説明

記録媒体の製造方法、記録媒体

【課題】インク吸収性が良好で、耐傷性や光沢性に優れ、更に発色性、耐粉落ちの良好な記録媒体とその製造方法を提供することである。
【解決手段】支持体の少なくとも一方の面に設けられた1層以上のインク受容層に、最表層用塗工液を塗工して最表層を形成する工程を有し、前記1層以上のインク受容層のうち前記最表層に最も近いインク受容層がアルミナ水和物及びバインダーを含む記録媒体の製造方法であって、前記最表層用塗工液は、単分散性で平均粒径が30nm以上60nm以下の球状のカチオン性コロイダルシリカ粒子と、ケン化度が75モル%以上85モル%以下、かつ粘度平均重合度が1500以上2200以下のポリビニルアルコールと、平均粒径が10nm以上100nm以下のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子とを含むことを特徴とする記録媒体の製造方法。その製造方法から得られる記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録媒体などの記録媒体の製造方法及び係る記録媒体の製造方法によって得られる記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録媒体のインク受容層には、より微細なシリカ粒子やアルミナ水和物粒子等の無機顔料をポリビニルアルコール等のポリマーバインダーで保持したものが用いられるようになってきている。無機顔料のなかでも、アルミナ水和物はシリカに対し、少ないバインダー量で受容層を形成できるため、インク吸収性に優れる。一方で、アルミナ水和物を用いた場合は、インク受容層の耐傷性が低下する場合がある。このような現象に対し、これまでにも下記に示すような提案があった。
【0003】
例えば、特開平7−76162号公報では、ベーマイト構造を有するアルミナ受容層上にコロイダルシリカと水溶性バインダーとからなるシリカゲル層を設けたインクジェット記録材料が提案されている(特許文献1)。また、特開2000−247022号公報では、ベーマイト構造を有するアルミナ受容層上にコロイダルシリカと樹脂エマルションとからなる多孔質層を設けた記録媒体が提案されている(特許文献2)。また、特開平7−101142号公報ではコロイド粒子と高分子ラテックスとからなる光沢発現層を設けたインクジェット記録シートが提案されている(特許文献3)。また、特開2007−136777号公報では微細顔料とバインダーとからなる光沢保護層を設けたインクジェット記録シートが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−76162号公報
【特許文献2】特開2000−247022号公報
【特許文献3】特開平7−101142号公報
【特許文献4】特開2007−136777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記提案はいずれも耐傷性や光沢性を改善するものであるが、近年の更なる高速印字化及び高画質化に伴い、これらの技術革新に適応し得るインク吸収性、発色性及び耐粉落ちを、耐傷性や光沢性と同時に達成することができない場合がある。このため、未だ課題が残っていると思われる。
【0006】
本発明の目的は、耐傷性や光沢性に優れ、インク吸収性が良好で、更に発色性、耐粉落ちの良好な記録媒体とその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、支持体の少なくとも一方の面に設けられた1層以上のインク受容層に、最表層用塗工液を塗工して最表層を形成する工程を有し、前記1層以上のインク受容層のうち前記最表層に最も近いインク受容層がアルミナ水和物及びバインダーを含む記録媒体の製造方法であって、
前記最表層用塗工液は、
単分散性で平均粒径が30nm以上60nm以下の球状のカチオン性コロイダルシリカ粒子と、
ケン化度が75モル%以上85モル%以下、かつ粘度平均重合度が1500以上2200以下のポリビニルアルコールと、
平均粒径が10nm以上100nm以下のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子と
を含むことを特徴とする記録媒体の製造方法である。
また、本発明は、係る記録媒体の製造方法によって得られる記録媒体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、耐傷性や光沢性に優れ、インク吸収性が良好で、更に発色性、耐粉落ちの良好な記録媒体とその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の記録媒体の製造方法は、支持体の少なくとも一方の面に設けられた1層以上のインク受容層の上に、最表層用塗工液を塗工して最表層を形成する工程を含む。また、1層以上のインク受容層のうち最表層に最も近いインク受容層がアルミナ水和物及びバインダーを含む。更に、本発明の記録媒体の製造方法は、支持体の少なくとも一方の面にアルミナ水和物及びバインダーを含むインク受容層用塗工液を塗工することでインク受容層が形成されることを好ましい態様として含む。
【0010】
<支持体>
支持体としては、例えば、キャストコート紙、バライタ紙、レジンコート紙(両面がポリオレフィンなどの樹脂で被覆された樹脂皮膜紙)などの紙類、フィルムなどを好適に用いることができる。
【0011】
このフィルムとしては例えば、下記の透明な熱可塑性樹脂フィルムを使用することができる。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート。これ以外にも、適度なサイジングが施された紙である無サイズ紙やコート紙、無機物の充填もしくは微細な発泡により不透明化されたフィルムなどのシート状物質(合成紙など)を使用できる。また、ガラスまたは金属などシートを使用しても良い。
【0012】
更に、これらの支持体とインク受容層との接着強度を向上させるため、支持体の表面にコロナ放電処理や各種アンダーコート処理を施すことも可能である。上述した支持体の中でも、レジンコート紙を用いることが好ましい。レジンコート紙を用いることで、記録媒体の光沢感等の品位をより向上させることができる。
【0013】
記録媒体として銀塩写真と同等の画質と風合いを付与する場合において、支持体として好ましく用いられる原紙としては、以下のものが挙げられる。すなわち、少なくともインク受容層が設けられる一方の面(表面側)をポリオレフィン樹脂で被覆したポリオレフィン樹脂被覆紙が好ましく、より好ましくは両面を被覆したポリオレフィン樹脂被覆紙である。前記ポリオレフィン樹脂被覆紙は、JIS−B0601による10点平均粗さが0.5μm以下で、かつJIS−Z−8741による60度鏡面光沢度が25%以上75%以下であることが好ましい。
【0014】
また、樹脂被覆紙の厚さには特に制限はないが、25μm以上500μm以下であることが好ましい。樹脂被覆紙の厚さが25μm以上であれば、記録媒体の剛性が低くなることを優れて防ぎ、その記録媒体を手にした時の感触や質感の劣化及び不透明性の低下などの不都合が生じるのを優れて抑制することができる。また、樹脂被覆紙の厚さが500μm以下であれば、記録媒体が剛直になり扱いにくくなることを優れて抑制し、プリンターでの給紙走行をスムーズに行うことができる。樹脂被覆紙の厚さのより好ましい範囲は50μm以上300μm以下である。
【0015】
また、樹脂被覆紙の坪量にも特に制限はないが、25g/m2以上500g/m2以下であることが好ましい。なお、本発明に用いる支持体は、表面の平滑性の観点から、樹脂被覆紙、即ち、非透気性の支持体であることが好ましい。
【0016】
<インク受容層>
本発明においては、インク受容層は、支持体の片面もしくは両面に形成される。また、本発明において、1層以上のインク受容層のうち、最表層に最も近いインク受容層は、アルミナ水和物及びバインダーを含む。従って、本発明は、例えば、支持体側から見て、支持体、アルミナ水和物及びバインダーを含むインク受容層、最表層の順に各層が設けられた記録媒体を好適に製造することができる。
【0017】
なお、最表層に最も近いインク受容層以外のインク受容層は、インクジェット記録媒体等の記録媒体の分野で公知のインク受容層から必要に応じて選択して用いることができ、また最表層に最も近いインク受容層と同じ組成とすることもできる。このため、本発明においては、上記した例において、支持体、コロイダルシリカ粒子及びバインダーを含むインク受容層、アルミナ水和物及びバインダーを含むインク受容層、最表層の順に各層が設けられた記録媒体も、好適に製造することができる。
【0018】
1層以上のインク受容層を形成する際に用いる塗工液の絶乾塗工量の総量は、必要なインク吸収容量や、光沢度、受容層の組成等によって異なるが、5g/m2以上50g/m2以下であることが好ましい。
