説明

記録方法及び記録装置

【課題】異なる制御部によって制御される各記録部が、可変データに基づく可変画像を分担して記録する頻度を低減できる記録装置及び記録方法を提供する。
【解決手段】記録ユニット30には、P個(15個)の記録ヘッド33A,33Bが2列の千鳥配列で配置されている。P個の記録ヘッド33A,33Bは副走査方向(同図の上下方向)にN個(2個)の群に分けられている。N個(2個)のコントローラーは、対応する群に属する記録ヘッド33A,33Bをそれぞれ制御する。このため、異なるコントローラーによって制御される記録ヘッド33A,33Bの各記録領域(マスター記録領域とスレーブ記録領域)の境界(M/S境界線BL)が、最小のN−1個(1個)になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録部を有する記録手段を、複数の制御手段により制御することにより記録媒体に記録を施す記録装置及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シリアル式プリンターやラテラルスキャン式プリンターなどの印刷装置(記録装置)では、キャリッジを主走査方向に複数回(複数パス)移動させつつ、各移動途中にキャリッジに設けられた記録ヘッドのノズルからインク滴を噴射してターゲットに文書や画像を印刷する。
【0003】
例えば特許文献1、2には、記録ユニットが複数個の記録ヘッド(印刷ヘッド)を備えた構成の印刷装置が開示されている。記録ユニットには、複数個の記録ヘッドが2列又は4列で例えば千鳥配列で設けられている。特許文献1に記載の印刷装置では、キャリッジ上には、複数の印刷ヘッドと、1個以上の所定数の印刷ヘッドにそれぞれ対応して設けられた駆動制御部とが搭載されている。印刷装置の本体には、各駆動制御部にデータを転送する複数のデータ処理部が搭載されている。所定数の印刷ヘッドと1つの駆動制御部と1つのデータ処理部とが、主制御部に接続されている。この主制御部はキャリッジを往復移動させる制御も行う。この印刷装置では、所定数の印刷ヘッドにつき1つの駆動制御部と1つのデータ処理部とを1組とする回路セットを複数備える構成なので、データ処理部1つ当たりの処理の負荷が小さくなる。
【0004】
また、例えば特許文献3、4には、毎回同じ固定画像(共通画像)の固定データと、毎回変化する可変画像の可変データ(バリアブルデータ)とからなる合成画像を印刷する印刷装置が開示されている。
【0005】
例えば記録ヘッドが多くなると、主制御部自体を二以上設け、二以上の主制御部(制御部)により多数の記録ヘッドを分担して制御する構成が考えられる。この場合、各主制御部は担当する各記録ヘッドを制御する場合に相互に同期をとる必要がある。例えば主制御部が2個の場合、そのうち1つをマスター(マスター側コントローラー)、他の主制御部をスレーブ(スレーブ側コントローラー)とし、マスター側コントローラーがスレーブ側コントローラーと通信して同期をとりつつ、全てのコントローラーで起動の準備ができたタイミングで印刷制御を行うことになる。
【0006】
図12は、この種の記録ユニットに備えられた複数の記録ヘッドを、二つのコントローラー(制御部)で分担して制御するプリンターの一例を示す。図12に示すように、プリンターには、例えば記録ユニット200に設けられた複数の記録ヘッド201A,201Bを分担して制御する2つのコントローラーC1,C2が備えられている。複数の記録ヘッド201A,201Bは、主走査方向X(同図における左右方向)に異なる二位置に2列に千鳥配列で配置されている。2列の記録ヘッドは、列毎にインク噴射タイミングが異なるため、噴射タイミングが同じになる右列の記録ヘッド201Aをマスター側コントローラーC1が制御し、噴射タイミングが同じになる左列の記録ヘッド201Bをスレーブ側コントローラーC2が制御することが好ましい。
【0007】
図12に示すような複数コマ画像を印刷するためのデータは、共通の画像データ(固定データSD)と、その1コマずつに付される番号や記号など値の変化する可変データVD(バリアブルデータ)とからなる。このように画像の一部がバリアブルデータである場合の印刷を、特に部分バリアブル印刷と呼ぶ。部分バリアブル印刷の場合、固定データSDは共通に用いて、例えばコマ毎に変化する可変データVDを固定データSDに合成することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−25551号公報
【特許文献2】特開2010−142981号公報
【特許文献3】特開2001−301248号公報
【特許文献4】特開2010−181999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図12に示すように、マスター側コントローラーC1により制御される各記録ヘッド201Aの記録領域(マスター記録領域)と、スレーブ側コントローラーC2により制御される各記録ヘッド201Bの記録領域(スレーブ記録領域)は、副走査方向Yにおいて記録ヘッド1個おきに交互に配置される。そのため、境界線Lが記録ヘッド1個ごとに多数本現れる。例えば記録ヘッド個数がG個の場合、副走査方向Yに記録ヘッド1個分のノズル列長毎に(G−1)個の境界線Lが現れる。このように境界線Lが多く存在すると、可変データが境界線Lを跨ぐ頻度が高くなるという問題があった。
【0010】
可変データVDが、マスター記録領域とスレーブ記録領域との境界線Lを跨ぐ場合、各コントローラーC1,C2間で記録ヘッド201A,201Bの記録制御タイミングが僅かにずれると、可変画像が境界線Lの両側でずれて印刷される虞がある。特に可変画像は、番号や記号あるいはコード画像(バーコードや2次元コード)のように明瞭に印刷される必要があるため、可変画像が境界線の両側でずれて印刷された場合には、番号、記号、コード画像などの可変画像を読み取りにくくなる。特にカメラ等で可変画像を撮影した撮影結果に基づき可変画像を解読する場合は、わずかの印刷ずれが誤解読の原因になるという問題もある。
【0011】
一方、この種の可変画像内の印刷ずれを防ぐためには、コントローラーC1,C2に複雑な処理や複雑な制御を行わせたり、その複雑な処理や制御のために必要になる情報をコントローラーC1,C2間でやりとりする通信や、コントローラーC1,C2間で同期をとるための通信を行ったりする必要がある。この場合、コントローラーC1,C2への余分な処理・制御の追加や、コントローラーC1,C2間での通信頻度の増大などを招く。その結果、これらが原因で発生するコントローラーC1,C2の処理負担の増加や、それに伴う印刷スループットの低下などの問題が危惧される。
【0012】
詳しくは、可変データをコントローラーC1,C2が生成する場合、マスターとースレーブで可変データが跨ると、繋ぎ目のパス分解・誤差拡散データ処理結果をお互いに交換しないと、印刷したときに繋ぎ目が見える可能性がある。つまり、誤差拡散処理は前(例えば上又は左)のデータ処理結果を使うため、マスターの最後の処理結果を確認せず、スレーブが切れ目の先頭を処理するとマスターの最後のデータと整合がとれず、印刷したときに繋ぎ目に筋が見える場合がある。これを防ぐために、マスターとスレーブの各コントローラーC1,C2間で、互いの画像処理データを毎回交換すると、コントローラーC1,C2間の通信(例えばシリアル通信)速度が遅いために印刷が極端に遅くなるという問題もある。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、異なる制御部によって制御される各記録部が、可変データに基づく可変画像を分担して記録する頻度を低減できる記録装置及び記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的の一つを達成するために、本発明の態様の一つである記録装置は、記録媒体に記録を施すP個(但しPは2以上の自然数)の記録部を有する記録手段と、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録部が記録を行うときに前記記録手段と前記記録媒体とを第1方向に相対移動させる相対移動手段と、固定データと可変データとを取得するデータ取得手段と、前記P個の記録部を分担して制御するとともに、前記P個の記録部を前記第1方向と交差する第2方向にN個(但しNはP未満の自然数)の群に分けたうちの対応する群に属する1つ以上の記録部をそれぞれ制御するN個の制御部を有するとともに、異なる前記制御部によって制御される前記記録部間の前記第2方向における記録領域の境界を前記可変データに基づく可変画像が跨がないように、前記固定データと前記可変データとに基づく記録を制御する制御手段と、を備えたことを要旨とする。
【0015】
本発明の一実施態様によれば、可変データに基づく記録画像が、異なる制御部によって制御される各記録領域の境界を跨がないように、固定データと可変データとに基づく記録が制御される。このとき、制御部の個数よりも記録部の個数の方が多い(N<P)うえ、P個の記録部を第2方向にN個(但しNはP未満の自然数)の群に分け、N個の群に属する記録部を、群に対応する制御部が制御する構成のため、制御部と記録部とが同数(N=P)である記録装置に比べ、境界の数を少なく済ませられ、可変データに基づく可変画像が境界を跨がないように制御できる頻度を増やすことができる。このため、異なる制御部によって制御される各記録部が、可変データに基づく可変画像を分担して記録する頻度を低減できる。例えば可変データに基づく可変画像が境界を跨ぐことに起因する可変画像内の記録ずれの発生頻度を低減できる。また、例えばこの種の可変画像内の記録ずれを抑制するための余分な処理や制御を採用した場合でも、その処理や制御の実施頻度を低減できる。よって、制御部の負担をさほど増やすことなく、可変画像内の記録ずれを低減できる。
【0016】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記N個は2個で、前記P個は3個以上であり、2個の前記制御部は、3個以上の前記記録部を前記第2方向に2つの群に分けたそれぞれを制御することが好ましい。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、異なる制御部によって制御される記録領域の境界が1つになるので、制御手段と記録部とが同数(N=P)である記録装置に比べ、可変データに基づく可変画像が境界を跨がないように制御できる頻度を一層増やすことができる。
【0018】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記記録手段が前記第1方向に移動して記録するとともに前記第2方向に移動して改行するラテラルスキャン方式の記録装置であり、前記制御手段は、前記可変データに基づく可変画像が前記境界を跨がないように、前記記録手段が改行を行うときの改行幅を調整するとともに、前記改行幅の調整量だけ調整方向と反対側へずらす画像処理を、前記固定データと前記可変データに施すことが好ましい。
【0019】
本発明の一実施態様によれば、改行幅の調整と、その改行幅の調整量分の整合をとるために固定データ及び可変データに施す画像処理とにより、可変データが境界を跨がないようにすることができる。また、改行幅による調整なので、固定データと可変データとに基づく画像を記録位置がずれずに記録媒体に記録できる。
【0020】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記記録手段が前記第1方向に移動して記録するとともに前記第2方向に移動して改行するラテラルスキャン方式の記録装置であり、前記制御手段は、前記可変データに基づく可変画像が前記境界を跨がなくなる位置まで記録位置を前記第2方向にずらす画像処理を、前記固定データと前記可変データに施すことが好ましい。
【0021】
本発明の一実施態様によれば、可変データが境界を跨がなくなる位置まで記録位置を第2方向にずらす画像処理を固定データと可変データに施すので、可変データに基づく可変画像が境界を跨がないように記録することができる。
【0022】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記制御手段は、前記可変画像が前記境界を跨がないようにする前記改行幅の調整が可能であるか否かを判定し、前記調整が可能であると判定した場合は前記改行幅の調整を行い、前記調整が可能でないと判定した場合は、前記固定データと前記可変データに基づく画像の記録位置を、前記可変データに基づく可変画像が前記境界を跨がなくなる位置まで前記第2方向にずらす画像処理を前記固定データと前記可変データに施すことが好ましい。
【0023】
本発明の一実施態様によれば、改行幅の調整で対応できない場合でも、固定データと可変データに基づく画像の記録位置を、可変データに基づく可変画像が境界を跨がなくなる位置まで第2方向にずらす画像処理が、固定データと可変データに施される。この結果、可変データに基づく可変画像が境界を跨がないように記録することができる。
【0024】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記制御手段は、前記可変画像が前記境界を跨ぐか否かを判定する判定手段と、前記境界を跨ぐと判定された場合に、前記可変データに基づく可変画像が前記境界を跨がないようにするための調整量を演算する演算手段と、前記固定データに前記調整量の調整を施す第1調整手段と、前記可変データに前記調整量の調整を施す第2調整手段と、調整後の前記固定データと調整後の前記可変データとを合成する合成手段と、を備えていることが好ましい。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、可変データに基づく可変画像が境界を跨ぐと判定手段が判定した場合は、可変画像が境界を跨がないようにするための調整量が演算手段により演算される。そして、第1調整手段により、固定データに調整量の調整が施され、第2調整手段により、可変データに調整量の調整が施される。調整後の固定データと調整後の可変データは合成手段により合成される。このように、固定データと可変データは記録装置内で合成される場合、可変画像が境界を跨ぐと、合成時に可変画像データの境界の両側の部分を巧く繋ぎ合わせるための余分な処理などが必要になるが、この種の余分な処理が不要な頻度を高くすることができる。よって、制御部の処理負担を軽減できる。
【0026】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記第1調整手段が1回目の記録のために調整した前記調整後の固定データを保存する格納手段をさらに備え、2回目以降の記録では、前記第2調整手段は前記取得手段が2回目以降の記録のために取得した可変データに前記調整量の調整を施し、前記合成手段は、前記格納手段に保存された前記調整後の固定データと、前記第2調整手段による調整後の可変データとを合成することが好ましい。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、1回目の記録のために調整した調整後の固定データは2回目以降の記録のために保存される。そして、2回目以降の記録では、保存された調整後の固定データと、2回目以降の記録のために取得した可変データに調整量の調整を施した調整後の可変データとが合成される。このため、調整後の固定データを使い回し、可変データのみ取得して調整すればよいので、制御部の処理負担を軽減できる。
【0028】
