説明

記録装置及びその装置におけるデータ転送制御方法

【課題】メモリへのデータ転送効率を向上させ記録性能を向上させた記録装置及びその装置におけるデータ転送制御方法を提供することである。
【解決手段】ホスト装置から受信した複数の色成分からなるカラー画像データに基づいて記録ヘッドを駆動し、記録媒体に記録を行う記録装置において次の制御を行う。即ち、ホスト装置からカラー画像データを受信してDDR−SDRAMに格納し、DDR−SDRAMに格納されたカラー画像データを読み出して、予め定められたデータ量ごとにSRAMを作業領域として用いながら画像処理を行う。その際、予め定められたデータ量の画像処理が完了するたびに、画像処理されたカラー画像データをSRAMからDDR−SDRAMに転送して書き込む。そして、SRAMからの転送と書き込みが全て完了した後に画像処理により生成された付加的情報をDDR−SDRAMに書き込むように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置及びその装置におけるデータ転送制御方法に関し、特にインクジェット記録装置及びその記録装置のメモリにおけるデータ転送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に画像記録装置の一種であるインクジェットプリンタは、記録媒体に対してインクを吐出することにより画像を記録する。そのインクジェットプリンタは、記録用紙などの記録媒体にインクを吐出するための記録ヘッドと記録ヘッドを保持するキャリッジと記録媒体を搬送する搬送手段と記録媒体の搬送方向に対して略直交方向にキャリッジを移動させる駆動手段とを有している。また、記録ヘッドは、インク液滴を吐出する複数のノズルを有している。さらに、インクジェットプリンタはその内部にDDR−SDRAMやSRAMなどのメモリを備え、画像データの格納や画像処理のために用いる。
【0003】
インクジェットプリンタ(以下、記録装置)は通常、パーソナルコンピュータ(PC)などのホスト装置に接続され、そのホスト装置から転送される全ての画像データとドットカウントデータを、装置内部に備えられたDDR−SDRAMへまず格納される。その格納が完了すると、ASICに備えられたSRAMを用いて画像処理を行なう。
【0004】
図7は従来の記録装置のASICに備えられたSRAMへの画像データの格納状態を示した図である。図7においては、有効な画像データのサイズは256ビット(カラム方向)×256ビット(ラスタ方向)とする。また、SRAMには画像処理を行なうために必要な画像データ+αの領域が必要であるので、ここでは仮に、SRAMのサイズは320ビット×256ビットであるとする。
【0005】
図7には、記録装置の外部インタフェース回路より入力された画像データがSRAMに格納された状態を模式的に示している。図7(a)に示すように、入力された画像データは横(ラスタ)方向に連続したアドレスで格納される。一方、図7(b)には画像処理終了後の画像データがSRAMに格納された状態を模式的に示している。図7(b)に示すように、画像データは縦(カラム)方向に連続したアドレスで格納される。
【0006】
このような画像処理後、SRAMからはメモリ制御回路により、図7(b)に示す状態において左から256ビットずつDDR−SDRAMへ画像データが転送される。SRAMに格納された全ての画像データがDDR−SDRAMに転送されたなら、外部インタフェース回路から次の画像データが転送される。
【0007】
図8は従来の記録装置におけるドットカウント方法の一例を説明する図である。
【0008】
ドットカウントは、例えば、図7に示したような256ビット×256ビットの画像データに対して、ある単位で分割した領域に対して行なう。ここでは仮に、横(ラスタ)方向16ビット、縦(カラム)方向32ビットの領域のドットカウントを行なうとして説明する。
【0009】
256ビット×256ビットの画像データを、横方向16ビット、縦方向32ビットを単位としてドットカウントを行なう場合、1カラム256ビットの画像データを次のように8領域に分割する。即ち、[255:224]、[223:192]、[191:160]、[159:128]、[127:96]、[95:64]、[63:32]、[31:0]の8領域に分割し、ドットカウントを行なう。これを、16カラム分おこなうことで、横方向16ビット、縦方向32ビットの領域におけるドットカウント値を得る。
【0010】
DDR−SDRAMへの転送は、図8に示すように、横(ラスタ)方向16ビット、縦(カラム)方向32ビットの8領域(0〜7で表記)におけるドットカウント値を256ビットにまとめて、ドットカウントデータとして転送する。
【0011】
