説明

設備制御システム

【課題】
一律的なエネルギー消費抑制制御を行うと、ユーザの快適さを大きく損なう。
【解決手段】
設備制御システムに、ユーザが設備の稼働要求を入力する設備稼働要求入力手段と、設備に関連する環境の計測を行う環境計測手段と、環境計測手段の計測値を条件として稼働要求入力を学習する設備稼働要求学習手段と、環境計測手段の計測値を条件として設備稼働要求学習手段の学習から制御実施時点でのユーザの設備稼働要求を推測する設備稼働要求手段と、稼働要求に対する設備制御実施の閾値を指示する設備制御閾値計算手段と、稼働要求推測手段の推測する設備稼働要求と設備制御閾値罫線手段の指示する閾値とから設備制御の実施判断を行い、制御指令を発する設備制御実施判断手段と、設備制御実施判断手段から要求された制御指令を実行に移す設備制御手段とを設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の設備を監視制御するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザ操作を学習して設備を制御するシステムがある。典型的な例として、特許第
2673394号では、空調機のリモコン操作を学習して制御パターンを作成し、ユーザが操作する手間を省いた上で、ユーザが快適に感じる環境にする、という一種の最適化制御がある。
【0003】
【特許文献1】特許第2673394号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのシステムでは、ユーザの要求に最も合致するように設備制御される。しかし建物や企業の管理者にしては、ユーザの感じる快適さを抑えてエネルギー消費を削減しなければならない場合もある。特に、ある期間のエネルギー消費量または金額に目標上限を設定できる制御方式(以下、コスト目標型制御とする)では、強制的に設備運転を停めたり出力を落としたりしてエネルギー削減を行う必要が出る可能性があり、その際に一律的なエネルギー消費抑制制御を行うと、ユーザの快適さを大きく損なう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
図1が本発明の実現手段を示した図である。設備制御要求推測手段110は、環境計測手段120の計測値を条件として、ユーザにより設備制御要求入力手段100から入力された稼働要求入力を学習する。設備稼働要求推測手段130は、環境計測手段120の計測値を条件として、設備制御要求学習手段110による学習結果から、制御実施時点におけるユーザの設備稼働要求を推測する。設備制御実施判断手段140は、設備制御閾値計算手段150が指示する閾値より推定される設備稼働要求が小さい時・場所から優先的に設備停止・出力減少制御の実施を決定して制御指令を発し、設備制御手段160が制御指令を実行に移し、エネルギー消費を削減する。
【0006】
コスト目標型制御では、設備制御閾値計算手段150は閾値をコスト余裕に応じて変化させる。すなわちコスト余裕が大きい時は閾値を下げ、コスト余裕が小さいときは閾値を上げることで、制御実施頻度を変え、エネルギー消費削減幅を適応的に変化させる。
【発明の効果】
【0007】
エネルギー消費削減を目的とする設備制御にて、ユーザの感じる快適さへの影響を抑えることができる。コスト目標型制御システムでは、本発明の非実施と比較して、上限を守れる確率を高め、上限の指定可能範囲を下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
用途が事務所,専有部空調にパッケージエアコンを用い、BA(ビルオートメーション)が導入されているビルにて、室内機の発停・設定温度・風向・風量を制御するコスト目標型制御システムを構成した。
【実施例1】
【0009】
図2は本発明の一実施例のシステム構成図である。建物290内において、設備の監視制御ならびにエネルギー管理を行うBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)の中央監視装置200,フィールドコントローラ210,空調機コントローラ220が、
BA系通信網205により接続されている。中央監視装置200は、設備の稼働状態を記録する設備稼働情報DB201を持ち、一定時間ごとの設備の稼働状態や状態変化,エネルギー消費量はここに記録されている。エネルギー消費量は空調機内部の計測値か、別途計測器をBAに接続して取得する。なお、空調機制御の実施判断や制御指令送出は中央監視200にて行う。
【0010】
居室内の空調は、室内機230a〜230n,室外機240a〜240mで冷暖房を行っている。ここでは1つの室外機が複数の室内機と冷媒を循環している。また室内機1台ごとに壁付リモコン250a〜250nを持ち、ビル利用者が発停・温度設定・風向風量の調節を行える。空調機コントローラ220,室内機230a〜230n,室外機240a〜240m,壁付リモコン250a〜250nは、空調系通信網225により接続され、BAの一部となっている。
【0011】
居室はk個エリアに分かれ、それぞれに在室センサ260a〜260kが付けられており、BAとはセンサ監視コントローラ260を介して接続し、各エリアの在室状態を中央監視装置200から把握できる。在室センサの現在値だけでは在室状況の把握が不正確な場合には、一定時間の検知がないときだけ不在としてもよい。
【0012】
以降では室内機230a〜230nそれぞれに対し、対応するエリアにいる人が空調機に稼働して欲しいと思う要求の強さである「稼働要求強度」の尺度として、「空調稼働要求確率」を用いる。空調稼働要求確率は、与えられた条件下での稼働要求強度の存在確率であり、これによって稼働要求入力の発生する確率が変わる。稼働要求入力は、ビル利用者の稼働要求強度に関連すると思われる操作とし、この入力から空調稼働要求確率を学習することができる。本実施例では、入力項目として壁付リモコンからのON操作とOFF操作を考える。また、ある空調機に対する稼働要求強度は、空調稼働要求確率の平均値を、対応する1つ以上の稼働要求入力手段から、1つ以上の入力項目について抽出し、加重平均した値として表す。
【0013】
図3は、本発明の空調制御の処理手順である。この一連の処理により、エネルギーコストを目標上限内に納めるべく、空調機の停止制御を行う。なお、計算処理は中央監視装置200によって行われる。
【0014】
ステップ310では初期設定として、空調稼働要求確率の初期分布、並びにエネルギー消費上限を与える。ここでは日種類(平日・休日)別,時間帯(朝・昼・夕・夜)ごとに、また外気温度,室温などで所定のレンジごとに空調稼働要求確率のモデルを用意する。エネルギー消費上限の指定項目は、消費量でも金額でもその両方でもよい。
【0015】
ステップ320ではこの空調稼働要求確率のモデルを、過去の空調稼働要求入力に基づき更新する。
【0016】
ステップ330では、空調機の停止閾値を計算する。この閾値は、空調機停止制御の実施判断基準となる。エネルギー消費上限に対する実績と予測の合計が上回る場合には、この閾値を大きくして、より高頻度に空調機停止制御を行うことで、エネルギー消費を上限以内に納めようとする。
【0017】
ステップ335〜ステップ365は各空調機に対して行い、すべての空調機について終えたらステップ370に移る。ステップ340では、制御実施時の日種類,時間帯,外気温度,室温といった条件に基づき、該空調機に対する稼働要求確率をステップ320で更新したモデルから計算し推測する。また各空調機について、対応する壁付リモコンのON操作・OFF操作に関する稼働要求確率平均値を加重平均して稼働要求強度を計算する。重みは予め与えておく。
【0018】
またステップ340では在室状態に基づく稼働要求強度の補正を行う。例えば不在時の稼働要求強度を0にする。補正の代わりに、稼働要求確率モデルを在室状態(在・不在)ごとに持っても良い。他の補正方法としては、稼働要求確率と在室者数の回帰を取っておき、空調機停止制御実施時期の在室者数でその時の稼働要求確率を求める。在室者数の検知手段としては、入退室管理システム,画像処理,レーザレーダなどがある。
【0019】
在室状態を考慮しないと、突発的な在室状況の変化時にユーザ操作の学習が追いつかず、適切な運転を行うまでに時間がかかり、無駄なエネルギー消費や利便性損失の原因となることがある。在室状況を考慮することで、ユーザ入力時と制御実施時の在室状況の違いが稼働要求強度の推測に与える誤差を取り除き、イベントなどの居室使用方法の突発的変化にも素早く対応し、稼働要求をより正確に把握して適切な設備運転を行うことができる。在室状態や設備稼働要求入力は個人ごとに管理することで、設備稼働要求の分解能を上げることができ、ユーザの快適性への影響を最小限にすることができる。
【0020】
ステップ345では、ステップ340で推測した稼働要求強度がステップ330で計算した停止閾値以下の場合にはステップ350に移り、それ以外はステップ335に移って次の空調機に関する計算をする。
【0021】
ステップ350では、乱数が規定値以上の場合にはステップ360、それ以外の場合にはステップ335に移る。この規定値は設備稼働情報DB201に持つが、在室時と不在時とで分けてもよく、例えば在室時は0.5 、不在時は0(必ず制御実施)などとする。乱数で制御実施を決める意味は、実施時機を分散させるためである。
【0022】
ステップ360では、中央監視装置200から該空調機に停止指令を出す。停止ではなく、設定温度を高めにすることでスリープ状態にしてもよい。
【0023】
ステップ370で制御期間外などの理由により制御終了か否かを判断し、終了でなければステップ380にて一定期間(15分など)待機した後、ステップ390に移る。ステップ390では、ステップ320の前回実施時から日付変更していればステップ320に、いなければステップ335に戻る。
【0024】
図4は、ステップ320の詳細な処理手順である。ステップ405〜ステップ425を各空調機について行い、すべての空調機について終えたら処理を終了する。
【0025】
ステップ410では、前回の空調稼働要求確率更新時から現在までに入力された、該空調機に対する空調稼働要求入力を、設備稼働情報DB201から検索する。室内機230a〜230n,壁付リモコン250a〜250nは1対1で対応しているので、対応する壁付リモコンからのON操作・OFF操作を検索する。この対応テーブルは設備稼働情報
DB201内にある。室内機と壁付リモコンとが1対1で対応しない場合も同様にテーブルを用いて検索する。
【0026】
ステップ420では、この空調機に対する空調稼働要求確率を計算する。計算方法としては、現在の空調稼働要求確率を事前分布とし、空調稼働要求入力を観察された事象として、(1)式のベイズ推定により空調稼働要求確率の事後分布求める。この事後分布が新しい空調稼働要求確率となる。稼働要求の大きさの尺度としては、PPD(Predicted
Percentage of Dissatisfied)の極小点から片側などを用いることができる。
【0027】
稼働要求の大きさ;X,入力有無;D,確率P(・)とすると、空調稼働要求確率事後分布P(X|D),空調稼働要求確率事前分布P(X),尤度関数P(D|X)を用いて、
P(X|D)=P(D|X)P(X)/P(D),P(D)=ΣP(D|X)P(X) …(1)
P(D|X)は事前に実験で標準値を確認しておく。
【0028】
図5は、ステップ330の詳細な処理手順である。ステップ510では、制御期間開始日時から現在までのエネルギー消費量・金額を集計する。ここで制御期間を月ごととすると、1日から前日までの消費量を設備稼働情報DB201から検索し、金額換算する。
【0029】
ステップ520では、エネルギー消費余裕、すなわち残りの制御期間に発生してもよいエネルギー消費量・金額を、目標上限からステップ510で集計した実績量・金額を差し引くことで求める。目標上限に対するマージンを数%取ってもよい。
【0030】
ステップ525〜ステップ545は、停止閾値を下限値の0から既定の上限値(最大1)まで変化させながら行う。ステップ530では、残り制御期間におけるエネルギー消費予測を行う。エネルギー消費予測量・金額は、停止閾値が高いほど小さくなると考えられ、予測手法はこの点を反映する必要がある。具体的な手法の例としては、停止閾値を説明変数とする重回帰分析などが考えられる。
【0031】
ステップ540では、ステップ530で計算した予測消費・金額が、ステップ520で計算した消費余裕以下であるかを判定する。消費余裕以下である場合は、処理を終了し停止閾値を確定する。消費余裕超である場合は、ステップ545からステップ525に戻る。停止閾値が上限値まで行っても消費余裕以下とならない場合には、ステップ550で停止閾値を上限値としてから処理を終了する。
【0032】
以上図3〜図5の一連の処理により、月末時点の消費量もしくは金額、またはその両方が目標上限内に収まるように、空調機に対して停止制御が行われる。この停止制御は、在室者の空調稼働要求が高くない時と(空調機の)場所から優先的に行われるので、ビル利用者の快適性への影響が最小限に抑えられることになる。停止制御により稼働していない空調機を、ビル利用者が壁付リモコンでON操作をすると、それは空調稼働要求更新や停止閾値計算を行うための新しい稼働要求入力となる。図3では、稼働要求確率の更新を1日1回としているが、稼働要求入力があった時点でその都度更新し、空調機の停止制御や起動制御に関する実施判断を行ってもよい。
