記録装置
【課題】 記録ヘッドの移動にかかわらずノズル列全体に対して加湿気体が適切に供給されノズル内のインク蒸発を抑制することができ、且つ加湿気体の利用効率が高い優れた記録装置の提供。
【解決手段】 記録装置はライン型の記録ヘッドのノズル列の近傍加湿気体を供給するための加湿部を備えた供給部を有する。供給部は、記録ヘッドのノズル列方向の変位に応じて、供給される加湿気体の上記方向における導入位置を可変にすることが可能である。
【解決手段】 記録装置はライン型の記録ヘッドのノズル列の近傍加湿気体を供給するための加湿部を備えた供給部を有する。供給部は、記録ヘッドのノズル列方向の変位に応じて、供給される加湿気体の上記方向における導入位置を可変にすることが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はライン記録ヘッドを用いるインクジェット方式の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ライン型インクジェット記録装置では、記録領域の全幅にわたってノズル列が形成されたライン記録ヘッドが用いられる。ノズル列の中で使用頻度の低いノズルは、ノズル内のインクの揮発成分が蒸発してインク粘度が上昇していく。インク粘度が上昇が進むとそのノズルが吐出不能になる畏れがある。
【0003】
この課題に対して、記録ヘッドのノズルの近傍に加湿気体を与えて、インクの揮発成分の蒸発を抑える試みがなされている。例えば、特許文献1には、記録ヘッドとシートの間の隙間に向けて加湿気体を供給する構成を備えた記録装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−44021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ライン記録ヘッドでは、ノズル列に含まれるノズルの使用頻度の偏りを軽減してノズル全体としてのトータルの耐久性を高めるために、ある期間ごとに記録ヘッドをシートに対してノズル列の配列方向に移動させることが有効である。
【0006】
ノズル列を移動させると、加湿気体の気流に対するノズル列の位置が変化して、ノズル列の端部では適切な加湿が行なわれなくなる畏れが出てくる。かといって、ノズル列の移動を見込んで広い範囲に大量の加湿気体の送り込むと、無駄が増えて加湿気体の利用効率が悪い。特許文献1の装置ではこの課題に対しての考慮はなんらなされていない。
【0007】
本発明は上述の課題の認識にもとづいてなされたものである。本発明の目的の一つは、記録ヘッドの移動にかかわらずノズル列全体に対して加湿気体が適切に供給されノズル内のインク蒸発を抑制することができ、且つ加湿気体の利用効率が高い優れた記録装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の記録装置のある形態は、シートを第1方向に沿って搬送する搬送機構と、搬送される前記シートに隙間をもって対向するように設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿ってインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型の記録ヘッドと、前記記録ヘッドを前記第2方向に沿って変位させる変位機構と、前記ノズル列の近傍に加湿気体を供給するための供給部とを備え、前記供給部は、前記変位機構による前記記録ヘッドの変位に応じて、供給される前記加湿気体の前記第2方向における導入位置を可変にすることが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録ヘッドの移動にかかわらずノズル列全体に対して加湿気体が適切に供給されノズル内のインク蒸発を抑制することができ、且つ加湿気体の利用効率が高い優れた記録装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る記録装置の全体斜視図
【図2】記録装置の内部構造を示す断面図
【図3】加湿部の概略図
【図4】記録部、供給部、回収部の構成を示す斜視図
【図5】図4を第2方向から見た断面図
【図6】記録部を第1方向から見た断面図
【図7】ホルダが移動したときの記録部の状態を示す断面図
【図8】フラッパの支持構造を説明するための図
【図9】ホルダが第2方向において中央にあるときの気流調整機構の状態を示す図
【図10】ホルダが第2方向において端に移動したときの気流調整機構の状態を示す図
【図11】第2実施形態に係る気流調整機構の構成図
【図12】第3実施形態に係る気流調整機構の構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の第1実施形態に係る記録装置の全体構成を示す斜視図である。記録装置1は、シートの記録時における搬送方向の上流側から下流側に沿って、給紙部18、供給部5、記録部4、回収部6、カッタ部15、乾燥部16、インクタンク部20、制御部19、排紙部17を備える。
【0012】
図2は、図1の記録装置1の内部構造を示す断面図である。給紙部18は、ロール状に巻かれたシート3を回転可能に保持する。なお、本例では記録媒体であるシート3は連続紙であるが、カット紙としてもよい。給紙部18は、シート3を引き出して、シート搬送方向(Y方向、第1方向という)の下流側に供給するための送り機構を有している。
【0013】
記録部4は、異なるインク色にそれぞれ対応した複数の記録ヘッド2を備える。本例ではCMYKの4色に対応した4つの記録ヘッドとしているが、色数はこれには限定されない。各色のインクはインクタンク部20からそれぞれインクチューブを介して記録ヘッド2に供給される。複数の記録ヘッド2のそれぞれは、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲で、インクジェット方式のノズル列が形成されたライン型の記録ヘッドである。ノズル列の並び方向は、第1方向と交差する(本例では直角)方向(X方向、第2方向という)である。ノズル列は単位のノズルチップが千鳥配列等の規則的な配列によって幅方向全域に渡って形成されたもの、一列が幅方向全域に渡って形成されたもの、いずれであってもよい。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。
【0014】
記録部4は、記録ヘッド2に対向してシート搬送路が横切っており、シート搬送路に沿ってシートを搬送するための搬送機構10を有している。搬送機構10は、シート搬送路に沿って並べられた複数の搬送ローラと、隣り合う搬送ローラの間でシート3を支持する支持面を持ったプラテンを備える。これら記録ヘッド2、搬送機構10及びプラテンは筐体22の中に収容されている。上述したように、記録ヘッドのノズル列に対して、搬送されるシートが対向する領域(搬送領域)と、シートが対向しない領域(非搬送領域)の異なる2状態が存在し、使用するシートのサイズに応じて搬送領域と非搬送領域の位置関係や割合は変化する。
