説明

設計ルール生成装置,設計ルール生成プログラム

【課題】過去の設計事例のデータベース(DB)に基づいて,設計業務において妥当な設計ルールを効率的に生成できること。
【解決手段】設計ルールのTHEN部に設定される設計項目(指定設計項目)及びその設計値と,設計ルールのIF部に設定される要求仕様の項目(指定要求項目)とを含む指定情報を入力し(S2),設計事例DBの中から,設計実績値が前記指定情報の設計値と一致する指定値一致データを検索し(S3),そのデータにおける前記指定要求項目の要求実績値をIF部の要求値の候補に設定し(S6),その候補ごとに,設計事例DBの中で前記要求実績値が当該要求値の候補と一致するデータ件数に対し,前記指定値一致データの中で前記要求実績値が当該要求値の候補と一致するデータ件数が占める占有率を算出し(S8),前記指定情報と前記要求値の候補の中で前記占有率が所定以上のものとが設定された設定ルールの情報を生成する(S10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,過去の製品の設計事例ごとに要求仕様のデータと設計実績のデータとが対応付けられた設計事例データベースを検索することにより,要求仕様から設計結果を導く設計ルールを生成する設計ルール生成装置及びそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製品の製造業などの素材産業においては,客先からの製品の要求仕様に基づいて製品の製造に関する各種設計項目の内容(設計値)を決定する設計業務が行われている。
また,企業には,熟練者による多数の過去の設計事例の情報が蓄積されている。そして,新たな受注品についての設計においては,過去の多数の設計事例において採用された実績のある設計値(設計実績値)を採用できることが多い。従って,過去の製品の設計事例ごとに要求仕様の項目に対する要求実績値と設計項目に対する設計実績値とが対応付けられた設計事例データベースを検索するシステムは,有効な設計業務の支援ツールとなる。
また,設計者の熟練度によらず高い設計品質を確保するため,或いは,非熟練設計者の設計能力向上を支援するために,要求仕様から設計結果を導く設計ルールの作成及びその活用が有効である。
例えば,前記設計ルールに従って,入力された要求仕様のデータから設計結果を導出するルールベースシステムを活用することが考えられる。この場合,そのルールベースシステムによる設計結果を設計案として提示するシステムを構築できる。また,前記ルールベースシステムによる設計内容(入力された要求仕様と設計結果との組合せ)と同じ設計が行われた過去の設計事例を前記設計事例データベースから検索して提示するシステム等も構築できる。
また,特許文献1には,予め登録された設計ルールに従って,入力された要求仕様のデータから適用すべき設計仕様を判定し,その設計仕様と同一仕様の設計実績値を,設計事例データベースから検索する装置が示されている。
そして,要求仕様から設計結果を導く設計ルールは,様々な場面に有効活用できる重要なものであることから,設計業務において妥当な設計ルールを効率的に作成(生成)できることが望まれている。
【特許文献1】特開平7−219989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,特許文献1には,妥当な設計ルールを効率的に作成(生成)するために有効な手段については示されていない。
ところで,前記設計ルールは,通常,過去の設計事例において採用実績のある設計内容(要求仕様と設計結果との組合せ)を表すルールである。従って,前記設計事例データベースにおける設計事案ごとのデータを,要求仕様の項目及びその実績値と設計項目及びその実績値との組合せが同じものごとに分類すれば,その分類ごとに前記設計ルールが定まるとも考えられる。
しかしながら,過去の設計事例には,事例ごとの特異な事情により例外的な設計が行われた結果も含まれる。そのため,前記設計事例データベースにおける設計事案ごとのデータを,データ内容が一致するものごとに単に分類するだけでは,基準とすべきでない例外的な設計ルールが誤って生成され得るという問題点があった。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,過去の設計事例のデータベースに基づいて,設計業務において妥当な設計ルールを効率的に生成できる設計ルール生成装置及びそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明に係る設計ルール生成装置は,設計事例データベースを検索することにより設計ルールを生成する装置であり,次の(1)〜(5)に示される各構成要素を備えるものである。