本発明の態様の一つである記録装置では、記録装置は、ホスト装置に設けられたプリンタードライバーと、前記ホスト装置と通信可能なプリンターとを備えた記録システムであって、前記可変データはコードデータであり、前記プリンタードライバーは、前記データ取得手段と、前記判定手段と、前記演算手段と、前記第1調整手段と、を備え、前記プリンターは、前記ホスト装置から調整前の前記可変データと前記調整後の固定データとを受信する受信手段と、前記可変データをコードデータから画像データへ変換する変換手段と、画像データに変換された後の可変データに前記調整量の調整を施す前記第2調整手段と、前記合成手段と、を備えていることが好ましい。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、プリンタードライバーでは、判定手段による判定と、演算手段による調整量の演算と、第1調整手段による固定データに対する調整量の調整とが行われる。そして、プリンターは、ホスト装置から調整前の可変データと調整後の固定データとを受信する。プリンターでは、可変データのコードデータから画像データへの変換と、第2調整手段による可変データ(画像データ)に対する調整量の調整と、合成手段による調整後の固定データと調整後の可変データとの合成とが行われる。
【0030】
本発明の態様の一つは、記録媒体に記録を施すP個(但しPは2以上の自然数)の記録部を有する記録手段と、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録部が記録を行うときに前記記録手段と前記記録媒体とを第1方向に相対移動させる相対移動手段と、前記P個の記録部を分担して制御するN個(但しNはP未満の自然数)の制御部と、を備えた記録装置における記録方法であって、前記N個の制御部が、前記P個の記録部を前記第1方向と交差する第2方向にN個の群に分けたうちの対応する群に属する少なくとも1つの記録部をそれぞれ制御するようにし、固定データと可変データとを取得するデータ取得ステップと、異なる前記制御部によって制御される前記記録部間の前記第2方向における記録領域の境界を前記可変データに基づく可変画像が跨ぐか否かを判定する判定ステップと、前記可変画像が前記境界を跨ぐと判定された場合は、前記可変画像が前記境界を跨がないように前記固定データと前記可変データとに基づく記録を制御する制御ステップと、を備えたことを要旨とする。本発明の一実施態様の記録方法によれば、上記記録装置に係る発明と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を具体化した一実施形態における印刷システムの模式正面図。
【図2】記録ユニットの模式底面図。
【図3】印刷システムの電気的構成を示すブロック図。
【図4】ホスト装置の機能構成を説明するブロック図。
【図5】プリンターの機能構成を説明するブロック図。
【図6】画像データを示す模式図。
【図7】可変データがM/S境界線を跨ぐ場合の模式図。
【図8】可変データがM/S境界線を跨がなくなる改行幅に調整した場合の模式図。
【図9】可変データがM/S境界線を跨がなくなる上マージンに調整した場合の模式図。
【図10】プリンタードライバーの処理を示すフローチャート。
【図11】プリンターの処理を示すフローチャート。
【図12】従来技術における可変データがM/S境界線を跨ぐ場合の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明をラテラルスキャン方式のインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図1〜図11に従って説明する。
図1に示すように、印刷システム100は、画像データを生成する画像生成装置110と、画像生成装置110から受信した画像データを基に印刷データを生成するホスト装置120と、ホスト装置120から受信した印刷データに基づく画像を印刷する記録装置の一例としてのラテラルスキャン方式のインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター11」と称す)とを備えている。
【0033】
画像生成装置110は、例えばパーソナルコンピューターにより構成され、その本体111内のCPUが画像作成用プログラムを実行することで構築される画像生成部112を備える。ユーザーは、画像生成部112を起動して入力装置113の操作で、モニター114上で印刷用の画像を作成する。例えば製品がラベルの場合、複数個のラベルの画像を縦横に配列した複数コマ画像が作成される。そして、入力装置113を用いて所定の操作をすると、その画像に係る画像データが通信インターフェイスを介してホスト装置120へ送信される。もちろん、ホスト装置120を操作して画像生成装置110から画像データをホスト装置120内に読み込むことも可能である。
【0034】
ホスト装置120は、例えばパーソナルコンピューターにより構成され、その本体121内のCPUがプリンタードライバー用プログラムを実行することで構築されるプリンタードライバー122を備える。プリンタードライバー122は、画像データを基に印刷データを生成し、その印刷データをプリンター11に設けられた制御装置Cへ送信する。制御装置Cは、プリンタードライバー122から受信した印刷データに基づいてプリンター11を制御し、印刷データに基づく画像をプリンター11に印刷させる。モニター123には、メニュー画面や印刷対象の画像等が表示される。メニュー画面での選択操作で表示されるその下位の印刷設定画面では、印刷対象の製品(例えばラベル等)に関する管理情報、及び各種の印刷条件などを入力設定することが可能である。
【0035】
ここで、管理情報には、製品の品番やロット番号、両面印刷の場合に表面印刷か裏面印刷かを指定するための印刷面情報などがある。また、印刷条件としては、印刷媒体の種類、サイズ、印刷品質及び版数などがある。印刷媒体の種類には、大きくは紙系とフィルム系がある。例えば紙系には、上質紙、キャスト紙、アート紙、コート紙などがあり、フィルム系には合成紙、PET、PPなどがある。また、印刷媒体のサイズには、長尺状の印刷媒体が巻回されたロールの使用を前提とする本プリンター11では、ロール幅などが設定される。印刷品質には、印刷解像度や記録方式を決める複数種の印刷モードが用意されており、その中から一つ印刷モードを選択する。もちろん、印刷モードに替え、印刷解像度を設定してもよい。また、版数には、印刷媒体の同一エリアに複数の版(画像)を重ねて印刷する複数版印刷を行う場合にその版(画像)の数が設定される。複数版が設定された場合、モニター123に版毎の画像を表示させて指定することが可能である。
【0036】
次に、図1に示すプリンター11の構成について説明する。なお、以下の明細書中の説明において、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1に矢印で示した方向を基準として示すものとする。また、図1において手前側を前側、奥側を後側とする。
【0037】
図1に示すように、プリンター11の直方体状の本体ケース12内には、記録媒体の一例である長尺状のシート13をロールR1から繰り出す繰出し部14と、そのシート13にインク(流体)の噴射により印刷を施す印刷室15と、その印刷によりインクが付着したシート13に乾燥処理を施す乾燥装置16(乾燥炉)と、乾燥処理が施されたシート13をロールR2として巻き取る巻取り部17とが設けられている。
【0038】
本体ケース12内を上下に区画する平板状の基台18よりも上側の領域が印刷室15になっており、この印刷室15内の底部中央位置には、シート13の印刷エリアを支持するための矩形板状の支持台19が基台18上に支持された状態で配置されている。そして、本体ケース12内の基台18より下側の領域には、シート13の搬送方向で上流側となる左側寄りの位置に繰出し部14が配設されると共に、下流側となる右側寄りの位置に巻取り部17が配設されている。そして、繰出し部14と巻取り部17の間のやや上方位置に乾燥装置16が配設されている。なお、支持台19の下面には、支持台19を所定温度(例えば40〜60℃)に加熱するためのヒーター19Aが設けられており、シート13のうち印刷が施された部分は支持台19上で一次乾燥される。そして、一次乾燥の終わったシート13は乾燥装置16内で二次乾燥されるようになっている。
【0039】
図1に示すように、繰出し部14には巻き軸20が回転自在に設けられ、ロールR1がその巻き軸20に対して一体回転可能に支持されている。そして、シート13は、巻き軸20が回転することによりロールR1から繰り出されるようになっている。ロールR1から繰り出されたシート13は、巻き軸20の右側に位置する第1ローラー21に巻き掛けられて上方へ案内される。
【0040】
第1ローラー21によって搬送方向が鉛直上方向に変換されたシート13は、支持台19の左側であって第1ローラー21と上下方向で対応する位置に配置された第2ローラー22に左側下方から巻き掛けられる。そして、第2ローラー22に巻き掛けられて搬送方向が水平右方向に変換されたシート13は、支持台19の上面に摺接するようになっている。
【0041】
また、支持台19の右側には、左側の第2ローラー22と支持台19を挟んで対向する第3ローラー23が設けられている。第2ローラー22及び第3ローラー23は各々の周面の頂部が支持台19の上面と同一高さとなるように位置調整されている。
【0042】
支持台19の上面から下流側(右側)に搬送されたシート13は、第3ローラー23に右側上方から巻き掛けられて搬送方向が鉛直下方向に変換され、その後、支持台19の下側に配置された第4ローラー24及び第5ローラー25間を水平方向に案内される。シート13は、これらローラー24,25間の搬送経路の途中で乾燥装置16内を通過するようになっている。そして、乾燥装置16内で乾燥処理が施されたシート13は、第5ローラー25、第6ローラー26及び第7ローラー27に案内されて巻取り部17の近くまで搬送され、搬送モーター61(図3参照)の駆動力に基づいて巻取り軸28が回転することによりロールR2として巻き取られる。なお、乾燥装置16と巻取り部17との間におけるシート13の経路の途中に、シート13に印刷された製品部分(例えばラベル)を型抜きするための型抜き用の加工機(不図示)を設け、プリンター11内で製品部分の型抜き工程まで終えられる構成を採用してもよい。
【0043】
図1に示すように、印刷室15内における支持台19の前後方向両側には、左右方向に延びるガイドレール29(図1では2点鎖線で示す)が一対設けられている。一対のガイドレール29には、記録手段の一例である記録ユニット30が主走査方向X(第1方向)に往復移動可能に案内される。記録ユニット30は矩形状のキャリッジ31と、キャリッジ31の下面側に支持板32を介して支持された複数の記録部の一例である記録ヘッド33とを備えている。キャリッジ31は、第1キャリッジモーター62(図3参照)の駆動に基づき両ガイドレール29に沿って主走査方向X(図1では左右方向)への往復移動が可能な状態で支持されている。また、キャリッジ31は第2キャリッジモーター63(図3参照)の駆動に基づき不図示のガイドレールに沿って副走査方向Y(図1では紙面と直交する前後方向)(第2方向)への移動も可能となっている。これにより記録ユニット30は主走査方向Xと副走査方向Yとの2方向への移動が可能となっている。なお、本実施形態では、ガイドレール29及び第1キャリッジモーター62等により相対移動手段が構成される。
【0044】
支持台19の上面のほぼ全域に亘る一定範囲が印刷領域となっており、シート13はこの印刷領域に対応する印刷エリア単位で間欠的に搬送される。支持台19の下側には吸引装置34が設けられている。吸引装置34は、支持台19の上面に開口する多数の吸引孔(図示せず)に負圧を及ぼすように駆動され、その負圧による吸引力によりシート13は支持台19の上面に吸着される。そして、記録ユニット30が主走査方向Xに移動してその移動途中に記録ヘッド33からインクを噴射する主走査と、記録ユニット30を次回の主走査位置まで副走査方向Yへ移動させる副走査とが交互に行われることで、シート13の印刷エリアに印刷が施される。印刷エリアへの印刷が終わると、吸引装置34の負圧が解除され、シート13の支持台19上への吸着が解除される。その後、シート13は、搬送方向(図1における右方)に搬送され、シート13に対する印刷位置が主走査方向Xに変更されて、次の印刷エリアが支持台19上に配置されるようになっている。
【0045】
また、図1において印刷室15内の右端側となる非印刷領域には、非印刷時に記録ヘッド33のメンテナンスを行うメンテナンス装置35が設けられている。非印刷時にホーム位置で待機する記録ユニット30の記録ヘッド33は、昇降装置37の駆動により上昇したキャップ36でキャッピングされ、ノズル内のインクの増粘等が回避される。また、所定のメンテナンス時期になると、キャッピング状態の下でメンテナンス装置35の吸引ポンプ(図示せず)が駆動されてキャップ36内を負圧にすることによりノズルからインクを強制的に排出して、ノズル内の増粘インクやインク中の気泡等を除去するクリーニングが行われる。
【0046】
また、図1に示すように、本体ケース12内には、異なる色のインクをそれぞれ収容した複数個(例えば8個)のインクカートリッジIC1〜IC8が着脱可能に装着されている。8個のインクカートリッジIC1〜IC8は、例えば黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、白(W)、クリア(オーバーコート用の透明色)等の各インクを収容する。もちろん、インクの種類(色数)は適宜設定でき、黒インクだけでモノクロ印刷する構成や、インクを2色、あるいは8色以外で3色以上の任意の色数とした構成も採用できる。また、メンテナンス用の保湿液を収容するカートリッジが装着される構成も採用できる。
【0047】
各インクカートリッジIC1〜IC8はインク供給路等(図示省略)を通じて記録ヘッド33に接続されている。各記録ヘッド33は各インクカートリッジIC1〜IC8から供給されたインクを噴射してシート13に印刷を施す。このため、本例のプリンター11では、カラー印刷が可能となっている。
【0048】
次に、記録ユニット30の底面に設けられた複数の記録ヘッド33の構成を図2に基づいて説明する。図2に示すように、キャリッジ31の底面側(図2では手前側)に支持された支持板32には、P個(但しPは2以上の自然数)(本実施形態では15個)の記録ヘッド33(33A,33B)が、シート13の搬送方向(図2において白抜き矢印で示す方向)と直交する幅方向(副走査方向Y)に沿って千鳥状の配置パターンで支持されている。つまり、15個の記録ヘッド33は、副走査方向Yに沿って一定ピッチで配列された2列(図2では7個の列と8個の列)の記録ヘッド33が、列間で副走査方向Yに半ピッチ分ずれた状態で配置されている。そして、各記録ヘッド33の底面となるノズル形成面33Sには、多数個(例えば180個)のノズル38が副走査方向Yに沿って一定のノズルピッチで配列されてなるノズル列39が、主走査方向Xに所定間隔をおいて複数列(本実施形態では8列)形成されている。そして、複数(8列)のノズル列39は、8個のインクカートリッジIC1〜IC8のうちそれぞれ対応する1個のインクカートリッジからインクの供給を受け、それぞれ異なる種類のインクを噴射する。
【0049】
本実施形態では、P個(本例では15個)の記録ヘッド33は、副走査方向Yに2つの群(グループ)に分けられている。すなわち、複数個の記録ヘッド33は、副走査方向上流側の群に属する8個の記録ヘッド33Aと、副走査方向下流側の群に属する7個の記録ヘッド33Bとに分けられている。一方の群に属する8個の記録ヘッド33Aと、他方の群に属する7個の記録ヘッド33Bは、それぞれ後述する別々のコントローラー41,42(図3参照)によって制御される。
【0050】
