説明

記録装置

【課題】剛性の低い普通紙等のスタック性を損なうことなく、剛性の高い媒体に記録を行う際に媒体の下流側端部が落ち込んで上流側端部が浮き上がってしまうことを防止する。
【解決手段】記録の行われた媒体を排出する媒体排出手段の斜め下方には、媒体受け手段としての排紙スタッカー9が設けられている。排紙スタッカー9は、媒体を受ける媒体受け面より上方に突出して媒体を支持可能な突出状態と、排紙スタッカー9内に収納された収納状態と、を切り換え可能な媒体支持部11を備えている。普通紙等を排出する際、媒体支持部11を収納状態とすることで、スタック枚数の低下を防止できる。剛性の高いボード紙Tを排出する際には、媒体支持部11を突出状態とすることで、下流側端部の落ちこみに伴う上流側の浮き上がりを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に記録を行う記録装置に関し、特にプレート状の媒体(厚紙や光ディスクなど)を搬送可能な媒体搬送経路を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置の一例としてのインクジェットプリンターには、インクジェット記録を行う対象である媒体の一例として、可撓性の低い(コシの強い)厚手のボード紙や、光ディスクのラベル面などに、直接インクジェット記録可能なものがある。
【0003】
このインクジェットプリンターは、略直線状の媒体搬送経路を有しており、当該直線状の媒体搬送経路においてプレート状体(上述のボード紙や、或いは光ディスクをセットしたトレイなど)を搬送可能に構成されている。
【0004】
この様なインクジェットプリンターにおいては、装置前方側にプレート状体を支持・案内する為のガイド(以下「トレイガイド」と言う)が装置に対して着脱自在に、或いは、一体的に設けられることがある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
ユーザーは、ボード紙などのプレート状体を装置内部に給送する際には、このトレイガイドを使用状態に切り換えた上で当該トレイガイドにセットする。そして記録実行命令を装置に対して行うと、プレート状体はトレイガイドに支持されながら搬送手段により記録開始位置へと搬送される様になっている。そして、記録が行われると、再びトレイガイド上へと排出される様になっている。
【0006】
尚、インクジェットプリンターは可撓性の低い上述のプレート状体のほか、当然に通常の用紙(普通紙など)を搬送可能に構成されており、インクジェット記録ヘッドの下流側に設けられた、用紙を排出する排出手段によって、当該排出手段より下方に位置する排紙スタッカー(媒体受け手段)に向けて排出される構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−089277号公報
【特許文献2】特開2005−104137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述のボード紙などのプレート状体を搬送するとき、当該プレート状体の下流側が媒体搬送経路による支持領域にあるときには、当該プレート状体は浮き上がり難く、インクジェット記録ヘッドと記録面との間の距離(ペーパーギャップ)は適正に保たれる。尚、本明細書において「上流側」とは、プレート状体に記録が行われ、排出方向に送られる際の当該プレート状体の搬送方向に対して上流側(排出方向とは逆の側)を意味し、「下流側」も同様に前記搬送方向に対して下流側を意味するものとする。
【0009】
しかし、プレート状体への記録が進むにつれて、当該プレート状体の下流側は、媒体搬送経路による支持領域から外れていく。すると、プレート状体は下流側端部が支持されないから、下流側端部が下方に落ちようとする傾向によって、プレート状体は上流側が浮き上がろうとする傾向が生じ、ペーパーギャップが不適切となって記録品質の低下を招いたり、ヘッド擦れを招いたりすることになる。
【0010】
その一方で、排紙スタッカー(媒体受け手段)によってプレート状体の下流側端部を支持するべく、単に排紙スタッカーの高さ位置を高くしたのでは、普通紙等のスタック性、具体的にはスタック可能枚数が減ってしまうことになる。