なお,前記設計事例データベースは,過去の製品の設計事例ごとに要求仕様の項目に対する要求実績値と設計項目に対する設計実績値とが対応付けられて記憶手段に記憶されたデータベースである。また,前記設計ルールは,前記要求仕様の項目及びそれに対する要求値を前件部,前記設計項目及びそれに対する設計値を後件部とするルールである。
(1)前記設計ルールの後件部に設定される前記設計項目である指定設計項目及びそれに対する設計値と前記設計ルールの前件部に設定される前記要求仕様の項目である第1の指定要求項目とを含む指定情報を入力する指定情報入力手段。
(2)前記設計事例データベースの中から,前記指定設計項目について前記設計実績値が前記指定情報における設計値と一致するデータである指定値一致データを検索する指定値一致データ検索手段。
(3)前記指定値一致データにおける前記第1の指定要求項目についての前記要求実績値が共通するものごとに,その要求実績値を前記設計ルールの前件部に設定される前記要求値の候補に設定する要求値候補設定手段。
(4)前記要求値の候補ごとに,前記設計事例データベースのデータの中で前記第1の指定要求項目についての前記要求実績値が当該要求値の候補と一致するデータの件数に対し,前記指定値一致データの中で前記第1の指定要求項目についての前記要求実績値が当該要求値の候補と一致するデータの件数が占める占有率を算出する占有率算出手段。
(5)前記指定情報と前記要求値の候補の中で前記占有率が予め定められた占有条件を満たすものとが設定された前記設定ルールの情報を生成して出力する設計ルール生成・出力手段。
なお,前記指定情報入力手段としては,例えば,キーボードやマウス等の操作入力手段を通じて,或いは,外部装置と情報通信を行う通信手段を通じて情報入力を行うものが考えられる。
【0005】
本発明において,前記占有率算出手段は,前記設計事例データベースにおける要求仕様の内容(要求仕様の項目に対する要求実績値)が共通するデータの中で,設計結果(設計項目に対する設計実績値)も指定された値で共通(一致)するデータが占める占有率を算出する。この占有率は,その占有率に対応する実績データが表す設計内容が,高い頻度で採用されてきた一般的な(妥当な)設計内容であるか,比較的低い頻度でしか採用されなかった例外的な設計内容であるかの指標となる。そこで,本発明に係る設計ルール生成装置は,前記占有率に基づいて,前記設計事例データベースにおける設計事案ごとのデータが,前記設計ルールに採用すべきデータとして妥当であるか否かを判別するものである。
これにより,設計業務において妥当と考えられる設計ルールが,前記指定情報が入力されるだけで,繁雑なデータ整理作業を要さずに半自動的に前記設計事例データベースから抽出される。
【0006】
また,本発明に係る設計ルール生成装置が,さらに,次の(6)及び(7)に示される構成を有することが考えられる。
(6)前記指定情報入力手段が,前記第1の指定要求項目以外に前記設計ルールの前件部に設定される前記要求仕様の項目である第2の指定要求項目及びそれに対する要求値をさらに含む前記指定情報を入力する。
(7)前記指定値一致データ検索手段及び前記占有率算出手段が,前記設計事例データベースの中で,前記第2の指定要求項目についての前記要求実績値が前記指定情報における前記要求値と一致するデータを対象に前記指定値一致データの検索及び前記占有率の算出を実行する。
これにより,前記指定情報を設定する設計者等は,設計上の制約条件として,前記第2の指定要求項目及びそれに対する要求値を直接的に指定することができ,自らの意思を設計ルールの一部に反映させることができる。
【0007】
また,前記設計事例データベースにおける設計事例ごとのデータに設計実施時期のデータが含まれる場合に,本発明に係る設計ルール生成装置が,さらに,次の(8)及び(9)に示される構成を有することが考えられる。
(8)前記要求値の候補ごとに,前記指定値一致データに含まれる前記設計実施時期が予め設定された時期条件を満たすか否かを判別する設計時期判別手段を備える。
(9)前記設計ルール生成・出力手段が,前記指定情報と,前記要求値の候補の中で前記占有率が前記占有条件を満たすとともに前記設計時期判別手段により前記時期条件を満たすと判別されたものと,が設定された前記設定ルールの情報を生成して出力する。
これにより,例えば,一定以上古い時期にしか実施されていない設計事例のデータを設計ルールへの適用対象から除外して経時的に設計ルールの見直しを行うことが容易となる。また,比較的長期に渡って実施された信頼性の高い設計事例のデータのみを設計ルールへの適用対象として設計ルールの質を高めるといったことも可能となる。
