説明

記録装置

【課題】異なる記録媒体の特性に応じて、記録媒体のプラテン上での吸着を適切に行うことができるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】本発明の記録装置には、記録媒体を支持するプラテン10の支持面15aに形成され、記録媒体の搬送が行われる搬送方向に延びる溝13が形成されている。溝13の内部には、吸引を行う溝吸引孔12が形成されている。プラテン10の支持面15aにはリブ吸引孔14が形成されている。記録装置は、記録媒体の剛性及び記録デューティの少なくとも一方に基づいて、溝吸引孔12からの吸引による吸引量とリブ吸引孔14からの吸引による吸引量との割合を制御することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラテン上で記録媒体を吸着して記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ、スキャナ、あるいはこれらの複合機器やシステムなどでは、画像情報に基づいて記録ヘッドにより記録紙等の記録媒体に画像を記録する記録装置が使用されている。かかる記録装置の一形態として、記録ヘッドの吐出口から記録媒体へインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置が広く使用されている。
【0003】
インクジェット記録装置においては、安定した記録を行うために、記録媒体にインクが付着した際に発生するしわや波打ち等の変形(コックリングともいう)が生じるのを抑える必要がある。また、記録媒体に巻き癖等によるカールといった変形が生じるのを抑える必要がある。プラテン上で記録媒体の変形が生じると、記録媒体が記録ヘッドやキャリッジ等に接触して記録画像の画質低下の原因となるからである。
【0004】
そこで、記録媒体と記録ヘッドとの距離を一定に保持するための手段として、例えば、記録ヘッドと対向して配置されるプラテンに吸着手段を設け、記録媒体をプラテンに吸着させることが特許文献1に提案されている。特許文献1の記録装置によれば、カールやコックリング等による記録媒体の変形が抑えられながら記録を行うことができる。このような記録媒体の吸引手段として、例えば、記録媒体を支持するプラテンに搬送方向に沿って形成された溝を設け、溝内に形成された吸引孔からの負圧によって記録媒体をプラテンに吸着する記録装置が開示されている。また、プラテンに溝が形成されていることで、記録媒体にコックリングが生じたとしても、コックリングによる記録媒体の変形部分が溝の間に入り込む。これにより、コックリングによる記録媒体の変形によって記録ヘッドと記録媒体との間の距離が均一でなくなることが抑えられる。
【0005】
さらにこの特許文献1の記録装置においては、隣り合う複数のリブの間に溝が形成されており、リブについては比較的低いものと比較的高いものの二種類が形成されている。記録装置がこのように構成されているので、比較的腰の弱い記録媒体、つまり剛性が低くてたわみ易い記録媒体をプラテンに吸着する際には、記録媒体が溝の形状に沿った姿勢の状態で記録を行うことができる。一方、腰の強い記録媒体をプラテンに吸着する際にはリブの上部で記録媒体が支持された状態で記録媒体に記録を行うことができる。従って、異なる腰の強さの記録媒体に対応して、記録媒体をプラテンに吸着させて搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−78571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の記録装置では、記録媒体がプラテンの全体の領域から一様に吸着されているので、記録媒体のコックリングの発生の程度に部分的な変化が生じた場合に、記録装置がこれに十分に対応できない場合がある。高記録デューティによる記録が行われた場合には、単位記録領域当たりのインクの付与量の増加によりコックリングの程度が大きくなる場合がある。高記録デューティの記録により程度の大きいコックリングが生じた記録媒体を適切にプラテンに吸着させるように、高い吸引圧によって吸着を行った場合には、低記録デューティによる記録が行われた記録媒体をプラテンに適切に吸着させることが難しい。線画等の低記録デューティによる記録が行われる場合には、コックリングの程度が小さい場合がある。特に、比較的腰の弱い普通紙やプルーフ用紙等に低記録デューティの記録が行われた場合には、記録媒体にコックリングが生じてもいないのに吸引孔からの吸引によって記録媒体がリブの間に入り込むことがある。これによって、記録媒体が、波打ってプラテン上に配置される可能性がある。その場合、記録媒体と記録ヘッドとの間の距離が位置ごとに変化し、これにより、記録ヘッドから吐出されるインクの着弾ずれが発生し、ハッチングなどの規則的な線画の記録の際に記録画像にムラが発生する可能性がある。
【0008】
また、このような記録画像に生じるムラの低減のために、吸引孔からの吸引圧を下げることが考えられる。しかしながら、単に吸引圧を低下させるだけでは、記録媒体のカールやコックリングによる記録媒体の変形を抑えることができず、これによって記録画像の品質が低下する可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、異なる記録媒体の特性及び記録画像の状態に応じて記録媒体のプラテン上での吸着を適切に行うことができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、インクを吐出可能な記録ヘッドを用い、記録媒体を支持可能なプラテンの支持面に沿って搬送される前記記録媒体に対して、前記記録ヘッドからインクを吐出することによって画像を記録する記録装置であって、記録媒体を支持する前記プラテンの支持面に形成され、記録媒体の搬送が行われる搬送方向に延びる溝と、前記溝の内部に形成されて吸引を行う第1の吸引部と、前記第1の吸引部から外気を吸引させる第1の吸引手段と、前記プラテンの支持面に形成された第2の吸引部と、前記第2の吸引部から外気を吸引させる第2の吸引手段と、記録媒体の剛性及び記録デューティの少なくとも一方に基づいて、第1の吸引手段による吸引量と第2の吸引手段による吸引量との割合を制御することが可能な制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、記録媒体を記録位置に吸着させる際に吸引を使い分けることにより記録媒体の特性及び記録画像の状態に応じた適切な吸引によって記録媒体をプラテンに適切に吸着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第一実施形態に係る記録装置の要部を模式的に示した斜視図である。
【図2】図1の記録装置における筐体が取り付けられた状態の要部について模式的に示した断面図である。
