説明

記録装置および液体噴射装置

【課題】メインキャリッジ210からサブキャリッジ220への振動の伝播を遮断する。
【解決手段】往復移動するメインキャリッジ210と、メインキャリッジ210をボールベアリング290を介して支持しつつ案内するガイドレール145と、メインキャリッジ210に搭載されて、往復移動の方向に直交する方向に変位するサブキャリッジ220と、メインキャリッジ210からサブキャリッジ220への振動の伝播を遮断する弾性ワッシャ249を介してサブキャリッジ220をメインキャリッジ210に向かって付勢するばね241を含み、調節されたサブキャリッジ220のメインキャリッジ210に対する位置を保持する下側連結部240と、サブキャリッジ220に搭載されて被記録媒体191に向かってインクを吐出する記録ヘッド143とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置および液体噴射装置に関する。より詳細には、往復移動するメインキャリッジと、メインキャリッジに対して装着されると共に記録ヘッドまたは液体噴射ヘッドを搭載するサブキャリッジとを備えた記録装置および液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微細なノズルを備えた記録ヘッドからインク等の液体を吐出して被記録媒体に付着させて画像を形成する記録装置がある。この種の記録装置では、主走査方向に延在するガイドレールに沿って往復移動するキャリッジに記録ヘッドを搭載すると共に、主走査方向に対して交差する搬送方向に被記録媒体を移動させる搬送部を備える。そして、記録ヘッドの主走査と被記録媒体の搬送とを組み合わせることにより、被記録媒体上の任意の領域に液体を付着させて画像を形成する。
【0003】
このような構造を有する記録装置において、キャリッジが往復移動する場合に発生する振動が記録ヘッドに伝達されると、記録ヘッドから吐出されるインクの飛翔方向にもぶれが生じ、被記録媒体に形成される画像の品質が低下する場合がある。そこで、記録ヘッドを振動から遮断する構造が種々試みられている。
【0004】
下記の特許文献1には、印刷ヘッドがキャリッジに対して可動に連結されているとともに、その可動方向両側から少なくとも一側には緩衝要素を介して当接支持されている構造が記載される。これにより、駆動力源であるモータ等において発生した振動の記録ヘッドへの伝播が低減される。
【特許文献1】特開2005−178023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、記録装置が大型化してキャリッジの往復移動の距離が長くなった場合、キャリッジの移動速度も高くなる。そこで、ガイドレールに対するキャリッジの移動を円滑にする目的で、ボールベアリング等の転がり軸受けを介してキャリッジを支持する構造が採られる場合がある。しかしながら、転がり軸受けは、全体的な抵抗は低減させる替わりに、固有の振動を発生する。
【0006】
転がり軸受けにおいて発生する振動は、モータ等の既存の振動源とは特性が異なる。このため、モータの振動を排除するために設けられた緩衝要素では、ボールベアリングの振動を効果的に排除することはできない。また、振動源から記録ヘッドへの振動の伝播経路も、記録ヘッドを搭載したキャリッジの支持構造を経由するものに限られない。
【0007】
しかしながら、記録ヘッドに伝播する様々な種類の振動のそれぞれに対応した緩衝要素を設けることは、キャリッジの大型化を招くので好ましくない。また、製造コストの観点からも、多種多数の緩衝要素を装備させることは好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解決することを目的に、本発明の第1の形態として、転がり軸受けを介して案内部材に案内されて、前内部材に沿って往復移動するメインキャリッジと、メインキャリッジに搭載されて、往復移動の方向に直交する方向に変位してメインキャリッジに対する相対位置を調節できるサブキャリッジと、サブキャリッジに搭載されて被記録媒体に向かってインクを吐出する記録ヘッドと、サブキャリッジおよびメインキャリッジの間に介在して、メインキャリッジからサブキャリッジへの振動の伝播を遮断する緩衝部材を含み、調節された相対位置を保持する保持部とを備える記録装置が提供される。これにより、転がり軸受けの回転等に起因する振動の伝播は、メインキャリッジおよびサブキャリッジの間で遮断され、振動に起因する画像の乱れが抑制される。
【0009】
また、上記記録装置において、保持部は、メインキャリッジおよびサブキャリッジの一方に形成された長穴と、長穴に挿通され、且つ、メインキャリッジおよびサブキャリッジの他方に固定された軸部を含む連結部材と、伸張方向に付勢された付勢部材とを含み、緩衝部材は、メインキャリッジおよびサブキャリッジの一方を介して付勢部材に付勢され、メインキャリッジおよびサブキャリッジの他方に対して押し付けられる弾性部材を含んでもよい。これにより、最小限の部材により、サブキャリッジへの振動の伝播を効果的に遮断できる。なお、緩衝部材は、サブキャリッジへの伝播を遮断しようとする振動の周波数と大きく異なる固有振動数を有することが好ましい。これにより、記録ヘッドを搭載したサブキャリッジの振動を効果的に抑制できる。
【0010】
更に、上記記録装置において、緩衝部材は、エラストマまたはゲルを含む高分子系材料により形成されてもよい。これにより、廉価且つ小型の部品を用いて振動を効果的に遮断できる。
【0011】
また更に、上記記録装置において、メインキャリッジに対するサブキャリッジの変移の方向について、保持部よりも記録ヘッドから遠い位置に配置され、緩衝部材を有していない副保持部を更に備えてもよい。これにより、サブキャリッジのメインキャリッジに対する位置決めが確実になり、記録ヘッドを安定に搭載して記録動作を実行できる。
【0012】
また更に、上記記録装置において、緩衝部材は、振動により応力が付与される方向と直交する方向の径が、厚さ方向に沿って連続的に変化する形状を有してもよい。これにより、緩衝部材は非線形の弾性率を有し、より広い範囲で振動を遮断できる。
【0013】
更に、本発明の第2の形態として、往復移動するメインキャリッジと、メインキャリッジを転がり軸受けを介して支持しつつその往復移動を案内する案内部材と、メインキャリッジに搭載されて、往復移動の方向に直交する方向に変位させることによりメインキャリッジに対する位置を調節できるサブキャリッジと、サブキャリッジに搭載されて被記録媒体に向かって液体を吐出する液体噴射ヘッドと、メインキャリッジからサブキャリッジへの振動の伝播を遮断する緩衝部材を介してサブキャリッジをメインキャリッジに向かって付勢する付勢部材を含み、調節されたサブキャリッジのメインキャリッジに対する位置を保持する保持部とを備える液体噴射装置が提供される。これにより、液体噴射装置においても上記の効果を享受できる。
【0014】
なお、上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。ただし、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
図1は、実施の形態に係るインクジェット式記録装置100の斜視図である。同図に示すように、このインクジェット式記録装置100は、長手方向が水平に配置された記録部140と、記録部140の端部に装着された筐体110と、記録部140の上側に装着された装填部130と、記録部140および筐体110を下方から支持する脚部170とを備える。
【0017】
装填部130には、長尺の被記録媒体191を巻き重ねて形成したロール組立体190(図5参照)が装填されるが、この図ではロール組立体190はロールカバー132に覆われる。また、装填部130には、リリースレバー134が設けられ、装填されたロール組立体190の脱着を助ける。一方、記録部140においては、トップカバー142およびフロントカバー144がその内部機構を覆う。記録部140の内部には後述する記録ヘッド143(図5参照)が配置され、装填部130から記録部140に給送された被記録媒体191に対してインクが吐出される。
【0018】
装填部130から給送されて記録部140において画像を形成された被記録媒体191は、記録部140の下方に形成された排出部160に排出される。なお、脚部170は、排出部160を通過した被記録媒体191をスタックするスペースを排出部160の下側に形成する。
【0019】
筐体110は、記録部140から退避した記録ヘッド143が待機するホームポジションのスペースを形成すると共に、その下部に、カートリッジホルダ120を有する。カートリッジホルダ120には、記録ヘッド143に供給するインクを収容したインクカートリッジ124が装着される。また、筐体110の上面には、操作パネル180が配置される。操作パネル180は、ユーザが操作するスイッチ182の他、インクジェット式記録装置100の動作状態を示す表示部184等も含む。
【0020】
図2は、フロントカバー144を取り外して記録部140の内部を露出させたインクジェット式記録装置100の斜視図である。同図に示すように、記録部140の内部には、その全幅にわたってプラテンプレート152が配置される。プラテンプレート152は、後述するようにその表面に負圧が形成され、装填部130のロール組立体190から引き出されて給送された被記録媒体191を吸着する。これにより、プラテンプレート152上において、被記録媒体191が平坦になると共に、その位置が決められる。
【0021】
また、フロントカバー144を取り外した状態では、開口の下端に沿って、記録部フレーム141が露出する。記録部フレーム141は、記録部140の強度を担保する構造材であると同時に、後述する管路/線路組立体を支持する部材でもある。
【0022】
図3は、インクジェット式記録装置100における記録部140の内部機構200を部分的に抜き出して示す図である。同図に示すように、キャリッジエンコーダスケール150の直上には、記録部140の全幅にわたってガイドレール145が配置される。記録ヘッド143を搭載したキャリッジ400は、ガイドレール145に沿って往復移動する。
【0023】
ここで、キャリッジ400に搭載された記録ヘッド143には、インクと駆動信号が供給される。このため、キャリッジ400には、フラットチューブ147およびフラットケーブル149の一端が結合される。キャリッジ400から出たフラットチューブ147およびフラットケーブル149は、下方に屈曲した後、記録部フレーム141に沿って延在して、やがて、記録部フレーム141の下に入り込む。フラットチューブ147の他端は、カートリッジホルダ120に収容されたインクカートリッジ124に連通する。また、フラットケーブル149の他端は、インクジェット式記録装置100の内部回路(不図示)に結合される。
【0024】
また、フラットチューブ147およびフラットケーブル149は、クランプ部材139により相互に結束されて一体化されて管路/線路組立体を形成する。管路/線路組立体を形成したフラットチューブ147およびフラットケーブル149は、記録部フレーム141の上面に対して固定されておらず、キャリッジ400が移動した場合に、その屈曲部を移動させてキャリッジ400に追従する。なお、図3に示す状態では、キャリッジ400はガイドレール145右端のホームポジションに位置している。
【0025】
図4は、図3に示した内部機構200を、インクジェット式記録装置100の側面側から見た様子を示す図である。同図に示すように、記録ヘッド143を搭載したキャリッジ400は、片側4個のボールベアリング290により挟むことによりガイドレール145から懸架される。これにより、キャリッジ400は、ガイドレール145に沿って円滑に移動する。
【0026】
図5は、インクジェット式記録装置100における被記録媒体191の給送経路300を示す模式的な断面図である。同図に示すように、給送経路300は、装填部130内のロール組立体190から始まり、記録部140内を経て排出部160に至る。
【0027】
装填部130においは、ロールカバー132の内部にはロール組立体190が装填される。ロール組立体190は、芯となる紙管192の外面に長尺の連続した被記録媒体191を巻き重ねて形成される。これにより、大判の被記録媒体191を取り扱い易くしている。更に、紙管192の内側には金属製のスピンドル部材194が挿通され、スピンドル部材194の両端が装填部130のスピンドル支持部136に支持される。なお、被記録媒体191は、紙の他、樹脂フィルム、テキスタイル製品等の場合もある。
【0028】
記録部140には、被記録媒体191を給送する給送部111、被記録媒体191にインクを吐出する記録ヘッド143、記録ヘッド143を搭載したキャリッジ400、被記録媒体191を支持するプラテンプレート152等が配置される。給送部111は、図示していない給送モータにより回転駆動される給送駆動ローラ112と、給送駆動ローラ112に当接して連れ回される給送従動ローラ114とを含む。被記録媒体191は、給送駆動ローラ112および給送従動ローラ114の間に挟まれ、給送従動ローラ114により給送駆動ローラ112に押し付けられることにより、給送駆動ローラ112の回転に従ってロール組立体190から引き出される。
【0029】
ロール組立体190から引き出されて給送部111を通過した被記録媒体191は、記録ヘッド143に対向する位置を通過する。このとき、被記録媒体191は、記録ヘッド143と対向するプラテンプレート152により支持される。これにより、プラテンプレート152上の被記録媒体191は、記録ヘッド143に対して一定の間隔をおいて位置決めされる。
【0030】
プラテンプレート152の後方(図上右側)には、図示していないファンユニットが配置され、図中に矢印Aで示すように、プラテンプレート152から吸引した空気を排出ダクト159から外部へ排出する。これにより、プラテンプレート152の表面に負圧が形成されて、被記録媒体191がプラテンプレート152に吸いつけられる。
【0031】
記録ヘッド143はキャリッジ400に搭載され、キャリッジ400はガイドレール145から懸架される。ガイドレール145は、図4の紙面に垂直に、記録部140の略全幅にわたって延在して、キャリッジ400の往復移動を案内する。なお、記録ヘッド143が吐出するインクは、図示していないパイプを通じてインクカートリッジ124から供給される。従って、キャリッジ400にはインクカートリッジ124は搭載されず、キャリッジ400および記録ヘッド143の組立体が軽量になる。
