説明

記録装置及びプログラム

【課題】記録モードに応じた精度を確保しつつ、処理時間を短縮することができる記録装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】プリンターは、搬送方向に沿って搬送される用紙に対して記録を施す記録ヘッドと、搬送方向と交差する走査方向に沿って往復移動するキャリッジと、用紙の端部の位置を検出可能にキャリッジに設けられた端部検出センサーと、高精度モード、ミドルモード及び高速度モードを含む複数の記録モードのうち何れかが選択された記録モード設定を取得する受信バッファーと、キャリッジの制御を行う制御装置と、を備え、制御装置は、ステップS11において受信バッファーがミドルモードを取得した場合には、記録の開始前に、用紙の両側端部を通過するように、ステップS18においてキャリッジを一方向に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体に記録を行う記録装置として、記録手段としての記録ヘッドを搭載したキャリッジを走査方向に往復移動させつつ記録を行うインクジェット式プリンターが知られている。こうした記録装置には、従来、キャリッジに搭載されたセンサーで記録媒体の先端部を検出して記録媒体の頭出しを行うのに加えて、記録媒体の走査方向における側端部を検出するものがあった(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、特許文献1の記録装置においては、印刷モードに応じて側端検出の仕方を変化させていた。具体的には、カラー写真などを印刷するために精度を重視する高精度モードにおいては、まず、キャリッジを中央に配置して先端部を検出することで頭出しを行い、その後、キャリッジを走査方向の一方向に移動させて一側端部を検出し、さらにその後、キャリッジを走査方向の他方向に移動させて他側端部を検出していた。
【0004】
例えば写真の縁なし印刷などでは、用紙の斜行等によって側端部の位置がずれると、インク滴の打ち漏らしが生じて装置内が汚染されたり、印刷位置がずれて印刷品質が低下したりするため、側端部の位置に応じて正確に印刷を行う必要があるためである。
【0005】
一方、モノクロ文書などを印刷するために速度を重視する高速度モードにおいては、キャリッジの移動を伴う側端部の検出を一方側のみにすることで、処理時間を短縮するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−118211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年は、文字データの中に画像データが混在する文書の印刷などに対応して、高精度モードと高速モードとの中間的な位置づけとなるミドルモードを備えた記録装置が採用されることがある。そこで、印刷モードに対応した精度を確保しつつ、処理時間を短縮することが求められていた。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録モードに応じた精度を確保しつつ、処理時間を短縮することができる記録装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、搬送方向に沿って搬送される記録媒体に対して記録を施す記録手段と、前記搬送方向と交差する走査方向に沿って往復移動する移動部材と、前記記録媒体の端部の位置を検出可能に前記移動部材に設けられた端部検出手段と、高精度モード、ミドルモード及び高速度モードを含む複数の記録モードのうち何れかが選択された記録モード設定を取得する記録モード設定取得手段と、前記移動部材の制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記記録モード設定取得手段が前記ミドルモードを取得した場合には、記録の開始前に、前記記録媒体の両側端部を通過するように、前記移動部材を一方向に移動させる。
【0010】
上記構成によれば、ミドルモードが設定されている場合に、制御手段が移動部材を一方向に移動させるので、端部検出手段によって記録媒体の両側端部の位置を検出することができる。このとき、移動部材は一方向に1回移動するだけなので、記録モードに応じた精度を確保しつつ、処理時間を短縮することができる。
【0011】
本発明の記録装置において、前記制御手段は、前記記録モード設定取得手段が前記高精度モードを取得した場合には、記録の開始前に、前記記録媒体の先端部を検出可能な位置に前記移動部材を移動させ、さらに、前記端部検出手段が前記記録媒体の先端部を検出した後に、前記記録媒体の一側端部を通過するように、前記移動部材を一方向に移動させる。
【0012】
上記構成によれば、高精度モードが設定されている場合に、制御手段が移動部材を移動させて端部検出手段によって記録媒体の先端部を検出するので、端部検出手段の検出結果に基づいて正確に頭出しを行うことができる。また、その後、制御手段が移動部材を一方向に移動させるので、端部検出手段によって少なくとも記録媒体の一側端部の位置を検出することができる。
【0013】
本発明の記録装置において、前記制御手段は、前記記録モード設定取得手段が前記高精度モードを取得した場合には、記録の開始前に、前記移動部材を前記記録媒体の前記走査方向における中央に対応する位置に移動させた後、前記記録媒体の一側端部を通過するように前記移動部材を一方向に移動させ、さらにその後、前記記録媒体の他側端部を通過するように前記移動部材を他方向に移動させる。
【0014】
上記構成によれば、高精度モードが設定されている場合に、制御手段が移動部材を記録媒体の走査方向における中央に対応する位置に移動させるので、端部検出手段の検出結果に基づいて正確に頭出しを行うことができる。また、その後、制御手段が移動部材を一方向に移動させることで記録媒体の一側端部の位置を検出すると共に、制御手段が移動部材を他方向に移動させることで記録媒体の他側端部の位置を検出することができる。したがって、記録媒体の頭出しを正確に行うと共に、記録媒体の走査方向における両側端部の位置を検出することができる。
【0015】