【図3】図1の記録装置におけるプラテン周辺及び吸引の行われる際の流路の構成について模式的に示した断面図である。
【図4】図3のプラテンを記録ヘッド側から見て模式的に示した平面図である。
【図5】(a)、(b)は、図3の溝吸引シャッターについてそれぞれの状態ごとに拡大して模式的に示した断面図である。
【図6】(a)、(b)は、図3の縁無しシャッターについてそれぞれの状態ごとに拡大して模式的に示した断面図である。
【図7】図1の記録装置の制御系の概略構成について示したブロック図である。
【図8】(a)は図1の記録装置における別の実施形態のプラテン周辺について模式的に示した平面図であり、(b)は(a)のプラテンの要部について拡大して模式的に示した断面図である。
【図9】本発明の第二実施形態に係る記録装置の要部について模式的に示した断面図である。
【図10】(a)、(b)、(c)は、図9の記録装置におけるダクトシャッターについてそれぞれの状態ごとに拡大して模式的に示した断面図である。
【図11】本発明の第三実施形態に係る記録装置の記録ヘッド及びプラテンの周辺について模式的に示した断面図である。
【図12】図11の記録装置によって吸着が行われる際の制御フローについて示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
【0014】
(第一実施形態)
図1に、第一実施形態に係る記録装置100の斜視図を示す。また、図2に、第一実施形態に係る記録装置100の筐体が取り付けられた状態における断面図を示す。図1、図2において、記録装置100は記録ヘッド31から記録媒体へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であり、本実施形態では、記録媒体としてロール状に巻回された用紙(ロール紙)Prが使用されている。
【0015】
記録装置内には、搬送ローラ41等からなる搬送機構40が設けられている。ロール紙Prは、回転軸を中心に回転可能に配置されている。そこから、ロール紙Prが回転しながらロール紙Prにおける先端部分が巻き出される。ロール紙Prの先端部分は、搬送下ガイド61と搬送上ガイド62との間を通り、搬送ローラ41とピンチローラ43とによるニップ位置を通って、記録ヘッド31に対向した記録位置を通過し、排紙位置に到達する。ロール紙Prの一部は、搬送ローラ41とピンチローラ43とによるニップ位置で挟まれる。この状態から、搬送ローラ41が回転駆動されることで、ロール給紙部60からロール紙Prが搬送方向Yに連続的に搬送されて供給される。搬送ローラ41の軸には搬送プーリ46が取り付けられており、搬送モータ42による回転駆動が搬送プーリ46に搬送ベルト45を介して伝達されることにより、搬送ローラ41が回転駆動される。ピンチローラ43は、ピンチローラアーム44によって回転可能に軸支されている。また、ピンチローラ43は、搬送ローラ41に対して圧接する方向に付勢されて支持されている。
【0016】
搬送ローラ41の搬送方向下流側には、記録媒体を支持可能なプラテン10が記録ヘッド31に対向して配設されている。記録ヘッド31を搭載したキャリッジ32は、記録媒体の搬送方向に交差する主走査方向Xに往復移動可能に配されており、本実施形態では特に、キャリッジ32による主走査方向Xは記録媒体の搬送方向に直交している。キャリッジ32は、主走査モータが駆動されることで主走査方向Xに往復移動する。記録ヘッド31の記録媒体と対向する吐出面には、所定ピッチで配列した複数の吐出口からなる吐出口列が形成されている。カラー記録を行うことを可能とするために、記録ヘッド31には、インク色ごとの複数の吐出口列が形成されている。また、記録ヘッド31は、吐出口からインクを吐出可能に形成されている。記録ヘッド31は、画像情報に基づいて記録媒体にインクを吐出することにより記録媒体に画像を記録する。記録の行われたロール紙Prは、カッター(図示せず)により切断され、切断された部分は排紙部50から装置外へ排出される。
【0017】
次に、本実施形態に係るプラテンの周囲の構成について説明する。
【0018】
図3は、吸引ダクト及び負圧発生手段を含んだプラテン吸引構成の断面図である。図4は、プラテン上面の平面図である。図5(a)、(b)は、各吸引ダクトに設けられた負圧切り替え手段(シャッター)の模式図である。
【0019】
プラテン10は、記録ヘッド31と対向する位置で記録媒体を支持する。本実施形態では、プラテン10は、記録ヘッド31の吐出面から所定の距離をおいた位置で記録媒体を案内支持する。このプラテン10には、複数の吸引孔が形成されている。そして、吸引孔からの負圧吸引力によって記録媒体がプラテン10上に吸着される。本実施形態では、プラテン10は、中空状の筐体11の上面に形成されている。
【0020】
プラテン10には、記録媒体の搬送方向Yに沿う方向に延びた溝13が形成されている。溝13は、主走査方向Xに沿って複数形成されており、複数の溝13同士の間には主走査方向Xに沿って複数のリブ15が形成されている。リブ15は、溝13同士の間で、搬送方向Yに沿う方向に延びるように形成されている。溝13の内部には、外気を吸引してプラテン10への記録媒体の吸着を行うための溝吸引孔(第1の吸引部)12が形成されている。本実施形態では、一つの溝13につき二つの溝吸引孔12が形成されている。プラテン10では、溝吸引孔12及び後述するリブ吸引部14が、交互に配列される構成になっている。また、溝13に形成された溝吸引孔12に連通するように、筐体11の内部には、溝吸引ダクト(吸引ダクト)16が形成されている。溝吸引ダクト16は、溝吸引孔12と溝吸引ファン(第1の吸引ファン)18との間に接続され、溝吸引孔12から吸引した空気を溝吸引ファン18及び通気口20に供給している。また、溝吸引ダクト16は、後述する溝吸引シャッター21を介して、大気に開口された通気口20及び溝吸引ファン18に連通している。溝吸引ファン18は、回転駆動されることにより、溝吸引ダクトを介して溝吸引孔12から外気を吸引可能に構成されている。また、溝吸引ファン18は、溝吸引孔12から吸引した空気を、記録装置100の外部に強制的に排気する。溝吸引シャッター21と通気口20との間には、大気ダクト(外気ダクト)22が配置されている。すなわち、通気口20が、溝吸引ダクト16から分岐した大気ダクト22が外部の大気と連通する位置に形成されている。また、溝吸引シャッター21と溝吸引ファン18との間には、負圧連結ダクト23が配置されている。
【0021】
リブ15における記録媒体と当接して支持する支持面15aには、溝吸引孔12と同様に、外気を吸引してプラテン10への記録媒体の吸着を行うためのリブ吸引孔(第2の吸引部)14が形成されている。本実施形態では、一つのリブ15における支持面15aにつき二つのリブ吸引孔14が形成されている。それぞれのリブ吸引孔14は、リブ吸引ダクト17を介してリブ吸引ファン(第2の吸引ファン)19に接続されている。
