説明

設計ルール生成装置,設計ルール生成プログラム

【課題】過去の設計事例のデータベース(DB)に基づいて,設計業務において妥当な設計ルールを効率的に生成できること。
【解決手段】指定設計項目及びその設計値と,指定要求項目及びその要求値とを含む指定情報を入力し,追加要求仕様情報(追加要求項目及び追加要求値)を設定し(S11),設計事例DBにおける指定要求値及び追加要求値を有するデータの中で,指定設計値を有するデータが占める割合が大きく,かつ,設計事例DBにおける指定要求値を有するが指定設計値を有しないデータの中で,追加要求値を有するデータが占める割合が小さい場合に,指定情報と追加要求仕様情報とが設定された設計ルールを生成して登録する(S20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,過去の製品の設計事例ごとに要求仕様のデータと設計実績のデータとが対応付けられた設計事例データベースを検索することにより,要求仕様から設計結果を導く設計ルールを生成する設計ルール生成装置及びそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製品の製造業などの素材産業においては,客先からの製品の要求仕様に基づいて製品の製造に関する各種設計項目の内容(設計値)を決定する設計業務が行われている。
また,企業には,熟練者による多数の過去の設計事例の情報が蓄積されている。そして,新たな受注品についての設計においては,過去の多数の設計事例において採用された実績のある設計値(設計実績値)を採用できることが多い。従って,過去の製品の設計事例ごとに要求仕様の項目に対する要求実績値と設計項目に対する設計実績値とが対応付けられた設計事例データベースを検索するシステムは,有効な設計業務の支援ツールとなる。
また,設計者の熟練度によらず高い設計品質を確保するため,或いは,非熟練設計者の設計能力向上を支援するために,要求仕様から設計結果を導く設計ルールの作成及びその活用が有効である。
例えば,前記設計ルールに従って,入力された要求仕様のデータから設計結果を導出するルールベースシステムを活用することが考えられる。この場合,そのルールベースシステムによる設計結果を設計案として提示するシステムを構築できる。また,前記ルールベースシステムによる設計内容(入力された要求仕様と設計結果との組合せ)と同じ設計が行われた過去の設計事例を前記設計事例データベースから検索して提示するシステム等も構築できる。
また,特許文献1には,予め登録された設計ルールに従って,入力された要求仕様のデータから適用すべき設計仕様を判定し,その設計仕様と同一仕様の設計実績値を,設計事例データベースから検索する装置が示されている。
そして,要求仕様から設計結果を導く設計ルールは,様々な場面に有効活用できる重要なものであることから,設計業務において妥当な設計ルールを効率的に作成(生成)できることが望まれている。
【特許文献1】特開平7−219989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら,特許文献1には,妥当な設計ルールを効率的に作成(生成)するために有効な手段については示されていない。
ところで,前記設計ルールは,通常,過去の設計事例において採用実績のある設計内容(要求仕様と設計結果との組合せ)を表すルールである。従って,前記設計事例データベースにおける設計事案ごとのデータを,要求仕様の項目及びその実績値と設計項目及びその実績値との組合せが同じものごとに分類すれば,その分類ごとに前記設計ルールが定まるとも考えられる。
しかしながら,過去の設計事例には,事例ごとの特異な事情により例外的な設計が行われた結果も含まれる。そのため,前記設計事例データベースにおける設計事案ごとのデータを,データ内容が一致するものごとに単に分類するだけでは,基準とすべきでない例外的な設計ルールが誤って生成され得るという問題点があった。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,過去の設計事例のデータベースに基づいて,設計業務において妥当な設計ルールを効率的に生成できる設計ルール生成装置及びそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明に係る設計ルール生成装置は,設計事例データベースを検索することにより設計ルールを生成する装置であり,次の(1)〜(7)に示される各構成要素を備えるものである。
なお,前記設計事例データベースは,過去の製品の設計事例ごとに要求仕様の項目に対する要求実績値と設計項目に対する設計実績値とが対応付けられて記憶手段に記憶されたデータベースである。また,前記設計ルールは,前記要求仕様の項目及びそれに対する要求値を前件部,前記設計項目及びそれに対する設計値を後件部とするルールである。
(1)前記設計ルールの前件部に設定される前記要求仕様の項目である指定要求項目及びそれに対する指定要求値と前記設計ルールの後件部に設定される前記設計項目である指定設計項目及びそれに対する指定設計値とを含む指定情報を入力する指定情報入力手段。
(2)前記設計事例データベースにおける前記指定要求項目以外の1つ又は複数の前記要求仕様の項目及びそれに対する前記要求実績値の組合せである追加要求仕様情報を設定する追加要求仕様情報設定手段。
(3)前記設計事例データベースの中から,前記指定要求項目についての前記要求実績値が前記指定情報における要求値と一致し,前記追加要求項目についての前記要求実績値が前記追加要求仕様情報における前記要求実績値と一致するデータである指定・追加要求値一致データを検索する指定・追加要求値一致データ検索手段。
(4)前記指定・追加要求値一致データの中で前記指定設計項目についての前記設計実績値が前記指定情報における前記指定設計値と一致するデータが占める割合である指定・追加内容適合率を算出する指定・追加内容適合率算出手段。
(5)前記設計事例データベースの中から,前記指定要求項目についての前記要求実績値が前記指定情報における要求値と一致し,前記指定設計項目についての前記設計実績値が前記指定情報における前記指定設計値と一致しないデータである指定設計値不一致データを検索する指定設計値不一致データ検索手段。
