説明

設計支援システム、設計支援方法、および設計支援プログラム

【課題】システム構成が変更されても、システムにおける搬送体の搬送制御の検証を効率よく行うことができる設計支援システムを提供する。
【解決手段】設計支援システムは、シートの搬送制御シミュレーションを表示部に表示することにより、該シートの搬送制御を検証する複数のシート搬送制御シミュレータ101,102,103を備える。シート搬送制御シミュレータ101,102,103は、予めシートの搬送経路からシート搬送制御シミュレータ101,102,103の間における上流側、下流側の関係を定義した情報に基づいて、シートの搬送制御をシミュレーションし、該搬送制御シミュレーションにおいてシートが所定の位置に到達したときに、下流側の搬送体搬送制御シミュレータにシートに関するシート情報を通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シート等の搬送体を搬送するための搬送機構等を制御するためのソフトウェアの設計支援システム、設計支援方法、および設計支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート等の搬送体の搬送は様々な分野で行われている。例えば、画像形成装置では、搬送体としてのシートをローラやガイドなどの搬送機構によって搬送している。そして、搬送体を搬送するためには、その搬送を制御するソフトウェアが不可欠である。
【0003】
即ち、搬送体の搬送制御の多くにおいては、搬送体をただ等速で一方向にのみ搬送すればよい場合は稀有であり、例えばセンサにより搬送体の位置を検知し、所定位置で停止させたり、ローラを逆回転させ搬送方向を反転させたりする制御が必要なことが多い。
【0004】
また、例えば近年の画像形成装置は高機能・高生産が謳われており、それに伴い画像形成装置を制御するためのソフトウェアは複雑化し、不具合の発見から原因特定、および不具合に対する修正の工数も増大している。
【0005】
そこで、近年のコンピュータの性能向上に伴い、搬送機構設計にシミュレーション技術を用いる機会も増えてきている。例えば、搬送機構での搬送体の挙動をシミュレーションにより算出し、搬送機構に潜在する欠陥を発見するためのシステムなどが提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、搬送機構のシミュレーションがあらゆる場面で活躍する一方、搬送体の搬送機構を制御するためのソフトウェアの検証に関する技術も提案されている。例えば、キーボードなどの入力装置からプリンタ制御ソフトウェアにスイッチのオン/オフやカバーの開閉などの外部イベントを発生させる設計支援方法などが提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平9−81600公報
【特許文献2】特開平5−143260公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
昨今の画像形成装置を取り巻く環境としては、システムの規模の増大化が挙げられる。
【0008】
すなわち、従来のように、画像形成装置の装置本体での処理だけではなく、大容量の給紙デッキを1台あるいは複数台連結して装置本体に外付けし、そこから用紙を給紙して画像形成するといった形でシステム拡張が図られている。
【0009】
あるいは、後処理装置として、出力束中に別の出力紙を中差しするためのインサータや、出力束を綴じるための穴あけを行うパンチャ等を画像形成装置の後段に接続してフィニッシング処理を施すといった形でシステム拡張が図られている。
【0010】
また、サイズの異なる出力紙をサイズ合わせするための折り機や、束出力するためのフィニッシャ等を画像形成装置の後段に接続してフィニッシング処理を施すといった形でシステム拡張が図られている。
【0011】
このような状況においては、画像読取装置の装置本体の不具合検証のみならず、システムとしての不具合の発見から原因特定、および不具合に対する修正が必要となり、そのための工数や検証のためのコストも増大している。
【0012】
しかし、上記特許文献1では、搬送体の搬送機構に潜在する不具合の原因は特定できても、搬送機構を制御するソフトウェアに潜在する不具合の原因特定はできない。また、上記特許文献2では、ソフトウェアに潜在する不具合の発見はできても、原因特定までには至らない。
【0013】
