説明

記録装置、記録装置の制御方法及び動作制御プログラム

【課題】特定のノズルに目詰まりを生じさせるインクが充填されたままで長期間放置されることを防止する記録装置、記録装置の制御方法及び動作制御プログラムを提供する。
【解決手段】印刷用紙上にインク滴を付着させて画像を形成するインクジェットプリンタであって、白色インクと、目詰まり防止液と、が選択的に充填される特定のノズル列を備えた印刷ヘッド36と、特定のノズル列に白色インクが充填された第1の充填状態から、特定のノズル列に目詰まり防止液が充填された第2の充填状態へ、所定の条件にしたがって切り替えるよう制御するシステムコントローラ51と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上に液滴を付着させて印刷像を形成する記録装置、記録装置の制御方法及び動作制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙や布、フィルムなどの各種媒体に対してインク滴を吐出して印刷を行うインクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタは、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)等といった各色のインク滴をノズルから吐出して媒体上にドットを形成して画像を印刷するものである。
【0003】
近年では多種多様なインクが開発されており、例えば、ブラックインクでも光沢紙に対して光沢感の高い記録を実現でき、写真調の画像に適したフォトブラックインクや、光沢感のないマット紙に適したマットブラックインクなどがある。
特許文献1には、一つのノズル列を用いて複数種類のインクを吐出可能とし、一つのノズル列から吐出するインクを必要に応じて交換するインク交換システムが記載されている。これにより、フォトブラックインクかマットブラックインクのいずれかを選択的に吐出することができる。
【0004】
このように、1つのノズル列で複数種類のインクを吐出する構成を採用した場合、残留インクと、交換後のインクが混色することがある。特許文献2には、インク交換に起因するインクの混色を、洗浄液を介在させることによって防止するインク供給システムが記載されている。
【0005】
また、画像形成以外の用途に使用されるインクもある。例えば、透明なメディアには、画像のみを直接ダイレクトにプリントしても、その画像の例えば赤、青、黄色、黒等の高濃度色以外の、灰色等の明度の高い中間色は、透明なメディアを通して、その画像に侵入する光に妨害されて、的確に表現することができない。このため、透明なメディアに、地色層を介して、カラー画像等の画像を重ねてプリントする方法が種々提案されている。例えば、地色層として白色インクを用いて印刷することもできる。
【0006】
ところで、このようなインクジェットプリンタにあっては、ノズル列にインクが充填された状態で長期間放置されると、インクの固着などによってノズルに目詰まりを生じ、インク滴が正常に吐出されないことがある。その場合には、記録媒体上にきちんとドットを形成できずに綺麗な印刷を行えなくなる。通常、ノズルの目詰まりを解消するためには、いわゆるフラッシングやクリーニング動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−240164号公報
【特許文献2】特開2007−296651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、インクの種類によっては、各ノズル列の目詰まりの頻度や度合いが異なり、クリーニング動作を実行しても目詰まりを解消できないノズル列もある。例えば、顔料系の白色インクは他の顔料系のシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)等より粒子が大きく、ノズルの目詰まりが生じやすい。また、粒子が大きい場合、初期段階の目詰まりでも、その度合いは急速に悪化し、単純なクリーニング動作を繰り返しただけでは目詰まりを解消できない場合が生じる。したがって、ノズルにインクが充填された状態で長期間放置されることを防止する必要がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、特定のノズルに目詰まりを生じさせるインクが充填されたままで長期間放置されることを防止することができる記録装置、記録装置の制御方法及び動作制御プログラムを提供することを目的とする。
