説明

記録装置

【課題】 オペレータが不注意でロール紙に接触してロール紙が解ける方向に回転しようとしても、ロール紙のたるみ発生を抑えることができ、ロール紙の搬送精度を維持することができる記録装置を提供する。
【解決手段】 搬送されるロール紙111に画像を記録する記録装置160である。ロール紙スプール112からロール紙を巻き出しおよび巻き取り可能であり、巻き出しおよび巻き取りされるロール紙の制動力を可変できる制動力可変装置116(316)を有する搬送駆動手段600を備える。ロール紙の搬送・記録時と巻き取り時とでロール紙の制動力を変更するように前記制動力可変装置を制御する制御手段500を備える。ロール紙を搬送しない非動作時のロール紙の制動力が、ロール紙を搬送する搬送時のロール紙の制動力より大きくなるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙に記録を行う記録装置に関し、特にロール紙のたるみを防止するための機構を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録部を通して搬送される記録媒体に対し、画像情報に基づいて記録ヘッドにより画像を記録する記録装置として、プリンタ、ファクシミリ、複写機等の機能を有する装置が使用されている。また、記録媒体としては、所定寸法のカット紙の他に連続紙であるロール紙が使用されている。ロール紙を用いる記録装置では、巻き出されたロール紙を搬送ローラで搬送しながら、画像情報に基づいて記録ヘッドによりロール紙に記録を行う。その際、ロール紙はスプール軸に巻回された状態で、記録装置に対し回転自在に(巻き出し可能に)セットされている。
【0003】
このようなロール紙を用いる記録装置に関し、特許文献1には、スプール軸にロール紙に制動力を作用させるためのトルクリミッタを装着し、搬送されるロール紙に一定のバックテンションを付与する構成が開示されている。特許文献1では、トルクリミッタで付与されるバックテンションは一義的に決まる構成となっている。そのため、別のサイズ、あるいは種類の異なるロール紙に記録する場合、それに適した別のトルクリミッタを備えたロール紙スプールに交換する必要があり、ロール紙スプールの交換作業や保管が煩雑である。
【0004】
そこで、これに対処する技術として、特許文献2には、使用するロール紙の種類やサイズに応じて自動的に適切なバックテンション(制動力)に切り替える機構を備えたプリンタが開示されている。このプリンタでは、軽いバックテンションと重いバックテンションの切換を可能とし、通常の印刷動作では、搬送ローラとピンチローラでニップして搬送力を確保した状態で所定量を記録を行うように構成されている。その際、ロール紙にシワや斜行を発生させず、かつ搬送ローラの搬送力を阻害しない範囲で、軽いバックテンションを掛けるように制御されている。そうすることで、記録媒体にシワ、斜行、送りムラなどを生じさせることなく、記録画像の品位を維持することができる。ただし、腰が強く解けやすいロール紙に記録を行う場合、記録の途中でのプリンタの微振動や搬送動作などで徐々にロール紙が解けることがある。このような解けを防止するために、一部のロール紙に対しては、搬送精度に影響が出ない範囲で重いバックテンションを付与する設定が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−096987号公報
【特許文献2】特開2007−290866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しなしながら、軽いバックテンションおよび重いバックテンションのいずれの設定においても、その値は各種のロール紙の解け(ほどけ)に対して余裕があるものではなく、不注意でロール紙に触れると解けが発生することがあった。また、解ける方向に力が作用した腰の強いロール紙がセットされていると、時間の経過に伴い温度や湿度の変動でロール紙の伸び縮みが繰返され、ロール紙の解けが増大することがあった。この解けた状態で記録を開始すると、ロール紙の搬送に伴って徐々にほぐれ状態が解消されていく。その場合、解けた状態で記録している間は、バックテンションが掛からないため、搬送量が本来より大きくなり、画像のつなぎ目に画像無し領域(白スジ)が生じることがある。
【0007】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、オペレータが不注意でロール紙に接触してロール紙が解ける方向に回転しようとしても、ロール紙のたるみ発生を抑えることができ、ロール紙の搬送精度を維持することができる記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、搬送されるロール紙に記録ヘッドにより画像を記録する記録装置において、ロール紙スプールからロール紙を巻き出しおよび巻き取り可能であり、巻き出しおよび巻き取りされるロール紙の制動力を可変できる制動力可変装置を有する搬送駆動手段と、ロール紙の搬送・記録時と巻き取り時とでロール紙の制動力を変更するように前記制動力可変装置を制御する制御手段と、を備え、ロール紙を搬送しない非動作時のロール紙の制動力が、ロール紙を搬送する搬送時のロール紙の制動力より大きくなるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロール紙スプールの制動力を可変制御することにより、オペレータが不注意でロール紙に接触してロール紙が解ける方向に回転しようとしても、ロール紙のたるみ発生を抑えることができ、ロール紙の搬送精度を維持することができる記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態に係る記録装置の斜視図