(6)前記指定設計値不一致データの中で前記追加要求項目についての前記要求実績値が前記追加要求仕様情報における前記要求実績値と一致するデータが占める割合である設計値不適合出現率を算出する設計値不適合出現率算出手段。
(7)前記指定・追加内容適合率が予め設定された値以上であり,かつ,前記設計値不適合出現率が予め定められた値未満であるという条件を含む第1の採用条件が成立する場合に,前件部に前記指定情報における前記指定要求項目及び前記指定要求値と前記追加要求仕様情報とが設定され,後件部に前記指定情報における前記指定設計項目及び前記指定設計値が設定された設計ルールの情報を生成して出力する要求項目追加設計ルール生成・出力手段。
なお,前記指定情報入力手段としては,例えば,キーボードやマウス等の操作入力手段を通じて,又は外部装置と情報通信を行う通信手段を通じて情報入力を行うものが考えられる。また,前記指定情報入力手段が,計算機のプロセッサ及びそのプロセッサが実行するプログラムモジュールにより実現される場合に,そのプロセッサが,他のプログラムモジュールを実行することにより設定した前記指定情報を,プログラムモジュール間のデータ授受を通じて入力すること等も考えられる。
【0005】
一般に,設計者は,要求仕様の内容と設計内容との間の対応関係に関する基本的な知識を有している。そのため,設計事例データベース内のデータに対する統計処理のみによって設計ルールを生成するよりも,設計者の基本的な知識の情報をベースにして設計ルールを生成する方が,実用性の高い設計ルールを生成できる。
本発明においては,設計者により指定された前記指定情報のみが設定された基礎となる設計ルールに対し,その前件部に前記追加要求仕様情報(追加された要求仕様の項目及びその値)を加えて得られる設計ルールが,採用可否の判別対象となる設計ルールの候補である。
そして,本発明に係る設計ルール生成装置は,前記設計ルールの候補について,前記設計事例データベース内のデータに基づいてそれが妥当な設計ルールであか否かを判別し,妥当であると判別したものを設計ルールとして採用する(生成する)。
また,前記指定・追加内容適合率は,前記設計ルールの候補の前件部に適合する過去の設計事例の実績データ(前記指定・追加要求値一致データ)の中で,前記設計ルールの候補の後件部(前記指定設計値)にも適合する実績データが占める割合を表す。従って,前記設計ルールの候補は,前記指定・追加内容適合率が高いものほど,設計ルールとして採用されるのに好適なものであるといえる。
また,前記設計値不適合出現率は,前記指定情報における要求仕様の項目の値(前記指定要求値)に適合するが,前記指定情報における設計項目の値(前記指定設計値)には適合しない過去の設計事例の実績データ(前記指定設計値不一致データ)の中で,前記追加要求仕様情報(追加された要求項目及びその値)に適合する(即ち,前記設計ルールの前件部に適合する)実績データが占める割合を表す。即ち,前記設計値不適合出現率は,前記指定情報のみが設定された基礎となる設計ルールから,その前件部に前記追加要求仕様情報を追加した設計ルール(前記設計ルールの候補)へ変更することにより,設計ルールに適合しない過去の事例がどの程度減少するかを表す指標値である。前記設計値不適合出現率が低いほど,その減少度合いが大きいことを表す。従って,前記設計ルールの候補は,前記設計値不適合出現率が低いものほど,設計ルールとして採用されるのに好適なものであるといえる。
本発明に係る設計ルール生成装置は,前記設計ルールの候補について,前記指定・追加内容適合率が所定の下限値以上であり,かつ,前記設計値不適合出現率が所定の上限値未満であるという条件を含む前記第1の採用条件を満たすか否かにより,設計ルールとしての採用可否を判別する。
これにより,設計業務において妥当と考えられる設計ルールが,前記指定情報が入力されるだけで,繁雑なデータ整理作業を要さずに半自動的に前記設計事例データベースから抽出される。
【0006】
また,本発明に係る設計ルール生成装置が,さらに,次の(8)〜(10)に示される各構成要素を有することが考えられる。
(8)前記設計事例データベースの中から,前記指定要求項目についての前記要求実績値が前記指定情報における要求値と一致するデータである指定要求値一致データを検索する指定要求値一致データ検索手段。
(9)前記指定要求値一致データの中で前記指定設計項目についての前記設計実績値が前記指定情報における前記指定設計値と一致するデータが占める割合である指定内容適合率を算出する指定内容適合率算出手段。
(10)前記指定内容適合率が予め設定された値以上であるという条件を含む第2の採用条件が成立する場合に,前件部に前記指定情報における前記指定要求項目及び前記指定要求値が設定され,後件部に前記指定情報における前記指定設計項目及び前記指定設計値が設定された設計ルールの情報を生成して出力する指定設計ルール生成・出力手段。
そして,この場合,前記追加要求仕様情報設定手段,前記指定・追加要求値一致データ検索手段,前記指定・追加内容適合率算出手段,前記指定設計値不一致データ検索手段,前記設計値不適合出現率算出手段及び前記要求項目追加設計ルール生成・出力手段が,前記第2の採用条件が成立しない場合にのみ,それぞれの処理を実行する。
前記指定内容適合率は,前記指定情報のみが設定された基礎となる設計ルールの前件部に適合する過去の設計事例の実績データ(前記指定要求値一致データ)の中で,前記基礎となる設計ルールの後件部(前記指定設計値)にも適合する実績データが占める割合を表す。従って,前記基礎となる設計ルールは,前記指定内容適合率が十分に高ければ,前記追加要求仕様情報が追加されなくても,設計ルールとして採用されるのに好適なものであるといえる。また,設計ルールは,その前件部の要件(要求仕様の項目)が少ないほど好ましい。
そこで,上記の設計ルール生成装置は,前記指定情報のみが設定された基礎となる設計ルールについて,前記指定内容適合率が十分に高い場合にはそれを設計ルールとして採用し,前記指定内容適合率が十分に高くない場合にのみ,前記追加要求仕様情報をさらに追加した設計ルールの候補について,設計ルールとしての採用可否を判別するものである。
これにより,より好適な設計ルールを生成することができる。
【0007】
また,前記設計事例データベースにおける設計事例ごとのデータに設計実施時期のデータが含まれる場合に,前記第1の採用条件が,次の(11)に示される条件を含むことが考えられる。