記録ユニット30が、図2における主走査方向Xへの移動(主走査)と、副走査方向Yへの移動(副走査)(改行)とを交互に行って、印刷解像度に応じたM回の主走査を行うことで、1回(1フレーム)の印刷が行われる。ここで、記録ユニット30が主走査方向Xに移動する1回の主走査を「パス」と呼ぶ。本例では、印刷解像度に応じて4パス印刷と8パス印刷とがある。図3には、4パス印刷の例で、記録ユニット30の移動経路が矢印で示されている。すなわち、4パス印刷では、まず記録ユニット30が主走査方向Xへ一回移動する主走査を行って1パス目を印刷し、1パス目の印刷を終えると、記録ユニット30を副走査方向Yへ改行幅Δy(副走査送り量)だけ移動させる改行(副走査)を行って、記録ユニット30を次の主走査開始位置(次パス開始位置)に配置する。続いてその位置から2パス目の印刷を行い、2パス目の印刷後に改行幅Δyの改行を行って、記録ユニット30を3パス目の主走査開始位置に配置する。以降、同様に主走査及び改行(副走査)を行って、3パス目と4パス目の各印刷を行う。そして、4パス目の印刷を終えると、1パス目の初期位置に戻す改行幅「−3Δy」(但し、マイナス値は反改行方向(図2の上方向)への改行幅を意味する)の初期改行を行って、記録ユニット30を1パス目の位置に復帰させる。ここで、改行幅Δyは、4パス印刷ではノズルピッチの1/2の値に設定され、8パス印刷ではノズルピッチの1/4の値に設定される。このため、8パス印刷では、4パス印刷のときの約2倍の印刷解像度が得られる。もちろん、改行幅Δyは、要求される印刷解像度に応じた適宜な値に設定できる。この改行幅Δyは、当初設定された初期値(デフォルト値)であり、本実施形態では必要に応じて改行幅がΔy以外の他の値に変更される。
【0051】
次に印刷システム100の電気構成を図3に基づいて説明する。図3に示すホスト装置120内のプリンタードライバー122は、モニター123に表示させるべきメニュー画面及び印刷設定画面などの各種画面の表示制御を行うと共に、各画面の表示状態において操作部124から入力した操作信号に応じた所定処理を行うホスト制御部125を備えている。ホスト制御部125は、プリンタードライバー122を統括的に制御する。
【0052】
また、プリンタードライバー122には、上位の画像生成装置110から受信した画像データに対して印刷データの生成に必要な画像処理を施す画像処理部126を備える。画像処理部126は、画像データに対して、例えば解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、マイクロウィーブ処理を含む画像処理を施す。プリンタードライバー122は、これらの画像処理を施して生成した印刷画像データに、印刷制御コード(例えばESC/P)で記述されたコマンドを付して印刷ジョブデータ(以下、単に「印刷データPD1,PD2」と称す)を生成する。
【0053】
ホスト装置120はデータの転送制御を行う転送制御部127を備える。転送制御部127は、プリンタードライバー122が生成した印刷データPD1,PD2を、シリアル通信ポートU1,U2を介して所定容量のパケットデータずつプリンター11へ順次シリアル転送する。また、ホスト制御部125は、プリンター11の制御装置Cと双方向の通信が可能になっており、転送制御部127を介してプリンター11へコマンドや制御信号を送信し、その応答をプリンター11から受信する。
【0054】
ここで、図3に示すプリンター11側の制御装置Cは、ホスト装置120から印刷データPDを受信して記録系の制御をはじめとする各種の制御を行うN個(但しNは2以上かつP未満の自然数)(本例では2個)のコントローラー41,42を備えている。N個のコントローラー41,42は、P個(本例では15個)の記録ヘッド33A,33Bを所定個数(本例では7個と8個)のN個(本例では2個)の群に分けて分担して制御する。すなわち、N=2である本例では、マスター側コントローラー41が8個の記録ヘッド33Aの制御を受け持ち、スレーブ側コントローラー42が7個の記録ヘッド33Bの制御を受け持つ。図3に示すように、マスター側コントローラー41には、複数個(本例では4個)のヘッド制御ユニット45(以下、単に「HCU45」という)を介して複数個(本例では8個)の記録ヘッド33Aが接続されている。また、スレーブ側コントローラー42には、複数個(本例では4個)のHCU45を介して複数個(本例では7個)の記録ヘッド33Bが接続されている。また、図3に示す2つのコントローラー41,42は、ホスト装置120側のシリアル通信ポートU1,U2と通信可能に接続される受信手段の一例であるシリアル通信ポートU3,U4を備えている。
【0055】
図3に示すホスト装置120内のプリンタードライバー122は、2つのコントローラー41,42のそれぞれが受け持つ記録ヘッド33A,33Bの位置を考慮して印刷画像データを2つに分割し、分割した各印刷画像データに同一のコマンドを付して2つの印刷データPD1,PD2を生成する。転送制御部127は、シリアル通信ポートU1,U3間の通信を介してマスター側コントローラー41へ対応する印刷データPD1をシリアル転送すると共に、シリアル通信ポートU2,U4間の通信を介してスレーブ側コントローラー42へ対応する印刷データPD2をシリアル転送するようになっている。
【0056】
各コントローラー41,42は、それぞれ印刷データPD1,PD2中の印刷画像データを基に記録ヘッド33A,33Bが使用可能なヘッド制御データを生成し、そのうちキャリッジ31の1回の主走査分(1パス分)のデータずつHCU45を介して各記録ヘッド33A,33Bに送信する。
【0057】
図3に示すように、制御装置Cは、マスター側コントローラー41の出力側(制御下流側)に通信線SL1を通じて接続されたメカコントローラー43を備えている。各コントローラー41,42は、印刷データPD1,PD2を解析してコマンドを取得する。各コントローラー41,42は、通信線SL3を通じて互いに接続されており、スレーブ側コントローラー42は取得したコマンドを、通信線SL3を介してマスター側コントローラー41に出力する。マスター側コントローラー41は、自身が印刷コマンドを解析して取得したコマンドと、スレーブ側コントローラー42から通信線SL3を介して入力したコマンドとが揃いかつ一致した時点で、メカコントローラー43にそのコマンドを出力する。これにより、両コントローラー41,42の制御上の同期をとったタイミングで、メカコントローラー43へコマンドを出力できる。なお、本実施形態では、コントローラー41,42、メカコントローラー43及びプリンタードライバー122により、制御手段の一例が構成される。
【0058】
メカコントローラー43は、マスター側コントローラー41から受信したコマンドに基づき所定のシーケンスに従って、主に搬送系及びキャリッジ駆動系を含むメカニカル機構44の制御を司る。このとき、メカコントローラー43は各コントローラー41,42の制御上の同期がとれた段階でコマンドを受信する。このため、例えばコントローラー41,42のうち一方の印刷準備が完了していない段階でキャリッジ起動コマンドが出力されたためにキャリッジ31が起動されてしまい、これが原因で印刷準備の完了していない側の記録ヘッド33が噴射位置に到達してもインク滴が噴射されない噴射ミスが防止される。また、例えばコントローラー41,42のうち一方が印刷完了前の段階で搬送コマンドを出力してしまい、シート13の搬送開始(又はシート13の吸着解除)が行われてしまうことに起因するシート13に対する印刷位置のずれが防止される。
【0059】
また、マスター側コントローラー41には、キャリッジ31(つまり記録ユニット30)の移動経路に沿って設けられたリニアエンコーダー50が接続されている。マスター側コントローラー41は、リニアエンコーダー50からキャリッジ31の移動距離に比例する数のパルスをもつエンコーダーパルス信号を入力し、このエンコーダーパルス信号は信号線SL2を通じてスレーブ側コントローラー42へ入力されるようになっている。
【0060】
各コントローラー41,42は、エンコーダーパルス信号のパルスエッジ数の計数によりキャリッジ31の主走査方向Xにおける位置(キャリッジ位置)を取得すると共に、A相・B相の各エンコーダーパルス信号の信号レベルの比較結果に基づきキャリッジ移動方向を取得する。また、各コントローラー41,42は、リニアエンコーダー50からのエンコーダーパルス信号を基に、記録ヘッド33の噴射タイミングを決める噴射タイミング信号を生成する。記録ヘッド33はヘッド制御データに基づき噴射すべきノズルから噴射タイミング信号に同期して、主走査における各記録ヘッド33の噴射制御を行う。
【0061】
また、両コントローラー41,42は、通信線SL4を介して互いに接続されており、通信線SL4を介して双方向の通信を行うことが可能になっている。両コントローラー41,42は、例えば印刷データPD1,PD2中の画像データをそれぞれ分担し、その分担した画像データに必要な画像処理を施すときにそれぞれが担当する画像の境界などを確認する。
【0062】
図3に示すように、各コントローラー41,42は、それぞれCPU51(中央処理装置)、ASIC52(Application Specific IC(特定用途向け集積回路))、RAM53及び不揮発性メモリー54を備えている。CPU51は、不揮発性メモリー54に記憶されたプログラムを実行することにより、印刷制御に必要な各種タスクを実行する。また、ASIC52は、印刷データPDの画像処理を含む記録系のデータ処理などを行う。
【0063】
図3に示すように、メカニカル機構44は、搬送系を構成する搬送モーター61と、キャリッジ駆動系を構成する第1キャリッジモーター(以下、「第1CRモーター62」ともいう)及び第2キャリッジモーター(以下、「第2CRモーター63」ともいう)とを備えている。メカコントローラー43には、モーター駆動回路60を介して搬送モーター61、第1CRモーター62及び第2CRモーター63がそれぞれ接続されている。搬送モーター61は、各ローラー21〜27と軸20,28等により構成される搬送機構を駆動するためのものである。
【0064】
また、第1CRモーター62は、記録ユニット30を主走査方向Xに駆動(走査)させるための動力源であり、第2CRモーター63は記録ユニット30を副走査方向Yに駆動させるための動力源である。ラテラルスキャン方式では、記録ユニット30を主走査方向Xに駆動させてその駆動途中に記録ヘッド33からインク滴を噴射することにより1パス分の印刷を施す主走査と、記録ユニット30を副走査方向Yに所定ピッチだけ駆動させて次の主走査位置まで記録ヘッド33をずらす副走査とを交互に行う。そして、所定回数の主走査(パス)を行って、複数パスの印刷を施すことにより1回(1フレーム)の印刷が施される。なお、本実施形態では、搬送モーター61及び搬送機構により、搬送手段の一例が構成される。
【0065】
さらに、図3に示すように、メカニカル機構44は、乾燥系を構成するヒーター19A及び乾燥装置16と、吸引装置34と、メンテナンス装置35とを備え、これらはメカコントローラー43と電気的に接続されている。また、このメカコントローラー43には、入力系として、電源スイッチ65、エンコーダー66及び温度センサー67,68がそれぞれ接続されている。電源スイッチ65がオン操作されたときのオン信号及びオフ操作されたときのオフ信号はメカコントローラー43を介してコントローラー41へ送信される。
【0066】
また、メカコントローラー43は、コントローラー41から通信線SL1を通じて受信した各種コマンドに従って、各モーター61〜63、吸引装置34及びメンテナンス装置35を駆動制御する。エンコーダー66は、搬送モーター61を動力源とする搬送駆動系の回転軸の回転を検出するものであり、メカコントローラー43は、エンコーダー66の検出信号(エンコーダーパルス信号)を用いてシート13の搬送量及び搬送位置を検出する。
【0067】
また、温度センサー67は、支持台19の表面温度を検出するためのものである。メカコントローラー43は、温度センサー67から表面温度に応じた温度検出信号を入力し、温度検出信号から決まる検出温度に基づき、支持台19の表面温度を設定温度に調整する温度制御を行う。また、温度センサー68は、乾燥装置16の炉内温度(乾燥温度)を検出するためのものである。メカコントローラー43は、温度センサー68から炉内温度に応じた温度検出信号を入力し、温度検出信号から決まる検出温度に基づき乾燥装置16の炉内温度を設定温度に調整する温度制御を行う。
【0068】
制御装置Cは、印刷時に、搬送モーター61を駆動してシート13の次の被印刷領域(フレーム)を支持台19上に配置すべくシート13を搬送する搬送動作と、シート搬送後に次の被印刷領域を支持台19に吸着させる吸着動作と、記録ヘッド33によるシート13への印刷動作と、1回分(1フレーム分)の印刷終了後にシート13の吸着を解除する吸着解除動作とを行う。このとき、印刷動作(記録動作)は、記録ユニット30の主走査方向Xへの移動中に記録ヘッド33からインク滴を噴射することにより行われる。この印刷動作は、第1CRモーター62の駆動によるキャリッジ31の主走査方向Xへの移動(1パス動作)と、1パス終了毎に行われるキャリッジ31の副走査方向Yへの移動(改行)とを、Mパス分(4パス分又は8パス分)繰り返すことにより行われる。なお、例えば1つの画像が複数版からなる場合は、基本的にMパス分の印刷動作で1版分の画像が印刷され、これを版数分繰り返すことで1つ(1フレーム分)の画像が印刷される。複数版印刷の例としては、例えば本画像の版とオーバーコート層の版を重ねて印刷する2版印刷や、下地層の版、本画像の版、オーバーコート層の版を重ねて印刷する3版印刷などを挙げることができる。
【0069】
図4に示すように、ホスト装置120は、画像生成装置110からデータ取得手段の一例である通信インターフェイスU0を介して画像データID及び可変データ情報ADを受信し、受信した画像データID及び可変データ情報ADに基づいて印刷データPD1,PD2を生成する。
【0070】
画像処理部126は、表示表色系(例えばRGB表色系)の画像データIDから印刷表色系(例えばCMYK表色系)の印刷画像データを生成するための画像処理を行う。このとき画像処理部126は、ホスト制御部125からの指示に従って画像処理を行う。
【0071】
ホスト制御部125は、画像処理部126に指示する処理を決めるための各種の判定、必要に応じて画像処理部126に与えるべき各種の情報の取得、プリンター11へ転送するデータの生成などを行う機能を有する。
【0072】
ホスト制御部125は、これらの機能を果たすために、データ種判定部131、判定手段の一例である第1判定部132、第2判定部133、演算手段の一例であるマージン演算部134、演算手段の一例である改行幅演算部135、コマンド生成部136及び印刷データ生成部137を備えている。また、画像処理部126は、上述の画像処理を行うために、解像度変換部141、色変換部142、第1調整手段の一例であるハーフトーン処理部143及び第2調整手段の一例であるマイクロウィーブ処理部144を備えている。
【0073】
ここで、画像データIDについて図6を用いて説明する。図6に示すように、画像データIDは、複数個のラベルの画像を縦横に配列した複数コマ画像データからなる。画像データIDは、背景画像が共通(固定)の複数コマの画像を含む固定データSDと、固定データSDの各コマ画像に重畳するように後処理で合成される文字列(本例では数字列)の文字コードからなる複数個の可変データVD(バリアブルデータ)とから構成される。可変データVDは、コマ毎に内容が変化する。
【0074】
本実施形態では、この製品の印刷において、固定データSDは全ての印刷で共通に使用し、可変データVDはコマ毎に異なるためコマ毎に用意される。このため、画像生成装置110からは、最初に固定データSDと、1回目の印刷に使用する複数個の可変データVDとが送られてきて、2回目以降の印刷では、複数個ずつの可変データVDだけが送られてくる。そして、固定データSDに、コマ毎に異なる可変データVDを合成して図6に示すような画像を印刷する。なお、可変データVDは、文字コードに替えて、画像データからなる場合もある。
【0075】
