説明

記録媒体及び画像形成装置

【課題】構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料による不可視の第1の画像と、該第1の画像に関する関連情報を示す可視の第2の画像と、が形成された記録媒体を提供すること、また、前記第1の画像及び前記第2の画像を形成する画像形成装置を提供すること。
【解決手段】下記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料により形成された不可視画像12と、該不可視画像12に関連する関連情報を示す可視の関連画像13と、が形成された記録媒体10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、文字、映像、音声などの情報を含む電子文書に含まれる音声データ等の不可視のデータを解析し、この電子文書の印刷時に、該電子文書を解析して該音声データなどの存在や位置や内容を示す、可視の符号やマークを記録媒体に印刷することが提案されている。
【0003】
特許文献2には、可視光下で目視される色剤によって形成された可視画像と、この可視画像の位置に基づいて存在位置を確認される不可視画像と、の形成された印刷物が提案されている。特許文献2では、この不可視画像には蛍光インクが用いられている。
【0004】
特許文献3には、文字画像と、ドット(黒画素)の配列によって特定の波長と方向を持つ波を表現したドットパターンによる不可視の画像の形成された記録媒体が示されている。特許文献3では、このドットパターンを形成する各ドットには、画像と同じ可視の色材が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−112698号公報
【特許文献2】特開2005−132027号公報
【特許文献3】特開2006−121569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料による不可視の第1の画像と、該第1の画像に関する関連情報を示す可視の第2の画像と、が形成された記録媒体を提供すること、また、前記第1の画像及び前記第2の画像を形成する画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、
下記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料により形成された不可視の第1の画像と、該第1の画像に関する関連情報を示す可視の第2の画像と、が形成された記録媒体である。
【0008】
【化1】

【0009】
請求項2に係る発明は、
前記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素が、Cuターゲットで波長1.5405ÅのX線照射により測定される粉末X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が少なくとも17.7°,19.9°,22.1°,23.2°,24.9°に回折ピークを示す請求項1に記載の表示媒体である。
【0010】
請求項3に係る発明は、
前記関連情報は、前記第1の画像が前記記録材料により形成されたことを示す情報を含む請求項1または請求項2に記載の表示媒体である。
【0011】
請求項4に係る発明は、
下記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料によって不可視の第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、
前記第1の画像に関する関連情報を示す可視の第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、
を備えた画像形成装置である。
【0012】
【化2】

【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料による不可視の第1の画像と、該第1の画像に関する関連情報を示す可視の第2の画像と、が形成された記録媒体が提供される。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、請求項2に係る発明における回折ピークを示さないペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料により不可視の第1の画像が形成された場合に比べて、不可視の第1の画像の耐光性の向上が図れる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、関連情報により構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料で不可視の第1の画像が形成されていることが分かる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、記録媒体に、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料による不可視の第1の画像と、該第1の画像に関する関連情報を示す可視の第2の画像と、を形成する画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A),(B),(C) 本実施の形態に係る記録媒体の一例を示す模式図である。
【図2】本実施の形態に係る画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図3】本実施の形態に係る画像形成装置における画像処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】本発明の形態の画像形成装置で実行される処理を示すフローチャートである。
【図5】実施例1で得られた、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素のテトラヒドロフラン溶液中の可視近赤外吸収スペクトルを示す線図である。
【図6】実施例における、ISQ−10(A)粒子及び原料のX線回折スペクトルを示す線図である。
【図7】実施例における、ISQ−10(A)粒子及びISQ−10(B)粒子のX線回折スペクトルを示す線図である。
【図8】実施例及び比較例における、ISQ−10(A)粒子、ISQ−10(B)粒子、VONPc、ISQ−3(A)、及びISQ−3(B)粒子のラテックスパッチの可視近赤外吸収スペクトルを示す線図である。
【図9】実施例及び比較例における、ISQ−10(A)粒子、ISQ−10(B)粒子、VONPc、ISQ−3(A)、及びISQ−3(B)粒子のラテックスパッチの耐光性を示す線図であり、照射時間と、反射率との関係を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
(記録媒体)
図1(A)に示すように、本実施の形態の記録媒体10には、不可視の第1の画像である不可視画像12と、該不可視画像12に関する関連情報を示す可視の第2の画像である関連画像13と、が形成されている。
この不可視画像12は、下記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料により形成されている。
【0020】
【化3】

【0021】
なお、本実施の形態における記録媒体10が、本発明の記録媒体に相当し、不可視画像12が、本発明の記録媒体における第1の画像に相当し、関連画像13が、本発明の記録媒体における第2の画像に相当する。
【0022】
なお、本実施形態において、「不可視」とは、可視光において、目視により認識されにくい、理想的には視認されない(即ち、不可視である)ことを意味する。このため、本実施の形態の記録材料により形成される不可視画像12は、不可視の画像である。詳細には、不可視画像12及び該不可視画像12を形成する記録材料では、記録媒体10との色差ΔEが6以下とされている(詳細後述)。また、詳細は後述するが、本実施の形態の記録材料及び該記録材料により形成された不可視画像12は、近赤外光の波長領域の光に対する吸光度が十分に高い(詳細後述)。このため、本実施の形態における不可視画像12は、該近赤外光の波長領域の光を照射して反射光を読取ることによって読取られる。
【0023】
また、本実施の形態において、「可視」とは、可視光において目視により認識されることを示している。具体的には、可視の画像である関連画像13は、記録媒体10との色差ΔEが6以上であることを示している。
【0024】
このため、記録媒体10上の不可視画像12は人の目には目視により認識されにくいものであり、関連画像13は、目視により認識される。
【0025】
この関連画像13は、不可視画像12に関する関連情報を示す可視の画像である。
この関連情報としては、不可視画像12に関する情報であればよいが、具体的には、記録媒体10上に不可視画像12が有ることを示す情報、記録媒体10上の不可視画像12の位置、不可視画像12の形態の種類、不可視画像12の情報の種類や概要、不可視画像12を構成する記録材料の種類等が挙げられる。
記録媒体10上に不可視画像12が有ることを示す情報は、簡単には視認できない不可視画像12が記録媒体10上に有ることを示す情報が挙げられる。不可視画像12の位置としては、記録媒体10上の不可視画像12の位置(例えば、座標)を示す情報が挙げられる。不可視画像12の形態の種類としては、不可視画像12が、絵や写真等の画像であることを示す情報や、文字列であること、またドットパターンなどに代表される記号であることを示す情報等が挙げられる。