【0015】
記録部4の内部には、供給部5で生成された加湿気体が供給される。ここでは気体は空気であるが、空気以外のガスであってもよい。記録部4に供給された加湿気体は回収部6から回収される。回収部6で回収された加湿気体の少なくとも一部は、再利用のために還流ダクト11を介して供給部5に還流される。記録部4において、記録ヘッド2のノズル列の近傍には気体湿度を計測するための湿度センサ23が設けられている。
【0016】
供給部5は、加湿気体を生成し且つ生成した加湿気体を記録ヘッドのノズル列の近傍に供給するものである。供給部5の主な構成部材は、供給ダクト9、加湿部7、ファン8、フィルタ24である。供給ダクト9の下方には搬送機構の複数の搬送ローラのうちの一部を有し、シートの搬送経路が横切っている。供給ダクト9の端部は供給口9aとなっており、ここから加湿気体を噴き出す。供給口9aは、記録部4内部の記録ヘッド2とこれに対抗するシート3又はプラテンの支持面との隙間に対して、搬送方向の上流側から下流側に向けた方向に加湿気体を噴き出すように向きが定められている。供給された加湿気体は上記隙間を主としてシート搬送方向に沿って流れる。後述するように、供給部5は、供給する加湿気体の第2方向における流量分布を可変にすることが可能である。
【0017】
加湿部7は気化式で加湿気体を生成する。図3は加湿部7の構成を示す概略図である。吸水性の高い吸水部材で出来たもしくは吸水部材が貼り付けられた円盤25を有し、円盤25は軸30を中心に駆動機構31により回転するようになっている。円盤25の下方の一部は位置29において、水槽28に貯められた水27に接している。円盤25が回転することで吸水部材の全体が徐々に吸水されていく。供給部5において、フィルタ24により粉塵や異物が除去されたクリーンな気体は、ファン8で加湿部7に導入される。導入された気体は回転する円盤25の一部に位置32にて当たりながら通過するので、吸水部材の水分の一部が気体に移動して、加湿された加湿気体が生成される。加湿部7の加湿能力は、円盤25の回転速度とファン8の回転数によって調整が可能である。湿度センサ23の検出に基づいて適切な湿度の加湿気体が生成されるように、制御部19によってフィードバック制御がなされる。
【0018】
なお、加湿部7は本実施形態のものに限らず、気化式、水噴霧式、蒸気式の周知の方式のものを用いてもよい。気化式には、本実施形態の回転式の他に、透湿膜式、滴下浸透式、毛細管式などがある。水噴霧式には、超音波式、遠心式、高圧スプレー式、2流体噴霧式などがある。蒸気式には、蒸気配管式、電熱式、電極式などがある。
【0019】
加湿部7で生成された加湿気体は気流となって供給ダクト9を通って供給口9aから噴き出す。噴き出した加湿気体は、複数並んだ記録ヘッド2のうちの最上流の記録ヘッドのノズル面近傍に供給される。供給された加湿気体は主として第1方向に沿って上流から下流に、各色の記録ヘッドのノズル列とシート3又はプラテン表面との隙間を順に流れていく。つまり、加湿気体は搬送方向の上流側から供給されて、各記録ヘッドのノズル列とシートとの隙間を搬送方向の下流側に向けて流れる。ノズル先端は流れる加湿気体によって保湿されるので、ノズル内のインクの蒸発及び乾燥が抑制される。
【0020】
回収部6は、記録部4に供給された加湿気体を回収するものである。回収部6の主な構成部材は、回収ダクト12、ファン13、フィルタ14である。回収ダクト12の下方には搬送機構の複数の搬送ローラのうちの一部を有し、シート搬送経路が横切っている。回収ダクト12の端部は回収口12aとなっており、ここから加湿気体を吸い込む。回収口12aは、記録ヘッド2とこれに対抗するシート3又はプラテンの支持面との隙間を流れて最下流の記録ヘッド2を通過した加湿気体を吸い込む位置を設けられている。
【0021】
回収ダクト12に気流を発生させる吸込力はファン13の回転により生成される。フィルタ14は主にインクミストを除去する。回収ダクト12はファン13を経て還流ダクト11に接続され、還流ダクト11はフィルタ24を経て加湿部7及び供給ダクト9に接続されている。つまり、記録部4から回収された加湿気体は、還流ダクト11からなる還流路によって供給部に還流させて再利用される。再利用のために加湿部7に導入される気体は予めある程度の高い湿度を有しているため、装置トータルでみたときの加湿効率が向上する。なお、回収ダクト12から回収した加湿空気の一部を還流させ再利用し、残りは記録装置1の機内に排出するようにしてもよい。また、回収ダクト12に回収した時点で加湿空気の湿度が記録装置1の機内と同程度に小さくなっているのであれば、加湿効率の向上は大きくは見込めないので、還流ダクト11を設けずに加湿空気の再利用はしないようにしてもよい。
【0022】
カッタ部15は、記録部4で記録された連続したシートを所定のサイズごとにカットするためのユニットであり、カッタ機構が設けられている。乾燥部16は、カットされたシートのインクを短時間で乾燥させるためのユニットであり、ヒータ21と経路に沿って並べられた複数の搬送ローラが設けられている。排紙部17は、乾燥部16から排出されたカット済みのシートを収容するもので、複数のシートが積み重ねられていく。制御部19は、記録装置1全体の各種制御や駆動を司るコントローラであり、CPU、メモリ、各種I/Oインターフェースを備える。
【0023】
図4は、記録装置の中の記録部4、供給部5、回収部6の詳細な構成を示す斜視図である。図5は同じ箇所を第2方向から見た断面図である。図6は記録部4を第1方向から見た断面図である。記録部4の筐体22は、シート搬送経路の導入口と排出口を除いて密閉された閉空間を内部に提供する。筐体22の閉空間の中で、複数の記録ヘッド2はホルダ106でまとめて保持されている。
【0024】
ホルダ106は、記録ヘッド2のノズル列の使用頻度の偏りを抑制するために、第2方向もしくはそれに近いの角度方向にも移動することができるようになっている。このためにパルスモータ103、ベルト104、プーリ105を備えた変位機構(第1の変位機構)が設けられている。ホルダ106はベルト104に対して取付部108で固定されている。パルスモータ103により、ベルト104に取り付けられたプーリ105を駆動させている。制御部19は、ノズル列の各ノズルの累積吐出回数あるいは累積使用時間から、ノズル使用頻度の偏りを軽減するように、パルスモータ103を駆動して記録ヘッド2を移動させて、シートに対する使用ノズルを定期的に変更する。ホルダ106は別の変位機構(第2の変位機構)によって記録ヘッド2とシートが対向する上下方向(Z方向、第3方向という)にも変位することができるようになっている。ホルダ106が第3方向に変位することによって、記録時とメンテナンス動作時(予備吐出、ノズルのワイピング、ノズルの乾燥を抑制するキャッピング等)で異なる高さ位置に記録ヘッド2が移動する。
【0025】
