説明

評価方法、評価プログラムおよび評価装置

【課題】強誘電体の分極の極性を非破壊・非接触で評価する。
【解決手段】分極の極性が既知の強誘電体のX線回折測定を行い、用いたX線のエネルギー、回折ピークの指数、分極の極性、回折ピーク強度を含むデータベースをあらかじめ作成しておく(ステップS1〜S3)。そして、分極の極性が未知の強誘電体のX線回折測定を行って所定方位の回折ピーク強度を求め(ステップS4)、その回折ピーク強度をデータベースのデータと比較することによって、その強誘電体の分極の極性を判別する(ステップS5)。これにより、強誘電体の分極の極性を、X線を用いて、非破壊・非接触で評価することができると共に、その分極の極性を適正にかつ簡便に評価することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は評価方法、評価プログラムおよび評価装置に関し、特に、強誘電体の分極を評価する評価方法、評価プログラムおよび評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置を構成する素子の材料として、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr1-xTix)O3)をはじめとする強誘電体材料が注目されている。また、すでにそのような強誘電体をキャパシタ材料として用いた強誘電体メモリ(Ferroelectric Random Access Memory,FeRAM)が実用化されている。FeRAMに強誘電体からなる膜を用いた場合には、その膜の分極の極性および大きさが、FeRAM特性に大きく影響してくる。
【0003】
従来、強誘電体の分極を評価する方法としては、走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope,SPM)を用いてその極性および大きさを評価する方法が提案されている(特許文献1参照)。このほか、強誘電体の分極を評価する方法として、試料の温度を変化させて表面電荷の極性を評価する方法も提案されている(特許文献2参照)。なお、この提案では、試料に光を照射し、分域壁における消光比の劣化によって極性を評価する方法についても述べられている。
【0004】
また、従来、X線を用いて強誘電体の分極を評価する方法も提案されている(特許文献3参照)。この提案では、X線回折による回折ピークが分裂しているか否かに応じ、分裂している場合にはその回折ピーク位置を基に、分裂していない場合には所定の回折線の半値幅を基に、それぞれ分極の大きさを算出するようにしている。また、このようなX線のほか、強誘電体にアルゴンレーザ等を照射し、そのときその強誘電体から放射されるラマン散乱光を検出することによって、その強誘電体の分極の大きさを評価するといった方法も提案されている(特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2002−323543号公報
【特許文献2】特開平9−49813号公報
【特許文献3】特開2002−181739号公報
【特許文献4】特開2000−68464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、強誘電体の分極を評価するための従来の方法には、以下のような問題点があった。
まず、強誘電体の分極の極性および大きさをSPMによって評価する場合には、評価に当たり、収束イオンビーム(Focused Ion Beam,FIB)等による試料の加工が必要になり、その試料を破壊してしまうことになる。そのため、SPMは、完成前あるいは完成後の製品についての不良解析には用いることができても、最終的に製品の良・不良を判定する際のような非破壊で行われるべき検査には用いることができない。
【0006】
また、試料の温度を変化させて表面電荷の極性を評価する方法は、電極を形成して強誘電体キャパシタとした状態では評価することができない。また、この方法の場合、温度変化による試料の変質の懸念もある。
【0007】
試料に光を照射し分域壁における消光比の劣化によって極性を評価する方法、あるいは光を照射しラマン散乱光を検出して分極の大きさを評価する方法の場合でも、やはり強誘電体キャパシタとした状態では評価することができない。
【0008】
したがって、これらの方法では、FeRAMの製造過程、すなわち強誘電体の成膜からメモリの完成(パッケージ封止後)にわたって、強誘電体を非破壊・非接触で評価することができなかった。
【0009】
メモリの完成までの強誘電体の評価を非破壊・非接触で行うことのできる方法として、上記のようなX線回折ピークの位置や形状(分裂状態)を基に評価する方法がある。しかし、この方法では、強誘電体の分極の大きさを知ることはできても、その分極の極性を判別することはできなかった。
【0010】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、X線を用いて強誘電体の分極の極性を判別することのできる評価方法、評価プログラムおよび評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では上記課題を解決するために、強誘電体の分極を評価する評価方法において、前記強誘電体を構成する元素の吸収端近傍のエネルギーを有するX線であって、前記強誘電体の分極の極性によって前記強誘電体の分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度が異なるエネルギーを有する前記X線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定し、測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする評価方法が提供される。
【0012】
このような評価方法によれば、強誘電体の分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度が、その強誘電体を構成する元素の吸収端近傍のエネルギーを有しその強誘電体の分極の極性によって分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度が異なるエネルギーを有するX線を用いて測定され、測定されたその回折ピーク強度を用いてその強誘電体の分極の極性が判別される。これにより、X線を用いて強誘電体の分極の極性が評価されるようになる。