本発明の記録装置は、搬送経路において前記記録媒体の先端部を検出する先端検出手段をさらに備え、前記記録モード設定取得手段が前記ミドルモード又は前記高速度モードを取得した場合には、前記先端検出手段の検出結果に基づいて頭出しを行う。
【0016】
上記構成によれば、ミドルモード又は高速度モードが設定されている場合には、端部検出手段の検出結果に基づいて頭出しを行うので、記録媒体の先端部を検出するために移動部材を移動させる必要がない。したがって、ミドルモード又は高速度モードにおいて、処理時間を短縮することができる。
【0017】
本発明の記録装置において、前記記録手段は前記移動部材に支持され、記録の開始後において、前記制御手段は、前記記録モード設定取得手段が前記高精度モードを取得した場合には、前記端部検出手段が前記記録媒体の側端部の位置を検出した後に前記移動部材の移動方向を変化させる一方、前記記録モード設定取得手段が前記ミドルモード又は前記高速度モードを取得した場合には、前記端部検出手段が前記記録媒体の側端部の位置を検出しないように、前記移動部材の移動を制御する。
【0018】
上記構成によれば、高精度モードが設定されている場合に、制御手段は、記録の開始後に、端部検出手段が記録媒体の側端部の位置を検出した後に移動部材の移動方向を変化させるので、移動部材の走査方向に沿う走査毎に、記録媒体の側端部の位置を検出することができる。したがって、高精度モードにおいては、高い精度で記録を行うことができる。一方、ミドルモード又は高速度モードが設定されている場合には、制御手段は、記録の開始後に、端部検出手段が記録媒体の側端部の位置を検出しないように移動部材の移動を制御するので、移動部材は、一方向への移動に伴う記録が終わると速やかに方向転換することができる。したがって、ミドルモード又は高速度モードにおいては、処理時間を短縮することができる。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明のプログラムは、搬送方向と交差する走査方向に沿って往復移動する移動部材に設けられた端部検出手段によって、前記搬送方向に沿って搬送される記録媒体の端部の位置を検出するために、コンピューターが前記移動部材の制御を行うためのプログラムであって、コンピューターが、高精度モード、ミドルモード及び高速度モードを含む複数の記録モードのうち何れかが選択された記録モード設定を取得する記録モード設定取得ステップと、コンピューターが、前記ミドルモードを取得した場合に、前記記録媒体の両側端部を通過するように、駆動源を駆動させることによって前記移動部材を一方向に移動させる移動制御ステップと、コンピューターが、前記端部検出手段から出力される検出信号に基づき、前記記録媒体の両側端部の位置を検出する検出ステップと、を実行する。
【0020】
上記構成によれば、ミドルモードが設定されている場合に、コンピューターが移動部材を一方向に移動させるので、端部検出手段によって記録媒体の両側端部の位置を検出することができる。このとき、移動部材は一方向に1回移動するだけなので、記録モードに応じた精度を確保しつつ、処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態におけるプリンターの斜視図。
【図2】本体ケースを取り外した状態のプリンターの斜視図。
【図3】キャリッジが移動する様子を模式的に示す断面図。
【図4】給紙カセットを模式的に示す平面図。
【図5】給紙カセット及び給送装置を模式的に示す断面図。
【図6】プリンターの電気的構成の要部を説明するブロック図。
【図7】キャリッジの移動制御ルーチンを説明するフローチャート。
【図8】高精度モードにおいて、用紙の先端部を検出すべくキャリッジが移動する様子を説明する作用図。
【図9】高精度モードにおいて、右端部を検出すべくキャリッジが移動する様子を説明する作用図。
【図10】高精度モードにおいて、左端部を検出すべくキャリッジが移動する様子を説明する作用図。
【図11】ミドルモードにおいて、左右端部を検出すべくキャリッジが移動する様子を説明する作用図。
【図12】用紙に対するキャリッジの相対的な移動を説明する作用図で、(a)は高精度モードでの印刷時、(b)はミドルモード及び高速度モードでの印刷時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図12に基づいて説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、各図中に矢印で示す前後方向及び左右方向(走査方向)、並びに上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0023】
図1に示すように、記録装置としてのプリンター11は、インクジェット式のシリアルタイプのプリンターであって、装置全体を覆う略四角箱状の本体ケース12を備えている。この本体ケース12には、記録媒体としての用紙P(図2参照)に対して印刷(記録)を施す印刷部13と、該印刷部13の右方側に位置し且つ複数(本実施形態では4つ)のインクカートリッジ14が着脱自在な状態で装着されるホルダー部15とが設けられている。また、印刷部13の下方に位置し且つ前方が開口する収納凹部16内には、印刷前の複数枚の用紙Pが収容される給紙カセット17が挿抜自在(着脱自在)な状態で装着されている。そして、この給紙カセット17からは、給送装置50(図5参照)によって用紙Pが印刷部13内に給送(搬送)される。
【0024】
次に、印刷部13について説明する。
図2に示すように、印刷部13は、略矩形箱状のフレーム18を備えている。このフレーム18内の下部には、搬送方向(給送方向)となる後側から前方に向けて搬送(給送)される用紙Pを支持するプラテン19が左右方向に沿って延設されている。また、フレーム18内においてプラテン19の上方には、プラテン19の長手方向(左右方向)と平行な棒状のガイド軸20が設けられている。このガイド軸20には、その軸線方向(搬送方向と直交する走査方向)に沿って往復移動可能な状態で移動部材としてのキャリッジ21が支持されている。
【0025】