(11)前記指定設計値不一致データのうちの前記追加要求項目についての前記要求実績値が前記追加要求仕様情報における前記要求実績値と一致するデータにおいて,前記設計実施時期の実績値が予め設定された時期条件を満たすという条件。
これにより,例えば,一定以上古い時期にしか実施されていない設計事例のデータを設計ルールへの適用対象から除外して経時的に設計ルールの見直しを行うことが容易となる。また,比較的長期に渡って実施された信頼性の高い設計事例のデータのみを設計ルールへの適用対象として設計ルールの質を高めるといったことも可能となる。
また,本発明は,以上に示した本発明に係る設計ルール生成装置が備える各構成要素が実行する処理をコンピュータに実行させる設計ルール生成プログラムとして捉えることもできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,過去の設計事例のデータベースに基づいて,設計業務において妥当な設計ルールを効率的に生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施形態に係る設計ルール生成装置Xを含む設計ルール登録システムAの概略構成図,図2は設計ルール生成装置Xの概略構成を表すブロック図,図3及び図4は設計ルール生成装置Xによる設計ルール生成処理の手順を表すフローチャート,図5は設計ルール生成装置Xがアクセスする設計事例データベースのデータ構成図,図6は設計ルール生成装置Xが端末から取得する指定情報の入力画面の一例を表す図,図7は設計ルール生成処理の過程で得られる情報の第1の例を示した図,図8は設計ルール生成処理の過程で得られる情報の第2の例を示した図,図9は設計ルール生成装置Xにより生成された設計ルールの一例を表す図,図10は設計事例データベースに含まれる各種データの集合の関係を表す概念図である。
【0010】
まず,図1,図2及び図4を参照しつつ,本発明の実施形態に係る設計ルール生成装置X及びそれを含む設計ルール登録システムAの概略構成について説明する。
図1に示されるように,前記設計ルール登録システムAは,前記設計ルール生成装置Xと端末2とを有し,それらがイントラネットやインターネット等のネットワーク1を通じて相互に通信可能に構成されている。
また,前記設計ルール生成装置Xがアクセス可能な記憶部14には,過去の製品の設計事例ごとに要求仕様の項目に対する要求実績値と設計項目に対する設計実績値とが対応付けられた設計事例データベースd1が予め記憶されている。
前記設計ルール生成装置Xは,前記端末2において入力された指定情報を受信し,その指定情報に基づいて前記設計事例データベースd1を検索することにより,要求仕様から設計結果を導く設計ルールを生成する処理を実行する計算機である。ここで,前記設計ルールは,前記要求仕様の項目及びそれに対する要求値をIF部(前件部),前記設計項目及びそれに対する設計値をTHEN部(後件部)とするルールである。また,生成された前記設計ルールの情報d100は,前記記憶部14に記録(出力)される。
【0011】
図5は,前記設計ルール生成装置Xの検索対象となる前記設計事例データベースd1のデータ構成図である。
図5に示されるように,前記設計事例データベースd1は,過去の製品の設計事例ごとに,複数の要求仕様の項目d111(要求仕様のフィールド項目)についての実績値(以下,要求実績値d112という)が設定された要求仕様実績データd11と,複数の設計項目d121(設計のフィールド項目)についての実績値(以下,設計実績値d122という)が設定された設計実績データd12とが対応付けられたレコードデータが後述する記憶部14に記憶されデータベースである。
また,前記設計事例データベースd1における各レコードデータには,過去の製品の設計事例を識別する情報である"事例No."のデータd101や,設計の実施時期を表す設計日データd102等の付属データd10も含まれている。
【0012】
一方,前記端末2は,前記ネットワーク1を介して前記設計ルール生成装置Xに対して所定の指定情報を送信するとともに,それに応じて返信される処理結果の情報を受信してディスプレイに表示するパーソナルコンピュータ等の計算機である。
前記設計ルール生成装置Xは,前記設計事例データベースd1の検索及び設計ルールの生成に用いる前記指定情報を,前記端末2から前記ネットワーク1を通じて取得(入力)する。
【0013】
図2に示されるように,前記設計ルール生成装置Xは,演算部11,操作表示部12,通信制御部13及び記憶部14等を備えている。
前記演算部11は,CPU,ROM,RAM等からなる演算手段であり,後述する各種プログラムを並列的に実行するものである。
前記操作表示部12は,不図示の液晶ディスプレイ等の表示デバイスと,キーボードやマウス等の入力デバイスを備え,当該設計ルール生成装置Xにおける各種情報の入力処理及び表示処理を行うマンマシンインターフェースである。
前記通信制御部13は,前記ネットワーク1を介して,前記端末2との間で所定の通信プロトコル(TCP/IP等)に準拠した通信制御を行う通信インターフェースである。
前記記憶部14は,ハードディスク等の記憶装置であり,前記演算部11により実行される各種プログラム及びそのプログラムの実行の際に参照或いは記録される各種データが記憶されている。
本実施形態では,前記演算部11により実行されるプログラムとして,設計ルール生成プログラムp1及びウェブサーバプログラムp2が予め前記記憶部14に記憶されている。また,前記設計ルール生成プログラムp1の実行の際に参照される前記設計事例データベースd1も予め前記記憶部14に記憶されている。
【0014】
一方,前記端末2は,一般的なパーソナルコンピュータ等の計算機である。具体的には,前記端末2は,図示されていない構成要素として,表示デバイス及び入力デバイスを含むマンマシンインターフェースと,MPU,主メモリ,及びその周辺機器から構成される演算部と,ハードディスクや不揮発性RAM等のデータ記憶部と,前記ネットワーク1を介したデータ通信を行う通信制御部とを備えている。
また,前記端末2には,ウェブブラウザのプログラムがインストールされている。前記表示デバイスにデータ入力画面を表示させつつ前記設計ルール生成装置Xへ送信する前記指定情報を入力する処理や,前記設計ルール生成装置Xから受信した処理結果を表示デバイスに表示する処理は,ウェブブラウザを通じて実行される。