【0022】
また、プラテン10には、リブ15同士の間に形成された溝13以外に、縁無し記録を行う際に用いるための縁無し溝29a、29b、29cが形成されている。縁無し溝29a、29b、29cは、使用が想定される記録媒体のそれぞれのサイズごとに合わせて形成される。本実施形態では、図3におけるプラテン10の右端部に近い位置に縁無し溝29aが形成され、この縁無し溝29aに記録媒体の端部が合わせられる。また、記録媒体における主走査方向Xに沿った長さ(幅寸法)に応じて、左端に近い位置に設けられた縁無し溝29b、29cが使い分けられる。使用される記録媒体における主走査方向Xに沿った長さが、右端側の縁無し溝29aと左端側における中央寄りの位置に形成された縁無し溝29bとの間の長さに相当するときには、中央寄りに形成された左端側の縁無し溝29bが用いられる。また、使用される記録媒体における主走査方向Xに沿った長さが、右端側の縁無し溝29aと左端部に近い位置に形成された縁無し溝29cとの間の長さに相当するときには、左端部に近い位置に形成された左端側の縁無し溝29cが用いられる。図3では、記録媒体における主走査方向Xに沿った長さが、右端側の縁無し溝29aと左端部に近い位置に形成された縁無し溝29cとの間の長さに相当する場合について示されている。
【0023】
それぞれの縁無し溝29a、29b、29cは、凹形状に形成されており、記録媒体の主走査方向Xに沿った端部まで記録が行われる縁無し記録(余白無し記録)が行われる際に、記録媒体からはみ出したインクを受けるインク受け部として設けられている。なお、本実施形態では、縁無し溝29a、29b、29cは、二種類の主走査方向Xに沿う長さの記録媒体に対応するために、記録媒体の主走査方向Xに沿う長さに応じて縁無し溝29b、29cを使い分けることとした。そして、縁無し溝29aが、主走査方向Xに沿う長さの異なる記録媒体に対し、それぞれ共通して用いられることとした。しかしながら、本発明はこれに限定されず、三種類以上の主走査方向Xへの長さの記録媒体に対応できるように、さらに多くの縁無し溝が形成されても良い。また、本実施形態では、一つの縁無し溝が複数の主走査方向Xへの長さの記録媒体に対して共通して用いられることとされているが、本発明はこれに限定されない。両端部の縁無し溝が、複数の主走査方向Xへの長さの記録媒体ごとに異なるように、別々の縁無し溝が用いられることとしても良い。
【0024】
それぞれの縁無し溝29a、29b、29cは、縁無し吸引ダクト33に連通している。縁無し吸引ダクト33は、縁無しシャッター34を介して負圧連結ダクト23に接続されている。
【0025】
次に、溝吸引シャッター21(接続手段)について、図5(a)、(b)に示される模式的な断面図を用いて説明する。図5(a)には、溝吸引ダクト16と大気ダクト22とが連通しているときの溝吸引シャッター21が示されており、図5(b)には、溝吸引ダクト16と負圧連結ダクト23とが連通しているときの溝吸引シャッター21が示されている。
【0026】
本実施形態では、溝吸引シャッター21は、大気ダクト22、溝吸引ダクト16、負圧連結ダクト23の三つの空気の流路における分岐点として形成されている。これらの大気ダクト22、溝吸引ダクト16及び負圧連結ダクト23が、負圧室24で一つに接続されている。負圧室24の内部には、調整弁25が配置されている。調整弁25は円筒状に形成されており、負圧室24の内部で回転可能に配置されている。本実施形態では、調整弁25は、負圧室24の内部で、モータなどの駆動により制御されて回転駆動を行う。調整弁25には、空気を通すための流路が形成されている。本実施形態では、調整弁25に、大気調整孔26、溝吸引調整孔27及び負圧孔28が形成されている。
【0027】
本実施形態では、負圧室24の内部で調整弁25が移動しても、溝吸引調整孔27は溝吸引ダクト16と連通したままであり、溝吸引ダクト16が負圧室24の内部に連通するように調整弁25が形成されている。そして、負圧室24の内部で調整弁25が移動することにより、大気調整孔26及び負圧孔28が移動して大気ダクト22及び負圧連結ダクト23の開閉が制御されている。そのため、本実施形態では、調整弁25が負圧室24の内部で回転することで、溝吸引ダクト16が、大気ダクト22と負圧連結ダクト23とのどちらの流路と連通するのかが選択されて制御される。このように、溝吸引シャッター21は、溝吸引孔12に対して、大気ダクト22または溝吸引ダクト16を選択的に接続する。
【0028】
溝吸引シャッター21は、図5(a)に示される状態では、負圧連結ダクト23が閉じられて大気ダクト22が開けられている。従って、溝吸引ダクト16は大気ダクト22と連通し、溝13内部と記録媒体によって囲まれた空間の圧力は大気圧に保たれる。一方、溝吸引シャッター21が図5(b)に示される状態では、負圧連結ダクト23が開けられて大気ダクト22が閉じられている。従って、溝吸引ダクト16が負圧連結ダクト23と連通し、溝吸引ファン18が回転駆動されているときには、溝吸引ダクト16及び溝13内部と記録媒体によって囲まれた空間から溝吸引ファン18によって空気が外部に排出される。溝吸引ダクト16及び溝13内部と記録媒体によって囲まれた空間から排気されると、そこでの圧力が低下し、圧力が大気圧よりも小さくなると負圧が形成される。従って、プラテン10上に記録媒体が配置されたときには、その負圧によって記録媒体がプラテン10上に吸着されることになる。
【0029】
本実施形態では、図5(a)に示される溝吸引ダクト16と大気ダクト22とが連通しているときにおいては、溝吸引ダクト16及び大気ダクト22の流路では、負圧室24の内部に対して開口部が全開の状態である。負圧連結ダクト23の流路では、負圧室24の内部に対して開口部は全閉の状態である。一方、図5(b)に示されるように、溝吸引ダクト16と負圧連結ダクト23とが連通して溝13内の吸引が行われる場合には、大気ダクト22が負圧室24に対して全閉の状態になるまで調整弁25が回転移動される。また、溝吸引ダクト16及び負圧連結ダクト23の流路では、負圧室24の内部に対して開口部が全開の状態である。本実施形態では、調整弁25と負圧室24の隙間には、パッキンなどのシール材が配置される。従って、溝吸引ファン18の回転駆動によって溝吸引ダクト16に負圧が形成されたときに、負圧の漏れ(リーク)が起こり難いように溝吸引シャッター21が構成されている。
【0030】
次に縁無しシャッター34について説明する。縁無しシャッター34についての模式的な断面図を図6(a)、(b)に示す。縁無しシャッター34についても上述の溝吸引シャッター21と同様に、負圧室80内部で調整弁81を回転移動させることで、負圧室80に接続されているそれぞれの流路の間の連通を制御している。本実施形態では、調整弁81の回転によりそれぞれの縁無し溝29a、29b、29c及び負圧連結ダクト23の間の連通が制御されている。