また,本発明は,以上に示した本発明に係る設計ルール生成装置が備える各構成要素が実行する処理をコンピュータに実行させる設計ルール生成プログラムとして捉えることもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,過去の設計事例のデータベースに基づいて,設計業務において妥当な設計ルールを効率的に生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施形態に係る設計ルール生成装置Xを含む設計ルール登録システムAの概略構成図,図2は設計ルール生成装置Xの概略構成を表すブロック図,図3は設計ルール生成装置Xによる設計ルール生成処理の手順を表すフローチャート,図4は設計ルール生成装置Xがアクセスする設計事例データベースのデータ構成図,図5は設計ルール生成装置Xが端末から取得する指定情報の入力画面の一例を表す図,図6は設計ルール生成処理の過程で得られる情報を例示した図,図7は設計ルール生成装置Xによる設計ルールの生成過程及びその結果を表示する端末の画面の一例を表す図である。
【0010】
まず,図1,図2及び図4を参照しつつ,本発明の実施形態に係る設計ルール生成装置X及びそれを含む設計ルール登録システムAの概略構成について説明する。
図1に示されるように,前記設計ルール登録システムAは,前記設計ルール生成装置Xと端末2とを有し,それらがイントラネットやインターネット等のネットワーク1を通じて相互に通信可能に構成されている。
また,前記設計ルール生成装置Xがアクセス可能な記憶部14には,過去の製品の設計事例ごとに要求仕様の項目に対する要求実績値と設計項目に対する設計実績値とが対応付けられた設計事例データベースd1が予め記憶されている。
前記設計ルール生成装置Xは,前記端末2において入力された指定情報を受信し,その指定情報に基づいて前記設計事例データベースd1を検索することにより,要求仕様から設計結果を導く設計ルールを生成する処理を実行する計算機である。ここで,前記設計ルールは,前記要求仕様の項目及びそれに対する要求値をIF部(前件部),前記設計項目及びそれに対する設計値をTHEN部(後件部)とするルールである。また,生成された前記設計ルールの情報d8は,前記記憶部14に記録(出力)される。
【0011】
図4は,前記設計ルール生成装置Xの検索対象となる前記設計事例データベースd1のデータ構成図である。
図4に示されるように,前記設計事例データベースd1は,過去の製品の設計事例ごとに,複数の要求仕様の項目d111(要求仕様のフィールド項目)についての実績値(以下,要求実績値d112という)が設定された要求仕様実績データd11と,複数の設計項目d121(設計のフィールド項目)についての実績値(以下,設計実績値d122という)が設定された設計実績データd12とが対応付けられたレコードデータが後述する記憶部14に記憶されデータベースである。
また,前記設計事例データベースd1における各レコードデータには,過去の製品の設計事例を識別する情報である"事例No."のデータd101や,設計の実施時期を表す設計日データd102等の付属データd10も含まれている。
【0012】
一方,前記端末2は,前記ネットワーク1を介して前記設計ルール生成装置Xに対して所定の指定情報を送信するとともに,それに応じて返信される処理結果の情報を受信してディスプレイに表示するパーソナルコンピュータ等の計算機である。
前記設計ルール生成装置Xは,前記設計事例データベースd1の検索及び設計ルールの生成に用いる前記指定情報を,前記端末2から前記ネットワーク1を通じて取得(入力)する。
【0013】
図2に示されるように,前記設計ルール生成装置Xは,演算部11,操作表示部12,通信制御部13及び記憶部14等を備えている。
前記演算部11は,CPU,ROM,RAM等からなる演算手段であり,後述する各種プログラムを並列的に実行するものである。
前記操作表示部12は,不図示の液晶ディスプレイ等の表示デバイスと,キーボードやマウス等の入力デバイスを備え,当該設計ルール生成装置Xにおける各種情報の入力処理及び表示処理を行うマンマシンインターフェースである。
前記通信制御部13は,前記ネットワーク1を介して,前記端末2との間で所定の通信プロトコル(TCP/IP等)に準拠した通信制御を行う通信インターフェースである。
前記記憶部14は,ハードディスク等の記憶装置であり,前記演算部11により実行される各種プログラム及びそのプログラムの実行の際に参照或いは記録される各種データが記憶されている。
本実施形態では,前記演算部11により実行されるプログラムとして,設計ルール生成プログラムp1及びウェブサーバプログラムp2が予め前記記憶部14に記憶されている。また,前記設計ルール生成プログラムp1の実行の際に参照される前記設計事例データベースd1も予め前記記憶部14に記憶されている。
【0014】
一方,前記端末2は,一般的なパーソナルコンピュータ等の計算機である。具体的には,前記端末2は,図示されていない構成要素として,表示デバイス及び入力デバイスを含むマンマシンインターフェースと,MPU,主メモリ,及びその周辺機器から構成される演算部と,ハードディスクや不揮発性RAM等のデータ記憶部と,前記ネットワーク1を介したデータ通信を行う通信制御部とを備えている。
