説明

記録装置

【課題】乾燥手段の吹出口から吹き出された乾燥風が滞留して形成される乾燥領域の温度を、乾燥に適した温度に調整して記録媒体の過乾燥を防止することができる記録装置を提供する。
【解決手段】乾燥装置17の吹出口53から吹き付けられた温風(乾燥風)は、シートCSの表面側において従動ローラー34,35の間に滞留して第1の乾燥領域D1が形成される。第1の乾燥領域D1を形成する従動ローラー35よりも搬送方向の下流側の位置には、カール矯正機構18へシートCSを案内するデカール板72が設けられている。同一の印刷ジョブのうちの1枚目のシートCSに乾燥処理を施す場合、デカール板72は退避位置に配置され、乾燥領域Dの搬送方向下流端が開放される(図7(b))。2枚目以降のシートCSに乾燥処理を施す場合、デカール板72はガイド位置(乾燥領域形成位置)に配置されるようになっている(図7(c))。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドが液体を付着させた記録媒体に、乾燥風を吹き付けて乾燥処理を施す乾燥手段を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体に対して液体(インク等)を付着させることで記録を行う記録装置として、インクジェット式記録装置が広く知られている。この種の記録装置には、インク(液体)が付着した記録媒体を搬送途中に乾燥させる乾燥装置が記録媒体の搬送経路上に設けられたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
例えば特許文献1に記載された乾燥装置は、空気を筐体内に取り込むための吸引ファンと、筐体内に取り込まれた空気を加熱する加熱ヒーターと、空気が加熱されたことによる乾燥風(温風)を画像記録後の記録媒体に向かって吹き出す吹出口と、吹出口から吹き出された乾燥風を吸引ファンに再び導く流通空間とを備えている。そして、乾燥風を記録媒体に吹き付けつつ循環させることにより、乾燥風を早期に目標温度に昇温させるとともに、記録媒体に付着したインクを効率よく乾燥させる。そして、乾燥後の記録媒体は乾燥装置の搬送方向下流側に排出されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−045861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、乾燥装置の吹出口側には、その吹出口に対して搬送方向の上流側と下流側に、搬送方向と交差する方向に延びる搬送ローラーなどの乾燥領域形成部材が配置され、吹出口から吹き出された乾燥風(温風)が乾燥領域形成部材により滞留することにより、比較的高温の乾燥領域が形成される。そして、印刷後の記録媒体が乾燥領域を通るときにそこに滞留している加熱空気によりインクの乾燥が促進される。しかし、乾燥領域形成部材を構成する搬送ローラーなどは、搬送方向と直交する方向に延びた軸部に、所定径のローラーが間欠的に複数配置された構成であるため、ローラー間の隙間を通る経路や、ローラーを乗り越える経路で、乾燥領域から温風が逃げるため、乾燥領域の温度が低下するという問題があった。また、複数枚の記録媒体が搬送されてくる場合、記録媒体上のインクが乾燥の際に必要な気化熱を奪い、先行の記録媒体が気化熱を奪うことにより乾燥領域の温度が安定する。しかし、1枚目の記録媒体が乾燥領域中を搬送されるときには、気化熱を奪う先行の記録媒体が存在しないので、1枚目の記録媒体が過乾燥になり易かった。これは、乾燥領域の温度を調整する機能がないことに起因する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、乾燥手段の吹出口から吹き出された乾燥風が滞留して形成される乾燥領域の温度を、乾燥に適した温度に調整して記録媒体の過乾燥を防止することができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の一つは、液体の付着により記録が施される記録媒体を搬送方向の上流側から下流側へと搬送する搬送手段と、搬送される記録媒体に搬送経路の途中で記録を施す記録ヘッドと、前記搬送手段により搬送される前記記録媒体の搬送経路の途中において前記記録媒体の前記液体が付着した表面と対向する位置に形成された吹出口から前記表面に向けて加熱した空気を吹き出すことにより前記記録媒体に乾燥処理を施す乾燥手段と、前記乾燥手段の前記吹出口よりも前記搬送方向の下流側に配置され、前記吹出口から吹き出された前記空気を前記記録媒体の表面側において滞留可能とする乾燥領域の搬送方向下流側の後方面を形成する乾燥領域形成位置と前記乾燥領域の前記後方面として機能しない退避位置に移動可能な乾燥領域形成部材と、を備えることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、乾燥手段の吹出口よりも搬送方向の下流側に配置された乾燥領域形成部材が、乾燥領域形成位置に配置されると、当該乾燥領域形成部材が乾燥領域の搬送方向下流側の後方面を形成し、吹出口から吹き出された空気が記録媒体の表面側において後方面よりも搬送方向の上流側に滞留する。この加熱した空気が滞留することにより、乾燥領域形成部材よりも搬送方向の上流側に乾燥領域が形成される。また、乾燥領域形成部材が退避位置に配置されると、乾燥領域の後方面として機能しなくなるので、乾燥領域の空気が滞留しにくくなり、乾燥領域の温度が相対的に低下する。乾燥領域形成部材を、乾燥領域形成位置と退避位置との間で移動させることにより、乾燥領域の温度調整を行うことができる。例えば複数の記録媒体が比較的連続して搬送されてくるとき、乾燥領域から気化熱を奪う先行する記録媒体が存在しない1枚目の記録媒体を乾燥するときに過乾燥を防止できる。
【0009】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記乾燥手段の前記吹出口よりも前記搬送方向の上流側と下流側にそれぞれ配設され、前記吹出口から吹き出された前記空気を前記記録媒体の表面側に滞留させて前記乾燥領域のうちの第1の乾燥領域を形成可能な一対の搬送ローラーを備え、前記乾燥領域形成部材は、前記搬送ローラーよりも前記搬送方向の下流側に配置され、前記搬送ローラーの隙間から搬送方向下流側へ流れた空気を滞留させて前記乾燥領域のうちの第2の乾燥領域を形成する前記乾燥領域形成位置と、前記流れ出た空気を滞留させない退避位置とに移動可能に構成されていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、乾燥手段の吹出口から吹き出された空気が、記録媒体の表面側における一対の搬送ローラー間の領域に滞留することにより第1の乾燥領域が形成される。乾燥領域形成部材が乾燥領域形成位置に配置されると、搬送ローラーの隙間から搬送方向下流側へ流れた空気が滞留して第2の乾燥領域が形成される。この第2の乾燥領域が形成されることで、乾燥領域全体が、搬送方向下流側に拡張される。よって、記録媒体に付着した液体の乾燥が促進される。また、乾燥領域形成部材が退避位置に配置されると、搬送ローラーの隙間から搬送方向下流側へ流れた空気を滞留させない。このため、第1乾燥領域及び第2の乾燥領域の温度が低下する。このように乾燥領域形成部材を乾燥領域形成位置と退避位置との間で移動させることにより、乾燥領域の温度調整を行うことができる。
【0011】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記乾燥領域に前記記録媒体がない状態からの乾燥処理では、前記乾燥領域形成部材を退避位置に配置し、前記乾燥領域に前記記録媒体がある状態からの乾燥処理では、前記乾燥領域形成部材を乾燥領域形成位置に配置するように前記乾燥領域形成部材に移動のための動力を出力する動力源を制御する制御手段を、更に備えることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、乾燥領域に記録媒体がない状態からの乾燥処理では、制御手段により動力源が制御されることにより、乾燥領域形成部材が退避位置に配置される。このため、乾燥領域から空気が流出し、乾燥領域の温度が低下する。この結果、乾燥領域に記録媒体がない状態からの乾燥処理であっても、その記録媒体の過乾燥が防止される。一方、乾燥領域に記録媒体がある状態からの乾燥処理では、制御手段により動力源が制御されることにより、乾燥領域形成部材が乾燥領域形成位置に配置される。このため、先行の記録媒体に乾燥処理が施される過程で、気化熱が奪われて温度が低下した段階で、乾燥領域の搬送方向下流端(後方面)が閉じられる。このため、先行の記録媒体の過乾燥を防止しつつ、後続の記録媒体の乾燥を効率よく行うことができる。
【0013】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記乾燥領域に前記記録媒体がない状態から同一の記録ジョブを構成する複数枚の記録媒体の乾燥処理を行う場合、前記制御手段は、1枚目の記録媒体の乾燥処理では、前記乾燥領域形成部材を前記退避位置に配置し、2枚目以降の前記記録媒体の乾燥処理では、前記乾燥領域形成部材を前記乾燥領域形成位置に配置することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、乾燥領域に記録媒体がない状態から同一の記録ジョブを構成する複数枚の記録媒体のうち1枚目の記録媒体の乾燥処理を行うとき、制御手段は、乾燥領域形成部材を退避位置に配置する。このため、1枚目の記録媒体の過乾燥を防止できる。また、2枚目以降の記録媒体の乾燥処理では、制御手段は、乾燥領域形成部材を乾燥領域形成位置に配置する。このため、2枚目以降の記録媒体の乾燥を効率よく行うことができる。
