説明

記録装置及び吐出不良検知方法

【課題】搬送ベルト動作時の振動や撓み等に影響を受けずに搬送ベルト動作中に高精度にノズルの欠損を検知することを目的としている。
【解決手段】インク滴の吐出を検知する検知手段と、印字ヘッドユニットを記録用紙の搬送方向と直行する方向に移動させる移動機構と、移動機構の駆動を制御する駆動制御手段と、検知手段を用いた前記インク滴の吐出不良検知処理を制御する吐出検知制御手段と、を有し、駆動制御手段は、記録用紙に対する印字指示を受けて、移動機構により、ノズル開口部と前記搬送ベルトとのギャップを広げるように前記印字ヘッドユニットを移動させ、吐出検知制御手段は、移動機能による印字ヘッドユニットの移動が完了した後に前記吐出不良検知処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の印字ヘッドを有する印字ヘッドユニットを有し、前記印字ヘッドの有するノズル開口部からインク滴を吐出して搬送ベルトにより搬送される記録用紙に印字を行う直前の前記搬送ベルトの動作中に、前記インク滴の吐出不良を検知する記録装置及び吐出不良検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ等の画像形成装置の一つとして、例えばインク滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式のインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
従来のインクジェット記録装置には、例えば記録媒体である印刷用紙の幅と同程度の長さを有するラインヘッドを備えたものがある。ラインヘッドを備えたインクジェット記録装置では、通常の印字時にはラインヘッドを動かさず、印刷用紙を搬送する際にラインヘッドからインクを吐出して画像形成を行う。この印字方法では、ラインヘッドのノズルのつまり等によりインクが吐出されなくなると、他のノズルで不具合が生じたノズルの分を補完することができず、画像形成が正常に行えなくなる。
【0004】
そこで従来のインクジェット記録装置では、上述した不具合を解消するために、ノズルの状態を検出するための検知手段が備えられている。検知手段としては、印字中は、例えばレーザ光を照射し、レーザ光がインク滴と交差する際に発生する前方散乱光を検出し、ノズルの欠損を検知する手段がある。また印字する前では、回復動作をする維持位置でノズルの欠損を検知し回復動作をする手段がある。
【0005】
上記以外にも、ノズルの欠陥を検知するために様々な工夫が成されている。例えば特許文献1には、印字領域とメンテナンス領域を分けて、高精度のノズル欠損検知を行い、ノズル欠損の無いことを確実に保証し、高精度の印字画質を提供することが開示されている。また特許文献2には、吐出検知部と記録ヘッドとの距離を適正量に常時保持する機構が開示されている。特許文献3には、液滴で形成するノズル欠陥判定用の判定パターンを高精度に検出できて、精度の高い欠陥ノズルの判定検出を行えるようにすることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば印字動作前に搬送ベルトを動作させ、搬送ベルト上でインク滴を検知する構成の記録装置では、レーザ光とインク滴とが交差する際に発生する前方散乱光を検出する方法では、印刷用紙を搬送する搬送ベルト動作時の撓み等によりレーザ光が遮られて前方散乱光が検知できず、搬送ベルト上での正確なノズルの欠損検知ができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてこれを解決すべく成されたものであり、搬送ベルト動作時の振動や撓み等に影響を受けずに搬送ベルト動作中に高精度にノズルの欠損を検知することが可能な記録装置及びインク液滴検知方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成すべく以下の如き構成を採用した。
【0009】
本発明は、複数の印字ヘッドを有する印字ヘッドユニットを有し、前記印字ヘッドの有するノズル開口部からインク滴を吐出して搬送ベルトにより搬送される記録用紙に印字を行う直前の前記搬送ベルトの動作中に、前記インク滴の吐出不良を検知する記録装置であって、前記インク滴の吐出を検知する検知手段と、前記印字ヘッドユニットを前記記録用紙の搬送方向と直行する方向に移動させる移動機構と、前記移動機構の駆動を制御する駆動制御手段と、前記検知手段を用いた前記インク滴の吐出不良検知処理を制御する吐出検知制御手段と、を有し、前記駆動制御手段は、前記記録用紙に対する印字指示を受けて、前記移動機構により、前記ノズル開口部と前記搬送ベルトとのギャップを広げるように前記印字ヘッドユニットを移動させ、前記吐出検知制御手段は、前記移動機能による印字ヘッドユニットの移動が完了した後に前記吐出不良検知処理を行う。