【0019】
[インク受容層用塗工液]
本発明においては、アルミナ水和物及びバインダーを含むインク受容層用塗工液を塗工して、1層以上のインク受容層のうちの最表層に最も近いインク受容層を形成することが好ましい。インク受容層用塗工液を支持体上に塗工する方法としては、公知の任意の塗工方法が適用できる。例えば、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンダイコーティング法、スロットダイコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ロールコーティング法などの塗工方法による塗布が可能である。
【0020】
2層以上のインク受容層は、各層を形成するための塗工液を逐次塗工したり、同時に多層塗工したりすることで形成することができる。特にスライドビードによる同時多層塗工は生産性が高く、好ましい方法である。
【0021】
インク受容層を形成した後、即ち、インク受容層用塗工液を塗工した後、熱風乾燥機、熱ドラム、遠赤外線乾燥機などの乾燥装置を用いて乾燥することで、インク受容層を硬化させることが好ましい。また、画像の解像度及び搬送性などを向上させる目的で、本発明の効果を妨げない範囲内で、カレンダーやキャストなどの装置を用いて平滑化処理してもよい。
【0022】
1層のインク受容層を有する記録媒体を製造する場合、インク受容層用塗工液の絶乾塗工量は、必要なインク吸収容量や、光沢度、受容層の組成等によって異なるが、5g/m2以上50g/m2以下であることが好ましい。5g/m2以上であれば、インク吸収性の低下を抑制することができ、50g/m2以下であれば、折り割れ強度の低下を抑制することができる。
【0023】
以下、最表層に最も近いインク受容層に着目し、このインク受容層の形成に用いる塗工液に含有する各成分について詳しく説明する。
【0024】
(アルミナ水和物)
インク受容層用塗工液中に添加するアルミナ水和物としては、例えば、下記一般式(X)により表されるものを好適に用いることができる。
【0025】
Al23-n(OH)2n・mH2O・・・・(X)
(上記式中、nは0、1、2及び3の何れかを表し、mは0以上10以下、好ましくは0以上5以下の数を表す。但し、mとnは同時に0にはならない。)
mH2Oは、多くの場合、結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数または整数でない値をとることができる。また、アルミナ水和物を加熱するとmは0の値になることもあり得る。本発明において、インク受容層用塗工液中の全固形分に対するアルミナ水和物の含有量は、70質量%以上95質量%以下であることが好ましい。また、インク受容層用塗工液を塗工して形成するインク受容層中のアルミナ水和物の含有量は、係る塗工液中の全固形分に対するアルミナ水和物の固形分の含有量と等しくなる。すなわち、インク受容層中の全固形分に対するアルミナ水和物の含有量は、70質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0026】
アルミナ水和物の結晶構造としては、熱処理する温度に応じて、非晶質、キブサイト型、ベーマイト型が知られており、これらのうち、何れの結晶構造のものも使用可能である。これらの中で好適なアルミナ水和物は、X線回折法による分析でベーマイト構造、または非晶質を示すアルミナ水和物である。具体例としては、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されたアルミナ水和物を挙げることができる。さらに、アルミナ水和物としては、市販のDisperal HP14(商品名、サソール社製)等を挙げることができる。なお、アルミナ水和物は2種以上を併用してもよい。
【0027】
アルミナ水和物のBET法により測定されるBET比表面積は、100m2/g以上200m2/g以下であることが好ましい。より好ましくは、前記BET比表面積が125m2/g以上175m2/g以下である。BET比表面積が100m2/g以上200m2/g以下であるアルミナ水和物を用いることで、インク受容層の平均細孔半径が7nm以上10nm以下とすることができる。インク受容層の平均細孔半径が、7nm以上10nm以下であることによって、優れたインク吸収性及び発色性を発揮することが可能となる。また、インク受容層の平均細孔半径が7nm以上であれば、インク受容層のインク吸収性の低下を抑制することができる。また、インク受容層の平均細孔半径が10nm以下であれば、良好な発色性を得ることができる。本発明においては、インク受容層の平均細孔半径は、8.0nm以上、10nm以下であることが好ましい。
【0028】
なお、上記BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。このBET法では、通常、吸着気体として窒素ガスが用いられ、吸着量を被吸着気体の圧力または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられる。この際、多分子吸着の等温線を表すものとして最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であって、BET式と呼ばれ比表面積決定に広く用いられている。上記BET法では、BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けることにより比表面積が得られる。BET法では、窒素吸着脱離法の測定において、ある相対圧力における吸着量の関係を数点測定し、最小二乗法によりそのプロットの傾き、切片を求めることで比表面積を導き出す。このため、測定の精度を上げるためには、相対圧力と吸着量の関係は少なくとも5点測定しておくことが好ましく、より好ましくは10点以上であるのが良い。
【0029】
また、上記の平均細孔径とは、記録媒体を窒素吸着脱離法によって測定された、窒素ガスの吸着脱離等温線よりBJH(Barrett−Joyner−Halenda)法を用いて求められる値である。具体的には、平均細孔径とは、窒素ガス脱離時に測定される全細孔容積と比表面積から計算によって求まる値である。
【0030】
なお、記録媒体を窒素吸着脱離法により測定した場合には、インク受容層以外の部分に対しても測定が行われることとなる。しかし、インク受容層以外の成分(例えば、支持体のパルプ層、樹脂被覆層等)は窒素吸着脱離法で一般的に測定できる範囲である1nm以上100nm以下の細孔を持っていない。このため、記録媒体全体を窒素吸着脱離法で測定した場合であっても、インク受容層の平均細孔径を測定していることとなると考えられる。なお、このことは、レジンコート紙を窒素吸着脱離法で細孔分布を測定した場合、1nm以上100nm以下の細孔を有していないことからも理解できる。
【0031】
アルミナ水和物として、平均アスペクト比が3.0以上10以下、かつ、平板面の縦横比が0.60以上1.0以下であるアルミナ水和物を用いることが好ましい。なお、アスペクト比は、特公平5−16015号公報に記載された方法により求めることができる。すなわち、アスペクト比は、粒子の「厚さ」に対する「直径」の比で示される。ここで「直径」とは、アルミナ水和物を顕微鏡または電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を示す。また、平板面の縦横比とは、アスペクト比と同様に、粒子を顕微鏡で観察した場合の、平板面の最大値を示す直径に対する最小値を示す直径の比を示す。
【0032】
上記アスペクト比が3.0以上10以下となるアルミナ水和物を使用した場合、形成したインク受容層の細孔分布範囲が狭くなることを優れて抑制することができる。このため、アルミナ水和物微粒子の粒子径を揃えて製造することが可能となる。また、同様に、上記縦横比が0.60以上1.0以下となるアルミナ水和物を使用した場合も、インク受容層の細孔径分布が狭くなることを優れて抑制することができる。
【0033】
また、アルミナ水和物は、平板状であることが好ましい。Rocek J.らにより、「Applied Catalysis」、1991年、74巻、p29〜36に掲載されているように、アルミナ水和物には繊毛状と、繊毛状でない形状のものがあることが知られている。本発明者らの知見によれば、同じアルミナ水和物であっても、平板状のアルミナ水和物の方が、繊毛状のアルミナ水和物よりも分散性が良い。また、繊毛状のアルミナ水和物は、塗工時に支持体の表面に対して平行に配向する傾向があり、形成されるインク受容層の細孔が小さくなる場合があり、インク受容層のインク吸収性が小さくなることがある。これに対して、平板状のアルミナ水和物は、塗工時に支持体の表面に対して平行に配向する傾向が小さく、形成されるインク受容層の細孔の大きさやインク吸収性へ特に良い影響を及ぼす。
