説明

記録装置、記録装置の制御方法、及び、プログラム

【課題】正常な記録に係る動作の実行を妨げるような異常が発生している場合に、できるだけそのことを検出できるようにする。
【解決手段】プリンター10の制御コマンド実行部15aは、制御コマンドが、異常の有無の検出用の特定の制御コマンドであるか否か判別し、特定の制御コマンドである場合、プリントエンジン16の動作を伴わない態様で、特定の制御コマンドに基づいて処理を実行すると共に、処理の実行の過程で、異常が発生したか否かを監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録する記録装置、当該記録装置の制御方法、及び、当該記録装置を制御するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録装置(プリンター)と、制御装置(ホストコンピューター)とが通信して、記録媒体に記録を行うシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種のシステムでは、制御装置が記録装置に対して異常が発生しているか否かを検出するための応答要求コマンドを出力し、当該応答要求コマンドが入力された記録装置が、各種センサーの検出値に基づいて異常の有無を検出し、異常の有無を示す情報を含む応答コマンドを制御装置に出力するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−27040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したシステムでは、記録装置が、制御装置の制御の下、実際に、記録に係る動作を行ったときに、当該動作を正常に実行できないような異常が発生しているような場合に、そのことを検出できないという問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、正常な記録に係る動作の実行を妨げるような異常が発生している場合に、できるだけそのことを検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、制御装置と接続可能であり、プリントエンジンを有し記録媒体に記録する記録装置であって、前記制御装置から受信した記録に係る動作を実行させる制御コマンドに基づいて、前記プリントエンジンに対し記録に係る各種処理を実行して記録媒体に記録する制御コマンド実行部を備え、前記制御コマンド実行部は、前記制御コマンドが、記録に係る異常の有無の検出用の特定の制御コマンドであるか否か判別し、前記特定の制御コマンドである場合、前記プリントエンジンの動作を伴わない態様で、前記特定の制御コマンドに基づいて擬似的な処理を実行すると共に、前記擬似的な処理の実行の過程で、異常が発生したか否かを監視することを特徴とする。
この構成によれば、特定の制御コマンドを実行する場合は、プリントエンジンの動作を伴わない態様で、当該特定の制御コマンドに基づいて処理を実行すると共に、処理の実行の過程で、異常が発生したか否かを監視するため、実際に制御コマンドに基づいて記録に係る動作を実行した場合に近い動作を実行させた上で、異常の有無を検出することとなり、正常な記録に係る動作の実行を妨げるような異常が発生している場合に、できるだけそのことを検出可能となる。
【0006】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記特定の制御コマンドを生成する特定制御コマンド生成部をさらに備え、前記制御コマンド実行部は、前記制御装置から受信した制御コマンドに替え、前記特定制御コマンド生成部が生成した前記特定の制御コマンドに基づいて前記擬似的な処理を実行することを特徴とする。
この構成によれば、特定の制御コマンドを、他の装置から通信を介して取得することがなくなり、通信に係る異常等と切り分けて、記録装置に発生している異常を検出することが可能となる。
【0007】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記制御コマンド実行部は、前記異常を検知した場合、前記制御装置に通知することを特徴とする。
この構成によれば、制御装置が、記録装置に異常が発生していることを迅速に検出できることとなり、これに伴って、制御装置のオペレーター等が、記録装置に異常が発生していることを迅速に検出でき、早い段階で適切な対処をとることが可能となる。
【0008】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記記録媒体に記録する画像に係る画像データを記憶するバッファーを備え、前記制御コマンド実行部は、少なくとも、前記制御コマンドに基づく前記記録媒体に記録する画像に係る画像データが前記バッファーに正常に展開できたか否かを監視することを特徴とする。