【0013】
また、本発明では、強誘電体の分極を評価する処理を行う評価プログラムにおいて、コンピュータを、X線回折装置に、前記強誘電体を構成する元素の吸収端近傍のエネルギーを有するX線であって、前記強誘電体の分極の極性によって前記強誘電体の分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度が異なるエネルギーを有する前記X線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定させる手段、前記X線回折装置によって測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段、として機能させることを特徴とする評価プログラムが提供される。
【0014】
このような評価プログラムによれば、コンピュータが、X線回折装置に所定エネルギーのX線を用いて強誘電体の分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定させる手段、測定されたその回折ピーク強度を用いてその強誘電体の分極の極性を判別する手段として機能する。これにより、コンピュータおよびX線回折装置によって、X線を用いた強誘電体の分極の極性の評価が行われるようになる。
【0015】
また、本発明では、強誘電体の分極を評価する評価装置において、前記強誘電体を構成する元素の吸収端近傍のエネルギーを有するX線であって、前記強誘電体の分極の極性によって前記強誘電体の分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度が異なるエネルギーを有する前記X線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定する手段と、測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段と、を有することを特徴とする評価装置が提供される。
【0016】
このような評価装置によれば、所定エネルギーのX線を用いて強誘電体の分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度が測定され、測定されたその回折ピーク強度を用いてその強誘電体の分極の極性が判別される。これにより、X線を用いて強誘電体の分極の極性が評価されるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、強誘電体の構成元素の吸収端近傍でその強誘電体の分極の極性によって回折ピーク強度が異なるエネルギーを有するX線を用いて回折ピーク強度を測定し、測定されたその回折ピーク強度を用いてその強誘電体の分極の極性を判別するようにした。これにより、強誘電体の分極の極性を、X線を用いて非破壊・非接触で評価することができると共に、その分極の極性を適正にかつ簡便に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
まず、第1の実施の形態について説明する。
図1は評価試料の断面模式図である。
【0019】
図1に示す評価試料は、シリコン(Si)基板10上に酸化シリコン(SiO2)膜11が形成され、その上に下地層として酸化アルミニウム(Al23)膜12、下部電極として白金(Pt)膜13、強誘電体膜としてPb(Zr0.5Ti0.5)O3(PZT)膜14、および上部電極として酸化イリジウム(IrO2)膜15を順に積層した構造を有している。PZT膜14は、膜厚が約150nm、正方晶構造であって、その分極方向は(001)であるものとする。
【0020】
ここで、このような構造を有する評価試料であって、そのPZT膜14の分極が上向き、下向きであることがわかっているものについてそれぞれ、PZT膜14の構成元素の1つであるジルコニウム(Zr)の吸収端近傍のエネルギーを有するX線を用いて、X線回折装置を用いて回折測定を行い、その分極方向と同じ方位の(006)の回折ピークの積分強度(回折ピーク強度)を求めた。
【0021】
図2および図3はX線のエネルギーと回折ピーク強度の関係を示す図である。図2において、横軸はX線のエネルギー(keV)を表し、縦軸は(006)の回折ピーク強度I(006)を表している。なお、図2中、分極が上向きのときの(006)の回折ピーク強度はI↑(006)、分極が下向きのときの(006)の回折ピーク強度はI↓(006)と示している。また、図3において、横軸はX線のエネルギー(keV)を表し、縦軸は図2に示した分極が上向きのときの(006)の回折ピーク強度I↑(006)を分極が下向きのときの(006)の回折ピーク強度I↓(006)で割った回折ピーク強度比I↑(006)/I↓(006)を表している。
【0022】
図2および図3より、X線のエネルギーがZrのK吸収端(Zr−K吸収端)より低い場合には、分極が上向きのときの回折ピーク強度I↑(006)と、分極が下向きのときの回折ピーク強度I↓(006)との間に差が認められた。一方、X線のエネルギーがZr−K吸収端より高い場合には、双方の回折ピーク強度I↑(006),I↓(006)の間にほとんど差は見られなかった。
【0023】
このように、分極が上向きと下向きのPZT膜14について、その構成元素であるZrのK吸収端近傍のエネルギーを有するX線を用いて回折測定を行い、各エネルギーについて回折ピーク強度I(006)を求めると、回折ピーク強度I(006)が分極の極性によって異なるエネルギー範囲が存在する。
【0024】
この第1の実施の形態では、このような性質、すなわち所定方位の回折ピーク強度が分極の極性によって異なるエネルギー範囲のX線を用いて、PZT膜の分極を評価する。
例えば、まず、分極の極性が既知の強誘電体膜を含む評価試料について、その強誘電体膜の構成元素の吸収端近傍のエネルギーを有するX線を用いて回折測定を行い、図2や図3に示したような所定方位(例えば分極方向)の回折ピーク強度や用いたX線のエネルギー等をデータベース化しておく。そして、分極方向が同じで分極の極性が未知の強誘電体膜を含む評価試料について、その強誘電体膜の分極の極性によって回折ピーク強度が異なってくるエネルギーのX線を用いてその回折測定を行う。得られるその所定方位の回折ピーク強度をデータベースのデータと比較すれば、その評価試料に含まれる強誘電体膜の分極の極性を判別することが可能になる。