また、画像生成装置110からは、可変データVDの位置及びサイズを、固定データSDと共通の画像座標系で示す可変データ情報AD(図4参照)が送られてくる。可変データ情報ADは、例えば可変データVDに基づく可変画像に外接する矩形領域の対角に位置する始点と終点の座標で示される。このため、図6に示す可変データVDの高さH(副走査方向の幅に相当)は、可変データ情報AD中の始点と終点の各Y座標値(図6における上下方向の座標値)の差分を演算することで取得される。本例では、部分バリアブル印刷の指示は、例えば、PPML(Personalized Printing Markup Language)等のバリアブル印刷に対応した言語で記述されており、可変データ情報ADは例えば画像データIDのヘッダーに含まれている。
【0076】
以下、図4に示すホスト制御部125を構成する各部131〜137、及び画像処理部126を構成する各部141〜144について詳細に説明する。
図4に示すデータ種判定部131は、画像データIDを構成する可変データVDのデータ種を判定する。ここで、可変データVDにはコードデータ(例えば文字コードデータ)と画像データとの2種類がある。データ種判定部131は、可変データVDがコードデータであるか画像データであるかを判定する。ホスト制御部125は、可変データVDがコードデータであれば、画像処理を施すことなく可変データVDを転送制御部127を介してプリンター11へ送信する。一方、可変データVDが画像データであれば、画像処理を施すべく可変データVDを画像処理部126へ送る(図4に破線で示した転送経路)。
【0077】
第1判定部132は、可変データ情報ADに基づいて、可変データVDがマスター記録領域とスレーブ記録領域の境界(以下、「M/S境界」と呼ぶ場合もある)を跨ぐか否かを判定する。ここで、マスター記録領域とは、マスター側コントローラー41により制御される複数個(本例では8個)の記録ヘッド33Aの記録領域を指し、スレーブ記録領域とは、スレーブ側コントローラー42により制御される複数個(本例では7個)の記録ヘッド33Bの記録領域を指す。例えば図7において、印刷エリアPAのうち、同図の上側8個の記録ヘッド33Aが担当する上側約半分の記録領域がマスター記録領域であり、同図の下側7個の記録ヘッド33Bが担当する下側約半分の記録領域がスレーブ記録領域である。そして、本実施形態では、マスター記録領域とスレーブ記録領域の境界を示す仮想上の線を、「M/S境界線BL」(図7参照)と呼ぶ。そして、第1判定部132は、ラテラルスキャン1回当たりにM回の各主走査(パス動作)と交互に行われるM回の改行をシミュレーションし、改行の度に副走査方向Yに移動するM/S境界線BLを可変データVDが跨ぐ(つまりM/S境界線BLが可変データVDを横切る)か否かを判定する。なお、M回の改行には、1パスの主走査を行うに当たり、例えば前回のラテラルスキャンにおけるMパス目の主走査位置にある記録ユニット30を今回のラテラルスキャンにおける1パス目の位置に配置するための初期改行と、1パス目〜M−1パス目の主走査の後に次の主走査位置まで記録ユニット30を移動させるM−1回の改行とが含まれる。
【0078】
ホスト装置120内のメモリーにはM/S境界線BLの位置データが予め記憶されている。第1判定部132は、可変データ情報AD中の可変データVDの位置及びサイズの情報と、メモリーから読み出したM/S境界線BLの位置データとを用いて、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐか否かを判定する。例えば図7に示す画像データIDの例では、画像データID中の2行目の各コマに含まれる可変データVDが、M/S境界線BLを跨っており、このような場合、第1判定部132は、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐと判定する。
【0079】
図4に戻って、第2判定部133は、第1判定部132により可変データがM/S境界線BLを跨ぐと判定された場合に、可変データVDがM/S境界線BLを跨がないようにする調整が、記録ユニット30の改行幅ΔRの変更だけで対応可能か否かを判定する。ここで、本実施形態では、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐと判定された場合、図8に示すように、記録ユニット30を副走査方向Y(同図の白抜き矢印方向)へ移動させる改行を行ったときに、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐことになる規定の改行幅Δyを、可変データVDがM/S境界線BLを跨がない改行幅ΔRに変更する。つまり、可変データVDがM/S境界線BLを跨がないようにする調整を、改行幅ΔRの調整により行う。
【0080】
図4に示す改行幅演算部135は、M/S境界線BLの位置データと可変データ情報AD中の可変データVDの位置及びサイズの情報を用いて、可変データVDがM/S境界線BLを跨がないように調整しうる変位量の最小となる改行幅調整量ΔRcを演算する。そして、第2判定部133は、当初設定されている改行幅ΔRoに改行幅調整量ΔRcを加算して得られる改行幅ΔR(=ΔRo+ΔRc)が、記録ユニット30に許容される改行幅の上限値ΔRmax以下(ΔR≦ΔRmax)であるか否かを判定する。そして、第2判定部133は、ΔR≦Rmaxであれば記録ユニット30の改行幅ΔRの変更だけで調整可能と判定し、ΔR>Rmaxであれば記録ユニット30の改行幅ΔRの変更だけでは調整不可能と判定する。なお、上限値ΔRmaxは、この上限値ΔRmaxを超える改行幅ΔRで改行をすると、1回のラテラルスキャン(M回の主走査)のうちに記録ユニット30が印刷できない部分ができてしまい、改行しても印刷できない部分が発生しない限界値である。上限値ΔRmaxは、改行が行われる方向に応じて異なる値をとる。なお、副走査方向上流側の方向(反改行方向)への改行のため、改行幅ΔRがマイナスの値をとる場合は、改行幅ΔRの絶対値が反改行方向側の上限値Rmax以下(|ΔR|≦ΔRmax)であるか否かを判定する。
【0081】
マージン演算部134は、第1判定部132により可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐと判定され、かつ第2判定部133により改行幅ΔRだけでは調整不可能と判定された場合に、可変データVDがM/S境界線BLを跨がないようにするために必要な上マージンΔM(上余白量)を演算する。ここで、本実施形態では、改行幅ΔRだけでは調整不可能と判定された場合、図9に示すように、上マージンΔMに変更して(図9の例では上マージンをΔMに増加して)、シート領域に対して画像データIDを上下方向(副走査方向Y)(図9の例では下方向)にシフトさせることにより、可変データVDがM/S境界線BLを跨がないように調整する。マージン演算部134は、可変データVDがM/S境界線BLを跨がなくなるために必要な上マージン調整量ΔMcを演算し、当初の上マージンΔMoに上マージン調整量ΔMcを加算することにより、変更後の上マージンΔMを演算する。上マージン調整量ΔMcは、例えば、上マージンを当初の値から増やす場合にプラス、上マージンを当初の値から減らす場合にマイナスの値をとる。ここで、上マージン調整量ΔMcの演算方法は、改行幅ΔRの演算方法と同様に、M/S境界線BLの位置データと、可変データVDの位置及びサイズとを用いて行われる。そして、マージン演算部134は、演算した上マージンΔMを画像処理部126内のハーフトーン処理部143へ送る。
【0082】
図4に示す改行幅演算部135は、第2判定部133による判定に用いられる改行幅ΔRを演算する。改行幅演算部135は、可変データVDがM/S境界線BLを跨がないために必要な改行幅調整量ΔRcを演算し、当初の改行幅ΔRoに改行幅調整量ΔRcを加算することにより、変更後の改行幅ΔRを演算する。本例では、改行幅調整量ΔRcは、記録ユニット30を副走査方向Yにおいて当初設定されている位置から改行方向(図8における下方向)にシフトさせる場合にプラス、反改行方向(図8における上方向)にシフトさせる場合にマイナスの値をとる。また、改行幅演算部135は、第1判定部132と第2判定部133の各判定結果が共に肯定判定の場合に、先に演算した改行幅調整量ΔRcを、画像処理部126内のマイクロウィーブ処理部144へ送る。
【0083】
コマンド生成部136は、画像データID及び可変データVDに基づく印刷をプリンター11に行わせるための印刷コマンドを生成する。印刷コマンドには、キャリッジ系コマンドとして、主走査コマンドと改行コマンド(副走査コマンド)があり、搬送系コマンドとして、搬送コマンド、吸着コマンド、吸着解除コマンドなどがある。コマンド生成部136は、先の改行シミュレーションにおける判定結果に基づき改行幅の調整が行われなかった場合は、規定の改行幅ΔRo(4パス印刷の例ではΔy又は−3Δy)を指定して改行コマンドを生成する。詳しくは、毎回のラテラルスキャン開始に先立ち記録ユニット30を副走査方向Yにおける1パス目の位置に配置するための1回目の改行コマンド(初期改行コマンド)を、1パス目の位置までの復帰に必要な改行幅「−(M−1)・Δy」を指定して生成する。また、記録ユニット30を副走査方向Yに2パス目〜Mパス目の位置に配置するための改行コマンドを、規定の改行幅Δyを指定して生成する。一方、改行幅ΔRの調整が行われた場合、コマンド生成部136は、改行幅ΔRへの調整が行われたj回目の改行コマンドを、調整後の改行幅ΔRを指定して生成する。詳しくは、記録ユニット30が1回目のラテラルスキャン開始前の待機位置にあるとき、可変データVDがM/S境界線BLを跨がなくなる位置まで記録ユニット30を移動させる予備調整用の改行(以下、「予備改行」という)を行う。コマンド生成部136は、予備改行のコマンド(予備改行コマンド)を、改行幅調整量ΔRcを指定して生成する。また、コマンド生成部136は、2回目〜M回目の改行のうちのいずれかの改行のときには、改行幅(ΔRo+ΔRc)を指定して改行コマンドを生成する。さらにコマンド生成部136は、予備改行(1回目)〜M回目の改行の改行幅ΔRの累積値のマイナスを、改行幅に指定して初期改行コマンドを生成する。
【0084】
次に画像処理部126を構成する各部141〜144の詳細を説明する。
解像度変換部141は、画像データを表示解像度から印刷解像度へ変換する解像度変換処理を行う。
【0085】
色変換部142は、表示用の表色系(例えばRGB表色系やYCbCr表色系)から印刷用の表色系(例えばCMYK表色系)に色変換する色変換処理を行う。色変換部142による色変換処理は、例えば表示用の表色系と印刷用の表色系との変換対応関係を示すルックアップテーブルを参照して行われる。
【0086】
ハーフトーン処理部143は、表示用の高階調(例えば256階調)の画素データを印刷用の低階調(例えば2階調又は4階調)の画素データに階調変換するハーフトーン処理などを行う。ハーフトーン処理は、公知の組織的ディザ法や誤差拡散法などを用いて行われる。本実施形態のハーフトーン処理部143は、マージン演算部134から取得した上マージンΔMに基づき上マージンの調整を行うマージン調整処理部143Aを備えている。マージン調整処理部143Aは、調整後の上マージンΔMに相当する画素数幅(行数)のダミーデータ(非噴射の値のブランクデータ)を画像データIDに追加し、上マージン(上余白量)をΔMに調整する画像処理を行う。そして、ハーフトーン処理部143は、マージン調整処理部143Aが調整した色変換後の画像データ(例えばCMYK表色系画像データ)にハーフトーン処理を施す。
【0087】
マイクロウィーブ処理部144は、ハーフトーン処理後のハーフトーンデータに対してマイクロウィーブ処理を行う。ここで、マイクロウィーブ処理とは、記録ヘッド33A,33Bのノズル38の位置(ノズルピッチ)のばらつきに起因して、主走査によって印刷された印刷ドット列の副走査方向Yの隙間(行間)のばらつきが原因で発生するバンディング(スジ状の濃度むら)を抑制するマイクロウィーブ印刷方式(インターレース記録方式)を行うためのデータを生成するデータ処理である。ここで、記録ユニット30の主走査により、ノズル38から断続的に噴射されたインク滴がシート13上に着弾して形成される印刷ドットが、主走査方向Xに1列に並ぶドット列を、「ラスターライン」と呼ぶ。マイクロウィーブ処理では、副走査方向Yに隣り合うラスターラインの間隔が、副走査方向Yに隣接するノズルの間隔に依存しないように、ラテラルスキャン1回当たりパス数Mで印刷する場合に、M回のパスのうち1回目のパスで印刷されたラスターラインの隙間(行間)を、2回目〜M回目の各パスで印刷されるラスターラインで埋めるように、ハーフトーン処理後の画像データをパス毎に分解するパス分解処理が行われる。
【0088】
すなわち、全て(n個)のノズルを用いて1パス目を印刷して最大n本のラスターラインを描画し、2パス目で前回パスのラスターラインの行間を埋めるようにラスターラインを描画し、これをMパス目まで行って1回目のラスターラインの行間を全て埋めることにより、1回のラテラルスキャンは行われる。このMパスで1巡するラテラルスキャンにより、ノズル38の副走査方向Yの位置ばらつき(ノズルピッチのばらつき)に起因するラスターラインの行間のばらつきが原因で発生する主走査方向Xのバンディング(スジ状の濃度むら)が抑制される。
【0089】
本実施形態のマイクロウィーブ処理部144は、パス分解処理を行うことにより、ハーフトーン処理後の固定画像データを、パス毎のM個の固定画像データSPi(但しiは何パス目かを指し、i=1,2,…,M)に分解する。マイクロウィーブ処理部144は、さらにM個の固定画像データSPiに対して1パス分ずつ順番にノズル割付けを行う。ここで、ノズル割付けとは、例えばインク1色当たりの全ノズルがノズル番号♯1〜♯nのn個のノズル38からなる場合、固定画像データSPiを構成する各画素(ドット)を、ノズル番号を指定して各ノズル38に割付ける処理である。本例では、インク1色当たりの全ノズル数nは、1ノズル列当たりのノズル数(例えば180)×ヘッド個数(例えば15個)により定まる値である。マイクロウィーブ処理部144は、改行幅演算部135から改行幅調整量ΔRcを取得した場合、パス毎の固定画像データSPiにノズル割付けする際に、改行幅を調整したパスについては、改行幅調整量ΔRcだけノズルをずらしてノズル割付けを行う。
【0090】
改行には、記録ユニット30を1パス目の位置に戻すための1回目の改行(初期改行)と、各パスの主走査と交互に行われる2回目〜M回目の改行とがある。1回目の改行は、前回のラテラルスキャンのMパス目の位置から1パス目の位置へ記録ユニット30を戻す改行であり、その改行幅ΔRoはΔRo=−(M−1)・Δy(例えば4パス印刷の場合は、ΔRo=−3Δy)である。また、2回目〜M回目の改行は、主走査の後に記録ユニット30を副走査方向Yに次の主走査位置まで移動させるための改行であり、その改行幅ΔRoは、ΔRo=Δyである。この改行幅ΔRoは、当初設定されている調整前の規定の改行幅である。
【0091】
本例では、Δyは例えばノズルピッチΔnの1/Mの値であり、このようにΔy<Δnの場合、改行幅調整量ΔRcは、ノズルピッチΔnの自然数倍とする(ΔRc=K・Δn(但しKは自然数)。このため、マイクロウィーブ処理部144は、改行幅調整量ΔRcがプラスの場合(つまり改行幅を増加させる場合)、当初の改行幅Δyのときに割付けるノズルよりも、改行幅調整量ΔRc分(つまりK個分)だけ副走査方向上流側のノズルに画素を割付ける。また、改行幅調整量ΔRcがマイナスの場合(つまり改行幅を減少させる場合)は、当初の改行幅Δyのときに割付けるノズルよりも、改行幅調整量ΔRc分(つまりK個分)だけ副走査方向下流側のノズルに画素を割付ける。そして、このマイクロウィーブ処理により生成されたM個の固定画像データSPiからなる固定画像データSP(可変データVDが画像データである場合は可変画像データVPも)は、マイクロウィーブ処理部144から印刷データ生成部137へ順次転送される。
【0092】
