説明

記録物、画像形成方法、および画像形成装置

【課題】記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して光沢またはつやが良好で傷つきにくい画像を、容易に形成することができる画像形成方法、記録物、およびそれらによって形成される記録物を提供する。
【解決手段】本発明にかかる記録物100は、浸透層10と、浸透層10に対して形成され、樹脂の粒子22が堆積された樹脂層20aと、樹脂層20aに対してインクジェット方式により形成された顔料層40と、顔料層40に対して形成された、接着性を有する接着層50と、を含み、浸透層10に、顔料層40を形成するための顔料32を含有するインク30の分散媒31が、樹脂層20aを介して浸透している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録物、画像形成方法、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、デザイン性や美観を高める等の理由で、光沢やつやを呈する画像が記録された記録物の需要がある。このような画像が記録される記録媒体としては、例えば、化粧品や医薬品などの包装やパッケージに用いられる紙類およびフィルム類、並びに、衣類、日用品などに用いられる布類および皮革類などが挙げられる。また、このような光沢やつやを呈する画像としては、特に光輝性を呈する画像の需要がある。
【0003】
記録媒体に光輝性を呈する画像を記録する従来の方法としては、例えば、記録媒体に金属箔を押しつけて画像を記録する箔押し法や、プラスチックフィルム等の平坦な記録面を有する記録媒体に対して金属を蒸着する方法などがある。また、光輝性を呈する顔料を記録媒体に塗布して光輝性画像を形成する方法としては、スクリーン印刷法、転写印刷法などがある。
【0004】
箔押し法または転写印刷法に類似する従来の方法としては、例えば、特許文献1に開示されているような印刷加工方法がある。また、光輝性を呈する顔料を記録媒体に塗布して光輝性画像を形成する従来の方法としては、インクジェット方式によって、金属顔料を含むインクを用いて画像を形成し、その後プレス加工を行って画像の表面の平滑化を行う方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
また、従来の方法で記録された光沢やつやを呈する画像は、該画像の表面が平坦であることが光沢やつやを呈するための条件の一つとなっていた。そのため、光沢やつやを呈する画像を保護フィルムによって被覆したり、該画像に対して保護層を形成することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−044130号公報
【特許文献2】特開2002−179960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した蒸着法およびスクリーン印刷法は、大規模な装置を用いて行われることが多い。例えば、スクリーン印刷法は、大量の記録物を製造する場合には大きな支障がないが、サンプル印刷や試し刷りを行って記録物を評価する場合や、少量他品種の記録物を製造する場合には、その都度、版を製作する必要が生じ、労力、所用時間およびコストの面で不十分であった。まして消費者等が家庭や職場などで記録物を作成すること場合には、蒸着法やスクリーン印刷法では多くの難点があった。
【0008】
また、従来の箔押し法や転写印刷法は、金属箔または光輝性インクを全面にコーティングしたフィルムから、所望の画像に対応する部分のインクを記録媒体に転写するものであった。そのため、金属やインクの無駄が多いこと、および使用済みフィルムなどの廃棄などにも問題があった。
【0009】
他方、インクジェット方式による記録方法は、比較的小規模の装置構成とすることができ、用いるインク(金属)の無駄も抑えることができる点で、スクリーン印刷法に比較して優れている。ところが、例えば、インクジェット方式で形成された画像に、良好な光輝性を付与するためには、画像の表面が平坦である必要があり、プレス加工等の工程を追加することや、記録媒体に平坦性の高いものを使用する必要があるなどの制約があった。そのため、インクジェット方式による記録方法では、普通紙や布等の表面の平坦性の乏しい記録媒体に対しては、良好な光輝性を呈する画像を記録することが困難であった。
【0010】
さらに、光沢やつやを呈する画像に対して、該画像に傷等を生じにくくさせるための保護層や保護フィルムによって覆う場合には、そのための印刷工程やラミネート工程を付加する必要があった。そのため、光沢やつやを呈する画像を傷つきにくくするためには、生産性が低下したり、コストがさらに増大するといった問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して光沢またはつやが良好で傷つきにくい画像を、容易に形成することができる画像形成方法、記録物、およびそれらによって形成される記録物を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様にかかる目的の一つは、このような画像形成方法に好適な媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0013】
[適用例1]
本発明にかかる記録物の一態様は、
浸透層と、
前記浸透層に対して形成され、樹脂の粒子が堆積された樹脂層と、
前記樹脂層に対してインクジェット方式により形成された顔料層と、
前記顔料層に対して形成された、接着性を有する接着層と、
を含み、
前記浸透層に、前記顔料層を形成するための顔料を含有するインクの分散媒が、前記樹脂層を介して浸透している。
【0014】
本適用例の記録物によれば、記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して光沢またはつやが良好で傷つきにくい画像を、容易に形成することができる。
【0015】
[適用例2]
適用例1において、
前記樹脂層の前記粒子間の間隙が閉塞されており、前記インク中の前記分散媒が、70質量%以上前記浸透層に対して浸透していてもよい。
【0016】
本適用例の記録物によれば、記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して光沢またはつやが良好で傷つきにくい画像を、容易に形成することができる。
【0017】
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記接着層に対して配置された記録媒体をさらに含み、
前記顔料層および前記記録媒体は、前記接着層により接着されていてもよい。
【0018】
本適用例の記録物によれば、記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して光沢またはつやが良好で傷つきにくい画像を、容易に形成することができる。
【0019】
[請求項4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記顔料は、光輝性を呈することができる。
【0020】
本適用例の記録物によれば、記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して良好な光輝性を呈し、傷つきにくい画像を容易に形成することができる。
【0021】
[適用例5]
本発明にかかる画像形成方法の一態様は、
浸透層に対して樹脂の粒子が堆積されて形成された樹脂層に、顔料を含有するインクをインクジェット方式により付着させ、前記樹脂層を介して前記インクの分散媒を前記浸透層に浸透させて、前記樹脂層に対して顔料層を形成する工程と、
前記顔料層に対して、接着性を有する接着層を形成する工程と、
前記接着層に対して記録媒体を配置し、前記記録媒体と前記顔料層とを接着する工程と、
前記樹脂層の前記粒子間の間隙を閉塞させる工程と、
を含む。
【0022】
本適用例の画像形成方法によれば、記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して光沢またはつやが良好で、傷つきにくい画像を、容易に形成することができる。
【0023】
[適用例6]
本発明にかかる画像形成方法の一態様は、
浸透層に対して樹脂の粒子が堆積されて形成された樹脂層に、顔料を含有するインクをインクジェット方式により付着させ、前記樹脂層を介して前記インクの分散媒を前記浸透層に浸透させて、前記樹脂層に対して顔料層を形成する工程と、
前記顔料層に対して、接着性を有する接着層を備えた記録媒体を配置し、前記記録媒体と前記顔料層とを前記接着層によって接着する工程と、
前記樹脂層の前記粒子間の間隙を閉塞させる工程と、
を含む。
【0024】
本適用例の画像形成方法によれば、記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して光沢またはつやが良好で、傷つきにくい画像を、容易に形成することができる。
【0025】
[適用例7]
適用例5または適用例6において、
前記樹脂層の前記粒子間の間隙を閉塞させる工程は、前記樹脂層を加熱して溶融させて行われることができる。
【0026】
本適用例の画像形成方法によれば、記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して光沢またはつやが良好で、傷つきにくい画像を、容易に形成することができる。
