試料中の活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法
a)テスト試料をVII因子が欠乏しかつVIII因子、FVIX因子及びXI因子から選ばれた少なくとも他の1つの因子が欠乏する血漿と混合する工程であって、テスト試料+血漿の混合物はFVII+FVIIaの最終濃度が10〜80ピコモルの範囲となるように混合する工程と;
b)トロンビン生成反応開始成分を加える工程と;
c)工程b)の混合物にトロンビン生成テストを行いトロンボグラムを得る工程と;
d)工程c)のトロンボグラムのパラメータのうちの少なくとも1つを標準試料に基づいて作成した、活性化凝固VII因子のレベルが既知であって各標準試料間で異なる標準トロンボグラムから得た相同のパラメータと比較する工程と;
e)工程d)からテスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルの測定値を推定する工程とからなる、テスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法。
b)トロンビン生成反応開始成分を加える工程と;
c)工程b)の混合物にトロンビン生成テストを行いトロンボグラムを得る工程と;
d)工程c)のトロンボグラムのパラメータのうちの少なくとも1つを標準試料に基づいて作成した、活性化凝固VII因子のレベルが既知であって各標準試料間で異なる標準トロンボグラムから得た相同のパラメータと比較する工程と;
e)工程d)からテスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルの測定値を推定する工程とからなる、テスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、VII因子及びFVIII因子(FVIII)、IX因子(FIX)及びXI因子(FXI)から選ばれる因子の1個が欠乏する血漿を用いて、試料中の活性化凝固VII因子(FVIIa)のレベルを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
血液凝固は、生物に血管病変が起こった時に、出血をコントロールしこれによって出血を防ぐ機序である。
【0003】
血液凝固は、血液中に存在したんぱく質分解性の酵素によって活性化した形態に変換される様々なプロ酵素及びプロ共同因子を含む多段階のカスケード反応に続いて起こる。凝固の多段階の連続(すなわちカスケード反応)において、外因性の凝固経路と内因性の凝固経路の2つの経路が区別される。両者とも活性化凝固因子(FXa)、活性化凝固V因子(FVa)、リン脂質及びカルシウムから構成されるプロトロンビナーゼと呼ばれる複合物の形成を導く。プロトロンビンをトロンビンに活性化し、可溶性のフィブリノゲンを、凝塊を形成する不溶性のフィブリンに変換できるようにするのはプロトロンビナーゼである。
【0004】
外因性の経路には、血漿中に存在するFVIIの介在が含まれる。しかし凝固カスケード反応を開始するためには、FVIIは予めFVIIaに活性化されている必要がある。(組織因子と複合していない)FVIIaだけが低いたんぱく質分解の活動性を示す。リン脂質と結合するタンパク質である組織因子(TF)とFVIIaが複合すると、この活動性が顕在化され血管病変が形成される間に始動される。FVIIa−TF複合物は、カルシウムイオンの存在下でX因子をXa因子に変換する。また、FVIIa−TF複合物はFIXをFIXaに変換する。
【0005】
翻って、IXa因子とXa因子は、FVIIを活性化してFVIIaに変える。Va因子及びリン脂質(プロトロンビナーゼ)と複合したXa因子は、プロトロンビンをトロンビンに変換する。トロンビンはフィブリノゲンに作用してフィブリンに変換し、他の活動もするが、なかでもV因子をVa因子に、FVIIIをFVIIaに変換する。また、トロンビンは、カルシウムの存在下でXIII因子を活性化してXIIIa因子に変換し、フィブリン凝塊の硬化を可能にする。
【0006】
外因性凝固の経路においては、FVIIa/TFの複合物によってFIXが活性化されFIXaになるが、内因性凝固の経路では、FIXaはFIXa自体によってFIXから生成されるが、内皮下層のような負の電荷をもった表面と血液が接触することで、それ自体が活性化したFII因子によって活性化される。
【0007】
FVIIaと糖たんぱく質はビタミンKに依存し、従って凝固機序のなかで重要な役割を果たし、血液凝塊を形成する。FVIIaは、VIII因子またはIX因子がなくても、組織が出血をともなう損傷をした時に放出される組織因子の存在下で局所的に作用できるという利点を有する。これが、出血が顕著なある種の凝固不良を改善するために、FVIIaが長年にわたって使用されてきた理由である。
【0008】
最初の方法は、血漿からFVIIaを得ることであった。しかし、血漿からFVIIaを作ることは、供給源の入手可能性の点で制限があり、また血漿の使用によって、例えばプリオンやウィルス等の病原性の作用物質が伝染する危険性がある。これらの問題は、Novo・Nordisk・Pharmaceuticals社が開発した、構造的に血漿FVIIaと同じ糖たんぱく質である組み換えFVIIa(rFVIIa)によって克服された。
【0009】
rFVIIaの主要な治療上に関する著作は、A型血友病における成長したアンチVIII因子抗体、またB型血友病における成長したアンチFVIX抗体など、自発性または外科的な出血の治療に関するものである(米国、EU及び日本)。また欧州においては、先天性FVII欠乏症の患者及びグランツマン血小板無力症の患者への使用に関する著作である。
【0010】
さらに、多くの刊行物において、先天性凝固因子欠乏症も血小板無力症もない患者にたいする外科的手術中の出血の制御におけるrFVIIaの有効性が報告されている。
【0011】
FVIIaの使用が次第に広がることによって、
(1)FVIIaの活動性の測定
(2)FVIIaの濃度の判断
(3)活性化VII因子レベルの測定
等の方法が改善につながった。
【0012】