また,前記端末2には,ウェブブラウザのプログラムがインストールされている。前記表示デバイスにデータ入力画面を表示させつつ前記設計ルール生成装置Xへ送信する前記指定情報を入力する処理や,前記設計ルール生成装置Xから受信した処理結果を表示デバイスに表示する処理は,ウェブブラウザを通じて実行される。
具体的には,前記設計ルール生成装置Xにおける前記演算部11は,前記ウェブサーバプログラムp2を実行することにより,前記指定情報の入力用の画面データや処理結果表示用の画面データを生成して前記端末2に送信する。また,前記演算部11は,前記指定情報の入力用の画面データの送信に応じて返信されてくる前記指定情報を受信する。各画面データは,例えば,HTMLやJavaScript(サン・マイクロシステムズ・インコーポレーテッドの登録商標,以下同じ)等によって記述されたデータである。
【0015】
次に,図3に示すフローチャートを参照しつつ,前記設計ルール生成装置Xによる設計ルール生成処理の手順について説明する。
前記設計ルール生成装置Xにおいて,前記演算部11は,前記設計ルール生成プログラムp1を実行することにより以下の処理を行う。なお,以下に示されるS1,S2,…は,前記演算部11が前記設計ルール生成プログラムp1を実行して行う処理手順(ステップ)の識別符号を表す。
まず,前記演算部11は,設計ルール生成処理の開始要求が前記端末2から受信されたか否かを監視する(S1)。
そして,前記開始要求が受信されると,前記演算部11は,前記開始要求の送信元である前記端末2に対し,前記指定情報の入力用の画面データを送信するとともに,その端末2で入力された前記指定情報を受信する(S2)。以下,前記設計ルール生成装置Xの通信相手(データ送信先)となる前記端末2は,前記開始要求の送信元である。
【0016】
図5は,ステップS2において前記設計ルール生成装置Xが前記端末2から取得する前記指定情報の入力画面の一例である。この入力画面は,ステップS2において前記設計ルール生成装置Xから前記端末2に送信される画面データに基づいて,前記端末2のウェブブラウザによってその表示デバイスに表示される画面である。
前記指定情報の入力画面は,設計者による前記端末2の操作に応じて次の3種類のデータを含む前記指定情報が入力される画面である。
その入力データの1つは,前記設計ルールのTHEN部(後件部)に設定される1つ又は複数の前記設計項目d121である指定設計項目d21及びそれに対する設計値d22である。
入力データの2つ目は,前記設計ルールのIF部(前件部)に設定される1つ又は複数の前記要求仕様の項目d111である指定要求項目d31(第1の指定要求項目に相当)である。
入力データの3つ目は,前記指定要求項目d31以外に前記設計ルールのIF部に設定される1つ又は複数の前記要求仕様の項目d111である制約条件項目d41(第2の指定要求項目に相当)及びそれに対する要求値(以下,制約条件指定値d42という)である。
但し,前記制約条件項目d41及び前記制約条件指定値d42の入力は任意であり,入力されない(指定されない)場合もある。
【0017】
また,図5に示される前記指定情報の入力画面には,5種類のデータ入力枠g1〜g5が設けられている。
第1のデータ入力枠g1及び第2のデータ入力枠g2は,それぞれ前記指定設計項目d21及びその設計値d22が入力される部分である。
また,第3のデータ入力枠g3は,前記指定要求項目d31又は前記制約条件項目d41のいずれかが入力される部分である。
また,第4のデータ入力枠g4は,いわゆるチェックボックスとなっており,この入力枠へのチェックがない場合には,これに対応する前記第3の入力枠g3への入力データが前記指定要求項目d31のデータとして取り扱われる。また,前記第4のデータ入力枠g4(チェックボックス)へのチェックがある場合には,これに対応する前記第3の入力枠g3への入力データが前記制約条件項目d41のデータとして取り扱われる。
また,第5のデータ入力枠は,前記制約条件指定値d42が入力される部分である。
そして,前記指定情報の入力画面における確定ボタンの操作がなされると,必須の入力データd21,d22,d31と,データ入力があった場合には任意の入力データd41,d42とが含まれる前記指定情報が,前記端末2から前記設計ルール生成装置Xへ送信される。
【0018】
ステップS2において,前記端末2から前記指定情報が受信されると,前記設計ルール生成装置Xにおける前記演算部11は,前記指定情報における前記指定設計項目d21及びその設計値d22を検索キーとして,前記設計事例データベースd1を検索する(S3)。その結果,前記演算部11により,前記設計事例データベースd1の中から,前記指定設計項目d21についての前記設計実績値d122が前記指定情報における設計値d22と一致するデータ(以下,指定値一致データという)を検索する指定値一致データ検索処理が実行される。
