設計支援プログラム及び設計支援方法
【課題】記録媒体搬送用シミュレーション用の計算モデルを効率的に作成する設計支援プログラム及び設計支援方法を提供する。
【解決手段】コンピュータ援用設計で作成した2次元断面モデルを読み込む断面形状入力手順11と、記録媒体が通過する軌跡情報を保持する媒体軌跡情報保持手順12と、記録媒体の軌跡近傍の部材を認識させる部材認識手順13と、認識された部材以外を接触計算対象から外した新たなシミュレーションモデルを作成する搬送経路モデル作成手順14とを、コンピュータに実行させる。
【解決手段】コンピュータ援用設計で作成した2次元断面モデルを読み込む断面形状入力手順11と、記録媒体が通過する軌跡情報を保持する媒体軌跡情報保持手順12と、記録媒体の軌跡近傍の部材を認識させる部材認識手順13と、認識された部材以外を接触計算対象から外した新たなシミュレーションモデルを作成する搬送経路モデル作成手順14とを、コンピュータに実行させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援プログラムに関し、特にシート状部材の搬送経路の最適設計を行うために好適に利用可能な設計支援プログラム及び設計支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送経路の設計において、実際に物を作る前からさまざまな条件で設計物の機能を検討することは、試作品の製造、試験に要する工数を低減でき、開発期間及び費用を低減できるため好ましい。搬送経路内の紙の挙動をシミュレーションする技術として、記録媒体の有限要素法を用いたものが知られている。
【0003】
即ち、有限要素で表現し、搬送経路内のガイドやローラとの接触判断を行ない、運動方程式を数値的に解くことで記録媒体のガイドとの搬送抵抗や当接角を評価する設計支援プログラムが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
記録媒体の運動の求解は、有限要素又は質量−バネ系で離散的に表現された記録媒体の運動方程式を立てる。そして、解析対象時間を有限の幅を持つ時間ステップに分割して、時間0から時間ステップ毎に未知数である加速度、速度、変位を順次求める数値時間積分により達成される。これは、ニューマークのβ法、ウイルソンのθ法、オイラー法、Kutta-merson法などが広く知られている(非特許文献1)。
【0005】
このようなシミュレーションを行うにあたり、搬送経路を2次元平面上に、直線、円弧、スプライン曲線を含む線分で描画し、搬送経路を作成している(特許文献3参照)。
また、CAD(Computer−Aided Design;コンピュータ援用設計)で作成された形状データをシミュレーション用データに変換するものがある。この場合、ユーザーが接触定義、物性値入力を含むシミュレーション条件定義を行い、シミュレーションモデルを作成するためのプリ処理を行うアプリケーションが普及している。
更に、シミュレーションの負荷を軽減するため、シミュレーションに不要な穴やフィレットを削除するモデル作成技術が提案されている(特許文献4)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−195052号公報
【特許文献2】特開平11−116133号公報
【特許文献3】特開2004−258774号公報
【特許文献4】特開2000−331194号公報
【非特許文献1】Katsuhito Sudoh ,「Modeling a String from Observing the Real Object」 Proc. of Int. Conf. on Virtual Systems and Multimedia (VSMM2000), pp. 544-553 , (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような設計支援プログラムは、記録媒体を有限個の要素又は質量に分割し、1要素又は1質量と搬送経路を形成する1線分との接触計算により、記録媒体と搬送ガイドとの反力を発生させ、搬送経路内の記録媒体の複雑な挙動を再現している。
接触の計算は、数値時間積分の時間ステップごとに毎回行うことになり、記録媒体の要素又は質点の数、及び搬送経路を形成する線分の数が多いほど、数値時間積分での計算負荷が大きくなり、計算時間がかかってしまう問題があった。
【0008】
3次元CAD図面から主断面に投影した2次元モデルを作ると、紙搬送に関わらない不要な部品を多く含むものとなってしまう。その線分数は一般的な複写機で5000を超える。そのようなモデルでは挙動計算に10時間以上を必要し、設計ツールとしての要求を満たさないものとなる。そのため記録媒体が接触しない部品は、計算モデル上から削除しておくことが望ましい。
【0009】
しかし、3次元CADによる設計図面から、記録媒体搬送シミュレーション用モデルを作成するには、ユーザーが記録媒体と接触する部位を判断して、それ以外を消去するという作業を手動で行う必要がある。この作業は図面の規模が大きくなると非常に負荷が大きくなり、且つ正確性に欠けるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するため、記録媒体搬送用シミュレーション用の計算モデルを効率的に作成する設計支援プログラム及び設計支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明による設計支援プログラムは、シート状の記録媒体が搬送経路内を搬送されていく挙動をシミュレーションすることで、前記搬送経路の設計を支援する設計支援プログラムであって、コンピュータ援用設計で作成した2次元断面モデルを読み込む断面形状入力手順と、前記記録媒体が通過する軌跡情報を保持する媒体軌跡情報保持手順と、前記記録媒体の軌跡近傍の部材を認識させる部材認識手順と、認識された前記部材以外を接触計算対象から外した新たなシミュレーションモデルを作成する搬送経路モデル作成手順とを、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザーが手動で行っていたCAD図面から記録媒体搬送シミュレーションに必要な部分だけを抽出でき、モデル規模、計算負荷を削減する作業を自動化できる。そして、一般的な複写機では、2次元設計図面に5000以上の線分が存在するが、搬送に必要な線分100個を自動抽出することで、計算速度は10〜50倍になることが期待できる。