FVIIの活動性を検出する方法で最も知られているのは、凝固時間、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、トロンボエラストログラフィ(TEG)及びトロンビン生成テスト(TGT)などの測定法である。これらの方法により、FVIIa活動性を検出することを可能にはしたが、試料における活性化VII因子のレベルを直接測定可能にしたものではなかった。
【0013】
FVIIaの免疫分析用の市販キット(IMUBIND VII因子・ELISAキット)は入手可能であるが、この技法を実施するための実験条件を習得することは難しい。事実、このキットは使用方法が複雑で、動的範囲が極めて狭く、直線的検出範囲が極めて限定され、そして最も重要な点は+4℃の温度で作業をしなければならないことである。
【0014】
FVIIaの濃度を測定する他の方法が文献に記載されている。例えば切断組み換えTF(Starlet VIIa−rTF、Stago)を用いてたんぱく質分解の活動性を測定する方法(US5、472、850、US5、741、658、WO1992/018870、US5、750、358、US5、741、658、US5、472、850、EP0 641 443)、あるいはFVIIa−アンチトロンビン複合物の濃度を測定する方法(WO03/004694)など。これらの方法は極めて正確というわけでなく、また実施が難しい。事実、これらの方法は、FVIIaの濃度が低い場合は同時に処理できる試料の数が限られ、凝塊が形成されることは、この方法を正確に実施するには不適当である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、FVIIaによって生成されるFXaの蛍光発生法または色素分析法は、両者ともFVIIの作用とFVIIaの作用を区別することができないので、FVIIaの濃度を測定するのに適さないことがわかっている。
【0016】
FVIIaによる治療の効果を評価するために一部の生物学者に使われる方法の中で、しばしば血栓弾性描写法が使われる。この方法は、凝塊の形成を時間の関数として機械的に分析することによって、全血液の物理的特性を測定することからなる。血栓弾性描写法によって生成されるグラフ(thromboelastogramme(登録商標)と呼ばれる)から抽出されたパラメータによって、臨床医は患者の凝固能力を評価することができる。この方法は正確であるが、時間がかかりすぎて定期的、反復的分析には不向きで、また血液を採取してから1時間以内に実施する必要があるのでマルチ・サンプリングには応用できない。さらに、この方法は試料の活性化VII因子のレベルの測定はできない。
【0017】
このように、特に、試料が非活性化凝固VII因子と活性化凝固VII因子の混合物からなる場合には、試料中の活性化VII因子のレベルを測定するのが有効かつ簡単、入手可能な方法に対する切実な要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の概要)
出願者は、FII及びFVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1つの他の因子が欠乏する血漿を使用することによって、特に、試料が非活性化凝固VII因子及び活性化凝固VII因子を含む場合は、意外にも確実、再現可能、かつ実施が容易な方法で試料中の活性化VII因子のレベルが測定可能であることを発見した。
【0019】
したがって、本発明の方法において実施される実験条件は、試料中の活性化VII因子のレベルとトロンビン生成テスト(TGT)の特定のパラメータの特性及びそこから得られるトロンボグラムとの間の相関関係を確立することを可能とする。
【0020】
かかる相関関係により、前記試料のトロンボグラムのパラメータを既知の活性化VII因子のレベルを構成する合成物から得られる「標準」トロンボグラムのパラメータと比較することによって、テスト対象の試料中の活性化VII因子のレベルを判断することが可能となる。
【0021】
従って本発明は、テスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法であって、
a)前記テスト試料をVII因子(FVII)が欠乏しかつVIII因子(FVIII)、FVIX因子(FIX)及びXI因子(FXI)から選ばれた少なくとも他の1つの因子が欠乏する血漿と混合する工程であって、テスト試料+血漿はFVII+FVIIaの最終濃度が10ピコモルから80ピコモルの範囲となるように混合する工程と;
b)トロンビン生成反応開始成分を加える工程と;
c)工程b)の混合物にトロンビン生成テスト(TGT)を行いトロンボグラムを得る工程と;
d)工程c)のトロンボグラムのパラメータのうちの少なくとも1つを標準試料に基づいて作成した、活性化凝固VII因子のレベルが既知であって各標準試料間で異なる標準トロンボグラムの相同のパラメータと比較する工程と;
e)工程d)からテスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルの測定値を推定する工程とからなる、テスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法、に関する。
【0022】
本発明の方法は、選択的に工程e)で決まるレベルから前記テスト試料中の活性化凝固VII因子の濃度を計算する工程f)からなる。
好適には、標準トロンボグラムは、
(i)FVIIaのレベルが既知の標準試料、
(ii)FVII及び選択的にFVIII、FIX及びFXIが欠乏する血漿を用いて調製し、標準試料+減損血漿を含む得られる溶液中のFVII+FVIIaの最終濃度は、テスト試料+減損血漿を含む溶液中のFVII+FVIIaの最終濃度とほぼ等しい、
(iii) トロンビン生成反応開始成分
を含む混合物にトロンビン生成テストを行うことによって得られる。
【0023】
前記血漿がFVII及びFIXが欠乏する、またはFVII及びFXIが欠乏するときは、比較されるトロンボグラムのパラメータは、時間差、ピークまでの時間及び速度から選択され、前記血漿がFVII及びFVIIIが欠乏するときは、時間差及びピークまでの時間から選択されることが望ましい。
【0024】