また、不可視画像12の情報の概要としては、不可視画像12によって示される情報の概要や要約が挙げられ、不可視画像12の情報の種類としては、不可視画像12が医療情報であることを示す情報や、不可視画像12が音楽情報であることを示す情報等が挙げられる。
また、不可視画像12を構成する記録材料の種類としては、不可視画像12を構成する記録材料に含まれる上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を示す情報が挙げられる。
【0026】
また、この関連画像13は、不可視画像12に関する関連情報を示す可視の画像であればよく、上記関連情報を示す数字や記号(三角印や星印等)であってもよいし、上記関連情報の要約や概要を示す文字列であってもよいし、上記関連情報の内容を意味する予め定められた数字や記号であってもよい。また、不可視画像12を取り囲むようにしてその位置を視認できるようにしたものであってもよい。
【0027】
なお、この記録媒体10上に形成された不可視画像12は、上述のように、不可視であり、目視により容易には認識されないことから、可視光の波長領域外の波長の光と受光素子を用いて読み取らねば内容を確認されない。しかし、本実施の形態の表示媒体10では、目視により認識されない不可視画像12と、不可視画像12に関する関連情報を示す可視の関連画像13と、が記録媒体10上に形成されているので、視認できる関連画像13から、不可視である不可視画像12の存在の有無、位置、内容等が、可視光の波長領域外の光を用いることなく確認される。
【0028】
なお、関連画像13と関連画像13以外の文字や画像等の可視画像16とは、双方とも人の目に視認される画像であるために記録媒体10上で重ならないように形成されることが好ましいのは言うまでもない。加えて、関連画像13がカーボンブラックなどの近赤外光を吸収する材料で構成されている場合、当該関連画像13は、記録媒体10上の、不可視画像12と関連画像も重ならない領域に形成されていることが良い。不可視画像12と重なる領域に形成されてしまうと、不可視画像12を読み取る近赤外光を双方とも吸収してしまうため、識別が困難になるためである。
【0029】
本実施の形態においては、上述のように、不可視画像12は、上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料により形成されている。
【0030】
前記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、ナフタロシアニン系の材料など他の不可視画像に用いられる色素に比べて耐光性が高い。この理由としては、前記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は他の不可視画像に用いられる色素に比べて結晶性が高く、バインダー樹脂への溶解性が低い。このため、光の照射によって光エネルギーを吸収することによる分子内の結合の切断が抑制されると考えられる。
上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、上述のように、従来用いられていた不可視画像に用いられる色素に比べて結晶性が高いが、具体的には、Cuターゲットで波長1.5405ÅのX線照射により測定される粉末X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が、少なくとも9.9°,13.2°,19.9°,20.8°,23.0°に回折ピークを示すものや、少なくとも17.7°、19.9°、22.1°、23.2°、24.9°に回折ピーク示すもの、8.9,17.1,18.4,22.6,24.2に回折ピークを示すもの等が挙げられる。
中でも、上記17.7°、19.9°、22.1°、23.2°、24.9°に回折ピーク示すものが、耐光性の観点から良い。
【0031】
なお、上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、400nm以上750nm以下の可視光波長領域における吸光能力が十分に低く、かつ、750nm以上1000nm以下の近赤外光波長領域における吸光能力が十分に高いものである。
【0032】
この「吸光能力が十分に低い」とは、400nm以上450nmまでの可視光波長領域における溶液のモル吸光係数が少なくとも8100M−1cm−1以下であり、450nm以上650nmまでの可視光波長領域における溶液のモル吸光係数が少なくとも3400M−1cm−1以下であり、650nm以上690nmまでの可視光波長領域における溶液のモル吸光係数が少なくとも8800M−1cm−1以下であり、690nm以上750nmまでの可視光波長領域における溶液のモル吸光係数が少なくとも37000M−1cm−1以下であることを示している。
また、「吸光能力が十分に高い」とは、750nm以上1000nm以下の近赤外光波長領域の全領域における溶液のモル吸光係数の極大値が少なくとも1.5×10−1cm−1以上であることを示している。
【0033】
このため、本実施の形態の記録材料に含まれる上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する本実施形態の記録材料によって形成された不可視画像12は、可視光による不可視性と、近赤外光による読み取りやすさとが両立されている。
【0034】
なお、本実施の形態に係る不可視画像12を形成する記録材料は、下記式(II)及び(III)で表される条件を満たすことが良い。
【0035】
0≦ΔE≦16 式(II)
(100−R)≧75 式(III)
【0036】
上記式(II)中、ΔEは下記式(IV)で表されるCIE1976L*a*b*表色系における色差を示し、式(III)中、R(単位:%)は不可視画像における波長850nmの赤外線反射率を示す。
【0037】
【数1】

【0038】
上記式(II)及び(III)で表される条件を満たすことで、記録材料の色味によらず、不可視画像12の不可視性と不可視画像12の読み取りやすさとが両立されると考えられる。また、耐光性の高さから、不可視画像12の記録された記録媒体10における長期の信頼性が期待される。
【0039】
なお、上記式(IV)中、L、a、bは、不可視画像や関連画像やその他の可視画像の形成されていない記録媒体10表面のL値、a値、およびb値を示し、L、a、bは、それぞれ上記の記録材料を用いて付着量4g/mの不可視画像12を記録媒体10上に形成した時の、該不可視画像12におけるL値、a値、およびb値を示す。
【0040】
なお、上記式(IV)中、L、a、b、L、a、bは、反射分光濃度計を用いて得られる。本実施の形態においては、L、a、b、L、a、bは、反射分光濃度計としてエックスライト株式会社製、x−rite939を用いて測定された値である。
【0041】
上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、例えば以下の反応スキームに従って得られる。
【0042】
【化4】

【0043】
より具体的には、触媒の存在下で、1,8−ジアミノナフタレンと、3,5−ジメチルシクロヘキサノンとを、溶媒中で共沸還流の条件で反応させることにより、ペリミジン中間体(a)が得られる((A−1)工程)。
【0044】
前記(A−1)工程に使用する触媒としては、p−トルエンスルホン酸一水和物、ベンゼンスルホン酸一水和物、4−クロロベンゼンスルホン酸水和物、ピリジン−3−スルホン酸、エタンスルホン酸、硫酸、硝酸、酢酸などが挙げられる。また、前記(A−1)工程に使用する溶媒としては、アルコール、芳香族炭化水素などが挙げられる。ペリミジン中間体(a)は高速カラムクロマトグラフィーまたは再結晶により精製される。
【0045】
次に、ペリミジン中間体(a)と、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオン(「スクアリン酸」又は「四角酸」とも呼ばれる)と、を、溶媒中で共沸還流の条件で反応させることにより、前記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素が得られる((A−2)工程)。該(A−2)工程は、窒素ガス雰囲気で行うことが良い。
【0046】
前記(A−2)工程に使用する溶媒としては、1−プロパノ−ル、1−ブタノール、1−ペンタノール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類が用いられる。また、アルコール類は単独で使用してもよいが、芳香族炭化水素、エーテル類、ハロゲン化炭化水素またはアミド類などの溶媒はアルコール類溶媒と混合して使用することが良い。溶媒としては、具体的には、1−プロパノ−ル、2−プロパノ−ル、1−ブタノール、2−ブタノール、1−プロパノ−ルとベンゼンの混合溶媒、1−プロパノ−ルとトルエンの混合溶媒、1−プロパノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、2−プロパノ−ルとベンゼンの混合溶媒、2−プロパノ−ルとトルエンの混合溶媒、2−プロパノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、1−ブタノールとベンゼンの混合溶媒、1−ブタノールとトルエンの混合溶媒、1−ブタノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、2−ブタノールとベンゼンの混合溶媒、2−ブタノールとトルエンの混合溶媒、2−ブタノ−ルとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒が挙げられる。混合溶媒を使う場合、アルコール類溶媒の濃度は、1容量%以上、または5容量%以上75容量%以下が良い。
