説明

記録媒体積載装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】記録媒体のセット性能を維持し、且つ、確実にサイドフェンスから記録媒体が飛び出すことを防止することが可能な記録媒体積載装置を提供する。
【解決手段】記録媒体を積載する記録媒体収容トレイと、記録媒体収容トレイ上で、記録媒体幅方向を規制するサイドフェンスと、記録媒体が当該サイドフェンスを乗り越えて飛び出すのを防止するための上面規制機構と、が設けられ、当該上面規制機構は、サイドフェンスの上面から下方に向けられたガイド孔に嵌挿されるガイド部材と、積載された記録媒体の上方に延在するストッパ部を有し、且つ、当該ストッパ部がサイドフェンスに向かう方向に回動可能であるようにガイド部材に支持される上面押さえ部材と、当該上面押さえ部材とサイドフェンスとを接続し、且つ、ストッパ部が記録媒体の上方に延在する位置に戻る方向に付勢力を付与する付勢部材と、を有して構成される記録媒体積載装置で解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置で画像形成される記録媒体を積載・収容する記録媒体積載装置の改良に関し、さらに、この記録媒体積載装置を搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来公知の画像形成装置において、画像形成されるべき記録紙などの記録媒体を積載し、収容しておく記録媒体収容トレイを有する記録媒体積載装置がよく知られている。この種の記録媒体収容トレイに積載されている記録媒体は、給送ローラなどを備えた給送装置により1枚ごとに分離されて画像形成部に搬送され、当該画像形成部にて所望の画像を形成された後で画像形成装置から排出される。このような記録媒体積載装置の記録媒体収容トレイにおいては、当該記録媒体収容トレイ内で記録媒体の給送方向とは直交する記録媒体幅方向に、積載された記録媒体が移動してしまうことを規制するためのサイドフェンスが設けられているのが一般的であり、さらに、そのサイドフェンスには、記録媒体収容トレイを画像形成装置にセットする際に、記録媒体が当該サイドフェンスを乗り上げて飛び出してしまわないように、庇形状のストッパ部が設けられているものが知られている。仮に、この庇形状のストッパ部がない場合には、記録媒体収容トレイを画像形成装置にセットする際に記録媒体がサイドフェンスを乗り越えて、飛び出してしまうことがあり、このようにサイドフェンスから記録媒体が飛び出した状態で給送工程が開始されてしまえば、当然ながら飛び出した記録媒体は、適正な姿勢で、及び/又は、適正な位置に給送及び搬送されないため、画像形成装置内で記録媒体のスキューが発生したり、給送不良を引き起こしてしまう。
【0003】
そこで、このようなスキューや給送不良を防止するためには、庇形状のストッパ部は設けられるほうが好ましいものではあるが、その一方で、カール紙や封筒などの比較的弾性のある記録媒体を記録媒体収容トレイに積載させ、当該記録媒体収容トレイを備えた記録媒体積載装置を比較的勢いよく画像形成装置にセットした場合(所謂「強セット」の場合)にも、サイドフェンスから記録媒体が飛び出さないようにするためには、当該庇形状ストッパ部には、記録媒体の幅方向に対して一定長さ以上の庇長さが必要となる。そして、このような比較的長い庇形状部分を有するストッパ部が位置固定式であれば、記録媒体収容トレイに記録媒体を補充・セットする際に作業者のセット動作の妨げになり、その結果、作業者はセットされるべき記録媒体を斜めにしながらセットしなければならないなどの対策を講じる必要が生じるので、非常に煩わしいという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、トレイ引き出し時に当該トレイとピックアップローラとが干渉することを防止する目的を兼ねるものではあるが、記録媒体がサイドフェンスから飛び出すのを防止することが可能な記録媒体上面規制部材が設けられ、当該上面規制部材が記録媒体の幅方向に回動してサイドフェンスの方へ移動することが可能な記録媒体積載装置が開示されている。