説明

記録装置

【課題】上流側のヘッド列による記録が実行された段階で、被記録材がインクで塗れた部分と塗れていない部分とが混在する状態となっても、下流側のヘッド列で残りの記録を実行する際に、被記録材とヘッド面とのペーパーギャップにバラツキが発生し難い記録装置を提供すること。
【解決手段】複数の記録ヘッドが被記録材の幅方向に所定ピッチで配列されているヘッド列を前記被記録材の送り方向に前記記録ヘッドの配列位相をずらして複数組配列して成るラインヘッドと、前記ラインヘッドに対して所定のギャップを隔てて対向配置されているプラテンと、前記被記録材を前記プラテン上に吸着するために該プラテンに設けられる複数の吸着部とを備え、前記吸着部は、前記ヘッド列が作るラインに沿う位置であり、前記ラインヘッドの前記幅方向における記録可能領域内の位置であり、更に前記各記録ヘッドの側傍の位置に対応するプラテン上の位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記録ヘッドが被記録材の幅方向に所定ピッチで配列されているヘッド列を、前記被記録材の送り方向に前記記録ヘッドの配列位相をずらして複数組配列して成るラインヘッドと、前記ラインヘッドに対して所定のギャップを隔てて対向配置されているプラテンと、前記被記録材を前記プラテン上に吸着するために該プラテンに設けられる複数の吸着部とを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、記録装置の一例であるインクジェット式のラインプリンタを例に採って説明する。ラインプリンタには、被記録材の幅方向に複数の記録ヘッドが配列された構造のインヘッドが搭載されているものがある。特に工業用のインクジェット式のラインプリンタになると数十個にも及ぶ記録ヘッドが設けられており、これらの記録ヘッドが被記録材の幅方向に所定ピッチで配列されてヘッド列を構成し、更にこのヘッド列を被記録材の送り方向に複数組配列することで一つのラインヘッドが構成されている。
【0003】
前記ラインヘッドの下方には、所定のギャップを隔てて被記録材の下面を支えて該被記録材の搬送を案内するプラテンと、記録実行停止時やヘッド回復処理時等において各記録ヘッドのノズル開口面を被覆するキャップ部を備えたキャッピング装置等が設けられている。
【0004】
一方、シリアルプリンタには、キャリッジによって被記録材の幅方向に往復移動可能な可動式の記録ヘッドが搭載されている。該記録ヘッドの下方の記録実行領域には、所定のギャップを隔てて被記録材の下面を支えて該被記録材の送りを案内するプラテンが設けられている。該記録ヘッドの下方の記録実行領域外となるホームポジション側の領域には、記録実行停止時やヘッド回復処理時等において、記録ヘッドのノズル開口面であるヘッド面を被覆するキャップ部を備えたキャッピング装置等が設けられている。また、前記シリアルプリンタの中には、下記の特許文献1に示すように多数の吸引口が整列配置されたプラテンを備えるものがあり、プラテン上を送られる被記録材の浮きを前記吸引口の部分で吸着することによって防止できるようにしている。
【特許文献1】特開2003−246524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、複数個の記録ヘッドによって一つのヘッド列が構成され、複数組の前記ヘッド列によって一つのラインヘッドが構成される前記ラインプリンタの場合には、先ず上流側のヘッド列で幅方向において所定ピッチ毎に部分的な記録が実行され、続く下流側のヘッド列で残りの部分に記録が実行されて幅方向の記録が完成する。そのため、上流側のヘッド列による記録が実行された段階では、被記録材はインクで塗れた部分と塗れていない部分とが幅方向に交互に存在する状態となる。従って、インクで塗れて膨潤する部分と、乾いたままの部分とが混在することになり、下流側のヘッド列まで送られて前記残りの記録が実行される際に、被記録材とヘッド面との距離(ペーパーギャップ)に、バラツキが発生し易い問題があった。
【0006】
前記プラテンに前記吸引口を整列配置し、この吸引口で被記録材をプラテン上に吸引吸着することが考えられるが、そうした場合でも、インクで塗れた部分と塗れていない部分とでは吸引による吸着力に差が出る。従って、下流側のヘッド列によって前記残りの記録が実行される際には、同様に前記ペーパーギャップがバラツキ易い問題があった。
