説明

記録媒体、及びその製造方法

【課題】磁性体を含む記録媒体において、磁性体が外部から視認し難い記録媒体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】例えば、接着剤からなる接着剤層106を介して、第1原紙102と第2原紙104とが貼り合わされている。そして、接着剤層106に磁性体108が分散され、記録媒体100中にランダムに配置された状態で含ませる。なお、磁性体108は、製造条件により、記録媒体100中にランダムで配置される場合もあるし、所定の方向に配列されて配置される場合もある。また、図中では、磁性体108は接着剤層106のみに含まれているが、磁性体108は、製造時貼り合わせ後の押圧工程で、第1原紙102及び第2原紙104内にもめり込んで存在する場合もある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクやトナー等の一般的な記録材を用いた印刷が可能であると共に、磁気的あるいは電磁気的手段などにより検知可能な記録媒体、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータや複合機及びネットワークの普及により、膨大な情報の中から所望の情報を容易に取得し、取得した情報を印刷、複写することが可能となっている。
【0003】
そこで、情報が不正に複写もしくは印刷された印刷物が持ち出されることによって機密情報が漏洩することを防止するために情報のセキュリティーを強化した種々の装置や方法が提案されている。
【0004】
例えば、固有の識別情報が記録可能な磁性体を含む印刷用紙と、この識別情報を読み取って、印刷用紙に印刷された情報の正当性を判断する情報読取装置とを組合わせて利用することにより情報のセキュリティーを強化する方法が提案されている(特許文献1,2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−284053号公報
【特許文献2】特開2004−285524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、磁性体は可視光を透過しないのに対して、印刷用紙を構成するマトリックス材料であるパルプ材は可視光を透過する。加えて、磁性体材料は明度の低い黒っぽい色のものが多いのに対して、印刷用紙は、通常、白色を基調とするものが多く用いられる。それゆえ、印刷用紙中に含まれる磁性体が外部から容易に視認されてしまう。
【0007】
この場合、情報のセキュリティーを確保するための用紙であることが一見して判別できることになるために、機密情報の盗用を試みる者に対しては、容易に他の手段での盗用を許すことになり、情報セキュリティーの向上を図ることができず、機密情報の漏洩や改竄を招く恐れがある。
【0008】
従って、本発明は、上記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は、磁性体が外部から視認し難い記録媒体及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
本発明の記録媒体は、
第1原紙と、
第1原紙と張り合わされる第2原紙と、
第1原紙と第2原紙との間に介在し、且つ磁性体が含まれる接着剤層と、
を有することを特徴としている。
【0010】
本発明の記録媒体において、前記磁性体は、磁性ワイヤであることが好ましい。また、前記磁性媒体は、大バルクハウゼン効果を有することがよい。また、前記磁性体は、絶縁性を有する層により被覆されていることが好ましい。また、前記磁性体は、その外径が20〜50μmであることが好ましい。また、前記接着剤は、水溶性接着剤、特に澱粉系接着剤であることが好ましい。
【0011】
一方、本発明の記録媒体の製造方法は、
第1原紙の表面に、磁性体が含まれる接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を介して、第1原紙と第2原紙とを貼り合わせる工程と、
を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、磁性体が外部から視認し難い記録媒体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略することがある。
【0014】
図1は、実施形態に係る記録媒体を示す平面図である。図2は、図1のA−A断面図である。図3は、実施形態に係る記録媒体の製造装置を示す概略構成図である。
【0015】
