記録装置およびその吐出状態の解析方法
【課題】不吐出ノズルの特定を行う上で有利な技術を有する記録装置を提供する。
【解決手段】インクを吐出して記録媒体に記録を行う記録装置は、インクを吐出する複数のノズルが第1方向に沿って配列されたノズル列を含む記録ヘッドと、前記記録ヘッドにおける前記複数のノズルからインクを吐出することにより前記記録媒体に記録された検査パターンを、前記複数のノズルが配列する前記第1方向に並ぶ複数の輝度値として読み取る読取手段と、前記複数の輝度値のうち前記第1方向に所定の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出することにより、複数の差分値を算出する算出手段と、前記複数の差分値に基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する解析手段と、を含む。
【解決手段】インクを吐出して記録媒体に記録を行う記録装置は、インクを吐出する複数のノズルが第1方向に沿って配列されたノズル列を含む記録ヘッドと、前記記録ヘッドにおける前記複数のノズルからインクを吐出することにより前記記録媒体に記録された検査パターンを、前記複数のノズルが配列する前記第1方向に並ぶ複数の輝度値として読み取る読取手段と、前記複数の輝度値のうち前記第1方向に所定の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出することにより、複数の差分値を算出する算出手段と、前記複数の差分値に基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する解析手段と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置およびその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度で長尺な記録ヘッドの製造が可能になってきている。このような記録ヘッドは、一般的に、フルラインヘッド等と呼ばれ、幅が広い記録領域に対して1回の記録走査によって画像を完成させることができる。フルラインヘッドは、従来のシリアルスキャン用のヘッドと比較してノズル数が格段に多い。そのため、全てのノズルにおける吐出状態を正常に保つことは難しく、不吐出ノズルが発生してしまう可能性が高い。不吐出ノズルが発生する原因としては、例えば、ノズル近傍への紙粉やほこり等のゴミの付着、インクミストの付着、インク粘度の増大、インク内への気泡やゴミの混入など、様々な要因が挙げられる。
【0003】
記録動作中に突発的にこのような不吐出ノズルが発生してしまうと、画像品位の低下につながってしまうため、不吐出ノズルを速やかに検出して画像品位を保持するための技術が必要とされている。不吐出ノズルを検出する方法として、特許文献1に開示された技術が知られている。
【0004】
特許文献1では、ライン型のインクジェットヘッドで各色ごとに複数ライン分の印字が行われ、それぞれの濃度データをラインセンサが取得している。そして、各色ごとに複数ライン分の濃度データを積算した積算濃度データが取得され、積算濃度データと閾値とを比較することで不吐出ノズルが特定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−101964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で用いられるラインセンサは、複数のCCD素子を1列に配列させることで構成されている。このような構成では、例えば、複数のCCD素子の検出感度が一定でないと、正確な濃度データを測定することができず、不吐出ノズルを特定できない可能性がある。これでは、記録ヘッドの回復処理や他のノズルを使用して画像補完(不吐補完)を行うことができず、画像品位が低下してしまう。 そこで、本発明は、不吐出ノズルの特定を行う上で有利な技術を有する記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての記録装置は、インクを吐出して記録媒体に記録を行う記録装置であって、インクを吐出する複数のノズルが第1方向に沿って配列されたノズル列を含む記録ヘッドと、前記記録ヘッドにおける前記複数のノズルからインクを吐出することにより前記記録媒体に記録された検査パターンを、前記複数のノズルが配列する前記第1方向に並ぶ複数の輝度値として読み取る読取手段と、前記複数の輝度値のうち前記第1方向に所定の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出することにより、複数の差分値を算出する算出手段と、前記複数の差分値に基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する解析手段と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、不吐出ノズルの特定を行う上で有利な技術を有する記録装置を提供するを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に関わる記録装置20を配して構成した記録システムの一例を示す図である。
【図2A】記録装置における記録動作の概要を示す図である。
【図2B】記録装置における記録動作の概要を示す図である。
【図3】スキャナの構成の一例を示す図である。
【図4】記録ヘッドの構成の一例を示す図である。
【図5A】クリーニング機構の構成を示す斜視図である。
【図5B】クリーニング機構の構成を示す斜視図である。
【図6】ワイパユニットの構成を示すための図である。
【図7】実施形態1における不吐検出動作の概要を説明するための図である。
【図8】実施形態1における不吐検出処理を説明するフローチャートである。
【図9】実施形態1における不吐出が発生した時の記録ヘッドと不吐検出用パターンの関係を示すための図である。
【図10】実施形態1における不吐検出動作後の処理を示すフローチャートである。
【図11】実施形態1における不吐出の解析処理を示すフローチャートである。
【図12】実施形態1における不吐出が発生した時の検査パターンと生値と差分値との関係を説明する図である。
【図13】実施形態1におけるΔP算出処理を示すフローチャートである。
【図14】実施形態1におけるΔPの概要を説明するための図である。
【図15】実施形態1におけるN値化処理1を示すフローチャートである。
【図16】実施形態2におけるΔP積算値の算出処理を示すフローチャートである。
【図17A】実施形態2におけるΔP積算値の概要を説明するための図である。
【図17B】実施形態2におけるΔP積算値の概要を説明するための図である。
【図18】実施形態3における処理の概要を説明するための図である。
【図19】実施形態3におけるΔP算出処理を示すフローチャートである。
【図20】実施形態4における処理の概要を説明するための図である。
【図21】実施形態4におけるΔP算出処理を示すフローチャートである。
【図22】実施形態5におけるΔP算出処理を示すフローチャートである。
【図23】実施形態6における不吐検出処理を説明するフローチャートである。
【図24】実施形態6における吐出不良に起因するインク垂れを説明するための図である。
【図25】実施形態6におけるインクが垂れた際の記録ヘッドと検査パターンの関係を示すための図である。
【図26】実施形態6における解析処理2を示すフローチャートである。
【図27】実施形態6におけるインク垂れ解析を示すフローチャートである。
【図28】実施形態6におけるインクが垂れた時の検査パターンの状態と生値と差分値との関係を説明するための図である。
【図29】実施形態6におけるインク垂れ解析時におけるΔP算出処理を示すフローチャートである。
【図30】実施形態6におけるインク垂れ解析時におけるΔPの概要を説明するための図である。
【図31】実施形態6におけるN値化処理2を示すフローチャートである。
【図32】実施形態7における解析処理3を示すフローチャートである。
【図33】実施形態7におけるインク垂れが発生した際に不吐出ノズルと設定範囲を説明するための図である。
【図34】実施形態8における解析処理4を示すフローチャートである。
【図35】実施形態8における記録ヘッドと不吐補完用の検査パターンの関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、インクジェット記録方式を用いた記録装置を例に挙げて説明する。記録装置としては、例えば、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタであってもよいし、また、例えば、記録機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであってもよい。また、記録装置は、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置であっても良い。
【0011】
なお、以下の説明において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。更に人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン、構造物等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も表す。
【0012】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表す。
【0013】
更に、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様に広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付加されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表す。
【0014】
また更に、「記録素子」(「ノズル」という場合もある)とは、特に断らない限りインク吐出口乃至これに連通する液路及びインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括していうものとする。
【0015】
<共通実施形態>
まず、以下に説明するいくつかの実施形態に共通の装置構成を説明する。図1は、本発明の共通実施形態に係るインクジェット方式の記録装置(以下単に、記録装置と呼ぶ)を配して構成した記録システムの一例を示す図である。なお、本実施形態においては、記録媒体は、ロール状に巻かれた連続シートを使用し、記録装置は、片面記録及び両面記録の両方に対応した記録装置を例に挙げて説明する。このような記録装置は、例えば、大量の枚数の記録を行なう場合に好適である。記録システムは、パーソナルコンピュータ(以下、単に、コンピュータと呼ぶ)19と、記録装置20とを具備して構成される。
【0016】
コンピュータ19は、画像データを供給する機能を果たす。コンピュータ19には、CPU等の主制御手段、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段が具備される。また、コンピュータ19にはその他、キーボードやマウス等の入出力手段、ネットワークカード等の通信手段等も具備されていても良い。なお、これら各構成部は、バス等により接続され、記憶手段によって記憶されたプログラムを主制御手段が実行することで制御される。
【0017】
記録装置20は、コンピュータ19から送られてきた画像データに基づいて記録媒体上に画像を記録する。なお、本実施形態においては、記録装置20がインクジェット方式を採用し、ロール状の記録媒体(連続シート)に対して記録可能に構成される場合について説明する。ここで、記録装置20の内部には、シート供給部1と、デカール部2と、斜行矯正部3と、記録部4と、検査部5と、カッター部6と、情報記録部7と、乾燥部8と、シート巻取部9と、搬送部10とが設けられる。この他、記録装置20の内部には、ソータ部11、排出トレイ12、制御部13、後述のクリーニング部等が設けられる。記録媒体(連続シート)は、図中の太線で示すように、搬送経路に沿ってローラ対やベルトとを具備する搬送機構によって搬送される。この搬送経路上において、記録装置20に設けられる各構成部は、シートに対して各種処理を行なう。シート供給部1は、連続的にシートを供給する。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納可能に構成されており、1つのロールからシートを引き出して供給する。なお、収納可能なロールは、必ずしも2つである必要はなく、1つ或いは3つ以上のロールを収納可能に構成されていても良い。
【0018】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートの反りを軽減させる。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、反対方向の反りを与えるようにシートをデカールさせる。これにより、シートの反りが軽減される。
【0019】
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの進行方向に対する斜行を矯正する。斜行矯正部3では、基準となるシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0020】
記録部4は、搬送されるシート上に画像を記録する。記録部4には、シートを搬送する複数の搬送ローラの他、複数のインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドと呼ぶ)14が設けられる。各記録ヘッド14は、フルライン型の記録ヘッドで構成され、使用が想定されるシートの最大幅に対応した記録幅を有している。
【0021】
複数の記録ヘッド14は、シートの搬送方向に沿って並べられている。本実施形態の記録部4には、Bk(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、の4色に対応した4種類の記録ヘッドが設けられる。記録ヘッドの並び順は、シート搬送方向の上流側から、Bk、C、M、Yとなっており、それぞれの記録ヘッドは、シート搬送方向に沿ってその記録幅を揃えて配置される。なお、色数及び記録ヘッドの数は、必ずしも4つである必要はなく、適宜変更できる。また、インクジェット方式は、電気熱変換素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介して記録ヘッド14に供給される。
【0022】
検査部5は、シートに記録されたパターンや画像を光学的に読み取り、例えば、記録ヘッド14のノズルの状態、シートの搬送状態、画像位置等を検査する。検査部5は、画像を読み取るスキャナ17と、当該読み取られた画像を解析してコントローラ部15へその解析結果を送信する画像解析部18とを具備して構成される。
【0023】
スキャナ17は、例えば、シートの搬送方向と交差する方向に配されるCCDラインセンサで構成される。CCDラインセンサは、例えば、2次元イメージセンサで構成され、シートの搬送方向と交差する方向(ノズル配列方向)に読取素子として用いられるCCD素子が複数並べられている。なお、スキャナ17は、必ずしもCCDラインセンサで構成される必要はなく、その他の方式のセンサで構成されてもよい。また、画像解析部18には、例えば、当該読み取られた画像を解析するCPU等が設けられる。カッター部6は、シートを所定の長さにカットする。カッター部6には、シートを次の工程に送り出すための複数の搬送ローラが設けられる。情報記録部7は、シートの裏面にシリアル番号や日付などの情報を記録する。乾燥部8は、シートを加熱して、シート上のインクを短時間に乾燥させる。乾燥部8には、シートを次の工程に送り出すための搬送ベルト及び搬送ローラが設けられる。
【0024】
シート巻取部9は、両面記録を行なう際に、シート表面の記録が完了したシートを一時的に巻き取る。シート巻取部9には、シートを巻き取るために回転する巻取ドラムが設けられる。シート表面の記録が終了した後、カッター部6でカットされていないシートは、巻取ドラムに一時的に巻き取られる。巻き取りが終われば、巻取ドラムが逆回転し、巻き取られたシートは、デカール部2を経て記録部4に搬送される。搬送されたシートは、表面と裏面が反転されているため、記録部4においてシート裏面に記録を行なうことができる。両面記録についての具体的な動作については後述する。
【0025】
搬送部10は、シートをソータ部11まで搬送する。ソータ部11では、必要に応じて、異なる排出トレイ12に振り分けてシートを排出する。制御部13は、記録装置20における各部を制御する。制御部13は、例えば、CPU、メモリ(ROM、RAM)、各種I/Oインターフェース等を備えた主制御部15と、電源部16とを具備して構成される。
【0026】
次に、図2を用いて、記録動作時の基本的な動作の流れについて説明する。記録動作は、片面記録と両面記録とでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。ここで、図2Aは、片面記録時の動作を説明するための図である。図2Aには、シート供給部1から供給されたシートに画像が記録された後、当該シートが排出トレイ12に排出されるまでの搬送経路が太線で示されている。
【0027】
シート供給部1からシートが供給されると、デカール部2及び斜行矯正部3において、それぞれ処理された後、記録部4において、シート表面に画像が記録される。画像が記録されたシートは、検査部5を経た後、カッター部6において所定長さ毎にカットされる。カットされたシートは、情報記録部7において、必要に応じてその裏面に日付等の情報が記録される。その後、シートは、乾燥部8において、一枚ずつ乾燥された後、搬送部10を経由してソータ部11の排出トレイ12に排出される。
【0028】
図2Bは、両面記録時の動作を説明するための図である。両面記録時には、シート表面に対する記録シーケンスに続いて、シート裏面に対する記録シーケンスが実施される。なお、図2Bには、両面記録時にシート表面に画像を記録する際の搬送経路が太線で示されている。
【0029】
ここで、シート供給部1から検査部5までの各構成部での動作は、図2Aを用いて説明した片面記録時の動作と同様となる。相違点としては、カッター部6以降の処理となる。具体的には、シートがカッター部6に搬送されると、カッター部6においては、所定の長さ毎にシートをカットせず、シートの記録領域の後端をカットする。乾燥部8にシートが搬送されると、乾燥部8は、シート表面のインクを乾燥させた後、搬送部10ではなく、シート巻取部9にシートを搬送する。搬送されたシートは、図2Bにおける反時計回りに回転するシート巻取部9の巻取ドラムに巻き取られる。すなわち、巻取ドラムによりシートの後端まで全て巻き取られる。なお、カッター部6においてカットされたシートの後端よりも搬送方向の上流側のシートは、シート先端がデカール部2に残らないように、シート供給部1に巻き戻される。
【0030】
このようにしてシート表面に対する記録シーケンスが終わると、シート裏面の記録シーケンスが始まる。このシーケンスが始まると、巻取ドラムが巻き取り時とは逆の、図2Bにおける時計回りに回転する。巻き取られたシートは、デカール部2に搬送される。このとき、巻き取り時におけるシートの後端は、巻取部9からデカール部2に搬送される際にシートの先端になる。デカール部2は、シート表面への画像の記録時とは逆向きにシートの反りを矯正する。これは、巻取ドラムに巻かれたシートは、シート供給部1でのロールとは表面と裏面とが反転して巻かれており、逆向きの反りとなっているためである。
【0031】
その後、シートは、斜行矯正部3を経た後、記録部4に搬送され、シート裏面に画像が記録される。画像が記録されたシートは、検査部5を経た後、カッター部6において、所定の長さ毎にカットされる。カットされたシートは、両面に画像が記録されているので、情報記録部7において、日付等の情報の記録は行なわれない。その後、シートは、乾燥部8及び搬送部10を経由して、ソータ部11の排出トレイ12に排出される。
【0032】
ここで、図3を用いて、図1に示すスキャナ17の構成について説明する。スキャナ17には、CCDラインセンサ42と、レンズ43と、ミラー45と、照明部46と、搬送ローラ47と、搬送ガイド部材48とが具備される。照明部46は、シートに向けて光を照射する。CCDラインセンサ42は、受光した光を電気信号に変換する。照明部46からシートに向けて照射された光は、シートで反射し、ミラー45及びレンズ43を介してCCDラインセンサ42に入射する(光路44)。CCDラインセンサ42において電気信号に変換された画像データは、画像解析部18へ入力し、その解析が行なわれる。搬送ローラ47は、シートを搬送し、搬送ガイド部材48は、シートをガイドするための支持部材である。搬送ガイド部材48でガイドされたシートは、搬送ローラ47によって所定の速度で搬送される。なお、本実施形態では、スキャナ17において最も高い解像度(CCDラインセンサ42の配置間隔)を1200dpiとし、ノズルの配列によって決まる解像度と同じである場合を例に挙げて説明する。なお、CCDラインセンサ42の配置よりも低い解像度で画像をスキャンする場合では、解像度に応じた複数のCCDラインセンサ42の出力を加算した画像データが生成される。なお、上記で説明したような例に限られず、例えばスキャナ17の解像度がノズルの配列によって決まる解像度の3分の1の解像度(400dpi)であってもよい。
【0033】
次に、図4を用いて、図1に示す記録ヘッド14の構成の一例について説明する。複数の記録ヘッド14には、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4つの色に対応した4種類の記録ヘッド14が含まれている。複数の記録ヘッドの各々は、同様の構成であるため、当該複数の記録ヘッドのうちの1つの記録ヘッドを例に挙げて説明する。ここで、シートの搬送方向をX方向とし、シート搬送方向に直交する方向をY方向として示している。以降の図面においても、X方向及びY方向はここに示す定義となる。
【0034】