ホルダ106の両側面と筐体22の2つの内側面とのそれぞれの間には、フレキシブルな素材からなる封止カバー102が取り付けられている。封止カバー102によって筐体22の内部にさらにチャンバ空間を有するチャンバ構造体が構成される。チャンバ構造体の中に複数の記録ヘッド2の少なくともノズル列を含む一部と、ノズル列に対向する搬送機構の少なくとも一部が内包されている。封止カバー102は水分を通さない防湿素材からなる。封止カバー102は、例えば第2方向及び第3方向にフレキシブルの変形する蛇腹構造であり、ホルダ106の第2方向及び第3方向への変位に追従して変形可能となっている。すなわち、記録ヘッド2が変位するのに伴なってチャンバ構造体の一部が略気密を保ちながら変形するようになっている。チャンバ構造体内部のチャンバ空間は第1方向に関しては開口があるので完全な気密ではないが、湿度が短時間に大きく変動しない程度に緩く略気密に保たれている。
【0026】
図7は、ホルダ106が移動したときの記録部4の状態を示す断面図である。図7(a)は、ホルダ106が第2方向に移動したときの封止カバー102の変形の様子を示す。図7(b)はホルダ106が第3方向に移動したときの封止カバー102の変形の様子を示す。ホルダ106がいずれの方向に移動しても、封止カバー102が略気密を保ちながら変形して、チャンバ空間は緩く気密に保たれる。
【0027】
ホルダ106の両側には、図6に示すように、第1方向に沿って遮蔽板101が取り付けられている。遮蔽板101の下部はプラテン109に対して狭い隙間をもって非接触に対向している。ホルダ106の下面、遮蔽板101、プラテン109の支持面によって、供給された加湿気体が記録ヘッド2の幅領域(記録ヘッド領域)に限定された狭い空間を第1方向に沿って効率的に流れるようにするための、略閉空間の流通空間が形成されている。
【0028】
図4、図5において、気流調整機構100は、記録ヘッドの第2方向での変位に応じて、供給される加湿気体の第2方向における導入位置を可変にすることを可能にする機構である。変位機構による記録ヘッドの第2方向での変位に追従して、記録ヘッドがある領域により大きな流量の加湿気体が供給されるように導入位置を変更が変更される。気流調整機構100は、互いに連動して角度を変更することができる複数(本例では3つ)のフラッパを備えた可動ルーバー構造である。複数のフラッパは、ホルダ106とプラテン109の間の空間において、搬送されるシート3に触れないように、供給ダクト9の供給口9aの近傍に、第2方向に沿って複数並べて配置されている。供給口9aから噴き出した加湿気体は複数のフラッパの間を通過して、記録部4の上記流通空間に導入される。
【0029】
フラッパは、支軸100aと支軸100cの間に平板の羽根100bが接続され、支軸100a及び支軸100cを中心にして羽根100bが回転可能な構造となっている。本例では、羽根100bにはステンレスを採用しているが、加湿により物性変化せず且つ風圧で耐えるだけの剛性を持つものあれば他の材質でもよい。支軸100aは供給部5の筐体に取り付けられ、支軸100cは記録部4内のホルダ106に支持されている。従って、羽根100bの一部は供給部5内に位置し、残りは記録部4内に位置している。図8に示すように、支軸100cは、ホルダ106の下面に第1方向に沿って形成された溝112に沿って移動可能にホルダ106に支持されている。ホルダ106が第2方向に移動すると、これに伴なって支軸100cも第2方向に移動して、フラッパの羽根100bの角度が変化する。このとき、支軸100cは溝112に沿って動く。
【0030】
図9は、ホルダ106が第2方向において中央にあるときの気流調整機構100の状態を示す。図中には、第2方向における、記録ヘッド領域とホルダの移動可能範囲の関係を示している。ホルダの移動にかかわらず記録ヘッド領域に限定した領域に加湿気体を供給すればよい。気流調整機構100の3つのフラッパはいずれも第1方向に平行な方向に向いている。供給口9aから供給された加湿気体は、ほぼ記録ヘッド領域に限定された領域に供給される。供給口9aから供給された加湿気体は、図中矢印で示すように、最上流の記録ヘッドのノズル列までは第1方向に流れる。そして、その後も第1方向に沿って上流から下流に、各色の記録ヘッドのノズル列とシート3又はプラテン表面との隙間を順に流れていく。これにより、ノズル列全体に対して加湿気体が適切に供給され保湿なされてノズル内のインク蒸発を抑制することができ、且つ加湿気体の利用効率が高い。
【0031】
図10はホルダ106が第2方向において端に移動したときの気流調整機構100の状態を示す。3つのフラッパはいずれも第1方向に対して同角度だけ、移動した記録ヘッド2の方向に傾いている。記録ヘッド2の第2方向における変位に応じて、供給される加湿気体の第2方向における導入位置が、図9の例に比較して変化している。このため、供給口9aから供給された加湿気体は、ほぼ記録ヘッド領域に限定された領域に供給される。供給口9aから供給された加湿気体は、図中矢印で示すように、最上流の記録ヘッドのノズル列までは第1方向に対して斜めに流れる。そして、その後は、主として第1方向に沿って上流から下流に、各色の記録ヘッドのノズル列とシート3又はプラテン表面との隙間を順に流れていく。これにより、記録ヘッドの移動にかかわらずノズル列全体に対して加湿気体が適切に供給され保湿なされてノズル内のインク蒸発を抑制することができ、且つ加湿気体の利用効率が高い。
【0032】
図11は、本発明の第2実施形態に係る気流調整機構100の構成を示す。上記の実施形態に較べ、複数のフラッパの角度が平行ではないことを特徴とする。図11(a)はホルダ106が第2方向において中央にあるとき、図11(b)はホルダ106が第2方向において端に移動したときの気流調整機構100の状態を示す。いずれの場合も、記録ヘッドの第2方向での変位にかかわらず、供給口9aから供給された加湿気体は、ほぼ記録ヘッド領域に限定された領域に供給される。3つのフラップは、両端のフラップは中央のフラップに対して平行ではなく内側に向いている。このため、供給口9aをより大きくすることでき、大きな流量の加湿気体を供給することができる。
【0033】
図12は、本発明の第3実施形態に係る気流調整機構100の構成を示す。本例では、気流調整機構は、上述の実施形態のようなルーバー機構ではなく気流を導入する限定された開口を有するシャッタ200である。供給ダクト9の供給口9aの近傍には、記録ヘッド領域の対応した限定された範囲でのみ開口から気流を通して、それ以外の不要領域では気流を遮るためのシャッタ200が設けられている。シャッタ200は、ホルダ106に取り付けられており、ホルダ106の第2方向の移動と共にシャッタ200も第2方向に移動する。つまり、シャッタ200は第2方向に沿った記録ヘッド2の変位と共に開口位置が移動し、開口を通して加湿気体が導入される。図12(a)はホルダ106が第2方向において中央にあるとき、図12(b)はホルダ106が第2方向において端に移動したときのシャッタ200の状態を示す。ホルダ106のどの位置に移動しても、シャッタ200は記録ヘッドに対応した位置に気流導入用の開口を提供する。供給口9aから噴き出した加湿気体は、シャッタ200の開口を通して、記録部4の流通空間に導入される。