【0047】
また、前記(A−2)工程において、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンに対するペリミジン誘導体(a)のモル比(ペリミジン誘導体(a)のモル数/3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンのモル数)は、1以上4以下、または1.5以上3以下が挙げられる。当該モル比が1未満の場合には前記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の収率が低下する場合があり、また、4を超えるとペリミジン誘導体(a)の利用効率が悪くなって、前記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の分離・精製が困難となる場合がある。
【0048】
更に、前記(A−2)工程は、脱水剤を用いると反応時間が短縮し、また、前記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の収率が向上する傾向にある。脱水剤としては、ペリミジン中間体(a)及び3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオンと反応しないものであれば特に制限されないが、オルト蟻酸トリメチル、オルト蟻酸トリエチル、オルト蟻酸トリプロピル、オルト蟻酸トリブチルなどのオルト蟻酸エステル、モレキュラーシーブ等が挙げられる。
【0049】
前記(A−2)工程における反応温度は使用する溶媒の種類によって異なるが、反応液の温度としては60℃以上、または75℃以上である。例えば、1−ブタノールとトルエンの混合溶媒を用いる場合には、反応液の温度が75℃以上105℃であることが良い。
【0050】
また、前記(A−2)工程における反応時間は、溶媒の種類又は反応液の温度によって異なるが、例えば1−ブタノールとトルエンの混合溶媒を用いて反応液の温度を90℃以上105℃以下として反応させる場合、反応時間は2時間以上4時間以下が挙げられる。
【0051】
前記(A−2)工程で生成した前記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、溶媒洗浄、高速カラムクロマトグラフィーまたは再結晶により精製される。
【0052】
本実施の形態の記録媒体10において、上記不可視画像12を構成する記録材料に含まれる、前記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、顔料化処理を行うことが良いが、顔料化処理を行うと結晶系が変化しやすいと考えられる。
そのため、顔料化処理の方法及び処理条件は、顔料化処理前のペリミジン系スクアリリウム色素粒子(原料)の結晶系の変換が抑制されるように調整することが良い。すなわち、ペリミジン系スクアリリウム色素粒子のX線回折ピークを示すように調整されることが良い。具体的には、ペリミジン系スクアリリウム色素では、Cuターゲットで波長1.5405ÅのX線照射により測定される粉末X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が、少なくとも17.7°、19.9°、22.1°、23.2°、24.9°に回折ピークを示すものが良いため、顔料化処理後のペリミジン系スクアリリウム色素が、該回折ピークを示すように調整されることが、耐光性向上の観点から良い。
【0053】
顔料化方法としては、例えば、構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液とを混合し、その混合液について顔料化処理を行う方法が挙げられる。混合液には、必要に応じて水を加えて濃度を調節してもよい。また、顔料化処理に使用する装置としては、ビーズミル加工装置が挙げられる。
【0054】
本実施の形態において、不可視画像12を構成する記録材料は、上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を、粒子として含有することが良い。該構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素は、従来用いられていた不可視画像に用いられる色素に比べて、分子間相互作用が大きく、また、それらの粒子は結晶性が高い。このため、粒子状の上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を記録材料に含有させることで、従来用いられていた不可視画像に用いられる色素に比べて、赤外発色能力及び耐光性がより高められると考えられる。
【0055】
上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の粒子は、例えば(A−2)工程後の精製物をテトラヒドロフランに溶かして、その溶液を、注射器等を用いて、氷冷した蒸留水に撹拌しながら注入して沈殿物を生成させ、その沈殿物を吸引濾過により濾取し、蒸留水で洗浄した後、真空乾燥することによって得られる。このとき、溶液中における上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の濃度、溶液の注入速度、蒸留水の量又は温度、撹拌速度等を調整することにより、得られる沈殿物の粒子径が調整される。
【0056】
上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の粒子のメジアン径d50としては、10nm以上300nm以下や、20nm以上200nm以下が挙げられる。
上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の粒子のメジアン径d50が上記範囲内であると、耐光性の低下が抑制され、且つ赤外発色能力が向上すると考えられる。
【0057】
なお、粒子化およびメヂアン径の制御のための上記処理は、上記顔料化処理の前後のいずれで行ってもよい。
【0058】
本実施の形態において、不可視画像12を構成する記録材料には、該記録材料及び該記録材料によって形成される不可視画像12が「不可視」であれば、後述するように、上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素以外の成分が更に含有されていてもよいが、該記録材料に含まれる上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の含有量は、記録材料の全質量(100質量%)に対して、0.05質量%以上3質量%以下、または0.1質量%以上2質量%以下である。
【0059】
不可視画像12を構成する記録材料の用途は、特に制限されないが、電子写真用トナー、インクジェットプリンター用インク、あるいは、活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷又はシルク印刷用のインクなどの用途に用いられる。
このため、本実施の形態の記録媒体10上の不可視画像12は、上記記録材料によって構成されればよく、電子写真方式の画像形成装置によって形成されてもよいし、インクジェットプリンターによって形成されてもよいし、活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、またはシルク印刷などの装置によって形成されてもよい。
【0060】
記録材料が、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナーである場合には、本実施の形態に係る記録材料は、1成分現像剤として単独で用いても、あるいはキャリアと組み合わせた2成分現像剤として用いてもよい。キャリアとしては、公知のキャリアが用いられ、例えば、芯材上に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリアが挙げられる。この樹脂被覆層には導電粉等が分散されていてもよい。
【0061】
また、記録材料が、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナーである場合、記録材料には結着樹脂が含有される。使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体あるいは共重合体が例示され、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等も結着樹脂として使用される。
【0062】