【0010】
また本発明の記録装置において、前記検知手段は、前記印字ヘッドユニットと前記搬送ベルトとの間にレーザ光を照射する発光手段と、前記レーザ光を受光して受光量に応じたレベルの信号を出力する受光手段と、を含み、前記移動機構は、前記搬送ベルトと前記レーザ光との光軸との距離が、前記搬送ベルトの撓み幅よりも大きくなるように前記印字ヘッドユニットを移動させる。
【0011】
また本発明の記録装置において、前記受光手段は、前記レーザ光の光軸上に配置される。
【0012】
また本発明の記録装置において、前記受光手段は、前記レーザ光の光軸上とずれた位置に配置される。
【0013】
また本発明の記録装置は、前記移動機構による前記印字ヘッドユニットの移動量の設定が可能である。
【0014】
また本発明の記録装置において、前記駆動制御手段は、前記吐出不良検知処理が終了した後に、前記移動機構により前記印字ヘッドユニットの位置を前記移動機構による移動の前の位置へ戻す。
【0015】
本発明は、複数の印字ヘッドを有する印字ヘッドユニットを有し、前記印字ヘッドの有するノズル開口部からインク滴を吐出して搬送ベルトにより搬送される記録用紙に印字を行う直前の前記搬送ベルトの動作中に、前記インク滴の吐出を検知する検知手段と、前記印字ヘッドユニットを前記記録用紙の搬送方向と直行する方向に移動させる移動機構と、を有する記録装置による吐出不良検知方法であって、前記移動機構の駆動を制御する駆動制御手順と、前記検知手段を用いた前記インク滴の吐出不良検知処理を制御する吐出検知制御手順と、を有し、前記駆動制御手順において、前記記録用紙に対する印字指示を受けて、前記移動機構により、前記ノズル開口部と前記搬送ベルトとのギャップを広げるように前記印字ヘッドユニットを移動させ、前記吐出検知制御手順において、前記移動機能による印字ヘッドユニットの移動が完了した後に前記吐出不良検知処理を行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、搬送ベルト動作時の振動や撓み等に影響を受けずに搬送ベルト動作中に高精度にノズルの欠損を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一の実施形態の記録装置を説明するための図である。
【図2】第一の実施形態の記録装置のシステム構成を説明する図である。
【図3】第一の実施形態における検知手段を説明する図である。
【図4】印字ヘッドの駆動信号及びフォトダイオードの出力の波形の一例を示す図である。
【図5】印字ヘッドユニットの印字位置における吐出不良検知処理について説明する図である。
【図6】第一の実施形態の記録装置における吐出不良検知処理を説明するフローチャートである。
【図7】第一の実施形態の印字ヘッドユニットによる印字状態を示す図である。
【図8】搬送ベルトの撓み幅を説明する図である。
【図9】印字ヘッドユニットが維持ユニット上にある状態を説明する図である。
【図10】第二の実施形態の記録装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ノズルの欠損を検知するための吐出不良検知処理を行う際に、印字ヘッドユニットと搬送ベルトとのギャップを広げるように印字ヘッドユニットを移動させる。
(第一の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第一の実施形態について説明する。図1は、第一の実施形態の記録装置を説明するための図である。
【0019】
本実施形態の記録装置100は、ライン上に固定された印字幅分の印字ヘッドユニット110が配置されており、搬送されてきた記録用紙(図示せず)に印字するようになっている。本実施形態の記録装置100は、例えばラインプリンタとも呼ばれる。
【0020】
本実施形態の記録装置100は、駆動部120、印字ヘッド130、維持ユニット140、給紙ユニット150、排紙ユニット160、搬送ベルト170、廃液ユニット180、エアー吸着用ファン190を有する。駆動部120は、印字ヘッドユニット110をY1−Y2方向に移動させる。印字ヘッド130は、印字ヘッドユニット110が複数有する印字ヘッドである。
【0021】
本実施形態の記録装置100では、印字開始前に搬送ベルト170を回動させながら印字ヘッド130の吐出不良検知処理を行う。本実施形態の搬送ベルト170には、記録用紙を吸着させるための吸引穴が設けられている。本実施形態において吐出不良検知処理を行う場合、その吸引穴にインク滴が吸引されるように吸引穴の移動に同期させてインク滴を吐出させる。