記録ヘッド14には、例えば、有効吐出幅が約1インチの長さを持ち、かつシリコンで形成された記録チップ41(41a〜41h)が、ベース基板(支持部材)に千鳥状に8枚配置されている。各記録チップ41は、インクを吐出する複数のノズルが第1方向(Y方向)に沿って配列されたノズル列を複数有している。具体的には、4列のノズル列(ノズル列A、ノズル列B、ノズル列C、ノズル列D)が平行して配置されている。記録チップ41同士は、それぞれ所定数のノズル分だけオーバーラップされる。より具体的には、互いに隣接する記録チップにおけるノズル列の一部のノズルが互いにY方向に重複して配置される。
【0035】
各記録チップ41には、記録チップの温度を計測する温度センサ(不図示)等も設けられている。また、各ノズルの吐出口には、例えば、発熱抵抗素子から構成される記録素子(ヒータ)が設けられている。記録素子は、液体を加熱することによって液体を発泡させ、その運動エネルギーでノズルの吐出口から液体を吐出させることができる。記録ヘッド14は、有効吐出幅が約8インチの長さを有し、記録ヘッド14のY方向の長さは、A4の記録紙の短辺方向の長さとほぼ一致する。すなわち、1回の走査により画像の記録を完成させることができる。
【0036】
(クリーニング部)
次に、記録ヘッド14のノズル面をクリーニングするために用いられるクリーニング部について説明する。図5A及び5Bはクリーニング部に含まれる1つのクリーニング機構21の詳細構成を示す斜視図である。クリーニング部は、複数(4つ)の記録ヘッド14に対応した複数(4つ)のクリーニング機構21を有する。図5Aはクリーニング機構21の上に記録ヘッド14がある状態(クリーニング動作時)を、図5Bはクリーニング機構21の上に記録ヘッドがない状態を示す。
【0037】
クリーニング部にはクリーニング機構21、キャップ22、位置決め部材23が設けられている。クリーニング機構21は、記録ヘッド14のノズルの吐出口に付着した付着物を除去するワイパユニット24と、ワイパユニット24をY方向に沿って移動させる移動機構、これらを一体に支持するフレーム25を有する。移動機構は、駆動源の駆動によって、2本のガイドシャフト26によって案内されたワイパユニット24をY方向に移動させる。駆動源は、駆動モータ27とギア28、29を有し、ドライブシャフト30を回転させる。ドライブシャフト30の回転は、ベルト31とプーリとで伝達されてワイパユニット24を移動させる。
【0038】
図6はワイパユニット24の構成を示す図である。ワイパユニット24には、第1方向(Y方向)に沿って配列した記録チップ41の2つの列に対応するように2つの吸引口32が設けられている。2つの吸引口32は、記録チップ41の2つの列におけるX方向の間隔と同じ間隔を有する。また、2つの吸引口32は、記録チップ41の2つの列におけるY方向のずれ量とほぼ同じずれ量を有している。吸引口32は吸引ホルダ33に保持され、吸引ホルダ33は弾性体34によってZ方向に移動可能に構成される。
【0039】
2つの吸引口32には吸引ホルダ33を介してチューブ35が接続されており、チューブ35には吸引ポンプ等の負圧発生手段が接続されている。負圧発生手段を動作させると、吸引口32がインクやゴミを吸い取る。このようにして、記録ヘッド14におけるノズルの吐出口からインクやゴミを吸引する。ブレード36は左右2枚ずつ、計4枚のブレードがブレードホルダ37に保持されている。ブレードホルダ37はX方向における両端が支持され、X方向を回転軸として回転可能な構造となっている。ブレードホルダ37は、通常はストッパ38に弾性体39によって移動可能に構成される。ブレード36は、切換機構の動作によりワイピング位置と退避位置とでブレードの面の向きを変えることができる。吸引ホルダ33とブレードホルダ37はワイパユニット24の共通の支持体40上に設置されている。
【0040】
このようにクリーニング部で記録ヘッド14のノズルをクリーニングすることにより、ノズルの近傍への紙粉やほこり等のゴミの付着、インクミストの付着、インク粘度の増大、インク内への気泡やゴミの混入などによる不吐出ノズルを回復させることができる。
【0041】
<実施形態1>
次に、実施形態1における不吐検出動作に関して説明する。不吐検出動作とはノズル近傍への紙粉やほこり等のゴミの付着、インクミストの付着、インク粘度の増大、インク内への気泡やゴミの混入などによる不吐出ノズルを検出する動作のことである。
【0042】
図7は実施形態1に従う記録ヘッド14とスキャナ17、及び、画像60と検査パターン200の位置関係を示した概略図である。
【0043】
シート63は、X方向に沿って図面の上側から下側に向けて搬送される。記録ヘッド14においては、画像60及び検査パターン200を1回のシートの搬送の間に記録する。検査パターン200は、ノズルの不吐出を検査するためのパターンである。なお、検査パターン200の記録頻度は、任意に設定することができるが、ここでは、画像が記録される度に検査パターン200が挿入される場合を示している。以下の説明においては、説明を分かり易くするために、ブラック(Bk)の記録ヘッドを例に挙げて説明するが、その他の色の記録ヘッドについても同様の処理となる。ここで、領域61は、スキャナ17のCCDラインセンサ42において、画像の読み取りが可能な領域を示している。なお、領域61のY方向の幅は、Y方向に沿った検査パターン200の記録幅よりも広く構成されている。 符号62は、スキャナ17の対向する位置にあって、かつ、記録媒体の下側に設けられたバックグラウンドであり、全面が黒色に塗装されている。このように黒色に塗装されているのは、バックグラウンドからの光の反射によるスキャン結果への影響を軽減するためである。検査パターン200は、スキャナ17の読取が可能な領域61を通過する間に読み取られ、その読取結果は、画像解析部18へ転送される。これにより、不吐出ノズルに関する解析が行なわれる。
【0044】
次に、図8のフローチャートを参照しながら、不吐検出動作における処理について説明する。まず、ステップS1では、画像間に各色ごとの全ノズルを使用して検査パターン200が記録される。なお、ここでは説明を簡単にするためインク1色(Bk)の検査パターンを用いて説明を行う。図9は、記録ヘッド14と検査パターン200との関係を示す図である。図9では、記録ヘッド14上の複数の記録チップ41のうち、1つの記録チップのノズルにより記録される検査パターンを例示している。記録チップ41はY方向の解像度が1200dpiであり、X方向にA〜D列の4列で構成されている。
【0045】
検査パターン200は開始マーク110と位置合わせマーク111、A列用検査パターン121、B列用検査パターン122、C列用検査パターン123、D列用検査パターン124から構成されている。開始マーク110は、不吐出ノズルの解析の際に検査パターン200の開始位置を特定するのに使用される他、各ノズル列の予備吐出としても使用される。位置合わせマーク111は空白部分となっており、不吐出ノズルの概略位置を特定するのに使用される。なお、開始マーク110は不吐出ノズルがあった場合でも影響を受けにくいよう、全ノズル列を用いて記録される。
【0046】
1つのノズルにおける単位時間当たりの吐出発数を表す数字として、通常画像記録時に1200dpi毎に1発のドットを記録する場合をノズルデューティが50%であると定義する。その場合、開始マーク110は、最も多く使用するノズルで、1ノズルあたり10発のドットが20%のノズルデューティで記録される。即ち、4列のノズル列では合計して約40発を約80%相当のノズルデューティで記録されていることになる。
【0047】
A列〜D列用の検査パターン121〜124は、1ノズルあたり24発のドットをX方向に1200dpiずつ位置をずらして吐出することで構成したベタパターンである。そのベタパターンの単位時間当たりの吐出発数は前述したノズルデューティに換算すると、50%のノズルデューティとなっている。ここで、画像を記録する時のノズルデューティは最大でも30%のノズルデューティとなっており、A〜D列用検査パターンは画像記録時よりも1つのノズルにおける単位時間当たりの吐出発数が多く設定されている。
【0048】
また、図9において、白丸112は不吐出ノズルを示しており、黒丸113は吐出ノズルを表している。図9では、A列の24番ノズル、B列の10番ノズル、D列の16番〜17番ノズルが不吐出ノズルである。この時の検査パターン200は不吐出ノズルで記録すべき部分にはインクが吐出されておらず、空白領域となっている。また、不吐出以外にインク滴の着弾位置ずれが発生した場合にも同様に検査パターン200に空白領域ができるため、着弾位置のずれ量が所定の値を超えた場合には不吐出と同様に扱うことが可能である。
【0049】
ステップS2では、画像解析部18は、画像間に記録された検査パターン200を記録媒体の搬送を続けながらスキャナ17によって読み取らせる。実施形態1ではスキャナ17の読み取り解像度を異なる複数のモードの中から選択して設定する。ステップS2では、読み取り解像度を400dpiと設定して読み取りが行われる。
【0050】
ステップS3では、画像解析部18は、読み取った開始マーク110を認識し、ステップS4では、画像解析部18は、インクの種類ごとに解析を行うためのRGBレイヤを選択する。具体的には、Bk、Mの検査パターンはG(緑)レイヤ、Cの検査パターンはR(赤)レイヤ、Yの検査パターンはB(青)レイヤで解析が行われる。さらにステップS5では、画像解析部18は、位置合わせマーク111を認識してスキャンデータに対するノズルの概略位置を特定する。ステップS6では、画像解析部18は、スキャンデータをインク色毎またはノズル列毎に分割する。
【0051】
最後に、ステップS7では、画像解析部18は、分割して得られたインク色またはノズル列それぞれの検査パターン200に対応するスキャンデータに対して解析処理1を行う。これにより、不吐出または印字位置のずれ等が発生しているノズルを特定して不吐検出動作は終了となる。
【0052】
次に、解析処理1で行う詳細な処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。ステップS71では、画像解析部18は、解析処理1として、インクの不吐出や着弾位置ずれを検出するための不吐解析(第1解析処理)を行う。ステップS72では、画像解析部18は、解析の結果から継続して記録動作を行ってよいか判断する。ここで、継続して記録動作を行えると判定されている場合(解析結果OK)は、何も処理を行わずに記録動作が続行される。一方で、継続して記録動作を行えないと判定されている場合(解析結果NG)は、印刷を中断し、ステップS73に進んで回復処理が行われる。回復処理は、クリーニング部を用いて、例えば、ノズルに対して負圧発生手段を動作させながら吸引口32内部に負圧が与えられた状態においてフェース面をワイピングすること(吸引ワイピング)によって行われる。これによりノズル付近に付着したインクやゴミを高確率で除去することができる。ここでは回復処理として吸引ワイピングによる例を示したが、吸引ワイピング以外にもブレードワイピングや吸引回復、ノズルの加圧など、他の動作を行っても良い。
【0053】
このような回復処理を行ったとしても、吐出不良の原因を除去できない場合もある。回復処理後もさらに吐出不良が発生しているような場合には、不吐出ノズル以外のノズルを用いて記録を行う不吐補完が実行される(ステップS74)。なお、回復処理で吐出不良の原因を除去できない場合や、回復処理を行うことでゴミの位置が移動して他ノズルにも吐出不良が発生してしまう場合もあるため、回復処理を行わずに直ちに不吐補完を実行してもよい。
【0054】
このような不吐補完は、不吐出ノズルと判定されたノズルの記録データを、吐出不良と判定されていないノズルに割り振ることで行われる。本実施形態の記録チップ41は、1色あたり4列のノズル列を有しているので、1つの列のノズルが不吐出の状態となっても他3列の有効なノズルがあるため補完を行うことができる。補完方法に関して詳細は、特開2009−6560号公報に開示されているような方法を用いることができる。
【0055】
次に、図10のS71で行われる不吐解析(第1解析処理)について、図11のフローチャートを用いて説明を行う。ステップS101では、画像解析部18は、ノイズ低減のために各ノズル列で印字された検査パターン200によって取得されたスキャンデータを、シート搬送方向に加算平均処理を行う。具体的には、各ノズル列の検査パターン200においてスキャナ17で取得された、ノズル配列方向(第1方向、Y方向)に並んでいる複数の輝度値に対して所定のRGBレイヤ毎に加算平均が行われる。以下では、加算平均された輝度値を「生値」という。
【0056】
ステップS102では、画像解析部18は、加算平均処理された生値に対し、ノズル配列方向(第1方向)の輝度値の差分をとる差分算出処理を行う。この差分算出処理は、あるN番目の画素に対し、
差分値={(N+d番目の画素の輝度値)−(N番目の画素の輝度値)}/2
d:差分算出距離(差分値を算出するための距離)
を付与することと定義される。
【0057】
図12は、記録チップ41と例えばA列用の検査パターン121との関係の概要を示した図である。ここでは説明を簡単にするため、1つのノズル列を例にとり説明する。
【0058】
図12(a)は1つの不吐出ノズル(114)、隣接する2つの不吐出ノズル(115)、隣接する3つの不吐出ノズル(116)、隣接する4つの不吐出ノズル(117)がある状況を示している。図12(b)は図12(a)のような状態の記録チップで印字されたA列用検査パターン121を示している。図12(c)はステップS101において検査パターン121によって算出した生値(Raw)を示したものであり、横軸は画像の画素数であり、縦軸は輝度値を示している。図12(d)は、ステップS102における差分算出処理で算出した複数の差分値(diff)を第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルを示す図である。なお、この解析における差分算出処理では、差分算出距離dを2画素(第1の数)として差分値が算出されている。以下、d=2画素(第1の数)の差分算出処理のことを差分算出処理1(第1算出処理)と示す。
【0059】
ステップS103では、画像解析部18は、画素内の不吐出ノズルの数を推定するために、図12(c)において互いに反転した差分値のピーク差分値「ΔP」の算出処理を行う。
【0060】
図13は隣接で不吐出となったノズルの数を特定するためのΔP算出処理の詳細を示すフローチャートである。図14は生値と差分値とΔPとの関係を説明する図である。図14において、“Th+”は不吐検出における正の閾値であり、“Th−”は不吐検出における負の閾値である。また、RawはステップS101で算出した生値を、diffはステップS102で算出した差分値を示している。
【0061】
まず図13のステップS103−1では、画像解析部18は、差分算出処理が行われた差分値のうち、閾値を超える画素をカウントする。即ち差分値から、正の閾値Th+を上回る画素を検索する。Th+を上回る画素を見つけたら、ステップS103−2において、画像解析部18は、Th+を上回る画素の近傍で差分値の最大値が検索され、その最大値がプラスピークP1と定義される。同様に、プラスピークP1近傍でTh−を下回る画素を検索する。Th−を下回る画素を見つけたら、ステップS103−2において、画像解析部18は、Th−を下回る画素の近傍で差分値の最小値を検索し、その最小値をマイナスピークP2と定義する。このようにしてピークの画素が特定される。なお、Th+及びTh−はインクの種類等に応じて任意に設定できるものとする。
【0062】
ステップS103−3では、画像解析部18は、所定の範囲内において位置座標の小さい方からプラスピーク、マイナスピークの順番で揃っているかどうかを調べる。ここで、この順番で両方が揃っていると判断した場合はマイナスピーク近辺の画素に不吐出があると判断し、ステップS103−4においてピーク差分値(ΔP=P1−P2)が算出される。さらに、ステップS103−5では、画像解析部18は、そのマイナスピークの画素に対応するようにΔP(=P1−P2)の情報を記憶する。
【0063】
ΔPの大きさは連続して不吐出となっているノズル数と比例して大きくなるので、画素内で連続して不吐出となっているノズル数を推定するのに利用することができる。なお、生値の輝度が輝度の平均値の120%以下の場合はΔPの算出を行わないようにすることで誤検知を防止することができる。一方、プラスピーク、マイナスピークの順番で揃っていない場合には、ΔPを算出することなく処理はステップS103−4〜S103−5をスキップしてそのまま終了する。以上で、ΔP算出処理の説明は終了する。
【0064】
ステップS104では、画像解析部18は、図11のステップS103で算出されたΔPに対してN値化処理1を実行する。図15のフローチャートを用いてN値化処理1を説明する。N値化処理1では、ΔPから画素内で不吐出ノズルの数を推定する。具体的には、予め設定した閾値F1〜F4(F4>F3>F2>F1)とΔPとの大小を比較することにより、画素内の連続して不吐出となっているノズル数を判定する。
【0065】
図15によれば、ステップS104−1でΔPと閾値F4とが比較される。ここで、ΔP≧F4であれば、ステップS104−2に進み、不吐出ノズルの数が4つ以上に相当すると判断される。F4>ΔPであれば、処理はステップS104−3に進み、ΔPと閾値F3とが比較される。ここで、F4>ΔP≧F3であれば、ステップS104−4に進み、不吐出ノズルの数が3つに相当すると判断される。F3>ΔPであれば、ステップS104−5に進み、ΔPと閾値F2とが比較される。
【0066】
ここで、F3>ΔP≧F2であれば、処理はステップS104−6に進み、不吐出ノズルの数が2つに相当すると判断される。F2>ΔPであれば、処理はステップS104−7に進み、ΔPと閾値F1とが比較される。ここで、F2>ΔP≧F1であれば、ステップS104−8に進み、不吐出ノズルの数が1つに相当すると判断される。F1>ΔPであれば、ステップS104−9に進み、不吐出ノズルが無いと判断される。
【0067】
なお、ここでは、不吐出ノズルが無し、1つに相当、2つに相当、3つに相当、4つ以上に相当の5値化の例を示しているが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、閾値F1〜F4は任意に設定できるものとする。ここで、「相当」と表現しているのは、ステップS1で説明したように、不吐出以外にインク滴の着弾の位置ずれが発生した場合にも、着弾のずれ量が所定の値を超えた場合には不吐出と同様に扱うためである。
【0068】
次に、図11に示すように、連続して不吐出となっているノズルの数に応じて、継続して記録動作を行うかどうかの判定が行われる(ステップS105)。連続して不吐出となっているノズルの数が画像品位として許容できる範囲であればOKと判定し、許容できる範囲でなければNGと判定することができる。ここで継続して記録動作を行えないと判断された場合には、図10に示すように回復処理S73や不吐補完S74が行われることになる。
【0069】
本実施形態で用いられるようなラインセンサを構成するCCD素子は、半導体プロセスを用いて製造されるため、製造ばらつき等により各素子の検出感度が一定でないことがある。このように検出感度に差があるCCD素子を配列して構成されるCCDラインセンサで検出されたスキャンデータでは、単純にスキャンデータを閾値と比較して不吐出ノズルを特定すると不吐出ノズルかどうかを正確に判断することができない場合が生じてしまう。
【0070】
また、記録チップ41も半導体プロセスを用いて製造されるため同様に製造ばらつきが生じている場合や、吐出が行われるにつれて記録チップ内に温度分布が生じ場合等でインクの吐出量が記録チップ内で一定でないことがある。このようにインクの吐出量の変化が生じている場合、検査パターンを用いて検査されたスキャンデータを閾値と比較して不吐出ノズルを特定すると、不吐出ノズルかどうか正確に判断することができない。
【0071】
しかしながらスキャナ内の検出感度が一定でなく、ノズル列内でインクの吐出量のムラが生じていたとしても、本実施形態のような差分処理を用いて不吐出ノズルの検出処理を行うことで、スキャンデータのS/N比を大きくした状態で検出処理を行うことができる。これにより、確実に不吐出ノズルを特定して画像品位を保持するための回復動作や吐出補完動作を行うように制御することができる。
【0072】
<実施形態2>
実施形態1では不吐解析の過程でΔPとして差分値のピーク差分値を算出して連続した不吐出ノズルの数を算出したが、本実施形態ではピーク付近の差分値の積算値、即ち、「ΔP積算値」を用いて連続した不吐出ノズルの数を算出する不吐解析について説明する。これは図13の処理に替わる処理である。それ以外については実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0073】
図16はΔP積算値算出処理の詳細を示すフローチャートである。また、図17Aおよび図17Bは生値と差分値とΔP積算値との関係を説明する図である。なお、図16に示すフローチャートで、既に図13のフローチャートで説明したのと同じ処理ステップには同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。
【0074】
図17Aにおいて、“Th+”は不吐検出における正の閾値であり、“Th−”は不吐検出における負の閾値である。また、RawはステップS101で算出した生値、diffはステップS102で算出した差分値である。実施形態1と同様に、所定の範囲内において位置座標値(或いは画素番号)の小さい方からプラスピークP1、マイナスピークP2が並ぶ例が図示されている。図16のステップS103−1〜S103−3の処理により、所定範囲内に位置座標値の小さい方からプラスピーク、マイナスピークの順番で揃っているかどうかが調べられる。ここで、この順番で両方が揃っていると判断した場合はマイナスピーク近辺の画素に不吐出ノズルがあると判断し、処理はステップS103−4aに進む。
【0075】