具体的には,前記設計ルール生成装置Xにおける前記演算部11は,前記ウェブサーバプログラムp2を実行することにより,前記指定情報の入力用の画面データや処理結果表示用の画面データを生成して前記端末2に送信する。また,前記演算部11は,前記指定情報の入力用の画面データの送信に応じて返信されてくる前記指定情報を受信する。各画面データは,例えば,HTMLやJavaScript(サン・マイクロシステムズ・インコーポレーテッドの登録商標,以下同じ)等によって記述されたデータである。
【0015】
次に,図3及び図4に示すフローチャートを参照しつつ,前記設計ルール生成装置Xによる設計ルール生成処理の手順について説明する。
前記設計ルール生成装置Xにおいて,前記演算部11は,前記設計ルール生成プログラムp1を実行することにより以下の処理を行う。なお,以下に示されるS1,S2,…は,前記演算部11が前記設計ルール生成プログラムp1を実行して行う処理手順(ステップ)の識別符号を表す。
まず,前記演算部11は,設計ルール生成処理の開始要求が前記端末2から受信されたか否かを監視する(S1)。
そして,前記開始要求が受信されると,前記演算部11は,前記開始要求の送信元である前記端末2に対し,前記指定情報の入力用の画面データを送信するとともに,その端末2で入力された前記指定情報を受信する(S2)。以下,前記設計ルール生成装置Xの通信相手(データ送信先)となる前記端末2は,前記開始要求の送信元である。
【0016】
図6は,ステップS2において前記設計ルール生成装置Xが前記端末2から取得する前記指定情報の入力画面の一例である。この入力画面は,ステップS2において前記設計ルール生成装置Xから前記端末2に送信される画面データに基づいて,前記端末2のウェブブラウザによってその表示デバイスに表示される画面である。
前記指定情報の入力画面は,設計者による前記端末2の操作に応じて次の2種類のデータを含む前記指定情報が入力される画面である。
その入力データの1つは,前記設計ルールのTHEN部(後件部)に設定される1つ又は複数の前記設計項目d121である指定設計項目d21及びそれに対する設計値(以下,指定設計値d22という)である。
入力データの2つ目は,前記設計ルールのIF部(前件部)に設定される1つ又は複数の前記要求仕様の項目d111である指定要求項目d31及びそれに対する要求値(以下,指定要求値d32という)である。
【0017】
また,図6に示される前記指定情報の入力画面には,5種類のデータ入力枠g1〜g5が設けられている。
第1のデータ入力枠g1及び第2のデータ入力枠g2は,それぞれ前記指定設計項目d21及び前記指定設計値d22が入力される部分である。
また,第3のデータ入力枠g3は,前記指定要求項目d31が入力される部分である。
また,第4のデータ入力枠g4は,前記指定要求項目d31に対応する前記指要求値d32が入力される部分である。
そして,前記指定情報の入力画面における確定ボタンの操作がなされると,各入力データd21,d22,d31,d32が含まれる前記指定情報が,前記端末2から前記設計ルール生成装置Xへ送信される。
【0018】
ステップS2において,前記端末2から前記指定情報が受信されると,前記設計ルール生成装置Xにおける前記演算部11は,前記指定要求項目d31の値(実績値)が前記指定要求値d32と一致するという検索キーを設定し,その検索キーを用いて前記設計事例データベースd1を検索する(S3:指定要求値一致データ検索処理)。これにより,前記設計事例データベースd1の中から,前記指定要求項目d31についての前記要求実績値d112が前記指定情報における前記指定要求値d32と一致するデータ(以下,指定要求値一致データという)が,検索結果として得られる。
【0019】
次に,前記演算部11は,ステップS3の処理で得られる前記指定要求値一致データの件数が,予め設定された件数(第1設定件数,例えば100件)以上であるか否かを判別する(S4)。
そして,前記指定要求値一致データの件数が前記第1設定件数未満である場合,前記演算部11は,実績データの不足のため設計ルールの生成ができない旨のエラー通知を,前記端末2に対して送信し(S5),処理をステップS1へ戻す。
【0020】
一方,前記指定要求値一致データの件数が前記第1設定件数以上である場合,前記演算部11は,以下に示す指定内容適合率を算出する(S6:指定内容適合率算出処理)。
前記指定内容適合率は,前記指定要求値一致データの中で,前記指定設計項目d21についての前記設計実績値d122が前記指定情報における前記指定設計値d22と一致するデータ(以下,指定内容適合データという)が占める割合である。
次に,前記演算部11は,ステップS6で算出した前記指定内容適合率に関する条件を含む所定の指定設計ルール採用条件(前記第2の採用条件の一例)が成立するか否かを判別する(S7)。
ここで,前記指定設計ルール採用条件には,次の各条件が含まれ,それらの条件が全て満たされる場合に前記指定設計ルール採用条件が成立すると判別される。
その1つ目の条件は,ステップS6で算出した前記指定内容適合率が,予め設定された下限値(例えば,80%)以上であるという条件である。
また,2つ目の条件は,前記指定内容適合データにおいて,前記設計日d102(設計実施時期の実績値)が予め設定された第1の時期条件を満たすという条件である。ここで,前記第1の時期条件は,前記指定内容適合データにおける最古の前記設計日d102が予め設定された第1期日(例えば,現時点を基準に12ヶ月前の日)以前であり,前記指定内容適合データにおける最新の前記設計日d102が予め設定された第2期日(例えば,現時点を基準に3ヶ月前の日)以降であるという条件である。
【0021】
図7は,前記指定設計ルール採用条件に関する情報を例示した図である。
図7に示される例は,前記指定情報として,「規格」,「寸法」及び「客先」(客先コード)の3つの前記指定要求項目d31が指定され,さらにそれらの値(前記指定要求値d32)が指定されている場合の例である。
また,図7は,前記指定情報に基づき得られた前記指定要求値一致データの件数d41が340件,その指定要求値一致データについての前記指定内容適合率d42が70%,前記指定内容適合データにおける最古の設計日d51及び最新の設計日d52がそれぞれ12ヶ月前及び1ヶ月前の日であることを表している。