したがって、システムの多様化に対して搬送機構制御のシミュレータを利用した設計支援がよりいっそう重要視される状況になっている。図9に、ソフトウェアシミュレーション部1、入力監視部4、機構シミュレーション部2、表示制御部5を備える従来の搬送機構制御のシミュレータの一例を示す。
【0014】
しかし、システム全体の搬送機構制御を図9に示す1つのシミュレータで検証しようとした場合には、例えば画像形成装置の装置本体にインサータが接続されるか否かで別々のシミュレータを作る必要がある。あるいは後処理装置は同じでも画像形成装置が別の場合には、また別のシミュレータを作らなくてはならない。
【0015】
このため、システムを構成する装置の数だけシミュレータのバリエーションを準備する必要が生じ、シミュレータの準備のために多大な工数が必要となり、システムの多様化に対して設計支援環境が対応できないという問題がある。
【0016】
そこで、本発明は、システム構成が変更されても、システムにおける搬送体の搬送制御の検証を効率よく行うことができる設計支援システム、設計支援方法、および設計支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の設計支援システムは、搬送体の搬送制御シミュレーションを表示部に表示することにより、該搬送体の搬送制御を検証する複数の搬送体搬送制御シミュレータを備える設計支援システムであって、複数の搬送体搬送制御シミュレータは、予め搬送体の搬送経路から前記複数の搬送体搬送制御シミュレータの間における上流側、下流側の関係を定義した情報に基づいて、搬送体の搬送制御をシミュレーションするシミュレーション手段と、該シミュレーション手段による搬送体の搬送制御シミュレーションにおいて搬送体が所定の位置に到達したときに、下流側の前記搬送体搬送制御シミュレータに搬送体に関する搬送体情報を通知する通知手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の設計支援方法は、複数の搬送体搬送制御シミュレータによる搬送体の搬送制御シミュレーションを表示部に表示することにより、該搬送体の搬送制御を検証する設計支援方法であって、予め搬送体の搬送経路から前記複数の搬送体搬送制御シミュレータの間における上流側、下流側の関係を定義した情報に基づいて、前記搬送体搬送制御シミュレータによる搬送体の搬送制御シミュレーションを行なうシミュレーションステップと、該シミュレーションステップでの搬送体の搬送制御シミュレーションにおいて搬送体が所定の位置に到達したときに、下流側の前記搬送体搬送制御シミュレータに搬送体に関する搬送体情報を通知する通知ステップと、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の設計支援プログラムは、複数の搬送体搬送制御シミュレータによる搬送体の搬送制御シミュレーションを表示部に表示することにより、該搬送体の搬送制御を検証する設計支援プログラムであって、予め搬送体の搬送経路から前記複数の搬送体搬送制御シミュレータの間における上流側、下流側の関係を定義した情報に基づいて、前記搬送体搬送制御シミュレータによる搬送体の搬送制御シミュレーションを行なうシミュレーションステップと、該シミュレーションステップでの搬送体の搬送制御シミュレーションにおいて搬送体が所定の位置に到達したときに、下流側の前記搬送体搬送制御シミュレータに搬送体に関する搬送体情報を通知する通知ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、システムを構成するデバイスごとに搬送体搬送制御シミュレータを一度作成すれば、以降はそれらの搬送体搬送制御シミュレータを組み合わせることで、システム構成の変更に容易に対応することができる。これにより、システム構成が変更されても、システムにおける搬送体の搬送制御の検証を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態である設計支援システムを説明するためのブロック図である。
【0023】
本実施形態の設計支援システムは、画像形成装置及びその周辺装置のシート搬送制御シミュレーションをコンピュータ(PC等)で行うシミュレータを複数連携させ、現実の画像形成システムを制御するファームソフトウェアの制御タイミング設計を支援する。
【0024】
即ち、本実施形態の設計支援システムは、図1に示すように、機構的に同一の3つのシート搬送制御シミュレータ(搬送体搬送制御シミュレータ)101,102,103がそれぞれ汎用ネットワーク(通信回線)104を介して互いに通信可能に接続されている。
【0025】
