記録媒体分離装置、定着装置及び画像形成装置
【課題】定着分離部における用紙端部での波うちを抑制してジャム発生を防止し、安定した用紙分離及び用紙搬送を行なう。
【解決手段】用紙分離装置70は、複数のエアノズル71および複数の分離板75を、定着ローラ(図示せず)長手方向に並設して設けている。複数のエアノズル71のうち、最も外側の2つの(両端部の)エアノズル71T,71Tを、分離板75よりも外側に配置して設ける。定着ニップから出てきた用紙先端部にエアノズル71から圧縮空気を噴射し、用紙を定着部材から分離させ、さらに分離板75で分離及びガイドして搬送する。端部エアノズル71T,71Tからの圧縮空気が用紙両端部を押さえることで、用紙端部における波打ちが抑制され、ジャムの発生を防止する。
【解決手段】用紙分離装置70は、複数のエアノズル71および複数の分離板75を、定着ローラ(図示せず)長手方向に並設して設けている。複数のエアノズル71のうち、最も外側の2つの(両端部の)エアノズル71T,71Tを、分離板75よりも外側に配置して設ける。定着ニップから出てきた用紙先端部にエアノズル71から圧縮空気を噴射し、用紙を定着部材から分離させ、さらに分離板75で分離及びガイドして搬送する。端部エアノズル71T,71Tからの圧縮空気が用紙両端部を押さえることで、用紙端部における波打ちが抑制され、ジャムの発生を防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気噴射による記録媒体分離を行う分離装置、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置において、用紙等の記録媒体(以下、用紙という)に転写されたトナー像を定着させる装置として、ハロゲンヒータ等の熱源により加熱される定着部材(例えば定着ローラ)と、当該定着部材を加圧する加圧部材(例えば加圧ローラ)で形成されたニップ部によって未定着トナー像を担持した用紙を挟持搬送しながら、加熱・加圧によりトナー像を用紙に定着させる熱定着装置が知られており、広く採用されている。
【0003】
定着部材として無端状の定着ベルトを用いるベルト定着装置も周知であり、定着ベルトの熱容量が小さいことからウォーミングアップタイムを短縮出来、省エネ性に優れるという利点を有している。
【0004】
以上のような熱定着装置においては、用紙に融着したトナー画像が定着ローラ/定着ベルトに接触するので、定着ローラ/定着ベルトは、離型性に優れたフッ素系樹脂を表面にコーティングされ、用紙分離には分離爪が用いられている。分離爪の大きな欠点はローラやベルトに接触するためにローラやベルトの表面に爪跡(爪キズ)をつけ易く、その場合には出力された画像にスジが発生するということである。
【0005】
一般的にモノクロ画像形成装置の場合、定着ローラは金属ローラの表面にテフロン(登録商標)コーティングしたものであり、分離爪が接触しても傷に成り難く、寿命も長かった。
【0006】
しかしながら、カラー画像形成装置の場合には、色の発色性をよくするために、表層をシリコーンゴムにフッ素コートしたもの(一般的には数十ミクロン程度のPFAチューブを使用する)か、シリコーンゴムの表面にオイルを塗布したものを使用している。ただ、このような構成では表層が軟らかく傷が付き易い。表層に傷がつくと定着画像にスジ状の傷が生じることから、今ではカラー画像形成装置では分離爪のような接触手段をほとんど用いず、大半は非接触分離を行っている。
【0007】
非接触分離では、トナーと定着部材との粘着力が高いと定着後の用紙がローラまたはベルトに巻きつくため、容易に巻きつきジャムが発生するようになる。特にカラー画像形成では何層ものトナー層が積層されており、粘着力が高まるために巻きつきジャムが発生しやすい。
【0008】
現在、カラー画像形成装置における用紙分離では主に次の方式が用いられている。
1)定着ローラ/ベルトとの間に微小なギャップ(約0.2mm〜1.0mm)を開け、定着ローラ/定着ベルトの長手方向及び幅方向に並行に延在する分離板を用いる非接触分離板方式。
2)定着ローラ/定着ベルトとの間に微小なギャップ(約0.2mm〜1.0mm)を開け、所定間隔で配された分離爪を用いる非接触分離爪方式。
3)用紙の腰の強さと定着ローラ/定着ベルトの湾曲部弾性とで自然に剥離させるようにしたセルフストリッピング方式。
【0009】
しかしながら、いずれの方式でも、定着出口と用紙案内板との隙間が開いているため、薄紙や先端余白が少ない用紙を通紙するとき、あるいは写真等のベタ画像を通紙するときは、用紙が定着ローラ/定着ベルトに密着したまま隙間を通過してしまい、用紙巻きつきジャムが発生したり、分離板や分離爪に突き当たってジャムが発生することがある。
【0010】
そこで、非接触の分離手段として、空気を用紙分離位置に吹き付けることが提案され、使用に供されている。たとえば、特開昭61−59468号公報(特許文献1)、特開昭60−247672号公報(特許文献2)、特許第2581429号公報(特許文献3)、特開2005−49647号公報(特許文献4)、特開2007−199462号公報(特許文献5)にそれぞれ開示されている。
【0011】
特許文献1には、圧縮空気を用紙と定着ローラとの間に噴射させることによって、分離が困難な場合(坪量の小さい用紙)でも、分離を行えることを特徴とした定着装置が提案されている。
【0012】
また、特許文献2には、円筒状の部材の軸方向に微小孔を複数配列し、圧縮空気を噴射し、記録媒体をローラから分離する機構や、微小孔を軸方向に2列開設し、用紙搬送速度のばらつきにも対応することが可能な機構をもつことを特徴とした定着装置が提案されている。
【0013】
また、特許文献3には、ノズルに空気溜り部を設けるとともに、噴射口の形状を噴射出口方向に徐々に拡大し、圧縮空気をノズル部材の中央をピークとした緩やかな圧力分布を持つ均一なジェット流となって吹き出すことを特徴とした定着装置が提案されている。
【0014】
また、特許文献4には、圧縮空気によって分離された記録媒体の搬送を行うために、ローラ近傍に分離後の記録媒体をスムーズに案内することが可能な分離板を提供することを特徴とした定着装置が提案されている。
【0015】
また、特許文献5には、記録媒体の進行に合わせて、圧縮空気をパルス周期で噴射することで、搬送ガイド部材に接触して起こる画像不良を防止することを特徴とした定着装置が提案されている。
【0016】
特許文献1に記載のエア分離機構(圧縮空気の力で記録媒体をローラから分離する機構)では、圧縮空気を噴射するノズルを設置し、定着ローラと加圧ローラとのニップ部出口から搬送される記録媒体に向けて圧縮空気を噴射して記録媒体をローラから分離する、というものである。
【0017】
しかしながら、図16のように、用紙が定着ローラに巻きつかずに分離され、ニップ部から搬送されるのは、用紙の坪量が大きく、用紙先端部ならびに用紙全体でのトナーの量が少なく、吸湿していない用紙の場合である。一方、用紙の坪量が小さく、用紙上に多量のトナーがあり、吸湿している、といった巻き付き易い条件では、ノズルから噴射する圧縮空気の圧力・流量が同じの場合、図17のように、用紙はニップ部出口から定着ローラに巻き付きながら分離・搬送され、必要以上にトナーに熱量が付与され、画像障害が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
巻き付きやすいローラに巻き付くことなく用紙を分離・搬送するためには、噴射する圧縮空気の圧力・流量を大きくする必要があるが、圧縮空気の圧力を大きくしすぎると、分離しやすい条件の(坪量が大きく、先端ならびに全体の未定着トナーが少なく、吸湿していない)用紙の挙動が不安定になり、搬送障害を引き起こしてしまう恐れがある。
【0019】
本発明は、エア噴射ノズルと分離板を備えた用紙分離装置における上述の問題を解決し、安定した用紙分離及び用紙搬送を行なうことのできる用紙分離装置および定着装置ならびに画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の課題は、本発明により、エアノズルと分離板とを有し、定着部材と加圧部材により形成される定着ニップ部から搬送されてくる記録媒体を前記定着部材又は前記加圧部材から分離させる記録媒体分離装置において、複数個の前記エアノズルと少なくとも1つの前記分離板とが前記定着部材長手方向に沿って並設されており、該部材列の前記定着部材長手方向における両端に前記エアノズルが配置されていることにより解決される。
【0021】
また、前記部材列の両端に配置された前記エアノズルは、当該記録媒体分離装置が装着される定着装置で通紙可能な最大サイズの記録媒体の幅方向両端部の位置と略一致するように配置されていると好ましい。
【0022】
また、前記部材列の両端に配置された前記エアノズルは、前記最大サイズの記録媒体の幅以内に配置されると好ましい。
また、前記部材列の両端に配置された前記エアノズルは、前記最大サイズの記録媒体よりも小さいサイズの記録媒体の中での最大サイズの定形紙の幅よりも外側に配置されていると好ましい。
【0023】
また、前記複数個のエアノズルは、当該記録媒体分離装置が装着される定着装置で使用される代表的なサイズの用紙を通紙した場合の用紙両端部に対応する位置に配置されたエアノズルを含むと好ましい。
【0024】
また、前記エアノズル及び前記分離板が、定着部材に対して非接触に支持されると好ましい。