【0025】
なお、ここでは、強誘電体膜の分極方向の回折ピークに着目し、それを用いて分極の極性を判別する場合を例示したが、分極方向と直交しない方位の回折ピークについては、図2および図3に示したのと同様の関係が得られ、そのような方位の回折ピークを用いた場合にも、同様に分極の極性を判別することが可能となる。X線のエネルギーと、分極方向と直交する方位の回折ピーク強度との関係については後述する(図6)。
【0026】
上記のような第1の実施の形態の評価方法の流れを図4に示す。
強誘電体の分極を評価するに当たり、まず、分極の極性が未知の強誘電体(極性未知強誘電体)と分極方向が同じで、分極の極性が既知の強誘電体(極性既知強誘電体)の所定のデータを有するデータベースを作成する。
【0027】
その際は、X線回折装置を用いて、その強誘電体の構成元素の吸収端近傍のエネルギーEを有するX線で回折測定を行い、その強誘電体の分極方向と直交しない方位(hkl)の、分極上向きのときの回折ピーク強度I↑(hkl)を求める(ステップS1)。
【0028】
次いで、X線回折装置を用いて、エネルギーEを有するX線で回折測定を行い、その強誘電体の分極方向と直交しない方位(hkl)の、分極下向きのときの回折ピーク強度I↓(hkl)を求める(ステップS2)。
【0029】
ただし、このステップS1,S2において、その回折測定に用いるX線には、得られる回折ピーク強度I↑(hkl),I↓(hkl)の値が異なるようなエネルギーEを有するX線を選択する。例えば、強誘電体が図1に示した評価試料のPZT膜14のような場合であれば、図2および図3に示したように、Zr−K吸収端よりも少し低いエネルギーEを選択するようにすればよい。
【0030】
このようにして得られたデータ、すなわちエネルギーE、指数(hkl)、回折ピーク強度I↑(hkl),I↓(hkl)といったデータを有するデータベースを作成する(ステップS3)。
【0031】
分極の極性が未知の強誘電体(極性未知強誘電体)についてその評価を行う際には、まず、X線回折装置を用いて、エネルギーEを有するX線で回折測定を行い、分極方向と直交しない方位(hkl)の回折ピーク強度I(hkl)を求める(ステップS4)。
【0032】
そして、エネルギーEおよび指数(hkl)にて、ステップS4で得られた回折ピーク強度I(hkl)を、ステップS1〜S3で作成されたデータベースの回折ピーク強度I↑(hkl),I↓(hkl)と比較することにより、その強誘電体の分極の上向き、下向きを判別する(ステップS5)。なお、このステップS5において、分極の極性の判別に加え、上向きと下向きの比率を算出するようにしてもよい。
【0033】
このように、第1の実施の形態の評価方法では、分極の極性が既知の強誘電体のX線回折測定を行い、用いたX線のエネルギー、回折ピークの指数、分極の極性、回折ピーク強度を含むデータベースをあらかじめ作成しておき、分極の極性が未知の強誘電体のX線回折測定を行って、その測定結果をデータベースのデータと比較することで、その強誘電体の分極の極性を判別する。
【0034】
この第1の実施の形態の評価方法の場合、X線回折測定の際には、強誘電体の分極が上向きであると下向きであるとを問わず、その試料表面に必ずしもその強誘電体が露出していることを要しない。例えば、X線回折測定の試料は、図1に示したような強誘電体キャパシタを構成しているものであっても構わない。したがって、強誘電体の分極の極性を評価するに当たり、その強誘電体を含む試料の加工は不要である。
【0035】
また、例えば、FeRAMの製造においては、強誘電体キャパシタを構成する強誘電体膜の形成後であれば、FeRAMの完成までのいずれの段階においても、このような評価方法を適用して、その強誘電体膜の分極の極性を評価することができる。
【0036】
以上述べたように、強誘電体の分極の極性の評価に、この第1の実施の形態の評価方法を用いることにより、強誘電体の分極の極性を非破壊・非接触で評価することができると共に、その分極の極性を適正にかつ簡便に評価することができる。
【0037】
次に、第2の実施の形態について説明する。
強誘電体は、例えば図2に示したように、その構成元素の吸収端近傍のエネルギーを有するX線を用いて回折測定を行うと、その吸収端の前後で(吸収端よりエネルギーが低いときと高いときで)回折ピーク強度が大きく変化する。
【0038】
図2の例の場合、図1に示した評価試料のPZT膜14についてX線回折測定を行ったときに、分極が上向きのときの回折ピーク強度I↑(006)はZr−K吸収端の前後で減少し、分極が下向きのときの回折ピーク強度I↓(006)はZr−K吸収端の前後で増加している。このことから、例えば、吸収端前後の17.8keVと18.2keVのエネルギーを有するX線を用いてそれぞれ回折測定を行い、17.8keVのX線を用いて得られる回折ピーク強度I(006)よりも、18.2keVのX線を用いて得られる回折ピーク強度I(006)が増加すれば分極は下向き、減少すれば分極は上向きと判別することができる。
【0039】
第2の実施の形態では、このような性質を利用し、強誘電体の分極の極性を評価する。すなわち、吸収端より低いエネルギーと、吸収端より高いエネルギーの2種類のX線を用いて回折測定を行う。そして、吸収端より低いエネルギーのX線を用いて得られた所定方位の回折ピーク強度と、吸収端より高いエネルギーのX線を用いて得られた所定方位の回折ピーク強度を求め、それらの回折ピーク強度が吸収端を挟んで減少しているかあるいは増加しているかによって、分極の極性を判別する。
【0040】
図5は第2の実施の形態の評価方法の流れを示す図である。
強誘電体の分極を評価するに当たり、まず、分極の極性が未知の強誘電体(極性未知強誘電体)と分極方向が同じで、分極の極性が既知の強誘電体(極性既知強誘電体)の所定のデータを有するデータベースを作成する。
【0041】