ここで、バッファーに画像データが正常に展開できないことは、正常な記録に係る動作の実行を妨げる要因となる。
これを踏まえ、上記構成によれば、プリントエンジンの動作を伴わず、特定の制御コマンドに基づいて処理を実行する過程で、バッファーに画像データが正常に展開できるか否かを監視するため、正常な記録に係る動作の実行を妨げるような異常が発生している場合に、できるだけそのことを検出可能となる。
【0009】
また、上記発明の記録装置であって、本発明は、前記制御コマンド実行部は、少なくとも、前記特定の制御コマンドに基づいて前記擬似的な処理を実行するために、読み出して実行するプログラムに係る変数が、正しい状態であるか否かを監視することを特徴とする。
ここで、制御コマンドの実行にあたり、プログラムに係る変数が正しい状態となっていないことは、正常な記録に係る動作の実行を妨げる要因となる。
これを踏まえ、上記構成によれば、プリントエンジンの動作を伴うことなく、特定の制御コマンドに基づいて処理を実行する過程で、プログラムに係る変数が正しい状態であるか否かを監視するため、正常な記録に係る動作の実行を妨げるような異常が発生している場合に、できるだけそのことを検出可能となる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明は、制御装置と接続可能であり、プリントエンジンを有し記録媒体に記録する記録装置の制御方法であって、前記制御装置から受信した記録に係る異常の有無の検出用の特定の制御コマンドに基づいて、前記プリントエンジンに対し前記プリントエンジンの動作を伴わない態様で、当該コマンドに係る擬似的な処理を実行し、前記擬似的な処理の実行の過程で、異常が発生したか否かを監視することを特徴とする。
この制御方法によれば、特定の制御コマンドを実行する場合は、プリントエンジンの動作を伴わない態様で、当該特定の制御コマンドに基づいて処理を実行すると共に、処理の実行の過程で、異常が発生したか否かを監視するため、実際に制御コマンドに基づいて記録に係る動作を実行した場合に近い動作を実行させた上で、異常の有無を検出することとなり、正常な記録に係る動作の実行を妨げるような異常が発生している場合に、できるだけそのことを検出可能となる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、制御装置と接続可能であり、プリントエンジンを有し記録媒体に記録する記録装置を制御する制御部により実行されるプログラムであって、前記制御部を、前記制御装置から受信した記録に係る動作を実行させる制御コマンドに基づいて、前記プリントエンジンに対し記録に係る各種処理を実行して記録媒体に記録すると共に、前記制御コマンドが、記録に係る異常の有無の検出用の特定の制御コマンドであるか否か判別し、前記特定の制御コマンドである場合、前記プリントエンジンの動作を伴わない態様で、前記特定の制御コマンドに基づいて擬似的な処理を実行すると共に、前記擬似的な処理の実行の過程で、異常が発生したか否かを監視する制御コマンド実行部として機能させることを特徴とする。
このプログラムを実行すれば、特定の制御コマンドを実行する場合は、プリントエンジンの動作を伴わない態様で、当該特定の制御コマンドに基づいて処理を実行すると共に、処理の実行の過程で、異常が発生したか否かを監視するため、実際に制御コマンドに基づいて記録に係る動作を実行した場合に近い動作を実行させた上で、異常の有無を検出することとなり、正常な記録に係る動作の実行を妨げるような異常が発生している場合に、できるだけそのことを検出可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、正常な記録に係る動作の実行を妨げるような異常が発生している場合に、できるだけそのことを検出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る記録システムの機能的構成を示すブロック図である。
【図2】プリンターの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る記録システム1の機能的構成を示すブロック図である。
図1に示すように、記録システム1は、プリンター10(記録装置)と、ホストコンピューター11(制御装置)とを備え、これら装置が、イーサネット(登録商標)等の規格に準拠して通信可能に接続されている。記録システム1では、ホストコンピューター11の制御の下、プリンター10により記録媒体への記録が実行される。
【0015】