ここで,前記第1設定件数が100件である場合,図7に示される例は,前記第1設定件数の要件(S13)を満たしている例である。
ここで,前記指定内容適合率d42の下限値が80%,前記第1期日が12ヶ月前の日,前記第2期日が3ヶ月前の日である場合,図7に示される例は,前記指定設計ルール採用条件のうち,前記指定内容適合率d42の条件のみが不成立であることを表している。
【0022】
そして,前記指定設計ルール採用条件が成立している場合,前記演算部11は,前件部に前記指定情報における前記指定要求項目d31及び前記指定要求値d32が設定され,後件部に前記指定情報における前記指定設計項目d21及び前記指定設計値d22が設定された設計ルール(以下,指定設計ルールという)の情報を生成し,その情報を新たな設計ルールの情報d100として前記記憶部14に登録(記録)する(S8,指定設計ルール生成・出力処理)。
即ち,ステップS8で新規登録される前記指定設計ルールのIF部には,前記指定情報に含まれる前記指定要求項目d31と,その値(要求値)である前記指定要求値d32とが設定される。なお,前記指定要求項目d31が複数存在する場合には,それらはAND条件として設定される。
また,前記指定設計ルールのTHEN部には,前記指定情報に含まれる前記指定設定項目d21及びその値である前記指定設計値d22が設定される。
一方,ステップS7において前記指定設計ルール採用条件が成立していないと判別された場合,前記演算部11は,図4に示されるルール探索・登録処理(S9:S11〜S21)を実行する。
【0023】
以下,図4を参照しつつ,前記ルール探索・登録処理について説明する。
前記ルール探索・登録処理において,まず,前記演算部11は,前記設計事例データベースd1における前記指定要求項目d31以外の1つ又は複数の前記要求仕様の項目d111及びそれに対する前記要求実績値d112の組合せである追加要求仕様情報を設定する(S11:追加要求仕様情報設定処理)。ここで,前記追加要求仕様情報に含まれる前記要求仕様の項目d111のことを追加要求項目d61と称し,その値(前記要求実績値d112)のことを追加要求値d62と称する。
例えば,前記演算部11は,前記指定要求項目d31以外の前記要求仕様の項目d111及びその実績値d112の全組合せの中から,予め設定された優先順位に従っていずれか一組又は複数組の組合せを自動的に選択することにより,前記追加要求項目d61及び前記追加要求値d62の組合せを自動設定する。
【0024】
次に,前記演算部11は,前記指定要求項目d31の値(実績値)が前記指定要求値d32と一致し,かつ,前記追加要求項目d61の値(実績値)が前記追加要求値d62と一致するという検索キーを設定し,その検索キーを用いて前記設計事例データベースd1を検索する(S12:指定・追加要求値一致データ検索処理)。これにより,前記設計事例データベースd1の中から,前記指定要求項目d31についての前記要求実績値d112が前記指定情報における前記指定要求値d32と一致し,かつ,前記追加要求項目d61についての前記要求実績値d112が前記追加要求値d62と一致するデータ(以下,指定・追加要求値一致データという)が,検索結果として得られる。
【0025】
次に,前記演算部11は,ステップS12の処理で得られる前記指定・追加要求値一致データの件数が,予め設定された件数(第2設定件数,例えば100件)以上であるか否かを判別する(S13)。
そして,前記指定・追加要求値一致データの件数が前記第2設定件数未満である場合,前記演算部11は,設定し得る全ての種類の前記追加要求仕様情報についてステップS12以降の処理がなされたか否かを判別する(S21)。ここで,未だ設定されていない前記追加要求仕様情報が存在する場合には,前記演算部11は,処理を前述したステップS11に戻し,新たな前記追加要求仕様情報を設定(S11)した上で,ステップS12以降の処理を繰り返す。
【0026】
一方,前記指定・追加要求値一致データの件数が前記第2設定件数以上である場合,前記演算部11は,以下に示す指定・追加内容適合率を算出する(S14:指定・追加内容適合率算出処理)。
前記指定・追加内容適合率は,前記指定・追加要求値一致データの中で,前記指定設計項目d21についての前記設計実績値d122が前記指定情報における前記指定設計値d22と一致するデータ(以下,指定・要求内容適合データという)が占める割合である。
次に,前記演算部11は,ステップS14で算出した前記指定・追加内容適合率に関する条件を含む所定の項目追加ルール第1採用条件(前記第1の採用条件の一例)が成立するか否かを判別する(S15)。
ここで,前記項目追加ルール第1採用条件には,次の各条件が含まれ,それらの条件が全て満たされる場合に,前記項目追加ルール採用条件が成立すると判別される。
その1つ目の条件は,ステップS14で算出した前記指定・追加内容適合率が,予め設定された下限値(例えば,80%)以上であるという条件である。
また,2つ目の条件は,前記指定・追加内容適合データにおいて,前記設計日d102(設計実施時期の実績値)が予め設定された第2の時期条件を満たすという条件である。ここで,前記第2の時期条件は,前記第1の時期条件と同様に,前記指定・追加内容適合データにおける最古の前記設計日d102が前記第1期日(例えば,現時点を基準に12ヶ月前の日)以前であり,前記指定・追加内容適合データにおける最新の前記設計日d102が予め設定された第2期日(例えば,現時点を基準に3ヶ月前の日)以降であるという条件である。
【0027】
そして,前記項目追加ルール第1採用条件が成立していない場合,前記演算部11は,処理を前述したステップS21へ移行させる。
一方,前記項目追加ルール第1採用条件が成立している場合,前記演算部11は,前記指定要求項目d31の値(実績値)が前記指定要求値d32と一致し,かつ,前記指定設計項目d21の値(実績値)が前記指定設計値d22と一致しないという検索キーを設定し,その検索キーを用いて前記設計事例データベースd1を検索する(S16:指定設計値不一致データ検索処理)。これにより,前記設計事例データベースd1の中から,前記指定要求項目d31についての前記要求実績値d112が前記指定情報における前記指定要求値d32と一致し,かつ,前記指定設計項目d21についての前記設計実績値d122が前記指定設計値d22と一致しないデータ(以下,指定設計値不一致データという)が,検索結果として得られる。
