診断情報取得システム、診断支援システム、診断情報取得方法、診断情報取得プログラム及び記録媒体
【課題】診断情報を簡易に取得することができる診断情報取得システム、診断支援システム、診断情報取得方法、診断情報取得プログラム及び記録媒体を提供すること。
【解決手段】毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得システムであって、前記毛細血管が分布する分布部位を撮像する撮像装置と、前記撮像手段により撮像された前記毛細血管の撮像画像を解析する解析装置とを備え、前記解析装置は、前記撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定部5711と、選択された前記測定部位における色調を取得する色調取得部572と、取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得部573とを備える。これによれば、撮像画像における毛細血管上に測定部位を設定することにより、簡易に診断情報を取得することができる。
【解決手段】毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得システムであって、前記毛細血管が分布する分布部位を撮像する撮像装置と、前記撮像手段により撮像された前記毛細血管の撮像画像を解析する解析装置とを備え、前記解析装置は、前記撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定部5711と、選択された前記測定部位における色調を取得する色調取得部572と、取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得部573とを備える。これによれば、撮像画像における毛細血管上に測定部位を設定することにより、簡易に診断情報を取得することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得システム、診断支援システム、前記診断情報取得システムを用いて行われる診断情報取得方法、診断情報取得プログラム、及び、当該診断情報取得プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、毛細血管から、当該毛細血管中を流れる血液の流速値等の情報を取得し、当該情報に基づいて、心臓疾患、火傷、肝炎及び白血病等の疾病の危険性を診断することが行われてきた。このような診断に用いられる支援システムとして、毛細血管の太さ(口径)、密度及び当該毛細血管中の流速値等の情報を取得し、各情報を分析評価して、健康状態の総合評価を行う医療支援システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の医療診断支援システムは、光源機構と、当該光源機構から供給される光を指先の爪上皮部分に照射する指先照射機構と、当該指先を固定する指先固定機構と、光が照射された爪上皮部分を拡大する光学処理機構と、拡大された爪上皮部分に係る拡大画像を撮像する撮像機構と、当該拡大画像を処理及び解析する解析機構とを備えている。そして、当該医療支援システムは、拡大画像における係蹄毛細血管の鮮明度、密度、輸入口及び輸出口の口径、輸出/輸入口径比、係蹄頂口径、係蹄長さ、捩れ血管及び奇形血管の本数、並びに、血管内の流速値を取得する。
【0004】
このうち、毛細血管の鮮明度、並びに、捩れ血管及び奇形血管の本数は、操作者が拡大画像を観察して入力し、密度は、観察者が拡大画像を観察して入力した毛細血管の本数に基づいて、解析機構が算出する。また、係蹄長さ、輸入口及び輸出口の口径、並びに、係蹄頂口径は、操作者が拡大画像内の毛細血管上の位置に、カーソル操作で印(白丸印及び黒丸印)を入力すると、それぞれの値が解析機構により算出され、この輸入口の口径及び輸出口の口径の値に基づいて、解析機構により、輸出/輸入口径比が算出される。
一方、毛細血管中の流速値については、操作者は、赤血球の流れ方向と同じ測定方向を画面上で選択又は設定し、当該方向の線上の印(白丸印)の移動が、赤血球の移動とほぼ同期する速度を、操作者が画面を観察しながら選択する。そして、当該選択された速度に基づいて、解析機構により、毛細血管中の流速値が算出される。
【0005】
そして、解析機構により、これら各データが、予め記憶した基準テーブルのデータである各数値と比較され、被験者の健康状態が、正常、軽度の異常及び重度の異常のうち、いずれであるのかが判定されて表示される。これにより、被験者の健康状態を客観的に分析することができ、医療診断支援に役立たせることができる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−325714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の特許文献1に記載の医療診断支援システムでは、例えば、毛細血管中の流速値のように、操作者の手作業による取得項目が多く、データの取得に係る操作が煩雑であるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、診断情報を簡易に取得することができる診断情報取得システム、診断支援システム、診断情報取得方法、診断情報取得プログラム及び記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するために、本発明の診断情報取得システムは、毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得システムであって、前記毛細血管が分布する分布部位を撮像する撮像装置と、前記撮像手段により撮像された前記毛細血管の撮像画像を解析する解析装置とを備え、前記解析装置は、前記撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定部と、選択された前記測定部位における色調を取得する色調取得部と、取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得部とを備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、色調取得部が取得する色調としては、所定波長を有する色の濃淡を示す階調値とすることができ、例えば、グレースケール値を例示することができる。また、解析装置としては、CPU(Central Processing Unit)等の演算手段を有するPC(Personal Computer)等を例示することができる。
【0011】
本発明によれば、測定部位設定部が、撮像装置により撮像された撮像画像中の毛細血管上に測定部位を設定し、色調取得部が当該測定部位の色調を取得し、診断情報取得部が、取得された色調の経時変化に基づいて診断情報を取得する。これによれば、毛細血管上に測定部位を設定することにより、簡易かつ非侵襲的に診断情報を取得することができる。従って、操作者の手作業を少なくすることができるとともに、手作業による診断情報の誤り発生を抑制することができるので、診断情報の信頼性を向上することができる。
【0012】
本発明では、前記測定部位設定部は、それぞれ異なる2つの測定部位を選択し、前記診断情報取得部は、前記色調取得部により取得された前記2つの測定部位に係る前記色調の経時変化のそれぞれに基づいて、前記血液の流速値を測定する流速値測定部を備えることが好ましい。
ここで、2つの測定部位は、同じ毛細血管上の異なる位置に設定されるため、毛細血管における上流側の測定部位で生じた色調変化と同様の色調変化が、下流側の測定部位でも、所定の時間差を経て再現される。このため、本発明では、流速値測定部が、撮像画像における毛細血管上に設定された2つの測定部位に係る色調の経時変化に基づいて、当該毛細血管中の血液の流速値を取得する。これによれば、前述の特許文献1に記載の医療診断支援システムのように、操作者が赤血球の移動と印の移動とを観察して、当該赤血球の移動速度を決定する煩雑さを解消することができるとともに、流速値の測定誤りを一層抑制することができる。従って、診断情報である血液の流速値を一層簡易に取得することができるだけでなく、診断情報の信頼性を確実に向上することができる。
【0013】
本発明では、前記流速値測定部は、前記2つの測定部位間の距離を算出する距離算出部と、前記2つの測定部位の前記各色調の経時変化の時間差を取得する時間差取得部と、前記距離、及び、前記時間差に基づいて、前記流速値を算出する流速値算出部とを備えることが好ましい。
本発明によれば、距離算出部により、2つの測定部位間の距離が算出され、時間差取得部により、各測定部位における色調の経時変化の時間差が取得される。そして、流速値算出部が、これら距離及び時間差に基づいて、各測定部位が設定された毛細血管中の血液の流速値を算出する。このような流速値測定部により、当該流速値を確実かつ正確に取得することができ、流速値の信頼性を一層確実に向上することができる。
【0014】
本発明では、前記測定部位設定部は、前記測定部位として、前記毛細血管上のそれぞれ同じ面積を有する領域を選択することが好ましい。
本発明によれば、毛細血管上に設定される測定部位が、それぞれ同じ面積を有しているので、それぞれの測定部位において、同じ赤血球が通過した際の色調の誤差が生じることを抑制することができる。従って、測定された流速値の信頼性をより一層向上することができる。
【0015】
本発明では、前記診断情報取得部は、前記流速値測定部により測定された前記流速値の周期変動に基づいて、心拍数を算出する心拍数算出部を備えることが好ましい。
ここで、毛細血管中の血液の流速は、心臓が拍動するごとに所定周期で変化し、拍動直後の流速値が最も高く、次の拍動の直前の流速値が最も低い。このため、心拍数算出部が、このような流速値の周期変化に基づいて心拍数を、簡易かつ正確に算出することができる。従って、診断情報としての心拍数を、簡易かつ正確に取得することができる。
【0016】
本発明では、前記診断情報取得部は、前記色調の経時変化に基づいて、前記血液に含まれる赤血球の連銭形成の有無を判定する連銭形成判定部を備えることが好ましい。
ここで、測定部位を赤血球が通過している間は、当該測定部位における色調は高くなり(濃くなり)、通過し終えると、当該色調は低く(淡く)なる。この際、血液中の赤血球が連銭形成を起こしていない場合には、各赤血球が連続して測定部位を通過するため、当該測定部位の色調は、多少の変動が見られるものの略一定の値であまり変化しない。一方、赤血球が連銭形成を起こしている場合には、複数の赤血球が塊を成して断続的に測定部位を通過するため、当該測定部位における色調の変動パターンは、高低を繰り返すこととなる。このような連銭形成が赤血球に生じている場合には、血管が詰まりやすくなり、血管壁に加わる圧力が増加したり、あるいは、血流速度(流速値)が遅くなったりして、虚血状態に陥る。
これに対し、本発明では、連銭形成判定部が、測定部位における色調の変化を判定することにより、赤血球の連銭形成の有無を判定することができる。従って、診断情報として、赤血球の連銭形成の有無を簡易に取得することができる。
【0017】
本発明では、前記診断情報取得部は、所定期間内での1つの前記測定部位に係る前記色調の経時変化を積分した総積分値を算出する総積分部と、前記所定期間内での前記1つの測定部位に係る前記色調の最大値を選択し、当該最大値と前記所定期間との積を算出する最大値積算部と、前記総積分値を前記積で除算してヘマトクリット値を算出する値算出部とを備えることが好ましい。
【0018】
本発明によれば、総積分部が、所定期間内での1つの測定部位に係る色調変化を積分することにより、当該所定期間内に測定部位を通過した赤血球の容積に対応する総積分値を算出する。また、最大値積算部が、仮に赤血球が血液の全てを占めると仮定したときに、当該血液が所定期間通過することによって生じる測定部位における色調の積算値を算出する。具体的に、最大値積算部は、当該所定期間内での1つの測定部位に係る色調の最大値を選択し、当該最大値と所定期間との積を算出する。そして、値算出部が、算出された総積分値を、算出された積で除算することにより、当該所定期間内で測定部位を通過した全血液における赤血球の容積比率であるヘマトクリット値を算出することができる。従って、診断情報として、ヘマトクリット値を簡易に取得することができる。
【0019】
本発明では、前記測定部位に近接し、かつ、前記毛細血管外の所定領域をブランク部位として設定するブランク部位設定部を備え、前記色調取得部は、前記測定部位の前記色調から、前記ブランク部位に係る色調を減算した色調を算出し、前記診断情報取得部は、前記色調取得部により算出された前記色調に基づいて、前記診断情報を取得することが好ましい。
本発明によれば、色調取得部が、ブランク部位設定部により設定されたブランク部位の色調を、測定部位に係る色調から減算することにより、当該測定部位で取得される色調変化を、血液(特に赤血球)の流通によって生じる色調変化に補正することができる。従って、診断情報取得部が、補正された色調に基づいて診断情報を取得することにより、当該診断情報の信頼性及び正確性を、一層向上することができる。
【0020】
本発明では、前記分布部位を照明する照明装置を備えることが好ましい。
本発明によれば、照明装置が分布部位を照明することにより、撮像装置による毛細血管の撮像を鮮明に行うことができ、また、色調取得部による色調の取得を適切かつ正確に行うことができる。従って、診断情報を一層正確に取得することができる。
【0021】
また、本発明の診断支援システムは、毛細血管を流れる血液から得られる診断情報から、生活習慣病の疾患の発症危険度を診断する診断支援システムであって、前述の診断情報取得システムと、前記診断情報取得システムにより取得された前記診断情報に基づいて、前記発症危険度を判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0022】
ここで、生活習慣病は、壮年期以後好発する病気の総称であり、例えば、糖尿病、心筋梗塞及び狭心症等を例示することができる。
本発明によれば、前述の診断情報取得システムと同様の効果を奏することができるほか、当該診断情報取得システムにより取得された診断情報に基づいて、判定手段が、毛細血管を有する被験者の生活習慣病の発症危険度を判定することができる。従って、当該発症危険度を簡易に判定することができる。
【0023】