印刷データ生成部137は、M個の固定画像データSP1〜SPMを、さらに記録ヘッド33A,33B別に分割する。すなわち、印刷データ生成部137は、M個の固定画像データSP1〜SPMを、8個の記録ヘッド33Aで使用するためマスター側コントローラー41へ送るべきM個の固定画像データSPAi(i=1,…,M)と、7個の記録ヘッド33Bで使用するためスレーブ側コントローラー42へ送るべきM個の固定画像データSPBi(i=1,…,M)とに分割する。
【0093】
印刷データ生成部137は、M個の固定画像データSPAiからなる固定画像データSPAに、印刷コマンドを含むヘッダーを付して印刷データPD1を生成し、M個の固定画像データSPBiからなる固定画像データSPBに、印刷コマンドを含むヘッダーを付して印刷データPD2を生成する。また、可変データVDが画像データである場合、印刷データ生成部137は、画像処理部126が可変データVDを基に生成した可変画像データVPも印刷データPD1,PD2に含める。また、印刷データ生成部137は、改行幅ΔR又は上マージンΔMの調整実施時には、改行幅調整量ΔRcと上マージンΔMのうち画像処理に用いられた一方を含む画像処理関連情報も、印刷データPD1,PD2のヘッダーの一部として付加する。
【0094】
そして、ホスト制御部125は、シリアル通信ポートU3を転送先に指定して、印刷データPD1、可変データVD及び可変データ情報ADの転送を転送制御部127に指示するとともに、シリアル通信ポートU4を転送先に指定して、印刷データPD2、可変データVD及び可変データ情報ADの転送を転送制御部127に指示する。転送制御部127は、印刷データ生成部137からのデータを圧縮処理してからプリンター11へ転送する。
【0095】
なお、画像データの画素配列順序(画素読取り順序)は、図6に示す画像における各行で左端の画素から右方向(横方向)へ向かう順番で、1行目、2行目、3行目、…の順番(図6では上から下へ向かう行の順番)で行方向に読み取られる。このとき、画像の行方向(横方向)が、記録ヘッド33A,33Bによって描画するときの主走査方向Xに相当する。このため、画像処理の説明において、主走査方向と言った場合は画像の行方向(横方向)を指し、副走査方向と言った場合は画像の列方向を指すものとする。
【0096】
図5は、プリンター11側の各コントローラー41,42の機能構成を示すブロック図である。なお、各コントローラー41,42の印刷制御上の機能構成は基本的に同じなので、図5では、マスター側コントローラー41の機能構成について説明する。また、図5では、固定画像データSPA,SPBを特に区別することなく固定画像データSPと記している。
【0097】
図5に示すように、コントローラー41内には、CPU51が不揮発性メモリー54に記憶されたプログラムを実行することにより構築される機能部分、及びASIC52内の各種の電子回路により構成される機能部分などが設けられている。すなわち、図5に示すように、コントローラー41内には、主制御部70、解凍処理部71、コマンド解析部72、メカ制御部73、データ種判定部74、変換手段の一例である画像変換部75、第1調整手段の一例であるハーフトーン処理部76、第2調整手段の一例であるマイクロウィーブ処理部77、合成手段の一例である合成処理部78、縦横変換処理部79、第1ヘッド制御部85及び第2ヘッド制御部86を備える。なお、各部70〜79,85,86は、一例としてソフトウェアとハードウェアの協働による構成としたが、ソフトウェアのみ、あるいはハードウェアのみにより構成してもよい。
【0098】
RAM53には、受信バッファー81と中間バッファー82と印刷バッファー83とが設けられている。受信バッファー81には、ホスト装置120からシリアル通信ポートU3(U4)(例えばUSBポート)が受信した印刷データPD1(PD2)、可変データVD及び可変データ情報ADが格納される。中間バッファー82には、印刷データPD1(PD2)中の印刷画像データ又はこれに所定の処理を施して生成されるプレーンデータが格納される。中間バッファー82に格納されるプレーンデータとしては、例えば固定画像データSPがある。また、印刷バッファー83には、プレーンデータに所定の処理を施して生成されるヘッド制御データが格納される。ヘッド制御データとは、記録ヘッド33A(33B)内の不図示のヘッド駆動回路がノズル毎に設けられた圧電素子等の噴射駆動素子の駆動制御に使用可能な形式の制御データである。なお、画像処理系の各部71,72,74〜79とRAM53との間、RAM53とヘッド制御部85,86との間におけるデータ転送は、CPU51の指示に従うDMAコントローラー(不図示)により行われる。また、噴射駆動素子としては、圧電素子の他、静電素子や、サーマル方式でインク滴を噴射させる気泡を発生させるためにインクを加熱する発熱素子などを採用できる。
【0099】
次に、図5に示す各部70〜79について詳細に説明する。
主制御部70は、各部71〜79を統括的に制御する。
解凍処理部71は、受信バッファー81に格納された印刷データPD1(PD2)、可変データVD、可変データ情報ADの解凍処理を行う。解凍された印刷データPD1(PD2)は、プレーンデータ(固定画像データSP(又は固定画像データSP及び可変画像データVP))と、印刷言語で記述された印刷コマンドと、改行幅調整量ΔRc及び上マージンΔMのうちホスト側での画像処理に用いられた画像処理関連情報とを含む。固定画像データSPは中間バッファー82(格納手段)に格納され、印刷コマンドはコマンド解析部72に送られる。また、可変画像データVP又は可変データVDはデータ種判定部74に送られる。さらに可変データ情報ADはコマンド解析部72に送られる。なお、本実施形態では、1回目の印刷の際に受信されて中間バッファー82に格納された固定画像データSPは、その後、保存され続け、2回目から最終回の印刷に使用される。このため、プリンタードライバー122における固定データSDから固定画像データSPを生成するための画像処理は、基本的に1回目のときだけ行われる。もちろん、ホスト装置120内のメモリーに固定画像データSPを格納しておき、プリンタードライバー122が可変データと共に固定画像データSPをプリンター11へ毎回送信してもよい。
【0100】
コマンド解析部72は、解凍後の印刷データPD1(PD2)から取得された印刷コマンドを解析し、解析して取得したコマンドをメカ制御部73へ送る。また、コマンド解析部72は、可変データ情報AD、画像処理関連情報(改行幅調整量ΔRc、上マージンΔM等)を解析して、画像処理関連情報をマイクロウィーブ処理部77に送るとともに、可変データ情報ADを合成処理部78に送る。
【0101】
データ種判定部74は、可変データが、コードデータからなる可変データVDであるか、画像処理済みのCMYK表色系の可変画像データVPであるかを判定する。コードデータからなる可変データVDであれば、コードデータから画像データへの変換が必要なため、可変データVDを画像変換部75に送る。一方、画像処理済みの可変画像データVPであれば、画像処理の必要がないので、可変画像データVPを中間バッファー82に格納する。
【0102】
図5に示す画像変換部75は、可変データVDを、コードデータから画像データへ変換する。画像変換部75は、例えば文字コードを入力すると、その文字コードに対応する文字のフォントデータ(形状データ)を出力するキャラクタージェネレーターにより構成される。文字コードとしては、例えばアスキー(ASCII)コード、JISコード、シフトJ ISコード、ユニコード(Unicode)、EUCコードなどが挙げられる。また、本実施形態の画像変換部75は、文字コードで記述された文字列を、1次元コード又は2次元コードの画像(形状データ)に変換するコードジェネレーターの機能も有している。このため、画像変換部75は、可変データVDの変換先の形式を指定する指定情報に基づいて、図6及び図7等に示すフォントデータに変換することも、バーコード等の1次元コードやQRコード等の2次元コードに変換することも可能である。このように画像変換部75は、可変データVDを構成するコードをフォントデータ、1次元コード又は2次元コードに変換して、可変画像データVIを生成する。
【0103】
図5に示すハーフトーン処理部76は、プリンタードライバー122側のハーフトーン処理部143と同様の機能を有しており、可変画像データVIにハーフトーン処理を施して2階調又は4階調の画像データに変換する。ここで、可変画像データVIの画像処理には、2種類の方法がある。1つは、複数の可変画像がコマ毎に配列された1つの全体画像データに画像処理を施す方法であり、他の1つは、コマ毎に用意された可変画像データVIに個別に画像処理を施す方法である。前者の場合、ハーフトーン処理部76は、可変画像データVIの副走査方向上流側(反改行方向側)の位置に、コマンド解析部72から取得した上マージンΔM分の行数のダミーデータ(非噴射の値のブランクデータ)を追加する。そして、ダミーデータ追加後の可変画像データVIにハーフトーン処理を施す。一方、後者の場合、ハーフトーン処理部76は、個々の可変画像データVIにハーフトーン処理を施すとともに、可変データ情報ADから取得される各可変画像データVIの画像座標系の各位置座標に対して、上マージンΔM分だけY座標値を副走査方向下流側(改行方向側)へシフトさせる補正を施す。そして、ハーフトーン処理部76は、ハーフトーン処理後のM個ずつの可変画像データを、それぞれの位置座標データと一緒にマイクロウィーブ処理部77へ送る。
【0104】
図5に示すマイクロウィーブ処理部77は、プリンタードライバー122側のマイクロウィーブ処理部144と同様の機能を有している。すなわち、マイクロウィーブ処理部77は、ハーフトーン処理後の可変画像データVIにマイクロウィーブ処理を施す。まずマイクロウィーブ処理部77は、ハーフトーン処理後の可変画像データVIにパス分解処理を施し、可変画像データVIをラテラルスキャン1回当たりのパス数Mに等しいM個のM個の可変画像データVPi(但し但しiは何パス目かを指し、i=1,2,…,M)に分解する。さらにマイクロウィーブ処理部77は、M個の可変画像データVPiに対して1パス分ずつ順番にノズル割付けを行う。このとき、パス毎の可変画像データVPiにノズル割付けする際に、改行幅が調整された改行の直後のパスについては、改行幅調整量ΔRcだけノズルをずらしてノズル割付けを行う。すなわち、マイクロウィーブ処理部77は、改行幅調整量ΔRcがプラスの場合(つまり改行幅を増加させる場合)、当初の改行幅Δyのときに割付けるノズルよりも、改行幅調整量ΔRc分(つまりK個分)だけ副走査方向上流側のノズルに画素を割付ける。また、改行幅調整量ΔRcがマイナスの場合(つまり改行幅を減少させる場合)は、当初の改行幅ΔRoのときに割付けるノズルよりも、改行幅調整量ΔRc分(つまりK個分)だけ副走査方向下流側のノズルに画素を割付ける。
【0105】
一方、コマ毎の可変画像データVIに個別にマイクロウィーブ処理を施す方法の場合、マイクロウィーブ処理部77は、ハーフトーン処理後の各可変画像データVIにパス分解処理を施し、コマ毎の可変画像データ一つにつきM個ずつの可変画像データVPiを生成する。そして、M個ずつの可変画像データVPiに、各可変画像データの位置座標に上マージン分の補正が加えられた補正後の位置座標を参照しつつ、ノズル割付けを行う。そして、マイクロウィーブ処理部77は、ノズル割付け後のM個ずつの可変画像データVPiを、補正後の位置座標と共に合成処理部78に送る。
【0106】
マイクロウィーブ処理後に得られるM個の可変画像データVPiは、固定画像データSPと位置の整合がとれたデータとなっている。つまり、1パス目〜Mパス目の固定画像データSP1〜SPMと、1パス目〜Mパス目の可変画像データVP1〜VPMは、それぞれ同じパスで位置の整合がとれたものとなっている。そして、このマイクロウィーブ処理により生成されたM個の可変画像データVPiからなる可変画像データVPは、マイクロウィーブ処理部77から合成処理部78へ送られる。
【0107】
図5に示す合成処理部78は、固定画像データSPと可変画像データVPとを合成する画像合成を行う。このとき、固定画像データSPは、1回目の印刷ではホスト装置120から受信したものを使用するが、2回目以降の印刷では1回目に受信して中間バッファー82に格納しておいたものを、中間バッファー82から読み出して使用する。また、可変画像データVPは、可変データVDがコードデータであるときにプリンター11内で画像処理が施されたものをマイクロウィーブ処理部77から取得するか、可変データVDが画像データであるときにプリンター11がホスト装置120から受信して中間バッファー82に格納しておいたものを取得する。合成処理部78は、固定画像データSPと可変画像データVPを、対応するパス毎に合成することにより、M個(Mパス分)の合成画像データBPi(但しiは何パス目かを指し、i=1,2,…,M)を生成する。一方、可変画像データVIがコマ毎のものでコマ数と同数存在する場合、合成処理部78は、各可変画像データVPの補正後の位置座標を参照しつつ、固定画像データSPと可変画像データVPを、対応するパス毎に合成することにより、M個(Mパス分)の合成画像データBPi(但しi=1,2,…,M)を生成する。
【0108】
縦横変換処理部79は、合成処理部78で合成処理された合成画像データBPに対し縦横変換処理を施す。ここで、合成画像データBPは、画素が表示用の並び順(読出し順)の横方向(行方向)に配列されたデータである。縦横変換処理では、記録ヘッド33A(33B)のノズル38からインク滴を噴射する順序(つまりノズル配列順)に合わせて、合成画像データBPの画素の並び順(読出し順)を、表示用の横方向(行方向)からノズル配列方向の縦方向(列方向)に変換する。つまり、縦横変換処理部79は、1回のパスにおいて180個のノズル38から1番目に噴射される180画素、2番目に噴射される180画素、…、最後に噴射される180画素の順番になるように、横方向(行方向)の順番に並ぶ画素の並び順を、ノズル列方向の縦方向(列方向)の順番に変換する。この縦横変換処理は、ノズル割付けのデータが参照されながら行われる。縦横変換処理により生成されたM個(Mパス分)のヘッド制御データは印刷バッファー83に格納される。印刷バッファー83に格納されたM個のヘッド制御データは、1パス分ずつ順番に、第1及び第2ヘッド制御部85,86に転送される。
【0109】
図5に示す第1及び第2ヘッド制御部85,86は、印刷バッファー83から転送されてきた1パス分のヘッド制御データを、記録ヘッド33A(33B)の列毎に分割し、そのうち担当する列のヘッド制御データをヘッド制御ユニット45(HCU)へ転送する。ここで、第1ヘッド制御部85は、図2に示す8個の記録ヘッド33A(又は7個の記録ヘッド33B)のうち、左列(第1列)に属する4個の記録ヘッド33A(又は3個の記録ヘッド33B)の制御を担当し、第2ヘッド制御部86は、右列(第2列)に属する4個の記録ヘッド33A(33B)の制御を担当する。第1ヘッド制御部85は、ヘッド制御データのうち、第1列に属する4個の記録ヘッド33A(又は3個の記録ヘッド33B)に対応する部分を選択し、さらにそれをHCU45毎に分配して、その分配したヘッド制御データを各HCU45を介して第1列に属する4個の記録ヘッド33A(又は3個の記録ヘッド33B)に転送する。第2ヘッド制御部86は、同様に1パス分のヘッド制御データのうち第2列に属する4個の記録ヘッド33A(33B)に対応する部分を選択し、さらにそれをHCU45毎に分配して、その分配したヘッド制御データをHCU45を介して第2列に属する4個の記録ヘッド33A(33B)に転送する。
【0110】