また、記録材料が、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナーである場合、記録材料には、帯電制御剤や、オフセット防止剤等を更に含有してもよい。帯電制御剤としては正帯電用のものと負帯電用のものがあり、正帯電用には、第4級アンモニウム系化合物がある。また、負帯電用には、アルキルサリチル酸の金属錯体、極性基を含有したレジンタイプの帯電制御剤等が挙げられる。オフセット防止剤としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等が挙げられる。
【0063】
また、記録材料が、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナーである場合、流動性、粉体保存性の向上、摩擦帯電制御、転写性能、クリーニング性能向上等のために、無機粒子あるいは有機粒子を外添剤としてトナー表面に添加してもよい。無機粒子としては、公知のもの、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化セリウム等が挙げられる。また目的に応じて無機粒子に公知の表面処理を施してもよい。また、有機粒子としては、フッ化ビニリデン、メチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート等を構成成分とする乳化重合体、あるいはソープフリー重合体等が挙げられる。
【0064】
記録材料が、インクジェットプリンターで用いられるインクである場合、記録材料としては、水を含有する水性インクとしての態様が挙げられる。また、本実施の形態の記録材料には、インクの乾燥防止及び浸透性を向上させるために、水溶性の有機溶剤を更に含有させてもよい。水としては、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。また、有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、N−アルキルピロリドン類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール類、メタノール、ブタノール、フェノールのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物等のグリコールエーテル類等が挙げられる。使用される有機溶媒は1種類でも2種類以上でもよい。有機溶媒は、吸湿性、保湿性、本実施形態に係るペリミジン系スクアリリウム色素の溶解度、浸透性、インクの粘度、氷点等を考慮して適宜選択される。インクジェットプリンターで用いられるインク中の有機溶媒の含有率としては、1質量%以上60質量%以下が挙げられる。
【0065】
また、本実施の形態に係る記録材料が、インクジェットプリンターで用いられるインクである場合、インクジェットプリンターのシステムに要求される諸条件を満たすために、記録材料には、インクの成分として従来知られている添加物が含有される。この添加物としては、pH調製剤、比抵抗調製剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤、金属封鎖剤等が挙げられる。pH調整剤としては、アルコールアミン類、アンモニウム塩類、金属水酸化物等が挙げられる。また、比抵抗調製剤としては、有機塩類、無機塩類が挙げられる。金属封鎖剤としては、キレート剤等が挙げられる。
【0066】
本実施の形態に係る記録材料が、インクジェットプリンターで用いられるインクである場合、噴封ノズル部の閉塞やインク吐出方向の変化等が生じない程度に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂等の水溶性樹脂を含有させてもよい。
【0067】
また、本実施の形態に係る記録材料が、活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、又はシルク印刷用のインクである場合、記録材料は、ポリマーや有機溶剤を含有する油性インクの態様とすればよい。ポリマーとしては、一般的には、蛋白質、ゴム、セルロース類、シエラック、コパル、でん粉、ロジン等の天然樹脂;ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂;レゾール型フェノール樹脂尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。また、有機溶媒としては、上記インクジェットプリンター用インクの説明において例示された有機溶媒が挙げられる。
【0068】
また、本実施の形態に係る記録材料が、活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、又はシルク印刷用のインクである場合、記録材料は、印刷皮膜の柔軟性や強度を向上させるための可塑剤、粘度調整、乾燥性向上のための溶剤、乾燥剤、粘度調整剤、分散剤、各種反応剤等の添加剤を更に含有させてもよい。
【0069】
また、本実施の形態の記録材料に含まれる、上記構造式(I)で示されるペリミジン系スクアリリウム色素は、上述のように、耐光性に優れた色素であるため、該色素を含む記録材料は、耐光性に優れている。この記録材料の耐光性をより向上させる観点から、安定化剤を更に含有した構成としてもよい。安定化剤としては、励起状態の有機近赤外吸収色素からエネルギーを受け取る必要があり、近赤外吸収色素の吸収帯よりも長波長側に吸収帯を有するものが用いられる。また、安定化剤は、一重項酸素による分解が起こり難く、本実施の形態における上記構造式(I)で示されるペリミジン系スクアリリウム色素と相溶性が高いものを用いることが良い。この特性を有する安定化剤としては、有機金属錯体化合物が挙げられる。中でも、下記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
【0070】
【化5】

【0071】
一般式(V)中、R,R,R,Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ置換又は未置換のフェニル基を示す。R,R,R,Rで示されるフェニル基が置換基を有する場合、当該置換基としては、H、NH、OH、N(CH2h+1、OCH2h+1、C2h−1、C2h+1、C2hOH又はC2hOC2i+1(hは1から18の整数を示し、iは1から6の整数を示す)などが挙げられる。また、X,X,X,Xは、互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ、O、S、Seを示し、YはNi、Co、Mn、Pd、Cu、Pt等の遷移金属を示す。
【0072】
上記一般式(V)で表される化合物の中でも、下記構造式(VI)で表される化合物が特に良い。
【0073】
【化6】

【0074】
本実施の形態の記録材料に含まれる安定化剤の濃度は、上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素の質量に対して、1/10倍以上2倍以下が良い。
【0075】
本実施の形態にかかる記録材料を用いて記録された不可視画像12は、例えば750nm以上1000nm以下のいずれかの波長で発光する半導体レーザーまたは発光ダイオードを光学読み取り用の光源として用い、近赤外光に高い分光感度を有する汎用の受光素子を使用することにより、簡易にかつ高感度に読み出される。受光素子としては、例えばシリコンによる受光素子(CCD等)が挙げられる。
【0076】
なお、図1(A)に示す例では、記録媒体10上の1箇所の不可視画像12が形成され、この不可視画像12に関する関連情報を示す関連画像13が1箇所に形成されている形態を説明した。しかし、記録媒体10上に形成される不可視画像12は、図1(B)に示すように、記録媒体10A上に、同じ内容の複数の不可視画像12(不可視画像12A、不可視画像12A、不可視画像12A)が記録媒体10上の複数箇所に形成された形態であってもよい。この場合には、複数の各不可視画像12(不可視画像12A、不可視画像12A、不可視画像12A)の各々に対応する関連画像13(関連画像13A、関連画像13A、関連画像13A)が記録媒体10A上に形成されていればよい。
【0077】
また、記録媒体10上に形成される不可視画像12は、図1(C)に示すように、記録媒体10B上に、異なる内容の複数種類(例えば、不可視画像12A、不可視画像12A、及び不可視画像12Aと、不可視画像12B、不可視画像12B、不可視画像12Bと、の2種類)の不可視画像12が複数箇所に形成された形態であってもよい。
この場合には、複数種類で複数箇所に形成された各不可視画像12(不可視画像12A、不可視画像12A、不可視画像12A、不可視画像12B、不可視画像12B、不可視画像12B)の各々に対応する関連画像13(関連画像13A、関連画像13A、関連画像13A、関連画像13B、関連画像13B、関連画像13B)が記録媒体10B上に形成されていればよい。
【0078】
(画像形成装置)
以下、記録媒体10上に、上記の不可視画像12及び関連画像13を形成する装置として、電子写真方式の画像形成装置を用いた形態を一例として挙げて説明する。
【0079】
このため、以下に説明する画像形成装置では、本実施の形態における記録材料を、電子写真方式の画像形成装置に用いられるトナーとして用い(以下、不可視トナーと称して説明する)、該不可視トナーで不可視画像12を形成する形態を説明する。なお、関連画像13や他の可視画像については、従来公知のトナー(可視の色を示すトナー)を用いて形成する。
【0080】
