説明

設計支援システム及びその方法

【課題】 設計ナビゲートシステムから得られる設計の作業手順情報とCADソフトウェアで用いる設計情報とを連携する設計支援システム及び方法を提供する。
【解決手段】 製品の設計作業に関係するデータを蓄積した設計作業データベース2から所定の条件に適合する特定の設計作業データを絞り込んで抽出し、雛型データ処理部3によりこの抽出した設計作業データに関係する特定部位の雛型データを呼び出し、形状データ変更部4により雛型データの形状データを変更し、形状データ作成部5により特定部位の形状を作成するように構成したので、設計者が形状データ作成部5で形状データ作成作業を直接行うことなく設計検討後の形状が自動的に生成され、生成結果を瞬時に確認することが可能となる。これにより、個々の設計者の経験や技量不足の影響を受けない一定水準の品質を維持した製品設計を行うことができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製品の設計作業を行う作業者に対して必要な作業手順を提示しながら設計をナビゲートして設計支援を行うシステム及び方法に関し、より詳しくは、所定の設計値の変更があるとこれに対応した形状データを自動的に作成し設計支援を図ることに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、製品購入者の要求が多様化していることに歩調をあわせて、従来よりもライフサイクルが短い製品が増加している。このような短寿命の製品は競合他社に先駆けて製品の販売を開始し、その市場占有率を急速に拡大することが重要といえる。このため、メーカは消費者の嗜好に合致した新製品を次々と市場に投入すべく、製品設計部門及び製造部門に対して迅速性の要請を強めている。
【0003】
このような環境の中、特に製品設計に関していえば、コンピュータ端末上で利用可能なCADソフトウェアを利用して設計作業の合理化を図ろうとする流れが浸透してきている。実際に、設計作業にCADソフトウェアを導入したことにより、短期間で製品を製作し市場での優位性を確保できた事例が数多く報告され、CADソフトウェアは設計作業の合理化を実現するのに有用なツールであることが証明されている。しかし、CADソフトウェアを利用しさえすれば常に設計作業工数の低減が図れ、製品開発期間が大幅に短縮されるというものではないことも明らかになってきた。
【0004】
つまり、CADソフトウェアは、設計作業、より具体的には形状データの作成作業を支援する役割が大きいので、設計者の頭の中で製品の形状等の構想が固まった後、形状データとして展開する作業にCADソフトウェアを使用すればその作業効率を上げることができる。CADソフトウェアは、既存データを基にして、例えば形状の一部を変更したり、追加したり、或いは似たような形状を作成する場合には、最初から手作業でやり直す形状データ作成作業に比べ格段にスピードアップすることが可能なためである。一方で、まだ製品イメージが固まっていない場合では、手作業での手直しがCADソフトウェア上での作業に置き換わるだけなので、作業効率を大きく上げることは期待できない。
【0005】
そこで、設計作業の効率を向上させる鍵となるのは、実際の形状データ作成作業を行う前の構想段階で、対象製品に要求される機能から必要とされる形状を特定し、その寸法や形状相互の位置関係などの製品スペックを如何に最適かつ迅速に設計できるかにかかっている。これは長年の経験によって熟練設計者が同様な設計を行う過程で獲得できるものであり、いわゆる設計ノウハウや勘と称されている。したがって、設計作業を担当して間もない設計初心者は、製品スペックを確定するにあたって設計ノウハウ等に相当する情報源を膨大な資料等の中から探しながら行う試行錯誤が不可避となる。
【0006】
このため、特に設計初心者を対象に、対象製品に関する設計ノウハウの集まり(以下、設計項目という)を抽出して時系列的に提示し、この設計項目に従って作業を行うように設計者を誘導していくナビゲートシステム又は装置が提案されている(例えば、特許文献1)。また、設計初心者のみならず熟練設計者にも、このようなナビゲートシステムを利用して設計を支援するツールは有用である。熟練設計者であっても過去に行った設計作業の詳細な内容をすべて把握しているとは限らないので、前記ナビゲートシステムから得られる情報から過去の記憶を想起し設計工数を短縮することが可能になるからである。
【0007】
このように、設計者は、ナビゲートシステムとCADソフトウェアの両方の機能を活用することで、製品設計の迅速性の要求に対応することができるようになってきた。
【0008】
【特許文献1】特開2001−067380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ナビゲートシステムは設計者の思考プロセスの再現を支援することを目的として作業手順を提示するのに対して、CADソフトウェアは形状データ作成作業の実行又は再現を支援することを目的とすることから、両者が有機的な連携を図りながら設計者を支援し、その結果、設計作業が総合的に合理化されるようにはなっていなかった。例えば、ナビゲートシステムにより製品の詳細な作業手順や考慮すべき設計項目が明確になったことを受けて、設計者がCADソフトウェアによる形状データ作成作業で多大な時間を消費してしまったのでは本来の目的である総合的な設計工数の低減に寄与しないことになる。これは、特にCADソフトウェアの習得が不充分な設計者において大きな問題となっていた。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ナビゲートシステムから得られる設計の作業手順情報とCADソフトウェアで用いる設計情報とを連携して、設計作業全体の効率を上げること、及び設計品質の向上の少なくとも何れかを図ることを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の設計支援システムは、製品の設計作業に関係するデータを蓄積した第1の記憶手段と、前記製品の形状を特定部位ごとに作成する形状データ作成手段と、前記形状データ作成手段により作成された前記特定部位形状の全部又は一部の形状データ及び当該特定部位形状の作成手順を、前記特定部位の雛型データとして第2の記憶手段に記憶するとともに呼び出せるようにする雛型データ処理手段と、前記第1の記憶手段に蓄積された設計作業データから特定の設計作業データを所定の条件により絞り込んで抽出する作業データ抽出手段と、前記作業データ抽出手段により抽出された設計作業データに関係する前記特定部位の雛型データの全部又は一部の形状データを変更する形状データ変更手段とを備え、前記形状データ作成手段は、前記形状データ変更手段により変更された新たな形状データに基づいて前記製品の特定部位を再作成することを特徴としている。
