必ず書き込まれることになるため、記憶素子の書き込み位置に対する、再生出力が最大ピーク値の再生素子の再生位置を認識することができ、その結果、記憶素子と再生素子との間のオフセット量を簡単に決定することができるという効果を奏する。
【0023】
また、開示装置によれば、オフセット測定データに関わる記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、ガード帯を介して隣接するトラック間を横断する横断トラックを形成した磁気記憶媒体を実装することで、記憶素子と再生素子との間のオフセット量の測定に際して、記憶素子の中心位置がトラック中心位置になくても、横断トラックの一部にオフセット測定データが必ず書き込まれるようにしたので、記憶素子の書き込み位置に対する、再生出力が最大ピーク値の再生素子の再生位置を認識することができ、その結果、記憶素子と再生素子との間のオフセット量を簡単に決定することができるという効果を奏する。
【0024】
また、開示方法によれば、オフセット測定データに関わる記憶素子の中心位置での書き込みを確保できるように、ガード帯を介して隣接するトラック間を横断する横断トラックを配置するようにしたので、この磁気記憶媒体を実装した記憶装置側では、記憶素子と再生素子との間のオフセット量の測定に際して、記憶素子の中心位置がトラック中心位置になくても、横断トラックの一部にオフセット測定データが必ず書き込まれることになるため、記憶素子の書き込み位置に対する、再生出力が最大ピーク値の再生素子の再生位置を認識することができ、その結果、記憶素子と再生素子との間のオフセット量を簡単に決定することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面に基づき本発明の記憶装置の制御装置、磁気記憶媒体、記憶装置及び記憶装置のオフセット量決定方法に関わる実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0026】
図1は、実施例1のHDD装置の概略構成を示す斜視図、図2は、実施例1のHDD装置内部の概略構成を示すブロック図、図3は、実施例1のHDD装置の磁気ヘッド部の記憶素子及び再生素子の位置関係を端的に示す説明図である。
【0027】
図1に示すHDD装置1は、ベース本体2にDTM3を実装し、DTM3へのデータ書き込み及びDTM3に書き込んだデータを再生する装置である。
【0028】
HDD装置1は、実装したDTM3上のトラックに対してデータを書き込み又は再生する磁気ヘッド部4と、磁気ヘッド部4をDTM3のトラッキング方向に懸架するサスペンション部材5とを有している。
【0029】
また、HDD装置1は、サスペンション部材5を通じて磁気ヘッド部4をDTM3のトラッキング方向に移動するボイスコイルモータ6と、DTM3を所定回転速度で回転駆動するスピンドルモータ7と、このHDD装置1全体を制御する制御回路8とを有している。
【0030】
磁気ヘッド部4は、図2及び図3に示すように、DTM3上のトラック内のデータトラックにデータを書き込む、高飽和磁束密度を有するFeCoを主磁極材料の記憶素子4Aと、トラック内のデータトラック及びサーボパターンからデータを再生する、TMR(Tunneling Magneto Resistivity)の再生素子4Bとを備えている。
【0031】
制御回路8は、磁気ヘッド部4を通じてDTM3上にデータを書き込む又は書き込んだデータを再生する際に信号処理を施すプリアンプ11と、ボイスコイルモータ6及びスピンドルモータ7を駆動制御するサーボ制御部12と、各種情報を記憶するメモリ部13と、各種情報を一時記憶するバッファメモリ部14と、制御回路8全体を制御するメイン制御部15とを有している。
【0032】
サーボ制御部12は、ボイスコイルモータ6を駆動制御するボイスコイルモータ制御部12Aと、スピンドルモータ7を駆動制御するスピンドルモータ制御部12Bとを有している。
【0033】
また、メイン制御部15は、オフセット量測定開始を示すオフセット量測定開始信号を検出すると、記憶素子4Aを通じてオフセット測定データをDTM3のデータトラック31上に書き込むと共に、トラッキング方向の記憶素子4Aの書き込み位置を記憶する書き込み制御部21と、オフセット測定データを書き込むと、ボイスコイルモータ制御部12Aを通じて磁気ヘッド部4の再生素子4Bの中心位置を、データトラック31の再生可能範囲内の再生位置に順次合わせ、再生位置毎に、プリアンプ11を通じて再生出力する再生制御部22とを有している。
【0034】
書き込み制御部21は、ボイスコイルモータ制御部12Aを通じて記憶素子4Aの書き込み位置を所定距離単位毎にずらし、記憶素子4Aを通じてオフセット測定データを書き込むものである。
【0035】
再生制御部22は、ボイスコイルモータ制御部12Aを通じて、書き込み位置毎の再生素子4Bの再生位置を所定距離単位、例えば3nm毎にずらし、再生素子4Bを通じてオフセット測定データを再生出力するものである。
【0036】
メイン制御部15は、再生制御部22にて再生位置毎に取得した再生出力(TrackAverage Amplitude:以下、単にTAAと称する)のピーク値を順次更新するピーク値記憶部23を有している。
【0037】
また、メイン制御部15は、ピーク値記憶部23に記憶中の再生位置毎のピーク値の内、再生出力が最大ピーク値に相当する再生位置を最終的な再生素子4Bの再生位置として特定し、記憶素子4Aの書き込み位置及び再生素子4Bの再生位置に基づき、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間の距離としてオフセット量を決定するオフセット量決定部24を有している。
【0038】
図4は、実施例1のHDD装置1に実装するDTM3内部のトラック配置構成を端的に示す説明図である。
【0039】
DTM3は、データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック31及び、これら複数のデータトラック31間に配置し、データトラック31の位置情報を再生可能にするサーボパターン32を含むトラック33と、隣接するトラック33間を磁気的に分離するガード帯34とを同心円状に交互に配置している。
【0040】
メイン制御部15は、トラック33上のサーボパターン32を、磁気ヘッド部4の再生素子4Bを通じて再生し、この再生したサーボパターン32に基づき、サーボ制御部12のボイスコイルモータ制御部12Aを通じて磁気ヘッド部4を駆動制御するものである。
【0041】
次に実施例1のHDD装置1の動作について説明する。図5は、実施例1のHDD装置1の第1オフセット量決定処理に関わる制御回路8の処理動作を示すフローチャートである。
【0042】
図5に示す第1オフセット量決定処理は、DTM3上に対して書き込みアクセス及び再生アクセスを実行する磁気ヘッド部4の記憶素子4A及び再生素子4B間のオフセット量を決定するための処理である。
【0043】
図5においてメイン制御部15内部の書き込み制御部21は、オフセット量測定開始信号を検出すると、オフセット測定データを書き込むデータトラック31に対して、記憶素子4Aを通じて1GFluxChange/sec程度の高周波でクロストラック方向に±3μm程度のデータ磁気消去、すなわちACバンドイレーズ処理を実行する(ステップS11)。
【0044】
書き込み制御部21は、記憶素子4Aを通じてオフセット測定データを書き込むべく、書き込み位置WPを初期位置WP0に設定し(ステップS12)、記憶素子4Aによる書き込みアクセスを開始する(ステップS13)。
【0045】
書き込み制御部21は、書き込みアクセスを開始すると、記憶素子4Aを通じて、図4に示すように、90FluxChange/secの単一周波数信号のオフセット測定データXを現在設定中の書き込み位置WPでデータトラック31上に書き込む(ステップS14)。
【0046】
メイン制御部15内部の再生制御部22は、再生素子4Bを通じてデータトラック31上に書き込んだオフセット測定データを再生すべく、トラッキング方向の再生位置RPを初期位置RP0に設定し(ステップS15)、再生素子4Bの再生アクセスを開始し(ステップS16)、再生素子4Bを通じて、現在再生位置RPでの再生出力(TAA)を測定する(ステップS17)。