ステップS103−4aでは、差分データを曲線であると仮定した場合の近似曲線の関数(diff)を取得し、式(1)のように積分を行うことでΔP積算値が算出される。
【0076】
【数1】
【0077】
そして、ステップS103−5aでは、ΔP積算値の情報がマイナスピークの画素に関連づけて記憶される。ΔP積算値は、図17Aの領域130の面積、即ち、上に凸になる部分(プラスピークP1)の面積(第1面積)と下に凸になる部分(マイナスピークP2)の面積(第2面積)との合計として表される。そして、第1面積と第2面積との合計に基づいて実施形態1の図15で示すようなN値化処理を行うことで、連続して不吐出となるノズルの数を実施形態1と同様に求めることができる。
【0078】
ここで差分算出値の積算値を用いるのは以下の理由による。スキャナ17により検出される画素位置と検査パターン121における不吐出による空白領域の位置との関係により、同じ不吐出でも輝度値に狭く鋭いピークが生じる場合と、広くなだらかなピークとなる場合がある。具体的には、例えば、空白領域が1つの画素に収まった場合は狭く鋭いピークが出るが、空白領域が2つの画素にまたがった場合は広くなだらかなピークが出る。そのため差分値のピーク部分のみを解析に用いると、不吐出数を解析する精度が下がる場合がある。しかし、本実施形態のように差分値の積算値を解析に用いることで、これらのピークの形による差を低減することができる。
【0079】
なお、以上の例では、差分データを曲線と仮定して得られた近似曲線の関数に対して積分公式を用いて差分値の積算値を計算したが、図17Bに示すようにピークと、そのピーク前後の画素の絶対値の加算値をΔP積算値としても良い。この場合、ΔP積算値は、
ΔP積算値=(プラスピーク及び前後1画素の差分値の絶対値の加算値)+(マイナスピーク及び前後1画素の差分値の絶対値の加算値)
のように定義される。ただし、ピーク前後1画素の差分算出値が前記ピークに対して逆符号となっている場合には、ΔP積算値の計算には用いないこととする。そうすることで、プラスピークとマイナスピークが近い場合にも、ピーク間の値を重複して加算するのを防ぐことができる。
【0080】
この場合、ΔP積算値は図17Bの領域137の加算値として表される。なお、絶対値の計算に用いるピーク前後の画素は、閾値Thを超えたか否かに関係なく加算計算に含めるものとする。この計算方法では図17Aのように近似曲線の関数を求めてから積算値を求める場合と比べて計算が簡略化できるため、処理不可を低減することができる。
【0081】
<実施形態3>
実施形態1および実施形態2においては、検査パターンの全領域において同じような解析方法を行う形態を示したが、本実施形態においては記録媒体上のY方向の位置に応じて異なる解析方法を用いる形態について説明を行う。なお、実施形態1との重複説明を避けるため、相違点について重点的に説明する。
【0082】
図18(a)〜図18(d)及び図19を用いて、実施形態3に係わる処理の概要について説明する。図18(a)は、スキャナ17の概要であり、上記図9で説明した概要と同様である。ここでは、記録媒体の一方(この場合、図中左側)の端部をY=0とし、もう一方の端部(この場合、図中左側)をY=cとして示している。なお、Y=a及びY=bについては後述する。図18(b)は、例えばA列用の検査パターン121が記録媒体上に印字された状態を示している。検査パターン121は、Y=0〜Y=cに渡って、フチなしで記録されている。また、この検査パターン121においては、用紙における図中左端部及び右端部付近、中央部付近にそれぞれ1つのノズルにおける不吐出が生じているため、それに対応する領域が空白領域になっている。図18(c)は、この検査パターン121から得られた生値を示す。
【0083】
ところでY=0及びY=cの位置では、バックグラウンドの全面が黒色に塗装されており、輝度値がほぼ「0」となるため、スキャナ17のバックグラウンド62と検査パターン121との間で急激に生値が変化することになる。このような急激な輝度変化を生じさせるようなバックグラウンドが、検査パターン121の近傍にあると、検査パターン内においても影響が生じる領域が発生することになる。以下、バックグラウンドの影響による急激に生値が変化している領域(符号81及び符号82)は紙端領域と呼ばれる。図18(c)は、ブラックインクの場合の生値が示されているが、他のインク色の場合は、ブラックインクより明度が高いため、ブラックインクの紙端領域よりも広い紙端領域が発生することになる。
【0084】
図18(d)は、図18(c)の生値を実施形態1で説明した差分算出処理1(第1算出処理)を行うことで得られた複数の差分値を、第1方向(Y方向)に沿って配列することにより得られるプロファイルを示す図である。図18(d)においては、上述した3か所の不吐出による差分値のみならず、Y=0及びY=cの近傍に紙端領域に基づいた大きなピーク(83及び84)が生じている。Y=0の近傍の紙端領域に基づいた差分値83は上向きの凸形状を示し、Y=cの近傍の紙端領域に基づいた差分値84は下向きの凸形状を示している。
【0085】
ここで、Y=0及びY=cの紙端領域における差分値のピーク(符号83及び符号84)は、実施形態1で説明したようなΔP算出処理を行う際に、誤ったピークを用いてΔP算出処理を行ってしまう可能性がある。具体的には、実施形態1を説明した図13に示す△P算出処理を行なった場合、最大値P1及び最小値P2として、符号83に示す下三角記号と符号84に示す上三角記号がそれぞれ検出されてしまう。つまり記録媒体の端部付近に不吐出のノズルがある場合には、バックグラウンドにより発生するピーク83及び84の影響で、誤ったピークを用いて△P算出処理が行われてしまうことになる。このようなバックグラウンドにより発生するピークを誤って検知してしまう可能性がある領域は、記録媒体の端部から1mm〜2mm程度の領域(第1の端部領域)である。
【0086】
そこで、実施形態3においては図19に示すように、記録媒体をY方向(ノズル配列方向)に沿って3つの領域に分けて、記録媒体上の位置に応じて異なるΔP算出処理が行われる。具体的には、記録媒体の一方の端部から所定範囲の領域A(0≦Y<a)と、記録媒体の他方の端部から所定範囲の領域B(b<Y≦c)と、それ以外の記録媒体の中央領域C(a≦Y≦b)とに分けて異なるΔP算出処理が行われる。a及びbは、バックグラウンドにより発生するピークを誤って検知してしまう可能性がある領域よりも、領域Aおよび領域Bが広い領域となるように設定されている。次に、3分割したY位置において、それぞれ異なる処理でΔPが算出される。
【0087】
このようなΔP算出処理では、まず最初に記録装置20は、差分値が用紙のY方向に沿ったどの領域から得られた信号であるかを判定する(S501)。判定の結果、差分値が領域A(0≦Y<a)の領域から得られたものであれば、記録装置20は、最小値P2を検出する(S502)。そして、最小値P2の絶対値を2倍することでΔPが算出される(S503)。これにより、Y=0の近傍に発生するバックグラウンドによる影響を受けることなく領域AのΔPを算出することができる。
【0088】
また、S501の判定の結果、差分値が領域B(b<Y≦c)の領域から得られたものであれば、記録装置20は最大値P1を検出する(S507)。そして、最大値P1を2倍することでΔPが算出される(S508)。これにより、Y=cの近傍に発生するバックグラウンドによる影響を受けることなく領域BのΔPを算出することができる。
【0089】
また更に、S501の判定の結果、差分値が領域C(a≦Y≦b)の領域から得られたものであれば、記録装置20は最大値P1及び最小値P2を検出する(S504及びS505)。この場合、実施形態1と同様の処理によってΔP(=P1−P2)が算出される(S506)。
【0090】
以上説明したように実施形態3によれば、記録装置20は、記録媒体上のY方向の位置に応じて3つの異なる処理方法を用いてΔPを求めている。これにより、バックグラウンドの影響を受けることなく、全ての領域で信頼性の高いΔPを算出することができる。そして、このようなΔPを用いて実施形態1の図15で示すようなN値化処理を行うことで、不吐出のノズルを特定することができる。すなわち、スキャナ内に検出感度の分布やノズル列内におけるインクの吐出量のムラが生じていたとしても、確実に不吐出ノズルを特定して画像品位を保持するための回復動作や吐出補完動作を行うように制御することできる。
【0091】
なお、スキャナ17のバックグラウンドが白色であれば、差分値の凸形状の方向が、上述した場合(バックグラウンドが黒色である場合)とちょうど逆になる。そのため、このような場合には、ピーク差分ΔPの算出において、上述した用紙左端部と用紙右端部との処理を入れ替えればよい。また、上述した説明では、不吐検出方法としてΔPを算出する例を用いて説明したが、実施形態2で説明したΔP積算値を用いて不吐出ノズルの特定してもよい。
【0092】
<実施形態4>
実施形態1および実施形態2においては、検査パターンの全領域において同じような解析方法を行う形態を示したが、本実施形態においては記録媒体上のY方向の位置に応じて解析方法を異ならせる形態について説明を行う。なお、実施形態1との重複説明を避けるため、相違点について重点的に説明する。実施形態1との相違点としては、図11のS103に示すようなΔP算出処理が挙げられる。
【0093】
ここで、図20(a)〜図20(d)及び図21を用いて、実施形態4に係わる処理の概要について説明する。図20(a)は、スキャナ17の概要であり、上記図9で説明した概要と同様である。ここでは、記録媒体の一方(この場合、図中左側)の端部をY=0とし、もう一方の端部(この場合、図中左側)をY=cとして示している。なお、Y=d及びY=eについては後述する。図20(b)に示す例えばA列用の検査パターン121は、Y=0〜Y=cに渡って、フチなしで記録されている。また、A列用の検査パターン121においては、記録媒体における領域D(0≦Y<d)、領域E(e<Y≦c)、および領域F(d≦Y≦e)にそれぞれ1つのノズルおける不吐出が生じているため、それに対応する領域が空白領域となっている。図20(c)は、A列用の検査パターン121から取得された生値を示している。横軸は画像数を示し、縦軸は輝度値を示している。
【0094】
ここで、スキャナ17により読み取った輝度値は、不吐出が存在する部分を除けば、本来、ほぼ一定となるはずであるが、図20(c)に示すように、記録媒体の中央部を凸としてなだらかな曲線を描く場合がある。このような状態が発生している場合には、同じ1つのノズルにおける不吐出であったとしても不吐出に起因したピークの大きさが異なってしまう。
【0095】
図20(d)は、図20(c)の生値を差分算出処理1(第1算出処理)を行うことで得られた複数の差分値を、第1方向(Y方向)に沿って配列することにより得られるプロファイルを示す図である。図20(c)と同様に、同じ1つのノズルにおける不吐出であるにも関わらず、記録媒体の中央部である領域Fのピーク92と、その領域Dおよび領域Eのピーク91とでは、ピークの大きさが異なることになる。つまり、このような状態でΔP算出処理を行うと、不吐出ノズルを正確に特定することが困難となってしまう。
【0096】
このような現象の原因としては、スキャナ17のバックグラウンド62による光の反射が原因として挙げられる。すなわち、スキャナ17とバックグラウンド62との距離が近いほど、反射光による影響を受けてしまう。なお、このような反射光による影響は、バックグラウンド62の色相や濃度によってその程度は違ってくる。例えば、バックグラウンド62が白色であれば記録媒体の端部における生値が検査パターンによる本来の値より上がることになり、黒色であれば記録媒体の端部における生値が検査パターンによる本来の値より下がることになる。但し、バックグラウンドが黒色の場合の方が、不吐検出処理に影響が少ないため、本実施形態においては、バックグラウンド62に黒色を採用している。なお、このような影響が懸念されるのは、用紙端部から10mm〜20mm程度の領域(第2の端部領域)である。
【0097】
そこで、実施形態4においては図21に示すように記録媒体をY方向(ノズル配列方向)に沿って3つの領域に分けて、記録媒体上の位置に応じて異なるΔP算出処理を行なう。具体的には、記録媒体の一方の端部から所定範囲の領域D(0≦Y<d)と、記録媒体の他方の端部から所定範囲の領域E(e<Y≦c)と、それ以外の記録媒体の中央領域F(d≦Y≦e)とに分けて異なるΔP算出処理を行う。d及びeは、バックグラウンドの影響が顕著に表れる領域が入るように設定されている。次に、3分割したY位置において、それぞれ異なる処理でΔPが算出される。
【0098】
このようなΔP算出処理では、記録装置20は、上述した実施形態1を説明した図13と同様にして、最大値P1及び最小値P2を算出する(S601及びS602)。
【0099】
次に、記録装置20は、差分値が用紙のY方向に沿ったどの領域から得られた信号であるかを判定する(S603)。判定の結果、差分値が領域D(0≦Y<d)から得られたものであれば、記録装置20はΔPに対して補正係数C1を乗じる(S604)。また、差分値が領域E(e<Y≦c)から得られたものであれば、記録装置20はΔPに対して補正係数C2を乗じる(S606)。つまり領域Dおよび領域Eはバックグラウンドによる影響を受けている可能性が高いためスキャナ17のS/N比が劣化している可能性がある。そのため、その影響を補正するため、補正係数C1及びC2をΔPに対して乗じている。
【0100】
なお、補正係数C1及び補正係数C2は、予め実験等を行なうことにより求めておけば良い。記録媒体の端部から所定範囲内の領域において検出されたピークの位置が、当該中央部に対して左右対称であれば、補正係数C1=補正係数C2であっても良い。
【0101】
また、S603の判定の結果、差分算出値が領域F(d≦Y≦e)から得られたものであれば、記録装置20は、実施形態1と同様の処理によってΔP(=P1−P2)を算出する(S605)。
【0102】
以上説明したように実施形態4によれば、記録媒体上のY方向の位置に応じて3つの異なる処理方法を用いてΔPを求めている。これにより、バックグラウンドの影響を受けることなく、全ての領域で信頼性の高いΔPを算出することができる。そして、このようなΔPを用いて実施形態1の図15で示すようなN値化処理を行うことで、不吐出ノズルを特定することができる。すなわち、スキャナ内に検出感度の分布やノズル列内でインクの吐出量のムラが生じていたとしても、確実に不吐出ノズルを特定して画像品位を保持するための回復動作や吐出補完動作を行うように制御することができる。
【0103】
なお、上述した説明ではΔPに対して補正係数を乗算してS/N比の補正を行なう場合について説明したが、これに限られず、不吐判定用の閾値に補正係数を乗じるようにしても良い。例えば、閾値F1〜F4をY方向に3分割し、その領域に応じて所定の定数(例えば、C1、C2)を乗算するようにしても良い。
【0104】
上述した説明では、実施形態3に係わる処理と、実施形態4に係わる処理とを別々に説明したが、これらの処理を組み合わせて実施してもよい。また、上述した説明では、不吐検出方法としてΔPを算出する例を用いて説明したが、実施形態2で説明したΔP積算値を用いて不吐出ノズルの特定を行ってもよい。
【0105】
<実施形態5>
次に、実施形態5について説明する。ここでは、実施形態4の変形例として実施形態5の処理を説明する。実施形態5に係わる課題は、実施形態4と同一であり、記録媒体の端部ではバックグラウンドの影響を受けることによってスキャナ17が読み取った信号のS/N比が劣化している点である。ここでは、実施形態4との重複説明を避けるため、相違点について重点的に説明する。相違点としては、図11のS103に示すΔP算出処理が挙げられる。
【0106】
ここで、図22を用いて、実施形態5に係るΔPの算出処理の流れの一例について説明する。S701は、実施形態4(図21)のS601に対応する。また、S702は、実施形態4(図21)のS602に対応する。実施形態4とのピーク差分ΔPの算出処理との相違点としては、S703に示すΔPを算出する式にある。すなわち、実施形態5においては、スキャナ17のS/N比を補正するための補正係数はF(Y)で与えられる。
【0107】
この補正係数F(Y)は、実施形態4で説明した補正係数とは異なり、Y位置に関する連続的な関数となる。すなわち、補正係数F(Y)は、用紙の端部からの距離に応じた値となる。これにより、実施形態5においては、実施形態4よりも更に高度にスキャナ17のS/N比の補正を行なうことができる。
【0108】
以上説明したように実施形態5によれば、Y方向に連続的な補正係数をΔPに乗算する。これにより、スキャナのS/N比の減少による影響を緩和することができる。なお、上述した説明では、ΔPに対して補正係数を乗算してS/N比の補正を行なう場合について説明したが、これに限られず、不吐判定用の閾値に補正係数を乗算するようにしても良い。
【0109】
すなわち、上述した不吐判定用の閾値F1〜F4(定数)の代わりに、Y方向に連続的な変数F4(Y)、F3(Y)、F2(Y)、F1(Y)が用いられる。これにより、ΔPに補正係数を乗算する場合と同等の効果が得られる。また、ΔPに補正係数を乗算する場合とは異なり、不吐判定用の閾値に対する補正係数を変更するため、より高精度に補正が行なえることとなる。このように不吐判定用閾値に補正係数を乗算するようにした場合であっても、スキャナ17のS/N比の減少による影響を緩和することができる。
【0110】
また、実施形態3に係る処理と、実施形態5に係る処理とを組み合わせて実施しても構わない。
【0111】
また、上述した説明では、不吐検出方法としてΔPを算出する例を用いて説明したが、実施形態2で説明したΔP積算値を用いて不吐出ノズルの特定を行っても良い。
【0112】
<実施形態6>
実施形態1〜5では、不吐出ノズルにより生じる検査パターン121の空白領域を用いて不吐出ノズルを検出する場合を説明した。しかしながら検査パターン上に、インクが付着してしまい、吐出不良が発生しているにもかかわらず正確に不吐検出処理が行えない場合がある。そこで、実施形態6では、実施形態1で説明した不吐検出に加えて、検査パターンに付着したインクの検出を行う例を示す。
【0113】
図23は実施形態6に従う不吐検出処理を示すフローチャートである。図23において、図8において説明したのと同じ処理には同じステップ参照番号が付されており、ステップS1〜3、ステップS5〜6については実施形態1と同じ処理であるため説明を省略する。
【0114】
まず、図24を用いて検査パターン上にインクが付着してしまう原因を説明する。図24はノズル口付近にゴミが付着して吐出不良が発生した状況を模式的に示す概略図である。図24(a)は、ゴミ51が付着して吐出口50を全て覆った場合を示している。この場合は図24(a-2)および(a-3)に示すようにインクは吐出されないため、検査パターンにおいて空白領域が形成されることになる。
【0115】
一方、図24(b)は、ゴミ51が吐出口50の一部を覆い、インクが中途半端に吐出されている状態を表している。この場合には図24(b−2)(b−4)に示すように中途半端に吐出されたインクは付着しているゴミ51付近に溜まり、ノズルデューティが高くなったタイミングや、ある程度の量に達したタイミングなどで図24(b―3)に示すように垂れてしまう。このような現象によって、検査パターン上にインクが垂れると正確に不吐検出処理が行えなくなってしまう。なお、このように検査パターン上に垂れたインクは、図24(b−2)のようにゴミ51の付着によって発生する場合と、発生しない場合がある。
【0116】
また、検査パターン上に垂れたインクは、単位面積あたりのインク吐出量が多い(デューティーが高い)場合に発生しやすくなる。そのため、画像記録時よりも高いデューティで検査パターンを印刷することで、インク垂れを発生させてこのような状態を確認しやすくすることができる。
【0117】
図25は、記録された検査パターンにインク垂れが発生した場合の記録ヘッドと検査パターンの関係を示した図である。図25において、118はゴミ51等が付着した吐出不良ノズル(灰色丸)、白丸112と黒丸113とはそれぞれ、不吐出ノズルと吐出ノズルを表している。図25の例では、B列の10番ノズルからインク垂れが発生し、B列及びC列の一部の検査パターン上にインクが濃くなった部分119がある。
【0118】
図23に戻って説明を続けると、ステップS4−1では、記録装置20は、インクの種類ごとに解析を行うRGBレイヤを選択する。具体的には、Bk、Mの検査パターンはG(緑)レイヤ、Cの検査パターンはR(赤)レイヤ、Yの検査パターンはB(青)レイヤで解析が行われる。
【0119】
なお、本実施形態6では、後述する解析処理2で行う不吐解析(第1解析処理)およびインク垂れ解析(第2解析処理)のいずれにおいても上述した1つのRGBレイヤを選択して解析が行われる。しかし、これに限られるものではなく、インク垂れ解析に関してはRGB全てのレイヤにて解析が行われても良い。これは、インク垂れが発生した場合はインク滴が他のインクの検査パターン上に垂れる可能性があり、その場合の検出精度を高めるためである。最後に、ステップS7−1では、分割した画像に対して解析処理2が行なわれ、不吐検出処理は終了となる。
【0120】
次に、解析処理2で行う詳細な処理について説明する。図26は解析処理2を示すフローチャートである。本実施形態では、解析処理2として、不吐出ノズルやインク滴の着弾位置ずれなどを検出するための不吐出解析(第1解析処理)と、検査パターン上に垂れたインクを検出するためのインク垂れ解析(第2解析処理)とが実行される。そして、ステップS76では、画像解析部18は、S71およびS75における解析の結果から、継続して記録動作を行ってよいか否か、即ち、これらの解析結果が共にOKかどうかを判断する。ここで、両方の解析結果ともにOKと判定された場合は、処理は何も処理を行わずに記録を続行するが、何れかの解析結果がNGと判定された場合は記録を中断し、処理はステップS77に進んで回復処理を行った後、ステップS78で不吐補完を実行する。
【0121】
ここで、実施形態6における回復処理ではノズルに対して、実施形態1と同様に吸引ワイピングが行われる。また、インク垂れ解析がNGと判定された場合でも不吐補完を行うのは、図27の(b)を用いて説明したように、不吐出が起因してインク垂れが発生するケースがあるためである。なお、実施形態1で説明した理由と同様の理由から、時間短縮と状態保存の観点から回復処理を行わずに直ちに不吐補完を実行しても良い。なお、実施形態6では回復処理として吸引ワイピングを行うが、吸引ワイピング以外にもブレードワイピングや吸引回復、ノズル加圧など、他の動作を行っても良い。また不吐補完の方法に関しても、実施形態1で説明したものと同様である。
【0122】
次に、上述した解析処理2におけるインク垂れ解析(第2解析処理(ステップS75))について図27のフローチャートを参照して詳細に説明する。なお、不吐出解析(第1解析処理(ステップS71))は実施形態1で説明したものと同様であるため説明を省略する。
【0123】
ステップS201では、記録装置20は、不吐解析のステップS101と同様の加算平均処理を行い、生値を算出する。ステップS202では、記録装置20は、ステップS102における差分算出処理1と同様の処理である差分算出処理2(第2算出処理)を行って差分値を算出する。
【0124】
図28はインクが検査パターン上に垂れた場合の記録チップ41と例えばA列の検査パターン121との関係を示す図である。図28(a)は検査パターンにインク(119)が垂れた状況を示している。図28(b)はA列用の検査パターン121上にインクが垂れて濃くなっている部分119が発生している状態を示している。図28(c)はステップS201で算出した生値(Raw)を図示したものであり、横軸は画像の画素数であり、縦軸は輝度値である。図28(d)はステップ202における差分算出処理2(第2算出処理)で算出した複数の差分値(diff)を、第1方向(Y方向)に沿って配列することにより得られるプロファイルを示す図である。ここでインク垂れ解析(第2解析処理)における差分算出処理2では、不吐解析(第1解析処理)における差分算出距離(第1の数)よりも広い距離d=50画素(第2の数)が用いられている。
【0125】
本願発明の発明者の検討によると、ステップS104で説明したN値化処理1で判別する1〜4の不吐出が発生した場合の検査パターン121における空白領域の幅は約10μm〜80μm程であった。これに対し、インク垂れによる輝度値の変化量は数100μm以上の場合が大半であった。つまり、インク垂れの輝度値の変化量は、不吐出による輝度値の変化量に比べて広いため、不吐解析と同じような差分を算出する距離で処理を行ってしまうと、ピークを検出できない可能性があるといえる。そのため、不吐出解析において差分を算出した距離(第1の数)より広い距離(第2の数)を用いて差分算出処理2を行うことで、確実にピークを検出することができる。
【0126】
ステップS203では画素付近のインク垂れによる、記録以外に付着したインクを検出するために差分値の最大値と最小値の差である「インク垂れによるΔP」の算出処理を実行する。図29はインク垂れによるΔP算出処理の詳細を示すフローチャートである。また、図30は生値と差分値とインク垂れによるΔPとの関係を説明する図である。図30において、“Th+”はインク垂れの検出における正の閾値であり、“Th−”はインク垂れの検出における負の閾値である。また、RawはステップS201で算出した生値、diffはステップS202で算出した差分値を示している。さらに、ステップS103と同様に、Th+を上回る差分算出値の最大値がプラスピークP3と定義され、Th−を下回る差分値の最小値がマイナスピークP4と定義される。なお、“Th+”及び“Th−”はインクの種類等に応じて任意に設定できるものとする。
【0127】
図29によれば、ステップS203−1では、ステップS103−1と同様にこれらの閾値を超える画素がカウントされる。即ち。差分値に対して、負の閾値Th−を下回る画素が検索される。Th−を下回る画素を見つけたら、ステップS203−2で、近傍の差分値の最小値を検索し、その最小値がマイナスピークP4と定義される。次に、マイナスピークP4近傍でTh+を上回る画素を検索する。Th+を上回る画素を見つけたら、近傍の差分値の最大値を検索し、その最大値がプラスピークP3と定義される。このようにしてピークの画素が特定される。
【0128】
そして、ステップS203−3では、所定範囲内に位置座標値の小さい方からマイナスピーク、プラスピークの順番で揃っているかどうかを調べる。両者が、この順番で揃っていると判断した場合はプラスピーク近辺の画素にインク垂れがあると判断し、ステップS203−4においてピーク差分値(ΔP=P3−P4)が算出される。そして、ステップS203−5では、そのプラスピークの画素に対応するようにインク垂れによるΔP(=P3−P4)の情報が記憶される。
【0129】
これに対して、両者が、マイナスピーク、プラスピークの順番で揃っていないと判断した場合には、ΔPを算出することなく処理はステップS203−4〜S203−5をスキップしてそのまま終了する。以上で、インク垂れによるΔP算出処理の説明は終了する。なお、実施形態6では生値の輝度値が平均値の80%以上の場合はインク垂れによるΔPの算出を行わないことで、誤検知を防止することができる。
【0130】
次に、図27のステップS203で算出されたΔPに対して、N値化処理2が実行される(ステップS204)。図31のフローチャートを用いてN値化処理2を説明する。
【0131】
実施形態6では、インク垂れの有無を判断するためのN値化処理において2値化が行われる。具体的には、予め設定されたΔPの閾値Fbと算出されたΔPとの大小を比較することにより、インク垂れの有無が判断されている。
【0132】
図31によれば、ステップS204−1では、インク垂れ解析における閾値FbとΔPとが比較される。ここで、ΔP≧Fbであれば、処理はステップS204−2に進み、インク垂れが有ると判定される、ΔP<Fbであれば、処理はステップS204−3に進み、インク垂れは無しと判定される。
【0133】
図27に戻って説明を続けると、ステップS205では検査パターンへのインク垂れ解析に関してOK/NGの判定が行われる。ステップS204の処理でインク垂れが検出されなかった場合はOKと判定され、インク垂れが検出された場合はNGと判定される。このようなインク垂れ解析を行うことによって、インクが検査パタンに垂れる場合以外にも記録媒体と記録ヘッドが接触してしまうことによってインクが記録媒体へ付着してしまう場合も検出することができる。
【0134】
以上説明した実施形態6に従えば、不吐解析とインク垂れ解析との両方を行うことができるため、より正確に記録動作中に発生する吐出不良を検出することができる。また、本実施形態では不吐解析とインク垂れ解析ともに最大値と最小値との差を算出したΔPを用いて解析処理が行われたが、実施形態2で説明したΔP積算値を用いても良い。
【0135】
<実施形態7>
実施形態6においては、図26のステップS76で不吐出解析とインク垂れ解析との両方の解析結果がでた後に、解析結果の判断を行う例を示した。本実施形態では、不吐出解析とインク垂れ解析とのそれぞれの解析結果に応じて判断を行う例を示す。
【0136】
図32は実施形態7に従う解析処理3を示すフローチャートである。図32において、既に図26において説明した処理と同じ処理には同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。ここでは、この実施形態に特有な処理についてのみ説明する。
【0137】
図32と図26とを比較すると分かるように、この実施形態ではステップS71における不吐解析(第1解析処理)とステップS75におけるインク垂れ解析(第2解析処理)とがそれぞれ終了した時点で、それぞれの解析結果についてOK/NGが判断される。
【0138】
図32によれば、ステップS71aにおいて、不吐解析の結果がNGと判断された場合、実施形態6と同様にステップS77で回復処理が実行される。その後、ステップS78において、不吐補完が行われる。また、ステップS75aにおいて、インク垂れ解析の結果がNGと判定された場合は、ステップS79に進み、プラスピーク前後で差分値が正である範囲の画素に含まれるノズルが全て不吐出ノズルと設定される。そして、その付近の領域にインク垂れを生じさせるようなノズルが発生しているとして不吐補完が行われる。このように不吐補完が行われることにより、ゴミ等が付着しているノズルからインクが吐出されなくなるため、記録媒体へのインク垂れを防止することができる。
【0139】
図33は生値と差分値とインク垂れを生じさせるような不吐出ノズルを設定する範囲との関係を示す図である。図33には、プラスピークP3に続いて差分値(diff)が正の値がしばらく連続することが示されている。ステップS79ではこのような範囲のノズルを不吐出ノズルと設定して不吐補完が行われている。
【0140】
以上説明した実施形態に従えば、適切なタイミングで適切な対応を行うことができ、より効率的な記録動作が可能となる。
【0141】
<実施形態8>
実施形態8に不吐解析(第1解析処理)の結果に対する対応とインク垂れ解析(第2解析処理)の結果に対する対応の他の例を示す。図34は本実施形態に係る解析処理4のフローチャートである。なお、図34において、既に実施形態6の図26で説明したのと同じ処理ステップには同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。ここでは、この実施形態に特有の処理についてのみ説明する。
【0142】
実施形態6と同様に、ステップS71、S75、S76では読み取った不吐検出パターン121に対し、不吐解析(第1解析処理)とインク垂れ解析(第2解析処理)とが実行され、その解析結果の判定が行われる。これらの解析結果が共にOKと判定された場合は何も処理が行われずに記録を続行するが、何れかの解析結果がNGと判定された場合は記録が中断され、ステップS77で回復処理が実行される。
【0143】
ステップS78aでは不吐補完を正確に行うため、より詳細に不吐出ノズルの位置を特定する不吐補完用検査パターンが印字される。図35は記録ヘッド41における1列のノズル列と不吐補完用検査パターンの関係を説明する図である。不吐出補完用検査パターンは開始マーク131と位置合わせマーク132、検査パターン133から構成されている。また、図35において、白丸134と黒丸135はそれぞれ、不吐出ノズルと吐出ノズルを表しており、ここではA列の14番ノズルと27番ノズルが不吐出状態となっている。
【0144】
開始マーク131は不吐補完用検査パターンの開始位置を特定するために使用され、位置合わせマーク132は不吐出ノズルのY方向の概略位置を特定するのに使用される。これらのマークは、各ノズル列の予備吐出としても使用される。なお、開始マーク131および位置合わせマーク132は、不吐出ノズルがあった場合でも影響を受けにくいよう、全ノズル列を用いて記録される。開始マーク131およb位置合わせマーク132は、両方のマークの記録に使用する位置にあるノズルによって、1つのノズルあたり15個のドットが20%のノズルデューティで記録されている。即ち、全4列分のノズル列を合計すると約60個を約80%相当のノズルデューティで記録されていることになる。
【0145】
また、不吐補完用検査パターンとして印字される検査パターン133は、隣接するノズルが同時に駆動されないようにノズル列を連続した複数のノズルからなる複数の組に区分けして、組内のノズルを順番に駆動している。具体的には、1ノズルあたり5個のドットをX方向に600dpiずつ位置をずらして印字することで、1ノズル分の検査パターンが構成されている。つまり不吐出検査パターンの単位時間当たりの吐出発数をノズルデューティに換算すると、25%のノズルデューティとなっている。
【0146】
ステップS78bでは、この不吐出補完用検査パターンをスキャナ17で読み取る。その読み取り解像度は1200dpiとする。さらに、ステップS78cではこの読み取りにより得られた画像データの輝度値と閾値を比較することで不吐出ノズルが特定される。なお、ここで不吐出ノズルを特定する際に、実施形態1で示すような差分算出処理や、差分値のピーク差分を用いて処理を行っても良い。また、実施形態2で示すような差分算出値の積算値を用いて処理を行っても良い。
【0147】
最後に、ステップS78で特定された不吐出ノズルのかわりに他のノズル列のノズルに記録データを振り分けて記録を行う不吐補完が行われる。
【0148】
以上説明した本実施形態に従えば、隣接するノズルが同時に駆動されていない検査パターンを用いて不吐出ノズルの特定を行うことにより、不吐出ノズルの位置をより正確に特定することができる。そのため、不吐出ノズルが発生することによる画像品位の低下を防止することができる。
【0149】
また本実施形態では、不吐補完用の検査パターンを、最初に記録する検査パターンよりも少ないドット数で印字している。そのため、インク垂れが発生する確率が低い状態で不吐出ノズルの位置を特定することができる。具体的には、不吐補完用検査パターンの形成に用いられる1つのノズルあたりの合計吐出回数は最大で20回であり、これは通常の検査パターンの34回に比べて少ない。そのため、その分検査パターンへのインク垂れの発生確率を低減することができる。
【0150】
また、吸引ワイピング等の回復処理を行い回復処理で回復されるような不吐出がなくなっている状態で不吐補完用の検査パターンが印字されているため、さらに、不吐出検査パターン上にインクが垂れる確率は抑えられている。
【0151】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置およびその処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度で長尺な記録ヘッドの製造が可能になってきている。このような記録ヘッドは、一般的に、フルラインヘッド等と呼ばれ、幅が広い記録領域に対して1回の記録走査によって画像を完成させることができる。フルラインヘッドは、従来のシリアルスキャン用のヘッドと比較してノズル数が格段に多い。そのため、全てのノズルにおける吐出状態を正常に保つことは難しく、不吐出ノズルが発生してしまう可能性が高い。不吐出ノズルが発生する原因としては、例えば、ノズル近傍への紙粉やほこり等のゴミの付着、インクミストの付着、インク粘度の増大、インク内への気泡やゴミの混入など、様々な要因が挙げられる。
【0003】
記録動作中に突発的にこのような不吐出ノズルが発生してしまうと、画像品位の低下につながってしまうため、不吐出ノズルを速やかに検出して画像品位を保持するための技術が必要とされている。不吐出ノズルを検出する方法として、特許文献1に開示された技術が知られている。
【0004】
特許文献1では、ライン型のインクジェットヘッドで各色ごとに複数ライン分の印字が行われ、それぞれの濃度データをラインセンサが取得している。そして、各色ごとに複数ライン分の濃度データを積算した積算濃度データが取得され、積算濃度データと閾値とを比較することで不吐出ノズルが特定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−101964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で用いられるラインセンサは、複数のCCD素子を1列に配列させることで構成されている。このような構成では、例えば、複数のCCD素子の検出感度が一定でないと、正確な濃度データを測定することができず、不吐出ノズルを特定できない可能性がある。これでは、記録ヘッドの回復処理や他のノズルを使用して画像補完(不吐補完)を行うことができず、画像品位が低下してしまう。 そこで、本発明は、不吐出ノズルの特定を行う上で有利な技術を有する記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての記録装置は、インクを吐出して記録媒体に記録を行う記録装置であって、インクを吐出する複数のノズルが第1方向に沿って配列されたノズル列を含む記録ヘッドと、前記記録ヘッドにおける前記複数のノズルからインクを吐出することにより前記記録媒体に記録された検査パターンを、前記複数のノズルが配列する前記第1方向に並ぶ複数の輝度値として読み取る読取手段と、前記複数の輝度値のうち前記第1方向に所定の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出することにより、複数の差分値を算出する算出手段と、前記複数の差分値に基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する解析手段と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、不吐出ノズルの特定を行う上で有利な技術を有する記録装置を提供するを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に関わる記録装置20を配して構成した記録システムの一例を示す図である。
【図2A】記録装置における記録動作の概要を示す図である。
【図2B】記録装置における記録動作の概要を示す図である。
【図3】スキャナの構成の一例を示す図である。
【図4】記録ヘッドの構成の一例を示す図である。
【図5A】クリーニング機構の構成を示す斜視図である。
【図5B】クリーニング機構の構成を示す斜視図である。
【図6】ワイパユニットの構成を示すための図である。
【図7】実施形態1における不吐検出動作の概要を説明するための図である。
【図8】実施形態1における不吐検出処理を説明するフローチャートである。
【図9】実施形態1における不吐出が発生した時の記録ヘッドと不吐検出用パターンの関係を示すための図である。
【図10】実施形態1における不吐検出動作後の処理を示すフローチャートである。
【図11】実施形態1における不吐出の解析処理を示すフローチャートである。
【図12】実施形態1における不吐出が発生した時の検査パターンと生値と差分値との関係を説明する図である。
【図13】実施形態1におけるΔP算出処理を示すフローチャートである。
【図14】実施形態1におけるΔPの概要を説明するための図である。
【図15】実施形態1におけるN値化処理1を示すフローチャートである。
【図16】実施形態2におけるΔP積算値の算出処理を示すフローチャートである。
【図17A】実施形態2におけるΔP積算値の概要を説明するための図である。
【図17B】実施形態2におけるΔP積算値の概要を説明するための図である。
【図18】実施形態3における処理の概要を説明するための図である。
【図19】実施形態3におけるΔP算出処理を示すフローチャートである。
【図20】実施形態4における処理の概要を説明するための図である。
【図21】実施形態4におけるΔP算出処理を示すフローチャートである。
【図22】実施形態5におけるΔP算出処理を示すフローチャートである。
【図23】実施形態6における不吐検出処理を説明するフローチャートである。
【図24】実施形態6における吐出不良に起因するインク垂れを説明するための図である。
【図25】実施形態6におけるインクが垂れた際の記録ヘッドと検査パターンの関係を示すための図である。
【図26】実施形態6における解析処理2を示すフローチャートである。
【図27】実施形態6におけるインク垂れ解析を示すフローチャートである。
【図28】実施形態6におけるインクが垂れた時の検査パターンの状態と生値と差分値との関係を説明するための図である。
【図29】実施形態6におけるインク垂れ解析時におけるΔP算出処理を示すフローチャートである。
【図30】実施形態6におけるインク垂れ解析時におけるΔPの概要を説明するための図である。
【図31】実施形態6におけるN値化処理2を示すフローチャートである。
【図32】実施形態7における解析処理3を示すフローチャートである。
【図33】実施形態7におけるインク垂れが発生した際に不吐出ノズルと設定範囲を説明するための図である。
【図34】実施形態8における解析処理4を示すフローチャートである。
【図35】実施形態8における記録ヘッドと不吐補完用の検査パターンの関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明では、インクジェット記録方式を用いた記録装置を例に挙げて説明する。記録装置としては、例えば、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタであってもよいし、また、例えば、記録機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであってもよい。また、記録装置は、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置であっても良い。
【0011】
なお、以下の説明において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。更に人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン、構造物等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も表す。
【0012】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表す。
【0013】
更に、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様に広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付加されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表す。
【0014】
また更に、「記録素子」(「ノズル」という場合もある)とは、特に断らない限りインク吐出口乃至これに連通する液路及びインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括していうものとする。
【0015】
<共通実施形態>