【0027】
[適用例8]
適用例5ないし適用例7のいずれか一例において、
前記樹脂層は、インクジェット方式により形成されたものであってもよい。
【0028】
本適用例の画像形成方法によれば、記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して光沢またはつやが良好で傷つきにくい画像を、より無駄を抑えて形成することができる。
【0029】
[適用例9]
適用例5ないし適用例8のいずれか一例において、
前記接着層は、インクジェット方式により形成されたものであってもよい。
【0030】
本適用例の画像形成方法によれば、記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して光沢またはつやが良好で傷つきにくい画像を、より無駄を抑えて形成することができる。
【0031】
[適用例10]
適用例5ないし適用例9のいずれか一例において、
前記顔料は、光輝性を呈することができる。
【0032】
本適用例の画像形成方法によれば、記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して、良好な光輝性を呈し傷つきにくい画像を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態の記録物の一例の断面の模式図。
【図2】実施形態の記録物の一例の断面の模式図。
【図3】実施形態の記録物の樹脂層を説明する模式図。
【図4】実施形態の記録物の樹脂層を説明する模式図。
【図5】実施形態の記録物の一例の断面の模式図。
【図6】実施形態の記録物の一例の断面の模式図。
【図7】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図8】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図9】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図10】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図11】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図12】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図13】実施形態の記録物の一例の断面の模式図。
【図14】実施形態の記録物の一例の断面の模式図。
【図15】実施形態の記録物の一例の断面の模式図。
【図16】実施形態の記録物の一例の断面の模式図。
【図17】実施形態の記録物の一例の断面の模式図。
【図18】実施形態の記録物の一例の断面の模式図。
【図19】実施形態の記録物の一例の断面の模式図。
【図20】実施形態の記録物の一例の断面の模式図。
【図21】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図22】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図23】実施形態の画像形成方法の一工程の模式図。
【図24】実施形態に画像形成装置の一例の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は、以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0035】
1.記録物
1.1.第1実施形態
本実施形態にかかる記録物は、浸透層10と、樹脂層と、顔料層40と、接着層50と、を有する。図1および図2は、それぞれ本実施形態の記録物100および記録物110の断面の模式図である。
【0036】
1.1.1.浸透層
浸透層としては、例えば、シート状、フィルム状、および膜状のいずれかの形状を有する膨潤層と、シリカ、アルミナ等の無機粒子を敷き詰めた空隙層が存在するが、本実施形態においては浸透層10は、空隙層である。より具体的に空隙層とは、「水溶性または親水性ポリマーを主成分とするインク吸収層ではない層であって、無機粒子が充填され無機粒子間または無機粒子に設けられた孔の空隙に液体が浸透するよう構成された層」のことを示す。浸透層10の表面の少なくとも一部は、後述する顔料層30の表面を平坦とするために十分な平坦性を有する。
【0037】
浸透層10の厚みは、例えば、5μm以上、50μm以下とすることができる。浸透層10の大きさ(面積)は、特に限定されない。浸透層10は、例えば、一般的な用紙サイズ(A4等)の大きさの単票であってもよいし、連続紙やロールのような長尺物であってもよい。浸透層10は、十分な機械的強度を有する場合には単独であってもよいが、必要に応じて適宜な基材12に対して形成されていてもよい。本明細書の各図に示す例では、浸透層10は、基材12の表面に形成され、基材12によって支持されている。これにより、浸透層10の取り扱いが容易化されている。このような基材12の形状としては、例えばシート状、フィルム状などとすることができる。基材12としては、例えば、紙、プラスチックフィルムなどが挙げられる。基材12の厚みおよび大きさについては、特に限定されない。基材12を用いる場合には、浸透層10は、基材12の全面に形成されていてもよいし、基材12の一部に形成されていてもよい。
【0038】
浸透層10の空隙層を形成する無機粒子の体積基準の平均粒子径(以下、平均粒子径とする)は、3nm以上100nm以下であることが好ましい。このようにすれば、浸透層10の表面の平坦度が高いため、本実施形態の記録物を用いて転写先の媒体(例えば、記録媒体200)上に形成される画像に、良好な光沢やつやを付与することができる。また、転写先の媒体上の画像に、マット調の良好な光沢を付与する場合には、浸透層10の無機微粒子の平均粒径を大きくしてもよく、その場合には、例えば、浸透層10の無機微粒子の平均粒径は、100nm超300nm以下とすることができる。
【0039】
浸透層10には、後述するインク30に含有される分散媒31の少なくとも一部が浸透している。浸透層10には、後述する樹脂層20を形成するために樹脂のエマルションを用いた場合、当該エマルションの分散媒21が浸透していてもよい。浸透層10は、樹脂層20を形成するための樹脂のエマルションが浸透層10に塗布されたときに、浸透層10の表面に樹脂の粒子22が堆積した樹脂層20aを形成するという機能を有している。
【0040】
浸透層10の材質としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニアおよび酸化亜鉛などの金属酸化物、珪酸アルミニウムなどの金属珪酸塩、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、タルクおよび各種クレーなどの粘土鉱物等が挙げられる。また、浸透層10の材質には必要に応じて、結着剤が含まれてもよい。結着剤としては、例えばポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体等のビニルピロリドン系樹脂;ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等の、ポリビニルアルコール系樹脂;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロール系樹脂;ポリビニルアセタール、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース、ポリエステル、ポリアクリル酸またはそのエステル、ポリアクリルアミド、メラミン樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、あるいはこれらの変性物等の合成樹脂や、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、デンプン、カチオン化デンプン、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等の天然樹脂またはその変性体から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0041】
また、基材12を用いる場合には、浸透層10は、基材12に塗工するなどして形成してもよい。その場合には、例えば、プレス加工等により、所望の表面形状を形成することができる。また、基材12に浸透層10が形成された市販品を入手して用いてもよい。
【0042】
基材12の材質としては、特に限定されないが、例えば、各種の紙、布、フィルム、シートなどが挙げられる。基材12に浸透層10が形成された市販品の例としては、例えば、コート紙、アート紙、キャストコート紙等の表面加工紙、および塩化ビニルシートやPETフィルム等のプラスチックフィルムなど表面に、インク受容層が形成されたものを挙げることができる。
【0043】
コート紙の例としては、例えば、上質紙または中質紙をベースに少なくとも片面に7g/mないし20g/mの浸透層30を塗布したものを挙げることができる。これらは、上質コート紙または中質コート紙などと呼ばれることがある。また、コート紙の種類としては、浸透層30の塗工量の小さい(例えば、片面あたり7g/m程度)軽量コート紙やマット調のマットコート紙、ミラーコート紙などを挙げることができる。