【0047】
再生制御部22は、現在再生位置RPでの再生出力のピーク値が最大ピーク値であるか否かを判定する(ステップS18)。
【0048】
再生制御部22は、現在再生位置RPでの再生出力のピーク値が最大ピーク値でない場合(ステップS18否定)、現在再生位置RPが再生終了位置に到達したか否かを判定する(ステップS19)。尚、再生終了位置とは、書き込み位置WPに関わる再生可能範囲から離脱する直前の位置である。
【0049】
再生制御部22は、現在再生位置RPが再生終了位置に到達しなかった場合(ステップS19否定)、さらに現在再生位置RPをΔRP分(ΔRP=3nm)ずらしてRP+ΔRPを現在再生位置RPとして設定し(ステップS20)、再生素子4Bを通じて再生アクセスを開始すべく、ステップS16に移行する。
【0050】
また、再生制御部22は、現在再生位置RPのピーク値が最大ピーク値である場合(ステップS18肯定)、現在再生位置RPのピーク値が現在書き込み位置WPでの最大ピーク値としてピーク値記憶部23に記憶更新する(ステップS21)。
【0051】
さらに、再生制御部22は、現在再生位置RPのピーク値が最大ピーク値としてピーク値記憶部23に記憶更新すると、現在書き込み位置WPでの最大ピーク値の再生位置RPMAXとして記憶更新し(ステップS22)、現在再生位置RPが再生終了位置に到達したか否かを判定すべく、ステップS19に移行する。
【0052】
つまり、現在書き込み位置WPで書き込んだオフセット測定データXを初期位置RP0から再生終了位置に到達するまでΔRP毎に再生素子4Bをズラしながら再生出力し、現在書き込み位置WPで書き込んだオフセット測定データXの内、最大ピーク値の再生位置RPMAXを取得することになる。
【0053】
次に再生制御部22は、現在再生位置RPが再生終了位置に到達した場合(ステップS19肯定)、現在書き込み位置WPの最大ピーク値が他の書き込み位置WPでの最大ピーク値を超えたか否かを判定する(ステップS23)。
【0054】
再生制御部22は、現在書き込み位置WPの最大ピーク値が他の書き込み位置WPでの最大ピーク値を超えた場合(ステップS23肯定)、現在書き込み位置WPの最大ピーク値を最大ピーク値として記憶更新(ステップS24)、現在書き込み位置WPの最大ピーク値の再生位置RPMAXを記憶更新する(ステップS25)。
【0055】
再生制御部22は、現在書き込み位置WPを最大ピーク値の書き込み位置WPMAXとして記憶更新し(ステップS26)、現在書き込み位置WPが書き込み終了位置に到達したか否かを判定する(ステップS27)。尚、書き込み終了位置は、オフセット測定データXの書き込み可能な範囲から離脱する直前の位置である。
【0056】
再生制御部22は、現在書き込み位置WPが書き込み終了位置に到達しなかった場合(ステップS27否定)、再度、オフセット測定データXの書き込みを実行すべく、現在の書き込み位置WPをΔWP分ずらし、WP+ΔWPを現在書き込み位置WPとして設定する(ステップS28)。
【0057】
書き込み制御部21は、WP+ΔWPを現在書き込み位置WPとして設定すると、オフセット測定データを書き込むデータトラック31に対して、記憶素子4Aを通じて、1GFluxChange/sec程度の高周波でクロストラック方向に±3μm程度のデータ磁気消去、すなわちACバンドイレーズ処理を実行し(ステップS29)、記憶素子4Aを通じて現在書き込み位置WPに書き込みアクセスを開始すべく、ステップS13に移行する。
【0058】
つまり、書き込み位置WPの初期位置WP0から書き込み終了位置までΔWP毎に順次書き込み、図6に示すように書き込み位置WP毎に再生出力の最大ピーク値を取得するものである。尚、図6に示す横軸の“0”は書き込み位置WPに相当するものである。
【0059】
また、書き込み制御部21は、現在書き込み位置WPでの最大ピーク値が他の書き込み位置WPでの最大ピーク値を超えなかった場合(ステップS23否定)、現在書き込み位置WPが書き込み終了位置に到達したか否かを判定すべく、ステップS27に移行する。
【0060】
また、メイン制御部15内部のオフセット量決定部24は、現在書き込み位置WPが書き込み終了位置に到達した場合(ステップS27肯定)、ピーク記憶部23に記憶中の最大ピーク値に相当するステップS25の再生位置RPMAX及びステップS26の書き込み位置WPMAXに基づき、記憶素子4Aと再生素子4Bとの距離を算出し(ステップS30)、この算出した距離を記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量として決定することで(ステップS31)、図5の処理動作を終了する。
【0061】
図5に示す第1オフセット量決定処理では、複数の書き込み位置WP内の複数の再生位置RPの内、再生出力が最大ピーク値の再生位置RPMAX及び、その最大ピーク値の再生位置RPMAXに関わる書き込み位置WPMAXを特定し、これら特定した再生位置RPMAX及び書き込み位置WPMAXに基づき、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間の距離を算出し、この算出した距離を記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量として決定するようにしたので、隣接するトラック31間にガード帯34を交互に配置したDTM3であっても、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量を決定することができる。
【0062】
実施例1のHDD装置1によれば、複数の書き込み位置WP内の複数の再生位置RPの内、再生出力が最大ピーク値の再生位置RPMAX及び、その最大ピーク値の再生位置RPMAXに関わる書き込み位置WPMAXを特定し、これら特定した再生位置RPMAX及び書き込み位置WPMAXに基づき、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間の距離を算出し、この算出した距離を記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量として決定するようにしたので、隣接するトラック33間にガード帯34を交互に配置したDTM3であっても、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量を決定することができる。
【0063】
実施例1のHDD装置1によれば、オフセット測定データXの書き込み位置WPが、オフセット測定データXの書き込みができないガード帯34上になる場合も考えられるため、書き込み位置WPを順次ずらして、さらに書き込み位置WP毎に再生位置RPを順次ずらし、これら複数の書き込み位置WP内の複数の再生位置RPの内、最大ピーク値の再生位置RPMAX及び、その最大ピーク値の再生位置RPMAXに相当する書き込み位置WPMAXを特定し、これら再生位置RPMAX及び書き込み位置WPMAXに基づき、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量を決定するようにした。
【0064】
しかしながら、実施例1のHDD装置1によれば、オフセット測定データXの書き込み位置WPがガード帯34上にないことを確認すべく、書き込み位置WPを順次ずらし、その都度、書き込み位置WP毎に再生位置RPをずらして再生出力を順次測定する必要があるため、その処理に時間を要する。
【実施例2】
【0065】
そこで、このような事態を打開すべく、次に説明するような、実施例2のHDD装置を提案する。図7は、実施例2のHDD装置内部の概略構成を示すブロック図、図8は、実施例2のHDD装置のトラック配置構成を端的に示す説明図である。尚、実施例1のHDD装置1と同一の構成については同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
【0066】
実施例1のHDD装置1と実施例2のHDD装置1Aとが異なるところは、図8に示すようにDTM3Aの一部領域に、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量を測定する際に使用するオフセット量測定領域35を配置し、オフセット量を測定する際に、オフセット量測定領域35上に記憶素子4Aの中心位置でのオフセット測定データXの書き込み、及び再生素子4Bの中心位置でのオフセット測定データXの再生を確保できるように、オフセット量測定領域35内に、隣接するトラック33間を斜行方向に横断して、オフセット測定データXの書き込み及び再生を可能にする横断トラック36を複数配置した点にある。
