説明

記録用紙およびこれを用いた画像形成方法

【課題】 電子写真記録方式及びインクジェット記録方式の双方で使用することが可能であり、電子写真記録方式においてカール発生量が少なく、且つインクジェット記録方式においても優れた発色性を持つ記録用紙およびこれを用いた画像形成方法を提供すること。
【解決手段】 パルプ繊維と填料とを主成分として含む原紙を有する記録用紙において、表面に少なくとも澱粉を含有する処理液を塗布してなり、記録用紙0.06m2を熱水抽出したときの抽出成分の固形分量が0.01乃至0.4gであり、該固形分中のカルボキシル基含有量が0乃至5meq/100gである特徴とする記録用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙及びそれを用いた画像記録方法に関するものであり、詳細には、表面に顔料を含む塗工層を持たない、いわゆる普通紙と呼ばれる記録用紙及びそれを用いた電子写真方式及びインクジェット方式の画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を使用した複写機やレーザープリンターは、いまやオフィスには欠かせない機器となっている。そこで主に使用されているのが、いわゆる普通紙と呼ばれる表面に顔料を含む塗工層を持たない記録用紙である。
【0003】
また、インクジェット記録方式はカラー化が容易であることや、消費エネルギーが少なく記録時の騒音も低く、プリンタの製造コストも低く抑えることができるため、近年オフィスでも使用される機会が増えてきている。そのため、オフィスにおけるいわゆる普通紙に要求される機能としては、電子写真記録方式とインクジェット記録方式の双方で問題なく使用できることが挙げられる。
【0004】
しかしながら、電子写真記録方式では紙上に転写されたトナー像を熱定着する際に、紙の片面から加熱されるため加熱面からの脱湿により紙がカールする。そのため排紙部での紙詰まり、排紙トレイ収容性不良などの問題があった。
【0005】
この印刷後カールの問題を改善するために、さまざまな検討がなされてきた。例えば、用紙に内在する歪みに着目して転写用紙の抄造乾燥時に緊張乾燥を実施する方法(特許文献1)や、梱包される際の水分調節を実施して水分を少なくし、吸水による伸びを小さくする方法が提案されている。例えば、コート紙のキャレンダ仕上げ直後の含水率を規定する方法(特許文献2、3)が開示されている。
【0006】
また、繊維配向の表裏差を小さくし、開封時含水率を規定する方法が開示されているが(特許文献4)、繊維配向の表裏差を小さくすることで伸縮挙動の表裏差は少なくなると考えられる。しかし、電子写真方式の熱定着部では加熱部と加圧部との間にはさまれてトナーを定着する方法が最も多く見られる形態であり、加熱部と加圧部とで温度が異なるため、表裏の伸縮挙動は異なり、熱定着後カールを低減するのは難しい。また、開封時含水率を低くすることでは、開封後放置された環境では用紙は吸湿してしまうため熱定着後カールの低減には寄与が少なくなってしまう。
【0007】
また、空隙部を含む顔料塗工層を持つ用紙の開封時含水率を規定する方法も開示されているが(特許文献5)、顔料塗工層に空隙を持たせることは画質向上が目的であり熱定着後カールにはなんら影響は無い。また、開封時含水率を低くすることでは、放置された環境で吸湿した用紙の熱定着後カールを低減する効果は不十分であることは前述したとおりである。
【0008】
水中伸度と開封時含水率を規定した方法(特許文献6)も開示されている。しかしながら、熱定着後カールとは脱湿時の用紙寸法変化であり、極端な吸湿時寸法変化である水中伸度を制御することで熱定着後カールを制御することは不可能であり、また、前述したとおり、開封時含水率を低くすることでは、吸湿後の熱定着カールを低減する効果は不十分である。
【0009】
更に梱包される際の水分調節に加えて、28℃85%RH環境下での調湿水分量を規定する方法も開示されている(特許文献7)。この方法は高湿環境での平衡水分と開封時含水率との差を規定した方法であるが、この方法も用紙の吸湿しやすさを目安にしており、脱湿によって発生する熱定着後カールの制御因子としては効果不十分である。20℃65%RHでの調湿水分量と開封時含水率を規定する方法(特許文献8、9)も提案されているが、こちらについても同様である。
【0010】
古紙含有紙について20℃65%RHでの調湿水分量のみを規定する方法(特許文献10)も提案されている。しかしながら、この方法も用紙の吸湿しやすさを目安にするものであり、脱湿時に発生する熱定着後カールの制御因子としては効果不十分である。
【0011】
また、最近の複写機やプリンターは、小型化、自動両面コピー、自動製本等といった多機能化に伴って、装置の機構やペーパーパスが複雑化し、また熱定着ロールの小径化、複雑化も進んでいるため寸法変化の表裏差だけを小さくしたとしても、上記技術の用紙を高湿条件下で使用すると片側からより熱のかかる小型のプリンターなどは特に、熱定着後のカールが大きくなり、用紙端部がマシン内の部材と接触して紙詰まり等が発生し易いことが明らかになって来ており、上述した従来技術では、熱定着後カールを十分に低減することはできなかった。
【0012】
また一方で、インクジェット記録方式では、普通紙に対して印刷する際に次のような問題点があった。
1.色材が用紙の表面に留まりにくく、特にカラーの発色性が十分ではない。
2..水溶性の色材を使用するため、記録された画像の耐水性が不十分である。
これらの問題点は、上述したカール低減技術においても同様に解決されていない。
【0013】
したがって、これらの問題点を改善するためにインク中の水溶性染料と反対のイオン性を有する物質を備えた用紙に、前記水溶性染料を含有するインクを用いて記録する方法が開示されている(特許文献11)。この方法では、撥水処理不十分な用紙に対して高速プリンターに用いられるような速乾性のインクを使用する場合において発色性が低下してしまう。これはインクの紙に対する浸透が非常に早くなるため用紙内部までインクの色材が入り込み、用紙表面に留まる色材が相対的に少なくなってしまうことが原因である。
【0014】
また、上記の方法はイオン性の強い物質を多量に用紙に処理するため、このような用紙は周囲の環境変動に過剰に反応して用紙の電気抵抗率が低下してしまい、電子写真記録方式を用いたプリンター、複写機などのトナー転写性に悪影響を及ぼす懸念があるため、電子写真記録方式との共用紙として上記課題を解決することは、従来技術においては困難であった。(例えば特許文献12,13参照)。また、熱定着後のカールを低減させることはできなかった。