その際は、X線回折装置を用いて、その強誘電体の構成元素の吸収端前後のエネルギーE1,E2を有するX線でそれぞれ回折測定を行い、エネルギーE1,E2それぞれの場合について、その強誘電体の分極方向と直交しない方位(hkl)の、分極が上向きのときの回折ピーク強度I1↑(hkl),I2↑(hkl)を求める(ステップS10)。
【0042】
次いで、X線回折装置を用いて、エネルギーE1,E2を有するX線で回折測定を行い、エネルギーE1,E2それぞれの場合について、その強誘電体の分極方向と直交しない方位(hkl)の、分極が下向きのときの回折ピーク強度I1↓(hkl),I2↓(hkl)を求める(ステップS11)。
【0043】
このようにして得られたデータ、すなわちエネルギーE1、指数(hkl)、回折ピーク強度I1↑(hkl),I1↓(hkl)、およびエネルギーE2、指数(hkl)、回折ピーク強度I2↑(hkl),I2↓(hkl)といったデータを有するデータベースを作成する(ステップS12)。
【0044】
そして、作成したデータベースのデータを用い、分極が上向きのときの吸収端前後の回折ピーク強度比I1↑(hkl)/I2↑(hkl)、および分極が下向きのときの吸収端前後の回折ピーク強度比I1↓(hkl)/I2↓(hkl)を算出する(ステップS13)。
【0045】
分極の極性が未知の強誘電体(極性未知強誘電体)についてその評価を行う際には、まず、X線回折装置を用いて、エネルギーE1,E2を有するX線で回折測定を行い、エネルギーE1,E2それぞれの場合について、分極方向と直交しない方位(hkl)の回折ピーク強度I1(hkl),I2(hkl)を求める(ステップS14)。
【0046】
そして、求めた回折ピーク強度I1(hkl),I2(hkl)から、それらの回折ピーク強度比I1(hkl)/I2(hkl)を算出する(ステップS15)。
エネルギーE1,E2および指数(hkl)にて、ステップS15で算出された回折ピーク強度比I1(hkl)/I2(hkl)を、ステップS13で算出された回折ピーク強度比I1↑(hkl)/I2↑(hkl),I1↓(hkl)/I2↓(hkl)と比較することにより、その強誘電体の分極の上向き、下向きを判別する(ステップS16)。なお、このステップS16において、分極の極性の判別に加え、上向きと下向きの比率を算出するようにしてもよい。
【0047】
また、ステップS16の比較の際には、回折ピーク強度比I1(hkl)/I2(hkl)とI1↑(hkl)/I2↑(hkl)、あるいは回折ピーク強度比I1(hkl)/I2(hkl)とI1↓(hkl)/I2↓(hkl)が、必ずしも同値になることを要しない。吸収端を挟んだ回折ピーク強度の増加あるいは減少の傾向が比較対象間で適合するか否かによって、強誘電体の分極の上向き、下向きの判別を行えばよい。
【0048】
このように、第2の実施の形態の評価方法では、強誘電体の構成元素の吸収端前後での回折ピーク強度の変化の仕方(増加するか減少するか)によって、その強誘電体の分極の極性を評価する。これにより、分極の極性を評価すべき強誘電体を含んだ評価試料について、その分極の極性のほかに、強誘電体の膜厚等、回折ピーク強度に影響を及ぼすパラメータが含まれていて、それが変化するような場合であっても、その分極の極性を適正にかつ簡便に評価することができる。
【0049】
なお、この第2の実施の形態の評価方法の場合、2種類のエネルギーのX線は、例えば、強誘電体のX線回折測定に用いるX線回折装置のX線源を交換することによって発生させることができる。また、X線源の異なる2台のX線回折装置を用いて所定のデータを取得するようにしても構わない。
【0050】
次に、第3の実施の形態について説明する。
ここで、まず、図2に示したのと同様に、図1に示したPZT膜14を含む評価試料について、Zr−K吸収端近傍のエネルギーを有するX線を用いて回折測定を行い、分極方向(001)と直交する方位(600)の回折ピーク強度を求めた結果について述べる。
【0051】
図6はX線のエネルギーと回折ピーク強度の関係を示す図である。図6において、横軸はX線のエネルギー(keV)を表し、縦軸は(600)の回折ピーク強度I(600)を表している。なお、図6中、分極が上向きのときの(600)の回折ピーク強度はI↑(600)、分極が下向きのときの(600)の回折ピーク強度はI↓(600)で示している。
【0052】
図6より、分極方向と直交する方位(600)の回折ピーク強度I↑(600),I↓(600)は、PZT膜14の分極の極性が上向きと下向きで異なる場合にも、差が見られない。
【0053】
第3の実施の形態では、このような性質を利用し、強誘電体の分極の極性を評価する。例えば、図2および図6の例の場合、分極の極性以外に回折ピーク強度に影響を及ぼすパラメータのひとつであるPZT膜14の膜厚が変化したときにも、あるエネルギーにおける回折ピーク強度I(006),I(600)の回折ピーク強度比I(006)/I(600)は、ほとんど変化しない。すなわち、PZT膜14の膜厚が変化しても、回折ピーク強度比I(006)/I(600)を求めれば、回折ピーク強度I(006)が回折ピーク強度I(600)によって規格化され、膜厚変化による回折ピーク強度変化の要素を取り除き、分極の極性による回折ピーク強度変化の要素のみを取り出すことが可能になる。
【0054】
図7は第3の実施の形態の評価方法の流れを示す図である。
強誘電体の分極を評価するに当たり、まず、分極の極性が未知の強誘電体(極性未知強誘電体)と分極方向が同じで、分極の極性が既知の強誘電体(極性既知強誘電体)の所定のデータを有するデータベースを作成する。
【0055】
その際は、X線回折装置を用いて、その強誘電体の構成元素の吸収端近傍のエネルギーEを有するX線で回折測定を行い、その強誘電体の分極方向と直交しない方位(h111)の分極上向きのときの回折ピーク強度I↑(h111)と、分極方向と直交する方位(h222)の分極上向きのときの回折ピーク強度I↑(h222)を求める(ステップS20)。
【0056】
次いで、X線回折装置を用いて、エネルギーEを有するX線で回折測定を行い、その強誘電体の分極方向と直交しない方位(h111)の分極下向きのときの回折ピーク強度I↓(h111)と、分極方向と直交する方位(h222)の分極下向きのときの回折ピーク強度I↓(h222)を求める(ステップS21)。