【0067】
メイン制御部15内部の書き込み制御部21Aは、オフセット量測定開始信号を検出すると、記憶素子4Aを通じてオフセット量測定領域35上にオフセット測定データを書き込むと共に、トラッキング方向での記憶素子4Aの書き込み位置WPを記憶するものである。
【0068】
また、メイン制御部15内部の再生制御部22Aは、オフセット量測定領域35上にオフセット測定データを書き込むと、磁気ヘッド部4の再生素子4Bの中心位置を、書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置RPにΔRP(ΔRP=3nm)単位で順次合わせて再生出力するものである。
【0069】
図9は、実施例2のHDD装置1Aに実装するDTM3Aの電子線露光処理を実行する電子線露光処理装置内部の概略構成を示すブロック図である。
【0070】
図9に示す電子線露光処理装置40は、DTM原盤41を縦横方向(XY方向)に移動するX−Yステージ42と、X−Yステージ42上のDTM原盤41を所定回転速度に回転駆動するスピンドルモータ43と、電子ビームを出力する電子ビーム源44と、電子ビーム源44からの電子ビームをトラッキング方向に調整する電子ビーム調整系45と、電子ビーム源44からの電子ビームをフォーカシング方向に調整する電子ビーム集束系46とを有している。
【0071】
尚、X−Yステージ42、スピンドルモータ43、電子ビーム源44、電子ビーム調整系45及び電子ビーム集束系46は、10の−4乗パスカルの真空のチャンバ47内に配置されるものである。
【0072】
また、電子線露光処理装置40は、X−Yステージ42を駆動制御するステージ駆動制御部48と、スピンドルモータ43を駆動制御するスピンドルモータ駆動制御部49と、電子ビーム源44を駆動制御する電子ビーム制御部50と、電子ビーム調整系45及び電子ビーム集束系46を駆動制御する電子ビーム駆動制御部51とを有している。
【0073】
電子線露光処理装置40は、原盤41をフォーマット化するフォーマッタ52と、電子線露光処理装置40全体を制御するメインコントローラ53とを有している。
【0074】
図10は、実施例2のDTM製造工程を示すフローチャートである。
【0075】
図10においてDTM製造装置では、精密に研磨したガラスの原盤41上に厚み5〜10nmのレジストを塗布し(ステップS41)、電子線露光処理装置40の電子線露光で、データトラック31、サーボパターン32及び横断トラック36を原盤41上に形成する(ステップS42)。
【0076】
尚、電子線露光処理装置40のメインコントローラ53は、フォーマッタ52からの情報に基づき、スピンドルモータ43で原盤41を回転し、原盤41上に電子ビームを集束させると共に、X−Yステージ42を移動させてデータトラック31及びサーボパターン32を原盤41上に形成するものである。
【0077】
さらに、電子線露光処理装置40は、電子ビームを掃引して隣接するトラック33間を横断する横断トラック36を原盤41上の一部領域に形成するものである。尚、電子ビームを掃引する方法としては、電子ビーム集束系46でトラッキング方向に電子ビームを調整する方法も考えられるが、例えば電子ビームを固定出力したまま、原盤41を載置したX−Yステージ42を駆動することで電子ビームを掃引するようにしても良い。
【0078】
また、DTM製造装置は、電子線露光処理を施した原盤41に原盤現像を施し(ステップS43)、原盤現像後、スパッタリング法でAL膜を形成するメタライズ処理を施す(ステップS44)。その後、DTM製造装置は、原盤41上に約150μm程度のNi層を形成する電解メッキ処理を施す(ステップS45)。
【0079】
次にDTM製造装置は、原盤41からNiを剥離し(ステップS46)、レジスト除去のための原盤洗浄処理を実行する(ステップS47)。さらに、DTM製造装置は、原盤41の裏面をテープ研磨で磨いた後(ステップS48)、金型打ち抜きで外形加工を施す(ステップS49)。
【0080】
そして、DTM製造装置は、原盤41上のガラス基板に対してデータトラック31、サーボパターン32及び横断トラック36を加圧転写で形成する(ステップS50)。さらに、DTM製造装置は、データトラック31、サーボパターン32及び横断トラック36を加圧転写したガラス基板を洗浄し(ステップS51)、このガラス基板上に、スパッタリング法で垂直磁気記録層を有する膜を形成する(ステップS52)。
【0081】
さらに、DTM製造装置は、CVD(Chemical Vapor Deposition)で垂直磁気記録層上にDLC(Diamond Like Carbon)を形成する(ステップS53)。
【0082】
その後、DTM製造装置は、DLC上に潤滑剤を塗布することで潤滑層を形成し(ステップS54)、横断トラック36、データトラック31及びサーボパターン32を形成したDTM3Aを製造することになる。尚、DTM3Aでは、例えばデータトラック31のランド幅を約100nm、ガード帯34の溝幅を約50nm、トラックピッチを約150nm、ガード帯34の溝深さを約7nm、その溝のテーパー角度を約70度としている。
【0083】
次に横断トラック36を形成したDTM3Aを実装する実施例2のHDD装置1Aの動作について説明する。図11は、実施例2のHDD装置1Aの第2オフセット量決定処理に関わる制御回路8の処理動作を示すフローチャートである。
【0084】
図11に示す第2オフセット量決定処理は、DTM3A上に対して書き込みアクセス及び再生アクセスを実行する磁気ヘッド部4の記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量を決定するための処理である。
【0085】
図11においてメイン制御部15内部の書き込み制御部21Aは、オフセット量測定開始信号を検出すると、オフセット量測定領域35のサーボパターン32に基づき記憶素子4Aを移動し、オフセット測定データXを書き込むオフセット測定領域35に対して、記憶素子4Aを通じて1GFluxChange/sec程度の高周波でクロストラック方向に±3μm程度のデータ磁気消去、すなわちACバンドイレーズ処理を実行する(ステップS61)。
【0086】
書き込み制御部21Aは、記憶素子4Aを通じてオフセット測定データXを書き込むべく、所望の書き込み位置WPを設定し(ステップS62)、記憶素子4Aの書き込みアクセスを開始する(ステップS63)。
【0087】
書き込み制御部21Aは、記憶素子4Aを通じて、90FluxChange/secの単一周波数信号のオフセット測定データXをオフセット量測定領域35上に書き込む(ステップS64)。尚、書き込み制御部21Aは、図8に示すように、記憶素子4Aを通じてオフセット量測定領域35上にオフセット測定データXを書き込むと、隣接するトラック33間を横断トラック36が横断していることになるため、オフセット測定データXは横断トラック36上に必ず書き込まれることになる。
【0088】
メイン制御部15内部の再生制御部22Aは、再生素子4Bを通じて横断トラック36上のオフセット測定データXを再生すべく、書き込み位置WPに対する再生位置RPとして初期位置RP0に設定し(ステップS65)、再生素子4Bの再生アクセスを開始し(ステップS66)、再生素子4Bを通じて、現在再生位置RPでの再生出力(TAA)を測定する(ステップS67)。
【0089】
再生制御部22Aは、現在再生位置RPでの再生出力のピーク値が最大ピーク値であるか否かを判定する(ステップS68)。
【0090】
再生制御部22Aは、現在再生位置RPでの再生出力のピーク値が最大ピーク値でない場合(ステップS68否定)、現在再生位置RPが再生終了位置に到達したか否かを判定する(ステップS69)。尚、再生終了位置とは、書き込み位置WPに関わる再生可能範囲から離脱する直前の位置である。
【0091】
再生制御部22Aは、現在再生位置RPが再生終了位置に到達しなかった場合(ステップS69否定)、現在再生位置RPをΔRP(3nm)分ずらしてRP+ΔRPを現在再生位置RPとして設定し(ステップS70)、再生素子4Bを通じて再生アクセスを開始すべく、ステップS66に移行する。