シート搬送制御シミュレータ101,102,103は、それぞれソフトウェアシミュレーション部1、入力監視部4、機構シミュレーション部2、表示制御部5、および外部I/F部3を備えている。ここで、本実施形態では、ソフトウェアシミュレーション部1、機構シミュレーション部2、および外部I/F部3により本発明のシミュレーション手段を構成している。
【0026】
ソフトウェアシミュレーション部1は、シート(搬送体)の搬送制御に関するファームソフトウェアをPC(情報処理装置)上で仮想的に実行するためのものである。入力監視部4は、マン・マシン・インターフェイスであるキーボードデバイスやマウスなどの入力を監視しており、ソフトウェアシミュレーション部1では、前記入力監視部4からの実行開始要求を受けて、ソフトウェアシミュレーション制御を開始する。ソフトウェアシミュレーション部1での実行結果は、機構シミュレーション部2に渡される。
【0027】
機構シミュレーション部2では、シートの搬送制御に関わるローラの速度などからシートが搬送機構内のどの部位に存在するかを計算により求め、求められたシートの位置情報は、ソフトシミュレーション部1、表示制御部5および外部I/F部3に渡される。
【0028】
外部I/F部3は、汎用ネットワーク104に接続され、ソフトウェアシミュレーション部1からのコマンドを汎用ネットワーク104を介して他のシート搬送制御シミュレータに送信する。また、外部I/F部3は、汎用ネットワーク104を介して他のシート搬送制御シミュレータから送信されたコマンドを受信してソフトウェアシミュレーション部1に渡す。
【0029】
なお、図1においては、3つのシート搬送制御シミュレータを用いて説明しているが、これに限定されず、2つ、あるいは4つ以上のシート搬送制御シミュレータを用いてもよい。
【0030】
図2は、表示制御部5によってPCのディスプレイ(不図示:表示部)に表示されるシート搬送制御シミュレーション画面の一例を示す図である。図2では、各シート搬送制御シミュレータ101,102,103に対応するPCのディスプレイに表示されるシミュレーション画面W1,W2,W3を便宜的に横に並べて示している。
【0031】
本実施形態のシート搬送制御シミュレーション画面W1,W2,W3では、シート搬送パスを点線、搬送機構のローラを丸、センサを三角、そしてシートを実線で表現してシートの搬送過程を表示している。図2の例では、シミュレーション画面W1は設計支援システム上にデータとしてのシートを生成する給紙デバイス、シミュレーション画面W2は設計支援システム上からデータとしてのシートを排出する排紙デバイスとなっている。また、シミュレーション画面W3は、給紙デバイス(画面W1)から渡されたデータとしてのシートを排紙デバイス(画面W2)に渡す中間デバイス(プリンタ等の画像形成装置)となっている。
【0032】
本実施形態においては、例えば、シート搬送制御シミュレータ101とシミュレーション画面W1、シート搬送制御シミュレータ102とシミュレーション画面W3、シート搬送制御シミュレータ103とシミュレーション画面W2とをそれぞれ対応付けている。
【0033】
そして、シート搬送制御シミュレータ101で給紙デバイス制御、シート搬送制御シミュレータ102で中間デバイス制御、シート搬送制御シミュレータ103で排紙デバイス制御を行うものとして以降説明する。
【0034】
なお、上述したように、本実施形態の設計支援システムの構成は、図2で示した給紙デバイス、排紙デバイス、中間デバイスの3台構成に限定されない。例えば、本実施形態の設計支援システムの構成は、給紙デバイスと排紙デバイスとからなる2台構成の場合や、給紙デバイスと排紙デバイスの間に複数の中間デバイスを設けた4台以上の構成でもかまわない。
【0035】
ただし、これらのデバイスの定義は概念的なものであり、実際の装置においては、重連可能な給紙デッキでは動作モードに応じて給紙デバイスであったり中間デバイスであったりする。また、重連された後処理装置の中間でエスケープトレイを持った装置などは中間デバイスであったり排紙デバイスであったりする。あるいは給紙カセットを持ったプリンタでは、給紙デバイスで、かつ排紙デバイスとなる場合もある。
【0036】
次に、図3を参照して、シート搬送制御シミュレータ101,102,103のソフトウェアシミュレーション部1、機構シミュレーション部2、および外部I/F部3について具体的に説明する。
【0037】
ソフトウェアシミュレーション部1は、ファームソフトウェア部10、ラッパー部11、入力I/F部12、出力I/F部13から構成される。
【0038】
