記録装置及びその制御方法
【課題】本発明の課題は、装置の大型化を招くことなく効果的に乾燥むらの発生を抑制できる記録装置及びその制御方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の記録装置は、被記録媒体に対して液体を塗布することで記録を行う記録部と、被記録媒体を支持する支持部材と、被記録媒体上に塗布された液体を乾燥空間で乾燥させる乾燥装置と、乾燥装置に接続された制御装置と、を備え、乾燥装置は、乾燥空間に向けて乾燥用気体を供給する給気口と、乾燥空間に対する給気口の位置を被記録媒体の表面に対して平行する面内で変化させる給気位置変更機構と、を有するものであることを特徴とする。
【解決手段】本発明の記録装置は、被記録媒体に対して液体を塗布することで記録を行う記録部と、被記録媒体を支持する支持部材と、被記録媒体上に塗布された液体を乾燥空間で乾燥させる乾燥装置と、乾燥装置に接続された制御装置と、を備え、乾燥装置は、乾燥空間に向けて乾燥用気体を供給する給気口と、乾燥空間に対する給気口の位置を被記録媒体の表面に対して平行する面内で変化させる給気位置変更機構と、を有するものであることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式等の製版を必要とする印刷方式に比べて、高速、簡便かつ安価に画像を記録することができる画像記録装置として、インクジェット記録方式による画像記録装置、すなわち、インクジェット記録装置が広く普及している。
インクジェット記録装置は、記録ヘッドから記録媒体に対してインクを吐出して着弾させることにより記録媒体上に画像を記録する方式が採用されているため、記録媒体として紙や布帛等のほか、従来の画像記録方式では記録が困難であった樹脂フィルムや金属等のインク吸収性に乏しい記録媒体に対しても画像記録を行うことができる。
【0003】
これらの記録媒体は、通常、プラテンと呼ばれる支持板上を搬送され、その上方の記録ヘッドからインクの吐出を受ける。記録媒体上に塗布されたインク(塗布物)は、後工程における乾燥装置で乾燥されて記録媒体に定着される。上記塗布物の乾燥時には、乾燥むらが生じて塗布特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
そこで、特許文献1には、複数の乾燥ゾーンを搬送方向に沿って順次配置した装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−000620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
複数の乾燥ゾーンを搬送方向に沿って順次配置しても、上流側の乾燥ゾーンでは単一方向の風で乾燥させるため乾燥むらが生じる可能性があり、この場合、下流側の乾燥ゾーンでは一旦発生した乾燥むらを解消することは困難である。また、複数の乾燥ゾーンを設けることで装置が大型化するという問題も生じさせる。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、装置の大型化を招くことなく効果的に乾燥むらの発生を抑制できる記録装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録装置は、被記録媒体に対して液体を塗布することで記録を行う記録部と、前記被記録媒体を支持する支持部材と、前記被記録媒体上に塗布された前記液体を乾燥空間で乾燥させる乾燥装置と、前記乾燥装置に接続された制御装置と、を備え、前記乾燥装置は、前記乾燥空間に向けて乾燥用気体を供給する給気口と、前記乾燥空間に対する前記給気口の位置を前記被記録媒体の表面に対して平行する面内で変化させる給気位置変更機構と、を有するものであることを特徴とする。
【0008】
これによれば、乾燥空間に対する給気口の位置を基板の表面に対して平行する面内で変化させることにより、乾燥空間内で乾燥空気が淀んでしまうことが防止される。これにより、均一な乾燥条件で液体を乾燥させることができ、乾燥むらの発生を防止することができる。
【0009】
また、前記給気口は、前記乾燥空間に開口する複数の第1供給孔と、各第1供給孔と平面視で重なる位置に配置された複数の第2供給孔とにより構成され、前記給気位置変更機構は、前記複数の第1供給孔が配置された第1平面に対して、前記複数の第2供給孔が配置された第2平面を平行移動させることによって前記給気口の位置を変化させる構成としてもよい。
上述したように、給気口は、第1供給孔および第2供給孔の平面視で重なる部分によって構成されており、複数の第1供給孔が配置された第1平面に対して、複数の第2供給孔が配置された第2平面を平行移動させることによって、乾燥空間に対する給気口の位置を変化させることが可能である。これにより、乾燥空気を淀ませることなく被記録媒体に対して乾燥空気を直接吹きかけることが可能になる。
【0010】
また、前記給気位置変更機構は、前記給気口の開口面積が一定となるように前記第1平面に対して前記第2平面を平行移動させる構成としてもよい。
これによれば、給気口を介して乾燥空間に供給される乾燥空気の供給量及び供給速度を一定にすることができるので、均一な乾燥条件を確保でき、被記録媒体ごとに同じ乾燥品質を担保することが可能である。
【0011】
本発明の記録装置の制御方法は、被記録媒体に対して液体を塗布することで記録を行う記録部と、前記被記録媒体を支持する支持部材と、前記被記録媒体上に塗布された前記液体を乾燥空間で乾燥させる乾燥装置と、前記乾燥装置に接続された制御装置と、を備え、前記乾燥装置は、前記乾燥空間に向けて乾燥用気体を供給する給気口と、前記乾燥空間に対する前記給気口の位置を前記被記録媒体の表面に対して平行する面内で変化させる給気位置変更機構と、を有する記録装置の制御方法であって、前記被記録媒体に対して前記液体を塗布する記録ステップと、前記被記録媒体上に塗布された前記液体を前記乾燥空間へと搬送する搬送ステップと、前記乾燥空間内に配置された前記被記録媒体上の前記液体を乾燥させる乾燥ステップと、を有し、前記乾燥ステップでは、前記乾燥空間に対して前記乾燥用気体を給気する給気口の位置を前記被記録媒体の前記表面に対して平行する面内で変化させることを特徴とする。
【0012】
これによれば、乾燥空間に対する給気口の位置を基板の表面に対して平行する面内で変化させることにより、乾燥空間内で乾燥空気が淀んでしまうことが防止される。これにより、均一な乾燥条件で液体を乾燥させることができ、乾燥むらの発生を防止することができる。
【0013】
また、前記乾燥ステップでは、所定の乾燥時間内で前記給気口の位置を毎回同じサイクルで変化させる方法としてもよい。
これによれば、均一な乾燥条件で液体を乾燥させることができ、乾燥むらの発生を防止することができる。
【0014】
また、搬送方向前方に位置する前記被記録媒体に対する前記乾燥ステップと、相対的に搬送方向後方に位置する前記記録ステップとが同時に実行される方法としてもよい。
これによれば、搬送方向前方に位置する被記録媒体に対する乾燥ステップと、相対的に搬送方向後方に位置する記録ステップとが同時に実行されることにより、被記録媒体に対する記録処理を効率よく行うことができる。
【0015】
また、前記乾燥時間が前記記録ステップにおける記録時間と同じ時間である方法としてもよい。
これによれば、制御装置による乾燥装置の制御が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態のプリンターの概略構成を示す図。
【図2】プリンターにおいて印刷を実行する印刷領域を示す平面図。
【図3】プリンターの機能ブロック図。
【図4】乾燥装置の概略構成を示す図。
【図5】(a),(b)は、給気位置変更機構を示す概略構成図。
【図6】連続紙に対して給気される熱風の流動状態を示す図。
【図7】プリンターの印刷処理及び乾燥処理におけるタイミングチャートを示す図。
【図8】給気位置変更機構の変形例を示す概略図。
【図9】ノズル穴及び貫通孔の配置位置の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の記録装置の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0018】
図1は、本実施形態のプリンターの概略構成を示す図である。図2は、プリンターにおいて印刷を実行する印刷領域を示す平面図である。
【0019】
プリンター(記録装置)11は、印刷方式として、複数の記録ヘッド(記録部)36から連続紙(被記録媒体)12上に塗布物としての液体を噴射するインクジェット方式を採用したものであり、ロール状に巻回された長尺状の連続紙12を順次繰り出しつつ印刷処理を行い、印刷後の連続紙12を再びロール状に巻回する。
なお、本実施形態では、水平面内における連続紙12の幅方向をX方向、X方向と直交する連続紙12の搬送方向をY方向、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定している。
【0020】
プリンター11は、印刷処理を実行する本体部14と、本体部14に対して連続紙12を供給する繰り出し部13と、本体部14から排出される連続紙12を巻き取る巻き取り部15と、印刷処理が施された連続紙12に乾燥処理を実行する乾燥装置10とを備えている。
【0021】
本体部14は本体ケース16を備えており、繰り出し部13は本体ケース16の搬送方向上流側(−Y側)に設置され、巻き取り部15は本体ケース16の搬送方向下流側(+Y側)に設置されている。本体ケース16の搬送方向上流側(−Y側)の側壁16Aに設けられた媒体供給部16aに繰り出し部13が接続される一方、搬送方向下流側(+Y側)の側壁16Bに設けられた媒体排出部16bに巻き取り部15が接続されている。
【0022】
繰り出し部13は、本体ケース16の側壁16Aの下部に取り付けられた支持板(支持部)17と、支持板17に設けられた巻き軸18と、本体ケース16の媒体供給部16aに接続された繰り出し台19と、繰り出し台19の先端に設けられた中継ローラー20とを備えている。巻き軸18には、ロール体120が回転可能に支持されている。ロール体120は、紙管(軸部)121の軸周りに長尺状の連続紙12をロール状に巻回させてなり、円筒形状の紙管121の内側に巻き軸18が挿入された状態で支持される。
【0023】
そして、巻き軸18(ロール体120)から繰り出された連続紙12は中継ローラー20に巻き掛けられて繰り出し台19の上面に転換され、繰り出し台19の上面に沿って媒体供給部16aへ搬送される。
【0024】
巻き取り部15は、巻き取りフレーム41と、巻き取りフレーム41に設けられた中継ローラー42及び巻き取り駆動軸43とを備えている。媒体排出部16bから排出される連続紙12は中継ローラー42に巻き掛けられて巻き取り駆動軸43に案内され、巻き取り駆動軸43の回転駆動によりロール状に巻き取られる。