【0034】
(アルミナ水和物を含む分散液)
アルミナ水和物は、解膠剤で解膠された水性分散液の状態でインク受容層用塗工液に含まれることが好ましい。本発明においては、アルミナ水和物が前記解膠剤で解膠された水性分散液を、アルミナ水和物分散液と呼ぶこととする。また、アルミナ水和物を含む分散液には必要に応じて顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、界面活性剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候材料等を含むことができる。また、アルミナ水和物を含む分散液の分散媒には、水を用いることが好ましい。本発明では、上記解膠剤として酸(解膠酸)を用いることが好ましい。解膠酸は下記一般式[I]で表されるスルホン酸が耐画像にじみの観点で好ましい。
一般式[I] R1−SO3H、
〔一般式[I]において、R1は炭素数1以上3以下の分岐もしくは非分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。ただしR1は、オキソ基、ハロゲン原子、アルコキシ基(−OR)及びのアシル基(R−CO−)のうちの少なくとも一つを置換基として有しても良い。これらの置換基中のRは水素原子または炭素数1以上2以下のアルキル基を表す。ただし、置換基がアルコキシ基の場合は、Rは水素原子ではない。〕
【0035】
(バインダー)
インク受容層用塗工液はバインダーを含有する。バインダーとしては、上記アルミナ水和物を結着し、被膜を形成する能力のある材料であって、且つ、本発明の効果を損なわないものであれば、特に制限なく利用することができる。
【0036】
バインダーとしては例えば、下記のものを挙げることができる。酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉等の澱粉誘導体。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体。カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白及びポリビニルアルコールならびにその誘導体。各種重合体として、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役重合体ラテックス。アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体等のアクリル系重合体ラテックス。エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス。上記の各種重合体のカルボキシル基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス。カチオン基を用いて上記各種重合体をカチオン化したもの、カチオン性界面活性剤を用いて上記各種重合体の表面をカチオン化したもの。カチオン性ポリビニルアルコール下で上記各種重合体を重合し、重合体の表面にポリビニルアルコールを分布させたもの。カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で上記各種重合体の重合を行い、重合体の表面にカチオン性コロイド粒子を分布させたもの。メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化合成樹脂等の水性バインダー。ポリメチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルやアクリル酸エステルの重合体及び共重合体樹脂。ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の合成樹脂系バインダー。
【0037】
上記バインダーは、単独で、または複数種を混合して用いることができる。中でも最も好ましく用いられるバインダーはポリビニルアルコール(PVA)である。このポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルを加水分解して合成することができる。ポリビニルアルコールの粘度平均重合度は1500以上であることが好ましく、粘度平均重合度が2000以上5000以下であることがより好ましい。また、ポリビニルアルコールのケン化度は80モル%以上100モル%以下であることが好ましく、85モル%以上100モル%以下であることがより好ましい。本発明において、インク受容層用塗工液中のポリビニルアルコールの含有量は、アルミナ水和物の固形分100質量部に対し、固形分で5質量部以上30質量部以下であることが好ましい。また、この他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールや、アニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを使用することができる。
【0038】
(架橋剤)
インク受容層用塗工液には、架橋剤を添加することができる。架橋剤の具体的な例としては、アルデヒド系化合物、メラミン系化合物、イソシアネート系化合物、ジルコニウム系化合物、アミド系化合物、アルミニウム系化合物、ホウ酸、及びホウ酸塩が挙げられる。また、架橋剤はこれらの少なくとも1種類であることが好ましい。これらの中でも、架橋剤は架橋速度及び塗工面のひび割れ防止の観点から、ホウ酸あるいはホウ酸塩が特に好ましい。使用できるホウ酸としては、オルトホウ酸(H3BO3)だけでなく、メタホウ酸や次ホウ酸等も挙げられる。ホウ酸塩としては、上記ホウ酸の水溶性の塩であることが好ましい。具体的には、下記のホウ酸のアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。ホウ酸のナトリウム塩(Na247・10H2O、NaBO2・4H2O等)、ホウ酸のカリウム塩(K247・5H2O、KBO2等)等のアルカリ金属塩。ホウ酸のアンモニウム塩(NH449・3H2O、NH4BO2等)。ホウ酸のマグネシウム塩やカルシウム塩。
【0039】
これらのホウ酸及びホウ酸塩の中でも、インク受容層用塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の点からオルトホウ酸を用いることが好ましい。また、インク受容層用塗工液中のホウ酸及びホウ酸塩の含有量は、インク受容層用塗工液中のバインダー全質量に対して10.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
【0040】
上記ホウ酸及びホウ酸塩の含有量が50.0質量%以下であれば、塗工液の経時安定性が低下することを優れて抑制することができる。一般的に、記録媒体を生産する際には、塗工液を長時間に渡って使用することとなる。上記合計固形分が50.0質量%以下であれば、インク受容層用塗工液を長時間使用した場合であっても、ホウ酸の含有量が多い場合に生じる、塗工液の粘度の上昇や、ゲル化物の発生を抑制することができる。このため、塗工液の交換やコーターヘッドの清掃等を頻繁に行なわずに済み、生産性の低下を抑制することができる。更に、上記ホウ酸及びホウ酸塩の含有量が50.0質量%以下であれば、インク受容層に点状の表面欠陥が生じ易くなることを抑制し、均質で特に良好な光沢面を得ることができる。また、上記ホウ酸及びホウ酸塩の含有量が10.0質量%以上であれば、クラック発生を良好に抑制できる。
【0041】
(その他添加剤)
インク受容層用塗工液には、必要に応じて各種の添加剤、例えば各種カチオン性樹脂等の定着剤、多価金属塩等の凝集剤、界面活性剤、蛍光増白剤、増粘剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、防腐剤、pH調節剤、その他本発明の技術分野で公知の各種助剤を添加することが可能であり、またその添加量も適宜調整することができる。カチオン性樹脂の例としてはポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリジアリルアミン系樹脂、ジシアンジアミド縮合物等が挙げられる。これらの水溶性樹脂は、それぞれ単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。
【0042】
<最表層用塗工液>