ファームソフトウェア部10は、現実の画像形成装置あるいは周辺装置のシート搬送制御を行うためのソフトウェアである。
【0039】
ラッパー部11は、現実の画像形成装置あるいは周辺装置のファームソフトウェアをPC上で動作させるための機能を備える。
【0040】
入力I/F部12は、入力監視部4もしくは機構シミュレーション部2もしくは外部I/F部3からの情報を入力する機能を備える。
【0041】
出力I/F部13は、機構シミュレーション部2あるいは外部I/F部3に情報を出力する機能を備える。
【0042】
機構シミュレーション部2は、シート位置計算部20、入力I/F部21、出力I/F部22、シート位置表示部23から構成される。
【0043】
入力I/F部21は、ソフトウェアシミュレーション部1の出力I/F部13からの出力結果を受け付け、シート搬送制御に関わる制御情報をシート位置計算部20に渡す機能を備える。
【0044】
シート位置計算部20は、搬送機構のローラ位置を記憶する。また、シート位置計算部20は、ソフトウェアシミュレーション部1からのシート搬送制御情報に従って仮想のローラを回転させ、記憶しているローラ位置と仮想ローラの回転速度に応じてシートの搬送経路内におけるシートの位置を計算し、記憶する機能を備える。
【0045】
シート位置表示部23は、シート位置計算部20により計算されたシートの位置に基づき、表示制御部5に対して図2で説明したシート搬送制御シミュレーション画面を表示させるよう指示するための機能を備える。
【0046】
出力I/F部22は、シート位置計算部20により計算されたシートの位置情報をソフトウェアシミュレーション部1の入力I/F部12に与えるための機能を備える。また、出力I/F部(通知手段)22は、シート位置がシート情報通知位置に達した場合には、後述するシート情報(搬送体情報)を外部I/F部3のネットワーク出力I/F部31に与えるための機能を備える。
【0047】
外部I/F部3は、ネットワーク入力I/F部30とネットワーク出力I/F部31とから構成される。
【0048】
ネットワーク入力I/F部30は、汎用ネットワーク104を介して他のシート搬送制御シミュレータから送られてくるコマンドを受信してソフトウェアシミュレーション部1の入力I/F部12に渡す機能を備える。一方で、ネットワーク出力I/F部31は、ソフトウェアシミュレーション部1の出力I/F部13から送信されたコマンドを汎用ネットワーク104を介して他のシート搬送制御シミュレータに送信する機能を備える。また、ネットワーク出力I/F部31は、機構シミュレーション部2の出力I/F部22から送信されたシート情報を汎用ネットワーク104を介して他のシート搬送制御シミュレータに送信する機能を備える。
【0049】
図4は、給紙デバイスであるシート搬送制御シミュレータ101のシート搬送制御を説明するためのフローチャート図である。なお、図4での各処理は、シート搬送制御シミュレータ101に対応するPCの記憶手段(ROMやハードディスク等)に記憶されたプログラムがRAMにロードされて、CPUにより実行される。
【0050】
図4においては、まず、シミュレータ環境の初期化を行い(ステップS401)、給紙要求コマンドを待つ(ステップS402)。給紙要求コマンドを受けると、データとしてのシートを生成し(ステップS403)、シート搬送動作のシミュレーションを開始してシートの搬送制御を検証する(ステップS404)。
【0051】
シート搬送動作をシミュレーションする間には、所定の間隔でシートの先端位置が所定のシート情報を通知する位置に達したかを判断する(ステップS405)。ここでのシート情報を通知する位置は、給紙デバイスの実機上における排紙位置(終端位置)であり、シート搬送制御シミュレータ101のシミュレーション対象である給紙デバイスのメカ構成により一意に求めることができる。
【0052】
そして、シートの先端位置がシート情報を通知する位置に到達した時点で後段のシート搬送制御シミュレータにシート情報の通知を行う(ステップS406)。ここで、本実施形態では、中間デバイスであるシート搬送制御シミュレータ102がシート搬送制御シミュレータ101に対する後段のシミュレータとする。シート搬送動作のシミュレーションは、シートの後端が給紙デバイスから排出されるまで行われる(ステップS407)。
【0053】
図5は、中間デバイスであるシート搬送制御シミュレータ(プリンタシミュレータ)102のシート搬送制御を説明するためのフローチャート図である。なお、図5での各処理は、シート搬送制御シミュレータ102に対応するPCの記憶手段(ROMやハードディスク等)に記憶されたプログラムがRAMにロードされて、CPUにより実行される。
【0054】
図5においては、まず、シミュレータ環境の初期化を行い(ステップS501)、動作開始のコマンドを待ち(ステップS502)、動作開始後は前段のシート搬送制御シミュレータ101からのシート情報の通知を待つ(ステップS503)。
【0055】
そして、シート情報の通知を受けて、データとしてのシートの生成を行い(ステップS504)、シート搬送動作のシミュレーションを開始してシートの搬送制御を検証する(ステップS505)。シート搬送動作シミュレーションの間には、所定の間隔でシートの先端位置が所定のシート情報通知位置に達したかを判断する(ステップS506)。ここでのシート情報を通知する位置は、中間デバイスの実機上における排紙位置(終端位置)であり、シート搬送シミュレータ102のシミュレーション対象である中間デバイス(プリンタ等)のメカ構成により一意に求めることができる。
【0056】
そして、シート情報通知位置に到達した時点で後段のシート搬送制御シミュレータにシート情報を通知する(ステップS507)。本実施形態では、排紙デバイスであるシート搬送制御シミュレータ103がシート搬送制御シミュレータ102に対する後段のシミュレータとなる。シート搬送動作のシミュレーションはシートの後端が中間デバイスから排出されるまで行われる(ステップS508)。
【0057】
図6は、排紙デバイスであるシート搬送制御シミュレータ103のシート搬送制御を説明するためのフローチャート図である。なお、図6での各処理は、シート搬送制御シミュレータ103に対応するPCの記憶手段(ROMやハードディスク等)に記憶されたプログラムがRAMにロードされて、CPUにより実行される。
【0058】
図6においては、まず、シミュレータ環境の初期化を行い(ステップS601)、動作開始のコマンドを待ち(ステップS602)、動作開始後は前段のシート搬送制御シミュレータ102からのシート情報の通知を待つ(ステップS603)。
【0059】
そして、シート情報の通知を受けて、データとしてのシートを生成し(ステップS604)、シート搬送動作のシミュレーションを開始してシートの搬送制御を検証する(ステップS605)。シートの後端が排紙デバイスから排出されたらシート搬送動作のシミュレーションを終了する(ステップS606)。
【0060】
次に、図7(a)を参照して、シート搬送制御シミュレータ101乃至103の連携動作のタイミングシーケンスを説明する。
【0061】
前述したように、シート搬送制御シミュレータ101で給紙デバイスを、シート搬送制御シミュレータ102で中間デバイス(この場合、画像形成装置=プリンタ)を、シート搬送制御シミュレータ103で排紙デバイスをシミュレートすることとする。なお、以下の説明では、シート搬送制御シミュレータ102をプリンタシミュレータ102、シート搬送制御シミュレータ101を給紙デバイスシミュレータ101、シート搬送制御シミュレータ103を排紙デバイスシミュレータ103とする。
【0062】
従って、本実施形態では、プリンタ(中間デバイス)シミュレータ102側から見ると、上流側デバイスが給紙デバイスシミュレータ101、下流側デバイスが排紙デバイスシミュレータ103という設定となる。これらの複数のシート搬送制御シミュレータ101,102,103の間における上流側、下流側の関係は、シートの搬送経路に基づいて予め定義されている。
【0063】
まず、プリンタシミュレータ102から給紙デバイスシミュレータ101及び排紙デバイスシミュレータ103に動作開始通知コマンドを送信する。その際に、給紙デバイスシミュレータ101に対してはプリンタシミュレータ102が下流側のデバイスであることを合わせて通知し、排紙デバイスシミュレータ103に対してはプリンタシミュレータ102が上流側のデバイスであることを併せて通知する。
【0064】
次に、プリンタシミュレータ102は、給紙デバイスシミュレータ101に給紙要求コマンドを送信し、その後、給紙デバイスシミュレータ101からシート情報が通知されるのを待つ。
【0065】
次に、プリンタシミュレータ102は、シート情報の通知を受けて、前記シート情報に基づいてシートの長さとシート種類とを有するシートデータを生成し、シート搬送制御のシミュレーションを開始してシートの搬送制御を検証する。
【0066】
次に、プリンタシミュレータ102は、所定のシート情報通知位置にシートの先端が到達した時点で、下流側のデバイスである排紙デバイスシミュレータ103にシート情報を通知する。そして、プリンタシミュレータ102は、シート後端が中間デバイスであるプリンタから排出されるまでシート搬送シミュレーションを継続する。シート搬送シミュレーションの終了後は、プリンタシミュレータ102は、排紙デバイスシミュレータ103からの排紙完了コマンドを待ち、排紙完了コマンドを受けて動作を終了する。
【0067】
給紙デバイスシミュレータ101では、プリンタシミュレータ102からの動作開始通知コマンドと給紙要求コマンドを待ってシート搬送シミュレーションを開始してシートの搬送制御を検証する。その際、給紙デバイスシミュレータ101は、給紙要求コマンドに含まれている給紙段指定に従って、該当する給紙段に設定されているシートの長さとシート種類に基づいてシート搬送シミュレーションを開始する。
【0068】
そして、給紙デバイスシミュレータ101は、所定のシート情報通知位置にシートの先端が到達した時点で、プリンタシミュレータ102に、搬送制御のシミュレート対象であるシートの長さとシートの種類とを判定可能なシート情報を通知する。その後、シート後端が給紙デバイスを抜けるまでシート搬送シミュレーションを継続し、シート後端が給紙デバイスを抜けたら動作を終了する。
【0069】
排紙デバイスシミュレータ103では、プリンタシミュレータ102から動作開始通知コマンドを受けて、プリンタシミュレータ102からのシート情報の通知を待つ。そして、排紙デバイスシミュレータ103は、シート情報の通知を受けて、シートデータを生成し、シート搬送シミュレーションを開始してシートの搬送制御を検証する。そして、排紙デバイスシミュレータ103は、シート後端が排紙デバイスを抜けるまでシート搬送シミュレーションを継続し、排紙した時点でプリンタシミュレータ102に排紙完了コマンドを通知し、動作を終了する。
【0070】
図7(b)は、図7(a)のタイミングシーケンスで用いるシート情報の一例を示す図である。シート情報は、これがシート情報であることを示すコマンド部、以降のデータ量を示すデータサイズ部、シートの長さを判定するためのシートサイズコード部、シート種類コード部とから構成されている。
【0071】
この場合、シート位置計算部20では、シートサイズコードに基づいて対応するサイズ(長さ)のシートデータを生成することになるが、これに代えて、シートサイズ情報を直接送信するようにしても良い。
【0072】
なお、本実施形態では、所定のシート情報通知位置にシートの先端が到達した時点で後段のシート搬送制御シミュレータにシート情報を通知している。このことは、シート搬送制御シミュレータ間でのシートの受け渡しはファームソフトウェア部10での処理とは独立に制御されていることを意味している。
【0073】
しかし、実機環境においてデバイスを連携させる際には、ファームソフトウェア部10上のコマンドレベルでもデバイス間の連携動作のタイミング調整を行っている。
【0074】
従って、ファームコマンドの通信に合わせて、ネットワーク入力I/F部30あるいは入力I/F部12が所定のコマンドを受信した際に、入力I/F部21を介してシート位置計算部20にシート情報の生成を要求するようにすることも可能である。
【0075】
以上説明したように、本実施形態では、複数のシート搬送制御シミュレータ101,102,103を互いに通信可能な状態とし、複数のシート搬送制御シミュレータ101,102,103の間にシートの搬送経路に基づいて上流側、下流側の関係を定義する。そして、上流側、下流側の定義に基づいて各々のシート搬送制御シミュレータ101,102,103においてシートの搬送制御の検証を行う際に、シートが所定の位置に到達した時点で下流側のシート搬送制御シミュレータにシート情報を送信する。
【0076】
これにより、画像形成システムを構成するデバイスごとにシート搬送制御シミュレータを一度作成すれば、以降はそれらのシート搬送制御シミュレータを組み合わせることで、システム構成の変更に容易に対応することができる。この結果、画像形成システムの構成が変更されても、画像形成システムにおけるシートの搬送制御の検証を効率よく行うことができる。
【0077】
(第2の実施形態)
図8は、本発明の第2の実施形態である設計支援システムを説明するためのブロック図である。なお、上記第1の実施形態と重複する部分については図に同一符号を付してその説明を省略する。
【0078】
本実施形態の設計支援システムは、画像形成装置及びその周辺装置のシート搬送制御シミュレーションをPC上で行う点では第1の実施形態と同じである。相違する点は、1台のPC上で複数のシート搬送制御シミュレータを同時に動作させることにある。
【0079】
即ち、図8に示すように、シート搬送制御シミュレータ801は、ソフトウェアシミュレーション部1、機構シミュレーション部2および外部I/F部3を備える2系統のシミュレーション部802a,802bを同時に動作させることが可能な構成となっている。
【0080】
シート搬送制御シミュレータ801とシート搬送制御シミュレータ103とは汎用ネットワーク104を介して互いに通信可能に接続されている。ただし、シート搬送制御シミュレータ801は、シミュレーション部802a,802bの入力監視部4及び表示制御部5は共有されており、入力に関しては操作対象を切り替え可能に、表示に関しては同時表示可能になっている。
【0081】
なお、図8においては、1台のPCで2つのシート搬送制御シミュレータを動作させているが、これに限定されず、PCの能力次第で1台のPCで3つ以上のシート搬送制御シミュレータを動作させるようにしてもよい。また、1台のPCで全てのシート搬送制御シミュレータを動作させるようにしてもよい。この場合、通信回線は不要となる。その他の構成、および作用効果は、上記第1の実施形態と同様である。
【0082】
なお、本発明は、上記実施の形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0083】
また、本発明の目的は、以下の処理を実行することによって達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。
【0084】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0085】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、次のものを用いることができる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等である。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
【0086】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現される場合も本発明に含まれる。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0087】
更に、前述した実施形態の機能が以下の処理によって実現される場合も本発明に含まれる。即ち、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行う場合である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施形態である設計支援システムを説明するためのブロック図である。
【図2】PCのディスプレイに表示されるシート搬送制御シミュレーション画面の一例を示す図である。
【図3】シート搬送制御シミュレータの詳細を説明するためのブロック図である。
【図4】給紙デバイスであるシート搬送制御シミュレータのシート搬送制御を説明するためのフローチャート図である。
【図5】中間デバイスであるシート搬送制御シミュレータ(プリンタシミュレータ)のシート搬送制御を説明するためのフローチャート図である。
【図6】排紙デバイスであるシート搬送制御シミュレータのシート搬送制御を説明するためのフローチャート図である。
【図7】(a)は各シート搬送制御シミュレータの連携動作を説明するためのタイミングシーケンス図、(b)は(a)のタイミングシーケンスで用いるシート情報の一例を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態である設計支援システムを説明するためのブロック図である。
【図9】従来の搬送機構制御のシミュレータの一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0089】
1 ソフトウェアシミュレーション部
2 機構シミュレーション部
3 外部I/F部
4 入力監視部
5 表示制御部
10 ファームソフトウェア部
11 ラッパー部
12 入力I/F部
13 出力I/F部
20 シート位置計算部
21 入力I/F部
22 出力I/F部
23 シート位置表示部
30 ネットワーク入力I/F部
31 ネットワーク出力I/F部
101、102、103 シート搬送制御シミュレータ
104 汎用ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送体の搬送制御シミュレーションを表示部に表示することにより、該搬送体の搬送制御を検証する複数の搬送体搬送制御シミュレータを備える設計支援システムであって、