【0092】
また、再生制御部22Aは、現在再生位置RPのピーク値が最大ピーク値である場合(ステップS68肯定)、現在再生位置RPのピーク値が書き込み位置WPでの最大ピーク値としてピーク値記憶部23に記憶更新する(ステップS71)。
【0093】
さらに、再生制御部22Aは、現在再生位置RPのピーク値が最大ピーク値としてピーク値記憶部23に記憶更新すると、書き込み位置WPでの最大ピーク値の再生位置RPMAXを記憶更新し(ステップS72)、現在再生位置RPが再生終了位置に到達したか否かを判定すべく、ステップS69に移行する。
【0094】
尚、現在書き込み位置WPで書き込んだオフセット測定データXを初期位置RP0から再生終了位置に到達するまでΔRP毎に再生素子4Bをずらしながら再生出力し、図12に示すように、現在書き込み位置WPで書き込んだオフセット測定データXの内、最大ピーク値の再生位置RPMAXを取得することになる。
【0095】
また、オフセット量決定部24は、現在再生位置RPが再生終了位置に到達した場合(ステップS69肯定)、ピーク記憶部23に記憶中の最大ピーク値に相当する再生位置RPMAX及び書き込み位置WPに基づき、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間の距離を算出し(ステップS73)、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量を決定することで(ステップS74)、図11の処理動作を終了する。
【0096】
図11に示す第2オフセット量決定処理では、DTM3A上のオフセット量測定領域35上の書き込み位置WPにオフセット測定データXをトラックダウン方向に書き込むことで、オフセット測定データを書き込む書き込み位置WPがデータトラック31の中心にない場合でも、必ず横断トラック36上に書き込まれることになるため、その横断トラック36上を再生位置RPから再生終了位置までΔRP単位毎に順次再生し、書き込み位置WPでの複数の再生位置RPの内、最大ピーク値の再生位置RPMAXを特定し、再生位置RPMAX及び書き込み位置WPに基づき記憶素子4Aと再生素子4Bとの間の距離を算出し、この算出した距離を記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量として決定するようにしたので、隣接するトラック33間にガード帯34を交互に配置したDTM3Aであっても、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量を簡単に決定することができる。
【0097】
また、第2オフセット量決定処理によれば、隣接するトラック33間を横断トラック36が横断することになるため、必ず横断トラック36上にオフセット測定データが書き込まれるようにしたので、書き込み位置WPを順次ずらす必要もなく、図5に示す第1オフセット量決定処理に比較して、その処理時間を大幅に短縮することができる。
【0098】
実施例2のHDD装置1Aでは、DTM3A上のオフセット量測定領域35上の書き込み位置WPにオフセット測定データXをトラックダウン方向に書き込むことで、オフセット測定データXを書き込む書き込み位置WPがデータトラック31の中心にない場合でも、必ず横断トラック36上に書き込まれることになるため、その横断トラック36上を再生位置RPから再生終了位置までΔRP単位毎に順次再生し、書き込み位置WPでの複数の再生位置RPの内、最大ピーク値の再生位置RPMAXを特定し、再生位置RPMAX及び書き込み位置WPに基づき記憶素子4Aと再生素子4Bとの間の距離を算出し、この算出した距離を記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量として決定するようにしたので、隣接するトラック31間にガード帯34を交互に配置したDTM3Aであっても、その処理時間を大幅に軽減しながら、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量を簡単に決定することができる。
【0099】
尚、上記実施例2のHDD装置1AのDTM3Aの一部領域であるオフセット量測定領域35においては、図8に示すように、隣接するトラック33間を横断する横断トラック36を斜行方向に配置するようにしたが、DTM3Aの構成を次に説明するようにしても良く、実施例3として説明する。
【実施例3】
【0100】
図13は、実施例3のHDD装置に実装するDTM内部の一部領域のトラック配置構成を端的に示す説明図である。尚、実施例2のHDD装置1Aと同一の一部領域については同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。
【0101】
図13に示すDTM3Bの一部領域には、横断トラック36を複数配置したオフセット量測定領域35の他に、オフセット測定データXに関わる記憶素子4Aの中心位置での書き込みを可能にすべく、ガード帯34を介して隣接するトラック33間を横断するように、横断トラック36と左右対称の補正用横断トラック36Aを複数配置した補正用オフセット量測定領域35Aを備えたものである。
【0102】
次に実施例3のHDD装置1Bの動作について説明する。
【0103】
先ず、メイン制御部15の書き込み制御部21Aは、オフセット量測定開始信号を検出すると、図11の第2オフセット量決定処理のステップS61乃至64の処理で、記憶素子4Aを通じてオフセット量測定領域35上の横断トラック36の一部にオフセット測定データXを書き込んで、記憶素子4Aの書き込み位置WPを第1書き込み位置WP1として記憶する。
【0104】
そして、再生制御部22Aは、図11の第2オフセット量決定処理のステップS65乃至72の処理で、図13に示すように、横断トラック36の一部にオフセット測定データXを書き込むと、サーボ制御部12を通じて再生素子4Bの中心位置を、第1書き込み位置WP1に関わる再生可能範囲内の再生位置RPに、ΔRP単位毎に順次合わせて再生出力する。
【0105】
そして、オフセット量決定部24は、横断トラック36での再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置RPMAXを再生素子4Bの第1再生位置RPMAX1として特定し、記憶素子4Aの第1書き込み位置WP1及び再生素子4Bの第1再生位置RP1に基づき、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間の移動距離として第1オフセット量を特定記憶する。
【0106】
次に書き込み制御部21Aは、図11の第2オフセット量決定処理のステップS61乃至64の処理で、図13に示すように、記憶素子4Aを通じて補正用オフセット量測定領域35A上の補正用横断トラック36Aの一部にオフセット測定データXを書き込んで、記憶素子4Aの書き込み位置WPを第2書き込み位置WP2として記憶する。
【0107】
さらに、再生制御部22Aは、図11の第2オフセット量決定処理のステップS65乃至72の処理で、補正用横断トラック36Aの一部にオフセット測定データXを書き込むと、サーボ制御部12を通じて再生素子4Bの中心位置を、第2書き込み位置WP2に関わる再生可能範囲内の再生位置RPに、ΔRP単位毎に順次合わせて再生出力する。
【0108】
オフセット量決定部24は、補正用横断トラック36Aでの再生位置RP毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置RPMAXを再生素子4Bの第2再生位置RPMAX2として特定する。
【0109】
そして、オフセット量決定部24は、記憶素子4Aの第2書き込み位置WP2及び再生素子4Bの第2再生位置RPMAX2に基づき、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間の移動距離として第2オフセット量を特定記憶する。
【0110】
そして、オフセット量決定部24は、記憶中の横断トラック36Aで特定した第1オフセット量と、記憶中の補正用横断トラック36Aで特定した第2オフセット量との平均値を、記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量として決定する。