【0012】
また、前記形状データ変更手段による形状変更は、前記特定部位に含まれる任意の形状を消去する設定を選択的に含んでいることを特徴としている。
また、前記第1の記憶手段は、前記製品の設計仕様、前記設計仕様に関連する機構又は構造、前記機構又は構造に関連する構成部品、これらに関する設計項目、及びこれらの相互関係を含むデータを記憶し、前記作業データ抽出手段は、少なくとも前記製品の機種を絞り込み条件の1つにしながら前記データの相互関係に基づいて前記設計項目を抽出することを特徴としている。
また、前記形状データ作成手段は、形状を作成していく操作を一連の作成手順として予め記述又は記憶しておくことが可能な任意のCADソフトウェアツールであり、既に作成した形状と同一、近似、又は相似の関係にある形状を作成する際は、前記一連の作成手順を基にして自動的に行うことが可能な自動作成機能を有し、前記形状データ変更手段により前記雛型データの形状データが変更された場合、前記自動作成機能を利用して前記製品の形状を再作成することを特徴としている。
また、前記形状データ変更手段により変更された雛型データを、前記製品に関して類似、派生、又は流用関係にある機種のための既に設定済みの雛型データとして前記第2の記憶手段に追加的に蓄積することを特徴としている。
また、前記特定部位に関する任意の性能評価を行うデータ解析手段を有し、又は前記形状データ作成手段が前記データ解析手段を含み、前記データ解析手段による解析結果が、前記形状データ変更手段で設定する形状データに反映されることを特徴としている。
【0013】
本発明の設計支援方法は、製品の設計作業に関係するデータを第1の記憶媒体に蓄積した記憶工程と、前記製品の形状を特定部位ごとに作成する形状データ作成工程と、前記形状データ作成工程で作成された前記特定部位形状の全部又は一部の形状データ及び当該特定部位形状の作成手順を、前記特定部位の雛型データとして第2の記憶手段に記憶するとともに呼び出せるようにする雛型データ処理工程と、前記記憶工程で前記第1の記憶媒体に蓄積された設計作業データから特定の設計作業データを所定の条件により絞り込んで抽出する作業データ抽出工程と、前記作業データ抽出工程で抽出された設計作業データに関係する前記特定部位の雛型データの全部又は一部の形状データを変更する形状データ変更工程とを備え、前記形状データ作成工程は、前記形状データ変更工程で変更された新たな形状データに基づいて前記製品の特定部位を再作成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製品の形状を特定部位(例えば、部品)ごとに作成し、その形状データ及び特定部位形状の作成手順を雛型データとして処理できるとともに、前記製品の設計作業に関係するデータを蓄積した第1の記憶手段から所定の条件に適合する特定の設計作業データを絞り込んで抽出し、この抽出した設計作業データに関係する特定部位の雛型データを呼び出して形状データを変更するように構成したので、抽出された設計作業データに関する情報と、形状データ作成手段(例えば、CADシステム)で使用する形状情報とを有機的に連携させることができるようになる。
【0015】
すなわち、所定の条件に適合した設計作業データのみを作業手順として設計者に提示するので、設計者はその作業手順に従って設計検討後の製品形状の形状データを作成していけば良いのだが、本発明では特に、予め登録されている雛型データをCADシステムで利用して形状データの作成を行うようにしている。しかも、その雛型データを特定部位単位で処理するように構成したので、設計者に提示する作業手順に関連した部位を特定すると形状データの作成までを一貫して処理することができるようになる。このため、設計者がCADシステムでの形状データ作成作業を直接行うことなく設計検討後の形状を自動的に生成し、その生成結果を瞬時に確認することができる。
また、過去のノウハウを盛り込んだ作業手順に従いながら、汎用的な利用のために登録してある雛型データを最大限活用するので、個々の設計者の経験や技量不足の影響を受けない一定水準の品質を維持した設計を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の統合設計支援システム100の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の統合設計支援システム100は、設計者の思考プロセスの再現を支援する設計ナビゲーションシステム1と、製品の形状データを作成する作業の再現を支援する形状データ作成システム5との連携を図るため、両システム1,5の他に更に、対象製品に関連する設計項目が記憶された設計作業データベース2と、雛型データベース6と、雛型データ処理部3と、形状データ変更部4と、設計データベース7とを含んだ構成になっている。
以下、これら各構成について順に説明する。
【0017】
<設計ナビゲーションシステム1の概略構成>
まず、設計ナビゲーションシステム1の構成について説明する。
設計ナビゲーションシステム1とは、ある製品の特定機種の設計を行う作業者(設計者)に対して、その特定機種に必要と思われる作業内容をデータベースから検索して提示するシステムである。
【0018】