また、前記エアノズル及び前記分離板は、定着部材に対するギャップを調整可能に設けられていると好ましい。
【0025】
また、前記エアノズル及び前記分離板は、少なくとも記録媒体に相対する表面がフッ素樹脂コートが施されていると好ましい。
また、前記エアノズル及び前記分離板は、フッ素樹脂材料で形成されていると好ましい。
【0026】
また、前記の課題は、本発明により、請求項1〜8のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置を備え定着装置により解決される。
また、前記の課題は、本発明により、請求項1〜8のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置または請求項9に記載の定着装置を備える画像形成装置により解決される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の分離装置および定着装置ならびに画像形成装置によれば、両端部のエアノズルを最も外側に(分離板よりも外側に)配置して設けたことにより、通紙可能な最大サイズの用紙を分離する場合でも、用紙端部での波うちを抑制してジャム発生を防止することができ、安定した用紙分離及び用紙搬送を実現することができる。
【0028】
また、小サイズ用紙の連続通紙時に定着部材両端部での温度過昇を抑制することができ、定着部材長手方向における温度バランスを改善することができる。
請求項2の構成により、用紙端部に効率良く圧縮空気を噴射することができ、用紙端部での波うちを効果的に抑制することができる。
【0029】
請求項3の構成により、用紙端部に内側から圧縮空気を吹き付け、用紙端部での波うちを効果的に抑制することができる。
請求項4の構成により、最大サイズの定形紙における用紙端部での波うちを抑制することができる。また、定形紙を使用する場合の定着部材端部での温度過昇を抑制することができる。
【0030】
請求項5の構成により、使用頻度の高いサイズの用紙を使用する場合に、その用紙端部での波打ちを抑制することができ、ジャムの発生を防いで安定した用紙分離及び用紙搬送を実現することができる。
【0031】
請求項6の構成により、定着ローラや定着ベルト等の定着部材の摩耗を防ぐことができる。
請求項7の構成により、定着部材とのギャップを最適な値に調節することができ、分離性を最も良いものとすることができる。
【0032】
請求項8および請求項9の構成により、エアノズル及び分離板の離型性を高め、用紙表面(画像面)がエアノズルまたは分離板に接触した場合でも、異常画像を発生しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る定着装置の一例における要部構成を示す断面図である。
【図2】用紙が分離される様子を示す定着ニップ付近の模式図である。
【図3】定着ニップの出口近傍に配置された用紙分離装置を示す平面図である。
【図4】エアノズルを示す斜視図である。
【図5】エア供給源から供給される圧縮空気がエアノズルから噴射される様子を示す模式図である。
【図6】分離板を示す斜視図である。
【図7】分離板に設けられたギャップ調整機構を示す断面図である。
【図8】通紙可能な最大サイズの用紙を通紙した場合の用紙と用紙分離装置の関係を示す模式図である。
【図9】排紙方向から見た用紙先端の状態を示す模式図である。
【図10】用紙分離装置の第2実施例を示す平面図である。
【図11】用紙分離装置と用紙サイズの関係を示す図である。
【図12】エアノズルと分離板を備える用紙分離機構の一例を示す平面図である。
【図13】その用紙分離機構におけるエアノズルと用紙との関係を示す平面図である。
【図14】その用紙分離機構における用紙端部での波打ち状態を模式的に示す図である。
【図15】本発明に係る定着装置を搭載する画像形成装置の一例を示す断面構成図である。
【図16】用紙が正常に分離された様子を示す定着ニップ周辺の模式図である。
【図17】用紙巻き付きが発生した様子を示す定着ニップ周辺の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る定着装置の一例における要部構成を示す断面図である。この図に示す定着装置は定着ベルトを用いるベルト定着方式であるが、本発明はベルト定着装置に限らず、定着ローラを用いるローラ定着方式であっても何ら問題なく適用可能である。
【0035】
図1に示す定着装置50において、定着部材としての定着ベルト51は、駆動ローラである定着ローラ52と従動ローラである加熱ローラ53とに支持張架され、図中時計回りに回転走行する。定着ローラ52は芯金上に弾性層を有しており、図示しない駆動機構により回転駆動される。加熱ローラ53の内部には熱源としての定着ヒータ54が配置され、この定着ヒータ54により加熱ローラ53が加熱され、その加熱ローラ53によって定着ベルト51が加熱される。
【0036】
加圧ローラ56は弾性層を有しており、図示しない加圧機構により定着ベルト51を挟んで定着ローラ52に圧接するように設けられる。定着ベルト51は定着ローラ52が回転駆動されることにより回転走行し、加圧ローラ56は定着ベルト51に連れ回りする。なお、加圧ローラ56に駆動をかけてもよい。また、加圧ローラ56を加熱するヒータを備えていてもよい。
【0037】
定着ベルト51の表面温度が図示しない温度検知手段により検知され、その温度検知手段の出力値に基づいて図示しない温度制御部が定着ヒータ54を、定着ベルト51の表面温度が所定の設定温度になるように制御する。
【0038】
未定着トナー像を表面に担持する用紙Pは、図の右から左方向に搬送されて定着ベルト51と加圧ローラ56とが圧接されて形成されるニップ部に搬入され、所定の温度に制御されている定着ベルト51と加圧ローラ56とのニップ部においてトナーが溶融定着され、外部に送り出される。なお、加圧部材は、本例では加圧ローラを用いたが、加圧ベルトなどを用いても良い。
【0039】
定着ローラ52と加熱ローラ53の間のベルト外側にはテンションローラ55が配置され、定着ベルト51に所定のテンションが付与される。なお、テンションローラは、本例ではベルトの外側に配置したが、ベルト内側または外側のどちらに配置するレイアウトでも差し支えない。
【0040】
そして、定着ニップの出口近傍には、用紙分離装置70が配置されている。用紙分離装置70については図3を参照して後述するが、図1では用紙分離装置が備えるエアノズル71と分離板75のみを簡略的に示している。エアノズル71内にはエア通路71aが設けられており、図2に示すように、エアノズル71から圧縮空気を噴射させ、ニップ方向(略ニップ方向)に向けて吹き付けることにより、定着ニップを通過した用紙Pの先端が噴射された圧縮空気の流れによって強制的に定着ベルト51から分離される。分離された用紙Pは分離板75(およびその下流側に設けられた出口ガイド板)によってガイドされ、定着装置外に送り出される。なお、本実施形態では、用紙先端分離時の圧縮空気噴射時間は、75ミリ秒に設定されている。
【0041】
図3は、定着ニップの出口近傍に配置された用紙分離装置を示す平面図である。本例の用紙分離装置70は、定着装置筐体に固定されるフレーム72と、そのフレーム72に軸74により回動可能に支持されるステー73を有している。本例では、ステー73は軸74に固定され、軸74が軸受けを介してフレーム72に対して回動可能となっている。ステー73の両側端部の通紙領域外となる位置には、突当部材76,76が装着されている。フレーム72とステー73の間には図示しない付勢手段(例えばスプリング)が設けられ、突当部材76,76を定着ベルト51(定着ローラ52)に圧接させるように付勢している。突当部材76,76の先端部が定着ベルト51(定着ローラ52)に接触して摺動することにより、軸74に取り付けられたエアノズル71及び分離板75の位置決め(定着ベルト51に対するギャップ管理)が精度良く行なわれる。
【0042】
なお、非通紙領域に配置した突当部材76,76の先端を定着部材に接触させてエアノズル71及び分離板75の位置決めを行なうことにより、エアノズル71及び分離板75を定着部材に非接触で位置決め支持することができ、通紙領域における定着部材の摩耗を防止することができる。
【0043】
上記の軸74には、複数のエアノズル71と少なくとも1つの分離板75が取り付けられる。本例ではエアノズル71は計8個、分離板75は計12個が定着ローラ長手方向に並設されている。計8個のエアノズル71のうち、軸方向の最も外側に位置している両端部の2つのエアノズル71には、「T」の添え字をつけて「71T」として示してある。図に示すように、両端部の2つのエアノズル71T,71Tは、分離板75の外側に配置されている。すなわち、エアノズル71と分離板75で構成される部材列の両端に(最外側に)エアノズル71T,71Tが配置される。
【0044】
図4はエアノズル71を示す斜視図である。エアノズル71内にはエア通路71a(図1参照)が設けられており、ノズル先端部には圧縮空気の吹出し口71bが設けられる。円筒状に設けられた軸装着部71cが軸74に嵌め込まれ、エアノズル71が軸74に装着支持される。また、軸装着部71cから突設する調整板部71dが設けられている。エアノズル71は、例えばPFA樹脂等のフッ素樹脂にて形成することができる。あるいは先端部や下面側(用紙に相対する部分)にPFA等のフッ素樹脂でコーティングしても良い。
【0045】