このような従来の画像データをもとに作成されるドットカウントデータの転送制御技術として、バスを制御することによってアクセスの高速化を行なう方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平8−202508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら上記従来例では、画像データのDDR−SDRAMへの転送に割り込んで、ドットカウントデータがDDR−SDRAMに転送される。画像データはDDR−SDRAMの連続したアドレスに格納されるのに対し、ドットカウントデータは、画像データとは不連続なアドレスに格納される。そのため、ドットカウントデータの転送が割り込まれるたびにDDR−SDRAMでは不連続なアドレスへのデータ書き込みが発生し、データ転送効率が低下する。また、ドットカウントデータ専用にメモリを備えることで、データ転送効率の向上を図ることは可能であるが、その場合、余分なメモリを実装するので装置の生産コストがアップしてしまう。
【0014】
さらに、従来の方法では、ある領域におけるカラー画像データの各色成分に対するドットカウントデータを得るために、プログラムを起動しCPUからDDR−SDRAMへのアクセスを行ない、各色成分のドットカウントデータを読み出して取得していた。そのために、CPUからDDR−SDRAMへのアクセスがランダムに発生するため、DDR−SDRAMへのデータ転送効率が低下していた。
【0015】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、メモリへのデータ転送効率を向上させ記録性能を向上させた記録装置及びその装置におけるデータ転送制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明の記録装置は次のような構成を有する。
【0017】
即ち、ホスト装置から受信した複数の色成分からなるカラー画像データに基づいて記録ヘッドを駆動し、記録媒体に記録を行う記録装置であって、前記ホスト装置から受信したカラー画像データを格納する第1のメモリと、前記第1のメモリに格納されたカラー画像データを読み出して、予め定められたデータ量ごとに画像処理を行う画像処理手段と、前記画像処理手段による画像処理のための作業領域として用いる第2のメモリと、前記第1のメモリと前記第2のメモリへのデータ入出力を制御するメモリ制御手段とを有し、前記メモリ制御手段は、前記予め定められたデータ量の画像処理が完了するたびに、前記画像処理されたカラー画像データを前記第2のメモリから前記第1のメモリに転送して書き込み、前記第2のメモリからの該転送と書き込みが全て完了した後に前記画像処理により生成された付加的情報を前記第1のメモリに書き込むように制御することを特徴とする。
【0018】
また本発明を他の側面から見れば、ホスト装置から受信した複数の色成分からなるカラー画像データに基づいて記録ヘッドを駆動し、記録媒体に記録を行う記録装置におけるデータ転送制御方法であって、前記ホスト装置から前記カラー画像データを受信して第1のメモリに格納する格納工程と、前記第1のメモリに格納されたカラー画像データを読み出して、予め定められたデータ量ごとに第2のメモリを作業領域として用いながら画像処理を行う画像処理工程と、前記第1のメモリと前記第2のメモリへのデータ入出力を制御するメモリ制御工程とを有し、前記メモリ制御工程では、前記予め定められたデータ量の画像処理が完了するたびに、前記画像処理されたカラー画像データを前記第2のメモリから前記第1のメモリに転送して書き込み、前記第2のメモリからの該転送と書き込みが全て完了した後に前記画像処理により生成された付加的情報を前記第1のメモリに書き込むように制御することを特徴とするデータ転送制御方法を備える。
【発明の効果】
【0019】
従って本発明によれば、画像処理されたカラー画像データの第2のメモリから第1のメモリへの転送が完了した後に画像処理により生成された付加的情報を第1のメモリに書き込むように制御するので、第1のメモリへの転送効率が向上するという効果がある。
【0020】
例えば、予め定められたデータ量のカラー画像データの各色成分のドットカウント値を得る場合、第1のメモリとしてのDDR−SDRAMへのランダムなアクセス回数を減らすことができ、転送効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の主要機構部分を示す斜視図である。
【図2】図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1に従う受信バッファへの画像データの転送制御処理を示したフローチャートである。
【図4】画像データの処理タイミングを示す図である。
【図5】本発明の実施例2に従う受信バッファへの画像データの転送制御処理を示したフローチャートである。
【図6】本発明の実施例3に従う受信バッファへの画像データの転送制御処理を示したフローチャートである。
【図7】従来の記録装置に備えられたSRAMへの画像データの格納状態を示す図である。