設計者が製品設計を行う際に留意しなければならない項目は、例えば、製品の強度や耐久性を確保するための構造面からみた設計項目、消費者の使用環境を考慮して危害が生じないようにするための安全面からみた設計項目、第三者が有する特許権等を侵害しないようにするための紛争未然防止面からみた設計項目、及び製造工程等との関連から制約される設計項目など、非常に多岐にわたるのが一般的である。設計者は、これらすべての設計項目を総合的に判断することが必要であり、まず上流の設計ステップに相当する構想設計で、製品の全体的な機構及び構造を設計するのに必要な設計項目を抽出するとともに、これらの設計項目をどのような手順で行うべきかを示した設計フローを生成しなければならない。次に、下流の設計ステップに相当する詳細設計で、構想設計で抽出された設計項目をより詳細にした設計項目や使用する部品の寸法等を決定していく必要がある。
【0019】
例えば、携帯電話をみてみると、ある一機種の設計には、「定格抵抗の検討」、「耐電圧の検討」、「コネクタの配置と方向」等の設計項目が数百個ほど必要とされる。設計経験の豊富なベテランの設計者であっても、これら多数の設計項目を過不足なく抽出し、かつこれら設計項目から設計作業として何を検討する必要があるのかを順序立てて構築することは困難な作業である。経験の浅い設計者にすれば、まず何から着手すれば良いのか見当さえつかないことも生じる。このため、重要な設計項目を決定していないのに下位レベルの設計項目の抽出に時間をかける、さらにせっかく抽出したこれらの設計項目も上位の重要な設計項目の変更によって変更せざるを得なくなって先の抽出作業が無駄になるなど、非常に効率が悪いことがあった。これを解決するのが設計ナビゲーションシステムである。設計者はこの設計ナビゲーションシステム1と相互作用を図りながら、つまり設計ナビゲーションシステム1に誘導されながら、設計しようとする機種の設計項目を容易に且つ順序立てて抽出することができるようになっている。
【0020】
具体的には本実施形態の場合、設計ナビゲーションシステム1の作業データ抽出部11が、設計しようとする機種に適切な設計項目を設計作業データベース2の中から抽出する。この設計作業データベース2には、過去に設計を行った機種に関する有用な情報、例えば、製品の不具合に関する情報、この不具合を解消するために講じた設計手段、製品又は部品に関する特許情報、その他の設計又は製造工程で注意しなければならない設計作業全般に関する情報が、設計項目として抽出可能なように記憶されている。このような設計作業に関連する各種の情報を、設計作業データベース2へ登録する方法としては、特に限定するものではないが、表示装置13上に提示されるインタフェースを利用することにより容易に登録できることが望ましい。
【0021】
図4にそのユーザインタフェース画面の一例を示す。このユーザインタフェース画面は、製品に使用される部品を登録するためのダイアログボックスである。まず、画面内の部品名入力欄41に部品名(部品1、部品2など)を入力しておく。次に、入力した部品名に関する情報を、部品情報欄42で設定する。この例では、部品情報欄42のA列に「部品タイプ名」、B列に「部番」、C列に「材質」、D列に「コスト」のフィールドが設けられていて、A列にはタイプA及びタイプBというように、必要な値又は文字を入力する。
また、部品情報欄42のI列以降は、入力した部品名をもつ部品と、その設計仕様との関連を設定するフィールドである。例えば、J列は、「設計規格名」が”設計仕様1”で「設計規格値」が”値1a”に設定されているが(本設定は、別のユーザインタフェース画面で設定してある)、”値1a”をもつ”設計仕様1”と、前述した入力部品のタイプAとを関連付けるには、図4に示すように、タイプAの行と設計仕様1の列が交差するフィールドに「○」印を設定する。これにより、タイプAの部品を含んだ製品の設計を行う場合は、設計仕様1のデータが値1aであることが分かり、逆に、設計仕様1として値1aの部品はタイプAであることが分かることになる。このように抽出条件を設定することで、部品と設計仕様との関連を図ることができる。
【0022】
また、図5は、設計項目(ここでは「設計項目1−1−2」)55、及びその属性を登録するためのユーザインタフェース画面の一例を示している。ここでは、本発明に特に関連する機能の説明に限定することとする。画面の右部の「親情報」欄57は、これから入力する設計項目の上位に位置する設計項目を表わし、本欄が空欄であれば設定しておく必要がある。この親子関係は画面左部の設計項目一覧56に対応しており、新たな設計項目を登録すればツリー表示で表わされた中の所定の階層に定義される。
画面の右部の「必要条件」欄58は、この設計項目55と、前述した図4に示すユーザインタフェース画面で登録した設計仕様又は部品とを関連づけるためのものである。右端にある「追加」ボタン59をクリックすると、既に登録済みの設計仕様又は部品の一覧リスト(不図示)が現れるので、この中から「設計項目1−1−2」55に関連づけたいものを選択する。これにより、設計ナビゲーションシステム1は、特定の機種の設計仕様、又は使用される部品を基に、設計作業データベース2に記憶されたあらゆる機種の膨大な設計項目の中から適切な設計項目を抽出することが可能になる。
【0023】
設計者により設計しようとする機種の設計仕様や部品が入力されて、設計ナビゲーションシステム1が、設計作業データベース2から設計項目を抽出して、それを表示装置13のモニタ画面に出力した一例を図6に示す。図6に示すように、設計者はツリー形式で表示された情報を入手できるので設計項目相互の関連を一目で把握することができ、提示された情報にナビゲートされながら設計作業を決定していけばよい。なお、前述した設計項目と部品とが関連づけられていることが、後述する形状データ作成システム5との連携のために大きな役割を果たすことになる。
【0024】
本実施形態では、設計仕様、設計項目、部品等の各種情報を設計作業データベース2に登録するにあたり、表形式を備えたユーザインタフェースを提示して必要な値、文字、又は記号を設定するように構成したが、必ずしもこれに限定するものではなく、任意の様式の入力用フィールドが提示されるようにしてもよい。また、設計ナビゲーションシステム1が、前述した構成以外の構成を含む場合があることは言うまでもない。