【0044】
アート紙の例としては、例えば、上質紙に浸透層30が片面あたり20g/m程度塗工され、ロール等によって、圧力が加えられ表面が滑らかになっている紙を挙げることができる。アート紙には、つや消しアート紙、上質アート紙、並アート紙などが含まれる。キャストコート紙の例としては、例えば、上質紙に浸透層30が片面あたり少なくとも22g/m塗工され、ロール等によって、加圧され表面が滑らかになっているものを挙げることができる。
【0045】
基材12に浸透層10が形成された具体的な市販品としては、パールコート紙(三菱製紙株式会社製)や、オーロラコート紙(日本製紙株式会社製)、写真用紙クリスピア(セイコーエプソン株式会社製)、写真用紙<光沢>(セイコーエプソン株式会社製)、写真用紙エントリー(セイコーエプソン株式会社製)、フォト光沢紙(セイコーエプソン株式会社製)などがある。
【0046】
1.1.2.樹脂層
樹脂層20aは、浸透層10に対して形成される。樹脂層20aの厚みは、例えば、50nm以上、5μm以下とすることができる。樹脂層20aの平面的な大きさ(面積)や形状は、特に限定されない。樹脂層20aは、浸透層10の全面に形成されていてもよいし、浸透層10の一部に形成されていてもよい。
【0047】
樹脂層20aは、樹脂の粒子22が堆積された構造を有する。「2.画像形成方法」の項で詳述するが、樹脂層20aは、樹脂の粒子22間の間隙を通してインク30の分散媒31が透過して、樹脂層20aの表面に顔料32が濃化した顔料層40を形成することができるよう形成されている。
【0048】
なお、顔料層40を形成する際のインク30の分散媒31の少なくとも一部は、樹脂層20aを透過して浸透層10に達し、浸透層10に浸透(吸収)される。そのため、本実施形態の浸透層10には、インク30の分散媒31の少なくとも一部が存在している。
【0049】
樹脂の粒子22の大きさ(直径)は、特に限定されないが、体積基準の平均粒子径(以下、平均粒子径とする)は、20nm以上300nm以下であることが好ましい。このようにすれば、顔料層40を形成するためのインク30が樹脂層20aに塗布されたときに、樹脂の粒子22間の間隙を通してインク30の分散媒31が透過して、樹脂層20aの表面に顔料32が濃化した顔料層40を形成することができる。また、樹脂層20aの表面の平坦度も高いため、本実施形態の記録物を用いて転写先の媒体(例えば、記録媒体200)上に形成される画像に、良好な光沢やつやを付与することができる。
【0050】
また、樹脂の粒子22は、樹脂層20aが加熱されることにより溶融する性質を有する。樹脂の粒子22が溶融されると、樹脂が変形または流動するため、樹脂層の構造を変化させることができる。例えば、樹脂の粒子22が変形または流動することにより、樹脂層20aは、粒子が堆積された構造から、フィルム状またはシート状の構造に変化することができる。このようにして樹脂層20aに存在していた開口の少なくとも一部は、閉塞して、樹脂層20となり、フィルム状またはシート状の構造に変化することができる。なお、本明細書では、樹脂層20aが加熱されて開口の少なくとも一部が閉塞した状態に対しては、樹脂層20と符号を付す。図2は、樹脂層20aが加熱されて開口の少なくとも一部が閉塞した状態の記録物110を示している。本実施形態の記録物110は、浸透層10と、樹脂層20と、顔料層40と、接着層50と、を有し、樹脂層20の粒子22間の間隙が少なくとも一部閉塞されている。
【0051】
図3は、樹脂層の変化を模式的に示す図である。図3(a)は、浸透層10に対して樹脂層20aが形成され、樹脂層20aに対して顔料層40(32)が形成される様子を示している。図3(a)に示すように、樹脂層20aは、樹脂の粒子22が堆積された構造を有するため、樹脂の粒子22相互の間に間隙が形成されている。したがって、この状態の樹脂層20aには、顔料層40(32)側から浸透層10側へ向かってインク30の分散媒31が流通することのできる経路が存在する。これに、顔料層40(32)を形成するためのインク30を付着させると、インク30の分散媒31の少なくとも一部が、図3中矢印fで示すように、樹脂層20aを透過して浸透層10に達する。そして、その後、樹脂層20aが加熱されると、図3(b)に示すように、樹脂の粒子22が溶解して、粒子22が堆積された構造の少なくとも一部が消失し、分散媒31の流通する経路である間隙が少なくとも一部閉塞されたフィルム状の樹脂層20が形成される。加熱された後の樹脂層20は、粒子22の形状が消失して一体のフィルム状となっていることがより好ましい。このようにすれば、加熱後の樹脂層20内の空隙の量が減少し、樹脂層20を透過する光の散乱を抑えることができ、転写された後により透明度の良好な保護層となることができる。
【0052】
樹脂層20aが加熱されるタイミングは、樹脂層20aをインク30の分散媒31が透過した後であって、転写先の媒体(例えば記録媒体60)に転写される前までであれば何ら限定されない。すなわち、顔料層40が形成された直後に加熱されてもよいし、転写先の媒体に転写される際に加熱されてもよい。
【0053】
樹脂層20aの機能の一つとしては、転写先の媒体に顔料層40および樹脂層20が転写されたときに、顔料層40を被覆する保護層となることが挙げられる。これにより、転写先の媒体に転写された後の顔料層40の表面に傷等を生じにくくさせることができる。
【0054】
また、例えば、インク30に含有される顔料32が、光輝性を呈するもの(例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、および銅からなる群より選択される1種または2種以上の合金やパール光沢を有するパール顔料)である場合には、樹脂層20aまたは樹脂層20の表面が平坦であるほど、得られる画像の鏡面光沢度(例えば、日本工業規格(JIS)Z8741を参照。)が高まる。さらに、この場合、例えば、樹脂層20aまたは樹脂層20の表面が粗くなるほど、得られる画像の鏡面光沢度が小さくなり、マット調の光輝性を得ることができる。例えば、インク30に含有される顔料32が光輝性を呈するものである場合に、転写先の媒体に形成される画像に良好な光輝性を付与することのできる樹脂層20aまたは樹脂層20の表面樹脂粒子の粒子径としては、3nm以上、300nm以下であることが好ましい。
【0055】
樹脂の粒子22の材質としては、加熱により変形する性質を有するものであれば限定されない。樹脂の粒子22は、一つの粒子22全体が均質であってもよいし、一つの粒子22内で異なる材質の領域が存在してもよい。また、樹脂層20aは、2種以上の互いに異なる材質の粒子22によって構成されてもよい。
【0056】
樹脂の粒子22の材質としては、例えば、脂肪族ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フェノキシ樹脂、エチルセルロース樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エチル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン系樹脂、石油樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレンアルキル(メタ)アクリレート樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、NBR・SBR・MBR等の各種合成ゴム、およびそれらの変性体等が挙げられる。これらの樹脂は単独でも複数種が混合されてもよい。また樹脂の粒子22の材質には、例えば、シリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機粒子などの熱可塑性を有さない物質が含まれてもよい。
【0057】
樹脂の粒子22の材質としては、エマルションを形成しうるものが好ましい。樹脂の粒子22としてエマルションを形成することができるものを選択すると、樹脂層20aを、例えば、インクジェット法などの印刷法によって形成することができる。
【0058】
エマルションを形成しうる樹脂の粒子22の材質としては、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリアクリル酸エチル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、NBR・SBR・MBR等の各種合成ゴムおよびそれらの変性体を例示することができる。
【0059】
さらに、樹脂の粒子22の材質としては、可視光を透過する性質を有するものがより好ましい。樹脂の粒子22の材質が、可視光を透過することにより、顔料層40および樹脂層20が転写先の媒体に転写されたときに、樹脂層20を介した顔料層40の視認性を向上することができる。なお樹脂層20は、適宜な色材等が配合されて着色されていてもよい。この場合、本願発明の顔料が光輝性顔料である場合には、着色した光輝性(例えば、レッドメタルのようなカラーメタリック)を得ることが出来る点で好ましい。さらに、樹脂層20には、インク30の分散媒31が残留するなどして含有されていても支障がない。
【0060】