【図2】一実施形態に係る記録装置の内部構成の斜視図
【図3】一実施形態に係る記録装置の内部構成の縦断面図
【図4】搬送モータから搬送ローラおよびロール紙スプールへの駆動経路の平面図
【図5】第1の実施形態に係る制動力可変装置の構成を示す説明図
【図6】搬送・記録するときまたはロール紙無しのときに弱い制動力を発生させる場合の図5の制動可変装置の状態を示す説明図
【図7】ロール紙に弱い制動力を付与しながら巻き取る場合の図5の制動可変装置の状態を示す説明図
【図8】搬送・記録のときまたはロール紙がセットされた状態で非動作のときに、ロール紙に強い制動力を作用させる場合の図5の制動可変装置の状態を示す説明図
【図9】ロール紙に強い制動力を付与しながら巻き取る場合の図5の制動可変装置の状態を示す説明図
【図10】図5の制動力可変装置における各アクチュエータのオンオフ状態と制動力の大きさとの関係を示す表
【図11】第2の実施形態に係る制動力可変装置の構成を示す説明図
【図12】搬送・記録するときまたはロール紙セットで非動作の状態で強い制動力を発生させる場合の図11の制動可変装置の状態を示す説明図
【図13】図11の制動力可変装置における各アクチュエータのオンオフ状態と制動力の大きさとの関係を示す表
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一または対応部分を示すものである。
〔第1の実施形態〕
図1は一実施形態に係る記録装置の斜視図である。図2は一実施形態に係る記録装置の内部構成の斜視図である。図3は一実施形態に係る記録装置の内部構成の縦断面図である。本実施形態では、記録装置が画像情報に基づいて記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置である場合を例示する。そして、本実施形態に係る記録装置は、カット紙に記録可能か否かに関わらず、少なくとも連続紙であるロール紙を用いて記録を行うものである。記録媒体としては、紙やプラスチックシートなど種々の材質のものを使用することができ、材質を限定されるものではない。
【0012】
図示の記録装置160は、ロール紙(ロール状の連続紙)に記録可能なインクジェット記録装置であり、例えばJIS規格のA1判やJIS規格のB1判といった比較的大きなサイズまで記録することができる。記録装置(その装置本体)160は、記録媒体であるロール紙111がセットされる給紙部110と、ロール紙を搬送して記録を行う搬送・記録部120と、記録されたロール紙を排出する排紙部130とを備えている。この記録装置160は、スタンド140上に着脱可能に固定されている。給紙部110は、記録装置(装置本体)160の下部手前に配されている。給紙部110の内部には、予めロール紙111が巻き出し可能にセットされたロール紙スプール112が収納されている。ロール紙スプール112は固定フランジ113と可動フランジ114とスプール軸115とで構成されている。固定フランジ113はスプール軸115の一端部に固定されており、可動フランジ114はスプール軸115に沿って位置調整可能である。ロール紙11をロール紙スプール112にセットする際、ロール紙111の紙幅に応じて可動フランジを移動させて両端部を挟み込むことにより、ロール紙の幅方向の位置決めを行う。ロール紙スプール112にセットされたロール紙111は、装置本体160に対して回転可能に軸支されるとともに、スプール軸115に連結された制動力可変装置116により巻き出し巻き戻し時に所定の制動力(バックテンション)を付与可能に装填されている。
【0013】
給紙部110は記録装置160の手前に配置されている。給紙部の給紙ロールスプール112から巻き出されたロール紙111は、手前下からUターンして、上部に配置された搬送・記録部120および排紙部130をほぼ水平に向かって搬送される。搬送・記録部のプラテン128および排紙部の排紙ガイド131上を搬送されるロール紙に対して記録ヘッド121により画像が記録される。記録を終了したロール紙は、排紙ガイド131の搬送上流側に配された不図示のカッタにより記録画像の後側で切断され、切り離された画像記録部(1頁分)はスタンド部140に装着された排紙受け部150に排出される。
【0014】
記録装置の本体160には、CPU、メモリおよびI/O回路等を備えたコントローラからなる制御手段500が設けられている。この制御手段500は、内部メモリに予め格納された制御プログラムに従い、駆動モータや各種装置の動作を制御する。これにより、記録媒体であるロール紙111の搬送・記録の動作を制御するとともに、画像データに基づいて記録ヘッド121の駆動を制御することにより、ロール紙に画像を記録していく。また、制御手段500は、後述するような制動力可変装置116、316およびこれを含む搬送駆動手段600の動作を制御する。さらに、制御手段500は、その他の記録装置の全体の動作およびそのタイミングを制御する。
【0015】
搬送・記録部120には、記録ヘッド121を搭載したキャリッジ122と、記録ヘッド121を制御手段500に電気的に接続するフラットケーブル123と、記録ヘッド121をインクタンク125に接続するインクチューブ124と、が設けられている。記録ヘッド121に接続される制御手段500は、装置本体160に内蔵されている。キャリッジ122は、装置本体に設置されたガイドシャフト127に沿って、主走査方向(搬送方向と交差する方向)に往復移動可能に支持されている。さらに、搬送・記録部120は、ロール紙111を搬送する搬送ローラ129と、該搬送ローラに圧接離間可能な不図示の従動コロ(ピンチローラ)と、キャリッジ122上の記録ヘッド121と対向配置されたプラテン128とを備えている。記録ヘッド121は、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ等の各色のインクを吐出する吐出部を有する。記録装置160の搬送・記録部120の上面には開閉可能な上カバー125が設けられ、外部から記録ヘッド121およびキャリッジ122などにアクセス可能になっている。