【図8】従来のドットカウント方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。なお、以下の実施例で開示する構成は一例に過ぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【0023】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。さらに人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0024】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0025】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0026】
またさらに、「記録素子」(「ノズル」という場合もある)とは、特にことわらない限りインク吐出口乃至これに連通する液路及びインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0027】
図1は、本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置(以下、記録装置)の主要な機構構成を示す斜視図である。
【0028】
図1に示すように、この記録装置はインクを吐出する複数のノズルを有したインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)601を搭載し、矢印Q1、Q2方向(主走査方向)に、キャリッジ軸603に沿って往復移動するキャリッジ602を備える。キャリッジ602が往復移動する際に、キャリッジ軸に平行に設けられたエンコーダフィルム604を読み取り、記録ヘッド601による記録タイミングが生成される。また、キャリッジ602の側面には光学センサ605が配置され、キャリッジの走査毎に記録ヘッドのインク吐出面と記録媒体Pとの間の距離を測定する。
【0029】
また、キャリッジ602のホームポジションの近傍には、記録ヘッド601の維持装置609が設けられ、記録ヘッド601のキャッピング、ヘッドのインク吐出面の払拭、さらには記録ヘッドの回復等を行う。記録ヘッド601はヘッドキャップ610によりキャッピングされ、記録ヘッド601のノズルを密閉してインクの乾燥を防止する。
【0030】
記録動作が開始されると、記録媒体Pは給紙ローラ(不図示)によって給紙位置へと給送され、搬送ローラ607によって所定のプリント開始位置まで搬送される。搬送ローラ607によって記録可能領域へと搬送された記録媒体Pは、その下方からプラテン608によって支持される。
【0031】
そして、キャリッジ602は、キャリッジモータ(不図示)の記録領域を含む走査領域を主走査方向に沿って往復移動を行ない、その間に記録ヘッド601はノズルからその下方に位置する記録媒体Pに向けてインクを吐出する。これによって1走査分の記録が行なわれる。また、1回の主走査が終了すると、記録媒体Pを矢印Rで示す方向(副走査方向)に一定量だけ記録媒体Pを搬送し、次の主走査に備える。これらの主走査と副走査を繰り返すことにより、記録媒体Pの全面に記録が行なわれる。
【0032】
この時、キャリッジ602に搭載された光学センサ605により紙間距離を測定し、キャリッジ602に搭載されたエンコーダセンサ606により、エンコーダフィルム604のスリットが読み取られる。これにより、記録ヘッド601による記録タイミングが得られる。
【0033】
図2は図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【0034】
図2において、100はPCやデジタルカメラやHDDなどの外部入力装置、101は装置全体を制御するためのCPU、102は記録装置特有のハードウエア制御を行なうASIC、103は外部入力装置100と接続される外部インタフェース回路である。外部インタフェース回路103は、USBインタフェース回路やLANインタフェース回路やIDEインタフェース回路などの回路を含む。104はCPU101と接続してCPU101からの情報を受信するCPUインタフェース回路、105はメモリとの間でのデータ入出力を制御するメモリ制御回路である。なお、PCやデジタルカメラやHDDなどはホスト装置として総称されることがある。
【0035】
メモリ制御回路105は、外部インタフェース(IF)回路103、SRAM106、画像データ処理回路107と接続している。メモリ制御回路105は、外部入力装置100から入力される画像データをSRAM106に転送する。
【0036】
106は作業領域として用いられ、画像データが特定サイズに分割されて格納されるSRAMである。このSRAMの個数は記録装置が用いるインクの色数や記録ヘッドのノズル数などに依存して決められる。この実施例では、画像データを記録装置において用いるインクの色の数に対応して6つの色成分に分割して処理するものとし、これに対応してSRAMはSRAM0〜SRAM5の6つ備えるものとする。
【0037】
107はSRAM106に格納された画像データに対して、HV変換やスムージング処理や不吐補間などの画像処理を行なう画像データ処理回路である。108はモータ109を駆動させる装置本体駆動回路、110は記録ヘッド601を制御するヘッド制御回路である。112は画像処理が行なわれた画像データの矩形領域当りの累積ドット数を計算するドットカウント生成回路、114はドットカウント生成回路112で生成されたドットカウントデータの加算を行なうドットカウント加算回路である。
【0038】
また、メモリ制御回路105には、ドットカウント生成回路112やドットカウント加算回路114の他に、画像処理が行なわれた画像データに対して処理を行ない、記録データを作成する回路全般を含む。
【0039】
113は受信バッファとしての役目を果たし、画像処理された画像データやドットカウントデータやドットカウント加算データなどを格納する、ASICに外付けされたDDR−SDRAMである。
【0040】
なお、ヘッド制御回路110は、DDR−SDRAM113に格納された画像データを記録ヘッドのノズル構成に合わせた形式のデータに変換し、これを記録ヘッド601に転送する。ドットカウントデータは、ヘッド制御回路110がノズル構成に合わせた形式のデータに画像データを変換する時に、ノズルからのインクの吐出量を調整するためや、装置本体駆動回路108によるドットカウントデータに応じたモータ駆動のために用いられる。また、ドットカウント加算データは、記録ヘッドの同時吐出ノズル数の調整や出力画像データの間引き等に使用される。
【0041】
次に上記構成の記録装置において実行される画像データ転送制御のいくつかの実施例について説明する。
【実施例1】
【0042】
図3は受信バッファへの画像データの転送制御処理を示したフローチャートである。
【0043】
まず、ステップS100では外部入力装置100より画像データが入力され、ステップS150において外部インタフェース回路103がその画像データを受信する。さらに、ステップS200では、外部インタフェース回路103により受信された画像データを、メモリ制御回路105がSRAM106(第1のメモリ)に書き込む。そして、ステップS250では画像データが格納されたSRAM106に対して、画像データ処理回路107は画像処理を実行する。
【0044】
さて、画像処理が終了した画像データを格納したSRAM106に対し、ステップS300ではメモリ制御回路105は画像データを特定単位ずつ、例えば、256ビットずつ読み出す。256ビットずつ読み出される画像データに対して、ステップS350ではドットカウント生成回路112がドットカウントを行ない、ドットカウントデータを生成する。さらに、ステップS400では、メモリ制御回路105が画像データを256ビットずつDDR−SDRAM(第2のメモリ)113に転送する。
【0045】
ドットカウントデータの生成完了時点には、特定カラム分の画像データがDDR−SDRAM113への転送が完了しているので、転送が完了した画像データが格納されていたSRAM106の領域は、空き領域となっている。このタイミングでは、外部インタフェース回路103からSRAM106への画像データの転送は行なわれていないので、ステップS450ではメモリ制御回路105によって、その空き領域にドットカウントデータを転送する。
【0046】
メモリ制御回路105により画像データのDDR−SDRAM113への転送終了後、ステップS500では、ドットカウントデータをDDR−SDRAM113へ転送する。
全ての画像データとドットカウントデータをDDR−SDRAM113へ転送完了すると、次のSRAMで同じ処理を行なう。
【0047】
図4は画像データの処理タイミングを示した図である。図4において、(a)は従来における画像データの処理タイミングを示しており、(b)はこの実施例に従う記録装置における画像データの処理タイミングを示している。ここでは、仮にカラー画像データを記録装置において用いるインクの色の数に対応して6つの色成分に分割して処理するものとする。
【0048】
SRAM106をそれぞれ、色成分に対応してSRAM0、SRAM1、SRAM2、SRAM3、SRAM4、SRAM5とする。まず、外部インタフェース回路103によって画像データがSRAM0に転送される。SRAM0への転送が完了すると、SRAM1、SRAM2、……、SRAM5まで画像データが転送される。外部インタフェース回路103からの画像データの転送は、6つのSRAM全てに格納された画像データがDDR−SDRAM113へ転送されるまでは停止される。
【0049】
各SRAMに格納された画像データにはそれぞれ画像処理が行なわれ、その後、DDR−SDRAM113へと転送される。従来のDDR−SDRAMへの転送方法(図4(a)参照)によれば、画像データを複数回、転送後、ドットカウントデータを転送する。SRAM0のデータのDDR−SDRAMへの転送終了後、SRAM1のデータがDDR−SDRAMへと転送される。全てのSRAMに格納されたデータがDDR−SDRAMに転送された後、外部インタフェース回路103から次の画像データが転送される。
【0050】
さて、図4(a)と図4(b)とを比較すると、この実施例では従来例における制御タイミングと比較して、DDR−SDRAM転送時間が短くなっているのが分かる。これは、画像データとドットカウントデータを交互に送っていた従来例とは異なり、全ての画像データ転送完了後に、全てのドットカウントデータを転送するため、アドレスの書き換えが1度だけで済むためである。
【0051】
従来例に従って、例えば、横16ビット、縦32ビットの領域のデータ量のドットカウントを行なう場合、アドレスが異なる領域にデータを格納するのは、次の通りである。即ち、画像データ転送からドットカウントデータ転送に変更時、ドットカウントデータ転送から画像データ転送に変更時の計31回である。これに対して、この実施例に従う方法によれば、アドレスの書き換えが1度だけになるため、DDR−SDRAMへの転送速度が向上する。この効果は使用するSRAM数が多いほど顕著であることは図より明らかである。
【実施例2】
【0052】
ある領域における画像データの各色成分のドットカウントデータが、記録ヘッドの同時吐出ノズル数の調整や出力画像データの間引き等、その領域における記録ヘッドの制御のために必要となる。
【0053】
実施例2では、図2に示したドットカウント加算回路114を用いて、CPUからDDR−SDRAMへのアクセスがランダムに発生する回数を減らす例について説明する。これにより、この実施例に従えば、単純にソフトウェア処理をハードウェア処理に変更したことによる処理の高速化だけではなく、DDR−SDRAMへのアクセス効率が高まり、さらに処理を高速化することができる。
【0054】
図5は実施例2に従う受信バッファへの画像データの転送制御処理を示したフローチャートである。なお、実施例1で説明したのと同じ処理ステップについては同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。
【0055】
ステップS100、S150の処理の後、ステップS200’では外部インタフェース回路103で受信した画像データをメモリ制御回路105によりSRAM0、SRAM1、SRAM2、SRAM3、SRAM4、SRAM5の順に書き込む。画像データ全て、DDR−SDRAM113に転送されるまでは、メモリ制御回路105によるSRAM106への画像データの書き込みは行なわれない。
【0056】
さらに、ステップS300’では画像データが格納されたSRAM106に対して、画像データ処理回路107による画像処理がSRAM0、SRAM1、SRAM2、SRAM3、SRAM4、SRAM5の順に行なわれる。
【0057】
次に、ステップS301では、画像処理が終了したSRAM0に対して、メモリ制御回路105は画像データを特定単位ずつ、例えば、256ビットずつ読み出す。ステップS302では、256ビットずつ読み出される画像データに対し、ドットカウント生成回路112はドットカウントを行ない、ドットカウントデータを生成する。ステップS303では、メモリ制御回路105は、SRAM0の画像データを256ビットずつDDR−SDRAM113に転送する。
【0058】
この時点で、ドットカウントデータの生成が完了し、特定カラム分の画像データはDDR−SDRAMに転送完了しているので、その転送が済んだ画像データが格納されていたSRAM0の領域は、空き領域となっている。このタイミングでは、外部インタフェース回路103からSRAM0への画像データの転送は行なわれていないので、ステップS304では、メモリ制御回路105がその空き領域にドットカウントデータを転送する。
【0059】
ステップS301〜S304の処理は画像データが転送完了するまで繰り返される。
【0060】
そして、ステップS310において、メモリ制御回路105による画像データのDDR−SDRAMへの転送が終了する。SRAM0の画像データをすべてDDR−SDRAMへ転送した状態では、SRAM0にはSRAM0に対して実行されたドットカウントデータが格納されている。
【0061】
次に、ステップS351では、画像処理が終了したSRAM1に対して、メモリ制御回路105が画像データを特定単位ずつ、例えば、256ビットずつ読み出す。ステップS352では、256ビットずつ読み出される画像データに対し、ドットカウント生成回路112はドットカウントを行ない、ドットカウントデータを生成する。ステップS353では、メモリ制御回路105は、SRAM1の画像データを256ビットずつDDR−SDRAM113に転送する。
【0062】
