説明

記録装置及び記録装置の制御方法

【課題】 記録ヘッドにキャップが貼り付いた場合に、記録装置を破損することなく、短時間で記録ヘッドからキャップを引き離す。
【解決手段】 記録ヘッドからキャップを離すためにキャップの移動手段を駆動させる。そして、前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことを検出する検出手段により前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことが検出されない場合に、前記キャップの移動手段を駆動させながら前記キャリッジを微小量往復移動させるよう制御する。そして、前記制御によって、前記検出手段が前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことを検出した場合に、前記キャリッジの微小量往復移動を強制的に停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドのノズル形成面を保護するためのキャップを備えた記録装置及び記録ヘッドにキャップが貼り付いた場合に記録ヘッドからキャップを引き離す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置などの記録装置では、電源オフや待機の状態の時に、インクの乾燥や蒸発、及びこれらに伴うノズルの目詰まりを防止するために、記録ヘッドに設けられたインクを吐出するためのノズルをキャップするキャップ装置を備えるものがある。
【0003】
図2は、このキャップ装置の一例を表している。キャップ装置は、図2の32で表されるようなゴムなどで形成されたキャップを備えており、キャップ32は、電源オフや待機の状態の時に、記録ヘッド31のノズルを備えた面(ノズル面)をキャップする。そして、電源オンされた際や記録及びクリーニングを開始する際に記録ヘッド31からキャップ32が離される。キャップ装置は、キャップ32を上下に移動させることにより、記録ヘッド31をキャップし、また、記録ヘッド31からキャップを離す。具体的にはキャップをする(キャップを閉じる)ときはキャップ32を上に移動させ、キャップを離す(キャップを開ける)ときはキャップ32を下に移動させる。図2のように、このようなキャップの開閉動作を、専用のキャップモータ34を用いて行う記録装置がある。一方、キャップモータを持たず、記録ヘッドを搭載したキャリッジをキャリッジモータにより移動させると共に、キャップをキャリッジと連動させて移動させながらガイド軸等によって同時にキャップを上下に移動させてキャップの開閉動作を行う記録装置もある。
【0004】
電源オフの状態から電源オンされた場合や記録及びクリーニングの実行命令が入力された場合など、キャップを開ける動作を行う命令が記録装置に入力されると、まず、キャップモータやキャリッジモータを駆動してキャップを開ける動作を行おうとする。しかし、電源オフや待機の状態が長いと、キャップが記録ヘッドに貼り付いてしまい、キャリッジモータやキャップモータを駆動してもキャップが開かない場合がある。キャップが開かないと記録処理やクリーニング処理ができないばかりでなく、モータのフィードバック制御によってキャリッジモータやキャップモータに大電流が流れ、キャップ装置を破損する恐れも生じる。
【0005】
このようなキャップ装置を破損することを回避するため、記録ヘッドへのキャップの貼り付きを引き離す技術が開示されている(例えば、特許文献1)。特許文献1で開示されている記録装置は、キャップがキャリッジ動作と連動して下がるキャップ装置を有し、キャップを開けるためにキャリッジを動作させるキャリッジモータの駆動量をキャリッジに備えられたエンコーダにより監視する。そして、一定時間経過後、駆動量が一定値に達したかどうかを判断する。一定値に達していなかった場合には、記録ヘッドとキャップが貼りついていると判断して、キャップを記録ヘッドから引き離すためにキャリッジを一定時間微小駆動(微小量往復移動)させる。そして、その後、再びキャリッジを移動させてキャップを開けることを試みる動作を行う。そして、この動作を繰り返すことによりキャップを記録ヘッドから引き離す。これは、キャリッジの微小駆動によってキャリッジに搭載されている記録ヘッドとキャップとの間に少しずつ気泡が入っていくことで記録ヘッドとキャップとが引き離されるというものである。
【特許文献1】特開2004−090293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようにキャリッジを微小駆動させ、その後、再びキャリッジを移動させてキャップを開けることを試みるという動作を繰り返すと、キャップを開けるまでに長い時間を要する。
【0007】
また、上記のようなキャリッジの微小駆動をさせることにより記録ヘッドとキャップとが引き離された場合、引き離された瞬間にキャリッジを駆動するための負荷が軽くなることによって、キャリッジが記録装置内の壁に衝突する場合がある。キャリッジの移動幅は記録装置で用いられる最大サイズの記録媒体の幅程度であり、その両側には壁が設けられている。このため、微小駆動時のキャリッジモータへの出力電流によっては、記録ヘッドとキャップとが引き離された瞬間、キャリッジは高速で移動して記録装置内の壁に衝突し、記録装置を破損する場合がある。
【0008】
そこで本発明は、記録ヘッドにキャップが貼り付いた場合に、記録装置を破損することなく、短時間で記録ヘッドからキャップを引き離すことができる記録装置及びキャップが貼り付いた記録ヘッドからキャップを引き離す方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、インクをノズルから吐出する記録ヘッドを走査するキャリッジと、前記ノズルの形成面をキャップするキャップと、前記キャップを移動させるよう駆動するキャップ移動手段とを備えた記録装置であって、
前記記録ヘッドが前記キャップによりキャップされた状態から前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことを検出する検出手段と、
前記キャップ移動手段を駆動させて前記記録ヘッドから前記キャップを離そうとして、前記検出手段により前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことが検出されない場合に、前記キャップ移動手段を駆動させながら前記キャリッジを移動させるよう制御する制御手段と、
前記制御手段の制御によって、前記検出手段が前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことを検出した場合に、前記キャリッジの移動を強制的に停止する停止手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するための別の本発明は、インクをノズルから吐出する記録ヘッドを走査するキャリッジと、前記ノズルの形成面をキャップするキャップと、前記キャップを移動させるよう駆動するキャップ移動手段とを備えた記録装置の制御方法であって、
前記キャップ移動手段を駆動させて前記記録ヘッドから前記キャップを離そうとして、前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことを検出する検出手段により前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことが検出されない場合に、前記キャップ移動手段を駆動させながら前記キャリッジを移動させるよう制御する制御工程と、
前記制御工程の制御によって、前記検出手段が前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことを検出した場合に、前記キャリッジの移動を強制的に停止する停止工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録ヘッドにキャップが貼り付いた場合に、記録装置を破損することなく、短時間で記録ヘッドからキャップを引き離すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
なお、この明細書において、「記録」(以下、「プリント」とも称する)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。
【0014】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0015】
また、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理に供され得る液体を表すものとする。インクの処理としては、例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固又は不溶化させることが挙げられる。
【0016】
またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口乃至これに連通する液路及びインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0017】
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録ヘッドを備えた記録装置の構成概略を示す図である。
【0018】
図1において、2は記録ヘッドを搭載したキャリッジであり、11はこのキャリッジ2の移動方向(主走査方向)に延在しキャリッジ2の駆動を支持するシャーシである。
【0019】
13はキャリッジ2を駆動させるためのキャリッジモータであり、12はキャリッジ2を主走査方向に往復移動させるためのキャリッジモータ13の駆動力を伝達する駆動ベルトであり、14はキャリッジの位置を検出するエンコーダである。
【0020】
キャリッジ2上には記録ヘッドが搭載されており、さらにその記録ヘッドの上に複数の異なる色のインクを収容したインクタンクCが搭載されている。この複数のインクタンクCはそれぞれのインクタンク毎に取り外して交換することが可能になっている。なお、ここでは、独立して取り外しが可能なインクタンクを用いているが、複数の異なる色のインクを別々に仕切って収容した一体型のインクタンクを用いることもできる。
【0021】
また、キャリッジ2に搭載された記録ヘッドは、キャリッジ2から下方へ突出している。そして、主に上質紙や写真用紙といった記録媒体1を搬送するための搬送ローラ3と排紙ローラ4の間に設けられている。また、記録ヘッドの下方にはインクを吐出する複数のノズルが形成されており、ノズルの形成面(ノズル面)は記録媒体1と平行に対向するようになっている。
【0022】
32は上下方向に移動可能なキャップであり、記録ヘッドのノズル面と密着接合してキャップすることにより、ノズル内のインクの揮発成分の蒸発を防止してインクが固着することによりノズルが吐出不良になることを防止している。
【0023】
図6は、図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【0024】
図6に示すように、コントローラ600は、MPU601、所要のテーブル、その他の固定データを格納したROM602を有する。また、キャリッジモータ13の制御、搬送モータM2の制御、及び、記録ヘッド31の制御のための制御信号を生成する特殊用途集積回路(ASIC)603を有する。また、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等を設けたRAM604を有する。また、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続してデータの授受を行うシステムバス605を有する。さらに、以下に説明するセンサ群から入力されたアナログ信号をデジタル信号にA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給するA/D変換器606を有する。また、コントローラ600は、予備吐出時および記録時において、所定の時間間隔となるように前記複数のノズルを駆動する。
【0025】
また、610は画像データの供給源となるコンピュータ等でありホストと総称される。ホスト610と記録装置との間ではインタフェース(I/F)611を介して画像データ、コマンド、ステータス信号等を送受信する。
【0026】
また、620はスイッチ群であり、電源スイッチ621、プリント開始を指令するためのプリントスイッチ622、及び回復動作の起動を指示するための回復スイッチ623など、操作者による指令入力を受けるためのスイッチから構成される。630はホームポジションを検出するためのフォトカプラなどの位置センサ631、環境温度を検出するために記録装置の適宜の箇所に設けられた温度センサ632等から構成される装置状態を検出するためのセンサ群である。
【0027】
また、640はキャリッジモータ13を駆動させるキャリッジモータドライバ、642は搬送モータM2を駆動させる搬送モータドライバ、643は記録ヘッド31を駆動させる記録ヘッドドライバである。
【0028】
また、32は記録ヘッド31をキャップするキャップであり、キャップモータ34を駆動させることにより記録ヘッド31をキャップする。644は、キャップモータを駆動させるキャップモータドライバである。
【0029】
図2は、キャップ32などから構成されるキャップ装置の一例を表している。図2を用いて記録ヘッドとキャップの関係を説明する。
【0030】
31は記録ヘッドであり、ノズルはこの記録ヘッド31の下側にある。33は一般にはゴムで形成されるキャップホルダである。キャップホルダ33内部に装着されている32はキャップであり、キャップするときに記録ヘッドのノズル面と密着接合する部分である。キャップ32は予備吐出したインクを一時的に溜めておくことができる。また、キャップ32は、予備吐出したインクなどを吸収して保持するために記録装置に設けられた不図示のスポンジ形状の廃インク吸収体に吸収させるため、このようなインクを吸引する不図示のポンプユニットに連通している。
【0031】
34はキャップ移動を行うためのキャップモータであり、キャップ32及びキャップホルダ33を上下させて記録ヘッド31とのキャップの開閉を行う。35はキャップモータ34と連動するように設けられたキャップエンコーダであり、キャップモータ34の回転量を計測し、その回転量からキャップ32及びキャップホルダ33の移動量を検出する。36はキャップモータ34の駆動力を伝えるための手段である。
【0032】
キャップモータ34を駆動させて、キャップ32及びキャップホルダ33を図2に示す矢印の方向に移動させたときはキャップが開き、矢印とは逆方向に移動させたときはキャップされる(キャップは閉まる)構成となっている。
【0033】
キャップが開いた状態からキャップを閉める動作を行うときは、まず、キャリッジモータ13を駆動させることによりキャリッジ2に搭載された記録ヘッド31をキャッピング位置まで移動させる。記録ヘッド31がキャップ32の真上にあたるキャッピング位置まで移動すると、キャップモータ34の駆動によってキャップ32及びキャップホルダ33が上方に移動し記録ヘッド31のノズル面に密着接合する。こうして、キャップが閉じられる。
【0034】
図3にキャップされた記録ヘッドからキャップを開ける際のフローチャートを示す。
図3は、図4(a)に示されるように記録ヘッド31がキャップ32及びキャップホルダ33が密着接合されている状態から、図4(b)に示されるようにキャップを開けられた状態にするまでのフローチャートを示している。
【0035】
最初に、ステップS110で、キャップを開けるためにキャップモータ34の駆動を開始して、キャップを下げる動作を行う。キャップモータ34が駆動している間、MPU601などの制御により、一定の周期でキャップモータ34に対応するキャップエンコーダ35を監視する。
【0036】
次に、ステップS120で、キャップモータ34の駆動開始から一定時間が経過した際に、キャップエンコーダ35によりキャップモータ34の回転量に対応するキャップ32及びキャップホルダ33の下方向への移動距離を判断する。キャップ32及びキャップホルダ33の移動距離が予め定められた一定値未満である場合はステップS130に進む。この場合は、図4(c)に示されるようにキャップ32及びキャップホルダ33はキャップ32が記録ヘッド31から離れるほど移動しておらず、記録ヘッド31とキャップ32とが貼り付いていると判断できる。キャップ32及びキャップホルダ33の移動距離が予め定められた一定値以上である場合はステップS160に進む。この場合は、図4(b)に示されるように記録ヘッド31とキャップ32とが貼り付いておらず、記録ヘッド31からキャップ32が離れて正常にキャップが開いたと判断できる。
【0037】