【0034】
以上の実施形態によれば、加湿気体は気流調整機構100によって、記録ヘッドの第2方向での変位に拘わらず、ほぼ記録ヘッド領域に限定された加湿が必要とされる領域に絞って供給される。そのため、加湿気体の利用効率が高く、加湿部を含む供給部の能力を大きなものにしなくてもノズル列全体に対して適切な加湿を行なうことができる。
【0035】
記録ヘッドのノズル列は、一部がフレキシブルなチャンバ構造体に収容されているので、記録ヘッドが第2方向又は第3方向に変位しても必要な密閉が保たれ、加湿空気の利用効率を更に高めている。また、ホルダの下面、遮蔽板、搬送機構の一部によって形成された狭い空間に供給部から加湿気体が導入されて第1方向に沿って流れるので、加湿気体の利用効率を更に高めている。また、ノズル列の近傍に供給された加湿気体を、供給部に還流させて再利用するための還流路を有しているので、加湿気体の利用効率を更に高めている。
【符号の説明】
【0036】
1 記録装置
2 記録ヘッド
3 シート
4 記録部
5 供給部
6 回収部
7 加湿部
8 ファン
9 供給ダクト
10 搬送機構
11 還流ダクト
12 回収ダクト
13 ファン
14 吸引フィルタ
18 供給部
19 制御部
100 気流調整機構
【技術分野】
【0001】
本発明はライン記録ヘッドを用いるインクジェット方式の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ライン型インクジェット記録装置では、記録領域の全幅にわたってノズル列が形成されたライン記録ヘッドが用いられる。ノズル列の中で使用頻度の低いノズルは、ノズル内のインクの揮発成分が蒸発してインク粘度が上昇していく。インク粘度が上昇が進むとそのノズルが吐出不能になる畏れがある。
【0003】
この課題に対して、記録ヘッドのノズルの近傍に加湿気体を与えて、インクの揮発成分の蒸発を抑える試みがなされている。例えば、特許文献1には、記録ヘッドとシートの間の隙間に向けて加湿気体を供給する構成を備えた記録装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−44021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ライン記録ヘッドでは、ノズル列に含まれるノズルの使用頻度の偏りを軽減してノズル全体としてのトータルの耐久性を高めるために、ある期間ごとに記録ヘッドをシートに対してノズル列の配列方向に移動させることが有効である。
【0006】
ノズル列を移動させると、加湿気体の気流に対するノズル列の位置が変化して、ノズル列の端部では適切な加湿が行なわれなくなる畏れが出てくる。かといって、ノズル列の移動を見込んで広い範囲に大量の加湿気体の送り込むと、無駄が増えて加湿気体の利用効率が悪い。特許文献1の装置ではこの課題に対しての考慮はなんらなされていない。
【0007】
本発明は上述の課題の認識にもとづいてなされたものである。本発明の目的の一つは、記録ヘッドの移動にかかわらずノズル列全体に対して加湿気体が適切に供給されノズル内のインク蒸発を抑制することができ、且つ加湿気体の利用効率が高い優れた記録装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の記録装置のある形態は、シートを第1方向に沿って搬送する搬送機構と、搬送される前記シートに隙間をもって対向するように設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿ってインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型の記録ヘッドと、前記記録ヘッドを前記第2方向に沿って変位させる変位機構と、前記ノズル列の近傍に加湿気体を供給するための供給部とを備え、前記供給部は、前記変位機構による前記記録ヘッドの変位に応じて、供給される前記加湿気体の前記第2方向における導入位置を可変にすることが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録ヘッドの移動にかかわらずノズル列全体に対して加湿気体が適切に供給されノズル内のインク蒸発を抑制することができ、且つ加湿気体の利用効率が高い優れた記録装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る記録装置の全体斜視図
【図2】記録装置の内部構造を示す断面図
【図3】加湿部の概略図
【図4】記録部、供給部、回収部の構成を示す斜視図
【図5】図4を第2方向から見た断面図
【図6】記録部を第1方向から見た断面図
【図7】ホルダが移動したときの記録部の状態を示す断面図
【図8】フラッパの支持構造を説明するための図
【図9】ホルダが第2方向において中央にあるときの気流調整機構の状態を示す図
【図10】ホルダが第2方向において端に移動したときの気流調整機構の状態を示す図
【図11】第2実施形態に係る気流調整機構の構成図
【図12】第3実施形態に係る気流調整機構の構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の第1実施形態に係る記録装置の全体構成を示す斜視図である。記録装置1は、シートの記録時における搬送方向の上流側から下流側に沿って、給紙部18、供給部5、記録部4、回収部6、カッタ部15、乾燥部16、インクタンク部20、制御部19、排紙部17を備える。
【0012】
図2は、図1の記録装置1の内部構造を示す断面図である。給紙部18は、ロール状に巻かれたシート3を回転可能に保持する。なお、本例では記録媒体であるシート3は連続紙であるが、カット紙としてもよい。給紙部18は、シート3を引き出して、シート搬送方向(Y方向、第1方向という)の下流側に供給するための送り機構を有している。
【0013】
記録部4は、異なるインク色にそれぞれ対応した複数の記録ヘッド2を備える。本例ではCMYKの4色に対応した4つの記録ヘッドとしているが、色数はこれには限定されない。各色のインクはインクタンク部20からそれぞれインクチューブを介して記録ヘッド2に供給される。複数の記録ヘッド2のそれぞれは、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲で、インクジェット方式のノズル列が形成されたライン型の記録ヘッドである。ノズル列の並び方向は、第1方向と交差する(本例では直角)方向(X方向、第2方向という)である。ノズル列は単位のノズルチップが千鳥配列等の規則的な配列によって幅方向全域に渡って形成されたもの、一列が幅方向全域に渡って形成されたもの、いずれであってもよい。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。
【0014】