【0111】
実施例3のHDD装置1Bによれば、オフセット量測定領域35の横断トラック36で特定した第1オフセット量と、補正用オフセット量測定領域35Aの補正用横断トラック36Aで特定した第2オフセット量との平均値を、磁気ヘッド部4の記憶素子4Aと再生素子4Bとの間のオフセット量としたので、実施例2のHDD装置1Aと比較して、データトラックパターン形成時の位置ズレ量を補正しながら、オフセット量の測定精度を向上させることができる。
【0112】
また、上記実施例1乃至3においては、磁気記憶媒体としてDTM3(3A,3B)について説明したが、ダウントラック方向に固定ビットを形成したBPMであっても、トラッキング方向に隣接するトラック間に横断トラックや補正用横断トラックを配置するようにしても良く、この場合でも同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0113】
以上、本発明の実施例について説明したが、本実施例によって本発明の技術的思想の範囲が限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲を逸脱しない限り、各種様々な実施例が実施可能であることは言うまでもない。また、本実施例に記載した効果は、これに限定されるものではない。
【0114】
また、本実施例で説明した各種処理の内、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動で行うことも可能であることは勿論のこと、その逆に、手動で行われるものとして説明した処理の全部又は一部を自動で行うことも可能であることは言うまでもない。また、本実施例で説明した処理手順、制御手順、具体的名称、各種データやパラメータを含む情報についても、特記した場合を除き、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0115】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的に記載したものであって、必ずしも物理的に図示のように構成されるものではなく、その各装置の具体的な態様は図示のものに限縮されるものでは到底ないことは言うまでもない。
【0116】
さらに、各装置で行われる各種処理機能は、CPU(Central Processing Unit)(又はMPU(Micro Processing Unit)、MCU(Micro Controller Unit)等のマイクロ・コンピュータ)上、又は同CPU(又はMPU、MCU等のマイクロ・コンピュータ)で解析実行するプログラム上、又はワイヤードロジックによるハードウェア上で、その全部又は任意の一部を実行するようにしても良いことは言うまでもない。
【0117】
以上、上記実施例1乃至3を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0118】
(付記1)データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック及び、これら複数のデータトラック間に配置し、前記データトラックの位置情報を再生可能にするサーボパターンを含むトラックと、隣接するトラック間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置し、磁気ヘッド部の記憶素子と再生素子との間のオフセット量を測定するためのオフセット測定データに関わる前記記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断するように横断トラックを形成したオフセット量測定領域を有する磁気記憶媒体を回転駆動する回転駆動制御部と、
前記磁気記憶媒体に対して、前記磁気ヘッド部をトラッキング方向に移動制御する磁気ヘッド駆動制御部と、
オフセット量測定開始信号を検出すると、前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと共に、前記トラッキング方向での前記記憶素子の書き込み位置を記憶する書き込み制御部と、
前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御部を通じて前記磁気ヘッド部の前記再生素子の中心位置を、前記書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力する再生制御部と、
前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の再生位置として特定し、前記記憶素子の書き込み位置及び前記再生素子の再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離としてオフセット量を決定するオフセット量決定部と
を有することを特徴とする記憶装置の制御装置。
【0119】
(付記2)前記横断トラックは、
前記ガード帯を介して隣接するトラック間を斜行方向に横断するように、前記オフセット量測定領域内部に配置したことを特徴とする付記1記載の記憶装置の制御装置。
【0120】
(付記3)前記磁気記憶媒体は、
前記オフセット量測定領域の他に、前記オフセット測定データに関わる前記記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断するように、前記横断トラックと左右対称の補正用横断トラックを形成した補正用オフセット量測定領域を有し、
前記書き込み制御部は、
前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込んで、前記記憶素子の書き込み位置を第1書き込み位置として記憶し、
前記再生制御部は、
前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御部を通じて前記再生素子の中心位置を、前記第1書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力し、
前記オフセット量決定部は、
前記横断トラックでの前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の第1再生位置として特定し、前記記憶素子の第1書き込み位置及び前記再生素子の第1再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離として第1オフセット量を特定し、
前記書き込み制御部は、
前記記憶素子を通じて前記補正用オフセット量測定領域上の前記補正用横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込んで、前記記憶素子の書き込み位置を第2書き込み位置として記憶し、
前記再生制御部は、
前記補正用横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御部を通じて前記再生素子の中心位置を、前記第2書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力し、
前記オフセット量決定部は、
前記補正用横断トラックでの前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の第2再生位置として特定し、前記記憶素子の第2書き込み位置及び前記再生素子の第2再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離として第2オフセット量を特定し、前記第1オフセット量及び前記第2オフセット量の平均値を、前記記憶素子と前記再生素子との間のオフセット量として決定することを特徴とする付記1又は2記載の記憶装置の制御装置。
【0121】
(付記4)データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック及び、これら複数のデータトラック間に配置し、前記データトラックの位置情報を再生可能にするサーボパターンを含むトラックと、隣接するトラック間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置した磁気記憶媒体であって、