【0031】
縁無し溝29aは、異なる種類の記録媒体に対して共通して用いられる縁無し溝なので、縁無し溝29aと負圧連結ダクト23との間の流路は連通した状態が保たれる。そして、記録媒体の主走査方向Xに沿った長さに応じて縁無し溝29b、29cのいずれか一方が用いられる。従って、縁無し溝29b、29cのいずれかから、負圧連結ダクト23と連通する縁無し溝が選択される。図6(a)に、縁無し溝29bが負圧連結ダクト23と連通し、縁無し溝29cへの流路が閉じられた状態が示されている。これにより、縁無し溝29a、29bが負圧連結ダクト23と連通するので、縁無し溝29a、29b内の空間で溝吸引ファン18による吸引が行われる。従って、記録媒体の主走査方向Xに沿う長さが縁無し溝29a、29bの間の長さに相当する記録媒体に縁無し記録を行う場合に、縁無し溝29a、29bにはみ出したインクを縁無し溝29a、29bから吸引することが可能である。
【0032】
また、図6(b)に、縁無し溝29cが負圧連結ダクト23と連通し、縁無し溝29bへの流路が閉じられた状態が示されている。これにより、縁無し溝29a、29cが負圧連結ダクト23と連通するので、縁無し溝29a、29c内の空間で溝吸引ファン18による吸引が行われる。従って、記録媒体の主走査方向Xに沿う長さが縁無し溝29a、29cの間の長さに相当し記録媒体に縁無し記録を行う場合に、縁無し溝29a、29cにはみ出したインクを縁無し溝29a、29cから吸引することが可能である。このように、負圧連結ダクト23と連通する縁無し溝が、縁無しシャッター34における調整弁81を回転移動させることで選択されている。これにより、溝吸引孔12による記録媒体の吸着と、各縁無し溝29a、29b、29cからの廃インクの排出とを1つの吸引ファンとしての溝吸引ファン18で行うことができる。
【0033】
図7は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。図7において、記録装置の各部の動作は、ROM201内に格納された制御プログラム及びRAM202に格納された種々のデータなどに基づいてCPU200により制御される。すなわち、CPU200には、記録ヘッド31に設けられた記録素子を駆動させるヘッド駆動回路203、主走査モータ204を駆動する主走査モータ駆動回路205、搬送モータ42を駆動させる搬送モータ駆動回路206などが接続されている。また、溝吸引ファン18の駆動を行うための駆動源である吸引ファン駆動用モータ207がCPU200に接続されている。また、リブ吸引ファン19の駆動を行うための駆動源である吸引ファン駆動用モータ208がCPU200に接続されている。CPU200は、吸引ファン駆動用モータ207、208に供給される電力を調節して、溝吸引ファン18、リブ吸引ファン19の回転数を制御する回転数制御手段として機能している。また、本実施形態の記録装置には、キャリッジ32における記録媒体と対向する面と、記録媒体の記録面との間の距離を検出するギャップセンサ53が設けられており、ギャップセンサ53がCPU200に接続されている。
【0034】
以上の構成を有する記録装置100によって記録媒体をプラテン10上に吸着させるプラテン吸引が行われる。プラテン吸引が行われる際には、溝吸引ファン18及びリブ吸引ファン19を回転駆動させることでプラテン上の吸引孔からの吸引が行われる。これにより、記録媒体が、プラテン上に吸着される。このとき、剛性が高く、たわみ難い記録媒体(以下、腰の強い記録媒体とも言うものとする)に対しては、記録媒体をプラテン10上に確実に吸着させるために、吸引力の高い吸着が行われることが望ましい。従って、この場合には、溝吸引孔12による吸引のみ、または、溝吸引孔12とリブ吸引孔14の両方による吸引によってプラテン10への記録媒体の吸着が行われる。
【0035】
また、巻き癖の強い記録媒体、程度の大きなコックリングの生じ易い高記録デューティの画像の記録が行われる記録媒体へ記録が行われる際には、プラテン10の支持面15a上で記録媒体が変形する可能性がある。ここで、記録デューティは、記録画像における単位面積当たりのインク使用量のことを言うものとする。記録媒体が変形した場合、変形の程度によっては、記録媒体が記録ヘッド31と接触して記録画像を汚してしまい、記録画像の品質を低下させてしまう可能性がある。このような場合においても、変形した記録媒体が記録ヘッドに接触しないように、溝吸引孔12による吸引のみ、または、溝吸引孔12とリブ吸引孔14の両方による吸引によってプラテン10への記録媒体の吸着が行われる。このように記録媒体のプラテン10への吸着が行われることで、記録媒体のプラテン10への吸着の際には溝吸引孔12からの吸引が行われ、記録媒体が変形したとしても溝吸引孔12からの吸引により記録媒体の変形した部分が溝13の内部に引き込まれる。そのため、記録媒体の変形した部分が記録ヘッド31の方へ突出してしまい、記録媒体と記録ヘッド31とが接触することで記録媒体上の記録画像を汚してしまい、記録画像の品質を低下させてしまうことを抑えることができる。従って、腰の強い記録媒体、巻き癖の強い記録媒体及び高デューティの画像の記録が行われる記録媒体に対して記録が行われる場合には、溝吸引孔12による吸引のみ、または、溝吸引孔12とリブ吸引孔14の両方による吸引によって吸引が行われる。
【0036】
このとき、溝吸引孔12のみ、または、溝吸引孔12とリブ吸引孔14の両方によって吸引が行われるように、溝吸引シャッター21が、溝吸引ファン18と連通する流路を選択する。この場合には、溝吸引ダクト16が、溝吸引ファン18に接続された負圧連結ダクト23に連通するように、溝吸引シャッター21内部の調整弁25が回転移動する。また、リブ吸引孔14からも吸引が行われる際には、リブ吸引ファン19を回転駆動させることでリブ吸引ファン19に接続されたリブ吸引ダクト17の開口部としてのリブ吸引孔14からの吸引が行われる。
【0037】
また、溝吸引シャッター21が上記のように調節されると共に、縁無しシャッター34の調整により、縁無し記録時における縁無し溝29a、29b、29cのうち、どの吸引溝からの吸引が行われるかの調節が行われる。これにより、記録時に、ミストによって記録媒体の裏面に汚れが生じることが防止される。
【0038】