【0016】
不図示のキャリッジ駆動装置から、キャリッジ122に連結された不図示のキャリッジベルトに駆動が伝達されることで、キャリッジ122はレール127に案内されて往復移動する。フラットケーブル123は、一端が制御部のコネクタに接続され、他端が記録ヘッド121のコネクタに接続されており、記録信号を制御部から記録ヘッド121に送る。各色インク用のインクチューブ124は、一端が対応する各色のインクタンク125に接続され、他端が対応する記録ヘッド121の各色インク吐出部に接続されている。上カバー126は、上部が回動可能に支持されており、ユーザが下部を持って押し上げたり、下げたりすることで開閉可能である。搬送ローラ129は、1本の長尺のローラとして形成されており、両端部で軸受を介してフレームに軸支されている。また、搬送ローラ129は、搬送モータ231(図4)の正逆転駆動により、プーリおよびベルト等を介して正逆両方向に回転可能である。搬送ローラ129に圧接される従動コロは、軸方向に並列された複数の従動コロ支持部材のそれぞれに回転可能に軸支された複数の短尺のコロローラで構成されている。
【0017】
プラテン128は、記録可能な最大用紙幅より大きい長さの矩形平板状に形成されており、搬送ローラ129の搬送下流側に配設されている。排紙部130は、副走査方向の搬送経路の一部を成す排紙ガイド131と、ロール紙の逆反りを抑える排紙コロ(不図示)とを備えている。スタンド部140は、移動用キャスタ141を有する2本の支持ステイ142と、これらの支持ステイ142の間に掛け渡されている補強ステイ143とを備えている。記録装置(その本体)160は、支持ステイ142の上部に載置された状態で、ネジ止め等で固定されている。装置本体160の背面両側端部には、左右のインクタンク125、125を収納保持する左右のタンク収納部161、162が設けられ、タンク収納部161、162の上面はタンクカバー163、164で覆われている。また、装置本体の前面の右側には、ユーザが電源のオンオフや各種設定を操作するための操作パネル170が配設されている。操作パネル170は、制御部500と電気的に接続された液晶画面や各種ボタンを備えており、ユーザが液晶画面を見ながらボタン操作を行うことができる。
【0018】
図4は、搬送モータ231から搬送ローラ129およびロール紙スプール112へ至る駆動経路を有する搬送駆動手段600を示す平面図である。記録装置160には、図4に示すような、ロール紙スプール112からロール紙を巻き出しおよび巻き取り可能な搬送駆動手段600が設けられている。搬送駆動手段600の駆動源である搬送モータ231の駆動力は2つの経路に分割されて伝達される。一方の経路は、プーリおよびベルトを介して搬送ローラ129に連結されており、ロール紙を順方向に搬送したり、戻し方向に搬送したりするため駆動を伝達する。他方の経路は、制動力可変装置116およびギア列等を介して、ロール紙スプール112に連結されており、ロール紙を巻き戻す際に使用される。
【0019】
ロール紙を順方向(給送方向)に搬送する(送り出す)際は、駆動源(搬送モータ)231の駆動力がロール紙スプール112に伝達されないように途中経路を遮断する。これと同時に、後で詳述するように、制動力可変装置116内の各アクチュエータを、セットされているロール紙111に所望の制動力が作用するように制御する。この状態で搬送モータ231を正転駆動すると、ロール紙111に所定のバックテンションを付与しながら、該ロール紙111を所定速度で搬送することができる。
【0020】
ロール紙を巻き戻す(逆方向にバックフィードする)際は、駆動源(搬送モータ)231の駆動力がロール紙スプール112に伝達されるように伝達経路を連結する。これと同時に、後で詳述するように、制動力可変装置116内の各アクチュエータを、セットされているロール紙111に所望の制動力が作用するように制御する。この状態で搬送モータ231を逆転駆動することにより、搬送ローラ129とロール紙スプール112を同時に逆回転(巻き戻し方向に回転)させることができる。この逆転動作においてロール紙に所望のバックテンションを付与するためには、制動力可変装置116内のギア比を設定する際に以下の点に留意する必要である。すなわち、ロール紙スプール112の回転数が一定であっても、ロール紙111の巻き径が変化すると送り速度が変わり、巻き径が小さいほどロール紙の送り速度が遅くなる。そのため、ギア比の設定の際、ロール紙111の最小外径より若干小さい径でも巻き取り可能に設定しておかないと、巻き取り動作(逆回転)の際に巻き取り不能になってたるみ(解け)が増大する可能性が生じる。したがって、この点を留意したギア比を有する制動力可変装置116であれば、ロール紙111を巻き取る際の送り速度は、ロール径が最小径であっても搬送ローラ129の戻し搬送速度より速くなる。そのため、ロール紙111に所定のバックテンションを付与しながら、たるむことなく巻き戻すことができる。
【0021】