そして、ステップS354では、メモリ制御回路105がSRAM0からSRAM1のドットカウントデータと同じ領域のドットカウントデータを読み出す。さらに、ステップS355ではSRAM1のドットカウントデータ生成完了後、ドットカウント加算回路114ではSRAM0とSRAM1それぞれのドットカウントデータの和をとったドットカウントデータを生成し、これをSRAM1の空き領域に転送する。
【0063】
上記ステップS351〜S355までの処理を他のSRAMに関しても同様に実行する。その結果、SRAM5の画像データをDDR−SDRAMに転送後のSRAM5の領域には、同じ領域におけるSRAM0〜5のドットカウント値を合計したドットカウントデータが格納されていることになる。
【0064】
ステップS455においてSRAM5の画像データがすべてDDR−SDRAMに転送終了した後、メモリ制御回路105は、ステップS500’においてDDR−SDRAM113にドットカウントデータを転送する。DDR−SDRAM113に転送されたドットカウントデータは、同じ領域におけるSRAM0〜SRAM5のドットカウント値を合計したドットカウントデータである。
【0065】
従って以上説明した実施例に従えば、CPUが所定のプログラムを実行して、DDR−SDRAMからドットカウントデータを読み出すだけ、加算処理の必要なく容易に、ある領域における各色成分のドットカウント値の合計を得ることができる。
【実施例3】
【0066】
実施例2ではある領域における画像データの各色成分のドットカウント値のみをDDR−SDRAMに転送する例について説明した。ここでは、実施例1のようにSRAMごとのドットカウント値を画像データの最後にまとめて送り、各色成分のドットカウントの合計値を最終色の最後に転送する例について説明する。
【0067】
図6は実施例3に従う受信バッファへの画像データの転送制御処理を示したフローチャートである。なお、実施例1、2で説明したのと同じ処理ステップについては同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。
【0068】
画像処理が終了したSRAM0に対して、ステップS301〜S304の処理を実行する。そして、メモリ制御回路105による画像データのDDR−SDRAM113への転送終了後、ステップS305ではドットカウントデータをDDR−SDRAMへ転送する。このようにして、ステップS310ではSRAM0に格納された画像データすべてをDDR−SDRAMへ転送した状態となる。この時点で、SRAM0には、SRAM0のドットカウントデータが格納されている。
【0069】
次に、画像処理が終了したSRAM1に対して、実施例2と同様にステップS351〜S354の処理を実行する。そして、ステップS354aでは、メモリ制御回路105にがSRAM1の空き領域にドットカウントデータを転送する。さらに、ステップS355では、SRAM1に転送したものと同じドットカウントデータとSRAM0のドットカウントデータの和をドットカウント加算回路114で計算し、これをSRAM1の空き領域に転送する。
【0070】
ステップS360では、メモリ制御回路105が画像データをDDR−SDRAMへ転送終了後、ドットカウントデータをDDR−SDRAM113へ転送する。このようにして、ステップS370では、SRAM1に格納された画像データすべてをDDR−SDRAM113へ転送した状態となる。この時点で、SRAM1にはSRAM0とSRAM1それぞれのドットカウントデータの和をとったドットカウントデータが格納されている。
【0071】
上記ステップS351〜S370までの処理を他のSRAMに関しても同様に実行する。その結果、SRAM5の画像データをDDR−SDRAMに転送後のSRAM5の領域には、SRAM5に格納された画像データに対するドットカウントデータと同じ領域におけるSRAM0〜5のドットカウント値を合計したドットカウントデータが格納される。
【0072】
ステップS455においてSRAM5の画像データとSRAM5に対するドットカウントデータ全てがDDR−SDRAMに転送終了した後、メモリ制御回路105はステップS500’においてDDR−SDRAM113にドットカウントデータを転送する。
【0073】
従って以上説明した実施例によれば、SRAMごとのドットカウント値を画像データの最後にまとめて送り、各色成分のドットカウントの合計値を最終色の最後に転送することができる。
【0074】
なお、実施例1〜3では、ドットカウントデータを画像データから生成される付加的情報の例として用いてきたが、本発明はこれによって限定されるものではなく、ドットカウントデータ以外の情報であっても良い。例えば、ある領域における画像データのドット数を予測し、ある領域における実際のドット数よりも多い場合は“1”、少ない場合は“0”とし、どこの領域でドット数が予測よりも多くなっているかという情報を得、これをDDR−SDRAMに転送しても良い。
【0075】