【0013】
本発明によれば、記録媒体搬送シミュレーション用のモデル作成の最初のステップとなる記録媒体の軌跡情報を自動で作成できる。そして、ローラ対を基にした通過ポイントだけでは正しい記録媒体の軌跡が作成できない場合は、ユーザーがフレキシブルに軌跡の形状を作り変えることができる。
また、本発明によれば、記録媒体の搬送シミュレーションに記録媒体と接触する可能性のある、記録媒体が通過する付近の部材を自動抽出することができる。
【0014】
本発明によれば、記録媒体の搬送シミュレーションに記録媒体と接触する可能性のある、記録媒体が通過する付近の部材を自動抽出することができる。
本発明によれば、搬送経路幅が一定でなく、不連続である場合を含む様々な形状に対応して、無駄なく記録媒体軌跡付近の部材を抽出することができる。
本発明によれば、ユーザーが媒体軌跡認識手順により抽出された部材を確認でき、抽出に不備がある場合、再び媒体軌跡認識手順に戻り、抽出をやり直し、所望の搬送経路モデルを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照し具体的に説明する。
図1は本発明のCAD(コンピュータ援用設計)のブロック構成図である。このCADプログラムでは、2次元断面モデルを読み込む断面形状入力手順(もしくはステップ)と、認識された部材以外を接触計算対象から外した新たなシミュレーションモデルを作成する搬送経路モデル作成手順とを、コンピュータに実行させる。
【0016】
ここで、本発明の設計支援プログラムを実行するハードウェア構成につき、説明する。図16は本発明の設計支援プログラムを適用できる情報処理装置(設計支援装置)100のハードウェアの概略構成の一例を示すブロック図である。
この情報処理装置100は、装置全体を制御する中央処理装置であるCPU101、本実施形態の各種入力条件や解析結果などを表示する表示部102、本実施形態の解析結果などを保存するハードディスクなどの記憶部103を有する。また、本実施形態の制御プログラム、各種アプリケーションプログラム、データなどを記憶するROM(リードオンリーメモリ)104を有する。また、上記制御プログラムに基づいてCPU101が各部を制御しながら処理を行うときに用いる作業領域であるRAM(ランダムアクセスメモリ)105、及びキーボード、マウスなどの入力部106等から構成されている。
【0017】
先ず、記録媒体が通過する構造を、2次元断面モデルに投影させた外部データを取り込み、平面上に描画する断面形状入力を行う。このように取り込まれた断面形状は、複数の線分の組み合わせから形成されており、搬送挙動をシミュレーションするために不必要な線分も同時に含まれている。そこで、本発明の手順を実施する。
【0018】
始めに媒体軌跡情報保持手順により、断面形状が描画されている平面上に、記録媒体が通過する軌跡情報を定義し、保持する。次に部材認識手順により、上記のように保持された軌跡情報を使って、断面形状を形成する線分が、記録媒体の軌跡の近傍であるかどうかを判断する。
【0019】
次に搬送経路モデル作成手順により、軌跡の近傍である線分以外を接触計算の対象から外し、計算負荷を軽減させた搬送経路モデルを作成する。
【0020】
図2に、記録媒体搬送シミュレーションの画面構成図の一例を示す。画面は主に手順の切り替えを行うメニューバー1、サブ構成メニュー2、定義した搬送経路や結果が表示されるグラフィカル画面3、プログラムメッセージの出力及び必要に応じ数値入力を行うコマンド欄4で構成される。
【0021】
シミュレーションは搬送経路、記録媒体を定義し、記録媒体と搬送経路が接触しながら運動計算を行っていく。基本的な搬送経路、記録媒体の作成、運動計算及び接触計算についての処理を説明する。
メニューバー1中の「搬送経路」ボタンを押すと、サブ構成メニュー2が図2に図示されるように画面の左側に所望の範囲領域を持って表示される。搬送経路は直線、曲線、スプライン曲線の組み合わせで定義され、各線分を個別に作成するか、CAD図面を所定のフォーマットに変換して読み込むことで搬送経路を作成する。サブ構成メニュー2には、部材の個別作成のための部品定義ボタン2A〜2Eの他、外部データ取り込み用のボタン2Fがある。
【0022】
ボタン2Fを押すことで、外部データ取り込み用のダイアログボックスが表示され所定の入力ファイルを選択する。グラフィック画面3には、このようにして取り込まれた断面形状が描画されている。
【0023】
図3は搬送経路の拡大図に、線分のIDを表示させたものである。搬送経路は直線、曲線の線分を組み合わせにより、複雑な形状を形成している。コマンド欄4には、現在の線分定義数が表示されている。この例では320の線分で描画されている(図2)。
【0024】
記録媒体はメニューバー1の「記録媒体」ボタンを押すことで、搬送経路同様の手法で定義される。記録媒体の配置がなされると、次に柔軟媒体を複数のバネ−質量系に離散化する。図4の実施形態では、形状選択欄2Hより直線を選択し、柔軟媒体を定義している。そして、分割法選択欄2Iより等分割を選択し、分割数を10とした場合の一例が示されている。記録媒体の物性値のヤング率、厚さ、密度は媒体選択欄2Jにより媒体種を選択することにより、内部に組み込まれたデータベースが呼び出される。
【0025】
質点41間を結ぶ回転バネ42は、柔軟媒体を弾性体と見なした際の曲げ剛性を表現し、また並進バネ43は引張り剛性を表現する。両バネ定数は弾性理論から導くことが可能である。回転バネ定数kr、並進バネ定数ksはヤング率E、幅w、厚さt及び質点間の距離ΔLを用いて以下に示される式(1)、式(2)によって与えられる。
kr=Ewt3/12ΔL,ks=Ewt/ΔL (1)
ΔL=√((x2−x1)2 +(y2−y1)2 )/n (2)
【0026】
質点の質量mは柔軟媒体の長さL、幅w、厚さt、密度ρ、分割数nとすると、以下に示される式(3)により計算される。
