説明

記録装置、記録物の製造方法

【課題】被記録材にバンド記録によって下地形成を行うに際して、バンドの境界部におけるインク層の厚みのばらつきを低減する、またバンド境界部を跨いで配置される画像の記録品質を向上させる。
【解決手段】被記録材の搬送方向に並ぶノズル列5からUVインクを吐出する記録ヘッド15と、記録ヘッド15を搭載して往復移動するキャリッジと、記録ヘッド15から吐出されたUVインクを硬化する紫外線照射部と、各ノズル7から吐出されるインク滴の量と各LED41から照射される紫外線照射量と被記録材の送り量とを制御する制御部21とを備え、制御部21は、被記録材をバンド送り量Dずつ間欠的に搬送することとバンド記録とを実行し、搬送方向に隣接するバンド47の境界部49がオーバーラップするバンド記録を実行する第1のバンド送り記録モードと、オーバーラップさせないバンド記録を実行する第2のバンド送り記録モードを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材の被記録面に対して記録ヘッドのノズル列長に対応したバンド送りとバンド記録が実行可能な記録装置及び該記録装置を用いた記録物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から被記録材の被記録面に対して記録ヘッドのノズル列長に対応したバンド送りを実行し、前記ノズル列長分の記録、すなわちバンド記録を一挙に実行するようにしたバンド送り記録に対応した記録装置が下記の特許文献1に示すように提供されている。
前記バンド送り記録は、記録速度が速くなることから、ポスターや壁紙等、広い記録面積を短時間で記録することが求められている高速記録に対応した大型インクジェットプリンター等で多く採用されている。
【0003】
従来のバンド送り記録は、下記の特許文献1に示すように被記録材を搬送方向にバンド送りするバンド送り量が記録ヘッドのノズル列長と同じ長さに設定されており、最初のバンド送り記録によって被記録面に吐出されたインクと次のバンド送り記録によって被記録面に吐出されたインクの境界ではインクの重複した吐出は実行されない構造である。
また、速乾性の顔料インクやUVインクの登場によって同一の被記録面に対して異なる2種類のインク、例えば下地用インクと画像形成用インクを使用して2種類のインク層を連続的に積層状態で形成することができる記録装置も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−118097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述した記録ヘッドのノズル列長と同じ長さのバンド送り量の場合には、バンドの境界部でのインク層の厚みにばらつきが生じ易いという問題があった。これは、バンド端部に吐出されたインク層の厚みがバンド中間部に噴射されたインク層の厚みよりも小さくなることに起因している。そして、この傾向は硬化前後でインクの厚みの変化が少なく、吐出されたインク層の厚みのまま硬化インク層が形成されるUVインク使用時に顕著に現れる。
そして、前記問題は透明なフィルム系の被記録材に対して下地用インクと画像形成用インクを別々に噴射して2層のインク層を形成する場合には、前記バンド境界部での下地用インクの厚さのばらつきに起因して画像品質低下を招くことになる。
【0006】
また、前記透明なフィルム系の被記録材に対して下地用インクと画像形成用インクを使用してラベル記録をバンド送り記録によって実行する場合に、該ラベル記録を行う個々の画像が隣接するバンド境界部を跨いで位置していたり、記録ヘッドのノズル列長を超えるサイズの画像である場合には、前記バンド境界部でのインク厚のばらつきの影響等を受ける問題がある。
【0007】
本発明の目的は、被記録材にバンド記録によって下地形成を行うに際して、バンドの境界部におけるインク層の厚みのばらつきを低減すること、また、バンド境界部を跨いで配置される画像の記録品質を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る記録装置は、被記録材を間欠的に搬送可能である搬送装置と、前記被記録材の搬送方向に並ぶノズル列の各ノズルからUVインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドを搭載して前記搬送方向と交差する方向に往復移動するキャリッジと、前記記録ヘッドの移動方向側の側傍に並設されて前記キャリッジに搭載され、前記記録ヘッドから吐出されたUVインクに紫外線を照射して硬化するLED配列により構成された紫外線照射部と、前記ノズル列の各ノズルから吐出されるインク滴の量と前記紫外線照射部の各LEDから照射される紫外線照射量と被記録材の送り量とを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記被記録材をバンド送り量ずつ間欠的に搬送することと前記ノズル列のノズルからのインク吐出によるバンド記録を実行し、搬送方向に隣接するバンドの境界部がオーバーラップする第1バンド送り量にてバンド記録を実行する第1のバンド送り記録モードと、搬送方向に隣接する前記バンドの境界部をオーバーラップさせない第2バンド送り量にてバンド記録を実行する第2のバンド送り記録モードと、を選択して実行可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
ここで本明細書中において「バンド」とは、被記録材の搬送方向に沿って並ぶノズル列のノズル列長に対応した幅を前記搬送方向に持った記録実行領域或いは記録実行されたものを意味する。
また、「バンド送り量」とは、前記バンドごとの記録を実行するにあたって被記録材を実際に搬送する送り量を意味し、「バンド記録」とは、前記バンド送り量に基づいて被記録材を間欠的に送って、前記バンドの範囲を記録ヘッドの一回の移動で一挙に記録することを意味する。
【0010】
本態様によれば、第1のバンド送り記録モードを選択した場合には、バンド端部でのインク層の厚みの減少をバンド境界部をオーバーラップさせることで当該端部のインク層の厚みを大きくすることが可能である。従って、被記録材にバンド記録によって下地形成を行うに際して、バンドの境界部におけるインク層の厚みのばらつきを低減することができる。これにより、バンド境界部における記録品質の低下を防止することができる。
一方、第2のバンド送り記録モードを選択した場合には、バンド境界部をオーバーラップさせない分、長い第2バンド送り量に基づいたバンド記録が実行されるから、記録速度を優先するユーザーの要求に対応することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る記録装置において、前記記録ヘッドは、前記交差方向に並んで設けられる第1の記録ヘッドと第2の記録ヘッドを備え、前記第1の記録ヘッドのノズル列から下地用UVインクが吐出され、前記第2の記録ヘッドのノズル列から画像形成用UVインクが吐出される構成であり、前記紫外線照射部は、前記第1の記録ヘッドの側傍に並設される第1照射部と前記第2記録ヘッドの側傍に並設される第2照射部とを備え、前記第1照射部は前記吐出される下地用UVインクを硬化させ、前記第2照射部は前記吐出される画像形成用UVインクを硬化させる構成であることを特徴とするものである 。