【0007】
また、ラインプリンタの場合、シリアルプリンタと違って各記録ヘッドの位置が固定であるため、前記キャッピング装置は各記録ヘッドと対向する位置にそれぞれ配列されることになる。そのため、前記プラテンの全領域に前記吸引口を配設することができない事情もある。
【0008】
本発明の課題は、上流側のヘッド列による記録が実行された段階で、被記録材がインクで塗れた部分と塗れていない部分とが混在する状態となっても、下流側のヘッド列で残りの記録を実行する際に、被記録材とヘッド面との距離(ペーパーギャップ)にバラツキが発生し難い、すなわち、上流側のヘッド列と下流側のヘッド列で前記ペーパーギャップをほぼ同じにすることができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための本発明の第1の態様に係る記録装置は、複数の記録ヘッドが被記録材の幅方向に所定ピッチで配列されているヘッド列を前記被記録材の送り方向に前記記録ヘッドの配列位相をずらして複数組配列して成るラインヘッドと、前記ラインヘッドに対して所定のギャップを隔てて対向配置されているプラテンと、前記被記録材を前記プラテン上に吸着するために該プラテンに設けられる複数の吸着部とを備え、前記吸着部は、前記ヘッド列が作るラインに沿う位置であり、前記ラインヘッドの前記幅方向における記録可能領域内の位置であり、更に前記各記録ヘッドの側傍の位置に対応するプラテン上の位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
すなわち、本発明では、ラインヘッドは複数の記録ヘッドが被記録材の幅方向に所定ピッチで配列されているヘッド列を前記被記録材の送り方向に前記記録ヘッドの配列位相をずらして複数組配列して成り、更に吸着部が前記ラインヘッドの前記記録可能領域内の位置であって、前記各記録ヘッドの側傍の位置に対応するプラテン上の位置に設けられていることにより、当該吸着部もまた同様に各ヘッド列毎に配列位相がずれて配列されていることが特徴である。この特徴により以下の作用効果が得られる。
【0011】
本態様によれば、上流側のヘッド列による記録が実行された段階で、被記録材がインクで塗れた部分と塗れていない部分とが混在する状態になるが、その際、吸着部による被記録材に対する吸引作用は、記録ヘッドの前記側傍の部分では行われるが、記録ヘッドが対向する部分では被記録材は吸引力を受けないフリーな状態である。そのため、インクに塗れた部分はフリー状態で膨潤することができ、一方インクで塗れていない部分は吸着部で吸引拘束される。その結果、各吸着部のピッチに対応する規則性をもってコックリングが形成される。
【0012】
続いて、被記録材が下流側のヘッド列まで送られると、前記各記録ヘッド及び各吸着部の配列位相のずれによって、前記吸着部の吸引力を受ける位置と吸引力を受けないフリーの位置とが前記位相のずれ分だけ移動することになる。すなわち、上流側のヘッド列に対向する位置と下流側のヘッド列に対向する位置とで、吸着部による被記録材の吸引吸着位置を、前記位相のずれ分だけ異ならせて上流側から下流側に被記録材の受け渡しを行うことができる。その結果、コックリングの位相(山と谷のサイクル)は前記吸着部の位相のずれ分、ずれるが、コックリングの規則性は維持される。
【0013】
従って、上流側のヘッド列による記録が実行された段階で、被記録材がインクで塗れた部分と塗れていない部分とが混在する状態となっても、下流側のヘッド列で残りの記録を実行する際に、被記録材とヘッド面との距離(ペーパーギャップ)に、バラツキが発生し難くく、上流側のヘッド列と下流側のヘッド列で前記ペーパーギャップをほぼ同じにして記録を実行することができる。これにより、各ヘッド列の各記録ヘッドで記録した箇所の画質にムラが発生しないようにすることができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る記録装置において、前記ラインヘッドを成す前記記録ヘッドは千鳥配置されており、前記吸着部は前記記録ヘッドと逆配置の千鳥配置で設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