この磁気記憶媒体の一部領域に、前記磁気記憶媒体にデータを書き込む記憶装置の記憶素子と前記磁気記憶媒体に書き込んだデータを再生する前記記憶装置の再生素子との間のオフセット量を測定する際に使用するオフセット量測定領域を配置し、
前記オフセット量を測定する際に、前記オフセット量測定領域上に前記記憶素子の中心位置でのオフセット測定データの書き込みを確保できるように、前記オフセット量測定領域内に、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断して、前記オフセット測定データの書き込み及び再生を可能にする横断トラックを配置したことを特徴とする磁気記憶媒体。
【0122】
(付記5)前記横断トラックは、
前記ガード帯を介して隣接するトラック間を斜行方向に横断するように、前記オフセット量測定領域内部に配置したことを特徴とする付記4記載の磁気記憶媒体。
【0123】
(付記6)前記磁気記憶媒体の一部領域に、
前記オフセット量測定領域の他に、前記オフセット測定データに関わる前記記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断するように、前記横断トラックと左右対称の補正用横断トラックを形成した補正用オフセット量測定領域を有することを特徴とする付記4又は5記載の磁気記憶媒体。
【0124】
(付記7)データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック及び、これら複数のデータトラック間に配置し、前記データトラックの位置情報を再生可能にするサーボパターンを含むトラックと、隣接するトラック間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置し、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断して、オフセット測定データの書き込み及び再生を可能にする横断トラックを形成したオフセット量測定領域を備えた磁気記憶媒体と、
前記磁気記憶媒体にデータを書き込む記憶素子及び、前記磁気記憶媒体からデータを再生する再生素子を備えた磁気ヘッド部と、
前記磁気記憶媒体を回転駆動する回転駆動制御部と、
前記磁気ヘッド部をトラッキング方向に移動制御する磁気ヘッド駆動制御部と、
オフセット量測定開始信号を検出すると、前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと共に、前記トラッキング方向の前記記憶素子の書き込み位置を記憶する書き込み制御部と、
前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御部を通じて前記磁気ヘッド部の前記再生素子の中心位置を、前記書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力する再生制御部と、
前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の再生位置とし、前記記憶素子の書き込み位置及び前記再生素子の再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離としてオフセット量を決定するオフセット量決定部と
を有することを特徴とする記憶装置。
【0125】
(付記8)前記横断トラックは、
前記ガード帯を介して隣接するトラック間を斜行方向に横断するように、前記オフセット量測定領域内部に配置したことを特徴とする付記7記載の記憶装置。
【0126】
(付記9)前記磁気記憶媒体は、
前記オフセット量測定領域の他に、前記オフセット測定データに関わる前記記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断するように、前記横断トラックと左右対称の補正用横断トラックを形成した補正用オフセット量測定領域を有し、
前記書き込み制御部は、
前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込んで、前記記憶素子の書き込み位置を第1書き込み位置として記憶し、
前記再生制御部は、
前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御部を通じて前記再生素子の中心位置を、前記第1書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力し、
前記オフセット量決定部は、
前記横断トラックでの前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の第1再生位置として特定し、前記記憶素子の第1書き込み位置及び前記再生素子の第1再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離として第1オフセット量を特定し、
前記書き込み制御部は、
前記記憶素子を通じて前記補正用オフセット量測定領域上の前記補正用横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込んで、前記記憶素子の書き込み位置を第2書き込み位置として記憶し、
前記再生制御部は、
前記補正用横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御部を通じて前記再生素子の中心位置を、前記第2書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力し、
前記オフセット量決定部は、
前記補正用横断トラックでの前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の第2再生位置として特定し、前記記憶素子の第2書き込み位置及び前記再生素子の第2再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離として第2オフセット量を特定し、前記第1オフセット量及び前記第2オフセット量の平均値を、前記記憶素子と前記再生素子との間のオフセット量として決定することを特徴とする付記7又は8記載の記憶装置。
【0127】
(付記10)データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック及び、これら複数のデータトラック間に配置し、前記データトラックの位置情報を再生可能にするサーボパターンを含むトラックと、隣接するトラック間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置し、磁気ヘッド部の記憶素子と再生素子との間のオフセット量を測定するためのオフセット測定データに関わる前記記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断するように横断トラックを形成したオフセット量測定領域を備えた磁気記憶媒体を回転駆動する回転駆動制御ステップと、
前記磁気記憶媒体に対して、前記磁気ヘッド部をトラッキング方向に移動制御する磁気ヘッド駆動制御ステップと、
オフセット量測定開始信号を検出すると、前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部にオフセット測定データを書き込むと共に、前記トラッキング方向での前記記憶素子の書き込み位置を記憶する書き込み制御ステップと、
前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御ステップを通じて前記磁気ヘッド部の前記再生素子の中心位置を、前記書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力する再生制御ステップと、
前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の再生位置とし、前記記憶素子の書き込み位置及び前記再生素子の再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離としてオフセット量を決定するオフセット量決定ステップと
を含むことを特徴とする記憶装置のオフセット量決定方法。
【0128】
(付記11)前記横断トラックは、
前記ガード帯を介して隣接するトラック間を斜行方向に横断するように、前記オフセット量測定領域内部に配置したことを特徴とする付記10記載の記憶装置のオフセット量決定方法。