実施形態に係る記録媒体100は、図1及び図2に示すように、接着剤からなる接着剤層106を介して、第1原紙102と第2原紙104とが貼り合わされている。そして、接着剤層106に磁性体108が分散され、記録媒体100中にランダムに配置された状態で含まれている。
【0016】
なお、磁性体108は、製造条件により、記録媒体100中にランダムで配置される場合もあるし、所定の方向に配列されて配置される場合もある。また、図中では、磁性体108は接着剤層106のみに含まれているが、磁性体108は、製造時貼り合わせ後の押圧工程で、第1原紙102及び第2原紙104内にもめり込んで存在する場合もある。
【0017】
このように、実施形態に係る記録媒体100は、磁性体108が第1原紙102と第2原紙104に挟まれるように存在することとなるため、記録媒体中に含まれる磁性体が、一般的な環境や使用条件下(例えば、通常の室内照明光や太陽光下で、机の上に置いたり、記録媒体を光に透かして見た場合等)においても外部から容易に視認され難くなっている。そして、記録媒体として、電子写真方式やインクジェット方式などにより良好な画像をも形成することも可能である。
【0018】
しかも、磁性体108は、接着剤層106に分散されているので、原紙中に含まれる場合に比べ分散性良く記録媒体中に内包されることとなり、検知能が非常に向上する。
【0019】
また、原紙として、透過性の低い材料を選択できること、また、透過性の低い接着剤を選択できるので、透過性を低くでき、より効果的に、磁性体を外部から容易に視認され難くすることができる。
【0020】
なお、単一工程で磁性体を漉き込む方法の場合、厚みや透過度(白色度)等、各紙層の選択に制限が課せられるのに対し、本発明では厚みや上述のように材料選択性につき制約が低減する。
【0021】
以下、各構成部材(材料)について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0022】
まず、磁性体について説明する。磁性体は、大バルクハウゼン効果を起こす特性を有する磁性材料からなるものであれば、その磁気的物性、組成、形状等は特に限定されるものではない。しかし、磁気的物性としては、ヒステリシスループがほぼ長方形で、保持力(Hc)が比較的小さいことが好ましい。
【0023】
また、磁性体の組成としては、例えば、磁性元素(例えば、Co、Fe、Ni)、遷移金属類及びガラス形成元素(例えばSi,B,C,P)を含む合金(例えば、Co系、Fe系、Ni系、これらの混合系などがあり、具体的にはCo−B―Si、Co−Fe―B−Siなど)が挙げられ、その構成元素の組成比率や製造方法を選択することにより様々な磁気特性をもつものが利用できる。なお、上記元素からなるアモルファス合金の色相はその元素の比率にさほど影響されない。
【0024】
磁性体の形状としては、大バルクハウゼン効果を起こすのに適した形状であれば特に限定されないが、大バルクハウゼン効果を起こすのには断面積に対して所定の長さが必要となってくることから、線状(ワイヤ状)や帯状であることが好ましく、ワイヤ状であることがより好ましい。
【0025】
磁性体は、記録媒体表面に磁性体が露出したり、表面近傍に位置しないように磁性体を分散させたりすることがよく、加えて、製造・取り扱い性等も優れている大きさであることがよい。一方、磁性体が大バルクハウゼン効果を有するためには、外径が10以上であることがよい。
【0026】
このため、例えば、厚みが80〜120μmの記録媒体に磁性体を内包させる場合、例えば、ワイヤ状の磁性体(磁性ワイヤ)では、その断面が円形で、その外径が10〜60μmが好ましく、より好ましくは15〜55μmであり、さらに好ましくは15〜35μmである。一方、ワイヤ状の磁性体(磁性ワイヤ)の長さは、外径に依存し、外径が10〜60μmの場合、10〜40mmであることが好ましく、より好ましくは10〜30mmであり、さらに好ましくは15〜25mmである。
【0027】
なお、磁性体は、接着剤中にそのまま分散させて用いることもできるが、絶縁性を有する層(以下、「絶縁層」と称する場合がある)により被覆されていることが好ましい。これは、磁性体が記録媒体内に入り込むことにより、記録媒体の体積抵抗値の低下させたり、仮に記録媒体表面に露出してしまった場合、電子写真記録工程における転写工程で、電気的なショートを引き起こす恐れがあるので、PPC用途への適用が困難となる場合や、大バルクハウゼン効果の発揮が阻害されてしまう場合があるためである。このような磁性体は、例えば、軟磁性を有するアモルファス磁性体を磁性コアとし、当該磁性コアを絶縁層で被覆したファイバー形状を有する複合材料となる。
【0028】