記録ユニット30において主走査方向Xに異なる位置(列)に配置された第1列の記録ヘッド群と第2列の記録ヘッド群は、主走査方向Xの記録位置が同じでも、列間の距離に相当する分だけ噴射タイミングをずらして制御される必要がある。本実施形態では、同じ噴射タイミングで制御できる列(記録ヘッド群)毎に2つのヘッド制御部85,86に分けている。このため、各ヘッド制御部85,86はそれぞれ担当する列の記録ヘッド群に対する1種類の制御を行えばよい。例えば2列の記録ヘッドを1つのヘッド制御部で制御する構成を採用した場合、第1列と第2列の各記録ヘッド群を別々の噴射タイミングで制御する必要があるため2系統の制御が必要になる。本実施形態のように列の異なる記録ヘッド群毎にヘッド制御部85,86を設けることで、それぞれは1種類の噴射タイミングで制御する1系統の制御で済ませられる。
【0111】
記録ヘッド33A(33B)内の不図示のヘッド駆動回路は、ヘッド制御データに基づきノズル38毎の噴射駆動素子を駆動制御し、ノズル38からインク滴を噴射させる。このとき、記録ヘッド33A(33B)の噴射タイミングは、リニアエンコーダー50のエンコーダーパルス信号を基に第1及び第2ヘッド制御部85,86が生成した噴射タイミング信号に基づきヘッド駆動回路が噴射駆動素子の駆動タイミングを制御することにより行われる。
【0112】
また、図5に示すメカ制御部73は、コマンド解析部72から受け付けたコマンドをメカコントローラー43へ送る。このコマンドには、前述のように、搬送コマンド、吸着コマンド、主走査コマンド、改行コマンド(副走査コマンド)、吸着解除コマンドなどがある。メカ制御部73は、メカコントローラー43側の進捗を監視し、メカコントローラー43側の進捗に合わせた適宜なタイミングで、コントローラー41,42間の同期をとりつつ、コマンドをメカコントローラー43へ送る。
【0113】
図3に示すメカコントローラー43は、コマンドに従ってメカニカル機構44を駆動制御する。メカコントローラー43は搬送コマンドに従って搬送モーター61を駆動してシート13を次の被印刷領域が支持台19上に位置するまで搬送させ、このシート搬送後に吸着コマンドに従って吸引装置34を駆動させることでシート13の被印刷領域を支持台19の上面に吸着させる。また、メカコントローラー43は主走査コマンドに従って第1CRモーター62を駆動して記録ユニット30を主走査方向Xに移動させる。このときコントローラー41,42に制御された記録ヘッド33A,33Bがノズル38からインク滴を噴射し、シート13の被印刷領域へ1パス分の印刷が施される。そして、1パスを終える度に、メカコントローラー43は、改行コマンド(副走査コマンド)に従って第2CRモーター63を駆動させ、記録ユニット30を副走査方向Yへ次の主走査位置(次パス位置)まで移動させる。以降、記録ユニット30の主走査と改行(副走査)とを交互に繰り返し、キャリッジ31がMパス分の印刷を行うことにより、例えば1つ(1フレーム)の画像(製品)が印刷される。1フレーム分の画像の印刷を終了すると、メカコントローラー43は吸着コマンドに従って吸引装置34によるシート13の吸引を解除し、その後、搬送コマンドに従って搬送モーター61を駆動してシート13を次の印刷位置まで搬送する。なお、複数版印刷が行われる場合は、Mパスを複数回繰り返して複数版からなる1つ(1フレーム)の画像(製品)が印刷される。また、本実施形態では、合成画像データに基づき、固定画像と可変画像とを1版で印刷するが、固定画像を第1版で印刷し、可変画像を第2版で印刷することも可能である。
【0114】
次にプリンター11の作用を、図10及び図11に示すフローチャートに基づいて説明する。まずホスト装置120(プリンタードライバー122)側の処理を図10に従って説明し、次にプリンター11側の処理を図11に従って説明する。図10の処理は、ホスト装置120内のコンピューター(例えばCPU)がプログラムを実行することにより構築されるプリンタードライバー122が行う。なお、可変データVDは文字コードデータであるものとする。この場合、データ種判定部131により可変データVDが文字コードデータであると判定されるので、以下の処理において可変データVDの画像処理は行われない。
【0115】
まずステップS1では、画像データと可変データ情報を取得する。つまり、画像生成装置110からホスト装置120が画像データID及び可変データ情報ADを受信することで取得するか、予め受信してホスト装置120内の所定のバッファー(RAM)に格納されていた画像データID及び可変データ情報ADを、バッファーから読み出す。
【0116】
ステップS2では、可変データVDが記録ヘッド33A,33BのM/S境界線BLを跨ぐか否かを判定する。この判定は第1判定部132が行う。第1判定部132は、1回のラテラルスキャンで行われる複数回の改行をシミュレーションし、改行を行う度に、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐことになるか否かを判定する。可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐことになる改行が1つでも存在すれば、判定結果を肯定判定としてステップS3に進み、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐことになる改行が1つも存在しなければ、判定結果を否定判定としてステップS6に進む。
【0117】
ステップS3では、改行幅で調整可能か否かを判定する。この判定は第2判定部133が判定する。このとき、まず改行幅演算部135が、M/S境界線BLの位置データと可変データ情報ADとを用いて、第1判定部132の判定で跨ぐと判定された改行について、全ての可変データVDがM/S境界線BLを跨がないように調整しうる改行幅調整量ΔRcを演算する。そして、改行幅演算部135は、当初の改行幅ΔRo(=Δy又は−3Δy)に改行幅調整量ΔRcを加算することにより、調整後の改行幅ΔR(=ΔRo+ΔRc)を演算する。例えば、記録ユニット30の1パス目の位置で、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐと判定された場合は、1回目のラテラルスキャン(印刷)のときは、記録ユニット30の現在の待機位置から可変データVDがM/S境界線BLを跨がなくなる位置までの改行幅調整量ΔRcが演算される。そして、この改行幅調整量ΔRcが1回目のラテラルスキャン開始前に記録ユニット30を1パス目の位置に予め配置するための予備改行の改行幅ΔRとして設定される。また、記録ユニット30の2パス目〜Mパス目のうちいずれか1つ以上の位置で、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐと判定された場合は、2回目〜M回目の改行のうち跨ぐと判定されたパスの直前の改行における改行幅ΔRが、ΔR=Δy+ΔRcとして演算される。また、2回目以降のラテラルスキャンのときに1パス目の位置に戻すための初期改行の改行幅ΔRが、1回目の予備改行の改行幅ΔR〜M回目の改行幅ΔRの累積値にマイナスを付けた値として演算される。
【0118】
そして、第2判定部133は、その改行幅ΔR(ΔR<0の場合はその絶対値)が記録ユニット30に許容される改行幅の上限値ΔRmax以下であるか否かを判定する。第2判定部133は、ΔR≦Rmaxであれば改行幅ΔRで調整可能と判定し、ΔR>Rmaxであれば改行幅ΔRでは調整不可能と判定する。第2判定部133は、第1判定部132の判定結果が肯定判定となった改行が複数存在した場合は、その複数の改行の全てについてΔR≦Rmaxが成立した場合に限り、改行幅で調整可能であると判定する。この判定結果に基づき、改行幅で調整可能であればステップS4に進み、調整不可能であればステップS5に進む。
【0119】
ステップS4では、改行幅を調整する。つまり、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐと判定された改行の改行幅を、当初の改行幅ΔRo(=Δy(但し1回目の予備改行はΔRo=0))に、改行幅演算部135が演算した改行幅調整量ΔRcを加算した改行幅ΔR(=ΔRo+ΔRc)に変更する。この改行幅の調整は、例えばマイクロウィーブ処理部144に改行幅調整量ΔRcを送信すること、及びコマンド生成部136が変更後の改行幅ΔRを指定して改行コマンドを生成することにより行われる。
【0120】
一方、改行幅で調整不可能な場合は、ステップS5において、上マージンを調整する。つまり、マージン演算部134は、可変データVDがM/S境界線BLを跨がないようにするために必要な上マージンΔMを演算する。詳しくは、マージン演算部134は、可変データVDがM/S境界線BLを跨がなくなるために必要な上マージン調整量ΔMcを演算し、当初の上マージンΔMoに上マージン調整量ΔMcを加算して、調整後の上マージンΔM(=ΔMo+ΔMc)を取得する。そして、上マージンの調整は、例えばハーフトーン処理部143のマージン調整処理部143Aに調整後の上マージンΔM(=ΔMo+ΔMc)を送信することにより行われる。なお、上マージンの調整がない場合は、マージン調整処理部143Aに当初の上マージンΔM(=ΔMo)が送信される。また、上マージンを併用しても調整不可能の場合、プリンタードライバー122は、可変データVDに画像処理を施して可変画像データVPを生成し、この可変画像データVPと固定画像データSPとを合成した合成画像データをプリンター11に送信する。
【0121】
ステップS6では、固定データSDに解像度変換処理を施す。この処理は解像度変換部141が行う。
ステップS7では、解像度変換処理後の固定データSDに色変換処理を施す。この処理は色変換部142が行う。
【0122】
ステップS8では、色変換処理後の固定データSDにハーフトーン処理を施す。この処理はハーフトーン処理部143が行う。まずマージン調整処理部143Aは、上マージンΔMに相当する画素数幅(行数)分のダミーデータを、固定データSDの上側(反改行方向側)に追加する処理を行う。ここで、ステップS5で調整された上マージンΔMを取得した場合、固定データSDの副走査方向上流側(反改行方向側)に、調整後の上マージンΔM(=ΔMo+ΔMc)に相当する画素数幅(行数)分のダミーデータを追加する。そして、ハーフトーン処理部143は、上マージン調整後の固定データSDにハーフトーン処理を施す。なお、上マージンの調整が行われなかった場合は、当初の上マージンΔMoに相当する行数分のダミーデータが追加される。
【0123】
ステップS9では、ハーフトーン処理後の固定画像データにマイクロウィーブ処理を施す。この処理はマイクロウィーブ処理部144が行う。マイクロウィーブ処理部144は、固定画像データにパス分解処理を施して、固定画像デーをM個の固定画像データSPiに分解する。マイクロウィーブ処理部144は、さらにM個の固定画像データSPiに対して1個(1パス分)ずつ順番に各画素をノズルに割付けるノズル割付けを行う。マイクロウィーブ処理部144は、改行幅調整量ΔRcがプラス(ΔRc>0)の場合、当初の改行幅Δyのときに割付けるノズルよりも、改行幅調整量ΔRc分(つまりK個分)だけ副走査方向上流側のノズルに画素を割付ける。また、改行幅調整量ΔRcがマイナス(ΔRc<0)の場合は、当初の改行幅Δyのときに割付けるノズルよりも、改行幅調整量ΔRc分(つまりK個分)だけ副走査方向下流側のノズルに画素を割付ける。そして、マイクロウィーブ処理により生成されたM個の固定画像データSPiからなる固定画像データSP(可変データVDが画像データである場合は可変画像データVPも)は、マイクロウィーブ処理部144から印刷データ生成部137へ順次転送される。
【0124】
一方、コマンド生成部136は、画像データID及び可変データVDに基づく画像をプリンター11に印刷させるために、主走査コマンド、改行コマンド、搬送コマンドなどを含む印刷コマンドを生成する。例えば改行幅が調整された場合、コマンド生成部136は、調整後の改行幅ΔRを指定して改行コマンド(副走査コマンド)を生成する。
【0125】
そして、印刷データ生成部137は、M個の固定画像データSP1〜SPMを、さらに記録ヘッド33A,33B別(つまり群別)に分割する。この分割により、マスター側コントローラー41用のM個の固定画像データSPAi(i=1,…,M)と、スレーブ側コントローラー42用のM個の固定画像データSPBi(i=1,…,M)が生成される。
【0126】
印刷データ生成部137は、M個の固定画像データSPAiからなる固定画像データSPAに、印刷コマンドを含むヘッダーを付して、印刷データPD1を生成し、M個の固定画像データSPBiからなる固定画像データSPBに、印刷コマンドを含むヘッダーを付して、印刷データPD2を生成する。また、印刷データ生成部137は、改行幅調整(S4)が行われた際の改行幅調整量ΔRcと上マージンΔMを含む画像処理関連情報も、印刷データPD1,PD2のヘッダーに付加する。そして、印刷データ生成部137は、印刷データPD1,PD2、可変データVD及び可変データ情報ADに、マスター用とスレーブ用に分けて圧縮処理を施した後、各圧縮データを転送制御部127を介してプリンター11の各コントローラー41,42に転送する。
【0127】
なお、データ種判定部131により画像データと判定された可変データVDは画像処理部126へ送られ、固定データSDと同様に、各部141〜144により、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理及びマイクロウィーブ処理が施される。生成されたM個の可変画像データVPi(i=1,…,M)は、M個の固定画像データSP1〜SPMと、対応するパスで位置の整合がとれたものとなっている。
【0128】
次にプリンター11が行う処理を図11に基づいて説明する。プリンター11では、マスター側コントローラー41が、印刷データPD1、可変データVD及び可変データ情報ADを受信し、スレーブ側コントローラー42が印刷データPD2、可変データVD及び可変データ情報ADを受信する。このようにマスター側コントローラー41は第1群に属する8個の記録ヘッド33Aで使用される固定画像データSPAを含む印刷データPD1を受信し、スレーブ側コントローラー42は第2群に属する7個の記録ヘッド33Bで用いられる固定画像データSPBを含む印刷データPD2を受信する。印刷データPD1には、固定画像データSPAと印刷コマンドが含まれ、印刷データPD2には、固定画像データSPBと印刷コマンドが含まれる。さらに印刷データPD1,PD2のヘッダーには画像処理関連情報(ΔRc(改行幅調整実施時)、ΔM)が含まれる。また、プリンター11は、可変データとして、コードデータからなる可変データVDか、ホスト側で画像処理が施された可変画像データVPのどちらかを受信する。
【0129】
プリンター11内の両コントローラー41,42の処理内容は基本的に同じなので、以下では、印刷データPD1,PD2を特に区別することなく印刷データPDと記し、固定画像データSPA,SPBを特に区別することなく固定画像データSPと記して説明する。なお、図11に示すプリンター側の処理は、コントローラー41,42内の各CPU51が行う。
【0130】
ステップS11では、固定画像データSPを中間バッファー82に格納する。つまり、解凍処理部71が印刷データPDを解凍し、その中に含まれる固定画像データSPを中間バッファー82に格納する。
【0131】
ステップS12では、可変データがコードデータであるか否かを判定する。この判定はデータ種判定部74が行う。可変データがコードデータであればステップS13に進み、コードデータでなければ(つまり可変画像データであれば)ステップS14に進む。
【0132】
ステップS13では、コードデータからなる可変データVDを画像データ(形状データ)に変換する画像変換を行う。この画像変換は画像変換部75が行う。画像変換部75は、例えば文字コードを入力すると、その文字コードに対応するフォントデータ(形状データ)を出力して、可変画像データVIを生成する。また、文字コード変換先の形式として1次元コード又は2次元コードが指定されている場合、画像変換部75は、文字コードで記述された数字列や文字列を、指定の1次元コード又は2次元コードの画像(コード画像)に変換して、可変画像データVIを生成する。