【0025】
本体部14の本体ケース16内には、板状の基台21が水平に設置され、基台21により本体ケース内が2つの空間に区画されている。基台21より上側の空間が連続紙12に印刷処理を施す印刷室22Aであり、下側の空間が連続紙12に乾燥処理を施す乾燥室22Bである。
【0026】
印刷室22Aには、基台21上に固定されたプラテン(支持部材)28と、プラテン28の上方に設けられた記録ヘッド(記録部)36と、記録ヘッド36を支持するキャリッジ35aと、キャリッジ35aを支持する2本のガイド軸35(図2参照)と、バルブユニット37とが設けられている。2本のガイド軸35は搬送方向(Y方向)に沿って互いに平行に配置され、キャリッジ35aが搬送方向に往復移動可能に構成されている。
【0027】
プラテン28は、図1および図2に示すように、上面が開口した箱状の支持台28aと、支持台28aの開口に取り付けられた載置板28bと、を有する。支持台28aは基台21上に固定されており、支持台28aと載置板28bとにより囲まれた内部が負圧室31とされている。載置板28bの支持面(媒体支持面)PL(図2)に連続紙12が載置される。
【0028】
載置板28bには、吸引ファン(吸引装置)29が接続されている。吸引ファン29により負圧室31内を吸引することで、載置板28bに形成された多数の吸引孔(図示略)を介して連続紙12に吸引力を作用させ、連続紙12を載置板28bの支持面PLに吸着させて平坦化することができる。
【0029】
プラテン28には、負圧室31内の圧力を検出する圧力検出センサー(図示せず)が接続されている。圧力検出センサーは、負圧室31内の空気圧を測定し、その検出結果により吸引ファン29の駆動が調整され、連続紙12に対する吸着が制御される。
また、プラテン28には、ヒーター(図示せず)が設けられており、記録実行に伴い、プラテン28に吸着された連続紙12の表面に着弾したインクの乾燥を促進する(第1次乾燥)。
【0030】
プラテン28の搬送方向上流側(−Y側)には、複数の搬送ローラーを含む供給搬送系(搬送装置)が設けられている。供給搬送系は、ロール体120を回転可能に支持する巻き軸18と、プラテン28近傍の印刷室22A内に設けられた第1搬送ローラー対25と、本体ケース16の下段側の空間に設けられた中継ローラー24と、媒体供給部16a近傍に設けられた中継ローラー23とを含む。
本実施形態における供給搬送系は、プラテン28上に連続紙12を所定範囲ずつ間欠的に搬送する。
【0031】
第1搬送ローラー対25は、第1駆動ローラー25aと、第1従動ローラー25bとからなる。第1駆動ローラー25aには、図2に示すように、第1搬送モーター26と、第1エンコーダ26Eとが連結されている。
【0032】
供給搬送系において、繰り出し部13から媒体供給部16aを介して本体ケース16内に搬入された連続紙12は、中継ローラー23、24を経由して第1駆動ローラー25aに下方から巻き掛けられ、第1搬送ローラー対25にニップされる。そして、第1搬送モーター26により駆動される第1駆動ローラー25aの回転に伴って、第1搬送ローラー対25からプラテン28の支持面PL上に水平に繰り出される。
【0033】
一方、プラテン28の搬送方向下流側(+Y側)には、複数の搬送ローラーを含む排出搬送系が設けられている。排出搬送系は、プラテン28に対して第1搬送ローラー対25と反対側に設けられた第2搬送ローラー対33と、本体ケース16の下段側の乾燥室22Bに設けられた中継ローラー39a〜39dと、媒体排出部16b近傍に設けられた送り出しローラー40とを含む。
【0034】
第2搬送ローラー対33は、第2駆動ローラー33aと、第2従動ローラー33bとからなる。第2駆動ローラー33aには、図2に示すように、第2搬送モーター34と、第2エンコーダ34Eとが連結されている。なお、第2従動ローラー33bは、連続紙12の印刷面側(上面側)に配置されるため、印刷された画像の損傷を回避するために、連続紙12の幅方向(X方向)の端縁部にのみ当接する構成としてもよい。
【0035】
排出搬送系において、連続紙12をニップした第2搬送ローラー対33は、第2搬送モーター34により駆動される第2駆動ローラー33aの回転に伴ってプラテン28上から連続紙12を搬出する。第2搬送ローラー対33から繰り出された連続紙12は、中継ローラー39aを経由して乾燥装置10に搬送される。
【0036】
乾燥装置10には、連続紙12に対して、乾燥用に加熱した空気(乾燥用気体;以下、熱風と称する)を供給する供給装置8と、乾燥処理で用いられた熱風を排気する排気装置9とが接続されている。乾燥装置10は、連続紙の表面に着弾したインクを完全に乾燥させる(第2次乾燥)。乾燥装置10で乾燥処理が行われた連続紙12は、中継ローラー39b〜39dを経由して送り出しローラー40へ搬送され、送り出しローラー40により媒体排出部16bを介して巻き取り部15へ繰り出される。
【0037】
複数の記録ヘッド36は、ヘッド取付板36aを介してキャリッジ35aに取り付けられている。ヘッド取付板36aはキャリッジ35a上で媒体幅方向(X方向)に移動可能に構成されている。ヘッド取付板36aはキャリッジ35aに接続されたヘッド位置制御部35bにより位置制御可能であり、ヘッド取付板36aを媒体幅方向(X方向)に移動させることで、複数の記録ヘッド36を一体的に改行動作させることができる。記録ヘッド36は、ヘッド取付板36a上において、隣り合う記録ヘッド36が媒体搬送方向(Y方向)で互い違いに2段になるように、媒体幅方向に一定間隔に並べて配置されている。
なお、ヘッド位置制御部35bは、記録ヘッド36の媒体幅方向(X方向)の位置制御とともに、キャリッジ35aの媒体搬送方向(Y方向;ヘッド走査方向)の位置制御を行い、連続紙12上の所望の位置に記録ヘッド36を配置することができる。
【0038】
複数の記録ヘッド36は、それぞれ図示しないインク供給チューブを介してバルブユニット37と接続されている。バルブユニット37は印刷室22A内における本体ケース16の内壁に設けられており、図示しないインクタンク(インク貯留部)と接続されている。
バルブユニット37は、インクタンクから供給されるインクを一時貯留しつつ記録ヘッド36に供給する。
【0039】
記録ヘッド36の下面(ノズル形成面)には、多数のインク吐出ノズルが媒体幅方向(X方向)に列設されている。記録ヘッド36はバルブユニット37から供給されるインクをインク吐出ノズルからプラテン28上の連続紙12に向けて噴射し、印刷を行う。
なお、記録ヘッド36は、複数のインク吐出ノズル列を有していてもよい。この場合には、4色や6色のカラー印刷を行う際に、それぞれのインク吐出ノズル列に色種毎にインクを割り当てれば、1つの記録ヘッド36で複数色のインクの噴射が可能となる。
【0040】
印刷室22Aにおいて、プラテン28上の領域が、インク吐出ノズルからのインク噴射により連続紙12に対して印刷が行われる印刷領域Rである。連続紙12は、上述した供給搬送系及び排出搬送系により間欠的に搬送される。具体的には、印刷領域Rに相当する長さの連続紙12が印刷を行う毎にプラテン28上にロードされ、印刷処理後に排出搬送系へ送出される。
【0041】
印刷室22A内に延在するガイド軸35は、図1及び図2に示すように、印刷領域Rよりも媒体搬送方向の外側にまで延びている。これにより、キャリッジ35aは印刷領域Rの外側の領域まで移動可能とされている。印刷領域Rの媒体搬送方向上流側(−Y側)に第1メンテナンス領域R1が設けられ、媒体搬送方向下流側(+Y側)に第2メンテナンス領域R2が設けられている。
【0042】
第1メンテナンス領域R1には、メンテナンスユニット60が設けられている。メンテナンスユニット60は、例えば、個々の記録ヘッド36に対応して設けられたキャップ部材及びワイピング部材と、キャップ部材に接続されキャップ部材内部を吸引する吸引装置とを備えた構成である。
第2メンテナンス領域R2には、メンテナンスユニットなどは設けられておらず、作業者の手や腕を挿入可能な作業空間とされている。第2メンテナンス領域R2にキャリッジ35aを配置することで上記作業空間内に記録ヘッド36のノズル形成面を露出させることができ、作業者によるノズル形成面の清拭や記録ヘッド36の交換作業などが可能となる。
【0043】
次に、図3はプリンター11の機能ブロック図である。
図3に示すように、プリンター11は、装置全体の駆動状態を制御するコントローラー(制御装置)44を備えている。コントローラー44は、中央処理装置となるCPU45、ROM46、及びRAM47を備えている。ROM46には、印刷処理及び搬送処理に関する処理ルーチンのプログラム等が記憶されている。また、RAM47は、CPU45における演算結果の一時記憶領域や、外部入力装置48から入力される印刷データ等の一時記憶領域として使用される。
【0044】
コントローラー44には、ヘッドドライバー49、第1搬送モータードライバー(第1モーター制御部)50、第2搬送モータードライバー(第2モーター制御部)52、及び吸引ファンモータードライバー54、トルク検出センサー53、圧力検出センサー32、外部入力装置48および駆動モータードライバー55が接続されている。
【0045】
ヘッドドライバー49には、複数の記録ヘッド36及びヘッド位置制御部35bが接続されている。コントローラー44は、印刷処理において、外部入力装置48から入力された印刷データをRAM47から読み出し、読み出した印刷データをヘッドドライバー49に送信する。ヘッドドライバー49は、コントローラー44から受信した印刷データに基づいて記録ヘッド36及びヘッド位置制御部35bを駆動し、記録ヘッド36の連続紙12上の位置を制御しつつ記録ヘッド36のインク吐出ノズルからインク滴を噴射させ、連続紙12上に画像を形成する。
【0046】
第1搬送モータードライバー50は、第1搬送モーター26に連結された第1エンコーダ26Eから出力されるカウント信号に基づいて第1搬送モーター26の回転量を検出し、第1搬送モーター26の回転量をフィードバック制御する。すなわち、第1搬送モータードライバー50は、コントローラー44から入力された所定の搬送長さに達するまで、第1搬送モーター26により第1駆動ローラー25aを回転駆動し、第1搬送ローラー対25から連続紙12をプラテン28上に繰り出す。
【0047】
一方、第2搬送モータードライバー52は、コントローラー44から入力される制御信号に基づいて、第2搬送モーター34をトルク制御により駆動する。本実施形態では、コントローラー44に第2搬送モーター34のトルクを検出するトルク検出センサー53が接続されており、コントローラー44は、トルク検出センサー53から出力される第2搬送モーター34のトルクの検出結果に基づいて、第2搬送モータードライバー52を介して第2搬送モーター34のトルクをフィードバック制御する。これにより、第2搬送モーター34のトルクに基づいた所定の張力が、第2駆動ローラー33aを介して連続紙12に付与される。