テスト試料+血漿及び標準試料+血漿の混合は、FIIが欠乏しかつFVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1個のその他の因子が欠乏する同じ血漿を使って行われることが好ましい。
【0025】
トロンビン生成を開始する前記成分は、組織因子(TF)、リン脂質及びCa2からなり、試料+血漿+開始成分の混合物中の前記組織因子の最終濃度は1から10ピコモルの範囲内からなり、試料+血漿+開始成分の混合物中の前記リン脂質の最終濃度は、0.1から5マイクロモルの範囲からなり、試料+血漿+開始成分の混合物中のCa2+の最終濃度は14から18ミリモルの範囲内からなることが好ましい。
【0026】
レベルが測定される活性化FVII因子は、血漿由来(pFVIIa)、組み換え由来(aFVIIa)または遺伝子組み換え由来(TgFVIIa)であることが好ましい。
本発明の特定の実施例においては、テスト試料は遺伝子組み換え哺乳動物の母乳または無血清細胞培養基の試料である。
【0027】
また本発明は、テスト試料中の活性化VII因子のレベルを測定するための、FII及び、FVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1個の他の因子が欠乏する血漿の使用に関する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の方法において実施される実験条件は、試料中の活性化VII因子のレベルとトロンビン生成テスト(TGT)の特定のパラメータの特性及びそこから得られるトロンボグラムとの間の相関関係を確立することを可能とする。
かかる相関関係により、前記試料のトロンボグラムのパラメータを既知の活性化VII因子のレベルを構成する合成物から得られる「標準」トロンボグラムのパラメータと比較することによって、テスト対象の試料中の活性化VII因子のレベルを判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】標準試料/血漿の混合物において、最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で、活性化VII因子のレベルの範囲が0から100%(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用の、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて得た標準トロンボグラムである。
【図2】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用い、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、時間差及びピークまでの時間におけるそれぞれの変化を示す図である。
【図2a】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用い、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、時間差及びピークまでの時間におけるそれぞれの変化を示す図である。
【図3】標準試料/血漿の混合物において、最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)を用いて得た標準トロンボグラムである。
【図4】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間及び速度における変化を示す図である。
【図5】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間及び速度における変化を示す図である。
【図6】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間及び速度における変化を示す図である。
【図7】FVII及びFXIが欠乏する血漿(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)を用いて、標準試料/血漿の混合物において、濃度50ピコモルの最終FVII+FVIIaの存在下で得た、最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIaの標準トロンボグラムである。
【図8】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用の、FVII及びFXIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてそれぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図9】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用の、FVII及びFXIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてそれぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図10】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用の、FVII及びFXIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてそれぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図11】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用の、FVII及びFXIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてそれぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図12】FVII及びFVIIIが欠乏する血漿(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)を用いて、標準試料/血漿の混合物において、濃度最終10ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得た標準トロンボグラムである。