【0011】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その課題は、剛性の低い普通紙等のスタック性を損なうことなく、剛性の高い媒体に記録を行う際に媒体の下流側端部が落ち込んで上流側端部が浮き上がってしまうことを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、媒体に対し記録を行う記録手段と、媒体を搬送する媒体搬送経路において前記記録手段より下流側に位置し、記録の行われた媒体を排出する媒体排出手段と、前記媒体排出手段より下方に位置し、前記媒体排出手段により排出された媒体を受ける媒体受け手段と、を備え、前記媒体受け手段が、媒体を受ける媒体受け面より上方に突出して媒体を支持可能な突出状態と、前記媒体受け手段内に収納された収納状態と、を切り換え可能な媒体支持部を備えていることを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、媒体排出手段より下方に位置する、媒体を受ける媒体受け手段には、媒体受け面より上方に突出して媒体を支持可能な突出状態と、媒体受け手段内に収納された収納状態と、を切り換え可能な媒体支持部が設けられているので、当該媒体支持部を上記突出状態に設定することで、排出される媒体の下流側が支持され、上流側が浮き上がることを防止できる。そして媒体支持部を上記収納状態に切り換えれば、普通紙等の媒体のスタック性を損なうことがない。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記媒体受け手段は、前記媒体受け面の基端側を構成するベース部と、当該ベース部に収納可能に設けられ、当該ベース部から引き出されることにより前記媒体受け面の自由端側を構成する少なくとも1つの引き出し部と、を備えて伸縮自在に構成され、前記媒体支持部は、前記引き出し部に設けられるとともに、前記突出状態において前記引き出し部が前記ベース部に収納される際に、前記ベース部と係合して前記収納状態に切り換わることを特徴とする。
【0015】
本態様によれば、媒体受け手段がベース部と引き出し部とを備えて多段式に、伸縮自在に構成されており、そして前記媒体支持部が引き出し部に設けられるとともにベース部に収納される際に当該ベース部を係合して収納状態に(自動的に)切り換わるので、上記突出状態から収納状態への切り換えに際してユーザーのそれ専用の操作が不要となる。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様において、前記記録手段の上流側に、媒体を下流側へ送る媒体搬送手段を備え、前記媒体搬送経路を側視した際の前記媒体支持部による媒体の支持高さは、前記媒体搬送手段が媒体と接する第1位置と、前記媒体排出手段が媒体と接する第2位置と、を結ぶ直線の延長線上或いはその近傍に設定されていることを特徴とする。
【0017】
本態様によれば、上記媒体支持部による媒体の支持高さが、媒体搬送手段が媒体と接する第1位置と、前記媒体排出手段が媒体と接する第2位置と、を結ぶ直線の延長線上或いはその近傍に設定されているので、媒体の支持位置に段差(高さの相違)がなく、ペーパーギャップを適切に維持することができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記媒体搬送経路において前記媒体受け手段より上流側に位置し、前記媒体搬送経路を構成して媒体を支持可能な媒体ガイドを備え、前記媒体搬送経路を側視した際に、前記媒体ガイドが媒体を支持するガイド面の高さ位置が、前記直線の延長線上或いはその近傍に設定されていることを特徴とする。
【0019】
本態様によれば、媒体を支持可能な媒体ガイドを備えているので、媒体の姿勢がより一層安定する。そして、媒体ガイドのガイド面の高さ位置が、上述した第3の態様における直線の延長線上或いはその近傍に設定されているので、上述した第3の態様と同様に、媒体の支持位置に段差(高さの相違)がなく、ペーパーギャップを適切に維持することができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記媒体支持部は、揺動支点を中心に揺動可能にすることにより、前記突出状態と前記収納状態とを切り換えるよう設けられ、前記突出状態において、前記媒体支持部の上面が、排出される媒体の先端を媒体排出方向に案内する傾斜面を成すよう構成されていることを特徴とする。
【0021】
本態様によれば、媒体支持部の上面が、排出される媒体の先端を媒体排出方向に案内する傾斜面を成すよう構成されているので、媒体が排出される際に、媒体の先端が媒体支持部に引っ掛かることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るプリンターの、媒体搬送経路の側断面図。
【図2】本発明に係るプリンターの、媒体搬送経路の側断面図。
【図3】本発明に係るプリンターの、媒体搬送経路の側断面図。
【図4】排紙スタッカーの外観斜視図。