このように記録媒体上面規制部材が記録媒体をトレイにセットする際に記録媒体の幅方向に回動できるのであれば、当該セットされる記録媒体に上面規制部材が接触した際に当該上面規制部材が記録媒体の幅方向に逃げることができるので、セットされるべき記録媒体と上面規制部材とが記録媒体セット時に互いに干渉することを回避することが可能になり、作業者は、記録媒体を何ら対策を講じずにそのまま記録媒体積載装置のトレイに乗せることができるようになるので、セット動作時の煩わしさを低減乃至解消することが可能になる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される構成のままでは、セットされるべき記録媒体の枚数が多く、この記録媒体束のセット方向における厚みが大きい場合には、回動した上面規制部材が元の所定位置に、すなわち、記録媒体束の上方に位置して、サイドフェンスから記録媒体の飛び出しを規制することが可能な庇形状部としての所定位置に戻る際に、当該厚みのある記録媒体束の側面にぶつかってしまい、その結果、上記した庇形状部としての所定位置に戻らなくなる場合があるという問題がある。このように上面規制部材が、記録媒体の上面位置を規制する所定位置に戻らない状態で記録媒体積載装置を画像形成装置にセットする場合は、上面規制部材が設けられていないのと同条件で記録媒体積載装置を画像形成装置にセットするのと等しいことになり、したがって、上記した記録媒体給送不良が発生してしまうという問題を解決することができない。さらにまた、庇形状部としての所定位置に上面規制部材が戻っていないことを、使用者が画像形成装置にセットする前に気が付いたとすれば、当該使用者は、上面規制部材が所定位置に復帰するように、例えば、セットしようとしている記録媒体束の枚数量を減少させるなど、改めて記録媒体束を調整しなければならず、この場合には、使用者の煩わしさが逆に増大してしまうこともある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、記録媒体、特に比較的弾性がある記録媒体のセット性能を維持しながらも、確実にサイドフェンスから当該記録媒体が飛び出すことを防止し、使用者の煩わしさを低減することが可能な記録媒体積載装置を提供することを目的とし、さらには、これを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、
画像を形成されるべき記録媒体を積載する記録媒体収容トレイと、
前記記録媒体収容トレイ上で、記録媒体給送方向とは直交する方向の記録媒体幅方向を規制するサイドフェンスと、
前記サイドフェンスに設けられ、記録媒体が当該サイドフェンスを乗り越えて飛び出すのを防止するための上面規制機構と、
が設けられる記録媒体積載装置にして、
前記上面規制機構は、前記サイドフェンスの上面から下方に向けられたガイド孔に嵌挿されるガイド部材と、前記記録媒体収容トレイに積載された記録媒体の上方に延在するストッパ部を有し、且つ、当該ストッパ部が前記サイドフェンスに向かう方向に回動可能であるように前記ガイド部材に支持される上面押さえ部材と、前記上面押さえ部材と前記サイドフェンスとを接続し、且つ、前記上面押さえ部材の前記ストッパ部が記録媒体の上方に延在する位置に戻る方向に付勢力を付与する付勢部材と、を有して構成され、
前記記録媒体収容トレイに記録媒体をセットする際には、前記上面押さえ部材の前記ストッパ部に接触した記録媒体によって、前記上面押さえ部材が前記記録媒体の幅方向に回動することにより、前記ストッパ部がサイドフェンスに向かって移動すると共に、当該回動動作に伴う前記付勢部材の伸び量に応じて、前記上面押さえ部材を支持している前記ガイド部材が前記ガイド孔に沿って上方に移動することを特徴とする記録媒体積載装置を提案する。
【0008】
また、本発明において、前記上面押さえ部材は、前記ストッパ部と、前記ストッパ部から斜め下方に延在して、その一端部に付勢部材が接続される付勢部材接続部とで構成され、前記上面押さえ部材の回動に伴って前記付勢部材接続部が回動する際の回動動作に沿った切欠き部が、前記サイドフェンスに設けられていることを提案する。
【0009】
さらにまた、本発明において、前記ストッパ部には、当該ストッパ部に記録媒体が接触する面から下方に、且つ、当該記録媒体の方へ向かう傾斜部が設けられていることを提案する。
【0010】
さらにまた、本発明において、前記付勢部材がつるまきバネであることを提案する。
【0011】