図5は第1の実施形態に係る制動力可変装置の構成を示す説明図である。制動力可変装置116は、ギア、電磁クラッチ、トルクリミッタおよびソレノイドなどの数種類のアクチュエータで構成されている。搬送モータ231は、制動力可変装置116を含む駆動経路を介して、ロール紙スプール112に連結されている。搬送モータ231の駆動力はギア列を介して伝達軸211に伝達される。伝達軸211には、ギア213を有する電磁クラッチ212と、ギア215を有する電磁クラッチ214が取り付けられている。電磁クラッチは、回転する鉄の円盤の片方に電磁石を設け、これに電流を流すことによりもう一方の円盤を磁気吸引することで駆動伝達(オン)状態になるように構成されており、動力が伝達可能なアクチュエータの一種である。この電磁クラッチでは、電流を遮断すると、円盤が離れて動力伝達が遮断される。つまり、電流のオン・オフによるクラッチ機能を持たせたものである。したがって、電磁クラッチ212にオン信号が入力されると、伝達軸211の回転がギア213に伝達される。同様に、電磁クラッチ214にオン信号が入力されると、伝達軸211の回転がギア215に伝達される
【0022】
伝達軸211と平行に配置された伝達軸221には、トルクリミッタ222およびトルクリミッタ223が伝達軸221と同期回転可能に取り付けられている。トルクリミッタ222には、ギア224とストッパギア225が固定されている。ストッパギア225の全周には、所定間隔で多数の突起が形成されている。通常では、トルクリミッタ222、ギア224およびストッパギア225は一体となって伝達軸221と同期回転可能である。トルクリミッタ223にはギア226が固定されており、通常ではトルクリミッタ223およびギア226は一体となって伝達軸221と同期回転可能である。ここで、トルクリミターは、該トルクリミターで設定されている締め付け力(制動力)以上の負荷トルクが作用した場合に滑り回転する構造になっており、締め付け力を発生する機構の一例としてコイルバネ式がある。その場合、締め付け力が弱いバネの場合は軽い力(トルク)で空回りし、締め付け力が強いバネの場合は大きな外力(トルク)を掛けないと回転しないことになる。本実施形態では、トルクリミッタ222の制動力(滑り回転開始時のトルク)の設定値は3000g・cmであり、トルクリミッタ223の制動力(滑り回転開始時のトルク)の設定値は2000g・cmである。
【0023】
制動力可変装置116には、ストッパギア225の周上の突起部に対してL型の引掛け部242を離間・掛止させるためのソレノイド241が設けられている。ソレノイドは、コイル内に可動鉄心を設置し、コイルに流れる電流で発生する電磁力によって鉄心を駆動する(直進運動させる)ものであり、アクチュエータの一種である。本実施形態では、ソレノイド241がオフの状態では、引掛け部242が不図示のバネ等の付勢によってストッパギア225の周上の突起部に掛止されることで、ストッパギア225の回転を停止させる。一方、ソレノイド241がオンの状態では、電磁力によって引掛け部242をストッパギア225から離間させることで、ストッパギア225を自由に回転可能な状態にする。つまり、ソレノイド241にオン信号を入力して電磁力を発生させると、引掛け部242が下方へ引張られることでストッパギア224から離脱し、ストッパギア224は自由に回転可能となる。一方、ソレノイド241がオフになると、不図示のバネにより引掛け部242が上方に引き上げられることでストッパギア224の突起部に掛止し、ストッパギア224の回転を停止させる。
【0024】
制動力可変装置116には、伝達軸221上のギア226と噛み合うワンウエイギア243が設けられている。ワンウエイギア243はワンウェイクラッチを内蔵したギアであり、固定軸244に取り付けられている。ワンウェイクラッチとは、自転車の後輪のハブに設けられたフリーホイールのように、一方向の回転力は伝達するが、逆方向では空転することで一方向の駆動のみを伝達するクラッチである。ワンウェイギア243は、図5に示す矢印方向には抵抗なく自由に回転するが、矢印と反対方向には、固定軸244に固定されているために回転できずに停止(ロック)することになる。例えば、ロール紙111は、図5中の矢印と反対方向に引き出された場合、あるいは、ユーザが不注意で触れることでロール紙に引き出す(矢印と反対)方向に回転しようとした場合、この方向の回転はギア列を介してワンウェイギア243によって停止させられることになる。
【0025】
しかし、制動力可変装置116の構成では、ロール紙スプール112とワンウエイギア243との間にトルクリミッタ223(2000g・cm以上で回転)が介在しているため、ロール紙111にはトルクリミッタ223の制動力がバックテンションとして作用することになる。この制動力は、引き出される(給送される)ロール紙のたるみ(解き)を防止するバックテンションとなる。その際、さらにソレノイド241をオフにすれば、引掛け部242によりストッパギア225の回転が停止させられ、ロール紙111のバックテンションをさらに高めることができる。すなわち、ストッパギア225の回転が停止すると、トルクリミッタ222がその設定制動力(3000g・cm)で滑り回転することになるため、その分を合算した合計5000g・cmのバックテンションがロール紙111に作用することになる。
【0026】
図6は搬送・記録するときまたはロール紙無しの状態で弱い制動力を発生させる場合の図5の制動可変装置の状態を示す説明図である。図7はロール紙に弱い制動力を付与しながら巻き取る場合の図5の制動可変装置の状態を示す説明図である。図8は搬送・記録するときまたはロール紙セットで非動作の状態で強い制動力を発生させる場合の図5の制動可変装置の状態を示す説明図である。図9はロール紙に強い制動力を付与しながら巻き取る場合の図5の制動可変装置の状態を示す説明図である。図10は図5の制動力可変装置における各アクチュエータのオンオフ状態と制動力の大きさとの関係を示す表である。次に、図6〜図10を用いて、搬送・記録するとき(ロール紙111の給紙搬送/記録動作)、ロール紙を巻き取るとき(巻き戻し動作)、ロール紙セットで非動作の状態、およびロール紙無しの状態における、ロール紙111の制動力(バックテンション)の強弱を変更する制御動作について説明する。
