説明

記録装置

【課題】記録媒体の下端を、媒体排出手段の近傍から保持面側に確実に送り込むことできる。
【解決手段】用紙P上に画像を記録する印刷部3と、印刷済みの用紙Pを起立姿勢で且つ保持面61に重ねて保持する排紙保持部52と、排紙保持部52側に配設した排紙駆動ローラー44aと排紙駆動ローラー44aに転接する排紙従動ローラー44bとからなるニップローラーを有して、印刷済みの用紙Pを保持面61に沿わせるように下方から送り出す排紙ローラー44と、送り出された直後の前記記録媒体の下端に当接し、前記記録媒体をリフトアップした後、排紙駆動ローラー44aの頂部を越えた位置に落とし込むリフトアップ機構47と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録済みの記録媒体を起立姿勢で保持する記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録装置として、シートを搬送する搬送ローラーと、シートに画像を転写する画像転写部と、転写済みのシートを排出し、縦姿勢で保持する排紙部と、を備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−35137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような構成の排紙部は、シートを保持する保持面を有した保持部と、保持面側に配設した駆動ローラーと駆動ローラーに転接する従動ローラーとからなるニップローラーを有すると共に、シートを保持面に沿わせるように下方から送り出す排紙手段と、を備えている。
しかしながら、かかる構成では、ニップローラーから送り出された(離れた)記録媒体の下端が、ニップローラーの近傍から外れず、その場に止まってしまうという問題があった。すなわち、上記のような構成では、ニップローラーによって、記録媒体を鉛直に近い角度で送り出すことになるが、かかる際、ニップローラーのニップ点が、駆動ローラーの頂部から極端に低くなってしまうので、ニップ点から外れた記録媒体の下端に対し、駆動ローラーが滑って(摩擦不足)、駆動ローラーの頂部を越えることができず、その場に止まってしまう。かかる場合に、次の記録媒体が送られて来たり、駆動ローラーを逆転させると、ジャムの原因となってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、記録媒体の下端を、媒体排出手段の近傍から保持面側に確実に送り込むことできる記録装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、記録媒体上に画像を記録する画像記録部と、記録済みの記録媒体を起立姿勢で且つ保持面に重ねて保持する保持部と、保持部側に配設した駆動ローラーと駆動ローラーに転接する従動ローラーとからなるニップローラーを有して、記録済みの記録媒体を保持面に沿わせるように下方から送り出す媒体排出手段と、送り出された直後の記録媒体の下端に当接し、記録媒体をリフトアップした後、駆動ローラーの頂部を越えた位置に落とし込むリフトアップ手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、記録媒体をリフトアップした後、駆動ローラーの頂部を越えた位置に落とし込んで、記録媒体の下端を保持面側に送り込むため、記録媒体の下端を、媒体排出手段の近傍から保持面側に確実に送り込むことできる。
【0008】
この場合、リフトアップ手段は、上端面で記録媒体の下端に当接すると共に、駆動ローラー側が凹となるように湾曲した断面円弧状の円弧片部を有する当接部材と、円弧片部の曲率に倣って当接部材を進退させる進退動機構と、を有していることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、当接部材を円弧状に進退させるため、進退動によって、記録媒体の送り出し経路から退避した退避位置と、円弧片部の上端面が記録媒体の下端に当接する当接位置と、当接した記録媒体をリフトアップしたリフトアップ位置と、の間で当接部材を移動させる。一方、当接部材の前進に伴って、円弧片部の上端面が徐々に傾斜していくので、所定位置で記録媒体の下端が自動的に滑り落ち、落とし込みが実行される。このように、退避位置、当接位置およびリフトアップ位置の間の移動と、落とし込みの実行と、を簡単な構成で実現することができる。
【0010】