また、本発明の診断情報取得方法は、毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得方法であって、毛細血管を撮像した撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定手順と、前記測定部位における色調を取得する色調取得手順と、取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得手順とを有することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、前述の診断情報取得システムと同様の効果を奏することができる。
すなわち、測定部位設定手順において、撮像画像における1つの毛細血管上に測定部位が設定され、色調取得手順において、当該測定部位の色調が取得される。そして、診断情報取得手順により、当該色調の経時変化に基づいて、診断情報が取得される。これによれば、操作者による赤血球の移動の観察等が不要となるので、操作者の負担を軽減することができる。従って、診断情報を簡易に取得することができる。
【0025】
また、本発明の診断情報取得プログラムは、毛細血管を撮像する撮像装置と、前記撮像装置により撮像された前記毛細血管の撮像画像を処理する解析装置とを備えた診断情報取得システムの前記解析装置により実行され、前記毛細血管中の血液に係る診断情報を取得する診断情報取得プログラムであって、前記解析装置に、前記撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定ステップと、前記測定部位における色調を取得する色調取得ステップと、取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得ステップとを実行させることを特徴とする。
本発明によれば、前述の診断情報取得方法と同様の効果を奏することができる。
【0026】
また、本発明の記録媒体は、前述の診断情報取得プログラムをコンピュータ読取可能に記録したことを特徴とする。
本発明によれば、解析装置が、当該記録媒体に記録された診断情報取得プログラムを読み取って実行することにより、前述の診断情報取得プログラムと同様の効果を奏することができる。また、記録媒体として、DAT(Digital Audio Tape)等の磁気テープ、FD(Flexible Disc)等の磁気ディスク、CD(Compact Disc)及びDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスク、光磁気ディスク、ハードディスク装置、並びに、ROM(Read Only Memory)及びフラッシュメモリ等の半導体メモリ等を用いることができ、これらを利用して、前述の診断情報取得プログラムをインストール、実行及び配布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の診断支援システム1の構成を示す模式図である。
本実施形態の診断支援システム1は、被験者の爪上皮部分の毛細血管を撮像し、当該毛細血管中を流れる血液の流速値、心拍数、赤血球の連銭形成の有無及びヘマトクリット値等の診断情報を取得し、当該診断情報に基づいて、生活習慣病の疾患の発症危険性を判定するシステムである。この診断支援システム1は、図1に示すように、固定装置2、照明装置3、撮像装置4及び解析装置5を備えて構成されている。
【0028】
固定装置2は、後述する撮像装置4による撮像方向に沿う方向(例えば、上下方向)と、当該撮像方向に直交する方向(例えば、水平方向)に移動自在に設けられており、被験者の手の指を固定するとともに、撮像装置4による撮像範囲への爪上皮部分の位置合わせを行う。
照明装置3は、光源部31と、点灯制御部32とを備えている。このうち、光源部31は、固定装置2に取り付けられており、当該固定装置2に固定された指の爪上皮部分に、800〜900nmの波長を有する近赤外光、又は、血液の色(赤色)の補色である緑色光を照射して、当該爪上皮部分を照明する。なお、本実施形態では、光源部31は、LED(Light Emitting Diode)を備える構成としたが、LD(Laser Diode)等の他の固体光源や、放電光源ランプとカラーフィルタとの組合せを有する構成で実現してもよい。
点灯制御部32は、後述する解析装置5に接続され、当該解析装置5から入力する制御信号に応じて、光源部31の点灯を制御する。
【0029】
図2は、撮像装置4により撮像された毛細血管の拡大画像を示す図である。
撮像装置4は、詳しい図示を省略したが、爪上皮部分を光学的に処理して拡大する複数のレンズと、拡大された爪上皮部分に位置する毛細血管を撮像する撮像素子とを備えている。そして、撮像装置4は、固定装置2により固定された指の爪上皮部分を拡大して撮像し、例えば、図2に示す撮像画像を、後述する解析装置5に出力する。なお、図2に示した撮像画像においては、6本の毛細血管C1〜C6を観察することができ、毛細血管C1〜C5については、捩れ及び変形の無い正常な毛細血管であるが、毛細血管C3,C4は、互いに重なり合っている。また、毛細血管C6は、捩れを有している。
このような撮像装置4は、本実施形態では、撮像素子としてCCD(Charge-Coupled Device)を備えて構成されているが、これに限らず、例えば、CMOS(Complementary Mental-Oxide Semiconductor)デバイス等を備える構成としてもよい。
【0030】
〔解析装置5の構成〕
図3は、解析装置5の構成を示すブロック図である。
解析装置5は、本実施形態では、PC(Personal Computer)により構成され、撮像装置4による毛細血管の撮像画像を取得して、当該撮像画像の色調であるグレースケール値を取得し、当該グレースケール値に基づいて、診断情報である毛細血管中の血液の流速値、心拍数、連銭形成の有無、及び、ヘマトクリット値を取得し、これらの診断情報に基づいて、生活習慣病の発症危険度についての判定を行う。この解析装置5は、図3に示すように、操作手段51、表示手段52、照明装置制御手段53、撮像装置制御手段54、撮像画像取得手段55、描画手段56、解析手段57、記憶手段58及び判定手段59を備えて構成されている。
【0031】
操作手段51は、操作者による入力操作に応じた操作信号を出力する。このような操作手段51として、キーボード、及び、マウス等のポインティングデバイスを例示することができる。
表示手段52は、撮像装置4により撮像され、後述する描画手段56で描画処理された撮像画像を表示する。このような表示手段52としては、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)、プラズマ及びCRT(Cathode Ray Tube)等の各種ディスプレイを例示することができる。
【0032】
照明装置制御手段53及び撮像装置制御手段54は、制御信号を出力して、それぞれ照明装置3及び撮像装置4の動作を制御する。
具体的に、照明装置制御手段53は、点灯制御部32に制御信号を出力して、当該点灯制御部32により、光源部31を点灯させるほか、当該光源部31による照射光の波長(前述の近赤外光又は緑色光の波長)を設定する。
また、撮像装置制御手段54は、撮像装置4に制御信号を出力して、当該撮像装置4による毛細血管の撮像の際の倍率等を設定する。
撮像画像取得手段55は、撮像装置4により撮像された画像を取得する。
描画手段56は、撮像画像取得手段55により取得された撮像画像を処理して、フレーム単位の画像に変換し、当該画像を表示手段52に出力して表示させるほか、解析手段57に出力する。また、描画手段56は、判定手段59から入力する判定結果に係る画像を処理して、表示手段52に出力する。
【0033】
〔解析手段57の構成〕
図4は、解析手段57の構成を示すブロック図である。
解析手段57は、描画手段56から入力する撮像画像から、前述の診断情報を取得して、当該診断情報を、記憶手段58に記憶させるものであり、本発明の解析装置に相当する。このような解析手段57は、図4に示すように、部位設定部571、測定値取得部572及び診断情報取得部573を備えて構成されている。
【0034】
図5は、撮像画像中の毛細血管C2と、当該撮像画像中に設定された測定部位A,B及びブランク部位BLとを示す図である。なお、図5中の矢印X方向は、毛細血管C2内の血液の流通方向を示している。
部位設定部571は、操作手段51から入力する操作信号に応じて、撮像画像に含まれる毛細血管上の所定領域を測定部位(測定部位A,B)として設定する測定部位設定部5711と、測定部位に近接し、かつ、当該毛細血管上でない領域をブランク部位BLとして設定するブランク部位設定部5712とを備えている。このうち、測定部位設定部5711は、操作者の操作に応じて複数の測定部位を設定することが可能であり、その際、2つ目以降の測定部位及びブランク部位の寸法及び外形形状は、1つ目の測定部位の寸法及び外形形状と自動的に一致するように設定される。すなわち、各測定部位及びブランク部位BLの面積は、同一となる。なお、測定部位を複数箇所設定する場合には、それぞれ略同じ太さを有する毛細血管上の位置に設定することが好ましい。
このような測定部位設定部5711により、図5に示すように、撮像画像中の毛細血管C2上に、測定部位A,Bが設定され、また、当該測定部位A,Bに近接し、かつ、毛細血管C2上でない領域に、ブランク部位BLが設定される。
【0035】
図6は、測定値取得部572により取得された測定部位A,Bの各グレースケール値の変化を示すグラフである。なお、図6において、「▲」は測定部位Aに係るグレースケール値を示し、「□」は測定部位Bに係るグレースケール値を示している。
図4に戻り、測定値取得部572は、グレースケール値取得部5721、ブランク値減算部5722及びグレースケール値記憶部5723を備えて構成されている。すなわち、測定値取得部572は、本発明の色調取得部に相当する。
【0036】
グレースケール値取得部5721は、部位設定部571にて設定された測定部位A,B及びブランク部位BLの色調であるグレースケール値を取得する。なお、グレースケール値取得部5721は、測定部位A,B及びブランク部位BL内の平均グレースケール値を取得するが、以下の説明では、単にグレースケール値と略す。
ブランク値減算部5722は、取得された測定部位A,Bの各グレースケール値から、ブランク部位BLのグレースケール値であるブランク値を減算する。
グレースケール値記憶部5723は、減算された測定部位A,Bの各グレースケール値を、記憶手段58に記憶させる。
このような測定値取得部572により、図6に示すように、測定部位A,Bの各グレースケール値の変化が経時的に記憶手段58に記憶される。
【0037】
図4に戻り、診断情報取得部573は、記憶手段58に記憶された測定部位A,Bの各グレースケール値に基づいて、前述の診断情報を取得する。この診断情報取得部573は、流速値測定部574、心拍数測定部575、連銭形成判定部576及びヘマトクリット値算出部577を備えて構成されている。
【0038】
流速値測定部574は、毛細血管を拡大して撮像した撮像画像における2つの測定部位の距離と、所定期間内における当該各測定部位のグレースケール値のピークシフト(時間差)とから、赤血球若しくはその塊が一定距離を通過する速度、すなわち、血液の流速(血流速度)を測定する。この流速値測定部574は、距離算出部5741、時間差取得部5742及び流速値算出部5743を備えている。
距離算出部5741は、測定部位設定部5711により設定された測定部位A,B間の距離を、撮像装置4に設定した拡大倍率等に基づいて算出する。
【0039】
図7は、測定部位A,Bにおけるグレースケール値の経時変化を示すグラフである。
時間差取得部5742は、測定部位A,Bのそれぞれで生じるグレースケール値の変化の時間差を算出する。ここで、測定部位A,Bは、それぞれ同じ毛細血管C2における異なる位置に設定されているため、図7に示すように、測定部位Aにおける色調の経時変化(図7の上段)と、測定部位Bにおける色調の経時変化(図7の下段)との間には、同じ赤血球が通過した際に生じるピークが現れるタイミングが時間tだけシフトする。すなわち、毛細血管C2における上流側に位置する測定部位Aで生じたピークと同様のピークは、時間tが経過すると、下流側に位置する測定部位Bでも現れる。この時間tを時間差として、時間差取得部5742は取得する。
図4に戻り、流速値算出部5743は、算出された測定部位A,B間の距離、及び、ピークの時間差(時間t)に基づいて、流速値を算出する。この流速値算出部5743は、当該流速を必要に応じて所定期間算出し、算出した流速を記憶手段58に記憶させる。
【0040】
心拍数測定部575は、血液の流速値(血流速度)の変動サイクルから、心臓の拍動回数すなわち心拍数を測定する。この心拍数測定部575は、変動周期取得部5751及び心拍数算出部5752を備えている。
変動周期取得部5751は、流速値測定部574により算出された流速値の変動サイクルの周期を取得する。ここで、血液の流速値は、心臓の拍動直後が最も高く、次の拍動の直前が最も低い。この変動サイクルは、心臓の拍動が行われるごとに観測される。そして、変動周期取得部5751は、当該変動サイクルの周期(時間)を、流速値測定部574により測定された流速値に基づいて取得する。
心拍数算出部5752は、変動周期取得部5751により取得された流速値の変動サイクルの周期に基づいて、当該変動サイクルが1分間に生じる回数を心拍数として算出する。そして、心拍数算出部5752は、算出した心拍数を、記憶手段58に記憶させる。
【0041】
図8(A)〜(D)は、グレースケール値の変動パターンを示すグラフである。
連銭形成判定部576は、1つの測定部位(例えば、測定部位A)の所定期間内における平均グレースケール値に基づいて、血液中の赤血球の連銭形成の有無を判定する。
ここで、赤血球に連銭形成が生じていない場合、すなわち、各赤血球が分離している場合には、図8(A)に示すように、赤血球が滞ることなく連続的に流れるため、比較的高いグレースケール値で維持され、拍動ごとにグレースケール値の若干の低下が確認される程度となる。
一方、赤血球に連銭形成が生じている場合、すなわち、複数の赤血球が繋がっている場合には、図8(B),(C)に示すように、グレースケール値の増減(高低)が断続的に現れるか、あるいは、図8(D)に示すように、連銭形成が生じていない場合(図8(A)の場合)に比べて、所定期間内での平均グレースケール値が低く、ピークの移動が遅い(ピークが長い)。このようなグレースケール値の経時変化に基づいて、連銭形成判定部576は、赤血球の連銭形成の有無を判定する。このような連銭形成判定部576は、図4に示すように、変動パターン取得部5761及び変動パターン比較部5762を備えている。