【0048】
なお、一般に、モーターは、トルクと電流とがほぼ比例関係を持つため、モーターの回転速度が一定であれば、モーターの負荷に応じて電流の大きさが決定する。すなわち、ローラーにかかる負荷に応じて、モーターの駆動に必要な電流の大きさが決定される。したがって、モーターを流れる電流の大きさを検出することにより、モーターに荷重される負荷の大きさを検出することができる。
【0049】
吸引ファンモータードライバー54は、コントローラー44から入力される制御信号に基づいて、吸引ファン29の回転軸に連結された吸引ファンモーター30を駆動制御する。吸引ファンモーター30の駆動力により吸引ファン29を所定の速度で回転させることで、回転速度に基づいた所定の吸引力で負圧室31内を減圧することができる。その結果、連続紙12に対して、負圧室31内の負圧が載置板28bに設けられた多数の吸入孔(図示略)を介してプラテン28の支持面PLに対する吸着力として作用する。
【0050】
駆動モータードライバー55は、コントローラー44から入力される制御信号に基づいて、乾燥装置10の給気位置変更機構70の駆動モーター69を駆動制御する。駆動モーター69の駆動力によりボールネジ部68(図5)を駆動させることで、位置変更プレート66(図5)をX方向に沿って往復移動させることができる。
【0051】
次に、乾燥装置の構成について説明する。
図4は、乾燥装置の概略構成を示す図であり、図5は、給気位置変更機構を示す概略構成図である。
乾燥装置10は、供給装置8に接続された供給部61と、排気装置9に接続された排気部62とを備えており、これら供給部61と排気部62との間の乾燥空間67に、搬送方向に沿って間欠的に搬送された連続紙12がXY平面に平行な状態で配置される。
【0052】
供給部61はノズルプレート(第1平面)65を天面とする筐体63を有して構成されており、この筐体63内に形成された供給空間64に供給装置8からの熱風が+X方向から−X方向に向けて供給される。供給装置8は、軸流ファン8Aによって吸引した外気をヒーター8Bによって加熱して、熱風を供給空間64に向けて供給するものである。
【0053】
ノズルプレート65には、供給装置8から供給空間64内に供給された熱風を乾燥空間67内に配置された連続紙12に向けてZ方向に給気させるノズル穴(第1供給孔)65Aが複数設けられている。これら複数のノズル穴65Aは、平面視矩形状あるいは楕円形状を呈する長孔であり、その長手方向が連続紙12の搬送方向に沿うように形成されている。本実施形態では、長軸が4mm、X方向に並ぶノズル穴65Aのピッチが20mm、Y方向に並ぶノズル穴65Aのピッチが50mmとなっている。
なお、ノズル穴65Aの平面視形状は上記した形状に限られることなく適宜選択することができる。
【0054】
供給部61は、連続紙12に向けて供給する熱風の吹き出し位置を変更するための給気位置変更機構70を具備する。この給気位置変更機構70は、ノズルプレート65の裏面65b側にこれと平行に配置される位置変更プレート(第2平面)66と、位置変更プレート66の一端に接続されこの位置変更プレート66を一方向に往復移動させるためのボールネジ部68と、ボールネジ部68(図5)を駆動させる駆動モーター69(図5)とを有して構成される。
【0055】
位置変更プレート66には、ノズルプレート65のノズル穴65Aに対応して設けられた複数の貫通孔(第2供給孔)66Aがパンチプレス等によって形成されている。そして、位置変更プレート66の移動経路上において各貫通孔66Aの少なくとも一部が対応する各ノズル穴65Aと平面視において重なる構成とされている。すなわち、ノズルプレート65のノズル穴65Aと位置変更プレート66の貫通孔66Aとの少なくとも一部が平面視で重なるように、駆動モーター69によって位置変更プレート66の移動量が制御される。固定されたノズルプレート65に対して位置変更プレート66がXY平面に沿ってX方向へ平行移動されると、ノズル穴65Aの長手方向に沿って当該ノズル穴65Aの貫通孔66Aの対向位置が変化して、貫通孔66A及びノズル穴65Aを介して連続紙12に向けて給気される熱風の吹き出し位置が変化する。
【0056】
ここで、貫通孔66Aはノズル穴65Aの開口面積よりも小さく設定されているため、これら貫通孔66Aおよびノズル穴65Aによって構成される給気口77を介して給気される熱風の給気速度は、ノズル穴65Aのみから給気される給気速度よりも速くなる。貫通孔66Aの大きさ(直径)は、給気口77の大きさに寄与するため、給気口77から給気される熱風の所定の風速及び風量を確保できるよう、熱風の温度、乾燥時間、ノズル穴65Aの大きさ等との兼ね合いによって設定される。
【0057】
位置変更プレート66のX方向への移動量は+X方向および−X方向で等しく、所定の乾燥時間内で位置変更プレート66がX方向に沿って1往復するようにコントローラー44により制御される。位置変更プレート66の移動にしたがってノズル穴65Aに対する貫通孔66Aの位置がX方向に変化するため、ノズル穴65A及び貫通孔66Aによって構成される給気口77の位置も同方向へ変化する。つまり、乾燥空間67(連続紙12)に対する熱風の給気位置を変化させながら連続紙12に対する乾燥処理を行う構成となっている。
【0058】
ここで、図5(a),(b)に示すように、X方向における貫通孔66Aの開口面積が初期状態(貫通孔66Aの直径方向の長さ全体がノズル穴65Aに対向した状態)から変化しない範囲の移動量で、位置変更プレート66をX方向に水平移動させることによって、給気口77から一定の給気速度及び給気量で熱風が連続紙12へと給気されることとなる。これにより、乾燥むらを生じさせることなく連続紙12に対する乾燥処理を終了することができる。
【0059】
なお、貫通孔66Aの開口面積が初期状態よりも小さくなるように位置変更プレート66を移動させても良い。上述したように、ノズルプレート65のノズル穴65Aに対して、位置変更プレート66の貫通孔66AにおけるX方向に沿う長さ全体の領域が対向している場合は、給気口77の開口面積が一定であるため給気速度は一定となるが、位置変更プレート66がX方向へさらに移動された場合は、位置変更プレート66の移動量に応じてノズル穴65Aの開口面積が小さくなるように変化して、給気速度がさらに速くなる。このように、乾燥空間67(連続紙12)に対する熱風の給気速度を変化させることによって抑揚をつけることができ、熱風の淀みをより解消することができる。
【0060】
次に、プリンター11の動作について説明する。
上記構成のプリンター11においては、供給搬送系により巻き軸18に支持されたロール体120から連続紙12をその搬送方向に沿って間欠的に繰り出していき、プラテン28上に搬送された連続紙12の所定の記録領域(印刷領域)に対して記録ヘッド36による印刷動作を順次実行し、連続紙12の表面12aに所定の液体を塗布する(記録ステップ)。そして、塗布物が塗布された連続紙12は、供給搬送系により乾燥装置10の乾燥空間67内に間欠的に搬送されて(搬送ステップ)、記録領域毎に順次乾燥処理が行われる(乾燥ステップ)。
【0061】
より詳細には、プリンター11が駆動されて印刷処理が開始されると、乾燥空間67内に連続紙12が配置されているか否かに関わらず、図4に示すように乾燥装置10における供給空間64に対して供給装置8から熱風が供給されて、この熱風が−X側に向けて流動する。供給空間64内を流動した熱風は、位置変更プレート66の貫通孔66Aとノズルプレート65のノズル穴65Aとによって構成される給気口77を介して、乾燥空間67内に配置された連続紙12へ向けて給気される。
【0062】
乾燥装置10の乾燥空間67内に、表面12aにインクが塗布された連続紙12が配置されると、コントローラー44は、給気位置変更機構70の駆動モーター69を駆動してボールネジ部68を動作させ、位置変更プレート66を、所定の乾燥時間内でX方向に沿って往復するようにスライドさせる。この乾燥時間は被記録媒体の種類や印刷時間等に応じて設定される。例えば、連続紙12に対する印刷時間が10秒の場合、位置変更プレート66の移動速度は5m/sである。なお、位置変更プレート66をY方向に沿ってスライドするよう構成しても良い。
【0063】
位置変更プレート66を移動させると、ノズルプレート65のノズル穴65Aに対する貫通孔66Aの対向位置が変化して、乾燥空間67に対して熱風を供給する給気口77の位置が変化する。つまり、連続紙12に対して熱風を吹き付ける位置が変化する。
【0064】
図6は、連続紙に対して給気される熱風の流動状態を示す図である。
この図に示されるように、複数のノズル穴65Aと連続紙12の表面12aとの間の距離は一定である。このため、複数のノズル穴65Aのみを介して乾燥空間67内へ熱風を排気することで、停止した状態の連続紙12に対して熱風を吹き付けてインクを乾燥させる場合、連続紙12のうち、給気された熱風Wが直接噴き当たる箇所は一様に乾燥されるが、例えばY方向で隣り合うノズル穴65Aの間の隙間部分と対向する領域Cでは淀みが生じて蒸気圧が上昇する可能性がある。
【0065】
上述した本実施形態の乾燥装置10であれば、ノズルプレート65に対して位置変更プレート66を移動させることによって乾燥空間67に対する給気口77の位置が変化するため、停止された連続紙12に対して揺動した熱風を吹きつけることが可能になる。このため、ノズルプレート65と連続紙12との間で熱風を淀ませることなく、連続紙12の表面12a全体に熱風を直接吹きかけることが可能となる。このように、連続紙12全体に対して満遍なく熱風を吹きかけることにより、均一な乾燥条件でインクを乾燥させることができる。
【0066】
乾燥空間67で連続紙12の乾燥に用いられた熱風は、排気装置の作動により排気口71を介して排気される。
【0067】
図7は、プリンター11の印刷処理及び乾燥処理におけるタイミングチャートを示す図である。
この図に示されるように、まず、連続紙12を初期搬送させてプラテン28上に載置させ(初期搬送期間T1)、連続紙12の所定印刷領域に対して、ラテラル方式のキャリッジ35aがX方向へ移動しながらY方向に4往復する印刷動作(4パス)を実行する(印刷期間T2)。印刷動作が終了すると、上述した供給搬送系及び排出搬送系により間欠搬送され、乾燥装置10内へと搬送される(搬送期間T3)。この搬送期間T3によって搬送された連続紙12のうち、印刷済みの領域が乾燥装置10内へ搬送され、後続の印刷領域がプラテン28上に載置されることになる。