上記の軸74には中空シャフト(図示せず)が内蔵されており、その中空シャフトは各エアノズルのエア通路71aと連結され、図5に模式的に示すように、エアポンプ(コンプレッサ)やエアタンク等から構成されるエア供給源から供給される圧縮空気を各エアノズル71に供給し、吹出し口71bから圧縮エアが噴出される。なお、図3において、軸74の一方側端部74Lは封止されており、他方側端部に空圧管路を介してエア供給源が接続される。
【0046】
図6は、分離板75を示す斜視図である。分離板75は、平板状の分離ガイド部75a、軸装着部75c、軸装着部から突設された調整板部75dから構成される。分離ガイド部75aの先端は尖った先端分離部75bとなっている。分離板75は、例えばPFA樹脂等のフッ素樹脂にて形成することができる。あるいは先端部や下面側(用紙ガイド側)にPFA等のフッ素樹脂でコーティングしても良い。
【0047】
エアノズル71の軸装着部71cと分離板75の軸装着部75cは、軸74に嵌装され、エアノズル71と分離板75は軸74に対して回動できるようになっている(軸74に固定されてはいない)。そして、エアノズル71及び分離板75には、図7で説明するようなギャップ調整機構が設けられる。なお、図7では分離板75でギャップ調整機構を説明するが、エアノズル71の場合もまったく同様である。
【0048】
図7において、符号73は軸74に固定されるステーである(図3参照)。分離板75は軸74に対して回動可能に嵌め込まれている。軸装着部75cから突設された調整板部75dに設けられたスリット(図6参照)に、ネジ77が挿入され、さらに、ネジ77の先端はステー73に設けられたネジ穴にねじ込まれる。ネジ77の胴部には圧縮スプリング78が嵌め込まれており、ステー73と調整板部75dとの間に介在する。これにより、軸74を中心として圧縮スプリング78が調整板部75dを図中反時計回りに、すなわち分離板75の先端分離部75bが定着ベルト51に近づく方向(図1参照)に付勢する。ネジ77を締め込むと分離板75は図中時計回りに、ネジ77を緩めると分離板75は図中反時計回りに回動し、分離板先端部と定着ベルト51とのギャップを微調整することができる。エアノズル71の場合も同様であり、ノズル先端に設けられたエア吹出し口71bと定着ベルト51とのギャップを微調整することができる。
【0049】
図8は、本実施形態において通紙可能な最大サイズの用紙を通紙した場合の用紙と用紙分離装置70の関係を示す模式図である。
この図に示す用紙Pは、通紙可能な最大サイズの用紙であり、本例ではSRA3サイズ(320×450mm)と呼ばれる用紙であり、通紙幅は320mmである。上述したように、用紙分離装置70は複数のエアノズル71と複数の分離板75とを備えており、その配置は図に示すとおりであり、端部エアノズル71T,71Tが最も外側に配置されている。端部エアノズル71T,71Tの位置(定着ローラ軸方向における位置)は、通紙可能な最大サイズの用紙Pを通紙したときの用紙端部の位置と略一致しており、端部エアノズル71T,71Tから噴出された圧縮空気によって用紙端部を押さえるように構成されている。本実施例では、端部エアノズル71T,71Tの定着ローラ軸方向の位置は最大サイズの用紙の幅以内に配置されている。
【0050】
図9に排紙方向から見た用紙先端の状態を模式的に示すように、端部エアノズル71Tから噴出された圧縮空気によって用紙端部が押さえられ、用紙が分離板75あるいはエアノズル71(71T)に当接することがなく、ジャムすることなく分離・搬送が行なわれる。図11で後述するように、エアノズルが分離板の内側に配置された構成では、ノズルから噴射された圧縮空気の効果が用紙端部では弱まり、用紙端部の押さえが利かずにジャムが発生しているが、本発明ではこの問題を解決することができ、用紙端部での波うちを抑制してジャム発生を防止することによって、安定した用紙分離及び用紙搬送を可能としている。
【0051】
なお、図9及び図8から分かるように、エアノズル71の先端位置と分離板75の先端位置とを比較すると、用紙搬送方向においてエアノズル71の先端の方が分離板75の先端よりも下流側に位置している(分離板75の方がエアノズル71よりも前にある)。これは、エアノズル71はあくまで圧縮空気を用紙先端部に吹き付ける部材であり、分離板75が用紙に当接して分離とガイドとを行なう部材であるためである。
【0052】
また、上記したように本例の用紙分離装置70では、分離板75と定着ベルト51とのギャップを微調整可能に設けているが、分離板75の先端ギャップは、薄紙を通紙する条件では0.1〜0.2mmと狭く設定するのが好適である。これは、エア分離機構を備えていても、圧縮空気を噴射していない個所(定着ローラ軸方向において)では、エア分離の効果が弱く、分離板75によって分離する必要があり、上記先端ギャップを狭くすることにより、薄紙分離性を確保できるためである。また、分離板を設けることによって画像へのコスレ跡が発生しにくくなる。
【0053】
図10は、用紙分離装置の第2実施例を示す図である。この図に示す第2実施例の用紙分離装置170は、複数備えるエアノズル71のうちの一部のエアノズル71の配置が異なること以外は先に説明した第1実施例の用紙分離装置70と同じであるので(一部のエアノズル71の配置が異なることによって、一部の分離板75の配置も変わってくるが)、重複する説明は省略して、異なる部分を中心に説明する。
【0054】
図10に示す用紙分離装置170において、通紙可能な最大サイズの用紙は前記第1実施例の用紙分離装置70と同じくSRA3サイズ(320×450mm)と呼ばれる用紙であり、通紙幅は320mmである。そのSRA3サイズの用紙両端部に対応するよう、端部エアノズル71T,71Tが配置されるのは前記第1実施例の用紙分離装置70と同じである。
【0055】
そして、本第2実施例の用紙分離装置170では、端部エアノズル71T,71Tから内側に2つ目のエアノズル71U,71Uは、A4サイズ用紙(210×297mm)を縦通紙した場合(通紙幅210mm)の用紙両端部に対応する位置に配置されている。なお、用紙分離装置170が搭載される定着装置及び画像形成装置は通紙基準を中央基準とする。
【0056】
このように、本第2実施例の用紙分離装置170では、2つのエアノズル71U,71Uを、一般的な画像形成装置において高頻度に使用される用紙サイズであるA4サイズの用紙両端部に対応して配置したことにより、代表的な用紙サイズにおいて用紙端部での波うちを抑制してジャム発生を防止することができ、安定した用紙分離及び用紙搬送を実現できる。
【0057】
なお、上記では代表的な用紙サイズをA4とし、それに対応する位置にエアノズル71U,71Uを配置したが、A4サイズに限るものではなく、例えばA3,A4,B5などの所定の定形紙を高頻度に使用される代表的なサイズの用紙とし、それに対応してエアノズルを配置しても良い。
【0058】
ここで、図11を参照して、用紙分離装置と用紙サイズの関係について説明する。なお、図11では第1実施例の用紙分離装置70で示すが、第2実施例の用紙分離装置170の場合も同様である。
【0059】
図11に示すように、「通紙可能な最大サイズの記録媒体の幅」とは、本実施の形態では、定形紙であるA3短辺の長さよりも長い幅を有している不定形紙の幅のことである。また、「通紙可能な最大サイズの記録媒体よりも小さいサイズの記録媒体の中での最大サイズの定形紙の幅」とは、本実施の形態では、A版(JISによる紙の規格寸法の一系列)の定形紙の1つであるA3短辺の長さを意味している。ただし、定形紙はA版に限らず、他の系列(例えば、A版と同様にJISによる紙の規格寸法の一系列であるB版など)でも構わない。
【0060】
上記説明したように、本発明による用紙分離装置は、エアノズルと分離板を定着ローラあるいは定着ベルトの長手方向(ローラ軸方向)に並設して設けた構成において、両端部のエアノズルを最も外側に(分離板よりも外側に)配置して設けたことにより、通紙可能な最大サイズの用紙を分離する場合でも、用紙端部での波うちを抑制してジャム発生を防止することができ、安定した用紙分離及び用紙搬送を実現することができる。
【0061】
図12は、エアノズルと分離板を備えているが、両端部に(最外側に)分離板を配置した構成の用紙分離機構の一例を示すものである。この図に示すエア分離機構では、図13に示すように、用紙端部が最外側の(最も外側に位置する)ノズル271Tよりも外側にあるため、排紙方向から見た用紙先端の状態は図14に示すように、波打ち状態(図では誇張して示している)となり、用紙端部(図では右側)に近づくほど端部ノズル271Tから噴射された圧縮空気の効果が弱くなり、端部の分離板275Tに用紙が当接してジャムしてしまう。本願発明者が実施した実験では、通常の転写紙を用いた場合、端部ノズル271Tから10mm以上用紙端部が離れてしまうと、図14に示すような波打ち状態となってジャムが発生した。
【0062】
しかし、本発明による用紙分離装置は、図3あるいは図10に示すように、エアノズルと分離板からなる部材列の最も外側(両端部)にエアノズル71T,71Tを配置したことにより、上記のように最大サイズの用紙を通紙する場合でも用紙端部での波うちを抑制することができるようになった。
【0063】