【0022】
以下に本実施形態の記録装置100の構成についてさらに説明する。
【0023】
本実施形態の印字ヘッドユニット110は、複数の印字ヘッド130の吐出不良を検知するための検知手段を有する。検知手段の詳細は後述する。
【0024】
また本実施形態の印字ヘッドユニット110は、ワイヤ111、モータ112からなる移動機構によりY1−Y2方向に移動可能に設置されている。モータ112は、駆動部120により駆動される。駆動部120は、後述する駆動制御部により制御される。
【0025】
本実施形態の印字ヘッドユニット110は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインクを吐出する複数の印字ヘッド130が並べられて配置されている。複数の印字ヘッド130は、記録用紙の搬送方向に並べて配置され、インク吐出方向がY2方向に向かうように装着されている。尚インクの色の数及び記録用紙の搬送方向に対しての配列順序はこれに限るものではない。
【0026】
本実施形態の印字ヘッドユニット110は、複数の印字ヘッド130に各色のインクを供給するための各色のサブタンク(図示せず)が搭載されている。サブタンクにはインク供給チューブ(図示せず)を介して、カートリッジ装填部(図示せず)に装着されたインクカートリッジからインクが補充供給される。カートリッジ装填部にはインクカートリッジ(インクタンク)内のインクを送液するための供給ポンプユニット(図示せず)が設けられている。
【0027】
印字ヘッドユニット110は、印字ヘッド130のノズル開口部のインクの乾燥を防止するために、維持ユニット140においてノズル開口部が塞がれた状態(キャップされた状態)で待機している。
【0028】
本実施形態では、ユーザが印字指示を行うと、印字ヘッドユニット110は、維持ユニット140によりキャップされた状態を解除し、印字開始するためのホームポジションへ移動する。印字は通常、印字ヘッドユニット110がホームポジションに固定された状態で行われる。
【0029】
印字が終了すると、記録装置100は印字ヘッドユニット110を維持ユニット140の上まで移動させてノズル開口部をキャップし、待機状態とする。尚本実施形態の記録装置100は、長時間印字させない場合や電源をおとす場合は、この維持ユニット140でノズル開口部をキャップした状態にしておく。
【0030】
給紙ユニット150は、記録用紙が収納された給紙トレイを有しており、印字開始が指示され、吐出不良検知処理が終了すると、給紙トレイから用紙を1枚ずつ分離し給送する。本実施形態の給紙トレイは、あらゆる用紙のサイズに適用できるような構成になっており、用紙をセットする時にセンサで検知して用紙サイズと用紙の方向(縦か横か)もわかるようになっている。また用紙が無くなった時や給紙時のエラ−も検知できるようになっている。さらに、連続で印字する場合には、紙間も変更可能であり用紙サイズや搬送速度(印字速度)に応じてその都度調整することも可能である。
【0031】
給紙ユニット150から給紙された記録用紙は、エアー吸着用ファン190により吸引穴から搬送ベルト170に吸着され、一枚毎に搬送される。そして記録用紙が印字ヘッドユニット110を通過する際に、印字ヘッド130よりインクを吐出させて文字や画像を印字する。印字終了した記録用紙は、排紙ユニット160へ搬送され、排紙トレイに蓄積される。
【0032】
廃液ユニット180は、吐出不良検知処理の際に、搬送ベルト170上に吐出された廃液インクを収めるためのものである。廃液ユニット180は、印字ヘッドユニット110の下の所定の位置に配置されている。通常、この廃液ユニット180は、蓄積された廃液量が所定量以上になると、センサによりこれを検知し、ユーザに廃棄を促す。
【0033】
次に、図2を参照して本実施形態の記録装置100のシステム構成を説明する。図2は、第一の実施形態の記録装置のシステム構成を説明する図である。
【0034】
本実施形態の記録装置100は、ヘッドコントロールボード200、給紙搬送制御ユニット210、維持供給制御ユニット220、USB(Universal Serial Bus)変換器230、240を有する。本実施形態のヘッドコントロールボード200、給紙搬送制御ユニット210、維持供給制御ユニット220は、例えば情報処理装置であるパーソナルコンピュータ(以下PC)300とUSBで接続されている。本実施形態では、PC300と各ユニットとのデータやコマンドのやりとりはUSB通信によって行われる。
【0035】