そして、連続紙12のうち後続の印刷領域に対して印刷処理が実行される一方で、乾燥装置10では、乾燥空間67に搬送された印刷済みの領域に対して、当該領域に付着したインクを乾燥させるべく、給気位置変更機構70の位置変更プレート66をX方向へ一往復させる(印刷乾燥期間T4)。そして、印刷処理及び乾燥処理の両方が終了した後に連続紙12を搬送する。このように、連続紙12のうち、先に印刷された領域に対して乾燥処理を施す間、後続の印刷領域に対する印刷処理を実行する。
【0068】
なお、本実施形態では、乾燥処理時に位置変更プレート66を一往復させているが、これに限られることはなく、複数回往復移動させてもよい。この乾燥処理における位置変更プレート66の移動サイクル回数は対象物の特性に応じて設定され、乾燥処理ごとに同じサイクル数で移動させることにより、間欠搬送される連続紙12の各印刷領域に対して毎回同じ品質を担保することができる。
【0069】
以上のように、本実施形態では、ノズルプレート65に対して位置変更プレート66をX方向に移動させてノズル穴65Aに対する貫通孔66Aの重なり位置を変化させることによって、乾燥空間67に対して熱風を給気させる給気口77の位置をX方向で変化させている。これにより、連続紙12に吹きかけられる熱風の吹き出し位置が変化するため、熱風を淀ませることなく一様に連続紙12を乾燥させて乾燥むらの発生を抑制することが可能になる。連続紙12を間欠的に搬送して、停止状態の連続紙12に対して乾燥処理を行う場合、規定の吹き出し位置から熱風を吹き出すと淀みが生じやすく乾燥ムラになりやすいが、本実施形態のように連続紙12に対して熱風を吹きかける位置を変更させることによって熱風の淀みが防止され、所定の乾燥時間内で連続紙12の乾燥を終了させることができる。よって、本実施形態では、間欠的に搬送され、停止状態の連続紙12に対して乾燥処理を行うことから、淀みが生じやすい状況であっても効果的に乾燥させることが可能である。
【0070】
また、本実施形態では、ノズルプレート65のノズル穴65Aのピッチ範囲内で位置変更プレート66を移動させる構成のため、装置の大型化を招くことなく効果的に乾燥むらの発生を抑制することができる。
【0071】
また、印刷工程の1サイクルは、印刷処理及び乾燥処理のうち時間のかかる方に合わせて設定され、いずれかの処理が確実に終了するまで次のフレームには移行しない。本実施形態では、印刷時間に応じて乾燥時間が設定されているため各処理にかかる時間は等しいが、例えば、印刷時間に対して乾燥時間が短い場合であっても、乾燥装置10内に乾燥対象の印刷領域を含む連続紙12が乾燥を終えた状態で存在していても構わない。
【0072】
(変形例)
図8は、給気位置変更機構の変形例を示す概略図である。
この図に示す給気位置変更機構は、平面視円形状を呈するノズル穴85Aを複数有するノズルプレート85と、このノズルプレート85の裏面側に配置され、ノズル穴85Aよりも直径の小さい貫通孔96Aを複数有する位置変更プレート96と、を有する。この位置変更プレート96は、不図示の偏芯カム機構によってXY平面上で円を描くように移動できるようになっている。この際、各ノズル穴85Aに対向する貫通孔96Aがノズル穴85Aの開口領域内で移動するように位置変更プレート96の移動制御を行うことにより、ノズル穴85Aおよび貫通孔96Aによって構成される給気口77の位置が変化する。このように、位置変更プレートの移動方向が1次方向のみならず、2次方向への移動を可能とした構成であっても良い。
なお、ノズル穴85Aおよび貫通孔96Aの平面視形状は円形状に限らないし、これらの形状が互いに異なっていても構わない。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0074】
例えば、ノズル穴65Aおよび貫通孔66AのX方向、Y方向へのピッチは上記したものに限らない。上記実施形態では、ノズル穴65Aを格子状に配置する構成としたが、これに限定されるものではなく、図9に示すように、Y方向に隙間をあけて配列されるノズル穴65Aの列の配置がX方向で隣り合う列で半ピッチずれる千鳥配置に配列される構成としてもよい。この場合、貫通孔66Aの上記ノズル穴65Aの千鳥配列に倣って配置される。
また、貫通孔66AのX方向およびY方向へのピッチも上記したものに限らない。
【0075】
また、上記実施形態では、連続紙12を間欠的に搬送する構成を例示したが、これに限られるものではなく、連続紙12を連続的に搬送して記録処理及び乾燥処理を行う構成であってもよい。連続紙12を連続して搬送しながら乾燥する場合には、連続紙12の搬送速度に応じて位置変更プレート66を所定の速さで連続して往復移動させることによって、
供給装置8からの熱風を給気口77を介して連続紙12に対して吹きかけることが可能となる。
【0076】
さらに、塗布物が塗布される基材としては、連続紙に限定されるものではなく、枚葉毎に搬送されて記録処理及び乾燥処理が行われる構成でも適用可能である。あるいは、フィルムであってもよい。なお、塗布物が内部に吸収されにくいフィルムを用いる場合には、塗布物の全水分を蒸発させなければならないため用紙に比べて乾燥に時間がかかる。このため位置変更プレート66の移動速度を連続紙12よりも遅く設定することによって、フィルム全体のインクを均一に乾燥させることができる。
【0077】
また、連続紙12の搬送方向に乾燥装置10が複数設けられていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、本発明に係る乾燥装置10がプリンター11に設けられる構成を示したが、これに限られるものではなく、基材上に塗布物が塗布されたものを乾燥対象として広く適用可能である。
【0079】
上述の実施形態においては、記録装置として、インク等の液体を噴射する記録装置を例にして説明したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする記録装置に適用することができる。記録装置が噴射可能な液体は、機能材料の粒子が分散又は溶解されている液状体、ジェル状の流状体を含む。
【0080】
また、上述した実施形態において、記録装置から噴射される液体としては、インクのみならず、特定の用途に対応する液体を適用可能である。記録装置に、その特定の用途に対応する液体を噴射可能な噴射ヘッドを設け、その噴射ヘッドから特定の用途に対応する液体を噴射して、その液体を所定の物体に付着させることによって、所定のデバイスを製造可能である。例えば、記録装置は、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、及び面発光ディスプレイ(FED)の製造等に用いられる電極材、色材等の材料を所定の分散媒(溶媒)に分散(溶解)した液体(液状体)を噴射する記録装置に適用可能である。
【0081】
また、記録装置としては、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する記録装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する記録装置であってもよい。
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する記録装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する記録装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する記録装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の記録装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
10…乾燥装置、11…プリンター(記録装置)、12…連続紙(被記録媒体)、12a…表面、17…支持板(支持部)、28…プラテン(支持部材)、36…記録ヘッド(記録部)、44…コントローラー(制御装置)、65A…ノズル穴(第1供給孔)、66A…貫通孔(第2供給孔)、67…乾燥空間、70…給気位置変更機構、77…給気口
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式等の製版を必要とする印刷方式に比べて、高速、簡便かつ安価に画像を記録することができる画像記録装置として、インクジェット記録方式による画像記録装置、すなわち、インクジェット記録装置が広く普及している。
インクジェット記録装置は、記録ヘッドから記録媒体に対してインクを吐出して着弾させることにより記録媒体上に画像を記録する方式が採用されているため、記録媒体として紙や布帛等のほか、従来の画像記録方式では記録が困難であった樹脂フィルムや金属等のインク吸収性に乏しい記録媒体に対しても画像記録を行うことができる。
【0003】
これらの記録媒体は、通常、プラテンと呼ばれる支持板上を搬送され、その上方の記録ヘッドからインクの吐出を受ける。記録媒体上に塗布されたインク(塗布物)は、後工程における乾燥装置で乾燥されて記録媒体に定着される。上記塗布物の乾燥時には、乾燥むらが生じて塗布特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
そこで、特許文献1には、複数の乾燥ゾーンを搬送方向に沿って順次配置した装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−000620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
複数の乾燥ゾーンを搬送方向に沿って順次配置しても、上流側の乾燥ゾーンでは単一方向の風で乾燥させるため乾燥むらが生じる可能性があり、この場合、下流側の乾燥ゾーンでは一旦発生した乾燥むらを解消することは困難である。また、複数の乾燥ゾーンを設けることで装置が大型化するという問題も生じさせる。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、装置の大型化を招くことなく効果的に乾燥むらの発生を抑制できる記録装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録装置は、被記録媒体に対して液体を塗布することで記録を行う記録部と、前記被記録媒体を支持する支持部材と、前記被記録媒体上に塗布された前記液体を乾燥空間で乾燥させる乾燥装置と、前記乾燥装置に接続された制御装置と、を備え、前記乾燥装置は、前記乾燥空間に向けて乾燥用気体を供給する給気口と、前記乾燥空間に対する前記給気口の位置を前記被記録媒体の表面に対して平行する面内で変化させる給気位置変更機構と、を有するものであることを特徴とする。
【0008】
これによれば、乾燥空間に対する給気口の位置を基板の表面に対して平行する面内で変化させることにより、乾燥空間内で乾燥空気が淀んでしまうことが防止される。これにより、均一な乾燥条件で液体を乾燥させることができ、乾燥むらの発生を防止することができる。
【0009】
また、前記給気口は、前記乾燥空間に開口する複数の第1供給孔と、各第1供給孔と平面視で重なる位置に配置された複数の第2供給孔とにより構成され、前記給気位置変更機構は、前記複数の第1供給孔が配置された第1平面に対して、前記複数の第2供給孔が配置された第2平面を平行移動させることによって前記給気口の位置を変化させる構成としてもよい。
上述したように、給気口は、第1供給孔および第2供給孔の平面視で重なる部分によって構成されており、複数の第1供給孔が配置された第1平面に対して、複数の第2供給孔が配置された第2平面を平行移動させることによって、乾燥空間に対する給気口の位置を変化させることが可能である。これにより、乾燥空気を淀ませることなく被記録媒体に対して乾燥空気を直接吹きかけることが可能になる。
【0010】
また、前記給気位置変更機構は、前記給気口の開口面積が一定となるように前記第1平面に対して前記第2平面を平行移動させる構成としてもよい。
これによれば、給気口を介して乾燥空間に供給される乾燥空気の供給量及び供給速度を一定にすることができるので、均一な乾燥条件を確保でき、被記録媒体ごとに同じ乾燥品質を担保することが可能である。
【0011】
本発明の記録装置の制御方法は、被記録媒体に対して液体を塗布することで記録を行う記録部と、前記被記録媒体を支持する支持部材と、前記被記録媒体上に塗布された前記液体を乾燥空間で乾燥させる乾燥装置と、前記乾燥装置に接続された制御装置と、を備え、前記乾燥装置は、前記乾燥空間に向けて乾燥用気体を供給する給気口と、前記乾燥空間に対する前記給気口の位置を前記被記録媒体の表面に対して平行する面内で変化させる給気位置変更機構と、を有する記録装置の制御方法であって、前記被記録媒体に対して前記液体を塗布する記録ステップと、前記被記録媒体上に塗布された前記液体を前記乾燥空間へと搬送する搬送ステップと、前記乾燥空間内に配置された前記被記録媒体上の前記液体を乾燥させる乾燥ステップと、を有し、前記乾燥ステップでは、前記乾燥空間に対して前記乾燥用気体を給気する給気口の位置を前記被記録媒体の前記表面に対して平行する面内で変化させることを特徴とする。
【0012】
これによれば、乾燥空間に対する給気口の位置を基板の表面に対して平行する面内で変化させることにより、乾燥空間内で乾燥空気が淀んでしまうことが防止される。これにより、均一な乾燥条件で液体を乾燥させることができ、乾燥むらの発生を防止することができる。
【0013】
また、前記乾燥ステップでは、所定の乾燥時間内で前記給気口の位置を毎回同じサイクルで変化させる方法としてもよい。
これによれば、均一な乾燥条件で液体を乾燥させることができ、乾燥むらの発生を防止することができる。
【0014】
また、搬送方向前方に位置する前記被記録媒体に対する前記乾燥ステップと、相対的に搬送方向後方に位置する前記記録ステップとが同時に実行される方法としてもよい。
これによれば、搬送方向前方に位置する被記録媒体に対する乾燥ステップと、相対的に搬送方向後方に位置する記録ステップとが同時に実行されることにより、被記録媒体に対する記録処理を効率よく行うことができる。
【0015】
また、前記乾燥時間が前記記録ステップにおける記録時間と同じ時間である方法としてもよい。
これによれば、制御装置による乾燥装置の制御が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態のプリンターの概略構成を示す図。
【図2】プリンターにおいて印刷を実行する印刷領域を示す平面図。
【図3】プリンターの機能ブロック図。
【図4】乾燥装置の概略構成を示す図。
【図5】(a),(b)は、給気位置変更機構を示す概略構成図。
【図6】連続紙に対して給気される熱風の流動状態を示す図。
【図7】プリンターの印刷処理及び乾燥処理におけるタイミングチャートを示す図。
【図8】給気位置変更機構の変形例を示す概略図。
【図9】ノズル穴及び貫通孔の配置位置の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の記録装置の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0018】
図1は、本実施形態のプリンターの概略構成を示す図である。図2は、プリンターにおいて印刷を実行する印刷領域を示す平面図である。
【0019】
プリンター(記録装置)11は、印刷方式として、複数の記録ヘッド(記録部)36から連続紙(被記録媒体)12上に塗布物としての液体を噴射するインクジェット方式を採用したものであり、ロール状に巻回された長尺状の連続紙12を順次繰り出しつつ印刷処理を行い、印刷後の連続紙12を再びロール状に巻回する。
なお、本実施形態では、水平面内における連続紙12の幅方向をX方向、X方向と直交する連続紙12の搬送方向をY方向、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定している。
【0020】
プリンター11は、印刷処理を実行する本体部14と、本体部14に対して連続紙12を供給する繰り出し部13と、本体部14から排出される連続紙12を巻き取る巻き取り部15と、印刷処理が施された連続紙12に乾燥処理を実行する乾燥装置10とを備えている。
【0021】
本体部14は本体ケース16を備えており、繰り出し部13は本体ケース16の搬送方向上流側(−Y側)に設置され、巻き取り部15は本体ケース16の搬送方向下流側(+Y側)に設置されている。本体ケース16の搬送方向上流側(−Y側)の側壁16Aに設けられた媒体供給部16aに繰り出し部13が接続される一方、搬送方向下流側(+Y側)の側壁16Bに設けられた媒体排出部16bに巻き取り部15が接続されている。
【0022】
繰り出し部13は、本体ケース16の側壁16Aの下部に取り付けられた支持板(支持部)17と、支持板17に設けられた巻き軸18と、本体ケース16の媒体供給部16aに接続された繰り出し台19と、繰り出し台19の先端に設けられた中継ローラー20とを備えている。巻き軸18には、ロール体120が回転可能に支持されている。ロール体120は、紙管(軸部)121の軸周りに長尺状の連続紙12をロール状に巻回させてなり、円筒形状の紙管121の内側に巻き軸18が挿入された状態で支持される。
【0023】
そして、巻き軸18(ロール体120)から繰り出された連続紙12は中継ローラー20に巻き掛けられて繰り出し台19の上面に転換され、繰り出し台19の上面に沿って媒体供給部16aへ搬送される。
【0024】
巻き取り部15は、巻き取りフレーム41と、巻き取りフレーム41に設けられた中継ローラー42及び巻き取り駆動軸43とを備えている。媒体排出部16bから排出される連続紙12は中継ローラー42に巻き掛けられて巻き取り駆動軸43に案内され、巻き取り駆動軸43の回転駆動によりロール状に巻き取られる。
【0025】
本体部14の本体ケース16内には、板状の基台21が水平に設置され、基台21により本体ケース内が2つの空間に区画されている。基台21より上側の空間が連続紙12に印刷処理を施す印刷室22Aであり、下側の空間が連続紙12に乾燥処理を施す乾燥室22Bである。
【0026】
印刷室22Aには、基台21上に固定されたプラテン(支持部材)28と、プラテン28の上方に設けられた記録ヘッド(記録部)36と、記録ヘッド36を支持するキャリッジ35aと、キャリッジ35aを支持する2本のガイド軸35(図2参照)と、バルブユニット37とが設けられている。2本のガイド軸35は搬送方向(Y方向)に沿って互いに平行に配置され、キャリッジ35aが搬送方向に往復移動可能に構成されている。
【0027】
プラテン28は、図1および図2に示すように、上面が開口した箱状の支持台28aと、支持台28aの開口に取り付けられた載置板28bと、を有する。支持台28aは基台21上に固定されており、支持台28aと載置板28bとにより囲まれた内部が負圧室31とされている。載置板28bの支持面(媒体支持面)PL(図2)に連続紙12が載置される。
【0028】
載置板28bには、吸引ファン(吸引装置)29が接続されている。吸引ファン29により負圧室31内を吸引することで、載置板28bに形成された多数の吸引孔(図示略)を介して連続紙12に吸引力を作用させ、連続紙12を載置板28bの支持面PLに吸着させて平坦化することができる。
【0029】
プラテン28には、負圧室31内の圧力を検出する圧力検出センサー(図示せず)が接続されている。圧力検出センサーは、負圧室31内の空気圧を測定し、その検出結果により吸引ファン29の駆動が調整され、連続紙12に対する吸着が制御される。
また、プラテン28には、ヒーター(図示せず)が設けられており、記録実行に伴い、プラテン28に吸着された連続紙12の表面に着弾したインクの乾燥を促進する(第1次乾燥)。
【0030】
プラテン28の搬送方向上流側(−Y側)には、複数の搬送ローラーを含む供給搬送系(搬送装置)が設けられている。供給搬送系は、ロール体120を回転可能に支持する巻き軸18と、プラテン28近傍の印刷室22A内に設けられた第1搬送ローラー対25と、本体ケース16の下段側の空間に設けられた中継ローラー24と、媒体供給部16a近傍に設けられた中継ローラー23とを含む。
本実施形態における供給搬送系は、プラテン28上に連続紙12を所定範囲ずつ間欠的に搬送する。
【0031】
第1搬送ローラー対25は、第1駆動ローラー25aと、第1従動ローラー25bとからなる。第1駆動ローラー25aには、図2に示すように、第1搬送モーター26と、第1エンコーダ26Eとが連結されている。
【0032】
供給搬送系において、繰り出し部13から媒体供給部16aを介して本体ケース16内に搬入された連続紙12は、中継ローラー23、24を経由して第1駆動ローラー25aに下方から巻き掛けられ、第1搬送ローラー対25にニップされる。そして、第1搬送モーター26により駆動される第1駆動ローラー25aの回転に伴って、第1搬送ローラー対25からプラテン28の支持面PL上に水平に繰り出される。
【0033】
一方、プラテン28の搬送方向下流側(+Y側)には、複数の搬送ローラーを含む排出搬送系が設けられている。排出搬送系は、プラテン28に対して第1搬送ローラー対25と反対側に設けられた第2搬送ローラー対33と、本体ケース16の下段側の乾燥室22Bに設けられた中継ローラー39a〜39dと、媒体排出部16b近傍に設けられた送り出しローラー40とを含む。
【0034】
第2搬送ローラー対33は、第2駆動ローラー33aと、第2従動ローラー33bとからなる。第2駆動ローラー33aには、図2に示すように、第2搬送モーター34と、第2エンコーダ34Eとが連結されている。なお、第2従動ローラー33bは、連続紙12の印刷面側(上面側)に配置されるため、印刷された画像の損傷を回避するために、連続紙12の幅方向(X方向)の端縁部にのみ当接する構成としてもよい。
【0035】
排出搬送系において、連続紙12をニップした第2搬送ローラー対33は、第2搬送モーター34により駆動される第2駆動ローラー33aの回転に伴ってプラテン28上から連続紙12を搬出する。第2搬送ローラー対33から繰り出された連続紙12は、中継ローラー39aを経由して乾燥装置10に搬送される。
【0036】
乾燥装置10には、連続紙12に対して、乾燥用に加熱した空気(乾燥用気体;以下、熱風と称する)を供給する供給装置8と、乾燥処理で用いられた熱風を排気する排気装置9とが接続されている。乾燥装置10は、連続紙の表面に着弾したインクを完全に乾燥させる(第2次乾燥)。乾燥装置10で乾燥処理が行われた連続紙12は、中継ローラー39b〜39dを経由して送り出しローラー40へ搬送され、送り出しローラー40により媒体排出部16bを介して巻き取り部15へ繰り出される。
【0037】
複数の記録ヘッド36は、ヘッド取付板36aを介してキャリッジ35aに取り付けられている。ヘッド取付板36aはキャリッジ35a上で媒体幅方向(X方向)に移動可能に構成されている。ヘッド取付板36aはキャリッジ35aに接続されたヘッド位置制御部35bにより位置制御可能であり、ヘッド取付板36aを媒体幅方向(X方向)に移動させることで、複数の記録ヘッド36を一体的に改行動作させることができる。記録ヘッド36は、ヘッド取付板36a上において、隣り合う記録ヘッド36が媒体搬送方向(Y方向)で互い違いに2段になるように、媒体幅方向に一定間隔に並べて配置されている。
なお、ヘッド位置制御部35bは、記録ヘッド36の媒体幅方向(X方向)の位置制御とともに、キャリッジ35aの媒体搬送方向(Y方向;ヘッド走査方向)の位置制御を行い、連続紙12上の所望の位置に記録ヘッド36を配置することができる。
【0038】
複数の記録ヘッド36は、それぞれ図示しないインク供給チューブを介してバルブユニット37と接続されている。バルブユニット37は印刷室22A内における本体ケース16の内壁に設けられており、図示しないインクタンク(インク貯留部)と接続されている。
バルブユニット37は、インクタンクから供給されるインクを一時貯留しつつ記録ヘッド36に供給する。
【0039】
記録ヘッド36の下面(ノズル形成面)には、多数のインク吐出ノズルが媒体幅方向(X方向)に列設されている。記録ヘッド36はバルブユニット37から供給されるインクをインク吐出ノズルからプラテン28上の連続紙12に向けて噴射し、印刷を行う。
なお、記録ヘッド36は、複数のインク吐出ノズル列を有していてもよい。この場合には、4色や6色のカラー印刷を行う際に、それぞれのインク吐出ノズル列に色種毎にインクを割り当てれば、1つの記録ヘッド36で複数色のインクの噴射が可能となる。
【0040】
印刷室22Aにおいて、プラテン28上の領域が、インク吐出ノズルからのインク噴射により連続紙12に対して印刷が行われる印刷領域Rである。連続紙12は、上述した供給搬送系及び排出搬送系により間欠的に搬送される。具体的には、印刷領域Rに相当する長さの連続紙12が印刷を行う毎にプラテン28上にロードされ、印刷処理後に排出搬送系へ送出される。
【0041】
印刷室22A内に延在するガイド軸35は、図1及び図2に示すように、印刷領域Rよりも媒体搬送方向の外側にまで延びている。これにより、キャリッジ35aは印刷領域Rの外側の領域まで移動可能とされている。印刷領域Rの媒体搬送方向上流側(−Y側)に第1メンテナンス領域R1が設けられ、媒体搬送方向下流側(+Y側)に第2メンテナンス領域R2が設けられている。
【0042】
第1メンテナンス領域R1には、メンテナンスユニット60が設けられている。メンテナンスユニット60は、例えば、個々の記録ヘッド36に対応して設けられたキャップ部材及びワイピング部材と、キャップ部材に接続されキャップ部材内部を吸引する吸引装置とを備えた構成である。
第2メンテナンス領域R2には、メンテナンスユニットなどは設けられておらず、作業者の手や腕を挿入可能な作業空間とされている。第2メンテナンス領域R2にキャリッジ35aを配置することで上記作業空間内に記録ヘッド36のノズル形成面を露出させることができ、作業者によるノズル形成面の清拭や記録ヘッド36の交換作業などが可能となる。
【0043】
次に、図3はプリンター11の機能ブロック図である。
図3に示すように、プリンター11は、装置全体の駆動状態を制御するコントローラー(制御装置)44を備えている。コントローラー44は、中央処理装置となるCPU45、ROM46、及びRAM47を備えている。ROM46には、印刷処理及び搬送処理に関する処理ルーチンのプログラム等が記憶されている。また、RAM47は、CPU45における演算結果の一時記憶領域や、外部入力装置48から入力される印刷データ等の一時記憶領域として使用される。
【0044】
コントローラー44には、ヘッドドライバー49、第1搬送モータードライバー(第1モーター制御部)50、第2搬送モータードライバー(第2モーター制御部)52、及び吸引ファンモータードライバー54、トルク検出センサー53、圧力検出センサー32、外部入力装置48および駆動モータードライバー55が接続されている。
【0045】
ヘッドドライバー49には、複数の記録ヘッド36及びヘッド位置制御部35bが接続されている。コントローラー44は、印刷処理において、外部入力装置48から入力された印刷データをRAM47から読み出し、読み出した印刷データをヘッドドライバー49に送信する。ヘッドドライバー49は、コントローラー44から受信した印刷データに基づいて記録ヘッド36及びヘッド位置制御部35bを駆動し、記録ヘッド36の連続紙12上の位置を制御しつつ記録ヘッド36のインク吐出ノズルからインク滴を噴射させ、連続紙12上に画像を形成する。
【0046】
第1搬送モータードライバー50は、第1搬送モーター26に連結された第1エンコーダ26Eから出力されるカウント信号に基づいて第1搬送モーター26の回転量を検出し、第1搬送モーター26の回転量をフィードバック制御する。すなわち、第1搬送モータードライバー50は、コントローラー44から入力された所定の搬送長さに達するまで、第1搬送モーター26により第1駆動ローラー25aを回転駆動し、第1搬送ローラー対25から連続紙12をプラテン28上に繰り出す。
【0047】
一方、第2搬送モータードライバー52は、コントローラー44から入力される制御信号に基づいて、第2搬送モーター34をトルク制御により駆動する。本実施形態では、コントローラー44に第2搬送モーター34のトルクを検出するトルク検出センサー53が接続されており、コントローラー44は、トルク検出センサー53から出力される第2搬送モーター34のトルクの検出結果に基づいて、第2搬送モータードライバー52を介して第2搬送モーター34のトルクをフィードバック制御する。これにより、第2搬送モーター34のトルクに基づいた所定の張力が、第2駆動ローラー33aを介して連続紙12に付与される。
【0048】
なお、一般に、モーターは、トルクと電流とがほぼ比例関係を持つため、モーターの回転速度が一定であれば、モーターの負荷に応じて電流の大きさが決定する。すなわち、ローラーにかかる負荷に応じて、モーターの駆動に必要な電流の大きさが決定される。したがって、モーターを流れる電流の大きさを検出することにより、モーターに荷重される負荷の大きさを検出することができる。
【0049】
吸引ファンモータードライバー54は、コントローラー44から入力される制御信号に基づいて、吸引ファン29の回転軸に連結された吸引ファンモーター30を駆動制御する。吸引ファンモーター30の駆動力により吸引ファン29を所定の速度で回転させることで、回転速度に基づいた所定の吸引力で負圧室31内を減圧することができる。その結果、連続紙12に対して、負圧室31内の負圧が載置板28bに設けられた多数の吸入孔(図示略)を介してプラテン28の支持面PLに対する吸着力として作用する。
【0050】
駆動モータードライバー55は、コントローラー44から入力される制御信号に基づいて、乾燥装置10の給気位置変更機構70の駆動モーター69を駆動制御する。駆動モーター69の駆動力によりボールネジ部68(図5)を駆動させることで、位置変更プレート66(図5)をX方向に沿って往復移動させることができる。
【0051】
次に、乾燥装置の構成について説明する。
図4は、乾燥装置の概略構成を示す図であり、図5は、給気位置変更機構を示す概略構成図である。
乾燥装置10は、供給装置8に接続された供給部61と、排気装置9に接続された排気部62とを備えており、これら供給部61と排気部62との間の乾燥空間67に、搬送方向に沿って間欠的に搬送された連続紙12がXY平面に平行な状態で配置される。
【0052】
供給部61はノズルプレート(第1平面)65を天面とする筐体63を有して構成されており、この筐体63内に形成された供給空間64に供給装置8からの熱風が+X方向から−X方向に向けて供給される。供給装置8は、軸流ファン8Aによって吸引した外気をヒーター8Bによって加熱して、熱風を供給空間64に向けて供給するものである。
【0053】
ノズルプレート65には、供給装置8から供給空間64内に供給された熱風を乾燥空間67内に配置された連続紙12に向けてZ方向に給気させるノズル穴(第1供給孔)65Aが複数設けられている。これら複数のノズル穴65Aは、平面視矩形状あるいは楕円形状を呈する長孔であり、その長手方向が連続紙12の搬送方向に沿うように形成されている。本実施形態では、長軸が4mm、X方向に並ぶノズル穴65Aのピッチが20mm、Y方向に並ぶノズル穴65Aのピッチが50mmとなっている。
なお、ノズル穴65Aの平面視形状は上記した形状に限られることなく適宜選択することができる。
【0054】
供給部61は、連続紙12に向けて供給する熱風の吹き出し位置を変更するための給気位置変更機構70を具備する。この給気位置変更機構70は、ノズルプレート65の裏面65b側にこれと平行に配置される位置変更プレート(第2平面)66と、位置変更プレート66の一端に接続されこの位置変更プレート66を一方向に往復移動させるためのボールネジ部68と、ボールネジ部68(図5)を駆動させる駆動モーター69(図5)とを有して構成される。
【0055】
位置変更プレート66には、ノズルプレート65のノズル穴65Aに対応して設けられた複数の貫通孔(第2供給孔)66Aがパンチプレス等によって形成されている。そして、位置変更プレート66の移動経路上において各貫通孔66Aの少なくとも一部が対応する各ノズル穴65Aと平面視において重なる構成とされている。すなわち、ノズルプレート65のノズル穴65Aと位置変更プレート66の貫通孔66Aとの少なくとも一部が平面視で重なるように、駆動モーター69によって位置変更プレート66の移動量が制御される。固定されたノズルプレート65に対して位置変更プレート66がXY平面に沿ってX方向へ平行移動されると、ノズル穴65Aの長手方向に沿って当該ノズル穴65Aの貫通孔66Aの対向位置が変化して、貫通孔66A及びノズル穴65Aを介して連続紙12に向けて給気される熱風の吹き出し位置が変化する。
【0056】
ここで、貫通孔66Aはノズル穴65Aの開口面積よりも小さく設定されているため、これら貫通孔66Aおよびノズル穴65Aによって構成される給気口77を介して給気される熱風の給気速度は、ノズル穴65Aのみから給気される給気速度よりも速くなる。貫通孔66Aの大きさ(直径)は、給気口77の大きさに寄与するため、給気口77から給気される熱風の所定の風速及び風量を確保できるよう、熱風の温度、乾燥時間、ノズル穴65Aの大きさ等との兼ね合いによって設定される。
【0057】
位置変更プレート66のX方向への移動量は+X方向および−X方向で等しく、所定の乾燥時間内で位置変更プレート66がX方向に沿って1往復するようにコントローラー44により制御される。位置変更プレート66の移動にしたがってノズル穴65Aに対する貫通孔66Aの位置がX方向に変化するため、ノズル穴65A及び貫通孔66Aによって構成される給気口77の位置も同方向へ変化する。つまり、乾燥空間67(連続紙12)に対する熱風の給気位置を変化させながら連続紙12に対する乾燥処理を行う構成となっている。
【0058】
ここで、図5(a),(b)に示すように、X方向における貫通孔66Aの開口面積が初期状態(貫通孔66Aの直径方向の長さ全体がノズル穴65Aに対向した状態)から変化しない範囲の移動量で、位置変更プレート66をX方向に水平移動させることによって、給気口77から一定の給気速度及び給気量で熱風が連続紙12へと給気されることとなる。これにより、乾燥むらを生じさせることなく連続紙12に対する乾燥処理を終了することができる。
【0059】
なお、貫通孔66Aの開口面積が初期状態よりも小さくなるように位置変更プレート66を移動させても良い。上述したように、ノズルプレート65のノズル穴65Aに対して、位置変更プレート66の貫通孔66AにおけるX方向に沿う長さ全体の領域が対向している場合は、給気口77の開口面積が一定であるため給気速度は一定となるが、位置変更プレート66がX方向へさらに移動された場合は、位置変更プレート66の移動量に応じてノズル穴65Aの開口面積が小さくなるように変化して、給気速度がさらに速くなる。このように、乾燥空間67(連続紙12)に対する熱風の給気速度を変化させることによって抑揚をつけることができ、熱風の淀みをより解消することができる。
【0060】
次に、プリンター11の動作について説明する。
上記構成のプリンター11においては、供給搬送系により巻き軸18に支持されたロール体120から連続紙12をその搬送方向に沿って間欠的に繰り出していき、プラテン28上に搬送された連続紙12の所定の記録領域(印刷領域)に対して記録ヘッド36による印刷動作を順次実行し、連続紙12の表面12aに所定の液体を塗布する(記録ステップ)。そして、塗布物が塗布された連続紙12は、供給搬送系により乾燥装置10の乾燥空間67内に間欠的に搬送されて(搬送ステップ)、記録領域毎に順次乾燥処理が行われる(乾燥ステップ)。
【0061】
より詳細には、プリンター11が駆動されて印刷処理が開始されると、乾燥空間67内に連続紙12が配置されているか否かに関わらず、図4に示すように乾燥装置10における供給空間64に対して供給装置8から熱風が供給されて、この熱風が−X側に向けて流動する。供給空間64内を流動した熱風は、位置変更プレート66の貫通孔66Aとノズルプレート65のノズル穴65Aとによって構成される給気口77を介して、乾燥空間67内に配置された連続紙12へ向けて給気される。
【0062】
乾燥装置10の乾燥空間67内に、表面12aにインクが塗布された連続紙12が配置されると、コントローラー44は、給気位置変更機構70の駆動モーター69を駆動してボールネジ部68を動作させ、位置変更プレート66を、所定の乾燥時間内でX方向に沿って往復するようにスライドさせる。この乾燥時間は被記録媒体の種類や印刷時間等に応じて設定される。例えば、連続紙12に対する印刷時間が10秒の場合、位置変更プレート66の移動速度は5m/sである。なお、位置変更プレート66をY方向に沿ってスライドするよう構成しても良い。
【0063】
位置変更プレート66を移動させると、ノズルプレート65のノズル穴65Aに対する貫通孔66Aの対向位置が変化して、乾燥空間67に対して熱風を供給する給気口77の位置が変化する。つまり、連続紙12に対して熱風を吹き付ける位置が変化する。
【0064】
図6は、連続紙に対して給気される熱風の流動状態を示す図である。
この図に示されるように、複数のノズル穴65Aと連続紙12の表面12aとの間の距離は一定である。このため、複数のノズル穴65Aのみを介して乾燥空間67内へ熱風を排気することで、停止した状態の連続紙12に対して熱風を吹き付けてインクを乾燥させる場合、連続紙12のうち、給気された熱風Wが直接噴き当たる箇所は一様に乾燥されるが、例えばY方向で隣り合うノズル穴65Aの間の隙間部分と対向する領域Cでは淀みが生じて蒸気圧が上昇する可能性がある。
【0065】
上述した本実施形態の乾燥装置10であれば、ノズルプレート65に対して位置変更プレート66を移動させることによって乾燥空間67に対する給気口77の位置が変化するため、停止された連続紙12に対して揺動した熱風を吹きつけることが可能になる。このため、ノズルプレート65と連続紙12との間で熱風を淀ませることなく、連続紙12の表面12a全体に熱風を直接吹きかけることが可能となる。このように、連続紙12全体に対して満遍なく熱風を吹きかけることにより、均一な乾燥条件でインクを乾燥させることができる。
【0066】
乾燥空間67で連続紙12の乾燥に用いられた熱風は、排気装置の作動により排気口71を介して排気される。
【0067】
図7は、プリンター11の印刷処理及び乾燥処理におけるタイミングチャートを示す図である。
この図に示されるように、まず、連続紙12を初期搬送させてプラテン28上に載置させ(初期搬送期間T1)、連続紙12の所定印刷領域に対して、ラテラル方式のキャリッジ35aがX方向へ移動しながらY方向に4往復する印刷動作(4パス)を実行する(印刷期間T2)。印刷動作が終了すると、上述した供給搬送系及び排出搬送系により間欠搬送され、乾燥装置10内へと搬送される(搬送期間T3)。この搬送期間T3によって搬送された連続紙12のうち、印刷済みの領域が乾燥装置10内へ搬送され、後続の印刷領域がプラテン28上に載置されることになる。
そして、連続紙12のうち後続の印刷領域に対して印刷処理が実行される一方で、乾燥装置10では、乾燥空間67に搬送された印刷済みの領域に対して、当該領域に付着したインクを乾燥させるべく、給気位置変更機構70の位置変更プレート66をX方向へ一往復させる(印刷乾燥期間T4)。そして、印刷処理及び乾燥処理の両方が終了した後に連続紙12を搬送する。このように、連続紙12のうち、先に印刷された領域に対して乾燥処理を施す間、後続の印刷領域に対する印刷処理を実行する。
【0068】
なお、本実施形態では、乾燥処理時に位置変更プレート66を一往復させているが、これに限られることはなく、複数回往復移動させてもよい。この乾燥処理における位置変更プレート66の移動サイクル回数は対象物の特性に応じて設定され、乾燥処理ごとに同じサイクル数で移動させることにより、間欠搬送される連続紙12の各印刷領域に対して毎回同じ品質を担保することができる。
【0069】
以上のように、本実施形態では、ノズルプレート65に対して位置変更プレート66をX方向に移動させてノズル穴65Aに対する貫通孔66Aの重なり位置を変化させることによって、乾燥空間67に対して熱風を給気させる給気口77の位置をX方向で変化させている。これにより、連続紙12に吹きかけられる熱風の吹き出し位置が変化するため、熱風を淀ませることなく一様に連続紙12を乾燥させて乾燥むらの発生を抑制することが可能になる。連続紙12を間欠的に搬送して、停止状態の連続紙12に対して乾燥処理を行う場合、規定の吹き出し位置から熱風を吹き出すと淀みが生じやすく乾燥ムラになりやすいが、本実施形態のように連続紙12に対して熱風を吹きかける位置を変更させることによって熱風の淀みが防止され、所定の乾燥時間内で連続紙12の乾燥を終了させることができる。よって、本実施形態では、間欠的に搬送され、停止状態の連続紙12に対して乾燥処理を行うことから、淀みが生じやすい状況であっても効果的に乾燥させることが可能である。
【0070】
また、本実施形態では、ノズルプレート65のノズル穴65Aのピッチ範囲内で位置変更プレート66を移動させる構成のため、装置の大型化を招くことなく効果的に乾燥むらの発生を抑制することができる。
【0071】
また、印刷工程の1サイクルは、印刷処理及び乾燥処理のうち時間のかかる方に合わせて設定され、いずれかの処理が確実に終了するまで次のフレームには移行しない。本実施形態では、印刷時間に応じて乾燥時間が設定されているため各処理にかかる時間は等しいが、例えば、印刷時間に対して乾燥時間が短い場合であっても、乾燥装置10内に乾燥対象の印刷領域を含む連続紙12が乾燥を終えた状態で存在していても構わない。
【0072】
(変形例)
図8は、給気位置変更機構の変形例を示す概略図である。
この図に示す給気位置変更機構は、平面視円形状を呈するノズル穴85Aを複数有するノズルプレート85と、このノズルプレート85の裏面側に配置され、ノズル穴85Aよりも直径の小さい貫通孔96Aを複数有する位置変更プレート96と、を有する。この位置変更プレート96は、不図示の偏芯カム機構によってXY平面上で円を描くように移動できるようになっている。この際、各ノズル穴85Aに対向する貫通孔96Aがノズル穴85Aの開口領域内で移動するように位置変更プレート96の移動制御を行うことにより、ノズル穴85Aおよび貫通孔96Aによって構成される給気口77の位置が変化する。このように、位置変更プレートの移動方向が1次方向のみならず、2次方向への移動を可能とした構成であっても良い。
なお、ノズル穴85Aおよび貫通孔96Aの平面視形状は円形状に限らないし、これらの形状が互いに異なっていても構わない。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0074】