この絶縁層を構成する材料としては公知の絶縁性材料であれば特に限定されず、例えば、樹脂やガラス等が利用できる。なお、絶縁性材料として樹脂を用いる場合には耐熱性を有するポイリイミド樹脂等を用いることが好ましい。
【0029】
このような絶縁層は、その被覆効果を発現するために、2.5〜10μmの厚さを有することが好ましく、3.0〜8.0μmの厚さを有することがより好ましい。
【0030】
絶縁層の形成方法としては特に限定されず、絶縁層を形成する材料に応じてスパッタリングやCVD(Chemical Vapor Deposition)、真空蒸着等の気相成膜法や、浸漬塗布、ローラー塗布、スプレー塗布、ゾルゲル法を利用したコーティング等の液相成膜法のような公知の薄膜形成方法を適宜選択することができるが、均一且つより膜厚の薄い絶縁層を形成する上では気相成膜法の方が好ましい。なお、絶縁層の形成は磁性体のワイヤ化とほぼ同時に実施することもでき、例えば、溶融状態の磁性体材料をワイヤー状として加工した直後に、磁性体ワイヤの冷却も兼ねてCVD等の気相成膜法により絶縁層を形成することもできる。
【0031】
磁性体は、記録媒体をPPCの用途への適用する場合、トナーの定着のために、定着用のヒータ等を高熱部位を通過することが想定される。そのため、定着温度を考慮すると、磁性体のキュリー温度は200℃以上であることが好ましく、300℃以上あることがより好ましい。
【0032】
ここで、キュリー温度は次のようにして測定される。、飽和磁化の温度依存性曲線を採取し、飽和磁化=0となる温度を外挿することにより導出される。飽和磁化の温度依存性曲線を得るには、特開2003−302378に開示される装置を用いることができる。周辺温度を変えるためのヒータ等の温度制御装置、温度計、サンプル(本発明では磁性ワイア)に磁界を印加する励磁器、磁束検出器から構成される。本発明では、室温以上の温度領域にキュリー温度があるために、同図に示されている冷凍機等の冷却装置は不要である。
【0033】
磁性体は、磁性材料を溶融し、それを所望の断面形状に対応した形状の吐出口を通過させた後、冷却することにより得られる。具体的には、例えば、水中回転紡糸法などを用いることができる。
【0034】
また、磁性体及び絶縁層をほぼ同時に製造することもできる。例えば、溶融状態の磁性材料を、所望の断面形状を有するワイア状に加工した直後に、磁性体の冷却も兼ねてCVD等の気相成膜法により絶縁層を形成する方法を適用することができる。
【0035】
また、USP3,256,584に記載される製造方法(Taylor-Ulitovsky法)によって、ガラス(絶縁層)で被覆された磁性ワイアを製造することもできる。即ち、ガラス管内に金属合金をチャージして、ガラス管の先端を誘導コイルで過熱して融解し、金属融解物質の周囲を融解したガラスで被覆した状態を作り出し、それを冷却媒体で急冷する。これによりアモルファス磁性線をガラスで被覆した磁性体を得ることができる。
【0036】
磁性体の記録媒体中の包含量について、以下説明する。記録媒体中に、磁性体が、1〜30本包含されることが好ましく、より好ましくは3〜20本、より好ましくは5〜15本である。抄紙後、断裁されて、A4用紙及びA3用紙が製造される場合は、サイズの小さいA4用紙が、上記本数を含むものとする。従って、包含密度によって、包含量を規定することはできない。A4用紙より小さいサイズの用紙になれば、A4の場合の必要包含密度は増加するからである。
【0037】
仮に、記録媒体の大きさがA4紙の大きさ(297mm*210mm)で、ワイア長25mmの場合の必要包含密度を以下試算する。磁性体の記録媒体中への包含量は、0.0014〜0.0393本/cmであることが好ましく、より好ましくは0.00393〜0.0262本/cmであり、より好ましくは0.00655〜0.0196本/cmである。包含量を上記範囲とすることで、大バルクハウゼン効果を利用した検知が可能であると共に、記録媒体としての機能(被記録能や外観)を良好とすることができる。なお、ワイア長を25mmより短くした場合には、1本あたりの大バルクハウゼン信号量は減少するので、上記本数は増加することになる。
【0038】
次に、接着剤について説明する。接着剤としては、特に制限はないが、水溶性接着剤が好適に挙げられる。水溶性接着剤は、水溶性のため、水で容易に希釈できるので取り扱いが容易、機械を傷めることなく水で容易に洗浄できる、溶媒を使わないので火災の心配がない、臭いが少ない、生分解性があるため環境に優しい、紙のリサイクルに適しているため好適である。
【0039】
水溶性接着剤としては、澱粉系接着剤、ニカワ系接着剤、エマルジョン系接着剤、ガゼイン系接着剤が挙げられるが、澱粉系接着剤が好適に挙げられる。この澱粉系接着剤を用いると 低コストで、取扱いが一番容易のため好適である。