また、小サイズ用紙(最大サイズよりも小さなサイズの用紙)を連続通紙した場合には、通紙領域における定着部材(定着ローラ,定着ベルト)の温度は用紙によって奪われるため温度が低下するが、通紙領域外(上記実施例のように中央基準の場合は軸方向の両端部)では用紙による温度低下が発生しないため、温度が過度に上昇する場合がある。しかし、上記第1実施例及び第2実施例では、小サイズ用紙の連続通紙時に、端部エアノズル71T,71Tから噴出された圧縮空気が定着部材(定着ローラ,定着ベルト)に吹きかかるため、定着部材両端部での温度過昇を抑制することができ、定着部材長手方向における温度バランスを改善する効果がある。
【0064】
なお、いわゆる小サイズ用紙に限らず、例えば図11に示すB4短辺長さに相当するB5横通紙や、A4縦通紙などの定形紙を使用する場合においても、定着部材端部での(通紙領域外での)温度の過昇を抑制する効果が生ずる。
【0065】
最後に、本発明に係る定着装置を搭載する画像形成装置の一例について図15を参照して説明する。
図15に示す画像形成装置は、タンデム型カラー複写機として構成されたものである。このカラー複写機100は、装置本体中央部に位置する画像形成部100Aと、該画像形成部100Aの下方に位置する給紙部100Bと、画像形成部100Aの上方に位置する図示しない画像読取部とを有する高速画像形成装置であり、画像形成部100Aには定着装置50が組み込まれている。
【0066】
画像形成部100Aには、水平方向に延びる転写面を有する中間転写ベルト110が配置されており、該中間転写ベルト110の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の像を担持する像担持体としての感光体105Y,105M,105C,105Kが中間転写ベルト110の転写面に沿って並置されている。
【0067】
各感光体105Y,105M,105C,105Kは、それぞれ同じ方向(図中反時計回り)に回転可能なドラムで構成されており、その周りには、回転過程において画像形成処理を実行する光書き込み装置101、帯電装置102Y,102M,102C,102K、現像装置103Y,103M,103C,103K、一次転写装置104Y,104M,104C,104K及びクリーニング装置が配置されている。また、各現像装置103Y,103M,103C,103Kには、それぞれのカラートナーが収容されている。感光体105、帯電装置102、現像装置103などは作像ユニットを形成している。
【0068】
中間転写ベルト110は、駆動ローラと従動ローラに掛け回され、感光体105Y,105M,105C,105Kとの対向位置において各感光体と同じ方向に移動可能に構成されている。また、従動ローラの1つであるローラ111に対向する位置に二次転写ローラ112が設けられている。二次転写ローラ112から定着装置50までの用紙Pの搬送経路は横方向の経路になっている。定着装置50は先に説明したように、エア分離方式の用紙分離装置70(170)を備えるものである。
【0069】
給紙部100Bは、記録媒体としての用紙Pを積載収容する給紙トレイ120と、該給紙トレイ120内の用紙Pを最上のものから順に1枚ずつ分離して、転写ローラ112の位置まで搬送する搬送機構を有している。
【0070】
カラー複写機100における画像形成動作に関しては、感光体105Yの表面が帯電装置102Yにより一様に帯電され、画像読取部からの画像情報に基づいて感光体105Y上に静電潜像が形成される。該静電潜像はイエローのトナーを収容した現像装置103Yによりトナー像として可視像化され、該トナー像は所定のバイアスが印加される1次転写装置104Yによって中間転写ベルト110上に一次転写される。他の感光体105M,105C,105Kにおいてもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、各色のトナー像が中間転写ベルト110上に静電気力によって順に転写されて重ね合わせられる。
【0071】
次に、感光体105Y,105M,105C,105Kから中間転写ベルト110上に一次転写されたトナー像は、ローラ111と二次転写ローラ112の間に搬送されてきた用紙Pに転写される。トナー像が転写された用紙Pはさらに定着装置50まで搬送され、上述したように、定着ベルト51と加圧ローラ56で形成される定着ニップ部においてトナー像の定着が行なわれる。定着ニップ部における用紙Pの出口側には用紙分離装置70(170)が配置されており、エアノズルからのエア噴射によって用紙Pは定着ベルト51や加圧ローラ56に巻き付くことなく定着ニップ部の出口から排出される。
【0072】
次いで、定着ニップ部から排出された用紙Pは、排出経路に沿って用紙排出部であるスタッカ115に送り出される。
以上のように、本実施形態のカラー複写機100によれば、用紙分離装置を備えた定着装置50を有する画像形成装置によってより高度な定着分離機能が得られ、様々な紙種・画像に対応することができる。特に、用紙端部での波うちを抑制してジャム発生を防止することができ、安定した用紙分離及び用紙搬送を可能としている。
【0073】
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、エアノズル及び分離板の個数及びそれらの並び順も、最も外側にエアノズルを配置するという本発明の範囲内で適宜設定できるものである。また、エアノズルの形状や構成、分離板の大きさや形状・構成も適宜なものを使用可能であるし、エアノズル及び分離板の材質も任意である。エアノズル及び分離板の支持方法も任意である。エアノズルへ圧縮空気を供給する装置構成も、従来周知なものを含め、任意な構成を採用可能である。
【0074】
定着装置の構成も適宜な構成を採用可能であり、定着ヒータとしては一般的なハロゲンランプはもちろん、誘導加熱手段等、任意なものを使用可能である。加圧側にも熱源を備えていても良い。
【0075】
画像形成装置の各部構成も任意であり、例えばタンデム式に限らず、任意の作像方式を採用可能である。また、中間転写方式に限らず、直接転写方式も採用可能である。また、3色のトナーを用いるフルカラー機や、2色のトナーによる多色機、あるいはモノクロ装置にも本発明を適用することができる。もちろん、画像形成装置としては複写機に限らず、プリンタやファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
【符号の説明】
【0076】
50 定着装置
51 定着ベルト(定着部材)
52 定着ローラ
53 加熱ローラ
54 定着ヒータ
56 加圧ローラ
70,170 用紙分離装置
71 エアノズル
71a エア通路
71b 圧縮空気吹出し口
71T 端部エアノズル
72 フレーム
73 ステー
74 軸
75 分離板
76 突当部材
100 カラー複写機
101 光書き込み装置
105 感光体
110 中間転写ベルト
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特開昭61−59468号公報
【特許文献2】特開昭60−247672号公報
【特許文献3】特許第2581429号公報
【特許文献4】特開2005−49647号公報
【特許文献5】特開2007−199462号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気噴射による記録媒体分離を行う分離装置、定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置において、用紙等の記録媒体(以下、用紙という)に転写されたトナー像を定着させる装置として、ハロゲンヒータ等の熱源により加熱される定着部材(例えば定着ローラ)と、当該定着部材を加圧する加圧部材(例えば加圧ローラ)で形成されたニップ部によって未定着トナー像を担持した用紙を挟持搬送しながら、加熱・加圧によりトナー像を用紙に定着させる熱定着装置が知られており、広く採用されている。
【0003】
定着部材として無端状の定着ベルトを用いるベルト定着装置も周知であり、定着ベルトの熱容量が小さいことからウォーミングアップタイムを短縮出来、省エネ性に優れるという利点を有している。
【0004】
以上のような熱定着装置においては、用紙に融着したトナー画像が定着ローラ/定着ベルトに接触するので、定着ローラ/定着ベルトは、離型性に優れたフッ素系樹脂を表面にコーティングされ、用紙分離には分離爪が用いられている。分離爪の大きな欠点はローラやベルトに接触するためにローラやベルトの表面に爪跡(爪キズ)をつけ易く、その場合には出力された画像にスジが発生するということである。
【0005】
一般的にモノクロ画像形成装置の場合、定着ローラは金属ローラの表面にテフロン(登録商標)コーティングしたものであり、分離爪が接触しても傷に成り難く、寿命も長かった。
【0006】
しかしながら、カラー画像形成装置の場合には、色の発色性をよくするために、表層をシリコーンゴムにフッ素コートしたもの(一般的には数十ミクロン程度のPFAチューブを使用する)か、シリコーンゴムの表面にオイルを塗布したものを使用している。ただ、このような構成では表層が軟らかく傷が付き易い。表層に傷がつくと定着画像にスジ状の傷が生じることから、今ではカラー画像形成装置では分離爪のような接触手段をほとんど用いず、大半は非接触分離を行っている。
【0007】
非接触分離では、トナーと定着部材との粘着力が高いと定着後の用紙がローラまたはベルトに巻きつくため、容易に巻きつきジャムが発生するようになる。特にカラー画像形成では何層ものトナー層が積層されており、粘着力が高まるために巻きつきジャムが発生しやすい。