なお、樹脂層20の樹脂の粒子は、分散媒31の透過性を考慮して、間隙を大きく作るよう塗布量や濃度を適宜変更しても良い。さらに、図4(a)に示すように、積極的に間を空けて樹脂層20aを一部分割するように作成し、図4(b)に示すように、樹脂層20が一部分割された構成にしてもよい。
【0061】
1.1.3.顔料層
顔料層40は、樹脂層20aに対して形成される。顔料層40は、顔料32を含有するインク30を付着させ、インク30の分散媒31の少なくとも一部を樹脂層20aを通して浸透層10に浸透させて、樹脂層20aに対して形成される。顔料層40の平面的な形状および厚みは、特に限定されない。顔料層40は、樹脂層20aの全面に形成されてもよいし、樹脂層20aの一部に形成されてもよい。顔料層40は、記録物100から転写先の媒体(例えば、記録媒体60)へ転写されたときに、転写先の媒体上における画像を形成することになる。
【0062】
また、浸透層10に浸透される分散媒31の量は、特に限定されないが、70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、一層好ましくは90質量%以上である。分散媒31が多く浸透していることで、顔料層が平滑に配列し、樹脂層20aの分散媒による不要な着色を好ましく防止できる。
【0063】
インク30の詳細は後述するが、インク30には、少なくとも顔料32および顔料32の分散媒31(水、有機溶剤、添加剤等)が含有されている。したがって、インク30が樹脂層20aに塗布されると、上述した樹脂層20aおよび浸透層10の機能により、分散媒31の少なくとも一部が、樹脂層20aを透過して、浸透層10に達して浸透し、樹脂層20aの表面に、顔料32が濃化した領域が形成される。これにより、樹脂層20aの表面に、インク30における顔料32の含有量よりも高い含有量となった顔料層40が形成される。すなわち、インク30が樹脂層10に付着すると、まず、インク30の分散媒31の少なくとも一部が、樹脂層20aを透過して浸透層10に吸収される。これにより樹脂層20aに対して顔料層40が形成される。
【0064】
顔料層40は、樹脂層20aに対して形成されるため、形成されたときには、樹脂層20aの表面の平坦度に対応する平坦度を有する。また、顔料層40は、樹脂層20aが加熱されて変形されたときには、加熱前の平坦度が維持されてもよいし、樹脂層20の表面の平坦度に対応する平坦度となってもよい。これにより、顔料層40の表面の平坦度が制御され顔料層40の表面(樹脂層20aと接している面)に所望の光沢やつやを付与することができる。特に、顔料32が光輝性を呈しうる顔料である場合には、所望の光輝性を呈する画像を樹脂層20との界面の平坦度を制御することにより形成することができる。顔料層40の材質は、インク30に分散された顔料32を含むが、顔料32以外の成分(例えば、分散媒31、添加剤など)を含んでいてもよい。
【0065】
1.1.4.接着層
接着層50は、少なくとも顔料層40に対して形成される。接着層50は、顔料層40の上の他、樹脂層20や浸透層10に対して形成されてもよい。接着層50の厚みは、特に限定されないが、例えば0.2μm以上5μm以下とすることができる。接着層50の厚みは、転写先である媒体(例えば、記録媒体60)の性質に応じて適宜設定することができる。例えば、転写先の媒体の表面の凹凸が大きい場合には、その凹凸の影響が樹脂層20や顔料層40の表面(転写前に浸透層10に接していた側の面)に生じないように接着層50の厚みを適宜設定することができる。また、転写先の媒体が浸透性を有する場合には、その浸透性を考慮した厚みとすることができる。
【0066】
接着層50は、接着性を有する。ここで、接着性とは、顔料層40と転写先の媒体とを、接着する性質のことをいう。接着性は、接着層50が形成されたそのままの状態で発現されていてもよいし、接着層50に、例えば、圧力、温度(熱)および放射線(光等)の少なくとも一種の刺激が印加されたときに発現されてもよい。
【0067】
接着層50の機能の一つとしては、顔料層40と、転写先の媒体とを接着することが挙げられる。これにより、本実施形態の記録物100に形成されている画像(樹脂層20a(加熱後の記録物110においては、樹脂層20)および顔料層40)を、転写先の媒体に転写させることができる。また、樹脂層20(20a)に対して接着層50が形成された場合は、接着層50は、樹脂層20と転写先の媒体とを接着することができる。
【0068】
接着層50が有する接着性の程度は、浸透層10および樹脂層20の間の接着力、並びに樹脂層20および顔料層40の間の接着力よりも、接着層50を介した顔料層40と転写先の媒体(例えば、記録媒体60)との間の接着力のほうが大きければ十分である。
【0069】
接着層50の材質としては、アクリル系、ウレタン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系などの接着剤に汎用されるモノマー、オリゴマーおよび樹脂類などを例示できる。この場合、必要に応じて重合開始剤、反応助剤、充填剤等の添加物が含有されてもよい。また、接着層50の材質の例としては、ポリオレフィン類、ポリアミド類、およびその変性体などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。この場合、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤等の添加物が含有されてもよい。また、接着層50の材質としては、ロジン、糊化デンプン、ニカワ、各種の糖類等の天然樹脂またはその変性体などの粘着性を有する物質を例示することができる。また、接着層50の材質としては、感圧型の接着剤であってもよい。感圧型の接着剤としては、例えば、接着剤を微小なカプセルに封入した構造を有するものが挙げられる。接着層50の材質は、上記例示した物質の2種以上の混合物であってもよい。また、接着層50に、顔料層40の膜強度を高める機能をもたせることもでき、その場合には、接着層50の材質には、顔料32の結着剤となる化合物を含有させてもよい。このような顔料32の結着剤としての作用を発揮しうる化合物としては、例えば、スチレンブタジエン系樹脂、およびセルロース系樹脂、アクリル系、ウレタン系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、並びにその誘導体などが挙げられる。さらに、接着層50は、染料および顔料等の各種の色材によって着色されていてもよい。
【0070】
また、浸透層10や樹脂層20(20a)に対して接着層50が形成された場合においても、浸透層10および樹脂層20の間の接着力、並びに、樹脂層20および顔料層40の間の接着力よりも、接着層50を介した顔料層40と転写先の媒体との間の接着力のほうが大きければ十分である。すなわち、樹脂層20および顔料層40を転写先の媒体に転写した後に、浸透層10または樹脂層20の上の接着層50は、浸透層10側に残存してもよく、転写先の媒体側に単独で、あるいは浸透層10または樹脂層20とともに転写されてもよい。
【0071】
1.1.5.作用効果等
本実施形態の記録物100または記録物110によれば、転写先の媒体の種類に依存することなく、光沢またはつやが良好で、傷つきにくい画像を、該媒体に対して容易に形成することができる。すなわち、本実施形態の記録物100または記録物110は、浸透層10の表面の平坦度に対応する表面を有する顔料層40および樹脂層20を、接着層50によって、転写先の媒体に接着させ転写することができる。これにより、転写先の媒体に光沢またはつやの良好でしかも傷つきにくい画像を容易に形成することができる。
【0072】
また、本実施形態の記録物100または記録物110によれば、樹脂層を顔料層40とともに転写するため、転写先の媒体上の顔料層40に対して、他の工程を要さず、極めて簡易に保護層(樹脂層20)を設けることができる。
【0073】
1.2.第2実施形態
本実施形態の記録物200は、上述の記録物110の接着層50に対して記録媒体60が配置された構成を有する。そして、顔料層40と記録媒体60とが、接着層50によって接着されている。図5は、本実施形態の記録物200の断面の模式図である。図6は、本実施形態の記録物300の断面の模式図である。なお、図5において接着層50は、顔料層40が形成された領域に合わせて塗布されているが、特に限定されない。具体的には、接着層50は、顔料層40が形成された領域を越えて広範囲に記録媒体60に塗布されていてもよいし、記録媒体60の全域に塗布されていても良い。
【0074】
本実施形態の記録物200において、記録媒体60以外の構成は、第1実施形態で述べたと同様であるため、同様の符号を付して説明を省略する。
【0075】
記録媒体60は、特に限定されない。記録媒体60としては、例えば、各種の紙、布、フィルム、シートなどが挙げられる。より具体的には、日本工業規格JIS−P0001に記載されている紙類、JIS−L0206に記載されている織物類、JIS−L0222に記載されている不織布類、および、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、木材、金属、セラミックス、ガラスなどの材質のフィルム類、シート類が挙げられる。また記録媒体60としては、コート紙やアート紙等の塗工紙であってもよい。
【0076】
