説明

記録装置

【課題】異なる種類の液体を被記録媒体に噴射する場合において、先に噴射した液体における乾燥時間を十分に確保できる記録装置を提供する。
【解決手段】被記録媒体Mを搬送する搬送手段10と、被記録媒体Mを保持する媒体保持部Pと、被記録媒体Mに対して液体を噴射する記録ヘッドHと、を備えた記録装置1に関する。搬送手段10は、記録ヘッドHが液体の噴射を行なう媒体保持部Pにおける第1の記録可能領域Paを通過した被記録媒体Mを、第1の記録可能領域Paに対して記録ヘッドHの走査方向にずれており記録ヘッドHが液体の噴射を行う第2の記録可能領域Pbに搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、記録用紙などに対して印刷を行う印刷装置として、インクジェット法による印刷装置が用いられている。一方、このような印刷装置において、記録紙に印刷された画像の画質向上や耐候性等を向上させるために、インクを噴射する前の記録紙に前処理液を噴射した後、カラーインクを記録紙上に噴射する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−90296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術では前処理液を噴射するキャリッジ、及びカラーインクを噴射するキャリッジのように複数のキャリッジが必要となってしまう。しかしながら、このように複数のキャリッジから異なる種類のインクを噴射する場合において、キャリッジが併設して設けられているため、記録紙上に噴射した前処理液について十分な乾燥時間を確保することができず、前処理液が完全に乾燥していない記録紙上にカラーインクが噴射されてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、異なる種類の液体を被記録媒体に噴射する場合において、先に噴射した液体における乾燥時間を十分に確保できる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の記録装置は、被記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段に搬送される前記被記録媒体を保持する媒体保持部と、前記媒体保持部に保持された前記被記録媒体に対して、該媒体保持部上での該被記録媒体の搬送方向と直交する方向に走査するとともに液体を噴射する記録ヘッドと、を備えた記録装置において、前記搬送手段は、前記記録ヘッドが前記液体の噴射を行なう前記媒体保持部における第1の記録可能領域を通過した前記被記録媒体を、該第1の記録可能領域に対して前記記録ヘッドの走査方向にずれており前記記録ヘッドが前記液体の噴射を行う第2の記録可能領域に搬送することを特徴とする。
【0007】
本発明の記録装置によれば、被記録媒体上には第1の記録可能領域にて記録ヘッドから液体が噴射された後、第2の記録可能領域にて再度異なる液体を噴射されるようになる。よって、搬送手段は、第1の記録可能領域にて被記録媒体に噴射された液体について、該被記録媒体が第1の記録可能領域を通過して第2の記録可能領域に到達するまでの間に十分な乾燥時間を確保することができる。よって、第2の記録可能領域にて被記録媒体上に異なる液体を噴射した場合でも、第1の記録可能領域で噴射した液体が十分に乾燥しているため、液体の混濁といった不具合が生じるのを防止できる。従って、異なる液体による印刷が重なる高品質な画像を印刷することができる。
【0008】
また、上記記録装置においては、前記記録ヘッドは、前記媒体保持部材における前記第1の記録可能領域及び前記第2の記録可能領域に保持された前記被記録媒体に対して同一走査において前記液体を噴射するのが好ましい。
この構成によれば、記録ヘッドが同一走査で第1の記録可能領域及び第2の記録可能領域に保持された被記録媒体に対して液体を噴射することができるので、被記録媒体に対する液体噴射処理を効率的に行うことができる。
【0009】
また、上記記録装置においては、前記搬送手段は、前記被記録媒体における前記第1の記録可能領域及び前記第2の記録可能領域を通過する際の搬送方向が同じ向きとなるように該被記録媒体を搬送するのが好ましい。
この構成によれば、被記録媒体における第1の記録可能領域及び第2の記録可能領域を通過する際の搬送方向が同じ向きとなるので、記録ヘッドが液体を噴射する画像パターンが各領域で変化することがない。よって、記録ヘッドにおける液体噴射パターンの制御が複雑化するのを防止することができる。