【0008】
現在、カラー画像形成装置における用紙分離では主に次の方式が用いられている。
1)定着ローラ/ベルトとの間に微小なギャップ(約0.2mm〜1.0mm)を開け、定着ローラ/定着ベルトの長手方向及び幅方向に並行に延在する分離板を用いる非接触分離板方式。
2)定着ローラ/定着ベルトとの間に微小なギャップ(約0.2mm〜1.0mm)を開け、所定間隔で配された分離爪を用いる非接触分離爪方式。
3)用紙の腰の強さと定着ローラ/定着ベルトの湾曲部弾性とで自然に剥離させるようにしたセルフストリッピング方式。
【0009】
しかしながら、いずれの方式でも、定着出口と用紙案内板との隙間が開いているため、薄紙や先端余白が少ない用紙を通紙するとき、あるいは写真等のベタ画像を通紙するときは、用紙が定着ローラ/定着ベルトに密着したまま隙間を通過してしまい、用紙巻きつきジャムが発生したり、分離板や分離爪に突き当たってジャムが発生することがある。
【0010】
そこで、非接触の分離手段として、空気を用紙分離位置に吹き付けることが提案され、使用に供されている。たとえば、特開昭61−59468号公報(特許文献1)、特開昭60−247672号公報(特許文献2)、特許第2581429号公報(特許文献3)、特開2005−49647号公報(特許文献4)、特開2007−199462号公報(特許文献5)にそれぞれ開示されている。
【0011】
特許文献1には、圧縮空気を用紙と定着ローラとの間に噴射させることによって、分離が困難な場合(坪量の小さい用紙)でも、分離を行えることを特徴とした定着装置が提案されている。
【0012】
また、特許文献2には、円筒状の部材の軸方向に微小孔を複数配列し、圧縮空気を噴射し、記録媒体をローラから分離する機構や、微小孔を軸方向に2列開設し、用紙搬送速度のばらつきにも対応することが可能な機構をもつことを特徴とした定着装置が提案されている。
【0013】
また、特許文献3には、ノズルに空気溜り部を設けるとともに、噴射口の形状を噴射出口方向に徐々に拡大し、圧縮空気をノズル部材の中央をピークとした緩やかな圧力分布を持つ均一なジェット流となって吹き出すことを特徴とした定着装置が提案されている。
【0014】
また、特許文献4には、圧縮空気によって分離された記録媒体の搬送を行うために、ローラ近傍に分離後の記録媒体をスムーズに案内することが可能な分離板を提供することを特徴とした定着装置が提案されている。
【0015】
また、特許文献5には、記録媒体の進行に合わせて、圧縮空気をパルス周期で噴射することで、搬送ガイド部材に接触して起こる画像不良を防止することを特徴とした定着装置が提案されている。
【0016】
特許文献1に記載のエア分離機構(圧縮空気の力で記録媒体をローラから分離する機構)では、圧縮空気を噴射するノズルを設置し、定着ローラと加圧ローラとのニップ部出口から搬送される記録媒体に向けて圧縮空気を噴射して記録媒体をローラから分離する、というものである。
【0017】
しかしながら、図16のように、用紙が定着ローラに巻きつかずに分離され、ニップ部から搬送されるのは、用紙の坪量が大きく、用紙先端部ならびに用紙全体でのトナーの量が少なく、吸湿していない用紙の場合である。一方、用紙の坪量が小さく、用紙上に多量のトナーがあり、吸湿している、といった巻き付き易い条件では、ノズルから噴射する圧縮空気の圧力・流量が同じの場合、図17のように、用紙はニップ部出口から定着ローラに巻き付きながら分離・搬送され、必要以上にトナーに熱量が付与され、画像障害が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
巻き付きやすいローラに巻き付くことなく用紙を分離・搬送するためには、噴射する圧縮空気の圧力・流量を大きくする必要があるが、圧縮空気の圧力を大きくしすぎると、分離しやすい条件の(坪量が大きく、先端ならびに全体の未定着トナーが少なく、吸湿していない)用紙の挙動が不安定になり、搬送障害を引き起こしてしまう恐れがある。
【0019】
本発明は、エア噴射ノズルと分離板を備えた用紙分離装置における上述の問題を解決し、安定した用紙分離及び用紙搬送を行なうことのできる用紙分離装置および定着装置ならびに画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記の課題は、本発明により、エアノズルと分離板とを有し、定着部材と加圧部材により形成される定着ニップ部から搬送されてくる記録媒体を前記定着部材又は前記加圧部材から分離させる記録媒体分離装置において、複数個の前記エアノズルと少なくとも1つの前記分離板とが前記定着部材長手方向に沿って並設されており、該部材列の前記定着部材長手方向における両端に前記エアノズルが配置されていることにより解決される。
【0021】
また、前記部材列の両端に配置された前記エアノズルは、当該記録媒体分離装置が装着される定着装置で通紙可能な最大サイズの記録媒体の幅方向両端部の位置と略一致するように配置されていると好ましい。
【0022】
また、前記部材列の両端に配置された前記エアノズルは、前記最大サイズの記録媒体の幅以内に配置されると好ましい。
また、前記部材列の両端に配置された前記エアノズルは、前記最大サイズの記録媒体よりも小さいサイズの記録媒体の中での最大サイズの定形紙の幅よりも外側に配置されていると好ましい。
【0023】
また、前記複数個のエアノズルは、当該記録媒体分離装置が装着される定着装置で使用される代表的なサイズの用紙を通紙した場合の用紙両端部に対応する位置に配置されたエアノズルを含むと好ましい。
【0024】
また、前記エアノズル及び前記分離板が、定着部材に対して非接触に支持されると好ましい。
また、前記エアノズル及び前記分離板は、定着部材に対するギャップを調整可能に設けられていると好ましい。
【0025】
また、前記エアノズル及び前記分離板は、少なくとも記録媒体に相対する表面がフッ素樹脂コートが施されていると好ましい。
また、前記エアノズル及び前記分離板は、フッ素樹脂材料で形成されていると好ましい。
【0026】
また、前記の課題は、本発明により、請求項1〜8のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置を備え定着装置により解決される。
また、前記の課題は、本発明により、請求項1〜8のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置または請求項9に記載の定着装置を備える画像形成装置により解決される。
【発明の効果】
【0027】
本発明の分離装置および定着装置ならびに画像形成装置によれば、両端部のエアノズルを最も外側に(分離板よりも外側に)配置して設けたことにより、通紙可能な最大サイズの用紙を分離する場合でも、用紙端部での波うちを抑制してジャム発生を防止することができ、安定した用紙分離及び用紙搬送を実現することができる。
【0028】
また、小サイズ用紙の連続通紙時に定着部材両端部での温度過昇を抑制することができ、定着部材長手方向における温度バランスを改善することができる。
請求項2の構成により、用紙端部に効率良く圧縮空気を噴射することができ、用紙端部での波うちを効果的に抑制することができる。
【0029】
請求項3の構成により、用紙端部に内側から圧縮空気を吹き付け、用紙端部での波うちを効果的に抑制することができる。
請求項4の構成により、最大サイズの定形紙における用紙端部での波うちを抑制することができる。また、定形紙を使用する場合の定着部材端部での温度過昇を抑制することができる。
【0030】
請求項5の構成により、使用頻度の高いサイズの用紙を使用する場合に、その用紙端部での波打ちを抑制することができ、ジャムの発生を防いで安定した用紙分離及び用紙搬送を実現することができる。
【0031】
請求項6の構成により、定着ローラや定着ベルト等の定着部材の摩耗を防ぐことができる。
請求項7の構成により、定着部材とのギャップを最適な値に調節することができ、分離性を最も良いものとすることができる。
【0032】
請求項8および請求項9の構成により、エアノズル及び分離板の離型性を高め、用紙表面(画像面)がエアノズルまたは分離板に接触した場合でも、異常画像を発生しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る定着装置の一例における要部構成を示す断面図である。
【図2】用紙が分離される様子を示す定着ニップ付近の模式図である。
【図3】定着ニップの出口近傍に配置された用紙分離装置を示す平面図である。
【図4】エアノズルを示す斜視図である。
【図5】エア供給源から供給される圧縮空気がエアノズルから噴射される様子を示す模式図である。
【図6】分離板を示す斜視図である。
【図7】分離板に設けられたギャップ調整機構を示す断面図である。
【図8】通紙可能な最大サイズの用紙を通紙した場合の用紙と用紙分離装置の関係を示す模式図である。
【図9】排紙方向から見た用紙先端の状態を示す模式図である。
【図10】用紙分離装置の第2実施例を示す平面図である。
【図11】用紙分離装置と用紙サイズの関係を示す図である。
【図12】エアノズルと分離板を備える用紙分離機構の一例を示す平面図である。
【図13】その用紙分離機構におけるエアノズルと用紙との関係を示す平面図である。
【図14】その用紙分離機構における用紙端部での波打ち状態を模式的に示す図である。