【0057】
このようにして得られたデータ、すなわちエネルギーE、指数(h111)、回折ピーク強度I↑(h111),I↓(h111)、およびエネルギーE、指数(h222)、回折ピーク強度I↑(h222),I↓(h222)といったデータを有するデータベースを作成する(ステップS22)。
【0058】
そして、作成したデータベースのデータを用い、分極が上向きのときの回折ピーク強度比I↑(h111)/I↑(h222)、および分極が下向きのときの回折ピーク強度比I↓(h111)/I↓(h222)を算出する(ステップS23)。これにより、分極方向と直交しない方位(h111)の回折ピーク強度I↑(h111),I↓(h111)がそれぞれ、分極方向と直交する方位(h222)の回折ピーク強度I↑(h222),I↓(h222)によって規格化される。
【0059】
分極の極性が未知の強誘電体(極性未知強誘電体)についてその評価を行う際には、まず、X線回折装置を用いて、エネルギーEを有するX線で回折測定を行い、分極方向と直交しない方位(h111)の回折ピーク強度I(h111)と、分極方向と直交する方位(h222)の回折ピーク強度I(h222)を求める(ステップS24)。
【0060】
そして、求めた回折ピーク強度I(h111),I(h222)から、それらの回折ピーク強度比I(h111)/I(h222)を算出する(ステップS25)。これにより、分極方向と直交しない方位(h111)の回折ピーク強度I(h111)が、分極方向と直交する方位(h222)の回折ピーク強度I(h222)によって規格化される。
【0061】
ステップS25で算出された回折ピーク強度比I(h111)/I(h222)を、ステップS23で算出された回折ピーク強度比I↑(h111)/I↑(h222),I↓(h111)/I↓(h222)と比較することにより、その強誘電体の分極の上向き、下向きを判別する(ステップS26)。なお、このステップS26において、分極の極性の判別に加え、上向きと下向きの比率を算出するようにしてもよい。
【0062】
このように、第3の実施の形態の評価方法では、回折ピーク強度を規格化することによって、その強誘電体の分極の極性を評価する。これにより、分極の極性を評価すべき強誘電体を含んだ評価試料について、その分極の極性のほかに回折ピーク強度に影響を及ぼすパラメータが含まれているような場合であっても、その分極の極性を適正にかつ簡便に評価することができる。
【0063】
また、この第3の実施の形態の評価方法では、評価すべき強誘電体について、その分極の極性のほかに回折ピーク強度に影響を及ぼすパラメータが含まれているような場合で、かつ、上記の第2の実施の形態と異なり強誘電体のX線回折測定に単一のエネルギーのX線しか使用することができないような場合であっても、強誘電体の分極の極性を適正に評価することができる。
【0064】
次に、第4の実施の形態について説明する。
放射光のように任意にX線のエネルギーを選択できない、いわゆる実験室系X線の場合でも、上記のような評価方法を適用して、強誘電体の分極の極性を評価することは可能である。
【0065】
図8はX線のエネルギーと回折ピーク強度の関係を示す図である。図8には、市販のターゲットあるいは管球を用いて、図1に示したのと同様の膜構造で分極が上向きと下向きであることがわかっている評価試料の(111)の回折ピーク強度を測定し、分極が上向きのときの回折ピーク強度I↑(111)を、分極が下向きのときの回折ピーク強度I↓(111)で割った回折ピーク強度比I↑(111)/I↓(111)を、X線のエネルギーに対してプロットしている。
【0066】
PZT膜の構成元素であるZrのK吸収端より少し低いエネルギーであるMoKα線や、TiのK吸収端より少し低いエネルギーであるTiKα線をX線源として用い、上記の第1,第3の実施の形態の評価方法を行うことにより、実験室系X線でもPZT膜の分極の極性を評価することが可能になる。
【0067】
また、MoKα線やTiKα線に加え、CuKα線やCrKα線のようにPZT膜の構成元素の吸収端から離れているエネルギーを有するX線源を併用することで、上記の第2の実施の形態の評価方法を、実験室系X線でも行うことが可能になる。
【0068】
なお、上記の第1〜第4の実施の形態で述べた強誘電体の分極の極性の評価は、X線回折測定に必要なX線源その他通常の測定機構を備えたX線回折装置と、そのX線回折装置によって測定されたデータの処理等を行うコンピュータとを用いて構成される評価装置によって実現することができる。コンピュータは、X線回折装置と協働する評価プログラムを備え、その評価プログラムが有するアルゴリズムに従って、評価に伴う所定の処理、例えば、X線回折装置によるX線回折測定、回折ピーク強度および回折ピーク強度比の算出、データベースの作成、回折ピーク強度および回折ピーク強度比の所定値との比較、強誘電体の分極の極性の判別、比率の算出等の処理を実行する。
【0069】
また、評価プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。そのような記録媒体としては、ハードディスク装置(HDD)等の磁気記録装置、DVD(Digital Versatile Disc)やCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の光ディスク、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、および半導体メモリ等がある。
【0070】
また、X線回折装置は、測定する試料を載置するステージを並進できるような構成としてもよい。このような構成のX線回折装置の場合、例えばFeRAM製造工程で複数の強誘電体膜(あるいは強誘電体キャパシタ)が形成されているウェハをそのようなステージに載置し、1箇所の強誘電体膜について測定を行った後に、そのステージを並進させ、別の箇所の強誘電体膜について測定が行える。そして、個々の箇所で得られた測定結果を用いて分極の極性を評価すれば、ウェハ上の複数の強誘電体膜に対して分極の極性のマッピングが行えるようになり、FeRAMの品質向上、歩留まり向上等を図ることが可能になる。
【0071】
(付記1) 強誘電体の分極を評価する評価方法において、