【0032】
図6は、記録ヘッド143を搭載したキャリッジ400の詳細な構造を示す斜視図である。同図に示すように、キャリッジ400は、メインキャリッジ210およびサブキャリッジ220を含む。サブキャリッジ220は、上側連結部230および下側連結部240を介してメインキャリッジ210から支持されて、メインキャリッジと共に往復移動する。また、メインキャリッジ210は、サブキャリッジ220の他に、カッタユニット250等も搭載する。
【0033】
サブキャリッジ220は、調整レバー280を介した操作を受けて、記録ヘッド143からのインクの吐出方向について、メインキャリッジ210に対して変位する。これにより、被記録媒体191および記録ヘッド143の間隔であるプラテンギャップを調整して、被記録媒体191の厚さ等が変化した場合に記録品質を維持できる。ただし、サブキャリッジ220は、メインキャリッジ210に対してガタが生じないように、ばね226により上方に付勢される。
【0034】
記録ヘッド143は、記録ヘッドケース276に収容された状態で、サブキャリッジ220の下面に形成された穴に落とし込まれる。記録ヘッドケース276は、ばね224により付勢された押さえレバー222により後方に向かって付勢される。これにより、記録ヘッドケース276の取り付け位置を後方に寄せてサブキャリッジ220に対する取り付け位置を一定にすると共に、サブキャリッジ220に対して生じるガタを防止している。なお、記録ヘッドケース276の剛性は補強板金260により高められる。
【0035】
記録ヘッド143の上面側には、逆止弁146とコネクタ270が設けられる。インクジェット式記録装置100が稼働する状態では、記録ヘッド143にインクを供給する管路が逆止弁146に結合される。また、コネクタ270にはフラットケーブル149の先端が接続される。フラットケーブル149は、記録ヘッド143に駆動信号を供給する。
【0036】
なお、メインキャリッジ210は、例えば、軽量で強度の高いFRP(繊維強化プラスチック)等により形成される。また、サブキャリッジ220は、加工が容易で軽量な、例えばアルミニウムまたはその合金の板材により形成される。
【0037】
図7は、キャリッジ400におけるサブキャリッジ220のメインキャリッジ210に対する連結構造を示す断面図である。同図に示すように、メインキャリッジ210に対して、サブキャリッジ220は、互いに上下に離隔して配置された上側連結部230および下側連結部240により連結される。
【0038】
上側連結部230は、サブキャリッジ220に形成された長穴223に挿通され、メインキャリッジ210に埋め込まれた埋め込みナット234に螺入された連結ボルト232により結合される。また、後述するように、メインキャリッジ210およびサブキャリッジ220の間には、伸張する方向に付勢されたばね231が挟まれる。これにより、サブキャリッジ220は、連結ボルト232の頭部に向かって押し付けられる。
【0039】
下側連結部240も、サブキャリッジ220に形成された長穴225に挿通され、メインキャリッジ210に埋め込まれた埋め込みナット244に螺入された連結ボルト242により結合される。また、サブキャリッジ220および連結ボルト242の頭部の間には、伸張する方向に付勢されたばね241が挟まれる。これにより、サブキャリッジ220は、メインキャリッジ210に向かって押し付けられる。
【0040】
上記のような連結構造において、連結ボルト232、242の各々は、サブキャリッジ220に上下方向に長く形成された長穴223、225に挿通された上で、メインキャリッジ210に埋め込まれた埋め込みナット234、244に螺入される。従って、長穴223、225の長さ(高さ)の範囲内で、サブキャリッジ220はメインキャリッジ210に対して上下に移動できる。
【0041】
図4および図5から判るように、図7におけるサブキャリッジ220のメインキャリッジ210に対する移動は、記録ヘッド143の被記録媒体191に対する間隔の変化となる。従って、サブキャリッジ220をメインキャリッジ210に対して移動させることにより、サブキャリッジ220の被記録媒体191に対する間隔であるプラテンギャップを調節できる。なお、この実施形態では、メインキャリッジ210およびサブキャリッジ220は、連結ボルト232および埋め込みナット234により連結されるが、例えば、リベット等の他の部材により結合することもできる。
【0042】
図8は、キャリッジ400における上側連結部230の構造を拡大して示す断面図である。同図に示すように、メインキャリッジ210に埋め込まれた埋め込みナット234に対して、サブキャリッジ220の長穴223に挿通された連結ボルト232の先端が螺入される。これにより、サブキャリッジ220は、メインキャリッジ210に対して連結されると共に、長穴223の長さ(図8では高さ)の範囲でメインキャリッジ210に対して変位する。