また,前記指定情報に,前記制約条件項目d41及び前記制約条件指定値d42が含まれる場合には,それらも前記指定値一致データ検索処理における検索キーに含められる。そのときの前記指定値一致データ検索処理では,前記設計事例データベースd1の中で,前記制約条件項目d41(第2の指定要求項目に相当)についての前記要求実績値d112が前記制約条件指定値d42(前記指定情報における要求値)と一致するデータを対象としてデータ検索が行われる。
【0019】
次に,前記演算部11は,ステップS3の処理で得られる前記指定値一致データの件数が,予め設定された件数(第1設定件数)以上であるか否かを判別する(S4)。
そして,前記指定値一致データの件数が前記第1設定件数未満である場合,前記演算部11は,実績データの不足のため設計ルールの生成ができない旨のエラー通知を,前記端末2に対して送信し(S5),処理をステップS1へ戻す。
【0020】
一方,前記指定値一致データの件数が前記第1設定件数以上である場合,前記演算部11は,以下に示すルールIF部の候補の設定処理及び候補内データ件数のカウント処理を実行する(S6)。
前記ルールIF部の候補の設定処理は,前記指定値一致データにおける前記指定要求項目d31についての前記要求実績値d112が共通するものごとに,その要求実績値d112を,前記設計ルールのIF部に設定される前記要求値(前記指定要求項目d31に対する値)の候補に設定する処理(要求値候補設定処理に相当)である。以下,前記設計ルールのIF部に設定される前記要求値の候補のことを,IF部要求値候補d32’と称する。
図6は,設計ルール生成処理の過程で得られる情報を例示した図である。
図6には,前記ルールIF部の候補の設定処理により,5つの前記IF部要求値候補d32’が得られた状況が表されている。
例えば,複数の前記指定要求項目d31が指定されている場合,前記指定値一致データが,前記指定要求項目d31の内容が共通する(前記要求実績値d112の組合せが一致する)グループごとに分類される。そして,そのグループそれぞれにおける前記要求実績値d112の組合せからなる前記IF部要求値候補d32’及び前記指定要求項目d31が,前記設計ルールのIF部に設定される内容の候補となる。なお,図6に示される例は,前記指定情報に前記制約条件項目d41及び前記制約条件指定値d42が含まれる場合の例であるため,前記設計ルールのIF部に設定される内容の候補に,前記指定情報に前記制約条件項目d41及び前記制約条件指定値d42も含まれている。
【0021】
また,前記候補内データ件数のカウント処理は,前記IF部要求値候補d32’ごとに,前記指定値一致データの中で前記指定要求項目d31についての前記要求実績値d112が当該IF部要求値候補d32’と一致するデータ(以下,IF部候補内データという)の件数d51をカウントする処理である。
図6には,5つの前記IF部要求値候補d32’それぞれの前記候補内データの件数d51が,180件,160件,3件,5件及び9件であった状況が示されている。これらの合計件数が,前記指定値一致データのデータ件数である。
【0022】
次に,前記演算部11は,以下に示す要求値候補一致データ検索処理を実行する(S7)。
前記要求値候補一致データ検索処理は,前記指定情報における前記指定要求項目d31及びそれに対する前記IF部要求値候補d32’(即ち,ルールIF部の候補)それぞれを検索キーとして順次設定し,各検索キーを用いて前記設計事例データベースd1を検索する処理である(S7)。但し,前記指定情報に,前記制約条件項目d41及び前記制約条件指定値d42が含まれる場合には,それらも前記要求値候補一致データ検索処理における検索キーに含められる。その場合,前記制約条件項目d41についての前記要求実績値d112が前記制約条件指定値d42と一致するデータを対象としてデータ検索が行われる。
その結果,前記IF部要求値候補d32’ごとに,前記設計事例データベースd1のデータの中で前記指定要求項目d31(第1の指定要求項目)についての前記要求実績値d112が,当該IF部要求値候補d32’と一致するデータ(以下,要求値候補一致データという)が検索結果として得られる。
【0023】
次に,前記演算部11は,前記IF部要求値候補d32’それぞれについて以下に示す要求仕様一致件数カウント処理,占有率算出処理及び設計時期特定処理を実行する(S8)。
前記要求仕様一致件数カウント処理は,前記IF部要求値候補d32’ごとの前記要求値候補一致データの件数d52をカウントする処理である。これにより,前記IF部要求値候補d32’ごとに,前記設計事例データベースd1のデータの中で前記指定要求項目d31(第1の指定要求項目)についての前記要求実績値d112が当該IF部要求値候補d32’と一致するデータの件数がカウントされる。但し,前記指定情報に,前記制約条件項目d41及び前記制約条件指定値d42が含まれる場合には,前記制約条件項目d41についての前記要求実績値d112が前記制約条件指定値d42と一致するデータが件数カウントの対象となる。