【0040】
ここで、澱粉系接着剤とは、澱粉を成分として含有する接着剤を指す。澱粉としては、ワンタンクもしくはツータンクのステインホール方式、プレミックス方式、ノーキャリアー方式等に使用できる澱粉でよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、コーンスターチ、馬鈴薯、タピオカ、小麦、甘藷等の澱粉、また、これらを常法に従って酸化、酸処理、エーテル化、エステル化、グラフト化した化工澱粉、これら澱粉を組み合わせたもの及び上記澱粉をα化した澱粉が使用できる。
【0041】
次に、第1原紙及び第2原紙(以下、まとめて「原紙」と称する)について説明する。原紙は、少なくともパルプ繊維を主原料とするものであり、以下に説明する原紙であってもよく、この表面に顔料やバインダーなどを処理した原紙であってもよい。
【0042】
原紙は、パルプ繊維を含むものであるが、パルプ繊維としては公知のものを用いることができ、具体的には、化学パルプ、具体的には広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等、木材及び綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプ等を使用できる。
【0043】
また、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及び、チップをやや軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ等も使用できる。これらはバージンパルプのみで使用してもよいし、必要に応じて古紙パルプを加えてもよい。
【0044】
特にバージンで使用するパルプは、塩素ガスを使用せず二酸化塩素を使用する漂白方法(Elementally Chlorine Free;ECF)や塩素化合物を一切使用せずにオゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(Total Chlorine Free;TCF)で漂白処理されたものであることが好ましい。
【0045】
また、古紙パルプの原料として、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙などの上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙;を配合することができる。
【0046】
古紙パルプとしては、古紙原料を、オゾン漂白処理又は過酸化水素漂白処理の少なくとも一方で処理して得られたものが望ましい。また、より白色度の高い原紙を得るためには、上記漂白処理によって得られた古紙パルプの配合率を50重量%以上100重量%以下とすることが望ましい。さらに資源の再利用という観点からは、古紙パルプの配合率を70重量%以上100重量%以下とすることがより望ましい。
【0047】
オゾン処理は、上質紙に通常含まれている蛍光染料等を分解する作用があり、過酸化水素処理は脱墨処理時に使用されるアルカリによる黄変を防ぐ作用がある。特にこの二つを組み合わせた処理によって古紙の脱墨を容易にするだけでなく、パルプの白色度も向上することが知られている。また、パルプ中の残留塩素化合物を分解・除去する作用もあるため、塩素漂白されたパルプを使用した古紙の有機ハロゲン化合物含有量低減において多大な効果を持つ。
【0048】
また、原紙には、不透明度、白さ及び表面性を調整するため、填料を添加することが好ましい。特に記録媒体中のハロゲン量を低減したい場合には、ハロゲンを含まない填料を使用することが好ましい。
填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の白色無機顔料、及びアクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、尿素樹脂、等の有機顔料を挙げることができる。また、古紙を配合する場合には、古紙原料に含まれる灰分を予め推定して添加量を調整する必要がある。
【0049】
更に、原紙には、内添サイズ剤を添加することが好ましい。内添サイズ剤としては、中性抄紙に用いられる、中性ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸(ASA)、アルキルケテンダイマー(AKD)、石油樹脂系サイズ剤が使用できる。
【0050】
また、原紙の表面をカチオン性に調整する場合には、カチオン性物質としては、例えば、親水性のカチオン樹脂等を表面に処理することができるが、このカチオン性樹脂の内部への浸透を抑制するためには、このカチオン性樹脂を塗布する前の用紙サイズ度は10秒以上60秒未満であることが好ましい。
【0051】
また、原紙には、必要に応じて紙力増強剤を内添あるいは外添することができる。紙力増強剤としては、でんぷん、変性でんぷん、植物ガム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ジアルデヒドでんぷん、ポリエチレンイミン、エポキシ化ポリアミド、ポリアミド・エピクロルヒドリン系樹脂、メチロール化ポリアミド、キトサン誘導体等が挙げられ、これらの材料を単独あるいは混合して使用することができる。
【0052】
また、この他にも、染料、pH調整剤等、通常の紙媒体に配合される各種助剤が適宜使用される。
【0053】
また、原紙に、必要に応じて表面サイズ液を表面処理したり、コート層を設けたりすることもできる。表面処理は、表面サイズ液や、コート層形成用の塗工液をサイズプレス、シムサイズ、ゲートロール、ロールコーター、バーコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、ブレードコーター等の通常使用されている塗布手段によって、原紙に塗布することにより行うことができる。s
【0054】
また、原紙には、より効果的に磁性体を外部から視認し難くするために、原紙上に、顔料及び接着剤を主成分とするコート層を必要に応じて設けることもできる。このコート層は、第1原紙及び第2原紙を貼り合わせた後に設けることがよい。
【0055】
このコート層に用いられる顔料としては、通常の一般塗被紙に用いられる顔料、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネーテッドクレー、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト等の鉱物質顔料や、ポリスチレン樹脂微粒子、尿素ホルムアルデヒド樹脂微粒子、微小中空粒子及びその他の有機系顔料等を単独あるいは複数組み合わせて使用することができる。
【0056】
コート層に用いられる接着剤としては、合成接着剤や天然系の接着剤が利用できる。
合成接着剤としては、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合及びポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等が挙げられる。これらの合成接着剤の中で目的に応じて、1種類以上を使用することができる。これらの接着剤は顔料100重量%当たり5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%程度の範囲で使用されることが好ましい。
【0057】
また、天然系接着剤として、酸化デンプン、エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプン、カゼイン、大豆たんぱく等の一般に知られた接着剤が挙げられる。これらの接着剤も顔料100重量%当たり0.1〜50重量%、より好ましくは2〜30重量%程度の範囲で使用される。
【0058】
また必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等、通常の塗被紙用顔料に配合される各種助剤が適宜使用される。
【0059】
上述したような成分を含むように調製された塗被組成物は一般の塗被紙製造に使用される塗被装置、例えばブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、カーテンコータ、ダイスロットコータ、グラビアコータ等を用いオンマシンあるいはオフマシンによって、原紙上に一層あるいは多層に分けて塗被することができる。なお、塗工量は一般的には乾燥重量で片面に5〜15g/m2程度となるように塗被されるが、本発明においては、外部から磁性体が視認し難くするために、前述の範囲より多めにしてもよい。
【0060】
塗被後の平滑化処理は、通常用いられる平滑化装置、例えば、スーパーカレンダー、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー等が用いられ、白紙光沢が30%以上になるように仕上げられることが好ましい。
【0061】
原紙の厚みは、記録媒体の厚みが80〜200μmが好適であるあることから、それぞれ20〜60μmが好ましく、より好ましくは30〜50μmであり、さらに好ましくは35〜50μmである。
【0062】