【図15】本発明に係る定着装置を搭載する画像形成装置の一例を示す断面構成図である。
【図16】用紙が正常に分離された様子を示す定着ニップ周辺の模式図である。
【図17】用紙巻き付きが発生した様子を示す定着ニップ周辺の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る定着装置の一例における要部構成を示す断面図である。この図に示す定着装置は定着ベルトを用いるベルト定着方式であるが、本発明はベルト定着装置に限らず、定着ローラを用いるローラ定着方式であっても何ら問題なく適用可能である。
【0035】
図1に示す定着装置50において、定着部材としての定着ベルト51は、駆動ローラである定着ローラ52と従動ローラである加熱ローラ53とに支持張架され、図中時計回りに回転走行する。定着ローラ52は芯金上に弾性層を有しており、図示しない駆動機構により回転駆動される。加熱ローラ53の内部には熱源としての定着ヒータ54が配置され、この定着ヒータ54により加熱ローラ53が加熱され、その加熱ローラ53によって定着ベルト51が加熱される。
【0036】
加圧ローラ56は弾性層を有しており、図示しない加圧機構により定着ベルト51を挟んで定着ローラ52に圧接するように設けられる。定着ベルト51は定着ローラ52が回転駆動されることにより回転走行し、加圧ローラ56は定着ベルト51に連れ回りする。なお、加圧ローラ56に駆動をかけてもよい。また、加圧ローラ56を加熱するヒータを備えていてもよい。
【0037】
定着ベルト51の表面温度が図示しない温度検知手段により検知され、その温度検知手段の出力値に基づいて図示しない温度制御部が定着ヒータ54を、定着ベルト51の表面温度が所定の設定温度になるように制御する。
【0038】
未定着トナー像を表面に担持する用紙Pは、図の右から左方向に搬送されて定着ベルト51と加圧ローラ56とが圧接されて形成されるニップ部に搬入され、所定の温度に制御されている定着ベルト51と加圧ローラ56とのニップ部においてトナーが溶融定着され、外部に送り出される。なお、加圧部材は、本例では加圧ローラを用いたが、加圧ベルトなどを用いても良い。
【0039】
定着ローラ52と加熱ローラ53の間のベルト外側にはテンションローラ55が配置され、定着ベルト51に所定のテンションが付与される。なお、テンションローラは、本例ではベルトの外側に配置したが、ベルト内側または外側のどちらに配置するレイアウトでも差し支えない。
【0040】
そして、定着ニップの出口近傍には、用紙分離装置70が配置されている。用紙分離装置70については図3を参照して後述するが、図1では用紙分離装置が備えるエアノズル71と分離板75のみを簡略的に示している。エアノズル71内にはエア通路71aが設けられており、図2に示すように、エアノズル71から圧縮空気を噴射させ、ニップ方向(略ニップ方向)に向けて吹き付けることにより、定着ニップを通過した用紙Pの先端が噴射された圧縮空気の流れによって強制的に定着ベルト51から分離される。分離された用紙Pは分離板75(およびその下流側に設けられた出口ガイド板)によってガイドされ、定着装置外に送り出される。なお、本実施形態では、用紙先端分離時の圧縮空気噴射時間は、75ミリ秒に設定されている。
【0041】
図3は、定着ニップの出口近傍に配置された用紙分離装置を示す平面図である。本例の用紙分離装置70は、定着装置筐体に固定されるフレーム72と、そのフレーム72に軸74により回動可能に支持されるステー73を有している。本例では、ステー73は軸74に固定され、軸74が軸受けを介してフレーム72に対して回動可能となっている。ステー73の両側端部の通紙領域外となる位置には、突当部材76,76が装着されている。フレーム72とステー73の間には図示しない付勢手段(例えばスプリング)が設けられ、突当部材76,76を定着ベルト51(定着ローラ52)に圧接させるように付勢している。突当部材76,76の先端部が定着ベルト51(定着ローラ52)に接触して摺動することにより、軸74に取り付けられたエアノズル71及び分離板75の位置決め(定着ベルト51に対するギャップ管理)が精度良く行なわれる。
【0042】
なお、非通紙領域に配置した突当部材76,76の先端を定着部材に接触させてエアノズル71及び分離板75の位置決めを行なうことにより、エアノズル71及び分離板75を定着部材に非接触で位置決め支持することができ、通紙領域における定着部材の摩耗を防止することができる。
【0043】
上記の軸74には、複数のエアノズル71と少なくとも1つの分離板75が取り付けられる。本例ではエアノズル71は計8個、分離板75は計12個が定着ローラ長手方向に並設されている。計8個のエアノズル71のうち、軸方向の最も外側に位置している両端部の2つのエアノズル71には、「T」の添え字をつけて「71T」として示してある。図に示すように、両端部の2つのエアノズル71T,71Tは、分離板75の外側に配置されている。すなわち、エアノズル71と分離板75で構成される部材列の両端に(最外側に)エアノズル71T,71Tが配置される。
【0044】
図4はエアノズル71を示す斜視図である。エアノズル71内にはエア通路71a(図1参照)が設けられており、ノズル先端部には圧縮空気の吹出し口71bが設けられる。円筒状に設けられた軸装着部71cが軸74に嵌め込まれ、エアノズル71が軸74に装着支持される。また、軸装着部71cから突設する調整板部71dが設けられている。エアノズル71は、例えばPFA樹脂等のフッ素樹脂にて形成することができる。あるいは先端部や下面側(用紙に相対する部分)にPFA等のフッ素樹脂でコーティングしても良い。
【0045】
上記の軸74には中空シャフト(図示せず)が内蔵されており、その中空シャフトは各エアノズルのエア通路71aと連結され、図5に模式的に示すように、エアポンプ(コンプレッサ)やエアタンク等から構成されるエア供給源から供給される圧縮空気を各エアノズル71に供給し、吹出し口71bから圧縮エアが噴出される。なお、図3において、軸74の一方側端部74Lは封止されており、他方側端部に空圧管路を介してエア供給源が接続される。
【0046】
図6は、分離板75を示す斜視図である。分離板75は、平板状の分離ガイド部75a、軸装着部75c、軸装着部から突設された調整板部75dから構成される。分離ガイド部75aの先端は尖った先端分離部75bとなっている。分離板75は、例えばPFA樹脂等のフッ素樹脂にて形成することができる。あるいは先端部や下面側(用紙ガイド側)にPFA等のフッ素樹脂でコーティングしても良い。
【0047】
エアノズル71の軸装着部71cと分離板75の軸装着部75cは、軸74に嵌装され、エアノズル71と分離板75は軸74に対して回動できるようになっている(軸74に固定されてはいない)。そして、エアノズル71及び分離板75には、図7で説明するようなギャップ調整機構が設けられる。なお、図7では分離板75でギャップ調整機構を説明するが、エアノズル71の場合もまったく同様である。
【0048】
図7において、符号73は軸74に固定されるステーである(図3参照)。分離板75は軸74に対して回動可能に嵌め込まれている。軸装着部75cから突設された調整板部75dに設けられたスリット(図6参照)に、ネジ77が挿入され、さらに、ネジ77の先端はステー73に設けられたネジ穴にねじ込まれる。ネジ77の胴部には圧縮スプリング78が嵌め込まれており、ステー73と調整板部75dとの間に介在する。これにより、軸74を中心として圧縮スプリング78が調整板部75dを図中反時計回りに、すなわち分離板75の先端分離部75bが定着ベルト51に近づく方向(図1参照)に付勢する。ネジ77を締め込むと分離板75は図中時計回りに、ネジ77を緩めると分離板75は図中反時計回りに回動し、分離板先端部と定着ベルト51とのギャップを微調整することができる。エアノズル71の場合も同様であり、ノズル先端に設けられたエア吹出し口71bと定着ベルト51とのギャップを微調整することができる。
【0049】
図8は、本実施形態において通紙可能な最大サイズの用紙を通紙した場合の用紙と用紙分離装置70の関係を示す模式図である。
この図に示す用紙Pは、通紙可能な最大サイズの用紙であり、本例ではSRA3サイズ(320×450mm)と呼ばれる用紙であり、通紙幅は320mmである。上述したように、用紙分離装置70は複数のエアノズル71と複数の分離板75とを備えており、その配置は図に示すとおりであり、端部エアノズル71T,71Tが最も外側に配置されている。端部エアノズル71T,71Tの位置(定着ローラ軸方向における位置)は、通紙可能な最大サイズの用紙Pを通紙したときの用紙端部の位置と略一致しており、端部エアノズル71T,71Tから噴出された圧縮空気によって用紙端部を押さえるように構成されている。本実施例では、端部エアノズル71T,71Tの定着ローラ軸方向の位置は最大サイズの用紙の幅以内に配置されている。
【0050】
図9に排紙方向から見た用紙先端の状態を模式的に示すように、端部エアノズル71Tから噴出された圧縮空気によって用紙端部が押さえられ、用紙が分離板75あるいはエアノズル71(71T)に当接することがなく、ジャムすることなく分離・搬送が行なわれる。図11で後述するように、エアノズルが分離板の内側に配置された構成では、ノズルから噴射された圧縮空気の効果が用紙端部では弱まり、用紙端部の押さえが利かずにジャムが発生しているが、本発明ではこの問題を解決することができ、用紙端部での波うちを抑制してジャム発生を防止することによって、安定した用紙分離及び用紙搬送を可能としている。