また、ノズルの目詰まりが発生する虞のある状況を未然に回避し、クリーニングの回数を減らすことができる記録装置、記録装置の制御方法及び動作制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明は、ノズルから画像形成液の液滴を吐出し、記録媒体上に該液滴を付着させて印刷像を形成する記録装置であって、
前記画像形成液と、前記ノズルの目詰まりを防止する液体と、が選択的に充填される特定のノズルを備えた記録ヘッドと、
前記特定のノズルに前記画像形成液が充填された第1の充填状態から、前記特定のノズルに前記目詰まりを防止する液体が充填された第2の充填状態へ、所定の条件にしたがって切り替えるよう制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、印刷像を形成する画像形成液と、目詰まりを防止する液体と、が所定の条件にしたがって特定のノズルに選択的に充填される。したがって、長期間にわたって印刷像を形成する処理を実行しない場合は、特定のノズルに対して目詰まりを防止する液体を充填するように切り替えれば、その特定のノズルが目詰まりを起こすことがない。したがって、特定のノズルに目詰まりを生じさせるインクが充填されたままで長期間放置されることを防止することができる。
さらに、従来の方法では、画像形成液として多色インクに比べ粒径が大きく目詰まりを発生しやすい白色インクを充填した場合、ノズルの目詰まりの回復やインクの吐出安定性を確保するためにはインク流路内のインクをクリーニングにより交換する必要がある。上記構成によれば、第2の充填状態へ切り替えることによってノズルの目詰まりが発生する虞のある状況を未然に回避することができる。したがって、クリーニングの回数を減らすことができ、無駄になるインクが少なく環境負荷を軽減できる、記録装置などを提供することができる。
【0012】
また、本発明の記録装置において、前記所定の条件は、前記制御手段が、前記第1の充填状態の継続時間が予め設定された時間以上であると判定した場合であることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、特定のノズルに目詰まりが発生する時間として、経験的に得られる値を予め設定しておくことができる。設定した時間と実際の継続時間とを比較するようにすれば、第2の充填状態への切り替えを、目詰まりを防止できる範囲内で最小限に抑えることができる。したがって、目詰まりを防止する液体を無駄に消費することを防止することができる。
【0014】
また、本発明の記録装置において、前記所定の条件は、前記第1の充填状態の継続時間が予め設定された時間より小さい場合で、ノズルからの吐出検査によってノズル抜けが検出された場合であることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、第1の充填状態の継続時間が予め設定された時間より小さい場合でも、ノズル抜けが検出された場合は、第2の充填状態へ切り替えることができる。したがって、特定のノズルに目詰まりが発生する時間として経験的に得られる値にだけ依存することなく、ノズル抜けを検出すると、特定のノズルに目詰まりを防止する液体が充填されるので、さらに目詰まりが悪化することを防止することができる。
【0016】
また、本発明の記録装置において、前記所定の条件は、前記記録装置の電源をOFFする指示の後に電源OFF継続予定時間の入力があった場合であって、前記制御手段が、前記電源OFF継続予定時間が前記予め設定された時間以上であると判定した場合であることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、電源をOFFする指示があっても、電源OFF処理を実行する前に第1の充填状態から第2の充填状態へ切り替えることができる。すなわち、電源OFF中は、特定のノズルに対して目詰まりを防止する液体を充填させておくことができる。したがって、特定のノズルに目詰まりを生じさせる液滴が充填されたままで長期間放置されることを防止することができる。
【0018】