図2に示すように、本実施の形態の画像形成装置11は、不可視画像形成部15、可視画像形成部14、中間転写体16、給紙手段17、用紙搬送路18、定着器19、画像処理装置20、像形成制御装置21、排紙手段22、及びユーザインターフェイス(UI)装置23を有している。
【0081】
なお、画像形成装置11が、本発明の画像形成装置に相当し、不可視画像形成部15が、本発明の画像形成装置の第1の画像形成装置に相当し、可視画像形成部14が、本発明の画像形成装置の第2の画像形成装置に相当する。
【0082】
画像形成装置11の概略を説明すると、画像処理装置20は、ネットワーク回線や無線回線等を介してパーソナルコンピュータ等の外部から入力された画像データに対して、後述する合成処理等の画像処理を施し、像形成制御装置21に対して出力する。
【0083】
像形成制御装置21は、画像処理を施された画像データ(後述する“第1の印刷データ及び第2の印刷データ”)に基づいて、不可視画像形成部15及び可視画像形成部14を制御する。なお、像形成制御装置21は、画像処理装置20の一部として、画像処理装置20に含まれてもよい。
【0084】
画像形成装置11の外面には、例えばタッチパネルなどのUI装置23が設けられている。UI装置23は、画像形成装置11の制御情報や指示情報などを表示すると共に、指示情報などのユーザによる入力を受入れる。即ち、ユーザは、UI装置23を介して画像形成装置11を操作する。なお、UI装置23は、スイッチなどの入力のみを受入れるものであってもよいし、表示などの出力のみを行うものであってもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。
【0085】
画像形成装置11の内部には、不可視画像12を形成する不可視画像形成部15と、関連画像13を含む可視画像を形成する可視画像形成部14と、が設けられている。可視画像形成部14は、カラー画像を構成する色に対応する複数の可視画像形成部14を含んだ構成とされている。本実施の形態では、可視画像形成部14は、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色に対応して可視画像形成部14K、可視画像形成部14Y、可視画像形成部14M、可視画像形成部14Cを含んだ構成とされている。
これらの不可視画像形成部15と、可視画像形成部14に含まれる可視画像形成部14K、可視画像形成部14Y、可視画像形成部14M、可視画像形成部14Cは、中間転写体16に沿って間隔を空けて配列されている。
【0086】
なお、本実施の形態では、不可視画像形成部15は、可視画像形成部14より中間転写体16の搬送方向上流側に設けられている形態を説明するが、可視画像形成部14より下流側に設けられていても良い。また、不可視画像形成部15は、画像形成装置11とは別体として設けられていても良い。
【0087】
中間転写体16は、図中矢印Aの方向に回転される。不可視画像形成部15は、詳細は後述するが、画像処理装置20から入力された第2の印刷データに基づいて、上記に説明した上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料からなる不可視トナーによる不可視画像を、中間転写体16上に形成(一次転写)する。
さらに、可視画像形成部14に含まれる可視画像形成部14K、可視画像形成部14Y、可視画像形成部14M、及び可視画像形成部14Cは、画像処理装置20から入力された、後述する第1の印刷データに基づいて、各色の可視のトナーによる可視画像を中間転写体16上に順次形成(一次転写)する。なお、各可視画像形成部14K、可視画像形成部14Y、可視画像形成部14M、及び可視画像形成部14Cの色の順序は、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の順に限定されるものではなく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順序など、その順序は任意である。
【0088】
給紙手段17から供給された記録媒体10は、用紙搬送路18上を搬送される。そして、この記録媒体10には、上記中間転写体16上に転写された不可視トナーによる不可視画像及び可視のトナーによる可視画像が転写(二次転写)され、転写された不可視画像及び可視画像が定着器19によって記録媒体に定着され、矢印Bに沿って外部に排出される。
【0089】
次に、画像形成装置11の各構成についてより詳細に説明する。
【0090】
画像処理装置20は、ネットワーク回線や無線回線等を介してパーソナルコンピュータ等の外部から入力された画像データに対して、後述する合成処理等の画像処理を施して、第1の印刷データ及び第2の印刷データを作成し、像形成制御装置21に対して出力する。なお、本実施の形態では、上記外部から入力された画像データには、記録媒体10に形成する対象の可視画像16(図1参照)の可視画像データと、記録媒体10に形成する不可視画像12の不可視画像データと、が含まれているものとして説明する。この可視画像16は、記録媒体10に形成される可視の画像であって、上記に説明した関連画像13とは異なる画像である。
【0091】
この画像データに含まれる可視画像データは、可視画像の各画素の色やドットの大きさ、及び位置(記録媒体10上の位置)を示す情報であり、例えば、RGB各8bitで表現されたsRGB空間に属する画像である。これらの可視画像データは、画像処理装置20による画像処理によって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4階調の可視画像の印刷データに変換される。また、この可視画像の印刷データには、画像処理装置20において作成された関連画像情報が合成されて、第1の印刷データとされる。すなわち、第1の印刷データとは、可視画像の印刷データに関連画像情報の合成されたデータであり、記録媒体10上に可視の画像(可視画像16及び関連画像13)を形成するためのデータである。
また、この画像データに含まれる不可視画像データは、記録媒体10上に形成される不可視画像12の各画素の位置やドットの大きさ等を示す情報である。この不可視画像データは、画像処理装置20において、不可視画像形成部15で処理される形式のデータに変換されることで、不可視画像12を印刷するための第2の印刷データとされる。すなわち、第2の印刷データとは、記録媒体10上に不可視画像12を形成するためのデータである。
【0092】
像形成制御装置21は、上記第1の印刷データに基づいて、可視画像形成部14K、可視画像形成部14Y、可視画像形成部14M、及び可視画像形成部14Cの各々に含まれる、後述する光走査装置140K、光走査装置140Y、光走査装置140M、及び光走査装置140Cの各々に対して、パルス信号を出力する。また、像形成制御装置21は、後述する不可視画像変換処理によって作成された第2の印刷データに基づいて、不可視画像形成部15に含まれる光走査装置140Lに対してパルス信号を出力する。
【0093】
不可視画像形成部15は、不可視画像12を形成する装置である。
この不可視画像形成部15は、画像処理装置20から入力された第2の印刷データに応じてレーザ光を走査する光走査装置140Lと、この光走査装置140Lにより走査されたレーザ光により静電潜像が形成される像形成装置150Lとを有する。
【0094】
光走査装置140Lは、半導体レーザ142Lを、第2の画像データに応じて変調して、この半導体レーザ142Lからレーザ光LBを該第2の画像データに応じて出射する。この半導体レーザ142Lから出射されたレーザ光LBは、第1の反射鏡143L及び第2の反射鏡144Lを介して回転多面鏡146Lに照射され、この回転多面鏡146Lによって偏向走査され、第2の反射鏡144L、第3の反射鏡148L及び第4の反射鏡149Lを介して、像形成装置150Lの像保持体152L上に照射される。
【0095】
像形成装置150Lは、矢印Aの方向に沿って回転する像保持体152Kと、この像保持体152Lの表面を帯電する一次帯電用の帯電装置154Lと、像保持体152L上に形成された静電潜像を現像する現像器156Lと、除去装置158Lと、を備えている。
【0096】
現像器156Lの内部には、本実施の形態における記録材料である、上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料から構成された不可視トナー、または該不可視トナーと公知のキャリアと、が保持されている。そして、この現像器156Lから像保持体152Lへ、該不可視トナーが供給される。像保持体152Lは、帯電装置154Lにより一様に帯電され、光走査装置140Lにより照射されたレーザ光により静電潜像を形成される。像保持体152Lに形成された静電潜像は、現像器156Lから供給された上記不可視トナーで現像され、中間転写体16に転写される。なお、該転写の後に像保持体152Lに付着しているトナー及び紙粉等は、除去装置158Lによって除去される。
【0097】
このため、不可視画像形成部15によって、上記不可視トナーによる不可視画像12が形成される。
【0098】
一方、可視画像形成部14K、可視画像形成部14Y、可視画像形成部14M、及び可視画像形成部14Cは、可視の画像である関連画像13と、関連画像13以外の可視の画像である可視画像16(図1参照)と、を形成する装置である。
【0099】
可視画像形成部14Kは、画像処理装置20から入力された第1の印刷データに応じてレーザ光を走査する光走査装置140Kと、この光走査装置140Kにより走査されたレーザ光により静電潜像が形成される像形成装置150Kとを有する。