【図5】本発明の他の実施形態に係るプリンターの、媒体搬送経路の側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について説明する。図1、図2、図3は本発明に係る記録装置の一実施形態であるインクジェットプリンター1の、媒体搬送経路の側断面図であり、図1は媒体ガイド10が第2ポジション(非使用状態)にあるときの様子を、図2及び図3は媒体ガイド10が第1ポジション(使用可能状態)にあるときの様子を示している。図4は媒体受け手段としての排紙スタッカー9の外観斜視図である。また、図5は他の実施形態に係る排紙スタッカー9’を備えたインクジェットプリンターの、媒体搬送経路の側断面図である。
【0024】
尚、以下では説明の便宜上、図1〜図3、図5の左右方向を媒体搬送方向と言い、この媒体搬送方向と直交する方向(図1〜図3、図5の紙面表裏方向)を媒体幅方向或いは主走査方向と言うこととする。また、図1〜図3、図5の左方向を媒体搬送経路の下流側と言い、同右方向を媒体搬送経路の上流側と言うこととする。
【0025】
以下、インクジェットプリンター1の全体構成について概説する。インクジェットプリンター1は、本実施形態ではインクジェット記録ヘッド22が主走査方向に移動しながら記録を行う、所謂シリアル型のインクジェットプリンターである。
【0026】
インクジェットプリンター1は、記録対象である媒体として、剛性が低く可撓性に富む「普通紙」、剛性はやや高いものの可撓性を有する厚手の「専用紙」、剛性が高い為に可撓性が低いボード紙や光ディスク(当該光ディスクをセットしたトレイ)などの「プレート状体」を搬送可能に構成されている。
【0027】
この為、インクジェットプリンター1は、本実施形態では3つの媒体搬送経路を有している。具体的には、上記普通紙を給送し搬送するための、湾曲度合いのやや厳しい湾曲経路を含む「第1媒体搬送経路」と、上記専用紙を給送し搬送するための、第1媒体搬送経路よりも緩やかな湾曲経路を含む「第2媒体搬送経路」と、を有している。
【0028】
また更に、上記プレート状体を給送し搬送するための、略直線状の(即ち湾曲経路を含まない)水平方向に延びる「第3媒体搬送経路」を備えている。以上の第1〜第3媒体搬送経路は、搬送手段15より下流側が共通の媒体搬送経路であり、図1〜図3では第1および第2媒体搬送経路に固有の搬送経路は図示を省略している。
【0029】
インクジェットプリンター1は、略箱形の形状を成す装置本体(図示省略)の後部に上記普通紙を収容し、そして給送する用紙給送装置(図示省略)を備えており、この用紙給送装置から媒体が給送され搬送される際の経路が、上記第1媒体搬送経路となる。
【0030】
上記用紙給送装置の後方には、伸縮自在な媒体サポート(図示省略)が設けられており、この媒体サポートからは、特に上述した専用紙などの手差し給送が可能となっている。尚、この媒体サポートから媒体が給送され搬送される際の経路が、上記第2媒体搬送経路となる。
【0031】
以下、媒体搬送経路について更に詳説する。図1及び図2において最も上流側に位置する媒体搬送手段である搬送手段15は、搬送駆動ローラー16と搬送従動ローラー17とを備えて構成されている。搬送駆動ローラー16は、図示しないモーターにより回転駆動されるローラーであり、搬送従動ローラー17は、搬送駆動ローラー16との間で媒体をニップして従動回転するローラーである。
【0032】
本実施形態において搬送駆動ローラー16は、媒体幅方向に長い金属軸の表面に摩擦係数を高める為の高摩擦材が付着されて成り、搬送従動ローラー17は、成形後のローラー表面の摩擦係数が低い樹脂材料により形成され、搬送駆動ローラー16の長さ方向に渡って適宜の間隔で複数配置される。
【0033】
搬送手段15の下流側近傍には補助ローラー18が設けられており、この補助ローラー18により、媒体の浮き上がりが規制されるようになっている。ここで搬送従動ローラー17と補助ローラー18は、上部案内部材19に回転自在に支持されており、例えば1つの上部案内部材19に対して、搬送従動ローラー17と補助ローラー18とがそれぞれ2つ軸支されている。
【0034】
上部案内部材19は、揺動軸19aを中心に揺動可能に設けられているとともに、図示を省略する付勢手段(例えば、コイルばね)によって、搬送従動ローラー17が搬送駆動ローラー16に圧接する方向に付勢された状態となっている。
【0035】
ここで、上部案内部材19は、図示を省略するレリース手段によって搬送従動ローラー17が搬送駆動ローラー16から離間する方向に揺動させられ、そしてその状態が保持される様になっている。これにより、搬送従動ローラー17と補助ローラー18とが媒体搬送経路の上方に退避し、後述するボード紙Tを、直線状の第3媒体搬送経路に手差しで差し入れることが可能となる。
【0036】
次いで搬送手段15の下流側には、インクジェット記録ヘッド22と媒体案内部材23とが対向配置されている。インクジェット記録ヘッド22は、キャリッジ21の底部に設けられ、このキャリッジ21は図示しないモーターの動力により主走査方向に往復移動する。また、媒体案内部材23は、媒体を下方から支持することにより、媒体の記録面とインクジェット記録ヘッド22のヘッド面との間の距離(ギャップ)を規定する。