記録物200は、上記実施形態の記録物110と記録媒体60とが一体となった構造を有する。記録物200は、浸透層10と樹脂層20との間の剥離が容易である。
【0077】
図5に示すように、記録物200の浸透層10および樹脂層20の界面が剥離されると、記録媒体60に対して、接着層50、顔料層40、および樹脂層20が順次積層された記録物300を得ることができる。記録物300には、平坦度が制御された表面(樹脂層20の表面および顔料層40の接着層50とは反対側の面)を有する画像が形成される。そして、顔料層40に対して、樹脂層20が形成されることにより、樹脂層20が顔料層40の保護層となっている。そのため、顔料層40および樹脂層50によって形成された画像は、光沢やつやが良好でしかも傷つきにくい。
【0078】
以上のような第2実施形態にかかる記録物200によれば、記録媒体60に良好な光沢やつやを有し、傷つきにくい画像が形成された記録物300を、容易に搬送することができる。またかかる記録物200によれば、記録媒体60に形成された画像の表面が浸透層によって保護されているため、搬送等によって生じる擦過痕を抑制することができる。さらに、記録物200によれば、ユーザーが所望する任意の時点で、浸透層10と樹脂層20との間を剥離することができるため、望むタイミングで、光沢やつやが良好で、傷つきにくい画像が形成された記録物300を得ることができる。
【0079】
1.3.変形例
上記第1実施形態および第2実施形態の記録物は、多様な変形が可能である。記録物の変形例については、次項「2.画像形成方法」の項で合わせて述べる。
【0080】
2.画像形成方法
図7ないし図12は、それぞれ本発明の一実施形態にかかる画像形成方法の一工程を模式的に示す図である。
【0081】
本実施形態にかかる画像形成方法は、樹脂層20aを形成する工程と、顔料層40を形成する工程と、接着層50を形成する工程と、記録媒体60と顔料層40とを接着する工程と、樹脂層20aを溶融させる工程と、を含む。
【0082】
2.1.樹脂層を形成する工程
図7および図8は、樹脂層20aを形成する工程を模式的に示す図である。
【0083】
まず、浸透層10を準備する。図7に示すように、浸透層10は、基材12に形成されていてもよい。次いで、図7に示すように、浸透層10に樹脂の粒子22が分散されたエマルション20bを付着させる。浸透層10にエマルション20bを付着させる方法としては、特に限定されず、インクジェット法、ディップ法(刷毛、スキージ等による塗布を含む)、バーコート法、孔版印刷法(スクリーン印刷法)、凸版印刷法および凹版印刷法などが挙げられる。これらの方法のうち、インクジェット法は、版を準備する等の工程が不要で、しかも所望の画像を容易に形成することができるため、エマルション20bの無駄を抑えることができる点でより好ましい。
【0084】
エマルション20bとしては、「1.1.2.樹脂層」の項で述べた樹脂のエマルションが挙げられる。エマルション20bは、例えば、乳化重合、懸濁重合等の方法により樹脂のモノマーを重合することによって得ることができる。また、樹脂のエマルション20bは、必要に応じて分散剤、界面活性剤、結着剤などを含有していてもよい。エマルション20bの市販品の具体例としては、モビニール972(日本合成化学工業株式会社製)、モビニール6530(日本合成化学工業株式会社製)などを挙げることができる。
【0085】
エマルション20bが浸透層10に付着されると、図8に示すように、エマルション20bの分散媒21の少なくとも一部が浸透層10に浸透する。浸透層10は、既に述べたように、エマルション20bに含有される分散媒21を吸収してもよい。また、この場合、浸透層10は、エマルション20bに含有される樹脂の粒子22をほとんど受容しないか、わずかに受容する程度の平均開口径を有するものが選択されるのが好ましい。その観点から浸透層10の空隙率は、特に限定されないが、例えば、40%以上80%以下とすることが好ましい。これにより、浸透層10に付着されたエマルション20bは、浸透層10の表面を境界として浸透層10の内部に分散媒21の少なくとも一部が浸透し、浸透層10の表面よりも上に、樹脂の粒子22が堆積された状態となる。
【0086】
なお、本工程は、必須の工程ではなく、例えば、浸透層10に対して樹脂層20aが既に形成されている媒体を準備し、その媒体に対してインクを吐出して顔料層40を形成する場合は、本工程は省略することができる。
【0087】
2.2.顔料層を形成する工程
次に、顔料層40を形成する。顔料層40は、樹脂層20aに対して形成される。顔料層40は、樹脂層20aに顔料32を含有するインクジェット法によりインク30を付着させ、樹脂層20aを介してインク30の分散媒31の少なくとも一部を浸透層10に浸透させて形成される。図9および図10は、顔料層40を形成する工程を模式的に示す図である。
【0088】
2.2.1.顔料層の形成
図9に示すように、樹脂層20aにインク30をインクジェット方式により付着させる。インクジェット法は、版を準備する等の工程が不要で、しかも所望の画像を容易に形成することができるため、エマルション20bの無駄を抑えることができる。
【0089】
インク30が樹脂層20aに付着されると、図10に示すように、インク30の分散媒31の少なくとも一部が樹脂層20aの樹脂の粒子22間の間隙を通過して、浸透層10に浸透する。樹脂層20aは、顔料32をほとんど受容しないか、わずかに受容する程度の平均開口径を有するように形成されているのが好ましい。その観点から、樹脂層20aの樹脂の粒子22の間の空隙率は、特に限定されないが、例えば、40%以上80%以下とすることが好ましい。これにより、樹脂層20aに付着されたインク30は、樹脂層20aの表面を境界として浸透層10へ向かって分散媒21の少なくとも一部が浸透し、樹脂層20aの表面よりも上に、顔料32が濃化された状態となる。これにより、樹脂層20aに対して顔料層40が形成される。
【0090】
2.2.2.インク
顔料層40を形成する工程で使用するインク30は、少なくとも顔料32および分散媒31を含有する。
【0091】
2.2.2.1.顔料
顔料32としては、特に制限されず、無機顔料、有機顔料、特色(白色、金属、パール調)顔料など、各種公知のものを挙げることができる。
【0092】
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等が挙げられる。
【0093】
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、またはC.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
【0094】
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー4、60等が挙げられる。
【0095】
マゼンタ、シアンおよびイエロー以外の着色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、10、C.I.ピグメントブラウン3、5、25、26、C.I.ピグメントオレンジ2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等が挙げられる。
【0096】
ブラック顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄などの粉体が挙げられる。
【0097】
白色顔料としては、酸化チタン、有機または無機材料からなる中空粒子、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどの粉体が挙げられる。また、パール顔料としては、粘土鉱物類を挙げることができる。
【0098】
金属顔料としては、媒体に付着されたときに光輝性を呈しうるものであれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、および銅からなる群より選択される1種または2種以上の合金やパール光沢を有するパール顔料を挙げることができる。
【0099】
インク30には、上記例示した顔料32の複数種が配合されてもよい。
【0100】
顔料を分散媒に分散させるには、樹脂分散、自己分散、マイクロカプセル型分散などを複数の方法があるが、本実施形態においては、自己分散型顔料が好ましい。自己分散型顔料は、分散性のある官能基を有する顔料であるので、樹脂やポリマーなどを表面に有しない、又は少ないことにより、記録媒体に対しての密着性が低く転写を行うのに好ましい。
【0101】
顔料32の粒子径は、樹脂層20aの樹脂の粒子22の間の間隙の大きさ等を考慮して、樹脂層20aの内部に浸透しにくいまたは浸透しないように選択される。顔料32の粒子径としては、例えば、平均粒子径が1nm以上500nm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは3nm以上200nm以下程度のものが好ましい。また、光輝性を有する顔料である場合には、3nm以上100nm以下であるのが好ましい。なお、顔料32の平均粒子径は、例えば、光(レーザー)散乱法、窒素吸着法などにより、粒径加積曲線を求めるなどして測定することができる。本実施形態のインク30における顔料32の含有量は、例えば、インク30全体に対して、1質量%以上25質量%以下程度が好ましく、より好ましくは3質量%以上20質量%以下である。