このような構成の記録媒体は、その用途は、特に限定されないが、例えば、電子写真用記録媒体、インクジェット用記録媒体などが挙げられる。例えば、電子写真用記録媒体に適用に適用する場合、例えば、22℃、55%RHの環境条件での表面電気抵抗率が1.0×10〜1.0×1011Ωの範囲で、22℃、55%RHの環境条件での体積電気抵抗率が1.0×1010〜1.0×1012Ω・cmの範囲にすることがよい。これにより、電子写真記録方式によって印刷した時にトナーの転写不良が発生せず、鮮明な画質が得ることができる。
【0063】
なお、上記表面電気抵抗率及び体積電気抵抗率を有する記録媒体は、例えば、特開2003−76051号公報に従って、各構成材料の選定を行うことで得ることができる。
【0064】
以下、実施形態に係る記録媒体の製造方法について説明する。実施形態に係る記録媒体は、第1原紙の表面に、磁性体が含まれる接着剤を塗布した後、接着剤を介して、第1原紙と第2原紙とを貼り合わせることで得られる。貼り合わせた後、押圧処理などの後工程を施してもよい。
【0065】
実施形態に係る記録媒体の製造方法に利用する製造装置としては、例えば、図3に示す製造装置が挙げられる。
【0066】
図3に示す記録媒体の製造装置は、接着剤を介して第1原紙10と第2原紙20とを貼り合わせるためのものである。図3に示すように、この製造装置は、第2原紙20を送り出しにより供給する第2原紙供給ロール21を供えており、ここから供給される第2原紙20は、その経路の途中で第1原紙10と貼り合わされた後、下流側に配置された巻き取りローラ40に巻き取られる。
【0067】
また、第2原紙供給ロール21と巻き取りローラ40との間には、第2原紙20に適度のテンションを付与するための複数のテンションローラ21a、21b、33a、33bを設けられている。
【0068】
第2原紙20の経路の下方には、第1原紙10を送り出しにより供給するための第1原紙供給ロール11と、送り出された第1原紙10に接着剤15を塗布する接着剤塗布部12とが配設されている。
【0069】
接着剤塗布部12は、回転によって第1原紙10に接着剤15を塗布する塗布ローラ13を備えており、この塗布ローラ13は接着剤15が収容された接着剤槽14中にその一部が浸されている。
【0070】
ここで、接着剤槽14に収容された接着剤15には、磁性体(不図示)が分散されている。接着剤15中への磁性体の分散は、接着剤槽14の底部に攪拌手段(不図示)を設けて、当該攪拌手段により接着剤15の流れを接着剤槽14底部から上部に向くようにする。攪拌手段としては、回転羽根、ジェット流、バブリング等がある。
【0071】
なお、接着剤15中における磁性体の重力落下による接着剤槽14底部への堆積が分散性を低下させる要因となるが、一度攪拌手段により上部に持ち上げられた磁性体は、接着剤の粘性により、ワイアの落下速度は低下し、水だけの場合より分散性は向上する。
【0072】
一方、塗布ローラ13の表面には、付着した接着剤15を部分的に掻き取る掻き取り部としてのドクターブレード16が当接している。ドクターブレード16は、第1原紙10と塗布ローラ13の接点13aの手前に配設されている。
【0073】
また、塗布ローラ13の上方には、貼り合わせ用ローラ31が設けられており、塗布ローラ13によって接着剤15を塗布された第1原紙10と、第2原紙20とが接する。また、貼り合わせ用ローラ31の下流側には、貼り合わせ用ローラ31と接点を持たない位置に押さえローラ32が設けられ、貼り合わせ用ローラ31から送られた第1原紙10及び第2原紙20を下方に押しつけるように配置されている。
【0074】
なお、貼り合わせ用ローラ31と押さえローラ32との間隔は、10〜50cm程度であれば、第1原紙10と第2原紙20とを確実に貼り合わせることができる。
【0075】
次に、第1原紙供給ロール11から供給された第1原紙10と、第2原紙供給ロール21から供給された第2原紙20とが貼り合わされ、磁性体が接着剤層に含まれる記録媒体100が形成される手順を説明する。
【0076】
第1原紙10は、第1原紙供給ロール11より送り出され、テンションローラ41a、41bを介して塗布ローラ13へと送られる。テンションローラ41a、41bは、供給される第1原紙10のテンション(張力)を一定に保ち、第1原紙10が拠れたり皺が生じないように、第1原紙10を支持する。
【0077】
塗布ローラ13の表面には、接着剤槽14中において付着した接着剤15(磁性体含む)がドクターブレード16によって余分な接着剤15(磁性体含む)を掻き取り、塗布ローラ13上の接点13aに接した第1原紙10の一方の面に一様に塗布される。
【0078】
こうして、第1原紙10は接着剤15(磁性体含む)が一様に塗布された後、接着剤15(磁性体含む)を塗布された面が外側となるように、貼り合わせ用ローラ31に巻き取られる。