【0015】
【特許文献1】特開平5−341554号公報
【特許文献2】特開平5−241366号公報
【特許文献3】特開平7−219262号公報
【特許文献4】特開平6−138688号公報
【特許文献5】特開平8−123066号公報
【特許文献6】特開平11−282193号公報
【特許文献7】特開平6−202371号公報
【特許文献8】特開平6−295087号公報
【特許文献9】特開平11−338181号公報
【特許文献10】特開平3−287894号公報
【特許文献11】特許 第296368号公報
【特許文献12】特開平10−166713号公報
【特許文献13】特開平7−257017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前記問題点を解決することを課題とする。すなわち、本発明は電子写真記録方式及びインクジェット記録方式の双方で使用することが可能であり、電子写真記録方式においてカール発生量が少なく、転写性が従来製品同様問題なく、且つインクジェット記録方式においても優れた発色性を持つ記録用紙およびこれを用いた画像形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、熱定着後のカールの発生機構について鋭意検討した結果、以下の知見を得た。すなわち、表面に少なくとも澱粉を含有する処理液を塗布した用紙について、該用紙を熱水抽出して得られる固形分中のカルボキシル基含有量が0乃至5meq/100gの範囲であれば、電子写真記録方式での熱定着後のカールが低減され、インクジェット記録方式では発色性が向上する。
また、電子写真記録方式において使用される記録用紙には導電剤が使用されているが、導電剤として多価金属塩をある一定の分布で表面処理することによって、転写性を維持しながら、インクジェット記録方式において高い発色性を得ることができる。
【0018】
すなわち、本発明は、
<1>
パルプ繊維と填料とを主成分として含む原紙を有する記録用紙において、
表面に少なくとも澱粉を含有する処理液を塗布してなり、記録用紙0.06m2を熱水抽出したときの抽出成分の固形分量が0.01乃至0.4gであり、該固形分中のカルボキシル基含有量が0乃至5meq/100gである特徴とする記録用紙。
<2>
前記処理液中に二価以上の金属塩を含有し、23℃50%RHでの表面電気抵抗率と体積電気抵抗率の比率が0.1乃至1であり、且つその環境での表面電気抵抗率が1.0×109乃至1.0×1011Ω、体積電気抵抗率が5.0×109乃至5.0×1011Ω・cmの範囲にあることを特徴とする<1>に記載の記録用紙。
<3>
前記澱粉が、0乃至5meq/100gのカルボキシル基をもつことを特徴とする<1>又は<2>に記載の記録用紙。
<4>
静電潜像担持体表面を均一に帯電する帯電工程と、該静電潜像担持体表面を露光し静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像担持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像剤を用いて現像し、トナー画像を形成する現像工程と、前記トナー画像を記録用紙上に転写する転写工程と、前記記録用紙上に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を含む電子写真記録方式の画像記録方法において、前記記録用紙が<1>乃至<3>のいずれかに記載の記録用紙であることを特徴とする画像記録方法。
<5>
水及び/又は水溶性の有機溶媒と、色材とを含有するインクの液滴を、記録用紙の表面へ付与することにより画像を形成するインクジェット方式の画像記録方法において、
前記記録用紙が<1>乃至<3>のいずれかに記録用紙であることを特徴とする画像記録方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電子写真記録方式及びインクジェット記録方式に共用でき、電子写真記録方式においては熱定着後カールが小さく転写性に問題のない、インクジェット記録方式においては発色性の高い記録用紙およびこれを用いた画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<記録用紙>
本発明の記録用紙は、パルプ繊維と填料とを主成分として含む原紙を有し、表面に顔料を含む塗工層を持たないいわゆる普通紙であって、表面に少なくとも澱粉を含有する処理液を塗布してなり、該記録用紙0.06m2を熱水抽出したときの抽出成分の固形分量が0.01乃至0.4gであり、該固形分中のカルボキシル基含有量が0乃至5meq/100gである。
また、該処理液中に多価金属塩を含有し、23℃50%RHでの表面電気抵抗率と体積電気抵抗率の比率が0.1乃至1であり、且つその環境での表面電気抵抗率が1.0×109乃至1.0×1011Ω、体積電気抵抗率が5.0×109乃至5.0×1011Ω・cmの範囲にあることが好ましい。
なお、本発明の記録用紙は、顔料を含む塗工層を持たないいわゆる普通紙を意味し、この場合、処理液は顔料を実質的に含まないものであることが好ましい。但し「顔料を実質的に含まない」とは、処理液中の顔料の配合量が10重量%以下であることを意味する。
【0021】
澱粉の具体例については後述するが、この天然水溶性高分子上には通常カルボキシル基が微量に含有される。また、これを用紙の表面処理に用いる際に作業性を向上させるために低粘度化させる処理が行われるのが常であるが、低粘度化の手段としては、酸化処理、酵素変性処理などの方法を用いて低分子化する方法が一般的である。この低分子化工程においてカルボキシル基は増加する場合がある。
【0022】
理由は定かではないが、カルボキシル基の少ない澱粉を使用した用紙では、電子写真記録方式における熱定着後カールの発生量は明らかに小さくなる。また、カルボキシル基の量の異なる澱粉を混合して使用する場合にも同様にカルボキシル基の含有量が少ない組合せて用いると熱定着後カールの発生量は小さくなる傾向がある。
したがって、このような澱粉を処理した用紙を熱水抽出して得られる固形分中におけるカルボキシル基含有量が0乃至5meq/100gの範囲になるようにすることによって、熱定着後カールの発生量が小さくなることを見出した。
【0023】