本態様によれば、被記録材の幅方向に現れるコックリングの山と谷が上流側のヘッド列に対向する位置と下流側のヘッド列に対向する位置とで前記吸着部の千鳥配置構造に基づく半ピッチ異ならせて上流側から下流側に被記録材の受け渡しを行うことができる。即ち、上流側及び下流側の各ヘッド列の各記録ヘッドによる記録実行時の前記ペーパーギャップが前記コックリンの規則性が維持されることで、ほぼ一定となり、各ヘッド列の各記録ヘッドで記録した箇所の画質にムラが発生しないようにすることができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、前記第1の態様または第2の態様に係る記録装置において、前記プラテンには前記記録ヘッドと対向する位置に、該記録ヘッドのヘッド面を被覆するためのキャップ部の出入りを許容するキャップ部用開口が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
本態様によれば、ラインヘッドに対するキャッピング動作が可能になり、画像形成停止時や記録ヘッドの回復処理時に行う記録ヘッドのノズル開口のクリーニングや目詰まりの除去等の作業が可能になる。
【0018】
本発明の第4の態様は、前記第1の態様から第3の態様のいずれか一つの記録装置において、前記複数組配列されたヘッド列間のスペースに設けられ、前記プラテン上の被記録材をニップして搬送するための中間ローラと、前記プラテンの、前記中間ローラと対応する位置に設けられた中間ローラ用開口とを備えていることを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、中間ローラの存在によって各ヘッド列間のスペースにおいて生ずる被記録材の浮き上りを該中間ローラのニップによって防止できるためプラテン上を搬送される被記録材の姿勢をプラテン上のすべての範囲に亘って安定させることができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、前記第4の態様の記録装置において、前記中間ローラは、前記被記録材の送り方向における下流側に位置する前記複数の各吸着部に対応する位置に配設されていることを特徴とするものである。
【0021】
本態様によれば、前記中間ローラは、前記被記録材の送り方向における下流側に位置する前記複数の各吸着部に対応する位置に配設されているので、下流側の吸着部による吸引吸着を確実に行わせて、コックリングの位相をずらしつつ、その規則性を維持することができる。
【0022】
本発明の第6の態様は、前記第1の態様から第5の態様のいずれか一つの記録装置において、前記吸着部は、被記録材の送り方向に延びるリブと、該リブの両側に設けられる凹陥部及びその下方の薄肉部と、該凹陥部及び薄肉部の外方に設けられる厚肉部と、前記薄肉部及び前記厚肉部に設けられる複数の吸引孔とを備えており、前記リブと前記厚肉部の上面は、前記プラテンの他の部位の上面と面一に形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
本態様によれば、薄肉部と厚肉部に設けられる複数の吸引孔と、リブの両側に設けられる凹陥部の存在によってプラテンに対する被記録材の確実な吸着が図れ、被記録材の浮き上りを防止することができる。また、被記録材の下面はリブと厚肉部の上面に密着する面接触での吸着となるため搬送途中の被記録材の傾き(スキュー)や接地面の滑りによって発生する送り量のロスが生じない。またリブと厚肉部の上面はプラテンの他の部位の上面と面一になっており、吸引口と凹陥部を設けることで被記録材とプラテンとの接触面積が小さくなって被記録材の搬送負荷が軽減されるから被記録材の円滑な安定した搬送も実現される。
【0024】
本発明の第7の態様は、被記録材の幅方向に沿ってライン配列をなす記録ヘッドからなる第1のヘッド列と、前記第1のヘッド列に対して千鳥配列をなす記録ヘッドからなる第2のヘッド列と、前記第1および第2の記録ヘッド群に対向して配置されたプラテンであって、被記録材の幅方向に沿ってライン配列をなす吸着部からなる第1の吸着部列と、前記第1の吸着部列に対して千鳥配列をなす吸着部からなる第2の吸着部列と、を有するプラテンと、を備え、第1の吸着部列における少なくとも一の前記吸着部は、前記第1のヘッド列の記録ヘッド間のスペースに対向して設けられており、第2の吸着部列における少なくとも一の前記吸着部は、前記第2のヘッド列の記録ヘッド間のスペースに対向して設けられていることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本願発明に係る記録装置について説明する。最初に本願発明の記録装置を実施するための最良の形態として複数の記録ヘッド3が被記録材(以下用紙ともいう)Pの幅方向Bに所定ピッチaで配列されているヘッド列5を用紙Pの送り方向Aに位相をずらして複数組配列したラインヘッド7を備えたインクジェットプリンタ100を採り上げて、その全体構成の概略を簡単に説明する。
【0026】
図1はインクジェットプリンタの内部構造の概略を示す側断面図、図2はインクジェットプリンタの内部構造の概略を示す平面図、また図3は記録ヘッドの配列とノズル開口の配置を示す平面図である。インクジェットプリンタ100には、用紙Pを保持、搬送する搬送系の装置9と、該搬送系の装置9によって保持、搬送された用紙Pの被記録面に対して記録を実行して画像を形成する記録実行系の装置11とが設けられている。搬送系の装置9は、給送部13、搬送部15及び排出部17とに分類され、給送部13では給送ユニット19によって給送用カセット21内に積畳状態でセットされている用紙Pが最上位の用紙Pから順番に1枚ずつ繰り出されるようになっている。
【0027】
給送部13から繰り出された用紙Pは、搬送部15に至り、二組のニップローラによって構成されている補助ローラ23、25を経て、同じく一組のニップローラによって構成されている搬送用ローラ27に導かれる。そして、搬送用ローラ27からの搬送力を受けて用紙Pは記録ポジション29に供給され、被記録材の搬送案内装置1によって下面が支えられた状態で下流に向けて案内され、上方から前記記録実行系の装置11の主要な構成部材である記録ヘッド3のノズル開口面4から各色のインクが吐出されて所望の画像が形成される。
【0028】
また、画像が形成された用紙Pは排出部17に至り、駆動ローラ71、従動ローラ73及びテンションローラ75間にベルト77が巻回されたベルト搬送ユニット79によって外部に排出される。尚、図1中、符号81で示す部材は静電吸着機構であり、ベルト搬送ユニット79に供給された用紙Pは、前記静電吸着機構81によって発生された静電気によってベルト77の表面に吸着された状態で搬送される。
【0029】
また、図示のインクジェットプリンタ100には、記録実行系の装置11としてラインヘッド7が設けられており、該ラインヘッド7には上流位置Cに3つの記録ヘッド3が配置されてヘッド列5Aが形成され、距離L下流に移動した下流位置Dには4つの記録ヘッド3が配置されてヘッド列5Bが形成されている。尚、ヘッド列5Aとヘッド列5Bは、共にピッチaの間隔で記録ヘッド3が配置されている。更に、ヘッド列5Aとヘッド列5Bでは、半ピッチa/2だけ位相をずらした状態で記録ヘッド3が配列されている。また、各記録ヘッド3には、図3に示すように、一例として用紙Pの幅方向Bに8個、用紙Pの送り方向Aに4列、計32個のノズル開口40Y、40M、40C、40Kが設けられており、用紙Pの送り方向Aの上流側の列から順番に「ブラック」のインクを吐出するノズル開口40K、「シアン」のインクを吐出するノズル開口40C、「マゼンタ」のインクを吐出するノズル開口40M、そして「イエロー」のインクを吐出するノズル開口40Yの各列になるように一例として配列されている。また、各記録ヘッド3における用紙Pの幅方向Bの端部に位置するノズル開口40は、ヘッド列5Aとヘッド列5Bとで互いにオーバーラップするような配置で一例として設けられている。
【0030】
[実施例]
次に、本発明の実施例について図面に基づいて具体的に説明する。
図4は本発明の記録装置の要部を示す平面図と被記録材のコックリングの様子を併せ示す正面図、図5はプラテンの吸着部に接続されるダクトと負圧室の構造を示す斜視図である。また図6は図4中のA−A断面図、図7は図6中の一部の吸着部を拡大して示す断面図である。
【0031】
本実施例に係る記録装置は、前記ラインヘッド7の全体のサイズとほぼ同サイズのプラテン37を備えている。該プラテン37には、前記ヘッド列5A、5Bと対向する位置であって、前記記録ヘッド3の存しない記録ヘッド3の側傍位置39と対向する位置に、吸着部42、43が複数組(本実施例では7組)配列されている。具体的には、図4に示すように、プラテン37の上流位置Cに4組の吸着部42a、42b、42c、42dが前記記録ヘッド3と同じピッチaの間隔で配列されており、プラテン37の下流位置Dに3組の吸着部43a、43b、43cが同じくピッチaの間隔で配列されている。
【0032】
そして、前記記録ヘッド3は、ヘッド列5Aとヘッド列5Bとで半ピッチa/2ずらして配列されていることに伴って千鳥配置されており、前記7組の吸着部42、43も、前記記録ヘッド3の千鳥配置に対応して該記録ヘッド3と逆配列の千鳥配置で配列されている。
【0033】
また、図7に示すように、吸着部42、43は、用紙Pの送り方向Aに延びるリブ45を中央に備え、該リブ45の左右に凹陥部47、49とを備えている。また、凹陥部47、49の下方に薄肉部51、53が備えられており、前記凹陥部47、49と薄肉部51、53の外方に厚肉部55、57が備えられている。そして、前記薄肉部51、53に対して2個ずつ吸引孔59が設けられており、前記厚肉部55、57に対して3個ずつ吸引孔59が設けられている。また、前記リブ45と厚肉部55、57の上面は、プラテン37の他の部位の上面とほぼ面一になるように形成されている。
【0034】
そして、図5、図6に示すように、7組の吸着部42、43の下方には、7本の角筒状のダクト32、33が接続されている。尚、これら7本のダクト32、33を区別する場合には、上流位置Cに配列されている4組の吸着部42a、42b、42c、42dに接続されるダクトをそれぞれ32a、32b、32c、32dとし、下流位置Dに配列されている3組の吸着部43a、43b、43cに接続されるダクトをそれぞれ33a、33b、33cとする。また、前記7本のダクト32、33の下端の開口部は、矩形平板状の中空の負圧室34に接続されており、該負圧室34には負圧室34内の空気Gを外部に排気することで、負圧室34及び前記ダクト32、33の雰囲気を負圧にする吸引ファン35が接続されている。
【0035】
また、前記プラテン37には、前記7つの記録ヘッド3と対向する位置に同じく7つのキャップ部用開口61が設けられている。該キャップ部用開口61は、記録ヘッド3のノズル開口面4を非記録時において被覆するためのキャップ部63の出入りを許容する開口になっており、前記記録ヘッド3より一回り大きな矩形状の角穴によって構成されている。尚、キャップ部63は、キャッピング装置の構成部材であり、図示しない駆動機構からの駆動力を受けて所定ストローク上下動できるようになっている。また、前記7つの記録ヘッド3、キャップ部用開口61及びキャップ部63を区別する場合には、上流位置Cに存するものを記録ヘッド3a、3b、3c、キャップ部用開口61a、61b、61c及びキャップ部63a、63b、63cとし、下流位置Dに存するものを記録ヘッド3d、3e、3f、3g、キャップ部用開口61d、61e、61f、61g及びキャップ部63d、63e、63f、63gとして識別する。
【0036】
また、ヘッド列5A、5B間のスペースSには、前記プラテン37上の用紙Pをニップして搬送するための一対のニップローラによって構成されている5組の中間ローラ65a、65b、65c、65d、65eが設けられている。中間ローラは、前記被記録材Pの送り方向における下流側に位置する前記複数の各吸着部42a,43b,43cに対応する位置に配設されている。そして、前記プラテン37には、前記5組の中間ローラ65a、65b、65c、65d、65eと対応する位置に、該中間ローラ65a、65b、65c、65d、65eとの干渉を避けるための前記中間ローラ65a、65b、65c、65d、65eより一回り大きな3つのローラ用開口67a、67b、67cと、2つのローラ用切欠き68a、68bとが設けられている。
【0037】
次に、このようにして構成される本発明の記録装置の作動態様を説明する。図1に示す搬送用ローラ27によって記録ポジション29に導かれた用紙Pは、プラテン37の上面に当接し、プラテン37上を滑るようにして上流位置Cに達する。上流位置Cに達すると吸引ファン35によって生起された吸引風によって負圧室34とダクト32、33内の雰囲気が負圧になる。吸引孔59を介してプラテン37上に位置している用紙Pは、吸着部42においてプラテン37の上面に密着し、図4中、右端に示すピッチaの規則的なコックリング状態が形成される。一方、キャップ部用開口61が形成されている部位では、記録ヘッド3側に用紙Pは幾分浮上がった状態になるが、その浮上り量Hは極僅かであり、ヘッド擦れや画像品質の低下等の問題は生じない。
【0038】
用紙Pが下流側に距離L/2搬送されると、中間ローラ65によって上下から挟持されて搬送力を受けるようになる。この位置では、中間ローラ65の挟持力によって用紙Pの浮き上りが防止されている。更に、用紙Pが下流側に距離L/2搬送されると、用紙Pは下流位置Dに達する。下流位置Dに達すると吸引ファン35によって生起された吸引風によって、プラテン37上に位置している用紙Pは、吸着部43においてプラテン37の上面に密着し、図4中、左端に示すピッチaの規則的なコックリング状態が形成される。
【0039】
尚、下流位置Dでの用紙Pのコックリング状態は、前記上流位置Cでの用紙Pのコックリング状態と半ピッチa/2だけ位相がずれているから、用紙Pの送り方向Aから見た見掛け上の用紙Pの吸着部42、43の位置は、a/2ピッチとなり、吸着力が増大して用紙Pの姿勢がより安定した状態になる。また、上流位置Cと下流位置Dにおける吸着部42、43の相乗的作用によって、用紙Pの浮上り量Hも低く抑えられる。以下、用紙Pは吸着部42、43の位置を交互に変えながら、規則的なコックリング状態を維持しつつ、排出部17に向けてプラテン37上を円滑かつ安定した状態で搬送されて行く。
【0040】
[他の実施例]
本願発明に係る記録装置100は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0041】
例えば、記録装置100の給送部13の構成は、給送用カセットに限らず、傾斜姿勢で設けられる給送用トレイでもよく、給送部13と搬送用ローラ27までの距離が短い場合には補助ローラ23、25を省略することも可能である。更に、排出部17に設けたベルト搬送ユニット79に代えて一対のニップローラによって構成される排出用ローラを適用することも可能である。
【0042】
また、吸着部42、43の数と配置は、記録ヘッド3の数と配置に対応して種々変更でき、例えば記録ヘッド3が3列以上の複数列設けられている場合には、吸着部42、43も前記記録ヘッド3に対応して3列以上設けることが可能である。また、この場合には必ずしも吸着部42、43の配列が千鳥配置になるとは限らないが、ヘッド列5が少しずつ位相をずらせることによって、前記千鳥配置と同等、あるいはそれ以上の用紙Pの浮上り量Hの減少と円滑な用紙Pの搬送とが図られる。
【0043】
また、吸着部42、43において設けたリブ45、凹陥部47、49、薄肉部51、53、厚肉部55、57及び吸引孔59の数、大きさ、形状ないし配置は、前記実施例のものに限らず種々変更でき、種々の構成の吸着部42、43が採用可能である。この他、本発明の記録装置はラインプリンタに限らず、同様のラインヘッド7を備えた他の種々の記録装置100に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係り、インクジェットプリンタの内部構造の概略を示す側断面図。
【図2】同インクジェットプリンタの内部構造の概略を示す平面図。
【図3】同プリンタの記録ヘッドの配列とノズル開口の配置を示す平面図。
【図4】同プリンタの要部を示す平面図。
【図5】プラテンの吸着部に接続されるダクトと負圧室を示す斜視図。
【図6】図4中のA−A断面図。