【0133】
なお、コマ毎の可変画像データVIを次の処理へ送る方法と、可変画像データVIを各コマに対応する位置に配置した全体画像データを次の処理へ送る方法のいずれかを採用する。全体画像データは、可変データ情報ADに基づく各位置に各可変画像データVIを配置することにより生成される。また、コマ毎の可変画像データVIを送る場合はそれらの位置を規定する可変データ情報ADも併せて次の処理へ送られる。
【0134】
ステップS14では、可変画像データVPを中間バッファー82に格納する。
ステップS15では、可変画像データVIにハーフトーン処理を施す。この処理はハーフトーン処理部76が行う。可変画像データVIは、複数の可変画像がコマ毎に配列された全体画像データとする。ハーフトーン処理部76は、コマンド解析部72から印刷データPDに画像処理関連情報として含まれる上マージンΔMを取得しており、可変画像データVIの副走査方向上流側(反改行方向側)の位置に、上マージンΔMに相当する行数のダミーデータを追加する。そして、ダミーデータの追加された可変画像データVIにハーフトーン処理を施す。一方、可変画像データVIがコマ毎のものでコマ数と同数存在する場合、可変画像データVIにハーフトーン処理を施すとともに、可変データ情報ADを基に各可変画像データVIの画像座標系上の各位置を求め、さらにこれら各位置に対して、上マージンΔMの分だけY座標値を改行方向側へシフトさせる位置座標の補正を行う。ハーフトーン処理によりコマ毎に生成されたM個の可変画像データを、それぞれの位置座標データと一緒に次の処理へ送る。
【0135】
ステップS16では、ハーフトーン処理後の可変画像データVIにマイクロウィーブ処理を施す。まずマイクロウィーブ処理部77は、ハーフトーン処理後の可変画像データVIにパス分解処理を施し、可変画像データVIをM個の可変画像データVPi(但しi=1,2,…,M)に分解する。さらにマイクロウィーブ処理部77は、M個の可変画像データVPiに対して1個(1パス分)ずつ順番に各画素をノズルに割付けるノズル割付けを行う。このとき、パス毎の可変画像データVPiにノズル割付けする際に、改行幅が調整された改行の直後のパスについては、改行幅調整量ΔRcだけノズルをずらしてノズル割付けを行う。すなわち、マイクロウィーブ処理部77は、改行幅調整量ΔRcがプラスの場合、当初の改行幅Δyのときに割付けるノズルよりも、改行幅調整量ΔRc分(本例ではK個分)だけ副走査方向上流側のノズルに画素を割付ける。また、改行幅調整量ΔRcがマイナスの場合は、当初の改行幅ΔRoのときに割付けるノズルよりも、改行幅調整量ΔRc分(本例ではK個分)だけ副走査方向下流側のノズルに画素を割付ける。
【0136】
一方、コマ毎の可変画像データVIを個々に処理する方法の場合、ハーフトーン処理部76から取得したハーフトーン処理後のコマ毎の可変画像データVIに、位置座標を参照しつつ、パス分解処理を施す。このとき、上マージンが調整されている場合は、上マージンΔM分の補正が加えられた位置座標を参照する。
【0137】
そして、パス分解処理により生成されたM個ずつの可変画像データの各画素をノズルに割付ける。このとき、改行幅が調整されている場合、改行幅が調整された改行の直後のパスについては、改行幅調整量ΔRcだけノズルをずらしてノズル割付けを行う。そして、マイクロウィーブ処理部77は、M個ずつの可変画像データを、先の補正後の位置座標と一緒に合成処理部78に送る。なお、このようにハーフトーン処理で上マージンΔM分の位置調整が行われるか、又はマイクロウィーブ処理のノズル割付けで改行幅調整量ΔRc分の位置調整が行われるので、マイクロウィーブ処理後に得られる可変画像データVPは、固定画像データSPと位置の整合がとれたものとなる。また、コマ毎の可変画像データを扱う方法では、可変画像データの位置座標は、固定画像データSPと位置の整合がとれたものとなっている。
【0138】
ステップS17では、固定データと可変データとを合成する合成処理を行う。詳しくは、合成処理部78は、M個の固定画像データSPi(i=1,2,…,M)とM個の可変画像データVPi(i=1,2,…,M)を、対応するパス毎に合成することにより、M個の合成画像データBPi(i=1,2,…,M)を生成する。このときの画像合成は、可変画像の領域では、可変画像の画素(色)が優先されるように行われる。一方、コマ毎の可変画像データを扱う方法の場合、固定画像データSPiに対してコマ毎の可変画像データVPiをパス毎に合成する際に、各可変画像データVPiをそれぞれの位置座標(上マージン調整時は補正位置座標)で規定される位置に合成する。
【0139】
ステップS18では、M個の合成画像データBPiに縦横変換処理を施す。すなわち、縦横変換処理部79が、各合成画像データBPiの画素の並び順(読出し順)を、記録ヘッド33A(33B)からのインク滴噴射順序に合わせて、横方向(行方向)から縦方向(列方向)に変換することにより、Mパス分のヘッド制御データを生成する。
【0140】
ステップS19では、ヘッド制御データを記録ヘッドへ転送する。マスター側コントローラー41を例にすると、第1ヘッド制御部85は、ヘッド制御データを、第1列の記録ヘッド33Aに対応する部分と、第2列の記録ヘッド33Aに対応する部分とに分割し、第1列に対応する部分のヘッド制御データを、さらに分配して各HCU45を介して第1列に属する4個の記録ヘッド33Aに転送する。また、第2ヘッド制御部86は、第2列に対応する部分のヘッド制御データを、さらに分配して各HCU45を介して第2列に属する4個の記録ヘッド33Aに転送する。
【0141】
例えば改行シミュレーションにおいてj回目(j=2,…,Mのうちの1つ以上)の改行で、当初の改行幅Δyで改行すると、図7に示すように、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐことになったとする。この場合、図8に示す改行幅調整量ΔRcだけ調整されて、全ての可変データVDがM/S境界線BLを跨がなくなる改行幅ΔRに変更される。ここで、改行幅調整量ΔRcは、ノズルピッチΔnの自然数倍の値で示される(ΔRc=K・Δn(但しKは自然数))。そして、改行幅ΔRは、改行幅を増加させる調整のときにΔyにΔRcを加算して求められ(ΔR=Δy+ΔRc)、改行幅を減少させる調整のときにΔyからΔRcを減算して求められる(ΔR=Δy−ΔRc)。例えば当初の改行幅ΔyがノズルピッチΔnの1/4である場合、改行幅Δyに、ノズルピッチΔnの自然数倍の値で示される改行幅調整量ΔRc(=K・Δn(但しKは自然数))を、改行幅の増減に応じて加算又は減算した値を改行幅ΔRとする。
【0142】
よって、マスター側コントローラー41とスレーブ側コントローラー42が1つの可変データVDを分けて印刷することがなくなる。例えば、コントローラー41,42間で1つの可変データVDを分けて印刷することになると、可変画像内のM/S境界線BLに相当する箇所に印刷ずれが発生し易くなる。この種の印刷ずれを回避するためには、コントローラー41,42間で可変画像の境界を確認するなど通信線SL4を介した情報交換を頻繁に行いデータの整合がとれるようにすればよい。しかし、この場合、通信処理の負担が増えるうえ、通信線SL4を介した通信の速度が比較的遅いため、印刷制御上の他の処理が滞り易くなる。例えば印刷の途中のパス間で記録ユニット30の始動が待たされる待ち時間が発生する。また、この種の待ち時間を減らすため、噴射タイミングの調整のための通信の回数を必要未満に減らすと、コントローラー41,42間で同一列の記録ヘッド33A,33Bを制御する噴射タイミングが同一列であるにも異なり、可変画像内のM/S境界線BLの箇所で印刷のずれが発生する。また、印刷ずれを少しでも抑制するためには、コントローラー41,42に印刷ずれ緩和のための複雑な制御を追加する必要もある。
【0143】
しかし、本実施形態によれば、可変データVDがM/S境界線BLを跨がないようにする調整が行われるので、コントローラー41,42間の頻繁な通信や、印刷ずれを少しでも抑制するための複雑な制御を追加する必要もない。
【0144】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)記録ユニット30に設けられた複数の記録ヘッドを、副走査方向Yに2つの群に分けて、一方の群に属する副走査方向上流側の8個の記録ヘッド33Aをマスター側コントローラー41が制御し、他方の群に属する副走査方向下流側の7個の記録ヘッド33Bをスレーブ側コントローラー42が制御する構成とした。このため、M/S境界線BLが1本になるので、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐ頻度を低減できる。そして、改行シミュレーションで、仮に可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐ改行が存在した場合、全ての可変データVDがM/S境界線BLを跨がない改行幅ΔRに調整される。よって、別々のコントローラー41,42によって制御される各記録ヘッド33A,33Bが、1つの可変データVDに基づく可変画像を分担して印刷する頻度を低減することができる。このため、可変画像内でM/S境界線BLに相当する箇所に繋ぎ目が見えるなどの印刷ずれを極力回避することができる。
【0145】
一方、上記のような繋ぎ目が可変画像内に発生しないようにするためには、例えば可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐ場合、コントローラー41,42間で、繋ぎ目のパス分解・誤差拡散データ処理結果をお互いに交換する。そして、例えばハーフトーン処理時の誤差拡散処理(又はディザ処理)では、マスター側コントローラー41が担当する部分の可変データVDの最後の処理結果を用いつつ、スレーブ側コントローラー42が切れ目の先頭を処理することにより、マスター側コントローラー41の最後のデータと整合がとれる。この結果、印刷したときに可変画像内に繋ぎ目の筋が見えるなどの印刷品質の低下を防ぐことができる。しかし、この場合、両コントローラー41,42間で、双方の画像処理データを毎回交換すると、コントローラー41,42間の通信線SL4を介した比較的通信速度の遅いシリアル通信のために印刷が極端に遅くなってしまう。しかし、本実施形態によれば、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐ頻度を低減できるため、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐ場合にコントローラー41,42間で処理結果データを交換する構成をとった場合でも、上記の通信速度が遅いことに起因して印刷が遅延する頻度を極力少なく抑えることができる。
【0146】
(2)全ての可変データVDがM/S境界線BLを跨がないように改行幅が調整されるので、効率よく印刷を行うことができる。例えば可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐ場合に、コントローラー41,42間で、可変データVDをM/S境界線BLで分割する際の分割ラインの整合のための確認や、噴射タイミングの同期のために通信線SL4を介して行われる通信の負担を軽減できる。また、コントローラー41,42にM/S境界線BLの箇所での印刷ずれを少しでも抑制するための余分な制御の実施頻度の低減もしくは廃止が可能になる。
【0147】
(3)改行幅を調整するので、シート13に対する画像の印刷位置が副走査方向Yに変更されることがない。このため、画像をシート13の所望する印刷位置に印刷しつつ、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐことによる弊害を回避できる。
【0148】
(4)改行幅の調整で対応できない場合は、可変データVDがM/S境界線BLを跨がなくなるように、上マージンを調整する。この結果、画像がシート13の所望印刷位置に対して上マージンの調整量分だけずれて印刷されるものの、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐことによる弊害を回避できる。
【0149】
(5)改行幅の調整を、上マージンの調整より優先する。よって、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐことを回避しつつ、画像をシート13の所望印刷位置に極力印刷することができる。
【0150】
(6)プリンター11に合成処理部78を設け、固定画像と可変画像の合成処理をプリンター11側で行うようにした。この場合、各コントローラー41,42が、固定画像データと可変画像データから自身が担当する部分をM/S境界線BLで切り取り、それぞれ異なる切取り部分の各データ(固定画像データの一部と可変画像データの一部)をそれぞれ個別に合成する。このとき、可変データVDがM/S境界線BLを跨ぐまま処理する場合、各コントローラー41,42間で、切り取りライン(分割ライン)の整合及び合成位置の整合をとるための通信や、可変画像内の印刷ずれを極力抑えるための余分な処理・制御が必要になる。しかし、本実施形態では、可変データVDがM/S境界線BLを跨がないように調整されるので、印刷スループットの原因になる通信頻度の増加や処理負担の増加を抑えつつ、可変画像内の印刷ずれの少ない合成画像を印刷することができる。
【0151】
(7)プリンター11に、画像変換部75、ハーフトーン処理部76、マイクロウィーブ処理部77及び合成処理部78を設けたので、可変データVDがコードデータの場合は、プリンタードライバー122からそのままプリンター11へ送信し、プリンター11内の画像変換部75を利用して、コードデータから画像データに変換できる。そして、画像変換部75を利用して生成された可変画像データVIは、プリンター11内のハーフトーン処理部76で上マージンΔM分の調整がなされ、マイクロウィーブ処理部77で改行幅調整量ΔRc分の調整がなされる。さらにプリンター11内の合成処理部78で、その調整されつつ生成された可変画像データVPと、ホスト装置120から受信した固定画像データSPとの合成処理が行われる。よって、画像変換後の可変画像データVIを、画像処理及び合成処理を施すために、再びホスト装置120へ返送する通信の無駄がない。また、プリンタードライバー122が可変データVDの画像変換や合成処理を行う必要がないので、プリンタードライバー122の処理負担も軽減できる。
【0152】
(8)可変データVDがプリンター11側の画像変換部75を利用する必要のない画像データの場合は、プリンタードライバー122側で改行幅調整や上マージン調整を反映させた画像処理を行ってからプリンター11へ送信される。よって、プリンター11側での可変データVDの画像処理を不要にでき、プリンター11の処理負担を軽減できる。
【0153】
(9)プリンター11では、ホスト装置120から1回目の印刷のために受信した固定画像データSPを中間バッファー82に保存し、2回目以降の印刷では、中間バッファー82の固定画像データSPを使用する構成なので、プリンタードライバー122の処理負担を軽減できる。また、2回目以降の印刷では、固定画像データSPが不要な分だけ送信すべきデータ量が少なく済むので、例えば通信の混雑に起因する印刷スループットの低下を抑え易い。
【0154】
(10)記録ユニット30における記録ヘッド33A,33Bの制御主体を、記録ヘッドの列毎に、第1ヘッド制御部85と第2ヘッド制御部86に分けたので、各ヘッド制御部85,86は1種類の噴射タイミングで制御すればよい。このため、1つのヘッド制御部が複数列の記録ヘッドを制御する構成を採用した場合に問題になる制御の複雑化を回避できる。
【0155】