前記強誘電体を構成する元素の吸収端近傍のエネルギーを有するX線であって、前記強誘電体の分極の極性によって前記強誘電体の分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度が異なるエネルギーを有する前記X線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定し、
測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする評価方法。
【0072】
(付記2) 前記強誘電体と同じ分極方向であって、分極が上向きと下向きの極性を有する極性既知強誘電体のそれぞれについて、前記X線を用いて前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定し、
前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する際には、
前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度とを比較することによって、前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする付記1記載の評価方法。
【0073】
(付記3) 前記X線が有するエネルギーとの間に前記吸収端が含まれるようなエネルギーを有する他のX線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定し、
前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する際には、
前記X線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、前記他のX線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度とを用いて、前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする付記1記載の評価方法。
【0074】
(付記4) 前記強誘電体と同じ分極方向であって、分極が上向きと下向きの極性を有する極性既知強誘電体のそれぞれについて、前記X線および前記他のX線を用いて前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定し、
前記X線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、前記他のX線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度とを用いて、前記強誘電体の分極の極性を判別する際には、
前記X線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、前記他のX線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度との回折ピーク強度比と、
前記X線を用いて測定された前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、前記他のX線を用いて測定された前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度との回折ピーク強度比と、
を比較することによって、前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする付記3記載の評価方法。
【0075】
(付記5) 前記X線を用いて前記強誘電体の分極方向と直交する方位の回折ピーク強度を測定し、
前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する際には、
前記強誘電体の前記分極方向と直交する方位の回折ピーク強度を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を規格化し、
規格化された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする付記1記載の評価方法。
【0076】
(付記6) 前記強誘電体と同じ分極方向であって、分極が上向きと下向きの極性を有する極性既知強誘電体のそれぞれについて、前記X線を用いて前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と前記分極方向と直交する方位の回折ピーク強度とを測定し、
前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交する方位の回折ピーク強度を用いて、前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を規格化し、
規格化された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する際には、
規格化された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、規格化された前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度とを比較することによって、前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする付記5記載の評価方法。
【0077】
(付記7) 強誘電体の分極を評価する処理を行う評価プログラムにおいて、
コンピュータを、
X線回折装置に、前記強誘電体を構成する元素の吸収端近傍のエネルギーを有するX線であって、前記強誘電体の分極の極性によって前記強誘電体の分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度が異なるエネルギーを有する前記X線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定させる手段、
前記X線回折装置によって測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段、