さらにまた、本発明において、前記記録媒体収容トレイに積載された記録媒体束の最上位の記録媒体を給送するための給送ローラを備えた給送装置が付設されていることを提案する。
【0012】
さらにまた、本発明において、前記給送ローラの方へ積載された記録媒体を押し上げるために、前記記録媒体トレイの底面を押し上げる底面付勢手段が設けられていることを提案する。
【0013】
さらにまた、本発明において、上記目的を達成するために、請求項1〜6のいずれか一項に記載の記録媒体積載装置をセットすることができる画像形成装置を提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、記録媒体積載機構が、サイドフェンスの上面から下方に向けられたガイド孔に嵌挿されるガイド部材と、記録媒体収容トレイに積載された記録媒体の上方に延在するストッパ部を有し、且つ、当該ストッパ部が前記サイドフェンスに向かう方向に回動可能であるように前記ガイド部材に支持される上面押さえ部材と、前記上面押さえ部材と前記サイドフェンスとを接続し、且つ、前記上面押さえ部材の前記ストッパ部が記録媒体の上方に延在する位置に戻る方向に付勢力を付与する付勢部材と、を有して構成され、記録媒体収容トレイに記録媒体をセットする際には、前記上面押さえ部材の前記ストッパ部に接触した記録媒体によって、前記上面押さえ部材が記録媒体の幅方向に回動することにより、前記ストッパ部がサイドフェンスに向かって移動するので、記録媒体セット時において、上面押さえ部材が、記録媒体の幅方向に逃げて、当該上面押さえ部材がセットされるべき記録媒体と干渉しあわず、その結果、使用者の煩わしさを低減乃至解消することが可能となる。また、これと同時に、上面押さえ部材の回動動作に伴って、当該上面押さえ部材とサイドフェンスとを接続している付勢部材が伸び、この付勢部材の伸び量に応じて、上面押さえ部材を支持しているガイド部材がガイド孔に沿って上方に移動するので、厚みのある記録媒体束をセットするとしても、上面押さえ部材が確実に当該記録媒体束の上面以上に持ち上げられるので、上面押さえ部材のストッパ部が元の位置に戻る際に、当該ストッパ部が記録媒体束の側面に干渉して、元の位置に戻らないということがなく、その結果、確実に記録媒体がサイドフェンスを乗り上げてしまうことを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の記録媒体積載装置が設けられる画像形成装置の一例を示した概略断面図である。
【図2】本発明の記録媒体積載装置に付設された給送装置の一例を示した概略断面図である。
【図3】本発明の記録媒体積載装置における主要部だけを抽出して描いた概略斜視図である。
【図4】図3におけるA部の拡大断面図を用いて、本発明の記録媒体積載装置における上面規制機構の動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例としてのプリンタの構成を示す概略断面図であり、ここに図示した例は、形成されるべき画像を自動で読み取る画像読取部50を有する電子写真方式のプリンタを示している。なお、ここに図示したプリンタ1は、以下で説明する記録媒体積載装置の構成以外は、当業者には通常公知の画像形成装置であるため、この画像形成装置の基本構成と動作とについては概略で説明する。また、本願発明は、ここに図示したプリンタとしての画像形成装置だけに適用が可能なものではなく、その他にも、例えばファクシミリ、複写機あるいはこれらの少なくとも2つの機能を備える複合機などにも適用が可能であり、さらには、画像形成方式も電子写真方式だけでなく、インクジェット方式にも適用が可能なものであり、言い換えれば、当業者には通常公知の画像形成装置に適用が可能である。
【0018】
図1に示された画像形成装置では、その筐体内に、電子写真方式の画像形成部2と、複数枚の記録媒体Pを収容する、上下2段に配置された記録媒体収容トレイ10、11を有する記録媒体積載装置6、7と、当該記録媒体体積載装置6、7それぞれに付設され、記録媒体収容トレイ10、11内の記録媒体を一枚毎に分離し画像形成部2に向けて給送する給送装置30、31と、画像形成部2でトナー像を転写された記録媒体に熱と圧力とをローラ対により加えることで当該トナー像を定着する定着装置5とを備えている。なお、記録媒体積載装置6、7は、例えば、図1の紙面垂直方向に出し入れすることで画像形成装置1から脱着可能に構成されており、画像形成装置1から取り外した状態で記録媒体の補充を実施することができるようになっている。画像形成部2には、像担持体ドラム4aが配置され、当該像担持体ドラム4aには、この像担持体ドラム4aを一様に帯電する帯電ローラ4bと、現像剤(トナー)を付与する現像ローラ4dと、転写手段としての転写ローラ4eと、さらに、図示しないクリーニング装置となどが、その回転方向に順に並んで配設されている。また、帯電ローラ4bによって一様に帯電された像担持体ドラム4aに、所望の画像に対応する静電潜像を書き込むための例えばレーザー光を照射する露光装置4cも配置されている。