【0027】
図6は、搬送・記録(給紙/記録動作)のときまたは装置本体にロール紙がセットされていないときに、ロール紙スプール112に比較的弱い制動力2000g・cmを作用させるもので、各アクチュエータへの入力信号は次のように設定される。ここで、「ロール紙なしの状態」および「ロール紙がセットされていない状態」は、ロール紙に対する搬送・記録を行うことができない状態を意味する。したがって、ロール紙スプール112自体が装置本体に装着されていない状態の他、ロール紙111が給紙されていない状態や、ロール紙が搬送ローラ129にニップされていない状態など、ロール紙に対する搬送・記録を行うことができない状態を含むものである。
電磁クラッチ212 : オフ(OFF)
電磁クラッチ214 : オフ(OFF)
ソレノイド241 : オン(ON)
このような設定では、給紙あるいは記録する際、ロール紙111が矢印方向に巻き出されると、各ギアおよび各アクチュエータは図6に示す矢印方向に回転する。この回転方向ではワンウェイギア243が回転しない(回転ロックされる)ため、トルクリミッタ223の設定制動力2000g・cmがロール紙111に作用することになる。このとき、ロール紙111の巻き半径が5cmであるとすると、400gの制動力(バックテンション)がロール紙111に作用することになる。また、ロール紙111がセットされていない状態では、ロール紙スプール112に対し同じ強さの制動力が作用することになる。
【0028】
図7は、ロール紙111を巻き取る(巻き戻す)ときにロール紙スプール112に比較的弱い制動力2000g・cmを作用させるもので、各アクチュエータへの入力信号は次のように設定される。
電磁クラッチ212 : オフ(OFF)
電磁クラッチ214 : オン(ON)
ソレノイド241 : オン(ON)
このような設定では、ロール紙111を巻き戻す際にトルクリミッタ223の設定制動力2000g・cmがロール紙111に常に作用することになる。このとき、ロール紙111の巻き半径が5cmであるとすると、ロール紙111は400gのバックテンションを受けながら巻き取られる。
【0029】
図7の状態では、搬送モータ231の駆動力は、搬送ローラ129によるロール紙111の戻し動作に使われると同時に、制動力可変装置116へも伝達されている。したがって、搬送モータ231の駆動に伴って、搬送ローラ129によるロール紙111の逆搬送が行われるとともに、各ギア列が図示の矢印方向に回転することによりロール紙111の矢印方向への巻取りが同時に行われる。また、前述したように、各ギアの回転比は、ロール紙の最小巻き径でもロール紙にたるみが生じないように、巻き取り速度の方が大きくなる設定になっている。一方、ロール紙は比較的伸縮し難い連続紙であるため、図7における巻き取り動作では、搬送ローラ129のニップによる戻し搬送速度と、制動力可変装置116を介して行われるロール紙の巻き取り速度と同等(同じ速度)になる。したがって、巻き取り側の速度が速い分だけトルクリミッタ223で滑ることになり、トルクリミッタ223の設定制動力2000g・cmがロール紙111に作用することになる。
【0030】
図8は、搬送・記録(給紙/記録動作)のとき、またはロール紙がセットされた状態で非動作のときに、ロール紙スプール112に比較的強い制動力5000g・cmを作動させる状態を示す。ここで、「非動作の状態」は、ロール紙が使用可能にセットされた状態であって、搬送・記録、巻き取りおよび巻き出し以外の状態を意味する。そして、これには、電源オフの状態および記録装置の省電力状態も含まれる。このとき、制動可変装置116の各アクチュエータへの入力信号は次のように設定される。
電磁クラッチ212 : オフ(OFF)
電磁クラッチ214 : オフ(OFF)
ソレノイド241 : オフ(OFF)
このような設定では、給紙あるいは記録する際、ロール紙111が矢印方向に巻き出されると、各ギアおよび各アクチュエータは図8に示す矢印方向に回転する。この回転方向ではワンウェイギア243が回転しない(ロックされる)ため、トルクリミッタ223の設定制動力2000g・cmがロール紙111に作用する。これと同時に、ソレノイド241の引掛け部242によってストッパギア225の回転が停止(回転ロック)されるので、トルクリミッタ222の設定制動力3000g・cmもロール紙111に作用することになる。したがって、ロール紙111には、トルクリミッタ222設定制動力とトルクリミッタ223の設定制動力を合算した合計5000g・cmの強い制動力が作用することになる。そのため、ロール紙の巻き半径が5cmであるとき、ロール紙は1000gのバックテンションを受けながら巻き取られることになる。
【0031】
図9は、ロール紙111を巻き取る(巻き戻す)ときにロール紙スプール112に比較的強い制動力5000g・cmを作用させるもので、各アクチュエータへの入力信号は次のように設定される。
電磁クラッチ212 : オン(ON)
電磁クラッチ214 : オン(ON)
ソレノイド241 : オン(ON)
このような設定では、ロール紙111を巻き戻す際にトルクリミッタ222の設定制動力3000g・cmとトルクリミッタ223の設定制動力2000g・cmを合算した合計5000g・cmの制動力がロール紙111に常に作用することになる。このとき、ロール紙111の巻き半径が5cmであるとすると、ロール紙111は1000gのバックテンションを受けながら巻き取られる。
【0032】