一方、比較的剛性が低く、たわみ易い記録媒体(以下、腰の弱い記録媒体とも言うものとする)に対して、線画等の単位面積当たりのインク使用量の少ない低記録デューティによる記録が行われるときには、リブ吸引孔14からのリブ吸引のみが行われる。このとき、溝吸引孔12からの吸引が行われないまま、リブ吸引孔14からの吸引が行われる。この場合、溝吸引シャッター21は、溝吸引孔12から吸引が行われないように、溝吸引孔12から延びた溝吸引ダクト16が通気口20に接続された大気ダクト22に連通するように調整弁25の位置が調節される。また、プラテン10における支持面15aに形成されたリブ吸引孔14からの吸引を行うことが可能なように、リブ吸引ファン19が回転駆動される。このように、腰の弱い記録媒体に対し低記録デューティによる記録が行われる際には、リブ吸引のみによって吸引が行われ、記録媒体の吸着の際に溝吸引孔12からの吸引は行われない。従って、記録媒体をプラテン10に吸着させる際に、コックリングが生じていないにも関わらず、記録媒体の一部がリブの間に引き込まれることが抑えられる。これにより、記録媒体の一部がリブの間の溝内部に引き込まれることで記録媒体が波打ち、記録媒体と記録ヘッドとの間の距離が一定でなくなり、これによってインク滴の着弾精度が一定でなくなることが抑えられる。従って、インクの着弾位置にずれが生じることで記録画像にムラが生じることが抑えられ、記録によって得られる記録画像の品質が高く維持される。
【0039】
なお、本実施形態では、記録媒体の腰が比較的強い場合や、記録デューティが比較的高い場合には、溝吸引孔12のみ、あるいは、溝吸引孔12とリブ吸引孔14の両方によって吸引が行われている。しかしながら、記録デューティが比較的高いにも関わらず記録媒体の腰が比較的弱い場合には、溝吸引孔12からの吸引が行われることによって記録媒体が溝の内部に入り込む可能性がある。従って、本実施形態では、記録デューティが比較的高い場合であっても、記録媒体の腰の強さに応じて溝吸引孔12からの吸引の強さが調節される。この場合、腰の弱い記録媒体に対しては、溝吸引孔12からの吸引が弱くなるように吸引が設定される。すなわち、記録媒体の剛性が低い程、リブ吸引孔14からの吸引による吸引量に対して溝吸引孔12からの吸引による吸引量の割合を小さくするように、それぞれの吸引量の割合が制御される。そのため、比較的腰の弱い記録媒体に対し記録デューティの比較的高い記録が行われる場合には、溝吸引孔12とリブ吸引孔14との両方によって吸引が行われると共に、溝吸引孔12からの吸引が弱く設定された状態で吸引が行われる。このように吸引が行われるので、比較的腰の弱い記録媒体に対して記録デューティが比較的高い記録が行われる場合に、コックリングによって記録媒体が記録ヘッドの方へ変形することを抑えながら、記録媒体が溝13の内部に入り込むことを抑えることができる。また、記録デューティが高い画像を記録する際には、コックリングの程度が高くなる可能性があるので、溝吸引孔12からの吸引量を比較的高くする。これにより、コックリングが生じたときに記録媒体の変形した部分が記録ヘッド31の方へ突出することが抑えられる。逆に記録デューティの低い画像を記録する場合には、コックリングの生じる可能性が小さいにも関わらず記録媒体を溝13の内部に引き込む可能性があるので、溝吸引孔12からの吸引による吸引量を比較的小さくする。すなわち、記録が行われる際の記録デューティが低い程、リブ吸引孔14からの吸引による吸引量に対して溝吸引孔12からの吸引による吸引量の割合を小さくするように、それぞれの吸引量の割合が制御される。これにより、溝13の内部に記録媒体が引き込まれることで記録媒体が波打ち、記録ヘッド31と記録媒体との間の距離が一定でなくなることで記録画像の品質が低下することを抑えることができる。
【0040】
また、縁無し記録が行われる際には、縁無しシャッター34の調整弁81を調節することにより、記録媒体の主走査方向Xに沿う方向への長さに応じて、縁無し溝からの吸引が行われる。従って、縁無し記録が行われる際に、記録媒体からはみ出したインクについて吸引して回収することができる。本実施形態では、縁無し溝29a、29cからのインクの吸引が行われる。このとき、溝吸引ファン18が回転駆動されると共に、負圧連結ダクト23と縁無し溝29a、29cとが連通するように、縁無しシャッター34における調整弁81の位置が調節される。
【0041】
本実施形態では、吸引を行う縁無し溝の調節が、縁無しシャッター34によって行われている。しかしながら、縁無し溝からの吸引を行う際には、縁無し溝29a、29b、29cといったプラテン10上の全ての縁無し溝から吸引を行うこととしても良い。この場合、記録媒体の両端部よりも内側に位置する縁無し溝29bについては吸引の際には使用されない。ところが、プラテン上10の全ての縁無し溝から吸引が行われていることにより、縁無し溝29bからも吸引が行われる。腰の弱い記録媒体に対して記録が行われている場合、記録媒体の両端部よりも内側に位置する縁無し溝29bから吸引が行われると、これによって記録媒体の一部が縁無し溝29bの内部に引き込まれる場合がある。これによって記録媒体が波打ち、記録媒体の記録面と記録ヘッドとの間の距離が一定でなくなり、インクの着弾位置にずれが生じ、これによって記録画像にムラが生じる可能性がある。このような場合に対応するために、本実施形態では、縁無し溝29bと、縁無し溝29bに隣り合う溝13aの一部との間が連通するように、縁無し溝29bとその溝13aとの間に連結リブ35が形成されている。腰が弱くコックリングの生じる可能性の少ない低デューティによる記録の行われている記録媒体へ記録が行われている際には、溝吸引孔12からの吸引は行われていない。従って、溝吸引シャッター21が調節されることによって、溝吸引孔12から延びた溝吸引ダクト16は、通気口20に接続された大気ダクト22に連通している。従って、溝13aの内部の圧力は、大気圧に保たれている。縁無し溝29bと溝13aとが連通するので、縁無し溝29bの内部の圧力が大気圧に保たれる。これにより、腰が弱く低デューティによる記録の行われている記録媒体へ記録が行われている際に、記録媒体の一部が縁無し溝29bの内部に引き込まれることが抑えられ、記録媒体が波打つことを防ぐことができる。
【0042】
リブ吸引孔14及び溝吸引孔12の両方からの吸引、溝吸引孔12のみからの吸引、リブ吸引孔14からのみの吸引からの吸引方法の選択については、記録装置100に認識された記録モード及び記録媒体の種類から、記録装置が選択することとしても良い。また、ユーザによって吸引方法が選択されることとしても良い。また、記録媒体の種類の認識については、記録媒体の種類が記録装置によって検出されることとしても良い。また、ユーザが記録装置100に記録媒体の種類を入力することとしても良い。
【0043】
本実施形態では、溝吸引孔12からの吸引を行うための溝吸引ファン18と、リブ吸引孔14からの吸引を行うためのリブ吸引ファン19とが個別に構成されている。従って、溝吸引孔12からの吸引による吸引量とリブ吸引孔14からの吸引による吸引量とが個別に制御される。本実施形態では、CPU200が、溝吸引孔12からの吸引による吸引量とリブ吸引孔14からの吸引による吸引量とを個別に制御する制御手段として機能する。