【0012】
ここで、「画像形成用UVインク」における「画像」とは、本明細書においては、絵、文字を含む記録情報と言った広い意味で使われている。
【0013】
本態様によれば、厚みばらつきの低減された下地インク層に対して画像インク層を形成できるので、バンド境界部における画像品質の低下を防止することができる。
また、本態様によれば、記録ヘッドの往路側ないし復路側への一回の移動で被記録材の被記録面に直接下地のインク層が形成され、記録ヘッドの復路側ないし往路側への一回の移動で前記画像のインク層が形成される。従って、記録ヘッドの一回の往復移動によって、2層のインク層を連続的に一挙に設けることができる。
【0014】
本発明の第3の態様は、前記第1の態様に係る記録装置において、前記第1のバンド送り記録モードは、前記オーバーラップするバンドの境界部に対応する前記ノズルから吐出されるインク滴の量が、前記境界部の間の位置に対応する前記ノズルから吐出されるインク滴の量よりも少なくすることが可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
本態様によれば、オーバーラップするバンドの境界部において、1回目のバンド送り記録実行時と、2回目のバンド送り記録実行時とで二度打ちされるインク滴の総量が過剰になるのを防止することができる。従って、前記バンド境界部でのインク厚の増加に起因するインク厚のばら付きを防止して、バンド幅全体に亘って均一な厚さのインク層を形成することが可能になる。
【0016】
本発明の第4の態様は、前記第1の態様から第3の態様のいずれか1つの態様に係る記録装置において、前記第2のバンド送り記録モードは、バンド境界部に位置する画像を所定量、搬送方向又は戻し方向にずらして記録するずらし記録モードを選択して実行できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
本態様によれば、隣接する2つのバンドの境界部に画像が位置している場合でも当該画像をバンドの境界部に架けることなく、記録することが可能になる。これに伴ないバンド境界部で生ずるインク厚のばらつきに起因する画質の低下が防止される。従って、バンド送り記録の高速化を維持しつつ画像記録品質の向上を図ることができる。
【0018】
本発明の第5の態様は、前記第1の態様から第4の態様のいずれか1つの態様に係る記録装置において、前記第2のバンド送り記録モードは、隣接する二つのバンドを跨ぐ画像があった場合に、当該画像を所定の回転角度を回転させていずれか1つのバンド幅内に納める画像回転記録モードを選択して実行できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、隣接する2つのバンドを跨ぐような大きなサイズの画像があった場合でも、当該画像をバンドの境界部に架けることなく、記録することが可能になる。これに伴ないバンド境界部で生ずるインク厚のばらつきに起因する画質の低下が防止される。従って、バンド送り記録の高速化を維持しつつ画像記録品質の向上を図ることができる。
【0020】
本発明の第6の態様は、前記第1の態様から第5の態様のいずれか1つの態様に係る記録装置において、前記第1のバンド送り記録モードと第2のバンド送り記録モードは、予め決められた記録範囲に画像を再配列して記録する再配列記録モードを選択して実行できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
本態様によれば、ラベル記録用の記録データー作成の際に、従来行われていた決められた記録範囲に画像を効率良く並べてできるだけ多くの画像を記録できるようにする再配列作業を記録装置自体の機能によって自動的に実行できるようになる。従って、ユーザーは記録に使用する画像単体のデータのみを用意すればよく、ラベル記録が容易に短時間で実行できるようになる。
【0022】
本発明の第7の態様は、前記第1の態様から第6の態様のいずれか1つの態様に係る記録装置において、前記制御部は、前記第1のバンド送り記録モードと第2のバンド送り記録モードに加えて、前記バンド送り量よりも小さい送り量で搬送しながら記録するシリアル記録モードを含めた3種類の記録モードを選択して実行できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0023】
本態様によれば、バンド境界部でのインク厚のばらつきに起因する問題を防止したバンド記録を実行したい場合には、第1のバンド送り記録モードを選択し、前記バンド境界部でのインク厚のばらつきに起因する問題を気にしないで一層の高速記録を実行したい場合には、第2のバンド送り記録モードを選択し、記録速度よりも高画質での記録を実行したい場合には、更にシリアル記録モードを選択できるから、よりユーザーの目的にあった記録形態を採用することが可能になる。
【0024】
本発明の第8の態様は、前記第7の態様に係る記録装置において、前記制御部は、下地用UVインクを使用して行う下地記録時に前記第1のバンド送り記録モードと前記第2のバンド送り記録モードを選択して実行でき、画像形成用UVインクを使用して行う画像記録時に前記シリアル記録モードを選択して実行できるように構成されていることを特徴とするものである。
【0025】
本態様によれば、高画質での記録が不要な下地記録時には、高速記録が可能なバンド送り記録を実行し、高画質での記録が求められる画像記録時には高精度記録が可能なシリアル記録を実行できるので、下地と画像がそれぞれ有する個別の目的に合った効率的な記録が可能になる。
【0026】
本発明の第9の態様は、UVインクを用いて行う記録物の製造方法であって、前記第1の態様から第8の態様のいずれか一つに係る記録装置によって記録することを特徴とするものである。
本態様によれば、前記第1の態様から第8の態様のいずれか一つに係る記録装置によって得られる前記効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1に係る記録装置の内部構造の概略を示す下地記録実行時の縦断正面図。
【図2】本発明の実施例1に係る記録装置の内部構造の概略を示す1回目のバンドの下地記録の様子を示す平面図。
【図3】本発明の実施例1に係る記録装置の内部構造の概略を示す画像記録実行時の縦断正面図。
【図4】本発明の実施例1に係る記録装置の内部構造の概略を示す2回目のバンドの画像記録の様子を示す平面図。
【図5】本発明の実施例1に係る記録装置により第1のバンド送り記録モードに基づいてバンド記録する場合の記録ヘッドのノズル配列とUV光照射装置のLED配列を模式的に示す平面図。
【図6】本発明の実施例1に係る記録装置により第2のバンド送り記録モードに基づいてバンド送り記録する場合の記録ヘッドのノズル配列とUV光照射装置のLED配列を模式的に示す平面図。