また、本発明の記録装置において、前記所定の条件のときに前記制御手段からの指示に応じて、前記第1の充填状態から前記第2の充填状態へ自動的に切り替える切り替え手段を有することを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、切り替え手段が自動的に第1の充填状態から第2の充填状態へ切り替えるので、ユーザが手動で切り替える必要がない。このため、ユーザが記録装置の傍にいなくても、特定のノズルには目詰まりを防止する液体が自動的に充填される。
【0020】
また、本発明の記録装置において、前記画像形成液を収容する収容体と、前記目詰まりを防止する液体を収容する他の収容体と、がキャリッジに搭載されており、
前記所定の条件のときに前記制御手段からの指示に応じて、前記収容体を前記他の収容体に交換するよう通知する通知手段を有することを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、画像形成液が収容された収容体を、目詰まりを防止する液体が収容された他の収容体に交換するよう通知する。したがって、いわゆるオンキャリッジ型のインクカートリッジを採用するインクジェットプリンタでも、ユーザは通知に応じて、インクカートリッジを、目詰まりを防止する液体が収容されたカートリッジに交換することができる。
【0022】
また、上記課題を解決することのできる本発明は、画像形成液と、ノズルの目詰まりを防止する液体と、が選択的に充填される特定のノズルを備えた記録ヘッドを備え、記録媒体上に前記画像形成液の液滴を付着させて印刷像を形成する記録装置の制御方法であって、
所定の条件が成立するか否かを判定するステップと、
前記所定の条件が成立する場合に、前記特定のノズルに前記画像形成液が充填された第1の充填状態から、前記特定のノズルに前記目詰まりを防止する液体が充填された第2の充填状態へ、切り替えるステップと、を有することを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、特定のノズルに目詰まりを生じさせるインクが充填されたままで長期間放置されることを防止することができ、インクの目詰まりを防止することができる。
【0024】
また、上記課題を解決することのできる本発明は、画像形成液と、ノズルの目詰まりを防止する液体と、が選択的に充填される特定のノズルを備えた記録ヘッドを備え、記録媒体上に前記画像形成液の液滴を付着させて印刷像を形成する記録装置が備えるコンピュータに、
所定の条件が成立するか否かを判定するステップと、
前記所定の条件が成立する場合に、前記特定のノズルに前記画像形成液が充填された第1の充填状態から、前記特定のノズルに前記目詰まりを防止する液体が充填された第2の充填状態へ、切り替えるステップと、を実行させることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、動作制御プログラムを記録装置に搭載するだけで、特定のノズルに目詰まりを生じさせるインクが充填されたままで長期間放置されることを防止することができ、インクの目詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態に係るプリンタの主要構成部を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示したプリンタの電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態のプリンタの電源がON状態の時に行う切り替え処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図4】本実施形態のプリンタの電源がOFF状態になる前に行う切り替え処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る記録装置の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、記録装置としてインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」という。)を例に挙げて説明する。図1は本実施形態のプリンタの主要構成部を示す概略斜視図、図2は図1に示したプリンタの電気的な構成を示すブロック図である。
【0028】