フレーム18の後壁内面におけるガイド軸20の両端部と対応する各位置には、駆動プーリー22及び従動プーリー23が回転自在な状態で支持されている。駆動プーリー22にはキャリッジ21を往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモーター(以下、「CRモーター」ともいう)24の出力軸が連結されると共に、これら一対のプーリー22,23間には一部がキャリッジ21に連結された無端状のタイミングベルト25が掛装されている。したがって、キャリッジ21は、ガイド軸20にガイドされながら、CRモーター24の駆動力により無端状のタイミングベルト25を介して左右方向に移動される。
【0026】
また、フレーム18内には、図2及び図6に示すように、後壁内面側に配置され且つ左右方向に延びる被検出用テープ26と、キャリッジ21に設けられる検出部27とを備えるリニアエンコーダー28が設けられている。被検出用テープ26には多数のスリット26aが左右方向に沿って等間隔に形成されると共に、検出部27には左右方向において互いに異なる位置に配置される複数(一例として2つ)のセンサー(図示略)が設けられている。そして、検出部27の各センサーからは、キャリッジ21の移動距離に相当するパルス状の検出信号が後述する制御装置70(図6参照)にそれぞれ出力される。
【0027】
キャリッジ21には、フレキシブル配線板29に付設された図示しない複数本(例えば4本)のインク供給チューブを介して、ホルダー部15に装着された各インクカートリッジ14と連結されている。こうしたキャリッジ21においてプラテン19に対向する下面側には、図2に示すように、各インクカートリッジ14からフレキシブル配線板29などを介してインクが供給される記録手段としての記録ヘッド30が搭載されている。そして、記録ヘッド30の下面(「ノズル形成面」ともいう)に開口する複数のノズル(図示略)からプラテン19上の記録位置に給送された用紙Pにインク滴が吐出されることにより、印刷が行われる。
【0028】
また、キャリッジ21の下面側であって且つ記録ヘッド30の左側には、図2及び図3に示すように、発光部31a及び受光部31bを有する光学式の端部検出センサー(信号出力部)31が設けられている。この端部検出センサー31において、発光部31aからはプラテン19側(即ち、下方)に向けて検出光が出力されると共に、受光部31bはプラテン19又は該プラテン19に支持される用紙Pからの反射光を受光する。そして、端部検出センサー31からは、受光部31bでの受光量に応じた検出信号が後述する制御装置70に出力される。
【0029】
また、フレーム18内において用紙Pが給送される印刷領域の右側には、用紙Pが給送されないホームポジション領域が形成されている。このホームポジション領域には、記録ヘッド30のクリーニングなどの各種メンテナンスを行なうためのメンテナンス装置32が設けられている。
【0030】
次に、給紙カセット17について説明する。
図4及び図5に示すように、給紙カセット17は、上方が開口する有底略四角筒状のカセット本体40を備えている。このカセット本体40内には、用紙Pが積層状態で収容される収容室41が形成されている。この収容室41には、用紙Pが設置される略矩形板状の設置台42と、該設置台42を上下方向に沿って昇降移動させるための昇降機構43とが設けられている。この昇降機構43は、カセット本体40の底壁と設置台42との間に配置され且つ設置台42を上方に付勢する付勢部材44(一例としてコイルスプリング)を有している。
【0031】
本実施形態の給紙カセット17は、種々のサイズの用紙Pを収容可能に構成されている。すなわち、設置台42上には、用紙Pの左右両側に配置される一対の側部ガイド45,46が設けられている。両側部ガイド45,46は、カセット本体40の左右方向における中央に位置し且つ前後方向に沿って延びる中心線L1(図4にて一点鎖線で示す)を中心とした線対称となる位置にそれぞれ配置されている。また、両側部ガイド45,46は、左右方向に沿って互いに連動して接離可能である。その結果、収容室41内に収容される用紙P(P1,P2,P3)の左右方向における中央は、用紙Pの大きさに関係なく、カセット本体40の左右方向における中央とほぼ一致する。
【0032】
また、設置台42上において用紙Pの前側には、収容室41内に収容される用紙Pの後端とカセット本体40の後側壁部40aとの間隔を所定間隔未満とさせるための前部ガイド47が設けられている。この前部ガイド47は、収容室41内に収容される用紙Pのサイズに応じて、前後方向に移動可能とされている。
【0033】
一方、収納凹部16内には、該収納凹部16内に給紙カセット17が装着されたことを検出するための挿抜センサー48が設けられている。この挿抜センサー48からは、給紙カセット17が収納凹部16内に装着された場合にはオン信号を後述する制御装置70に出力する一方、給紙カセット17が収納凹部16内に装着されていない場合にはオフ信号を制御装置70に出力する。
【0034】
なお、本実施形態において、用紙P1はA5サイズの用紙であると共に、用紙P2はA4サイズの用紙であり、さらに、用紙P3はA3サイズの用紙であるものとする。すなわち、各用紙P1,P2,P3のうち、用紙P3が最も大きく、用紙P1が最も小さいものとする。
【0035】
次に、給送装置50について説明する。
図4及び図5に示すように、給送装置50は、給紙カセット17の後端側であって左右方向における中央に配置され、且つASFモーター51(図6参照)の駆動に基づき回転する給送ローラー52を備えている。すなわち、給送ローラー52と用紙P1(P2,P3)の左端との第1距離は、給送ローラー52と用紙P1(P2,P3)の右端との第2距離とほぼ同等である。また、給送ローラー52と第1のサイズの用紙P1の左端との第1距離は、給送ローラー52と第2のサイズの用紙P2の左端との第1距離よりも短いと共に、給送ローラー52と用紙P2の左端との第1距離は、給送ローラー52と第3のサイズの用紙P3の左端との第1距離よりも短い。同様に、給送ローラー52と用紙P1の右端との第2距離は、給送ローラー52と用紙P2の右端との第2距離よりも短いと共に、給送ローラー52と用紙P2の右端との第2距離は、給送ローラー52と用紙P3の右端との第2距離よりも短い。
【0036】