複数の搬送体搬送制御シミュレータは、予め搬送体の搬送経路から前記複数の搬送体搬送制御シミュレータの間における上流側、下流側の関係を定義した情報に基づいて、搬送体の搬送制御をシミュレーションするシミュレーション手段と、
該シミュレーション手段による搬送体の搬送制御シミュレーションにおいて搬送体が所定の位置に到達したときに、下流側の前記搬送体搬送制御シミュレータに搬送体に関する搬送体情報を通知する通知手段と、を備える
ことを特徴とする設計支援システム。
【請求項2】
前記シミュレーション手段は、前記通知された前記搬送体情報に基づいてデータとしての搬送体を生成して、搬送体の搬送制御シミュレーションを開始する、
ことを特徴とする請求項1記載の設計支援システム。
【請求項3】
前記通知手段は、前記シミュレーション手段による搬送体の搬送制御シミュレーションにおいて搬送体が搬送経路の終端位置に到達したときに、下流側の前記搬送体搬送制御シミュレータに搬送体に関する搬送体情報を通知する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の設計支援システム。
【請求項4】
前記搬送体情報は、搬送体のサイズの情報を含む、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の設計支援システム。
【請求項5】
前記搬送体情報は、搬送体の種類の情報を含む、
ことを特徴とする請求項4記載の設計支援システム。
【請求項6】
前記複数の搬送体搬送制御シミュレータは、複数の情報処理装置にそれぞれ設けられ、該複数の情報処理装置は、通信回線を介して互いに通信可能に接続される、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の設計支援システム。
【請求項7】
複数の搬送体搬送制御シミュレータによる搬送体の搬送制御シミュレーションを表示部に表示することにより、該搬送体の搬送制御を検証する設計支援方法であって、
予め搬送体の搬送経路から前記複数の搬送体搬送制御シミュレータの間における上流側、下流側の関係を定義した情報に基づいて、前記搬送体搬送制御シミュレータによる搬送体の搬送制御シミュレーションを行なうシミュレーションステップと、
該シミュレーションステップでの搬送体の搬送制御シミュレーションにおいて搬送体が所定の位置に到達したときに、下流側の前記搬送体搬送制御シミュレータに搬送体に関する搬送体情報を通知する通知ステップと、を備える
ことを特徴とする設計支援方法。
【請求項8】
前記シミュレーションステップは、前記通知された前記搬送体情報に基づいてデータとしての搬送体を生成して、搬送体の搬送制御シミュレーションを開始する、
ことを特徴とする請求項7記載の設計支援方法。
【請求項9】
前記通知ステップは、前記シミュレーションステップでの搬送体の搬送制御シミュレーションにおいて搬送体が搬送経路の終端位置に到達したときに、下流側の前記搬送体搬送制御シミュレータに搬送体に関する搬送体情報を通知する、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の設計支援方法。
【請求項10】
複数の搬送体搬送制御シミュレータによる搬送体の搬送制御シミュレーションを表示部に表示することにより、該搬送体の搬送制御を検証する設計支援プログラムであって、
予め搬送体の搬送経路から前記複数の搬送体搬送制御シミュレータの間における上流側、下流側の関係を定義した情報に基づいて、前記搬送体搬送制御シミュレータによる搬送体の搬送制御シミュレーションを行なうシミュレーションステップと、
該シミュレーションステップでの搬送体の搬送制御シミュレーションにおいて搬送体が所定の位置に到達したときに、下流側の前記搬送体搬送制御シミュレータに搬送体に関する搬送体情報を通知する通知ステップと、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする設計支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−305152(P2008−305152A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151539(P2007−151539)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】