図1に示したプリンタ20は、用紙スタッカ22と、不図示のステップモータで駆動される紙送りローラ24と、プラテン26と、キャリッジ28と、キャリッジモータ30と、キャリッジモータ30によって駆動される牽引ベルト32と、キャリッジ28の走査を案内するガイドレール34とを備えている。キャリッジ28には、多数のノズルを備えた印刷ヘッド36(記録ヘッド)が搭載されている。
【0029】
印刷ヘッド36は、液体供給路41,42,43,45を介して各カートリッジ11a,11b,12,13,14,15と接続されている。カートリッジ12はブラックインク(K)、カートリッジ13はシアンインク(C)、カートリッジ14はマゼンタインク(M)、カートリッジ15はイエローインク(Y)をそれぞれ収容している。さらに、本実施形態では、カートリッジ11aには白色インク(W)が、カートリッジ11bには目詰まり防止液が収容されている。目詰まり防止液は、印刷ヘッド36の備えられたノズル列のうち、白色インクが吐出されるノズル列に充填される。すなわち、白色インクが吐出されるノズル列には、切り替え手段56を介して白色インクと目詰まり防止液とが選択的に充填されるようになっている。
【0030】
各カートリッジは、各インク(画像形成液)を収容したインクパックあるいは目詰まり防止液を収容した液体収容パックを備えており、インクパックあるいは液体収容パックの周囲には空気室が形成されている。図示せぬ加圧手段によって空気室を加圧することによって各インクパック内のインクあるいは液体収容パック内の目詰まり防止液が液体供給路41,42,43,45を経由して印刷ヘッド36へ供給される。このように、本実施形態のプリンタ20は、キャリッジ28上にインクカートリッジが搭載されるいわゆるオンキャリッジタイプのプリンタとは異なり、プリンタ20本体の所定の位置に固定的に装着されるオフキャリッジタイプのインクジェットプリンタである。
【0031】
印刷用紙P(記録媒体)は、用紙スタッカ22から紙送りローラ24によって巻き取られてプラテン26の表面上を、印刷ヘッドの主走査方向と直行する副走査方向へ送られる。キャリッジ28は、キャリッジモータ30により駆動される牽引ベルト32に牽引されて、ガイドレール34に沿って主走査方向に移動する。
【0032】
プリンタ20は、図2に示すように、ホストコンピュータ90から供給された信号を受信する受信バッファメモリ50と、画像データを格納するイメージバッファ54と、プリンタ20全体の動作を制御するシステムコントローラ54(制御手段)と、メインメモリ52と、EEPROM53とを備えている。EEPROM53に記憶されたファームウェアをメインメモリ52に読み出し実行することによって、プリンタ20の各種動作が実現される。
【0033】
また、システムコントローラ51には、キャリッジモータ30を駆動する主走査駆動回路61と、紙送りモータ31を駆動する副走査駆動回路62と、印刷ヘッド36を駆動するヘッド駆動回路63と、が接続されている。副走査駆動回路62と、紙送りモータ31と、紙送りローラ24は、紙送り機構を構成している。
【0034】
システムコントローラ51は、受信バッファメモリ50が受信した印刷データに含まれる各種コマンドや、予めEEPROM53に書き込まれた設定条件等に応じて、主走査駆動回路61、副走査駆動回路62、を制御する。
【0035】
例えば、高画質の画像を印刷するよう設定されている場合は、主走査駆動回路61及び副走査駆動回路62によって、ラスタを副走査方向に間欠的に形成しつつ画像を印刷するいわゆるインターレース方式の印刷を行う。また、1ラスタを形成するノズルを間欠的タイミングで駆動させて印刷するいわゆるオーバーラップ方式の印刷を行うこともできる。
【0036】
さらに、システムコントローラ51には、表示手段55と、切り替え手段56と、計時手段57と、ノズル吐出検査手段58と、が接続されている。表示手段55は、プリンタ20の液晶表示画面に表示内容を表示する。あるいは表示内容をホストコンピュータ90のプリンタドライバ91へ送信し、ドライバの表示画面91に表示する。切り替え手段56は、切り替え弁のようなもので、システムコントローラ51からの指示に応じて液体供給路41に供給する液体を自動的に白色インクあるいは目詰まり防止液の何れかに切り替える。計時手段57は、印刷ヘッド36の特定のノズル列に白色インクが充填されたまま吐出動作がない状態(第1の充填状態)が継続する時間、すなわち放置時間を計時する。
【0037】