プリンター10は、ローラー状のプラテンにより記録媒体を搬送し、この記録媒体の記録面に、発熱素子を備えたサーマルヘッドによって熱を与えて画像を記録するサーマルヘッド式プリンターであり、図1に示すように、制御部15と、プリントエンジン16と、ネットワーク通信部17と、記憶部18と、表示部19と、RAM20と、を備えている。
制御部15は、プリンター10の各部を中枢的に制御するものであり、演算実行部としてのCPUや、その他の周辺回路等を備えている。この制御部15は、制御コマンド実行部15a、を備えているが、これについては後述する。
プリントエンジン16は、制御部15の制御の下、上述したサーマルヘッドのほか、記録媒体を搬送するプラテンローラーを駆動するための搬送モーター等の各種モーターを動作させて、記録媒体に所定の画像を記録する。
ネットワーク通信部17は、プリンター10に実装されたインターフェイスボードや、プリンター10に設けられた拡張スロットに接続されたネットワークカードにより構成され、ホストコンピューター11との間で所定の規格に準拠した通信を行うものであり、所定の通信規格に準拠して信号処理を行うネットワークコントローラー17aと、通信のインターフェイスとして機能する通信インターフェイス17b(通信I/F)と、を備えている。ネットワークコントローラー17aは、特定制御コマンド生成部23を備えているが、これについては後述する。
記憶部18は、EEPROMやハードディスク等の不揮発性メモリーを備え、制御部15により実行されるプログラム(例えば、プリンター10の基本的な動作を制御するためのファームウェア)のほか、各種データを書き換え可能に、不揮発的に記憶する。
表示部19は、液晶表示パネル等の表示パネルを備え、制御部15の制御の下、表示パネルに各種情報を表示する。
RAM20は、制御部15のCPUに実行されるプログラムや、このプログラムに係るデータ等を一時的に記憶する。制御部15によるプログラムの実行にあたり、プログラムに定義された変数に格納される値を示すデータは、このRAM20に形成されたワークエリア21の所定の領域に格納される。RAM20には、ラインバッファー22(所定のバッファー)が形成されているが、これについては、後述する。
【0016】
一方、ホストコンピューター11は、図1に示すように、ホスト側制御部25と、入力部26と、ホスト側表示部27と、ホスト側記憶部28と、通信インターフェイス29と、を備えている。
ホスト側制御部25は、ホストコンピューター11の各部を中枢的に制御するものであり、上述した制御部15と同様、CPUや、その他の周辺回路等を備えている。
入力部26は、各種入力デバイスに接続され、入力デバイスに対する操作を検出し、ホスト側制御部25に出力する。
ホスト側表示部27は、液晶表示パネル等の表示パネルを備え、ホスト側制御部25の制御の下、各種情報を表示する。
ホスト側記憶部28は、EEPROMや、ハードディスク等の不揮発性メモリーを備え、各種情報を書き換え可能に、不揮発的に記憶する。
通信インターフェイス29(I/F)は、ホスト側制御部25の制御の下、プリンター10との間で、通信規格に準拠した通信を行う。
【0017】
次いで、プリンター10と、ホストコンピューター11とが協働して、記録媒体に記録を行う際の動作について簡単に説明する。
ホストコンピューター11には、プリンター10を制御するためのプログラムであるプリンタードライバーがインストールされている。
プリンター10により、記録媒体に画像を記録する場合、まず、ホストコンピューター11のホスト側制御部25は、プリンタードライバーを読み出して、実行することにより、プリンター10を制御するための制御コマンドを生成し、プリンター10に出力する。制御コマンドは、プリンター10に記録に係る一連の動作を実行させるコマンド群であり、記録させるべき画像に係る画像データのほか、記録媒体を搬送方向に搬送させるコマンドや、サーマルヘッドを駆動させるコマンド等の各種コマンドを含んでいる。
プリンター10のネットワーク通信部17のネットワークコントローラー17aは、制御コマンドを受信すると、自身が備える受信バッファー(不図示)に、制御コマンドを一時的に格納する。
プリンター10の制御部15は、受信バッファーに格納された制御コマンドを、順次、読み出して実行することにより、プリントエンジン16を制御して、記録媒体への画像の記録を実行する。
サーマルヘッドの駆動に係る部分について詳述すると、プリンター10の制御部15は、制御コマンドに含まれる画像データに基づいて、RAM20のラインバッファー22に駆動データを展開する。