本実施形態のヘッドコントロールボード200は、印字ヘッドユニット110の有する印字ヘッド130を制御する。本実施形態では、ライン上に配置した10個の印字ヘッド130を1枚のヘッドコントロールボード200で制御する形態としたが、これに限定されない。1枚のヘッドコントロールボード200で制御される印字ヘッド130の数は、例えば印字サイズ等により決められても良い。
【0036】
本実施形態の給紙搬送制御ユニット210は、給紙ユニット150を制御して記録用紙を給紙トレイから給紙させ、搬送ベルト170の駆動部を制御して記録用紙を搬送させる。本実施形態の維持供給制御ユニット220は、維持ユニット140を制御して印字ヘッドユニット110のメンテナンス等を行い、印字ヘッドユニット110にインクを供給する。
【0037】
本実施形態は、給紙搬送制御ユニット210と維持供給制御ユニット220はRS232C(Recommended Standard 232)で通信しているが、共通化を図るため、RS232CをUSB変換器230、240によりUSBに変換している。USB変換器230、240は、例えば市販の変換ケーブルなどで実現できる。本実施形態では、これによりPC300と各ユニットとがUSB通信できることになり、PC300では接続された各ユニットをそれぞれ異なるUSB機器として認識し、各識別IDを付与してそれぞれのユニットとの通信及び制御を行うことができる。
【0038】
次に、本実施形態の記録装置100において吐出不良検知処理を行うための構成について説明する。
【0039】
本実施形態のヘッドコントロールボード200は、吐出検知制御部201を有する。本実施形態の給紙搬送制御ユニット210は、駆動制御部211を有する。
【0040】
本実施形態の吐出検知制御部201は、吐出不良検知処理の実行指示を受けて、印字ヘッドユニット110に設けられた検知手段を制御し吐出不良の印字ヘッド130の有無を検知する。本実施形態の駆動制御部211は、駆動部120を制御してモータ112を駆動させてワイヤ111を巻き上げ、印字ヘッドユニット110をY1方向へ移動させる。
【0041】
本実施形態の吐出検知制御部201は、吐出不良検知処理の実行指示を受けると吐出検知処理を開始することを駆動制御部211へ通知する。駆動制御部211は、この通知を受けて駆動部120へモータ112の駆動指示を行い、モータ112を駆動させる。駆動制御部211は、モータ112の駆動により印字ヘッドユニット110を所定位置まで移動させると、吐出検知制御部201へ通知する。吐出検知制御部201は、この通知を受けて、吐出不良検知処理を開始する。尚本実施形態において吐出不良検知処理の実行指示は、例えばPC300からユーザにより行われる。
【0042】
吐出検知制御部201は、吐出不良検知処理が終了すると、これを駆動制御部201へ通知する。駆動制御部201は、この通知を受けて駆動部120を制御し、モータ112を駆動させて印字ヘッドユニット110をY2方向に移動させ、元の位置に戻す。
【0043】
本実施形態では、モータ112は例えばステッピングモータである。モータ112がステッピングモータである場合、駆動制御部211は、駆動パルスの数によりモータ112の回転及び印字ヘッドユニット110の移動距離を制御する。またモータ112はDCモータであっても良い。
【0044】
次に図3を参照して本実施形態の印字ヘッドユニット110に設けられた検知手段について説明する。図3は、第一の実施形態における検知手段を説明する図である。図3は、図1を矢印A方向からみた図であり、図3(A)は直接光により吐出を検知する場合を説明する図であり、図3(B)は間接光により吐出を検知する場合を説明する図である。
【0045】
本実施形態の印字ヘッド130は、例えばインク液が供給されるインク液室と、インク液室に供給されたインク液滴を吐出するためのノズル開口部とが形成されており、ノズル開口部と対向する位置にピエゾ素子が形成されている。印字ヘッド130は、ピエゾ素子を駆動させてインク液室内の圧力を変動させてノズル開口部からインク滴を吐出させる。このインク開口部を有するインク液室は、記録装置100の解像度に基づき1つの印字ヘッド130に多数形成されている。
【0046】
インク滴のサイズは、ピエゾ素子に与える駆動信号により変更できる。例えばノズル開口部からインク滴のサイズの大きい大滴を吐出させる際は、小滴をいくつかマージさせて大滴を作る。吐出されたインク滴は、記録用紙131に着弾し画像が記録される。
【0047】