【図7】本発明の実施例1に係る記録装置により第2のバンド送り記録モードでずらし記録モードを選択した場合のずらし前の画像の位置(A)とずらし後の画像の位置(B)を示す平面図。
【図8】本発明の実施例1に係る記録装置により第2のバンド送り記録モードで画像回転記録モードを選択した場合の回転前の画像(A)と回転後の画像(B)を示す平面図。
【図9】本発明の実施例1に係る記録装置により再配列記録モードを選択した場合の再配列前の画像の配置(A)と再配列後の画像の配置(B)を示す平面図。
【図10】本発明の実施例1に係る記録装置によりバンド記録を実行する場合の記録物の製造の流れを段階的に示す模式図。
【図11】本発明の実施例1に係る記録装置により第1のバンド送り記録モードを選択して記録を実行する場合の記録物の製造の流れを示すフローチャート。
【図12】本発明の実施例1に係る記録装置により第2のバンド送り記録モードを選択して記録を実行する場合の記録物の製造の流れを示すフローチャート。
【図13】本発明の実施例2に係る記録装置の内部構造の概略を示す画像記録実行時の縦断正面図。
【図14】本発明の実施例2に係る記録装置によりバンド送り記録とシリアル記録を併用して記録を実行する場合の記録物の製造の流れを段階的に示す模式図。
【図15】本発明の実施例2に係る記録装置により第1のバンド送り記録モードに基づくバンド送り記録とシリアル記録を併用して記録を実行する場合の記録物の製造の流れを示すフローチャート。
【図16】本発明の実施例3に係る記録装置の内部構造の概略を示す画像記録実行時の縦断正面図。
【図17】本発明の実施例3に係る記録装置によりバンド送り記録とシリアル記録を併用して記録を実行する場合の記録物の製造の流れを段階的に示す模式図。
【図18】本発明の実施例3に係る記録装置により第1のバンド送り記録モードに基づくバンド送り記録とシリアル記録を併用して記録を実行する場合の記録物の製造の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1から図12に示す実施例1と、図13から図15に示す実施例2と、図16〜図18に示す実施例3とを例にとって、本発明の記録装置1の構成と、該記録装置1を使用することによって実行される本発明の記録物の製造方法について具体的に説明する。
尚、以下の説明では、最初に図1から図4に基づいて本発明の記録装置1の基本的構成について説明し、次いで本発明の特徴的構成について前述した実施例1から実施例3の三つの実施例を例にとって順番に説明して行く。
【0029】
図示の記録装置1は、バンド送り記録が可能なインクジェットプリンター1(「記録装置」と同じ符号を使用する)である。
このインクジェットプリンター1は、被記録材(以下、「用紙」ともいう)Pを搬送方向Aに所定のバンド送り量Dずつ間欠的に搬送し得る搬送装置3と、前記被記録材Pの搬送方向Aに並ぶノズル列5の各ノズル7からUVインクCを吐出する記録ヘッド15と、前記記録ヘッド15を搭載して前記搬送方向Aと交差する方向Bに往復移動するキャリッジ17と、前記記録ヘッド15の移動方向B側の側傍に並設されて前記キャリッジ17に搭載され、前記記録ヘッド15から吐出されたUVインクCに紫外線Eを照射して硬化するLED配列55により構成された紫外線照射部19と、前記ノズル列5の各ノズル7から吐出されるインク滴の量と前記紫外線照射部19の各LED41から照射される紫外線照射量と被記録材Pの送り量とを制御する制御部21と、を備えている。
そして、前記制御部21は、前記被記録材Pをバンド送り量Dずつ間欠的に搬送することと前記ノズル列5のノズル7からのインク吐出によるバンド47の記録を実行し、搬送方向Aに隣接するバンド47の境界部49がオーバーラップする第1バンド送り量D1にてバンド記録を実行する第1のバンド送り記録モードと、搬送方向Aに隣接する前記バンド47の境界部49をオーバーラップさせない第2バンド送り量D2にてバンド記録を実行する第2のバンド送り記録モードと、を選択して実行可能に構成されている。
【0030】
図2、図4に示すように、搬送装置3は、搬送方向Aにおける記録実行領域23の上流位置に設けられる一対のニップローラーによって構成されている搬送用ローラー25と、前記記録実行領域23の下流位置に設けられる同じく一対のニップローラーによって構成されている排出用ローラー27と、を備えることによって一例として構成されている。
そして、前記搬送用ローラー25と排出用ローラー27を駆動するモーター29には、制御部21から前記バンド送り量Dの搬送を指令するバンド送り信号31が送信されて、用紙Pが前記バンド送り量Dずつ間欠的に送られるように構成されている。
【0031】
記録ヘッド15は、下地用インクC1を吐出する第1の記録ヘッド15Aと、画像形成用インクC2を吐出する第2の記録ヘッド15Bの二つが設けられており、一例として図1から図4中の左方に第1の記録ヘッド15Aが配設されていて、図1から図4中の右方に第2の記録ヘッド15Bが配設されている。
尚、このうち第1の記録ヘッド15Aには、例えばホワイト(W)、ゴールド(G)、シルバー(S)等の下地用インクC1を噴射するノズル列5Wが設けられている。また、第2の記録ヘッド15Bには、一例としてシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色の画像形成用インクC2を個別に噴射する4つのノズル列5C、5M、5Y、5Kが移動方向Bに所定の間隔を隔てて並設されている。
【0032】
そして、これらの各ノズル列5W、5C、5M、5Y、5Kには、制御部21からノズル7の位置に対応したインク吐出量を指令するインク吐出信号33が送信されてインク吐出量の調整が行えるようになっている。
また、図示のインクジェットプリンター1では、前記ノズル列5W、5C、5M、5Y、5Kの各ノズル7から吐出されるインクCがUV光(紫外線)Eの照射を受けて硬化する「UVインク」によって構成されている。
【0033】
「UVインク」は、UV光(紫外線)Eを照射することによって硬化、定着する速硬性に優れたインクで、ヒーター加熱によって溶媒を蒸発させることによって乾燥、定着する従来の顔料インクに比べて硬化後の体積収縮率が格段に小さいという特長を有している。
また、「UVインク」は、溶解成分を含んでいないため環境に優しく、UV光(紫外線)Eを照射することによって瞬時に硬化するためインク吸収性の低いフィルム系の被記録材Pに好適なインクである。
【0034】
キャリッジ17は、移動方向Bに延びるキャリッジガイド軸37に沿って該移動方向Bに往復移動する前記記録ヘッド15の往復搬送装置である。
キャリッジ17を往復移動するための動力は、正逆転可能で単位ステップ毎の精密な送り制御が可能な図示しないモーターから受けており、該モーターの回転が図示しない歯付きベルトを介してキャリッジ17に伝達されるようになっている。
【0035】
紫外線照射部19は、前記下地用インクC1を硬化させる前記第1の記録ヘッド15Aの図1〜図4中、一例として左側傍に配置されている第1照射部19Aと、前記画像形成用インクC2を硬化させる前記第2の記録ヘッド15Bの図1から図4中、一例として右側傍に配置されている第2照射部19Bの2種類が設けられている。