図9の状態では、搬送モータ231の駆動力は、搬送ローラ129によるロール紙111の戻し動作に使われると同時に、制動力可変装置116へも伝達されている。したがって、搬送モータ231の駆動に伴って、搬送ローラ129によるロール紙111の逆搬送が行われるとともに、各ギア列が図9中の矢印方向に回転することによりロール紙111は矢印方向に巻き取られる。また、前述したように、各ギアの回転比は、ロール紙の最小巻き径でもロール紙にたるみが生じないように、巻き取り速度の方が大きくなる設定になっている。一方、ロール紙は比較的伸縮し難い連続紙であるため、図9における巻き取り動作では、搬送ローラ129のニップによる戻し搬送速度と、制動力可変装置116を介して行われるロール紙の巻き取り速度と同等(同じ速度)になる。したがって、巻き取り側の速度が速い分だけ、トルクリミッタ222およびトルクリミッタ223で滑ることになり、トルクリミッタ222の設定制動力3000g・cmとトルクリミッタ223の設定制動力2000g・cmを合算した5000g・cmの制動力がロール紙111に作用することになる。
【0033】
図10は制動力可変装置116における各アクチュエータのオンオフ状態と制動力の大きさとの関係を示す表である。図10の表には、以上説明してきた制動可変装置116の各アクチュエータのオン/オフと各動作状態における制動力(ロール紙に作用するバックテンション)の値との関係がまとめて示されている。ここでも、「ロール紙がセットされていない状態」および「ロール紙なしの状態」は、ロール紙に対する搬送・記録を行うことができない状態を意味する。したがって、ロール紙スプール112自体が装置本体に装着されていない状態の他、ロール紙111が給紙されていない状態や、ロール紙が搬送ローラ129にニップされていない状態など、ロール紙に対する搬送・記録を行うことができない状態を含むものである。
【0034】
次に、図10を参照しながら、前述の制動可変装置116を用いてロール紙111のバックテンションを可変制御することにより得られる作用効果を説明する。前述の制動可変装置116によれば、ロール紙111が装置本体160にセットされていない状態(図6)では、ロール紙111が装填されたロール紙スプール112に作用する制動力は比較的弱い制動力2000g・cmに設定される。かかる設定によれば、オペレータがロール紙スプール112を回転されながらロール紙先端を装置本体内部に挿入する際、軽い操作力で挿入することで可能となり、ロール紙挿入時の操作性が向上する。そして、ロール紙の搬送・記録および巻き取り動作のときは、ロール紙の種類および特性に合わせて、図6〜図9の各形態で示すように最適なバックテンションが付与されるように各アクチュエータのオン・オフ(ON/OFF)が切り替えられる。
【0035】
また、ロール紙がセットされた状態であって搬送・記録および巻き取り動作以外の非動作の状態(図8)では、ロール紙111を装填したロール紙スプール112に作用する制動力は強い制動力5000g・cmに設定される。かかる設定によれば、オペレータが誤ってロール紙に触れても、簡単にロール紙111がほぐれる(解かれる)ことを無くすことができ、取り扱い上の利便性が向上する。一方、ロール紙を装置本体にセットした状態で長期放置した場合に温度や湿度などの環境条件の変化によるロール紙の伸び縮みでほぐれ方向に力が作用する場合や、腰が強いロール紙において常にほぐれ方向に力が作用する場合などがある。そして、このようなロール紙のほぐれは、時間の経過とともに増大する。このようなほぐれの問題に対し、前述の制動可変装置116によれば、図8に示すように非動作の状態でロール紙111を装填したロール紙スプール112に作用する制動力を強い制動力5000g・cmに設定するので、上述のロール紙のほぐれを防止することができる。また、この強い制動力の設定は各アクチュエータを全てオフにした状態で設定されるので、装置本体の電源がオフの状態でも有効であり、したがって、長期放置された場合でもロール紙のほぐれ(解け)を有効に防止することができる。そして、その後の搬送・記録動作の際にロール紙にほぐれが無いので、ロール紙に対して一定のバックテンションを作用させることができ、送り変動に伴う画像劣化を無くしてきれいな記録画像を得ることができる。
【0036】
〔第2の実施形態〕
図11は第2の実施形態に係る記録装置で用いられる制動力可変装置316の構成を示す説明図である。制動力可変装置316は、第1の実施形態に係る制動力可変装置116において制動力を付加するための付加制動力可変部317を追加したものであり、それ以外では同じ構成を有する。つまり、本実施形態に係る記録装置は、制動力可変装置316および該装置の制御の一部を除いて、その他の部分は第1の実施形態と同じである。したがって、簡明化のため、以下の制動力可変装置316の説明では、主として制動力可変装置316との相違点を説明し、共通する部分については適宜説明を省略する。図11において、伝達軸211には、ギア213を有する電磁クラッチ212とギア215を有する電磁クラッチ214に加えて、ギア313を有する電磁クラッチ312が取り付けられている。伝達軸211と平行に配置された伝達軸221には、トルクリミッタ222およびトルクリミッタ223に加えて、トルクリミッタ322が伝達軸221と同期回転可能に取り付けられている。トルクリミッタ322には、ギア324とストッパギア325が固定されている。ストッパギア325の全周には、所定間隔で多数の突起が形成されている。通常では、トルクリミッタ322、ギア324およびストッパギア325は一体となって伝達軸221と同期回転可能である。ここでトルクリミッタ322の制動力(滑り回転開始時のトルク)の設定値は4000g・cmである。
【0037】