【0129】
(付記12)前記磁気記憶媒体は、
前記オフセット量測定領域の他に、前記オフセット測定データに関わる前記記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断するように、前記横断トラックと左右対称の補正用横断トラックを形成した補正用オフセット量測定領域を有し、
前記書き込み制御ステップは、
前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込んで、前記記憶素子の書き込み位置を第1書き込み位置として記憶し、
前記再生制御ステップは、
前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御ステップを通じて前記再生素子の中心位置を、前記第1書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力し、
前記オフセット量決定ステップは、
前記横断トラックでの前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の第1再生位置として特定し、前記記憶素子の第1書き込み位置及び前記再生素子の第1再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離として第1オフセット量を特定し、
さらに、前記書き込み制御ステップは、
前記記憶素子を通じて前記補正用オフセット量測定領域上の前記補正用横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込んで、前記記憶素子の書き込み位置を第2書き込み位置として記憶し、
前記再生制御ステップは、
前記補正用横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御ステップを通じて前記再生素子の中心位置を、前記第2書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力し、
前記オフセット量決定ステップは、
前記補正用横断トラックでの前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の第2再生位置として特定し、前記記憶素子の第2書き込み位置及び前記再生素子の第2再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離として第2オフセット量を特定し、前記第1オフセット量及び前記第2オフセット量の平均値を、前記記憶素子と前記再生素子との間のオフセット量として決定することを特徴とする付記10又は11記載の記憶装置のオフセット量決定方法。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】実施例1のHDD装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施例1のHDD装置内部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】実施例1のHDD装置の磁気ヘッド部の記憶素子及び再生素子の位置関係を端的に示す説明図である。
【図4】実施例1のHDD装置に実装するDTM内部のトラック配置構成を端的に示す説明図である。
【図5】実施例1のHDD装置の第1オフセット量決定処理に関わる制御回路の処理動作を示すフローチャートである。
【図6】実施例1のHDD装置の第1オフセット量決定処理の再生素子の再生位置(オフセット量)及び再生出力(TAA)を端的に示す説明図である。
【図7】実施例2のHDD装置内部の概略構成を示すブロック図である。
【図8】実施例2のHDD装置に実装するDTM内部のオフセット量測定領域内部のトラック配置構成を端的に示す説明図である。
【図9】実施例2のHDD装置に実装するDTMの電子線露光処理を実行する電子線露光処理装置内部の概略構成を示すブロック図である。
【図10】実施例2のDTM製造工程を示すフローチャートである。
【図11】実施例2のHDD装置の第2オフセット量決定処理に関わる制御回路の処理動作を示すフローチャートである。
【図12】実施例2のHDD装置の第2オフセット量決定処理の再生素子の再生位置(オフセット量)及び再生出力(TAA)を端的に示す説明図である。
【図13】実施例3のHDD装置に実装するDTM内部の一部領域のトラック配置構成を端的に示す説明図である。
【図14】一般的なDTM内部のデータトラック及びサーボパターンの配置を端的に示す平面模式図である。
【図15】一般的なDTM内部のトラック及びガード帯の配置関係を端的に示す一部破断した模式図である。
【図16】一般的なBPM内部のトラック及びガード帯の配置関係を端的に示す一部破断した模式図である。
【符号の説明】
【0131】
1 HDD装置
1A HDD装置
3 DTM
3A DTM
3B DTM
4 磁気ヘッド部
4A 記憶素子
4B 再生素子
8 制御回路
12 サーボ制御部
15 メイン制御部
21 書き込み制御部
21A 書込み制御部
22 再生制御部
22A 再生制御部
23 ピーク値記憶部
24 オフセット量決定部
31 データトラック
32 サーボパターン
33 トラック
34 ガード帯
35 オフセット量測定領域
35A 補正用オフセット量測定領域
36 横断トラック
36A 補正用横断トラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック及び、これら複数のデータトラック間に配置し、前記データトラックの位置情報を再生可能にするサーボパターンを含むトラックと、隣接するトラック間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置し、磁気ヘッド部の記憶素子と再生素子との間のオフセット量を測定するためのオフセット測定データに関わる前記記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断するように横断トラックを形成したオフセット量測定領域を有する磁気記憶媒体を回転駆動する回転駆動制御部と、
前記磁気記憶媒体に対して、前記磁気ヘッド部をトラッキング方向に移動制御する磁気ヘッド駆動制御部と、
オフセット量測定開始信号を検出すると、前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと共に、前記トラッキング方向での前記記憶素子の書き込み位置を記憶する書き込み制御部と、
前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御部を通じて前記磁気ヘッド部の前記再生素子の中心位置を、前記書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力する再生制御部と、
前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の再生位置として特定し、前記記憶素子の書き込み位置及び前記再生素子の再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離としてオフセット量を決定するオフセット量決定部と
を有することを特徴とする記憶装置の制御装置。
【請求項2】
前記横断トラックは、
前記ガード帯を介して隣接するトラック間を斜行方向に横断するように、前記オフセット量測定領域内部に配置したことを特徴とする請求項1記載の記憶装置の制御装置。
【請求項3】
前記磁気記憶媒体は、
前記オフセット量測定領域の他に、前記オフセット測定データに関わる前記記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断するように、前記横断トラックと左右対称の補正用横断トラックを形成した補正用オフセット量測定領域を有し、
前記書き込み制御部は、
前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込んで、前記記憶素子の書き込み位置を第1書き込み位置として記憶し、
前記再生制御部は、