本発明の最表層用塗工液は、単分散性で平均粒径が30nm以上60nm以下の球状のカチオン性コロイダルシリカ粒子と、ケン化度が75モル%以上85モル%以下、かつ粘度平均重合度が1500以上2200以下のポリビニルアルコールと、平均粒径が10nm以上100nm以下のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子とを含む。本発明においては、上記した最表層用塗工液を、アルミナ水和物及びバインダーを含むインク受容層の上に塗工することで、最表層を形成することができる。また、形成された最表層を硬化する方法としては、特に限定されず、インク受容層を硬化させる際に用いることのできる公知の乾燥方法を、好適に用いることができる。尚、本発明においては、本発明の効果を損なわない限り、最表層の上に更に別の層を設けてもよい。
【0043】
最表層用塗工液の塗工方式には、インク受容層用塗工液の塗工に用いられる各種の塗工方式を用いることができる。また、最表層用塗工液は、インク受容層を形成するのと同時、形成されたインク受容層を半硬化したとき、形成されたインク受容層を硬化した後、のいずれのタイミングでも塗工可能であるが、インク受容層と最表層とが混合されるのを避けるために、インク受容層を硬化した後に塗工するのが好ましい。最表層用塗工液の絶乾塗工量は、0.1g/m2以上0.5g/m2未満であることが好ましく、0.2g/m2以上0.4g/m2未満であることがより好ましい。塗工量が0.1g/m2以上であれば、耐傷性が特に良好であり、0.5g/m2未満であれば、インク吸収性が特に良好である。
【0044】
なお、最表層用塗工液には、カチオン性コロイダルシリカ粒子、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子のほかに、増粘剤、消泡剤、ドット調整剤、防腐剤、pH調整剤、帯電防止剤、導電剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0045】
(カチオン性コロイダルシリカ粒子)
本発明の最表層用塗工液はカチオン性コロイダルシリカ粒子、すなわちカチオン性コロイダルシリカの固形分を含む。本発明においては、カチオン性コロイダルシリカ粒子を含む最表層用塗工液を得るために、カチオン性コロイダルシリカ、即ち、カチオン性コロイダルシリカ粒子を含む分散液を好適に使用することができる。カチオン性コロイダルシリカを含む最表層用塗工液をインク受容層に塗工(塗布)することで、カチオン性コロイダルシリカ粒子を含む最表層を形成することができる。
【0046】
カチオン性コロイダルシリカ粒子は、アニオン性コロイダルシリカ粒子の表面に有機、無機の各種の表面処理をしてカチオン性にすることで調製することができる。中でも、分散液の安定性及び入手の容易性の観点から、アルミナによって表面処理されたカチオン性コロイダルシリカ粒子を用いることが好ましい。コロイダルシリカ粒子がカチオン性であることで、インク受容層にカチオン性コロイダルシリカ粒子を含む塗工液を塗布した場合に、インク受容層表面での塗工液の凝集を抑制することができ、発色性が良好になる。逆にアニオン性のコロイダルシリカ粒子を含む塗工液を塗布した場合は、インク受容層表面で塗工液の凝集が起こり、発色性が低下する。
【0047】
また、本発明に用いるカチオン性コロイダルシリカ粒子は、単分散性で、球状である。なお、前記単分散性とは、分散液(カチオン性コロイダルシリカ)中で複数の粒子が会合していないことを意味し、すなわち、単分散性のカチオン性コロイダルシリカは、いわゆるカチオン性コロイダルシリカ粒子の会合の無いものである。数珠状等の、会合しているカチオン性コロイダルシリカ粒子を用いた場合、光沢性が低下する。
【0048】
また、ここでいう球状とは、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した粒子の写真(50個以上100個以下の粒子を観察)から、粒子の長径aと短径b(各々、平均値である)を求め、短径と長径の比b/aが0.80以上1.00以下の範囲に入るものである。短径と長径の比b/aは0.90以上1.00以下であることが好ましく、さらに0.95以上1.00以下がであることがより好ましい。b/aが0.80未満であると、光沢性が低下する。
【0049】
また、本発明に用いるカチオン性コロイダルシリカの粒子の平均粒径は30nm以上60nm以下である。前記カチオン性コロイダルシリカ粒子の平均粒径が30nm未満ではインク吸収性が低下し、60nmより大きい場合は光沢性が特に低下する。尚、本発明に用いるカチオン性コロイダルシリカ粒子の平均粒径は、以下のような方法により算出することができる。具体的には、まず、カチオン性コロイダルシリカ粒子の比表面積を、上記アルミナ水和物の比表面積を求める方法と同様の方法、即ち、BET法で測定する。次に、JIS K0061に記載の方法で、カチオン性コロイダルシリカ粒子の真比重を求める。その後、得られたカチオン性コロイダルシリカ粒子の比表面積S(m2/g)と、真比重ρ(g/cm3)とを下記式(A)に代入することで、カチオン性コロイダルシリカ粒子の平均粒径を算出することができる。
平均粒径(D)nm=6000/(S×ρ)・・・・(A)
本発明に用いるカチオン性コロイダルシリカとしては、例えば、日産化学工業製のスノーテックスAK−L(商品名)等が挙げられる。
【0050】
最表層用塗工液中の固形分全質量に対するコロイダルシリカ粒子の含有量は、70質量%以上95質量%以下であることが好ましい。本発明において、最表層用塗工液中の固形分とは、最表層用塗工液を乾燥することで水や溶媒を除去した後に残存する固体のことを指す。そのため、最表層用塗工液中の固形分全質量とは、最表層用塗工液中のコロイダルシリカ粒子の質量、ポリビニルアルコールの質量及びカチオン性ポリウレタンエマルション粒子の質量の合計の質量を少なくとも含む。なお、最表層用塗工液を塗工することで形成される最表層中のコロイダルシリカ粒子の含有量は、最表層用塗工液中の全固形分に対するコロイダルシリカ粒子の含有量と等しくなる。すなわち、最表層中の全固形分に対するコロイダルシリカ粒子の含有量は、70質量%以上95質量%以下であることが好ましい。70質量%以上であると、インク吸収性が劣化することを優れて抑制することができる。また、95質量%以下であると、最表層が剥離する現象である粉落ちが発生することを優れて抑制することができる。
【0051】
(ポリビニルアルコール)
本発明に用いる最表層用塗工液は、ケン化度が75モル%以上85モル%以下であり、かつ粘度平均重合度が1500以上2200以下のポリビニルアルコールを含む。ケン化度が75モル%より低い場合は水溶性が低下し扱いにくい。ケン化度が85モル%より高い場合は、最表層の塗工液の塗布時にカチオン性コロイダルシリカ粒子の凝集が不均一なものとなり、発色性が低下する。また、粘度平均重合度が1500より小さい場合は塗膜強度が低下し、粘度平均重合度が2200より大きい場合は、発色性が低下する。ポリビニルアルコールのケン化度とは、JIS−K6726の方法で測定した値である。化学的には、ポリ酢酸ビニルをケン化してポリビニルアルコールを得た際の、ケン化反応によって生じた水酸基のモル数の割合である。また、ポリビニルアルコールの平均重合度とは、JIS−K6726(1994)に記載の方法で求めた粘度平均重合度のことをいう。
【0052】
最表層用塗工液中のポリビニルアルコールの含有量は、前記カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、3質量部以上13質量部以下であることが好ましい。更に好ましくは4質量部以上9質量部以下である。3質量部以上であれば、塗膜強度が低下することを優れて抑制することができ、13質量部以下であれば、発色性や吸収性が低下することを優れて抑制することができる。本発明に用いるポリビニルアルコールとしては、クラレ社製のPVA417及び420(商品名)等が挙げられる。
【0053】
(カチオン性ポリウレタンエマルション粒子)
本発明の最表層用塗工液は、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子を含む。本発明においては、エマルション状態のカチオン性ポリウレタンと、係るカチオン性ポリウレタンを分散している分散媒とを合わせたものをカチオン性ポリウレタンエマルションとする。また、エマルション状態のカチオン性ポリウレタン、即ち、分散質をカチオン性ポリウレタンエマルション粒子とする。カチオン性ポリウレタンエマルション粒子に代えてアニオン性のポリウレタンエマルション粒子を添加すると、発色性が低下し、水溶性のポリウレタンを添加すると、光沢性を十分に向上させることができない。カチオン性ポリウレタンエマルション粒子を最表層用塗工液に含ませる方法としては特に限定されないが、カチオン性ポリウレタンがエマルションの状態で分散媒に分散した、カチオン性ポリウレタンエマルションを最表層用塗工液に添加することが好ましい。
【0054】