そして、図示のインクジェットプリンター1では、前記二つの第1照射部19A、第2照射部19Bが用紙Pの被記録面9に吐出された前記インク(UVインク)Cに所定の照射量のUV光(紫外線)Eを照射することで硬化・定着させるUV光照射装置39A、39Bによって構成されている。
【0036】
また、前記2基のUV光照射装置39A、39Bには、前記二つの記録ヘッド15A、15Bにおけるノズル列5W、ノズル列5C、5M、5Y、5Kのノズル7の配列に対応した配列の複数のLED41が設けられている。図においては、LED41の配置とノズル7の配置が同じように描かれているが、これは図の複雑化を避けるためで、実際は一つのLEDがノズル7の一連の30個から50個に紫外線を照射する位置関係で設けられている。
そして、これらの各LED41には、制御部21からLED41の位置に対応したUV光(紫外線)Eの照射量を指令するインク吐出信号35が送信されてUV光(紫外線)Eの照射量の調整が図られている。
【0037】
また、図示の制御部21Aには、ユーザーの手入力による指令に基づいて後述する第1のバンド送り記録モード61と、第2のバンド送り記録モード62の切り換え、前記第2のバンド送り記録モード62を実行する場合に選択できるずらし記録モード63のON、OFFの切り換えと画像回転記録モード64のON、OFFの切り換え、そして、前記第1のバンド送り記録モード61と第2のバンド送り記録モード62の実行時に選択できる再配列記録モード65のON、OFFの切り換えを実行することができる選択切換え処理部43Aが設けられている。
尚、該選択切換え処理部43にはユーザーが選択した選択信号45が受信されるように構成されている。
【0038】
[実施例1](図1〜図12参照)
そして、本実施例に係るインクジェットプリンター1Aでは、前記制御部21Aにおいて、搬送方向Aに隣接するバンド47の境界部49がオーバーラップする第1バンド送り量D1を使用してバンド記録を実行する第1のバンド送り記録モード61と、搬送方向Aに隣接するバンド47の境界部49がオーバーラップしない第2バンド送り量D2を使用してバンド送り記録を実行する第2のバンド送り記録モード62と、を選択して実行できるように構成されている。
【0039】
このうち、第1のバンド送り記録モード61では、図5に示すように最初に記録を実行した1回目のバンド47Aの後端が、次に記録を実行する2回目のバンド47Bのバンド送り記録を開始する際に2回目のバンド47Bの前端位置と一致する第1バンド送り量D1を使用して隣接する2つのバンド47A、47Bの境界部49をオーバーラップさせている。
本実施例では、バンド送り量D1は、ノズル列5の両端の各ノズル7a,7nの中心を結んだ直線の長さが用いられている。
【0040】
従って、前記1回目のバンド47Aの後端は1回目のバンド47Aの記録時にUVインクC1が打たれ、前記2回目のバンド47Bの記録時に2回目のバンド47Bの前端としてUVインクC1が再度打たれて二度打ちされることになる。
尚、図5では、本来記録ヘッド15は搬送方向Aに移動しないが、説明を解り易くするために、先に実行した1回目のバンド47Aの記録時におけるノズル7の配列とLED41の配列を前記バンド送り量D1移動した位置に残像として併せて図示している。
【0041】
また、本実施例では、記録ヘッド15の復路側Rへの1回の走査で前記下地用UVインクC1の吐出と硬化を連続的に実行し、前記記録ヘッド15の往路側Fへの一回の走査で前記画像形成用UVインクC2の吐出と硬化を連続的に実行するように構成されている。
具体的には、図1に示すように、キャリッジ17の復路側Rへの移動時に第1の記録ヘッド15Aから下地用インクC1が噴射され、これを追いかける第1のUV光照射装置39AからUV光(紫外線)Eが照射されて前記下地用インクC1を硬化させて用紙Pの被記録面9上に第1のインク層51Aとなる下地11を形成する。
【0042】
また、図3に示すように、キャリッジ17の往路側Fへの移動時に第2の記録ヘッド15Bから画像形成用インクC2が噴射され、これを追いかける第2のUV光照射装置39BからUV光(紫外線)Eが照射されて前記画像形成用インクC2を硬化させて前記第1のインク層51Aの下地11の上に第2のインク層51Bとなる画像13を形成する。
【0043】
また、第1のバンド送り記録モード61では、前記オーバーラップする1回目のバンド47Aと2回目のバンド47Bの境界部49に噴射されるインク滴Cの量が、1回目のバンド47Aあるいは2回目のバンド47Bの中間部53に噴射されるインク滴Cの量よりも少なく設定されている。
具体的には、インクCの吐出量が一例としてL、Mの2段階に分けられており、MがLの2分の1の大きさに一例として設定されている。
【0044】
そして、図5では第1の記録ヘッド15Aのノズル列5Wの最前列に位置するノズル7aと最後列に位置するノズル7nからの下地用インクC1の吐出量をMに設定し、該ノズル列5Wの中間部53に位置しているノズル7b、7c、・・・、7n−1からの下地用インクC1の吐出量をLに設定している。
従って、下地用インクC1が二度打ちされる1回目のバンド47Aと2回目のバンド47Bの境界部49での下地用インクC1の和は、M+M=Lとなって、1回目のバンド47Aないし2回目のバンド47Bの中間部53の下地用インクC1の吐出量Lと同じになる。
【0045】
一方、第2の記録ヘッド15Bでは、各ノズル列5C、5M、5Y、5Kの最前列に位置するノズル7aからの吐出される画像形成用インクC2の吐出量を0に設定することで、用紙Pが第1バンド送り量D1に送られた時、1回目のバンド47Aと2回目のバンド47Bの境界部49で画像形成用インクC2は二度打ちされない構成をとっている。
従って、第2の記録ヘッド15Bの各ノズル列5C、5M、5Y、5Kの残りのすべてのノズル7b、7c、・・・、7n−1、7nの画像形成用インクC2の吐出量は、すべてLに設定されている。
【0046】
また、第1のバンド送り記録モード61では、前記オーバーラップする1回目のバンド47Aと2回目のバンド47Bの境界部49に照射されるUV光(紫外線)Eの照射量が、1回目のバンド47Aあるいは2回目のバンド47Bの中間部57に照射されるUV光(紫外線)Eの照射量よりも少なくなるように設定されている。
具体的には、UV光(紫外線)Eの照射量が前記インクCの吐出量と同じL、Mの2段階に一例として分けられており、図5では第1のUV光照射装置39AのLED列55Wの最前列に位置するLED41aと最後列に位置するLED41nから照射されるUV光(紫外線)Eの照射量をMに設定することで、用紙Pが第1バンド送り量D1送られた時、1回目のバンド47Aと2回目のバンド47Bの境界部49でUV光(紫外線)Eの照射量の和は、M+M=Lとなって、第1のバンド47Aないし第2のバンド47Bの中間部57のUV光(紫外線)Eの照射量Lと同じになる。