【0051】
なお、図9及び図8から分かるように、エアノズル71の先端位置と分離板75の先端位置とを比較すると、用紙搬送方向においてエアノズル71の先端の方が分離板75の先端よりも下流側に位置している(分離板75の方がエアノズル71よりも前にある)。これは、エアノズル71はあくまで圧縮空気を用紙先端部に吹き付ける部材であり、分離板75が用紙に当接して分離とガイドとを行なう部材であるためである。
【0052】
また、上記したように本例の用紙分離装置70では、分離板75と定着ベルト51とのギャップを微調整可能に設けているが、分離板75の先端ギャップは、薄紙を通紙する条件では0.1〜0.2mmと狭く設定するのが好適である。これは、エア分離機構を備えていても、圧縮空気を噴射していない個所(定着ローラ軸方向において)では、エア分離の効果が弱く、分離板75によって分離する必要があり、上記先端ギャップを狭くすることにより、薄紙分離性を確保できるためである。また、分離板を設けることによって画像へのコスレ跡が発生しにくくなる。
【0053】
図10は、用紙分離装置の第2実施例を示す図である。この図に示す第2実施例の用紙分離装置170は、複数備えるエアノズル71のうちの一部のエアノズル71の配置が異なること以外は先に説明した第1実施例の用紙分離装置70と同じであるので(一部のエアノズル71の配置が異なることによって、一部の分離板75の配置も変わってくるが)、重複する説明は省略して、異なる部分を中心に説明する。
【0054】
図10に示す用紙分離装置170において、通紙可能な最大サイズの用紙は前記第1実施例の用紙分離装置70と同じくSRA3サイズ(320×450mm)と呼ばれる用紙であり、通紙幅は320mmである。そのSRA3サイズの用紙両端部に対応するよう、端部エアノズル71T,71Tが配置されるのは前記第1実施例の用紙分離装置70と同じである。
【0055】
そして、本第2実施例の用紙分離装置170では、端部エアノズル71T,71Tから内側に2つ目のエアノズル71U,71Uは、A4サイズ用紙(210×297mm)を縦通紙した場合(通紙幅210mm)の用紙両端部に対応する位置に配置されている。なお、用紙分離装置170が搭載される定着装置及び画像形成装置は通紙基準を中央基準とする。
【0056】
このように、本第2実施例の用紙分離装置170では、2つのエアノズル71U,71Uを、一般的な画像形成装置において高頻度に使用される用紙サイズであるA4サイズの用紙両端部に対応して配置したことにより、代表的な用紙サイズにおいて用紙端部での波うちを抑制してジャム発生を防止することができ、安定した用紙分離及び用紙搬送を実現できる。
【0057】
なお、上記では代表的な用紙サイズをA4とし、それに対応する位置にエアノズル71U,71Uを配置したが、A4サイズに限るものではなく、例えばA3,A4,B5などの所定の定形紙を高頻度に使用される代表的なサイズの用紙とし、それに対応してエアノズルを配置しても良い。
【0058】
ここで、図11を参照して、用紙分離装置と用紙サイズの関係について説明する。なお、図11では第1実施例の用紙分離装置70で示すが、第2実施例の用紙分離装置170の場合も同様である。
【0059】
図11に示すように、「通紙可能な最大サイズの記録媒体の幅」とは、本実施の形態では、定形紙であるA3短辺の長さよりも長い幅を有している不定形紙の幅のことである。また、「通紙可能な最大サイズの記録媒体よりも小さいサイズの記録媒体の中での最大サイズの定形紙の幅」とは、本実施の形態では、A版(JISによる紙の規格寸法の一系列)の定形紙の1つであるA3短辺の長さを意味している。ただし、定形紙はA版に限らず、他の系列(例えば、A版と同様にJISによる紙の規格寸法の一系列であるB版など)でも構わない。
【0060】
上記説明したように、本発明による用紙分離装置は、エアノズルと分離板を定着ローラあるいは定着ベルトの長手方向(ローラ軸方向)に並設して設けた構成において、両端部のエアノズルを最も外側に(分離板よりも外側に)配置して設けたことにより、通紙可能な最大サイズの用紙を分離する場合でも、用紙端部での波うちを抑制してジャム発生を防止することができ、安定した用紙分離及び用紙搬送を実現することができる。
【0061】
図12は、エアノズルと分離板を備えているが、両端部に(最外側に)分離板を配置した構成の用紙分離機構の一例を示すものである。この図に示すエア分離機構では、図13に示すように、用紙端部が最外側の(最も外側に位置する)ノズル271Tよりも外側にあるため、排紙方向から見た用紙先端の状態は図14に示すように、波打ち状態(図では誇張して示している)となり、用紙端部(図では右側)に近づくほど端部ノズル271Tから噴射された圧縮空気の効果が弱くなり、端部の分離板275Tに用紙が当接してジャムしてしまう。本願発明者が実施した実験では、通常の転写紙を用いた場合、端部ノズル271Tから10mm以上用紙端部が離れてしまうと、図14に示すような波打ち状態となってジャムが発生した。
【0062】
しかし、本発明による用紙分離装置は、図3あるいは図10に示すように、エアノズルと分離板からなる部材列の最も外側(両端部)にエアノズル71T,71Tを配置したことにより、上記のように最大サイズの用紙を通紙する場合でも用紙端部での波うちを抑制することができるようになった。
【0063】
また、小サイズ用紙(最大サイズよりも小さなサイズの用紙)を連続通紙した場合には、通紙領域における定着部材(定着ローラ,定着ベルト)の温度は用紙によって奪われるため温度が低下するが、通紙領域外(上記実施例のように中央基準の場合は軸方向の両端部)では用紙による温度低下が発生しないため、温度が過度に上昇する場合がある。しかし、上記第1実施例及び第2実施例では、小サイズ用紙の連続通紙時に、端部エアノズル71T,71Tから噴出された圧縮空気が定着部材(定着ローラ,定着ベルト)に吹きかかるため、定着部材両端部での温度過昇を抑制することができ、定着部材長手方向における温度バランスを改善する効果がある。
【0064】
なお、いわゆる小サイズ用紙に限らず、例えば図11に示すB4短辺長さに相当するB5横通紙や、A4縦通紙などの定形紙を使用する場合においても、定着部材端部での(通紙領域外での)温度の過昇を抑制する効果が生ずる。
【0065】
最後に、本発明に係る定着装置を搭載する画像形成装置の一例について図15を参照して説明する。
図15に示す画像形成装置は、タンデム型カラー複写機として構成されたものである。このカラー複写機100は、装置本体中央部に位置する画像形成部100Aと、該画像形成部100Aの下方に位置する給紙部100Bと、画像形成部100Aの上方に位置する図示しない画像読取部とを有する高速画像形成装置であり、画像形成部100Aには定着装置50が組み込まれている。
【0066】
画像形成部100Aには、水平方向に延びる転写面を有する中間転写ベルト110が配置されており、該中間転写ベルト110の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像を形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の像を担持する像担持体としての感光体105Y,105M,105C,105Kが中間転写ベルト110の転写面に沿って並置されている。
【0067】
各感光体105Y,105M,105C,105Kは、それぞれ同じ方向(図中反時計回り)に回転可能なドラムで構成されており、その周りには、回転過程において画像形成処理を実行する光書き込み装置101、帯電装置102Y,102M,102C,102K、現像装置103Y,103M,103C,103K、一次転写装置104Y,104M,104C,104K及びクリーニング装置が配置されている。また、各現像装置103Y,103M,103C,103Kには、それぞれのカラートナーが収容されている。感光体105、帯電装置102、現像装置103などは作像ユニットを形成している。
【0068】
中間転写ベルト110は、駆動ローラと従動ローラに掛け回され、感光体105Y,105M,105C,105Kとの対向位置において各感光体と同じ方向に移動可能に構成されている。また、従動ローラの1つであるローラ111に対向する位置に二次転写ローラ112が設けられている。二次転写ローラ112から定着装置50までの用紙Pの搬送経路は横方向の経路になっている。定着装置50は先に説明したように、エア分離方式の用紙分離装置70(170)を備えるものである。
【0069】
給紙部100Bは、記録媒体としての用紙Pを積載収容する給紙トレイ120と、該給紙トレイ120内の用紙Pを最上のものから順に1枚ずつ分離して、転写ローラ112の位置まで搬送する搬送機構を有している。
【0070】
カラー複写機100における画像形成動作に関しては、感光体105Yの表面が帯電装置102Yにより一様に帯電され、画像読取部からの画像情報に基づいて感光体105Y上に静電潜像が形成される。該静電潜像はイエローのトナーを収容した現像装置103Yによりトナー像として可視像化され、該トナー像は所定のバイアスが印加される1次転写装置104Yによって中間転写ベルト110上に一次転写される。他の感光体105M,105C,105Kにおいてもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、各色のトナー像が中間転写ベルト110上に静電気力によって順に転写されて重ね合わせられる。