上述したサーマルヘッドには、所定の解像度に準拠して複数の発熱素子が並んで配列されている。そして、駆動データとは、記録媒体の記録面に記録すべき画像に応じて、発熱素子によって形成される「行」ごとに、発熱素子のそれぞれの駆動を制御するための画素データである。
ラインバッファー22への駆動データの展開後、プリントエンジン16に実装された駆動回路(不図示)が、ラインバッファー22に展開された駆動データに基づいて、タイミング調整用の信号と同期をとりつつ、行ごとに、発熱素子のそれぞれに駆動信号を出力することによりこれら発熱素子を駆動する。
【0018】
ところで、プリンター10は、各種異常に起因して、記録媒体への記録を正常に行えない状態に至ってしまう場合がある。このような正常な記録に係る動作の実行を妨げるような異常が発生していることを、より早く検出できれば、より早く異常を解消できることとなり、また、異常が発生している状況下で、記録媒体への記録が実行されることを予防することができる。
これを踏まえ、本実施形態に係るプリンター10は、以下の動作を実行する。
【0019】
図2は、本実施形態に係るプリンター10の動作を示すフローチャートであり、(A)は、ネットワーク通信部17のネットワークコントローラー17aの動作を示し、(B)は、制御部15の動作を示している。
以下の説明において、特定制御コマンド生成部23、及び、制御コマンド実行部15aの機能は、CPUがプログラムを読み出して実行する等、ハードウェアと、ソフトウェアとの協働により実現される。
図2(A)に示すように、ネットワークコントローラー17aは、プリンター10に異常が発生しているか否かの確認を行うタイミングに至ったか否かを監視する(ステップSA1)。本実施形態では、プリンター10による記録媒体への記録が終了してから所定時間経過した場合に、プリンター10に異常が発生しているか異なかの確認を行う構成となっており、ステップSA1では、ネットワークコントローラー17aは、記録媒体への記録が終了してから所定時間経過したか否かを監視する。なお、プリンター10に異常が発生しているか否かの確認は、プリンター10による記録に係る動作を妨げない態様で定期的に行うようにしてもよく、また、ユーザーの指示に応じて行うようにしてもよい。
【0020】
プリンター10に異常が発生しているか否かの確認を行うタイミングが到来した場合(ステップSA1:YES)、ネットワークコントローラー17aの特定制御コマンド生成部23は、異常の有無の検出用の特定の制御コマンド(以下、単に「特定制御コマンド」という。)を生成し、受信バッファーに書き込んでいく。
この特定制御コマンドは、制御コマンドと同様、記録媒体への記録に係る一連の動作を実行するためのコマンド群(画像データを含む)である。そして、本実施形態では、制御コマンドは、付加情報を格納可能なヘッダーを有するデータ構造となっており、特定制御コマンドの場合は、各コマンドのヘッダーに、当該コマンドが、特定制御コマンドである旨の情報が付加される。なお、各コマンドに、制御コマンドであるか、特定制御コマンドであるかを識別するためのフラグを設け、当該フラグの状態により、各コマンドが制御コマンドであるか、特定制御コマンドであるかを識別可能とする構成としてもよい。
図2(B)に示すように、受信バッファーに特定制御コマンドが書き込まれると、制御部15の制御コマンド実行部15aは、受信バッファーの特定制御コマンドを、順次、読み出していき(ステップSB1)、読み出したコマンドが、特定制御コマンドであるか否かを判別する(ステップSB2)。
読み出したコマンドが、特定制御コマンドではない場合(ステップSB2:NO)、すなわち、読み出したコマンドが、通常の制御コマンドである場合、制御コマンド実行部15aは、読み出した制御コマンドに基づいて、通常動作を実行する(ステップSB3)。ステップSB3の動作については、省略する。
読み出したコマンドが、特定制御コマンドの場合(ステップSB2:YES)、制御コマンド実行部15aは、通常の記録動作とは異なる特別な処理を実行する(ステップSB4)。以下、ステップSB4における制御コマンド実行部15aの動作について詳述する。
【0021】
ステップSB4において、制御コマンド実行部15aは、プリントエンジン16が備える記録に係る機構の物理的な動作を伴わない態様で、読み出した特定制御コマンドに基づいて各種処理を実行する。具体的には、ファームウェア等のプログラムの機能により、特定制御コマンドを、ソフトウェア的に処理し、プログラムに定義された変数の値のセットや、ラインバッファー22への駆動データの展開等を実行する一方、サーマルヘッドへの駆動信号の出力を停止してサーマルヘッドの駆動を実行せず、また、プラテンローラーを駆動するための搬送モーター等の各種モーターへの駆動信号、駆動電流の出力を停止して、各種モーターの駆動を実行しない。つまり、単純化して言えば、制御コマンド実行部15aは、通常の制御コマンドを実行した場合と比較して、記録に係る機構の物理的な動作のみを行わない態様で、記録に係る動作を実行する。