第2のUV光照射装置39BのLED列55CのすべてのLED41a、41b、41c、・・・、41n−1、41nのUV光(紫外線)Eの照射量はすべてLに設定されている。そして、第2のバンド47Bの記録時には、最前列に位置するLED41aの照射量を0にすることで、用紙Pが第1バンド送り量D1送られたとき、1回目のバンド47Aと2回目のバンド47Bの境界部でUV光が二度照射されないようになっている。
【0047】
また、第2のバンド送り記録モード62では、図6に示すように隣接する2つのバンド47A、47Bの境界部49がオーバーラップしない前記第1バンド送り量D1より大きな第2バンド送り量D2を使用している。
従って、前記第1のバンド送り記録モード61においてバンド47の境界部49で待っていたインクCの二度打ちは行われない。
尚、図6では、本来記録ヘッド15は搬送方向Aに移動しないが、先に実行した1回目のバンド47Aの記録時におけるノズル7の配列とLED41の配列を前記第2バンド送り量D2移動した位置に残像として併せて図示している。
【0048】
また、第2のバンド送り記録モード62では、2つのバンド47A、47Bの境界部49に噴射されるインク滴Cの量がこれらのバンド47A、47Bの中間部53に噴射されるインク滴Cの量と同量に設定されている。
従って、図6に示すように第1の記録ヘッド15A及び第2の記録ヘッド15Bのすべてのノズル7から吐出される下地用インクC1ないし画像形成用インクC2の吐出量はすべてLに設定されている。
【0049】
同様に、第2のバンド送り記録モード62では、2つのバンド47A、47Bの境界部49に照射されるUV光(紫外線)Eの照射量が、1回目のバンド47Aあるいは2回目のバンド47Bの中間部57に照射されるUV光(紫外線)Eの照射量と同量に設定されている。
従って、図6に示すように第1のUV光照射装置39A及び第2のUV光照射装置39BのすべてのLED41から照射されるUV光(紫外線)Eの照射量はすべてLに設定されている。
【0050】
また、第2のバンド送り記録モード62では、バンド47の境界部49に位置する画像13を所定のずらし量O、搬送方向A又は該搬送方向Aと反対の戻し方向にずらして記録するずらし記録モード63を選択して実行できるように構成されている。
即ち、図7(A)に示すようにそのまま記録するとバンド47の境界部49に記録されてしまう画像13があった場合に、ずらし記録モード63を選択しておけば、図7(B)に示すように所定のずらし量Oだけ搬送方向A又は戻し方向にずれた位置に前記画像13が記録されるようになり、図7(A)の位置で記録される場合に比べて画像13の画質が向上する。
【0051】
また、第2のバンド送り記録モード62では、隣接する2つのバンド47A、47Bを跨ぐ画像13があった場合に、当該画像13を所定の回転角度θ回転させて、いずれか1つのバンド47A、47Bの幅内に納める画像回転記録モード64を選択して実行できるよう構成されている。
即ち、図8(A)に示すように、そのまま記録すると隣接する2つのバンド47A、47Bを跨いでしまうような画像13があった場合に、画像回転記録モード64を選択しておけば、図8(B)に示すように所定の回転角度θ、画像13が自動的に回転していずれか1つのバンド47Aあるいは47Bの幅内に納まった状態で記録されるようになり、図8(A)の回転前の状態で記録される場合に比べて画像13の画質が向上する。
【0052】
更に、前記第1のバンド送り記録モード61と第2のバンド送り記録モード62において選択できるモードとして再配列記録モード65が設けられている。
再配列記録モード65は、予め決められた記録範囲Yの中に画像13を効率良く並べてできるだけ多くの画像13を記録できるようにするモードである。
具体的には、ラベル記録等に利用でき、図9(A)に示すようにそのまま記録すると空間Sが多過ぎて画像13を多く記録できない場合に、そのレイアウトを調整して図9(B)に示すように画像13を移動させたり、回転させることで空間Sを狭めて多くの画像13を記録できるようにする。
【0053】
次に、このような構成の実施例1に係るインクジェットプリンター1Aを使用することによって実行される本発明の記録物の製造方法について説明する。
即ち、当該記録物の製造方法は、第1のバンド送り記録モード61が選択された時に実行される第1バンド送り記録工程と、第2のバンド送り記録モード62が選択された時に実行される第2バンド送り記録工程と、を備えている。そして、これらの工程のそれぞれで下地用インクC1と画像形成用インクC2の2種類のインクCをそれぞれ使用して、前記第1バンド送り量D1ないし前記第2バンド送り量D2ずつ用紙Pを送って記録を実行する。本実施例では、記録ヘッド15の復路側Rへの一回の走査で、前記下地用インクC1の吐出と硬化を連続的に実行し、記録ヘッド15の往路側Fへの一回の走査で、画像形成用インクC2の吐出と硬化を連続的に実行するように構成されている。
【0054】
以下、図10に示す模式図と、図11、図12に示すフローチャートに基づいて当該記録物の製造方法を適用した場合における記録物Qの製造の流れについて、(1)第1のバンド送り記録モードを選択した場合と、(2)第2のバンド送り記録モードを選択した場合と、に分けて具体的に説明する。
(1)第1のバンド送り記録モードを選択した場合(図10、図11参照)
ユーザーが第1のバンド送り記録モード61を選択して記録開始の指令を出した場合には、図11中のステップS1で第1バンド送り量D1で用紙Pを1回目のバンド47Aの記録が可能な位置に搬送する。
【0055】
次に、図11中のステップS2で再配列記録モード(自動レイアウトモード)65を選択したかどうかの判断が行われ、再配列記録モード65が選択された場合には、図11中のステップS3に移行して画像13の再配列(レイアウト)を自動調整して、1回目のバンド47Aのバンド送り記録を実行する。
一方、図11中のステップS2で再配列記録モード65を選択しなかった場合には、図11中のステップS4に移行してそのままの画像13のレイアウトで1回目のバンド47Aのバンド送り記録を実行する。
【0056】
また、図11中のステップS3で一回目のバンド47Aのバンド送り記録が実行された用紙Pは、図11中のステップS5に移行して第1バンド送り量D1で用紙Pを搬送し、更に図11中のステップS6に移行して前記レイアウト調整された画像13の2回目のバンド47Bでのバンド送り記録を実行する。
また、図11中のステップS6で2回目のバンド47Bのバンド送り記録が実行された用紙Pは、図11中のステップS7において記録する残りの下地11または画像13があるかどうかの判断が行われ、記録する残りの下地11または画像13がある場合には、図11中の前記ステップS5に戻って第1バンド送り量D1で用紙Pを送って、再度図11中のステップS6のバンド送り記録を実行する。一方、図11中のステップS7で記録する残りの下地11または画像13がないと判断された時は、記録が終了し、製造された記録物Qが本実施例に係るインクジェットプリンター1Aから出力される。
【0057】
一方、図11中のステップS4でそのままの画像13のレイアウトで1回目のバンド47Aのバンド送り記録が実行された用紙Pは、図11中のステップS8に移行して第1バンド送り量D1で用紙Pを搬送し、更に図11中のステップS9に移行してそのままの画像13のレイアウトで2回目のバンド47Bでのバンド送り記録を実行する。
また、図11中のステップS9で2回目のバンド47Bのバンド送り記録が実行された用紙Pは、図11中のステップS10において、記録する残りの下地11または画像13があるかどうかの判断が行われ、記録する残りの下地11または画像13がある場合には、図11中の前記ステップS8に戻って第1バンド送り量D1で用紙Pを送って、再度図11中のステップS9のバンド送り記録を実行する。一方、図11中のステップS10で記録する残りの下地11または画像13がないと判断された時は、記録が終了し、製造された記録物Qが本実施例に係るインクジェットプリンター1Aから出力される。
【0058】
(2)第2のバンド送り記録モードを選択した場合(図10、図12参照)
ユーザーが第2のバンド送り記録モード62を選択して記録開始の指令を出した場合には、図12中のステップS1で第2バンド送り量D2で用紙Pを1回目のバンド47Aの記録を行う位置に搬送する。
次に、図12中のステップS2で再配列記録モード65を選択したかどうかの判断が行われ、再配列記録モード65が選択された場合には、図12中のステップS3に移行してずらし記録モード63を選択したかどうかの判断が行われる。
【0059】
図12中のステップS3でずらし記録モード63が選択された場合には、図12中のステップS4に移行して画像回転記録モード64を選択したかどうかの判断が行われ、画像回転記録モード64が選択された場合には、図12中のステップS5で再配列記録モード65、ずらし記録モード63、画像回転記録モード64のすべてを実行して1回目のバンド47Aのバンド送り記録を実行する。
前記図12中のステップS5で1回目のバンド47Aのバンド送り記録が実行された用紙Pは、図12中のステップS6で第2バンド送り量D2搬送され、図12中のステップS7で前記3つのモード65、63、64のすべてを実行して2回目のバンド47Bのバンド送り記録を実行する。
【0060】
また、前記図12中のステップS7で2回目のバンド47Bのバンド送り記録が実行された用紙Pは、図12中のステップS8に移行して、記録する残りの下地11または画像13があるかどうかの判断が行われ、記録する残りの下地11または画像13がある場合には、図12中の前記ステップS6に戻って第2バンド送り量D2で用紙Pを送って、再度図12中のステップS7のバンド送り記録を実行する。一方、図12中のステップS8で記録する残りの下地11または画像13がないと判断された時は、記録が終了し、製造された記録物Qが本実施例に係るインクジェットプリンター1Aから出力される。
【0061】
また、前記図12中のステップS2で再配列記録モード65を選択しないと判断された時の動作の流れと、前記図12中のステップS3でずらし記録モード63を選択しないと判断された時の動作の流れと、前記図12中のステップS4で画像回転記録モードを選択しないと判断された時の動作の流れについては詳細を省略するが、図12中のステップS9〜S40に示す通りであり、前記3つのモード65、63、64のいずれか1つ、または2つの組み合わせ、あるいはこれら3つのモード65、63、64を使用しないで第2バンド送り量D2に基づいたバンド送り記録を実行して所望の記録物Qが本実施例に係るインクジェットプリンター1Aから出力されることになる。
【0062】
そして、このようにして構成される本実施例に係る記録装置1Aと、該記録装置1Aを使用することによって実行される記録物の製造方法によれば、図10に示すようにバンド47ごとに下地11と画像13の記録を所定の記録範囲Yに達するまで繰り返すことによって記録物Qが製造される。そして、第1のバンド送り記録モード61を選択した場合には、バンド47の端部でのインクCの厚みの減少をバンド47の境界部49をオーバーラップさせることでバンド47の境界部49でのインクCの厚みのばらつきを防止して均一な厚さのインク層51を形成し、当該インク層51の品質低下を防止するという作用、効果が得られる。
一方、第2のバンド送り記録モード62を選択した場合には、バンド47の境界部49をオーバーラップさせない分、長い第2バンド送り量D2に基づいたバンド送り記録が実行されるから、記録速度の向上を図ることができるという作用、効果が得られる。
【0063】
〔実施例2〕(図13〜図15参照)
実施例2に係るインクジェットプリンター1Bは、実施例1に係るインクジェットプリンター1Aと同様の第1のバンド送り記録モード61と第2のバンド送り記録モード62に加えて、用紙Pを所定の搬送速度で連続的に搬送しながら高画質のシリアル記録を実行するシリアル記録モード67を含めた3種類の記録モード61、62、67を選択して実行できるように構成されている。
【0064】
そして、本実施例の制御部21Bでは、下地用インクC1を使用して行う下地記録時に前記第1のバンド送り記録モード61と前記第2のバンド送り記録モード62を選択できるようにし、画像形成用インクC2を使用して行う画像記録時に前記シリアル記録モード67を選択して実行できるように構成されている。
従って、本実施例の制御部21Bに設けられている選択切換え処理部43Bでは、ユーザーの手入力による指令に基づいて前記第1のバンド送り記録モード61と第2のバンド送り記録モード62とシリアル記録モード67の切り換え、前記シリアル記録モード67の実行時に選択できる再配列記録モード65のON、OFFの切り換えが実行できるように構成されている。
【0065】
次に、このような構成の実施例2に係るインクジェットプリンター1Bを使用することによって実行される記録物の製造方法について説明する。
即ち、当該記録物の製造方法は、第1のバンド送り記録モード61が選択された時に実行される第1バンド送り記録工程と、第2のバンド送り記録モード62が選択された時に実行される第2バンド送り記録工程と、シリアル記録モード67が選択された時に実行されるシリアル記録工程と、を備えており、最初に前記第1バンド送り工程ないし前記第2バンド送り記録工程を実行して記録範囲Y全体の下地記録を行い、該下地記録終了後に前記シリアル記録工程を実行して当該記録範囲Y全体の画像記録を行うように構成されている。
【0066】
以下、図14中に示す模式図と、図15に示すフローチャートに基づいて当該記録物の製造方法を適用した場合における記録物Qの製造の流れについて、第1のバンド送り記録モード61を選択した場合を例にとって説明する。
尚、第2のバンド送り記録モード62を選択した場合には、バンド送り量Dとして第2バンド送り量D2が採用されるだけで、基本的な動作の流れは、以下詳述する第1のバンド送り記録モード61を選択した場合と同様である。
【0067】
ユーザーが第1のバンド送り記録モード61を選択して記録開始の指令を出した場合には、図15中のステップS1で第1バンド送り量D1で用紙Pを1回目のバンド47Aの記録を行う位置に搬送する。
次に、図15中のステップS2で1回目のバンド47Aの下地記録が実行される。更に図15中のステップS3に移行して第1バンド送り量D1で用紙Pを2回目のバンド47Bの記録を行う位置に搬送する。