本実施形態では、検知手段として、印字ヘッド130のノズル開口部と搬送ベルト170との間(以下、ギャップGと呼ぶ)にレーザ光を照射する発光手段と、発光されたレーザ光を受光する受光手段とが設置されている。具体的には本実施形態では、発光手段としてレーザダイオード132が配置され、受光手段としてフォトダイオード133が配置されている。レーザダイオード132とフォトダイオード133とは、レーザ光が記録用紙131の搬送方向と直行するように配置されている。本実施形態のレーザダイオード132は、発光ユニットに含まれ、フォトダイオード133は受光ユニットに含まれる。発光ユニットと受光ユニットについては後述する。
【0048】
フォトダイオード133は、検知したレーザ光の光量を電流に変換するもので、使用用途により色々なものが使用されている。本実施形態では、フォトダイオード133が検知したレーザ光の光量は、回路上で電圧に変換するようになっているが、通常は出力レベルが低いのでオペアンプ等で増幅して所定の電圧レベルまであげているのが一般的である。これにより、フォトダイオード133で検知した波形を取得することができ、電気的にインク滴を検知することができる。
【0049】
また本実施形態では、レーザダイオード132からすぐの位置にレーザ光を集光するためのコリメートレンズ134が設置されており、さらにビーム径を絞るためのアパーチャ135が設置されている。アパーチャ135の形状は、使用用途により形状は色々あるが、通常は円状の穴があいているものを使用している。
【0050】
吐出検知の方法としては、レーザダイオード132から照射されたレーザ光を直接検知する方法と、レーザダイオード132から照射されたレーザ光の反射により散乱した散乱光を検知する方法とがある。
【0051】
図3(A)は、直接光を用いた例である。この場合、フォトダイオード133はレーザダイオード132から照射されるレーザ光の光軸上に配置されている。フォトダイオード133の出力の波形は、インク滴の通過によりレーザ光を遮断されると電圧レベルか下がる。本実施形態の吐出検知制御部201は、この電圧レベルの変化により吐出不良が存在するか否かを判断する。
【0052】
図3(B)は間接光を用いた例である。この場合、フォトダイオード133はレーザダイオード132から照射されるレーザ光の光軸上からずれた位置に配置されている。間接光を用いる場合は、インク滴が吐出されるとレーザ光がインク滴に反射して散乱光となる。フォトダイオード133がこの散乱光を受信すると、フォトダイオード133の出力の波形の電圧レベルは上昇する。またインク滴が吐出されないと、フォトダイオード133はレーザ光を検知しないため電圧を出力しない。したがって吐出不良であることがわかる。
【0053】
以下に図4を参照して本実施形態の記録装置100におけるインク滴の吐出を検知したときの印字ヘッド130の駆動信号及びフォトダイオード133の出力の波形を説明する。図4は、印字ヘッドの駆動信号及びフォトダイオードの出力の波形の一例を示す図である。図4は、間接光を用いた例に対応する図である。尚図4に示す例は、は単純に液滴を一滴吐出するための波形であり、吐出する周期は可変である。
【0054】
本実施形態では、ヘッドコントロールボード200から印字ヘッドユニット110の印字ヘッド130に形成されたピエゾ素子へHレベルの駆動信号が供給されると、ピエゾ素子が変形しインク液室内の圧力変動によりインク滴が吐出される。インク滴が吐出されると、レーザダイオード132から照射されるレーザ光がインク滴に反射して散乱光となる。フォトダイオード133は、この散乱光を受光して受光量に応じた信号を出力するため、図4の例ではインク滴の吐出が検知される。
【0055】
本実施形態の吐出検知制御部201は、例えば図4の例であれば、フォトダイオード133の出力波形から吐出不良ではないと判断する。また吐出検知制御部201は、例えばフォトダイオード133の波形において受光量に応じた信号が出力されていなければ、吐出不良(ノズル欠損)と判断する。
【0056】
次に、本実施形態の印字ヘッドユニット110の印字位置における吐出不良検知処理について説明する。図5は、印字ヘッドユニットの印字位置における吐出不良検知処理について説明する図である。図5は、直接光を用いた場合の例であり、図1を矢印A方向から見た図である。
【0057】
本実施形態の印字ヘッドユニット110には、一端に発光ユニット136、他端に受光ユニット137が搭載されている。
【0058】
本実施形態の発光ユニット136と受光ユニット137とは、レーザダイオード132から照射されるレーザ光の光軸がギャップG内に収まるように調整されて取り付けられている。本実施形態の発光ユニット136と受光ユニット137とは、通常、取付け用の冶具等を用いて取付けられている。
【0059】