なお、設計項目が特許請求の範囲に記載した「設計作業データ」に相当し、同様に、作業データ抽出部3が「作業データ抽出手段」に、設計作業データベース2が「第1の記憶手段」に、雛型データベース6が「第2の記憶手段」に相当している。
【0025】
<形状データ作成システム5による形状データの作成について>
次に、統合設計支援システム100内の形状データ作成システム5による製品の形状データの作成内容について説明する。
本発明の理解を容易にするため、本実施形態では、形状データ作成システム5をCADソフトウェアシステム5(以下、「CADシステム5」と称する))として説明していく。本実施形態のCADシステム5で用いられるCADソフトウェアの機能は、市場で広く用いられているCADソフトウェアと同様、ユーザ(設計者)がCADシステム5と対話しながら所望の形状をモニタ画面上で確認しながら作成する機能を有している。また、CADシステム5には2次元のCADシステムと3次元のCADシステムとがあり、何れのシステムにも本発明を適用することが可能であるが、本実施形態では3次元CADシステムを用いて説明することとする。なお、形状作成システムが、特許請求の範囲に記載した「形状データ作成手段」に相当している。
ここでは、携帯電話の形状データを作成する場合について説明する。
【0026】
CADシステム5によって携帯電話の形状を作成する場合、表示装置53のモニタ画面上に描画された携帯電話の形状が同一でも、設計者によりその作成方法(作成手順)は様々に異なる。これは基本的には、設計者が携帯電話の幾何形状をどのように定義するかに関係している。本実施形態で扱う携帯電話に限らず、通常、製品は多数の部品から構成されるが、各部品の形状を長方体や球などの固体のかたまりとしてとらえ、かたまりの追加又は差分の操作によって全体の形状を定義して作成する方法(ソリッドモデリング)、携帯電話を包む表面を平面又は曲面で定義して作成する方法(サーフェスモデリング)、携帯電話の形状を直線又は曲線で定義して作成する方法(ワイヤモデリング)、及びこれらの方法を様々に組み合わせて行う方法というように様々な作成方法がある。そして、CADシステム5では、例えば、かたまりとして定義したときの形状に関する属性構造と、面として定義したときの形状に関する属性構造とが異なり、それぞれの作成方法での形状定義がCADデータ構造の相違として反映されることになる。
【0027】
ところで、これらのうち何れの作成方法が最適であるかは一概に決定することはできない。これは、部品の数量や形状の複雑さからみて容易に作成できるのはどの方法なのかで判断したり、或いはCADシステム5で定義されたデータ構造を、加工工程のマシニングセンタで用いるNCデータへ都合良くデータ変換できるのはどの方法なのかで判断したりするからである。このため、設計者は、何れの作成方法でCAD形状データを作成すべきかを慎重に考慮してから形状データの作成を行う必要がある。しかも重要なのは、最適な作成方法をひとたび決定した後は、CAD形状データの品質を一定レベル以上に維持するために、同じような形状の製品で同じマシニングセンタを使用するのであれば、特段の事情が生じない限りむやみに変更しない方が好ましく、設計者間で統一すべきであるという点にある。
【0028】
また、CADシステム5によって携帯電話の形状データを作成する場合、手書きの場合と比較すると、設計済みの機種の携帯電話の形状データを今回の機種の設計に再利用したときの効果が大きいという特徴がある。つまり、一般のビジネス文書と同様に、CADシステム5上で作成した形状データも、それが過去作成した形状と同一又は類似の形状であれば、始めからその機種のための形状を作成するよりも、過去の類似形状データを呼び出して適宜修正を加えながら完成させる方が作成工数を大幅に短縮できることが知られている。このため、作成済み又は標準的な形状のデータを雛型データ(テンプレート)として登録しておき、設計者は、作成しようとする形状に最も近い形状の雛型データを呼び出して作業することが重要である。
【0029】
そこで、本発明は、前述したCADによるデータ作成の特徴を生かすため、また、製品が部品から構成されていることを踏まえ、各部品ごとに、具体的には携帯電話を構成するコネクタ、カメラ、アンテナ等ごとに、その標準的な形状データを雛型データとして、予め雛型データベース6に登録しておく。CADシステム5において別機種の携帯電話の形状を作成するときは、コネクタの作成であればコネクタの雛型データを、また、アンテナの作成であればアンテナの雛型データを、雛型データベース6から呼び出す。そして、所望の形状のコネクタタイプを選択したり、所望の形状値にあわせて雛型データの寸法値を変更したりして、携帯電話全体の形状を作成するようにする。
【0030】
図3は、雛型データベース6に記憶される雛型データ30の構成の一例を示している。図3に示すように、雛型データ30は、携帯電話の形状データ31のみならず、設計者が特定部位の作成を完成させるまでの一連の流れを定義した作成手順32を含んだ構成になっている。デフォルト値として設定した形状データ値33〜35を、定義したどの処理36〜38で使用するかが指定されているので、CADシステム5は、雛型データ30が入力されるとその部品の形状を作成手順32に従って作成できる。このデフォルト値が任意の値に変更される場合は、変更された値を用いた一連の処理36〜38が開始されて新たな部品形状が作成されることになる。なお、各部品の形状データは設計データベース7へ記憶される。
【0031】
このため、各設計者は、製品の形状を始めから作成するのではなく変更が必要な部品の形状データ31のみを指定すれば、変更後の形状を自動的に作ることが可能となる。これは、各部品を完成させるにあたって実績のある作成手順32を利用しているので、CAD形状データの品質を維持することができ、しかも自動作成されるので作成工数の低減を図ることができるようになる。
【0032】
なお、特許請求の範囲に記載した「特定部位」は、本実施形態のように基本的に製品の一部の形状を意味し、本実施形態では携帯電話を構成する各部品を指すが、特定部位が、製品自体又は本実施形態で意味する部品よりも小さな構成の部品の場合にも本発明を適用することができる。