カチオン性ポリウレタンエマルション粒子、即ち、カチオン性ポリウレタンエマルション中の分散質の平均粒径は、10nm以上、100nm以下であり、好ましくは、10nm以上、70nm以下である。前記粒径が10nm以上であれば、光沢性が良好であり、100nm以下であれば、発色性が良好である。なお、カチオン性ポリウレタンエマルションの粒子の平均粒径とは、動的光散乱法によって測定され、「高分子の構造(2)散乱実験と形態観察 第1章 光散乱」(共立出版 高分子学会編)、あるいはJ.Chem.Phys.,70(B),15 Apl.,3965(1979)に記載のキュムラント法を用いた解析から求めた平均粒径である。カチオン性ポリウレタンエマルション粒子を上記カチオン性コロイダルシリカ粒子及び上記ポリビニルアルコールと組み合わせて用いると、発色性が特に良好になる。本発明に用いるカチオン性ポリウレタンエマルションとしては、例えば、第一工業製薬製のスーパーフレックス600、610、620、650(商品名)や、DIC株式会社製のハイドランCP−7030、7050、7060(商品名)等が挙げられる。
【0055】
・ポリウレタンについて
以下にカチオン性ポリウレタンを製造する際に用いるポリウレタンについて説明する。
【0056】
本発明に用いるカチオン性ポリウレタンに適用可能なポリウレタンとしては、例えば、以下に挙げるジオール化合物とジイソシアネート化合物とを種々組み合わせて、重付加反応により合成されたポリウレタンが挙げられる。上記ポリウレタンの合成に使用可能なジオール化合物、ジイソシアネート化合物は、各々1種を単独で使用してもよい。また、種々の目的(例えば、ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整や溶解性の向上、バインダーとの相溶性付与、分散物の安定性改善等)に応じて、各々2種以上を任意の割合で使用することもできる。
【0057】
上記ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,2−ジメチルー1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3,3−ジメチルー1,2−ブタンジオール、2−エチル−2−メチルー1,3−プロパンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチルー2,4−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、4,4’―ジヒドロキシ−ジフェニル−2,2−プロパン、4,4’―ジヒドロキシフェニルスルホン等が挙げられる。
【0058】
上記ジイソシアネート化合物としては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート,1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート,m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等が挙げられる。
【0059】
・カチオン性ポリウレタンについて
カチオン性ポリウレタンエマルションに使用するカチオン性基含有ポリウレタン(カチオン性ポリウレタン)は、例えば、上記ポリウレタンの合成時に、カチオン性基を有するジオールを使用することによって得ることができる。この場合、カチオン性基はポリマー主鎖の置換基としてポリウレタンに導入することで、カチオン性ポリウレタンを合成できる。上記カチオン性ポリウレタンのカチオン性基は、種々の方法でポリウレタンに導入することができる。ポリウレタンを重付加反応により製造後、ポリウレタンの末端に残存する−OH基またはアミノ基等の反応性基に対し、カチオン性基含有化合物等を反応させることによってカチオン性基を導入し、カチオン性ポリウレタンを合成することもできる。なお、前記カチオン性基含有化合物としては、1〜3級アミン、4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0060】
上記カチオン性ポリウレタン中のカチオン性基の含有量は、0.1mmol/g以上3mmol/g以下であることが好ましく、0.2mmol/g以上2mmol/g以下であることがより好ましい。なお、上記カチオン性ポリウレタン中のカチオン性基の含有量が0.1mmol/g以上であれば、カチオン性ポリウレタンの分散安定性の低下を抑制し、3mmol/g以下であれば、バインダーとの相溶性の低下を抑制することができる。
【0061】
上記カチオン性ポリウレタンの質量平均分子量(Mw)としては、1000以上200000以下であることが好ましく、2000以上50000以下であることがより好ましい。前記質量平均分子量が1000以上であれば、カチオン性ポリウレタンを特に安定な水分散物とすることができる。また前記質量平均分子量が200000以下であれば、溶解性の低下及び液粘度の増加を抑制し、カチオン性ポリウレタン水分散物中の粒子の平均粒子径を制御すること、特に100nm以下に制御することが難しくなるのを抑制することができる。
【0062】
・カチオン性ポリウレタンエマルションについて
カチオン性ポリウレタンエマルションの分散媒としては、水が好ましく用いられる。分散媒に水を用いたカチオン性ポリウレタンの水分散物(エマルション)の調整方法について以下に説明する。上記カチオン性ポリウレタンを分散媒である水と混合し、必要に応じて分散化剤などの添加剤を混合して、その混合液を分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径100nm以下のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子を含む水分散液、即ちカチオン性ポリウレタンエマルションを得ることができる。この水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミル、ビーズミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機が挙げられる。しかし、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子の分散を効率的に行うという観点から、媒体撹拌型分散機、コロイドミル分散機または高圧分散機(ホモジナイザー)を用いることが好ましい。
【0063】
最表層用塗工液中のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子の含有量は、上記カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、3質量部以上13質量部以下であることが好ましい。更に好ましくは4質量部以上9質量部以下である。3質量部以上であれば、光沢性及び耐傷性が低くなることを優れて抑制し、13質量部以下であれば、吸収性が低下することを優れて抑制することができる。
【0064】
また、最表層用塗工液中の全固形分に対する最表層用塗工液中のポリビニルアルコール及びカチオン性ポリウレタンエマルション粒子の総量は、あわせて6質量%以上、20質量%以下とすることが好ましい。6質量部以上であれば、光沢性及び耐傷性が低くなることを優れて防ぎ、20質量%以下であれば、吸収性が低下することを優れて抑制することができる。より好ましくは7質量%以上、15質量%以下であり、更に好ましくは8質量%以上、14質量%以下である。
【実施例】
【0065】
以下に実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定される物ではない。なお、以下の実施例及び比較例では、インクジェット記録媒体を作製した。
【0066】
(実施例1)
<支持体の作製>
下記条件にて支持体を作製した。まず、下記組成の紙料を固形分濃度が3質量%となるように水で調製した。
【0067】
(紙料組成)
・パルプ 100質量部
(濾水度450mlCSF(Canadian Standarad Freeness)の、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)80質量部、
及び濾水度480mlCSFの、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)20質量部)。
・カチオン化澱粉 0.60質量部。
・重質炭酸カルシウム 10質量部。
・軽質炭酸カルシウム 15質量部。
・アルキルケテンダイマー 0.10質量部。
・カチオン性ポリアクリルアミド 0.030質量部。
【0068】
次に、この紙料を長網抄紙機で抄造し3段のウエットプレスを行った後、多筒式ドライヤーで乾燥した。この後、サイズプレス装置で、塗工量が1.0g/m2となるように酸化澱粉水溶液を含浸させ、乾燥させた。この後、マシンカレンダー仕上げをして、坪量170g/m2、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mNの基紙Aを得た。