【0033】
エネルギー消費関連の上限指定項目としては、消費量・金額のほかに、空調時間や排出CO2 量などを用いることができる。空調機の停止制御だけでなく、稼働要求が高い時・場所では起動制御を行うことも考えられる。設備の稼働要求入力は壁付リモコンからの
ON操作・OFF操作としたが、壁付リモコンからの温度調節を発停操作と同等に扱う
(冷房時には設定温度下降を、暖房時には設定温度上昇をON操作と見なすなど)などして、観察される稼働要求入力とすることもできる。
【0034】
上記で停止閾値はエネルギー消費余裕に応じて上下したが、一定値として制御することも考えられる。またビル利用者にON操作されそうな場合には停止制御をしないように、一定時間経過後まで稼働要求強度が低いことを条件として制御実施判断をしてもよい。稼働要求強度が低いとは、停止制御実施とは別の閾値(固定値)を用意し、この閾値以下であるとする。一定時間経過後の稼働要求確率の計算では、室温などを予測する必要がある。この予測には、過去の空調停止直後の平均室温変化率などを用いる。
【実施例2】
【0035】
図6は、実施例1と一部内容の異なるシステム構成である。エネルギー消費余裕に応じて空調停止閾値を上下し空調制御する点は実施例1と同じであるが、空調稼働要求入力が異なる。また、中央監視装置200の代わりに、センタサーバ600を用いている。BA系通信網205とはルータ605,ルータ620,ファイアウォール625をはさみインターネット610を介して接続している。
【0036】
一方、居室内では利用者が各人の机上でPC(パーソナルコンピュータ)650a〜
650xを使用している。これらPCはLAN640に接続されており、ルータ605,ルータ630,ファイアウォール635をはさみインターネット610を介してセンタサーバ600と接続している。各PCには、そのPCの稼働情報をセンタサーバ600に周期的に送信するソフトウェア(空調制御用ソフトウェア)660a〜660xがインストールされており、センタサーバ600にて各PCの稼働状態を把握できる。この稼働情報を、在室センサ260a〜260kの情報代わりに用いる。
【0037】
また、空調制御用ソフトウェア660a〜660xは、ユーザが図7の入力画面700から空調環境に関して「暑い」「寒い」といった温冷感をセンタサーバ600に申告する機能も持つ。この申告は別の空調温度制御と共用し、実施例1の壁付リモコンからのON操作に代わる空調稼働要求入力として扱う。実施例1では、稼働要求入力を壁付リモコンごとに管理していたが、ここでは個人ごとに管理する。
【0038】
空調クレームを稼働要求入力として扱う空調稼働要求確率更新方法を示したのが図8であり、これは実施例1での図4にあたる。ステップ805〜ステップ825は、空調制御用ソフトウェアで在室状態を把握しているビル利用者個人ごとに行う。ステップ810では、前回の空調稼働要求確率更新時から現在までに入力された空調クレームを、設備稼働情報DB201から検索する。ステップ820では、各人の在室時の空調稼働要求確率を、壁付リモコンのときと同様に計算する。冷房時には「暑い」側の申告をON操作とみなし、「寒い」側の申告をOFF操作と見なす。暖房時は逆である。また、「すこしあつい」「すこしさむい」を1回分の操作とすると、「あつい」「さむい」は2回分、「とてもあつい」「とてもさむい」は3回分の操作とみなす。
【0039】
ステップ835〜ステップ855は空調機ごとに行う。ステップ840では、該空調機が空調するエリアに所属するビル利用者を検索する。空調制御用ソフトウェア660a〜660xには所在位置をリストから選択して設定する機能があり、位置IDとしてセンタサーバ600に送信され、設備稼働情報DB201に各PC(ビル利用者)の位置IDが登録される。また設備稼働情報DB201には各空調機の空調エリアとして複数の位置
IDが登録されている。空調エリアと位置IDが合致するビル利用者を抽出する。
【0040】
ステップ850では、該空調機への空調稼働要求確率を計算する。これはステップ840で抽出したビル利用者ごとの空調稼働要求確率から求める。ここでは平均値を取る。
【0041】