【0100】
光走査装置140Kは、半導体レーザ142Kを黒色(K)の第1の画像データに含まれる黒色の画像データに応じて変調して、この半導体レーザ142Kからレーザ光LB(K)を画像データに応じて出射する。この半導体レーザ142Kから出射されたレーザ光LB(K)は、第1の反射鏡143K及び第2の反射鏡144Kを介して回転多面鏡146Kに照射され、この回転多面鏡146Kよって偏向走査され、第2の反射鏡144K、第3の反射鏡148K及び第4の反射鏡149Kを介して、像形成装置150Kの像保持体152K上に照射される。
【0101】
像形成装置150Kは、矢印Aの方向に沿って回転する像保持体152Kと、この像保持体152Kの表面を帯電する帯電装置154Kと、像保持体152K上に形成された静電潜像を現像する現像器156Kと、除去装置158Kと、を備えている。
現像器156Kの内部には、従来公知の黒色のトナー、または該黒色のトナーと公知のキャリアと、が保持されており、該黒色のトナーが像保持体152Kへ供給される。像保持体152Kは、帯電装置154Kにより帯電され、光走査装置140Kにより照射されたレーザ光LB(K)により静電潜像を形成される。像保持体152Kに形成された静電潜像は、現像器156Kから供給された上記黒色のトナーで現像され、中間転写体16に転写される。なお、該転写の後に像保持体152Kに付着しているトナー及び紙粉等は、除去装置158Kによって除去される。
【0102】
可視画像形成部14Y、可視画像形成部14M、及び可視画像形成部14Cについては、可視画像形成部14Kの現像器156Kに含まれる黒色のトナーが、各々、公知のイエローのトナー、公知のマゼンタのトナー、公知のシアンのトナーである以外は、同じ構成であるため詳細な説明を省略する。
なお、図中、可視画像形成部14Y、可視画像形成部14M、及び可視画像形成部14Cの構成部材は、可視画像形成部14Kにおける該当する各構成部材に付与された符号の「K」をそれぞれ「Y」、「M」、「C」で置き換えた符号で示している。
【0103】
中間転写体16は、支持部材164と、支持部材165と、支持部材166と、支持部材167と、支持部材168と、支持部材169と、によって内側から支持されており、駆動モータ(図示省略)によって何れか1つの支持部材(例えば支持部材164)が回転駆動されることにより、矢印Aの方向に循環駆動される。この中間転写体16としては、例えば、可撓性を有するポリイミド等の合成樹脂フィルムを帯状に形成し、この帯状に形成された合成樹脂フィルムの両端を溶着等によって接続することにより無端ベルト状に形成されたものが用いられる。
【0104】
また、不可視画像形成部15、可視画像形成部14K、可視画像形成部14Y、可視画像形成部14M、可視画像形成部14Cの各々の、中間転写体16を介して向かい合う位置には、それぞれ、転写部材162L、転写部材162K、転写部材162Y、転写部材162M、及び転写部材162Cが配設され、像保持体152L、像保持体152K、像保持体152Y、像保持体152M、像保持体152C上に形成されたトナーによる像は、これらの転写部材162L、転写部材162K、転写部材162Y、転写部材162M、及び転写部材162Cの各々により中間転写体16上に転写される。なお、中間転写体16に付着した残留トナーは、二次転写位置の下流に設けられた除去装置189により除去される。
【0105】
用紙搬送路18には、給紙手段17から記録媒体10を取り出す給紙部材180と、複数の支持部材181、支持部材182、支持部材183と、支持部材184と、が配設されている。
【0106】
また、用紙搬送路18上の二次転写位置には、支持部材168に圧接された支持部材185が配設されており、中間転写体16上に転写された各色のトナーによる像(可視画像及び不可視画像)は、この支持部材185による圧接力及び静電気力で記録媒体10上に二次転写される。
【0107】
これによって、記録媒体10上に、不可視画像12、関連画像13、及び可視画像16が転写され、該記録媒体10は、搬送ベルト186及び搬送ベルト187によって定着器19へと搬送される。
【0108】
定着器19は、記録媒体10に対して加熱処理及び加圧処理を施すことにより、該記録媒体10上の不可視画像12、関連画像13、及び可視画像16の各々を構成する不可視トナー及びトナーを記録媒体10に溶融固着させる。
【0109】
次に、画像処理装置20の機能構成について説明する。図3に示すように、画像処理装置20は、画像データ受付部200、色空間変換部202、合成部204、第1のデータ出力部206、関連画像情報生成部208、変換部210、及び第2のデータ出力部を備えている。
【0110】
画像処理装置20に含まれる上記各構成は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及びプログラムなどによりソフトウェア的に実現されてもよいし、ASIC(Application Specified Integrated Circuit)などによりハードウェア的に実現されてもよい。また、画像処理装置20は、画像形成装置11のみでなく、例えばパーソナルコンピュータなどに含まれてもよい。
【0111】
画像処理装置20において、画像データ受付部200は、外部から画像データを受け付ける。この画像データには、上述のように、記録媒体10に形成する可視画像の可視画像データと、記録媒体10に形成する不可視画像12の不可視画像データと、が含まれている。
画像データ受付部200では、外部から受け付けた該画像データに含まれる可視画像データを、色空間変換部202に対して出力する。この可視画像データは、例えば、RGB各8bitで表現されており、sRGB空間に属する画像の画像データである。
また、画像データ受付部200では、該画像データに含まれる上記可視画像データと、不可視画像データと、を、関連画像情報生成部208に出力する。また、画像データ受付部200では、該画像データに含まれる不可視画像データを変換部210へ出力する。
【0112】
可視画像データを受け付けた色空間変換部202では、予め記憶されていた色再現特性を用いて、入力された可視画像データ(RGB)を測色値であるCIELAB(L*,a*,b*)色空間(又はCIEXYZ)に変換する。また、色空間変換部202は、色再現特性を用いて、変換されたCIELAB色空間の可視画像データを印刷処理に適した表色系のYMCK色空間の可視画像データに変換して、可視画像の印刷データとして、合成部204へ出力する。ここで、色再現特性とは、画像の色再現特性を示す情報であり、例えば、ICCプロファイルである。なお、色空間変換部202は、予め記憶されている色変換テーブルを用いて、入力されたRGB色空間の画像をYMCK色空間の画像データに変換してもよい。
【0113】
不可視画像データ及び可視画像データを受け付けた関連画像情報生成部208では、受け付けた不可視画像データに基づいて、該不可視画像データの不可視画像(図1の不可視画像12に相当)に関する関連画像(図1の関連画像13に相当)を示す情報を生成する。この関連画像を示す情報の生成は、例えば、複数の鍵となる文字列を示す情報と、予め作成された関連画像を示す情報と、を対応づけて記憶しておく。そして、受け付けた不可視画像データから、上記鍵となる文字列を検索し、該検索した文字列を示す情報に対応する、関連画像を示す情報を読取ることによって行えばよい。
なお、この関連画像を示す情報としては、上記に説明したように、該不可視画像が記録媒体10上に形成されたときの位置や、該不可視画像を構成する記録材料や、該記録材料に含まれる上記構造式(I)で表されペリミジン系スクアリリウム色素を示す情報や、該不可視画像の種類等を示す情報が挙げられる。
また、関連画像情報生成部208では、関連画像13の記録媒体10上の位置(座標)を示す情報を作成する。そして、上記作成した関連画像を示す情報と、該関連画像の位置を示す情報と、を含む関連画像情報を生成して、合成部204へ出力する。
この関連画像13の記録媒体10上の位置を示す情報は、例えば、下記方法で算出すればよい。例えば、関連画像情報生成部208では、画像データ受付部200から受け付けた可視画像データから、記録媒体10上に形成される可視画像(図1の可視画像16に相当)の位置を読取る。また、関連画像情報生成部208では、画像データ受付部200から受け付けた不可視画像データから、記録媒体10上に形成される不可視画像12の位置を読取る。そして、これらの位置を示す情報に基づいて、記録媒体10上に形成される関連画像13が、記録媒体10上で、該可視画像16及び不可視画像12に重ならないように、該関連画像13の記録媒体10上の位置を示す情報を作成すればよい。
なお、関連画像情報の生成方法は、上記方法に限られない。
【0114】
この関連画像情報生成部208で作成された関連画像情報は、合成部204へ出力される。
【0115】
合成部204では、色空間変換部202から受けつけた可視画像の印刷データと、関連画像情報生成部208から受け付けた関連画像情報と、を合成して第1の印刷データとし、データ出力部206へ出力する。
【0116】
データ出力部206は、合成部204から受け付けた第1の印刷データを、像形成制御装置21に対して出力する。
【0117】