として機能させることを特徴とする評価プログラム。
【0078】
(付記8) 前記コンピュータを、前記X線回折装置に、前記強誘電体と同じ分極方向であって、分極が上向きと下向きの極性を有する極性既知強誘電体のそれぞれについて、前記X線を用いて前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定させる手段として機能させ、
前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段は、
前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度とを比較することによって、前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする付記7記載の評価プログラム。
【0079】
(付記9) 前記コンピュータを、前記X線回折装置に、前記X線が有するエネルギーとの間に前記吸収端が含まれるようなエネルギーを有する他のX線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定させる手段として機能させ、
前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段は、
前記X線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、前記他のX線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度とを用いて、前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする付記7記載の評価プログラム。
【0080】
(付記10) 前記コンピュータを、前記X線回折装置に、前記強誘電体と同じ分極方向であって、分極が上向きと下向きの極性を有する極性既知強誘電体のそれぞれについて、前記X線および前記他のX線を用いて前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定させる手段として機能させ、
前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段は、
前記X線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、前記他のX線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度とを用いて、前記強誘電体の分極の極性を判別する際には、
前記X線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、前記他のX線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度との回折ピーク強度比と、
前記X線を用いて測定された前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、前記他のX線を用いて測定された前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度との回折ピーク強度比と、
を比較することによって、前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする付記9記載の評価プログラム。
【0081】
(付記11) 前記コンピュータを、前記X線回折装置に、前記X線を用いて前記強誘電体の分極方向と直交する方位の回折ピーク強度を測定させる手段として機能させ、
前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段は、
前記強誘電体の前記分極方向と直交する方位の回折ピーク強度を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を規格化し、
規格化された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする付記7記載の評価プログラム。
【0082】
(付記12) 前記コンピュータを、
前記X線回折装置に、前記強誘電体と同じ分極方向であって、分極が上向きと下向きの極性を有する極性既知強誘電体のそれぞれについて、前記X線を用いて前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と前記分極方向と直交する方位の回折ピーク強度とを測定させる手段、
前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交する方位の回折ピーク強度を用いて、前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を規格化する手段、
として機能させ、
規格化された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段は、
規格化された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、規格化された前記極性既知強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度とを比較することによって、前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする付記11記載の評価プログラム。
【0083】
(付記13) 強誘電体の分極を評価する評価装置において、
前記強誘電体を構成する元素の吸収端近傍のエネルギーを有するX線であって、前記強誘電体の分極の極性によって前記強誘電体の分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度が異なるエネルギーを有する前記X線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定する手段と、
測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段と、
を有することを特徴とする評価装置。
【0084】