【0071】
次に、感光体105Y,105M,105C,105Kから中間転写ベルト110上に一次転写されたトナー像は、ローラ111と二次転写ローラ112の間に搬送されてきた用紙Pに転写される。トナー像が転写された用紙Pはさらに定着装置50まで搬送され、上述したように、定着ベルト51と加圧ローラ56で形成される定着ニップ部においてトナー像の定着が行なわれる。定着ニップ部における用紙Pの出口側には用紙分離装置70(170)が配置されており、エアノズルからのエア噴射によって用紙Pは定着ベルト51や加圧ローラ56に巻き付くことなく定着ニップ部の出口から排出される。
【0072】
次いで、定着ニップ部から排出された用紙Pは、排出経路に沿って用紙排出部であるスタッカ115に送り出される。
以上のように、本実施形態のカラー複写機100によれば、用紙分離装置を備えた定着装置50を有する画像形成装置によってより高度な定着分離機能が得られ、様々な紙種・画像に対応することができる。特に、用紙端部での波うちを抑制してジャム発生を防止することができ、安定した用紙分離及び用紙搬送を可能としている。
【0073】
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、エアノズル及び分離板の個数及びそれらの並び順も、最も外側にエアノズルを配置するという本発明の範囲内で適宜設定できるものである。また、エアノズルの形状や構成、分離板の大きさや形状・構成も適宜なものを使用可能であるし、エアノズル及び分離板の材質も任意である。エアノズル及び分離板の支持方法も任意である。エアノズルへ圧縮空気を供給する装置構成も、従来周知なものを含め、任意な構成を採用可能である。
【0074】
定着装置の構成も適宜な構成を採用可能であり、定着ヒータとしては一般的なハロゲンランプはもちろん、誘導加熱手段等、任意なものを使用可能である。加圧側にも熱源を備えていても良い。
【0075】
画像形成装置の各部構成も任意であり、例えばタンデム式に限らず、任意の作像方式を採用可能である。また、中間転写方式に限らず、直接転写方式も採用可能である。また、3色のトナーを用いるフルカラー機や、2色のトナーによる多色機、あるいはモノクロ装置にも本発明を適用することができる。もちろん、画像形成装置としては複写機に限らず、プリンタやファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
【符号の説明】
【0076】
50 定着装置
51 定着ベルト(定着部材)
52 定着ローラ
53 加熱ローラ
54 定着ヒータ
56 加圧ローラ
70,170 用紙分離装置
71 エアノズル
71a エア通路
71b 圧縮空気吹出し口
71T 端部エアノズル
72 フレーム
73 ステー
74 軸
75 分離板
76 突当部材
100 カラー複写機
101 光書き込み装置
105 感光体
110 中間転写ベルト
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特開昭61−59468号公報
【特許文献2】特開昭60−247672号公報
【特許文献3】特許第2581429号公報
【特許文献4】特開2005−49647号公報
【特許文献5】特開2007−199462号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアノズルと分離板とを有し、定着部材と加圧部材により形成される定着ニップ部から搬送されてくる記録媒体を前記定着部材又は前記加圧部材から分離させる記録媒体分離装置において、
複数個の前記エアノズルと少なくとも1つの前記分離板とが前記定着部材長手方向に沿って並設されており、該部材列の前記定着部材長手方向における両端に前記エアノズルが配置されていることを特徴とする記録媒体分離装置。
【請求項2】
前記部材列の両端に配置された前記エアノズルは、当該記録媒体分離装置が装着される定着装置で通紙可能な最大サイズの記録媒体の幅方向両端部の位置と略一致するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の記録媒体分離装置。
【請求項3】
前記部材列の両端に配置された前記エアノズルは、前記最大サイズの記録媒体の幅以内に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の記録媒体分離装置。
【請求項4】
前記部材列の両端に配置された前記エアノズルは、前記最大サイズの記録媒体よりも小さいサイズの記録媒体の中での最大サイズの定形紙の幅よりも外側に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の記録媒体分離装置。
【請求項5】
前記複数個のエアノズルは、当該記録媒体分離装置が装着される定着装置で使用される代表的なサイズの用紙を通紙した場合の用紙両端部に対応する位置に配置されたエアノズルを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置。
【請求項6】
前記エアノズル及び前記分離板が、定着部材に対して非接触に支持されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置。
【請求項7】
前記エアノズル及び前記分離板は、定着部材に対するギャップを調整可能に設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置。
【請求項8】
前記エアノズル及び前記分離板は、少なくとも記録媒体に相対する表面がフッ素樹脂コートが施されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置。
【請求項9】
前記エアノズル及び前記分離板は、フッ素樹脂材料で形成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置または請求項10に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
エアノズルと分離板とを有し、定着部材と加圧部材により形成される定着ニップ部から搬送されてくる記録媒体を前記定着部材又は前記加圧部材から分離させる記録媒体分離装置において、
複数個の前記エアノズルと少なくとも1つの前記分離板とが前記定着部材長手方向に沿って並設されており、該部材列の前記定着部材長手方向における両端に前記エアノズルが配置されていることを特徴とする記録媒体分離装置。
【請求項2】
前記部材列の両端に配置された前記エアノズルは、当該記録媒体分離装置が装着される定着装置で通紙可能な最大サイズの記録媒体の幅方向両端部の位置と略一致するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の記録媒体分離装置。
【請求項3】
前記部材列の両端に配置された前記エアノズルは、前記最大サイズの記録媒体の幅以内に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の記録媒体分離装置。
【請求項4】
前記部材列の両端に配置された前記エアノズルは、前記最大サイズの記録媒体よりも小さいサイズの記録媒体の中での最大サイズの定形紙の幅よりも外側に配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の記録媒体分離装置。
【請求項5】
前記複数個のエアノズルは、当該記録媒体分離装置が装着される定着装置で使用される代表的なサイズの用紙を通紙した場合の用紙両端部に対応する位置に配置されたエアノズルを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置。
【請求項6】
前記エアノズル及び前記分離板が、定着部材に対して非接触に支持されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置。
【請求項7】
前記エアノズル及び前記分離板は、定着部材に対するギャップを調整可能に設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置。
【請求項8】
前記エアノズル及び前記分離板は、少なくとも記録媒体に相対する表面がフッ素樹脂コートが施されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置。
【請求項9】
前記エアノズル及び前記分離板は、フッ素樹脂材料で形成されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の記録媒体分離装置または請求項10に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−63742(P2012−63742A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117036(P2011−117036)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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