また、円弧片部の上端面は、凹状に形成されていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、円弧片部の上端面を、凹状(掬い状)に形成することによって、記録媒体の下端が、落とし込みの実行前に、上端面から落ちてしまうことを防止することができる。なお、凹状に形成するものであれば、湾曲凹状に形成しても良いし、角型凹状に形成しても良い。
【0012】
さらに、駆動ローラーは、軸方向に所定の間隙を存して配設した複数の分割駆動ローラーを、有し、従動ローラーは、軸方向に上記所定の間隙を存して配設した複数の分割従動ローラーを、有し、当接部材は、上記間隙に対応する円弧片部を有した櫛歯状に形成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、上端面を、記録媒体下端の幅方向各箇所に当接させることができるため、記録媒体のリフトアップおよび落とし込みを安定的に実行することができる。
【0014】
一方、リフトアップ手段は、記録媒体が送り出された直後のタイミングで、進退動機構を駆動する送込み制御手段を、更に有していることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、送込み制御手段によって、進退動を自動的に行うため、手動操作の手間を省くことができる。
【0016】
また、保持部は、リフトアップ手段により落とし込んだ記録媒体を、さらに保持位置に導く傾斜部と、傾斜部に連なり、保持位置に移動した記録媒体を下側から支持する支持部と、を有していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、傾斜部により、記録媒体の下部を、保持位置に円滑に導くことができると共に、支持部により、記録媒体を保持位置で適切に保持することができる。また、保持後の記録媒体と媒体排出手段との接触を有効に防止することができる。
【0018】
さらに、未記録の記録媒体を起立姿勢で収容すると共に着脱自在に構成された媒体カセットを、更に備え、保持部は、媒体カセットの外面に形成されていることが好ましい。
【0019】
記録済みの記録媒体を起立姿勢で保持する記録装置では、一般的に、記録媒体の上部を装置外部に露出させた状態で保持し、この露出部分によって記録媒体を装置本体から引き出す構成を有している。しかしながら、葉書のような寸法の小さい記録媒体を保持する場合、記録媒体の上部が装置外部に露出せず、取り出し不能になってしまう。
これに対し、上記構成によれば、保持部を媒体カセットと一体として取り外すことができるため、寸法の小さい記録媒体を保持した際にも、容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る記録装置を示した外観斜視図である。
【図2】記録装置の内部構造を示した側方断面図である。
【図3】用紙カセットを示した裏面斜視図である。
【図4】排紙保持部廻りを示した要部断面図である。
【図5】リフトアップ機構を示した斜視図(a)および平面図(b)である。
【図6】円弧状部材を退避位置に移動した際の記録装置を示した裏面斜視図である。
【図7】円弧状部材を当接位置に移動した際の記録装置を示した裏面斜視図である。
【図8】円弧状部材をリフトアップ位置に移動した際の記録装置を示した裏面斜視図である。
【図9】(a)は、円弧状部材を退避位置に移動した際の円弧状部材廻りを示した図であり、(b)は、円弧状部材を当接位置に移動した際の円弧状部材廻りを示した図である。(c)は、円弧状部材をリフトアップ位置に移動した際の円弧状部材廻りを示した図である。
【図10】リフトアップ機構による用紙Pの送込み動作を示した遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る記録装置について説明する。この記録装置は、起立姿勢で保持した用紙(記録媒体)を搬送しながら所望の記録を行い、排紙した印刷済みの用紙を起立状態で重ねて保持(ストック、蓄積)するものである。なお、各図に示す通り、X軸(左右)方向、Y軸(前後)方向およびZ軸(上下)方向を規定して、以降説明する。また、本記録装置1は、縦置き配置および横置き配置(水平な状態で用紙に印刷を行い、水平な状態で排紙するような配置)が可能に構成されているが、以降の説明では、縦置き配置した場合について説明する。なお、縦置き配置だけを目的に作られた記録装置であっても構わない。
【0022】