こうした給送ローラー52よりも前側には、上記中心線L1を中心とした線対称となる位置に配置される一対の従動ローラー53,54が設けられている。こうした各ローラー52〜54は、それらの外周面が給紙カセット17内に収容される各用紙Pのうち最上位の用紙Pにそれぞれ圧接すると共に、左右方向に沿って延びる図示しない軸線を中心としてそれぞれ回転する。
【0037】
図4及び図5に示すように、給送ローラー52の上方には、該給送ローラー52よりも大きな径を有し、且つASFモーター51の駆動に基づき回転する中間ローラー55が設けられている。この中間ローラー55は、左右方向に沿って延びる図示しない軸線を中心として回転する。また、中間ローラー55の近傍には、該中間ローラー55の外周面と所定間隔だけ離間した位置に配置される略円弧状の円弧ガイド56が設けられている。
【0038】
また、中間ローラー55の前側であってプラテン19の後側には駆動ローラー及び従動ローラーを有する給紙ローラー対57が設けられると共に、プラテン19の前側には駆動ローラー及び従動ローラーを有する排紙ローラー対58が設けられている。各駆動ローラーは、PFモーター59(図6参照)の駆動に基づきそれぞれ回転する。なお、前後方向において中間ローラー55と給紙ローラー対57との間には、給送される用紙Pの前端(先端)を検出するための先端検出センサー60が設けられている。
【0039】
そして、給送ローラー52及び中間ローラー55が回転すると、給紙カセット17内の最上位の用紙Pが給紙カセット17から上方に向けて給送される。すると、用紙Pの給送方向(搬送方向)は、中間ローラー55と円弧ガイド56によって、上方から前方に変更される。その結果、中間ローラー55側から用紙Pが前方に向けて給送される。このとき、用紙Pの給送方向(前後方向)における先端が先端検出センサー60に検出されると、該先端検出センサー60は、先端部を検出した旨の検出信号(以下、「先端検出信号」ともいう)を制御装置70に出力する。
【0040】
その後、用紙Pの給送方向における先端が給紙ローラー対57を構成する各ローラーに挟持されると、給紙ローラー対57によって、用紙Pがプラテン19上に給送される。さらに、用紙Pの給送方向における先端が排紙ローラー対58を構成する各ローラーに挟持されると、用紙Pはフレーム18外に排紙される。
【0041】
次に、本実施形態のプリンター11の電気的構成の要部について説明する。
図6に示すように、プリンター11の制御装置70は、図示しないCPU、ROM、RAM、不揮発性のメモリー及びASIC(特定用途向けIC)などで構築されるコンピューター71(図6にて破線で囲まれた部分)を備えている。コンピューター71は、CRモーター24を駆動させるためのCR用ドライバー72、PFモーター59を駆動させるためのPF用ドライバー73、ASFモーター51を駆動させるためのASF用ドライバー74及び記録ヘッド30を駆動させるためのヘッド用ドライバー75と電気的に接続されている。
【0042】
また、コンピューター71は、ハードウェア及びソフトウェアのうち少なくとも一方により実現される機能部分として、受信バッファー80、主制御部81、画像処理部82、給送制御部83、制御手段として機能するCR制御部84、用紙情報取得部85及びメモリー86を備えている。なお、メモリー86は、RAMによって構成されている。
【0043】
受信バッファー80は、ホストコンピューター87からインターフェース88を介して受信した画像情報及び印刷指示を一時的に保管する。この印刷指示には、記録モード設定として選択された印刷モード(高精度モード、ミドルモード及び高速度モードのうち何れか)に関する設定情報や、印刷を施す用紙Pのサイズに関するサイズ情報などが含まれる。したがって、本実施形態では、受信バッファー80が、記録モード設定取得手段として機能する。
【0044】
ここで、高精度モードは、例えばカラー写真を印刷する場合や縁なし印刷を行う場合など、印刷精度を重視する場合に設定される一方、高速度モードは、例えばモノクロ文書など、印刷速度を重視する場合に設定される。また、ミドルモードは、文字データの中に画像データが混在した文書など、高精度モードと高速モードとの中間的な精度及び速度が要求される場合に設定される。
【0045】
主制御部81は、画像処理部82、給送制御部83、CR制御部84及び用紙情報取得部85に対して制御指令を適宜出力する。具体的には、主制御部81は、ホストコンピューター87側からインターフェース88を介して印刷指令を受信した場合、受信バッファー80に受信された画像情報に基づくラスターデータを生成させる旨の制御指令を画像処理部82に出力する。また、主制御部81は、用紙Pの給紙を開始させる旨の制御指令を給送制御部83に出力すると共に、キャリッジ21の移動を開始させる旨の制御指令をCR制御部84に出力する。
【0046】
画像処理部82は、受信バッファー80に保管される画像情報に各種変換処理(解像度変換処理、色変換処理及びハーフトーン処理等)を施してラスターデータを生成する。そして、画像処理部82は、画像情報に基づく印刷時には、用紙Pの給送及びキャリッジ21の移動などと連動して記録ヘッド30から各種のインク滴が吐出されるように、生成したラスターデータに基づいた駆動信号をヘッド用ドライバー75に出力する。すると、記録ヘッド30の各ノズルからは、ヘッド用ドライバー75からの駆動信号に基づきインク滴が各別に吐出される。
【0047】
給送制御部83は、給紙カセット17内から用紙Pを印刷部13内に給送させる場合には、ASF用ドライバー74に制御指令を出力する。すると、ASF用ドライバー74からの駆動信号に基づきASFモーター51が駆動することにより、給送ローラー52及び中間ローラー55が回転する。また、給送制御部83は、先端検出センサー60から先端検出信号を入力した場合、PF用ドライバー73に制御指令を出力する。すると、PF用ドライバー73からの駆動信号に基づきPFモーター59が駆動することにより、給紙ローラー対57及び排紙ローラー対58の各ローラーが回転し、用紙Pがフレーム18内を後側から前側に給送される。なお、本実施形態のPFモーター59の出力軸には、該出力軸の回転速度、回転位置及び回転方向を検出するためのロータリーエンコーダー89が設けられている。そして、給送制御部83は、ロータリーエンコーダー89からの検出信号に基づきPFモーター59の駆動を制御する。