そして一方で、インクジェット記録方式において使用されている水溶性インクの色材はアニオン性を示すものが多く、用紙表面に同じイオン性を示す水溶性物質が存在すれば、その部分では色材に対して斥力が働き、その結果、全面均一な色で覆われるべき画像のソリッド部分に白い斑点状の模様(以下白ブツと表現する場合がある)が発生し発色性が低下する。そのため、筆者らは用紙表面に使用される澱粉自体が画質悪化につながる特性を持っていることは好ましくないと考えた。
【0024】
したがって、用紙を熱水抽出した際に溶出してくる固形分中のカルボキシル基含有量が0乃至5meq/100gの範囲になるようにすることによって、インクのアニオン性色材に対して溶出して斥力をもつ成分が抑制され発色性を向上させることができる。また、この熱水抽出を行う際に抽出される固形分量を用紙0.06m2に対して0.01乃至0.4gの範囲にすることによって、インクが用紙に着弾するときに溶出・色材捕捉する成分が好ましい量得られることを見出した。
インク着弾時に溶出する成分が少なければ、色材は捕捉されず用紙内部に浸透してしまうか、もしくは表面に厚く積層された、水溶解性の低い物質上でランダムに広がり均一な発色性を損なう。また、インク着弾時に溶出する成分が多すぎる場合については、澱粉の分子量が小さすぎるため、色材と溶出成分が複合化もしくは不溶化した際にそれを用紙表面に捕捉する高分子物質が欠如し、良好な発色性が得られない結果となる。
【0025】
また、熱水抽出で得られる固形分中のカルボキシル基含有量としては、0乃至5meq/100gであることが好ましく、0乃至3meq/100gであることがより好ましい。電子写真方式での熱定着後カールはカルボキシル基量が少ないほど低減され、インクジェット方式での発色性についても、色材捕捉時に斥力となるカルボキシル基が少ないほど良化するからである。
【0026】
このように、熱水抽出で得られる固形分量及びその固形分中のカルボキシル基含有量を規定することで、上述したような効果を得ることができる。
【0027】
また、ここで多価金属塩を組み合わせることによりインクジェット記録方式での発色性は向上するが、カチオン性物質である多価金属塩を多量に用紙表面に処理することは、電子写真方式におけるトナー転写性を損なうことにもつながる。
【0028】
そこで、カチオン性である多価金属塩を用紙表面に処理する際に、その分布を表面近傍に留めることが、電子写真記録方式の転写性及びインクジェット記録方式の発色性の双方にとって重要なことであり、そのため、イオン性の物質の分布を計る指標として表面電気抵抗率と体積電気抵抗率の比に着目した。
【0029】
すなわち、23℃50%RHでの表面電気抵抗率と体積電気抵抗率との比率が0.1乃至1の範囲にあり、且つその環境での表面電気抵抗率が1.0×109乃至1.0×1011Ω、体積電気抵抗率が5.0×109乃至5.0×1011Ω・cmの範囲にあることが好ましい。ここで表面電気抵抗率と体積電気抵抗率の比率は(表面電気抵抗率(Ω)÷体積電気抵抗率(Ω・cm))をいい、好ましくは0.1乃至1の範囲にあり、より好ましくは0.1乃至0.5の範囲にあるのが良い。0.1よりも小さい場合は体積電気抵抗率が表面電気抵抗率に比べて高すぎるため、電子写真方式で印字する場合において、用紙に電荷が溜まりすぎることになり転写部材から用紙をはがす際に放電が発生して画質ディフェクトが出る場合がある。また、1よりも大きい場合は、体積電気抵抗率が下がりすぎており、これは表面に処理したカチオン性多価金属塩が用紙内部まで多量に浸透し、表面近傍に残留していないことを示しており、インクジェット方式で印字した際に発色性の良化が起こりにくくなり、好ましくない。また、それと同時に電子写真方式においても、電荷が用紙上に残留せず、裏面へ流れてしまうことになるため転写不良を生じる。
【0030】
また、本発明の記録用紙の印字面の表面電気抵抗率は1.0×109〜1.0×1011Ω/□の範囲であることが好ましく、5.0×109〜7.0×1010Ω/□の範囲であることがより好ましく、5.0×109〜2.0×1010Ω/□の範囲であることが更に好ましい。なお、印字面とは、原紙の表面に澱粉および多価金属塩を処理された方の面を意味する。
【0031】
また、本発明の記録用紙の体積電気抵抗率は、1.0×1010〜1.0×1012Ω・cmの範囲であることが好ましく、1.3×1010〜1.6×1011Ω・cmの範囲であることがより好ましく、1.3×1010〜4.3×1010Ω・cmの範囲であることがさらに好ましい。
【0032】
このように、表面電気抵抗率と体積電気抵抗率の比率、およびそれぞれの値がこの範囲を満たすようにして、多価金属塩を含有する処理液を塗布することで、電子写真記録方式での転写性に支障をきたさず、インクジェット記録方式において一層高い発色性を持つ記録用紙を得ることができる。
【0033】
−原紙−
次に、本発明の記録用紙に用いられる原紙について説明する。
本発明の記録用紙に用いられる原紙は、パルプ繊維と填量とを主成分として含むものである。
パルプ繊維としては、化学パルプ、具体的には広葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ等の他、木材及び綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプ等が好ましく挙げられる。
【0034】
また、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及びチップをやや軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ、中でも高収率が特徴であるケミサーモメカニカルパルプ等も使用できる。これらはバージンパルプのみで使用してもよいし、必要に応じて古紙パルプを加えてもよい。
【0035】
特に前記バージンパルプとしては、塩素ガスを使用せず二酸化塩素を使用する漂白方法(Elementally Chrorine Free:ECF)や、塩素化合物を一切使用せずにオゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(Total Chlorine Free:TCF)で漂白処理されたものであることが好ましい。
【0036】
また、前記古紙パルプの原料としては、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙などの上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙;を配合することができる。
【0037】