【0042】
変動パターン取得部5761は、測定値取得部572により取得された測定部位A,Bのいずれか一方のグレースケール値の変動パターンから、当該変動パターンにおける所定期間(例えば、数回の心拍の周期に係る期間)内の変動パターンを抽出して取得する。
変動パターン比較部5762は、流速値測定部574により算出された血液の流速値を、後述する記憶手段58に記憶された基準値と比較するとともに、変動パターン取得部5761により取得された変動パターンと、記憶手段58に記憶された基準パターンとを比較する。そして、当該変動パターン比較部5762は、流速値が基準値より遅く、かつ、変動パターン取得部5761により取得された変動パターンにおけるピークの出現が、基準パターンに比べて断続的である場合に、血液中の赤血球が連銭形成を起こしていると判定する。
【0043】
ヘマトクリット値算出部577は、1つの測定部位(例えば、測定部位A)の所定期間内における総グレースケール値と、当該所定期間内における最大グレースケール値と所定期間との積とから、通過した総血液に占める赤血球の容積比率であるヘマトクリット値を算出する。このヘマトクリット値算出部577は、グレースケール値積分部5771、最大グレースケール値積算部5772及び値算出部5773を備えている。
【0044】
グレースケール値積分部5771は、本発明の総積分部に相当し、所定期間(例えば、数回の心拍の周期に係る期間)内の測定部位Aに係る総グレースケール値を算出する。具体的に、グレースケール値積分部5771は、当該所定期間内のグレースケール値の変動パターンに係る曲線を積分したグレースケール値の積分値を総グレースケール値として算出する。この総グレースケール値は、当該所定期間内に測定部位Aを通過した赤血球の容積に対応する。
【0045】
最大グレースケール値積算部5772は、本発明の最大値積算部に相当し、前述の総グレースケール値の算出と同じ所定期間内における最大グレースケール値を選択し、当該最大グレースケール値と当該所定期間(時間)との積を、総最大グレースケール値として算出する。この積は、仮に赤血球が血液の全てを占めると仮定した場合に、当該血液が所定期間通過することによって生じる測定部位Aにおける色調の積算値であり、当該所定期間内に測定部位Aを通過した血液の容積に対応する。
値算出部5773は、算出された総グレースケール値を総最大グレースケール値で除算することにより、ヘマトクリット値を算出する。この算出されたヘマトクリット値は、値算出部5773により、記憶手段58に記憶される。
【0046】
〔記憶手段58の構成〕
図3に戻り、記憶手段58は、本実施形態では、HDD(Hard Disk Drive)により構成され、解析装置5での各処理に必要な各種プログラム及びデータを記憶する。このようなプログラムとして、後述するグレースケール値取得処理、流速値算出処理、心拍数算出処理、連銭形成判定処理及びヘマトクリット値算出処理を実行させるプログラム等を、また、データとして、被験者ごとの各測定部位における前述のグレースケール値の変動パターン、各診断情報、及び、当該各診断情報に対する評価結果や、上記各処理で利用される基準値及び基準パターン等を、記憶手段58は記憶している。
【0047】
〔判定手段59の構成〕
図9は、判定手段59の構成を示すブロック図である。
判定手段59は、解析手段57により取得され、かつ、記憶手段58に記憶された各診断情報に基づいて、被験者の生活習慣病の疾患の発症危険度を判定する。この判定手段59は、流速値判定部591、心拍数判定部592、連銭形成程度判定部593、ヘマトクリット値判定部594、評価部595及び結果出力部596を備えている。
【0048】
流速値判定部591、心拍数判定部592及びヘマトクリット値判定部594は、それぞれ算出された流速値、心拍数及びヘマトクリット値を、記憶手段58に記憶された各基準値と比較し、当該基準値を基準とする所定の段階(例えば、5段階)で評価する。
連銭形成程度判定部593は、連銭形成判定部576により、赤血球の連銭形成が生じていると判定された際に、当該赤血球を含む血液の流速値、及び、変動パターンにおけるピーク形状から、記憶手段58に記憶された基準値及び基準パターンと比較して連銭形成の程度を判定し、当該基準値を基準とする所定の段階で評価する。
【0049】
評価部595は、前述の各判定部591〜594により評価された診断情報である流速値、心拍数、連銭形成の程度及びヘマトクリット値の段階に基づいて、これら診断情報を複合的及び総合的に評価し、生活習慣病の発症危険度を評価する。例えば、評価部595は、ヘマトクリット値の評価段階が高い場合(ヘマトクリット値が高い場合)には、赤血球増多症(多血症)の危険性が高いと評価する。
結果出力部596は、評価部595による評価結果を出力する。この際、評価部595により、生活習慣病の発症危険度が高いと評価された場合には、結果出力部596は、警告等を合わせて出力する。なお、本実施形態では、結果出力部596は、当該評価結果を描画手段56に出力し、表示手段52により表示させる構成としているが、プリンタ等が解析装置5に接続されている場合には、当該プリンタに評価結果を印刷出力させるように構成してもよい。
【0050】
以下、解析装置5で実行させる各処理について説明する。これらの処理は、操作手段51に対する操作者の入力操作に応じて実行され、解析手段57が、記憶手段58に記憶された各プログラムを読み出して、当該プログラムを実行することにより行われる。
【0051】
〔グレースケール値取得処理SA〕
図10は、グレースケール値取得処理SAの処理過程を示すフローチャートである。
グレースケール値取得処理SAは、撮像画像中の毛細血管に測定部位(例えば、測定部位A,B)を設定し、当該測定部位に係るグレースケール値を取得する処理である。
このグレースケール値取得処理SAでは、図10に示すように、まず、解析手段57の部位設定部571を構成する測定部位設定部5711及びブランク部位設定部5712が、操作者の操作手段51に対する入力操作に応じて、ブランク部位BL及び測定部位A,Bを設定する(ステップSA01〜SA03)。これらのうち、ステップSA02,SA03が、測定部位設定手順及び測定部位設定ステップに相当する。
この後、測定値取得部572のグレースケール値取得部5721が、ブランク部位BLのグレースケール値をブランク値として取得する(ステップSA04)。
【0052】
次に、グレースケール値取得部5721が、測定部位Aのグレースケール値を取得し(ステップSA05)、ブランク値減算部5722が、取得されたグレースケール値からブランク値を減算する(ステップSA06)。そして、グレースケール値記憶部5723が、減算されたグレースケール値を、測定部位Aのグレースケール値として、記憶手段58に記憶させる(ステップSA07)。
また、同じくグレースケール値取得部5721が、測定部位Bのグレースケール値を取得し(ステップSA08)、ブランク値減算部5722が、取得されたグレースケール値からブランク値を減算する(ステップSA09)。そして、グレースケール値記憶部5723が、減算されたグレースケール値を、測定部位Bのグレースケール値として、記憶手段58に記憶させる(ステップSA10)。
これらステップSA05〜SA07及びステップSA08〜SA10が、本発明の色調取得手順及び色調取得ステップに相当する。
【0053】
このステップSA10の後、解析手段57は、ステップSA05に戻り、測定部位A,Bのグレースケール値の取得、減算及び記憶を繰り返す。なお、本実施形態では、測定部位として、2つの測定部位A,Bが設定されているため、ステップSA05〜SA07及びステップSA08〜SA10が繰り返し実行される。しかしながら、測定部位Aのみが設定されている場合には、ステップSA05〜SA07が繰り返し実行され、また、測定部位A,Bとは異なる他の測定部位が更に設定されている場合には、当該測定部位に係るグレースケール値の取得、減算及び記憶が、ステップSA05〜SA07と同様に行われる。
【0054】
〔流速値算出処理SB〕
図11は、流速値算出処理SBの処理過程を示すフローチャートである。
流速値算出処理SBは、前述のグレースケール値取得処理SAで取得されたグレースケール値に基づいて、測定部位A,Bが設定された毛細血管中を流れる血液の流速値を算出する処理である。なお、以下に説明する流速値算出処理SB、心拍数算出処理SC、連銭形成判定処理SD及びヘマトクリット値算出処理SEが、本発明の診断情報取得手順及び診断情報取得ステップに相当する。
この流速値算出処理SBは、図11に示すように、まず、流速値測定部574の距離算出部5741が、測定部位A,B間の距離を算出する(ステップSB01)。
次に、時間差取得部5742が、測定部位A,Bに係るグレースケール値の変化をそれぞれ比較し、測定部位Aに対して遅れて現れる測定部位Bのグレースケール値の時間差(前述の時間t)を取得する(ステップSB02)。
【0055】
この後、流速値算出部5743が、算出された距離及び時間差から、心臓の少なくとも1回の拍動に応答する期間(好ましくは、複数回の拍動に対応する期間)分、血液の流速値を経時的に算出し、当該流速値を記憶手段58に記憶させる(ステップSB03)。
そして、判定手段59の流速値判定部591が、算出された流速値を基準値と比較して、当該流速値を評価する(ステップSB04)。この評価結果は、記憶手段58に記憶される。
以上により、流速値算出処理SBが終了する。
【0056】
〔心拍数算出処理SC〕
図12は、心拍数算出処理SCの処理過程を示すフローチャートである。
心拍数算出処理SCは、流速値算出処理SBにより算出された流速値の変化に基づいて、心拍数を算出する処理である。
この心拍数算出処理SCでは、図12に示すように、まず、心拍数測定部575の変動周期取得部5751が、算出された流速値に基づいて、当該流速値の変動周期を取得する(ステップSC01)。
次に、心拍数算出部5752が、取得された変動周期に基づいて、1分間の変動周期の回数、すなわち、心拍数を算出し、当該心拍数を記憶手段58に記憶させる(ステップSC02)。
この後、判定手段59の心拍数判定部592が、算出された心拍数を基準値と比較して、当該心拍数を評価する(ステップSC03)。
以上により、心拍数算出処理SCが終了する。
【0057】
〔連銭形成判定処理SD〕
図13は、連銭形成判定処理SDの処理過程を示すフローチャートである。
連銭形成判定処理SDは、前述のグレースケール値取得処理SAにて取得されたグレースケール値に基づいて、赤血球の連銭形成の有無を判定し、連銭形成が生じていると判定された際には、当該連銭形成の程度を評価する処理である。なお、以下の説明では、測定部位Aに係るグレースケール値を用いて、赤血球の連銭形成の有無及び程度を判定する手順を説明するが、測定部位Bに係るグレースケール値を用いた場合も同様である。
この連銭形成判定処理SDでは、図13に示すように、まず、連銭形成判定部576の変動パターン取得部5761が、所定期間内のグレースケール値の変動パターンを取得する(ステップSD01)。
そして、変動パターン比較部5762が、前述のように、取得された変動パターンと、記憶手段58に記憶され、かつ、流速値測定部574により算出された流速値に応じた基準パターンとを比較し、当該変動パターンと基準パターンとの差異の有無を判定する(ステップSD02)。
【0058】
ここで、変動パターン比較部5762が、各パターン間で差異が大きくないと判定した場合には、当該変動パターン比較部5762は、赤血球に連銭形成が生じていないと判定し(ステップSD03)、当該判定結果を記憶手段58に記憶した後、連銭形成判定処理SDは終了する。
一方、変動パターン比較部5762が、各パターン間で差異が大きいと判定した場合には、当該変動パターン比較部5762は、赤血球に連銭形成が生じていると判定し(ステップSD04)、判定結果を記憶手段58に記憶させる。
この後、判定手段59の連銭形成程度判定部593は、赤血球の連銭形成の程度を評価し、当該評価結果を記憶手段58に記憶させる(ステップSD05)。
以上により、連銭形成判定処理SDが終了する。
【0059】
〔ヘマトクリット値算出処理SE〕
図14は、ヘマトクリット値算出処理SEの処理過程を示すフローチャートである。
ヘマトクリット値算出処理SEは、前述のグレースケール値取得処理SAにて取得されたグレースケール値に基づいて、ヘマトクリット値を算出する処理である。なお、以下の説明では、測定部位Aに係るグレースケール値を用いてヘマトクリット値を算出する手順を説明するが、測定部位Bに係るグレースケール値を用いた場合も同様である。
このヘマトクリット値算出処理SEでは、図14に示すように、まず、ヘマトクリット値算出部577のグレースケール値積分部5771が、所定期間内の測定部位Aから取得されるグレースケール値の積分値(総グレースケール値)を算出する(ステップSE01)。
【0060】
そして、最大グレースケール値積算部5772が、ステップSE01と同じ所定期間における最大グレースケール値を選択する(ステップSE02)。
この後、最大グレースケール値積算部5772が、選択された最大グレースケール値と、当該所定期間(時間)との積を、総最大グレースケール値として算出する(ステップSE03)。
次に、値算出部5773が、ステップSE01で算出された総グレースケール値を、ステップSE03で算出された総最大グレースケール値で除算して、ヘマトクリット値を算出する(ステップSE04)。このヘマトクリット値は、値算出部5773により記憶手段58に記憶される。
そして、判定手段59のヘマトクリット値判定部594が、算出されたヘマトクリット値を基準値と比較して、当該ヘマトクリット値を評価する(ステップSE05)。
以上により、ヘマトクリット値算出処理SEが終了する。
【0061】
以上の各処理SB〜SEが終了すると、判定手段59の評価部595が、各診断情報を評価し、被験者の生活習慣病の発症危険度が評価される。そして、当該評価結果は、結果出力部596により、描画手段56に出力され、これにより、表示手段52に、評価結果が出力される。
【0062】
なお、本実施形態では、毛細血管を撮像しつつ、測定部位A,Bにおけるグレースケール値の変動パターンを取得するグレースケール値取得処理SAを実行し、当該処理SAの後、引き続き上記各処理SB〜SEを実行して、各診断情報の取得及び生活習慣病の発症危険度の評価を行うとしたが、これら各処理SB〜SEは、グレースケール値取得処理SAと同時に、或いは、当該処理SAの後継続して行われるリアルタイム処理でなくともよい。すなわち、グレースケール値取得処理SAにて取得され、かつ、記憶手段58に記憶された測定部位A,Bにおけるグレースケール値の変動パターンに基づいて、任意のタイミングで各診断情報の取得及び生活習慣病の発症危険度の評価を行ってもよい。
また、グレースケール値取得処理SAにおいても、予め取得しておいた動画としての撮像画像に対して、測定部位及びブランク部位の設定、並びに、グレースケール値の取得を行うようにしてもよい。
【0063】
更に、記憶手段58は、複数の被験者のデータ(変動パターン、各診断情報及び生活習慣病の発症危険度の評価等)を記憶することができるので、当該各被験者のデータをそれぞれ比較することも可能である。これにより、被験者の年代及び性別等に応じた各診断情報の傾向を取得することができ、評価対象である被験者の生活習慣病の発症危険度をより詳細に評価することができる。
【0064】
〔実施形態の効果〕
以上説明した本実施形態の診断支援システム1によれば、以下の効果を奏することができる。
すなわち、操作者は、解析装置5の操作手段51を操作して、撮像装置4により撮像され、かつ、表示手段52に表示された撮像画像中の毛細血管の所定位置に、測定部位A,Bを設定することにより、前述の診断情報を取得することができる。これによれば、操作者が当該毛細血管の赤血球の流れを観察しながら解析装置5を操作する必要が無いので、診断情報の取得に係る操作者の手作業を削減することができる。従って、診断情報を簡易に取得することができるほか、診断情報の信頼性を向上することができる。
【0065】
また、流速値測定部574により、毛細血管上に設定された2つの測定部位A,B間の距離が算出され、また、当該各測定部位A,Bのグレースケール値の変化の時間差が取得される。そして、これら距離及び時間差から、血液の流速値が自動的に算出される。これによれば、毛細血管中の血液の流速値を簡易に取得することができる。
【0066】
また、流速値を取得する際に設定された各測定部位A,Bは、それぞれ同じ寸法(面積)を有するように設定される。これによれば、各測定部位A,Bから取得されるグレースケール値は、それぞれ略同じとなるので、測定部位A,Bに係るそれぞれのグレースケール値に誤差が生じることを抑制することができる。従って、ピークの検出を行いやすくすることができ、取得される時間差の正確性を向上することができるので、測定された流速値の信頼性を向上することができる。
【0067】
また、心拍数は、心拍数測定部575により、算出された流速値に基づいて算出される。この際、心臓の拍動により流速値に周期的な変動が生じることから、当該流速値の変動周期を取得し、当該変動周期に基づいて、心拍数が算出される。これによれば、心拍数を簡易かつ正確に取得することができる。
【0068】
また、赤血球の連銭形成の有無は、連銭形成判定部576により、所定期間内の測定部位(例えば、測定部位A)のグレースケール値の変化に基づいて判定される。これによれば、毛細血管中を流れる赤血球を直接観察する必要なく、当該赤血球の連銭形成の有無に係る診断情報を取得することができる。
【0069】
また、ヘマトクリット値は、ヘマトクリット値算出部577により算出される。この際、測定部位(例えば、測定部位A)における所定期間内の総グレースケール値が算出され、同じく所定期間内の最大グレースケール値が選択される。そして、当該最大グレースケール値と所定期間(時間)との積で、総グレースケール値を除算した値が、ヘマトクリット値として算出される。これによれば、測定部位から取得されるグレースケール値を用いて、ヘマトクリット値を自動的に算出することができる。従って、ヘマトクリット値を簡易に取得することができる。
【0070】
また、各測定部位A,Bからグレースケール値を取得する際には、当該グレースケール値から、測定部位A,Bに近接し、かつ、毛細血管上にないブランク部位BLから取得されたグレースケール値が減算される。これによれば、当該測定部位A,Bにおいて赤血球の通過によって生じるグレースケール値のみを取得することができる。従って、上記診断情報の信頼性及び正確性を向上することができる。
【0071】
また、本実施形態の診断支援システム1は、撮像装置4による撮像領域である被験者の指の爪皮下部分を照明する照明装置3を備えている。これによれば、撮像装置4により毛細血管を鮮明に撮像することができ、設定された測定部位A,Bにおけるグレースケール値の取得を適切かつ正確に行うことができる。また、当該照明装置3による照明光は、800〜900nmの波長を有する近赤外光、又は、血液の色(赤色)の補色である緑色光であるので、撮像画像中の赤血球を鮮明に観察することができ、これにより、測定部位A,Bから取得されるグレースケール値の精度を一層向上することができる。
【0072】
更に、解析装置5は、取得された診断情報を評価して、生活習慣病の発症危険度を判定する判定手段59を備えている。これによれば、被験者の生活習慣病の疾患の発症危険度を簡易に判定することができ、治療等に役立てることができる。
【0073】
〔実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、測定部位設定部5711は、2つの測定部位A,Bを設定するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、設定される測定部位は、少なくとも1つ、流速値を測定する場合には、少なくとも2つあればよく、当該測定部位の数は、適宜設定してよい。
【0074】
前記実施形態では、測定値取得部572は、測定部位A,Bにおけるグレースケール値を取得するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、所定波長の色光の輝度値を取得してもよく、赤血球の通過を検出可能な階調値であればよい。
また、前記実施形態では、照明装置3は、800〜900nmの波長を有する近赤外光、又は、血液の色(赤色)の補色である緑色光を照射するとしたが、本発明はこれに限らず、例えば、白色光を照射するように構成してもよい。
【0075】
前記実施形態では、撮像装置4は、被験者の指の爪皮下部分に位置する毛細血管を撮像するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、少なくとも1つの毛細血管を撮像することができればよく、撮像装置4によって撮像される部位は限定されない。
前記実施形態では、診断支援システム1は、診断情報として、毛細血管中を流れる血液の流速値、心拍数、赤血球の連銭形成の有無、及び、ヘマトクリット値を取得するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、診断情報は、撮像画像における毛細血管上の少なくとも1つの測定部位で測定される色調に基づいて取得される情報であれば、他の内容に係る情報であってもよい。
【0076】
前記実施形態では、各種プログラムは、記憶手段58に記憶されているとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、CD及びDVD等の記録媒体に記録され、必要に応じて、当該記録媒体から読み出されて実行されるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、診断情報取得システムに利用でき、特に生活習慣病等の血清粘度上昇によって引き起こされる疾患に係る診断支援システムに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る診断支援システムの構成を示す模式図。
【図2】前記実施形態における毛細血管の拡大画像を示す図。
【図3】前記実施形態における解析装置の構成を示すブロック図。
【図4】前記実施形態における解析手段の構成を示すブロック図。
【図5】前記実施形態における撮像画像中の毛細血管、測定部位及びブランク部位を示す図。
【図6】前記実施形態における各測定部位のグレースケール値の変動パターンを示すグラフ。
【図7】前記実施形態における各測定部位のグレースケール値の変動パターンを示すグラフ。
【図8】前記実施形態におけるグレースケール値の変動パターンを示すグラフ。
【図9】前記実施形態における判定手段の構成を示すブロック図。
【図10】前記実施形態におけるグレースケール値取得処理を示すフローチャート。
【図11】前記実施形態における流速値算出処理を示すフローチャート。
【図12】前記実施形態における心拍数算出処理を示すフローチャート。
【図13】前記実施形態における連銭形成判定処理を示すフローチャート。
【図14】前記実施形態におけるヘマトクリット値算出処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0079】
1…診断支援システム(診断情報取得システム)、3…照明装置、4…撮像装置、5…解析装置、59…判定手段、572…測定値取得部(色調取得部)、573…診断情報取得部、574…流速値測定部、575…心拍数算出部、576…連銭形成判定部、5711…測定部位設定部、5712…ブランク部位設定部、5741…距離算出部、5742…時間差取得部、5743…流速値算出部、5771…グレースケール値積算部(総積分部)、5772…最大グレースケール値積算部(最大値積算部)、5773…値算出部、A,B…測定部位、BL…ブランク部位、C1〜C6…毛細血管、SA02,SA03…ステップ(測定部位設定手順,測定部位設定ステップ)、SA05〜SA07,SA08〜SA10…ステップ(色調取得手順,色調取得ステップ)、SB…流速値算出処理(診断情報取得手順、診断情報取得ステップ)、SC…心拍数算出処理(診断情報取得手順、診断情報取得ステップ)、SD…連銭形成判定処理(診断情報取得手順、診断情報取得ステップ)、SE…ヘマトクリット値算出処理(診断情報取得手順、診断情報取得ステップ)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得システム、診断支援システム、前記診断情報取得システムを用いて行われる診断情報取得方法、診断情報取得プログラム、及び、当該診断情報取得プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、毛細血管から、当該毛細血管中を流れる血液の流速値等の情報を取得し、当該情報に基づいて、心臓疾患、火傷、肝炎及び白血病等の疾病の危険性を診断することが行われてきた。このような診断に用いられる支援システムとして、毛細血管の太さ(口径)、密度及び当該毛細血管中の流速値等の情報を取得し、各情報を分析評価して、健康状態の総合評価を行う医療支援システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の医療診断支援システムは、光源機構と、当該光源機構から供給される光を指先の爪上皮部分に照射する指先照射機構と、当該指先を固定する指先固定機構と、光が照射された爪上皮部分を拡大する光学処理機構と、拡大された爪上皮部分に係る拡大画像を撮像する撮像機構と、当該拡大画像を処理及び解析する解析機構とを備えている。そして、当該医療支援システムは、拡大画像における係蹄毛細血管の鮮明度、密度、輸入口及び輸出口の口径、輸出/輸入口径比、係蹄頂口径、係蹄長さ、捩れ血管及び奇形血管の本数、並びに、血管内の流速値を取得する。
【0004】
このうち、毛細血管の鮮明度、並びに、捩れ血管及び奇形血管の本数は、操作者が拡大画像を観察して入力し、密度は、観察者が拡大画像を観察して入力した毛細血管の本数に基づいて、解析機構が算出する。また、係蹄長さ、輸入口及び輸出口の口径、並びに、係蹄頂口径は、操作者が拡大画像内の毛細血管上の位置に、カーソル操作で印(白丸印及び黒丸印)を入力すると、それぞれの値が解析機構により算出され、この輸入口の口径及び輸出口の口径の値に基づいて、解析機構により、輸出/輸入口径比が算出される。
一方、毛細血管中の流速値については、操作者は、赤血球の流れ方向と同じ測定方向を画面上で選択又は設定し、当該方向の線上の印(白丸印)の移動が、赤血球の移動とほぼ同期する速度を、操作者が画面を観察しながら選択する。そして、当該選択された速度に基づいて、解析機構により、毛細血管中の流速値が算出される。
【0005】
そして、解析機構により、これら各データが、予め記憶した基準テーブルのデータである各数値と比較され、被験者の健康状態が、正常、軽度の異常及び重度の異常のうち、いずれであるのかが判定されて表示される。これにより、被験者の健康状態を客観的に分析することができ、医療診断支援に役立たせることができる。
【0006】
【特許文献1】特開2006−325714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述の特許文献1に記載の医療診断支援システムでは、例えば、毛細血管中の流速値のように、操作者の手作業による取得項目が多く、データの取得に係る操作が煩雑であるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、診断情報を簡易に取得することができる診断情報取得システム、診断支援システム、診断情報取得方法、診断情報取得プログラム及び記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するために、本発明の診断情報取得システムは、毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得システムであって、前記毛細血管が分布する分布部位を撮像する撮像装置と、前記撮像手段により撮像された前記毛細血管の撮像画像を解析する解析装置とを備え、前記解析装置は、前記撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定部と、選択された前記測定部位における色調を取得する色調取得部と、取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得部とを備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、色調取得部が取得する色調としては、所定波長を有する色の濃淡を示す階調値とすることができ、例えば、グレースケール値を例示することができる。また、解析装置としては、CPU(Central Processing Unit)等の演算手段を有するPC(Personal Computer)等を例示することができる。
【0011】
本発明によれば、測定部位設定部が、撮像装置により撮像された撮像画像中の毛細血管上に測定部位を設定し、色調取得部が当該測定部位の色調を取得し、診断情報取得部が、取得された色調の経時変化に基づいて診断情報を取得する。これによれば、毛細血管上に測定部位を設定することにより、簡易かつ非侵襲的に診断情報を取得することができる。従って、操作者の手作業を少なくすることができるとともに、手作業による診断情報の誤り発生を抑制することができるので、診断情報の信頼性を向上することができる。
【0012】
本発明では、前記測定部位設定部は、それぞれ異なる2つの測定部位を選択し、前記診断情報取得部は、前記色調取得部により取得された前記2つの測定部位に係る前記色調の経時変化のそれぞれに基づいて、前記血液の流速値を測定する流速値測定部を備えることが好ましい。
ここで、2つの測定部位は、同じ毛細血管上の異なる位置に設定されるため、毛細血管における上流側の測定部位で生じた色調変化と同様の色調変化が、下流側の測定部位でも、所定の時間差を経て再現される。このため、本発明では、流速値測定部が、撮像画像における毛細血管上に設定された2つの測定部位に係る色調の経時変化に基づいて、当該毛細血管中の血液の流速値を取得する。これによれば、前述の特許文献1に記載の医療診断支援システムのように、操作者が赤血球の移動と印の移動とを観察して、当該赤血球の移動速度を決定する煩雑さを解消することができるとともに、流速値の測定誤りを一層抑制することができる。従って、診断情報である血液の流速値を一層簡易に取得することができるだけでなく、診断情報の信頼性を確実に向上することができる。
【0013】
本発明では、前記流速値測定部は、前記2つの測定部位間の距離を算出する距離算出部と、前記2つの測定部位の前記各色調の経時変化の時間差を取得する時間差取得部と、前記距離、及び、前記時間差に基づいて、前記流速値を算出する流速値算出部とを備えることが好ましい。
本発明によれば、距離算出部により、2つの測定部位間の距離が算出され、時間差取得部により、各測定部位における色調の経時変化の時間差が取得される。そして、流速値算出部が、これら距離及び時間差に基づいて、各測定部位が設定された毛細血管中の血液の流速値を算出する。このような流速値測定部により、当該流速値を確実かつ正確に取得することができ、流速値の信頼性を一層確実に向上することができる。
【0014】
本発明では、前記測定部位設定部は、前記測定部位として、前記毛細血管上のそれぞれ同じ面積を有する領域を選択することが好ましい。
本発明によれば、毛細血管上に設定される測定部位が、それぞれ同じ面積を有しているので、それぞれの測定部位において、同じ赤血球が通過した際の色調の誤差が生じることを抑制することができる。従って、測定された流速値の信頼性をより一層向上することができる。
【0015】
本発明では、前記診断情報取得部は、前記流速値測定部により測定された前記流速値の周期変動に基づいて、心拍数を算出する心拍数算出部を備えることが好ましい。
ここで、毛細血管中の血液の流速は、心臓が拍動するごとに所定周期で変化し、拍動直後の流速値が最も高く、次の拍動の直前の流速値が最も低い。このため、心拍数算出部が、このような流速値の周期変化に基づいて心拍数を、簡易かつ正確に算出することができる。従って、診断情報としての心拍数を、簡易かつ正確に取得することができる。
【0016】
本発明では、前記診断情報取得部は、前記色調の経時変化に基づいて、前記血液に含まれる赤血球の連銭形成の有無を判定する連銭形成判定部を備えることが好ましい。
ここで、測定部位を赤血球が通過している間は、当該測定部位における色調は高くなり(濃くなり)、通過し終えると、当該色調は低く(淡く)なる。この際、血液中の赤血球が連銭形成を起こしていない場合には、各赤血球が連続して測定部位を通過するため、当該測定部位の色調は、多少の変動が見られるものの略一定の値であまり変化しない。一方、赤血球が連銭形成を起こしている場合には、複数の赤血球が塊を成して断続的に測定部位を通過するため、当該測定部位における色調の変動パターンは、高低を繰り返すこととなる。このような連銭形成が赤血球に生じている場合には、血管が詰まりやすくなり、血管壁に加わる圧力が増加したり、あるいは、血流速度(流速値)が遅くなったりして、虚血状態に陥る。
これに対し、本発明では、連銭形成判定部が、測定部位における色調の変化を判定することにより、赤血球の連銭形成の有無を判定することができる。従って、診断情報として、赤血球の連銭形成の有無を簡易に取得することができる。
【0017】
本発明では、前記診断情報取得部は、所定期間内での1つの前記測定部位に係る前記色調の経時変化を積分した総積分値を算出する総積分部と、前記所定期間内での前記1つの測定部位に係る前記色調の最大値を選択し、当該最大値と前記所定期間との積を算出する最大値積算部と、前記総積分値を前記積で除算してヘマトクリット値を算出する値算出部とを備えることが好ましい。
【0018】
本発明によれば、総積分部が、所定期間内での1つの測定部位に係る色調変化を積分することにより、当該所定期間内に測定部位を通過した赤血球の容積に対応する総積分値を算出する。また、最大値積算部が、仮に赤血球が血液の全てを占めると仮定したときに、当該血液が所定期間通過することによって生じる測定部位における色調の積算値を算出する。具体的に、最大値積算部は、当該所定期間内での1つの測定部位に係る色調の最大値を選択し、当該最大値と所定期間との積を算出する。そして、値算出部が、算出された総積分値を、算出された積で除算することにより、当該所定期間内で測定部位を通過した全血液における赤血球の容積比率であるヘマトクリット値を算出することができる。従って、診断情報として、ヘマトクリット値を簡易に取得することができる。
【0019】
本発明では、前記測定部位に近接し、かつ、前記毛細血管外の所定領域をブランク部位として設定するブランク部位設定部を備え、前記色調取得部は、前記測定部位の前記色調から、前記ブランク部位に係る色調を減算した色調を算出し、前記診断情報取得部は、前記色調取得部により算出された前記色調に基づいて、前記診断情報を取得することが好ましい。
本発明によれば、色調取得部が、ブランク部位設定部により設定されたブランク部位の色調を、測定部位に係る色調から減算することにより、当該測定部位で取得される色調変化を、血液(特に赤血球)の流通によって生じる色調変化に補正することができる。従って、診断情報取得部が、補正された色調に基づいて診断情報を取得することにより、当該診断情報の信頼性及び正確性を、一層向上することができる。
【0020】
本発明では、前記分布部位を照明する照明装置を備えることが好ましい。
本発明によれば、照明装置が分布部位を照明することにより、撮像装置による毛細血管の撮像を鮮明に行うことができ、また、色調取得部による色調の取得を適切かつ正確に行うことができる。従って、診断情報を一層正確に取得することができる。
【0021】
また、本発明の診断支援システムは、毛細血管を流れる血液から得られる診断情報から、生活習慣病の疾患の発症危険度を診断する診断支援システムであって、前述の診断情報取得システムと、前記診断情報取得システムにより取得された前記診断情報に基づいて、前記発症危険度を判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【0022】
ここで、生活習慣病は、壮年期以後好発する病気の総称であり、例えば、糖尿病、心筋梗塞及び狭心症等を例示することができる。
本発明によれば、前述の診断情報取得システムと同様の効果を奏することができるほか、当該診断情報取得システムにより取得された診断情報に基づいて、判定手段が、毛細血管を有する被験者の生活習慣病の発症危険度を判定することができる。従って、当該発症危険度を簡易に判定することができる。
【0023】
また、本発明の診断情報取得方法は、毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得方法であって、毛細血管を撮像した撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定手順と、前記測定部位における色調を取得する色調取得手順と、取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得手順とを有することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、前述の診断情報取得システムと同様の効果を奏することができる。
すなわち、測定部位設定手順において、撮像画像における1つの毛細血管上に測定部位が設定され、色調取得手順において、当該測定部位の色調が取得される。そして、診断情報取得手順により、当該色調の経時変化に基づいて、診断情報が取得される。これによれば、操作者による赤血球の移動の観察等が不要となるので、操作者の負担を軽減することができる。従って、診断情報を簡易に取得することができる。
【0025】
また、本発明の診断情報取得プログラムは、毛細血管を撮像する撮像装置と、前記撮像装置により撮像された前記毛細血管の撮像画像を処理する解析装置とを備えた診断情報取得システムの前記解析装置により実行され、前記毛細血管中の血液に係る診断情報を取得する診断情報取得プログラムであって、前記解析装置に、前記撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定ステップと、前記測定部位における色調を取得する色調取得ステップと、取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得ステップとを実行させることを特徴とする。
本発明によれば、前述の診断情報取得方法と同様の効果を奏することができる。
【0026】
また、本発明の記録媒体は、前述の診断情報取得プログラムをコンピュータ読取可能に記録したことを特徴とする。
本発明によれば、解析装置が、当該記録媒体に記録された診断情報取得プログラムを読み取って実行することにより、前述の診断情報取得プログラムと同様の効果を奏することができる。また、記録媒体として、DAT(Digital Audio Tape)等の磁気テープ、FD(Flexible Disc)等の磁気ディスク、CD(Compact Disc)及びDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスク、光磁気ディスク、ハードディスク装置、並びに、ROM(Read Only Memory)及びフラッシュメモリ等の半導体メモリ等を用いることができ、これらを利用して、前述の診断情報取得プログラムをインストール、実行及び配布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の診断支援システム1の構成を示す模式図である。
本実施形態の診断支援システム1は、被験者の爪上皮部分の毛細血管を撮像し、当該毛細血管中を流れる血液の流速値、心拍数、赤血球の連銭形成の有無及びヘマトクリット値等の診断情報を取得し、当該診断情報に基づいて、生活習慣病の疾患の発症危険性を判定するシステムである。この診断支援システム1は、図1に示すように、固定装置2、照明装置3、撮像装置4及び解析装置5を備えて構成されている。
【0028】
固定装置2は、後述する撮像装置4による撮像方向に沿う方向(例えば、上下方向)と、当該撮像方向に直交する方向(例えば、水平方向)に移動自在に設けられており、被験者の手の指を固定するとともに、撮像装置4による撮像範囲への爪上皮部分の位置合わせを行う。
照明装置3は、光源部31と、点灯制御部32とを備えている。このうち、光源部31は、固定装置2に取り付けられており、当該固定装置2に固定された指の爪上皮部分に、800〜900nmの波長を有する近赤外光、又は、血液の色(赤色)の補色である緑色光を照射して、当該爪上皮部分を照明する。なお、本実施形態では、光源部31は、LED(Light Emitting Diode)を備える構成としたが、LD(Laser Diode)等の他の固体光源や、放電光源ランプとカラーフィルタとの組合せを有する構成で実現してもよい。
点灯制御部32は、後述する解析装置5に接続され、当該解析装置5から入力する制御信号に応じて、光源部31の点灯を制御する。
【0029】
図2は、撮像装置4により撮像された毛細血管の拡大画像を示す図である。
撮像装置4は、詳しい図示を省略したが、爪上皮部分を光学的に処理して拡大する複数のレンズと、拡大された爪上皮部分に位置する毛細血管を撮像する撮像素子とを備えている。そして、撮像装置4は、固定装置2により固定された指の爪上皮部分を拡大して撮像し、例えば、図2に示す撮像画像を、後述する解析装置5に出力する。なお、図2に示した撮像画像においては、6本の毛細血管C1〜C6を観察することができ、毛細血管C1〜C5については、捩れ及び変形の無い正常な毛細血管であるが、毛細血管C3,C4は、互いに重なり合っている。また、毛細血管C6は、捩れを有している。
このような撮像装置4は、本実施形態では、撮像素子としてCCD(Charge-Coupled Device)を備えて構成されているが、これに限らず、例えば、CMOS(Complementary Mental-Oxide Semiconductor)デバイス等を備える構成としてもよい。
【0030】
〔解析装置5の構成〕
図3は、解析装置5の構成を示すブロック図である。
解析装置5は、本実施形態では、PC(Personal Computer)により構成され、撮像装置4による毛細血管の撮像画像を取得して、当該撮像画像の色調であるグレースケール値を取得し、当該グレースケール値に基づいて、診断情報である毛細血管中の血液の流速値、心拍数、連銭形成の有無、及び、ヘマトクリット値を取得し、これらの診断情報に基づいて、生活習慣病の発症危険度についての判定を行う。この解析装置5は、図3に示すように、操作手段51、表示手段52、照明装置制御手段53、撮像装置制御手段54、撮像画像取得手段55、描画手段56、解析手段57、記憶手段58及び判定手段59を備えて構成されている。
【0031】
操作手段51は、操作者による入力操作に応じた操作信号を出力する。このような操作手段51として、キーボード、及び、マウス等のポインティングデバイスを例示することができる。
表示手段52は、撮像装置4により撮像され、後述する描画手段56で描画処理された撮像画像を表示する。このような表示手段52としては、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)、プラズマ及びCRT(Cathode Ray Tube)等の各種ディスプレイを例示することができる。
【0032】
照明装置制御手段53及び撮像装置制御手段54は、制御信号を出力して、それぞれ照明装置3及び撮像装置4の動作を制御する。
具体的に、照明装置制御手段53は、点灯制御部32に制御信号を出力して、当該点灯制御部32により、光源部31を点灯させるほか、当該光源部31による照射光の波長(前述の近赤外光又は緑色光の波長)を設定する。
また、撮像装置制御手段54は、撮像装置4に制御信号を出力して、当該撮像装置4による毛細血管の撮像の際の倍率等を設定する。
撮像画像取得手段55は、撮像装置4により撮像された画像を取得する。
描画手段56は、撮像画像取得手段55により取得された撮像画像を処理して、フレーム単位の画像に変換し、当該画像を表示手段52に出力して表示させるほか、解析手段57に出力する。また、描画手段56は、判定手段59から入力する判定結果に係る画像を処理して、表示手段52に出力する。
【0033】
〔解析手段57の構成〕
図4は、解析手段57の構成を示すブロック図である。
解析手段57は、描画手段56から入力する撮像画像から、前述の診断情報を取得して、当該診断情報を、記憶手段58に記憶させるものであり、本発明の解析装置に相当する。このような解析手段57は、図4に示すように、部位設定部571、測定値取得部572及び診断情報取得部573を備えて構成されている。
【0034】
図5は、撮像画像中の毛細血管C2と、当該撮像画像中に設定された測定部位A,B及びブランク部位BLとを示す図である。なお、図5中の矢印X方向は、毛細血管C2内の血液の流通方向を示している。
部位設定部571は、操作手段51から入力する操作信号に応じて、撮像画像に含まれる毛細血管上の所定領域を測定部位(測定部位A,B)として設定する測定部位設定部5711と、測定部位に近接し、かつ、当該毛細血管上でない領域をブランク部位BLとして設定するブランク部位設定部5712とを備えている。このうち、測定部位設定部5711は、操作者の操作に応じて複数の測定部位を設定することが可能であり、その際、2つ目以降の測定部位及びブランク部位の寸法及び外形形状は、1つ目の測定部位の寸法及び外形形状と自動的に一致するように設定される。すなわち、各測定部位及びブランク部位BLの面積は、同一となる。なお、測定部位を複数箇所設定する場合には、それぞれ略同じ太さを有する毛細血管上の位置に設定することが好ましい。
このような測定部位設定部5711により、図5に示すように、撮像画像中の毛細血管C2上に、測定部位A,Bが設定され、また、当該測定部位A,Bに近接し、かつ、毛細血管C2上でない領域に、ブランク部位BLが設定される。
【0035】
図6は、測定値取得部572により取得された測定部位A,Bの各グレースケール値の変化を示すグラフである。なお、図6において、「▲」は測定部位Aに係るグレースケール値を示し、「□」は測定部位Bに係るグレースケール値を示している。
図4に戻り、測定値取得部572は、グレースケール値取得部5721、ブランク値減算部5722及びグレースケール値記憶部5723を備えて構成されている。すなわち、測定値取得部572は、本発明の色調取得部に相当する。
【0036】
グレースケール値取得部5721は、部位設定部571にて設定された測定部位A,B及びブランク部位BLの色調であるグレースケール値を取得する。なお、グレースケール値取得部5721は、測定部位A,B及びブランク部位BL内の平均グレースケール値を取得するが、以下の説明では、単にグレースケール値と略す。
ブランク値減算部5722は、取得された測定部位A,Bの各グレースケール値から、ブランク部位BLのグレースケール値であるブランク値を減算する。
グレースケール値記憶部5723は、減算された測定部位A,Bの各グレースケール値を、記憶手段58に記憶させる。
このような測定値取得部572により、図6に示すように、測定部位A,Bの各グレースケール値の変化が経時的に記憶手段58に記憶される。
【0037】
図4に戻り、診断情報取得部573は、記憶手段58に記憶された測定部位A,Bの各グレースケール値に基づいて、前述の診断情報を取得する。この診断情報取得部573は、流速値測定部574、心拍数測定部575、連銭形成判定部576及びヘマトクリット値算出部577を備えて構成されている。
【0038】
流速値測定部574は、毛細血管を拡大して撮像した撮像画像における2つの測定部位の距離と、所定期間内における当該各測定部位のグレースケール値のピークシフト(時間差)とから、赤血球若しくはその塊が一定距離を通過する速度、すなわち、血液の流速(血流速度)を測定する。この流速値測定部574は、距離算出部5741、時間差取得部5742及び流速値算出部5743を備えている。
距離算出部5741は、測定部位設定部5711により設定された測定部位A,B間の距離を、撮像装置4に設定した拡大倍率等に基づいて算出する。
【0039】
図7は、測定部位A,Bにおけるグレースケール値の経時変化を示すグラフである。
時間差取得部5742は、測定部位A,Bのそれぞれで生じるグレースケール値の変化の時間差を算出する。ここで、測定部位A,Bは、それぞれ同じ毛細血管C2における異なる位置に設定されているため、図7に示すように、測定部位Aにおける色調の経時変化(図7の上段)と、測定部位Bにおける色調の経時変化(図7の下段)との間には、同じ赤血球が通過した際に生じるピークが現れるタイミングが時間tだけシフトする。すなわち、毛細血管C2における上流側に位置する測定部位Aで生じたピークと同様のピークは、時間tが経過すると、下流側に位置する測定部位Bでも現れる。この時間tを時間差として、時間差取得部5742は取得する。
図4に戻り、流速値算出部5743は、算出された測定部位A,B間の距離、及び、ピークの時間差(時間t)に基づいて、流速値を算出する。この流速値算出部5743は、当該流速を必要に応じて所定期間算出し、算出した流速を記憶手段58に記憶させる。
【0040】
心拍数測定部575は、血液の流速値(血流速度)の変動サイクルから、心臓の拍動回数すなわち心拍数を測定する。この心拍数測定部575は、変動周期取得部5751及び心拍数算出部5752を備えている。
変動周期取得部5751は、流速値測定部574により算出された流速値の変動サイクルの周期を取得する。ここで、血液の流速値は、心臓の拍動直後が最も高く、次の拍動の直前が最も低い。この変動サイクルは、心臓の拍動が行われるごとに観測される。そして、変動周期取得部5751は、当該変動サイクルの周期(時間)を、流速値測定部574により測定された流速値に基づいて取得する。
心拍数算出部5752は、変動周期取得部5751により取得された流速値の変動サイクルの周期に基づいて、当該変動サイクルが1分間に生じる回数を心拍数として算出する。そして、心拍数算出部5752は、算出した心拍数を、記憶手段58に記憶させる。
【0041】
図8(A)〜(D)は、グレースケール値の変動パターンを示すグラフである。
連銭形成判定部576は、1つの測定部位(例えば、測定部位A)の所定期間内における平均グレースケール値に基づいて、血液中の赤血球の連銭形成の有無を判定する。
ここで、赤血球に連銭形成が生じていない場合、すなわち、各赤血球が分離している場合には、図8(A)に示すように、赤血球が滞ることなく連続的に流れるため、比較的高いグレースケール値で維持され、拍動ごとにグレースケール値の若干の低下が確認される程度となる。
一方、赤血球に連銭形成が生じている場合、すなわち、複数の赤血球が繋がっている場合には、図8(B),(C)に示すように、グレースケール値の増減(高低)が断続的に現れるか、あるいは、図8(D)に示すように、連銭形成が生じていない場合(図8(A)の場合)に比べて、所定期間内での平均グレースケール値が低く、ピークの移動が遅い(ピークが長い)。このようなグレースケール値の経時変化に基づいて、連銭形成判定部576は、赤血球の連銭形成の有無を判定する。このような連銭形成判定部576は、図4に示すように、変動パターン取得部5761及び変動パターン比較部5762を備えている。
【0042】
変動パターン取得部5761は、測定値取得部572により取得された測定部位A,Bのいずれか一方のグレースケール値の変動パターンから、当該変動パターンにおける所定期間(例えば、数回の心拍の周期に係る期間)内の変動パターンを抽出して取得する。
変動パターン比較部5762は、流速値測定部574により算出された血液の流速値を、後述する記憶手段58に記憶された基準値と比較するとともに、変動パターン取得部5761により取得された変動パターンと、記憶手段58に記憶された基準パターンとを比較する。そして、当該変動パターン比較部5762は、流速値が基準値より遅く、かつ、変動パターン取得部5761により取得された変動パターンにおけるピークの出現が、基準パターンに比べて断続的である場合に、血液中の赤血球が連銭形成を起こしていると判定する。
【0043】
ヘマトクリット値算出部577は、1つの測定部位(例えば、測定部位A)の所定期間内における総グレースケール値と、当該所定期間内における最大グレースケール値と所定期間との積とから、通過した総血液に占める赤血球の容積比率であるヘマトクリット値を算出する。このヘマトクリット値算出部577は、グレースケール値積分部5771、最大グレースケール値積算部5772及び値算出部5773を備えている。
【0044】
グレースケール値積分部5771は、本発明の総積分部に相当し、所定期間(例えば、数回の心拍の周期に係る期間)内の測定部位Aに係る総グレースケール値を算出する。具体的に、グレースケール値積分部5771は、当該所定期間内のグレースケール値の変動パターンに係る曲線を積分したグレースケール値の積分値を総グレースケール値として算出する。この総グレースケール値は、当該所定期間内に測定部位Aを通過した赤血球の容積に対応する。
【0045】
最大グレースケール値積算部5772は、本発明の最大値積算部に相当し、前述の総グレースケール値の算出と同じ所定期間内における最大グレースケール値を選択し、当該最大グレースケール値と当該所定期間(時間)との積を、総最大グレースケール値として算出する。この積は、仮に赤血球が血液の全てを占めると仮定した場合に、当該血液が所定期間通過することによって生じる測定部位Aにおける色調の積算値であり、当該所定期間内に測定部位Aを通過した血液の容積に対応する。
値算出部5773は、算出された総グレースケール値を総最大グレースケール値で除算することにより、ヘマトクリット値を算出する。この算出されたヘマトクリット値は、値算出部5773により、記憶手段58に記憶される。
【0046】
〔記憶手段58の構成〕
図3に戻り、記憶手段58は、本実施形態では、HDD(Hard Disk Drive)により構成され、解析装置5での各処理に必要な各種プログラム及びデータを記憶する。このようなプログラムとして、後述するグレースケール値取得処理、流速値算出処理、心拍数算出処理、連銭形成判定処理及びヘマトクリット値算出処理を実行させるプログラム等を、また、データとして、被験者ごとの各測定部位における前述のグレースケール値の変動パターン、各診断情報、及び、当該各診断情報に対する評価結果や、上記各処理で利用される基準値及び基準パターン等を、記憶手段58は記憶している。
【0047】
〔判定手段59の構成〕
図9は、判定手段59の構成を示すブロック図である。
判定手段59は、解析手段57により取得され、かつ、記憶手段58に記憶された各診断情報に基づいて、被験者の生活習慣病の疾患の発症危険度を判定する。この判定手段59は、流速値判定部591、心拍数判定部592、連銭形成程度判定部593、ヘマトクリット値判定部594、評価部595及び結果出力部596を備えている。
【0048】
流速値判定部591、心拍数判定部592及びヘマトクリット値判定部594は、それぞれ算出された流速値、心拍数及びヘマトクリット値を、記憶手段58に記憶された各基準値と比較し、当該基準値を基準とする所定の段階(例えば、5段階)で評価する。
連銭形成程度判定部593は、連銭形成判定部576により、赤血球の連銭形成が生じていると判定された際に、当該赤血球を含む血液の流速値、及び、変動パターンにおけるピーク形状から、記憶手段58に記憶された基準値及び基準パターンと比較して連銭形成の程度を判定し、当該基準値を基準とする所定の段階で評価する。
【0049】
評価部595は、前述の各判定部591〜594により評価された診断情報である流速値、心拍数、連銭形成の程度及びヘマトクリット値の段階に基づいて、これら診断情報を複合的及び総合的に評価し、生活習慣病の発症危険度を評価する。例えば、評価部595は、ヘマトクリット値の評価段階が高い場合(ヘマトクリット値が高い場合)には、赤血球増多症(多血症)の危険性が高いと評価する。
結果出力部596は、評価部595による評価結果を出力する。この際、評価部595により、生活習慣病の発症危険度が高いと評価された場合には、結果出力部596は、警告等を合わせて出力する。なお、本実施形態では、結果出力部596は、当該評価結果を描画手段56に出力し、表示手段52により表示させる構成としているが、プリンタ等が解析装置5に接続されている場合には、当該プリンタに評価結果を印刷出力させるように構成してもよい。
【0050】
以下、解析装置5で実行させる各処理について説明する。これらの処理は、操作手段51に対する操作者の入力操作に応じて実行され、解析手段57が、記憶手段58に記憶された各プログラムを読み出して、当該プログラムを実行することにより行われる。
【0051】
〔グレースケール値取得処理SA〕
図10は、グレースケール値取得処理SAの処理過程を示すフローチャートである。
グレースケール値取得処理SAは、撮像画像中の毛細血管に測定部位(例えば、測定部位A,B)を設定し、当該測定部位に係るグレースケール値を取得する処理である。
このグレースケール値取得処理SAでは、図10に示すように、まず、解析手段57の部位設定部571を構成する測定部位設定部5711及びブランク部位設定部5712が、操作者の操作手段51に対する入力操作に応じて、ブランク部位BL及び測定部位A,Bを設定する(ステップSA01〜SA03)。これらのうち、ステップSA02,SA03が、測定部位設定手順及び測定部位設定ステップに相当する。
この後、測定値取得部572のグレースケール値取得部5721が、ブランク部位BLのグレースケール値をブランク値として取得する(ステップSA04)。
【0052】
次に、グレースケール値取得部5721が、測定部位Aのグレースケール値を取得し(ステップSA05)、ブランク値減算部5722が、取得されたグレースケール値からブランク値を減算する(ステップSA06)。そして、グレースケール値記憶部5723が、減算されたグレースケール値を、測定部位Aのグレースケール値として、記憶手段58に記憶させる(ステップSA07)。
また、同じくグレースケール値取得部5721が、測定部位Bのグレースケール値を取得し(ステップSA08)、ブランク値減算部5722が、取得されたグレースケール値からブランク値を減算する(ステップSA09)。そして、グレースケール値記憶部5723が、減算されたグレースケール値を、測定部位Bのグレースケール値として、記憶手段58に記憶させる(ステップSA10)。
これらステップSA05〜SA07及びステップSA08〜SA10が、本発明の色調取得手順及び色調取得ステップに相当する。
【0053】
このステップSA10の後、解析手段57は、ステップSA05に戻り、測定部位A,Bのグレースケール値の取得、減算及び記憶を繰り返す。なお、本実施形態では、測定部位として、2つの測定部位A,Bが設定されているため、ステップSA05〜SA07及びステップSA08〜SA10が繰り返し実行される。しかしながら、測定部位Aのみが設定されている場合には、ステップSA05〜SA07が繰り返し実行され、また、測定部位A,Bとは異なる他の測定部位が更に設定されている場合には、当該測定部位に係るグレースケール値の取得、減算及び記憶が、ステップSA05〜SA07と同様に行われる。
【0054】
〔流速値算出処理SB〕
図11は、流速値算出処理SBの処理過程を示すフローチャートである。
流速値算出処理SBは、前述のグレースケール値取得処理SAで取得されたグレースケール値に基づいて、測定部位A,Bが設定された毛細血管中を流れる血液の流速値を算出する処理である。なお、以下に説明する流速値算出処理SB、心拍数算出処理SC、連銭形成判定処理SD及びヘマトクリット値算出処理SEが、本発明の診断情報取得手順及び診断情報取得ステップに相当する。
この流速値算出処理SBは、図11に示すように、まず、流速値測定部574の距離算出部5741が、測定部位A,B間の距離を算出する(ステップSB01)。
次に、時間差取得部5742が、測定部位A,Bに係るグレースケール値の変化をそれぞれ比較し、測定部位Aに対して遅れて現れる測定部位Bのグレースケール値の時間差(前述の時間t)を取得する(ステップSB02)。
【0055】
この後、流速値算出部5743が、算出された距離及び時間差から、心臓の少なくとも1回の拍動に応答する期間(好ましくは、複数回の拍動に対応する期間)分、血液の流速値を経時的に算出し、当該流速値を記憶手段58に記憶させる(ステップSB03)。
そして、判定手段59の流速値判定部591が、算出された流速値を基準値と比較して、当該流速値を評価する(ステップSB04)。この評価結果は、記憶手段58に記憶される。
以上により、流速値算出処理SBが終了する。
【0056】
〔心拍数算出処理SC〕
図12は、心拍数算出処理SCの処理過程を示すフローチャートである。
心拍数算出処理SCは、流速値算出処理SBにより算出された流速値の変化に基づいて、心拍数を算出する処理である。
この心拍数算出処理SCでは、図12に示すように、まず、心拍数測定部575の変動周期取得部5751が、算出された流速値に基づいて、当該流速値の変動周期を取得する(ステップSC01)。
次に、心拍数算出部5752が、取得された変動周期に基づいて、1分間の変動周期の回数、すなわち、心拍数を算出し、当該心拍数を記憶手段58に記憶させる(ステップSC02)。
この後、判定手段59の心拍数判定部592が、算出された心拍数を基準値と比較して、当該心拍数を評価する(ステップSC03)。
以上により、心拍数算出処理SCが終了する。
【0057】
〔連銭形成判定処理SD〕
図13は、連銭形成判定処理SDの処理過程を示すフローチャートである。
連銭形成判定処理SDは、前述のグレースケール値取得処理SAにて取得されたグレースケール値に基づいて、赤血球の連銭形成の有無を判定し、連銭形成が生じていると判定された際には、当該連銭形成の程度を評価する処理である。なお、以下の説明では、測定部位Aに係るグレースケール値を用いて、赤血球の連銭形成の有無及び程度を判定する手順を説明するが、測定部位Bに係るグレースケール値を用いた場合も同様である。
この連銭形成判定処理SDでは、図13に示すように、まず、連銭形成判定部576の変動パターン取得部5761が、所定期間内のグレースケール値の変動パターンを取得する(ステップSD01)。
そして、変動パターン比較部5762が、前述のように、取得された変動パターンと、記憶手段58に記憶され、かつ、流速値測定部574により算出された流速値に応じた基準パターンとを比較し、当該変動パターンと基準パターンとの差異の有無を判定する(ステップSD02)。
【0058】
ここで、変動パターン比較部5762が、各パターン間で差異が大きくないと判定した場合には、当該変動パターン比較部5762は、赤血球に連銭形成が生じていないと判定し(ステップSD03)、当該判定結果を記憶手段58に記憶した後、連銭形成判定処理SDは終了する。
一方、変動パターン比較部5762が、各パターン間で差異が大きいと判定した場合には、当該変動パターン比較部5762は、赤血球に連銭形成が生じていると判定し(ステップSD04)、判定結果を記憶手段58に記憶させる。
この後、判定手段59の連銭形成程度判定部593は、赤血球の連銭形成の程度を評価し、当該評価結果を記憶手段58に記憶させる(ステップSD05)。
以上により、連銭形成判定処理SDが終了する。
【0059】
〔ヘマトクリット値算出処理SE〕
図14は、ヘマトクリット値算出処理SEの処理過程を示すフローチャートである。
ヘマトクリット値算出処理SEは、前述のグレースケール値取得処理SAにて取得されたグレースケール値に基づいて、ヘマトクリット値を算出する処理である。なお、以下の説明では、測定部位Aに係るグレースケール値を用いてヘマトクリット値を算出する手順を説明するが、測定部位Bに係るグレースケール値を用いた場合も同様である。
このヘマトクリット値算出処理SEでは、図14に示すように、まず、ヘマトクリット値算出部577のグレースケール値積分部5771が、所定期間内の測定部位Aから取得されるグレースケール値の積分値(総グレースケール値)を算出する(ステップSE01)。
【0060】
そして、最大グレースケール値積算部5772が、ステップSE01と同じ所定期間における最大グレースケール値を選択する(ステップSE02)。
この後、最大グレースケール値積算部5772が、選択された最大グレースケール値と、当該所定期間(時間)との積を、総最大グレースケール値として算出する(ステップSE03)。
次に、値算出部5773が、ステップSE01で算出された総グレースケール値を、ステップSE03で算出された総最大グレースケール値で除算して、ヘマトクリット値を算出する(ステップSE04)。このヘマトクリット値は、値算出部5773により記憶手段58に記憶される。
そして、判定手段59のヘマトクリット値判定部594が、算出されたヘマトクリット値を基準値と比較して、当該ヘマトクリット値を評価する(ステップSE05)。
以上により、ヘマトクリット値算出処理SEが終了する。
【0061】
以上の各処理SB〜SEが終了すると、判定手段59の評価部595が、各診断情報を評価し、被験者の生活習慣病の発症危険度が評価される。そして、当該評価結果は、結果出力部596により、描画手段56に出力され、これにより、表示手段52に、評価結果が出力される。
【0062】
なお、本実施形態では、毛細血管を撮像しつつ、測定部位A,Bにおけるグレースケール値の変動パターンを取得するグレースケール値取得処理SAを実行し、当該処理SAの後、引き続き上記各処理SB〜SEを実行して、各診断情報の取得及び生活習慣病の発症危険度の評価を行うとしたが、これら各処理SB〜SEは、グレースケール値取得処理SAと同時に、或いは、当該処理SAの後継続して行われるリアルタイム処理でなくともよい。すなわち、グレースケール値取得処理SAにて取得され、かつ、記憶手段58に記憶された測定部位A,Bにおけるグレースケール値の変動パターンに基づいて、任意のタイミングで各診断情報の取得及び生活習慣病の発症危険度の評価を行ってもよい。
また、グレースケール値取得処理SAにおいても、予め取得しておいた動画としての撮像画像に対して、測定部位及びブランク部位の設定、並びに、グレースケール値の取得を行うようにしてもよい。
【0063】
更に、記憶手段58は、複数の被験者のデータ(変動パターン、各診断情報及び生活習慣病の発症危険度の評価等)を記憶することができるので、当該各被験者のデータをそれぞれ比較することも可能である。これにより、被験者の年代及び性別等に応じた各診断情報の傾向を取得することができ、評価対象である被験者の生活習慣病の発症危険度をより詳細に評価することができる。
【0064】
〔実施形態の効果〕
以上説明した本実施形態の診断支援システム1によれば、以下の効果を奏することができる。
すなわち、操作者は、解析装置5の操作手段51を操作して、撮像装置4により撮像され、かつ、表示手段52に表示された撮像画像中の毛細血管の所定位置に、測定部位A,Bを設定することにより、前述の診断情報を取得することができる。これによれば、操作者が当該毛細血管の赤血球の流れを観察しながら解析装置5を操作する必要が無いので、診断情報の取得に係る操作者の手作業を削減することができる。従って、診断情報を簡易に取得することができるほか、診断情報の信頼性を向上することができる。
【0065】
また、流速値測定部574により、毛細血管上に設定された2つの測定部位A,B間の距離が算出され、また、当該各測定部位A,Bのグレースケール値の変化の時間差が取得される。そして、これら距離及び時間差から、血液の流速値が自動的に算出される。これによれば、毛細血管中の血液の流速値を簡易に取得することができる。
【0066】
また、流速値を取得する際に設定された各測定部位A,Bは、それぞれ同じ寸法(面積)を有するように設定される。これによれば、各測定部位A,Bから取得されるグレースケール値は、それぞれ略同じとなるので、測定部位A,Bに係るそれぞれのグレースケール値に誤差が生じることを抑制することができる。従って、ピークの検出を行いやすくすることができ、取得される時間差の正確性を向上することができるので、測定された流速値の信頼性を向上することができる。
【0067】
また、心拍数は、心拍数測定部575により、算出された流速値に基づいて算出される。この際、心臓の拍動により流速値に周期的な変動が生じることから、当該流速値の変動周期を取得し、当該変動周期に基づいて、心拍数が算出される。これによれば、心拍数を簡易かつ正確に取得することができる。
【0068】
また、赤血球の連銭形成の有無は、連銭形成判定部576により、所定期間内の測定部位(例えば、測定部位A)のグレースケール値の変化に基づいて判定される。これによれば、毛細血管中を流れる赤血球を直接観察する必要なく、当該赤血球の連銭形成の有無に係る診断情報を取得することができる。
【0069】
また、ヘマトクリット値は、ヘマトクリット値算出部577により算出される。この際、測定部位(例えば、測定部位A)における所定期間内の総グレースケール値が算出され、同じく所定期間内の最大グレースケール値が選択される。そして、当該最大グレースケール値と所定期間(時間)との積で、総グレースケール値を除算した値が、ヘマトクリット値として算出される。これによれば、測定部位から取得されるグレースケール値を用いて、ヘマトクリット値を自動的に算出することができる。従って、ヘマトクリット値を簡易に取得することができる。
【0070】
また、各測定部位A,Bからグレースケール値を取得する際には、当該グレースケール値から、測定部位A,Bに近接し、かつ、毛細血管上にないブランク部位BLから取得されたグレースケール値が減算される。これによれば、当該測定部位A,Bにおいて赤血球の通過によって生じるグレースケール値のみを取得することができる。従って、上記診断情報の信頼性及び正確性を向上することができる。
【0071】
また、本実施形態の診断支援システム1は、撮像装置4による撮像領域である被験者の指の爪皮下部分を照明する照明装置3を備えている。これによれば、撮像装置4により毛細血管を鮮明に撮像することができ、設定された測定部位A,Bにおけるグレースケール値の取得を適切かつ正確に行うことができる。また、当該照明装置3による照明光は、800〜900nmの波長を有する近赤外光、又は、血液の色(赤色)の補色である緑色光であるので、撮像画像中の赤血球を鮮明に観察することができ、これにより、測定部位A,Bから取得されるグレースケール値の精度を一層向上することができる。
【0072】
更に、解析装置5は、取得された診断情報を評価して、生活習慣病の発症危険度を判定する判定手段59を備えている。これによれば、被験者の生活習慣病の疾患の発症危険度を簡易に判定することができ、治療等に役立てることができる。
【0073】
〔実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、測定部位設定部5711は、2つの測定部位A,Bを設定するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、設定される測定部位は、少なくとも1つ、流速値を測定する場合には、少なくとも2つあればよく、当該測定部位の数は、適宜設定してよい。
【0074】
前記実施形態では、測定値取得部572は、測定部位A,Bにおけるグレースケール値を取得するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、所定波長の色光の輝度値を取得してもよく、赤血球の通過を検出可能な階調値であればよい。
また、前記実施形態では、照明装置3は、800〜900nmの波長を有する近赤外光、又は、血液の色(赤色)の補色である緑色光を照射するとしたが、本発明はこれに限らず、例えば、白色光を照射するように構成してもよい。
【0075】
前記実施形態では、撮像装置4は、被験者の指の爪皮下部分に位置する毛細血管を撮像するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、少なくとも1つの毛細血管を撮像することができればよく、撮像装置4によって撮像される部位は限定されない。
前記実施形態では、診断支援システム1は、診断情報として、毛細血管中を流れる血液の流速値、心拍数、赤血球の連銭形成の有無、及び、ヘマトクリット値を取得するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、診断情報は、撮像画像における毛細血管上の少なくとも1つの測定部位で測定される色調に基づいて取得される情報であれば、他の内容に係る情報であってもよい。
【0076】