m=Lwtρ/(n−1) (3)
記録媒体と、搬送経路を形成する線分が定義されたら運動計算を行う。
【0027】
数値時間積分と干渉の処理は次に説明する手順に従う。運動計算は図5のフローチャートで示す。先ず、ステップ51で柔軟媒体の運動を計算する実時間T及び運動方程式の解を数値的に求める際に使用する数値時間積分の時間刻みΔtを設定する。
【0028】
以降ステップ52〜57が数値時間積分のループであり、柔軟媒体の運動は初期時間からΔt毎に計算され、記憶装置に結果が保存される。
ステップ52はΔt秒後の計算を行う際に必要な初期加速度、初期速度、初期変位を設定する。これらの値は1サイクル終わるごとにその計算結果(即ち、前回のサイクルの計算値を初期値とする)が投入される。
【0029】
ステップ53は柔軟媒体を形成する各質点に働く力を定義する。この力には回転モーメント、引張り力で表される復元力、接触力、摩擦力、重力、空気抵抗力、クーロン力があり、個々の質点に対し働く力を計算した後その合力を最終的に柔軟媒体にかかる力として定義する。
ステップ54はステップ53で求めた質点に働く力を質点の質量で除し、更に初期加速度を加算することで、Δt秒後の加速度を計算する。
同様にしてステップ55では速度を、ステップ56では変位を計算する。
【0030】
本実施形態ではステップ53〜ステップ56の一連のΔt秒後の物理量計算にEulerの時間積分手法を採用しているが、Kutta-merson、Newmark-β法、Willson-θ法等、他の時間積分手法を採用しても良い。ステップ57では計算時刻がステップ51で設定した実時間Tに到達したか否かを判断し、到達していれば運動計算手順を終了する。到達していない場合は再度ステップ52に戻り時間積分を繰り返す。
【0031】
ステップ53の接触力を計算する方法を説明する。接触力を計算するには、記録媒体の質点と、部材が干渉したかどうかをチェックする。そのため、運動計算のフローの中で部材と質点との距離を計算する必要がある。
【0032】
図6は、接触力計算のフローである。部材と質点との距離計算には、部材の数と質点の数の回数、繰り返し処理を行うことになる。しかし、部材の総数×質点の総数の繰り返し処理は、負荷が多大なものとなるため、部材と記録媒体がある閾値を超えて接近したときに、距離計算をはじめるという2段階の処理で行う。
【0033】
ステップ61では、搬送経路を形成する1線分が、記録媒体と近接したかを判断する。この最初の距離チェックは、図7に示すように部材70を囲む領域71を定義し、同様に記録媒体全体を囲む領域72と重なることを判定する内部処理により実現している。この近接チェックは、他にも図8のように空間を領域で分割し、1つの領域81に記録媒体と部材70が存在しているかどうかで、判断する領域分割法など、様々な手法が提案されている。
【0034】
ステップ61の近接チェックで、記録媒体と部材が近接したと判断された場合は、ステップ62に移り、質点と詳細な距離計算を行う。距離が縮まり、マイナスになったときに干渉を判定し、接触力を発生させる。
【0035】
図9に部材と質点の距離を計算し、干渉したときに質点を部材から押し戻す力を発生させる一例を示す。質点91が、搬送経路の部材92と干渉したとき、重なった分だけ押し戻す力を規定するバネ93が定義される。このような計算を全質点の数繰り返す。
1つの部材について全質点との距離計算が終了したら、再びステップ61に戻り、全部材の処理が終わるまで、繰り返すことになる。
【0036】
このような運動計算と接触計算の負荷の軽減のため、シミュレーションモデルを作成する際、距離計算に不要な、記録媒体から遠い部材を削減し、部材の数をできるだけ減らしておく。そのための手順を図2のように3DのCADから2次元断面上に投影された2D図面が変換して読み込まれている状態から説明する。
【0037】
始めに媒体軌跡情報保持手順を実行する。コンピュータは形状が読み込まれると自動的に、媒体軌跡を定義するための通過ポイントとなる搬送ローラ対の接点(ニップ)を判定する。搬送ローラを特定するには、読み込まれた線分の集合の中から、円の属性を持っている部材を検索する。特定された搬送ローラが2対接している場合、その搬送ローラ同士の接点の座標情報を通過ポイントとして取得し、保持する。
【0038】
図10は、検索された搬送ローラを囲む枠101がハイライト表示され、更に搬送ローラ対の接点の座標102をグラフィック画面上にマーキングした例である。図10のような搬送経路では、正しい搬送経路を作成するのに、点の数が不足している。そこで次に、搬送ローラ対の接点以外に任意の点を定義する。図11のボタン2Gを押すことで、グラフィック画面上から、任意の点をピックできるようになるので、記録媒体の軌跡が通る点をユーザーがピックする。
【0039】
グラフィック画面上にはユーザーがピックした点111がマーキングされている。ピックが終了したら、座標をつないで軌跡を作成することを促すメッセージが表示される。
曲線110はこのようにして定義したマーカーをつなぐことによって定義された記録媒体の軌跡を示す。
【0040】
記録媒体軌跡が定義されたら、次に記録媒体と接触する可能性のある搬送ガイドを抽出する。軌跡が定義されたら、図12のボタン2K、ボタン2Lが表示される。ボタン2Kを押すと、記録媒体軌跡を中心にしてその上下に平行線121が表示される。このとき、コマンド入力欄4にユーザー所望の数値を入力することで、媒体軌跡から平行線までの距離を調整できる。図12では、一例として10mmが入力されている。平行線に挟まれた領域を抽出領域とする。そして、この抽出領域内にある部材の情報を抽出する。
【0041】
媒体の軌跡近傍を抽出するために次の方法を取ることもできる。ボタン2Lを押すと、図13に示すように、媒体軌跡を分割し、サンプリング点を定義する。このとき、コマンド入力欄4にユーザー所望の値を入力することで、サンプリング間隔を調整できる。
図13では一例として5mmが入力されている。コンピュータはこのサンプリング点に対して、法線ベクトル130を定義し、法線ベクトルと最初に交わる部材情報を抽出する。搬送経路がふくらみを有し、幅が等間隔ではない場合、平行線で定義する抽出領域では必要な部材を抽出できない場合がある、また、抽出領域を広く設定しすぎると、不要な部材を多く抽出してしまい無駄が多くなる。