制動力可変装置316には、ストッパギア325の周上の突起部に対してL型の引掛け部342を離間・掛止させるためのソレノイド341が設けられている。この引掛け部342は、ストッパギア325の回転を停止させるための部材である。ソレノイド341がオフの状態では、引掛け部342が不図示のバネ等の付勢によってストッパギア325の周上の突起部に掛止されることで、ストッパギア325の回転を停止させる。一方、ソレノイド341がオンの状態では、電磁力によって引掛け部342をストッパギア325から離間させることで、ストッパギア325を自由に回転可能な状態にする。つまり、ソレノイド341にオン信号を入力して電磁力を発生させると、引掛け部342が下方へ引張られることでストッパギア324から離脱し、ストッパギア324は自由に回転可能となる。一方、ソレノイド341がオフになると、不図示のバネにより引掛け部342が上方に引き上げられることでストッパギア324の突起部に掛止し、ストッパギア324の回転を停止させる。
【0038】
制動力可変装置316においても、伝達軸221上のギア226と噛み合うワンウエイギア243が設けられている。ワンウエイギア243はワンウェイクラッチを内蔵したギアであり、固定軸244に取り付けられている。ワンウェイギア243は、図11に示す矢印方向には抵抗なく自由に回転するが、矢印と反対方向には、固定軸244に固定されているために回転できずに停止(ロック)することになる。例えば、ロール紙111は、図11中の矢印と反対方向に引き出された場合、あるいは、ユーザが不注意で触れることでロール紙に引き出す(矢印と反対)方向に回転しようとした場合、この方向の回転はギア列を介してワンウェイギア243によって停止させられることになる。しかし、制動力可変装置316の構成でも、ロール紙スプール112とワンウエイギア243との間にトルクリミッタ223(2000g・cm以上で回転)が介在しているために、ロール紙111にはトルクリミッタ223の制動力がバックテンションとして作用することになる。この制動力は、引き出されるロール紙のたるみ(解き)を防止するバックテンションとなる。その際、さらにソレノイド241をオフにすれば、引掛け部242によりストッパギア225の回転が停止させられ、ロール紙111のバックテンションを高めることができる。すなわち、ストッパギア225の回転が停止すると、トルクリミッタ222がその設定制動力(3000g・cm)で滑り回転することになるため、その分を合算した合計5000g・cmのバックテンションがロール紙111に作用することになる。
【0039】
さらに、制動力可変装置316では、伝達軸221上のストッパギア325に掛止可能な引掛け部342と、該引掛け部342を作動させるためのソレノイド341が設けられている。ソレノイド341をオフにすれば、引掛け部342によりストッパギア325の回転が停止させられ、ロール紙111のバックテンションをさらに高めることができる。すなわち、ストッパギア325の回転が停止すると、ストッパギア325と一体のトルクリミッタ322がその設定制動力で滑り回転することになり、その分をさらに加えた大きさのバックテンションをロール紙111に作用させることができる。本実施形態では、トルクリミッタ322の制動力が4000g・cm(滑り回転開始のトルク値)に設定されているため、ソレノイド242およびソレノイド341をオフにすることにより、各トルクリミッタ223、222、322の設定制動力を合算した合計9000g・cmのバックテンション(制動力)をロール紙111に作用させることが可能となる。また、ソレノイド241をオンにし、ソレノイド341をオフにするように制御すれば、60000g・cm(2000g・cm+4000g・cm)のバックテンションをロール紙111に作用させることも可能である。本実施形態に係る制動力可変装置316およびこれを用いる記録装置は、以上説明した以外では前述の第1の実施形態と同様に構成されている。
【0040】
図12は搬送・記録(給紙/記録動作)するとき、またはロール紙がセットされた状態で非動作のときに、ロール紙スプール112に強い制動力9000g・cmを作動させる状態を示す。ここで、「非動作の状態」は、ロール紙が使用可能にセットされた状態であって、搬送・記録、巻き取りおよび巻き出し以外の状態を意味する。そして、これには、電源オフの状態および記録装置の省電力状態も含まれる。このとき、制動可変装置316の各アクチュエータへの入力信号は次のように設定される。
電磁クラッチ212 : オフ(OFF)
電磁クラッチ214 : オフ(OFF)
電磁クラッチ312 : オフ(OFF)
ソレノイド241 : オフ(OFF)
ソレノイド341 : オフ(OFF)
【0041】
このような設定では、不注意でロール紙に触れてしまい、ロール紙がたるむ方向に巻き出されると、各ギアおよび各アクチュエータは図11中に矢印で示す方向に回転しようとする。ただし、この回転方向では、ワンウエイギア243が回転しない(回転ロック)方向であるため、トルクリミッタ223の設定制動力2000g・cmがロール紙111に対して作用することになる。これと同時に、ストッパギア225の突起部にソレノイド241の引掛け部242が引掛ってストッパギア225の回転を停止(回転ロック)しているので、トルクリミッタ222の設定制動力3000g・cmがロール紙に作用する。さらに、ストッパギア325の突起部にソレノイド341の引掛け部342が引掛ってストッパギア325の回転を停止するので、トルクリミッタ322の設定制動力4000g・cmがロール紙に作用する。つまり、ロール紙111をたるませる方向の力が作用した場合、各トルクリミッタ222、223および322の設定制動力の合算値9000g・cmがロール紙に作用し、これがブレーキ力になってロール紙のたるみ方向の回転を抑えることになる。これによって、搬送・記録(給紙/記録動作)のときはもちろん、ロール紙がセットされて非動作のときにも、ロール紙の解け(たるみ)を一層確実に抑止することができる。
【0042】