【0028】
次に,前記演算部11は,ステップS16の処理で得られる前記指定設計値不一致データの件数が,予め設定された件数(第3設定件数,例えば30件)以上であるか否かを判別する(S17)。
そして,前記指定設計値不一致データの件数が前記第3設定件数未満である場合,前記演算部11は,以下に示すステップS18,S19の処理をスキップさせて後述するステップS20へ処理を移行させる。
一方,前記指定設計値不一致データの件数が前記第3設定件数以上である場合,前記演算部11は,以下に示す設計値不適合出現率を算出する(S18:設計値不適合出現率算出処理)。
前記設計値不適合出現率は,前記指定設計値不一致データの中で,前記追加要求項目d61についての前記要求実績値d112が前記追加要求値d62(前記追加要求仕様情報における要求実績値)と一致するデータが占める割合である。
【0029】
次に,前記演算部11は,ステップS18で算出した前記設計値不適合出現率に関する条件を含む所定の項目追加ルール第2採用条件(前記第1の採用条件の一例)が成立するか否かを判別する(S19)。
ここで,前記項目追加ルール第2採用条件は,前記設計値不適合出現率が,予め定められた上限値(例えば,10%)未満であるという条件である。
そして,前記項目追加ルール第1採用条件及び前記項目追加ルール第2採用条件の両方が成立している場合,前記演算部11は,前件部に前記指定情報における前記指定要求項目d31及び前記指定要求値d32と前記追加要求仕様情報とが設定され,後件部に前記指定情報における前記指定設計項目d21及び前記指定設計値d22が設定された設計ルール(以下,項目追加設計ルールという)の情報を生成し,その情報を新たな設計ルールの情報d100として前記記憶部14に登録(記録)する(S20:要求項目追加設計ルール生成・出力処理)。その後,前記演算部11は,当該ルール探索・登録処理を終了させ,次の処理(S10,図3参照)へ移行させる。
図9は,ステップS20において登録される設計ルールの情報d100(図8におけるNo.003の前記項目追加設計ルール)の一例を表す。
【0030】
以上に示したように,前記演算部11は,前記指定設計ルール採用条件(前記第2の採用条件の一例)が成立しない(S7のN側)にのみ,前記追加要求仕様情報設定処理(S11),前記指定・追加要求値一致データ検索処理(S12),前記指定・追加内容適合率算出処理(S14),前記指定設計値不一致データ検索処理(S16),前記設計値不適合出現率算出処理(S18)及び前記要求項目追加設計ルール生成・出力処理(S20)を実行する。
なお,前述したように,前記指定設計値不一致データの件数が前記第3設定件数未満である場合,その件数を母数として算出される前記設計値不適合出現率の信憑性が低い。その場合,前記項目追加ルール第1採用条件の成立により,前記項目追加設計ルールの生成及び登録(S20)が行われる。
最後に,前記演算部11は,新規に登録された設計ルール(前記指定設計ルール又は前記要求項目追加設計ルール)の情報やその登録に至る途中経過で算出された各種情報を前記端末2の画面に表示させる画面の画面データを編成し,その画面データを前記端末2に送信する(S10)。
なお,前記演算部11は,ステップS10の処理の終了後,前述したステップS1へ処理を戻す。
【0031】
以下,図10に示される概念図を参照しつつ,前記指定・追加内容適合率d72及び前記設計値不適合出現率d82について改めて説明する。図10は,前記設計事例データベースd1に含まれる各種データの集合の関係を表す概念図である。
図10において,データ集合dg0(細い実線の枠内)は,前記設計事例データベースd1に含まれる全データの集合である。
また,データ集合dg1(太い実践の枠内)は,前記指定内容適合データの中で前記指定設計項目d21の実績値が前記指定設計値d22と一致するデータ,即ち,前記指定内容一致データの集合である。
また,データ集合dg2(破線の枠内)は,ステップS16の処理で得られる前記指定設計値不一致データの集合である。即ち,データ集合dg1及びデータ集合dg2を合わせたものが,ステップS3の処理で得られる前記指定要求値一致データの集合である。
また,データ集合dg3(一点鎖線の枠内)は,ステップS12の処理で得られる前記指定・追加要求値一致データの集合である。
この場合,図10において集合dg1の範囲に占める斜線部分の割合が,前記指定・追加内容適合率d72である。また,図10において集合dg2の範囲に占める横線部分の割合が,前記設計値不適合出現率d82である。
前記指定・追加内容適合率d72は,設計ルールの候補の前件部に適合する過去の設計事例の実績データ(前記指定・追加要求値一致データ)の中で,設計ルールの候補の後件部(前記指定設計値)にも適合する実績データが占める割合を表す。従って,前記指定・追加内容適合率d72が高い設計ルールの候補は,設計ルールとして採用されるのに好適なものであるといえる。
一方,前記設計値不適合出現率d82は,前記指定情報のみが設定された基礎となる設計ルールに対し,その前件部に項目を追加した設計ルールへ変更することにより,設計ルールに適合しない過去の事例がどの程度減少するかを表す指標値である。前記設計値不適合出現率d82が低い設計ルールの候補は,設計ルールとして採用されるのに好適なものであるといえる。
【0032】
図8は,項目追加ルール採用条件(前記項目追加ルール第1採用条件及び前記項目追加ルール第2採用条件)に関する情報を例示した図である。
図8に示される例は,ステップS11において,前記追加要求仕様情報における前記追加要求項目d61として「用途」が設定され,さらに,その値として3種類の前記追加要求値d62が設定された3つの前記項目追加設計ルール(No.001〜003)の例である。なお,前記指定情報については,図7に示した例と同じである。
また,図8には,3つの前記項目追加設計ルールについて,前記指定・追加要求値一致データの件数d71,その指定・追加要求値一致データについての前記指定・追加内容適合率d72,前記指定設計値不一致データの件数d81,前記設計値不適合出現率d82,前記指定・追加内容適合データにおける最古の設計日d91及び最新の設計日d92が例示されている。