例えば、ノズル穴65Aおよび貫通孔66AのX方向、Y方向へのピッチは上記したものに限らない。上記実施形態では、ノズル穴65Aを格子状に配置する構成としたが、これに限定されるものではなく、図9に示すように、Y方向に隙間をあけて配列されるノズル穴65Aの列の配置がX方向で隣り合う列で半ピッチずれる千鳥配置に配列される構成としてもよい。この場合、貫通孔66Aの上記ノズル穴65Aの千鳥配列に倣って配置される。
また、貫通孔66AのX方向およびY方向へのピッチも上記したものに限らない。
【0075】
また、上記実施形態では、連続紙12を間欠的に搬送する構成を例示したが、これに限られるものではなく、連続紙12を連続的に搬送して記録処理及び乾燥処理を行う構成であってもよい。連続紙12を連続して搬送しながら乾燥する場合には、連続紙12の搬送速度に応じて位置変更プレート66を所定の速さで連続して往復移動させることによって、
供給装置8からの熱風を給気口77を介して連続紙12に対して吹きかけることが可能となる。
【0076】
さらに、塗布物が塗布される基材としては、連続紙に限定されるものではなく、枚葉毎に搬送されて記録処理及び乾燥処理が行われる構成でも適用可能である。あるいは、フィルムであってもよい。なお、塗布物が内部に吸収されにくいフィルムを用いる場合には、塗布物の全水分を蒸発させなければならないため用紙に比べて乾燥に時間がかかる。このため位置変更プレート66の移動速度を連続紙12よりも遅く設定することによって、フィルム全体のインクを均一に乾燥させることができる。
【0077】
また、連続紙12の搬送方向に乾燥装置10が複数設けられていてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、本発明に係る乾燥装置10がプリンター11に設けられる構成を示したが、これに限られるものではなく、基材上に塗布物が塗布されたものを乾燥対象として広く適用可能である。
【0079】
上述の実施形態においては、記録装置として、インク等の液体を噴射する記録装置を例にして説明したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする記録装置に適用することができる。記録装置が噴射可能な液体は、機能材料の粒子が分散又は溶解されている液状体、ジェル状の流状体を含む。
【0080】
また、上述した実施形態において、記録装置から噴射される液体としては、インクのみならず、特定の用途に対応する液体を適用可能である。記録装置に、その特定の用途に対応する液体を噴射可能な噴射ヘッドを設け、その噴射ヘッドから特定の用途に対応する液体を噴射して、その液体を所定の物体に付着させることによって、所定のデバイスを製造可能である。例えば、記録装置は、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、及び面発光ディスプレイ(FED)の製造等に用いられる電極材、色材等の材料を所定の分散媒(溶媒)に分散(溶解)した液体(液状体)を噴射する記録装置に適用可能である。
【0081】
また、記録装置としては、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する記録装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する記録装置であってもよい。
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する記録装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する記録装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する記録装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の記録装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0082】
10…乾燥装置、11…プリンター(記録装置)、12…連続紙(被記録媒体)、12a…表面、17…支持板(支持部)、28…プラテン(支持部材)、36…記録ヘッド(記録部)、44…コントローラー(制御装置)、65A…ノズル穴(第1供給孔)、66A…貫通孔(第2供給孔)、67…乾燥空間、70…給気位置変更機構、77…給気口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に対して液体を塗布することで記録を行う記録部と、
前記被記録媒体を支持する支持部材と、
前記被記録媒体上に塗布された前記液体を乾燥空間で乾燥させる乾燥装置と、
前記乾燥装置に接続された制御装置と、を備え、
前記乾燥装置は、前記乾燥空間に向けて乾燥用気体を供給する給気口と、前記乾燥空間に対する前記給気口の位置を前記被記録媒体の表面に対して平行する面内で変化させる給気位置変更機構と、を有するものである
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記給気口は、前記乾燥空間に開口する複数の第1供給孔と、各第1供給孔と平面視で重なる位置に配置された複数の第2供給孔とにより構成され、
前記給気位置変更機構は、前記複数の第1供給孔が配置された第1平面に対して、前記複数の第2供給孔が配置された第2平面を平行移動させることによって前記給気口の位置を変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記給気位置変更機構は、前記給気口の開口面積が一定となるように前記第1平面に対して前記第2平面を平行移動させる
ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
被記録媒体に対して液体を塗布することで記録を行う記録部と、前記被記録媒体を支持する支持部材と、前記被記録媒体上に塗布された前記液体を乾燥空間で乾燥させる乾燥装置と、前記乾燥装置に接続された制御装置と、を備え、前記乾燥装置は、前記乾燥空間に向けて乾燥用気体を供給する給気口と、前記乾燥空間に対する前記給気口の位置を前記被記録媒体の表面に対して平行する面内で変化させる給気位置変更機構と、を有する記録装置の制御方法であって、
前記被記録媒体に対して前記液体を塗布する記録ステップと、
前記被記録媒体上に塗布された前記液体を前記乾燥空間へと搬送する搬送ステップと、
前記乾燥空間内に配置された前記被記録媒体上の前記液体を乾燥させる乾燥ステップと、を有し、
前記乾燥ステップでは、前記乾燥空間に対して前記乾燥用気体を給気する給気口の位置を前記被記録媒体の前記表面に対して平行する面内で変化させる
ことを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項5】
前記乾燥ステップでは、所定の乾燥時間内で前記給気口の位置を毎回同じサイクルで変化させる
ことを特徴とする請求項4に記載の記録装置の制御方法。
【請求項6】
搬送方向前方に位置する前記被記録媒体に対する前記乾燥ステップと、相対的に搬送方向後方に位置する前記記録ステップとが同時に実行される
ことを特徴とする請求項4または5に記載の記録装置の制御方法。
【請求項7】
前記乾燥時間が前記記録ステップにおける記録時間と同じ時間である
ことを特徴とする請求項5に記載の記録装置の制御方法。
【請求項1】
被記録媒体に対して液体を塗布することで記録を行う記録部と、
前記被記録媒体を支持する支持部材と、
前記被記録媒体上に塗布された前記液体を乾燥空間で乾燥させる乾燥装置と、
前記乾燥装置に接続された制御装置と、を備え、
前記乾燥装置は、前記乾燥空間に向けて乾燥用気体を供給する給気口と、前記乾燥空間に対する前記給気口の位置を前記被記録媒体の表面に対して平行する面内で変化させる給気位置変更機構と、を有するものである
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記給気口は、前記乾燥空間に開口する複数の第1供給孔と、各第1供給孔と平面視で重なる位置に配置された複数の第2供給孔とにより構成され、
前記給気位置変更機構は、前記複数の第1供給孔が配置された第1平面に対して、前記複数の第2供給孔が配置された第2平面を平行移動させることによって前記給気口の位置を変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記給気位置変更機構は、前記給気口の開口面積が一定となるように前記第1平面に対して前記第2平面を平行移動させる
ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
被記録媒体に対して液体を塗布することで記録を行う記録部と、前記被記録媒体を支持する支持部材と、前記被記録媒体上に塗布された前記液体を乾燥空間で乾燥させる乾燥装置と、前記乾燥装置に接続された制御装置と、を備え、前記乾燥装置は、前記乾燥空間に向けて乾燥用気体を供給する給気口と、前記乾燥空間に対する前記給気口の位置を前記被記録媒体の表面に対して平行する面内で変化させる給気位置変更機構と、を有する記録装置の制御方法であって、
前記被記録媒体に対して前記液体を塗布する記録ステップと、
前記被記録媒体上に塗布された前記液体を前記乾燥空間へと搬送する搬送ステップと、
前記乾燥空間内に配置された前記被記録媒体上の前記液体を乾燥させる乾燥ステップと、を有し、
前記乾燥ステップでは、前記乾燥空間に対して前記乾燥用気体を給気する給気口の位置を前記被記録媒体の前記表面に対して平行する面内で変化させる
ことを特徴とする記録装置の制御方法。
【請求項5】
前記乾燥ステップでは、所定の乾燥時間内で前記給気口の位置を毎回同じサイクルで変化させる
ことを特徴とする請求項4に記載の記録装置の制御方法。
【請求項6】
搬送方向前方に位置する前記被記録媒体に対する前記乾燥ステップと、相対的に搬送方向後方に位置する前記記録ステップとが同時に実行される
ことを特徴とする請求項4または5に記載の記録装置の制御方法。
【請求項7】
前記乾燥時間が前記記録ステップにおける記録時間と同じ時間である
ことを特徴とする請求項5に記載の記録装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−232525(P2012−232525A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103570(P2011−103570)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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