一方、画像データ受付部200から不可視画像データを受け付けた変換部210では、不可視画像データを、不可視トナーによって形成される色空間の第2の印刷データに変換して、データ出力部212へ出力する。データ出力部212は、変換部210から受け付けた第2の印刷データを、像形成制御装置21に対して出力する。
【0118】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置11の作用を説明する。
【0119】
まず、ユーザが、UI装置23を操作して、画像形成開始を指示すると、画像形成装置11の画像処理装置20において、図4に示す処理ルーチンが実行される。
【0120】
まず、ステップ100において、外部から受け付けた画像データを読取り、次のステップ102において、該画像データに含まれる可視画像データを、可視画像の印刷データに変換する。この処理は、上記の色空間変換部202で行われる。
【0121】
次にステップ104では、上記ステップ100で読取った画像データに含まれる不可視画像データを読取り、次のステップ106において、関連画像情報を作成する。この処理は、上記関連画像情報生成部208で行われる。
【0122】
次にステップ108では、上記ステップ102の処理によって得られた可視画像の印刷データと、上記ステップ106の処理によって得られた関連画像情報と、を合成することによって、第1の印刷データを作成する。この処理は、上記合成部204で行われる。
【0123】
次のステップ110では、上記ステップ104で読取った不可視画像データから、第2の印刷データを作成する。この処理は、上記変換部210で行われる。
【0124】
次のステップ112では、上記ステップ108で作成された第1の印刷データと、上記ステップ110で作成された第2の印刷データと、を像形成制御装置21に対して出力することによって印刷処理を実行する。
第1の印刷データ及び第2の印刷データを受け付けた像形成制御装置21では、第1の印刷データに基づいて可視画像形成部14を制御し、第2の印刷データに基づいて不可視画像形成部15を制御する。これにより、不可視画像形成部15では、第2の印刷データに応じた不可視画像12のトナー像が中間転写体16へ転写され、可視画像形成部14では、第1の印刷データに応じた関連画像13及び可視画像16のトナー像が中間転写体16へ転写される。そして、結果的に、記録媒体10上に、可視画像16及び不可視画像12と、該不可視画像12に関する関連画像13と、が形成されることとなる。
関連画像
【0125】
なお、本実施の形態では、画像形成装置11において、記録媒体10上に不可視画像12と関連画像13を形成する形態を説明したが、不可視画像12を別の画像形成装置によって記録媒体10上に形成しておいて、画像形成装置11では、記録媒体10上の不可視画像12を読取り、読取った不可視画像情報に基づいて関連画像情報生成部208で関連画像を生成して記録媒体10上に形成してもよい。
【0126】
この場合には、画像形成装置11における不可視画像形成部15を別体として設けて、代わりに、可視画像形成部14より中間転写体16の搬送方向上流側に、光源と受光素子とを設ければよい。この光源としては、750nm以上1000nm以下のいずれかの波長で発光する半導体レーザーまたは発光ダイオードを用いればよい。また、この受光素子としては、近赤外光に高い分光感度を有する汎用の受光素子を用いればよい。そして、画像処理装置20では、該受光素子によって読取られた不可視画像情報に基づいて、関連画像情報生成部208で関連画像情報を生成すればよい。また、この場合には、画像処理装置20には、変換部210及びデータ出力部212を設けない構成とすればよい。
【0127】
なお、上記の実施の形態では、記録媒体10上に上記の不可視画像12及び関連画像13を形成する装置として、電子写真方式の画像形成装置を用いた形態を一例として挙げて説明したが、インクジェットプリンターによって形成されてもよいし、活版印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、またはシルク印刷などの装置によって形成されてもよいことはいうまでもない。
【実施例】
【0128】

以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0129】
(実施例1)
(ペリミジン系スクアリリウム色素の調製:二段階合成)
1,8−ジアミノナフタレン4.843g(98%,30.0mmol)、3,5−ジメチルシクロヘキサノン3.886g(98%,30.2mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物10mg(0.053mmol)とトルエン45mlの混合液を窒素ガスの雰囲気中に攪拌しながら加熱し、5時間還流させた。反応中にできた水を共沸蒸留により除去した。反応終了後、トルエンを蒸留して得られた暗茶色固体はアセトンで抽出し、アセトンとエタノールの混合溶媒から再結晶することにより精製し、乾燥してから、茶色固体7.48g(収率93.6%)を得た。得られた茶色固体のH−NMRスペクトル(CDCl)による分析結果を以下に示す。
【0130】
H−NMRスペクトル(CDCl): δ=7.25、7.23、7.22、7.20、7.17、7.15(m,4H,Harom);6.54(d×d,J=23.05Hz,J=7.19Hz,2H,Harom);4.62(br s,2H,2×NH);2.11(d,J=12.68Hz,2H,CH);1.75、1.71、1.70、1.69、1.67、1.66(m,3H,2×CH、CH);1.03(t,J=12.68Hz,2H,CH);0.89(d,J=6.34Hz,6H,2×CH);0.63(d,J=11.71Hz,1H,CH
【0131】
上記の茶色固体4.69g(17.6mmol)、3,4−ジヒドロキシシクロブタ−3−エン−1,2−ジオン913mg(8.0mmol)、n−ブタノール40mlとトルエン60mlの混合液を窒素ガスの雰囲気中に攪拌しながら加熱し、3時間還流反応させた。反応中にできた水を共沸蒸留により除去した。反応終了後、大部分の溶媒を窒素ガスの雰囲気中に蒸留し、得られた反応混合物を攪拌しながら、120mlのヘキサンを加えた。できた黒茶色沈殿物を吸引濾過し、ヘキサンで洗浄し、乾燥後黒青色固体を得た。この固体を順次にエタノール、アセトン、60%エタノール水溶液、エタノールおよびアセトンで洗浄し、目的の化合物(黒青色固体)4.30g(収率88%)を得た。
【0132】
得られた色素化合物を、赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法)、H−NMR(DMSO‐d)、FD−MS、元素分析、可視近赤外吸収スペクトルなどの分光法により同定した。同定データを以下に示す。可視近赤外吸収スペクトルを図5に示す。同定の結果、得られた化合物が上記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素であることが確認された。
【0133】
赤外吸収スペクトル(KBr錠剤法):
νmax=3487、3429、3336(NH),3053(=C−H),2947(CH),2914、2902(CH),2864(CH),2360,1618、1599、1558、1541(C=C ring),1450、1421、1363(CH、CH),1315、1223、1201(C−N),1163、1119(C−O−),941,924,822,783,715cm−1
H−NMRスペクトル(DMSO−d): δ=10.52(m,2H,NH);7.80、7.78(d,2H,Harom);7.35、7.33(m,2H,Harom);7.25(m,2H,NH);6.82、6.80、6.78(m,4H,Harom);6.74、6.72、6.52、6.50(m,2H,Harom);2.17(m,5H,CH);1.91(m,3H,CH);1.71(m,2H,CH、CH);1.15、1.12(m,4H,CH);0.92、0.91(m,12H,4×CH);0.66(m,2H,CH
マススペクトル(FD): m/z=610(M,100%),611(M+1,47.5%)
【0134】
元素分析:
C:78.6%(実測値)、78.66%(計算値)
H:6.96%(実測値)、6.93%(計算値)
N:9.02%(実測値)、9.17%(計算値)
O:5.42%(実測値)、5.24%(計算値)
【0135】
可視近赤外吸収スペクトル(図5):
λmax=809nm(テトラヒドロフラン溶液中)
εmax=1.68×10−1cm−1(テトラヒドロフラン溶液中)
【0136】
(顔料化処理)
次に、得られたペリミジン系スクアリリウム色素51gと、12質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25gと、水425gをビーズミル加工装置(アシザワファインテック製・ミニサー)に投入し、0.1mmφビーズ485g、周速12m/sで3時間の運転を行った。回収したベリミジン系スクアリリウム色素(以下、「ISQ−10(A)粒子」という。)の粒度分布を測定したところ、メジアン径は65.9nmであった。
【0137】
(実施例2)
実施例1における顔料化処理前のペリミジン系スクアリリウム色素粒子(以下、「原料」という。)50mgとテトラヒドロフラン(THF)1mL、直径1mmのジルコニアビーズ10gをボールミル用容器に入れ、1時間ミリング処理を行った。ボールミル用容器に水を加え、50nmフィルターでろ過して、ペリミジン系スクアリリウム色素粒子(以下、「ISQ−10(B)粒子」という。)を回収した。