【0019】
ここに図示した画像読取部50もまた当業者には通常公知の、所謂シートスルー方式の画像読取部であり、この画像読取部50では、種々のローラ対などで構成された原稿搬送手段によって、原稿載置部52に載置された原稿を、画像読取を行うスキャナ51上面まで1枚ごとに搬送し、当該スキャナ51で搬送された原稿がスキャンされ、原稿画像情報が読み取られるものである。画像情報読取後の原稿は、さらに搬送されて画像読取部の原稿排出トレイ53に排出される。スキャナ51で読み取られた画像情報は、図示しない制御部を介して、先に記述した露光装置4cに伝達され、この露光装置4cを用いて、読み取られた原稿画像情報に基いた静電潜像が像担持体ドラム4aに書き込まれる。
【0020】
さらにまた、記録媒体積載装置6、7には、画像形成に供される記録媒体Pを積載する記録媒体収容トレイ10、11が配置されている。この記録媒体収容トレイ10、11の、記録媒体給送方向前端部には、それぞれ給送ローラ8、9を有する給送装置30、31がそれぞれ設けられており、さらに、記録媒体トレイ10、11には図示しない付勢手段を介して図中上方に付勢される底面である押上板10a、11aが設けられていて、この押上板10a、11aの回動支点10b、11bを支点として、当該押上板10a、11aが付勢手段により押上げられることで、記録媒体収容トレイに積載された記録媒体の量が変化しても、記録媒体束の最上面が給送ローラ8、9に押圧されるようになっている。また、記録媒体トレイ10、11における記録媒体給送方向で見た後端側には、積載される記録媒体の後端位置を規制するための後端規制板10c、11cが設けられており、この後端規制板10c、11cは、積載される記録媒体のサイズに応じて、記録媒体の給送方向に位置調整可能に配置されている。
【0021】
なお、図2は、本発明の原稿積載装置に付設された給送装置の一例を示した概略断面図であり、ここに図示した例では、図1における上段側の記録媒体積載装置6に設けられているものである。この給送装置30は、先に記述した給送ローラ8と、これの外周面に当接する摩擦パッドド41とにより構成されている。そして、これら給送ローラ8と、記録媒体Pと、摩擦パッド41との摩擦係数の関係は、給送ローラ8表面の記録媒体Pに対する摩擦係数>摩擦パッド41の記録媒体Pに対する摩擦係数>記録媒体P同士の摩擦係数、となるよう設定されている。そして、この給送装置30が動作する際には、給送ローラ8が図2の矢印のように反時計回りに回転すると、給送ローラ8の回転に伴う記録媒体との摩擦作用により、記録媒体トレイ10内の記録媒体Pは、最上層部より繰り出されるが、その一方で、記録媒体P同士の摩擦付着性(静電気や湿気も関係する)により、最上位の記録媒体だけでなく、その下方位置に存在する記録媒体も一緒に繰り出されることがある。その際に、繰り出された記録媒体Pは、その先端側から給送ローラ8と摩擦パッド41との摩擦接触部(分離部)45に導入されていくが、下側の記録媒体が追従されてきた場合でも、上記したような摩擦係数の関係(すなわち、給送ローラ8表面の記録媒体Pに対する摩擦係数>摩擦パッド41の記録媒体Pに対する摩擦係数>記録媒体P同士の摩擦係数となる関係)により、記録媒体トレイ10、11に積載された記録媒体Pは、その最上層部より1枚ずつ重送することなく繰出され、給送されるようになっている。
【0022】