記録部4は、記録ヘッド2に対向してシート搬送路が横切っており、シート搬送路に沿ってシートを搬送するための搬送機構10を有している。搬送機構10は、シート搬送路に沿って並べられた複数の搬送ローラと、隣り合う搬送ローラの間でシート3を支持する支持面を持ったプラテンを備える。これら記録ヘッド2、搬送機構10及びプラテンは筐体22の中に収容されている。上述したように、記録ヘッドのノズル列に対して、搬送されるシートが対向する領域(搬送領域)と、シートが対向しない領域(非搬送領域)の異なる2状態が存在し、使用するシートのサイズに応じて搬送領域と非搬送領域の位置関係や割合は変化する。
【0015】
記録部4の内部には、供給部5で生成された加湿気体が供給される。ここでは気体は空気であるが、空気以外のガスであってもよい。記録部4に供給された加湿気体は回収部6から回収される。回収部6で回収された加湿気体の少なくとも一部は、再利用のために還流ダクト11を介して供給部5に還流される。記録部4において、記録ヘッド2のノズル列の近傍には気体湿度を計測するための湿度センサ23が設けられている。
【0016】
供給部5は、加湿気体を生成し且つ生成した加湿気体を記録ヘッドのノズル列の近傍に供給するものである。供給部5の主な構成部材は、供給ダクト9、加湿部7、ファン8、フィルタ24である。供給ダクト9の下方には搬送機構の複数の搬送ローラのうちの一部を有し、シートの搬送経路が横切っている。供給ダクト9の端部は供給口9aとなっており、ここから加湿気体を噴き出す。供給口9aは、記録部4内部の記録ヘッド2とこれに対抗するシート3又はプラテンの支持面との隙間に対して、搬送方向の上流側から下流側に向けた方向に加湿気体を噴き出すように向きが定められている。供給された加湿気体は上記隙間を主としてシート搬送方向に沿って流れる。後述するように、供給部5は、供給する加湿気体の第2方向における流量分布を可変にすることが可能である。
【0017】
加湿部7は気化式で加湿気体を生成する。図3は加湿部7の構成を示す概略図である。吸水性の高い吸水部材で出来たもしくは吸水部材が貼り付けられた円盤25を有し、円盤25は軸30を中心に駆動機構31により回転するようになっている。円盤25の下方の一部は位置29において、水槽28に貯められた水27に接している。円盤25が回転することで吸水部材の全体が徐々に吸水されていく。供給部5において、フィルタ24により粉塵や異物が除去されたクリーンな気体は、ファン8で加湿部7に導入される。導入された気体は回転する円盤25の一部に位置32にて当たりながら通過するので、吸水部材の水分の一部が気体に移動して、加湿された加湿気体が生成される。加湿部7の加湿能力は、円盤25の回転速度とファン8の回転数によって調整が可能である。湿度センサ23の検出に基づいて適切な湿度の加湿気体が生成されるように、制御部19によってフィードバック制御がなされる。
【0018】
なお、加湿部7は本実施形態のものに限らず、気化式、水噴霧式、蒸気式の周知の方式のものを用いてもよい。気化式には、本実施形態の回転式の他に、透湿膜式、滴下浸透式、毛細管式などがある。水噴霧式には、超音波式、遠心式、高圧スプレー式、2流体噴霧式などがある。蒸気式には、蒸気配管式、電熱式、電極式などがある。
【0019】
加湿部7で生成された加湿気体は気流となって供給ダクト9を通って供給口9aから噴き出す。噴き出した加湿気体は、複数並んだ記録ヘッド2のうちの最上流の記録ヘッドのノズル面近傍に供給される。供給された加湿気体は主として第1方向に沿って上流から下流に、各色の記録ヘッドのノズル列とシート3又はプラテン表面との隙間を順に流れていく。つまり、加湿気体は搬送方向の上流側から供給されて、各記録ヘッドのノズル列とシートとの隙間を搬送方向の下流側に向けて流れる。ノズル先端は流れる加湿気体によって保湿されるので、ノズル内のインクの蒸発及び乾燥が抑制される。
【0020】
回収部6は、記録部4に供給された加湿気体を回収するものである。回収部6の主な構成部材は、回収ダクト12、ファン13、フィルタ14である。回収ダクト12の下方には搬送機構の複数の搬送ローラのうちの一部を有し、シート搬送経路が横切っている。回収ダクト12の端部は回収口12aとなっており、ここから加湿気体を吸い込む。回収口12aは、記録ヘッド2とこれに対抗するシート3又はプラテンの支持面との隙間を流れて最下流の記録ヘッド2を通過した加湿気体を吸い込む位置を設けられている。
【0021】
回収ダクト12に気流を発生させる吸込力はファン13の回転により生成される。フィルタ14は主にインクミストを除去する。回収ダクト12はファン13を経て還流ダクト11に接続され、還流ダクト11はフィルタ24を経て加湿部7及び供給ダクト9に接続されている。つまり、記録部4から回収された加湿気体は、還流ダクト11からなる還流路によって供給部に還流させて再利用される。再利用のために加湿部7に導入される気体は予めある程度の高い湿度を有しているため、装置トータルでみたときの加湿効率が向上する。なお、回収ダクト12から回収した加湿空気の一部を還流させ再利用し、残りは記録装置1の機内に排出するようにしてもよい。また、回収ダクト12に回収した時点で加湿空気の湿度が記録装置1の機内と同程度に小さくなっているのであれば、加湿効率の向上は大きくは見込めないので、還流ダクト11を設けずに加湿空気の再利用はしないようにしてもよい。
【0022】
カッタ部15は、記録部4で記録された連続したシートを所定のサイズごとにカットするためのユニットであり、カッタ機構が設けられている。乾燥部16は、カットされたシートのインクを短時間で乾燥させるためのユニットであり、ヒータ21と経路に沿って並べられた複数の搬送ローラが設けられている。排紙部17は、乾燥部16から排出されたカット済みのシートを収容するもので、複数のシートが積み重ねられていく。制御部19は、記録装置1全体の各種制御や駆動を司るコントローラであり、CPU、メモリ、各種I/Oインターフェースを備える。
【0023】
図4は、記録装置の中の記録部4、供給部5、回収部6の詳細な構成を示す斜視図である。図5は同じ箇所を第2方向から見た断面図である。図6は記録部4を第1方向から見た断面図である。記録部4の筐体22は、シート搬送経路の導入口と排出口を除いて密閉された閉空間を内部に提供する。筐体22の閉空間の中で、複数の記録ヘッド2はホルダ106でまとめて保持されている。
【0024】
ホルダ106は、記録ヘッド2のノズル列の使用頻度の偏りを抑制するために、第2方向もしくはそれに近いの角度方向にも移動することができるようになっている。このためにパルスモータ103、ベルト104、プーリ105を備えた変位機構(第1の変位機構)が設けられている。ホルダ106はベルト104に対して取付部108で固定されている。パルスモータ103により、ベルト104に取り付けられたプーリ105を駆動させている。制御部19は、ノズル列の各ノズルの累積吐出回数あるいは累積使用時間から、ノズル使用頻度の偏りを軽減するように、パルスモータ103を駆動して記録ヘッド2を移動させて、シートに対する使用ノズルを定期的に変更する。ホルダ106は別の変位機構(第2の変位機構)によって記録ヘッド2とシートが対向する上下方向(Z方向、第3方向という)にも変位することができるようになっている。ホルダ106が第3方向に変位することによって、記録時とメンテナンス動作時(予備吐出、ノズルのワイピング、ノズルの乾燥を抑制するキャッピング等)で異なる高さ位置に記録ヘッド2が移動する。