【0010】
また、上記記録装置においては、前記搬送手段は、前記被記録媒体における前記第1の記録可能領域及び前記第2の記録可能領域を通過する際の搬送方向が逆向きとなるように該被記録媒体を搬送するのが好ましい。
この構成によれば、被記録媒体における第1の記録可能領域及び第2の記録可能領域を通過する際の搬送方向が逆向きとなる構成、すなわち被記録媒体の搬送方向を単純に折り返す構造を採用し得る。よって、搬送手段の構成を単純化することができ、低コスト化を図ることができる。
【0011】
また、上記記録装置においては、前記被記録媒体における液体噴射領域の形状を測定した測定結果に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記第1の記録可能領域又は前記第2の記録可能領域での前記被記録媒体に対する液体噴射開始位置を調整する記録ヘッド位置調整部を備えるのが好ましい。
この構成によれば、測定部が種々の方向に引き回されることで被記録媒体に伸びや変形が生じることに起因した液体噴射領域の形状変化を測定することができる。よって、液体噴射領域の形状に歪みが生じた場合であっても、記録ヘッド位置調整部により記録ヘッドにおける液体噴射開始位置を調整することができる。よって、被記録媒体の搬送精度に関わらず記録ヘッドから被記録媒体の液体噴射領域に精度良く液体を噴射することができ、高品質な画像印刷を行うことができる。
【0012】
また、上記記録装置においては、前記被記録媒体は長尺状の部材からなるのが好ましい。
この構成によれば、長尺状の部材からなる被記録媒体においても、異なる液体による印刷が重なった高品質な画像を印刷することができる。
【0013】
また、上記記録装置においては、前記搬送手段は単票状の前記被記録媒体を複数載置するとともに前記第1の記録可能領域及び前記第2の記録可能領域へと該被記録媒体を搬送する搬送ベルトを有するのが好ましい。
この構成によれば、複数の単票状の被記録媒体についても、異なる液体による印刷が重なった高品質な画像を印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一実施形態に係るプリンターの概略構成を示す図。
【図2】記録ヘッドの構成を示す底面図。
【図3】記録ヘッドの構成を示す断面図。
【図4】ヘッド位置調整機構の概略構成を示す図。
【図5】第二実施形態に係るプリンターの概略構成を示す平面図。
【図6】(a)、(b)は第二実施形態に係るプリンターの概略構成を示す側面図。
【図7】変形例に係るプリンターの概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、記録装置の一例について説明する。記録装置は、印刷対象となる媒体に対してフルカラー印刷を行うインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」と略す場合もある)から構成されるものである。ここで、媒体Mの被印刷面(上面)は、プラスチック製品や金属製品などといったインク吸収性の低い材質から構成されている。より具体的には、OPP、CPP、ナイロン、ポリイミド、PET、アルミニウム、塩化ビニル系などの材料が挙げられる。
【0016】
また、以下の説明における図面中においては、XYZ座標系を用いる場合があり、具体的に記録を施す媒体が搬送される方向をY方向で示し、該媒体に対して記録を行うヘッドが往復動作(走査)する方向をX方向で示すものとする。また、XY方向にそれぞれ直交する方向をZ方向で示すものとする。なお、図面中のX方向、Y方向及びZ方向を示す矢印において、「○」の中に「・」が記載されたもの(矢の先端を前から見た図)は紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたもの(矢の羽根を後ろから見た図)は紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0017】
(第一実施形態)
図1は、本実施形態に係るプリンター1の概略構成を示す図である。
プリンター1は、図1に示すように、帯状に形成された媒体(被記録媒体)Mを搬送する媒体搬送機構(搬送手段)10と、媒体Mの搬送方向に直交するX方向(走査方向)に往復移動しながら媒体Mの所定領域にインクを吐出する記録ヘッドHと、記録ヘッドHを保持するキャリッジ22を走査方向に移動可能に保持するガイド軸20と、を備えている。
【0018】
媒体搬送機構10は、記録ヘッドH(キャリッジ22)の移動領域において媒体Mを支持するプラテン(媒体保持部)Pと、プラテンPの−Y側に配置された第1搬送ローラー11と、プラテンPの+Y側に配置された第2搬送ローラー12と、第2搬送ローラー12の+Y側に配置された第3搬送ローラー13と、第2搬送ローラー12とともに媒体Mを挟持する従動ローラー14と、第3搬送ローラー13とともに媒体Mを挟持する従動ローラー15と、媒体Mの搬送方向を反転させる反転ローラーRと、を備えている。
【0019】
プラテンPは、記録ヘッドHの走査領域の−Z側に配置され、媒体Mを支持する部分である。プラテンPは、媒体Mを支持する第一支持領域(第1の記録可能領域)Pa及び第二支持領域(第2の記録可能領域)Pbを有している。第一支持領域Paは、媒体Mに対して、記録ヘッドHをX方向に複数回(例えば8回)走査させつつ下地用ノズルNu(図2参照)から下地用インクを吐出することで下地層Wを形成する領域である。
【0020】
また、第二支持領域Pbは、第一支持領域Paに対して記録ヘッドHの走査方向(X方向)にずれた位置であり、後述する反転ローラーRにより折り返された媒体Mに対して、記録ヘッドHをX方向に複数回(例えば4回)走査させつつ記録用ノズルから下地層W上に記録用インクを重ねて吐出することで下地層W上に記録層Cを形成する領域である。
【0021】
このように本実施形態に係るプリンター1では、プラテンP上の第一支持領域Paにおいて媒体Mに下地層Wを形成した後、プラテンP上の異なる位置である第二支持領域Pbにおいて媒体Mに記録層Cを形成するようにしている。
【0022】
第1搬送ローラー11、第2搬送ローラー12、及び第3搬送ローラー13は、それぞれ不図示の駆動モーターが接続されており、それぞれが同期して回転するように構成されている。これにより、媒体Mに対して良好に搬送力を付与できるようになっている。また、従動ローラー14、15は、第2搬送ローラー12及び第3搬送ローラー13の回転動作に伴って従動回転するようになっている。なお、従動ローラー14、15は、下地層Wが形成された領域以外の領域において媒体Mを挟持する位置に配置されており、これにより下地層Wにローラーが当接することで傷つけるといった不具合の発生を防止している。
【0023】
反転ローラーRは、同図中Z方向に沿って配置されており、プラテンPの第一支持領域Paを通過した媒体Mを第3搬送ローラー13の+Y側にてY軸回りに90°回転させた状態で掛け渡し、媒体Mを再度−Y側に折り返している。反転ローラーRにより折り返された媒体Mは、第3搬送ローラー13の+Y側にて再度Y軸回りに90°回転されることでインク吐出面が再度上面を向いた状態でプラテンPの第二支持領域Pbへと搬送されるようになっている。従って、媒体Mは、反転ローラーRを通過することで搬送方向が+Y方向から−Y方向へと180°反対に折り返されるようになっている。
【0024】
図2は、記録ヘッドHの構成を示す底面図である。
図2に示すように、記録ヘッドHは、記録用インクを吐出する記録用インク吐出部Hmと、下地用インクを吐出する下地用インク吐出部Huとを有している。
【0025】
記録用インク吐出部Hmには、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクを吐出する吐出部BK、CY、MA、YEが設けられている。各吐出部BK、CY、MA、YEには、記録用インクを吐出する記録用ノズルNmが設けられている。
【0026】
下地用インク吐出部Huには、白色の下地用インクを吐出する吐出部W1が設けられている。各吐出部W1には、下地用インクを吐出する下地用ノズルNuが設けられている。以下、記録用ノズルNmと下地用ノズルNuとをまとめて表記する場合には、ノズルNZと表記する。なお、各吐出部BK、CY、MA、YE、及びW1に設けられたノズルNZの数はそれぞれ等しくなっている。
【0027】
図3は、記録ヘッドHの構成を示す断面図である。
図3に示すように、記録ヘッドHは、ノズルプレート110及び流路形成板123を有している。ノズルプレート110にはノズルNZが形成されている。流路形成板123には、圧力発生室124を区画する通孔、圧力発生室124に両側で連通する2つのインク供給口114を区画する通孔または溝、およびこれらのインク供給口114にそれぞれ連通する2つの共通のインク室125を区画する通孔が形成されている。振動板116は、弾性変形可能な薄板から構成され、ピエゾ素子などの圧電振動子PZT(圧力発生素子)の先端に当接し、流路形成板123を挟んでノズルプレート110と液密に一体に固定され、流路ユニット118を構成している。
【0028】
基台119には、圧電振動子PZTを振動可能に収容する収容室120と、流路ユニット118を支持する開口121とが構成され、圧電振動子PZTの先端を開口121から露出させた状態で圧電振動子PZTを固定基板122で固定している。また、基台119は、振動板116のアイランド部116aを圧電振動子PZTに当接させた状態で、流路ユニット118を開口121に固定して記録ヘッドHを纏めている。
【0029】
このような構成により、圧電振動子PZTが収縮して圧力発生室124が膨張すると、共通のインク室125のインクがインク供給口114を経由して圧力発生室124に流れ込む。所定時間の経過後に圧電振動子PZTが伸長して圧力発生室124が収縮すると、圧力発生室124のインクが圧縮されてノズルNZからインク滴が吐出する。このようなインク滴の吐出は、いずれの色のインクを吐出するためのノズルNZでも同様である。
【0030】
ところで、本実施形態に係る媒体搬送機構10は、上述のように媒体Mの搬送方向を180°折り返す等といったように複雑な搬送経路を採用しているため、媒体Mに伸び変形等が発生する可能性が高い。このような伸び変形は、第二支持領域Pbにおいて生じ易い。この伸び変形が媒体Mに生じると第二支持領域Pbにおいて記録ヘッドHが媒体Mに対して印刷を開始する位置にずれが生じ、記録層Cを下地層W上に精度良く重ねて形成することができないおそれがある。
【0031】
本実施形態では、このような問題を解消すべく、ヘッド位置調整機構を備えている。図4はヘッド位置調整機構(記録ヘッド位置調整部)50の概略構成を示す図である。図4に示すように、ヘッド位置調整機構50は、第二支持領域Pbの+Y側に配置したラインセンサー(検出部)51と、Y方向における記録ヘッドHの位置を駆動することで位置調整を行う位置調整駆動部52と、を有している。
【0032】
ラインセンサー51は、第一支持領域Paにおいて媒体Mに印刷された下地層(液体噴射領域)Wの形状を測定するためのものであり、例えば媒体Mの幅方向であるX方向に沿ってライン状に複数配置されたCCDから構成されている。なお、ラインセンサー51は、プリンター1の各駆動部の制御を行う制御装置100に電気的に接続されている。
【0033】
位置調整駆動部52は、ガイド軸20に沿って移動可能に取り付けられるフレーム部53と、駆動部55と、を備えている。フレーム部53は、記録ヘッドHを媒体Mの搬送方向であるY方向に沿って移動可能に保持する一対のガイド軸54a,54bを含む。位置調整駆動部52は、駆動部55によりガイド軸54a,54bに沿って記録ヘッドHを搭載したキャリッジ22を移動可能となっている。また、位置調整駆動部52は、上記制御装置100に電気的に接続されている。制御装置100は、ラインセンサー51の測定結果に基づいて、位置調整駆動部52を駆動し、媒体Mに対してY方向に記録ヘッドHを移動させることで第二支持領域Pbでの媒体Mに対する記録ヘッドHの位置を微調整できるようになっている。
【0034】
続いて、プリンター1の動作について説明する。
まず、ユーザーがプリンター1の駆動に先立ち、媒体Mを媒体搬送機構10にセットする。続いて、プリンター1を駆動し、第一支持領域Paに支持される媒体Mに対して記録ヘッドHの下地用インク吐出部Huの下地用ノズルNuから白色の下地用インクを吐出することで下地層Wを形成する。プリンター1は、必要に応じて媒体MをY方向に移動させつつ、上記インクの吐出を行う。媒体搬送機構10は、下地層Wを形成した媒体Mを搬送する。媒体搬送機構10により搬送される媒体Mは、反転ローラーRを通過することで搬送方向が180°反転し、+Y方向から−Y方向に沿って搬送されるようになる。
【0035】
続いて、下地層Wが最初に形成された媒体MがプラテンPの第二支持領域Pbに到達すると、記録ヘッドHはガイド軸20に沿って第二支持領域Pbに対向する位置まで移動する。ところで、本実施形態では、上述したように媒体Mの搬送経路が複雑であるため、媒体Mに伸び変形が生じる可能性がある。
【0036】
そのため、プリンター1の制御装置100は、ヘッド位置調整機構50のラインセンサー51により第二支持領域Pbに搬送される媒体Mに形成された下地層Wの形状を測定する(図4参照)。上述したような伸び変形が生じると下地層Wの形状が歪むことから、制御装置100は下地層Wの形状の測定結果に基づいて媒体Mに生じた変形量を算出することができる。
【0037】
制御装置100は、ラインセンサー51の測定結果に基づいて、媒体Mに伸び変形が生じたと判定した場合、位置調整駆動部52を駆動する。位置調整駆動部52は、制御装置100からの信号に基づき、位置調整駆動部52を駆動し、媒体Mに対してY方向に記録ヘッドHを移動させて第二支持領域Pbでの媒体Mに対する記録ヘッドHの位置を微調整する。
【0038】
媒体Mの下地層Wに対する位置合わせが行われた記録ヘッドHは、ガイド軸20に沿って媒体Mの+X側端部から−X側端部までX方向に複数回、ここでは例えば4回直線移動することで記録ヘッドHと媒体Mとの間を相対的に走査させつつ、記録用ノズルNmから下地層W上に記録用インクCaを重ねて吐出させる。この動作により、記録ヘッドHの記録用ノズルNmから下地層W上にて記録層Cが形成される。なお、媒体搬送機構10は必要に応じて媒体MをY方向に移動させつつ、記録ヘッドHによる上記吐出を繰り返し行うことで複数回インクを積層することで記録層Cを形成するようにしても構わない。
【0039】
このように本実施形態に係るプリンター1によれば、媒体Mに伸び変化が生じることで下地層Wの形状に歪みが生じた場合であっても、位置調整駆動部52(ヘッド位置調整機構50)がラインセンサー51の測定結果に基づいて記録ヘッドHの位置を最適な位置に調整することができる。よって、記録ヘッドHは下地層Wに正確に位置合わせされた状態で記録層Cを形成するインクの吐出を行うことができる。従って、ヘッド位置調整機構50は、媒体搬送機構10の媒体Mの送り精度に関わらず、記録ヘッドHから媒体Mの下地層Wに精度良く記録層Cを重ねて形成することで高品質な画像印刷を行うことができる。
【0040】
また、本実施形態では、第一支持領域Paにおいて下地層Wが形成された媒体Mが第二支持領域Pbに搬送されるまでの期間内で下地層Wを十分に乾燥させる時間を確保することができる。したがって、乾燥した下地層W上に記録層Cを重ねて印刷することができる。よって、下地層Wと記録層Cを形成するインクが混濁するといった不具合の発生を防止することができる。
【0041】
また、第二支持領域Pbにおいて下地層W上に記録層Cを形成した記録ヘッドHは、ガイド軸20に沿って−X方向に移動することで第一支持領域Paに支持される媒体Mに対して下地層Wを形成するようにしている。下地層Wの形成後、記録ヘッドHはガイド軸20に沿って+X方向に移動することで第二支持領域Pbに支持される媒体M上の下地層W上に記録層Cを形成する。
【0042】
このように本実施形態では記録ヘッドHの同一走査により第一支持領域Pa及び第二支持領域Pbに保持された媒体Mに対してインクを噴射することができるので、媒体Mに対する印刷処理を効率的に行うことができる。
【0043】
また、本実施形態に係る媒体搬送機構10は、媒体Mにおける第一支持領域Pa及び第二支持領域Pbを通過する際の搬送方向がそれぞれ逆向きとなる構成、すなわち媒体Mの搬送方向を単純に折り返す構造を採用しているので、媒体搬送機構10の構成を単純化することができ、低コスト化を図ることができる。
【0044】
なお、上記実施形態では、第二支持領域Pbに搬送される媒体Mに記録層Cを形成するに際してヘッド位置調整機構50を駆動させる場合について説明したが、第一支持領域Paに搬送される媒体Mに下地層Wを形成するに際してヘッド位置調整機構50を駆動させることで記録ヘッドHの位置調整を行っても構わない。
【0045】
(第二実施形態)
続いて、本発明の第二実施形態に係るプリンターについて説明する。本実施形態と上記実施形態との違いは媒体搬送機構の構成であり、それ以外の構成については第一実施形態と共通である。そのため、第一実施形態と同一及び共通の構成については、同一の符号を付し、その説明については省略若しくは簡略化するものとする。
【0046】
本実施形態に係るプリンター200においても、プラテンP上の第一支持領域Paにおいて媒体Mに下地層Wを形成した後、プラテンP上の異なる位置である第二支持領域Pbにおいて媒体Mに記録層Cを形成するようにしている。また、本実施形態に係る媒体搬送機構110は、媒体Mにおける第一支持領域Pa及び第二支持領域Pbを通過する際の搬送方向(具体的に−Y方向)をそれぞれ一致させるように該媒体Mを搬送するようになっている。
【0047】
図5は第二実施形態に係るプリンター200の概略構成を示す平面図であり、図6(a),(b)はプリンター200の概略構成を示す側面図である。図5に示すように、プリンター200は、媒体搬送機構110と、記録ヘッドHと、ガイド軸20と、を備えている。なお、本実施形態においては、媒体Mをロール状に巻き重ねたロール体RSから引き出したものに対して記録処理を行うようにしている。
【0048】
本実施形態に係る媒体搬送機構110は、プラテンPと、プラテンPの+Y側に配置された第1搬送ローラー111と、プラテンPの+Y側であって第1搬送ローラー111の−Y側に配置された第2搬送ローラー112と、プラテンPの−Y側に配置された第3搬送ローラー113と、第1搬送ローラー111及び第2搬送ローラー112間に配置されて媒体Mの搬送方向を反転させる第2反転ローラーR2と、第3搬送ローラー113の−Y側に配置されて媒体Mの搬送方向を反転させる第1反転ローラーR1と、第1搬送ローラー111とともに媒体Mを挟持する従動ローラー114と、第2搬送ローラー112とともに媒体Mを挟持する従動ローラー115と、第3搬送ローラー113とともに媒体Mを挟持する従動ローラー116と、第2反転ローラーR2とともに媒体Mを挟持する従動ローラー117と、第1反転ローラーR1とともに媒体Mを挟持する従動ローラー118と、を備えている。
【0049】
第1搬送ローラー111、第2搬送ローラー112、及び第3搬送ローラー113は、それぞれ不図示の駆動モーターが接続されており、それぞれが同期して回転するように構成されている。これにより、媒体Mに対して良好に搬送力を付与できるようになっている。また、従動ローラー114〜118は、第1搬送ローラー111、第2搬送ローラー112、第3搬送ローラー113、第1反転ローラーR1、及び第2反転ローラーR2の回転動作に伴って従動回転するようになっている。なお、従動ローラー114〜118は、下地層Wが形成された領域以外の領域において媒体Mを挟持する位置に配置されており、これにより下地層Wにローラーが当接することで傷つけるといった不具合の発生を防止している。
【0050】
第1反転ローラーR1は、プラテンPの第一支持領域Paを−Y方向に通過した媒体Mが掛け渡されており、+Y方向に向けて折り返している。また、第2反転ローラーR2は、第1反転ローラーR1により折り返された媒体Mを掛け渡し、該媒体Mを再度−Y方向に折り返すことで第二支持領域Pbを通過させるようになっている。
【0051】
このように、本実施形態においては、第1反転ローラーR1及び第2反転ローラーR2に掛け渡された媒体Mが略螺旋状に折り返されることで第一支持領域Pa及び第二支持領域Pbを通過する際の搬送方向がそれぞれ−Y方向にて一致させるようになっている。
【0052】
続いて、プリンター200の動作について説明する。
まず、ユーザーがプリンター200の駆動に先立ち、媒体Mを媒体搬送機構110にセットする。続いて、プリンター200を駆動し、第一支持領域Paに支持される媒体Mに対して記録ヘッドHの下地用インク吐出部Huの下地用ノズルNuから白色の下地用インクを吐出することで下地層Wを形成する。プリンター1は、必要に応じて媒体MをY方向に移動させつつ、上記インクの吐出を行う。媒体搬送機構110は、下地層Wを形成した媒体Mを搬送する。媒体搬送機構10により搬送される媒体Mは、−Y方向に沿って搬送された状態で第1反転ローラーR1を経て第2反転ローラーR2を通過する過程で螺旋状に回転し、再度−Y方向に沿って搬送されることで第二支持領域Pbに到達する。
【0053】
ここで、本実施形態においても、媒体Mの搬送経路が複雑であるため、媒体Mに伸び変形が生じる可能性があるが、プリンター200は、ヘッド位置調整機構50によって記録ヘッドHの位置を最適な位置に調整することで下地層W上に記録層Cを重ねて印刷を行うことができる。
【0054】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、帯状に形成された媒体Mに対してインクを吐出して所定の記録を行う場合を例に挙げたが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、図7に示すように単票状の媒体M1に対してインクを吐出する構成についても本発明は適用可能である。なお、図7は、第一実施形態に係るプリンター1において単票状の媒体M1を用いる場合を示しているが、第二実施形態に係るプリンター200においても単票状の媒体Mを用いることができるのは当然である。
【0055】
このような単票状の媒体M1を用いる場合、媒体搬送機構10は、図7に示すように媒体M1を載置する搬送ベルトBを有している。搬送ベルトBは、第1搬送ローラー11、第2搬送ローラー12、及び第3搬送ローラー13により移動され、反転ローラーRに掛け渡されることで搬送方向が+Y方向から−Y方向へと180°反対に折り返されるようになっている。
【0056】
この構成に基づき、搬送ベルトBは上面に載置される単票状の媒体M1を良好に第一支持領域Pa及び第二支持領域Pbに搬送することができる。従って、記録ヘッドHは第一支持領域Paにおいて媒体Mに形成された下地層Wが第二支持領域Pbに搬送されるまでの間に十分に乾燥しているので、記録層Cを重ねて印刷した際にインクが混濁することが無い。従って、単票状の媒体Mに対して下地層W及び記録層Cが良好に重ねて形成された高品質の画像印刷を行うことができる。
【0057】
また、上記実施形態では、記録方式としてインクジェット方式を採用した記録装置について記載したが、電子写真方式や熱転写方式など、任意の記録方式の記録装置に変更することもできる。また、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等であってもよい。さらに、記録装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。
【0058】
また、搬送装置は、記録装置によって記録が施された媒体を仕分装置に搬送するものに限らない。例えば、媒体に対するシールの貼付処理や、箔の転写処理や、染色処理などの各種処理が施された媒体をその後工程(例えば梱包や検品など)を行う位置に向けて搬送する搬送装置としてもよい。また、媒体は用紙に限らず、金属やプラスチックフィルム、布など、任意の素材から構成することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…プリンター(記録装置)、10…媒体搬送機構(搬送手段)、P…プラテン(媒体保持部)、M,M1…媒体(被記録媒体)、H…記録ヘッド、Pa…第一支持領域(第1の記録可能領域)、Pb…第二支持領域(第2の記録可能領域)、B…搬送ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段に搬送される前記被記録媒体を保持する媒体保持部と、
前記媒体保持部に保持された前記被記録媒体に対して、該媒体保持部上での該被記録媒体の搬送方向と直交する方向に走査するとともに液体を噴射する記録ヘッドと、を備えた記録装置において、
前記搬送手段は、前記記録ヘッドが前記液体の噴射を行なう前記媒体保持部における第1の記録可能領域を通過した前記被記録媒体を、該第1の記録可能領域に対して前記記録ヘッドの走査方向にずれており前記記録ヘッドが前記液体の噴射を行う第2の記録可能領域に搬送することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドは、前記媒体保持部材における前記第1の記録可能領域及び前記第2の記録可能領域に保持された前記被記録媒体に対して同一走査において前記液体を噴射することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記搬送手段は、前記被記録媒体における前記第1の記録可能領域及び前記第2の記録可能領域を通過する際の搬送方向が同じ向きとなるように該被記録媒体を搬送することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、前記被記録媒体における前記第1の記録可能領域及び前記第2の記録可能領域を通過する際の搬送方向が逆向きとなるように該被記録媒体を搬送することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記被記録媒体における液体噴射領域の形状を測定した測定結果に基づいて、前記記録ヘッドにおける前記第1の記録可能領域又は前記第2の記録可能領域での前記被記録媒体に対する液体噴射開始位置を調整する記録ヘッド位置調整部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記被記録媒体は長尺状の部材からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記搬送手段は単票状の前記被記録媒体を複数載置するとともに前記第1の記録可能領域及び前記第2の記録可能領域へと該被記録媒体を搬送する搬送ベルトを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218166(P2012−218166A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82507(P2011−82507)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】