本発明に用いられる原紙において使用する古紙パルプは、前記古紙原料を、オゾン漂白処理又は過酸化水素漂白処理の少なくとも一方で処理して得られたものであることが好ましい。また、より白色度の高い記録用紙を得るという観点から、前記漂白処理によって得られた古紙パルプの配合率を50〜100質量%の範囲とすることが好ましい。さらに資源の再利用という観点から、前記古紙パルプの配合率を70〜100質量%の範囲とすることがより好ましい。
【0038】
前記オゾン漂白処理は、上質紙に通常含まれている蛍光染料等を分解する作用があり、前記過酸化水素漂白処理は、脱墨処理時に使用されるアルカリによる黄変を防ぐ作用がある。
前記古紙パルプは、オゾン漂白処理又は過酸化水素漂白処理の二つの処理を組み合わせることによって、古紙の脱墨を容易にするだけでなくパルプの白色度もより向上させることができる。また、パルプ中の残留塩素化合物を分解・除去する作用もあるため、塩素漂白されたパルプを使用した古紙の有機ハロゲン化合物含有量低減において多大な効果を得ることができる。
【0039】
また、本発明に用いられる原紙には、パルプ繊維に加えて、不透明度、白さ、及び表面性を調整するため填料を添加する。また、記録用紙中のハロゲン量を低減したい場合には、ハロゲンを含まない填料を使用することが好ましい。
前記填料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、ドロマイトカルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイト等の無機顔料、及び、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、キトサン粒子、セルロース粒子、ポリアミノ酸粒子、尿素樹脂、等の有機顔料を挙げることができる。
【0040】
また、原紙に古紙パルプを配合する場合には、古紙パルプ原料に含まれる灰分を予め推定して添加量を調整する必要がある。
前記填量の配合量は、特に制限されないが、前記パルプ繊維100質量部に対して、1〜80質量部の範囲であることが好ましく、1〜50質量部の範囲であることがより好ましい。
【0041】
前記パルプ繊維を抄紙して原紙を得る際には、得られた原紙の繊維配向比が1.0〜1.55の範囲であることが好ましく、1.0〜1.45の範囲であることがより好ましく、1.0〜1.35の範囲であることが更に好ましい。前記繊維配向比が1.0〜1.55の範囲であると、電子写真記録方式のみならずインクジェット記録方式で印刷した場合にも、より印刷後のカールを低減することができる。
【0042】
なお、前記繊維配向比とは、超音波伝播速度法による繊維配向比であり、記録用紙のMD方向(抄紙機の進行方向)の超音波伝播速度を、記録用紙のCD方向(抄紙機の進行方向に対して垂直に交わる方向)の超音波伝播速度で除した値を示すもので、下式(1)で表されるものである。
・式(1) 原紙の超音波伝播速度法による繊維配向比(T/Y比)=MD方向超音波伝播速度/CD方向超音波伝播速度
尚、この超音波伝播速度法による繊維配向比は、SonicSheetTester(野村商事(株)社製)を使用して測定することができる。
【0043】
−澱粉−
次に、本発明に用いる澱粉について説明する。
本発明で用いられる澱粉とは、葉緑素をもつ植物が光合成によって作る多糖類を抽出したもののみならず、それを加工したものも指す。具体的には、タピオカデンプン、馬鈴薯デンプン、コーンスターチ、ワキシースターチ、甘藷デンプン等の未変性デンプンの他に、加工澱粉としてカチオン化デンプン、酸化デンプン、アニオン化デンプン、酵素変性デンプン、疎水基導入デンプンなどが挙げられる。中でも、酵素を用いてαグリコシド結合を切断する酵素変性澱粉ではカルボキシル基の発生がほとんど無く好ましい。また、酸化変性澱粉でも、一般的な次亜塩素酸ナトリウムで湿式処理したものはカルボキシル基を多量に発生するが、過ヨウ素酸塩などで粉体のまま乾式に酸化処理したジアルデヒド澱粉等は酸化処理が緩和に行われるため、酸化される部分がアルデヒド型に留まり、カルボキシル基の発生量が少なく、好ましい。また、湿式においても反応pHを高く調整することにより酸化反応を緩和することができるため、高pH短時間処理によってカルボキシル基が少ない酸化澱粉を得ることができる。しかしながら、カルボキシル基の含有量としては、酵素変性澱粉や乾式の酸化処理澱粉よりも多くなることは避けられない。そのため、カルボキシル基の少ない澱粉としては酵素変性で得られる加工澱粉,乾式酸化処理で得られる加工澱粉が好ましい。熱水抽出して得られる固形分中においてカルボキシル基含有量が0乃至5meq/100gとなるためには、澱粉としてカルボキシル基の少ないものを使用することが好ましく、0乃至5meq/100gの範囲にあることが望まれる。また好ましくは0乃至4meq/100g、更に好ましくは0乃至3meq/100gの範囲にあることが良い。
また、熱水抽出して得られる固形分のIR吸収スペクトルを確認した際には、1153、1078、1024cm-1近辺にそれぞれ1つずつの吸収ピークを持ち、950〜1150cm-1の範囲にまたがる澱粉独特の吸収が確認できる。
【0044】
−金属塩−
次に、本発明で用いる金属塩について説明する。
金属塩としては、純水に溶解した際にカチオン性を示すものを使用する。その中でも2価以上の金属イオンを含む金属塩を1種以上用いることが好ましい。
【0045】
2価以上の金属イオンを含む金属塩としては、公知の金属塩が利用できる。なお、2価以上の金属イオンとしては、アルミニウム、ベリリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、亜鉛、鉄(II)、鉄(III)などが好ましく、カルシウム、マグネシウムがより好ましい。
これらの金属イオンは分子量が小さく、記録用紙上に着弾したインク中へと溶出しやすいと同時に、イオン化に際して水和時間が短いため、逆イオン性物質である色材を速やかに不溶化及び/または凝集化することができる。
【0046】
−記録用紙の製造方法および諸特性等−
次に、本発明の記録用紙の製造方法や、好ましい特性等について以下に説明する。
澱粉及び金属塩を含む処理液を原紙の表面に塗布する方法としては特に限定されないが、通常は、処理液を塗工液(サイズプレス液)として用い、原紙表面にサイズプレス処理を施す方法を利用することが好ましい。
【0047】