【0044】
なお、本実施形態のリブ15における記録媒体と当接して支持する支持面15aは平面状に形成されているが、本発明はこれに限定されない。リブ15における支持面15aには、記録媒体をプラテン10上に効率よく吸着させるために、図8(a)、(b)に示されるように、スリット37が設けられても良い。図8(a)に、リブ15における記録媒体と当接して記録媒体を支持する支持面15aについての平面図を示し、図8(b)に、図8(a)におけるB−B線に沿う断面図を示している。図8(a)、(b)に示される形態によれば、スリット37の全体から吸引を行うことで記録媒体をプラテン10上に吸着させることができる。従って、記録媒体の吸着を比較的広い範囲で行うことができ、効率的に記録媒体の吸着を行うことができる。スリット37の形状としては、例えば、幅Wをリブ15の支持面15aの幅よりも狭くし、かつスリット37の幅と同等またはそれ以下の深さDとすることが好ましい。スリット37をこのような形状に形成することにより、より効率的に記録媒体の吸着を行うことができる。
【0045】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係る記録装置について説明する。なお、上記第一実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
図9に、第二実施形態における記録装置のプラテン周辺における模式的な断面図を示す。第二実施形態では、溝吸引ダクト16とリブ吸引ダクト17との間が接続され、その接続部分にダクトシャッター(ダクト切り替え機構)51が配置されている。また、ダクトシャッター51の上流に、それぞれの吸引孔で負圧を発生させる手段としての共通吸引ファン(第3の吸引ファン)52が1つだけ設けられている。ダクトシャッター51について拡大して示した断面図を、図10(a)〜10(c)に示す。
【0047】
ダクトシャッター(第2の流路切り替え弁)51は、第一実施形態における溝吸引シャッター21と同様に、負圧室82の内部で調整弁83が回転移動することで、負圧室82に接続されている流路の間の接続関係を切り替えることが可能である。本実施形態におけるダクトシャッター51の負圧室82には、共通吸引ファン52に接続された流路84と、リブ吸引孔14に接続されたリブ吸引ダクト17と、溝吸引シャッター21及び縁無しシャッター34に接続された負圧連結ダクト23が接続されている。調整弁83がどのように移動しても、共通吸引ファン52に接続された流路84は開口された状態に保たれている。そして、調整弁83の移動によって、リブ吸引ダクト17と負圧連結ダクト23における流路の開閉が切り替えられる。
【0048】
図10(a)には、負圧連結ダクト23が開口され、リブ吸引ダクト17が閉じられた状態にあるダクトシャッター51についての模式的な断面図が示されている。この状態では、共通吸引ファン52と負圧連結ダクト23との間が連通しているので、共通吸引ファン52が駆動されると負圧連結ダクト23及び溝吸引シャッター21に吸引が伝達される。溝吸引シャッター21は、溝吸引孔12に延びる溝吸引ダクト16が、負圧連結ダクト23と、通気口20に接続された大気ダクト22とのいずれか一方に連通するように形成されている。従って、溝吸引ダクト16と、負圧連結ダクト23とが接続されるように溝吸引シャッター21が作動したときに、共通吸引ファン52からの吸引が、溝吸引ダクト16を介して溝吸引孔12に到達する。従って、そのときには、共通吸引ファン52からの吸引によって、溝吸引孔12からの吸引を行うことができる。また、共通吸引ファン52と負圧連結ダクト23との間が連通する状態にあっても、溝吸引シャッター21によって溝吸引ダクト16と大気ダクト22とが連通するように作動しているときには、共通吸引ファン52からの吸引は溝吸引孔12に到達しない。従って、そのようなときには、共通吸引ファン52による溝吸引孔12からの吸引を行うことはできない。
【0049】
また、負圧連結ダクト23は縁無しシャッター34にも接続されているので、使用される縁無し溝が選択されると、共通吸引ファン52の駆動により縁無し溝からのインクの吸引も行うことができる。
【0050】
図10(b)には、負圧連結ダクト23が閉じられ、リブ吸引ダクト17が開口された状態にあるダクトシャッター51についての模式的な断面図が示されている。この状態では、共通吸引ファン52と、リブ吸引ダクト17との間が連通しているので、共通吸引ファン52が駆動されると、それぞれのリブ吸引孔14から吸引を行う。
【0051】
図10(c)には、負圧連結ダクト23及びリブ吸引ダクト17の両方が部分的に開口された状態にあるダクトシャッター51についての模式的な断面図が示されている。図10(c)に示されるように、ダクトシャッター51は、調整弁83が、図10(a)に示される状態と図10(b)に示される状態との間の位置関係をとることで、負圧連結ダクト23及びリブ吸引ダクト17の両方を部分的に開口させることができる。従って、共通吸引ファン52と、負圧連結ダクト23及びリブ吸引ダクト17の両方とを連通させることができる。これにより、溝吸引シャッター21によって溝吸引ダクト16と負圧連結ダクトとを連通させることで、リブ吸引孔14からの吸引と溝吸引孔12からの吸引とを同時に行うことができる。このとき、調整弁83の位置を調節することで、共通吸引ファン52に接続された流路84からの吸引の負圧連結ダクト23の方へ伝達される量と、リブ吸引ダクト17の方へ伝達される量との間の割合が調節される。従って、調整弁83の調節により、負圧連結ダクト23と、リブ吸引ダクト17との間の吸引の割合を調節することができる。これにより、リブ吸引孔14からの吸引と溝吸引孔12からの吸引との間の割合を決めることができる。このように、ダクトシャッター51は、溝吸引ダクト16とリブ吸引ダクト17とに接続され、溝吸引孔12から吸引された空気の吸引量とリブ吸引孔14から吸引された空気の吸引量との間の割合を切り替えることが可能である。
【0052】
また、吸引がこのようにダクトシャッター51によって共通吸引ファン52による吸引を溝吸引ダクト16とリブ吸引ダクト17とに振り分ける形態になるので、溝吸引孔12からの吸引とリブ吸引孔14からの吸引との合計の吸引量は一定である。従って、溝吸引孔12からの吸引による吸引量とリブ吸引孔14からの吸引による吸引量との合計の吸引量を一定とするように、溝吸引孔12からの吸引による吸引量吸引量とリブ吸引孔14からの吸引による吸引量吸引量とが関連的に制御されている。このとき、CPU200が、溝吸引孔12からの吸引による吸引量吸引量とリブ吸引孔14からの吸引による吸引量吸引量とを関連的に制御する制御手段として機能する。