【0033】
<設計ナビゲーションシステム1と形状データ作成システム5の連携>
ここでは、本発明の大きな特徴である、前述した設計ナビゲーションシステム1と形状データ作成システム(CADシステム)5との連携について説明する。
前述したように、設計しようとする機種に必要な設計項目を設計フローとして設計者に提示する設計ナビゲーションシステム1では、設計項目に対して部品が関連づけられている。一方、部品(特定部位)の形状を作成するCADシステム5は、部品の形状データ31及び部品を作成する一連の作成手順32を記憶した雛型データ30を用いて所望の形状を作成する。本発明は、設計ナビゲーションシステム1で提示された設計項目に関する部品を設計する場合に、CADシステム5へこの部品の情報、即ち雛型データ30を引き渡して部品形状を作成するように構成しており、雛型データ30を介して2つのシステム1,5を連携させている。
【0034】
図1に示すように、2つのシステム間の連携化を図る雛型データ30を処理するのが、雛型データ処理部3及び形状データ変更部4である。
雛型データ処理部3は、携帯電話の部品の雛型データ30がCADシステム5で作成されるとこれを雛型データベース6へ記憶できるようにし、逆に指定した雛型データ30を雛型データベース6から呼び出してCADシステム5へ出力する。また、雛型データ処理部3は、設計ナビゲーションシステム1の作業データ抽出部11により設計項目が抽出されると、部品の雛型データ30を雛型データベース6から抽出する。さらに、雛型データ処理部11は、後述する形状データ変更部4との間で雛型データ30をやり取りする。
【0035】
形状データ変更部4は、雛型データ処理部3が出力した部品の雛型データ30に設定されているデフォルト値33〜35を変更する。例えば、ある機種において特定の部品が不要であれば、その部品を消去する設定をしたり、部品の大きさを変更するための新たな部品寸法を指定したり、部品の位置(配置)を変更したりする。これにより、形状データ変更部4で変更した雛型データ30が再び雛型データ処理部3を介してCADシステム5へ送られ、CADシステム5上で変更後の部品形状を描画することが可能となる。
【0036】
次に、統合設計支援システム100の全体動作について、図2の動作フローチャートを参照しながら説明する。なお、設計作業データベース2には、作業データ登録部12により、図4に示す登録画面を用いて既に設計ツリーの基となる設計項目が記憶されているものとする。
【0037】
統合設計支援システム100は、設計ナビゲーションシステム1において、設計者から設計しようとする機種などの設計仕様を入力する(ステップ20)。なお、設計仕様として入力する情報は、機種以外の情報もあり得ることは言うまでもない。
作業データ抽出部11は、ステップ20で入力された情報を抽出条件として、設計作業データベース2から関連構造及び関連部品の抽出を行い(ステップ21)、さらに抽出した関連構造又は関連部品に該当する設計項目を抽出して、図6に示すような設計ツリーを表示装置13に表示する(ステップ22)。つまり、「関連構造及びそれに関連した設計項目」、「関連部品及びそれに関連した設計項目」、又は「関連構造、関連部品、及びこれらに関連した設計項目」の情報を設計者に提示する。同時に、作業データ抽出部11は、抽出した関連部品を雛型データ処理部3へ出力する。雛型データ処理部3は、作業データ処理部11が抽出した部品を入力する。
【0038】
なお、作業データ抽出部11が雛型データ処理部3へ出力する情報、すなわち雛型データは、関連部品であるということに限定していない。例えば、携帯電話はケース(液晶側)とカバー(背面液晶側)とが勘合されて製品形状を構成するが、この勘合形状は1つの設計項目に該当するので、関連部品そのものでない勘合形状も雛型データとして雛型データ処理部3へ出力される場合もある。
また、作業データ処理部11は、設計項目に関連した部品を特定せず雛型データ処理部3へは設計項目のみを出力し、雛型データ処理部3が設計作業データベース2から関連する部品を特定するようにしてもよい。
【0039】
次に、雛型データ処理部3は、特定された部品の雛型データ30を雛型データベース6から呼び出す(ステップ23)。そして、この雛型データ30をCADシステム5へ出力する。
【0040】
雛形データ30を変更しないで、デフォルトとして設定されている値で形状を作成する場合、CADシステム5は、雛型データ処理部3より入力した雛型データ30に記憶された部品作成の作成手順36〜38に従って、形状データ(デフォルト値)33〜35を用いて、設計者の操作を介入することなく自動的に部品を作成する。例えば、図3は、3つの形状データと3つの処理手順により部品を作成できるときの雛型データ30を示している。3つの形状データであるx,y,zにはそれぞれデフォルト値33〜35が設定されている。そして、3つの処理36〜38は、処理1→処理2→処理3の順に各処理を実行すべきことを示し、かつ各処理に使用する形状データを指定している。具体的には、まず、処理1でx=150を使用し、次に処理2でy=280を使用し、次に処理3でx=150及びz=45を使用して部品の形状が完成する。本来、各設計者が3つの処理内容をCADシステム5で操作しなければならないところ、予め記憶されている作成手順により常に同一の操作が行われることになる。CADシステム5は、部品の形状を作成するとこれを表示装置53に出力する(ステップ26)。
【0041】
これに対して、雛形データ30の形状デー31を変更して新たな形状を作成する場合について説明する。ステップ23までは前述した手順と同じである。ステップ24の判断において形状データ31の変更を行うので、ステップ25へ進む。形状データ変更部4は、雛型データ30に設定されている形状データ31のデフォルト値33〜35を設計者の指示に応じて変更する。ここで、形状データ変更部は、図7〜9に示すような形状データ変更一覧(以下、スペックシートと称する)を表示装置13のモニタ画面に表示する。
【0042】