なお、処理液は、既述したように顔料を実質的に含まない(処理液中の顔料の配合量が10重量%以下)ことが好ましい。すなわち、言い換えれば、表面処理された本発明の記録用紙が、いわゆるコート紙のような表面に顔料を含む塗工層を有していない普通紙である。記録用紙表面に顔料を含む塗工層を有するコート紙は、一般オフィスにおける電子写真用及びインクジェット用記録用紙としては、コストの面や搬送部材の傷や紙粉の影響などから本発明では含まれない。
【0048】
また、前記塗工液は、サイズプレス処理の他、シムサイズ、ゲートロール、ロールコーター、バーコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、ブレードコーター等の通常使用されている塗工手段によって、原紙の表面に塗布することができる。澱粉、金属塩を含有する処理液を塗布された原紙は乾燥工程を経て、本発明の記録用紙を得ることができる。
【0049】
本発明において、原紙表面に澱粉および金属塩を含有する処理液を塗布する場合の、原紙の片面当たりの固形分処理量としては、0.4〜6g/m2の範囲であることが好ましく、0.5〜3g/m2の範囲であることがより好ましい。また、澱粉と金属塩との処理液中における配合比(澱粉:金属塩)は、1:5〜5:0.1であることが好ましく、更に好ましくは2:3〜5:1であることがよい。
【0050】
各々の固形分量が0.1g/m2より少ないと、表面強度を高めるという表面サイズ本来の役割を果たさない。 また、前記固形分量が5g/m2を越えると、いわゆる普通紙としての風合いを損なう場合がある。したがって、表面塗布される澱粉および金属塩の固形分の総量は、0.6〜5g/m2の範囲であることが好ましい。
【0051】
本発明の記録用紙のサイズ度は、澱粉の量、種類及びそれに加える他の水溶性高分子の量、種類などによっても必要な値に調整することができる。しかし、それだけではサイズ度の調整が十分でない場合には、さらに、表面サイズ剤を添加してもよい。このような表面サイズ剤としてはロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤、ポリビニルアルコール等を使用することができる。
また、抄紙工程中のスラリー調製段階で内添サイズ剤を配合し、予めサイズ度を調整してもよい。なお、記録用紙中のハロゲン量を低減したい場合には、ハロゲンを含まない内添サイズ剤や表面サイズ剤を使用することが好ましい。具体的には、ロジン系サイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤、中性サイズ剤等を使用することができる。
さらにサイズ剤と繊維の定着剤とを組み合わせて使用することもできる。この場合には、定着剤として硫酸アルミニウム、カチオン化澱粉等を使用することができる。また、記録用紙の保存性を向上させる観点からは、中性サイズ剤を使用することが好ましい。サイズ度はサイズ剤の添加量によって調整する。
【0052】
本発明に用いられる記録用紙は、そのステキヒトサイズ度が10〜60秒の範囲であることが好ましく、15〜30秒の範囲であることがより好ましい。前記ステキヒトサイズ度が10秒未満であると、インクジェット記録方式により印刷する場合、フェザリングが悪化し、細かい文字が判別不能になってしまったり、バーコード等を印字した場合に読み取り不可能となったりして実用性を損なう場合がある。
一方、前記ステキヒトサイズ度が60秒を超えると、電子写真記録方式で印字した場合にトナーの定着性が悪化する懸念がある。
【0053】
前記ステキヒトサイズ度については、JIS P8111:1998に規定する標準環境(温度23℃、相対湿度50%RH)において測定したJIS P8122:1976にいうステキヒトサイズ度である。
【0054】
また、トナー転写性を良好にし、粒状性を向上させる観点から、記録用紙の平滑度が20〜100秒以下の範囲であることが好ましく、70〜100秒の範囲であることがより好ましい。平滑度が20秒未満であると、粒状性が悪化する場合がある。また、平滑度が100秒を超えると、高い平滑度を得るために製造の際、ウェットの状態で高圧プレスすることとなり、その結果として用紙の不透明性が下がってしまったり、熱定着後のカールが大きくなる場合がある。尚、前記平滑度はJIS−P−8119:1998に準拠して測定されたものを意味する。
【0055】
また、本発明の記録用紙は、電子写真記録方式による画像形成に際して、画質として雲状の班(モトル)を改善する観点から、地合い指数が20以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。この地合い指数が、20を下回ると、電子写真記録方式においてトナーを熱融着させる際に用紙へのトナーの浸透が不均一になり、モトルが発生し画質を損なう場合がある。
【0056】
ここで、地合い指数とは、M/K Systems,Inc.(MKS社)製の3Dシートアナライザー(M/K950)を使い、そのアナライザーの絞りを直径1.5mmとし、マイクロフォーメーションテスター(MFT)を用いて測定したものである。すなわち、3Dシートアナライザーにおける回転するドラム上にサンプルを取り付け、ドラム軸に取り付けられた光源と、ドラムの外側に光源と対応して取り付けられたフォトディテクターによって、サンプルにおける局部的な坪量差を光量差として測定する。
【0057】
この時の測定対象範囲は、フォトディテクターの入光部に取り付けられる絞りの径で設定される。次にその光量差(偏差)を増幅し、A/D変換し、64の光測定的な坪量階級に分級し、1回のスキャンで1000000個のデータを取り、そのデータ分のヒストグラム度数を得る。そしてそのヒストグラムの最高度数(ピーク値)を64の微小坪量に相当する階級に分級されたもののうち100以上の度数を持つ階級の数で割り、それを1/100にした値が地合い指数として算出される。この地合い指数はその値が大きいほど地合いがよいことを示す。
【0058】
本発明の記録用紙を電子写真方式、更に熱転写用、及びそれらを兼用する被記録媒体として使用するときには、導電剤を配合して記録用紙の表面電気抵抗率を調整することが好ましい。但し、記録用紙中のハロゲン量を低減するために、ハロゲンを含まない導電剤を使用することが好ましい。
このような導電剤としては、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、メタケイ酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等の無機電解質;スルホン酸塩、硫酸エステル塩、カルボン酸塩、リン酸塩などのアニオン性界面活性剤;カチオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビット等の非イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤;高分子電解質などの導電剤を使用することができる。中でも、本発明においては二価以上の多価金属塩を使用することで、インクジェット印字時の発色性が更に向上することは前述したとおりである。