【0079】
一方、第2原紙供給ロール21から送り出された第2原紙20は、テンションローラ21a、21bによって所定のテンションが付与された状態で貼り合わせ用ローラ31に送られる。貼り合わせ用ローラ31に巻き取られた第2原紙20は、貼り合わせ用ローラ31の上部31aで第1原紙10の接着剤15を塗布された面と接し、第2原紙20に接着する。
【0080】
続いて、貼り合わせ用ローラ31を通過した第1原紙10及び第2原紙20は、押さえローラ32によって押圧される。
【0081】
最後に、貼り合わせ用ローラ31及び押さえローラ32によって貼り合わせが確定した第1原紙10及び第2原紙20は、記録媒体100としてテンションローラ33a、33bを介して巻き取りローラ40によって巻き取られる。
【0082】
そして、巻き取られた記録媒体は、所定の大きさに断裁されて、使用される。なお、記録媒体の製造装置(製造方法)は上記に限られず、公知の装置(方法)により得ることができる。
【0083】
本実施形態に係る記録媒体は、公知の記録方法にて記録されるが、印刷された画質で表現された機密情報は、印刷された記録媒体が包含する磁性体からの磁気信号を検知することで、複写抑止にすることができ、また、同記録媒体を所定空間からの持ち出しを抑止することができる。なお、大バルクハウゼン効果を利用した信号検知に関しては、特開2003−308576に記載され、この記載に準じる。
【実施例】
【0084】
以下に、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
−磁性体−
磁性体としては、長さ25mm、直径27μmのFe−Co系アモルファス磁性体ワイヤ(Hc=19.1A/m)を準備した。この磁性体ワイヤは、灰黒色で、JIS Z 8729で規定されるL*a*b*表色系の色座標L*、a*、b*はそれぞれ、16.9、0.0、12.6である。
次に、この磁性体ワイヤに以下の手順で、厚みが約5μmの絶縁層と、厚みが約2μmのカモフラージュ層とを順次積層し、コーティング処理された磁性体ワイヤを得た。このコーティング処理後の磁性体ワイヤは白色である。
【0085】
−絶縁層の形成−
絶縁層は、溶融状態の磁性体材料をワイヤ状に加工した直後に、この磁性体ワイヤを密閉チャンバー内を通過させると同時にチャンバー内にてシリカ膜をCVD成膜することにより形成した。
【0086】
−原紙の作製−
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)80重量部と針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)10重量部と有機合成繊維(一般名:パラ型アラミド繊維、商品名:テクノーラ、帝人株式会社製)10重量部とを含むパルプスラリーをナイヤガラビータ(熊谷理機工業社製)で叩解して得られたろ水度430mlのパルプスラリーに、パルプ繊維固形分100重量部に対し、軽質炭酸カルシウム(タマパール TP−121、奥多摩工業(株)製)8重量部、硫酸アルミニウム0.5重量部、カチオン化デンプン(商品名:MS4600 日本食品化学工業(株)製)0.5重量部、アルケニル無水コハク酸(ファイブラン81、王子ナショナル(株)製)0.09重量部及び架橋剤(一般名:カルボジイミド系架橋剤、カルボジライトV−04)0.8重量部を添加し、これらの混合物を白水で希釈し、固形分濃度0.3重量%のパルプスラリーを調製した。
【0087】
このパルプスラリーを2時間攪拌した後、オリエンテッドシートフォーマー(熊谷理機工業社製)を用いて噴出圧力1.5kg/cm2、ドラムの回転速度を950m/minの条件で抄紙した後、2つの湿紙を重ねた。
【0088】
続いて、この2枚の湿紙を貼り合わせたものを角型シートマシンプレス2570(熊谷理機工業社製)を用いてプレス圧10kg/cm2で3分間プレスした。
【0089】
次いで、この湿紙に、酸化デンプン(エースB、王子コーンスターチ(株)製)を、塗布量が、乾燥重量で2.5g/m2になるように、サイズプレス装置で塗布し、乾燥後、マシンカレンダーにより王研式平滑度が30秒になるように平滑化処理を施し、坪量が約52g/m2の原紙を作製し、ロール状に巻き取った。
【0090】
−記録媒体の作製−
まず、接着剤として、孔部に貼合向上剤及び耐水化剤を担持させた有孔とうもろこし澱粉にキャリア澱粉分散液を加えて攪拌したものを用いた。当該澱粉系接着剤の水希釈液に上記磁性体を、A4サイズの用紙上で平均3〜20本の磁性ワイアが含まれるような配合量で分散した。配合量は、抄紙量、接着剤層の厚み等に依存する。
【0091】
そして、図3に示す製造装置に、磁性体入り接着剤、ロール状の原紙を2つ装着し、一方の原紙に接着剤を塗布した後、接着剤を介して他方の原紙を貼り合わせた。その後、所定の大きさに裁断し、記録媒体を得た。
【0092】
このようにして、記録媒体を得た。得られた記録媒体を目視にて磁性ワイアの視認性を評価したところ、磁性ワイアの埋設位置が殆ど判別できない程度に、視認困難性が実現できた。2つの原紙の中間に磁性ワイアが位置するので、視認困難性の安定度は良好である。
(比較例)
パルプスラリーに磁性体を上記A4サイズの用紙上で平均3〜20本の磁性ワイアが含まれるような配合量で配合した以外は、実施例1と同様にして抄紙を行い、2つの湿紙を得て、これをプレス、サイズプレス、平滑化処理を施して、ロール状に巻き取った後、所定の大きさに裁断し記録媒体を得た。
【0093】
このようにして、記録媒体を得た。得られた記録媒体を目視にて磁性ワイアの視認性をして評価したところ、2層の紙層内で磁性ワイアは、ランダムに配置し、時として表面近傍に位置することがあり、磁性ワイアの埋設位置が殆ど判別でき、視認困難性に欠けた。
【0094】
本実施例で作製された記録媒体は、検知能も高く、磁性体も目視し難いことがわかる。このように、本発明の記録媒体は、例えば、オフィスにおいて機密文書が記録でき、しかも、機密情報は、印刷された記録媒体が包含する磁性体からの磁気信号を検知することで、複写抑止にすることができたり、また、同記録用紙を所定空間からの持ち出しを抑止することができる。このように、しかも同文書の機密情報の漏洩を、一枚毎に抑止できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施形態に係る記録媒体を示す平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】実施形態に係る記録媒体の製造装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0096】
10 第1原紙
11 第1原紙供給ロール
12 接着剤塗布部
13a 接点
13 塗布ローラ
14 接着剤槽
15 接着剤
16 ドクターブレード
20 第2原紙
21 第2原紙供給ロール
21a、21b テンションローラ
31 貼り合わせ用ローラ
31a 貼り合わせ用ローラの上部
32 押さえローラ
33a、33b テンションローラ
40 巻き取りローラ
41a、41b テンションローラ
100 記録媒体
102 第1原紙
104 第2原紙
106 接着剤層
108 磁性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1原紙と、
第1原紙と張り合わされる第2原紙と、
第1原紙と第2原紙との間に介在し、且つ磁性体が含まれる接着剤層と、
を有することを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記磁性体は、磁性ワイヤであることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記磁性媒体は、大バルクハウゼン効果を有することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記磁性体は、絶縁性を有する層により被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項5】
前記磁性体は、その外径が20〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項6】
前記接着剤は、水溶性接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項7】
前記接着剤は、澱粉系接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項8】
第1原紙の表面に、磁性体が含まれる接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を介して、第1原紙と第2原紙とを貼り合わる工程と、
を有することを特徴とする記録媒体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−169837(P2007−169837A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370044(P2005−370044)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】