【0048】
CR制御部84は、リニアエンコーダー28からの検出信号に基づきキャリッジ21の左右方向における位置、移動速度及び移動方向を算出すると共に、該算出結果に基づいた制御指令をCR用ドライバー72に出力することによりキャリッジ21の移動を制御する。また、CR制御部84は、用紙情報取得部85からキャリッジ21の位置に関する情報(以下、「位置情報」ともいう)の要求があった場合には、算出した位置情報を用紙情報取得部85に出力する。
【0049】
用紙情報取得部85は、先端検出センサー60及び端部検出センサー31からの各種検出信号に基づき、給送される用紙Pに関する情報を取得する。そして、用紙情報取得部85は、取得結果を給送制御部83及びCR制御部84に適宜出力すると共に、取得結果を端部位置情報としてメモリー86に記憶させる。したがって、本実施形態では、リニアエンコーダー28、端部検出センサー31、CR制御部84及び用紙情報取得部85により、用紙Pの走査方向(左右方向)における端部(側端部)の位置に関する端部位置情報を検出する端部検出手段が構成される。また、先端検出センサー60及び用紙情報取得部85により、記録位置に向かう搬送経路において用紙Pの先端部を検出する先端検出手段が構成される。
【0050】
なお、端部位置情報には、印刷される用紙Pの右端の位置及び左端の位置に関する情報を含む左右端位置情報と、搬送される用紙Pの先端の位置に関する先端位置情報とを含んでいる。そして、印刷の開始前には、先端位置情報に基づいて頭出しが行われると共に、左右端位置情報に基づいて印刷が行われる。
【0051】
本実施形態において、プリンター11は、印刷モードに応じた先端検出及び側端検出を行う。まず、印刷モードとしてミドルモード又は高速度モードが設定されている場合には、先端検出センサー60が用紙Pの先端部を検出した後、用紙Pを所定の搬送量だけ搬送して印刷開始位置において停止させる頭出しを行う。すなわち、印刷モードとしてミドルモード又は高速度モードが設定されている場合には、先端検出センサー60の検出結果に基づいて頭出しを行う。
【0052】
一方、印刷モードとして高精度モードが設定されている場合には、キャリッジ21を左右方向における中央位置(用紙Pの走査方向における中央に対応する位置)に移動させておき、先端検出センサー60の検出結果に基づいて頭出しされる用紙Pの先端部を端部検出センサー31で検出する。すなわち、高精度モードにおいては、より印刷開始位置に近い端部検出センサー31の検出結果に基づいてPFモーター59の駆動量を微調整することで、用紙Pの頭出し精度を高めるようにしている。
【0053】
また、印刷モードとして高精度モード又はミドルモードが設定されている場合には、頭出し後、端部検出センサー31による用紙Pの側端部の検出を行う。一方、印刷モードとして高速度モードが設定されている場合には、端部検出センサー31による検出を行わず、印刷指示に含まれるサイズ情報に基づいて印刷を行う。
【0054】
すなわち、端部検出センサー31による側端検出にはキャリッジ21の移動を伴うため、キャリッジ21の移動時間の分、処理時間が長くなる。したがって、印刷速度を重視する高速度モードにおいては側端検出を省略することで、処理時間の短縮を図っている。
【0055】
一方、印刷精度が求められる高精度モード及びミドルモードにおいては、実際に搬送された用紙Pの側端部の検出結果に基づいて印刷を行うことで、走査方向における給送位置のずれを補正するようにしている。なお、高精度モードにおいては、印刷の開始後においても、キャリッジ21の一方向への移動毎(1パス毎)に用紙Pの両側端部を検出し、この検出結果に基づいて印刷を行う。
【0056】
次に、印刷開始前の先端検出及び側端検出に伴うキャリッジ21の移動制御ルーチンについて、図7に示すフローチャート及び図8〜図11に示す作用図に基づいて説明する。なお、図7のフローチャートの処理は、プリンター11内のCPUがプログラムを実行することで構築される主制御部81(画像処理部82、給送制御部83、CR制御部84及び用紙情報取得部85)が実行する。
【0057】
主制御部81は、ホストコンピューター87からの印刷指令を受信(記録モード設定取得ステップ)すると、用紙Pの給紙を開始させる旨の制御指令を給送制御部83に出力する。そして、用紙Pの先端が先端検出センサー60に検出されると、主制御部81は移動制御用のプログラムに従って、図7に示す移動制御ルーチンを実行する。
【0058】
まず、ステップS11において、主制御部81は、受信バッファー80に保管された印刷モード設定が高精度モード、ミドルモード及び高速度モードのうち何れであるかを判定する。ここで、印刷モード設定が高速度モードであった場合、主制御部81は処理を終了する。すなわち、高速度モードにおいては、先端検出や側端検出のためにキャリッジ21を移動させることがないため、速やかに記録に移行する。また、ステップS11において印刷モード設定が高精度モードであった場合には、主制御部81はステップS12に移行する。また、ステップS11において印刷モード設定がミドルモードであった場合には、主制御部81は後述するステップS18に移行する。
【0059】
ステップS12において、主制御部81は、キャリッジ21を中央位置に移動させる旨の制御指令をCR制御部84に出力する。すると、CR制御部84は、図8に示すように、キャリッジ21をホームポジション側から中央位置に移動させる。また、この間に、給送制御部83によるASFモーター51及びPFモーター59の駆動制御によって、用紙Pは印刷開始位置に向けて搬送される。
【0060】
次に、ステップS13において、主制御部81は、端部検出センサー31が用紙Pの先端部を検出したか否かを判定する。ここで、端部検出センサー31が用紙Pの先端部を検出していない場合には、主制御部81はNoの判定を行って、ステップS13の判定を繰り返す。そして、端部検出センサー31が用紙Pの先端部を検出すると、主制御部81はYesの判定を行ってステップS14に進む。なお、用紙Pの先端部を検出した後、給送制御部83が所定時間PFモーター59を駆動させることで、用紙Pが図8に二点鎖線で示す印刷開始位置に到達する。すなわち、頭出しが完了する。
【0061】
次に、ステップS14において、主制御部81は、キャリッジ21を右方向(一方向)に移動させる旨の制御指令をCR制御部84に出力する。すると、CR制御部84は、用紙Pの右側端部を通過するように、キャリッジ21を中央位置から右方側に向けて移動させる(図9参照)。
【0062】
また、ステップS15において、主制御部81は、端部検出センサー31が用紙Pの右端を検出した否かを判定する。ここで、端部検出センサー31が用紙Pの右端を検出していない場合には、主制御部81はNoの判定を行って、ステップS15の判定を繰り返す。
【0063】
キャリッジ21が右方側へ移動して、頭出しされた用紙Pの右端側に対応する右端側位置(図9では実線で示す位置)に到達すると、端部検出センサー31からの検出信号の大きさが変化する。このとき、用紙情報取得部85は、CR制御部84からキャリッジ21の左右方向における位置を用紙Pの右端S1として取得する。そして、端部検出センサー31からの検出信号の大きさの変化を用紙情報取得部85が検知すると、主制御部81はYesの判定を行ってステップS16に進む。
【0064】
続くステップS16において、主制御部81は、キャリッジ21を左方向(他方向)に移動させる旨の制御指令をCR制御部84に出力する。すると、CR制御部84は、用紙Pの左側端部を通過するように、キャリッジ21を右方側から左方側に向けて移動させる(図10参照)。
【0065】
また、ステップS17において、主制御部81は、端部検出センサー31が用紙Pの左端を検出した否かを判定する。ここで、端部検出センサー31が用紙Pの左端を検出していない場合には、主制御部81はNoの判定を行って、ステップS17の判定を繰り返す。
【0066】
キャリッジ21が右方側から左方側に移動して用紙Pの左端側に対応する左端側位置(図10では実線で示す位置)に到達すると、端部検出センサー31からの検出信号の大きさが変化する。このとき、用紙情報取得部85は、CR制御部84からキャリッジ21の左右方向における位置を用紙Pの左端S2として取得する。
【0067】
また、用紙情報取得部85は、取得した用紙Pの右端S1と左端S2に関する左右端位置情報をメモリー86に記憶させる。そして、端部検出センサー31からの検出信号の大きさの変化を用紙情報取得部85が検知すると、主制御部81はYesの判定を行って処理を終了する。
【0068】
また、主制御部81は、ステップS11において印刷モード設定がミドルモードであった場合には、ステップS18に移行する。ステップS18(移動制御ステップ)において、主制御部81は、キャリッジ21を左方向(一方向)に移動させる旨の制御指令をCR制御部84に出力する。すると、CR制御部84は、用紙Pの両側端部を通過するように、キャリッジ21をホームポジション側から左方側に向けて移動させる(図11参照)。
【0069】
続くステップS19において、主制御部81は、端部検出センサー31が用紙Pの右端を検出した否かを判定する。ここで、端部検出センサー31が用紙Pの右端を検出していない場合には、主制御部81はNoの判定を行って、ステップS19の判定を繰り返す。
【0070】
キャリッジ21が左方側へ移動して、頭出しされた用紙Pの右端側に対応する右端側位置(図11では実線で示す位置)に到達すると、端部検出センサー31からの検出信号の大きさが変化する。このとき、用紙情報取得部85は、CR制御部84からキャリッジ21の左右方向における位置を用紙Pの右端S1として取得する(検出ステップ)。
【0071】
続くステップS20において、主制御部81は、端部検出センサー31が用紙Pの左端を検出した否かを判定する。ここで、端部検出センサー31が用紙Pの左端を検出していない場合には、主制御部81はNoの判定を行って、ステップS20の判定を繰り返す。
【0072】
キャリッジ21がさらに左方側に移動して、用紙Pの左端側に対応する左端側位置(図11では二点鎖線で示す位置)に到達すると、端部検出センサー31からの検出信号の大きさが再び変化する。このとき、用紙情報取得部85は、CR制御部84からキャリッジ21の左右方向における位置を用紙Pの左端S2として取得する(検出ステップ)。
【0073】
また、用紙情報取得部85は、取得した用紙Pの右端S1と左端S2に関する左右端位置情報をメモリー86に記憶させる。そして、端部検出センサー31からの検出信号の大きさの変化を用紙情報取得部85が検知すると、主制御部81はYesの判定を行って処理を終了する。
【0074】
次に、本実施形態のプリンター11の印刷時の動作及び作用について、図12に基づいて説明する。なお、図12において、二点鎖線で囲まれた領域が、印刷が行われる印刷領域(印刷位置)である。さらに、図12では、キャリッジ21の記載を省略すると共に、用紙Pを基準としたキャリッジ21の相対的な移動経路を一点鎖線で示すものとする。
【0075】
さて、上述したように頭出しが行われると、用紙Pへの印刷が開始される。すなわち、高精度モード及びミドルモードにおいては、メモリー86に記憶された左右端位置情報に基づいて、キャリッジ21に支持された記録ヘッド30の各ノズルからインク滴が個別に吐出されることで、1走査目(1パス目)の印刷が行われる。一方、高速度モードにおいては、印刷指示に含まれるサイズ情報に基づいて、1走査目の印刷が行われる。
【0076】
また、このように印刷が開始された後は、PFモーター59の間欠的な駆動によって、用紙Pが間欠的に前側に給送されると共に、キャリッジ21が用紙Pの前方への給送が停止したタイミング(又は停止直前のタイミング)で左右方向に移動する。そして、キャリッジ21が用紙Pの印刷領域上に位置するタイミングで、記録ヘッド30の各ノズルからインク滴が吐出される。
【0077】
なお、受信バッファー80が高精度モードを取得している場合には、1走査目の印刷が開始された後において、制御装置70は、図12(a)に示すように、端部検出センサー31が用紙Pの両側端部の位置を検出した後にキャリッジ21の移動方向を変化させる。すなわち、用紙Pの右端S1及び左端S2を1パス毎に取得しつつ、取得した左右端位置情報に基づいて次のパスの印刷を行う。
【0078】
一方、受信バッファー80がミドルモード又は高速度モードを取得している場合には、端部検出センサー31が用紙Pの側端部の位置を検出しないように、制御装置70が図12(b)に示すようにキャリッジ21の移動を制御する。すなわち、端部検出センサー31による検出を行わず、1パス目で用いた左右端位置情報又は印刷指示に含まれるサイズ情報に基づいて印刷を行う。したがって、ミドルモード又は高速度モードでは、印刷時のキャリッジ21の移動量が高精度モードの場合よりも少なくなるため、印刷時間が短縮される。
【0079】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ミドルモードが設定されている場合に、制御装置70がキャリッジ21を一方向に移動させるので、端部検出センサー31によって用紙Pの両側端部の位置を検出することができる。したがって、用紙Pが走査方向にずれた状態で給送された場合にも、検出した側端部の位置に基づいて、印刷位置を補正することができる。また、側端部の検出を行うために、キャリッジ21は一方向に1回移動するだけなので、記録モードに応じた精度を確保しつつ、処理時間を短縮することができる。
【0080】
(2)高精度モードが設定されている場合に、制御装置70がキャリッジ21を用紙Pの走査方向における中央に対応する位置に移動させるので、端部検出センサー31の検出結果に基づいて正確に頭出しを行うことができる。なお、端部検出センサー31が用紙Pの中央に対応する位置で先端部を検出することで、用紙Pの斜行による検出位置のずれを抑制することができる。
【0081】
また、その後、制御装置70がキャリッジ21を一方向に移動させることで用紙Pの一側端部の位置を検出すると共に、制御装置70がキャリッジ21を他方向に移動させることで用紙Pの他側端部の位置を検出することができる。したがって、用紙Pの頭出しを正確に行うと共に、両側端部の位置を検出することができる。
【0082】
(3)ミドルモード又は高速度モードが設定されている場合に、給送装置50は端部検出センサー31の検出結果に基づいて頭出しを行うので、用紙Pの先端部を検出するためにキャリッジ21を移動させる必要がない。したがって、ミドルモード又は高速度モードにおいて、処理時間を短縮することができる。
【0083】
(4)高精度モードが設定されている場合に、制御装置70は、記録の開始後に、端部検出センサー31が用紙Pの側端部の位置を検出した後にキャリッジ21の移動方向を変化させるので、キャリッジ21の走査方向に沿う走査毎に、用紙Pの側端部の位置を検出することができる。したがって、高精度モードにおいては、間欠的に行われる搬送の都度、走査方向における搬送位置の誤差を補正しつつ、高い精度で記録を行うことができる。
【0084】
一方、ミドルモード又は高速度モードが設定されている場合には、制御装置70は、記録の開始後に、端部検出センサー31が用紙Pの側端部の位置を検出しないようにキャリッジ21の移動を制御するので、キャリッジ21は移動処理が終わると速やかに方向転換することができる。したがって、ミドルモード又は高速度モードにおいては、処理時間を短縮することができる。
【0085】
(5)給送装置50は、左右方向における中央に配置された給送ローラー52と、中心線L1を中心とした線対称となる位置に配置される一対の側部ガイド45,46及び一対の従動ローラー53,54とを備えるので、用紙Pのセンター給紙を行うことができる。これにより、用紙Pの給送に伴う斜行が抑制されるので、ミドルモードにおいて先端検出センサー60の検出結果に基づいて頭出しを行ったり、印刷開始後における側端検出を省略したりしても、印刷精度の低下を抑制することができる。
【0086】
(5)特に、用紙Pの側方に余白のない縁なし印刷を行う場合などには、側端部の位置に誤差が生じると、その部分に打ち漏らしが生じて、プラテン19がインクで汚染されてしまうことがある。そして、用紙Pをセンター給紙する場合には、用紙Pの両側端側が汚染されてしまい、後から給紙された用紙Pを汚してしまう虞がある。したがって、本実施形態のようにセンター給紙を行う場合には、高精度モード及びミドルモードにおいて側端部の検出を行うことで、後続用紙の汚染を抑制することができる。
【0087】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ステップS12において、キャリッジ21は搬送される用紙Pの先端部を検出可能な位置に移動させればよい。例えば、キャリッジ21本体の左右方向における中心が中心線L1と一致する位置に移動してもよいし、端部検出センサー31による検出位置が中心線L1と一致する位置に移動してもよい。あるいは、印刷指示によって指示された用紙Pのサイズに応じて中心線L1付近の任意の位置に移動するようにしてもよいし、必ずしも中心線L1に対応する位置でなくてもよい。
【0088】
・印刷モードとして高精度モードが設定されている場合に、ステップS14において左方向に向けてキャリッジ21を移動させる一方、ステップS16においてキャリッジ21を右方向に移動させるようにしてもよい。
【0089】
・用紙Pのセンター給紙を行うための構成は、任意に変更することができる。
・用紙Pを搬送経路の一方の側端部に寄せて搬送(給送)する片側寄せ搬送を採用してもよい。そして、受信バッファー80が高精度モードを取得した場合に、搬送される用紙Pの先端部を検出可能な位置にキャリッジ21を移動させた後、用紙Pの一側端部(左側寄せ搬送の場合は右側端部、右側寄せ搬の場合は左側端部)を通過するようにキャリッジ21を移動させてもよい。
【0090】
この場合には、制御装置70がキャリッジ21を移動させて端部検出センサー31が用紙Pの先端部を検出するので、端部検出センサー31の検出結果に基づいて正確に頭出しを行うことができる。また、その後、制御装置70が、用紙Pが寄せられた側と反対側に向かう一方向にキャリッジ21を移動させるので、用紙サイズに応じて変化が大きい方の側端部の位置を端部検出センサー31によって検出することができる。
【0091】