【0102】
2.2.2.2.分散媒
インク30に使用される分散媒31は、特に限定されない。分散媒31としては、例えば、水、有機溶剤、反応性化合物、およびそれらの混合物等が挙げられる。インク30中では、顔料32は分散媒31に分散されている。インク30に、顔料32以外の物質、例えば、顔料32を分散させるための化合物が含有される場合、それらの物質が常温で液体であれば、該化合物も分散媒31の一部と見なすことができる。
【0103】
2.2.2.3.その他の成分
インク30には、各種公知の物質を含有させることができる。インク30には、例えば、界面活性剤、定着剤、湿潤剤、浸透溶剤、pH調整剤、防腐剤、防かび剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を配合してもよく、さらに、必要に応じてレベリング添加剤、マット剤、顔料層40の膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を含有させてもよい。また、インク30は、接着層50を形成するための液体が接触したときに、顔料32が再分散しないものがより好ましい。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を含有させることによって、再分散しにくくする効果が得られる場合がある。
【0104】
2.3.接着層を形成する工程
次いで、図1に示すように、少なくとも顔料層40に対して接着層50を形成する。接着層50は、例えば、接着性を有する、または、特定の刺激を受けることで接着性を発揮する化合物、若しくは、該化合物を含有する液体を塗布することにより形成される。
【0105】
接着性を有する化合物は、「1.1.4.接着層」の項で述べたと同様である。
【0106】
図1の例では、顔料層40に対してのみに接着層50が形成されている。浸透層10や樹脂層20aに対して接着層50が形成される場合には、接着層50の材質は、樹脂層20と浸透層10との剥離が容易となるように選択される。剥離したときに、顔料層40および樹脂層20が記録媒体60側へ転写される限り、画像以外の部分に形成された接着層50は、浸透層30および記録媒体60のいずれの側に存在することとなってもよい。
【0107】
接着層50は、各種の手法により形成されることができ、例えば、インクジェット法、ディップ法(刷毛、スキージ等による塗布を含む)、バーコート法、孔版印刷法(スクリーン印刷法)、凸版印刷法および凹版印刷法などにより形成されうる。これらの方法のうち、インクジェット法は、版を準備する等の工程が不要で、しかも所望の画像を容易に形成することができるため、接着層50を形成するための液体の無駄を抑えることができる点でより好ましい。
【0108】
以上の工程を経ることにより、図1に示す記録物100を形成することができる。また、顔料層40を形成する工程よりも後に、「2.5.樹脂の粒子を溶融させる工程」を行うことにより、図2に示す記録物110を形成することができる。
【0109】
2.4.記録媒体および顔料層を接着する工程
次に、図11に示すように、接着層50に対して記録媒体60を配置し、記録媒体60と顔料層40とを接着する。本工程は、接着層50の材質および樹脂層20aの材質に従って、適宜に行われる。例えば、接着層50が常温で十分な接着性を有する場合には、記録媒体60を接着層50に対して配置してわずかな圧力Pが印加するだけで記録媒体60と顔料層40とを接着することができる。この場合、必要に応じて、プレス加工、ローラー圧着等を行ってもよい。
【0110】
また、接着層50が熱によって接着性を発揮する性質を有する場合には、適宜な加熱手段を用いて、記録媒体60および浸透層10の少なくとも一方を加熱して行うことができる。本工程で、記録媒体60および浸透層10の少なくとも一方を加熱して行う場合には、「2.5.樹脂の粒子を溶融させる工程」を兼ねることができる。さらに、接着層50が圧力によって接着性を呈する場合には、例えば、ローラー圧着、プレス加工や治具等を用いた徒手により圧力Pを印加して行うことができる。また、接着層50が熱によって接着性を発揮する性質を有する場合、本工程は、加熱して行われ、ローラー圧着やプレス加工を併用してもよい。
【0111】
接着層50が熱硬化型の化合物を含有する接着剤である場合には、本工程では、接着層50は、接着剤の重合温度(例えば重合開始剤の活性化温度)よりも高い温度となるように加熱されることが好ましい。また、例えば、接着層50が熱可塑性の重合体を含有する接着剤である場合には、本工程では、接着層50は、熱可塑性の重合体のTg(ガラス転移温度)、およびTm(融点)の少なくとも一方の近傍まで加熱されることが好ましく、TgおよびTmの少なくとも一方よりも高い温度に加熱されることがさらに好ましい。
【0112】
なお、本工程を行うまでに、または本工程と同時に「2.5.樹脂の粒子を溶融させる工程」を行うことができる。図12は、接着層50に対して記録媒体60を配置し、記録媒体60と顔料層40とを接着するとともに、熱Hを印加する様子を示している。このようにすれば、図5、図12に示す記録物200を形成することができる。
【0113】
2.5.樹脂層を溶融させる工程
樹脂層20aを溶融させる工程は、具体的には、樹脂層20aを構成する樹脂の粒子22を溶融させる工程である。本工程は、樹脂層20aを加熱することによって行われる。例えば、樹脂層20aを溶融させる工程は、浸透層10および記録媒体60の少なくとも一方を加熱して、間接的に樹脂層20aを加熱して行われることができる。樹脂層20aを溶融させる工程は、より具体的には、加熱ローラーによって行うことができ、あるいはホットプレート等を用いて行うことができる。本工程を経ることにより、樹脂の粒子22が堆積した構造を有する樹脂層20aが、例えば、図11に示すような、膜状の構造を有する樹脂層20へと変化する。
【0114】
なお、「2.4.記録媒体および顔料層を接着する工程」および「2.5.樹脂層を溶融させる工程」は、同時に行ってもよいし、逐次的に行ってもよい。さらに、「2.4.記録媒体および顔料層を接着する工程」および「2.5.樹脂層を溶融させる工程」を逐次的に行う場合には、工程の順序は特に制限されない。
【0115】
2.6.作用効果
本実施形態の画像形成方法によれば、例えば、上述した実施形態の記録物を容易に得ることができる。本実施形態の画像形成方法によれば、記録媒体の種類に依存することなく、該記録媒体に対して光沢またはつやの良好な画像を、容易に形成することができる。
【0116】
2.7.顔料層および樹脂層を転写する工程
本実施形態の画像形成方法は、顔料層40および樹脂層20を、浸透層10から記録媒体60へ転写する工程を含むことができる。
【0117】
顔料層40および樹脂層20は、上記実施形態の画像形成方法を経ると、記録媒体60に接着されている。本工程は、例えば、図6に示すように、浸透層10と樹脂層20との界面を剥離する工程である。本工程により、顔料層40および樹脂層20は、浸透層10側から記録媒体60側へ転写され、例えば、記録物300を得ることができる。
【0118】
本工程の具体的な方法としては、なんら制限はなく、例えば、一般的なピーラーなどを用いて行うことができる。また、本工程は、ローラー等を適宜配置して、記録媒体60や浸透層10の搬送とともに適宜に行うことができる。さらに、本工程は、例えば、ユーザーが徒手で行ってもよい。
【0119】
接着層50が熱可塑性の化合物を含む場合には、本工程は、「2.3.記録媒体および顔料層を接着する工程」の後、接着層50が冷却されてから行われることが好ましい。このような場合には、例えば、記録媒体および顔料層を接着する工程の後、冷却工程を設けることができる。冷却工程としては、例えば、冷却期間を設けることや、冷却手段(冷却ローラーなど)を用いて接着層50を冷却することが挙げられる。
【0120】
本実施形態の画像形成方法が、顔料層40および樹脂層20を、浸透層10から記録媒体60へ転写する工程を含む場合には、例えば、上述した本実施形態の記録物300およびを極めて容易に得ることができる。そして、記録媒体60の種類に依存することなく、該記録媒体60に対して光沢またはつやが良好で傷つきにくい画像を容易に形成することができる。
【0121】
2.8.変形例
2.8.1.変形例1
上記実施形態の画像形成方法において、接着層を形成する工程に代えて、接着性を有する接着層52が形成された記録媒体60を準備して、該接着層52を用いて記録媒体60および顔料層40を接着してもよい。図13は、接着性を有する接着層52を備えた記録媒体60を顔料層40に対して配置した状態を模式的に示す図である。図14および図15は、本変形例の画像形成方法において、顔料層40(32)および樹脂層20を転写する工程を経た状態を模式的に示す図である。
【0122】
上記実施形態の画像形成方法では、転写元(浸透層10側)に接着層50を形成し、当該接着層50を用いて、顔料層40と記録媒体60とを接着した。しかし、本変形例のように記録媒体60側に接着層52が形成されていても同様の結果を得ることができる。
【0123】