ここで,前記指定・追加内容適合率d72の下限値が80%,前記設計値不適合出現率d82の上限値が10%,前記前記第1期日が12ヶ月前の日,前記第2期日が3ヶ月前の日である場合,図8に示される例は,3番目の前記項目追加設計ルール(No.003)についてのみ,前記項目追加ルール第1採用条件及び前記項目追加ルール第2採用条件の両方が成立していることを表している。
【0033】
前述したように,要求仕様の内容と設計内容との間の対応関係に関する設計者の知識をベースにして設計ルールを生成することが,実用性の高い設計ルールの生成につながる。
本発明においては,設計者の知識が前記指定情報に反映される。そして,前記設計ルール生成装置Xは,まず,前記指定情報のみが設定された前記指定設計ルールについて採用可否を判別し(S7),前記指定設計ルールが登録する設計ルールとして採用できない場合に,前記指定設計ルールの前件部に前記追加要求仕様情報を加えて得られる前記項目追加設計ルールが,採用可否の判別対象となる。
そして,前記設計ルール生成装置Xは,前記項目追加設計ルールについて,前記設計事例データベースd1内のデータに基づいてそれが妥当な設計ルールであか否かを判別し(S15,S19),妥当であると判別したものを新たな設計ルールとして採用(登録)する。
また,前記項目追加設計ルールは,前記指定・追加内容適合率d72が高いほど,設計ルールとしての信頼性が高く(例外が少ない),採用されるのに好適なものであるといえる。
また,前記設計値不適合出現率d82が低いほど,前記追加要求仕様情報の追加によって設計ルールに適合しない過去の事例が大幅に減少(図10におけるデータ集合dg2から横線部分のデータへ減少)したことを表す。従って,前記項目追加設計ルールは,前記設計値不適合出現率が低いものほど,設計ルールとして採用されるのに好適なものであるといえる。
そして,前記設計ルール生成装置Xは,前記項目追加設計ルールについて,前記指定・追加内容適合率d72が所定の下限値以上であり,かつ,前記設計値不適合出現率d82が所定の上限値未満であるという条件を満たす場合にのみ,それを設計ルールとして採用(登録)する。
これにより,設計業務において妥当と考えられる設計ルールが,前記指定情報が入力されるだけで,繁雑なデータ整理作業を要さずに半自動的に前記設計事例データベースから抽出される。
その結果,設計業務において妥当と考えられる前記設計ルールが,前記指定情報が入力されるだけで,繁雑なデータ整理作業を要さずに半自動的に前記設計事例データベースd1から抽出される。
また,登録された前記設計ルールの情報d100は,様々な態様で活用可能である。
例えば,前記設計ルールに従って,入力された要求仕様のデータから設計結果を導出するルールベースシステムを構築し,活用することが考えられる。この場合,そのルールベースシステムによる設計結果を設計案として提示するシステムを構築できる。また,前記ルールベースシステムによる設計内容(入力された要求仕様と設計結果との組合せ)と同じ設計が行われた過去の設計事例を前記設計事例データベースd1から検索して提示するシステム等も構築できる。
【0034】
ところで,前記設計ルール生成装置Xは,前記端末2との通信,前記設計事例データベースd1の検索及びその検索結果に基づく前記設計ルールの生成の各機能を1台の計算機によって実現するものであった。しかしながら,複数の計算機により前記設計ルール生成装置Xの機能を分担して実現された構成も考えられる。
また,前記設計事例データベースd1は,前記設計ルール生成装置Xとは異なる計算機の記憶装置に記憶されてもよい。
また,外部の前記端末2を通じて前記指定情報を入力するのではなく,前記設計ルール生成装置Xが,前記操作表示部12が備えるキーボード等の操作入力手段を通じて前記指定情報を入力する機能を備えた例も考えられる。
また,前記設計ルール生成装置Xが,前記指定設計ルール採用条件や前記項目追加ルール採用条件を含む前記指定情報を入力することも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は,設計事例データベースを検索することにより,要求仕様から設計結果を導く設計ルールを生成する設計ルール生成装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る設計ルール生成装置Xを含む設計ルール登録システムAの概略構成図。
【図2】設計ルール生成装置Xの概略構成を表すブロック図。
【図3】設計ルール生成装置Xによる設計ルール生成処理の手順を表すフローチャート(1)。
【図4】設計ルール生成装置Xによる設計ルール生成処理の手順を表すフローチャート(2)。
【図5】設計ルール生成装置Xがアクセスする設計事例データベースのデータ構成図。
【図6】設計ルール生成装置Xが端末から取得する指定情報の入力画面の一例を表す図。
【図7】設計ルール生成処理の過程で得られる情報の第1の例を示した図。
【図8】設計ルール生成処理の過程で得られる情報の第2の例を示した図。
【図9】設計ルール生成装置Xにより生成された設計ルールの一例を表す図。
【図10】設計事例データベースに含まれる各種データの集合の関係を表す概念図。
【符号の説明】
【0037】
A :設計ルール登録システム
X :設計ルール生成装置
1 :ネットワーク
2 :端末
11:演算部
12:操作表示部
13:通信制御部
14:記憶部
d1:設計事例データベース
d100:設計ルールの情報
S1,S2,…:処理手順(ステップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去の製品の設計事例ごとに要求仕様の項目に対する要求実績値と設計項目に対する設計実績値とが対応付けられて記憶手段に記憶された設計事例データベースを検索することにより,前記要求仕様の項目及びそれに対する要求値を前件部,前記設計項目及びそれに対する設計値を後件部とする設計ルールを生成する設計ルール生成装置であって,
前記設計ルールの前件部に設定される前記要求仕様の項目である指定要求項目及びそれに対する指定要求値と前記設計ルールの後件部に設定される前記設計項目である指定設計項目及びそれに対する指定設計値とを含む指定情報を入力する指定情報入力手段と,
前記設計事例データベースにおける前記指定要求項目以外の1つ又は複数の前記要求仕様の項目及びそれに対する前記要求実績値の組合せである追加要求仕様情報を設定する追加要求仕様情報設定手段と,