(付記14) 前記X線が有するエネルギーとの間に前記吸収端が含まれるようなエネルギーを有する他のX線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定する手段を有し、
前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段は、
前記X線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、前記他のX線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度とを用いて、前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする付記13記載の評価装置。
【0085】
(付記15) 前記X線を用いて前記強誘電体の分極方向と直交する方位の回折ピーク強度を測定する手段を有し、
前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段は、
前記強誘電体の前記分極方向と直交する方位の回折ピーク強度を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を規格化し、
規格化された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする付記13記載の評価装置。
【0086】
(付記16) 分極が上向きと下向きの極性を有する極性既知強誘電体のそれぞれの回折ピーク強度を含むデータベースを有していることを特徴とする付記13記載の評価装置。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】評価試料の断面模式図である。
【図2】X線のエネルギーと回折ピーク強度の関係を示す図(その1)である。
【図3】X線のエネルギーと回折ピーク強度の関係を示す図(その2)である。
【図4】第1の実施の形態の評価方法の流れを示す図である。
【図5】第2の実施の形態の評価方法の流れを示す図である。
【図6】X線のエネルギーと回折ピーク強度の関係を示す図(その3)である。
【図7】第3の実施の形態の評価方法の流れを示す図である。
【図8】X線のエネルギーと回折ピーク強度の関係を示す図(その4)である。
【符号の説明】
【0088】
10 Si基板
11 SiO2
12 Al23
13 Pt膜
14 PZT膜
15 IrO2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強誘電体の分極を評価する評価方法において、
前記強誘電体を構成する元素の吸収端近傍のエネルギーを有するX線であって、前記強誘電体の分極の極性によって前記強誘電体の分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度が異なるエネルギーを有する前記X線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定し、
測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする評価方法。
【請求項2】
前記X線が有するエネルギーとの間に前記吸収端が含まれるようなエネルギーを有する他のX線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定し、
前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する際には、
前記X線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度と、前記他のX線を用いて測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度とを用いて、前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする請求項1記載の評価方法。
【請求項3】
前記X線を用いて前記強誘電体の分極方向と直交する方位の回折ピーク強度を測定し、
前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する際には、
前記強誘電体の前記分極方向と直交する方位の回折ピーク強度を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を規格化し、
規格化された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別することを特徴とする請求項1記載の評価方法。
【請求項4】
強誘電体の分極を評価する処理を行う評価プログラムにおいて、
コンピュータを、
X線回折装置に、前記強誘電体を構成する元素の吸収端近傍のエネルギーを有するX線であって、前記強誘電体の分極の極性によって前記強誘電体の分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度が異なるエネルギーを有する前記X線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定させる手段、
前記X線回折装置によって測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段、
として機能させることを特徴とする評価プログラム。
【請求項5】
強誘電体の分極を評価する評価装置において、
前記強誘電体を構成する元素の吸収端近傍のエネルギーを有するX線であって、前記強誘電体の分極の極性によって前記強誘電体の分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度が異なるエネルギーを有する前記X線を用いて、前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を測定する手段と、
測定された前記強誘電体の前記分極方向と直交しない方位の回折ピーク強度を用いて前記強誘電体の分極の極性を判別する手段と、
を有することを特徴とする評価装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate