説明

記録装置

【課題】振動源であるファンによる振動が記録画像に与える影響を小さく抑えること。
【解決手段】記録装置100は、吸引ファン12を有している。記録装置100は、吸引ファン12の回転数が高いときには、吸引ファン12の回転数が低いときよりもキャリッジ3の移動速度が大きくなるようにキャリッジ3の速度を調整している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体にインク滴を吐出して画像を形成するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、記録媒体にカールが生じないように、記録装置における記録媒体を支持するプラテンに、記録媒体を吸着するための吸着手段を設けたものがある。特許文献1には、プラテンに記録媒体を吸引するための孔が形成され、プラテン下部に記録媒体を吸引するためのファンが配置されたインクジェット記録装置が開示されている。特許文献1では、記録媒体の吸引状態が検出され、吸引状態が予め設定されている設定値となるように吸引条件が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−096511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記録媒体をプラテンに吸着させるためのファンを回転させると、ファンが振動源となって記録装置に振動が伝わり、この振動によって記録画像の品質を低下させることがある。殊に、ファンが設けられたプラテンは記録位置の近傍なので、ファンの振動が記録に与える影響は大きい。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑み、振動源であるファンによる振動が記録画像に与える影響を小さく抑えることができる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、記録ヘッドを搭載して移動するキャリッジと、回転駆動を行うことが可能なファンと、前記ファンの回転数に応じて前記キャリッジの移動速度を制御する制御手段とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、記録装置に設けられたファンを駆動させることで記録の際に振動が生じたとしても、振動による記録画像への影響が小さく抑えられるので、記録により得られる画像の品質が高く維持される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観について示した図である。
【図2】インクジェット記録装置の制御系のブロック図である。
【図3】記録画像への色ムラの表れ方について説明するために模式的に示した説明図である。
【図4】インク滴の着弾位置のずれ量と、色ムラピッチとの間の関係において、色ムラが視覚的に認識される認識範囲について示したグラフである。
【図5】吸引ファンの動作モード、キャリッジの速度モード及びキャリッジのパス数を設定する際のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置について、図を参照して説明する。図1(a)、(b)及び(c)に、本発明のインクジェット記録装置を模式的に示した構成図を示す。図1(a)は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置100を側面から見た模式的な側面図であり、図1(b)は、正面から見た模式的な正面図であり、図1(c)は、上面から見た模式的な平面図である。本実施形態のインクジェット記録装置100においては、記録媒体1上に液体としてのインクを吐出する記録ヘッド2がキャリッジ3に搭載可能とされている。そして、キャリッジ3を装置本体に設置されたガイドレール4に沿って往復動作させるために、ベルト駆動装置が使用されている。このベルト駆動装置は、主走査モータ5と、主走査モータ5に直結された駆動プーリ6と、駆動プーリ6の反対側に配置されたアイドラプーリ7を具備している。また、ベルト駆動装置は、これらのプーリの間に張架されかつキャリッジに連結されたベルト8(例えばタイミングベルト)を具備している。ベルト駆動装置は、主走査モータ5の正逆回転を制御することによりキャリッジ3の往復移動(矢印x方向)を制御する。このように記録ヘッド2が記録媒体の搬送方向に交差する主走査方向に走査を行いながら、記録ヘッド2が記録媒体1に画像を形成するように構成されている。それとともに、順次、記録媒体1を搬送ローラ対9a、9bで構成された搬送手段によって矢印方向に搬送されることで記録を行うようになっている。
【0010】
本実施形態の記録ヘッド2は、インクジェット方式で記録を行なうものである。記録ヘッド2は、インクを吐出させる電気熱変換素子が設けられた素子基板と、この素子基板に接合されるオリフィスプレートとを備えている。オリフィスプレートは、インクの液滴を吐出する複数の吐出口及び吐出口の形成された吐出口形成面を有している。また、オリフィスプレートが素子基板に接合されることによって、吐出口が連通するエネルギ作用室としての発泡室およびこれに連通するインク流路等が形成される。なお、これら吐出口、エネルギ作用室及びインク流路を総称してノズルという。発泡室の内部空間を画成する壁のうち素子基板の内部には、記録素子としての電気熱変換素子が配置されている。電気熱変換素子は、記録データや制御データに基づいて供給される電気エネルギを熱エネルギに変換し、液路内に供給されたインクに熱を加える。そして、このとき発生した熱によって発泡室内部で気泡を発生させ、その発泡圧によって吐出口からインクを吐出する。なお、本実施形態では、記録素子として電気熱変換素子が用いられているが、本発明はこれに限定されず、電気信号が印加されることで変形し記録ヘッド内部のインクを吐出口から押し出す圧電素子が記録素子として用いられても良い。また、インクを吐出口から吐出することができるのであれば、ピエゾ素子を用いたもの、静電素子を用いたもの、MEMS素子を用いたもの、その他の形式の記録素子が用いられても良い。さらに、記録ヘッド2はインクジェット方式に限らず、サーマルプリント方式等、ドットインパクト方式、電子写真方式など他のプリント方式であってもよい。いずれのプリント方式であっても、ファンによる振動で画像記録に影響を受け得るものであれば本発明は適用可能である。
【0011】
図2は、本実施形態におけるインクジェット記録装置100の制御系の概略構成を示すブロック図である。図2において、記録装置100の各部の動作は、ROM101内に格納された制御プログラムおよびRAM102に格納された種々のデータなどに基づいてCPU120により制御される。すなわち、CPU120には、記録ヘッド2に設けられた電気熱変換素子を駆動するヘッド駆動回路103、主走査モータ104を駆動する主走査モータ駆動回路124、搬送モータ106を駆動する搬送モータ駆動回路125などが接続されている。また、後述する吸引ファン12の駆動を行うための駆動源である吸引ファン駆動用モータ126がCPU120に接続されている。CPU120が吸引ファン駆動用モータ126に供給される電力を調節して、吸引ファン12の回転数を制御する回転数制御手段として機能している。また、CPU120には、インクジェット記録装置100の動作状態を表示する表示部52および記録媒体を供給するASF114などが接続されている。
【0012】
記録ヘッド2と対向する位置には搬送される記録媒体1を支持する支持面としてのプラテン10が設けられている。このプラテン10には、記録媒体1が通過する部分に対応する記録媒体1の幅程度の領域に複数の吸気孔10aが設けられており、かつプラテン10の下方には記録媒体吸引手段が設けられている。ここでは、記録媒体吸引手段として、プラテン10の下側に負圧室11が形成され、この負圧室11の内部に、回転駆動を行うことが可能なファンとしての吸引ファン12が接続されている。このため、吸引ファン12を駆動させると、負圧室11内部の空気が排気されることで負圧室11内に負圧が発生し、吸気孔10aを介して搬送される記録媒体をプラテン10に吸着する。これによって、記録媒体1が記録領域において、記録媒体にカールが発生すること等の要因によるプラテン10からの浮き上がりが抑えられながら搬送される。本実施形態では、吸引ファン12は、記録媒体を記録ヘッド2に対向した記録位置に吸着させるための吸着用ファンである。このように、記録媒体1がプラテン10に吸着されて記録媒体1が平滑に保たれた状態で記録媒体1の搬送が行われるので、記録ヘッド2と記録媒体1との距離が一定に維持される。
【0013】
ここで、記録媒体のカールは、記録媒体の端部において生じ易いことが分かっている。このため、本実施形態の記録装置100では、記録媒体1の端部付近の領域を記録する際には、吸引ファン12の回転数が比較的高く設定されて吸引力が強められる。また、記録媒体における端部付近以外の領域を記録する際には、吸引ファンの回転数が比較的低く設定される。これにより、記録媒体の端部の浮き上がりが確実に抑えられると共に、過度の吸引ファン12の駆動が抑えられて効率的に記録媒体のプラテンへの吸着が行われる。
【0014】
ところが、記録媒体の端部付近の領域に記録を行う場合に、吸引ファン12の回転数を比較的高く設定するので、この吸引ファン12の回転に伴い記録装置100に比較的大きな振動が発生する可能性がある。そして、その振動が記録ヘッド2に伝達される可能性がある。この吸引ファン12の振動が記録ヘッド2に伝達された場合、これによって吐出インク滴の記録媒体への着弾ずれが生じ、記録画像に色ムラが発生して記録画像の品質を低下させてしまう可能性がある。
【0015】
このときの記録画像に表れる色ムラの表れ方について図3に示す。図3に示されるように、記録画像における色ムラは、式
(色ムラピッチP)=(キャリッジ速度V)÷(振動周波数F)
で表される一定間隔のピッチPを有する色ムラとして記録画像に表れる。
【0016】
そして、吸引ファンの回転によって発生する振動による色ムラについては、同じ着弾ずれ量でも色ムラピッチが大きいほど、視覚的に認識され難いことが分かっている。このときの吐出されたインク滴の着弾位置のずれ量と、色ムラピッチとの間の関係において、色ムラが視覚的に認識される認識範囲について示したグラフを図4に示す。図4に示されるように、色ムラピッチがある程度大きくなると、色ムラが視覚的に認識できる範囲から外れる。従って、装置の振動による色ムラを視覚的に認識できなくして目立たなくするために、同じ着弾ずれ量でも色ムラピッチを大きくすることで、色ムラを視覚的に認識できる範囲から外すことができる。つまり、上述の式から(キャリッジ速度V)を大きくすることで(色ムラピッチP)を大きくし、色ムラとして視覚認識され難くすることができる。このようにして、記録によって得られた画像において色ムラを目立たなくし、記録画像の品質が低下することを抑えることができる。
【0017】
図5は、本実施形態の記録装置における記録時の吸引ファンの動作モード、キャリッジの速度モード及びキャリッジのパス数を設定する設定フローチャートである。本実施形態のインクジェット記録装置100は、記録モードとして、イメージ高画質モード(以下、SHQモードと称する)と、線画画質モード(以下、HQモードと称する)とを有している。SHQモードは、写真といった高精細な画像を得たい場合に設定される記録モードである。また、HQモードは、CAD図面など線画画質品位を得たい場合の記録モードである。さらに、インクジェット記録装置100は、これら2つの記録モードよりも、記録状態を多少犠牲にしても高速で記録画像を得たい場合の記録モードとして高速モード(以下、HSモードと称する)を具備している。
【0018】
ユーザーはまず記録時にステップS1において、これらのSHQ、HQ、HSの記録モードのうち1つを選択して記録指令を送る。次にステップS2で記録装置が記録モードを判断し、ステップS3で、選択された記録モードがセットされる。次に記録が開始されると(ステップS4)、それぞれの記録モードに応じて吸引ファン回転数、キャリッジ速度、キャリッジ画像形成パス数を以下に説明するように設定されて記録動作を行う。
【0019】
以下のフローについて、まずSHQモードについて説明する。S4で記録が開始されて記録が行われ、ステップS5にて記録媒体の端部領域の記録にさしかかったか否かを判別する。カールが生じ易い記録媒体の端部領域の記録を行う際には、記録媒体の浮き上がりの発生を抑えるために吸引ファン12の回転数をより高く設定する。例えば、吸引ファン12を駆動する吸引ファン駆動用モータ126への負荷(以下、吸引ファン駆動用モータPWMdutyという)を100%に設定する。つまり、吸引ファン12の動作モードを、回転数の高い動作モードに設定する。このとき、吸引ファン12の回転数が高くなることで、吸引ファン12で発生する振動が大きくなり、この振動によって記録画像に色ムラが生じる可能性がある。そこで、このときの色ムラにおける色ムラピッチを大きくして記録画像において色ムラを視覚的に認識し難いようにするために、記録ヘッド2の走査における移動速度を速くする。具体的には、キャリッジ速度を通常のイメージ高画質モードで使用される速度(例えば25inch/sといった“低速”)より高い速度である“標準”もしくは“高速”に(例えば、40inch/sといった“高速”に)キャリッジの速度モードを設定する。つまり、吸引ファン12の回転数が高い動作モードが選択されたときには、吸引ファン12の回転数が低い動作モードが選択されたときよりもキャリッジ3の移動速度が大きい速度モードを選択するように速度モードの選択を行う。
【0020】
しかしながら、キャリッジ速度を高速にして記録ヘッドの移動速度を高速にすると、吐出するインク滴の量をその分間引いて記録するため、その記録濃度が薄くなる。そこで、本実施形態では、キャリッジ3の画像形成パス数を“非常に多い”に設定する(例えば、パス数24に設定する)ことでそれを補間する(ステップS6)。本実施形態のインクジェット記録装置100は、記録媒体の同一領域に対して複数回の記録ヘッド2の走査を行うことにより記録を行うマルチパス記録によって記録が行われる。ここでいう画像形成パス数の“非常に多い”は通常のイメージ高画質モードで使用される画像形成パス数(ここでは例えばパス数12といった“多い”という設定)よりも多い、ということを示すものである。このように、記録ヘッド2の移動速度が大きいように記録ヘッド2の走査の速度が設定されたときには、記録ヘッド2の移動速度が遅いときよりも、記録媒体の同一領域への走査を行うパス数が多くなるようにパス数を調整する。そして、端部領域以外の領域への記録のときは、通常設定によって記録が行われる(ステップS7)。通常設定は、“ファン回転数:標準(例えば、吸引ファン駆動用モータPWMduty60%)、キャリッジ速度:低速(例えば、25inch/s)、キャリッジ画像形成パス数:多い(例えばパス数12)”である。こうすることにより、記録媒体の端部付近の領域へ記録を行う際に記録ヘッド2の走査の移動速度を比較的速く設定したとしても、多くのパス数の記録を行うことにより、記録画像の濃度が薄くなることが抑えられる。これにより、記録ヘッド2の走査の移動速度が比較的速く設定されることによる記録画像の品質が低下することが抑えられる。
【0021】
このように、吸引ファン12による振動の振動数が異なる複数の動作モードから、求められる吸着力に応じて適した振動数の吸引ファン12における動作モードが設定される。そして、本実施形態では、吸引ファン12の回転数が高いときには、吸引ファン12の回転数が低いときよりもキャリッジ3の移動速度が大きくなるように記録ヘッド2の走査の速度が制御されている。つまり、吸引ファン12の回転数が高い動作モードが選択されたときには、吸引ファン12の回転数が低い動作モードが選択されたときよりもキャリッジ3の移動速度が大きい速度モードを選択するように速度モードの選択が行われる。このときには、CPU120が、主走査モータ駆動回路124を介して主走査モータ104を制御する制御手段として機能する。また、吸引ファン12の回転数が高く、記録ヘッド2の移動速度が比較的速く設定されているときには、記録ヘッド2の移動速度が遅いときよりも、記録媒体の同一領域への走査を行うパス数が多くなるようにパス数が制御されている。このときには、CPU120が、記録の際に記録媒体の同一領域への走査を行うパス数が多くなるようにパス数を制御するパス数制御手段として機能している。
【0022】
次に、線画画質モード(HQモード)の場合について説明する、HQモードでは、吸引ファン振動による記録画像の品質が低下する場合として、主に罫線ずれの発生が問題として挙げられる。一般に、罫線ずれは画像形成パス数が多いほど線密度が大きくなり、ずれ(空白)としての視覚認識がされ難くなる。そのため、線画画質モードとしてのHQモードでは、高速モードとしてのHSモードよりも画像形成パス数を比較的多く設定する。
【0023】
HQモードでの制御フローにおいて、ステップS4にて記録が行われ、ステップS5にて記録位置が記録媒体の端部領域にさしかかったか否かを判別する。記録媒体の端部領域付近を記録する際には、ファン12の回転数を高く設定(例えば、吸引ファン駆動用モータPWMduty100%)する。つまり、吸引ファン12の動作モードを回転数の高い動作モードに設定する。このとき、罫線ずれの発生を抑えるために、キャリッジ3の画像形成パス数を“多い”に設定(例えば12に設定)する(ステップS6)。そして、記録媒体の端部領域以外の領域への記録のときは、通常設定である“ファン回転数:標準(例えば、吸引ファン駆動用モータPWMduty60%)、キャリッジ画像形成パス数:標準(例えばパス数6)”にそれぞれ設定する(ステップS7)。ここで、線画画質モード(HQモード)では、記録画像の色ムラについてはあまり問題にならない。従って、キャリッジ速度については変えなくても良く、記録領域が記録媒体の端部付近であるかどうかに関わらず、常に“標準”として設定(例えば、33.3inch/sに設定)する。
【0024】
このように、HQモードにおいては、吸引ファン12の回転数が高いときには、吸引ファン12の回転数が低いときよりも記録媒体の同一領域への走査を行うパス数が多くなるようにキャリッジのパス数が調整されている。これにより、吸引ファン12の回転数が高くなることにより、吸引ファン12の回転によって発生する振動が増大したとしても、画像形成パス数が多くなることで罫線ずれが視覚的に認識され難くなり、結果的に罫線ずれの発生が抑えられる。HQモードでは、CPU120が、記録の際に記録媒体の同一領域への走査を行うパス数を制御するパス数制御手段として機能している。
【0025】
次に、高速モード(HSモード)の場合について説明する。HSモードは、画像品質を多少落としても高速記録が求められる場合の記録モードである。高速に記録を行うことが求められているので、キャリッジの移動速度が比較的高く設定され、記録の際に同一領域に走査を行うパス数は比較的少なく設定される。そのため、ここではファン回転数、キャリッジ速度、キャリッジ画像形成パス数は通常設定とする。本実施形態では、キャリッジ速度、キャリッジ画像形成パス数については、記録を行う領域が記録媒体の端部付近であるかどうかに関わらず常にそれぞれ“高速”(例えば、40inch/s)、“少ない”(例えばパス数1)に設定する。
【0026】
HSモードでの制御フローにおいて、ステップS4にて記録が行われ、ステップS5にて記録媒体1の端部領域記録にさしかかったか否かを判別する。記録媒体の端部領域付近を記録する際には(ステップS6)、ファン12の回転数を高く(例えば吸引ファン駆動用モータPWMduty100%に設定)する。また、記録媒体の端部付近の領域以外に記録する際には、吸引ファン12の回転数を標準(例えば、吸引ファン駆動用モータPWMduty60%)とする(ステップS7)。HSモードは、記録画像の品質を犠牲にしても高速記録を行う記録モードなので、記録ヘッドの移動速度が大きいことによる記録画像の濃度の低下に関しては、特に対策を施さなくても良い。
【0027】
以上の説明のように、吸引ファン12の回転数に対応して記録ヘッドの移動速度ないしはキャリッジ画像形成パス数を変化させることにより、要求される記録モードに適した記録画像を得ることが可能となる。
【0028】
なお、上記実施形態においては、回転駆動を行うことが可能なファンとして、記録媒体を記録位置に吸着させるための吸引ファンについて説明したが、本発明はこれに限定されない。回転駆動を行うことが可能なファンとしては、この他に例えば微小液滴の浮遊ミストを回収あるいは排出させるためのファンであっても良い。この場合、記録中に浮遊ミスト量が変化し、それに合わせてファンの回転数を変える形態のものに対しても本発明は有効である。また、電源ユニットが有するファン、記録装置の機外に排気するファン等、その他の用途に用いられる目的で記録装置に取り付けられるファンであっても良い。
【符号の説明】
【0029】
2 記録ヘッド
12 吸引ファン
100 インクジェット記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを搭載して移動するキャリッジと、
回転駆動を行うことが可能なファンと、
前記ファンの回転数に応じて前記キャリッジの移動速度を制御する制御手段と
を有していることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ファンの回転数が高いときには、前記ファンの回転数が低いときよりも前記キャリッジの移動速度が大きくなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記ファンの回転数が異なる複数の動作モードと、
前記キャリッジの移動速度が異なる複数の速度モードとを有し、
前記制御手段は、前記ファンの回転数が高い動作モードが選択されたときには、前記ファンの回転数が低い動作モードが選択されたときよりも前記キャリッジの移動速度が大きい速度モードを選択するように速度モードの選択を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
記録媒体の同一領域に対して複数回の前記記録ヘッドの走査を行うことにより記録を行うマルチパス記録によって記録が行われ、
前記ファンの回転数が高く、前記記録ヘッドの移動速度が大きいように前記記録ヘッドの走査の速度を制御されたときには、前記記録ヘッドの移動速度が遅いときよりも、記録媒体の同一領域への走査を行うパス数が多くなるようにパス数を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の記録装置。
【請求項5】
記録ヘッドを搭載して移動するキャリッジと、
回転駆動を行うことが可能なファンと、
前記ファンの回転数に応じて記録におけるパス数を制御する制御手段と
を有していることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ファンの回転数が高いときには、前記ファンの回転数が低いときよりも記録媒体の同一領域への走査を行うパス数が多くなるように制御することを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記ファンは、記録媒体を前記記録ヘッドに対向した記録位置に吸着させるための吸着用ファンであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の記録装置。
【請求項8】
前記記録ヘッドはインクジェット方式の記録ヘッドであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−104860(P2011−104860A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261909(P2009−261909)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】