【0059】
なお、澱粉、金属塩を含む処理液を原紙の表面に塗布する工程において、前記処理液が原紙中へ浸透するのを制御するための手法として、塗布前の原紙をキャレンダー処理等して、原紙透気度を10〜30秒に調整しておくことが好ましい。原紙透気度を高くすることによって、処理液の内部への浸透を抑制することができるからである。しかしながら、原紙透気度を高めすぎると、インクジェット記録方式におけるインクの浸透性をも阻害してしまい、色間にじみや乾燥性の悪化を招く場合があるため、これらも考慮の上で原紙透気度を調整することが好ましい。
【0060】
また、抄紙後サイズプレス工程を通さず乾燥させた原紙に対して、別途サイズプレス工程を通すことによって、塗工液の原紙への浸透を少なくする手法もある。
【0061】
(電子写真方式の画像記録方法)
本発明における電子写真方式の画像記録方法は、静電潜像担持体表面を均一に帯電する帯電工程と、該静電潜像担持体表面を露光し静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像担持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像剤を用いて現像し、トナー画像を形成する現像工程と、前記トナー画像を記録用紙上に転写する転写工程と、前記記録用紙上に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を含み、前記記録用紙が既述の本発明の記録用紙であることを特徴とする。
この本発明の電子写真方式の画像記録方法を用いれば、熱定着後のカールを大幅に低減でき、且つ従来と同様に高画質な画像が得られる。
【0062】
また、本発明の電子写真方式の画像記録方法に用いられる画像形成装置は、前記帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程及び定着工程を有する電子写真方式を利用するものであれば特に限定されない。たとえば、シアン、マゼンタ、イエロー、および、ブラックの4色のトナーを用いる場合には、1つの感光体に、各色のトナーを含む現像剤を順次付与してトナー像を形成する4サイクルの現像方式によるカラー画像形成装置や、各色毎に対応した現像ユニットを4つ備えたカラー画像形成装置(所謂タンデム機)等が利用できる。
【0063】
画像形成に際して用いられるトナーも公知のものであれば特に限定されないが、例えば、高精度な画像が得られる点で、球状で、粒度分布の小さいトナーを用いたり、省エネルギーに対応するために、低温定着が可能な融点の低い結着樹脂を含むトナーを用いたりすることができる。
【0064】
(インクジェット方式の画像記録方法)
次に本発明におけるインクジェット方式の画像記録方法(以下、「インクジェット記録方法」という場合がある。)について説明する。本発明におけるインクジェット記録方法は、本発明の記録用紙に対してインクを用いて印字するものである。この際用いられるインクは公知のインクであれば特に限定されないが、水と、色材とを含有するインクが好ましい。
【0065】
ここで、色材には、染料の他に、親水基を含む顔料分散剤と併用されこれによりインク中に分散することができる疎水性顔料だけでなく、後述する自己分散型顔料も含まれる。また、溶媒としては水以外にも公知の水溶性の有機溶媒を用いることができ、界面活性剤等、必要に応じて各種添加剤等を更に含有することができる。
【0066】
本発明の記録用紙に対して、インクジェット方式により印字する場合、ノズルから吐出されるインクドロップ量は、1〜20plの範囲であることが好ましく、3〜18plの範囲であることがさらに好ましい。
【0067】
本発明におけるインクジェット記録方法は、公知のインクジェット装置であれば、いずれのインクジェット記録方式を用いたものであっても良好な印字品質を得ることができる。さらに、印字中または印字の前後に記録用紙等の加熱手段を設け、記録用紙及びインクを50℃から200℃の温度で加熱し、インクの吸収及び定着を促進する機能を持った方式に対しても、本発明におけるインクジェット記録方法を適用することができる。
【0068】
ノズルからインクを吐出する方式は、まず、ノズル内に備えられたヒータに通電加熱することによってノズル内のインクを発泡させ、その圧力によってインクを吐出する、いわゆるサーマルインクジェット方式がある。また、圧電素子に通電することにより該素子を物理的に変形させて、その変形によって生ずる力を利用してノズルからインクを吐出する方式もある。この方式では、圧電素子にピエゾ素子を使用したものが代表的である。本発明のインクジェット記録方法において用いられるインクジェット記録装置においては、ノズルからインクを吐出する方式は前記いずれの方式であってもよく、またこれらの方式に限定されるものではない。
【実施例】
【0069】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
<実施例1>
広葉樹クラフトパルプを酸素漂白工程、アルカリ抽出工程、気相二酸化塩素処理工程からなるECF多段漂白法にて漂白処理した。得られたパルプを濾水度450mlになるよう叩解調整し、前記パルプ100質量部に対して、ベントナイト填料を10質量部、軽質炭酸カルシウム填料を10質量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.1質量部配合して抄紙した。
さらに表面サイズ剤として水88質量部、塩化ナトリウム6質量部、市販コーンスターチをα−アミラーゼで処理した酵素変性澱粉を6質量部からなる塗工液を調製してサイズプレスを行い、表面に塩化ナトリウム1.0g/m2、酵素変性澱粉が1.0g/m2塗工された、坪量64g/m2の記録用紙を得た。
【0071】
<実施例2>