【図7】図6中の一部の吸着部を拡大して示す断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 搬送案内装置、3 記録ヘッド、4 ノズル開口面、5 ヘッド列、7 ラインヘッド、9 搬送系の装置、11 記録実行系の装置、13 給送部、15 搬送部、17 排出部、19 給送ユニット、21 給送用カセット、23 補助ローラ、25 補助ローラ、27 搬送用ローラ、29 画像形成ポジション、32 ダクト、33 ダクト、34 負圧室、35 吸引ファン、37 プラテン、39 側傍位置、40 ノズル開口、42 吸着部、43 吸着部、45 リブ、47 凹陥部、49 凹陥部、51 薄肉部、53 薄肉部、55 厚肉部、57 厚肉部、59 吸引孔、61 キャップ部用開口、63 キャップ部、65 中間ローラ、67 ローラ用開口、68 ローラ用切欠き、71 駆動ローラ、73 従動ローラ、75 テンションローラ、77 ベルト、79 ベルト搬送ユニット、81 静電吸着機構、100 インクジェットプリンタ(記録装置)、A 送り方向、B 幅方向、P 用紙(被記録材)、a ピッチ、C 上流位置、D 下流位置、L 距離、G 空気、S スペース、H 浮上り量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録ヘッドが被記録材の幅方向に所定ピッチで配列されているヘッド列を、前記被記録材の送り方向に前記記録ヘッドの配列位相をずらして複数組配列して成るラインヘッドと、
前記ラインヘッドに対して所定のギャップを隔てて対向配置されているプラテンと、
前記被記録材を前記プラテン上に吸着するために該プラテンに設けられる複数の吸着部とを備え、
前記吸着部は、前記ヘッド列が作るラインに沿う位置であり、前記ラインヘッドの前記幅方向における記録可能領域内の位置であり、更に前記各記録ヘッドの側傍の位置に対応するプラテン上の位置に設けられていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、
前記ラインヘッドを成す前記記録ヘッドは千鳥配置されており、前記吸着部は前記記録ヘッドと逆配置の千鳥配置で設けられていることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、
前記プラテンには前記記録ヘッドと対向する位置に、該記録ヘッドのヘッド面を被覆するためのキャップ部の出入りを許容するキャップ部用開口が設けられていることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記複数組配列されたヘッド列間のスペースに設けられ、前記プラテン上の被記録材をニップして搬送するための中間ローラと、
前記プラテンの、前記中間ローラと対応する位置に設けられた中間ローラ用開口と、を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記録装置において、
前記中間ローラは、前記被記録材の送り方向における下流側に位置する前記複数の各吸着部に対応する位置に配設されていることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記吸着部は、
被記録材の送り方向に延びるリブと、
該リブの両側に設けられる凹陥部及びその下方の薄肉部と、
該凹陥部及び薄肉部の外方に設けられる厚肉部と、
前記薄肉部及び前記厚肉部に設けられる複数の吸引孔とを備えており、
前記リブと前記厚肉部の上面は、前記プラテンの他の部位の上面と面一に形成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
被記録材の幅方向に沿ってライン配列をなす記録ヘッドからなる第1のヘッド列と、
前記第1のヘッド列に対して千鳥配列をなす記録ヘッドからなる第2のヘッド列と、
前記第1および第2の記録ヘッド群に対向して配置されたプラテンであって、
被記録材の幅方向に沿ってライン配列をなす吸着部からなる第1の吸着部列と、
前記第1の吸着部列に対して千鳥配列をなす吸着部からなる第2の吸着部列と、
を有するプラテンと、を備え、
第1の吸着部列における少なくとも一の前記吸着部は、前記第1のヘッド列の記録ヘッド間のスペースに対向して設けられており、
第2の吸着部列における少なくとも一の前記吸着部は、前記第2のヘッド列の記録ヘッド間のスペースに対向して設けられていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−137091(P2009−137091A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314231(P2007−314231)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】