空調クレームのほかに、壁付リモコンからのON操作を一個人の空調クレームと同等にして扱うことにより、壁付リモコン操作を併せて考慮することができる。壁付リモコン操作は複数のビル利用者の意向を反映していると考えられるので、ステップ850では壁付リモコンの空調稼働要求について重み付けしてもよい。在室状態を反映するために、ステップ840で抽出するビル利用者は空調制御用ソフトウェアで在室状態にある者だけを対象としてもよい。
【実施例3】
【0042】
設備構成は実施例2と同じだが、他の設備制御方式を組合せている。図9がセンタサーバ600内の機能構成図である。稼働要求推測型空調制御判断機能900は実施例2で説明した方式に基づく空調制御の実施判断を行う。ただしエネルギー消費指標の上限指定項目は残り制御期間の空調時間である。コスト目標型設備制御判断機能910は、実施例2とは別の制御方式であり、空調機の発停や設定温度調節をして、ある期間のエネルギー消費量または金額を指定上限以内に抑制するための制御判断を行う。制御指令通信機能920はルータ605を介してインターネット610に接続しており、機能900や機能910からの要求を受け、ビル290内の設備にBA通信網205を通して制御指令を送信し、その結果を受信する。機能900と機能910から同時期に同一制御対象点に対しての制御要求を受け取った場合には、機能900を優先する。設備稼働・在室状態監視機能930はルータ605を介してインターネット610に接続しており、ビル290内の設備の計測・稼働状態値を、BA通信網205を通して周期的に収集し、設備稼働情報DB201に格納する。設備稼働情報DB201の記録値は機能900,機能910に使用される。
【0043】
機能910は空調時間予測ならびにエネルギー消費予測の結果、制御期間終了時点のエネルギー消費が上限以内に収まりそうにない場合、空調時間がどれくらいに収まればエネルギー消費も上限に収まるかを計算し、機能900に対して残り制御期間の空調時間上限を指示する。機能900は、ステップ330で空調時間上限をエネルギー消費量・金額上限に代わる制約条件として空調停止閾値を決定することにより、空調時間を要求の上限以内に抑制するための制御指令を発する。これにより機能910が単独で働くよりもエネルギー消費量・金額上限をより確実に守れるほか、ユーザがより低い上限を指定できる。
【0044】
実施例1から実施例3まで、本発明のエネルギー消費削減手段を空調停止制御としたが、設定温度調整(冷房時は極端に高く、暖房時は極端に低くする)で空調機出力を減少させてもよい。エネルギー消費を削減したい設備を直接制御するのではなく、その設備の名前・設置場所・エネルギー消費量を削減するための必要操作を、設備稼働情報DB201から検索し、BA上の表示装置もしくは空調制御用ソフトウェアでPC画面上に表示してもよい。またエネルギー消費削減以外の目的として、快適性向上のために、空調稼働要求の高いエリアを風向として風量を大きくし、空調稼働要求の少ないエリアは風向としないか風量を小さくして空調を避け、空調環境の質を向上する制御を行うことも考えられる。制御対象はパッケージエアコンに限らず、集中熱源方式のVAV(可変空気量)ダクトなども含めることができる。
【0045】
図10,図11,図12はセンタサーバ600からビル管理者向けに提供する画面の一例である。図10において、エネルギー消費量グラフ1010は、日量と累積量の実績と予測を表している。また、空調時間抑制制御を行わなかった時の想定値と、行った時の実績値・予測値も合わせて表示している。また空調抑制度表示1020はどの程度空調時間を抑制しているかを示す値であり、(制御時の実績値/非制御時の想定値)や空調停止制御閾値などを表示することで、本制御による消費抑制効果がわかる。グラフ1010には空調時間を示してもよい。
【0046】
図11において、空調稼働要求強度グラフ1110は、あるエリアにおける空調稼働要求強度を1日の時系列で示している。また、空調機稼働時間帯表示1120はいつ空調機が稼働していたか、空調停止制御時機表示1130はいつ空調機停止制御が掛かったかを示しており、稼働要求強度と空調機停止制御との関係、その結果としての空調機稼働状態を知ることができる。
【0047】
図12において、空調稼働要求強度表示1210は、エリアごとの空調稼働要求強度を、実際の区画に合わせて色と数値とで表現している。表示日時指定領域1220で見たい日時を指定でき、表示日時リセットボタン1230で現在日時に表示を戻すことができる。このグラフで、エリアごとの稼働要求強度の違いを視覚的に知ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