(11)1次元コードや2次元データを生成可能な画像変換部75なので、可変画像が文字、記号、数字などのフォントに限らず、1次元コードや2次元コードである画像も印刷できる。よって、可変画像として印刷された1次元コードや2次元コードの誤解読を回避しやすい。特に2次元コードは微細なセルの集合体のため、僅かな印刷ずれでも誤解読の原因になるが、この種の2次元コードにおいても誤解読を抑制できる。
【0156】
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・前記実施形態では、プリンター11内で合成処理を行ったが、プリンタードライバー側で合成処理を行ってもよい。この場合、コードデータからなる可変データVDについても、プリンタードライバー122側でコードデータを画像データに変換してもよい。
【0157】
・固定データの画像処理を、プリンタードライバーに替え、プリンターが行う構成としてもよい。すなわち、プリンタードライバー122の機能(第1判定部132、第2判定部133、マージン演算部134、改行幅演算部135など)を、プリンター11に内蔵する。そして、プリンター11は、画像生成装置110又はホスト装置120からシリアル通信ポートU3,U4(データ取得手段)を介して受信した画像データID及び可変データ情報ADに基づいて、図10に示す処理と図11に示す処理とを行う構成とする。
【0158】
・可変データVDが画像データである場合に、その画像処理をプリンター11が行ってもよい。
・コントローラーの個数N(≧2)よりも記録ヘッドの個数Pの方が多ければ(N<P)、それぞれ任意の個数に設定できる。例えば、コントローラーが2個の場合、3個以上の記録ヘッドを副走査方向に2つの群に分け、各コントローラーが対応する群に属する記録ヘッドをそれぞれ制御する。P個の記録ヘッドをP未満のN個の群に分けてそれぞれの群をN個のコントローラーが制御するので、記録ヘッドと同数のコントローラーで制御する場合に比べ、可変データが境界を跨がないように制御できる頻度が増す。
【0159】
・複数(P個)の記録ヘッドをほぼ半数ずつ(8個と7個)の2群に分けたが、分けた各群に属する記録ヘッドの個数は、1つの群に少なくとも1個の記録ヘッドが含まれれば、全ての群で同じでも異なってもよい。例えば前記実施形態において、1個と14個、2個と13個などの組合せでもよい。これらの構成でも、副走査方向に2つの群に分けられるので、M/S境界線BL(境界)を1つにすることができる。要するに、P個の記録ヘッドを、副走査方向にコントローラー(制御部)の個数Nと同数の群に分けた場合、M/S境界線BL(記録領域の境界)を最小のN−1個にできる分け方であればよい。
【0160】
・前記実施形態では、改行幅の調整と、上マージンの調整とのうち、一方を選択したが、改行幅の調整と、上マージンの調整との両方を組み合わせて実施してもよい。この構成によれば、改行幅の調整で不足した分を上マージンの調整で補うので、上マージンの調整だけを行う構成に比べ、上マージンの調整分を小さくできる。このため、上マージンの調整に起因するシート13に対する印刷画像の副走査方向へのずれを小さく抑制できる。
【0161】
・前記実施形態では、改行幅の調整と上マージンの調整との両方を実施したが、一方のみを実施してもよい。すなわち、改行幅の調整だけを行う構成としたり、上マージンの調整だけを行う構成としたりしてもよい。これらの構成によっても、可変データがM/S境界線BLを跨ぐような印刷の実施を極力回避できる。
【0162】
・マージンの調整は上マージンΔM(上余白量)に限定されない。記録ヘッド群において第2方向に固定データと可変データに基づく画像の記録位置(ノズル位置)を第2方向にずらすことが可能なマージン(余白量)の調整であればよい。例えば前記実施形態において、下マージンΔM(下余白量)の調整でもよい。
【0163】
・前記実施形態では、コントローラーを2個としたが、3個以上の複数個のコントローラーを備えたプリンターとしてもよい。要するにプリンターが備えるコントローラー(制御部)の個数Nは、記録ヘッド(記録部)の個数P未満(つまりN<P)であればよい。この場合、記録ユニットに設けられた複数の記録ヘッドをコントローラーと同数の群に分け、群毎に異なるコントローラーにより制御する。記録ユニットに設けられた複数の記録ヘッドの分け方は、M/S境界線BLの本数をなるべく少なくできるように、副走査方向にコントローラーと同数の群に分けることが好ましい。
【0164】
・記録ヘッドは1個でもよい。1個の記録ヘッドに形成された同一インクのノズル列を複数のノズル群に分け、各ノズル群を異なるコントローラーにより制御する構成でもよい。この場合、1つのノズル群が1つの記録部に相当する。
【0165】
・プリンタードライバー122が固定データにマイクロウィーブ処理まで施したが、ハーフトーン処理まで施してプリンターへ転送してもよい。この場合、プリンター11では、合成処理部78とマイクロウィーブ処理部77との処理の順序を入れ替え、可変データVDにハーフトーン処理まで施した後、合成処理部78が、このハーフトーン処理後の可変データとハーフトーン処理後の固定データとを合成する構成とする。そして、マイクロウィーブ処理部77は、合成画像データにマイクロウィーブ処理を施す。すなわち、合成画像データをM個にパス分解し、その後、パス毎のデータをノズル割付けする際に、改行幅を調整したパスについては、改行幅調整量ΔRcだけ副走査方向にずらしてノズル割付けを行う。
【0166】
・マイクロウィーブ印刷ではなく、バンド印刷を行うときに、可変データVDが、異なるコントローラーによって制御される各記録ヘッドの記録領域の境界を跨がないように調整してもよい。
【0167】
・記録装置は、ラテラルスキャン方式のプリンター11に限定されず、シリアルプリンターでもよい。さらに印刷のときに改行を伴わないラインプリンターやページプリンターでもよい。また、インクジェット式に限定されず、ドットインパクト式のプリンターにも適用できる。例えばラインプリンターの場合、印刷時には記録ユニットが固定されており、この固定された記録ユニットに対して記録媒体を搬送方向(第1方向)に搬送(相対移動)させる搬送手段が相対移動手段に相当する。また、ラインプリンターの場合は、記録ユニットは、搬送方向(第1方向)と交差(例えば直交)する第2方向において異なる位置に複数の記録ヘッド(記録部)が配置される向き(図2における主走査方向が搬送方向になる向き)に配置される。可変データがM/S境界線BLを跨がないようにする制御は、ダミーデータを追加して画像全体(固定画像と可変画像)を第2方向にずらすことにより行う。例えば第2方向のマージンを調整する。このようなラインプリンターにおいても、各コントローラー(制御部)が、複数の記録ヘッドを第2方向にコントローラーと同数のN個の群に分けたそれぞれを制御することにより、異なるコントローラーが可変データに基づく1つの可変画像を分担して記録する制御を行う際の弊害を回避できる。
【0168】
・前記実施形態では、記録装置として、インクジェット式のプリンター11が採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよい。また、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置が挙げられる。さらに、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。また、流体は、トナーなどの粉粒体でもよい。なお、本明細書でいう流体には、気体のみからなるものは含まないものとする。
【符号の説明】
【0169】
11…記録装置の一例であるプリンター、13…記録媒体の一例であるシート、30…記録手段の一例である記録ユニット、31…キャリッジ、33A,33B…記録部の一例である記録ヘッド、38…ノズル、39…ノズル列、41…制御手段を構成するとともに制御部の一例を構成するマスター側コントローラー、42…制御手段を構成するとともに制御部の一例を構成するスレーブ側コントローラー、43…制御手段の一例を構成するメカコントローラー、44…メカニカル機構、45…ヘッド制御ユニット(HCU)、51…CPU、52…ASIC、53…RAM、54…不揮発性メモリー、61…搬送手段を構成する搬送モーター、62…相対移動手段の一例を構成する第1CRモーター、63…第2CRモーター、70…主制御部、71…解凍処理部、72…コマンド解析部、73…メカ制御部、74…データ種判定部、75…変換手段の一例である画像変換部、76…第1調整手段の一例であるハーフトーン処理部、77…第2調整手段の一例であるマイクロウィーブ処理部、78…合成手段の一例である合成処理部、79…縦横変換部、81…受信バッファー、82…格納手段の一例である中間バッファー、83…印刷バッファー、85…第1ヘッド制御部、86…第2ヘッド制御部、100…印刷システム、110…画像生成装置、120…ホスト装置、122…制御手段の一例を構成するプリンタードライバー、131…データ種判定部、132…判定手段の一例である第1判定部、133…第2判定部、134…演算手段の一例であるマージン演算部、135…演算手段の一例である改行幅演算部、136…コマンド生成部、137…印刷データ生成部、141…解像度変換部、142…色変換部、143…第1調整手段の一例であるハーフトーン処理部、143A…マージン調整処理部、144…第2調整手段の一例であるマイクロウィーブ処理部、C…制御装置、U0…データ取得手段の一例である通信インターフェイス、U3,U4…データ取得手段及び受信手段の一例であるシリアル通信ポート、PD,PD1,PD2…印刷データ、ID…画像データ、SD…固定データ、VD…可変データ、SP…固定画像データ、VP…可変画像データ、BL…記録領域の境界の一例であるM/S境界線、ΔRo,Δy…規定の改行幅、ΔR…調整後の改行幅、ΔRc…改行幅調整量、ΔM…上マージン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録を施すP個(但しPは2以上の自然数)の記録部を有する記録手段と、
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録部が記録を行うときに前記記録手段と前記記録媒体とを第1方向に相対移動させる相対移動手段と、
固定データと可変データとを取得するデータ取得手段と、
前記P個の記録部を分担して制御するとともに、前記P個の記録部を前記第1方向と交差する第2方向にN個(但しNはP未満の自然数)の群に分けたうちの対応する群に属する1つ以上の記録部をそれぞれ制御するN個の制御部を有するとともに、異なる前記制御部によって制御される前記記録部間の前記第2方向における記録領域の境界を前記可変データに基づく可変画像が跨がないように、前記固定データと前記可変データとに基づく記録を制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記N個は2個で、前記P個は3個以上であり、
2個の前記制御部は、3個以上の前記記録部を前記第2方向に2つの群に分けたそれぞれを制御することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録手段が前記第1方向に移動して記録するとともに前記第2方向に移動して改行するラテラルスキャン方式の記録装置であり、
前記制御手段は、前記可変データに基づく可変画像が前記境界を跨がないように、前記記録手段が改行を行うときの改行幅を調整するとともに、前記改行幅の調整量だけ調整方向と反対側へずらす画像処理を、前記固定データと前記可変データに施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録手段が前記第1方向に移動して記録するとともに前記第2方向に移動して改行するラテラルスキャン方式の記録装置であり、
前記制御手段は、前記可変データに基づく可変画像が前記境界を跨がなくなる位置まで記録位置を前記第2方向にずらす画像処理を、前記固定データと前記可変データに施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記可変画像が前記境界を跨がないようにする前記改行幅の調整が可能であるか否かを判定し、前記調整が可能であると判定した場合は前記改行幅の調整を行い、前記調整が可能でないと判定した場合は、前記固定データと前記可変データに基づく画像の記録位置を、前記可変データに基づく可変画像が前記境界を跨がなくなる位置まで前記第2方向にずらす画像処理を前記固定データと前記可変データに施すことを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記可変画像が前記境界を跨ぐか否かを判定する判定手段と、
前記境界を跨ぐと判定された場合に、前記可変データに基づく可変画像が前記境界を跨がないようにするための調整量を演算する演算手段と、
前記固定データに前記調整量の調整を施す第1調整手段と、
前記可変データに前記調整量の調整を施す第2調整手段と、
調整後の前記固定データと調整後の前記可変データとを合成する合成手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記第1調整手段が1回目の記録のために調整した前記調整後の固定データを保存する格納手段をさらに備え、
2回目以降の記録では、前記第2調整手段は前記取得手段が2回目以降の記録のために取得した可変データに前記調整量の調整を施し、
前記合成手段は、前記格納手段に保存された前記調整後の固定データと、前記第2調整手段による調整後の可変データとを合成することを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
記録装置は、ホスト装置に設けられたプリンタードライバーと、前記ホスト装置と通信可能なプリンターとを備えた記録システムであって、
前記可変データはコードデータであり、
前記プリンタードライバーは、前記データ取得手段と、前記判定手段と、前記演算手段と、前記第1調整手段と、を備え、
前記プリンターは、前記ホスト装置から調整前の前記可変データと前記調整後の固定データとを受信する受信手段と、前記可変データをコードデータから画像データへ変換する変換手段と、画像データに変換された後の可変データに前記調整量の調整を施す前記第2調整手段と、前記合成手段と、を備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の記録装置。
【請求項9】
記録媒体に記録を施すP個(但しPは2以上の自然数)の記録部を有する記録手段と、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録部が記録を行うときに前記記録手段と前記記録媒体とを第1方向に相対移動させる相対移動手段と、前記P個の記録部を分担して制御するN個(但しNはP未満の自然数)の制御部と、を備えた記録装置における記録方法であって、
前記N個の制御部が、前記P個の記録部を前記第1方向と交差する第2方向にN個の群に分けたうちの対応する群に属する少なくとも1つの記録部をそれぞれ制御するようにし、
固定データと可変データとを取得するデータ取得ステップと、
異なる前記制御部によって制御される前記記録部間の前記第2方向における記録領域の境界を前記可変データに基づく可変画像が跨ぐか否かを判定する判定ステップと、
前記可変画像が前記境界を跨ぐと判定された場合は、前記可変画像が前記境界を跨がないように前記固定データと前記可変データとに基づく記録を制御する制御ステップと、
を備えたことを特徴とする記録装置における記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−152956(P2012−152956A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12271(P2011−12271)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】