【0138】
(粉末X線回折の測定)
実施例1における顔料化処理前のペリミジン系スクアリリウム色素粒子(以下、「原料」という)、実施例1におけるISQ−10(A)粒子、および実施例2におけるISQ−10(B)粒子について、X線回折装置(「D8 DISCOVER」、ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用い、Cuターゲットでλ=1.5405ÅのX線照射による粉末X線回折の測定を行った。得られた粉末X線回折スペクトルを図6及び図7に示した。
【0139】
図6から、ISQ−10(A)粒子は、ブラッグ角(2θ±2°)で、強度が大きい順に22.1°、23.2°、19.9°、24.9°、17.7°に回折ピークを示し、原料と同じ結晶系であることがわかる。一方、図7から、ISQ−10(B)粒子は、ブラッグ角(2θ±2°)で、強度が大きい順に22.6°、24.2°、8.9°、17.1°、18.4°に回折ピークを示し、原料及びISQ−10(A)粒子とは結晶系が異なることがわかる。
【0140】
(比較例1)
従来のバナジルナフタロシアニン色素(以下、「VONPc」という)を用意した。
【0141】
(比較例2)
下記式(VII)で表される色素化合物について、以下の方法により微粒子化処理を行った。
【0142】
【化7】

【0143】
上記式(VII)で表される色素化合物40mgをTHF30mLに溶かし、その溶液を、マイクロシリンジで氷冷した蒸留水2000mLに注入し、再沈を行った。数分後、混合液を室温に戻して沈殿物を50nmフィルターで濾過し、蒸留水で洗浄、真空乾燥し、再沈した色素化合物(以下、「ISQ−3(A)」という。)を回収した。このISQ−3(A)の粒径は、メジアン径d50が約90nmであった。ISQ−3(A)について、実施例2と同様にCuターゲットでλ=1.5405ÅのX線照射により粉末X線回折スペクトルを得たところ、結晶由来の回折ピークはほとんど認められず、再沈法で得られたISQ−3(A)は非結晶であった。
【0144】
(比較例3)
上記比較例2において、再沈法で得られたISQ−3(A)40mgとヘキサン5mL、直径1mmのめのうビーズ10gをボールミル用容器に入れ、8時間ミリング処理を行った。ボールミル用容器に水を加え、50nmフィルターでろ過して、微粒子化した色素化合物(以下、「ISQ−3(B)」という。)を回収した。ISQ−3(B)の粒径は、メジアン径d50が約90nmであった。ISQ−3(B)について、実施例2と同様にCuターゲットでλ=1.5405ÅのX線照射により測定された粉末X線回折スペクトルを得たところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)で、少なくとも11.9°,13.1°,15.4°,19.0°,20.4°,23.0°,23.9°,24.6°,26.4°に回折ピークを示す結果が得られ、ISQ−3(B)が高い結晶性を有していた。
【0145】
―評価―
――スラリーの調製――
実施例1で調整したISQ−10(A)粒子、実施例2で調整したISQ−10(B)粒子、比較例1で用意したVONPc、比較例2で調整したISQ−3(A)、比較例3で調整したISQ−3(B)の各々について、9.2mgを、12質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液46μl及び蒸留水5.52mlと共に超音波分散し、スラリーを調製した(超音波出力:4−5W、1/4インチホーン使用、照射時間30分)。スラリー中の試料濃度は、0.165質量%であった。
【0146】
――初期読取性の評価――
実施例1で調整したISQ−10(A)粒子のスラリー(試料濃度0.165質量%)40.4μL、40質量%ラテックス(ポリスチレンアクリル酸n−ブチル)液15μL、及び蒸留水5gの混合液をウルトラタラックスで分散化処理して、混合スラリーとした。得られた混合スラリーにPAC凝集剤を加えて擬似トナー分散液とし、220nmフィルターでろ過、空気乾燥、熱圧着(120℃)して、TMA=4g/m、単位面積当たりの顔料量PMA=0.04g/m(トナー中の顔料含有量1質量%に相当)の評価用ラテックスパッチを作製した。
得られたラテックスパッチの可視近赤外吸収スペクトルを日立製作所製の分光光度計U−4100により測定し、その結果を図8に示した。また、上記式(III)中のR(850nmの初期反射率)を求め、表1に示した。
【0147】
該スラリー中のISQ−10(A)粒子に代えて、実施例2で調整したISQ−10(B)粒子、比較例1で用意したVONPc、比較例2で調整したISQ−3(A)、比較例3で調整したISQ−3(B)の各々を、用いることによって、ISQ−10(A)と同じ方法により混合スラリーを調製して評価用ラテックスパッチを作製し、可視近赤外吸収スペクトルを測り、上記式(III)中のRを求めた。評価結果を図8および表1に示した。
【0148】
――不可視性評価――
実施例1のISQ−10(A)粒子、実施例2のISQ−10(B)粒子、比較例1のVONPc、比較例2のISQ−3(A)、比較例3のISQ−3(B)の各々を用いて作製した上記の評価用ラテックスパッチについて、上記式(II)中のΔEを求めた。評価結果を表1に示した。
なお、このΔEの測定は、反射分光濃度計(エックスライト株式会社製、x−rite939)を用いて測定を行うことによって得た。
【0149】
なお、不可視性の評価基準は、下記基準とした。
A:0≦ΔE≦6
B:6<ΔE≦16
C:ΔE>16
【0150】
――長期読取性の評価――
実施例1のISQ−10(A)粒子、実施例2で調整したISQ−10(B)粒子、比較例1で用意したVONPc、比較例2で調整したISQ−3(A)、比較例3で調整したISQ−3(B)の各々を用いて作成した評価用ラテックスパッチに対して、36時間、光照射(光源:キセノンランプ、放射照度:540W/m=100kルクス、UVカットフィルタなし)を行った。
そして、12時間経過毎に、850nmの反射率を、日立製作所製の分光光度計U−4100により測定することによって、長期読取性を評価した。図9に、この評価用ラテックスパッチの反射率と光照射時間との関係を示した。
なお、初期読取性および長期読取性の評価基準は、下記基準とした。評価結果は表1に示した。
【0151】
初期読取性の評価基準:
A(初期読取性良好): R≦25
B(初期読取性やや不良): 25<R≦40
C(初期読取性不良): R>40
【0152】
長期読取性の評価基準:
A(長期読取性良好): 光照射24時間後の反射率@850nm(%)≦44
B(長期読取性やや不良):44<光照射24時間後の反射率@850nm(%)≦66
C(長期読取性不良): 光照射24時間後の反射率@850nm(%)>66
【0153】
【表1】

【0154】
以上のように、実施例1及び実施例2で調整したISQ−10(A)及びISQ−10(B)では、比較例1〜比較例3に比べて、不可視性が維持されたまま、読取性および赤外発色性が大幅に向上された。
このため、実施例1及び実施例2で調整したISQ−10(A)及びISQ−10(B)を含む記録材料を用いて不可視画像を形成すれば、比較例1〜比較例3で調整した色素を用いて不可視画像を形成した場合に比べて、不可視性が維持されたまま、読取性および赤外発色性の向上された不可視画像が得られるといえる。
【符号の説明】
【0155】
10 表示媒体
11 画像形成装置
12 不可視画像
13 関連画像
14 可視画像形成部
15 不可視画像形成部
16 可視画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料により形成された不可視の第1の画像と、該第1の画像に関する関連情報を示す可視の第2の画像と、が形成された記録媒体。
【化1】

【請求項2】
前記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素が、Cuターゲットで波長1.5405ÅのX線照射により測定される粉末X線回折スペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2°)が少なくとも17.7°,19.9°,22.1°,23.2°,24.9°に回折ピークを示す請求項1に記載の表示媒体。
【請求項3】
前記関連情報は、前記第1の画像が前記記録材料により形成されたことを示す情報を含む請求項1または請求項2に記載の表示媒体。
【請求項4】
下記構造式(I)で表されるペリミジン系スクアリリウム色素を含有する記録材料によって不可視の第1の画像を形成する第1の画像形成装置と、
前記第1の画像に関する関連情報を示す可視の第2の画像を形成する第2の画像形成装置と、
を備えた画像形成装置。
【化2】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−39359(P2011−39359A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188039(P2009−188039)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】