図7は、配置に関するスペックシートの画面例である。スペックシート中央には携帯電話の前面、下面、及び側面の概略図が示されている。そして各主要な部品にはそれぞれの名称とともにx,y,z方向の位置データが表示される。各部品の配置を変更したい場合、名称の左側にあるチェックボタンにレ印を記して指定し、必要に応じて所望の位置データに変更する。画面右下には、雛型データ30のデフォルト値が表示される。
なお、図7には示していないが、各部品の位置変更の他に部品を削除することを指定するチェックボタンを設け、当該チェックボタンにレ印が記されるとその部品が消去されるようにしてもよい。
【0043】
図8は、携帯電話に組み込まれるコネクタに関するスペックシートの画面例である。本スペックシートは、コネクタに関する規格又は条件について複数のコネクタメーカの製品を比較した一覧表を示している。例えば、A社のコネクタからD社のコネクタに変更したい場合、D社のコネクタが表示された絵の上部にあるチェックボタンにレ印を記せば、D社のコネクタを使用した形状データを作成することができる。
【0044】
同様に、図9は、携帯電話に組み込まれるアンテナに関するスペックシートの画面例である。本スペックシートも、アンテナに関する規格又は条件について複数のアンテナメーカの製品を比較した一覧表を示している。例えば、左から2番目のアンテナにレ印を記すことによって、短いシングルのアンテナを使用した形状データを作成することができる。
【0045】
次に、ステップ25で、CADシステム5は、ステップ24で指定したスペックシートの形状データに基づき変更後の部品形状を作成する。このとき、雛型データ30で設定されていた形状データ31のデフォルト値33〜35が、スペックシートで変更された値に置き換わる。そして、前述した雛型データ30に記憶されている部品作成の各処理36〜38は、この置き換わった値を使って、その作成手順どおりに変更後の部品を作成する。
【0046】
図10は、形状データ変更前の携帯電話をCADシステムで作成したときの画面例であり、図11は、スペックシートによって、カメラの追加指定及びA社からD社のコネクタに変更するように指定したときの形状データ変更後の画面例である。なお、図11では、カメラを追加する前、及びコネクタを変更する前の形状と比較するために、それぞれの部分の拡大図を挿入している。
【0047】
なお、前述した雛形データ30を変更せずに形状を作成する場合も、デフォルト値33〜35が表示されたスペックシートを設計者に提示して、設計者から「OK」の入力を得てから、雛型データ30に記憶されている処理手順32に従った形状作成を行うようにしてもよい。
【0048】
また、設計者がスペックシートに変更後の形状データを指定する際、入力ミスや勘違いで不適切に大きな又は小さな値を入力してしまう可能性もある。これを防止するために、図7に示すようなスペックシートでの各形状データ値に上限及び下限の制限値を設定しておくようにする。その結果、形状データ変更部4は、この制限値を超える値が入力された場合は、不適切なデータ値である旨を表示装置13のモニタ画面に表示し、設計者に再入力を促すようにしてもよい。
また、本実施形態では、雛型データ30を雛型データベース6に記憶するようにしたが、雛型データベース6と設計データベース2を一体化したデータベースに雛型データ30を記憶するようにしてもよい。
【0049】
本実施形態の統合設計支援システム100によれば、雛型データ30に基づく部品形状の作成が可能であるため、部品形状を作成するための高品質な既存CADデータを活用することができる。特に、データを変更することが容易な様式を持つスペックシートが設計者に提示され、このスペックシート上で変更値を指定すればCADシステム5上で形状データ30が直接変更されるようになっているので、設計者はCADシステム5で形状変更のための操作を一切行う必要がない。これにより、部品形状を作成するのに要する作業工数を大幅に短縮することができる。
さらに、CADシステム5の操作に不慣れな設計者の場合、本来、ある特定の作成手順に従ったCADデータ構造を構築すべきところ、CAD操作のミスによってCADデータ構造が不適切に変更されてしまう恐れがあっが、本実施形態の統合設計支援システム100によれば、作成手順32が変更されることはないのでCADデータの本質的な構造は不変のままにすることができ、設計の品質を一定に維持することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
本実施形態の統合設計支援システムは、形状データ変更部4により形状データ31が変更された場合、この変更後の形状データを設計データベース7に追加的に記憶することを特徴とする。これを概念的に示したのが図12及び図13である。
図12に示すように、機種Aを新規に設計する場合、設計者は、設計作業データベース2から「雛型」データ、「雛型の」スペックシート、及び「雛型の」設計フローに関する情報を呼び出して機種Aを設計する。機種Aの設計が終了すると、「機種Aの」製品データ、「機種Aの」スペックシート、及び「機種Aの」設計フローは、設計データベース7へ記録される。また、図13に示すように、機種Bを新規に設計する場合は、前述した機種Aと同様であるが、機種Aと類似、派生、又は流用関係にある機種A’を設計する場合は、設計者は、設計データベース7から「機種Aの」製品データ、「機種Aの」スペックシート、及び「機種Aの」設計フローに関する情報を呼び出して機種Bを設計する。そして、機種Aの製品データとは別に、機種B又は機種A’の製品データを設計データベース7へ追加的に登録する。さらに、機種B又は機種A’の雛型データを雛型データベース6へ追加的に登録する。
【0051】
また、製品によっては機種が異なっても使用される部品の構成や形状が殆ど変化しないものがある。このような場合、各部品を組立てて製品を構築するという考え方よりも、すべての又は多数の部品をセットにして扱うことの方が好都合な場合がある。そこで、各部品のスペックシート又は雛型データを一括して操作できるようにして前述した方法でCADシステム5との連携が図れるようにしてもよい。なお、データ解析部52は、CADシステム5の外部に存在するように構成してもよい。