【0042】
法線ベクトルを利用する方法でも、経路が不連続になっている場合に記録媒体と接触しない遠い部材を抽出してしまい、無駄が生じることがある。そこで2種類の方法を併用して、それら両条件を同時に満たす部材を抽出することで、無駄なく抽出できる。
【0043】
図14では、このようにして特定された部材がハイライトされ、不要な部材と区別している。ユーザーはハイライトされた部材を確認し、過不足が無いかを判断する。過不足があった場合は図12あるいは図13で説明した抽出パラメータの調整を所望の部材が認識されるまで繰り返す。
最後にハイライトされていない部分は、図6のフロー図のステップ61にある、距離判断のループから除外した新規のモデルファイルを作成し、出力する。
【0044】
図15に不要部材を非表示にした計算ファイルを示す。コマンド欄4で部材数320のうち、接触部材として抽出されたのが、50個であることを示している。このように計算モデルを作成することで、計算の負荷を大きく軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明におけるシミュレーションモデル作成プログラムに係るフローチャートである。
【図2】本発明における搬送経路定義の画面構成を説明する図である。
【図3】本発明における搬送経路の拡大図である。
【図4】本発明における記録媒体定義の画面構成を説明する図である。
【図5】本発明における運動計算の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明における接触計算の例を示すフローチャートである。
【図7】本発明における部材と記録媒体の近接関係チェックを説明する図である。
【図8】本発明における部材と記録媒体の近接関係チェックを説明する図である。
【図9】本発明における記録媒体と部材の接触力計算を説明する図である。
【図10】本発明におけるローラ対接点座標情報取得を説明する図である。
【図11】本発明における記録媒体の軌跡作成を説明する図である。
【図12】本発明における抽出領域による部材認識手順を説明する図である。
【図13】本発明における法線ベクトルによる部材認識手順を説明する図である。
【図14】本発明における抽出された部材のハイライトを説明する図である。
【図15】本発明における搬送経路モデル作成手順を説明する図である。
【図16】本発明における設計支援プログラムを実行するハードウェア構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
1:メニューバー
2:サブ構成メニュー
2A:ローラ対定義ボタン
2B:ローラ定義ボタン
2C:直線ガイド定義ボタン
2D:円弧ガイド定義ボタン
2E:スプラインガイド定義ボタン
2F:外部データ読み込みボタン
2G:軌跡を作成する通過点定義ボタン
2H:形状選択画面
2I:分割方法選択画面
2J:媒体種選択画面
2K:抽出領域定義ボタン
2L:法線ベクトル定義ボタン
41:質点
42:回転バネ
43:並進バネ
70:搬送ガイドを形成する部材
71:部材を囲む領域
72:記録媒体を囲む領域
81:部材と記録媒体が共存する領域
91:質点
92:部材
93:接触力を規定するバネ
101:認識されたローラを示すマーカー
102:ローラ対の接点(ニップ)を表すマーカー
110:記録媒体軌跡
111:軌跡を定義する通過点
121:記録媒体軌跡の平行線
122:抽出領域
130:軌跡のサンプリング点の法線ベクトル
141:ハイライトされた部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援プログラムに関し、特にシート状部材の搬送経路の最適設計を行うために好適に利用可能な設計支援プログラム及び設計支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送経路の設計において、実際に物を作る前からさまざまな条件で設計物の機能を検討することは、試作品の製造、試験に要する工数を低減でき、開発期間及び費用を低減できるため好ましい。搬送経路内の紙の挙動をシミュレーションする技術として、記録媒体の有限要素法を用いたものが知られている。
【0003】
即ち、有限要素で表現し、搬送経路内のガイドやローラとの接触判断を行ない、運動方程式を数値的に解くことで記録媒体のガイドとの搬送抵抗や当接角を評価する設計支援プログラムが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
記録媒体の運動の求解は、有限要素又は質量−バネ系で離散的に表現された記録媒体の運動方程式を立てる。そして、解析対象時間を有限の幅を持つ時間ステップに分割して、時間0から時間ステップ毎に未知数である加速度、速度、変位を順次求める数値時間積分により達成される。これは、ニューマークのβ法、ウイルソンのθ法、オイラー法、Kutta-merson法などが広く知られている(非特許文献1)。
【0005】
このようなシミュレーションを行うにあたり、搬送経路を2次元平面上に、直線、円弧、スプライン曲線を含む線分で描画し、搬送経路を作成している(特許文献3参照)。
また、CAD(Computer−Aided Design;コンピュータ援用設計)で作成された形状データをシミュレーション用データに変換するものがある。この場合、ユーザーが接触定義、物性値入力を含むシミュレーション条件定義を行い、シミュレーションモデルを作成するためのプリ処理を行うアプリケーションが普及している。
更に、シミュレーションの負荷を軽減するため、シミュレーションに不要な穴やフィレットを削除するモデル作成技術が提案されている(特許文献4)。
【0006】
【特許文献1】特開平11−195052号公報
【特許文献2】特開平11−116133号公報
【特許文献3】特開2004−258774号公報
【特許文献4】特開2000−331194号公報
【非特許文献1】Katsuhito Sudoh ,「Modeling a String from Observing the Real Object」 Proc. of Int. Conf. on Virtual Systems and Multimedia (VSMM2000), pp. 544-553 , (2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような設計支援プログラムは、記録媒体を有限個の要素又は質量に分割し、1要素又は1質量と搬送経路を形成する1線分との接触計算により、記録媒体と搬送ガイドとの反力を発生させ、搬送経路内の記録媒体の複雑な挙動を再現している。
接触の計算は、数値時間積分の時間ステップごとに毎回行うことになり、記録媒体の要素又は質点の数、及び搬送経路を形成する線分の数が多いほど、数値時間積分での計算負荷が大きくなり、計算時間がかかってしまう問題があった。
【0008】
3次元CAD図面から主断面に投影した2次元モデルを作ると、紙搬送に関わらない不要な部品を多く含むものとなってしまう。その線分数は一般的な複写機で5000を超える。そのようなモデルでは挙動計算に10時間以上を必要し、設計ツールとしての要求を満たさないものとなる。そのため記録媒体が接触しない部品は、計算モデル上から削除しておくことが望ましい。
【0009】
しかし、3次元CADによる設計図面から、記録媒体搬送シミュレーション用モデルを作成するには、ユーザーが記録媒体と接触する部位を判断して、それ以外を消去するという作業を手動で行う必要がある。この作業は図面の規模が大きくなると非常に負荷が大きくなり、且つ正確性に欠けるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するため、記録媒体搬送用シミュレーション用の計算モデルを効率的に作成する設計支援プログラム及び設計支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明による設計支援プログラムは、シート状の記録媒体が搬送経路内を搬送されていく挙動をシミュレーションすることで、前記搬送経路の設計を支援する設計支援プログラムであって、コンピュータ援用設計で作成した2次元断面モデルを読み込む断面形状入力手順と、前記記録媒体が通過する軌跡情報を保持する媒体軌跡情報保持手順と、前記記録媒体の軌跡近傍の部材を認識させる部材認識手順と、認識された前記部材以外を接触計算対象から外した新たなシミュレーションモデルを作成する搬送経路モデル作成手順とを、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザーが手動で行っていたCAD図面から記録媒体搬送シミュレーションに必要な部分だけを抽出でき、モデル規模、計算負荷を削減する作業を自動化できる。そして、一般的な複写機では、2次元設計図面に5000以上の線分が存在するが、搬送に必要な線分100個を自動抽出することで、計算速度は10〜50倍になることが期待できる。
【0013】
本発明によれば、記録媒体搬送シミュレーション用のモデル作成の最初のステップとなる記録媒体の軌跡情報を自動で作成できる。そして、ローラ対を基にした通過ポイントだけでは正しい記録媒体の軌跡が作成できない場合は、ユーザーがフレキシブルに軌跡の形状を作り変えることができる。
また、本発明によれば、記録媒体の搬送シミュレーションに記録媒体と接触する可能性のある、記録媒体が通過する付近の部材を自動抽出することができる。
【0014】
本発明によれば、記録媒体の搬送シミュレーションに記録媒体と接触する可能性のある、記録媒体が通過する付近の部材を自動抽出することができる。
本発明によれば、搬送経路幅が一定でなく、不連続である場合を含む様々な形状に対応して、無駄なく記録媒体軌跡付近の部材を抽出することができる。
本発明によれば、ユーザーが媒体軌跡認識手順により抽出された部材を確認でき、抽出に不備がある場合、再び媒体軌跡認識手順に戻り、抽出をやり直し、所望の搬送経路モデルを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照し具体的に説明する。
図1は本発明のCAD(コンピュータ援用設計)のブロック構成図である。このCADプログラムでは、2次元断面モデルを読み込む断面形状入力手順(もしくはステップ)と、認識された部材以外を接触計算対象から外した新たなシミュレーションモデルを作成する搬送経路モデル作成手順とを、コンピュータに実行させる。
【0016】
ここで、本発明の設計支援プログラムを実行するハードウェア構成につき、説明する。図16は本発明の設計支援プログラムを適用できる情報処理装置(設計支援装置)100のハードウェアの概略構成の一例を示すブロック図である。
この情報処理装置100は、装置全体を制御する中央処理装置であるCPU101、本実施形態の各種入力条件や解析結果などを表示する表示部102、本実施形態の解析結果などを保存するハードディスクなどの記憶部103を有する。また、本実施形態の制御プログラム、各種アプリケーションプログラム、データなどを記憶するROM(リードオンリーメモリ)104を有する。また、上記制御プログラムに基づいてCPU101が各部を制御しながら処理を行うときに用いる作業領域であるRAM(ランダムアクセスメモリ)105、及びキーボード、マウスなどの入力部106等から構成されている。
【0017】
先ず、記録媒体が通過する構造を、2次元断面モデルに投影させた外部データを取り込み、平面上に描画する断面形状入力を行う。このように取り込まれた断面形状は、複数の線分の組み合わせから形成されており、搬送挙動をシミュレーションするために不必要な線分も同時に含まれている。そこで、本発明の手順を実施する。
【0018】
始めに媒体軌跡情報保持手順により、断面形状が描画されている平面上に、記録媒体が通過する軌跡情報を定義し、保持する。次に部材認識手順により、上記のように保持された軌跡情報を使って、断面形状を形成する線分が、記録媒体の軌跡の近傍であるかどうかを判断する。
【0019】
次に搬送経路モデル作成手順により、軌跡の近傍である線分以外を接触計算の対象から外し、計算負荷を軽減させた搬送経路モデルを作成する。
【0020】
図2に、記録媒体搬送シミュレーションの画面構成図の一例を示す。画面は主に手順の切り替えを行うメニューバー1、サブ構成メニュー2、定義した搬送経路や結果が表示されるグラフィカル画面3、プログラムメッセージの出力及び必要に応じ数値入力を行うコマンド欄4で構成される。
【0021】
シミュレーションは搬送経路、記録媒体を定義し、記録媒体と搬送経路が接触しながら運動計算を行っていく。基本的な搬送経路、記録媒体の作成、運動計算及び接触計算についての処理を説明する。
メニューバー1中の「搬送経路」ボタンを押すと、サブ構成メニュー2が図2に図示されるように画面の左側に所望の範囲領域を持って表示される。搬送経路は直線、曲線、スプライン曲線の組み合わせで定義され、各線分を個別に作成するか、CAD図面を所定のフォーマットに変換して読み込むことで搬送経路を作成する。サブ構成メニュー2には、部材の個別作成のための部品定義ボタン2A〜2Eの他、外部データ取り込み用のボタン2Fがある。
【0022】
ボタン2Fを押すことで、外部データ取り込み用のダイアログボックスが表示され所定の入力ファイルを選択する。グラフィック画面3には、このようにして取り込まれた断面形状が描画されている。
【0023】
図3は搬送経路の拡大図に、線分のIDを表示させたものである。搬送経路は直線、曲線の線分を組み合わせにより、複雑な形状を形成している。コマンド欄4には、現在の線分定義数が表示されている。この例では320の線分で描画されている(図2)。
【0024】
記録媒体はメニューバー1の「記録媒体」ボタンを押すことで、搬送経路同様の手法で定義される。記録媒体の配置がなされると、次に柔軟媒体を複数のバネ−質量系に離散化する。図4の実施形態では、形状選択欄2Hより直線を選択し、柔軟媒体を定義している。そして、分割法選択欄2Iより等分割を選択し、分割数を10とした場合の一例が示されている。記録媒体の物性値のヤング率、厚さ、密度は媒体選択欄2Jにより媒体種を選択することにより、内部に組み込まれたデータベースが呼び出される。
【0025】
質点41間を結ぶ回転バネ42は、柔軟媒体を弾性体と見なした際の曲げ剛性を表現し、また並進バネ43は引張り剛性を表現する。両バネ定数は弾性理論から導くことが可能である。回転バネ定数kr、並進バネ定数ksはヤング率E、幅w、厚さt及び質点間の距離ΔLを用いて以下に示される式(1)、式(2)によって与えられる。
kr=Ewt3/12ΔL,ks=Ewt/ΔL (1)
ΔL=√((x2−x1)2 +(y2−y1)2 )/n (2)
【0026】
質点の質量mは柔軟媒体の長さL、幅w、厚さt、密度ρ、分割数nとすると、以下に示される式(3)により計算される。
m=Lwtρ/(n−1) (3)
記録媒体と、搬送経路を形成する線分が定義されたら運動計算を行う。
【0027】
数値時間積分と干渉の処理は次に説明する手順に従う。運動計算は図5のフローチャートで示す。先ず、ステップ51で柔軟媒体の運動を計算する実時間T及び運動方程式の解を数値的に求める際に使用する数値時間積分の時間刻みΔtを設定する。
【0028】
以降ステップ52〜57が数値時間積分のループであり、柔軟媒体の運動は初期時間からΔt毎に計算され、記憶装置に結果が保存される。
ステップ52はΔt秒後の計算を行う際に必要な初期加速度、初期速度、初期変位を設定する。これらの値は1サイクル終わるごとにその計算結果(即ち、前回のサイクルの計算値を初期値とする)が投入される。
【0029】
ステップ53は柔軟媒体を形成する各質点に働く力を定義する。この力には回転モーメント、引張り力で表される復元力、接触力、摩擦力、重力、空気抵抗力、クーロン力があり、個々の質点に対し働く力を計算した後その合力を最終的に柔軟媒体にかかる力として定義する。
ステップ54はステップ53で求めた質点に働く力を質点の質量で除し、更に初期加速度を加算することで、Δt秒後の加速度を計算する。
同様にしてステップ55では速度を、ステップ56では変位を計算する。
【0030】
本実施形態ではステップ53〜ステップ56の一連のΔt秒後の物理量計算にEulerの時間積分手法を採用しているが、Kutta-merson、Newmark-β法、Willson-θ法等、他の時間積分手法を採用しても良い。ステップ57では計算時刻がステップ51で設定した実時間Tに到達したか否かを判断し、到達していれば運動計算手順を終了する。到達していない場合は再度ステップ52に戻り時間積分を繰り返す。
【0031】
ステップ53の接触力を計算する方法を説明する。接触力を計算するには、記録媒体の質点と、部材が干渉したかどうかをチェックする。そのため、運動計算のフローの中で部材と質点との距離を計算する必要がある。
【0032】
図6は、接触力計算のフローである。部材と質点との距離計算には、部材の数と質点の数の回数、繰り返し処理を行うことになる。しかし、部材の総数×質点の総数の繰り返し処理は、負荷が多大なものとなるため、部材と記録媒体がある閾値を超えて接近したときに、距離計算をはじめるという2段階の処理で行う。
【0033】
ステップ61では、搬送経路を形成する1線分が、記録媒体と近接したかを判断する。この最初の距離チェックは、図7に示すように部材70を囲む領域71を定義し、同様に記録媒体全体を囲む領域72と重なることを判定する内部処理により実現している。この近接チェックは、他にも図8のように空間を領域で分割し、1つの領域81に記録媒体と部材70が存在しているかどうかで、判断する領域分割法など、様々な手法が提案されている。
【0034】
ステップ61の近接チェックで、記録媒体と部材が近接したと判断された場合は、ステップ62に移り、質点と詳細な距離計算を行う。距離が縮まり、マイナスになったときに干渉を判定し、接触力を発生させる。
【0035】
図9に部材と質点の距離を計算し、干渉したときに質点を部材から押し戻す力を発生させる一例を示す。質点91が、搬送経路の部材92と干渉したとき、重なった分だけ押し戻す力を規定するバネ93が定義される。このような計算を全質点の数繰り返す。
1つの部材について全質点との距離計算が終了したら、再びステップ61に戻り、全部材の処理が終わるまで、繰り返すことになる。