ノズル吐出検査手段58は、キャリッジ28上の印刷ヘッド36による印刷可能なエリアから外れた非印刷エリアに配置されている。キャリッジ28が、主査走査方向に沿って印刷エリアから非印刷エリアへ移動することで、吐出状態の検査を行う状態となる。本実施形態のノズル吐出検査手段58は、非印刷エリアに移動した印刷ヘッド36の各ノズル列と対向するように印刷ヘッド36の下方に配置されている。そして、ノズル吐出検査手段58は、印刷ヘッド36の各ノズル列から吐出されたインク滴を受けるための導電性インク吸収体と、帯電したインク滴の接近によって導電性インク吸収体に生じる誘導電流を検出する検出部と、各ノズル列からインク滴を吐出する際にこのインク滴を帯電させるべく導電性インク吸収体に電圧を印加する電圧印加部と、導電性インク吸収体を収容するための有底容器と、を備えている。
【0038】
帯電したインク滴が各ノズル列から導電性インク吸収体へ向けて吐出されると、このインク滴の接近に伴って導電性インク吸収体には、静電誘導現象等に基づいて誘導電流が生じる。すなわち、インク滴の接近に伴って、導電性インク吸収体にはインク滴とは逆極性の電荷が誘起されるように誘導電流が流れる。この誘導電流の検出の有無によってノズル詰まりを検査する。
【0039】
以上の構成を備えた本実施形態のプリンタ20における、白色インクと目詰まり防止液とを切り替える方法について説明する。
システムコントローラ51は、白色インクと、目詰まり防止液と、が選択的に充填される特定のノズル列に白色インクが充填された第1の充填状態から、特定のノズル列に目詰まり防止液が充填された第2の充填状態へ、所定の条件にしたがって切り替えるよう制御する。以下では、プリンタ20の電源がON状態のときに行う切り替え処理と、プリンタ20の電源がOFF状態になる前に行う切り替え処理についてそれぞれ説明する。
【0040】
図3は、プリンタの電源がON状態の時に行う切り替え処理の流れを説明するためのフローチャートである。
プリンタ20の電源がON状態においてシステムコントローラ51は、計時手段57に対して、印刷ヘッド36のノズル列のうち白色インクが吐出される特定のノズル列に、白色インクが充填された状態が継続する時間、すなわちプリンタ20の放置時間を計時するよう指示する。なお、予め設定された時間内に印刷ヘッド36のノズル列からの吐出動作があった場合は、計時手段57をリセットして計時を再開する。
【0041】
なお、本実施形態では、予め設定された時間として1ヶ月が設定されている。1ヶ月は、白色インクがノズル列に充填されて放置された場合に、そのノズル列が目詰まりを起こさない最大期間として経験的に得られる値である。したがって、プリンタ20の設置環境、白色インクのインク組成等によって異なる値であり、コマンド等によって適宜変更可能な値である。ここでは、顔料系の白色インクを採用した場合を前提に説明する。一般に白色インクの顔料の粒径(例えば、約600nm)は、他色インクに含まれる顔料の粒径(例えば、約100nm)と比較して大きく、目詰まりを起こしやすい。粒径が大きいと、初期段階の目詰まりでも、その度合いは急速に悪化し、単純なクリーニング動作では目詰まりを解消できないことが多い。
【0042】
一方、目詰まりを確実に防止するために上記期間を短く設定し過ぎると、頻繁に目詰まり防止液が充填されるため目詰まり防止液の消費が多く、コストパフォーマンスが悪くなる。このため、本実施形態では目詰まりを起こさない最大期間として経験的に割り出された値として、1ヶ月が設定されている。
【0043】
システムコントローラ51は、計時手段57によって計時されている放置時間を確認する(ステップS11)。放置時間が1ヶ月以上であるか否かを判定し、放置時間が1ヶ月以上であると判定すると(ステップS12:Yes)、システムコントローラ51は切り替え手段56に対して白色インク側の弁を閉じて、目詰まり防止液側の弁を開けるよう指示する。次に、カートリッジ11bの図示せぬ加圧手段を駆動させて目詰まり防止液を液体供給路41を経由して印刷ヘッド36へ供給する。そして印刷ヘッド36へ供給された目詰まり防止液は白色インクが充填されているノズル列に充填される。すなわち、それまで充填されていた白色インクは目詰まり防止液によってノズル列から押し出され、目詰まり防止液に切り替えられる(ステップS13)。
【0044】
一方、ステップS12において放置時間が1ヶ月より短いと判定した場合は(ステップS12:No)、システムコントローラ51はノズル吐出検査手段58に対してノズル吐出検査を実行するよう指示する。ノズル吐出検査手段58がノズル吐出検査を実行し(ステップS14)、検査結果に基づき白色インクが充填されていたノズル列にノズル抜けがあるか否かを判定する。白色インクが充填されていたノズル列にノズル抜けを発見すると(ステップS15:Yes)、白色インクから目詰まり防止液に切り替える(ステップS13)。一方、白色インクが充填されていたノズル列にノズル抜けを発見しなかった場合は(ステップS15:No)、ステップS11に戻り、計時手段57をリセットして放置時間の計時を再開する。
【0045】
このように、本実施形態によれば、白色インクと、目詰まり防止液と、が所定の条件にしたがって特定のノズル列に選択的に充填される。したがって、長期間にわたってインクの吐出動作を実行しない場合は、特定のノズルに対して目詰まり防止液を充填するように切り替えれば、その特定のノズル列が目詰まりを起こすことがない。したがって、特定のノズル列に、多色インクより粒径が大きく目詰まりを発生し易い白色インクが充填されたままで長期間放置されることを防止することができる。
【0046】
また、特定のノズル列に目詰まりが発生する時間として、経験的に得られる値を予め設定しておき、設定した1ヶ月と実際の放置時間とを比較するようにすれば、目詰まり防止液への切り替えを、目詰まりを防止できる範囲内で最小限に抑えることができる。したがって、目詰まり防止液を無駄に消費することを防止することができる。
【0047】
また、放置時間が予め設定された1ヶ月より小さい場合でも、ノズル抜けが検出された場合は、目詰まり防止液へ切り替えることができる。したがって、特定のノズル列に目詰まりが発生する時間として経験的に得られた1ヶ月という値に依存することなく、ノズル抜けを検出した場合にも、目詰まり防止液が充填されるので、さらに目詰まりが悪化することを防止することができる。
【0048】
次に、プリンタ20の電源がOFF状態になる前に行う切り替え処理について説明する。図4は、プリンタの電源がOFF状態になる前に行う切り替え処理の流れを説明するためのフローチャートである。
システムコントローラ51は、外部からプリンタ20の電源をOFFする指示があると(ステップS21:Yes)、ホストコンピュータ90のプリンタドライバ91に対して電源OFF継続予定時間の入力を促すメッセージを表示するよう指示する(ステップS22)。表示されたメッセージを読んだユーザが電源OFF継続予定時間を入力すると、入力された値がプリンタ20に送信される。
【0049】
システムコントローラ51は入力を検知すると(ステップS23:Yes)、プリンタドライバ91から送信された電源OFF継続予定時間が予め設定された1ヶ月以上であるか否かを判定する(ステップS24)。電源OFF継続予定時間が1ヶ月以上であると判定すると(ステップS24:Yes)、システムコントローラ51は切り替え手段56に対して白色インク側の弁を閉じて、目詰まり防止液側の弁を開けるよう指示する。次に、カートリッジ11bの図示せぬ加圧手段を駆動させて目詰まり防止液を液体供給路41を経由して印刷ヘッド36へ供給する。そして印刷ヘッド36へ供給された目詰まり防止液は白色インクが充填されているノズル列に充填される。すなわち、それまで充填されていた白色インクは目詰まり防止液によってノズル列から押し出され、目詰まり防止液に切り替えてから電源OFF処理を実行する(ステップS25,ステップS26)。
【0050】
一方、ステップS24で電源OFF継続予定時間が1ヶ月より短期間であると判定すると(ステップS24:No)、白色インクを目詰まり防止液へ切り替えることなく、そのまま電源OFF処理を実行する(ステップS26)。
【0051】
このように、本実施形態によれば、電源をOFFする指示があっても、電源OFF処理を実行する前に白色インクが充填された状態から目詰まり防止液が充填された状態へ切り替えることができる。すなわち、電源OFF中は、白色インクのノズル列に対して目詰まり防止液を充填させておくことができる。したがって、ノズル列に白色インクが充填されたままで長期間放置されることを防止することができる。一方、電源OFF継続予定時間が白色インクのノズル列に目詰まりが発生する時間として経験的に得られた1ヶ月よりも短い場合は、目詰まり防止液が充填されることなく電源がOFFされる。すなわち、目詰まりが発生する前に電源がON状態となり吐出動作が行われる予定であるため、目詰まりを発生させる可能性が低く、目詰まり防止液を充填することなく電源をOFFする。したがって、目詰まり防止液を無駄に消費することを防止することができる。
【0052】
上述したように本実施形態のプリンタ20は、所定の条件のときにシステムコントローラ51からの指示に応じて、第1の充填状態から第2の充填状態へ自動的に切り替える切り替え手段56を有している。切り替え手段56が自動的に第1の充填状態から第2の充填状態へ切り替えるので、ユーザが手動で切り替える必要がない。このため、ユーザがプリンタ20の傍にいなくても、白色インクのノズル列には目詰まり防止液が自動的に充填される。
【0053】
なお、上記実施形態では、いわゆるオフキャリッジタイプのインクジェットプリンタを前提として説明したが、本発明はいわゆるオンキャリッジタイプのインクジェットプリンタにも採用することができる。この場合は、図3のステップS13及び図4のステップS25において、白色インクを収容するカートリッジから目詰まり防止液を収容するカートリッジに交換するようユーザに通知するよう構成すればよい。すなわち、システムコントローラ51が表示手段55(通知手段)にカートリッジの交換を促すメッセージを表示するようにすればよい。
【0054】
また、本実施形態では、顔料系の白色インクと目詰まり防止液と切り替えて充填する構成であったが、顔料系の白色インクに限られない。他のインクも目詰まり防止液と切り替えるよう構成することもできる。すなわち、顔料、染料、金属酸化物、中空樹脂微粒子等を含むインクと目詰まり防止液とを切り替えても良い。
【0055】
<実施例1>
以下、本実施形態のプリンタ20を使用した実施例を示す。
上記図4に示したフローチャートにしたがって、ノズル列を白色インクから目詰まり防止液へ切り替えた状態において、40℃で2ヶ月経過後に白色インクに再び切り替えたときのノズル抜け評価と飛行曲がり評価について評価した。
【0056】
評価結果を表1に示す。
【表1】

【0057】
なお、ノズル抜けとは、目詰まりが発生したノズルからインク滴が吐出されないことを意味する。また、飛行曲がりとは、ノズル列からインク滴は吐出されるが、インク滴が理想とする弾道で飛行せず、理想出力位置(着弾位置とも言う)からずれてしまうことを意味する。
<ノズル抜け評価基準>
A:クリーニングなしで全ノズル復帰する
B:クリーニング1〜7回で全ノズル復帰する
C:クリーニング8回以上で全ノズル復帰する
<飛行曲がり評価基準>
A:飛行曲がりなし
B:飛行曲がりが1〜3箇所発生する
C:飛行曲がりが3箇所以上発生する
表1に示すように、実施例1では、ノズル抜け、飛行曲がりとも評価はAとなった。
【0058】
<実施例2>
実施例2は、白色インクが充填されたまま40℃で2ヶ月放置後に、図3に示したフローチャートにしたがって目詰まり防止液へ切り替え、再び白色インクへ切り替えたときのノズル抜け評価と飛行曲がり評価について評価した。ノズル抜け、飛行曲がりとも評価Bとなった。
<比較例1>
【0059】
比較例1は、目詰まり防止液へ切り替えることなく、白色インクが充填されたまま40℃で2ヶ月放置したときのノズル抜け評価と飛行曲がり評価について評価した。ノズル抜け、飛行曲がりとも評価Cとなった。
【0060】
このように、本実施形態のプリンタ20における実施例1及び実施例2は、比較例1に比べてノズル抜け及び飛行曲がりともに良好であることが判明した。
従来の方法では、他色インクに比べ粒径が大きく目詰まりを発生しやすい白色インクを充填した場合、目詰まりの回復やインクの吐出安定性を確保するためにはインク流路内のインクをクリーニングにより交換する必要がある。すなわち、本実施形態で説明した方法を用いると上記実施例に示すようにクリーニングの回数を確実に減らすことができるため、無駄になるインクが少なく環境負荷を軽減できる。
【符号の説明】
【0061】