図1は、記録装置1を示した外観斜視図である。図1に示すように、記録装置1は、X軸およびY軸方向よりもZ軸方向の寸法が大きく形成された薄型の箱状体を成す筐体2によって外観が構成されている。筐体2の上面には、操作ボタン等が配置された操作パネル21と、PC等に接続するためのケーブルが接続されるケーブル端子22と、複数のインクカートリッジ(図示省略)を着脱可能に装着するカートリッジ装着部(図示省略)を開閉するカートリッジカバー23と、が設けられている。また、筐体2の上面には、記録が行われた用紙Pを排出するための用紙排出口24(図2参照)を開閉する用紙排出口カバー25が設けられている。なお、用紙排出口カバー25は、ユーザーによって開閉されるものであるが、仮に閉じた状態で記録が実行された場合でも、図外の開閉機構によって自動的に開くようになっている。さらに、筐体2の前面には、後述の用紙カセット5を着脱自在に装着するためのカセット装着部26が広く設けられている。
【0023】
ここで図2を参照して、記録装置1の内部構造について詳細に説明する。図2は、記録装置1の内部構造を示した側方断面図である。図2に示すように、記録装置1は、カセット装着部26に対し着脱自在に装着されると共に、枚葉の用紙Pを起立状態で収容する用紙カセット5と、記録装置1の下部で用紙Pを反転させて上方に送る搬送路Rに沿って、収容された用紙Pを送る搬送部4と、搬送路Rに面し且つ記録装置1の上下中間位置に配設されると共に、用紙Pにインクジェット方式で印刷処理を行う印刷部(画像記録部)3と、搬送部4および印刷部3を支持する装置フレーム(図示省略)と、これらを制御する制御部(送込み制御手段)(図示省略)を備えている。なお、用紙Pに印刷処理を行なう印刷部3は、記録媒体上に画像を記録する画像記録部の一例であり、記録媒体上への画像の記録は、インクジェット方式に限らず、他の方式によるものであっても構わない。
【0024】
印刷部3は、装置フレームに支持されると共に、X軸方向に幅一杯に延在するキャリッジガイド軸34およびキャリッジガイド板36と、キャリッジガイド軸34およびキャリッジガイド板36に往復動自在に支持されたキャリッジユニット30と、キャリッジガイド軸34およびキャリッジガイド板36に沿って、キャリッジユニット30を往復動させるキャリッジ移動機構(図示省略)と、を備えている。キャリッジガイド軸34は、キャリッジユニット30の下端を支持し、キャリッジガイド板36は、キャリッジガイド軸34を中心として回動しようとする力に抗して、キャリッジユニット30の上端を支えている。すなわち、キャリッジユニット30は、キャリッジガイド軸34およびキャリッジガイド板36によって、傾斜姿勢に保持されている。
【0025】
キャリッジユニット30は、キャリッジガイド軸34およびキャリッジガイド板36に往復動自在に支持された箱状のキャリッジ31と、キャリッジ31に搭載されたインクジェットヘッド32と、インクジェットヘッド32に上側から接続されると共に、インクチューブ(図示省略)を介してインクカートリッジに接続された接続アダプター(図示省略)と、を備えている。インクジェットヘッド32は、複数色のインク滴を吐出する複数のノズル列(図示省略)を有しており、用紙Pに対し所定のギャップを介して対面する。
【0026】
なお、本実施形態は、インクカートリッジがキャリッジ31から独立して設けられたいわゆるオフキャリッジ型であるが、インクカートリッジがキャリッジ31に搭載された、いわゆるオンキャリッジ型であってもよい。また、本実施形態では、キャリッジ31がX軸方向に移動しながら記録を行ういわゆるシリアルプリンターであるが、用紙P幅をカバーする固定式のインクジェットヘッド32を用いてもよい。さらに、インクジェット方式に限らず、その他の記録方式であってもよい。
【0027】
図3は、用紙カセット5を示した裏面斜視図である。図2および図3に示すように、用紙カセット5は、未印刷(未記録)の用紙Pを起立姿勢で収容するカセット本体(媒体カセット)51と、カセット本体51の外面(装置内部側)に設けられ、印刷済み(記録済み)の用紙Pを起立姿勢で且つ保持面61に重ねて保持する排紙保持部(保持部)52と、を備えている。すなわち、カセット本体51から未印刷の用紙Pが供給され、排紙保持部52に印刷済みの用紙Pが排出される。そして、用紙カセット5を装置本体から取り外すことで、カセット本体51と共に、保持した印刷済みの用紙Pを取り出すことができる。また、用紙カセット5を取り外すことで記録装置1の内部が露出させることができ、搬送路Rに用紙Pが詰まった等の不具合を容易に解消することができる。なお、図示は省略するが、用紙カセット5は、筐体2に対してZ軸方向にスライド自在に構成されており、その着脱操作は、用紙カセット5をスライドさせることで行われる。
【0028】