【0068】
そして、図15中のステップS4で2回目のバンド47Bの下地記録が実行される。また、2回目のバンド47Bの下地記録実行後、図15中のステップS5に移行して記録する残りの下地11があるかどうかの判断が行われ、記録する残りの下地11がある場合には、前記図15中のステップS3に戻って、第1バンド送り量D1で用紙Pを送り、図15中のステップS4で再度、下地記録が行われる。一方、前記図15中のステップS5で記録する下地11がないと判断された場合には図15中のステップS6に移行して用紙Pをシリアル記録の記録開始位置に戻す。
【0069】
続いて、図15中のステップS7に移行して、再配列記録モード65を選択したかどうかの判断が行われ、再配列記録モード65が選択された場合には、図15中のステップS8に移行して画像13のレイアウトを自動調整してシリアル記録による画像記録が実行されて記録終了後、製造された記録物Qが本実施例に係るインクジェットプリンター1Bから出力される。
一方、図15中のステップS7で再配列記録モード65を選択しなかった場合には、図15中のステップS9に移行してそのままの画像13のレイアウトでシリアル記録による画像記録が実行されて記録終了後、製造された記録物Qが本実施例に係るインクジェットプリンター1Bから出力される。
【0070】
そして、このようにして構成される本実施例に係る記録装置1Bと、該記録装置1Bを使用することによって実行される記録物の製造方法によっても、前記実施例1と同様の作用、効果が発揮される。更に本実施例にあっては、画質がそれほど問題にならない下地記録については高速記録が可能なバンド記録を適用し、高画質の記録が求められる画像記録については高精度記録が可能なシリアル記録を適用するという下地11と画像13のそれぞれの目的にあった効率的な工程の組み合わせが得られる。
【0071】
[実施例3](図16〜図18参照)
実施例3に係るインクジェットプリンター1Cは、実施例2に係るインクジェットプリンター1Bと同様の構成を有しており、該インクジェットプリンター1Cを使用することによって実行される記録物の製造方法の構成が前記実施例2と幾分相違している。
従って、ここでは、実施例2と構成を異にする当該記録物の製造方法を中心に説明する。
【0072】
即ち、当該記録物の製造方法は、第1のバンド送り記録モード61が選択された時に実行される第1バンド送り記録工程と、第2のバンド送り記録モード62が選択された時に実行される第2バンド送り記録工程と、シリアル記録モード67が選択された時に実行されるシリアル記録工程とを備えており、最初に前記第1バンド送り記録工程ないし前記第2バンド送り記録工程を実行して複数バンド47分の下地記録を行い、該下地記録終了後に前記シリアル記録工程を実行して当該複数バンド47分の画像記録を行って、当該複数バンド分の1回目の下地11と画像13の記録を完了させ、以下前記複数バンド47分の下地11と画像13の記録を所定回数繰り返すことによって記録範囲Y全体の下地記録と画像記録を行うように構成されている。
【0073】
以下、図17中に示す模式図と、図18に示すフローチャートに基づいて当該記録物の製造方法を適用した場合における記録物Qの製造の流れについて、第1のバンド送り記録モード61を選択した場合を例にとって説明する。
尚、第2のバンド送り記録モード62を選択した場合には、バンド送り量Dとして第2バンド送り量D2が採用されるだけで、基本的な動作の流れは、以下詳述する第1のバンド送り記録モード61を選択した場合と同様である。
【0074】
ユーザーが第1のバンド送り記録モード61を選択して記録開始の指令を出した場合には、図18中のステップS1で第1バンド送り量D1で用紙Pを1回目のバンド47Aの記録を行う位置に搬送する。
次に、図18中のステップS2で1回目のバンド47Aの下地記録が実行される。更に図18中のステップS3に移行して第1バンド送り量D1で用紙Pを2回目のバンド47Bの記録を行う位置に搬送する。
【0075】
そして、図18中のステップS4で2回目のバンド47Bの下地記録が実行される。また、2回目のバンド47Bの下地記録実行後、図18中のステップS5に移行して、予め設定しておいた所定のバンド47の回数に達したかどうかの判断が行われ、前記回数に満たない場合には、前記図18中のステップS3に戻って第1バンド送り量D1で用紙Pを送り、図18中のステップS4で再度、下地記録が実行される。
また、前記図18中のステップS5で所定のバンド47の回数に達したと判断された場合には、図18中のステップS6に移行して当該用紙Pを当該組(バンド47ごとの下地記録を所定回数繰り返す図18中のステップS1〜S5の動作の集合を意味する)のシリアル記録の記録開始位置に戻す。
【0076】
更に、図18中のステップS7に移行して、再配列記録モード65を選択したかどうかの判断が行われ、再配列記録モード65が選択された場合には、図18中のステップS8に移行して画像13のレイアウトを自動調整してシリアル記録による画像記録が実行される。
次に、図18中のステップS9に移行して記録する残りの下地11または画像13があるかどうかの判断が行われ、記録する残りの下地11または画像13がある場合には、図18中のステップS1に戻って、前記図18中のステップS1〜S8の処理を再度、実行する。一方、図18中のステップS9で記録する残りの下地11及び画像13がないと判断された時は記録を終了し、製造された記録物Qが本実施例に係るインクジェットプリンター1Cから出力される。
【0077】
一方、図18中のステップS7で再配列記録モード65を選択しなかった場合には、図18中のステップS10に移行して、そのままの画像13のレイアウトでシリアル記録による画像記録が実行され、図18中のステップS11に移行して記録する残りの下地11または画像13があるかどうかの判断が行われ、記録する残りの下地11または画像13がある場合には、図18中のステップS1に戻って、図18中のステップS1〜S7及びS10の処理を再度、実行する。一方、図18中のステップS11で記録する残りの下地11及び画像13がないと判断された時には記録を終了し、製造された記録物Qが本実施例に係るインクジェットプリンター1Cから出力される。
【0078】
そして、このようにして構成される本実施例に係る記録装置1Cと、該記録装置1Cを使用することによって実行される記録物の製造方法によっても、前記実施例1と同様の作用、効果が発揮される。更に本実施例にあっては、前記実施例2と同様、下地11と画像13のそれぞれの目的にあった効率的な工程の組み合わせが実行される。そして、複数バンド47単位で高品質の記録物Qが効率良く製造できるようになる。
【0079】
[他の実施例]
本発明に係る記録装置1と、該記録装置1を使用することによって実行される記録物の製造方法は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
例えば、前記実施例1において下地用インクC1についてのみ実施したインクCの二度打ちを画像形成用インクC1についても同様に実施することが可能である。
【0080】