空調機コントローラに本発明の制御方式を組み込む、BEMSの一制御方式とする、ビル管理センタからの設備遠隔制御監視サービスとして提供する、などの形態が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実現手段構成図。
【図2】実施例1のシステム構成図。
【図3】本発明の処理手順。
【図4】壁付リモコン操作利用時の空調稼働要求確率の更新手順。
【図5】空調停止閾値の計算手順。
【図6】実施例2・3のシステム構成図。
【図7】空調クレーム申告画面。
【図8】空調クレーム利用時の空調稼働要求確率の更新手順。
【図9】実施例3におけるセンタサーバ内の機能構成図。
【図10】ビル管理者向けに提供する画面の例(その1)。
【図11】ビル管理者向けに提供する画面の例(その2)。
【図12】ビル管理者向けに提供する画面の例(その3)。
【符号の説明】
【0050】
100…空調稼働要求入力手段、110…空調稼働要求学習手段、120…在室状況把握手段、130…設備稼働要求計算手段、140…設備制御実施判断手段、150…設備制御閾値計算手段、160…設備制御手段、200…中央監視装置、201…設備稼働情報DB、205…BA系通信網、210…フィールドコントローラ、220…空調機コントローラ、225…空調系通信網、230a〜230n…パッケージエアコン室内機、
240a〜240m…パッケージエアコン室外機、250a〜250n…パッケージエアコン壁付リモコン、260…センサ監視コントローラ、260a〜260k…在室センサ、310〜390…本発明の処理ステップ、405〜425…壁付リモコン操作利用時の空調稼働要求確率更新のステップ、510〜550…空調停止閾値計算のステップ、600…センタサーバ、605,620,630…ルータ、610…インターネット、625,635…ファイアウォール、640…LAN(OA系通信網)、650a〜650x…パーソナルコンピュータ、660a〜660x…空調制御用ソフトウェア、700…空調クレーム申告画面、805〜855…空調クレーム利用時の空調稼働要求確率更新のステップ、900…稼働要求推測型空調制御判断機能、910…コスト目標型設備制御判断機能、920…制御指令通信機能、930…設備稼働・在室状態監視機能、1010…エネルギー消費量グラフ、1020…空調抑制度表示、1110…時系列空調稼働要求強度グラフ、1120…空調機稼働時間帯表示、1130…空調停止制御時機表示、1210…エリア別空調稼働要求強度表示、1220…表示日時指定領域、1230…表示日時リセットボタン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが設備の稼働要求を入力する設備稼働要求入力手段と、設備に関連する環境の計測を行う環境計測手段と、前記環境計測手段の計測値を条件として前記稼働要求入力を学習する設備稼働要求学習手段と、前記環境計測手段の計測値を条件として前記設備稼働要求学習手段の学習から制御実施時点でのユーザの設備稼働要求を推測する設備稼働要求手段と、前記稼働要求に対する設備制御実施の閾値を指示する設備制御閾値計算手段と、前記稼働要求推測手段の推測する設備稼働要求と前記設備制御閾値罫線手段の指示する閾値とから設備制御の実施判断を行い、制御指令を発する設備制御実施判断手段と、前記設備制御実施判断手段から要求された制御指令を実行に移す設備制御手段とを備え、前記設備制御実施判断手段は、前記稼働要求が前記閾値より小さい場合に、所定の確率で前記制御指令を発することを特徴とする設備制御システム。
【請求項2】
請求項1の設備制御システムにおいて、ある期間のエネルギー消費指標に目標上限を設定可能であり、前記設備制御閾値計算手段は、前記閾値を消費指標の目標上限に対する余裕に応じて変化させることを特徴とする設備制御システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−308182(P2006−308182A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130710(P2005−130710)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】