ステップS130では、キャップモータ34を駆動させたまま、キャリッジモータ13を微小駆動させることによりキャリッジ2を左右に微小駆動(微小量往復移動)させる。このときのキャリッジ2の駆動量は左右同じになるようにし、キャリッジエンコーダ14によりキャリッジモータ13の回転量に対応するキャリッジ2の移動距離を検出する。なお、キャリッジ2の微小駆動により、キャリッジ2に搭載されている記録ヘッド31、キャップ32及びキャップホルダ33の状態は、キャリッジが左に駆動している場合は図4(d)、右に駆動している場合は図4(e)のようになる。キャリッジ2の微小駆動を繰り返していくうちに、従来の技術において既に判明しているように、密着接合している記録ヘッド31とキャップ32との接合面に気泡が入ることにより少しずつ隙間ができる。これにより、記録ヘッド31とキャップ32の密着している部分の面積は、しだいに小さくなっていく。やがて記録ヘッド31からキャップ32が離れていき、キャップ32及びキャップホルダ33はキャップモータ34の駆動によって下方に移動する。キャップ32が下方に移動すると、ステップS140において、キャップ32の移動距離が一定値以上であることがキャップエンコーダ35により検出される。ステップS140で、キャップ32の移動距離が一定値以上であると判断された場合、図4(b)に示されるように正常にキャップが開いたと判断し、ステップS150に進む。ステップS140で、キャップ32の移動距離が一定値未満であると判断されている場合は、図4(c)に示されるように記録ヘッド31とキャップ32とがまだ貼り付いていると判断できる。このため、キャップ32の移動距離が一定値以上と判断されるまでキャリッジ2を左右に微小駆動することを続行する。
【0038】
ステップS150では、直ちにキャリッジ2の微小駆動を強制的に停止する。これは、以下の理由である。ステップS150では既に正常にキャップが開いているので、キャリッジ2を微小駆動させるためにキャリッジモータ13を駆動しつづけた場合、キャリッジ2はシャーシ11に沿って走査方向に駆動する。キャリッジ2を微小駆動させるためにキャリッジモータ13に供給する電流量によっては、キャップが開いた瞬間にキャリッジ2がシャーシ11に沿って高速で駆動してしまうこともあり得る。シャーシ11の左端または右端までキャリッジ2が高速で駆動すると、キャリッジ2が記録装置本体に衝突してしまう。キャリッジ2が記録装置本体に衝突した後もキャリッジモータ13に電流が供給され続けると、キャリッジ2、シャーシ11及びキャリッジ搬送ベルト12を破損することも考えられる。そこで、キャップ32が記録ヘッド31から離れてキャップが開いたと判断された場合、直ちにキャリッジモータ13への電流の供給を停止してキャリッジ2の微小駆動を強制停止する。こうして、キャリッジ2が記録装置本体に衝突すること及びこのことによる記録装置の破損を防止する。
【0039】
ステップS160では、キャップモータ34を駆動し続けて、キャップが開いたことが十分に確認できる予め定められた所定の位置までキャップ32を移動させる。そして、この所定の位置までキャップ32が移動したと判断されると、ステップS170に進み、キャップモータ34の駆動を停止する。
【0040】
図5は、キャップを開ける際にキャップモータ34の駆動を開始してからの経過時間Tを横軸にとり、キャップ32の移動距離p及びキャップモータ34に流れる電流iを縦軸にとったときの、経過時間Tに対する移動距離p及び電流iを示すグラフである。なお、図5は、記録ヘッド31にキャップ32が貼り付いていた場合について示している。
【0041】
キャップモータ34の駆動開始直後、記録ヘッド31にキャップ32が貼り付いておらず、スムーズにキャップが開かれた場合、移動距離pは急激に長くなるはずである。しかし、記録ヘッド31にキャップ32が貼り付いていた場合は、キャップモータ34の駆動開始直後にキャップ32は僅かに移動するものの、その後はキャップ32が記録ヘッド31に貼り付いている間中、移動距離pは殆ど変化が無い。また、キャップモータ34のサーボのフィードバック制御により、最大に近い電流がキャップモータ34に流れる。この状態が、記録ヘッド31からキャップ32を離すために行われるキャリッジ2の微小駆動が行われている間続く(図5中のaの状態)。
【0042】
記録ヘッド31からキャップ32が離れ、キャップエンコーダ35によってキャップ32が移動したことが確認されると、キャップモータ34のサーボのフィードバック制御によりキャップモータ34を駆動する電流iは小さくなる(図5中のbの状態)。そして、このフィードバック制御によりキャップモータ34が駆動してキャップ32は下方に移動する。そして、キャップ32が一定位置まで移動すると、キャップを開く動作は終了となり、キャップモータ34を停止させる。
【0043】
上記のキャップを開く動作においては、キャップモータ34が駆動を開始して一定時間経過後にキャップエンコーダ35の状態を監視してキャップ32の移動距離を確認している。この一定時間は、キャップモータ34の物理的または電気的な障害、或いは、キャップモータ34自体の故障によってキャップ32を駆動することができない場合があるということやキャップモータ34の特性などを考慮して決定されることが望ましい。
【0044】
上記のキャップを開く動作において、記録ヘッド31からキャップ32が離れたかどうかを判断するためのキャップエンコーダ35によって検出されるキャップ32の移動距離について述べる。図3中のステップS120とステップS140における移動距離についての一定値は同一の値である。この値は、記録ヘッド31からキャップ32が離れて図4(b)に示されるような状態になった瞬間における値であることが好ましい。この値は、キャップホルダ33の大きさやキャップモータ34の特性などを考慮して、実験等による検証によって決定されることが望ましい。
【0045】
また、キャップエンコーダ35によりキャップ32の移動距離を求め、予め定められた一定値と比較して記録ヘッド31からキャップ32が離れたことを判断する替わりに、記録ヘッド31からキャップ32が離れたことをセンサにより検知して判断しても良い。具体的には、記録ヘッド31からキャップ32が離れると状態が変化するセンサをキャップの周囲に設け、キャップモータ34を駆動させながらこのセンサによりキャップ状態を監視することにより記録ヘッド31からキャップ32が離れたことを判断しても良い。このようなセンサとしては、キャップが開いた時に受光する光学センサやキャップが開いた時の速度を感知する速度センサなどが挙げられる。