広葉樹クラフトパルプをキシラナーゼ処理工程、アルカリ抽出工程、過酸化水素処理工程、オゾン処理工程からなるTCF多段漂白法にて漂白処理した。得られたパルプを濾水度450mlになるように叩解調整し、前記パルプ100質量部に対して、カオリン填料を3質量部、軽質炭酸カルシウム填料を6質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.2質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水80質量部、乾式酸化澱粉(王子コーンスターチ(株)製)を8質量部、炭酸水素カルシウム12質量部からなる塗工液を調製してサイズプレスを行い、表面に乾式酸化澱粉が1.0g/m2、炭酸水素カルシウム1.5g/m2塗工された坪量68g/m2の記録用紙を得た。
【0072】
<実施例3>
針葉樹機械パルプをハイドロサルファイトで漂白処理し、濾水度が450mlになるように叩解調整し、前記パルプ100質量部に対して、軽質炭酸カルシウム填料を8質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.02質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水75質量部、市販馬鈴薯澱粉をα-アミラーゼで処理した酵素変性澱粉を10質量部、水酸化マグネシウム15質量部、からなる塗工液を調製してサイズプレスを行い、表面に酵素変性澱粉が1.5g/m2、水酸化マグネシウムが2.0g/m2塗工された坪量82g/m2の記録用紙を得た。
【0073】
<実施例4>
広葉樹クラフトパルプを実施例1と同様にECF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対して軽質炭酸カルシウム填料を15質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.1質量部配合して抄紙した。更に表面サイズ剤として水90質量部、実施例2に使用したものと同じ乾式酸化澱粉を5質量部、水酸化カルシウム5質量部からなる塗工液を調製してサイズプレスを行い、表面に乾式酸化澱粉が0.6g/m2、水酸化カルシウム0.6g/m2塗工された坪量55g/m2の記録用紙を得た。
【0074】
<実施例5>
実施例4と同様にして抄紙を行い、表面サイズ剤として水60質量部、実施例2に使用したものと同じ乾式酸化澱粉を30質量部、乳酸カルシウム10質量部からなる塗工液を調製してサイズプレスを行い、表面に乾式酸化澱粉が4.5g/m2、乳酸カルシウム1.5g/m2塗工された坪量55g/m2の記録用紙を得た。
【0075】
<実施例6>
実施例4と同様にして抄紙を行い、表面サイズ剤として水75質量部、実施例1に使用したものと同じ酵素変性澱粉を10質量部、市販コーンスターチ水分散液に対して次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加して、pH10で2時間反応させた酸化澱粉を5質量部、実施例5に使用したものと同じ乳酸カルシウム10質量部からなる塗工液を調製してサイズプレスを行い、表面に酵素変性澱粉が1.5g/m2、酸化澱粉が0.8g/m2、乳酸カルシウム1.5g/m2塗工された坪量55g/m2の記録用紙を得た。
【0076】
<比較例1>
広葉樹クラフトパルプを実施例2と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対して、軽質炭酸カルシウム填料を3質量部、サポナイト填料を3質量部、中性ロジンサイズ剤を2質量部配合して抄紙した。さらに表面サイズ剤として水65質量部、市販コーンスターチ水分散液に対して次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加して、pH8で3時間反応させた酸化澱粉を15質量部、実施例4に使用した水酸化カルシウム20質量部からなる塗工液を調製してサイズプレスを行い、表面に酸化澱粉が2.0g/m2、水酸化カルシウム2.5g/m2塗工された坪量100g/m2の記録用紙を得た。
【0077】
<比較例2>
広葉樹サルファイトパルプを実施例2と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対して軽質炭酸カルシウム填料を15質量部、アルケニル無水コハク酸(ASA)内添サイズ剤を0.1質量部配合して抄紙した。更に表面サイズ剤として水80質量部、塩化ナトリウム10質量部、水酸化カルシウム10質量部からなる塗工液を調製してサイズプレスを行い、塩化ナトリウム2.0g/m2、水酸化カルシウム2.0g/m2塗工された坪量64g/m2の記録用紙を得た。
【0078】
<比較例3>
針葉樹クラフトパルプを実施例2と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対してカオリン填料を20質量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.05質量部配合して抄紙した。更に表面サイズ剤として水92質量部、比較例1で作成した酸化澱粉5質量部、チオシアン酸カルシウム3質量部からなる塗工液を調製してサイズプレスを行い、表面にチオシアン酸カルシウムが0.05g/m2、酸化澱粉が0.07g/m2塗工された坪量64g/m2の記録用紙を得た。
【0079】
<比較例4>
広葉樹サルファイトパルプを実施例2と同様にTCF漂白を行い、叩解調整を行った後、前記パルプ100質量部に対してカオリン填料を20質量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.05質量部配合して抄紙した。更に表面サイズ剤として水40質量部、実施例1で製造した酵素変性澱粉 30質量部、チオシアン酸カルシウム30質量部からなる塗工液を調製してサイズプレスを行い、表面に酵素変性澱粉が5.0g/m2、チオシアン酸カルシウムが5.0g/m2塗工された坪量68g/m2の記録用紙を得た。
【0080】
<比較例5>
実施例4と同様にして抄紙を行い、表面サイズ剤として水77質量部、実施例1に使用したものと同じ酵素変性澱粉を15質量部、市販の酸化澱粉(エースC:王子コーンスターチ(株)製)を5質量部、硫酸ナトリウム3質量部からなる塗工液を調製してサイズプレスを行い、表面に前記酵素変性澱粉が2.0g/m2、酸化澱粉が0.7g/m2、硫酸ナトリウムが0.06g/m2塗工された坪量70g/m2の記録用紙を得た。
【0081】
−記録用紙の物性の測定−
得られた記録用紙の物性は、以下の条件で測定した。ステキヒトサイズ度はJIS−P−8122:1976に準拠し標準環境(温度23℃、相対湿度50%RH)で測定した。また、表面および体積電気抵抗率はJIS−K−6911に準拠し標準環境で測定した。