図13は、以上説明した状態を含めた、制動力可変装置316における各アクチュエータのオンオフ状態と制動力(ロール紙に作用するバックテンション)の大きさとの関係を示す表である。本実施形態に係る制動力可変装置316は、第1の実施形態の制動力可変装置316に付加制動力可変部317を増設したものに相当する。そして、電源オフを含んで、給紙、記録、巻き取りの各動作以外の状態では、ロール紙111に対し、第1の実施形態における強い制動力5000g・cmよりもさらに強い制動力9000g・cmをロール紙111に付与できるように構成されている。かかる構成によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を奏するとともに、オペレータが誤ってロール紙に触れた場合に、ロール紙111がほぐれることを、より確実に防止できるという効果を奏する。
【0043】
なお、ロール紙のほぐれを防止するための他の方法として、ロール紙の回転に適度のブレーキを掛かるので無く、メカ的なロック機構を設けてロール紙の回転を完全に停止させる方法もある。ただし、この方法は、ロール紙に対して回転方向に強大な外力が作用した場合に記録装置本体160やロール紙スプール112に過大な力が加わる可能性があるので、場合によってはロール紙のたるみ対策として採用し難いことになる。
【0044】
以上説明した各実施形態によれば、不注意でロール紙に触れて解れ方向に回転しようとしても、ロール紙に解けやたるみが発生し難い記録装置が提供される。すなわち、制動力が変更可能な構成において、制動力を重い方に切り替えることでロール紙のほぐれを防止することができる。これにより、搬送・記録時では各ロール紙の搬送・記録に適したバックテンションで動作させ、その以外の状態、例えば、待機状態、電源オフの状態、省電力状態などの非動作状態では、搬送・記録時よりも大きな制動力をかけることでロール紙のたるみを防止することができる。また、画像記録の初めから終わりまで、ロール紙に対して適正なバックテンションを付与することができ、バックテンションを一定にして搬送量を安定させることにより良好な記録画像を得ることができる。
【0045】
なお、以上の実施形態では、インクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、本発明は、熱転写式、レーザービーム式、加熱式、ワイヤドット式など、その他の方法で画像形成する記録装置においても同様に適用可能である。また、本発明は、記録ヘッドによる主走査と搬送動作による副走査とを交互に繰り返して記録を行うシリアル方式、搬送動作による副走査のみで連続的に記録を行うライン方式など、記録動作の方式に関わらず、同様に適用可能である。また、本発明は、記録ヘッドの数、使用するインクの種類や性状数などに関わらず、同様に適用可能である。また、本発明は、記録媒体の材質として、紙、プラスチックフィルム、印画紙、不織布など、種々の異なる材質を使用する場合にも、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
111 ロール紙
112 ロール紙スプール
116、316 制動力可変装置
120 搬送・記録部
121 記録ヘッド
129 搬送ローラ
160 記録装置(装置本体)
211、221 伝達軸
212、214、312 電磁クラッチ
213、215、224、226、313、324 ギア
222、223、322 トルクリミッタ
225、325 ストッパギア
231 搬送モータ(搬送駆動手段の駆動源)
241、341 ソレノイド
243 ワンウェイギア
317 付加制動力可変部
500 制御手段
600 搬送駆動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるロール紙に記録ヘッドにより画像を記録する記録装置において、
ロール紙スプールからロール紙を巻き出しおよび巻き取り可能であり、巻き出しおよび巻き取りされるロール紙の制動力を可変できる制動力可変装置を有する搬送駆動手段と、
ロール紙の搬送・記録時と巻き取り時とでロール紙の制動力を変更するように前記制動力可変装置を制御する制御手段と、を備え、
ロール紙を搬送しない非動作時のロール紙の制動力が、ロール紙を搬送する搬送時のロール紙の制動力より大きくなるように制御することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
電源オフの状態におけるロール紙の制動力が、ロール紙を搬送する搬送時のロール紙の制動力より大きいことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
記録装置の省電力状態におけるロール紙の制動力が、ロール紙を搬送する搬送時のロール紙の制動力より大きいことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項4】
ロール紙がセットされていない状態におけるロール紙の制動力は、ロール紙を搬送しない非動作時のロール紙の制動力より小さいことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
ロール紙を巻き戻す駆動力は、搬送ローラの駆動源から前記制動力可変装置を介してロール紙スプールに伝達される駆動力であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−152670(P2011−152670A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14395(P2010−14395)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】