【0037】
尚、キャリッジ21は図示しないギャップ調整手段により上下方向、即ち上記ギャップが変化する方向に変位可能となっている。これにより、媒体の厚みに拘わらず、媒体の記録面とインクジェット記録ヘッド22のヘッド面との間の距離(ギャップ)を一定に保つことが可能となっている。尚、本実施形態において上記ギャップは、例えばプリンタドライバー上で指定された媒体の情報に基づき、自動で調整される様になっている。
【0038】
次いでインクジェット記録ヘッド22の下流側には、媒体排出手段としての、第1媒体排出手段25と、第2媒体排出手段28と、が設けられている。第1媒体排出手段25は、図示を省略する駆動モーターにより回転駆動される第1排出駆動ローラー26と、当該第1排出駆動ローラー26との間で媒体をニップすることで従動回転する第1排出従動ローラー27と、を備えて構成されている。
【0039】
また同様に、第2媒体排出手段28は、図示を省略する駆動モーターにより回転駆動される第2排出駆動ローラー29と、当該第2排出駆動ローラー29との間で媒体をニップすることで従動回転する第2排出従動ローラー30と、を備えて構成されている。そして第1媒体排出手段25と第2媒体排出手段28とにより、記録の行われた媒体、ここでは特に上述した普通紙と専用紙が、排紙スタッカー9に向けて排出される。
【0040】
尚、第1排出駆動ローラー26及び第2排出駆動ローラー29は、本実施形態ではゴムローラーであり、第1排出従動ローラー27及び第2排出従動ローラー30は、本実施形態では外周に沿って突起(歯)を複数有するギザローラーである。尚、符号31は第1排出従動ローラー27および第2排出従動ローラー30を支持する、ローラー支持手段としてのフレームを示しており、そしてフレーム31は、以下詳述する媒体ガイド10に一体的に設けられている(媒体ガイド10に固設されている)。
【0041】
次に、図1及び図2において媒体搬送経路の最も下流には、第2媒体排出手段28の斜め下方側に、記録が行われて排出される媒体(主に、上述した普通紙や専用紙)を受ける媒体受け手段としての排紙スタッカー9が設けられている。
【0042】
排紙スタッカー9は、図4に示すように最も基端側(媒体排出方向に対して上流側)のベース部8と、当該ベース部8に収容可能であるとともにベース部8に対してスライド可能な引き出し部7と、引き出し部7に対して回動支点6aを中心に回動可能な、排紙スタッカー9の最も自由端側(媒体排出方向に対して下流側)を構成する先端部6と、を備えて多段式に、伸縮自在に構成されている。
【0043】
そして伸縮することで使用状態(図3、図4)と収納状態(図示せず)とを切り換えることができるようになっている。尚、先端部6は、図3において符号6’で示すように非使用時に垂直姿勢をとることにより、インクジェットプリンター1の筐体(図示せず)の前面を構成する様になっている。また、図4において符号8bは、媒体排出方向に延びるリブを示しており、図示するようにベース部8bにおいて媒体排出方向と直交する方向(用紙幅方向)に適宜の間隔を空けて複数配置され、用紙との間の接触摩擦を軽減する。
【0044】
更に、図3及び図4において符号11で示す部材は媒体支持部であるが、これについては後に詳述する。加えて、排紙スタッカー9の上流側に設けられた符号33で示す部材は、排紙スタッカー9とともに媒体受け手段を構成する排紙受け部材である。
【0045】
続いて、排紙スタッカー9の斜め上方には、プレート状体を搬送する略直線状の搬送経路の経路端に設けられた、媒体ガイド10が位置している。本実施形態において媒体ガイド10は、媒体を支持する支持面10aがほぼ水平のままで装置前後方向への変位を伴い、支持面10aが第3媒体搬送経路を構成して媒体を支持可能な第1ポジションと、支持面10aが媒体搬送経路から退避する第2ポジションと、の間を変位可能に設けられている。
【0046】
以下、媒体ガイド10について詳説する。図1は媒体ガイド10が収納状態(非使用状態)、即ち第2ポジションに位置している状態を示しており、この状態では、媒体ガイド10は媒体搬送経路の上方(媒体の記録面側の離れた場所)に位置しており、即ち略直線状の第3媒体搬送経路を構成せずに、同搬送経路から退避している。
【0047】
そして第1排出従動ローラー27および第2排出従動ローラー30は、それぞれ対応する第1排出駆動ローラー26および第2排出駆動ローラー29に接触している(第1排出従動ローラー27および第2排出従動ローラー30の近接ポジション)。
【0048】