【0052】
さらに、別の実施形態において、統合設計支援システムは、構造解析、熱解析、故障解析(信頼性解析)、振動解析、及び配置解析など部品について様々な解析を行うことにより部品の性能評価が可能なデータ解析部52をCADシステム5内に備え、データ解析部52による解析結果を基に形状データの最適化を図り、その形状データを雛型データ処理部3及び設計ナビゲーションシステム1で処理することができる構成になっている。
【0053】
また、前述した説明では、設計ナビゲーションシステム1と、CADシステム5と、両システムを連携する構成2〜4とが、統合設計支援システム100というサーバにおいて一体として機能する例を示したが、必ずしもこれに限る構成である必要はない。例えば、クライアント/サーバシステムにおいて、1つのシステム(例えば、設計ナビゲーションシステム1)をサーバに置き、別のシステム(例えば、CADシステム5)をクライアントにおいたクライアント/サーバシステムとして構築してもよく、更にクライアントのみまたはサーバのみに前述した処理が行えるように構成してもよい。
【0054】
さらに、図14は、前述したスペックシートの構成とは異なるスペックシート例を示したものである。本スペックシートの場合、変更したい部品の形状データ箇所を容易に特定し、所望の値に変更することができる。このように、本発明においてスペックシートを用いた形状データ変更のための入力インタフェースは部品形状によって様々であり、本実施形態で示した例に限るものではない。
【0055】
なお、前述した内容はあくまでも本発明の技術思想を説明するための一例であってこれらに限定されることはなく、本発明の技術思想を実現するにあたり、本発明の技術分野における通常の知識を有する者が、統合設計支援システムの各構成や雛型データの定義の方法を追加・変更しても本発明の根本的な技術思想は不変であることには変わりはないことは明らかである。
【0056】
また、本発明の目的は、前記実施形態の統合設計支援システム100の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読みだして実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0057】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が本実施の形態の機能を実現することとなり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体及び当該プログラムコードは本発明を構成することとなる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。
【0058】
また、コンピュータが読みだしたプログラムコードを実行することにより、本実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって本実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態である統合設計支援システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】統合設計支援システムの全体の動作フローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態である雛型データの構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態の設計ナビゲーションシステムにおいて、設計ツリーの基となる設計項目に関連した部品を登録するためのユーザインタフェース画面例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態の設計ナビゲーションシステムにおいて、設計ツリーの基となる設計項目及びその属性を登録するためのユーザインタフェース画面例を示す図である。
【図6】設計作業データベースから抽出した設計項目をモニタ画面に出力した一例を示す図である。
【図7】形状データを変更するためのデータ変更一覧(スペックシート)の一例を示す図である。
【図8】形状データを変更するためのデータ変更一覧(スペックシート)の一例を示す図である。
【図9】形状データを変更するためのデータ変更一覧(スペックシート)の一例を示す図である。
【図10】形状データ変更前の携帯電話をCADシステムで作成したときの画面例を示す図である。
【図11】データ変更一覧(スペックシート)によって、カメラを追加し、且つコネクタを変更するように指定したときの形状データ変更後の画面例を示す図である。
【図12】形状データを変更する際、雛型データ等がデータベースに登録される様子を概念的に示した図である。
【図13】形状データを変更する際、雛型データ等がデータベースに登録される様子を概念的に示した図である。
【図14】形状データを変更するためのデータ変更一覧(スペックシート)の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 設計ナビゲーションシステム
2 設計作業データベース
3 雛型データ処理部
4 形状データ変更部
5 形状データ作成部
11 作業データ抽出部
12 作業データ登録部
13 表示装置
30 雛型データ
31 形状データ
32 処理手順
33 形状データXのデフォルト値
34 形状データYのデフォルト値
35 形状データZのデフォルト値
36 処理1
37 処理2
38 処理3
41 部品名入力欄
42 部品情報欄
51 CADソフトウェア
52 データ解析部
53 表示装置
55 設計項目
56 設計項目一覧
57 「親情報」欄
58 「必要条件」欄
59 「追加」ボタン
100 統合設計支援システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の設計作業に関係するデータを蓄積した第1の記憶手段と、
前記製品の形状を特定部位ごとに作成する形状データ作成手段と、