しかしながら、画像データから生成される情報の中でもドットカウントデータは、記録ヘッドの吐出制御やモータの駆動制御などに必要な情報であるため、頻繁に画像データから生成され利用されるので、ドットカウントデータへの応用が本発明では好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置から受信した複数の色成分からなるカラー画像データに基づいて記録ヘッドを駆動し、記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記ホスト装置から受信したカラー画像データを格納する第1のメモリと、
前記第1のメモリに格納されたカラー画像データを読み出して、予め定められたデータ量ごとに画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段による画像処理のための作業領域として用いる第2のメモリと、
前記第1のメモリと前記第2のメモリへのデータ入出力を制御するメモリ制御手段とを有し、
前記メモリ制御手段は、前記予め定められたデータ量の画像処理が完了するたびに、前記画像処理されたカラー画像データを前記第2のメモリから前記第1のメモリに転送して書き込み、前記第2のメモリからの該転送と書き込みが全て完了した後に前記画像処理により生成された付加的情報を前記第1のメモリに書き込むように制御することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドは複数の色のインクを吐出するインクジェット記録ヘッドであり、
前記カラー画像データの複数の色成分は前記複数の色に対応しており、
前記第2のメモリは前記複数の色の数で複数の領域に分割され、
前記画像処理手段は、前記カラー画像データの複数の色成分それぞれの画像処理のために対応する前記複数の領域の1つを用いることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記画像処理は、前記予め定められたデータ量ごとに対して実行されるドットカウントを含み、
前記付加的情報は前記ドットカウントの値であり、
前記メモリ制御手段は、前記ドットカウントの値を、前記画像処理されたカラー画像データを前記第1のメモリへ転送することにより空きとなった前記第2のメモリの領域に書き込むよう制御することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記複数の領域それぞれに対するドットカウントを加算する加算手段をさらに有し、
前記メモリ制御手段はさらに、前記第2のメモリから前記第1のメモリへの前記画像処理されたカラー画像データの転送を前記複数の領域について順に実行し、前記転送が順に実行されるごとに前記加算手段による加算を実行し、該加算されたドットカウントの値を前記転送が実行されることにより空きとなった当該領域に書き込むよう制御することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記メモリ制御手段はさらに、前記第2のメモリから前記第1のメモリへの前記画像処理されたカラー画像データの転送を前記複数の領域について順に実行するごとに、当該領域についてのドットカウントの値を前記第1のメモリに転送するよう制御することを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第1のメモリはDDR−SDRAMであり、
前記第2のメモリはSRAMであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
ホスト装置から受信した複数の色成分からなるカラー画像データに基づいて記録ヘッドを駆動し、記録媒体に記録を行う記録装置におけるデータ転送制御方法であって、
前記ホスト装置から前記カラー画像データを受信して第1のメモリに格納する格納工程と、
前記第1のメモリに格納されたカラー画像データを読み出して、予め定められたデータ量ごとに第2のメモリを作業領域として用いながら画像処理を行う画像処理工程と、
前記第1のメモリと前記第2のメモリへのデータ入出力を制御するメモリ制御工程とを有し、
前記メモリ制御工程では、前記予め定められたデータ量の画像処理が完了するたびに、前記画像処理されたカラー画像データを前記第2のメモリから前記第1のメモリに転送して書き込み、前記第2のメモリからの該転送と書き込みが全て完了した後に前記画像処理により生成された付加的情報を前記第1のメモリに書き込むように制御することを特徴とするデータ転送制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86334(P2013−86334A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228269(P2011−228269)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】