【0069】
得られた基紙A上に、低密度ポリエチレン(70質量部)と、高密度ポリエチレン(20質量部)と、酸化チタン(10質量部)とからなる樹脂組成物を25g/m2塗布した。更に、その基紙Aの裏面に、高密度ポリエチレン(50質量部)と、低密度ポリエチレン(50質量部)とからなる樹脂組成物を、25g/m2塗布することにより、樹脂被覆した非透気性支持体1を得た。
【0070】
(インク受容層用の塗工液)
純水中に、無機アルミナ水和物の微粒子としてアルミナ水和物DisperalHP14(商品名、サソール社製)を添加し、固形分濃度が30質量%のアルミナ水和物分散液を得た。次に、このアルミナ水和物分散液中のアルミナ水和物に対して、質量割合{(メタンスルホン酸の質量/アルミナ水和物の質量)×100}が1.7質量%となる量のメタンスルホン酸を加えて、攪拌し、コロイダルゾルAを得た。得られたコロイダルゾルAに界面活性剤として、サーフィノール465(商品名、日信化学工業社製)を、コロイダルゾルAに対して0.10質量%となる量添加した。更に、アルミナ水和物が21質量%となるように適宜、純水で希釈してコロイダルゾルBを得た。
【0071】
一方、バインダーとして、ポリビニルアルコールPVA235(商品名、クラレ(株)製、粘度平均重合度:3500、ケン化度:88モル%)をイオン交換水に溶解して、固形分濃度8.0質量%のPVA水溶液を得た。
【0072】
続いて、上記コロイダルゾルBに前記PVA水溶液を、アルミナ水和物の固形分に対して、PVA固形分換算((PVAの固形分質量/アルミナ水和物の固形分質量)×100)が9.0質量%となる量加えて、混合した。次に、3.0質量%ホウ酸水溶液を、アルミナ水和物の固形分に対してホウ酸固形分換算で1.0質量%になる量加えて混合し、インク受容層形成用の塗工液を得た。
【0073】
(インク受容層の塗工方法)
前記非透気性支持体1上に、前記インク受容層用塗工液を絶乾塗工量が40g/m2となるように塗工した。なお、インク受容層の塗工液の塗布には、スライドダイを用いて40℃で行った。次に、これを40℃で乾燥して、一層のインク受容層を有するインク受容層シート1を作成した。
【0074】
(最表層用塗工液の作成)
単分散性で球状のカチオン性コロイダルシリカ粒子の20質量%水分散スラリー(商品名:スノーテックスAK−L、日産化学工業社製)と、ポリビニルアルコールの8質量%水溶液(商品名:PVA420、クラレ社製)と、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子の30質量%エマルション(商品名:スーパーフレックス620、第一工業製薬社製)を混合した。このとき、混合液中のカチオン性コロイダルシリカ粒子が90質量部、ポリビニルアルコールが5質量部、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子が5質量部となるように、各液を混合した。得られた溶液中の固形分の濃度は0.5質量%であった。また、カチオン性コロイダルシリカ粒子のBET法から求めた比表面積は、61m2/gであり、JIS K0061に記載の方法で求めた真比重は2.2g/cm3であった。得られた比表面積S、真比重ρ及び下記式(A)を用いて平均粒径を算出したところ、45nmであった。
平均粒径(D)nm=6000/(S×ρ)・・・・(A)
また、ポリビニルアルコールはケン化度80モル%、かつ粘度平均重合度が2000であり、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子の平均粒径は30nmであった。
【0075】
得られた混合液に、界面活性剤(商品名:ノイゲンTDX50、第一工業製薬社製)を塗工液全量に対する固形分で0.005質量%となるように添加し、最表層用塗工液を得た。得られた最表層用塗工液中のポリビニルアルコールの含有量は、カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、5.6質量部であった。また、最表層用塗工液中のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子の含有量は、カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、5.6質量部であった。なお、上記したカチオン性コロイダルシリカの20質量%水分散スラリー中のカチオン性コロイダルシリカ粒子を、走査型電子顕微鏡を用いて写真撮影し、100個の粒子を観察し、粒子の長径aと短径b(各々、平均値である)を求めた。その結果、短径と長径の比b/aは0.91であった。
【0076】
(最表層の形成)
上記最表層用塗工液を、絶乾塗工量が0.1g/m2となるように上記インク受容層シート1のインク受容層上にスライドダイにて塗布し、更に60℃で乾燥を行いインクジェット記録媒体1を得た。
【0077】
(実施例2)
最表層用塗工液の絶乾塗工量を0.2g/m2とした以外は実施例1と同様の操作を行いインクジェット記録媒体2を得た。
【0078】
(実施例3)
最表層用塗工液の絶乾塗工量を0.4g/m2とした以外は実施例1と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体3を得た。
【0079】
(実施例4)
最表層用塗工液中の、カチオン性コロイダルシリカ粒子を92質量部、ポリビニルアルコールを4質量部、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子を4質量部とした以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体4を得た。得られた最表層用塗工液中のポリビニルアルコールの含有量は、カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、4.3質量部であった。また、最表層用塗工液中のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子の含有量は、カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、4.3質量部であった。
【0080】
(実施例5)
最表層用塗工液中の、カチオン性コロイダルシリカ粒子を86質量部、ポリビニルアルコールを7質量部、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子を7質量部とした以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体5を得た。得られた最表層用塗工液中のポリビニルアルコールの含有量は、カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、8.1質量部であった。また、最表層用塗工液中のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子の含有量は、カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、8.1質量部であった。
【0081】
(実施例6)
最表層用塗工液中の、カチオン性コロイダルシリカ粒子を83質量部、ポリビニルアルコールを7質量部、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子を10質量部とした以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体6を得た。得られた最表層用塗工液中のポリビニルアルコールの含有量は、カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、8.4質量部であった。また、最表層用塗工液中のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子の含有量は、カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、12質量部であった。
【0082】
(実施例7)
最表層用塗工液中のポリビニルアルコールを、ケン化度80モル%、粘度平均重合度1700のポリビニルアルコールに変更した。具体的には、ポリビニルアルコールの水溶液(商品名:PVA417、クラレ社製)を、PVA420(商品名、クラレ社製)の代わりに用いた。それ以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体7を得た。
【0083】
(実施例8)