本変形例にかかる画像形成方法では、記録媒体60の一方の面に接着層52が形成されている。接着層52は、記録媒体60の全面に形成されていてもよいし、樹脂層20に付着された顔料層40の反転像、またはこれを含む形状の領域に形成されてもよい。本変形例においても上記実施形態と同様にして、記録媒体60と顔料層40とを接着層52によって接着することができる。これにより、図13に示すような記録物220を形成することができる。
【0124】
そして、記録物220に対して、顔料層および樹脂層を転写する工程を行うと、図14または図15に示すような記録物310または記録物311を得ることができる。記録物310は、記録媒体60に対して接着層52が形成され、接着層52の上の一部の領域に顔料層40および樹脂層20が形成されている。一方、記録物311は、構成としては記録物310と同様であるが、樹脂層20の表面と接着層52の表面が面一となっている。記録物311は、例えば、記録物220に対して、記録媒体60および浸透層10を接近させるような圧力を印加すること、接着層52の可塑性を高めること、および接着層52の厚みを調節することの少なくとも一種を調節することなどにより形成することができる。このような記録物311によれば、樹脂層20の表面と接着層52の表面が面一となっているため、例えば、記録物311にラミネートなどを施したときの美観を向上させることができる。
【0125】
2.8.2.変形例2
本実施形態の画像形成方法において、樹脂層20aは、顔料層40よりも広い範囲、または浸透層10の全面に形成されてもよい。また、あらかじめ浸透層10に対して樹脂層20aが形成された媒体に対して顔料層40を形成する工程を行ってもよい。
【0126】
図16は、浸透層10の広い領域に樹脂層20aが形成された媒体に対して、上記実施形態の記録媒体および顔料層を接着する工程、および樹脂の粒子を溶融させる工程を行った状態を模式的に示す図である。図17および図18は、本変形例の画像形成方法において、顔料層および樹脂層を転写する工程を経た状態を模式的に示す図である。
【0127】
上記実施形態の画像形成方法で例示した態様は、樹脂層20aおよび顔料層40の形状が互いにほとんど同じものであった。本変形例では、樹脂層20aのほうが顔料層40よりも大きな面積で浸透層10に形成されている。本変形例においても、少なくとも上記実施形態と同様の結果を得ることができる。
【0128】
本変形例においても上記実施形態と同様にして、記録媒体60と顔料層40とを接着層50によって接着することができる。これにより図16に示すような記録物230および記録物120を形成することができる。
【0129】
そして、記録物230に対して、顔料層および樹脂層を転写する工程を行うと、図17または図18に示すような記録物320または記録物321を得ることができる。記録物320は、記録媒体60に対して接着層50が形成され、接着層50に対して顔料層40および樹脂層20が形成されている。一方、記録物321は、構成は記録物320と同様であるが、樹脂層20は、顔料層40を含むより広い領域を覆っている。樹脂層20は、記録媒体60の全面を覆っていてもよく、その場合には、あらかじめ浸透層10に対して対応する大きさの樹脂層20aが形成される。記録物321は、例えば、記録物230に対して、記録媒体60および浸透層10を接近させるような圧力を印加すること、樹脂層20の可塑性を高めること、樹脂層20の厚みを調節することの少なくとも一種を調節することなどにより形成することができる。また、樹脂層20の媒体への接着性は適宜調整されることができる。このような記録物321によれば、顔料層40の部分のみならず、その周囲まで樹脂層20によって被覆されるため、記録される画像の保護効果がより高まるとともに、美観を向上させることができる。
【0130】
2.8.3.変形例3
本実施形態の画像形成方法において、接着層50は、顔料層40よりも広い範囲、または浸透層10の全面に形成されてもよい。
【0131】
図19に示す変形例の記録物240は、樹脂層20に対して顔料層40が形成され、顔料層40に対して、顔料層40よりも広い範囲の領域に接着層50が形成されている。図19は、上記実施形態の記録媒体および顔料層を接着する工程、および樹脂の粒子を溶融させる工程を行った状態を模式的に示す図である。図20は、本変形例の画像形成方法において、顔料層および樹脂層を転写する工程を経た状態を模式的に示す図である。
【0132】
上記実施形態の画像形成方法で例示した態様は、顔料層40および接着層50の形状が互いにほとんど同じものであった。本変形例では、接着層50のほうが顔料層40よりも大きな面積で形成されている。本変形例においても、少なくとも上記実施形態と同様の結果を得ることができる。
【0133】
本変形例においても上記実施形態と同様にして、記録媒体60と顔料層40とを接着層50によって接着することができる。これにより、例えば、図19に示すような記録物240および記録物130を形成することができる。
【0134】
そして、記録物240に対して、顔料層および樹脂層を転写する工程を行うと、例えば、図20に示すような記録物330を得ることができる。記録物330は、記録媒体60に対して接着層50が形成され、接着層50に対して顔料層40および樹脂層20が形成されている。図20に示す記録物330では、接着層50は、顔料層40および樹脂層50とほぼ同じ大きさで形成されており、「1.2.第2実施形態」で示した記録物300(図6参照)と同様となっている。すなわち、図20に示すように、接着層50は、浸透層10側に残存してもよい。また、記録物240に対して、顔料層および樹脂層を転写する工程を、適宜、記録媒体60および浸透層10を接近させるような圧力を印加すること、接着層50の可塑性を高めること、接着層50の厚みを調節することの少なくとも一種を調節することなどにより行うと、「2.8.1.変形例1」で示した記録物311(図14参照)と同様の構成を得ることもできる。
【0135】
2.8.4.変形例4
本実施形態の画像形成方法において、樹脂層20aおよび接着層50の両者が、顔料層40よりも広い範囲、または浸透層10の全面に形成されてもよい。
【0136】
図21に示す変形例の記録物250は、樹脂層20の上の一部の領域に顔料層40が形成され、顔料層40に対して、顔料層40よりも広い範囲の領域に接着層50が形成されている。図20は、上記実施形態の記録媒体および顔料層を接着する工程、および樹脂の粒子を溶融させる工程を行った状態を模式的に示す図である。
【0137】
図22に示す変形例の記録物260は、樹脂層20の上の一部の領域に顔料層40が形成され、顔料層40に対して、接着層52を備えた記録媒体60が配置されている。図22は、上記実施形態の記録媒体および顔料層を接着する工程、および樹脂の粒子を溶融させる工程を行った状態を模式的に示す図である。
【0138】
図23は、本変形例の画像形成方法において顔料層および樹脂層を転写する工程を経た状態の一例を模式的に示す図である。
【0139】
上記実施形態の画像形成方法で例示した態様は、顔料層40および接着層50の形状が互いにほとんど同じものであった。本変形例においても、少なくとも上記実施形態と同様の結果を得ることができる。本変形例においても上記実施形態と同様にして、記録媒体60と顔料層40とを接着層50によって接着することができる。これにより、例えば、図21に示すような記録物250および記録物140、並びに、図22に示すような記録物260を形成することができる。
【0140】
そして、記録物250または記録物260に対して、顔料層および樹脂層を転写する工程を行うと、例えば、図23に例示するような記録物340を得ることができる。記録物340は、記録媒体60に対して接着層50が形成され、接着層50に対して顔料層40および樹脂層20が形成されている。図23に示す記録物340では、接着層50は、顔料層40よりも広い範囲に形成されているとともに、樹脂層20を記録媒体60に接着している。また、記録物250または記録物260に対して、顔料層および樹脂層を転写する工程を、適宜、記録媒体60および浸透層10を接近させるような圧力を印加すること、接着層50または樹脂層20の可塑性を調節すること、接着層50または樹脂層20の厚みを調節することの少なくとも一種を調節するなどして行うことができる。これにより、図23に示すような、記録物340を得ることができる。
【0141】
記録物340によれば、光沢やつやを有して傷つきにくい画像が得られることに加えて、顔料層40の部分のみならず、その周囲まで樹脂層20によって被覆されるため、記録される画像や記録物の保護効果がより高まるとともに、美観を向上させることができる。また、記録物340の樹脂層20は、接着層50によって記録媒体60に接着されているため、例えば、記録媒体60からの剥離等がさらに抑制される。
【0142】
上述の記録物および画像形成方法の実施形態では、上述の各変形例の複数を、技術的に支障のない範囲で、組み合わせて適用することができる。そして、これらの変形実施形態では上述の変形例で述べた効果が得られるとともに、変形例の組合せにおいては、組合せることによる相乗的な効果を得ることができる。
【0143】
3.画像形成装置
以下に、上記実施形態および各変形例の記録物を得るために好適な、または上記実施形態および各変形例の画像形成方法に好適に使用できる画像形成装置の幾つかを例示する。
【0144】
図24は、一実施形態にかかる画像形成装置1200、1300の模式図である。
【0145】