【0046】
さらに、記録ヘッド31からキャップ32が離れたことを判断する別の手段について述べる。記録ヘッド31にキャップ32が貼り付いているときは、図5のaの状態のように、キャップモータ34に流れる電流は最大値に近くなる。記録ヘッド31からキャップ32が離れると、図5のbの状態のように、キャップモータ34に流れる電流の値は小さくなる。このため、キャップモータ34に流れる電流の値を監視して、予め定められた基準以上の電流の低下を検出することにより、記録ヘッド31からキャップ32が離れたことを判断しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明を適用可能なインクジェット記録ヘッドを備えた記録装置の構成概略を示す図である。
【図2】キャップ装置の一例を表わす図である。
【図3】キャップされた記録ヘッドからキャップを開ける際のフローチャートである。
【図4】記録ヘッドとキャップとの状態を表す模式図である。
【図5】キャップを開ける際にキャップモータの駆動を開始してからの経過時間Tに対するキャップの移動距離及びキャップモータに流れる電流を示すグラフである。
【図6】図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0048】
2 キャリッジ
13 キャリッジモータ
31 記録ヘッド
32 キャップ
34 キャップモータ
35 キャップエンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクをノズルから吐出する記録ヘッドを走査するキャリッジと、前記ノズルの形成面をキャップするキャップと、前記キャップを移動させるよう駆動するキャップ移動手段とを備えた記録装置であって、
前記記録ヘッドが前記キャップによりキャップされた状態から前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことを検出する検出手段と、
前記キャップ移動手段を駆動させて前記記録ヘッドから前記キャップを離そうとして、前記検出手段により前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことが検出されない場合に、前記キャップ移動手段を駆動させながら前記キャリッジを移動させるよう制御する制御手段と、
前記制御手段の制御によって、前記検出手段が前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことを検出した場合に、前記キャリッジの移動を強制的に停止する停止手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記記録ヘッドが前記キャップによりキャップされた状態からの前記キャップの移動量を計測する計測手段と、
前記キャップの移動量が予め定められた一定値以上になったことを検出する移動量の検出手段と、
を備え、
前記移動量の検出手段が前記キャップの移動量が前記予め定められた一定値以上になったことを検出した場合に、前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことを検出することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記キャップ移動手段は、エンコーダが設けられたキャップモータであり、
前記計測手段は、前記エンコーダによって計測された前記キャップモータの回転量に基づいて前記キャップの移動量を計測することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記キャップ移動手段は、キャップモータであり、
前記検出手段は、前記キャップモータに流れる電流が予め定められた一定の基準以上に低下した場合に、前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことを検出することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記記録ヘッドから前記キャップが離れると状態が変化するセンサであることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
インクをノズルから吐出する記録ヘッドを走査するキャリッジと、前記ノズルの形成面をキャップするキャップと、前記キャップを移動させるよう駆動するキャップ移動手段とを備えた記録装置の制御方法であって、
前記キャップ移動手段を駆動させて前記記録ヘッドから前記キャップを離そうとして、前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことを検出する検出手段により前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことが検出されない場合に、前記キャップ移動手段を駆動させながら前記キャリッジを移動させるよう制御する制御工程と、
前記制御工程の制御によって、前記検出手段が前記記録ヘッドから前記キャップが離れたことを検出した場合に、前記キャリッジの移動を強制的に停止する停止工程と、
を有することを特徴とする記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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