前記形状データ作成手段により作成された前記特定部位形状の全部又は一部の形状データ及び当該特定部位形状の作成手順を、前記特定部位の雛型データとして第2の記憶手段に記憶するとともに呼び出せるようにする雛型データ処理手段と、
前記第1の記憶手段に蓄積された設計作業データから特定の設計作業データを所定の条件により絞り込んで抽出する作業データ抽出手段と、
前記作業データ抽出手段により抽出された設計作業データに関係する前記特定部位の雛型データの全部又は一部の形状データを変更する形状データ変更手段とを備え、
前記形状データ作成手段は、前記形状データ変更手段により変更された新たな形状データに基づいて前記製品の特定部位を再作成することを特徴とする設計支援システム。
【請求項2】
前記形状データ変更手段による形状変更は、前記特定部位に含まれる任意の形状を消去する設定を選択的に含んでいることを特徴とする請求項1に記載の設計支援システム。
【請求項3】
前記第1の記憶手段は、前記製品の設計仕様、前記設計仕様に関連する機構又は構造、前記機構又は構造に関連する構成部品、これらに関する設計項目、及びこれらの相互関係を含むデータを記憶し、
前記作業データ抽出手段は、少なくとも前記製品の機種を絞り込み条件の1つにしながら前記データの相互関係に基づいて前記設計項目を抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載の設計支援システム。
【請求項4】
前記形状データ作成手段は、形状を作成していく操作を一連の作成手順として予め記述又は記憶しておくことが可能な任意のCADソフトウェアツールであり、既に作成した形状と同一、近似、又は相似の関係にある形状を作成する際は、前記一連の作成手順を基にして自動的に行うことが可能な自動作成機能を有し、
前記形状データ変更手段により前記雛型データの形状データが変更された場合、前記自動作成機能を利用して前記製品の形状を再作成することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の設計支援システム。
【請求項5】
前記形状データ変更手段により変更された雛型データを、前記製品に関して類似、派生、又は流用関係にある機種のための既に設定済みの雛型データとして前記第2の記憶手段に追加的に蓄積することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の設計支援システム。
【請求項6】
前記特定部位に関する任意の性能評価を行うデータ解析手段を有し、又は前記形状データ作成手段が前記データ解析手段を含み、
前記データ解析手段による解析結果が、前記形状データ変更手段で設定する形状データに反映されることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の設計支援システム。
【請求項7】
製品の設計作業に関係するデータを第1の記憶媒体に蓄積した記憶工程と、
前記製品の形状を特定部位ごとに作成する形状データ作成工程と、
前記形状データ作成工程で作成された前記特定部位形状の全部又は一部の形状データ及び当該特定部位形状の作成手順を、前記特定部位の雛型データとして第2の記憶手段に記憶するとともに呼び出せるようにする雛型データ処理工程と、
前記記憶工程で前記第1の記憶媒体に蓄積された設計作業データから特定の設計作業データを所定の条件により絞り込んで抽出する作業データ抽出工程と、
前記作業データ抽出工程で抽出された設計作業データに関係する前記特定部位の雛型データの全部又は一部の形状データを変更する形状データ変更工程とを備え、
前記形状データ作成工程は、前記形状データ変更工程で変更された新たな形状データに基づいて前記製品の特定部位を再作成することを特徴とする設計支援方法。
【請求項8】
前記形状データ変更工程での形状変更は、前記特定部位に含まれる任意の形状を消去する設定を選択的に含んでいることを特徴とする請求項7に記載の設計支援方法。
【請求項9】
前記記憶工程は、前記製品の設計仕様、前記設計仕様に関連する機構又は構造、前記機構又は構造に関連する構成部品、これらに関する設計項目、及びこれらの相互関係を含むデータを前記第1の記憶媒体に記憶し、
前記作業データ抽出工程は、少なくとも前記製品の機種を絞り込み条件の1つにしながら前記データの相互関係に基づいて前記設計項目を抽出することを特徴とする請求項7又は8に記載の設計支援方法。
【請求項10】
前記形状データ作成工程は、形状を作成していく操作を一連の作成手順として予め記述又は記憶しておくことが可能な任意のCADソフトウェアツール上で実行され、既に作成した形状と同一、近似、又は相似の関係にある形状を作成する際は、前記一連の作成手順を基にして自動的に行うことが可能な自動作成機能を実行し、
前記形状データ変更工程で前記雛型データの形状データが変更された場合、前記自動作成機能を利用して前記製品の形状を再作成することを特徴とする請求項7〜9の何れか1項に記載の設計支援方法。
【請求項11】
前記形状データ変更工程で変更された雛型データを、前記製品に関して類似、派生、又は流用関係にある機種のための既に設定済みの雛型データとして前記第2の記憶媒体に追加的に蓄積することを特徴とする請求項7〜10の何れか1項に記載の設計支援方法。
【請求項12】
前記特定部位に関する任意の性能評価を行うデータ解析工程を有し、又は前記形状データ作成工程が前記データ解析工程を含み、
前記データ解析工程での解析結果が、前記形状データ変更工程で設定する形状データに反映されることを特徴とする請求項7〜11の何れか1項に記載の設計支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−18461(P2006−18461A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194216(P2004−194216)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(500142073)株式会社インクス (51)
【Fターム(参考)】