本実施形態の画像形成装置は、第1記録媒体410を搬送する第1搬送手段510と、第2記録媒体420を搬送する第2搬送手段520と、第1インク610を用いて画像を記録する第1記録手段710と、第2インク620を用いて画像を記録する第2記録手段720と、第3インク630を用いて画像を記録する第3記録手段730と、加圧手段800と、加熱手段900と、を備える。
【0146】
3.1.第1搬送手段および第2搬送手段
第1搬送手段510は、第1記録媒体410を搬送する。第2搬送手段520は、第2記録媒体420を搬送する。
【0147】
本実施形態では、第1記録媒体410は、上記実施形態で説明した浸透層10を有する。また、本実施形態では、第2記録媒体420は、上記実施形態における記録媒体60に対応する。
【0148】
第1搬送手段510は、例えば、ローラー512によって構成されることができる。第1搬送手段510は、複数のローラー512を有してもよい。第1搬送手段510は、図示の例では、第1記録媒体410の搬送される方向において、第1記録手段710より上流側に設けられているが、これに限定されず、第1記録媒体410が搬送できる限り、設けられる位置や個数は任意である。
【0149】
第2搬送手段520は、例えば、ローラー522によって構成されることができる。第2搬送手段520は、複数のローラー522を有してもよい。第2搬送手段520は、図示の例では、第1記録媒体410の搬送される方向において、第2記録手段720より下流側に設けられているが、これに限定されず、第1記録媒体410に対して、第2記録媒体420を積層できるように配置される限り、設けられる位置や個数は任意である。
【0150】
第1搬送手段510および第2搬送手段520は、それぞれ、給紙ロール、給紙トレイ、排紙ロール、排紙トレイ、および各種のプラテンなどを備えてもよく、第1記録媒体410および第2記録媒体420を積層できるように構成される。
【0151】
第1搬送手段510によって搬送される第1記録媒体410は、第1記録手段710、第2記録手段720、および第3記録手段730によって第1インク610、第2インク620、および第3インク630が付着される位置へ搬送される。また、第2搬送手段520によって搬送される第2記録媒体420は、加圧手段800によって第1記録媒体410と第2記録媒体420とが加圧密着できる位置へ搬送される。
【0152】
なお、図24では、第1記録媒体410および第2記録媒体420がいずれも連続紙である場合を例示しているが、第1記録媒体410および第2記録媒体420の少なくとも一方が単票であっても、第1搬送手段510および第2搬送手段520を適宜に構成することで、上記のような記録媒体の搬送を行うことができる。
【0153】
3.2.加圧手段と剥離手段
第1記録手段710は、第1記録媒体410に対して、第1インク610を用いて画像を記録する。第2記録手段720は、第1記録媒体410に対して、第2インク620を用いて画像を記録する。第3記録手段730は、第1記録媒体410に対して、第3インク630を用いて画像を記録する。
【0154】
第1インク610は、上述の実施形態で説明した樹脂のエマルションに対応する。第2インク620は、上述の実施形態で説明したインク30に対応する。第3インク630は、上述の実施形態で述べた接着層50を形成するための液体(接着性を有する、または、特定の刺激を受けることで接着性を発揮する化合物、若しくは、該化合物を含有する液体)に対応する。
【0155】
その後、加熱手段900によって加熱され、加圧手段800は、第1記録媒体410と第2記録媒体420とを密着させる。加圧手段800の構成としては、例えば、加圧ローラー、プレス成形機などを例示することができる。その後剥離手段950によって第1記録媒体410と第2記録媒体420は分離される。加圧手段800の構成に応じて、上述の各搬送手段による記録媒体の送り速度や送り量を適宜調節することができる。また、剥離手段950は公知の剥離手段を採用できるが、例えば傾斜をつけた土手分離、摩擦を利用したリタードローラ分離などがある。
【0156】
本実施形態の画像形成装置は、加熱手段900を有する。加熱手段900は、第1記録媒体410の搬送される方向において第1記録手段710よりも下流側に設けられる。加熱手段900は、第1記録媒体410の搬送される方向において加圧手段800と同じ位置または加圧手段800よりも上流側に設けられることが好ましい。例えば、加圧手段800に加熱機構を備えることで、当該加熱機構を加熱手段900とすることができる(図24参照)。さらに、図示しないが、上述の第1搬送手段510が、第1記録手段710よりも下流側にローラーを有する場合には、当該ローラーを加熱ローラーとして、これを加熱手段900としてもよい。このような加熱の具体的な例としては、例えば、加圧ローラー、プレス成形機を加熱して温度制御することができるヒーターなどが挙げられる。また、加熱機構を有する加圧手段としては、例えば、一般的なラミネーター装置の要部の構成が挙げられる。
【0157】
以上説明した本実施形態の画像形成装置は、各種の構成を適宜組み合わせることができる。
【0158】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0159】
10…浸透層、12…基材、20,20a…樹脂層、20b…エマルション、22…粒子、30…インク、31…分散媒、32…顔料、40…顔料層、50,52…接着層、60…記録媒体、100,110,120,130,140,200,220,230,240,250,260,300,310,311,320,321,330,340…記録物、P…圧力、H…熱、410…第1記録媒体、420…第2記録媒体、510…第1搬送手段、520…第2搬送手段、512,522…ローラー、610…第1インク、620…第2インク、630…第3インク、700…記録ヘッド、710…第1記録手段、720…第2記録手段、730…第3記録手段、712,722,732…セグメント、800…加圧手段、900…加熱手段、950…剥離手段、1200,1300…画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸透層と、
前記浸透層に対して形成され、樹脂の粒子が堆積された樹脂層と、
前記樹脂層に対してインクジェット方式により形成された顔料層と、
前記顔料層に対して形成された、接着性を有する接着層と、
を含み、
前記浸透層に、前記顔料層を形成するための顔料を含有するインクの分散媒が、前記樹脂層を介して浸透している、記録物。
【請求項2】
請求項1において、
前記樹脂層の前記粒子間の間隙が閉塞されており、前記インク中の前記分散媒が、70質量%以上前記浸透層に対して浸透している、記録物。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記接着層に対して配置された記録媒体をさらに含み、
前記顔料層および前記記録媒体は、前記接着層により接着されている、記録物。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記顔料は、光輝性を呈する、記録物。
【請求項5】
浸透層に対して樹脂の粒子が堆積されて形成された樹脂層に、顔料を含有するインクをインクジェット方式により付着させ、前記樹脂層を介して前記インクの分散媒を前記浸透層に浸透させて、前記樹脂層に対して顔料層を形成する工程と、
前記顔料層に対して、接着性を有する接着層を形成する工程と、
前記接着層に対して記録媒体を配置し、前記記録媒体と前記顔料層とを接着する工程と、
前記樹脂層の前記粒子間の間隙を閉塞させる工程と、
を含む、画像形成方法。
【請求項6】
浸透層に対して樹脂の粒子が堆積されて形成された樹脂層に、顔料を含有するインクをインクジェット方式により付着させ、前記樹脂層を介して前記インクの分散媒を前記浸透層に浸透させて、前記樹脂層に対して顔料層を形成する工程と、
前記顔料層に対して、接着性を有する接着層を備えた記録媒体を配置し、前記記録媒体と前記顔料層とを前記接着層によって接着する工程と、
前記樹脂層の前記粒子間の間隙を閉塞させる工程と、
を含む、画像形成方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、
前記樹脂層の前記粒子間の間隙を閉塞させる工程は、前記樹脂層を加熱して溶融させて行われる、画像形成方法。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれか一項において、
前記樹脂層は、インクジェット方式により形成されたものである、画像形成方法。
【請求項9】
請求項5ないし請求項8のいずれか一項において、
前記接着層は、インクジェット方式により形成されたものである、画像形成方法。
【請求項10】
請求項5ないし請求項9のいずれか一項において、
前記顔料は、光輝性を呈する、画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−96454(P2012−96454A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246022(P2010−246022)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】