カセット本体51は、装着時に筐体2の前面と面一になり(図1参照)、記録装置1の概観をなすカセット筐体部53と、カセット筐体部53側を収容面とし、全体としてトレイ状に形成された本体トレイ54と、本体トレイ54の上部に対面し、用紙Pを収容する用紙収容空間を開閉する上部カバー55と、本体トレイ54の下部に位置し、用紙収容空間に収容した用紙Pの先端を揺動させる可動トレイ59と、を備えている。
【0029】
また、上部カバー55の外面、すなわち、筐体2に装着した際に装置内部側に向く面は、印刷済みの用紙Pを保持する(蓄える)ための保持面61として機能している(詳細は後述する。)。
【0030】
可動トレイ59は、用紙カセット5が装着された状態において用紙送り方向下流側となる本体トレイ54の下側に設けられ、いわゆるホッパーとして機能するものである。可動トレイ59は、本体トレイ54の上下方向略中央部に設けられた左右一対の揺動支点59aを中心に回動可能になっており、図外の駆動機構により揺動するようになっている。これにより、収容された用紙Pの先端を、後述の給送ローラー41に圧接させる状態(図2参照)と、離間させる状態(図示省略)と、にすることができる。
【0031】
図2に示すように、搬送部4は、可動トレイ59の先端部に対向し、収容された用紙Pに転接して引き出すと共に、用紙Pを湾曲反転させて上方に送る大形の給送ローラー41と、給送ローラー41に対向し、反転送りをガイドするガイド部材45および補助従動ローラー46と、給送ローラー41からの用紙Pを印刷部3に送る搬送ローラー42と、印刷部3に対面する案内部材33と、案内部材33の下流側に配設され、用紙Pの上反りを矯正する拍車状のガイドローラー43と、ガイドローラー43の下流側に配設され、用紙Pを排紙保持部52に排紙する排紙ローラー(媒体排出手段)44と、送り出された直後の用紙Pの下端をリフトアップして、排紙保持部52側に送り込むリフトアップ機構(リフトアップ手段)47と、を備えている。また、図示省略するが、搬送部4は、用紙Pの先端および尾端を検出する先端検出センサーや、搬送駆動ローラー42aのエンコーダー等で構成され、送られる用紙Pの頭出し位置等の位置情報を取得する用紙位置取得手段を備えている。
【0032】
給送ローラー41は、駆動ローラーで構成されており、カセット本体51から引き出した用紙Pを、外周面に沿って円弧状に搬送する。ガイド部材45は、給送ローラー41の外周面に対面して湾曲形状に形成され、用紙Pを外側からガイドする。補助従動ローラー46は、自由回転ローラーで構成されており、用紙Pを挟んで給送ローラー41に転接して、反転送りを補助する。搬送ローラー42は、前方側の搬送駆動ローラー42aと後方側の搬送従動ローラー42bとを有するニップローラーで構成されており、用紙Pの送り(副走査)を制御するメインローラーとして機能する。なお、給送ローラー41、搬送ローラー42およびガイドローラー43は、それぞれ用紙Pの幅方向(X軸方向)に適宜の間隔で配設された複数個の分割ローラーで構成されている。
【0033】
案内部材33は、搬送路Rの一部を構成すると共に、用紙Pの記録面とインクジェットヘッド32との間のギャップ(ワークギャップ)を規定する(いわゆるプラテンとして機能する)。また、案内部材33には、インクジェットヘッド32と対向する位置に縁無し印刷の際、用紙P端から外れた領域に吐出されるインクを受ける凹部が形成されている。この凹部の中には、インクを吸収するインク吸収材(図示省略)が設けられている。そして更に、案内部材33の下方には、打ち捨てられたインクを貯留する廃液タンク(図示省略)が配置されている。
【0034】
給送ローラー41により下方へと引き出された用紙Pは、給送ローラー41、ガイド部材45および補助従動ローラー46によって上向きに反転させられ、搬送ローラー42へと送られる。さらに、用紙Pは、搬送ローラー42の間に挟圧搬送されて、印刷部3に送られる。印刷部3で記録の行われた用紙Pは、ガイドローラー43および排紙ローラー44を介して、用紙カセット5の排紙保持部52に排紙される。
【0035】
印刷処理では、搬送部4によって用紙Pを略Z軸方向に間欠送り(副走査)すると共に、インクジェットヘッド32を駆動しつつ、キャリッジ移動機構によって、キャリッジユニット30をX軸方向に往復させて(主走査)、用紙Pに画像データを印刷する。
【0036】
次に図3ないし図7を参照して、排紙保持部52、排紙ローラー44およびリフトアップ機構47について詳細に説明する。図4は、排紙保持部52廻りを示した断面図である。図3および図4に示すように、排紙保持部52は、上部カバー55の外面(装置内部側)によって構成された保持面61と、排紙された用紙Pの下端を受容する受容部62と、保持面61に設けられ、用紙Pを起立姿勢に保持するホルダー63と、を有している。