【0036】
このような運動計算と接触計算の負荷の軽減のため、シミュレーションモデルを作成する際、距離計算に不要な、記録媒体から遠い部材を削減し、部材の数をできるだけ減らしておく。そのための手順を図2のように3DのCADから2次元断面上に投影された2D図面が変換して読み込まれている状態から説明する。
【0037】
始めに媒体軌跡情報保持手順を実行する。コンピュータは形状が読み込まれると自動的に、媒体軌跡を定義するための通過ポイントとなる搬送ローラ対の接点(ニップ)を判定する。搬送ローラを特定するには、読み込まれた線分の集合の中から、円の属性を持っている部材を検索する。特定された搬送ローラが2対接している場合、その搬送ローラ同士の接点の座標情報を通過ポイントとして取得し、保持する。
【0038】
図10は、検索された搬送ローラを囲む枠101がハイライト表示され、更に搬送ローラ対の接点の座標102をグラフィック画面上にマーキングした例である。図10のような搬送経路では、正しい搬送経路を作成するのに、点の数が不足している。そこで次に、搬送ローラ対の接点以外に任意の点を定義する。図11のボタン2Gを押すことで、グラフィック画面上から、任意の点をピックできるようになるので、記録媒体の軌跡が通る点をユーザーがピックする。
【0039】
グラフィック画面上にはユーザーがピックした点111がマーキングされている。ピックが終了したら、座標をつないで軌跡を作成することを促すメッセージが表示される。
曲線110はこのようにして定義したマーカーをつなぐことによって定義された記録媒体の軌跡を示す。
【0040】
記録媒体軌跡が定義されたら、次に記録媒体と接触する可能性のある搬送ガイドを抽出する。軌跡が定義されたら、図12のボタン2K、ボタン2Lが表示される。ボタン2Kを押すと、記録媒体軌跡を中心にしてその上下に平行線121が表示される。このとき、コマンド入力欄4にユーザー所望の数値を入力することで、媒体軌跡から平行線までの距離を調整できる。図12では、一例として10mmが入力されている。平行線に挟まれた領域を抽出領域とする。そして、この抽出領域内にある部材の情報を抽出する。
【0041】
媒体の軌跡近傍を抽出するために次の方法を取ることもできる。ボタン2Lを押すと、図13に示すように、媒体軌跡を分割し、サンプリング点を定義する。このとき、コマンド入力欄4にユーザー所望の値を入力することで、サンプリング間隔を調整できる。
図13では一例として5mmが入力されている。コンピュータはこのサンプリング点に対して、法線ベクトル130を定義し、法線ベクトルと最初に交わる部材情報を抽出する。搬送経路がふくらみを有し、幅が等間隔ではない場合、平行線で定義する抽出領域では必要な部材を抽出できない場合がある、また、抽出領域を広く設定しすぎると、不要な部材を多く抽出してしまい無駄が多くなる。
【0042】
法線ベクトルを利用する方法でも、経路が不連続になっている場合に記録媒体と接触しない遠い部材を抽出してしまい、無駄が生じることがある。そこで2種類の方法を併用して、それら両条件を同時に満たす部材を抽出することで、無駄なく抽出できる。
【0043】
図14では、このようにして特定された部材がハイライトされ、不要な部材と区別している。ユーザーはハイライトされた部材を確認し、過不足が無いかを判断する。過不足があった場合は図12あるいは図13で説明した抽出パラメータの調整を所望の部材が認識されるまで繰り返す。
最後にハイライトされていない部分は、図6のフロー図のステップ61にある、距離判断のループから除外した新規のモデルファイルを作成し、出力する。
【0044】
図15に不要部材を非表示にした計算ファイルを示す。コマンド欄4で部材数320のうち、接触部材として抽出されたのが、50個であることを示している。このように計算モデルを作成することで、計算の負荷を大きく軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明におけるシミュレーションモデル作成プログラムに係るフローチャートである。
【図2】本発明における搬送経路定義の画面構成を説明する図である。
【図3】本発明における搬送経路の拡大図である。
【図4】本発明における記録媒体定義の画面構成を説明する図である。
【図5】本発明における運動計算の例を示すフローチャートである。
【図6】本発明における接触計算の例を示すフローチャートである。
【図7】本発明における部材と記録媒体の近接関係チェックを説明する図である。
【図8】本発明における部材と記録媒体の近接関係チェックを説明する図である。
【図9】本発明における記録媒体と部材の接触力計算を説明する図である。
【図10】本発明におけるローラ対接点座標情報取得を説明する図である。
【図11】本発明における記録媒体の軌跡作成を説明する図である。
【図12】本発明における抽出領域による部材認識手順を説明する図である。
【図13】本発明における法線ベクトルによる部材認識手順を説明する図である。
【図14】本発明における抽出された部材のハイライトを説明する図である。
【図15】本発明における搬送経路モデル作成手順を説明する図である。
【図16】本発明における設計支援プログラムを実行するハードウェア構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0046】
1:メニューバー
2:サブ構成メニュー
2A:ローラ対定義ボタン
2B:ローラ定義ボタン
2C:直線ガイド定義ボタン
2D:円弧ガイド定義ボタン
2E:スプラインガイド定義ボタン
2F:外部データ読み込みボタン
2G:軌跡を作成する通過点定義ボタン
2H:形状選択画面
2I:分割方法選択画面
2J:媒体種選択画面
2K:抽出領域定義ボタン
2L:法線ベクトル定義ボタン
41:質点
42:回転バネ
43:並進バネ
70:搬送ガイドを形成する部材
71:部材を囲む領域
72:記録媒体を囲む領域
81:部材と記録媒体が共存する領域
91:質点
92:部材
93:接触力を規定するバネ
101:認識されたローラを示すマーカー
102:ローラ対の接点(ニップ)を表すマーカー
110:記録媒体軌跡