【0043】
また、連結ボルト232の頭部とサブキャリッジ220との間には、長穴223の幅よりも大きな径を有するワッシャ239が挟まれる。これにより、連結ボルト232の頭部が長穴223から抜けることが防止される。
【0044】
更に、メインキャリッジ210およびサブキャリッジ220の間において、連結ボルト232は、メインキャリッジ210に当接するフランジ部を有するスリーブ235と、サブキャリッジ220に当接するフランジ部を有するスリーブ233とを貫通している。スリーブ233、235のフランジ部の間には、伸張方向に付勢されたばね231が挟まれる。
【0045】
これにより、サブキャリッジ220は、スリーブ233のフランジ部を介してばね231により連結ボルト232の頭部に押し付けられる。従って、上側連結部230において、サブキャリッジ220の連結ボルト232に対するがたが抑制される。
【0046】
図9は、キャリッジ400における下側連結部240における取り付け構造を拡大して示す図である。同図に示すように、メインキャリッジ210に埋め込まれた埋め込みナット244に対して、サブキャリッジ220の長穴225に挿通された連結ボルト242の先端が螺入される。これにより、サブキャリッジ220は、メインキャリッジ210に対して連結されると共に、長穴225の長さ(図8では高さ)の範囲でメインキャリッジ210に対して上下に変位する。
【0047】
また、連結ボルト242の頭部からメインキャリッジ210の表面付近までの間は、サブキャリッジ220およびメインキャリッジ210の間に位置するフランジ部を有するスリーブ247が装着される。スリーブ247のフランジ部は、長穴225よりも大きな径を有する。また、スリーブ247のフランジ部とメインキャリッジ210との間には、弾性ワッシャ249が挟まれる。弾性ワッシャ249は、エラストマ、ゲル等の高分子材料により形成される。
【0048】
更に、メインキャリッジ210およびサブキャリッジ220の間においては、連結部連結ボルト242の頭部に当接するフランジ部を有するスリーブ243と、サブキャリッジ220に当接するフランジ部を有するスリーブ245とが、スリーブ247の外側に装着される。スリーブ243、245のフランジ部の間には伸張方向に付勢されたばね241が挟まれる。
【0049】
これらの構造により、下側連結部240において、サブキャリッジ220は、スリーブ245のフランジ部とスリーブ247のフランジ部との間に挟まれる。ここで、スリーブ245のフランジ部は、ばね241によりサブキャリッジ220に押し付けられる。また、スリーブ247のフランジ部は、弾性ワッシャ249を介してメインキャリッジ210に支持される。従って、サブキャリッジ220は、双方の面から弾性的に支持される。
【0050】
弾性ワッシャ249の固有振動数は、金属製のコイルばねであるばね241の固有振動数とは異なる。また、転がり軸受け等から発生してメインキャリッジ210に伝播される振動の振動数とも異なる。これにより、メインキャリッジ210からサブキャリッジ220に伝播される振動は効果的に減衰される。更に、弾性ワッシャ249の径を、その厚さ方向沿って変化させることにより非線形特性を与え、より広い範囲で振動を遮断することも好ましい。
【0051】
このように、メインキャリッジ210に対して変位するサブキャリッジ220を、その連結部において双方向について弾性的に支持することにより、サブキャリッジ220を確実に位置決めすると同時に、振動の伝達を抑制できる。従って、記録ヘッド143の振動に起因する記録画像の劣化が防止される。
【0052】
上記の実施形態では、インクジェット式記録装置100を例に挙げて具体的な構成を説明したが、この液体噴射装置は、例えば、液晶ディスプレイ用カラーフィルタの製造における色材噴射装置、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の製造における電極形成装置、バイオチップ製造に使用する試料噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド、付け爪に絵、文字等を描く装置等としても実施でき、更に、これらに限定されない。
【0053】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることは当業者に明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】インクジェット式記録装置100の外観を示す斜視図である。
【図2】インクジェット式記録装置100からフロントカバー144を取り外した様子を示す斜視図である。
【図3】インクジェット式記録装置100の内部機構200を示す斜視図である。
【図4】内部機構200を側方から見た様子を示す図である。
【図5】被記録媒体191の給送経路300を示す断面図である。
【図6】キャリッジ400を単独で示す斜視図である。
【図7】サブキャリッジ220のメインキャリッジ210に対する取り付け構造を示す断面図である。
【図8】上側連結部230における取り付け構造を拡大して示す図である。
【図9】下側連結部240における取り付け構造を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0055】
100 インクジェット式記録装置、110 筐体、111 給送部、112 給送駆動ローラ、114 給送従動ローラ、120 カートリッジホルダ、130 装填部、132 ロールカバー、134 リリースレバー、136 スピンドル支持部、139 クランプ部材、140 記録部、141 記録部フレーム、142 トップカバー、143 記録ヘッド、144 フロントカバー、145 ガイドレール、146 逆止弁、147 フラットチューブ、149 フラットケーブル、150 キャリッジエンコーダスケール、152 プラテンプレート、159 排出ダクト、160 排出部、170 脚部、180 操作パネル、182 スイッチ、184 表示部、190 ロール組立体、191 被記録媒体、192 紙管、194 スピンドル部材、200 内部機構、210 メインキャリッジ、220 サブキャリッジ、223、225 長穴、224、226、231、241 ばね、230 上側連結部、232、242 連結ボルト、233、235、243、245、247 スリーブ、234、244 埋め込みナット、239 ワッシャ、240 下側連結部、249 弾性ワッシャ、250 カッタユニット、260 補強板金、270 コネクタ、276 記録ヘッドケース、280 調整レバー、290 ボールベアリング、300 給送経路、400 キャリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内部材に案内されて、前記案内部材に沿って往復移動するメインキャリッジと、
前記メインキャリッジに搭載されて、前記往復移動の方向に直交する方向に変位して前記メインキャリッジに対する相対位置を調節できるサブキャリッジと、
前記サブキャリッジに搭載されて被記録媒体に向かってインクを吐出する記録ヘッドと、
前記サブキャリッジおよび前記メインキャリッジの間に介在して、前記メインキャリッジから前記サブキャリッジへの振動の伝播を遮断する緩衝部材を含み、調節された前記相対位置を保持する保持部、
を備える記録装置。
【請求項2】
前記保持部は、
前記メインキャリッジおよび前記サブキャリッジの一方に形成された長穴と、
前記長穴に挿通され、且つ、前記メインキャリッジおよび前記サブキャリッジの他方に固定された軸部を含む連結部材と、
伸張方向に付勢された付勢部材と
を含み、
前記緩衝部材は、前記メインキャリッジおよび前記サブキャリッジの一方を介して前記付勢部材に付勢され、前記メインキャリッジおよび前記サブキャリッジの他方に対して押し付けられる弾性部材を含む請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記緩衝部材は、エラストマまたはゲルを含む高分子系材料により形成される請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
前記メインキャリッジに対する前記サブキャリッジの変移の方向について、前記保持部よりも前記記録ヘッドから遠い位置に配置され、
調節された前記相対位置を保持する副保持部を更に備える請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
案内部材に案内されて、前記案内部材に沿って往復移動するメインキャリッジと、
前記メインキャリッジに搭載されて、前記往復移動の方向に直交する方向に変位して前記メインキャリッジに対する相対位置を調節できるサブキャリッジと、
前記サブキャリッジに搭載されて被噴射媒体に向かって液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記サブキャリッジおよび前記メインキャリッジの間に介在して、前記メインキャリッジから前記サブキャリッジへの振動の伝播を遮断する緩衝部材を含み、調節された前記相対位置を保持する保持部と
を備える液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−23170(P2009−23170A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187583(P2007−187583)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】