【0053】
第二実施形態の記録装置によれば、リブ吸引孔14からの吸引と、溝吸引孔12からの吸引と、縁無し溝29a、29b、29cからの吸引とを行うために負圧を発生させるためのファンが1つで済み、ファンの数を少なくすることができる。従って、騒音レベルを低下させることができる。また、振動レベルを低下させることができ、これによって記録画像の品質の低下を抑えることが可能である。また、記録装置の構成を簡易化することができ、記録装置を小型化することができると共に、記録装置の製造コストを低減させることができる。
【0054】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態に係る記録装置について説明する。なお、上記第一実施形態及び第二実施形態と同様に構成される部分については図中同一符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0055】
図11に、第三実施形態における記録装置の記録ヘッド31及びプラテン10の周囲について拡大して示した模式的な断面図を示す。第三実施形態では、リブ吸引孔14からの吸引と、溝吸引孔12からの吸引との両方によって記録媒体のプラテン10への吸着が行われる。そして、溝吸引孔12から吸引される空気の吸引量とリブ吸引孔14から吸引される空気の吸引量との間の割合を切り替えることが可能である。さらに、第三実施形態の記録装置では、キャリッジ32に、ギャップセンサ(距離検知手段)53が取り付けられている。このギャップセンサ53によって、記録ヘッド31と記録媒体における記録面との間の距離を検知することができる。また、ギャップセンサ53はキャリッジ32に取り付けられているので、キャリッジ32が主走査方向Xに移動したときにキャリッジ32と共にギャップセンサ53も主走査方向Xに移動することができる。従って、キャリッジ32が主走査方向Xに走査しながらギャップセンサ53が連続的に記録媒体と記録ヘッド31との間の距離を検知することで、主走査方向Xにおける記録媒体の全体に亘って記録媒体と記録ヘッド31との間の距離の分布を検出することができる。また、記録媒体の全体に亘って記録媒体と記録ヘッド31との間の距離を検出しながらリブ吸引孔14及び溝吸引孔12による吸引を調節することで、それぞれの記録媒体に応じたリブ吸引孔14及び溝吸引孔12による吸引圧の決定を行うことができる。このときの記録媒体に応じた適切なリブ吸引孔14及び溝吸引孔12による吸引圧を、それぞれQ1、Q2とする。
【0056】
第三実施形態の記録装置による、それぞれの記録媒体に応じた吸引によるリブ吸引孔14及び溝吸引孔12からの吸引について説明する。図12に、記録媒体に応じた吸引によるリブ吸引孔14及び溝吸引孔12からの吸引圧の調整が行われる際のフローチャートを示す。
【0057】
まず、プラテン上に記録媒体の無い状態でキャリッジ32を主走査方向に移動させ、キャリッジ32に搭載されたギャップセンサ53により、キャリッジとプラテンの上面との間の距離が主走査方向Xの全体に亘って測定される(S1)。その後、記録媒体が、プラテン上に搬送される(S2)。このとき、記録媒体の種類が記録装置に入力される。記録媒体の種類の入力においては、ユーザによって入力されても良いし、記録装置によって記録媒体の種類が検出されても良い。それから、初期設定されている吸引圧によって記録媒体をプラテン10上に吸着する(S3)。このとき、入力された記録媒体の種類に応じて記録媒体の種類に適した吸引圧が設定されることとしても良い。それから、ギャップセンサ53によって、記録媒体の記録面と記録ヘッド31との間の距離が測定される(S4)。このとき、キャリッジ32が記録媒体における主走査方向の全体に亘って走査することで、主走査方向の全体に亘って記録媒体の記録面と記録ヘッド31との間の距離の分布が測定される。また、主走査方向の全体に亘って記録媒体の記録面と記録ヘッド31との間の距離の分布が検出されるので、一回の測定ごとに、記録媒体の記録面と記録ヘッド31との間の距離についての変動が検出される。
【0058】
ここで、ギャップセンサ53による記録媒体の記録面と記録ヘッド31との間の距離の測定が、条件を変えながらn回行われる。ここでは、溝吸引孔12から吸引される空気の吸引量と、リブ吸引孔14から吸引される空気の吸引量とを変えて、複数回、記録媒体の吸着が行われて、記録媒体へ記録が行われる。ギャップセンサ53によって記録媒体の記録面と記録ヘッド31との間の距離が測定される度に、距離の測定についての回数が、予め設定されていた閾値としてのn回以上となったかどうかについて判断される(S5)。ここでの距離の測定についての回数がn回以上となったときには、フローはS7へ進む。距離の測定についての回数がn回よりも少ない場合には、リブ吸引孔14からの吸引及び溝吸引孔12からの吸引の吸引圧を変更したうえで(S6)、再度、記録媒体の記録面と記録ヘッド31との間の距離が測定される(S4)。そして、n回に亘って行われた距離の測定において、記録媒体の記録面と記録ヘッド31との間の距離が比較的大きく保たれ、距離についての変動が小さかったときのリブ吸引孔14からの吸引及び溝吸引孔12からの吸引の吸引圧が読み出される。具体的には、記録媒体と記録ヘッド31との間の距離が全体に亘って予め設定されていた設定値以上であって、距離についての変動が予め設定されていた設定値の範囲内にあるときの、リブ吸引孔14からの吸引及び溝吸引孔12からの吸引の吸引量が読み出される。すなわち、ギャップセンサ53によって検知された距離が所定の範囲に収まったときのリブ吸引孔14からの吸引及び溝吸引孔12からの吸引による吸引量が読み出される。そして、読み出されたリブ吸引孔14からの吸引及び溝吸引孔12からの吸引の吸引量のときの吸引圧が、最適な吸引圧Q1、Q2として設定される(S7)。このように、複数回の吸着のうち、記録ヘッド31と記録媒体との間の距離が予め設定されていた距離についての閾値よりも大きく、その距離についての変動が予め設定されていた距離の変動についての閾値よりも小さい場合の吸引の割合が決定される。そのときの溝吸引孔12から吸引された外気の吸引量と、リブ吸引孔14から吸引された外気の吸引量とが、記録装置に設定される。
【0059】
このように、溝吸引孔12からの吸引及びリブ吸引孔14からの吸引による吸引量を変更して記録媒体の支持面15aへの吸着が複数回行われる。そして、ギャップセンサ53によって検知される距離が所定の範囲に収まるときの溝吸引孔12からの吸引及びリブ吸引孔14からの吸引による吸引量が、記録媒体に画像を記録するときのそれぞれの吸引による吸引量として設定される。また、設定された溝吸引孔12から吸引された吸引量と、リブ吸引孔14から吸引された吸引量とによって、以後記録媒体の吸着が行われて、プラテン10上への記録媒体の吸着が行われる。そのため、記録媒体が記録ヘッド31に接触せずに、かつ記録ヘッド31との対向方向における記録媒体の変動が所定の範囲内に収まるように、溝吸引孔12からの吸引及びリブ吸引孔14からの吸引の吸引量が制御される。本実施形態では、CPU200が、溝吸引孔12からの吸引及びリブ吸引孔14からの吸引の吸引量を制御する制御手段として機能する。また、CPU200が、記録媒体に画像を記録するときの溝吸引孔12からの吸引及びリブ吸引孔14からの吸引の吸引量を設定する吸引量設定手段として機能する。