【0025】
ホルダ106の両側面と筐体22の2つの内側面とのそれぞれの間には、フレキシブルな素材からなる封止カバー102が取り付けられている。封止カバー102によって筐体22の内部にさらにチャンバ空間を有するチャンバ構造体が構成される。チャンバ構造体の中に複数の記録ヘッド2の少なくともノズル列を含む一部と、ノズル列に対向する搬送機構の少なくとも一部が内包されている。封止カバー102は水分を通さない防湿素材からなる。封止カバー102は、例えば第2方向及び第3方向にフレキシブルの変形する蛇腹構造であり、ホルダ106の第2方向及び第3方向への変位に追従して変形可能となっている。すなわち、記録ヘッド2が変位するのに伴なってチャンバ構造体の一部が略気密を保ちながら変形するようになっている。チャンバ構造体内部のチャンバ空間は第1方向に関しては開口があるので完全な気密ではないが、湿度が短時間に大きく変動しない程度に緩く略気密に保たれている。
【0026】
図7は、ホルダ106が移動したときの記録部4の状態を示す断面図である。図7(a)は、ホルダ106が第2方向に移動したときの封止カバー102の変形の様子を示す。図7(b)はホルダ106が第3方向に移動したときの封止カバー102の変形の様子を示す。ホルダ106がいずれの方向に移動しても、封止カバー102が略気密を保ちながら変形して、チャンバ空間は緩く気密に保たれる。
【0027】
ホルダ106の両側には、図6に示すように、第1方向に沿って遮蔽板101が取り付けられている。遮蔽板101の下部はプラテン109に対して狭い隙間をもって非接触に対向している。ホルダ106の下面、遮蔽板101、プラテン109の支持面によって、供給された加湿気体が記録ヘッド2の幅領域(記録ヘッド領域)に限定された狭い空間を第1方向に沿って効率的に流れるようにするための、略閉空間の流通空間が形成されている。
【0028】
図4、図5において、気流調整機構100は、記録ヘッドの第2方向での変位に応じて、供給される加湿気体の第2方向における導入位置を可変にすることを可能にする機構である。変位機構による記録ヘッドの第2方向での変位に追従して、記録ヘッドがある領域により大きな流量の加湿気体が供給されるように導入位置を変更が変更される。気流調整機構100は、互いに連動して角度を変更することができる複数(本例では3つ)のフラッパを備えた可動ルーバー構造である。複数のフラッパは、ホルダ106とプラテン109の間の空間において、搬送されるシート3に触れないように、供給ダクト9の供給口9aの近傍に、第2方向に沿って複数並べて配置されている。供給口9aから噴き出した加湿気体は複数のフラッパの間を通過して、記録部4の上記流通空間に導入される。
【0029】
フラッパは、支軸100aと支軸100cの間に平板の羽根100bが接続され、支軸100a及び支軸100cを中心にして羽根100bが回転可能な構造となっている。本例では、羽根100bにはステンレスを採用しているが、加湿により物性変化せず且つ風圧で耐えるだけの剛性を持つものあれば他の材質でもよい。支軸100aは供給部5の筐体に取り付けられ、支軸100cは記録部4内のホルダ106に支持されている。従って、羽根100bの一部は供給部5内に位置し、残りは記録部4内に位置している。図8に示すように、支軸100cは、ホルダ106の下面に第1方向に沿って形成された溝112に沿って移動可能にホルダ106に支持されている。ホルダ106が第2方向に移動すると、これに伴なって支軸100cも第2方向に移動して、フラッパの羽根100bの角度が変化する。このとき、支軸100cは溝112に沿って動く。
【0030】
図9は、ホルダ106が第2方向において中央にあるときの気流調整機構100の状態を示す。図中には、第2方向における、記録ヘッド領域とホルダの移動可能範囲の関係を示している。ホルダの移動にかかわらず記録ヘッド領域に限定した領域に加湿気体を供給すればよい。気流調整機構100の3つのフラッパはいずれも第1方向に平行な方向に向いている。供給口9aから供給された加湿気体は、ほぼ記録ヘッド領域に限定された領域に供給される。供給口9aから供給された加湿気体は、図中矢印で示すように、最上流の記録ヘッドのノズル列までは第1方向に流れる。そして、その後も第1方向に沿って上流から下流に、各色の記録ヘッドのノズル列とシート3又はプラテン表面との隙間を順に流れていく。これにより、ノズル列全体に対して加湿気体が適切に供給され保湿なされてノズル内のインク蒸発を抑制することができ、且つ加湿気体の利用効率が高い。
【0031】
図10はホルダ106が第2方向において端に移動したときの気流調整機構100の状態を示す。3つのフラッパはいずれも第1方向に対して同角度だけ、移動した記録ヘッド2の方向に傾いている。記録ヘッド2の第2方向における変位に応じて、供給される加湿気体の第2方向における導入位置が、図9の例に比較して変化している。このため、供給口9aから供給された加湿気体は、ほぼ記録ヘッド領域に限定された領域に供給される。供給口9aから供給された加湿気体は、図中矢印で示すように、最上流の記録ヘッドのノズル列までは第1方向に対して斜めに流れる。そして、その後は、主として第1方向に沿って上流から下流に、各色の記録ヘッドのノズル列とシート3又はプラテン表面との隙間を順に流れていく。これにより、記録ヘッドの移動にかかわらずノズル列全体に対して加湿気体が適切に供給され保湿なされてノズル内のインク蒸発を抑制することができ、且つ加湿気体の利用効率が高い。
【0032】
図11は、本発明の第2実施形態に係る気流調整機構100の構成を示す。上記の実施形態に較べ、複数のフラッパの角度が平行ではないことを特徴とする。図11(a)はホルダ106が第2方向において中央にあるとき、図11(b)はホルダ106が第2方向において端に移動したときの気流調整機構100の状態を示す。いずれの場合も、記録ヘッドの第2方向での変位にかかわらず、供給口9aから供給された加湿気体は、ほぼ記録ヘッド領域に限定された領域に供給される。3つのフラップは、両端のフラップは中央のフラップに対して平行ではなく内側に向いている。このため、供給口9aをより大きくすることでき、大きな流量の加湿気体を供給することができる。
【0033】