111:軌跡を定義する通過点
121:記録媒体軌跡の平行線
122:抽出領域
130:軌跡のサンプリング点の法線ベクトル
141:ハイライトされた部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の記録媒体が搬送経路内を搬送されていく挙動をシミュレーションすることで、前記搬送経路の設計を支援する設計支援プログラムであって、
コンピュータ援用設計で作成した2次元断面モデルを読み込む断面形状入力手順と、
前記記録媒体が通過する軌跡情報を保持する媒体軌跡情報保持手順と、
前記記録媒体の軌跡近傍の部材を認識させる部材認識手順と、
認識された前記部材以外を接触計算対象から外した新たなシミュレーションモデルを作成する搬送経路モデル作成手順とを、コンピュータに実行させるための設計支援プログラム。
【請求項2】
前記媒体軌跡情報保持手順において、前記コンピュータ援用設計で作成した主断面における前記搬送経路の搬送ローラ対を検索し、この搬送ローラ同士が接触する点の座標情報を取得し、それ以外に任意の座標をユーザーが定義すれば、それらの座標を結んだ曲線を前記記録媒体の軌跡として定義することを特徴とする請求項1に記載の設計支援プログラム。
【請求項3】
前記部材認識手順において、前記記録媒体の軌跡を中心に、任意の距離だけ離れた平行線に挟まれる領域を抽出領域とし、この抽出領域内にある部材の情報を抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載の設計支援プログラム。
【請求項4】
前記部材認識手順において、前記ユーザーを介して定義された前記記録媒体の軌跡をサンプリングし、そのサンプリング点に対する法線ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと最初に交わる部材の情報を抽出することを特徴とする請求項2又は3に記載の設計支援プログラム。
【請求項5】
前記部材認識手順において、前記抽出領域内にあり且つ前記法線ベクトルと最初に交わる、これら両条件を同時に満たす部材の情報を抽出することを特徴とする請求項4に記載の設計支援プログラム。
【請求項6】
前記部材認識手順により抽出された部材は、それ以外の部材と区別され、ハイライト表示させることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の設計支援プログラム。
【請求項7】
シート状の記録媒体が搬送経路内を搬送されていく挙動をシミュレーションすることで、前記搬送経路の設計を支援する設計支援方法であって、
コンピュータ援用設計で作成した2次元断面モデルを読み込む断面形状入力手順と、
前記記録媒体が通過する軌跡情報を保持する媒体軌跡情報保持手順と、
前記記録媒体の軌跡近傍の部材を認識させる部材認識手順と、
認識された前記部材以外を接触計算対象から外した新たなシミュレーションモデルを作成する搬送経路モデル作成手順と、を有する設計支援方法。
【請求項1】
シート状の記録媒体が搬送経路内を搬送されていく挙動をシミュレーションすることで、前記搬送経路の設計を支援する設計支援プログラムであって、
コンピュータ援用設計で作成した2次元断面モデルを読み込む断面形状入力手順と、
前記記録媒体が通過する軌跡情報を保持する媒体軌跡情報保持手順と、
前記記録媒体の軌跡近傍の部材を認識させる部材認識手順と、
認識された前記部材以外を接触計算対象から外した新たなシミュレーションモデルを作成する搬送経路モデル作成手順とを、コンピュータに実行させるための設計支援プログラム。
【請求項2】
前記媒体軌跡情報保持手順において、前記コンピュータ援用設計で作成した主断面における前記搬送経路の搬送ローラ対を検索し、この搬送ローラ同士が接触する点の座標情報を取得し、それ以外に任意の座標をユーザーが定義すれば、それらの座標を結んだ曲線を前記記録媒体の軌跡として定義することを特徴とする請求項1に記載の設計支援プログラム。
【請求項3】
前記部材認識手順において、前記記録媒体の軌跡を中心に、任意の距離だけ離れた平行線に挟まれる領域を抽出領域とし、この抽出領域内にある部材の情報を抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載の設計支援プログラム。
【請求項4】
前記部材認識手順において、前記ユーザーを介して定義された前記記録媒体の軌跡をサンプリングし、そのサンプリング点に対する法線ベクトルを算出し、前記法線ベクトルと最初に交わる部材の情報を抽出することを特徴とする請求項2又は3に記載の設計支援プログラム。
【請求項5】
前記部材認識手順において、前記抽出領域内にあり且つ前記法線ベクトルと最初に交わる、これら両条件を同時に満たす部材の情報を抽出することを特徴とする請求項4に記載の設計支援プログラム。
【請求項6】
前記部材認識手順により抽出された部材は、それ以外の部材と区別され、ハイライト表示させることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の設計支援プログラム。
【請求項7】
シート状の記録媒体が搬送経路内を搬送されていく挙動をシミュレーションすることで、前記搬送経路の設計を支援する設計支援方法であって、
コンピュータ援用設計で作成した2次元断面モデルを読み込む断面形状入力手順と、
前記記録媒体が通過する軌跡情報を保持する媒体軌跡情報保持手順と、
前記記録媒体の軌跡近傍の部材を認識させる部材認識手順と、
認識された前記部材以外を接触計算対象から外した新たなシミュレーションモデルを作成する搬送経路モデル作成手順と、を有する設計支援方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−9415(P2009−9415A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171044(P2007−171044)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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