【0060】
本実施形態の記録装置によれば、記録媒体の種類、使用環境に応じて最適なリブ吸引孔14及び溝吸引孔12からの吸引圧を設定することができる。このように設定された吸引圧によってリブ吸引孔14及び溝吸引孔12からの吸引が行われるので、吸引が行われる際の記録媒体の記録面と記録ヘッドとの間の距離の変動を小さく抑えることができる。従って、記録ヘッドと記録媒体における記録面との間の距離が大きく変動することで生じる着弾位置のずれが生じることを抑えることができ、記録によって得られる記録画像の品質が高く維持される。
【0061】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、記録媒体としてロール状に巻回された用紙(ロール紙)を使用するインクジェット記録装置を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、記録媒体として定寸にカットされたカットシートなど、他の形態(形状、寸法など)の記録媒体を使用するインクジェット記録装置においても同様に適用可能である。さらに、上述の実施形態では、記録媒体に沿って移動するキャリッジに搭載された記録ヘッドで記録するシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置を例に挙げた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、記録ヘッドが主走査方向に走査せず、副走査方向への記録媒体の搬送のみによって記録媒体に記録が行われるラインタイプのインクジェット記録装置に適用されても良い。また、その他の記録方式のインクジェット記録装置に対しても本発明が適用されても良い。また、本発明は、インクジェット記録装置であれば、記録ヘッドの数や使用するインクの種類数や性状等に関わらず、さらに、紙、プラスチックシートなど記録媒体の材質にも関係なく同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 プラテン
12 溝吸引孔
13 溝
14 リブ吸引孔
15a 支持面
31 記録ヘッド
100 記録装置
Pr ロール紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出可能な記録ヘッドを用い、記録媒体を支持可能なプラテンの支持面に沿って搬送される前記記録媒体に対して、前記記録ヘッドからインクを吐出することによって画像を記録する記録装置であって、
記録媒体を支持する前記プラテンの支持面に形成され、記録媒体の搬送が行われる搬送方向に延びる溝と、
前記溝の内部に形成されて吸引を行う第1の吸引部と、
前記第1の吸引部から外気を吸引させる第1の吸引手段と、
前記プラテンの支持面に形成された第2の吸引部と、
前記第2の吸引部から外気を吸引させる第2の吸引手段と、
記録媒体の剛性及び記録デューティの少なくとも一方に基づいて、第1の吸引手段による吸引量と第2の吸引手段による吸引量との割合を制御することが可能な制御手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、記録媒体の剛性が低い程、前記第2の吸引手段による吸引量に対して前記第1の吸引手段による吸引量の割合を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記記録デューティが低い程、前記第2の吸引手段による吸引量に対して前記第1の吸引手段による吸引量の割合を小さくすることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記第1の吸引手段は、前記第1の吸引部から外気を吸引するための第1の吸引ファンを備え、
前記第2の吸引手段は、前記第2の吸引部から外気を吸引するための第2の吸引ファンを備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1の吸引手段は、外気に連通する外気ダクトと、前記第1の吸引ファンに接続される吸引ダクトと、前記第1の吸引部に対して前記外気ダクトまたは前記吸引ダクトを選択的に接続する接続手段と、を有することを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の吸引手段は、前記第1及び第2の吸引部から外気を吸引可能な共通の第3の吸引ファンを備えることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第1の吸引手段による吸引量と前記第2の吸引手段による吸引量とを個別に制御することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1の吸引手段による吸引量と前記第2の吸引手段による吸引量との合計の吸引量を一定とするように、前記第1の吸引手段による吸引量と前記第2の吸引手段による吸引量とを関連的に制御することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記制御手段は、記録媒体が前記記録ヘッドに接触せずに、かつ前記記録ヘッドとの対向方向における記録媒体の変動が所定の範囲内に収まるように、前記第1及び第2の吸引手段による吸引量を制御することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記記録ヘッドと記録媒体との間の距離を検知する距離検知手段と、
前記第1及び第2の吸引手段による吸引量を変更して記録媒体の前記支持面への吸着を複数回行った場合に、前記距離検知手段によって検知される距離が所定の範囲に収まるときの前記第1及び第2の吸引手段による吸引量を、記録媒体に画像を記録するときの前記制御手段による前記第1及び第2の吸引手段による吸引量として設定する吸引量設定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−10198(P2013−10198A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142930(P2011−142930)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】