従ってこの状態では、第1媒体排出手段25と第2媒体排出手段28とにより、普通紙や専用紙(図1において符号Pで示す)がニップ可能となり、排出可能となる。また、その排出経路に媒体ガイド10が位置しない状態となる。
【0049】
次いで図2は媒体ガイド10が使用状態、即ち第1ポジションに位置している状態を示しており、この状態では、媒体ガイド10は略直線状の第3媒体搬送経路を構成し、ガイド面10aが媒体を支持可能な状態となっている。
【0050】
そしてこの状態では第1排出従動ローラー27および第2排出従動ローラー30は、略直線状の第3媒体搬送経路の下側に退避し、即ち媒体の記録面に対し反対側の領域に位置している(第1排出従動ローラー27および第2排出従動ローラー30の離間ポジション)。尚、図2において符号Tはプレート状体としてのボード紙を示している。
【0051】
尚、ユーザーはボード紙Tを略直線状の第3媒体搬送経路に差し入れる場合には、当該第3媒体搬送経路の経路端に配置された媒体ガイド10にボード紙Tを載せ、所定位置まで差し入れる。次いで、ユーザーからの記録実行命令を受けると、インクジェットプリンター1は搬送手段15によりボード紙Tを記録開始位置まで送り、記録を行う。記録が終了された後、ボード紙Tは搬送手段15により再び下流側へ送られ、媒体ガイド10の上に支持された状態となる。
【0052】
続いて図3及び図4を参照しながら、排紙スタッカー9に設けられた媒体支持部11について説明する。媒体支持部11は、排紙スタッカー9を構成する引き出し部7に対して、回動支点11aを中心に回動可能に設けられている。そして回動することにより、排紙スタッカー9の用紙受け面7a、8aから上方に突出する突出状態(図4、および図3において実線)と、引き出し部7に収納される収納状態(図3において符号11’及び仮想線)と、を切り換えることができるようになっている。
【0053】
媒体支持部11は、収納状態において自由端側が媒体排出方向下流側に、基端側(回動支点11a側)が媒体排出方向上流側に、それぞれ位置する様に設けられており、収納状態では引き出し部7の用紙受け面7aから突出しないよう、用紙受け面7aとほぼ面一になる。
【0054】
媒体支持部11は、図示を省略する付勢手段としての2安定ばねの付勢力によって、上記突出状態と収納状態とが維持される様になっている。即ち、ユーザーが媒体支持部11を収納状態から突出状態に切り換える際には、2安定ばねの付勢力に抗して媒体支持部11を引き起こしていくが、途中で付勢方向が切り替わり、付勢力に抗することなく突出状態に向けて回動させることが可能となる。そしてまた、2安定ばねの付勢力によって、媒体支持部11の突出状態が維持される。
【0055】
尚、媒体支持部11が突出状態のままで、引き出し部7がベース部8に収納されようとする際、媒体支持部11はベース部8の縁部8cと係合して、自動的に収納状態に切り換わることができるようになっており、操作性の向上が図られている。
【0056】
以下、媒体支持部11の機能について説明する。上述した第1、第2媒体搬送経路を利用して用紙(主として可撓性のある普通紙、専用紙等)に記録を行う場合には、媒体支持部11を収納状態に維持しておく。このため、媒体支持部11が排紙スタッカー9の用紙積層可能枚数を侵食することはない。
【0057】
そしてユーザーが略直線状の第3媒体搬送経路を利用してプレート状体(上述したボード紙T等)に記録を行う場合には、媒体支持部11を突出状態に切り換える。すると、図3に示すようにボード紙Tの下流側が媒体支持部11によって支持され得る状態となる。
【0058】
即ち、ボード紙Tに記録を行うとき、下流側が媒体ガイド10による支持領域から外れても、その先に更に媒体支持部11が設けられているので、ボード紙Tの下流側が下方に落ち込むことに伴う上流側の浮き上がりが防止でき、ペーパーギャップを適切に維持することができ、記録品質の低下を防止できる。
【0059】
尚、図3において符号Sは、搬送手段15による媒体ニップ位置(第1位置)と、第1媒体排出手段25(第2位置)による媒体ニップ位置と、第2媒体排出手段28による媒体ニップ位置(第2位置)と、のこれらを結ぶ直線(延長線)を示している。
【0060】
そして媒体ガイド10による媒体の支持位置(ガイド面10aの高さ位置)と、媒体支持部11の頂部(媒体を支持する位置)の高さ位置は、ともに直線S上に設定されている。即ち媒体の支持位置に段差(高さの相違)がなく、これによりペーパーギャップが変化することをより確実に防止できる。
【0061】
尚、図3に示すように、媒体支持部11は突出状態において、上面11bが、排出される媒体の先端を媒体排出方向に案内する傾斜面を成すよう構成されているので、媒体が排出される際に、媒体の先端が媒体支持部11に引っ掛かることを防止できる。
【0062】
尚、この案内構造は図5に示す様に構成することもできる。図5は他の実施形態に係る排紙スタッカー9’を示しており、符号110は媒体支持部を示していて、当該媒体支持部110は既に説明した媒体支持部11と同様に、回動支点110aを中心に回動可能に、且つ収納状態(符号110’)と突出状態とをそれぞれ維持可能に設けられている。但し、本実施形態では媒体支持部110は引き出し部7’ではなくベース部8’に回動可能に設けられている。
【0063】
本実施形態では、媒体支持部110の突出状態における姿勢が媒体排出方向下流側に倒れており、これにより面積の広い上面110bが、排出される媒体の先端を媒体排出方向に案内する傾斜面を成している。このように構成することで、媒体が排出される際に、媒体の先端が媒体支持部110に引っ掛かることを防止することもできる。
【0064】
以上説明した実施形態は一例であり、種々の変形が可能である。例えば、媒体支持部の設置場所(媒体排出方向、或いはこれと直交する方向)は適宜変更することができるし、また媒体支持部の設置数も適宜変更することができる。上述した実施形態では、媒体の搬送基準位置(媒体搬送方向と直交する方向の基準位置)が一方側端部に設定されており、すべてのサイズの媒体が当該一方側端部を通過するため、媒体支持部もこれに応じて一方側端部に偏倚した位置に設けている。しかしながらセンター基準搬送であれば、媒体支持部は排紙スタッカー9の中央位置に設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0065】
1 インクジェットプリンター、6 先端部、7 引き出し部、8 ベース部、9 排紙スタッカー、10 媒体ガイド、15 搬送手段、16 駆動ローラー、17 従動ローラー、18 補助ローラー、19 上部案内部材、21 キャリッジ、22 インクジェット記録ヘッド、23 媒体案内部材、25 第1媒体排出手段、26 駆動ローラー、27 従動ローラー、28 第2媒体排出手段、29 駆動ローラー、30 従動ローラー、31 従動ローラー支持部材、33 排紙受け部材、P 記録用紙、T ボード紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に対し記録を行う記録手段と、
媒体を搬送する媒体搬送経路において前記記録手段より下流側に位置し、記録の行われた媒体を排出する媒体排出手段と、
前記媒体排出手段より下方に位置し、前記媒体排出手段により排出された媒体を受ける媒体受け手段と、を備え、
前記媒体受け手段が、媒体を受ける媒体受け面より上方に突出して媒体を支持可能な突出状態と、前記媒体受け手段内に収納された収納状態と、を切り換え可能な媒体支持部を備えている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記媒体受け手段は、前記媒体受け面の基端側を構成するベース部と、当該ベース部に収納可能に設けられ、当該ベース部から引き出されることにより前記媒体受け面の自由端側を構成する少なくとも1つの引き出し部と、を備えて伸縮自在に構成され、
前記媒体支持部は、前記引き出し部に設けられるとともに、前記突出状態において前記引き出し部が前記ベース部に収納される際に、前記ベース部と係合して前記収納状態に切り換わる、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、前記記録手段の上流側に、媒体を下流側へ送る媒体搬送手段を備え、
前記媒体搬送経路を側視した際の前記媒体支持部による媒体の支持高さは、前記媒体搬送手段が媒体と接する第1位置と、前記媒体排出手段が媒体と接する第2位置と、を結ぶ直線の延長線上或いはその近傍に設定されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、前記媒体搬送経路において前記媒体受け手段より上流側に位置し、前記媒体搬送経路を構成して媒体を支持可能な媒体ガイドを備え、
前記媒体搬送経路を側視した際に、前記媒体ガイドが媒体を支持するガイド面の高さ位置が、前記直線の延長線上或いはその近傍に設定されている、
ことを特徴とする記録装置
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記媒体支持部は、揺動支点を中心に揺動可能にすることにより、前記突出状態と前記収納状態とを切り換えるよう設けられ、
前記突出状態において、前記媒体支持部の上面が、排出される媒体の先端を媒体排出方向に案内する傾斜面を成すよう構成されている、
ことを特徴とする記録措置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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