また本実施形態の印字ヘッドユニット110は、4点にワイヤ111が設けられており、それぞれのワイヤ111を4つのモータ112により巻き上げることでY1−Y2方向へ移動する。
【0060】
本実施形態では、印字ヘッドユニット110が印字位置にあり印字開始の指示及び吐出不良検知処理の実行指示がなされると、印字ヘッドユニット110をモータ112及びワイヤ111により持ち上げてY1方向へ移動さギャップGの幅を広げる。本実施形態では、通常のギャップGを1mm程度であり、移動後のギャップGが2〜3mmとなるように、印字ヘッドユニット110を移動させる。すなわち本実施形態では、吐出不良検知処理を行う場合にのみ、印字ヘッドユニット110が持ち上げられ、ギャップGが広げられる。印字ヘッドユニット110が持ち上げられると、吐出検知制御部201は、吐出不良検知のためのインク滴を搬送ベルト170上へ吐出させる。
【0061】
次に図6を参照して本実施形態の記録装置100における吐出不良検知処理について説明する。図6は、第一の実施形態の記録装置における吐出不良検知処理を説明するフローチャートである。
【0062】
記録装置100において、ヘッドコントロールボード200は、PC300から印字開始指示を受けると、印字ヘッドユニット110を印字位置へ移動させる(ステップS61)。次に記録装置100は、印字開始指示を受けると、吐出検知制御部201から給紙搬送制御ユニット210へ印字ヘッドユニット110の移動を指示する。供給搬送ユニット210は、この指示を受けて駆動制御部211により駆動部120を制御してモータ112を駆動させ、印字ヘッドユニット110をY1方向(搬送ベルタ170からみて上方)へ移動させる(ステップS62)。
【0063】
本実施形態では、印字ヘッドユニット110の移動量は予め駆動制御部211において設定されているものとした。この設定は、例えばモータ112がステッピングモータである場合には、パルスの数により印字ヘッドユニット110の移動量が決められている。また印字ヘッドユニット110の移動量は、可変であっても良い。
【0064】
尚本実施形態の記録装置100は、ステップS61で印字ヘッドユニット110が印字位置に移動した後に、これをPC300に通知しても良い。PC300では、印字ヘッドユニット110の移動完了の通知を受けて、ユーザに吐出不良検知処理を実行するか否かを選択させる画面を表示しても良い。そしてこの画面にて吐出不良検知処理の実行が指示されると、この指示がヘッドコントロールボード200と供給排紙ユニット210とに通知されても良い。
【0065】
ステップS62において印字ヘッドユニット110が上方へ移動してギャップGが2mm程度まで広がると、駆動制御部211はヘッドコントロールボード200へ印字ヘッドユニット110の移動完了を通知する。ヘッドコントロールボード200では、吐出検知制御部201がこの通知を受けて、吐出不良検知処理の実行を開始する(ステップS63)。
【0066】
具体的には吐出検知制御部201は、発光ユニット136からレーザ光を照射し、印字ヘッド130の各ノズル開口部からインク滴を吐出させる。そして受光ユニット137においてフォトダイオード133の出力波形を取得する。そして吐出不良が存在するか否かを判断している。
【0067】
続いて吐出検知制御部201は、吐出不良検知処理を終了するか否かを判断する(ステップS64)。ステップS64で吐出不良検知処理を終了すると判断した場合、吐出検知制御部201はこれを駆動制御部211へ通知する。駆動制御部211は、この通知を受けて駆動部120を制御してモータ112により印字ヘッドユニット110の位置を元に戻す(ステップS65)。具体的には駆動制御部211は、ギャップGが1mm程度となるように印字ヘッドユニット110をY2方向(下向き)へ移動させ、処理を終了する。
【0068】
ステップS64において吐出検知を行わないと判断される場合とは、例えば吐出不良が検知された場合等に、印字ヘッド130のクリーニングを行って再度吐出不良検知処理を行う場合等が考えられる。
【0069】
図6に示す吐出不良検知処理が終了すると、記録装置100は印字ヘッドユニット110による印字を開始する。図7は、第一の実施形態の印字ヘッドユニットによる印字状態を示す図である。図7では、発光ユニット136からレーザ光は照射されておらず、ギャップGが図5の示すギャップGよりも狭くなっていることがわかる。
【0070】
以上に説明したように、本実施形態では、印字開始の指示を受けてから印字ヘッドユニット110が印字位置に移動した後に、搬送ベルト170を回動させた状態で吐出不良検知処理を行う際に、印字ヘッドユニット110を持ち上げてギャップGを広げる。
【0071】
本実施形態では、この構成により、搬送ベルト170の動作時の撓み等によりレーザ光が遮られて吐出不良検知が行えなくなることを防止でき、搬送ベルト170の動作時の振動や撓み等に影響を受けずに搬送ベルト170上で高精度にノズルの欠損を検知することができる。
【0072】
尚本実施形態では、吐出不良検知処理の実行の際に、ギャップGを2〜3mm程度とするものとしたが、これに限定されない。本実施形態のギャップGは、搬送ベルト170からレーザ光の光軸までの処理が搬送ベルト170の撓み幅より大きくなるように、決められていれば良い。尚搬送ベルト170の撓み幅は、搬送ベルト170の材質やベルト長等により個々に異なるものであり、記録装置100の設計段階において予め決められる値である。また設計段階で撓み幅を決める際は、搬送ベルト170の劣化等による撓み量も考慮に入れることが好ましい。
【0073】
図8は、搬送ベルトの撓み幅を説明する図である。搬送ベルト170の動作時には、主に搬送ベルト170の両端部に撓みが生じる。本実施形態は、レーザダイオード132から照射されるレーザ光の光軸Sと搬送ベルト170の表面との距離W1が、搬送ベルト170の撓み幅W2よりも広くなるように、ギャップGを広げるものとした。距離W1>幅W2であれば、レーザ光が搬送ベルト170の撓みにより遮られることがなくなり、搬送ベルト170の回動中も高精度な吐出不良検知処理を行うことができる。
【0074】
尚本実施形態では、ギャップGの値に上限値を設けることが好ましい。上限値は、印字ヘッド130から吐出されたインク滴が搬送ベルト170の吸引穴からはみ出さない値とすることが好ましい。本実施形態では、例えばギャップGの上限値を10mm程度としても良い。
【0075】
また本実施形態の記録装置100は、印字ヘッドユニット110による印字が完了すると、印字ヘッドユニット110を維持ユニット140の上まで移動させる。本実施形態の記録装置100では、維持ユニット140においても、印字ヘッドユニット110が印字位置にあるときと吐出不良検知処理を行っても良い。図9は、印字ヘッドユニットが維持ユニット上にある状態を説明する図である。
【0076】
本実施形態の記録装置100において、維持ユニット140には印字ヘッド130のノズル開口部に対応する位置にキャップ161が設けられている。記録装置100は、印字ヘッドユニット110のノズル開口部がキャップ161上にくるように印字ヘッドユニット110が移動すると、吐出検知制御部201は吐出不良検知処理を行う。また維持ユニット140は、印字ヘッド130のクリーニング等の回復動作を行う。
【0077】
以上に説明したように、本実施形態によれば、搬送ベルト動作時の振動や撓み等に影響を受けずに搬送ベルト動作中に高精度にノズルの欠損を検知することができる。
【0078】
(第二の実施形態)
以下に図面を参照して本発明の第二の実施形態について説明する。本発明の第二の実施形態は、維持ユニットの構成のみ第一の実施形態と相違する。したがって以下の第二の実施形態の説明では、第一の実施形態との相違点についてのみ説明し、第一の実施形態と同様の機能構成を有するものには第一の実施形態の説明で用いた符号と同様の符号を付与し、その説明を省略する。
【0079】
図10は、第二の実施形態の記録装置を説明するための図である。本実施形態の記録装置100Aでは、維持ユニット140Aが搬送ベルト170上を移動する構成となっており、搬送ベルト170上における印字ヘッドユニット110の印字位置に固定されている。印字ヘッドユニット110は、Y1−Y2方向へのみ移動する。
【0080】
本実施形態の記録装置100Aは、印字しない状態では印字ヘッドユニット110と搬送ベルト170との間に維持ユニット140Aが位置し、印字ヘッド130のノズル開口部をキャップしている。
【0081】
また本実施形態の記録装置100Aに対して、印字開始の指示がなされると、維持ユニット140Aが印字位置から搬送ベルト170上の排紙ユニット160方向へ移動する。そして印字ヘッドユニット110がY2方向へ移動させ、図6のステップS62からステップS65までの処理を実行し、印字を行う。
【0082】
尚本実施形態では、印字ヘッドユニット110は、ギャップGが2mm程度(距離W1>幅W2となる位置)までY2方向に移動され、吐出不良検知処理が終了するとさらにギャップGが1mm程度となるような印字ヘッドユニット110がY2方向に移動される。そして印字が完了すると、印字ヘッドユニット110はY1方向へ引き上げられ、印字ヘッドユニット110と搬送ベルト170の間に維持ユニット140Aが移動してくる。
【0083】