このような画像形成装置1の画像形成動作を概略で説明すると、まず、上記したように画像読取部50のスキャナ51にて、原稿の画像情報が読み取られると、この画像情報及び原稿サイズに基いた記録媒体サイズに対応する記録媒体が、記録媒体積載装置6、7のいずれかから選択され、選択された記録媒体積載装置6、7から給送装置30、31の作用により、記録媒体が1枚毎に繰り出される。繰り出された記録媒体は、未だ駆動を開始していないレジストローラ対18まで搬送されるが、この際に、当該レジストローラ対のニップ部に先端を突き当てて、所謂ループを形成することで記録媒体のレジストレーションが行われる。そして、この給送動作を実施している間に、画像形成部2では、像担持体体ドラム4aが回転を開始し、帯電ローラ4bの作用で一様に帯電された後に、先に記述したように原稿画像情報に基いた露光装置4cからの露光により所望の静電潜像が像担持体ドラム4a上に形成される。そして、この静電潜像を担持している像担持体ドラム4aには、静電潜像の電荷に応じた現像剤が現像ローラ4dより付与され、当該像担持体ドラム4a上でトナー像として可視像化される。次いで、この像担持体ドラム4a上のトナー像とタイミングを併せて、レジストローラ対18の回転駆動が開始され、記録媒体が像担持体ドラム4aとこれに対向当接する転写ローラ4eとの転写ニップ部に搬送され、当該転写ニップ部で、例えば転写ローラ4eに所定の転写バイアスを印加することで、記録媒体上に未定着トナー像として転写される。未定着トナー像を転写された記録媒体は、さらに搬送され、定着装置5に設けられたローラ対により熱と圧力とを受けることで、半永久的な画像して定着させられ、その後、さらに搬送されて、排出トレイ80に排出される。
【0023】
このような画像形成装置1における記録媒体積載装置6、7では、積載される記録媒体の給送方向とは直交する記録媒体幅方向を規制する一対のサイドフェンス19、19が設けられているのが一般的である。図3は、本発明の記録媒体積載装置における主要部だけを抽出して描いた概略斜視図であり、当該図3からも明らかなように、サイドフェンス19、19は、記録媒体収容トレイ10の底面である押上板10aに設けられた切欠き部に侵入することで、記録媒体の幅方向に変位可能に配置されている。
【0024】
このサイドフェンス19、19には、記録媒体、特に、カール紙や封筒などの比較的弾性のある記録媒体が積載された記録媒体積載装置6、7を画像形成装置1にセットする際に、当該サイドフェンス19、19を記録媒体が乗り越えて、飛び出さないように規制する庇形状のストッパ部20cを備えた上面押さえ部材20aが設けられている。ここで、この上面押さえ部材20aのストッパ部20cは、記録媒体幅方向に所定の庇長さを有しており、この上面押さえ部材20aが位置固定式であれば、記録媒体をセットする際に、当該上面押さえ部材20aのストッパ部20cにセットされるべき記録媒体束が衝突して干渉するため、使用者は記録媒体束を斜めにしてセットするなどの対策を講じる必要があり、煩わしいという問題がある。そのため、セットされる記録媒体に接触した上面押さえ部材20aの少なくともストッパ部20cが、記録媒体の幅方向、すなわちサイドフェンス19、19の方に回動するように構成することが考えられてきているが、上面押さえ部材20aのストッパ部20cがサイドフェンス19、19の方へ回動するだけでは、セットされる記録媒体束の量が多く、その厚みが大きくなった場合に、一旦は回動したストッパ部20cが、厚みのある記録媒体束の側面にぶつかってしまい、図3に示されるような、積載された記録媒体上方に位置する庇形状位置に戻れない場合がある。
【0025】
そこで、本願発明では、記録媒体をセットする際に、当該セットされる記録媒体と接触してサイドフェンス19、19の方へ回動することが可能な上面押さえ部材20aを改良して、当該上面押さえ部材20aの長所を兼ね備えた上面規制機構を設けることを考え出した。この上面規制機構の一例が図4に記載されている。なお、図4は、図3におけるA部の拡大断面図を用いて、本発明の記録媒体積載装置における上面規制機構の動作を説明するための説明図である。図4に記載されているように、本発明の上面規制機構は、サイドフェンス19の上面から下方に向けられたガイド孔に嵌挿されるガイド部材20bと、記録媒体収容トレイに積載された記録媒体の上方に延在するストッパ部20cを有し、且つ、当該ストッパ部20cがサイドフェンス19に向かう方向に回動可能であるようにガイド部材20bに支持される上面押さえ部材20aと、当該上面押さえ部材20aとサイドフェンス19とを接続し、且つ、上面押さえ部材20aのストッパ部20cが記録媒体の上方に延在する所定位置(すなわち、記録媒体の上方での庇形状位置)に戻る方向に付勢力を付与する付勢部材21とを有して構成される。