前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御部を通じて前記再生素子の中心位置を、前記第1書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力し、
前記オフセット量決定部は、
前記横断トラックでの前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の第1再生位置として特定し、前記記憶素子の第1書き込み位置及び前記再生素子の第1再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離として第1オフセット量を特定し、
前記書き込み制御部は、
前記記憶素子を通じて前記補正用オフセット量測定領域上の前記補正用横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込んで、前記記憶素子の書き込み位置を第2書き込み位置として記憶し、
前記再生制御部は、
前記補正用横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御部を通じて前記再生素子の中心位置を、前記第2書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力し、
前記オフセット量決定部は、
前記補正用横断トラックでの前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の第2再生位置として特定し、前記記憶素子の第2書き込み位置及び前記再生素子の第2再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離として第2オフセット量を特定し、前記第1オフセット量及び前記第2オフセット量の平均値を、前記記憶素子と前記再生素子との間のオフセット量として決定することを特徴とする請求項1又は2記載の記憶装置の制御装置。
【請求項4】
データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック及び、これら複数のデータトラック間に配置し、前記データトラックの位置情報を再生可能にするサーボパターンを含むトラックと、隣接するトラック間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置した磁気記憶媒体であって、
この磁気記憶媒体の一部領域に、前記磁気記憶媒体にデータを書き込む記憶装置の記憶素子と前記磁気記憶媒体に書き込んだデータを再生する前記記憶装置の再生素子との間のオフセット量を測定する際に使用するオフセット量測定領域を配置し、
前記オフセット量を測定する際に、前記オフセット量測定領域上に前記記憶素子の中心位置でのオフセット測定データの書き込みを確保できるように、前記オフセット量測定領域内に、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断して、前記オフセット測定データの書き込み及び再生を可能にする横断トラックを配置したことを特徴とする磁気記憶媒体。
【請求項5】
前記横断トラックは、
前記ガード帯を介して隣接するトラック間を斜行方向に横断するように、前記オフセット量測定領域内部に配置したことを特徴とする請求項4記載の磁気記憶媒体。
【請求項6】
前記磁気記憶媒体の一部領域に、
前記オフセット量測定領域の他に、前記オフセット測定データに関わる前記記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断するように、前記横断トラックと左右対称の補正用横断トラックを形成した補正用オフセット量測定領域を有することを特徴とする請求項4又は5記載の磁気記憶媒体。
【請求項7】
データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック及び、これら複数のデータトラック間に配置し、前記データトラックの位置情報を再生可能にするサーボパターンを含むトラックと、隣接するトラック間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置し、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断して、オフセット測定データの書き込み及び再生を可能にする横断トラックを形成したオフセット量測定領域を備えた磁気記憶媒体と、
前記磁気記憶媒体にデータを書き込む記憶素子及び、前記磁気記憶媒体からデータを再生する再生素子を備えた磁気ヘッド部と、
前記磁気記憶媒体を回転駆動する回転駆動制御部と、
前記磁気ヘッド部をトラッキング方向に移動制御する磁気ヘッド駆動制御部と、
オフセット量測定開始信号を検出すると、前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと共に、前記トラッキング方向の前記記憶素子の書き込み位置を記憶する書き込み制御部と、
前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御部を通じて前記磁気ヘッド部の前記再生素子の中心位置を、前記書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力する再生制御部と、
前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の再生位置とし、前記記憶素子の書き込み位置及び前記再生素子の再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離としてオフセット量を決定するオフセット量決定部と
を有することを特徴とする記憶装置。
【請求項8】
前記横断トラックは、
前記ガード帯を介して隣接するトラック間を斜行方向に横断するように、前記オフセット量測定領域内部に配置したことを特徴とする請求項7記載の記憶装置。
【請求項9】
データの書き込み及び再生が可能な複数のデータトラック及び、これら複数のデータトラック間に配置し、前記データトラックの位置情報を再生可能にするサーボパターンを含むトラックと、隣接するトラック間を磁気的に分離するガード帯とを同心円状に交互に配置し、磁気ヘッド部の記憶素子と再生素子との間のオフセット量を測定するためのオフセット測定データに関わる前記記憶素子の中心位置での書き込みを可能にすべく、前記ガード帯を介して隣接するトラック間を横断するように横断トラックを形成したオフセット量測定領域を備えた磁気記憶媒体を回転駆動する回転駆動制御ステップと、
前記磁気記憶媒体に対して、前記磁気ヘッド部をトラッキング方向に移動制御する磁気ヘッド駆動制御ステップと、
オフセット量測定開始信号を検出すると、前記記憶素子を通じて前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部にオフセット測定データを書き込むと共に、前記トラッキング方向での前記記憶素子の書き込み位置を記憶する書き込み制御ステップと、
前記オフセット量測定領域上の前記横断トラックの一部に前記オフセット測定データを書き込むと、前記磁気ヘッド駆動制御ステップを通じて前記磁気ヘッド部の前記再生素子の中心位置を、前記書き込み位置に関わる再生可能範囲内の再生位置に、所定距離単位で順次合わせて再生出力する再生制御ステップと、
前記再生位置毎の再生出力のピーク値の内、最大のピーク値に相当する再生位置を前記再生素子の再生位置とし、前記記憶素子の書き込み位置及び前記再生素子の再生位置に基づき、前記記憶素子と前記再生素子との間の移動距離としてオフセット量を決定するオフセット量決定ステップと
を含むことを特徴とする記憶装置のオフセット量決定方法。
【請求項10】
前記横断トラックは、
前記ガード帯を介して隣接するトラック間を斜行方向に横断するように、前記オフセット量測定領域内部に配置したことを特徴とする請求項9記載の記憶装置のオフセット量決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−283087(P2009−283087A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135742(P2008−135742)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】