また、前記実施例1〜実施例3では被記録材Pの表面側に下地11、画像13の順で記録する場合を想定した構成になっているが、被記録材Pの裏面側に画像13、該画像13の上に下地11の順で記録することも勿論可能である。この場合には、前記実施例1〜実施例3で述べた下地11と画像13の記録手順が逆になり、当該画像13として表裏反転された画像13が記録されることになる。
【0081】
また、前記実施例2、実施例3の場合には、下地記録と画像記録が別々に実行されるためキャリッジ17の往復走査の両方で下地用インクC1あるいは画像形成用インクC2を噴射させるようにした方が効率的である。しかし、前述した2種類のノズル列5及び2種類のLED55の配列の関係で往路側Fと復路側RでUV光(紫外線)Eの到達距離に差が生じてしまう。従って、前記UV光(紫外線)Eの到達距離の差が生じないようキャリッジ17の往路走査時と復路走査時でUV光(紫外線)Eの照射量を可変することも可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 インクジェットプリンター(記録装置)、3 搬送装置、5 ノズル列、
7 ノズル、9 被記録面、11 下地、13 画像、15 記録ヘッド、
17 キャリッジ、19 紫外線照射部、21 制御部、23 記録実行領域、
25 搬送用ローラー、27 排出用ローラー、29 モーター、
31 バンド送り信号、33 インク吐出信号、35 UV光照射信号、
37 キャリッジガイド軸、39 UV光照射装置、41 LED、
43 選択切換え処理部、45 選択信号、47 バンド、49 境界部、
51 インク層、53 中間部、55 LED列、57 中間部、
61 第1のバンド送り記録モード、62 第2のバンド送り記録モード、
63 ずらし記録モード、64 画像回転記録モード、65 再配列記録モード、
67 シリアル記録モード、P 用紙(被記録材)、A 搬送方向、
B 移動方向(走査方向)、C インク(インク滴)、D バンド送り量、
E UV光(紫外線)、R 復路側、F 往路側、Q 記録物、Y 記録範囲、
O ずらし量、S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材を間欠的に搬送可能である搬送装置と、
前記被記録材の搬送方向に並ぶノズル列の各ノズルからUVインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを搭載して前記搬送方向と交差する方向に往復移動するキャリッジと、
前記記録ヘッドの移動方向側の側傍に並設されて前記キャリッジに搭載され、前記記録ヘッドから吐出されたUVインクに紫外線を照射して硬化するLED配列により構成された紫外線照射部と、
前記ノズル列の各ノズルから吐出されるインク滴の量と前記紫外線照射部の各LEDから照射される紫外線照射量と被記録材の送り量とを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記被記録材をバンド送り量ずつ間欠的に搬送することと前記ノズル列のノズルからのインク吐出によるバンド記録を実行し、搬送方向に隣接するバンドの境界部がオーバーラップする第1バンド送り量にてバンド記録を実行する第1のバンド送り記録モードと、
搬送方向に隣接する前記バンドの境界部をオーバーラップさせない第2バンド送り量にてバンド記録を実行する第2のバンド送り記録モードと、を選択して実行可能に構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載された記録装置において、
前記記録ヘッドは、前記交差方向に並んで設けられる第1の記録ヘッドと第2の記録ヘッドを備え、前記第1の記録ヘッドのノズル列から下地用UVインクが吐出され、前記第2の記録ヘッドのノズル列から画像形成用UVインクが吐出される構成であり、
前記紫外線照射部は、前記第1の記録ヘッドの側傍に並設される第1照射部と前記第2記録ヘッドの側傍に並設される第2照射部とを備え、前記第1照射部は前記吐出される下地用UVインクを硬化させ、前記第2照射部は前記吐出される画像形成用UVインクを硬化させる構成であることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された記録装置において、
前記第1のバンド送り記録モードは、前記オーバーラップするバンドの境界部に対応する前記ノズルから吐出されるインク滴の量が、前記境界部の間の位置に対応する前記ノズルから吐出されるインク滴の量よりも少なくすることが可能に構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載された記録装置において、
前記第2のバンド送り記録モードは、バンド境界部に位置する画像を所定量、搬送方向又は戻し方向にずらして記録するずらし記録モードを選択して実行できるように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された記録装置において、
前記第2のバンド送り記録モードは、隣接する二つのバンドを跨ぐ画像があった場合に、当該画像を所定の回転角度を回転させていずれか1つのバンド幅内に納める画像回転記録モードを選択して実行できるように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載された記録装置において、
前記第1のバンド送り記録モードと第2のバンド送り記録モードは、予め決められた記録範囲に画像を再配列して記録する再配列記録モードを選択して実行できるように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載された記録装置において、
前記制御部は、前記第1のバンド送り記録モードと第2のバンド送り記録モードに加えて、前記バンド送り量よりも小さい送り量で搬送しながら記録するシリアル記録モードを含めた3種類の記録モードを選択して実行できるように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項7に記載された記録装置において、
前記制御部は、下地用UVインクを使用して行う下地記録時に前記第1のバンド送り記録モードと前記第2のバンド送り記録モードを選択して実行でき、
画像形成用UVインクを使用して行う画像記録時に前記シリアル記録モードを選択して実行できるように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項9】
UVインクを用いて行う記録物の製造方法であって、請求項1から8のいずれか1項に記載された記録装置によって記録することを特徴とする記録物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−116120(P2012−116120A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268551(P2010−268551)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】