【0026】
このような上面規制機構であれば、記録媒体をセットする際には、上面押さえ部材20aが、記録媒体幅方向に回動するので、この上面押さえ部材20aのストッパ部20cがセットされるべき記録媒体と衝突して干渉しあわず、その結果、使用者が記録媒体を斜めにしてセットするなどの対策を講じることなく、記録媒体積載装置の上方からセットすることが可能になるため、使用者のセット時の煩わしさを低減乃至解消することが可能となる。また、これと同時に、上面押さえ部材20aの回動動作に伴って、当該上面押さえ部材20aとサイドフェンス19とを接続している付勢部材21が伸び、この付勢部材21の伸び量に応じて、上面押さえ部材20aを支持しているガイド部材20bがガイド孔に沿って上方に移動するので、図示したような厚みのある記録媒体束をセットするとしても、このガイド部材20bと共に上方に移動する上面押さえ部材20aが確実に記録媒体束の上面よりも高い位置に変位乃至持ち上げられるので、上面押さえ部材20aのストッパ部20cが元の庇形状位置に戻る際に、当該ストッパ部20cが記録媒体束の側面に干渉して、元の位置に戻らないということがなく、その結果、確実に記録媒体がサイドフェンス19を乗り上げてしまうことを防止することが可能になる。
【0027】
この記録媒体セット動作に関して、図4を用いて、以下にさらに説明する。図4(a)に示されるように、この実施形態の上面規制機構の上面押さえ部材20aは、記録媒体収容トレイに積載される記録媒体の上方に延在するストッパ部20cと、このストッパ部20cから斜め下方に延在して、その一端部に付勢部材21が接続される付勢部材接続部20dとで構成され、さらに、上面押さえ部材20aの回動に伴って当該付勢部材接続部20dが回動する際に、この付勢部材接続部20dがサイドフェンス19に接触して上面押さえ部材20aの回動移動を阻止しないように、上面押さえ部材20aの回動動作に沿った切欠き部25が、サイドフェンス19に設けられている。
【0028】
このような上面規制機構を備えた記録媒体積載装置に記録媒体をセットするには、まず、図4(a)に示されるように、記録媒体トレイの上方から垂直方向に、セットされるべき記録媒体束を降ろしていく。この際には、サイドフェンス19は、セットされる記録媒体の幅方向サイズに合わせて位置調整されている。その後、記録媒体束が、上面押さえ部材20aのストッパ部20cに接触すると、この記録媒体束の接触に伴って、上面押さえ部材20aは、サイドフェンス19の方へ回動を始めることになる。そして、図4(b)に示されるように、記録媒体束がセットされている途中では、上面押さえ部材20aの回動動作に伴って、付勢部材21が伸びることになるが、この伸び量に応じて、ガイド孔に嵌挿されているガイド部材20bは、そのガイド孔に沿って上方へ移動していることになる。このような構成であれば、図4(b)に示されるように、上面押さえ部材20aが回動する際に、上面押さえ部材20aと共にガイド部材20bが上方へ移動するので、上面押さえ部材20aを、セットされるべき記録媒体束の上面以上の高さ位置まで移動させることが可能になる。そして、記録媒体束のセットが完了した図4(c)に示されるように、上面押さえ部材20aは、上面押さえ部材20aのストッパ部20cが記録媒体の上方に延在する位置に戻る方向に付勢力を付与する付勢部材21の作用により、セットされた記録媒体の上面に対して庇形状のストッパ部20cを伸ばした所定位置に確実に戻ることが可能になる。なお、図4(c)に示されている上面押さえ機構の状態は、図4(a)に示されている状態とは、記録媒体束がセットされているか否かだけが相違するものであり、したがって、上面規制機構は、元の状態に復帰している。
【0029】
なお、図4に示すように、上面押さえ部材20aのストッパ部20cには、上面押さえ部材20aにおける記録媒体が接触する面から下方に、且つ、当該記録媒体の方へ向かう傾斜部20fが設けられている。このような傾斜部20fが設けられている場合には、上方からセットされる記録媒体の挿入をガイドする、セットガイドとしての機能も上面押さえ部材20aに持たせることが可能になるため好適である。さらにまた、ここに図示した例では、付勢部材21は、つるまきバネとして構成されているが、本発明はこれに限られず、例えばゴムなどの弾性部材を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、転写紙などの画像を形成されるべき記録媒体を積載する記録媒体積載装置に好適に利用することが可能であり、さらには、これを備えた画像形成装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 画像形成装置