まず、以下に説明するいくつかの実施形態に共通の装置構成を説明する。図1は、本発明の共通実施形態に係るインクジェット方式の記録装置(以下単に、記録装置と呼ぶ)を配して構成した記録システムの一例を示す図である。なお、本実施形態においては、記録媒体は、ロール状に巻かれた連続シートを使用し、記録装置は、片面記録及び両面記録の両方に対応した記録装置を例に挙げて説明する。このような記録装置は、例えば、大量の枚数の記録を行なう場合に好適である。記録システムは、パーソナルコンピュータ(以下、単に、コンピュータと呼ぶ)19と、記録装置20とを具備して構成される。
【0016】
コンピュータ19は、画像データを供給する機能を果たす。コンピュータ19には、CPU等の主制御手段、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶手段が具備される。また、コンピュータ19にはその他、キーボードやマウス等の入出力手段、ネットワークカード等の通信手段等も具備されていても良い。なお、これら各構成部は、バス等により接続され、記憶手段によって記憶されたプログラムを主制御手段が実行することで制御される。
【0017】
記録装置20は、コンピュータ19から送られてきた画像データに基づいて記録媒体上に画像を記録する。なお、本実施形態においては、記録装置20がインクジェット方式を採用し、ロール状の記録媒体(連続シート)に対して記録可能に構成される場合について説明する。ここで、記録装置20の内部には、シート供給部1と、デカール部2と、斜行矯正部3と、記録部4と、検査部5と、カッター部6と、情報記録部7と、乾燥部8と、シート巻取部9と、搬送部10とが設けられる。この他、記録装置20の内部には、ソータ部11、排出トレイ12、制御部13、後述のクリーニング部等が設けられる。記録媒体(連続シート)は、図中の太線で示すように、搬送経路に沿ってローラ対やベルトとを具備する搬送機構によって搬送される。この搬送経路上において、記録装置20に設けられる各構成部は、シートに対して各種処理を行なう。シート供給部1は、連続的にシートを供給する。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納可能に構成されており、1つのロールからシートを引き出して供給する。なお、収納可能なロールは、必ずしも2つである必要はなく、1つ或いは3つ以上のロールを収納可能に構成されていても良い。
【0018】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートの反りを軽減させる。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、反対方向の反りを与えるようにシートをデカールさせる。これにより、シートの反りが軽減される。
【0019】
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの進行方向に対する斜行を矯正する。斜行矯正部3では、基準となるシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0020】
記録部4は、搬送されるシート上に画像を記録する。記録部4には、シートを搬送する複数の搬送ローラの他、複数のインクジェット記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドと呼ぶ)14が設けられる。各記録ヘッド14は、フルライン型の記録ヘッドで構成され、使用が想定されるシートの最大幅に対応した記録幅を有している。
【0021】
複数の記録ヘッド14は、シートの搬送方向に沿って並べられている。本実施形態の記録部4には、Bk(ブラック)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、の4色に対応した4種類の記録ヘッドが設けられる。記録ヘッドの並び順は、シート搬送方向の上流側から、Bk、C、M、Yとなっており、それぞれの記録ヘッドは、シート搬送方向に沿ってその記録幅を揃えて配置される。なお、色数及び記録ヘッドの数は、必ずしも4つである必要はなく、適宜変更できる。また、インクジェット方式は、電気熱変換素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介して記録ヘッド14に供給される。
【0022】
検査部5は、シートに記録されたパターンや画像を光学的に読み取り、例えば、記録ヘッド14のノズルの状態、シートの搬送状態、画像位置等を検査する。検査部5は、画像を読み取るスキャナ17と、当該読み取られた画像を解析してコントローラ部15へその解析結果を送信する画像解析部18とを具備して構成される。
【0023】
スキャナ17は、例えば、シートの搬送方向と交差する方向に配されるCCDラインセンサで構成される。CCDラインセンサは、例えば、2次元イメージセンサで構成され、シートの搬送方向と交差する方向(ノズル配列方向)に読取素子として用いられるCCD素子が複数並べられている。なお、スキャナ17は、必ずしもCCDラインセンサで構成される必要はなく、その他の方式のセンサで構成されてもよい。また、画像解析部18には、例えば、当該読み取られた画像を解析するCPU等が設けられる。カッター部6は、シートを所定の長さにカットする。カッター部6には、シートを次の工程に送り出すための複数の搬送ローラが設けられる。情報記録部7は、シートの裏面にシリアル番号や日付などの情報を記録する。乾燥部8は、シートを加熱して、シート上のインクを短時間に乾燥させる。乾燥部8には、シートを次の工程に送り出すための搬送ベルト及び搬送ローラが設けられる。
【0024】
シート巻取部9は、両面記録を行なう際に、シート表面の記録が完了したシートを一時的に巻き取る。シート巻取部9には、シートを巻き取るために回転する巻取ドラムが設けられる。シート表面の記録が終了した後、カッター部6でカットされていないシートは、巻取ドラムに一時的に巻き取られる。巻き取りが終われば、巻取ドラムが逆回転し、巻き取られたシートは、デカール部2を経て記録部4に搬送される。搬送されたシートは、表面と裏面が反転されているため、記録部4においてシート裏面に記録を行なうことができる。両面記録についての具体的な動作については後述する。
【0025】
搬送部10は、シートをソータ部11まで搬送する。ソータ部11では、必要に応じて、異なる排出トレイ12に振り分けてシートを排出する。制御部13は、記録装置20における各部を制御する。制御部13は、例えば、CPU、メモリ(ROM、RAM)、各種I/Oインターフェース等を備えた主制御部15と、電源部16とを具備して構成される。
【0026】
次に、図2を用いて、記録動作時の基本的な動作の流れについて説明する。記録動作は、片面記録と両面記録とでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。ここで、図2Aは、片面記録時の動作を説明するための図である。図2Aには、シート供給部1から供給されたシートに画像が記録された後、当該シートが排出トレイ12に排出されるまでの搬送経路が太線で示されている。
【0027】
シート供給部1からシートが供給されると、デカール部2及び斜行矯正部3において、それぞれ処理された後、記録部4において、シート表面に画像が記録される。画像が記録されたシートは、検査部5を経た後、カッター部6において所定長さ毎にカットされる。カットされたシートは、情報記録部7において、必要に応じてその裏面に日付等の情報が記録される。その後、シートは、乾燥部8において、一枚ずつ乾燥された後、搬送部10を経由してソータ部11の排出トレイ12に排出される。
【0028】
図2Bは、両面記録時の動作を説明するための図である。両面記録時には、シート表面に対する記録シーケンスに続いて、シート裏面に対する記録シーケンスが実施される。なお、図2Bには、両面記録時にシート表面に画像を記録する際の搬送経路が太線で示されている。
【0029】
ここで、シート供給部1から検査部5までの各構成部での動作は、図2Aを用いて説明した片面記録時の動作と同様となる。相違点としては、カッター部6以降の処理となる。具体的には、シートがカッター部6に搬送されると、カッター部6においては、所定の長さ毎にシートをカットせず、シートの記録領域の後端をカットする。乾燥部8にシートが搬送されると、乾燥部8は、シート表面のインクを乾燥させた後、搬送部10ではなく、シート巻取部9にシートを搬送する。搬送されたシートは、図2Bにおける反時計回りに回転するシート巻取部9の巻取ドラムに巻き取られる。すなわち、巻取ドラムによりシートの後端まで全て巻き取られる。なお、カッター部6においてカットされたシートの後端よりも搬送方向の上流側のシートは、シート先端がデカール部2に残らないように、シート供給部1に巻き戻される。
【0030】
このようにしてシート表面に対する記録シーケンスが終わると、シート裏面の記録シーケンスが始まる。このシーケンスが始まると、巻取ドラムが巻き取り時とは逆の、図2Bにおける時計回りに回転する。巻き取られたシートは、デカール部2に搬送される。このとき、巻き取り時におけるシートの後端は、巻取部9からデカール部2に搬送される際にシートの先端になる。デカール部2は、シート表面への画像の記録時とは逆向きにシートの反りを矯正する。これは、巻取ドラムに巻かれたシートは、シート供給部1でのロールとは表面と裏面とが反転して巻かれており、逆向きの反りとなっているためである。
【0031】
その後、シートは、斜行矯正部3を経た後、記録部4に搬送され、シート裏面に画像が記録される。画像が記録されたシートは、検査部5を経た後、カッター部6において、所定の長さ毎にカットされる。カットされたシートは、両面に画像が記録されているので、情報記録部7において、日付等の情報の記録は行なわれない。その後、シートは、乾燥部8及び搬送部10を経由して、ソータ部11の排出トレイ12に排出される。
【0032】
ここで、図3を用いて、図1に示すスキャナ17の構成について説明する。スキャナ17には、CCDラインセンサ42と、レンズ43と、ミラー45と、照明部46と、搬送ローラ47と、搬送ガイド部材48とが具備される。照明部46は、シートに向けて光を照射する。CCDラインセンサ42は、受光した光を電気信号に変換する。照明部46からシートに向けて照射された光は、シートで反射し、ミラー45及びレンズ43を介してCCDラインセンサ42に入射する(光路44)。CCDラインセンサ42において電気信号に変換された画像データは、画像解析部18へ入力し、その解析が行なわれる。搬送ローラ47は、シートを搬送し、搬送ガイド部材48は、シートをガイドするための支持部材である。搬送ガイド部材48でガイドされたシートは、搬送ローラ47によって所定の速度で搬送される。なお、本実施形態では、スキャナ17において最も高い解像度(CCDラインセンサ42の配置間隔)を1200dpiとし、ノズルの配列によって決まる解像度と同じである場合を例に挙げて説明する。なお、CCDラインセンサ42の配置よりも低い解像度で画像をスキャンする場合では、解像度に応じた複数のCCDラインセンサ42の出力を加算した画像データが生成される。なお、上記で説明したような例に限られず、例えばスキャナ17の解像度がノズルの配列によって決まる解像度の3分の1の解像度(400dpi)であってもよい。
【0033】
次に、図4を用いて、図1に示す記録ヘッド14の構成の一例について説明する。複数の記録ヘッド14には、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4つの色に対応した4種類の記録ヘッド14が含まれている。複数の記録ヘッドの各々は、同様の構成であるため、当該複数の記録ヘッドのうちの1つの記録ヘッドを例に挙げて説明する。ここで、シートの搬送方向をX方向とし、シート搬送方向に直交する方向をY方向として示している。以降の図面においても、X方向及びY方向はここに示す定義となる。
【0034】
記録ヘッド14には、例えば、有効吐出幅が約1インチの長さを持ち、かつシリコンで形成された記録チップ41(41a〜41h)が、ベース基板(支持部材)に千鳥状に8枚配置されている。各記録チップ41は、インクを吐出する複数のノズルが第1方向(Y方向)に沿って配列されたノズル列を複数有している。具体的には、4列のノズル列(ノズル列A、ノズル列B、ノズル列C、ノズル列D)が平行して配置されている。記録チップ41同士は、それぞれ所定数のノズル分だけオーバーラップされる。より具体的には、互いに隣接する記録チップにおけるノズル列の一部のノズルが互いにY方向に重複して配置される。
【0035】
各記録チップ41には、記録チップの温度を計測する温度センサ(不図示)等も設けられている。また、各ノズルの吐出口には、例えば、発熱抵抗素子から構成される記録素子(ヒータ)が設けられている。記録素子は、液体を加熱することによって液体を発泡させ、その運動エネルギーでノズルの吐出口から液体を吐出させることができる。記録ヘッド14は、有効吐出幅が約8インチの長さを有し、記録ヘッド14のY方向の長さは、A4の記録紙の短辺方向の長さとほぼ一致する。すなわち、1回の走査により画像の記録を完成させることができる。
【0036】
(クリーニング部)
次に、記録ヘッド14のノズル面をクリーニングするために用いられるクリーニング部について説明する。図5A及び5Bはクリーニング部に含まれる1つのクリーニング機構21の詳細構成を示す斜視図である。クリーニング部は、複数(4つ)の記録ヘッド14に対応した複数(4つ)のクリーニング機構21を有する。図5Aはクリーニング機構21の上に記録ヘッド14がある状態(クリーニング動作時)を、図5Bはクリーニング機構21の上に記録ヘッドがない状態を示す。
【0037】
クリーニング部にはクリーニング機構21、キャップ22、位置決め部材23が設けられている。クリーニング機構21は、記録ヘッド14のノズルの吐出口に付着した付着物を除去するワイパユニット24と、ワイパユニット24をY方向に沿って移動させる移動機構、これらを一体に支持するフレーム25を有する。移動機構は、駆動源の駆動によって、2本のガイドシャフト26によって案内されたワイパユニット24をY方向に移動させる。駆動源は、駆動モータ27とギア28、29を有し、ドライブシャフト30を回転させる。ドライブシャフト30の回転は、ベルト31とプーリとで伝達されてワイパユニット24を移動させる。
【0038】
図6はワイパユニット24の構成を示す図である。ワイパユニット24には、第1方向(Y方向)に沿って配列した記録チップ41の2つの列に対応するように2つの吸引口32が設けられている。2つの吸引口32は、記録チップ41の2つの列におけるX方向の間隔と同じ間隔を有する。また、2つの吸引口32は、記録チップ41の2つの列におけるY方向のずれ量とほぼ同じずれ量を有している。吸引口32は吸引ホルダ33に保持され、吸引ホルダ33は弾性体34によってZ方向に移動可能に構成される。
【0039】
2つの吸引口32には吸引ホルダ33を介してチューブ35が接続されており、チューブ35には吸引ポンプ等の負圧発生手段が接続されている。負圧発生手段を動作させると、吸引口32がインクやゴミを吸い取る。このようにして、記録ヘッド14におけるノズルの吐出口からインクやゴミを吸引する。ブレード36は左右2枚ずつ、計4枚のブレードがブレードホルダ37に保持されている。ブレードホルダ37はX方向における両端が支持され、X方向を回転軸として回転可能な構造となっている。ブレードホルダ37は、通常はストッパ38に弾性体39によって移動可能に構成される。ブレード36は、切換機構の動作によりワイピング位置と退避位置とでブレードの面の向きを変えることができる。吸引ホルダ33とブレードホルダ37はワイパユニット24の共通の支持体40上に設置されている。
【0040】
このようにクリーニング部で記録ヘッド14のノズルをクリーニングすることにより、ノズルの近傍への紙粉やほこり等のゴミの付着、インクミストの付着、インク粘度の増大、インク内への気泡やゴミの混入などによる不吐出ノズルを回復させることができる。
【0041】
<実施形態1>
次に、実施形態1における不吐検出動作に関して説明する。不吐検出動作とはノズル近傍への紙粉やほこり等のゴミの付着、インクミストの付着、インク粘度の増大、インク内への気泡やゴミの混入などによる不吐出ノズルを検出する動作のことである。
【0042】
図7は実施形態1に従う記録ヘッド14とスキャナ17、及び、画像60と検査パターン200の位置関係を示した概略図である。
【0043】
シート63は、X方向に沿って図面の上側から下側に向けて搬送される。記録ヘッド14においては、画像60及び検査パターン200を1回のシートの搬送の間に記録する。検査パターン200は、ノズルの不吐出を検査するためのパターンである。なお、検査パターン200の記録頻度は、任意に設定することができるが、ここでは、画像が記録される度に検査パターン200が挿入される場合を示している。以下の説明においては、説明を分かり易くするために、ブラック(Bk)の記録ヘッドを例に挙げて説明するが、その他の色の記録ヘッドについても同様の処理となる。ここで、領域61は、スキャナ17のCCDラインセンサ42において、画像の読み取りが可能な領域を示している。なお、領域61のY方向の幅は、Y方向に沿った検査パターン200の記録幅よりも広く構成されている。 符号62は、スキャナ17の対向する位置にあって、かつ、記録媒体の下側に設けられたバックグラウンドであり、全面が黒色に塗装されている。このように黒色に塗装されているのは、バックグラウンドからの光の反射によるスキャン結果への影響を軽減するためである。検査パターン200は、スキャナ17の読取が可能な領域61を通過する間に読み取られ、その読取結果は、画像解析部18へ転送される。これにより、不吐出ノズルに関する解析が行なわれる。
【0044】
次に、図8のフローチャートを参照しながら、不吐検出動作における処理について説明する。まず、ステップS1では、画像間に各色ごとの全ノズルを使用して検査パターン200が記録される。なお、ここでは説明を簡単にするためインク1色(Bk)の検査パターンを用いて説明を行う。図9は、記録ヘッド14と検査パターン200との関係を示す図である。図9では、記録ヘッド14上の複数の記録チップ41のうち、1つの記録チップのノズルにより記録される検査パターンを例示している。記録チップ41はY方向の解像度が1200dpiであり、X方向にA〜D列の4列で構成されている。
【0045】
検査パターン200は開始マーク110と位置合わせマーク111、A列用検査パターン121、B列用検査パターン122、C列用検査パターン123、D列用検査パターン124から構成されている。開始マーク110は、不吐出ノズルの解析の際に検査パターン200の開始位置を特定するのに使用される他、各ノズル列の予備吐出としても使用される。位置合わせマーク111は空白部分となっており、不吐出ノズルの概略位置を特定するのに使用される。なお、開始マーク110は不吐出ノズルがあった場合でも影響を受けにくいよう、全ノズル列を用いて記録される。
【0046】
1つのノズルにおける単位時間当たりの吐出発数を表す数字として、通常画像記録時に1200dpi毎に1発のドットを記録する場合をノズルデューティが50%であると定義する。その場合、開始マーク110は、最も多く使用するノズルで、1ノズルあたり10発のドットが20%のノズルデューティで記録される。即ち、4列のノズル列では合計して約40発を約80%相当のノズルデューティで記録されていることになる。
【0047】
A列〜D列用の検査パターン121〜124は、1ノズルあたり24発のドットをX方向に1200dpiずつ位置をずらして吐出することで構成したベタパターンである。そのベタパターンの単位時間当たりの吐出発数は前述したノズルデューティに換算すると、50%のノズルデューティとなっている。ここで、画像を記録する時のノズルデューティは最大でも30%のノズルデューティとなっており、A〜D列用検査パターンは画像記録時よりも1つのノズルにおける単位時間当たりの吐出発数が多く設定されている。
【0048】
また、図9において、白丸112は不吐出ノズルを示しており、黒丸113は吐出ノズルを表している。図9では、A列の24番ノズル、B列の10番ノズル、D列の16番〜17番ノズルが不吐出ノズルである。この時の検査パターン200は不吐出ノズルで記録すべき部分にはインクが吐出されておらず、空白領域となっている。また、不吐出以外にインク滴の着弾位置ずれが発生した場合にも同様に検査パターン200に空白領域ができるため、着弾位置のずれ量が所定の値を超えた場合には不吐出と同様に扱うことが可能である。
【0049】
ステップS2では、画像解析部18は、画像間に記録された検査パターン200を記録媒体の搬送を続けながらスキャナ17によって読み取らせる。実施形態1ではスキャナ17の読み取り解像度を異なる複数のモードの中から選択して設定する。ステップS2では、読み取り解像度を400dpiと設定して読み取りが行われる。
【0050】
ステップS3では、画像解析部18は、読み取った開始マーク110を認識し、ステップS4では、画像解析部18は、インクの種類ごとに解析を行うためのRGBレイヤを選択する。具体的には、Bk、Mの検査パターンはG(緑)レイヤ、Cの検査パターンはR(赤)レイヤ、Yの検査パターンはB(青)レイヤで解析が行われる。さらにステップS5では、画像解析部18は、位置合わせマーク111を認識してスキャンデータに対するノズルの概略位置を特定する。ステップS6では、画像解析部18は、スキャンデータをインク色毎またはノズル列毎に分割する。
【0051】
最後に、ステップS7では、画像解析部18は、分割して得られたインク色またはノズル列それぞれの検査パターン200に対応するスキャンデータに対して解析処理1を行う。これにより、不吐出または印字位置のずれ等が発生しているノズルを特定して不吐検出動作は終了となる。
【0052】
次に、解析処理1で行う詳細な処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。ステップS71では、画像解析部18は、解析処理1として、インクの不吐出や着弾位置ずれを検出するための不吐解析(第1解析処理)を行う。ステップS72では、画像解析部18は、解析の結果から継続して記録動作を行ってよいか判断する。ここで、継続して記録動作を行えると判定されている場合(解析結果OK)は、何も処理を行わずに記録動作が続行される。一方で、継続して記録動作を行えないと判定されている場合(解析結果NG)は、印刷を中断し、ステップS73に進んで回復処理が行われる。回復処理は、クリーニング部を用いて、例えば、ノズルに対して負圧発生手段を動作させながら吸引口32内部に負圧が与えられた状態においてフェース面をワイピングすること(吸引ワイピング)によって行われる。これによりノズル付近に付着したインクやゴミを高確率で除去することができる。ここでは回復処理として吸引ワイピングによる例を示したが、吸引ワイピング以外にもブレードワイピングや吸引回復、ノズルの加圧など、他の動作を行っても良い。
【0053】
このような回復処理を行ったとしても、吐出不良の原因を除去できない場合もある。回復処理後もさらに吐出不良が発生しているような場合には、不吐出ノズル以外のノズルを用いて記録を行う不吐補完が実行される(ステップS74)。なお、回復処理で吐出不良の原因を除去できない場合や、回復処理を行うことでゴミの位置が移動して他ノズルにも吐出不良が発生してしまう場合もあるため、回復処理を行わずに直ちに不吐補完を実行してもよい。
【0054】
このような不吐補完は、不吐出ノズルと判定されたノズルの記録データを、吐出不良と判定されていないノズルに割り振ることで行われる。本実施形態の記録チップ41は、1色あたり4列のノズル列を有しているので、1つの列のノズルが不吐出の状態となっても他3列の有効なノズルがあるため補完を行うことができる。補完方法に関して詳細は、特開2009−6560号公報に開示されているような方法を用いることができる。
【0055】
次に、図10のS71で行われる不吐解析(第1解析処理)について、図11のフローチャートを用いて説明を行う。ステップS101では、画像解析部18は、ノイズ低減のために各ノズル列で印字された検査パターン200によって取得されたスキャンデータを、シート搬送方向に加算平均処理を行う。具体的には、各ノズル列の検査パターン200においてスキャナ17で取得された、ノズル配列方向(第1方向、Y方向)に並んでいる複数の輝度値に対して所定のRGBレイヤ毎に加算平均が行われる。以下では、加算平均された輝度値を「生値」という。
【0056】
ステップS102では、画像解析部18は、加算平均処理された生値に対し、ノズル配列方向(第1方向)の輝度値の差分をとる差分算出処理を行う。この差分算出処理は、あるN番目の画素に対し、
差分値={(N+d番目の画素の輝度値)−(N番目の画素の輝度値)}/2
d:差分算出距離(差分値を算出するための距離)
を付与することと定義される。
【0057】
図12は、記録チップ41と例えばA列用の検査パターン121との関係の概要を示した図である。ここでは説明を簡単にするため、1つのノズル列を例にとり説明する。
【0058】
図12(a)は1つの不吐出ノズル(114)、隣接する2つの不吐出ノズル(115)、隣接する3つの不吐出ノズル(116)、隣接する4つの不吐出ノズル(117)がある状況を示している。図12(b)は図12(a)のような状態の記録チップで印字されたA列用検査パターン121を示している。図12(c)はステップS101において検査パターン121によって算出した生値(Raw)を示したものであり、横軸は画像の画素数であり、縦軸は輝度値を示している。図12(d)は、ステップS102における差分算出処理で算出した複数の差分値(diff)を第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルを示す図である。なお、この解析における差分算出処理では、差分算出距離dを2画素(第1の数)として差分値が算出されている。以下、d=2画素(第1の数)の差分算出処理のことを差分算出処理1(第1算出処理)と示す。
【0059】
ステップS103では、画像解析部18は、画素内の不吐出ノズルの数を推定するために、図12(c)において互いに反転した差分値のピーク差分値「ΔP」の算出処理を行う。
【0060】
図13は隣接で不吐出となったノズルの数を特定するためのΔP算出処理の詳細を示すフローチャートである。図14は生値と差分値とΔPとの関係を説明する図である。図14において、“Th+”は不吐検出における正の閾値であり、“Th−”は不吐検出における負の閾値である。また、RawはステップS101で算出した生値を、diffはステップS102で算出した差分値を示している。
【0061】
まず図13のステップS103−1では、画像解析部18は、差分算出処理が行われた差分値のうち、閾値を超える画素をカウントする。即ち差分値から、正の閾値Th+を上回る画素を検索する。Th+を上回る画素を見つけたら、ステップS103−2において、画像解析部18は、Th+を上回る画素の近傍で差分値の最大値が検索され、その最大値がプラスピークP1と定義される。同様に、プラスピークP1近傍でTh−を下回る画素を検索する。Th−を下回る画素を見つけたら、ステップS103−2において、画像解析部18は、Th−を下回る画素の近傍で差分値の最小値を検索し、その最小値をマイナスピークP2と定義する。このようにしてピークの画素が特定される。なお、Th+及びTh−はインクの種類等に応じて任意に設定できるものとする。
【0062】
ステップS103−3では、画像解析部18は、所定の範囲内において位置座標の小さい方からプラスピーク、マイナスピークの順番で揃っているかどうかを調べる。ここで、この順番で両方が揃っていると判断した場合はマイナスピーク近辺の画素に不吐出があると判断し、ステップS103−4においてピーク差分値(ΔP=P1−P2)が算出される。さらに、ステップS103−5では、画像解析部18は、そのマイナスピークの画素に対応するようにΔP(=P1−P2)の情報を記憶する。
【0063】
ΔPの大きさは連続して不吐出となっているノズル数と比例して大きくなるので、画素内で連続して不吐出となっているノズル数を推定するのに利用することができる。なお、生値の輝度が輝度の平均値の120%以下の場合はΔPの算出を行わないようにすることで誤検知を防止することができる。一方、プラスピーク、マイナスピークの順番で揃っていない場合には、ΔPを算出することなく処理はステップS103−4〜S103−5をスキップしてそのまま終了する。以上で、ΔP算出処理の説明は終了する。
【0064】
ステップS104では、画像解析部18は、図11のステップS103で算出されたΔPに対してN値化処理1を実行する。図15のフローチャートを用いてN値化処理1を説明する。N値化処理1では、ΔPから画素内で不吐出ノズルの数を推定する。具体的には、予め設定した閾値F1〜F4(F4>F3>F2>F1)とΔPとの大小を比較することにより、画素内の連続して不吐出となっているノズル数を判定する。
【0065】
図15によれば、ステップS104−1でΔPと閾値F4とが比較される。ここで、ΔP≧F4であれば、ステップS104−2に進み、不吐出ノズルの数が4つ以上に相当すると判断される。F4>ΔPであれば、処理はステップS104−3に進み、ΔPと閾値F3とが比較される。ここで、F4>ΔP≧F3であれば、ステップS104−4に進み、不吐出ノズルの数が3つに相当すると判断される。F3>ΔPであれば、ステップS104−5に進み、ΔPと閾値F2とが比較される。
【0066】
ここで、F3>ΔP≧F2であれば、処理はステップS104−6に進み、不吐出ノズルの数が2つに相当すると判断される。F2>ΔPであれば、処理はステップS104−7に進み、ΔPと閾値F1とが比較される。ここで、F2>ΔP≧F1であれば、ステップS104−8に進み、不吐出ノズルの数が1つに相当すると判断される。F1>ΔPであれば、ステップS104−9に進み、不吐出ノズルが無いと判断される。
【0067】
なお、ここでは、不吐出ノズルが無し、1つに相当、2つに相当、3つに相当、4つ以上に相当の5値化の例を示しているが、本発明はこれによって限定されるものではない。また、閾値F1〜F4は任意に設定できるものとする。ここで、「相当」と表現しているのは、ステップS1で説明したように、不吐出以外にインク滴の着弾の位置ずれが発生した場合にも、着弾のずれ量が所定の値を超えた場合には不吐出と同様に扱うためである。
【0068】
次に、図11に示すように、連続して不吐出となっているノズルの数に応じて、継続して記録動作を行うかどうかの判定が行われる(ステップS105)。連続して不吐出となっているノズルの数が画像品位として許容できる範囲であればOKと判定し、許容できる範囲でなければNGと判定することができる。ここで継続して記録動作を行えないと判断された場合には、図10に示すように回復処理S73や不吐補完S74が行われることになる。
【0069】
本実施形態で用いられるようなラインセンサを構成するCCD素子は、半導体プロセスを用いて製造されるため、製造ばらつき等により各素子の検出感度が一定でないことがある。このように検出感度に差があるCCD素子を配列して構成されるCCDラインセンサで検出されたスキャンデータでは、単純にスキャンデータを閾値と比較して不吐出ノズルを特定すると不吐出ノズルかどうかを正確に判断することができない場合が生じてしまう。
【0070】
また、記録チップ41も半導体プロセスを用いて製造されるため同様に製造ばらつきが生じている場合や、吐出が行われるにつれて記録チップ内に温度分布が生じ場合等でインクの吐出量が記録チップ内で一定でないことがある。このようにインクの吐出量の変化が生じている場合、検査パターンを用いて検査されたスキャンデータを閾値と比較して不吐出ノズルを特定すると、不吐出ノズルかどうか正確に判断することができない。
【0071】
しかしながらスキャナ内の検出感度が一定でなく、ノズル列内でインクの吐出量のムラが生じていたとしても、本実施形態のような差分処理を用いて不吐出ノズルの検出処理を行うことで、スキャンデータのS/N比を大きくした状態で検出処理を行うことができる。これにより、確実に不吐出ノズルを特定して画像品位を保持するための回復動作や吐出補完動作を行うように制御することができる。
【0072】
<実施形態2>
実施形態1では不吐解析の過程でΔPとして差分値のピーク差分値を算出して連続した不吐出ノズルの数を算出したが、本実施形態ではピーク付近の差分値の積算値、即ち、「ΔP積算値」を用いて連続した不吐出ノズルの数を算出する不吐解析について説明する。これは図13の処理に替わる処理である。それ以外については実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0073】
図16はΔP積算値算出処理の詳細を示すフローチャートである。また、図17Aおよび図17Bは生値と差分値とΔP積算値との関係を説明する図である。なお、図16に示すフローチャートで、既に図13のフローチャートで説明したのと同じ処理ステップには同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。
【0074】
図17Aにおいて、“Th+”は不吐検出における正の閾値であり、“Th−”は不吐検出における負の閾値である。また、RawはステップS101で算出した生値、diffはステップS102で算出した差分値である。実施形態1と同様に、所定の範囲内において位置座標値(或いは画素番号)の小さい方からプラスピークP1、マイナスピークP2が並ぶ例が図示されている。図16のステップS103−1〜S103−3の処理により、所定範囲内に位置座標値の小さい方からプラスピーク、マイナスピークの順番で揃っているかどうかが調べられる。ここで、この順番で両方が揃っていると判断した場合はマイナスピーク近辺の画素に不吐出ノズルがあると判断し、処理はステップS103−4aに進む。
【0075】
ステップS103−4aでは、差分データを曲線であると仮定した場合の近似曲線の関数(diff)を取得し、式(1)のように積分を行うことでΔP積算値が算出される。
【0076】
【数1】
【0077】
そして、ステップS103−5aでは、ΔP積算値の情報がマイナスピークの画素に関連づけて記憶される。ΔP積算値は、図17Aの領域130の面積、即ち、上に凸になる部分(プラスピークP1)の面積(第1面積)と下に凸になる部分(マイナスピークP2)の面積(第2面積)との合計として表される。そして、第1面積と第2面積との合計に基づいて実施形態1の図15で示すようなN値化処理を行うことで、連続して不吐出となるノズルの数を実施形態1と同様に求めることができる。
【0078】
ここで差分算出値の積算値を用いるのは以下の理由による。スキャナ17により検出される画素位置と検査パターン121における不吐出による空白領域の位置との関係により、同じ不吐出でも輝度値に狭く鋭いピークが生じる場合と、広くなだらかなピークとなる場合がある。具体的には、例えば、空白領域が1つの画素に収まった場合は狭く鋭いピークが出るが、空白領域が2つの画素にまたがった場合は広くなだらかなピークが出る。そのため差分値のピーク部分のみを解析に用いると、不吐出数を解析する精度が下がる場合がある。しかし、本実施形態のように差分値の積算値を解析に用いることで、これらのピークの形による差を低減することができる。
【0079】
なお、以上の例では、差分データを曲線と仮定して得られた近似曲線の関数に対して積分公式を用いて差分値の積算値を計算したが、図17Bに示すようにピークと、そのピーク前後の画素の絶対値の加算値をΔP積算値としても良い。この場合、ΔP積算値は、
ΔP積算値=(プラスピーク及び前後1画素の差分値の絶対値の加算値)+(マイナスピーク及び前後1画素の差分値の絶対値の加算値)
のように定義される。ただし、ピーク前後1画素の差分算出値が前記ピークに対して逆符号となっている場合には、ΔP積算値の計算には用いないこととする。そうすることで、プラスピークとマイナスピークが近い場合にも、ピーク間の値を重複して加算するのを防ぐことができる。
【0080】
この場合、ΔP積算値は図17Bの領域137の加算値として表される。なお、絶対値の計算に用いるピーク前後の画素は、閾値Thを超えたか否かに関係なく加算計算に含めるものとする。この計算方法では図17Aのように近似曲線の関数を求めてから積算値を求める場合と比べて計算が簡略化できるため、処理不可を低減することができる。
【0081】
<実施形態3>
実施形態1および実施形態2においては、検査パターンの全領域において同じような解析方法を行う形態を示したが、本実施形態においては記録媒体上のY方向の位置に応じて異なる解析方法を用いる形態について説明を行う。なお、実施形態1との重複説明を避けるため、相違点について重点的に説明する。
【0082】
図18(a)〜図18(d)及び図19を用いて、実施形態3に係わる処理の概要について説明する。図18(a)は、スキャナ17の概要であり、上記図9で説明した概要と同様である。ここでは、記録媒体の一方(この場合、図中左側)の端部をY=0とし、もう一方の端部(この場合、図中左側)をY=cとして示している。なお、Y=a及びY=bについては後述する。図18(b)は、例えばA列用の検査パターン121が記録媒体上に印字された状態を示している。検査パターン121は、Y=0〜Y=cに渡って、フチなしで記録されている。また、この検査パターン121においては、用紙における図中左端部及び右端部付近、中央部付近にそれぞれ1つのノズルにおける不吐出が生じているため、それに対応する領域が空白領域になっている。図18(c)は、この検査パターン121から得られた生値を示す。
【0083】
ところでY=0及びY=cの位置では、バックグラウンドの全面が黒色に塗装されており、輝度値がほぼ「0」となるため、スキャナ17のバックグラウンド62と検査パターン121との間で急激に生値が変化することになる。このような急激な輝度変化を生じさせるようなバックグラウンドが、検査パターン121の近傍にあると、検査パターン内においても影響が生じる領域が発生することになる。以下、バックグラウンドの影響による急激に生値が変化している領域(符号81及び符号82)は紙端領域と呼ばれる。図18(c)は、ブラックインクの場合の生値が示されているが、他のインク色の場合は、ブラックインクより明度が高いため、ブラックインクの紙端領域よりも広い紙端領域が発生することになる。
【0084】
図18(d)は、図18(c)の生値を実施形態1で説明した差分算出処理1(第1算出処理)を行うことで得られた複数の差分値を、第1方向(Y方向)に沿って配列することにより得られるプロファイルを示す図である。図18(d)においては、上述した3か所の不吐出による差分値のみならず、Y=0及びY=cの近傍に紙端領域に基づいた大きなピーク(83及び84)が生じている。Y=0の近傍の紙端領域に基づいた差分値83は上向きの凸形状を示し、Y=cの近傍の紙端領域に基づいた差分値84は下向きの凸形状を示している。
【0085】
ここで、Y=0及びY=cの紙端領域における差分値のピーク(符号83及び符号84)は、実施形態1で説明したようなΔP算出処理を行う際に、誤ったピークを用いてΔP算出処理を行ってしまう可能性がある。具体的には、実施形態1を説明した図13に示す△P算出処理を行なった場合、最大値P1及び最小値P2として、符号83に示す下三角記号と符号84に示す上三角記号がそれぞれ検出されてしまう。つまり記録媒体の端部付近に不吐出のノズルがある場合には、バックグラウンドにより発生するピーク83及び84の影響で、誤ったピークを用いて△P算出処理が行われてしまうことになる。このようなバックグラウンドにより発生するピークを誤って検知してしまう可能性がある領域は、記録媒体の端部から1mm〜2mm程度の領域(第1の端部領域)である。
【0086】
そこで、実施形態3においては図19に示すように、記録媒体をY方向(ノズル配列方向)に沿って3つの領域に分けて、記録媒体上の位置に応じて異なるΔP算出処理が行われる。具体的には、記録媒体の一方の端部から所定範囲の領域A(0≦Y<a)と、記録媒体の他方の端部から所定範囲の領域B(b<Y≦c)と、それ以外の記録媒体の中央領域C(a≦Y≦b)とに分けて異なるΔP算出処理が行われる。a及びbは、バックグラウンドにより発生するピークを誤って検知してしまう可能性がある領域よりも、領域Aおよび領域Bが広い領域となるように設定されている。次に、3分割したY位置において、それぞれ異なる処理でΔPが算出される。
【0087】
このようなΔP算出処理では、まず最初に記録装置20は、差分値が用紙のY方向に沿ったどの領域から得られた信号であるかを判定する(S501)。判定の結果、差分値が領域A(0≦Y<a)の領域から得られたものであれば、記録装置20は、最小値P2を検出する(S502)。そして、最小値P2の絶対値を2倍することでΔPが算出される(S503)。これにより、Y=0の近傍に発生するバックグラウンドによる影響を受けることなく領域AのΔPを算出することができる。
【0088】
また、S501の判定の結果、差分値が領域B(b<Y≦c)の領域から得られたものであれば、記録装置20は最大値P1を検出する(S507)。そして、最大値P1を2倍することでΔPが算出される(S508)。これにより、Y=cの近傍に発生するバックグラウンドによる影響を受けることなく領域BのΔPを算出することができる。
【0089】
また更に、S501の判定の結果、差分値が領域C(a≦Y≦b)の領域から得られたものであれば、記録装置20は最大値P1及び最小値P2を検出する(S504及びS505)。この場合、実施形態1と同様の処理によってΔP(=P1−P2)が算出される(S506)。
【0090】
以上説明したように実施形態3によれば、記録装置20は、記録媒体上のY方向の位置に応じて3つの異なる処理方法を用いてΔPを求めている。これにより、バックグラウンドの影響を受けることなく、全ての領域で信頼性の高いΔPを算出することができる。そして、このようなΔPを用いて実施形態1の図15で示すようなN値化処理を行うことで、不吐出のノズルを特定することができる。すなわち、スキャナ内に検出感度の分布やノズル列内におけるインクの吐出量のムラが生じていたとしても、確実に不吐出ノズルを特定して画像品位を保持するための回復動作や吐出補完動作を行うように制御することできる。
【0091】
なお、スキャナ17のバックグラウンドが白色であれば、差分値の凸形状の方向が、上述した場合(バックグラウンドが黒色である場合)とちょうど逆になる。そのため、このような場合には、ピーク差分ΔPの算出において、上述した用紙左端部と用紙右端部との処理を入れ替えればよい。また、上述した説明では、不吐検出方法としてΔPを算出する例を用いて説明したが、実施形態2で説明したΔP積算値を用いて不吐出ノズルの特定してもよい。
【0092】
<実施形態4>
実施形態1および実施形態2においては、検査パターンの全領域において同じような解析方法を行う形態を示したが、本実施形態においては記録媒体上のY方向の位置に応じて解析方法を異ならせる形態について説明を行う。なお、実施形態1との重複説明を避けるため、相違点について重点的に説明する。実施形態1との相違点としては、図11のS103に示すようなΔP算出処理が挙げられる。
【0093】
ここで、図20(a)〜図20(d)及び図21を用いて、実施形態4に係わる処理の概要について説明する。図20(a)は、スキャナ17の概要であり、上記図9で説明した概要と同様である。ここでは、記録媒体の一方(この場合、図中左側)の端部をY=0とし、もう一方の端部(この場合、図中左側)をY=cとして示している。なお、Y=d及びY=eについては後述する。図20(b)に示す例えばA列用の検査パターン121は、Y=0〜Y=cに渡って、フチなしで記録されている。また、A列用の検査パターン121においては、記録媒体における領域D(0≦Y<d)、領域E(e<Y≦c)、および領域F(d≦Y≦e)にそれぞれ1つのノズルおける不吐出が生じているため、それに対応する領域が空白領域となっている。図20(c)は、A列用の検査パターン121から取得された生値を示している。横軸は画像数を示し、縦軸は輝度値を示している。
【0094】
ここで、スキャナ17により読み取った輝度値は、不吐出が存在する部分を除けば、本来、ほぼ一定となるはずであるが、図20(c)に示すように、記録媒体の中央部を凸としてなだらかな曲線を描く場合がある。このような状態が発生している場合には、同じ1つのノズルにおける不吐出であったとしても不吐出に起因したピークの大きさが異なってしまう。
【0095】
図20(d)は、図20(c)の生値を差分算出処理1(第1算出処理)を行うことで得られた複数の差分値を、第1方向(Y方向)に沿って配列することにより得られるプロファイルを示す図である。図20(c)と同様に、同じ1つのノズルにおける不吐出であるにも関わらず、記録媒体の中央部である領域Fのピーク92と、その領域Dおよび領域Eのピーク91とでは、ピークの大きさが異なることになる。つまり、このような状態でΔP算出処理を行うと、不吐出ノズルを正確に特定することが困難となってしまう。
【0096】
このような現象の原因としては、スキャナ17のバックグラウンド62による光の反射が原因として挙げられる。すなわち、スキャナ17とバックグラウンド62との距離が近いほど、反射光による影響を受けてしまう。なお、このような反射光による影響は、バックグラウンド62の色相や濃度によってその程度は違ってくる。例えば、バックグラウンド62が白色であれば記録媒体の端部における生値が検査パターンによる本来の値より上がることになり、黒色であれば記録媒体の端部における生値が検査パターンによる本来の値より下がることになる。但し、バックグラウンドが黒色の場合の方が、不吐検出処理に影響が少ないため、本実施形態においては、バックグラウンド62に黒色を採用している。なお、このような影響が懸念されるのは、用紙端部から10mm〜20mm程度の領域(第2の端部領域)である。
【0097】
そこで、実施形態4においては図21に示すように記録媒体をY方向(ノズル配列方向)に沿って3つの領域に分けて、記録媒体上の位置に応じて異なるΔP算出処理を行なう。具体的には、記録媒体の一方の端部から所定範囲の領域D(0≦Y<d)と、記録媒体の他方の端部から所定範囲の領域E(e<Y≦c)と、それ以外の記録媒体の中央領域F(d≦Y≦e)とに分けて異なるΔP算出処理を行う。d及びeは、バックグラウンドの影響が顕著に表れる領域が入るように設定されている。次に、3分割したY位置において、それぞれ異なる処理でΔPが算出される。
【0098】
このようなΔP算出処理では、記録装置20は、上述した実施形態1を説明した図13と同様にして、最大値P1及び最小値P2を算出する(S601及びS602)。
【0099】
次に、記録装置20は、差分値が用紙のY方向に沿ったどの領域から得られた信号であるかを判定する(S603)。判定の結果、差分値が領域D(0≦Y<d)から得られたものであれば、記録装置20はΔPに対して補正係数C1を乗じる(S604)。また、差分値が領域E(e<Y≦c)から得られたものであれば、記録装置20はΔPに対して補正係数C2を乗じる(S606)。つまり領域Dおよび領域Eはバックグラウンドによる影響を受けている可能性が高いためスキャナ17のS/N比が劣化している可能性がある。そのため、その影響を補正するため、補正係数C1及びC2をΔPに対して乗じている。
【0100】
なお、補正係数C1及び補正係数C2は、予め実験等を行なうことにより求めておけば良い。記録媒体の端部から所定範囲内の領域において検出されたピークの位置が、当該中央部に対して左右対称であれば、補正係数C1=補正係数C2であっても良い。
【0101】
また、S603の判定の結果、差分算出値が領域F(d≦Y≦e)から得られたものであれば、記録装置20は、実施形態1と同様の処理によってΔP(=P1−P2)を算出する(S605)。
【0102】
以上説明したように実施形態4によれば、記録媒体上のY方向の位置に応じて3つの異なる処理方法を用いてΔPを求めている。これにより、バックグラウンドの影響を受けることなく、全ての領域で信頼性の高いΔPを算出することができる。そして、このようなΔPを用いて実施形態1の図15で示すようなN値化処理を行うことで、不吐出ノズルを特定することができる。すなわち、スキャナ内に検出感度の分布やノズル列内でインクの吐出量のムラが生じていたとしても、確実に不吐出ノズルを特定して画像品位を保持するための回復動作や吐出補完動作を行うように制御することができる。
【0103】
なお、上述した説明ではΔPに対して補正係数を乗算してS/N比の補正を行なう場合について説明したが、これに限られず、不吐判定用の閾値に補正係数を乗じるようにしても良い。例えば、閾値F1〜F4をY方向に3分割し、その領域に応じて所定の定数(例えば、C1、C2)を乗算するようにしても良い。
【0104】
上述した説明では、実施形態3に係わる処理と、実施形態4に係わる処理とを別々に説明したが、これらの処理を組み合わせて実施してもよい。また、上述した説明では、不吐検出方法としてΔPを算出する例を用いて説明したが、実施形態2で説明したΔP積算値を用いて不吐出ノズルの特定を行ってもよい。
【0105】
<実施形態5>
次に、実施形態5について説明する。ここでは、実施形態4の変形例として実施形態5の処理を説明する。実施形態5に係わる課題は、実施形態4と同一であり、記録媒体の端部ではバックグラウンドの影響を受けることによってスキャナ17が読み取った信号のS/N比が劣化している点である。ここでは、実施形態4との重複説明を避けるため、相違点について重点的に説明する。相違点としては、図11のS103に示すΔP算出処理が挙げられる。
【0106】
ここで、図22を用いて、実施形態5に係るΔPの算出処理の流れの一例について説明する。S701は、実施形態4(図21)のS601に対応する。また、S702は、実施形態4(図21)のS602に対応する。実施形態4とのピーク差分ΔPの算出処理との相違点としては、S703に示すΔPを算出する式にある。すなわち、実施形態5においては、スキャナ17のS/N比を補正するための補正係数はF(Y)で与えられる。
【0107】
この補正係数F(Y)は、実施形態4で説明した補正係数とは異なり、Y位置に関する連続的な関数となる。すなわち、補正係数F(Y)は、用紙の端部からの距離に応じた値となる。これにより、実施形態5においては、実施形態4よりも更に高度にスキャナ17のS/N比の補正を行なうことができる。
【0108】
以上説明したように実施形態5によれば、Y方向に連続的な補正係数をΔPに乗算する。これにより、スキャナのS/N比の減少による影響を緩和することができる。なお、上述した説明では、ΔPに対して補正係数を乗算してS/N比の補正を行なう場合について説明したが、これに限られず、不吐判定用の閾値に補正係数を乗算するようにしても良い。
【0109】
すなわち、上述した不吐判定用の閾値F1〜F4(定数)の代わりに、Y方向に連続的な変数F4(Y)、F3(Y)、F2(Y)、F1(Y)が用いられる。これにより、ΔPに補正係数を乗算する場合と同等の効果が得られる。また、ΔPに補正係数を乗算する場合とは異なり、不吐判定用の閾値に対する補正係数を変更するため、より高精度に補正が行なえることとなる。このように不吐判定用閾値に補正係数を乗算するようにした場合であっても、スキャナ17のS/N比の減少による影響を緩和することができる。
【0110】
また、実施形態3に係る処理と、実施形態5に係る処理とを組み合わせて実施しても構わない。
【0111】
また、上述した説明では、不吐検出方法としてΔPを算出する例を用いて説明したが、実施形態2で説明したΔP積算値を用いて不吐出ノズルの特定を行っても良い。
【0112】
<実施形態6>
実施形態1〜5では、不吐出ノズルにより生じる検査パターン121の空白領域を用いて不吐出ノズルを検出する場合を説明した。しかしながら検査パターン上に、インクが付着してしまい、吐出不良が発生しているにもかかわらず正確に不吐検出処理が行えない場合がある。そこで、実施形態6では、実施形態1で説明した不吐検出に加えて、検査パターンに付着したインクの検出を行う例を示す。
【0113】
図23は実施形態6に従う不吐検出処理を示すフローチャートである。図23において、図8において説明したのと同じ処理には同じステップ参照番号が付されており、ステップS1〜3、ステップS5〜6については実施形態1と同じ処理であるため説明を省略する。
【0114】
まず、図24を用いて検査パターン上にインクが付着してしまう原因を説明する。図24はノズル口付近にゴミが付着して吐出不良が発生した状況を模式的に示す概略図である。図24(a)は、ゴミ51が付着して吐出口50を全て覆った場合を示している。この場合は図24(a-2)および(a-3)に示すようにインクは吐出されないため、検査パターンにおいて空白領域が形成されることになる。
【0115】
一方、図24(b)は、ゴミ51が吐出口50の一部を覆い、インクが中途半端に吐出されている状態を表している。この場合には図24(b−2)(b−4)に示すように中途半端に吐出されたインクは付着しているゴミ51付近に溜まり、ノズルデューティが高くなったタイミングや、ある程度の量に達したタイミングなどで図24(b―3)に示すように垂れてしまう。このような現象によって、検査パターン上にインクが垂れると正確に不吐検出処理が行えなくなってしまう。なお、このように検査パターン上に垂れたインクは、図24(b−2)のようにゴミ51の付着によって発生する場合と、発生しない場合がある。
【0116】
また、検査パターン上に垂れたインクは、単位面積あたりのインク吐出量が多い(デューティーが高い)場合に発生しやすくなる。そのため、画像記録時よりも高いデューティで検査パターンを印刷することで、インク垂れを発生させてこのような状態を確認しやすくすることができる。
【0117】
図25は、記録された検査パターンにインク垂れが発生した場合の記録ヘッドと検査パターンの関係を示した図である。図25において、118はゴミ51等が付着した吐出不良ノズル(灰色丸)、白丸112と黒丸113とはそれぞれ、不吐出ノズルと吐出ノズルを表している。図25の例では、B列の10番ノズルからインク垂れが発生し、B列及びC列の一部の検査パターン上にインクが濃くなった部分119がある。
【0118】
図23に戻って説明を続けると、ステップS4−1では、記録装置20は、インクの種類ごとに解析を行うRGBレイヤを選択する。具体的には、Bk、Mの検査パターンはG(緑)レイヤ、Cの検査パターンはR(赤)レイヤ、Yの検査パターンはB(青)レイヤで解析が行われる。
【0119】
なお、本実施形態6では、後述する解析処理2で行う不吐解析(第1解析処理)およびインク垂れ解析(第2解析処理)のいずれにおいても上述した1つのRGBレイヤを選択して解析が行われる。しかし、これに限られるものではなく、インク垂れ解析に関してはRGB全てのレイヤにて解析が行われても良い。これは、インク垂れが発生した場合はインク滴が他のインクの検査パターン上に垂れる可能性があり、その場合の検出精度を高めるためである。最後に、ステップS7−1では、分割した画像に対して解析処理2が行なわれ、不吐検出処理は終了となる。
【0120】
次に、解析処理2で行う詳細な処理について説明する。図26は解析処理2を示すフローチャートである。本実施形態では、解析処理2として、不吐出ノズルやインク滴の着弾位置ずれなどを検出するための不吐出解析(第1解析処理)と、検査パターン上に垂れたインクを検出するためのインク垂れ解析(第2解析処理)とが実行される。そして、ステップS76では、画像解析部18は、S71およびS75における解析の結果から、継続して記録動作を行ってよいか否か、即ち、これらの解析結果が共にOKかどうかを判断する。ここで、両方の解析結果ともにOKと判定された場合は、処理は何も処理を行わずに記録を続行するが、何れかの解析結果がNGと判定された場合は記録を中断し、処理はステップS77に進んで回復処理を行った後、ステップS78で不吐補完を実行する。
【0121】
ここで、実施形態6における回復処理ではノズルに対して、実施形態1と同様に吸引ワイピングが行われる。また、インク垂れ解析がNGと判定された場合でも不吐補完を行うのは、図27の(b)を用いて説明したように、不吐出が起因してインク垂れが発生するケースがあるためである。なお、実施形態1で説明した理由と同様の理由から、時間短縮と状態保存の観点から回復処理を行わずに直ちに不吐補完を実行しても良い。なお、実施形態6では回復処理として吸引ワイピングを行うが、吸引ワイピング以外にもブレードワイピングや吸引回復、ノズル加圧など、他の動作を行っても良い。また不吐補完の方法に関しても、実施形態1で説明したものと同様である。
【0122】
次に、上述した解析処理2におけるインク垂れ解析(第2解析処理(ステップS75))について図27のフローチャートを参照して詳細に説明する。なお、不吐出解析(第1解析処理(ステップS71))は実施形態1で説明したものと同様であるため説明を省略する。
【0123】
ステップS201では、記録装置20は、不吐解析のステップS101と同様の加算平均処理を行い、生値を算出する。ステップS202では、記録装置20は、ステップS102における差分算出処理1と同様の処理である差分算出処理2(第2算出処理)を行って差分値を算出する。
【0124】
図28はインクが検査パターン上に垂れた場合の記録チップ41と例えばA列の検査パターン121との関係を示す図である。図28(a)は検査パターンにインク(119)が垂れた状況を示している。図28(b)はA列用の検査パターン121上にインクが垂れて濃くなっている部分119が発生している状態を示している。図28(c)はステップS201で算出した生値(Raw)を図示したものであり、横軸は画像の画素数であり、縦軸は輝度値である。図28(d)はステップ202における差分算出処理2(第2算出処理)で算出した複数の差分値(diff)を、第1方向(Y方向)に沿って配列することにより得られるプロファイルを示す図である。ここでインク垂れ解析(第2解析処理)における差分算出処理2では、不吐解析(第1解析処理)における差分算出距離(第1の数)よりも広い距離d=50画素(第2の数)が用いられている。
【0125】
本願発明の発明者の検討によると、ステップS104で説明したN値化処理1で判別する1〜4の不吐出が発生した場合の検査パターン121における空白領域の幅は約10μm〜80μm程であった。これに対し、インク垂れによる輝度値の変化量は数100μm以上の場合が大半であった。つまり、インク垂れの輝度値の変化量は、不吐出による輝度値の変化量に比べて広いため、不吐解析と同じような差分を算出する距離で処理を行ってしまうと、ピークを検出できない可能性があるといえる。そのため、不吐出解析において差分を算出した距離(第1の数)より広い距離(第2の数)を用いて差分算出処理2を行うことで、確実にピークを検出することができる。
【0126】
ステップS203では画素付近のインク垂れによる、記録以外に付着したインクを検出するために差分値の最大値と最小値の差である「インク垂れによるΔP」の算出処理を実行する。図29はインク垂れによるΔP算出処理の詳細を示すフローチャートである。また、図30は生値と差分値とインク垂れによるΔPとの関係を説明する図である。図30において、“Th+”はインク垂れの検出における正の閾値であり、“Th−”はインク垂れの検出における負の閾値である。また、RawはステップS201で算出した生値、diffはステップS202で算出した差分値を示している。さらに、ステップS103と同様に、Th+を上回る差分算出値の最大値がプラスピークP3と定義され、Th−を下回る差分値の最小値がマイナスピークP4と定義される。なお、“Th+”及び“Th−”はインクの種類等に応じて任意に設定できるものとする。
【0127】
図29によれば、ステップS203−1では、ステップS103−1と同様にこれらの閾値を超える画素がカウントされる。即ち。差分値に対して、負の閾値Th−を下回る画素が検索される。Th−を下回る画素を見つけたら、ステップS203−2で、近傍の差分値の最小値を検索し、その最小値がマイナスピークP4と定義される。次に、マイナスピークP4近傍でTh+を上回る画素を検索する。Th+を上回る画素を見つけたら、近傍の差分値の最大値を検索し、その最大値がプラスピークP3と定義される。このようにしてピークの画素が特定される。
【0128】
そして、ステップS203−3では、所定範囲内に位置座標値の小さい方からマイナスピーク、プラスピークの順番で揃っているかどうかを調べる。両者が、この順番で揃っていると判断した場合はプラスピーク近辺の画素にインク垂れがあると判断し、ステップS203−4においてピーク差分値(ΔP=P3−P4)が算出される。そして、ステップS203−5では、そのプラスピークの画素に対応するようにインク垂れによるΔP(=P3−P4)の情報が記憶される。
【0129】
これに対して、両者が、マイナスピーク、プラスピークの順番で揃っていないと判断した場合には、ΔPを算出することなく処理はステップS203−4〜S203−5をスキップしてそのまま終了する。以上で、インク垂れによるΔP算出処理の説明は終了する。なお、実施形態6では生値の輝度値が平均値の80%以上の場合はインク垂れによるΔPの算出を行わないことで、誤検知を防止することができる。
【0130】
次に、図27のステップS203で算出されたΔPに対して、N値化処理2が実行される(ステップS204)。図31のフローチャートを用いてN値化処理2を説明する。
【0131】
実施形態6では、インク垂れの有無を判断するためのN値化処理において2値化が行われる。具体的には、予め設定されたΔPの閾値Fbと算出されたΔPとの大小を比較することにより、インク垂れの有無が判断されている。
【0132】
図31によれば、ステップS204−1では、インク垂れ解析における閾値FbとΔPとが比較される。ここで、ΔP≧Fbであれば、処理はステップS204−2に進み、インク垂れが有ると判定される、ΔP<Fbであれば、処理はステップS204−3に進み、インク垂れは無しと判定される。
【0133】
図27に戻って説明を続けると、ステップS205では検査パターンへのインク垂れ解析に関してOK/NGの判定が行われる。ステップS204の処理でインク垂れが検出されなかった場合はOKと判定され、インク垂れが検出された場合はNGと判定される。このようなインク垂れ解析を行うことによって、インクが検査パタンに垂れる場合以外にも記録媒体と記録ヘッドが接触してしまうことによってインクが記録媒体へ付着してしまう場合も検出することができる。
【0134】
以上説明した実施形態6に従えば、不吐解析とインク垂れ解析との両方を行うことができるため、より正確に記録動作中に発生する吐出不良を検出することができる。また、本実施形態では不吐解析とインク垂れ解析ともに最大値と最小値との差を算出したΔPを用いて解析処理が行われたが、実施形態2で説明したΔP積算値を用いても良い。
【0135】
<実施形態7>
実施形態6においては、図26のステップS76で不吐出解析とインク垂れ解析との両方の解析結果がでた後に、解析結果の判断を行う例を示した。本実施形態では、不吐出解析とインク垂れ解析とのそれぞれの解析結果に応じて判断を行う例を示す。
【0136】
図32は実施形態7に従う解析処理3を示すフローチャートである。図32において、既に図26において説明した処理と同じ処理には同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。ここでは、この実施形態に特有な処理についてのみ説明する。
【0137】
図32と図26とを比較すると分かるように、この実施形態ではステップS71における不吐解析(第1解析処理)とステップS75におけるインク垂れ解析(第2解析処理)とがそれぞれ終了した時点で、それぞれの解析結果についてOK/NGが判断される。
【0138】
図32によれば、ステップS71aにおいて、不吐解析の結果がNGと判断された場合、実施形態6と同様にステップS77で回復処理が実行される。その後、ステップS78において、不吐補完が行われる。また、ステップS75aにおいて、インク垂れ解析の結果がNGと判定された場合は、ステップS79に進み、プラスピーク前後で差分値が正である範囲の画素に含まれるノズルが全て不吐出ノズルと設定される。そして、その付近の領域にインク垂れを生じさせるようなノズルが発生しているとして不吐補完が行われる。このように不吐補完が行われることにより、ゴミ等が付着しているノズルからインクが吐出されなくなるため、記録媒体へのインク垂れを防止することができる。
【0139】
図33は生値と差分値とインク垂れを生じさせるような不吐出ノズルを設定する範囲との関係を示す図である。図33には、プラスピークP3に続いて差分値(diff)が正の値がしばらく連続することが示されている。ステップS79ではこのような範囲のノズルを不吐出ノズルと設定して不吐補完が行われている。
【0140】
以上説明した実施形態に従えば、適切なタイミングで適切な対応を行うことができ、より効率的な記録動作が可能となる。
【0141】
<実施形態8>
実施形態8に不吐解析(第1解析処理)の結果に対する対応とインク垂れ解析(第2解析処理)の結果に対する対応の他の例を示す。図34は本実施形態に係る解析処理4のフローチャートである。なお、図34において、既に実施形態6の図26で説明したのと同じ処理ステップには同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。ここでは、この実施形態に特有の処理についてのみ説明する。
【0142】
実施形態6と同様に、ステップS71、S75、S76では読み取った不吐検出パターン121に対し、不吐解析(第1解析処理)とインク垂れ解析(第2解析処理)とが実行され、その解析結果の判定が行われる。これらの解析結果が共にOKと判定された場合は何も処理が行われずに記録を続行するが、何れかの解析結果がNGと判定された場合は記録が中断され、ステップS77で回復処理が実行される。
【0143】
ステップS78aでは不吐補完を正確に行うため、より詳細に不吐出ノズルの位置を特定する不吐補完用検査パターンが印字される。図35は記録ヘッド41における1列のノズル列と不吐補完用検査パターンの関係を説明する図である。不吐出補完用検査パターンは開始マーク131と位置合わせマーク132、検査パターン133から構成されている。また、図35において、白丸134と黒丸135はそれぞれ、不吐出ノズルと吐出ノズルを表しており、ここではA列の14番ノズルと27番ノズルが不吐出状態となっている。
【0144】
開始マーク131は不吐補完用検査パターンの開始位置を特定するために使用され、位置合わせマーク132は不吐出ノズルのY方向の概略位置を特定するのに使用される。これらのマークは、各ノズル列の予備吐出としても使用される。なお、開始マーク131および位置合わせマーク132は、不吐出ノズルがあった場合でも影響を受けにくいよう、全ノズル列を用いて記録される。開始マーク131およb位置合わせマーク132は、両方のマークの記録に使用する位置にあるノズルによって、1つのノズルあたり15個のドットが20%のノズルデューティで記録されている。即ち、全4列分のノズル列を合計すると約60個を約80%相当のノズルデューティで記録されていることになる。
【0145】
また、不吐補完用検査パターンとして印字される検査パターン133は、隣接するノズルが同時に駆動されないようにノズル列を連続した複数のノズルからなる複数の組に区分けして、組内のノズルを順番に駆動している。具体的には、1ノズルあたり5個のドットをX方向に600dpiずつ位置をずらして印字することで、1ノズル分の検査パターンが構成されている。つまり不吐出検査パターンの単位時間当たりの吐出発数をノズルデューティに換算すると、25%のノズルデューティとなっている。
【0146】
ステップS78bでは、この不吐出補完用検査パターンをスキャナ17で読み取る。その読み取り解像度は1200dpiとする。さらに、ステップS78cではこの読み取りにより得られた画像データの輝度値と閾値を比較することで不吐出ノズルが特定される。なお、ここで不吐出ノズルを特定する際に、実施形態1で示すような差分算出処理や、差分値のピーク差分を用いて処理を行っても良い。また、実施形態2で示すような差分算出値の積算値を用いて処理を行っても良い。
【0147】
最後に、ステップS78で特定された不吐出ノズルのかわりに他のノズル列のノズルに記録データを振り分けて記録を行う不吐補完が行われる。
【0148】
以上説明した本実施形態に従えば、隣接するノズルが同時に駆動されていない検査パターンを用いて不吐出ノズルの特定を行うことにより、不吐出ノズルの位置をより正確に特定することができる。そのため、不吐出ノズルが発生することによる画像品位の低下を防止することができる。
【0149】
また本実施形態では、不吐補完用の検査パターンを、最初に記録する検査パターンよりも少ないドット数で印字している。そのため、インク垂れが発生する確率が低い状態で不吐出ノズルの位置を特定することができる。具体的には、不吐補完用検査パターンの形成に用いられる1つのノズルあたりの合計吐出回数は最大で20回であり、これは通常の検査パターンの34回に比べて少ない。そのため、その分検査パターンへのインク垂れの発生確率を低減することができる。
【0150】
また、吸引ワイピング等の回復処理を行い回復処理で回復されるような不吐出がなくなっている状態で不吐補完用の検査パターンが印字されているため、さらに、不吐出検査パターン上にインクが垂れる確率は抑えられている。
【0151】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して記録媒体に記録を行う記録装置であって、
インクを吐出する複数のノズルが第1方向に沿って配列されたノズル列を含む記録ヘッドと、
前記記録ヘッドにおける前記複数のノズルからインクを吐出することにより前記記録媒体に記録された検査パターンを、前記複数のノズルが配列する前記第1方向に並ぶ複数の輝度値として読み取る読取手段と、
前記複数の輝度値のうち前記第1方向に所定の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出することにより、複数の差分値を算出する算出手段と、
前記複数の差分値に基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する解析手段と、
を含むことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記解析手段は、前記複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルにおいて、上に凸になるピークの最大値と下に凸になるピークの最小値との差に基づいて、隣接して不吐出となっているノズルの数を解析する、ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記解析手段は、前記複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルにおいて近似曲線を求め、当該近似曲線において上に凸になる部分の第1面積と下に凸になる部分の第2面積とを算出し、前記第1面積および前記第2面積に基づいて、隣接して不吐出となっているノズルの数を解析する、ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記解析手段による解析結果に基づいて、不吐出となっているノズル以外のノズルを用いて記録する不吐補完を行う補完手段を更に含むことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記解析手段による解析結果に基づいて、不吐出となっているノズルを回復させる回復処理を行う回復手段を更に含むことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記解析手段は、前記第1方向に沿って前記複数のノズルが配列した前記ノズル列における中央領域と、前記ノズル列における端部領域とで異なる解析方法を用いる、ことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記解析手段は、前記中央領域では、前記複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルにおいて、上に凸になるピークの最大値と下に凸になるピークの最小値との差を求め、前記最大値と前記最小値との差分に基づいて、前記中央領域に配置されたノズルにおけるインクの吐出状態を解析し、
前記端部領域では、前記最大値および前記最小値のうちいずれか一方に基づいて、前記端部領域に配置されたノズルにおけるインクの吐出状態を解析する、ことを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記解析手段は、前記中央領域では、前記複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルにおいて、上に凸になるピークの最大値と下に凸になるピークの最小値との差を求め、前記最大値と前記最小値との差に基づいて、前記中央領域に配置されたノズルにおけるインクの吐出状態を解析し、
前記端部領域では、前記最大値と前記最小値との差分に係数を乗じて得られた値に基づいて、前記端部領域に配置されたノズルにおけるインクの吐出状態を解析する、ことを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項9】
前記読取手段は、CCDラインセンサであることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記算出手段は、前記複数の輝度値のうち前記第1方向に第1の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出する第1算出処理と、前記複数の輝度値のうち前記第1方向に前記第1の数と異なる第2の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出する第2算出処理とを行い、
前記解析手段は、前記第1算出処理により得られた複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルに基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する第1解析処理と、前記第2算出処理により得られた複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルに基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する第2解析処理とを行う、ことを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記解析手段において前記第1解析処理は、前記第1方向に沿って上に凸になるピークと下に凸になるピークとがこの順に並んだ場合に行われ、前記第2解析処理は、前記第1方向に沿って下に凸になるピークと上に凸になるピークとがこの順に並んだ場合に行われる、ことを特徴とする請求項10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記記録ヘッドは、前記ノズル列を複数有し、
前記複数のノズル列は、前記第1方向と直交する方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項13】
前記記録ヘッドは、フルライン型の記録ヘッドであることを特徴とする請求項1乃至12のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項14】
複数のノズルが第1方向に沿って配列されたノズル列を有する記録ヘッドを含み、前記複数のノズルからインクを吐出して記録媒体に記録を行う記録装置における記録方法であって、
前記記録ヘッドにおける前記複数のノズルからインクを吐出することにより前記記録媒体に記録された検査パターンを、前記複数のノズルが配列する前記第1方向に並ぶ複数の輝度値として読み取る読取工程と、
前記複数の輝度値のうち前記第1方向に所定の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出することにより、複数の差分値を算出する算出工程と、
前記複数の差分値に基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する解析工程と、
を含むことを特徴とする記録方法。
【請求項15】
前記解析工程は、前記複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルにおいて、上に凸になるピークの最大値と下に凸になるピークの最小値との差に基づいて、隣接して不吐出となっているノズルの数を解析する、ことを特徴とする請求項14に記載の記録方法。
【請求項16】
前記解析工程は、前記複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルにおいて近似曲線を求め、当該近似曲線において上に凸になる部分の第1面積と下に凸になる部分の第2面積とを算出し、前記第1面積および前記第2面積に基づいて、隣接して不吐出となっているノズルの数を解析する、ことを特徴とする請求項14に記載の記録方法。
【請求項17】
前記解析工程は、前記第1方向に沿って前記複数のノズルが配列した前記ノズル列における中央領域と、前記ノズル列における端部領域とで異なる解析方法を用いる、ことを特徴とする請求項14乃至16のうちいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項18】
前記算出工程は、前記複数の輝度値のうち前記第1方向に第1の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出する第1算出工程と、前記複数の輝度値のうち前記第1方向に前記第1の数と異なる第2の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出する第2算出工程とを含み、
前記解析工程は、前記第1算出工程で得られた複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルに基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する第1解析工程と、前記第2算出工程で得られた複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルに基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する第2解析工程とを含む、ことを特徴とする請求項14乃至17のうちいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項1】
インクを吐出して記録媒体に記録を行う記録装置であって、
インクを吐出する複数のノズルが第1方向に沿って配列されたノズル列を含む記録ヘッドと、
前記記録ヘッドにおける前記複数のノズルからインクを吐出することにより前記記録媒体に記録された検査パターンを、前記複数のノズルが配列する前記第1方向に並ぶ複数の輝度値として読み取る読取手段と、
前記複数の輝度値のうち前記第1方向に所定の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出することにより、複数の差分値を算出する算出手段と、
前記複数の差分値に基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する解析手段と、
を含むことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記解析手段は、前記複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルにおいて、上に凸になるピークの最大値と下に凸になるピークの最小値との差に基づいて、隣接して不吐出となっているノズルの数を解析する、ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記解析手段は、前記複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルにおいて近似曲線を求め、当該近似曲線において上に凸になる部分の第1面積と下に凸になる部分の第2面積とを算出し、前記第1面積および前記第2面積に基づいて、隣接して不吐出となっているノズルの数を解析する、ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記解析手段による解析結果に基づいて、不吐出となっているノズル以外のノズルを用いて記録する不吐補完を行う補完手段を更に含むことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記解析手段による解析結果に基づいて、不吐出となっているノズルを回復させる回復処理を行う回復手段を更に含むことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記解析手段は、前記第1方向に沿って前記複数のノズルが配列した前記ノズル列における中央領域と、前記ノズル列における端部領域とで異なる解析方法を用いる、ことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記解析手段は、前記中央領域では、前記複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルにおいて、上に凸になるピークの最大値と下に凸になるピークの最小値との差を求め、前記最大値と前記最小値との差分に基づいて、前記中央領域に配置されたノズルにおけるインクの吐出状態を解析し、
前記端部領域では、前記最大値および前記最小値のうちいずれか一方に基づいて、前記端部領域に配置されたノズルにおけるインクの吐出状態を解析する、ことを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記解析手段は、前記中央領域では、前記複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルにおいて、上に凸になるピークの最大値と下に凸になるピークの最小値との差を求め、前記最大値と前記最小値との差に基づいて、前記中央領域に配置されたノズルにおけるインクの吐出状態を解析し、
前記端部領域では、前記最大値と前記最小値との差分に係数を乗じて得られた値に基づいて、前記端部領域に配置されたノズルにおけるインクの吐出状態を解析する、ことを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項9】
前記読取手段は、CCDラインセンサであることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記算出手段は、前記複数の輝度値のうち前記第1方向に第1の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出する第1算出処理と、前記複数の輝度値のうち前記第1方向に前記第1の数と異なる第2の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出する第2算出処理とを行い、
前記解析手段は、前記第1算出処理により得られた複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルに基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する第1解析処理と、前記第2算出処理により得られた複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルに基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する第2解析処理とを行う、ことを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記解析手段において前記第1解析処理は、前記第1方向に沿って上に凸になるピークと下に凸になるピークとがこの順に並んだ場合に行われ、前記第2解析処理は、前記第1方向に沿って下に凸になるピークと上に凸になるピークとがこの順に並んだ場合に行われる、ことを特徴とする請求項10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記記録ヘッドは、前記ノズル列を複数有し、
前記複数のノズル列は、前記第1方向と直交する方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項13】
前記記録ヘッドは、フルライン型の記録ヘッドであることを特徴とする請求項1乃至12のうちいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項14】
複数のノズルが第1方向に沿って配列されたノズル列を有する記録ヘッドを含み、前記複数のノズルからインクを吐出して記録媒体に記録を行う記録装置における記録方法であって、
前記記録ヘッドにおける前記複数のノズルからインクを吐出することにより前記記録媒体に記録された検査パターンを、前記複数のノズルが配列する前記第1方向に並ぶ複数の輝度値として読み取る読取工程と、
前記複数の輝度値のうち前記第1方向に所定の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出することにより、複数の差分値を算出する算出工程と、
前記複数の差分値に基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する解析工程と、
を含むことを特徴とする記録方法。
【請求項15】
前記解析工程は、前記複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルにおいて、上に凸になるピークの最大値と下に凸になるピークの最小値との差に基づいて、隣接して不吐出となっているノズルの数を解析する、ことを特徴とする請求項14に記載の記録方法。
【請求項16】
前記解析工程は、前記複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルにおいて近似曲線を求め、当該近似曲線において上に凸になる部分の第1面積と下に凸になる部分の第2面積とを算出し、前記第1面積および前記第2面積に基づいて、隣接して不吐出となっているノズルの数を解析する、ことを特徴とする請求項14に記載の記録方法。
【請求項17】
前記解析工程は、前記第1方向に沿って前記複数のノズルが配列した前記ノズル列における中央領域と、前記ノズル列における端部領域とで異なる解析方法を用いる、ことを特徴とする請求項14乃至16のうちいずれか1項に記載の記録方法。
【請求項18】
前記算出工程は、前記複数の輝度値のうち前記第1方向に第1の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出する第1算出工程と、前記複数の輝度値のうち前記第1方向に前記第1の数と異なる第2の数が離れた2つの輝度値の差を差分値としてそれぞれ算出する第2算出工程とを含み、
前記解析工程は、前記第1算出工程で得られた複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルに基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する第1解析工程と、前記第2算出工程で得られた複数の差分値を前記第1方向に沿って配列することにより得られるプロファイルに基づいて、前記複数のノズルにおけるインクの吐出状態を解析する第2解析工程とを含む、ことを特徴とする請求項14乃至17のうちいずれか1項に記載の記録方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2013−99934(P2013−99934A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210151(P2012−210151)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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