【0022】
そして、制御コマンド実行部15aは、特定制御コマンドに基づく一連の動作を実行している間、プリンター10に所定の異常が発生したか否かを監視する。
具体的には、制御コマンド実行部15aは、特定制御コマンドに含まれる画像データに基づいて、当該画像データに対応する駆動データを、ラインバッファー22に展開する際に、当該展開に係る動作が正常に実行できるか否かを判別し、正常に実行できなかった場合、プリンター10に異常が発生したと判別する。ラインバッファー22に駆動データを正常に展開できない事態が生じる理由としては、例えば、前回、記録に係る動作を実行した際に、ラインバッファー22のクリアーが正常に完了しておらず、これに起因してラインバッファー22に何らかのデータが残存している場合がある。この場合、ラインバッファー22に正常に駆動データを展開できず、文字化け等が発生する要因となり得る。
【0023】
また、制御コマンド実行部15aは、制御コマンド(特定制御コマンド)の処理を司るファームウェア等のプログラムに定義された変数の値が正常であるか否かを判別し、正常でない場合は、プリンター10に異常が発生したと判別する。
例えば、ある変数H1には、印字速度を示す値が格納されるものとする。この場合において、制御コマンド実行部15aは、RAM20のワークエリア21の所定の領域から、当該変数H1に格納されるデータを取得し、当該データの内容の整合性のチェックをする。例えば、制御コマンド実行部15aは、取得したデータのデータ型が、想定されたデータ型(例えば、数値型)であるか否かを判別し、また、想定された範囲内の値となっているか否かを判別する。変数の値が正常ではない場合、正常な動作を妨げる要因となり得る。
【0024】
特定制御コマンドに基づく一連の処理が終了した場合(ステップSB5:YES)、制御コマンド実行部15aは、ステップSB4において、異常が検出されたか否かを判別する(ステップSB6)。
異常が検出されなかった場合(ステップSB6:NO)、制御コマンド実行部15aは、処理を終了する。なお、その際、制御コマンド実行部15aは、表示部19を制御して、表示パネルに異常が検出されなかった旨表示するようにしてもよい。
一方、異常が検出された場合(ステップSB6:YES)、制御コマンド実行部15aは、リセット処理を実行する(ステップSB7)。
リセット処理とは、ソフトウェア的なイニシャル処理や、各種データの初期化処理、ラインバッファー22のクリアー等のリセットに係る各種処理のことである。リセット処理を実行した場合、例えば、ラインバッファー22に残存していたデータがクリアーされ、正常に駆動データを書き込めることになったり、また、変数の値の異常が解消されたりする等、検出された異常の解消につながる可能性がある。
次いで、制御コマンド実行部15aは、表示部19を制御して、表示パネルに、異常が検出された旨表示すると共に、検出された異常の内容、例えば、ラインバッファー22に駆動データが正常に展開できなかったことや、変数の値が正常でないことを表示し、さらに、リセット処理を実行した旨表示する(ステップSB8)。これにより、ユーザーは、表示パネルの表示を確認することにより、迅速に、異常が発生している状況であることを認識でき、この認識に基づいて、原因の究明等の適切な行動を取ることが可能となる。
次いで、制御コマンド実行部15aは、異常が検出された旨、ホストコンピューター11に通知する(ステップSB9)。これにより、ホストコンピューター11が、プリンター10に異常が発生していることを迅速に検出できることとなり、これに伴って、ユーザー(ホストコンピューター11のオペレーター等)が、プリンター10に異常が発生していることを迅速に検出でき、早い段階で適切な対処をとることが可能となる。
【0025】
なお、本実施形態では、特定制御コマンドを、プリンター10自体が生成する構成となっている。これにより、以下のメリットがある。すなわち、プリンター10によって記録に係る動作を正常に実行できない場合としては、ホストコンピューター11とプリンター10との通信系に何らかの異常があり、例えば、ホストコンピューター11からプリンター10に出力される制御コマンドが、途中で破損し、これに起因して、プリンター10が記録に係る動作を正常に実行できない場合がある。この場合、異常を解消するためには、通信に係るインフラの整備、点検等、プリンター10に対する処置とは、別のアプローチにより、異常を解消する必要がある。そして、本実施形態のように、プリンター10自体が、特定制御コマンドを生成する構成とすることにより、通信系の異常と、プリンター10自体に発生している異常とを切り分けて検出することが可能となり、実態に即したより適切な異常の検出を実行できる。