前記設計事例データベースの中から,前記指定要求項目についての前記要求実績値が前記指定情報における要求値と一致し,前記追加要求項目についての前記要求実績値が前記追加要求仕様情報における前記要求実績値と一致するデータである指定・追加要求値一致データを検索する指定・追加要求値一致データ検索手段と,
前記指定・追加要求値一致データの中で前記指定設計項目についての前記設計実績値が前記指定情報における前記指定設計値と一致するデータが占める割合である指定・追加内容適合率を算出する指定・追加内容適合率算出手段と,
前記設計事例データベースの中から,前記指定要求項目についての前記要求実績値が前記指定情報における要求値と一致し,前記指定設計項目についての前記設計実績値が前記指定情報における前記指定設計値と一致しないデータである指定設計値不一致データを検索する指定設計値不一致データ検索手段と,
前記指定設計値不一致データの中で前記追加要求項目についての前記要求実績値が前記追加要求仕様情報における前記要求実績値と一致するデータが占める割合である設計値不適合出現率を算出する設計値不適合出現率算出手段と,
前記指定・追加内容適合率が予め設定された値以上であり,かつ,前記設計値不適合出現率が予め定められた値未満であるという条件を含む第1の採用条件が成立する場合に,前件部に前記指定情報における前記指定要求項目及び前記指定要求値と前記追加要求仕様情報とが設定され,後件部に前記指定情報における前記指定設計項目及び前記指定設計値が設定された設計ルールの情報を生成して出力する要求項目追加設計ルール生成・出力手段と,
を具備してなることを特徴とする設計ルール生成装置。
【請求項2】
前記設計事例データベースの中から,前記指定要求項目についての前記要求実績値が前記指定情報における要求値と一致するデータである指定要求値一致データを検索する指定要求値一致データ検索手段と,
前記指定要求値一致データの中で前記指定設計項目についての前記設計実績値が前記指定情報における前記指定設計値と一致するデータが占める割合である指定内容適合率を算出する指定内容適合率算出手段と,
前記指定内容適合率が予め設定された値以上であるという条件を含む第2の採用条件が成立する場合に,前件部に前記指定情報における前記指定要求項目及び前記指定要求値が設定され,後件部に前記指定情報における前記指定設計項目及び前記指定設計値が設定された設計ルールの情報を生成して出力する指定設計ルール生成・出力手段と,
を具備し,
前記追加要求仕様情報設定手段,前記指定・追加要求値一致データ検索手段,前記指定・追加内容適合率算出手段,前記指定設計値不一致データ検索手段,前記設計値不適合出現率算出手段及び前記要求項目追加設計ルール生成・出力手段が,前記第2の採用条件が成立しない場合にのみ,それぞれの処理を実行してなる請求項1に記載の設計ルール生成装置。
【請求項3】
前記設計事例データベースにおける設計事例ごとのデータに設計実施時期の実績値が含まれ,
前記第1の採用条件に,前記指定設計値不一致データのうちの前記追加要求項目についての前記要求実績値が前記追加要求仕様情報における前記要求実績値と一致するデータにおいて,前記設計実施時期の実績値が予め設定された時期条件を満たすという条件が含まれてなる請求項1又は2のいずれかに記載の設計ルール生成装置。
【請求項4】
過去の製品の設計事例ごとに要求仕様の項目に対する要求実績値と設計項目に対する設計実績値とが対応付けられて記憶手段に記憶された設計事例データベースを検索することにより,前記要求仕様の項目及びそれに対する要求値を前件部,前記設計項目及びそれに対する設計値を後件部とする設計ルールを生成する処理をコンピュータに実行させるための設計ルール生成プログラムであって,
コンピュータに,
前記設計ルールの前件部に設定される前記要求仕様の項目である指定要求項目及びそれに対する指定要求値と前記設計ルールの後件部に設定される前記設計項目である指定設計項目及びそれに対する指定設計値とを含む指定情報を入力する指定情報入力処理と,
前記設計事例データベースにおける前記指定要求項目以外の1つ又は複数の前記要求仕様の項目及びそれに対する前記要求実績値の組合せである追加要求仕様情報を設定する追加要求仕様情報設定処理と,
前記設計事例データベースの中から,前記指定要求項目についての前記要求実績値が前記指定情報における要求値と一致し,前記追加要求項目についての前記要求実績値が前記追加要求仕様情報における前記要求実績値と一致するデータである指定・追加要求値一致データを検索する指定・追加要求値一致データ検索処理と,
前記指定・追加要求値一致データの中で前記指定設計項目についての前記設計実績値が前記指定情報における前記指定設計値と一致するデータが占める割合である指定・追加内容適合率を算出する指定・追加内容適合率算出処理と,
前記設計事例データベースの中から,前記指定要求項目についての前記要求実績値が前記指定情報における要求値と一致し,前記指定設計項目についての前記設計実績値が前記指定情報における前記指定設計値と一致しないデータである指定設計値不一致データを検索する指定設計値不一致データ検索処理と,
前記指定設計値不一致データの中で前記追加要求項目についての前記要求実績値が前記追加要求仕様情報における前記要求実績値と一致するデータが占める割合である設計値不適合出現率を算出する設計値不適合出現率算出処理と,
前記指定・追加内容適合率が予め設定された値以上であり,かつ,前記設計値不適合出現率が予め定められた値未満であるという条件を含む第1の採用条件が成立する場合に,前件部に前記指定情報における前記指定要求項目及び前記指定要求値と前記追加要求仕様情報とが設定され,後件部に前記指定情報における前記指定設計項目及び前記指定設計値が設定された設計ルールの情報を生成して出力する要求項目追加設計ルール生成・出力処理と,
を実行させるための設計ルール生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−128710(P2010−128710A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301455(P2008−301455)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】