平滑度は、王研式デジタル表示型透気度平滑度測定器EY型(旭精工(株)製)を用いて、JIS−P−8119:1998に準拠して測定した。地合い指数は、M/K Systems,Inc.(MKS社)製の3Dシートアナライザー(M/K950)を使い、そのアナライザーの絞りを直径1.5mmとし、マイクロフォーメーションテスター(MFT)を用いて測定した。
【0082】
−熱水抽出物の特性の測定−
それぞれの記録用紙0.06m2について、純水を溶媒とし100℃で8時間ソックスレー抽出した。その後乾燥・固化して、固形分の重量及び、カルボキシル基含有量、IR吸収スペクトルを確認した。カルボキシル基含有量の測定について以下に説明する。
【0083】
カルボキシル基含有量の測定は、Matisson & Legendreの方法による直接滴定法を参考にして行った。
詳細には、まず、熱水抽出で得られた固形分0.15gを精秤して、0.1N塩酸を加えて30分間攪拌する。その後、ガラスフィルターを用いて純水で、洗液から塩素イオンが検出されなくなるまでろ過・洗浄する。この時、塩素イオンの検出は硝酸銀溶液を洗液に滴下して白色沈殿が発生するかどうかで確認する。その後、ビーカーに移し300mlの純水に分散して、加熱・溶解させる。その後、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム溶液で滴定を行った。カルボキシル基含有量は次の式で算出した。
カルボキシル基量(meq/100g)= 水酸化ナトリウム溶液の滴定値(ml)×0.0.01(水酸化ナトリウムの規定度:mol/l)×100/0.15
【0084】
以上の物性値の測定結果を、記録用紙の作製に用いた処理液の組成成分と共に表1及び表2に示す。
【0085】
電子写真記録装置として、富士ゼロックス(株)製のDocuCentreColor400CPを使用して、印刷後カール、転写性の評価を下記の基準で行なった。その結果を表2に示す。
【0086】
−印刷後カール評価−
23℃65%RH環境下に8時間以上調湿した、実施例及び比較例の記録紙を用いて、画像濃度5%の文書を黒単色で印字する。この時、それぞれの記録紙各10枚を連続で印字する。印字後速やかに平らな測定台に載せ、測定台から記録紙の一番下までの距離を測定する。この時4隅を測定し、最も距離の大きい場所について以下の判定基準で評価し、○を許容範囲とした。用紙の大きさはA4サイズである。
○:25mm以下
△:26mm〜35mm
×:36mm以上
【0087】
−転写性評価−
画像濃度評価で印字した画像について、転写不良による画像斑の発生レベルを確認した。判定基準は以下の通りとし、◎を許容範囲とした。
◎:画像の濃度斑が全く判別できない。
△:画像の斑がわずかながら肉眼で確認できる。
×:画像全体が斑だらけである。
【0088】
次に、インクジェット記録装置として、富士ゼロックス(株)製のWorkCentreB900を使用して、画像濃度の評価を下記の基準で行った。その結果を表2に示す。また、印字は、23℃、50%RHの環境において行った。また、ノズルピッチは800dpi、256ノズル、ドロップ量約15pl、最大インク/前処理液打ち込み量約15ml/m2、印字モードは片側一括印字にて、ヘッドスキャンスピード約1100mm/秒として実施した。尚、このインクジェット記録装置においては、黒インクは顔料インク、カラーインクは染料インクが用いられている。以下、各種評価について説明する。
【0089】
−画像光学濃度−
印字一日後の黒、及びマゼンタのソリッドパッチ部の画像光学濃度を、エックスライト369(エックスライト社製)を用いて測定し平均値を計算した。判定基準は以下の通りとし、◎、〇を許容範囲とした。
◎:1.5以上
〇:1.0以上1.5未満
×:1.0未満
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
表1及び表2に示すように、本発明の記録用紙を用いて電子写真にて印字した場合には、熱定着後カールの発生が小さく、転写不良の発生無く、一方でインクジェット記録方式にて印字した場合には高い発色性を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ繊維と填料とを主成分として含む原紙を有する記録用紙において、
表面に少なくとも澱粉を含有する処理液を塗布してなり、記録用紙0.06m2を熱水抽出したときの抽出成分の固形分量が0.01乃至0.4gであり、該固形分中のカルボキシル基含有量が0乃至5meq/100gである特徴とする記録用紙。
【請求項2】
該処理液中に二価以上の金属塩を含有し、23℃50%RHでの表面電気抵抗率と体積電気抵抗率の比率が0.1乃至1であり、且つその環境での表面電気抵抗率が1.0×109乃至1.0×1011Ω、体積電気抵抗率が5.0×109乃至5.0×1011Ω・cmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の記録用紙。
【請求項3】
該澱粉が、0乃至5meq/100gのカルボキシル基をもつことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録用紙。
【請求項4】
静電潜像担持体表面を均一に帯電する帯電工程と、該静電潜像担持体表面を露光し静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像担持体表面に形成された静電潜像を静電荷像現像剤を用いて現像し、トナー画像を形成する現像工程と、前記トナー画像を記録用紙上に転写する転写工程と、前記記録用紙上に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を含む電子写真記録方式の画像記録方法において、前記記録用紙が請求項1乃至請求項3のいずれかに1項の記載の記録用紙であることを特徴とする画像記録方法。
【請求項5】
水及び/又は水溶性の有機溶媒と、色材とを含有するインクの液滴を、記録用紙の表面へ付与することにより画像を形成するインクジェット方式の画像記録方法において、
前記記録用紙が請求項1乃至請求項3のいずれかに1項の記載の記録用紙であることを特徴とする画像記録方法。

【公開番号】特開2006−77357(P2006−77357A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262303(P2004−262303)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】