また、本実施形態では、ネットワーク通信部17において、特定制御コマンド生成部23が特定制御コマンドを生成して、受信バッファーに生成した特定制御コマンドを書き込む構成となっている。これにより、実際にホストコンピューター11から制御コマンドが入力され、入力された制御コマンドに基づいて記録に係る動作を行う場合に、より近い状態で、異常の検出を行うこととなり、実際に記録に係る動作を行った場合に発生する異常をより確実に検出可能となる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係るプリンター10の制御コマンド実行部15aは、読み出した制御コマンドが、異常の有無の検出用の特定制御コマンドであるか否か判別し、特定制御コマンドである場合、プリントエンジン16の動作を伴わない態様で、特定制御コマンドに基づいて処理を実行すると共に、処理の実行の過程で、異常が発生したか否かを監視する。
これによれば、特定制御コマンドを実行する場合は、プリントエンジン16の動作を伴わない態様(記録に係る機構の物理的な動作を伴わない態様)で、当該特定制御コマンドに基づいて処理を実行すると共に、処理の実行の過程で、異常が発生したか否かを監視するため、実際に制御コマンドに基づいて記録に係る動作を実行した場合に近い動作を実行させた上で、異常の有無を検出することとなり、正常な記録に係る動作の実行を妨げるような異常が発生している場合に、できるだけそのことを検出可能となる。
【0027】
また、本実施形態に係るプリンター10は、特定制御コマンドを生成する特定制御コマンド生成部23をさらに備え、制御コマンド実行部15aは、特定制御コマンド生成部23が生成した特定制御コマンドに基づいて処理を実行する。
これによれば、特定制御コマンドを、ホストコンピューター11等の他の装置から通信を介して取得することがなくなり、通信に係る異常等と切り分けて、プリンター10に発生している異常を検出することが可能となる。
【0028】
また、本実施形態では、制御コマンド実行部15aは、画像データに係る駆動データがラインバッファー22に正常に展開できたか否かを監視する。
これによれば、プリントエンジン16の動作を伴うことなく(記録に係る機構の物理的な動作を行うことなく)、特定制御コマンドに基づいて処理を実行する過程で、ラインバッファー22に駆動データが正常に展開できるか否かを監視するため、正常な記録に係る動作の実行を妨げるような異常が発生している場合に、できるだけそのことを検出可能となる。
【0029】
また、本実施形態では、制御コマンド実行部15aは、特定制御コマンドに基づいて処理を実行するために、読み出して実行するプログラムに係る変数が、正しい状態であるか否かを監視する。
これによれば、プリントエンジン16の動作を伴うことなく(記録に係る機構の物理的な動作を行うことなく)、特定制御コマンドに基づいて処理を実行する過程で、プログラムに係る変数が正しい状態であるか否かを監視するため、正常な記録に係る動作の実行を妨げるような異常が発生している場合に、できるだけそのことを検出可能となる。
【0030】
また、本実施形態では、制御コマンド実行部15aは、異常を検知した場合、ホストコンピューター11に通知する。
これによれば、ホストコンピューター11が、プリンター10に異常が発生していることを迅速に検出できることとなり、これに伴って、ホストコンピューター11のオペレーター等が、プリンター10に異常が発生していることを迅速に検出でき、早い段階で適切な対処をとることが可能となる。
【0031】
なお、上述した実施形態では、プリンター10が、特定制御コマンド生成部23を備え、プリンター10自体が特定制御コマンドを生成する構成であった。しかしながら、ホストコンピューター11が、特定制御コマンドを生成し、プリンター10に出力する機能を有していてもよい。
この構成によれば、ホストコンピューター11からの要求に基づく適切なタイミングで、ホストコンピューター11から入力された特定制御コマンドを利用して、異常が発生しているか否かを検出することが可能となる。
この場合、特定制御コマンドを実行時における監視の結果(異常の有無)を示す情報を、プリンター10からホストコンピューター11へと出力するようにしてもよい。こうすることにより、ホストコンピューター11側で、プリンター10における異常の発生の有無を適宜管理することが可能となる。
【0032】
また、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。
例えば、特定制御コマンドを実行している間に、発生したか否かが検出される異常は、上述した実施形態で例示したものに限らない。すなわち、検出される異常は、正常な記録に係る動作の実行を妨げることが予想されるいかなる異常であってもよい。
また、上述した実施形態では、プリンターの形式は、サーマル式であったが、プリンターの形式は、インクジェット式や、ドットインパクト式等何であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…記録システム、10…プリンター(記録装置)、11…ホストコンピューター(制御装置)、15…制御部、15a…制御コマンド実行部、16…プリントエンジン、22…ラインバッファー(所定のバッファー)、23…特定制御コマンド生成部、25…ホスト側制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と接続可能であり、プリントエンジンを有し記録媒体に記録する記録装置であって、
前記制御装置から受信した記録に係る動作を実行させる制御コマンドに基づいて、前記プリントエンジンに対し記録に係る各種処理を実行して記録媒体に記録する制御コマンド実行部を備え、
前記制御コマンド実行部は、
前記制御コマンドが、記録に係る異常の有無の検出用の特定の制御コマンドであるか否か判別し、前記特定の制御コマンドである場合、前記プリントエンジンの動作を伴わない態様で、前記特定の制御コマンドに基づいて擬似的な処理を実行すると共に、前記擬似的な処理の実行の過程で、異常が発生したか否かを監視することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記特定の制御コマンドを生成する特定制御コマンド生成部をさらに備え、
前記制御コマンド実行部は、前記制御装置から受信した制御コマンドに替え、前記特定制御コマンド生成部が生成した前記特定の制御コマンドに基づいて前記擬似的な処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御コマンド実行部は、前記異常を検知した場合、前記制御装置に通知することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録媒体に記録する画像に係る画像データを記憶するバッファーを備え、
前記制御コマンド実行部は、
少なくとも、前記制御コマンドに基づく前記記録媒体に記録する画像に係る画像データが前記バッファーに正常に展開できたか否かを監視することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
前記制御コマンド実行部は、
少なくとも、前記特定の制御コマンドに基づいて前記擬似的な処理を実行するために、読み出して実行するプログラムに係る変数が、正しい状態であるか否かを監視することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
制御装置と接続可能であり、プリントエンジンを有し記録媒体に記録する記録装置の制御方法であって、
前記制御装置から受信した記録に係る異常の有無の検出用の特定の制御コマンドに基づいて、前記プリントエンジンに対し前記プリントエンジンの動作を伴わない態様で、当該コマンドに係る擬似的な処理を実行し、前記擬似的な処理の実行の過程で、異常が発生したか否かを監視することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項7】
制御装置と接続可能であり、プリントエンジンを有し記録媒体に記録する記録装置を制御する制御部により実行されるプログラムであって、
前記制御部を、
前記制御装置から受信した記録に係る動作を実行させる制御コマンドに基づいて、前記プリントエンジンに対し記録に係る各種処理を実行して記録媒体に記録すると共に、
前記制御コマンドが、記録に係る異常の有無の検出用の特定の制御コマンドであるか否か判別し、前記特定の制御コマンドである場合、前記プリントエンジンの動作を伴わない態様で、前記特定の制御コマンドに基づいて擬似的な処理を実行すると共に、前記擬似的な処理の実行の過程で、異常が発生したか否かを監視する制御コマンド実行部として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−206427(P2012−206427A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74401(P2011−74401)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】