本実施形態では、以上の構成により、通常の印字動作時における印字ヘッドユニット110の移動の制御の範囲内で、搬送ベルト動作時の振動や撓み等に影響を受けずに搬送ベルト動作中に高精度にノズルの欠損を検知することができる。
【0084】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0085】
100、100A 記録装置
110 印字ヘッドユニット
111 ワイヤ
112 モータ
120 駆動部
130 印字ヘッド
132 レーザダイオード
133 フォトダイオード
136 発光ユニット
137 受光ユニット
140、140A 維持ユニット
150 給紙ユニット
160 排紙ユニット
170 搬送ベルト
180 廃液ユニット
200 ヘッドコントロールボード
201 吐出検知制御部
210 給紙搬送ユニット
211 駆動制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開2005−119071号公報
【特許文献2】特開2005−007809号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の印字ヘッドを有する印字ヘッドユニットを有し、前記印字ヘッドの有するノズル開口部からインク滴を吐出して搬送ベルトにより搬送される記録用紙に印字を行う直前の前記搬送ベルトの動作中に、前記インク滴の吐出不良を検知する記録装置であって、
前記インク滴の吐出を検知する検知手段と、
前記印字ヘッドユニットを前記記録用紙の搬送方向と直行する方向に移動させる移動機構と、
前記移動機構の駆動を制御する駆動制御手段と、
前記検知手段を用いた前記インク滴の吐出不良検知処理を制御する吐出検知制御手段と、を有し、
前記駆動制御手段は、
前記記録用紙に対する印字指示を受けて、前記移動機構により、前記ノズル開口部と前記搬送ベルトとのギャップを広げるように前記印字ヘッドユニットを移動させ、
前記吐出検知制御手段は、
前記移動機能による印字ヘッドユニットの移動が完了した後に前記吐出不良検知処理を行う記録装置。
【請求項2】
前記検知手段は、
前記印字ヘッドユニットと前記搬送ベルトとの間にレーザ光を照射する発光手段と、
前記レーザ光を受光して受光量に応じたレベルの信号を出力する受光手段と、を含み、
前記移動機構は、
前記搬送ベルトと前記レーザ光との光軸との距離が、前記搬送ベルトの撓み幅よりも大きくなるように前記印字ヘッドユニットを移動させる請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記受光手段は、前記レーザ光の光軸上に配置された請求項2記載の記録装置。
【請求項4】
前記受光手段は、前記レーザ光の光軸上とずれた位置に配置された請求項2記載の記録装置。
【請求項5】
前記移動機構による前記印字ヘッドユニットの移動量の設定が可能である請求項1ないし4の何れか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記駆動制御手段は、
前記吐出不良検知処理が終了した後に、前記移動機構により前記印字ヘッドユニットの位置を前記移動機構による移動の前の位置へ戻す請求項1ないし5の何れか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
複数の印字ヘッドを有する印字ヘッドユニットを有し、前記印字ヘッドの有するノズル開口部からインク滴を吐出して搬送ベルトにより搬送される記録用紙に印字を行う直前の前記搬送ベルトの動作中に、前記インク滴の吐出を検知する検知手段と、前記印字ヘッドユニットを前記記録用紙の搬送方向と直行する方向に移動させる移動機構と、を有する記録装置による吐出不良検知方法であって、
前記移動機構の駆動を制御する駆動制御手順と、
前記検知手段を用いた前記インク滴の吐出不良検知処理を制御する吐出検知制御手順と、を有し、
前記駆動制御手順において、
前記記録用紙に対する印字指示を受けて、前記移動機構により、前記ノズル開口部と前記搬送ベルトとのギャップを広げるように前記印字ヘッドユニットを移動させ、
前記吐出検知制御手順において、
前記移動機能による印字ヘッドユニットの移動が完了した後に前記吐出不良検知処理を行う吐出不良検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−61661(P2012−61661A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206519(P2010−206519)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】