【0015】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記退避位置に移動した前記乾燥領域形成部材は、前記乾燥領域からの空気を前記乾燥手段の吸入口側へ案内可能な姿勢に配置されることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、乾燥領域形成部材が退避位置に配置されたときの姿勢によって、乾燥領域からの空気は乾燥手段の吸気口側へ案内される。このため、乾燥領域から温度調整のために流出させた空気(温風)を再び吸気口から乾燥手段へ取り込むことにより、流出させた空気の熱を有効に利用できる。
【0017】
本発明の態様の一つである記録装置では、前記乾燥手段よりも前記搬送方向の下流側には、前記記録媒体のカールを矯正するカール矯正手段が配置され、前記記録媒体を前記カール矯正手段へ案内する案内部材が前記乾燥領域形成部材を兼ねていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、カール矯正手段の案内部材が乾燥領域形成部材を兼ねるので、乾燥領域形成専用の部材を別途設ける必要がない。例えば、案内部材を乾燥領域形成位置(案内位置)と退避位置との間で移動可能に構成すれば、案内部材を利用して乾燥領域形成部材を構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態におけるプリンターの概略構成を示す側断面図。
【図2】乾燥装置及びその周辺構成を示す模式側断面図。
【図3】乾燥領域を示す模式平面図。
【図4】デカール板の回動機構を示す斜視図。
【図5】(a),(b)カール矯正機構を示す側面図。
【図6】プリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図7】(a)印刷開始前の待機状態、(b)1枚目の乾燥処理、(c)2枚目以降の乾燥処理を示す模式側面図。
【図8】乾燥制御処理を示すフローチャート。
【図9】第2実施形態における1枚目の乾燥処理を示す模式側面図。
【図10】乾燥制御処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を、図1〜図8を用いて説明する。
図1に示すように、記録装置の一例であるインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター11」と称す。)は、前面(図1における左面)に開口する排紙口12aと、排紙口12aから排出された印刷後のシートCSを載置可能に外側へ向かって略水平に延出する排紙部12b(排出トレイ)とを有する本体ケース12を備えている。プリンター11は、本体ケース12内に、長尺状のシートST(例えば連続紙)がロール状に巻回されたロール体RSを取着する給紙部13を備えている。
【0021】
また、プリンター11は、本体ケース12内に、給紙部13から排紙部12bに向かって延びる搬送経路に沿ってシートSTを搬送する搬送手段の一例としての搬送装置14を備えている。また、本体ケース12内には、搬送経路の途中でシートSTに対してインク滴を噴射して記録を施す記録部15と、記録後のシートSTを所定長さのカットシートCS(単票紙)に切断するカッター16とが設けられている。また、搬送方向Xにおいてカッター16の下流側には、カットシートCSの記録面(表面)に乾燥風を吹き付けてインクを乾燥させる乾燥手段の一例としての乾燥装置17(ヒーターユニット)が設けられている。さらに、搬送方向Xにおいて乾燥装置17の下流側には、カットシートCSのカール(巻きぐせ)を矯正するカール矯正手段の一例としてのカール矯正機構18(デカール機構)が設けられている。このカール矯正機構18は、カール矯正機能の他に搬送機能も備え、搬送装置14の一部を構成する。なお、本実施形態では、シートSTとカットシートCSが、記録媒体の一例を構成している。
【0022】
次に、給紙部13について説明する。給紙部13は、ロール体RSを回転可能に支持する回転軸19と、回転軸19を回転させる給送モーター20(図6参照)とを備えている。そして、給送モーター20の駆動に伴って回転軸19が図1における反時計方向に回転することにより、ロール体RSからシートSTが繰り出される。
【0023】
次に、搬送装置14について説明する。搬送装置14は、シートST,CSを搬送方向Xの上流側から下流側に向かって搬送する複数の搬送ローラー(駆動ローラー)21〜27と、各搬送ローラー21〜26との間にシートST,CSを挟持可能な従動ローラー31〜36とを備えている。各搬送ローラー21〜26の駆動回転に伴い各従動ローラー31〜36が従動回転することにより、シートST,CSは搬送される。搬送装置14の一部を構成するカール矯正機構18は、大径の搬送ローラー27(上流側固定ローラー)と、搬送ローラー27に対して搬送方向Xの下流側に配置されたそれぞれ小径の搬送ローラー26と従動ローラー36からなるデカールローラー対DR(下流側作動ローラー対)とを備える。カール矯正機構18は、印刷中において、デカールローラー対DRを構成する従動ローラー36を、カールの向きと逆向きに湾曲させる矯正力をシートCSに与えうる矯正位置に移動させることにより、シートCSにカール矯正処理を施す。また、搬送装置14は、搬送ローラー21〜27を回転させるための動力を出力する搬送モーター40(図6参照)と、搬送ローラー25と対応する位置に配置された搬送経路形成部材41とを備えている。
【0024】
なお、以下の説明において、互いに対をなす搬送ローラー23と従動ローラー33を搬送ローラー対R1、搬送ローラー24と従動ローラー34を搬送ローラー対R2、搬送ローラー25と従動ローラー35を搬送ローラー対R3という。また、本実施形態では、搬送ローラー対R1,R2,R3を構成するローラーのうち少なくとも従動ローラー33,34,35には、シートST,CSの表面に付着した未乾燥のインクが転写されないように撥液性(例えば撥水性)を有するローラー(例えばスポンジ製ローラー)が採用されている。
【0025】
次に、記録部15について説明する。図1に示す記録部15は、本体ケース12内における搬送経路の上側に、搬送方向Xと交差(直交)する幅方向Yに沿って水平に延びる状態で架設されたガイド軸45と、ガイド軸45の長手方向(幅方向Y)に沿って移動可能な状態でガイド軸45に支持されたキャリッジ46とを備えている。キャリッジ46には搬送経路に対向する状態で記録ヘッド47が取り付けられている。記録ヘッド47には、液体の一例であるインクを噴射する複数のノズル47aが設けられている。そして、キャリッジ46がガイド軸45に案内されつつ幅方向Y(主走査方向)に沿って往復移動することにより、キャリッジ46と共に記録ヘッド47が主走査方向に往復移動するようになっている。
【0026】
また、記録部15は、記録ヘッド47と搬送経路を挟んで対向する位置に配置された支持台48を備えている。支持台48は、その上面に開口する複数の吸引孔(図示略)を通じてシートSTを吸着する吸引機構49を内蔵している。そして、支持台48に支持されたシートSTの表面(図1では上面)に、記録ヘッド47のノズル47aからインクが噴射されることで、シートSTにインクを付着させる記録(印刷)が施されるようになっている。
【0027】
詳しくは、プリンター11は、ホスト装置200(図6参照)から印刷ジョブデータを受信する。プリンター11が備える制御手段の一例としての制御装置100は、印刷ジョブデータを入力すると、その中に含まれる印刷データを、記録ヘッド47の1走査分に相当する記録データごとに分割する。キャリッジ46が1走査する途中において記録ヘッド47は記録データに基づき選択されたノズル47aからインクを噴射する印刷処理を行う。そして、1走査毎の印刷処理の合間に、シートSTが次の記録位置まで搬送される。すなわち、記録部15では、幅方向Yが長手方向となる帯状の画像の形成と、シートSTの間欠的な搬送とが交互に繰り返されることにより、シートST上に印刷ジョブに基づく画像が形成される。なお、記録部15からカール矯正機構18に至る搬送経路において、支持台48の上面と搬送経路形成部材41の上面とを含む仮想平面が、印刷中のシートST,CSを搬送する搬送面となる。
【0028】
また、カッター16によるシートSTの切断は、搬送装置14によるシートSTの搬送を停止させた状態で行われる。カッター16は、搬送ローラー対R1,R2に両側を挟持されたシート部分の略中央を幅方向Yに作動して切断し、シートSTからカットシートCSを切り離す。なお、本実施形態では、印刷過程でシートSTの搬送を停止したタイミングで、シートSTの切断を行うようになっている。
【0029】
さらに、カッター16よりも搬送方向Xの下流側となる位置には、印刷処理によるインクが付着したカットシートCS(以下、単に「シートCS」ともいう。)に乾燥処理を施す乾燥装置17が設けられている。乾燥装置17は、シートCSの表面(記録面)に温風(乾燥風)を吹き付けることで、シートCSにインクを乾燥する乾燥処理を施す。乾燥装置17は、制御装置100によって温度制御及び送風制御が行われる。
【0030】
次に、乾燥装置17について図2を用いて詳細に説明する。乾燥装置17は、搬送方向Xに搬送ローラー対R2,R3の間に挟まれた領域の上方位置に配置されている。乾燥装置17は、幅方向YにシートCSの最大幅に対応する長さを有し、シートCSの幅方向Yの全域に温風を吹き付けることが可能となっている。
【0031】
図2に示すように、乾燥装置17は、略直方体形状をなすカバー51を有している。カバー51は、上面部51a、後側面部51b、下面部51c、前側面部51d、及び幅方向Yに対向する左右の側面部(図示せず)を有している。カバー51の搬送方向下流側の後側面部51bには、複数(図2では5つ図示)の吸気口52が鉛直方向に所定間隔をおいて規則的に形成されている。さらに、カバー51の下面部51cには搬送方向上流側寄り(図2では右寄り)の位置に、シートCSの表面に向かって温風を吹き出す吹出口53が形成されている。吹出口53は、カバー51の長手方向(幅方向Y)に沿ってシートCSの幅方向全域に亘る長さで延びる略矩形状に開口し、搬送方向Xの下流側へ向かう斜め下方へ温風を吹き出す。
【0032】
また、カバー51の内部において吸気口52と対向する位置には、複数(図2では1つのみ図示)のファンユニット54が配設されている。ファンユニット54は、前後が一部開口する四角箱状のファンケース54aと、ファンケース54a内に配設されたファンモーター55と、ファンモーター55の出力軸に固定されたファン56とを備えている。さらに、カバー51の内部には、ファンユニット54が吸気口52からカバー51内へ取り込んだ空気を吹出口53まで導くための空気流路部57が設けられている。カバー51の内部では、略J字状に形成された内壁面58a,58bの後端部(図2では左端部)がそれぞれファンケース54aの上面部及び下面部に連結される一方、その前下側の端部(図2では右下端部)が下面部51cに対して吹出口53を挟む前後両側の箇所に連結されている。そして、空気流路部57は、各内壁面58a,58bとカバー51の左右側面部(図示略)とにより区画形成されている。
【0033】
空気流路部57の内部には、空気流れ方向においてファン56と吹出口53との間の位置にヒーター59が設けられている。また、空気流路部57の吹出口53側の先端部分は、吹出口53側ほど搬送方向Xの下流側へ向かうように傾斜している。したがって、乾燥装置17は、ヒーター59を発熱させた状態でファン56が回転することにより、吸気口52から取り込んでヒーター59が加熱した空気(温風)を、吹出口53から搬送方向Xの下流側へ向かう斜め下方へ吹き出すようになっている。空気流路部57内においてヒーター59よりも空気流れ方向下流側の位置には、空気の温度を検出する温度センサー61が設けられている。ヒーター59は、制御装置100によって、温度センサー61の検出温度が設定温度(目標温度)になるように加熱制御される。
【0034】
また、図2に示すように、乾燥装置17のカバー51の下面部51cは、搬送経路形成部材41の上面(搬送面)と、所定の間隔をおいて対向する略水平面となっている。そして、吹出口53からシートCSの表面(記録面)に吹き付けられた温風(乾燥風)が、シートCSの表面、カバー51の下面部51c及び従動ローラー34,35により囲まれた領域に滞留することにより第1の乾燥領域D1が形成される。すなわち、シートCS(又は搬送経路形成部材41)によって第1の乾燥領域D1の底面が形成され、カバー51の下面部51cによって第1の乾燥領域D1の天井面が形成される。さらに従動ローラー34,35によって、第1の乾燥領域D1の搬送方向Xにおける上流端面と下流端面とがそれぞれ形成される。
【0035】
また、乾燥装置17のカバー51の内部には、空気流路部57と下面部51cとの間に蓄熱空間部60が区画形成されている。蓄熱空間部60内の空気が一旦温まると、蓄熱空間部60に隣接する空気流路部57内の空気、及び第1の乾燥領域D1に滞留した空気は、比較的放熱が抑えられるようになっている。
【0036】
図2に示すように、搬送ローラー対R3よりも搬送方向Xの下流側へ少し離れた位置には、シートCSの搬送方向Xにおける先端と後端を検知するセンサー62(紙端検出センサー)が設けられている。センサー62は、例えば搬送経路形成部材41の上面(搬送面)よりも下方位置に配置され、シートCSの下側からその先端及び後端を検知する。本実施形態のセンサー62は、制御装置100と電気的に接続された反射型の光学式センサーであり、図示しない光源部(発光素子)と受光部(受光素子)とを有している。
【0037】
センサー62は、光源部が搬送面と直交する上方に向けて出射した光(検出光)の反射光を受光部が受光することにより、反射光の強さに応じた電気信号を制御装置100に出力する。例えば、センサー62は、シートCSが反射対象となったときに所定の閾値よりも大きいON値を出力する一方、シートCSが反射対象となっていないときに前記閾値以下となるOFF値を出力する。したがって、センサー62の出力値がOFF値からON値に変化することでシートCSの先端が検知され、センサー62の出力値がON値からOFF値に変化することでシートCSの後端が検知される。
【0038】
また、センサー62よりも搬送方向Xの下流側の位置には、カール矯正機構18が設けられている。カール矯正機構18は、相対的に大径の搬送ローラー27(支持ローラー)と、搬送ローラー27よりも搬送方向Xの少し下流側に位置するデカールローラー対DR(作動ローラー対)とを有している。また、カール矯正機構18には、シートCSの先端部をデカールローラー対DRの隙間に案内するデカール板72が設けられている。
【0039】
本実施形態のデカール板72は、搬送方向Xの下流側ほど搬送面との距離が短くなる向きに傾斜した姿勢に配置されるガイド位置(図2で実線で示す位置)と、搬送方向Xの下流側ほど搬送面との距離が長くなる向きに傾斜した姿勢に配置される退避位置(図2で二点鎖線で示す位置)との間の範囲で回動するように構成されている。このデカール板72は、回動中心となる基端が搬送面の上方近傍に位置するとともに、ガイド位置にあるときの先端が乾燥装置17の後側面部51bの下端近傍に位置する。また、図3に示すように、デカール板72は幅方向YにシートCSの幅よりも少し長い幅を有している。
【0040】
図4に示すように、乾燥装置17の幅方向Yの両側には、板金などからなるフレーム65a,65bが互いに対向する状態で立設されている。そして、このフレーム65a,65bには、従動ローラー34,35の軸部34a,35aと、搬送ローラー27の軸部27aの各両端部がそれぞれ軸支されている。なお、図4では省略しているが、搬送ローラー24,25、及びデカールローラー対DRを構成する搬送ローラー26と従動ローラー36の各軸部も、フレーム65a,65bに軸支されている。
【0041】
また、図4に示すように、フレーム65a,65bには、デカール板72を回動可能に支持する回動軸72a(図3にも示す)が軸支されている。回動軸72aの一端部は、フレーム65aの外側面に組み付けられた動力源の一例としての電動モーター66の出力軸と連結されている。このため、電動モーター66が正逆転駆動されることにより、デカール板72がガイド位置と退避位置との間を回動するようになっている。
【0042】
すなわち、本例では、図3、図4に示すように、デカール板72がガイド位置(同図では実線の位置)にある状態で電動モーター66が正転駆動されると、デカール板72はガイド位置から退避位置(同図では二点鎖線の位置)へ回動する。また、デカール板72が退避位置にある状態で電動モーター66が逆転駆動されると、デカール板72は退避位置からガイド位置へ回動するようになっている。また、電動モーター66の停止位置を制御して、デカール板72をガイド位置と退避位置との中間位置に配置することも可能となっている。なお、デカール板72は回動範囲の両側に設けられた図示しないストッパーに当接することで、ガイド位置と退避位置とに規制される。また、図3、図4では、搬送ローラー27を1本のローラーとして描いているが、実際には搬送ローラー27は軸部27aの軸方向に間隔を開けて複数個設けられている。
【0043】
図2、図3に示すように、吹出口53からシートCSに吹き付けられた温風(図3に示す黒太線矢印)は、従動ローラー34,35間に滞留して第1の乾燥領域D1を形成する。第1の乾燥領域D1の搬送方向Xの下流端は、複数個の従動ローラー35で間欠的に覆われているだけなので、第1の乾燥領域D1に滞留する空気の一部が、従動ローラー35の上側の隙間を通る経路(図3に示す実線矢印)、及び従動ローラー35間の隙間を通る経路で、搬送方向Xの下流側へ漏れる。デカール板72は、図2、図3に実線で示すガイド位置に配置された状態では、第1の乾燥領域D1から搬送方向Xの下流側に漏れた温風を、デカール板72と従動ローラー35との間に滞留させて第2の乾燥領域D2を形成する。このため、各乾燥領域D1,D2を含む乾燥領域Dの全体が実質的に搬送方向Xの下流側へ拡張される。本実施形態では、ガイド位置が乾燥領域形成位置となっており、デカール板72はガイド位置に配置されることで、乾燥領域Dの後方面を形成し、一方、退避位置に配置されたときには、乾燥領域Dの後方面を形成しない。
【0044】
一方、デカール板72を、図2、図3に二点鎖線で示す退避位置に配置した状態では、第1の乾燥領域D1から漏れた空気は、滞留することなく、デカール板72の上面に沿って搬送方向Xの下流側上方へ流れるようになっている。このため、デカール板72が退避位置にある状態では、乾燥領域Dの搬送方向Xの下流端(後方面)が開放されるので、乾燥領域D(第1の乾燥領域D1)の温度が低下するようになっている。なお、デカール板72が退避位置に配置された開放状態では、第2の乾燥領域D2が形成されなくなり、乾燥領域Dは第1の乾燥領域D1だけとなる。
【0045】
本実施形態では、退避位置にあって開いた状態にあるデカール板72が、搬送方向Xの下流側ほど搬送面との距離が長くなる傾斜姿勢に配置されるようにしている。このため、デカール板72が開いた状態では、乾燥領域Dから流れてくる温かい空気を、乾燥装置17の吸気口52が吸引しうる上方へ案内するようになっている。
【0046】
このようにデカール板72は、乾燥領域Dの搬送方向Xの下流側の後方面を形成するガイド位置(乾燥領域形成位置)と、乾燥領域Dの後方面として機能しない退避位置とに移動可能となっている。つまり、デカール板72は、乾燥領域Dの搬送方向下流端(後方面)を開閉する機能を有する。そして、デカール板72がガイド位置に配置された閉じた状態では、デカール板72が乾燥領域Dの後方面を形成し、デカール板72よりも搬送方向上流側に温風が滞留することで乾燥領域Dが形成される。一方、デカール板72が退避位置に配置された開いた状態では、乾燥領域Dの下流端(後方面)が開放され、デカール板72が乾燥領域Dの後方面を形成しなくなる。なお、本実施形態では、デカール板72が乾燥領域形成部材の一例を構成する。
【0047】
カール矯正機構18は、従動ローラー36が図2に示す矯正位置に移動することで、シートCSをデカールローラー対DRで挟持しつつ、その挟持位置と搬送ローラー27との間のシート部分に、カールと反対向きに所定の曲率で湾曲させた湾曲部を形成するようになっている。
【0048】
制御装置100は、センサー62がシートCSの先端を検知した検知信号(先端検知信号)に基づき、その検知された先端がデカールローラー対DRの隙間に挿入したタイミングで、カール矯正機構18を矯正位置に作動させる。そして、制御装置100は、センサー62がシートCSの後端を検知した検知信号(後端検知信号)に基づき、その検知された後端がデカールローラー対DRを通過し終わった直後のタイミングで、カール矯正機構18を待機位置に復帰させる。
【0049】
次に、カール矯正機構18の詳細な構成について図5を用いて説明する。図5(a)はカール矯正機構が待機位置に配置された状態を示し、図5(b)はカール矯正機構が矯正位置に配置された状態を示す。
【0050】
カール矯正機構18は、幅方向Yに延びる軸部27aに支持された大径の搬送ローラー27と、幅方向Yに延びる軸部26a,36aにそれぞれ支持された小径の搬送ローラー26と従動ローラー36からなるデカールローラー対DRとを備えている。従動ローラー36が待機位置にあるときには、従動ローラー36と搬送ローラー26との離間距離がシートCSの厚さよりも長くなっており、シートCSは従動ローラー36に挟持されることなく、搬送ローラー26によって図5(a)に示す搬送経路で下流側(同図では左側)へ搬送される。
【0051】
また、カール矯正機構18は、デカールローラー対DRの隙間にシートCSを案内するための下側のガイド板71と上側のデカール板72とを備えている。下側のガイド板71は、支持部74から搬送方向下流側に向けて複数の搬送ローラー27間の各隙間に配置されるように複数延設された櫛歯状に形成されている。この櫛歯状のガイド板71は、案内位置(図5(a))ではその上面が搬送経路形成部材41(図4参照)の上面41aと略面一となってシートCSの搬送面を形成し、退避位置(図5(b))ではカール矯正処理の妨げにならないように下方へ退避する構成となっている。
【0052】
一方、上側のデカール板72は、前述のとおり、電動モーター66の動力で独立に回動可能に構成されている。デカール板72は、乾燥領域Dの過加熱を回避すべく乾燥領域Dの温度を下げるために開く機能を優先するが、それ以外のときはガイド位置に配置されてシートCSの先端部をデカールローラー対DRの隙間へ案内する。そして、ガイド板71は搬送ローラー27によって搬送されるシートCSの裏面側をガイドする一方、デカール板72はシートCSの表面側をガイドするようになっている。
【0053】
カール矯正機構18は、従動ローラー36とガイド板71を待機位置と矯正位置とに作動させる動力源となるカムモーター73(図6参照)と、カムモーター73の動力を従動ローラー36とガイド板71に伝達するカム機構80とを備えている。
【0054】
図5(a),(b)に示すように、カム機構80は、カムモーター73(図6参照)の動力により回転するカム軸82と、カム軸82の回転に伴って回転するカム部材83,84と、カム部材83,84の回転にそれぞれ従動するレバー85,86とを備えている。レバー85の側面に固定された支持部74の先端部(上端部)にガイド板71は支持されている。また、レバー85は搬送方向Xの下流側に向けて斜め下方に延びる延出部85aを有し、延出部85aの端面(カムフォロア面)(図5では下面)にカム部材83が係合している。レバー85は、図示しない付勢部材(例えば、ねじりコイルばね)によって図5における反時計方向に付勢され、常時はカム部材83及びレバー85が図5(a)に示す待機時の回動位置に配置される。
【0055】
また、レバー86は回動軸88を中心に回動可能となっている。レバー86は、回動軸88から下方に延びる延出部86aを有し、カム部材84はこの延出部86aの端面(カムフォロア面)に係合している。レバー86において回動軸88から上方に延びる支持部86bの先端部には、従動ローラー36の軸部36aが回転自在に支持されている。レバー86は、図示しない付勢部材(例えば、ねじりコイルばね)の付勢力によって図5における反時計方向に付勢され、常時はカム部材84及びレバー86が図5(a)に示す待機時の回動位置に配置される。なお、カム部材83,84及びレバー85,86は、シートCSの幅より長い軸長を有するカム軸82の軸方向両端部に1組ずつ設けられている。
【0056】
カム軸82がカムモーター73の駆動に伴って図5(a)に示す待機位置から略180度回転すると、カム部材83,84の回転に伴って、レバー85が図5(a)における反時計方向に回動するとともに、レバー86が図5(a)における時計方向に回動することにより、図5(b)に示す矯正時の回動位置に配置される。この結果、ガイド板71は搬送面を形成する案内位置(図5(a))から、搬送面から下方へ退避する退避位置(図5(b))へ変位する。また、従動ローラー36が、回動軸88を中心に時計方向(搬送方向Xの上流側方向)へ円弧状の経路で変位することで、その変位の途中で搬送ローラー26との間にシートCSを挟持しつつその挟持位置と搬送ローラー27との間のシート部分をカールと逆向きに湾曲させてカールを矯正する図5(b)に示す矯正位置に配置される。
【0057】
また、カムモーター73の駆動に伴ってカム軸82が図5(b)に示す待機状態から略180度回転すると、カム部材83,84の回転に伴って、レバー85が図5(b)における時計方向に回動するとともに、レバー86が図5(b)における反時計方向に回動する。この結果、従動ローラー36が、図5(b)に示す矯正位置から図5(a)に示す待機位置に復帰するとともに、ガイド板71が、図5(b)に示す退避位置から図5(a)に示す案内位置に復帰する。
【0058】
次に、プリンター11の電気的構成を図6に基づいて説明する。図6に示すように、プリンター11は、ホスト装置200と通信可能に接続され、ホスト装置200から印刷ジョブデータを受信する。ホスト装置200からプリンター11が受信した印刷ジョブデータは制御装置100に入力される。制御装置100は、コンピューター101と、ヘッド駆動回路102と、モーター駆動回路103〜107と、ヒーター駆動回路108とを備えている。コンピューター101には、ヘッド駆動回路102、モーター駆動回路103〜107及びヒーター駆動回路108が電気的に接続されている。
【0059】
コンピューター101は、ASIC109(Application Specific IC(特定用途向けIC))、CPU110、ROM111、RAM112および不揮発性メモリー113を備えている。ROM111には、各種制御プログラム及び各種設定データなどが記憶されている。不揮発性メモリー113には、ファームウェアプログラムをはじめとする各種プログラム及び印刷制御に必要な各種設定データなどが記憶されている。本実施形態では、不揮発性メモリー113に、図8にフローチャートで示す乾燥制御処理用のプログラムが記憶されている。RAM112には、CPU110によって実行されるプログラムデータや各種設定データ、CPU110による演算結果及び処理結果である各種データ、並びにASIC109で処理された各種データなどが一時記憶される。
【0060】
コンピューター101は、CPU110がROM111や不揮発性メモリー113に記憶されたプログラムを実行することで、各種の制御を行う。例えば、コンピューター101は、ヘッド駆動回路102を介して記録ヘッド47を制御するとともに、モーター駆動回路103〜107を介して給送モーター20、搬送モーター40、電動モーター66、カムモーター73及びファンモーター55をそれぞれ駆動制御する。
【0061】
コンピューター101は、モーター駆動回路103を介して給送モーター20を駆動し、ロール体RS(図1参照)からシートSTを給送するとともに、モーター駆動回路104を介して搬送モーター40を駆動することにより、給送されたシートSTを搬送ローラー21〜27の回転により搬送させる。
【0062】
コンピューター101には、搬送装置14を構成する搬送モーター40の回転量に比例したパルス数でパルス信号を出力するロータリーエンコーダー67が接続されている。そして、コンピューター101は、記録部15よりも搬送方向Xの上流側で不図示のセンサーによりシートSTの先端が検知されると、その検知位置を基準として、ロータリーエンコーダー67から入力するパルス信号のパルス数を計数し、その計数値から、シートST,CSの搬送位置を把握するようになっている。また、コンピューター101は、ロータリーエンコーダー67からのパルス信号に基づき、搬送モーター40の回転速度に比例する搬送速度及び搬送モーター40の回転方向に応じたシートの搬送される向きも検出する。
【0063】
図6に示すように、搬送モーター40の出力軸には動力伝達切換装置68が接続されている。動力伝達切換装置68は、シートSTの搬送工程に応じて、搬送モーター40と搬送ローラー21〜27との間で動力の伝達先を切り換える。また、動力伝達切換装置68と搬送ローラー21〜27との間に介装された減速機構により、シート搬送速度は、カッター16による切断前よりも切断後の方が少し高速となっており、切断後の各シートCSは僅かな間隔をあけて搬送される。なお、ロータリーエンコーダー67は、シートSTの搬送位置などを検出できる限りにおいて、動力伝達切換装置68の動力伝達系の回転や、搬送ローラー21〜27の軸部の回転などを検出する構成としてもよい。
【0064】
また、コンピューター101は、温度センサー61の検出温度が設定温度(目標温度)になるようにヒーター駆動回路108を介してヒーター59に通電する電流を制御することにより、乾燥装置17の吹出口53から吹き出される温風の温度を制御する。また、コンピューター101は、モーター駆動回路107を介してファン56の回転速度が設定速度になるようにファンモーター55を駆動制御し、吹出口53から吹き出される温風の流量を制御する。
【0065】
また、コンピューター101は、図8に示す乾燥制御処理の処理結果に基づき電動モーター66を制御し、デカール板72を退避位置(開位置)とガイド位置(乾燥領域形成位置)(閉位置)との間で移動させることにより開閉させる。
【0066】
さらにコンピューター101は、センサー62からの入力信号がOFF値からON値に変化したことをもってシートCSの先端を検知すると、その先端がデカールローラー対DRの隙間に挿入したタイミングで、カムモーター73をカム軸82の約180度分に相当する回転量だけ駆動する。このカムモーター73の駆動により、カール矯正機構18は待機位置(図5(a))から矯正位置(図5(b))に作動する。また、コンピューター101は、センサー62からの入力信号がON値からOFF値に変化したことをもってシートCSの後端を検知すると、その後端がデカールローラー対DRの隙間を通過し終えたタイミングで、カムモーター73をカム軸82の約180度分に相当する回転量だけ駆動する。このカムモーター73の駆動により、カール矯正機構18は矯正位置(図5(b))から待機位置(図5(a))に復帰する。なお、センサー62がシートCSの先端又は後端を検知したことを契機にロータリーエンコーダー67からのパルス信号のパルス数を計数し、その計数値に基づく搬送距離が、矯正動作開始用の第1設定距離又は復帰動作用の第2設定距離に達したタイミングで、カール矯正機構18を矯正位置又は待機位置に作動させるようになっている。
【0067】
また、CPU110は、不揮発性メモリー113に記憶された図8に示す乾燥制御処理のプログラムを実行する。図6における左側には、CPU110が乾燥制御処理のプログラムを実行することにより構築される機能ブロックを示している。CPU110がこのプログラムを実行することにより、コンピューター101内には、計時部121、枚数判定部122、第1判定部123、第2判定部124及び指令部125が構築される。もちろん、これらの各部121〜125は、CPU110がプログラムを実行することにより構築されるソフトウェアの構成に限らず、例えばコンピューター101が備える集積回路などの電子回路によりハードウェアで構成されてもよいし、さらにその一部がソフトウェアで他の一部がハードウェアの構成としてもよい。
【0068】
ここで、ホスト装置200からプリンター11が受信する印刷ジョブデータには、印刷コマンドと1枚又は複数枚分の印刷画像データとが含まれている。コンピューター101は、印刷コマンドを解釈し、例えば複数枚印刷の場合は印刷画像データに基づき1枚分ずつ順番に印刷する印刷制御を行う。1つの印刷ジョブに含まれる印刷枚数をk枚とする場合、n枚目に印刷されるシートCSを、シートCSn(n=1,2,…k)とおくものとする。例えば印刷ジョブ中の最初(1枚目)のシートが「CS1」、印刷ジョブ中の最終(k枚目)のシートが「CSk」で示される。
【0069】
計時部121は、乾燥領域DにおいてシートCSの乾燥処理が行われていない時間を計時する。本実施形態のプリンター11では、ジョブ単位で印刷の指示を受け付け、同一ジョブ内の印刷画像が印刷されたシートCSはほぼ連続的に搬送されてくる。このため、計時部121は、印刷ジョブのうち最終の画像が印刷された最終(k枚目)のシートCSkの乾燥処理が終わってからの経過時間を計時する。ここで、シートCSの乾燥処理が終わったと判断するシートCSの乾燥終了位置は、例えばシートCSの後端が乾燥領域D1から出た位置としている。
【0070】
計時部121は、最終のシートCSkが乾燥終了位置に達したときの計時開始時期を、例えばセンサー62の検知結果に基づき把握する。センサー62がシートCSkの先端を検知すると、その先端検知時点からのシートCSkの搬送距離をカウンター(図示せず)により計数し、その搬送距離の計数値が、シートCSkの後端が乾燥領域D1を通過し終わったことを示す設定値(設定搬送距離)に達したことをもって、最終のシートCSkが乾燥終了位置に達したと判断する。この設定値は、例えばシートCSkの搬送方向長さ(シート長)から、従動ローラー35の軸心とセンサー62の光軸との搬送方向Xの距離を差し引いた値を用いる。そして、シートCSkが乾燥終了位置に達すると、計時部121は、経過時間の計時を開始する。そして、計時部121は、次の印刷ジョブの1番目の画像が印刷された1枚目のシートCS1が、例えば乾燥領域D1を通過し終わると、計時時間をリセットする。これは、シート1枚分の気化熱を奪われたことをもってデカール板72を開放する必要がないと判断されるからである。
【0071】
枚数判定部122は、同一印刷ジョブにおいてこれから乾燥処理が施されるシートが何枚目であるかを計数する計数部を備え、この計数部の計数値を用いて、これから乾燥処理が施されるシートCSが、現在実行中の印刷ジョブにおける何枚目であるかを判定する。計数部は、例えば初期値が「1」で、1枚の乾燥処理が開始される度に計数値をインクリメントし、これから乾燥処理が施されるシートCSが、印刷ジョブ中の何枚目であるかを示す計数値を計数する。
【0072】
第1判定部123は、印刷ジョブの開始以後、その印刷ジョブのうち1枚目の画像が印刷された1枚目のシートCS1が乾燥領域Dに進入するまで(つまり乾燥開始位置に達するまで)の期間内に設定された判定時期に、計時部121の計時時間を用いて判定処理を行う。すなわち、第1判定部123は、先行の印刷ジョブにおける最終のシートCSkが乾燥処理を終えてからの経過時間(以下、「ジョブ間隔時間Tj」という。)が、予め設定された閾時間T1(閾値)以上であるか否かを判定する。ここで、ジョブ間隔時間Tjが閾時間T1以上あいた場合、次の印刷ジョブの1枚目のシートCS1に乾燥処理を施すときには、先行の印刷ジョブにおける最終のシートCSkは乾燥領域Dに既に存在していない。
【0073】
第2判定部124は、ジョブ間隔時間が第2閾値時間を超えるか否かを判定するためのものであり、後述する第2実施形態で使用するものである。その詳細は第2実施形態で説明する。
【0074】
指令部125は、第1判定部123の判定結果に基づきデカール板72の開閉制御を行う。すなわち、第1判定部123が、ジョブ間隔時間Tjが閾時間T1以上であると判定した場合、指令部125はモーター駆動回路105に対してデカール板72を退避位置に配置する(つまり開く)よう指令する。一方、第1判定部123が、ジョブ間隔時間Tjが閾時間T1未満であると判定した場合、指令部125はモーター駆動回路105に対してデカール板72をガイド位置に配置する(つまり閉じる)よう指令する。
【0075】
<作用>
次に、本実施形態のプリンター11の作用を、図7及び図8等を用いて説明する。
プリンター11の電源が投入されると、制御装置100がヒーター59の通電及びファンモーター55の駆動を開始し、乾燥装置17の吹出口53から温風(乾燥風)の送風が開始される。また、デカール板72はガイド位置(乾燥領域形成位置)に配置される。つまり、デカール板72は閉じられる。そして、温度センサー61の検出温度が設定温度に達すると、プリンター11は準備状態(予備加熱準備状態)を終え、印刷を実施可能な待機状態となる。
【0076】
予備加熱準備状態では、従動ローラー34,36間に第1の乾燥領域D1が形成されるとともに、第1の乾燥領域D1の後方面を形成する従動ローラー35から漏れた空気がデカール板72よりも上流側に滞留することにより、第2の乾燥領域D2が形成される。よって、搬送方向Xに比較的広い乾燥領域D(D1+D2)が形成される。図7(a)に示す待機状態では、デカール板72が閉じていることにより、乾燥領域Dの温かい空気が逃げにくく、乾燥領域Dは比較的高い温度に保持される。
【0077】
ホスト装置200から印刷ジョブデータを受信すると、制御装置100内のコンピューター101は、印刷ジョブデータに基づく印刷処理を行う。給送モーター20及び搬送モーター40を駆動することによるシートSTの搬送と、キャリッジモーター(不図示)を駆動することによるキャリッジ46の幅方向Yへの走査とを交互に行う。このキャリッジ46の走査途中で記録ヘッド47が記録データに基づき選択されたノズル47aからインクを噴射することにより、シートSTの表面に印刷ジョブに基づく画像が印刷される。画像の印刷が施されインクが付着したシートSTは、その切断位置がカッター16に達する度に、カッター16により1枚分の画像ごとのシートCSに切断される。
【0078】
そして、インクが未乾燥の状態にあるシートCSは、乾燥装置17の下側に形成された乾燥領域D1へ搬送される。この乾燥領域D1では、シートCSの表面に向かって吹出口53から温風が吹き付けられる。このため、シートCSの表面に付着したインクは、第1の乾燥領域D1に滞留する空気の熱と、シートCSの表面に向かって吹き付けられた温風(気流)の流速とにより、乾燥する。
【0079】
以下、コンピューター101が実行する図8にフローチャートで示される乾燥制御処理について説明する。この乾燥制御処理は、印刷ジョブデータを受信する度に印刷ジョブ単位で行う。
【0080】
プリンター11が電源オン後に1つでも印刷ジョブを実行した以後においては、計時部121が、先行の印刷ジョブにおける最終のシートCSkの乾燥処理を終了してからの経過時間である「ジョブ間隔時間Tj」を計時している。また、印刷ジョブを1つも実行していない場合は、プリンター11が待機状態になってからの経過時間を「ジョブ間隔時間Tj」として計時する。
【0081】
ステップS1では、1枚目であるか否かを判断する。すなわち、枚数判定部122が、現在実行中の印刷ジョブのうちこれから乾燥処理が施されるシートCSが1枚目であるかを判定する。1枚目であればステップS2に進み、1枚目でなければ(つまり2枚目以降であれば)ステップS4に進む。例えば印刷ジョブの1番目の画像が印刷された1枚目のシートCS1にこれから乾燥処理が施される場合は、ステップS2に進むことになる。
【0082】
ステップS2では、ジョブ間隔時間が閾時間以上であるか否かを判定する。すなわち、第1判定部123は、ジョブ間隔時間Tjが閾時間T1以上(Tj≧T1)であるか否かを判定する。ジョブ間隔時間Tjが閾時間T1以上であれば、ステップS3において指令部125がデカール板72を開く。一方、ジョブ間隔時間Tjが閾時間T1未満(Tj<T1)であれば、ステップS4において指令部125がデカール板72を閉じる。指令部125は、Tj≧T1が成立すると、モーター駆動回路105に対して、デカール板72を退避位置に配置しうる回転位置に電動モーター66を駆動させる指令値を出力する。一方、指令部125は、Tj≧T1が不成立(つまりTj<T1)である場合、モーター駆動回路105に対して、デカール板72をガイド位置(乾燥領域形成位置)に配置しうる回転位置に電動モーター66を駆動させる指令を出力する。
【0083】
つまり、本実施形態では、図7(b)に示すように、ジョブ間隔時間Tjが閾時間T1以上であり、かつ印刷ジョブのうち1枚目の印刷であるシートCS1に乾燥処理を施す場合は、デカール板72を退避位置まで開き、乾燥領域Dの後方面を開放する。この結果、図7(b)に示すように、デカール板72が開くことで乾燥領域Dの空気が搬送方向Xの下流側へ排出される。このため、乾燥領域Dの温度が低下し、シートCS1の過乾燥を防止しうる適切温度になる。つまり、先行のシートCSが乾燥領域Dを通って気化熱を奪ってから閾時間T1以上経過しているときは、適切温度になった乾燥領域Dの温度が再び上昇していて、そのままシートCS1を乾燥させると、シートCS1が過乾燥になる。そのため、デカール板72を開けて乾燥領域D中の加熱し過ぎた空気を排出することで、乾燥領域Dを適切温度にし、その適切温度とした乾燥領域Dへ1枚目のシートCSを送る。こうして1枚目のシートCSは、適切な温度の下で乾燥処理が施される。
【0084】
ここで、デカール板72を開いたときは、第2の乾燥領域D2が形成されず、乾燥領域Dが第1の乾燥領域D1だけになる。しかし、従動ローラー35の搬送方向Xの下流側には乾燥領域Dからの温風が流れ、シートCS1の表面近くを流れる温風の流速により、シートCS1上のインクの乾燥が進む。
【0085】
また、図7(b)に示すように、退避位置に配置されたデカール板72は、温風を上方へ案内し、その上方へ案内された温風の一部は吸気口52に取り込まれる。ここで、例えば冷たい空気が吸気口52から取り込まれるとすると、乾燥装置17内の温風の温度が低下し、これを設定温度にまで加熱するためにヒーター59への供給電流を増やす必要があり、これが原因でヒーター59の消費電力が増大する。しかし、本実施形態では、温かい空気が吸気口52へ取り込まれるので、排出した温風の熱を効率よく再利用し、ヒーター59の消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0086】
一方、図7(c)に示すように、2枚目以降の乾燥処理では、1枚目のシートCS1の乾燥処理を終えた段階で、デカール板72がガイド位置(乾燥領域形成位置)まで移動し、閉じられる。この結果、第1の乾燥領域D1から漏れた温風がシートCSの表面側に滞留して第2の乾燥領域D2が形成される。1枚目のシートCS1が乾燥領域D(D1)を通るときには、シートCS上のインクがその溶媒(又は分散媒)(例えば水)の蒸発のための気化熱を奪うので、乾燥領域D(D1)の温度が低下している。このため、デカール板72が閉じても乾燥領域Dは適切温度に保持されている。そして、2枚目のシートCS2は、適切温度に保持された乾燥領域D内へ進入する。
【0087】
3枚目のシートCS3は、2枚目のシートCS2上のインクが溶媒の蒸発のための気化熱を奪って適切温度になった乾燥領域D内へ進入する。さらにk枚目のシートCSkは、(k−1)枚目のシートCSk-1上のインクが溶媒の蒸発のための気化熱を奪って適切温度になった乾燥領域D内へ進入する。こうして図7(c)に示すように、2枚目以降のシートCSの乾燥処理は、デカール板72が閉じて形成された比較的長い乾燥領域D(D1+D2)に、シートCSが通ることにより行われる。
【0088】
また、ジョブ間隔時間Tjが閾時間T1未満の場合は、印刷ジョブの1枚目であっても、デカール板72は閉じたまま保持される。これは、先行の印刷ジョブのうち最終のシートCSkに乾燥処理が施されてその気化熱を奪って適切温度になってから、閾時間T1を経過しておらず、シートCSが過加熱になるほどまでに乾燥領域Dの温度が上昇していないとみなすことができるからである。このため、Tj<T1が成立したときには、デカール板72を開けることなく、1枚目のシートCS1に乾燥領域D(D1+D2)を搬送させることで乾燥処理を施す。
【0089】
したがって、本実施形態のプリンター11では、吹出口53からシートCSの表面に吹き付けた温風をシートCSの表面側に滞留させることで形成した乾燥領域Dにより、シートCS上のインクの乾燥が促進される。このため、インクの乾燥に必要な時間が短く済む分、シートCSの搬送速度をより高速にすることが可能になる。この結果、プリンター11の印刷スループットを向上させることができる。
【0090】
以上詳述したように本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)乾燥領域Dの搬送方向下流側の後方面を形成するガイド位置(乾燥領域形成位置)と乾燥領域Dの後方面として機能しない退避位置に移動可能なデカール板72(乾燥領域形成部材)を設けた。よって、乾燥領域Dに先行のシートCSがない状態で、シートCSを乾燥領域Dに入れて乾燥処理を施す場合でも、デカール板72を退避位置へ移動させて乾燥領域Dの搬送方向下流側を開放して、乾燥領域D中の過度に加熱された空気を下流側へ逃がすことにより乾燥領域Dの温度を適切温度に下げることができる。よって、乾燥領域Dに気化熱を奪う先行のシートCSがない状態で、乾燥領域Dに進入したシートCSの過乾燥を防止することができる。また、一旦、1枚目のシートCSが気化熱を奪って乾燥領域Dが適切温度になった後は、デカール板72をガイド位置(乾燥領域形成位置)に配置することにより、乾燥領域Dの後方面を閉じ、乾燥領域Dの温度が過度に低下することを防止するので、2枚目以降のシートCSに適切温度の乾燥領域Dで乾燥処理を施すことができる。
【0091】
(2)シートCSの乾燥処理を終えてからの経過時間を計時部121により計時し、第1判定部123が、経過時間が閾時間T1以上であるか否かを判定し、経過時間が閾時間T1以上である場合にデカール板72を開き、一方、経過時間が閾時間T1未満である場合はデカール板72を閉じたままとする。このため、経過時間が閾時間T1未満と短くデカール板72を開ける必要がないにも関わらず開けてしまう構成の場合で問題になる乾燥領域Dの過度の温度低下を回避することができる。このため、印刷ジョブの間隔時間が短いか長いかに関わらず、シートCS1に適切温度の乾燥処理を施すことができる。
【0092】
(3)同一の印刷ジョブである場合は、最終のシートCSkについてのみ乾燥処理を終えてからの経過時間、すなわちジョブ間隔時間Tjを計時部121により計時するようにした。このため、乾燥処理を終えてからの経過時間を印刷ジョブに属するシートCS毎に計時する必要がないので、乾燥制御処理を簡素化できる。
【0093】
(4)乾燥領域形成部材として、カール矯正機構18へシートCSを案内するデカール板72(案内部材)を利用しているので、部品点数が少なく済み、プリンター11を比較的簡単に構成することができる。
【0094】
(5)退避位置に配置されたデカール板72は、搬送方向Xの下流側ほど搬送面との距離が長くなる向きに傾斜しているので、乾燥領域Dからの温かい空気を乾燥装置17の吸気口52側へ案内することができる。このため、デカール板72の開放によって排出された温かい空気を吸気口52から再び乾燥装置17内へ取り込んで循環させることができる。よって、ヒーター59の熱を効率よく利用して、設定温度の乾燥風を効率よく生成できる。例えば、乾燥領域Dを開放して排出した温風を再利用することなく本体ケース12外へ排気する構成に比べ、設定温度の温風を生成するのに必要なヒーター59の消費電力を低く抑えることができる。
【0095】
(6)第1の乾燥領域D1を形成する従動ローラー35よりも搬送方向Xの下流側に配置されるデカール板72を開閉可能に設けた。このため、デカール板72を閉じたときに、従動ローラー35を乗り越えたりその隙間から漏れたりした温風を滞留させることにより、第2の乾燥領域D2を形成できる。このため、第1の乾燥領域D1の下流側に第2の乾燥領域D2が追加されることにより、実質的に乾燥領域Dを搬送方向Xに拡張させることができる。この結果、シートCSが一層乾燥し易くなり搬送速度の高速化が可能となり、これにより印刷スループットを向上させることができる。
【0096】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について説明する。第2実施形態では、乾燥制御処理の内容が第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、特に異なる構成について説明する。
【0097】
プリンター11が備える制御装置100は、図10にフローチャートで示す乾燥制御処理のプログラムを例えば不揮発性メモリー113に記憶している。CPU110がこのプログラムを実行することにより、コンピューター101内には、計時部121、枚数判定部122、第1判定部123、第2判定部124及び指令部125が構築される。計時部121、枚数判定部122、第1判定部123及び指令部125は、基本的に第1実施形態と同様の処理機能を有している。
【0098】
第1判定部123が、ジョブ間隔時間Tjが閾時間(以下、「第1閾時間T1」ともいう。)以上(Tj≧T1)であると判定したときに、第2判定部124は、さらにジョブ間隔時間Tjが第2閾時間T2(第2閾値)以上であるか否かを判定する。ここで、第2閾時間T2は、第1閾時間T1よりも長い時間に設定されている。
【0099】
前記第1実施形態では、1つの閾時間T1だけ設定され、ジョブ間隔時間Tjが閾時間T1以上であるか否かによってデカール板72を開閉する構成であった。これに対して本実施形態では、ジョブ間隔時間Tjが第1閾時間T1以上の場合はデカール板72を開くが、その開度を第2閾時間T2未満の場合に半開とし、第2閾時間T2以上の場合に全開とする構成である。
【0100】
よって、指令部125は、第1判定部123及び第2判定部124の判定結果に基づく電動モーター66の回転位置をモーター駆動回路105に指令する。詳しくは、指令部125は、ジョブ間隔時間Tjが第1閾時間T1未満であると判定された場合、モーター駆動回路105に対して、デカール板72を閉位置(ガイド位置)に配置可能な電動モーター66の回転位置を指令する。また、指令部125は、ジョブ間隔時間Tjが第1閾時間T1以上かつ第2閾時間T2未満であると判定された場合、モーター駆動回路105に対して、デカール板72を半開位置に配置可能な電動モーター66の回転位置を指令する。さらに、指令部125は、ジョブ間隔時間Tjが第2閾時間T2以上であると判定された場合、モーター駆動回路105に対して、デカール板72を全開位置(退避位置)に配置可能な電動モーター66の回転位置を指令する。
【0101】
次に本実施形態のプリンター11の作用について、図10に示すフローチャートに従って必要に応じて図9等を参照しつつ説明する。
ステップS11では、1枚目であるか否かを判断する。すなわち、枚数判定部122が、現在実行中の印刷ジョブのうちこれから乾燥処理が施されるシートCSが1枚目であるかを判定する。1枚目であればステップS12に進み、1枚目でなければ(つまり2枚目以降であれば)ステップS16に進む。
【0102】
ステップS12では、ジョブ間隔時間が第1閾時間以上であるか否かを判定する。この判定処理は、第1判定部123が行う。ジョブ間隔時間Tjが第1閾時間T1以上(Tj≧T1)である場合はステップS13に進み、一方、Tj≧T1が不成立、つまりジョブ間隔時間Tjが第1閾時間T1未満(Tj<T1)である場合は、ステップS16に進む。
【0103】
ステップS13では、ジョブ間隔時間が第2閾時間以上であるか否かを判定する。この判定処理は、第2判定部124が行う。ジョブ間隔時間Tjが第2閾時間T2以上(Tj≧T2)である場合はステップS15に進み、一方、Tj≧T2が不成立、つまりジョブ間隔時間Tjが第2閾時間T2未満(Tj<T2)である場合はステップS14に進む。
【0104】
印刷ジョブのうちの1枚目のシートCS1である場合は、指令部125が、ジョブ間隔時間Tjの判定結果に応じた電動モーター66の回転位置をモーター駆動回路105に指令することにより、デカール板72が次のように制御される。ジョブ間隔時間Tjが第1閾時間T1未満である場合は、ステップS16において、デカール板72を閉じる。つまり、デカール板72は閉じた状態のまま保持される。ジョブ間隔時間Tjが第1閾時間T1以上かつ第2閾時間T2未満(T1≦Tj<T2)である場合は、ステップS14において、デカール板72を半開にする。また、ジョブ間隔時間Tjが第2閾時間T2以上(Tj≧T2)である場合は、ステップS15において、デカール板72を全開にする。そして、印刷ジョブのうちの2枚目以降のシートCSn(n=2,…,k)である場合(つまりステップS11で否定判定の場合)は、ステップS16において、デカール板72を閉じる。
【0105】
このため、ジョブ間隔時間Tjが第1閾時間T1未満(Tj<T1)である場合は、例えば図7(c)に示す2枚目以降の場合と同様に、デカール板72が閉じられ、乾燥領域D(D1+D2)内を搬送される過程でシートCS1に乾燥処理が施される。
【0106】
また、ジョブ間隔時間Tjが第1閾時間T1以上かつ第2閾時間T2未満(T1≦Tj<T2)である場合は、例えば図9に示すように、デカール板72が半開とされ、乾燥領域Dに滞留する空気の一部が搬送方向Xの下流側へ排出される。このときのデカール板72の開度は半開なので、デカール板72を開いたことにより乾燥領域Dの温度が下がり過ぎることを回避できる。この結果、シートCS1が適切温度に調整された乾燥領域D内を搬送されることになるので、シートCS1を適切に乾燥させることができる。
【0107】
また、ジョブ間隔時間Tjが第2閾時間T2以上(Tj≧T2)に長い場合は、例えば図7(b)に示すように、デカール板72が全開とされ、乾燥領域Dに滞留する空気の一部が搬送方向Xの下流側へ半開の場合よりも多量に排出される。このため、図7(a)に示す待機状態に比較的長く保持されて乾燥領域Dの温度が比較的高温になっていても、乾燥領域Dの空気の一部がデカール板72の開放により積極的に排出されることにより、乾燥領域D(D1)が適切温度に調整される。この結果、乾燥領域D内を搬送されるシートCS1は過乾燥することなく適切に乾燥する。
【0108】
よって、第2実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(7)ジョブ間隔時間Tjが第1閾時間T1以上かつ第2閾時間T2未満(T1≦Tj<T2)である場合は、図9に示すようにデカール板72を半開にするので、乾燥領域Dから排出される空気の流量を少なく抑えて、乾燥領域Dの温度が下がり過ぎることを防止できる。よって、ジョブ間隔時間Tjがデカール板72を全開にするほど長くない場合でも、乾燥領域Dの温度を適切温度に調整し、シートCS1に適切な乾燥処理を施すことができる。
【0109】
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・デカール板を利用する構成に限定されない。例えば、吹出口53よりも搬送方向Xの下流側の位置に、乾燥領域形成位置と退避位置との間を移動可能な専用の乾燥領域形成部材を設けてもよい。また、乾燥領域形成部材を乾燥領域形成位置と退避位置とに移動させる方式は回動方式に限定されず、乾燥領域形成部材を上下方向又は幅方向にスライドさせるスライド方式も採用できる。また、回動方式の場合も、回動軸はデカール板の下端側に配置する上開き式に限定されず、回動軸をデカール板の上端側に配置する下開き式、幅方向Yの端部側に上下方向に延びる回動軸を配置した横開き式などでもよい。
【0110】
・吹出口53よりも搬送方向下流側の搬送ローラー対R3を廃止し、上流側の搬送ローラー対R2とデカール板72との間で乾燥領域Dが形成される構成としてもよい。また、カール矯正機構を備えないプリンターでは、上流側の搬送ローラー対R2と専用の乾燥領域形成部材(例えば開閉板)との間で乾燥領域Dが形成される構成も採用できる。
【0111】
・乾燥領域形成部材を退避位置へ退避させた後、1枚目のシートCS1の乾燥が進むに連れて、つまり1枚目のシートCS1の乾燥開始時点からの時間経過とともに、乾燥領域形成部材を連続的又は段階的に閉じる構成も採用できる。この構成によれば、2枚目以降のシートCSを乾燥させるときに乾燥領域Dの温度が所望温度より下がり過ぎることを回避できる。
【0112】
・1枚目のシートCS1からm枚目のシートCSmまでの間で乾燥領域形成部材を開く構成としてもよい。つまり、1枚目のシートCS1の乾燥処理を終えてもデカール板72を閉じず、m枚目のシートCSmの乾燥処理を終えたときにデカール板72を閉じる構成である。この場合、乾燥処理対象のシートCSが切り替わるごとに乾燥領域形成部材の開度を徐々に狭くする構成も採用できる。例えば1枚目は大開度、2枚目は中開度、3枚目は小開度としてもよい。
【0113】
・シート乾燥時の気化熱は、シート長やシート上のインク量(印刷面積)に応じて変化する。よって、乾燥領域形成部材を退避位置から乾燥領域形成位置へ移動させるタイミングを、1枚目の乾燥処理を開始してから、シート長と印刷面積のうちの少なくとも一方を用いて、乾燥領域Dの温度を推定し、乾燥領域Dの温度が所定温度(シート乾燥中の安定温度)に達したと推定された時点で、乾燥領域形成部材を閉じる構成も採用できる。
【0114】
・最初のシートの乾燥開始時点から乾燥処理を施したシート累積長を計測し、シート累積長が設定長に達した時点で、乾燥領域形成部材を乾燥領域形成位置へ移動させる(閉じる)構成としてもよい。
【0115】
・シートCSの乾燥処理を終えたと判断する乾燥終了位置は適宜設定できる。例えばシートCSkの後端が、乾燥領域D1の下流端近傍に位置するセンサー62に検知されたときの位置(後端検知位置)を乾燥終了位置とし、シートCSの後端がセンサー62に検知されたことをもって乾燥終了位置に達したと判定してもよい。また、複数枚のシートCSが連続的に搬送されてくると仮定した場合に、後続のシートCSの先端が乾燥領域Dに進入した時点における先行のシートCSの後端が位置する位置を、乾燥終了位置とすることもできる。また、乾燥領域Dの出口(デカール板72の回動中心位置)を乾燥終了位置としてもよい。この場合、シートCSの後端が乾燥領域Dの出口(乾燥終了位置)に達したことをもって乾燥処理を終えたと判定する。さらに、シートCSkの先端が、乾燥領域D又はD1の出口に達したことをもって、シートCSkの乾燥処理を終えたと判定してもよい。
【0116】
・乾燥領域DにおけるシートCSの有無をセンサーにより検知し、乾燥領域Dにシートがない状態からの乾燥処理ではデカール板72を退避位置に配置し(開き)、乾燥領域Dにシートがある状態からの乾燥処理ではデカール板72をガイド位置に配置する(閉じる)構成も採用できる。
【0117】
・第1判定部123の判定内容を経過時間の判定に替え、乾燥処理対象のシートCSnが印刷ジョブのうちの何枚目であるかを判定するようにし、1枚目のシートの乾燥処理を行うときにはデカール板72を開き、2枚目以降のシートの乾燥処理を行うときにはデカール板72を閉じる構成も採用できる。この場合、デカール板72を閉じる時期は2枚目に限定されず、3枚目以上のp枚目でもよい。
【0118】
・記録装置は、シリアルプリンターに限定されず、インクジェット式ラインプリンターでもよい。この場合、記録ヘッドは、フルライン型記録ヘッドとマルチヘッド型記録ヘッドのどちらでもよい。
【0119】
・前記実施形態では、記録装置をインクジェット式記録装置に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体や、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体、ゲルのような流状体を含む)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材(画素材料)などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液体噴射装置でもよい。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために熱硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ゲル(例えば物理ゲル)などの流状体を噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。このように記録媒体は、紙などのシート(連続紙や単票紙)に限定されず、素子や配線等がインクジェットで形成される基板でもよい。また、合成樹脂や金属からなるシートでもよい。なお、本明細書において「液体」には、液体(無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)等を含む)、液状体、流状体などが含まれる。要するに、乾燥手段からの乾燥風により乾燥が必要になる液体であれば足りる。
【符号の説明】
【0120】
11…記録装置の一例であるプリンター、14…搬送手段の一例である搬送装置、15…記録部、16…カッター、17…乾燥手段の一例である乾燥装置、18…カール矯正手段(加工手段)の一例であるカール矯正機構、21〜27…搬送ローラー、34…乾燥領域形成部材の一例を構成するとともに搬送部材の一例である従動ローラー、35…乾燥領域形成部材を構成するとともに搬送部材の一例である従動ローラー、47…記録ヘッド、50…ヒーター、51…カバー、52…吸気口、53…吹出口、54…ファンユニット、55…ファンモーター、56…ファン、62…センサー、66…動力源の一例である電動モーター、72…乾燥領域形成部材及び案内部材の一例であるデカール板、100…制御手段の一例である制御装置、101…コンピューター、121…計時手段の一例である計時部、122…枚数判定部、123…第1判定部、124…第2判定部、125…指令部、R2,R3…搬送ローラーとしての搬送ローラー対、DR…デカールローラー対、ST,CS…記録媒体の一例であるシート、X…搬送方向、Y…幅方向、D…乾燥領域、D1…第1の乾燥領域、D2…第2の乾燥領域、Tj…経過時間の一例であるジョブ間隔時間、T1…閾値の一例である閾時間、T2…第2閾値の一例である第2閾時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の付着により記録が施される記録媒体を搬送方向の上流側から下流側へと搬送する搬送手段と、
搬送される記録媒体に搬送経路の途中で記録を施す記録ヘッドと、
前記搬送手段により搬送される前記記録媒体の搬送経路の途中において前記記録媒体の前記液体が付着した表面と対向する位置に形成された吹出口から前記表面に向けて加熱した空気を吹き出すことにより前記記録媒体に乾燥処理を施す乾燥手段と、
前記乾燥手段の前記吹出口よりも前記搬送方向の下流側に配置され、前記吹出口から吹き出された前記空気を前記記録媒体の表面側において滞留可能とする乾燥領域の搬送方向下流側の後方面を形成する乾燥領域形成位置と前記乾燥領域の前記後方面として機能しない退避位置に移動可能な乾燥領域形成部材と、
を備える記録装置。
【請求項2】
前記乾燥手段の前記吹出口よりも前記搬送方向の上流側と下流側にそれぞれ配設され、前記吹出口から吹き出された前記空気を前記記録媒体の表面側に滞留させて前記乾燥領域のうちの第1の乾燥領域を形成可能な一対の搬送ローラーを備え、
前記乾燥領域形成部材は、前記搬送ローラーよりも前記搬送方向の下流側に配置され、前記搬送ローラーの隙間から搬送方向下流側へ流れた空気を滞留させて前記乾燥領域のうちの第2の乾燥領域を形成する前記乾燥領域形成位置と、前記流れ出た空気を滞留させない退避位置とに移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記乾燥領域に前記記録媒体がない状態からの乾燥処理では、前記乾燥領域形成部材を退避位置に配置し、前記乾燥領域に前記記録媒体がある状態からの乾燥処理では、前記乾燥領域形成部材を乾燥領域形成位置に配置するように前記乾燥領域形成部材に移動のための動力を出力する動力源を制御する制御手段を、更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記乾燥領域に前記記録媒体がない状態から同一の記録ジョブを構成する複数枚の記録媒体の乾燥処理を行う場合、前記制御手段は、1枚目の記録媒体の乾燥処理では、前記乾燥領域形成部材を前記退避位置に配置し、2枚目以降の前記記録媒体の乾燥処理では、前記乾燥領域形成部材を前記乾燥領域形成位置に配置することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記退避位置に移動した前記乾燥領域形成部材は、前記乾燥領域からの空気を前記乾燥手段の吸入口側へ案内可能な姿勢に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記乾燥手段よりも前記搬送方向の下流側には、前記記録媒体のカールを矯正するカール矯正手段が配置され、
前記記録媒体を前記カール矯正手段へ案内する案内部材が前記乾燥領域形成部材を兼ねていることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−43434(P2013−43434A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184950(P2011−184950)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】