図6には,5つの前記IF部要求値候補d32’それぞれの前記要求値候補一致データの件数d52が,200件,200件,50件,5件及び45件であった状況が示されている。
【0024】
また,前記占有率算出処理は,前記要求値候補一致データの件数d52に対して前記候補内データの件数d51が占める率を示す占有率d6を算出する処理である。なお,図6に示される前記占有率d6は,百分率(%)で算出された値であるが,それには限られない。
また,前記設計時期特定処理は,前記IF部要求値候補d32’ごとの前記候補内データについて,前記設計日データd102に基づいて最も古い設計実施時期d71と最も新しい設計実施時期d72とを特定する処理である。なお,図6に示される例では,前記最も古い設計実施時期d71及び前記最も新しい設計実施時期d72が,現時点を基準にして遡る期間(何ヶ月前か)として特定されているが,それには限られない。
【0025】
次に,前記演算部11は,前記IF部要求値候補d32’それぞれについて,前記設計ルールのIF部として採用するか否かを判定する処理を実行する(S9)。
具体的には,前記演算部11は,以下に示す4つの採用条件を全て満たす前記IF部要求値候補d32’のみを前記設計ルールのIF部として採用する。
即ち,第1の採用条件は,前記要求値候補一致データの件数d52が予め設定された件数(第2設定件数,例えば,100件)以上であるという条件である。前記要求値候補一致データの件数d52は,前記占有率d6の母数となるデータ件数であるため,その件数が少なすぎると,前記占有率d6の信頼性が十分に確保されないからである。
また,第2の採用条件は,前記占有率d6が予め設定された値(例えば,80%)以上であるという条件である。前記占有率d6が高いということは,その占有率d6に対応する前記IF部要求値候補d32’と前記指定設計項目d21及びその設計値d22との組合せが,高い頻度で採用されてきた一般的な(妥当な)設計内容であると考えられるからである。なお,前記第2の採用条件は,予め定められた占有条件の一例である。
また,第3の採用条件は,前記最も古い設計実施時期d71が,予め設定された時期(例えば,12ヶ月前)以前であるという条件である。
さらに,第4の採用条件は,前記最も新しい設計実施時期d72が,予め設定された時期(例えば,3ヶ月前)以降であるという条件である。
ここで,前記第4の採用条件は,一定以上古い時期にしか実施されていない設計事例のデータを前記設計ルールへの適用対象から除外し,経時的な設計ルールの見直しが実現されるようにするために設定された条件である。
また,前記第3の採用条件及び前記第4の採用条件の組合せは,比較的長期間に渡って実施された信頼性の高い設計事例のデータのみを前記設計ルールへの適用対象とし,前記設計ルールの質を高めるために設定された条件である。
なお,前記第3の採用条件及び前記第4の採用条件が省略されることも考えられる。
【0026】
例えば,図6に示される例において,前記第1の採用条件における設定件数が100件である場合,5つの前記IF部要求値候補d32’の中で候補No.001及び候補No.002の2つが前記第1の採用条件を満たす。
また,図6に示される例において,前記第2の採用条件における前記第占有率d6の設定値が80%である場合,5つの前記IF部要求値候補d32’の中で候補No.001,候補No.002及び候補No.004の3つが前記第2の採用条件を満たす。
また,図6に示される例において,前記第3の採用条件における前記最も古い設計実施時期d71の設定時期が12ヶ月,前記第4の採用条件における前記最も新しい設計実施時期d72の設定時期が3ヶ月である場合,5つの前記IF部要求値候補d32’の中で候補No.001のみが,前記第3の採用条件及び前記第4の採用条件の両方を満たす。
従って,図6に示される例においては,5つの前記IF部要求値候補d32’の中で候補No.001のみが全ての前記採用条件を満たす。
【0027】
そして,前記演算部11は,前記指定情報と前記IF部要求値候補d32’の中で前記ステップS9において前記採用条件を満たすと判定されたものとを前記設定ルールのIF部及びTHEN部それぞれに設定された前記設計ルールを生成し,その設計ルールを前記記憶部14に登録(記録)する(S10,設計ルール生成・出力処理)。
即ち,ステップS10で登録される新規登録ルールのIF部には,前記指定情報に含まれる前記指定要求項目d31(第1の指定要求項目に相当)と,その値(要求値)として前記ステップS9において前記採用条件を満たすと判定された前記IF部要求値候補d32’とが設定される。なお,前記指定要求項目d31が複数存在する場合には,それらはAND条件として設定される。