11a,11b,12,13,14,15:カートリッジ、4120:プリンタ、22:用紙スタッカ、24:紙送りローラ、26:プラテン、28:キャリッジ、30:キャリッジモータ、キャリッジモータ30、31:紙送りローラ、32:牽引ベルト、34:ガイドレール、36:印刷ヘッド、41,42,43,45:液体供給路、50:受信バッファメモリ、51:システムコントローラ(制御手段)、52:メインメモリ、53:EEPROM、54:イメージバッファ、55:表示手段、56:切り替え手段、57:計時手段、58:ノズル吐出検査手段、61:主走査駆動回路、62:副走査駆動回路、63:ヘッド駆動回路、90:ホストコンピュータ、91:プリンタドライバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから画像形成液の液滴を吐出し、記録媒体上に該液滴を付着させて印刷像を形成する記録装置であって、
前記画像形成液と、前記ノズルの目詰まりを防止する液体と、が選択的に充填される特定のノズルを備えた記録ヘッドと、
前記特定のノズルに前記画像形成液が充填された第1の充填状態から、前記特定のノズルに前記目詰まりを防止する液体が充填された第2の充填状態へ、所定の条件にしたがって切り替えるよう制御する制御手段と、を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記所定の条件は、前記制御手段が、前記第1の充填状態の継続時間が予め設定された時間以上であると判定した場合であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記第1の充填状態の継続時間が予め設定された時間より小さい場合で、ノズルからの吐出検査によってノズル抜けが検出された場合であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記所定の条件は、前記記録装置の電源をOFFする指示の後に電源OFF継続予定時間の入力があった場合であって、前記制御手段が、前記電源OFF継続予定時間が前記予め設定された時間以上であると判定した場合であることを特徴とする請求項1または3の何れか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記所定の条件のときに前記制御手段からの指示に応じて、前記第1の充填状態から前記第2の充填状態へ自動的に切り替える切り替え手段を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記画像形成液を収容する収容体と、前記目詰まりを防止する液体を収容する他の収容体と、がキャリッジに搭載されており、
前記所定の条件のときに前記制御手段からの指示に応じて、前記収容体を前記他の収容体に交換するよう通知する通知手段を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
画像形成液と、ノズルの目詰まりを防止する液体と、が選択的に充填される特定のノズルを備えた記録ヘッドを備え、記録媒体上に前記画像形成液の液滴を付着させて印刷像を形成する記録装置の制御方法であって、
所定の条件が成立するか否かを判定するステップと、
前記所定の条件が成立する場合に、前記特定のノズルに前記画像形成液が充填された第1の充填状態から、前記特定のノズルに前記目詰まりを防止する液体が充填された第2の充填状態へ、切り替えるステップと、を有することを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項8】
画像形成液と、ノズルの目詰まりを防止する液体と、が選択的に充填される特定のノズルを備えた記録ヘッドを備え、記録媒体上に前記画像形成液の液滴を付着させて印刷像を形成する記録装置が備えるコンピュータに、
所定の条件が成立するか否かを判定するステップと、
前記所定の条件が成立する場合に、前記特定のノズルに前記画像形成液が充填された第1の充填状態から、前記特定のノズルに前記目詰まりを防止する液体が充填された第2の充填状態へ、切り替えるステップと、を実行させることを特徴とする動作制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−107398(P2013−107398A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−21125(P2013−21125)
【出願日】平成25年2月6日(2013.2.6)
【分割の表示】特願2008−197486(P2008−197486)の分割
【原出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】