【0037】
保持面61は、用紙カセット5を筐体2に装着した際に、一対の排紙ローラー44の近傍から用紙排出口24までの間に位置する略平坦な面であり、且つ鉛直方向に延在した面である。排紙ローラー44により排出された用紙Pは、保持面61に沿って摺接しながら用紙排出口24に向かって移動する。そして、保持面61に重ねて保持される。また、用紙Pのサイズによっては、用紙排出口24から上方に突出して排紙される。そのため、これを受けるべく、上部カバー55は、上下方向に伸縮自在に可動することが好ましい。
【0038】
受容部62は、保持面61から排紙ローラー44側に突出し、用紙Pの下端を支持する支持部62aと、支持部62aの先端に連なり、排紙ローラー44側を先上がりにして傾斜した複数の用紙導入部(傾斜部)62bと、を有している。複数の用紙導入部62bは、分割ローラーである排紙駆動ローラー44a(後述する。)の間に入り込むようにして、X軸方向に適宜の間隔で配置されている。つまり、受容部62は、全体として略櫛歯形状に形成されている。また、用紙導入部62bは、排紙駆動ローラー44aの頂部を越えて保持面61側に送り込まれた用紙Pの下端を、さらに、保持位置に適切かつ円滑に導く。一方、支持部62aは、保持位置に移動した用紙Pを支持する。このように、一対の排紙ローラー44から送り出された用紙Pは、保持面61および受容部62によって、全体として起立姿勢で重ねて受容(保持)される。
【0039】
排紙ローラー44は、前方側(保持面61側)の排紙駆動ローラー(駆動ローラー)44aと後方側の排紙従動ローラー(従動ローラー)44bとを有するニップローラーで構成されており、案内部材33の上側に位置する用紙Pに張力(tension)を付与するテンションローラーとして機能する。また、排紙ローラー44は、排紙保持部52の下部近傍に配設され、用紙Pを排紙保持部52の保持面61に沿わせるように下方から送り出す。具体的には、排紙ローラー44による用紙Pの送出し方向は、用紙カセット5に向かう様に斜め上方に設定されている(図4参照)。そのため、排出される用紙Pは、排紙保持部52の保持面61(後述する。)に摺接しながら上方に移動し、排紙保持部52の保持面61に保持される。
【0040】
排紙駆動ローラー44aは、分割ローラーで構成されており、ローラー軸76と、軸方向(X軸方向)に所定の間隔を存してローラー軸76に軸着した複数の分割駆動ローラー77と、を有している。また、各分割駆動ローラー77は、駆動ローラーであり且つゴムローラーにより構成されている。一方、排紙従動ローラー44bは、分割ローラーで構成されており、軸方向(X軸方向)に所定の間隔を存して配設した複数の分割従動ローラー78を有している。各分割従動ローラー78は、分割駆動ローラー77に転接する自由回転ローラーであり且つスターホイール(拍車状のローラー)により構成されている。
【0041】
図5は、リフトアップ機構47を示した斜視図(a)および平面図(b)である。図5に示すように、リフトアップ機構47は、上端面83aで用紙Pの下端に当接すると共に、排紙駆動ローラー44a側が凹となるように湾曲した断面円弧状の円弧片部83を有する円弧状部材(当接部材)81と、円弧状部材81の曲率に倣って当該円弧状部材81を進退動(すなわち円運動)させる進退動機構82と、を備えている。
【0042】
円弧状部材81は、円弧状に延在する複数の円弧片部(先端片)83と、複数の円弧片部83を後端部で並列に連結する連結部84とから成り、一体として櫛歯状に形成されている。複数の円弧片部83は、分割ローラーである排紙駆動ローラー44aおよび排紙従動ローラー44bの上記各間隔に対応して形成されており、円運動に際し、当該各間隔に入り込むようになっている。各円弧片部83の上端面83aは、円弧状部材81全体の上端面となっており、用紙P下端への当接面となる。よって、用紙Pの下端を幅方向複数個所で当接する形となる。当該上端面83aは、側面視凹状に形成されている(図4参照)。すなわち、前後端部に対し前後中央部が低くなるように形成されている。また、当該上端面83aは、円運動によって、リフトアップした用紙Pが排紙駆動ローラー44aの頂部を越えた位置で滑り落ちるような形状(曲率および傾き)に形成されている。
【0043】
進退動機構82は、円運動の駆動源となるリフトアップモーター91と、リフトアップモーター91に噛合すると共に、円弧状部材81を円運動させる駆動伝達部92と、を備えている。駆動伝達部92は、円弧状部材81の左右端に形成された左右一対の扇状リブ95と、一対の扇状リブ95から左右に連なると共に、装置フレームに回転自在に支持された左右一対の回転中心軸94と、右側の回転中心軸94に同軸上で連なる共に、リフトアップモーター91に噛合するギア部93と、を有している。なお、駆動伝達部92の各部材と円弧状部材81とは、一体の部材で形成されている。制御部が、リフトアップモーター91を駆動すると、リフトアップモーター91に噛み合う駆動伝達部92が回転し、駆動伝達部92に連なる円弧状部材81が円運動する。
【0044】
進退動機構82は、この円運動動作によって、用紙Pの搬送路R(送出し経路)から退避した退避位置(図6および図9(a)参照)と、上端面83aが用紙Pの下端に当接する当接位置(図7および図9(b)参照)と、当接した用紙Pをリフトアップしたリフトアップ位置(図8および図9(c)参照)と、の間で、円弧状部材81を円運動させる。なお、当接位置からリフトアップ位置までの円運動では、進行に伴って、円弧片部83の上端面83aが、上方に且つ保持面61側に移動していくと共に、当該上端面83aが傾斜していく。また、リフトアップ位置は、円弧片部83の上端面83aが、排紙駆動ローラー44aの頂点を、保持面61側に前後方向(Y軸方向)で超える位置である。すなわち、進退動機構82は、円弧状部材81をリフトアップ位置に円運動させることで、用紙P下端をリフトアップした上で、用紙P下端を排紙駆動ローラー44aの頂部を越えた位置に落とし込む。
【0045】
ここで図10を参照して、リフトアップ機構47による用紙P下端の送込み動作について説明する。本動作は、制御部が、用紙位置取得手段からの位置情報に基づいて、用紙Pが排紙ローラー44から送り出された直後であると判定したタイミングで行われる。また、定常時(排紙ローラー44による送出し最中等)には、円弧状部材81が退避位置に位置しており(図10(a))、本動作は、この状態から行われる。
【0046】
図10に示すように、制御部は、上記タイミングで、リフトアップモーター91の駆動を開始する。リフトアップモーター91の駆動によって、円弧状部材81を、退避位置から当接位置に円運動させ、円弧片部83の上端面83aが、送り出された直後の用紙Pの下端に当接する(図10(b))。その状態から更に円運動が進むと、円弧片部83の上端面83aが、下から支持する形で用紙P下端を上方に且つ保持面61側にリフトアップしていく。一方、円運動に伴って、上端面83aが徐々に傾斜していく。
【0047】
そして、円弧状部材81がリフトアップ位置に到達した時点で、用紙Pが自動的に滑り落ちる。これによって、排紙駆動ローラー44aの頂部を越えた位置に落とし込まれる。排紙駆動ローラー44aの頂部を越えた用紙P下端は、用紙導入部62bに導かれて支持部62aに到達し、用紙Pが保持面61に沿わせる保持される(図10(c)参照)。このような送り込み動作によって、複数枚の用紙Pが適切に重ねて保持される。
【0048】
以上のような構成によれば、リフトアップ機構47により、用紙Pをリフトアップした後、排紙駆動ローラー44aの頂部を越えた位置に落とし込んで、用紙Pの下端を保持面61側に送り込むため、用紙Pの下端を、排紙ローラー44の近傍から保持面61側に確実に送り込むことできる。
【0049】
また、円弧状部材81を円弧状に進退させる構成であるため、退避位置、当接位置およびリフトアップ位置の間の移動と、落とし込みの実行と、を簡単な構成で実現することができる。
【0050】
さらに、円弧片部83の上端面83aを、凹状(掬い状)に形成することによって、用紙Pの下端が、落とし込みの実行前に、上端面83aから落ちてしまうことを防止することができる。
【0051】
またさらに、分割ローラーである排紙駆動ローラー44aおよび排紙従動ローラー44bに対し、その各間隔に対応した櫛歯状に円弧状部材81を形成することにより、円弧片部83の上端面83aを、用紙P下端の幅方向各箇所に当接させることができるため、用紙Pのリフトアップおよび落とし込みを安定的に実行することができる。
【0052】
また、排紙保持部52において、支持部62aおよび用紙導入部62bを設けることにより、支持部62aにより、用紙Pを保持位置で適切に保持することができると共に、用紙導入部62bにより、用紙Pの下部を、保持位置に円滑に導くことができる。また、保持後の用紙Pと排紙ローラー44との接触を有効に防止することができる。
【0053】