また,前記指定情報に前記制約条件項目d41及びそれに対する要求値(前記制約条件指定値d42)が含まれる場合には,それも前記新規登録ルールのIF部にAND条件として設定される。
また,前記新規登録ルールのTHEN部には,前記指定情報に含まれる前記指定設定項目d21及びその設計値d22が設定される。
【0028】
最後に,前記演算部11は,前記設計ルールの生成過程及びその結果を前記端末2の画面に表示させる画面(以下,設計ルール抽出結果出力画面という)の画面データを編成し,その画面データを前記端末2に送信する(S11)。
図7は,前記設計ルール抽出結果出力画面の一例である。
図7に示される画面の例では,前記指定情報に含まれる各データd21,d22,d31,d41,d42と,ステップS6で設定された前記IF部要求値候補d32’と,その候補ごとにステップS8の処理で設定された前記要求値候補一致データの件数d52,前記占有率d6,前記最も古い設計実施時期d71及び前記最も新しい設計実施時期d72が一覧表示されている。
さらに,図7に示される画面の例では,前記ステップS10で生成及び登録された前記設計ルールの情報d8も表示されている。
なお,前記演算部11は,ステップS11の処理の終了後,前述したステップS1へ処理を戻す。
【0029】
前述したように,前記設計事例データベースd1には,特異な事情により例外的な設計が行われた設計事例の結果のデータが含まれている。
一方,以上に示した設計ルールの生成処理によれば,前記占有率d6や設計時期に関する情報d71,72に基づいて,前記設計事例データベースd1における設計事案ごとのデータが,前記設計ルールに採用すべきデータとして妥当であるか否かが判別される(S9)。
その結果,設計業務において妥当と考えられる前記設計ルールが,前記指定情報が入力されるだけで,繁雑なデータ整理作業を要さずに半自動的に前記設計事例データベースd1から抽出される。
また,登録された前記設計ルールの情報d8は,様々な態様で活用可能である。
例えば,前記設計ルールに従って,入力された要求仕様のデータから設計結果を導出するルールベースシステムを構築し,活用することが考えられる。この場合,そのルールベースシステムによる設計結果を設計案として提示するシステムを構築できる。また,前記ルールベースシステムによる設計内容(入力された要求仕様と設計結果との組合せ)と同じ設計が行われた過去の設計事例を前記設計事例データベースd1から検索して提示するシステム等も構築できる。
【0030】
ところで,前記設計ルール生成装置Xは,前記端末2との通信,前記設計事例データベースd1の検索及びその検索結果に基づく前記設計ルールの生成の各機能を1台の計算機によって実現するものであった。しかしながら,複数の計算機により前記設計ルール生成装置Xの機能を分担して実現された構成も考えられる。
また,前記設計事例データベースd1は,前記設計ルール生成装置Xとは異なる計算機の記憶装置に記憶されてもよい。
また,外部の前記端末2を通じて前記指定情報を入力するのではなく,前記設計ルール生成装置Xが,前記操作表示部12が備えるキーボード等の操作入力手段を通じて前記指定情報を入力する機能を備えた例も考えられる。
また,前記設計ルール生成装置Xが,前記採用条件を含む前記指定情報を入力することも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は,設計事例データベースを検索することにより,要求仕様から設計結果を導く設計ルールを生成する設計ルール生成装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る設計ルール生成装置Xを含む設計ルール登録システムAの概略構成図。
【図2】設計ルール生成装置Xの概略構成を表すブロック図。
【図3】設計ルール生成装置Xによる設計ルール生成処理の手順を表すフローチャート。
【図4】設計ルール生成装置Xがアクセスする設計事例データベースのデータ構成図。
【図5】設計ルール生成装置Xが端末から取得する指定情報の入力画面の一例を表す図。
【図6】設計ルール生成処理の過程で得られる情報を例示した図。
【図7】設計ルール生成装置Xによる設計ルールの生成過程及びその結果を表示する端末の画面の一例を表す図。
【符号の説明】
【0033】
A :設計ルール登録システム
X :設計ルール生成装置
1 :ネットワーク
2 :端末
11:演算部
12:操作表示部
13:通信制御部
14:記憶部
d1:設計事例データベース
d8:設計ルールの情報