6、7 記録媒体積載装置
10 記録媒体収容トレイ
19 サイドフェンス
20a 上面押さえ部材
20b ガイド部材
20c ストッパ部
20d 付勢部材接続部
20f 傾斜部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特開2000−118739号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成されるべき記録媒体を積載する記録媒体収容トレイと、
前記記録媒体収容トレイ上で、記録媒体給送方向とは直交する方向の記録媒体幅方向を規制するサイドフェンスと、
前記サイドフェンスに設けられ、記録媒体が当該サイドフェンスを乗り越えて飛び出すのを防止するための上面規制機構と、
が設けられる記録媒体積載装置にして、
前記上面規制機構は、前記サイドフェンスの上面から下方に向けられたガイド孔に嵌挿されるガイド部材と、前記記録媒体収容トレイに積載された記録媒体の上方に延在するストッパ部を有し、且つ、当該ストッパ部が前記サイドフェンスに向かう方向に回動可能であるように前記ガイド部材に支持される上面押さえ部材と、前記上面押さえ部材と前記サイドフェンスとを接続し、且つ、前記上面押さえ部材の前記ストッパ部が記録媒体の上方に延在する位置に戻る方向に付勢力を付与する付勢部材と、を有して構成され、
前記記録媒体収容トレイに記録媒体をセットする際には、前記上面押さえ部材の前記ストッパ部に接触した記録媒体によって、前記上面押さえ部材が記録媒体の幅方向に回動することにより、前記ストッパ部がサイドフェンスに向かって移動すると共に、当該回動動作に伴う前記付勢部材の伸び量に応じて、前記上面押さえ部材を支持している前記ガイド部材が前記ガイド孔に沿って上方に移動することを特徴とする記録媒体積載装置。
【請求項2】
前記上面押さえ部材は、前記ストッパ部と、前記ストッパ部から斜め下方に延在して、その一端部に付勢部材が接続される付勢部材接続部とで構成され、前記上面押さえ部材の回動に伴って前記付勢部材接続部が回動する際の回動動作に沿った切欠き部が、前記サイドフェンスに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体積載装置。
【請求項3】
前記ストッパ部には、当該ストッパ部に記録媒体が接触する面から下方に、且つ、当該記録媒体の方へ向かう傾斜部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の記録媒体積載装置。
【請求項4】
前記付勢部材がつるまきバネであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の記録媒体積載装置。
【請求項5】
前記記録媒体収容トレイに積載された記録媒体束の最上位の記録媒体を給送するための給送ローラを備えた給送装置が付設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の記録媒体積載装置。
【請求項6】
前記給送ローラの方へ積載された記録媒体を押し上げるために、前記記録媒体トレイの底面を押し上げる底面付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の記録媒体積載装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の記録媒体積載装置をセットすることができる画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−193011(P2012−193011A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57659(P2011−57659)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】