最表層用塗工液中のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子を、平均粒径が10nmのカチオン性ポリウレタンエマルション粒子に変更した。具体的には、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子の26質量%エマルション(商品名:スーパーフレックス650、第一工業製薬社製)を、スーパーフレックス620(商品名、第一工業製薬社製)の代わりに用いた。それ以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体8を得た。
【0084】
(実施例9)
最表層用塗工液中のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子を、平均粒径が70nmのカチオン性ポリウレタンエマルション粒子に変更した。具体的には、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子の21質量%エマルション(商品名:ハイドランCP−7060、DIC社製)をスーパーフレックス620(商品名、第一工業製薬社製)の代わりに用いた。それ以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体9を得た。
【0085】
(実施例10)
最表層用塗工液中の、カチオン性コロイダルシリカ粒子を94質量部、ポリビニルアルコールを3質量部、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子を3質量部とした以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体10を得た。得られた最表層用塗工液中のポリビニルアルコールの含有量は、カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、3.2質量部であった。また、最表層用塗工液中のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子の含有量は、カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、3.2質量部であった。
【0086】
(実施例11)
最表層用塗工液の絶乾塗工量を0.05g/m2とした以外は実施例1と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体11を得た。
【0087】
(実施例12)
最表層用塗工液の絶乾塗工量を0.5g/m2とした以外は実施例1と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体12を得た。
【0088】
(実施例13)
最表層用塗工液中の、カチオン性コロイダルシリカ粒子を80質量部、ポリビニルアルコールを10質量部、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子を10質量部とした以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体13を得た。得られた最表層用塗工液中のポリビニルアルコールの含有量は、カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、12.5質量部であった。また、最表層用塗工液中のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子の含有量は、カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、12.5質量部であった。
【0089】
(比較例1)
最表層用塗工液を塗工しなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体14を得た。
【0090】
(比較例2)
最表層用塗工液中のカチオン性コロイダルシリカ粒子を90質量部、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子を10質量部とし、ポリビニルアルコール水溶液を加えなかった。それ以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体15を得た。
【0091】
(比較例3)
最表層用塗工液中のカチオン性コロイダルシリカ粒子を90質量部、ポリビニルアルコールを10質量部とし、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子を加えなかった。それ以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体16を得た。
【0092】
(比較例4)
最表層用塗工液中のポリビニルアルコールをケン化度が88モル%であるポリビニルアルコールに変更した。具体的には、ポリビニルアルコールの水溶液(商品名:PVA220、クラレ社製)をPVA420(商品名、クラレ社製)の代わりに用いた。それ以外は実施例2と同様の操作を行いインクジェット記録媒体17を得た。
【0093】
(比較例5)
最表層用塗工液中のポリビニルアルコールを粘度平均重合度が2400であるポリビニルアルコールに変更した。具体的には、ポリビニルアルコールの水溶液(商品名:PVA424、クラレ社製)を、PVA420(商品名、クラレ社製)の代わりに用いた。それ以外は実施例2と同様の操作を行いインクジェット記録媒体18を得た。
【0094】
(比較例6)
最表層用塗工液中のポリビニルアルコールを、粘度平均重合度が500であるポリビニルアルコールに変更した。具体的には、ポリビニルアルコールの水溶液(商品名:PVA405、クラレ社製)を、PVA420(商品名、クラレ社製)の代わりに用いた。それ以外は実施例2と同様の操作を行いインクジェット記録媒体19を得た。
【0095】
(比較例7)
最表層用塗工液中のカチオン性コロイダルシリカ粒子(平均粒径45nm)を、平均粒径が15nmのカチオン性コロイダルシリカ粒子に変更した、具体的には、カチオン性コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスAK、日産化学工業社製)を、スノーテックスAK−L(商品名、日産化学工業社製)の代わりに用いた。それ以外は、実施例2と同様の操作を行いインクジェット記録媒体20を得た。
【0096】
(比較例8)
最表層用塗工液中のカチオン性コロイダルシリカ粒子(平均粒径45nm)を、平均粒径が70nmのカチオン性コロイダルシリカ粒子に変更した。具体的には、カチオン性コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスAK−YL、日産化学工業社製)を、スノーテックスAK−L(商品名、日産化学工業社製)の代わりに用いた。それ以外は、実施例2と同様の操作を行いインクジェット記録媒体21を得た。
【0097】
(比較例9)
最表層用塗工液中のカチオン性コロイダルシリカ粒子を、単分散性でなく、数珠状に会合したカチオン性コロイダルシリカ粒子に変更した。具体的には、カチオン性コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスPS−S−AK、日産化学工業社製)を、スノーテックスAK−L(商品名、日産化学工業社製)の代わりに用いた。また、数珠状のコロイダルシリカを構成する粒子1つ当たりの平均粒径を上記式(A)を用いて求めたところ、10nmであった。それ以外は、実施例2と同様の操作を行いインクジェット記録媒体22を得た。
【0098】
(比較例10)
最表層用塗工液中のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子をアニオン性ポリウレタンエマルション粒子に変更した。具体的には、アニオン性ポリウレタンエマルション粒子の20質量%エマルション(粒径が30nm)(商品名:スーパーフレックス840、第一工業製薬社製)を、スーパーフレックス620(商品名、第一工業製薬社製)の代わりに用いた。それ以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体23を得た。
【0099】
(比較例11)
最表層用塗工液中のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子を、平均粒子径が220nmのカチオン性ポリウレタンエマルション粒子に変更した。具体的には、カチオン性ポリウレタンエマルション粒子の30質量%エマルション(商品名:ハイドランCP−7040、DIC社製)をスーパーフレックス620(商品名、第一工業製薬社製)の代わりに用いた。それ以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体24を得た。
【0100】
(比較例12)
最表層用塗工液中のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子をSBRラテックスエマルション粒子に変更した。具体的には、SBRラテックスエマルション粒子の20質量%エマルション(商品名:スマーテックスPA−3232、日本エイアンドエル社製)を、スーパーフレックス620(商品名、第一工業製薬社製)の代わりに用いた。それ以外は、実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体25を得た。
【0101】
(比較例13)
最表層用塗工液中のカチオン性コロイダルシリカ粒子をアニオン性コロイダルシリカ粒子に変更した。具体的には、アニオン性コロイダルシリカ粒子の20質量%分散スラリー(商品名:スノーテックス20L、日産化学工業製)を、スノーテックスAK−L(商品名、日産化学工業社製)の代わりに用いた。それ以外は実施例2と同様の操作を行い、インクジェット記録媒体26を得た。
【0102】
(比較例14)
最表層用塗工液中のポリビニルアルコールを粘度平均重合度が500でケン化度が74%であるポリビニルアルコールに変更した。具体的にはポリビニルアルコールの水溶液(商品名:PVA505、クラレ社製)を、PVA420(商品名、クラレ社製)の代わりに用いた。それ以外は実施例2と同様の操作を行いインクジェット記録媒体27を得た。
【0103】
(記録媒体の評価)
次に、上記した方法によって得られた記録媒体のそれぞれに対して以下の評価を行った。評価方法、及び評価結果について説明する。評価結果の一覧を表1に示す。
【0104】
評価1 記録媒体の20°光沢度
各記録媒体の記録面(インク受容層(及び最表層)を作製した面)の20°光沢度をJIS−Z8741に記載の方法で、それぞれ測定し、以下の評価基準に基づき評価した。装置は、日本電色工業(株)製VG2000(商品名)を用いた。表1に評価結果を示す。
【0105】
・評価基準
5:50以上、
4:40以上50未満、
3:30以上40未満、
2:20以上30未満、
1:20未満。
【0106】
評価2 インク吸収性の評価
各記録媒体の記録面(インク受容層(及び最表層)を有する面)のインク吸収性をそれぞれ評価した。印字はiP4600(商品名、キヤノン(株)製)の印字処理方法を改造した装置を使用した。印字パターンは、Green色の64階調のベタ(6.25%Duty刻みで64階調、0〜400%Duty)を使用した。具体的には、0%Dutyから400%Dutyまで、6.25%ずつDutyを変更した、Dutyの異なる64種類の1平方インチのベタ画像を形成した。各ベタ画像は、キャリッジ速度が25インチ/秒で、往復2回のパスで印字が完了する双方向印字で形成した。なお、上記したベタ画像を形成する際における、400%Dutyとは、解像度が600dpiのインクジェットヘッドを用いて、1/600平方インチあたりに44ngのインクを付与することを意味する。インク吸収性とビーディングはほぼ相関性があるため、ビーディングを評価することによって、記録媒体のインク吸収性を評価した。評価は目視で行い、下記の評価基準に基づきランクを決定した。表1からわかるように、本発明の記録媒体は、次世代の高速印字プリンターの印字速度であっても、十分使用可能なインク吸収性を有する。
【0107】
・評価基準
A:300%Dutyでビーディングが観察されない。
B:300%Dutyではビーディングがやや観察されるものの、200%Dutyではビーディングが観察されない。
C:200%Dutyでもビーディングが観察される。
【0108】
評価3 耐傷性
各記録媒体をそれぞれJIS−L0849に定めた学振型摩擦試験機II型(テスター産業社製)を用いて、以下のようにそれぞれ耐傷性を評価した。振動台に試料片として前記記録媒体を記録面(インク受容層(及び最表層)の面)側が上になるようにセットして、100gの重りをのせた試験機の摩擦子にキムタオル(商品名)を装着し、前記記録媒体と5回こすり合わせた。この後、記録媒体の記録面のキムタオルとこすり合わせた部分と、それ以外の部分との75°光沢の差を測定した。
【0109】
・評価基準
A:5未満、
B:5以上10未満、
C:10以上。
【0110】
評価4 耐粉落ち
各記録媒体をそれぞれJIS−L0849に定めた学振型摩擦試験機II型(テスター産業社製)を用いて、以下のように耐粉落ちを評価した。振動台に試料片として、前記記録媒体を記録面(インク受容層(及び最表層)の面)側が上になるようにセットして、300gの重りをのせた試験機の摩擦子に黒のラシャ紙を装着し、前記記録媒体と20回こすり合わせた。この後、記録媒体の記録面のラシャ紙とこすり合わせた部分(試験部)と、それ以外の部分との黒の反射濃度をそれぞれX−Rite社製310TR(商品名)で測定し、この濃度差から、黒の濃度残存率を下記式に従って求め、下記評価基準に基づいて評価した。
【0111】
・評価基準
A:残存率が98%以上、
B:残存率が95%以上98%未満、
C:残存率が95%未満。
残存率(%)=[(試験部の濃度)/(試験部以外の濃度)]×100。
【0112】
評価5 発色性
各記録媒体それぞれの記録面にインクジェット記録装置(商品名:iP4500、キヤノン(株)製)を用い、スーパーフォトペーパー、色補正なしモードにてブラックのパッチをベタ印字した。これらの光学濃度を光学反射濃度計(X−Rite社製、商品名:530分光濃度計)を用いてそれぞれ測定した。
【0113】
・評価基準
5:2.35以上、
4:2.25以上2.35未満、
3:2.15以上2.25未満、
2:2.05以上2.15未満、
1:2.05未満。
【0114】
【表1】

【0115】
表1の結果より、実施例1〜13の記録媒体は、20°光沢度が「4」以上、吸収性が「B」以上、耐傷性が「B」以上、粉落ちが「A」、発色性が「3」以上となっており、次世代の高速印字に良好に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも一方の面に設けられた1層以上のインク受容層に、最表層用塗工液を塗工して最表層を形成する工程を有し、前記1層以上のインク受容層のうち前記最表層に最も近いインク受容層がアルミナ水和物及びバインダーを含む記録媒体の製造方法であって、
前記最表層用塗工液は、
単分散性で平均粒径が30nm以上60nm以下の球状のカチオン性コロイダルシリカ粒子と、
ケン化度が75モル%以上85モル%以下、かつ粘度平均重合度が1500以上2200以下のポリビニルアルコールと、
平均粒径が10nm以上100nm以下のカチオン性ポリウレタンエマルション粒子と
を含むことを特徴とする記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記最表層に最も近いインク受容層は、アルミナ水和物及びバインダーを含むインク受容層用塗工液を塗工することで形成される請求項1に記載の記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記最表層用塗工液中の前記ポリビニルアルコールの含有量が、前記カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、4質量部以上9質量部以下である請求項1または2に記載の記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記最表層用塗工液中の前記ポリウレタンエマルション粒子の含有量が、前記カチオン性コロイダルシリカ粒子100質量部に対し、4質量部以上9質量部以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記最表層用塗工液の絶乾塗工量が0.2g/m2以上0.4g/m2未満である請求項1から4のいずれか1項に記載の記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記支持体が非透気性の支持体である請求項1から5のいずれか1項に記載の記録媒体の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の記録媒体の製造方法によって得られることを特徴とする記録媒体。

【公開番号】特開2011−140214(P2011−140214A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252746(P2010−252746)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】