S1,S2,…:処理手順(ステップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去の製品の設計事例ごとに要求仕様の項目に対する要求実績値と設計項目に対する設計実績値とが対応付けられて記憶手段に記憶された設計事例データベースを検索することにより,前記要求仕様の項目及びそれに対する要求値を前件部,前記設計項目及びそれに対する設計値を後件部とする設計ルールを生成する設計ルール生成装置であって,
前記設計ルールの後件部に設定される前記設計項目である指定設計項目及びそれに対する設計値と前記設計ルールの前件部に設定される前記要求仕様の項目である第1の指定要求項目とを含む指定情報を入力する指定情報入力手段と,
前記設計事例データベースの中から,前記指定設計項目について前記設計実績値が前記指定情報における設計値と一致するデータである指定値一致データを検索する指定値一致データ検索手段と,
前記指定値一致データにおける前記第1の指定要求項目についての前記要求実績値が共通するものごとに,該要求実績値を前記設計ルールの前件部に設定される前記要求値の候補に設定する要求値候補設定手段と,
前記要求値の候補ごとに,前記設計事例データベースのデータの中で前記第1の指定要求項目についての前記要求実績値が当該要求値の候補と一致するデータの件数に対し,前記指定値一致データの中で前記第1の指定要求項目についての前記要求実績値が当該要求値の候補と一致するデータの件数が占める占有率を算出する占有率算出手段と,
前記指定情報と前記要求値の候補の中で前記占有率が予め定められた占有条件を満たすものとが設定された前記設定ルールの情報を生成して出力する設計ルール生成・出力手段と,
を具備してなることを特徴とする設計ルール生成装置。
【請求項2】
前記指定情報入力手段が,前記第1の指定要求項目以外に前記設計ルールの前件部に設定される前記要求仕様の項目である第2の指定要求項目及びそれに対する要求値をさらに含む前記指定情報を入力し,
前記指定値一致データ検索手段及び前記占有率算出手段が,前記設計事例データベースの中で,前記第2の指定要求項目についての前記要求実績値が前記指定情報における前記要求値と一致するデータを対象に前記指定値一致データの検索及び前記占有率の算出を実行してなる請求項1に記載の設計ルール生成装置。
【請求項3】
前記設計事例データベースにおける設計事例ごとのデータに設計実施時期のデータが含まれ,
前記要求値の候補ごとに,前記指定値一致データに含まれる前記設計実施時期が予め設定された時期条件を満たすか否かを判別する設計時期判別手段を具備し,
前記設計ルール生成・出力手段が,前記指定情報と,前記要求値の候補の中で前記占有率が前記占有条件を満たすとともに前記設計時期判別手段により前記時期条件を満たすと判別されたものと,が設定された前記設定ルールの情報を生成して出力してなる請求項1又は2のいずれかに記載の設計ルール生成装置。
【請求項4】
過去の製品の設計事例ごとに要求仕様の項目に対する要求実績値と設計項目に対する設計実績値とが対応付けられて記憶手段に記憶された設計事例データベースを検索することにより,前記要求仕様の項目及びそれに対する要求値を前件部,前記設計項目及びそれに対する設計値を後件部とする設計ルールを生成する処理をコンピュータに実行させるための設計ルール生成プログラムであって,
コンピュータに,
前記設計ルールの後件部に設定される前記設計項目である指定設計項目及びそれに対する設計値と前記設計ルールの前件部に設定される前記要求仕様の項目である第1の指定要求項目とを含む指定情報を入力する指定情報入力処理と,
前記設計事例データベースの中から,前記指定設計項目について前記設計実績値が前記指定情報における設計値と一致するデータである指定値一致データを検索する指定値一致データ検索処理と,
前記指定値一致データにおける前記第1の指定要求項目についての前記要求実績値が共通するものごとに,該要求実績値を前記設計ルールの前件部に設定される前記要求値の候補に設定する要求値候補設定処理と,
前記要求値の候補ごとに,前記設計事例データベースのデータの中で前記第1の指定要求項目についての前記要求実績値が当該要求値の候補と一致するデータの件数に対し,前記指定値一致データの中で前記第1の指定要求項目についての前記要求実績値が当該要求値の候補と一致するデータの件数が占める占有率を算出する占有率算出処理と,
前記指定情報と前記要求値の候補の中で前記占有率が予め定められた占有条件を満たすものとが設定された前記設定ルールの情報を生成して出力する設計ルール生成・出力処理と,
を実行させるための設計ルール生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−128699(P2010−128699A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301319(P2008−301319)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】