図12は、本発明の第3実施形態に係る気流調整機構100の構成を示す。本例では、気流調整機構は、上述の実施形態のようなルーバー機構ではなく気流を導入する限定された開口を有するシャッタ200である。供給ダクト9の供給口9aの近傍には、記録ヘッド領域の対応した限定された範囲でのみ開口から気流を通して、それ以外の不要領域では気流を遮るためのシャッタ200が設けられている。シャッタ200は、ホルダ106に取り付けられており、ホルダ106の第2方向の移動と共にシャッタ200も第2方向に移動する。つまり、シャッタ200は第2方向に沿った記録ヘッド2の変位と共に開口位置が移動し、開口を通して加湿気体が導入される。図12(a)はホルダ106が第2方向において中央にあるとき、図12(b)はホルダ106が第2方向において端に移動したときのシャッタ200の状態を示す。ホルダ106のどの位置に移動しても、シャッタ200は記録ヘッドに対応した位置に気流導入用の開口を提供する。供給口9aから噴き出した加湿気体は、シャッタ200の開口を通して、記録部4の流通空間に導入される。
【0034】
以上の実施形態によれば、加湿気体は気流調整機構100によって、記録ヘッドの第2方向での変位に拘わらず、ほぼ記録ヘッド領域に限定された加湿が必要とされる領域に絞って供給される。そのため、加湿気体の利用効率が高く、加湿部を含む供給部の能力を大きなものにしなくてもノズル列全体に対して適切な加湿を行なうことができる。
【0035】
記録ヘッドのノズル列は、一部がフレキシブルなチャンバ構造体に収容されているので、記録ヘッドが第2方向又は第3方向に変位しても必要な密閉が保たれ、加湿空気の利用効率を更に高めている。また、ホルダの下面、遮蔽板、搬送機構の一部によって形成された狭い空間に供給部から加湿気体が導入されて第1方向に沿って流れるので、加湿気体の利用効率を更に高めている。また、ノズル列の近傍に供給された加湿気体を、供給部に還流させて再利用するための還流路を有しているので、加湿気体の利用効率を更に高めている。
【符号の説明】
【0036】
1 記録装置
2 記録ヘッド
3 シート
4 記録部
5 供給部
6 回収部
7 加湿部
8 ファン
9 供給ダクト
10 搬送機構
11 還流ダクト
12 回収ダクト
13 ファン
14 吸引フィルタ
18 供給部
19 制御部
100 気流調整機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを第1方向に沿って搬送する搬送機構と、
搬送される前記シートに隙間をもって対向するように設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿ってインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型の記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを前記第2方向に沿って変位させる変位機構と、
前記ノズル列の近傍に加湿気体を供給するための供給部と、を備え、
前記供給部は、前記変位機構による前記記録ヘッドの変位に応じて、供給される前記加湿気体の前記第2方向における導入位置を可変にすることが可能であることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記供給部は、前記変位機構による前記記録ヘッドの変位に追従して、前記記録ヘッドがある領域により大きな流量の前記加湿気体が供給されるように前記導入位置を変更するものであり、供給された加湿気体は主として前記第1方向に沿って前記隙間を流れることを特徴とする、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記ノズル列と前記ノズル列に対向する前記搬送機構の少なくとも一部を内包する空間を提供するチャンバ構造体を有することを特徴とする、請求項1から2のいずれかに記載の記録装置。
【請求項4】
前記供給部は、前記加湿気体を生成するための加湿部と、前記生成された加湿気体を前記ノズル列を前記チャンバ構造体の空間に導くためのダクトを有することを特徴とする、請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドが前記第2方向に変位するのに伴なって前記チャンバ構造体の一部が変形することを特徴とする、請求項3又は4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドを前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に変位させる機構を更に有し、前記第3方向に前記記録ヘッドが変位するのに伴なって前記チャンバ構造体の一部が変形することを特徴とする、請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記チャンバ構造体の一部は、前記記録ヘッドを保持して変位することが可能であるホルダに取り付けられ、前記ホルダの変位に追従して変形するフレキシブルな部材であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記ホルダに取り付けられ、前記第2方向において前記記録ヘッドの両側を挟むように設けられた2つの遮蔽板を有し、前記ホルダの下面、前記2つの遮蔽板、前記搬送機構の一部によって形成された空間に前記供給部から前記加湿気体が導入されて、前記第1方向に沿って流れることを特徴とする、請求項7記載の記録装置。
【請求項9】
前記供給部はフラッパを有する気流調整機構を備え、前記変位機構による前記記録ヘッドの変位に追従して前記フラッパの向きを変更して前記加湿気体の気流の向きを変えることが可能であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項10】
前記供給部は、前記第2方向に沿った前記記録ヘッドの変位と共に開口位置が移動するシャッタを備え、前記シャッタの開口を通して前記加湿気体が導入されることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項11】
シートを第1方向に沿って搬送する搬送機構と、
搬送される前記シートに隙間をもって対向するように設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿ってインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型の記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを保持して変位することが可能であるホルダと、
前記ホルダを前記第2方向に沿って変位させる第1変位機構と、
前記ホルダを前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に変位させる第2変位機構と、
前記ノズル列と前記ノズル列に対向する前記搬送機構の少なくとも一部を内包する空間を提供し、前記ホルダが前記第2方向又は前記第3方向に変位するのに伴なって変形するフレキシブルな部材を有するチャンバ構造体と、
前記チャンバ構造体に内包される空間に加湿気体を供給するための供給部と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項12】
前記ホルダに取り付けられ、前記第2方向において前記記録ヘッドの両側を挟むように設けられた2つの遮蔽板を有し、前記ホルダの下面、前記2つの遮蔽板、前記搬送機構の一部によって形成された空間に前記供給部から前記加湿気体が導入されて、前記第1方向に沿って流れることを特徴とする、請求項11記載の記録装置。
【請求項13】
複数の前記記録ヘッドが前記第1方向に沿って並べられており、前記加湿気体は上流側から供給されて、各記録ヘッドのノズル列の近傍を下流側に向けて流れることを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の記録装置。
【請求項14】
前記ノズル列の近傍に供給された前記加湿気体を、前記供給部に還流させて再利用するための還流路を有することを特徴とする、請求項1から13のいずれかに記載の記録装置。
【請求項1】
シートを第1方向に沿って搬送する搬送機構と、
搬送される前記シートに隙間をもって対向するように設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿ってインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型の記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを前記第2方向に沿って変位させる変位機構と、
前記ノズル列の近傍に加湿気体を供給するための供給部と、を備え、
前記供給部は、前記変位機構による前記記録ヘッドの変位に応じて、供給される前記加湿気体の前記第2方向における導入位置を可変にすることが可能であることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記供給部は、前記変位機構による前記記録ヘッドの変位に追従して、前記記録ヘッドがある領域により大きな流量の前記加湿気体が供給されるように前記導入位置を変更するものであり、供給された加湿気体は主として前記第1方向に沿って前記隙間を流れることを特徴とする、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記ノズル列と前記ノズル列に対向する前記搬送機構の少なくとも一部を内包する空間を提供するチャンバ構造体を有することを特徴とする、請求項1から2のいずれかに記載の記録装置。
【請求項4】
前記供給部は、前記加湿気体を生成するための加湿部と、前記生成された加湿気体を前記ノズル列を前記チャンバ構造体の空間に導くためのダクトを有することを特徴とする、請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドが前記第2方向に変位するのに伴なって前記チャンバ構造体の一部が変形することを特徴とする、請求項3又は4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドを前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に変位させる機構を更に有し、前記第3方向に前記記録ヘッドが変位するのに伴なって前記チャンバ構造体の一部が変形することを特徴とする、請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記チャンバ構造体の一部は、前記記録ヘッドを保持して変位することが可能であるホルダに取り付けられ、前記ホルダの変位に追従して変形するフレキシブルな部材であることを特徴とする、請求項5又は6に記載の記録装置。
【請求項8】
前記ホルダに取り付けられ、前記第2方向において前記記録ヘッドの両側を挟むように設けられた2つの遮蔽板を有し、前記ホルダの下面、前記2つの遮蔽板、前記搬送機構の一部によって形成された空間に前記供給部から前記加湿気体が導入されて、前記第1方向に沿って流れることを特徴とする、請求項7記載の記録装置。
【請求項9】
前記供給部はフラッパを有する気流調整機構を備え、前記変位機構による前記記録ヘッドの変位に追従して前記フラッパの向きを変更して前記加湿気体の気流の向きを変えることが可能であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項10】
前記供給部は、前記第2方向に沿った前記記録ヘッドの変位と共に開口位置が移動するシャッタを備え、前記シャッタの開口を通して前記加湿気体が導入されることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項11】
シートを第1方向に沿って搬送する搬送機構と、
搬送される前記シートに隙間をもって対向するように設けられ、前記第1方向と交差する第2方向に沿ってインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型の記録ヘッドと、
前記記録ヘッドを保持して変位することが可能であるホルダと、
前記ホルダを前記第2方向に沿って変位させる第1変位機構と、
前記ホルダを前記第1方向及び前記第2方向と交差する第3方向に変位させる第2変位機構と、
前記ノズル列と前記ノズル列に対向する前記搬送機構の少なくとも一部を内包する空間を提供し、前記ホルダが前記第2方向又は前記第3方向に変位するのに伴なって変形するフレキシブルな部材を有するチャンバ構造体と、
前記チャンバ構造体に内包される空間に加湿気体を供給するための供給部と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項12】
前記ホルダに取り付けられ、前記第2方向において前記記録ヘッドの両側を挟むように設けられた2つの遮蔽板を有し、前記ホルダの下面、前記2つの遮蔽板、前記搬送機構の一部によって形成された空間に前記供給部から前記加湿気体が導入されて、前記第1方向に沿って流れることを特徴とする、請求項11記載の記録装置。
【請求項13】
複数の前記記録ヘッドが前記第1方向に沿って並べられており、前記加湿気体は上流側から供給されて、各記録ヘッドのノズル列の近傍を下流側に向けて流れることを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の記録装置。
【請求項14】
前記ノズル列の近傍に供給された前記加湿気体を、前記供給部に還流させて再利用するための還流路を有することを特徴とする、請求項1から13のいずれかに記載の記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−98521(P2011−98521A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255227(P2009−255227)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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