前記実施形態では、各種プログラムは、記憶手段58に記憶されているとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、CD及びDVD等の記録媒体に記録され、必要に応じて、当該記録媒体から読み出されて実行されるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、診断情報取得システムに利用でき、特に生活習慣病等の血清粘度上昇によって引き起こされる疾患に係る診断支援システムに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る診断支援システムの構成を示す模式図。
【図2】前記実施形態における毛細血管の拡大画像を示す図。
【図3】前記実施形態における解析装置の構成を示すブロック図。
【図4】前記実施形態における解析手段の構成を示すブロック図。
【図5】前記実施形態における撮像画像中の毛細血管、測定部位及びブランク部位を示す図。
【図6】前記実施形態における各測定部位のグレースケール値の変動パターンを示すグラフ。
【図7】前記実施形態における各測定部位のグレースケール値の変動パターンを示すグラフ。
【図8】前記実施形態におけるグレースケール値の変動パターンを示すグラフ。
【図9】前記実施形態における判定手段の構成を示すブロック図。
【図10】前記実施形態におけるグレースケール値取得処理を示すフローチャート。
【図11】前記実施形態における流速値算出処理を示すフローチャート。
【図12】前記実施形態における心拍数算出処理を示すフローチャート。
【図13】前記実施形態における連銭形成判定処理を示すフローチャート。
【図14】前記実施形態におけるヘマトクリット値算出処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0079】
1…診断支援システム(診断情報取得システム)、3…照明装置、4…撮像装置、5…解析装置、59…判定手段、572…測定値取得部(色調取得部)、573…診断情報取得部、574…流速値測定部、575…心拍数算出部、576…連銭形成判定部、5711…測定部位設定部、5712…ブランク部位設定部、5741…距離算出部、5742…時間差取得部、5743…流速値算出部、5771…グレースケール値積算部(総積分部)、5772…最大グレースケール値積算部(最大値積算部)、5773…値算出部、A,B…測定部位、BL…ブランク部位、C1〜C6…毛細血管、SA02,SA03…ステップ(測定部位設定手順,測定部位設定ステップ)、SA05〜SA07,SA08〜SA10…ステップ(色調取得手順,色調取得ステップ)、SB…流速値算出処理(診断情報取得手順、診断情報取得ステップ)、SC…心拍数算出処理(診断情報取得手順、診断情報取得ステップ)、SD…連銭形成判定処理(診断情報取得手順、診断情報取得ステップ)、SE…ヘマトクリット値算出処理(診断情報取得手順、診断情報取得ステップ)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得システムであって、
前記毛細血管が分布する分布部位を撮像する撮像装置と、
前記撮像手段により撮像された前記毛細血管の撮像画像を解析する解析装置とを備え、
前記解析装置は、
前記撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定部と、
選択された前記測定部位における色調を取得する色調取得部と、
取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得部とを備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項2】
請求項1に記載の診断情報取得システムにおいて、
前記測定部位設定部は、それぞれ異なる2つの測定部位を選択し、
前記診断情報取得部は、
前記色調取得部により取得された前記2つの測定部位に係る前記色調の経時変化のそれぞれに基づいて、前記血液の流速値を測定する流速値測定部を備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項3】
請求項2に記載の診断情報取得システムにおいて、
前記流速値測定部は、
前記2つの測定部位間の距離を算出する距離算出部と、
前記2つの測定部位の前記各色調の経時変化の時間差を取得する時間差取得部と、
前記距離、及び、前記時間差に基づいて、前記流速値を算出する流速値算出部とを備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の診断情報取得システムにおいて、
前記測定部位設定部は、前記測定部位として、前記毛細血管上のそれぞれ同じ面積を有する領域を選択することを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の診断情報取得システムにおいて、
前記診断情報取得部は、
前記流速値測定部により測定された前記流速値の周期変動に基づいて、心拍数を算出する心拍数算出部を備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の診断情報取得システムにおいて、
前記診断情報取得部は、
前記色調の経時変化に基づいて、前記血液に含まれる赤血球の連銭形成の有無を判定する連銭形成判定部を備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の診断情報取得システムにおいて、
前記診断情報取得部は、
所定期間内での1つの前記測定部位に係る前記色調の経時変化を積分した総積分値を算出する総積分部と、
前記所定期間内での前記1つの測定部位に係る前記色調の最大値を選択し、当該最大値と前記所定期間との積を算出する最大値積算部と、
前記総積分値を前記積で除算してヘマトクリット値を算出する値算出部とを備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の診断情報取得システムにおいて、
前記測定部位に近接し、かつ、前記毛細血管外の所定領域をブランク部位として設定するブランク部位設定部を備え、
前記色調取得部は、前記測定部位の前記色調から、前記ブランク部位に係る色調を減算した色調を算出し、
前記診断情報取得部は、
前記色調取得部により算出された前記色調に基づいて、前記診断情報を取得することを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の診断情報取得システムにおいて、
前記分布部位を照明する照明装置を備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項10】
毛細血管を流れる血液から得られる診断情報から、生活習慣病の疾患の発症危険度を診断する診断支援システムであって、
請求項1から請求項9のいずれかに記載の診断情報取得システムと、
前記診断情報取得システムにより取得された前記診断情報に基づいて、前記発症危険度を判定する判定手段とを備えることを特徴とする診断支援システム。
【請求項11】
毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得方法であって、
毛細血管を撮像した撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定手順と、
前記測定部位における色調を取得する色調取得手順と、
取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得手順とを有することを特徴とする診断情報取得方法。
【請求項12】
毛細血管を撮像する撮像装置と、前記撮像装置により撮像された前記毛細血管の撮像画像を処理する解析装置とを備えた診断情報取得システムの前記解析装置により実行され、前記毛細血管中の血液に係る診断情報を取得する診断情報取得プログラムであって、
前記解析装置に、
前記撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定ステップと、
前記測定部位における色調を取得する色調取得ステップと、
取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得ステップとを実行させることを特徴とする診断情報取得プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載の診断情報取得プログラムをコンピュータ読取可能に記録したことを特徴とする記録媒体。
【請求項1】
毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得システムであって、
前記毛細血管が分布する分布部位を撮像する撮像装置と、
前記撮像手段により撮像された前記毛細血管の撮像画像を解析する解析装置とを備え、
前記解析装置は、
前記撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定部と、
選択された前記測定部位における色調を取得する色調取得部と、
取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得部とを備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項2】
請求項1に記載の診断情報取得システムにおいて、
前記測定部位設定部は、それぞれ異なる2つの測定部位を選択し、
前記診断情報取得部は、
前記色調取得部により取得された前記2つの測定部位に係る前記色調の経時変化のそれぞれに基づいて、前記血液の流速値を測定する流速値測定部を備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項3】
請求項2に記載の診断情報取得システムにおいて、
前記流速値測定部は、
前記2つの測定部位間の距離を算出する距離算出部と、
前記2つの測定部位の前記各色調の経時変化の時間差を取得する時間差取得部と、
前記距離、及び、前記時間差に基づいて、前記流速値を算出する流速値算出部とを備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の診断情報取得システムにおいて、
前記測定部位設定部は、前記測定部位として、前記毛細血管上のそれぞれ同じ面積を有する領域を選択することを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の診断情報取得システムにおいて、
前記診断情報取得部は、
前記流速値測定部により測定された前記流速値の周期変動に基づいて、心拍数を算出する心拍数算出部を備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の診断情報取得システムにおいて、
前記診断情報取得部は、
前記色調の経時変化に基づいて、前記血液に含まれる赤血球の連銭形成の有無を判定する連銭形成判定部を備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の診断情報取得システムにおいて、
前記診断情報取得部は、
所定期間内での1つの前記測定部位に係る前記色調の経時変化を積分した総積分値を算出する総積分部と、
前記所定期間内での前記1つの測定部位に係る前記色調の最大値を選択し、当該最大値と前記所定期間との積を算出する最大値積算部と、
前記総積分値を前記積で除算してヘマトクリット値を算出する値算出部とを備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の診断情報取得システムにおいて、
前記測定部位に近接し、かつ、前記毛細血管外の所定領域をブランク部位として設定するブランク部位設定部を備え、
前記色調取得部は、前記測定部位の前記色調から、前記ブランク部位に係る色調を減算した色調を算出し、
前記診断情報取得部は、
前記色調取得部により算出された前記色調に基づいて、前記診断情報を取得することを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の診断情報取得システムにおいて、
前記分布部位を照明する照明装置を備えることを特徴とする診断情報取得システム。
【請求項10】
毛細血管を流れる血液から得られる診断情報から、生活習慣病の疾患の発症危険度を診断する診断支援システムであって、
請求項1から請求項9のいずれかに記載の診断情報取得システムと、
前記診断情報取得システムにより取得された前記診断情報に基づいて、前記発症危険度を判定する判定手段とを備えることを特徴とする診断支援システム。
【請求項11】
毛細血管中を流れる血液に係る診断情報を取得する診断情報取得方法であって、
毛細血管を撮像した撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定手順と、
前記測定部位における色調を取得する色調取得手順と、
取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得手順とを有することを特徴とする診断情報取得方法。
【請求項12】
毛細血管を撮像する撮像装置と、前記撮像装置により撮像された前記毛細血管の撮像画像を処理する解析装置とを備えた診断情報取得システムの前記解析装置により実行され、前記毛細血管中の血液に係る診断情報を取得する診断情報取得プログラムであって、
前記解析装置に、
前記撮像画像における1つの前記毛細血管上の測定部位を少なくとも1つ設定する測定部位設定ステップと、
前記測定部位における色調を取得する色調取得ステップと、
取得された前記色調の経時変化に基づいて、前記診断情報を取得する診断情報取得ステップとを実行させることを特徴とする診断情報取得プログラム。
【請求項13】
請求項12に記載の診断情報取得プログラムをコンピュータ読取可能に記録したことを特徴とする記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−302136(P2008−302136A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154352(P2007−154352)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(501302430)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(501302430)
【Fターム(参考)】
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