また、排紙保持部52を、カセット本体51の外面に形成することにより、排紙保持部52をカセット本体51と一体として取り外すことができるため、寸法の小さい用紙P(葉書等)を保持した際にも、容易に取り出すことができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、円弧状部材81を、その曲率に倣って進退動させてリフトアップおよび落とし込みを行う構成であったが、これに限るものではなく、例えば、用紙P下端への当接部材を、保持面61側の斜め上方向に直動させる進退機構を用い、用紙P下端を保持面61側且つ上方にリフトアップする構成であっても良い。かかる場合、用紙Pの湾曲に伴う復元力を利用して、落とし込みを行う。すなわち、用紙P下端を保持面61側且つ上方にリフトアップすると、用紙Pが湾曲していき、用紙Pに平坦になろうとする復元力が発生する。これに対し、当接部材の当接面(上端面)の形状を、リフトアップ位置に移動した際、当該復元力によって、用紙P下端が当接部材から自動的に滑り落ちるような形状に形成する。
【0055】
また、本実施形態においては、櫛歯状の円弧状部材81を用い、幅方向複数個所で、用紙Pに当接し用紙Pをリフトアップする構成であったが、これに限るものではなく、例えば、円弧状部材81が、用紙Pに左右両端のみで当接し用紙Pをリフトアップする構成であっても良い。
【符号の説明】
【0056】
1:記録装置、 3:印刷部、 44:排紙ローラー、 44a:排紙駆動ローラー、 44b:排紙従動ローラー、 47:リフトアップ機構、 51:カセット本体、 52:排紙保持部、 61:保持面、 62a:支持部、 62b:用紙導入部、 77:分割駆動ローラー、 78:分割従動ローラー、 81:円弧状部材、 82:進退動機構、 83:円弧片部、 83a:上端面、 P:用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に画像を記録する画像記録部と、
記録済みの前記記録媒体を起立姿勢で且つ保持面に重ねて保持する保持部と、
前記保持部側に配設した駆動ローラーと前記駆動ローラーに転接する従動ローラーとからなるニップローラーを有して、記録済みの前記記録媒体を前記保持面に沿わせるように下方から送り出す媒体排出手段と、
前記送り出された直後の前記記録媒体の下端に当接し、前記記録媒体をリフトアップした後、前記駆動ローラーの頂部を越えた位置に落とし込むリフトアップ手段と、を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記リフトアップ手段は、上端面で前記記録媒体の下端に当接すると共に、前記駆動ローラー側が凹となるように湾曲した断面円弧状の円弧片部を有する当接部材と、
前記円弧片部の曲率に倣って前記当接部材を進退させる進退動機構と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記円弧片部の上端面は、凹状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記駆動ローラーは、軸方向に所定の間隔を存して配設した複数の分割駆動ローラーを、有し、
前記従動ローラーは、軸方向に前記所定の間隔を存して配設した複数の分割従動ローラーを、有し、
前記当接部材は、前記間隔に対応する前記円弧片部を有し、櫛歯状に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記リフトアップ手段は、前記記録媒体が前記送り出された直後のタイミングで、前記進退動機構を駆動する送込み制御手段を、更に有していることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
前記保持部は、前記リフトアップ手段により落とし込んだ前記記録媒体を、さらに保持位置に導く傾斜部と、
前記傾斜部に連なり、前記保持位置に移動した前記記録媒体を下側から支持する支持部と、を有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
未記録の前記記録媒体を起立姿勢で収容すると共に着脱自在に構成された媒体カセットを、更に備え、
前記保持部は、前記媒体カセットの外面に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−162060(P2012−162060A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26106(P2011−26106)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】