・受信バッファー80、主制御部81、画像処理部82、給送制御部83、CR制御部84、用紙情報取得部85及びメモリー86等は、ソフトウェアのみの構成、電子回路(例えばカスタムIC)等のハードウェアの構成、さらにソフトウェアとハードウェアとの協働により構成されてもよい。
【0092】
・高精度モード、ミドルモード及び高速度モードの他に、1つ又は2つ以上の別の印刷モードを備えるようにしてもよい。
・プリンター11は、ホストコンピューター87を介すことなくメモリーカードから画像情報を直接取得できるプリンターであってもよい。
【0093】
・ミドルモードにおいて、印刷の開始後に、一方又は両方の側端部の位置を検出しつつ印刷を行うようにしてもよい。
・プリンター11は、記録ヘッドがキャリッジに支持されていないラインヘッド式プリンターやラテラル式プリンターとして実現してもよい。この場合にも、キャリッジ(移動部材)に搭載された端部検出センサー31から出力される検出信号に基づいて、用紙Pの先端部や側端部の位置を検出することができる。
【0094】
・上記実施形態では、記録装置をインクジェット式のシリアルプリンターに具体化したが、インク以外の他の液体(記録材)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよく、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【0095】
・記録装置は、例えばドットインパクト式プリンターなど、任意の記録方式に変更することができる。
・本発明は、プリンターの他、スキャナー、FAX、コピー機や、これら各機能を有した複合機等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0096】
11…記録装置としてのプリンター、21…移動部材としてのキャリッジ、30…記録手段としての記録ヘッド、28…端部検出手段を構成するリニアエンコーダー、31…端部検出手段を構成する端部検出センサー、60…先端検出手段を構成する先端検出センサー、70…制御手段としての制御装置、71…コンピューター、80…記録モード設定取得手段として機能する受信バッファー、84…端部検出手段を構成するCR制御部、85…端部検出手段及び先端検出手段を構成する用紙情報取得部、P…記録媒体としての用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に沿って搬送される記録媒体に対して記録を施す記録手段と、
前記搬送方向と交差する走査方向に沿って往復移動する移動部材と、
前記記録媒体の端部の位置を検出可能に前記移動部材に設けられた端部検出手段と、
高精度モード、ミドルモード及び高速度モードを含む複数の記録モードのうち何れかが選択された記録モード設定を取得する記録モード設定取得手段と、
前記移動部材の制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記記録モード設定取得手段が前記ミドルモードを取得した場合には、記録の開始前に、前記記録媒体の両側端部を通過するように、前記移動部材を一方向に移動させることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記記録モード設定取得手段が前記高精度モードを取得した場合には、記録の開始前に、前記記録媒体の先端部を検出可能な位置に前記移動部材を移動させ、さらに、前記端部検出手段が前記記録媒体の先端部を検出した後に、前記記録媒体の一側端部を通過するように、前記移動部材を一方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記記録モード設定取得手段が前記高精度モードを取得した場合には、記録の開始前に、前記移動部材を前記記録媒体の前記走査方向における中央に対応する位置に移動させた後、前記記録媒体の一側端部を通過するように前記移動部材を一方向に移動させ、さらにその後、前記記録媒体の他側端部を通過するように前記移動部材を他方向に移動させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
搬送経路において前記記録媒体の先端部を検出する先端検出手段をさらに備え、
前記記録モード設定取得手段が前記ミドルモード又は前記高速度モードを取得した場合には、前記先端検出手段の検出結果に基づいて頭出しを行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録手段は前記移動部材に支持され、
記録の開始後において、前記制御手段は、前記記録モード設定取得手段が前記高精度モードを取得した場合には、前記端部検出手段が前記記録媒体の側端部の位置を検出した後に前記移動部材の移動方向を変化させる一方、前記記録モード設定取得手段が前記ミドルモード又は前記高速度モードを取得した場合には、前記端部検出手段が前記記録媒体の側端部の位置を検出しないように、前記移動部材の移動を制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
搬送方向と交差する走査方向に沿って往復移動する移動部材に設けられた端部検出手段によって、前記搬送方向に沿って搬送される記録媒体の端部の位置を検出するために、コンピューターが前記移動部材の制御を行うためのプログラムであって、
コンピューターが、高精度モード、ミドルモード及び高速度モードを含む複数の記録モードのうち何れかが選択された記録モード設定を取得する記録モード設定取得ステップと、
コンピューターが、前記ミドルモードを取得した場合に、前記記録媒体の両側端部を通過するように、駆動源を駆動させることによって前記移動部材を一方向に移動させる移動制御ステップと、
コンピューターが、前記端部検出手段から出力される検出信号に基づき、前記記録媒体の両側端部の位置を検出する検出ステップと、を実行するためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−218597(P2011−218597A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87591(P2010−87591)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】