【図13】濃度最終10ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図14】濃度最終10ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図15】濃度最終10ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図16】濃度最終10ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図17】FVII及びFVIIIが欠乏する血漿(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)を用いて、標準試料/血漿の混合物において濃度80ピコモルの最終FVII+FVIIaの存在下で、得た標準トロンボグラムである。
【図18】最終濃度80ピコモルのFVII+FVIIa用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差およびピークまでの時間における変化を示す図である。
【図19】最終濃度80ピコモルのFVII+FVIIa用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差およびピークまでの時間における変化を示す図である。
【図20】0から100%の活性化VII因子レベルの、血漿/試料の混合物中、最終50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得た標準トロンボグラムウを示す図である。
【図21】それぞれ0%から100%の既知の固定活性化VII因子レベル用の、ウサギ母乳を含む予め希釈した試料、TpOK1%のHSA中の活性化VII因子レベルの関数として、トロンボグラム、時間差における変化及びピークまでの時間を示す図である。
【図22】それぞれ0%から100%の既知の固定活性化VII因子レベル用の、ウサギ母乳を含む予め希釈した試料、TpOK1%のHSA中の活性化VII因子レベルの関数として、トロンボグラム、時間差における変化及びピークまでの時間を示す図である。
【図23】それぞれ0%から100%の既知の固定活性化VII因子レベル用の、ウサギ母乳を含む予め希釈した試料、TpOK1%のHSA中の活性化VII因子レベルの関数として、トロンボグラム、時間差における変化及びピークまでの時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明の文脈において、用語「VII因子」すなわち「FVII」は、凝固を誘発することができない一本鎖プロ酵素に対応する非活性化凝固VII因子を意味する。
【0031】
用語「活性化凝固VII因子」または「活性化VII因子」すなわちFVIIaは、FVII(プロ酵素)の切断によって生じるジスルフィド架橋によって互いに結び付いた重鎖及び軽鎖からなる一本鎖タンパク質(酵素)を意味し、血液凝固を誘発する能力を有する。
【0032】
用語「FVII+FVIIa」は、当該試料に存在するFVII及びFVIIaの濃度または量の合計を意味する。FVII及びFVIIaの濃度または量の合計は、例えば、Diagnostica Stago社製、ASSERACHROM(登録商標)、VI:Ag(コード:00241)等の市販のキットを用いた免疫分析によって測定することができる。
【0033】
用語「活性化凝固VII因子レベル」または「FVIIaレベル」は、当該試料における活性化凝固VII因子(FVIIa)の量または濃度と、当該同試料におけるVII因子及び活性化凝固VII因子の量または濃度の合計(FVII+FVIIa)との割合を示す。FVIIaのみを含みFVIIを含まない試料の場合、活性化VII因子レベルは、1(すなわち、100%)となり;FVIIaとFVIIを同量の含む試料の場合、活性化VII因子レベルは、0.5(すなわち、50%)となり;FVIIのみを含む(FVIIaを含まない)試料の場合、活性化VII因子レベルは、0(すなわち、0%)となる。
【0034】
用語「テスト試料」は、FVII、活性化VII因子またはこれらの混合物を含み、その活性化VII因子のレベルが未知の試料を意味する。有利には、テスト試料は、血液または血漿から精製されるか、または例えば哺乳動物の母乳、培養基または細胞ホモジネート等の精製または非精製の体液から得られる。
【0035】
特定の実施例においては、テスト試料は哺乳動物の母乳の試料、特にその母乳においてFVIIおよび/またはFVIIaを作る遺伝子組み換え哺乳動物から得られる母乳の試料である。
【0036】
別の実施例においては、テスト試料は無血清細胞培養基である。
本発明の一実施例によれば、テスト対象の試料は、治療目的であるかどうかを問わず、液状またはフリーズドライ状の血漿(pFVIIa)、組み換え(rFVIIa)または遺伝子組み換え(TgFVIIa)及びFVII、またはそれらの混合物から得られるVIIaを含む試料である。
【0037】
「標準試料」とは、当該溶液において、活性化VII因子レベルが既知および/または選択され、例えば、国際標準FVII(血液凝固VII因子、濃縮、ヒト、NIBSCコード:97/592)または国際標準活性化VII因子(血液凝固VIIa因子、濃縮、ヒト、NIBSCコード:89/688)またはそれらの混合物が、活性化VII因子の望ましいレベルを得るために適切な量または濃度が組み込まれた、試料を意味する。また標準試料は、血液または血漿または、例えば、哺乳動物の母乳、培養基または細胞ホモジネート等の精製または非精製の体液から得ることもできる。
【0038】
本発明の文脈で用いられる血漿は、動物由来であって、好適には哺乳動物、及び好適にはヒトのものである。
【0039】
本発明の意味において、「〜が欠失した」または「〜が欠乏する」という表現は同じ意味を表し、合成物(例えば、血液凝固因子)の当該溶液(例えば血漿)の欠失を記述する目的で、合成物の存在が検出できなくなるまで代替語として使用することができる。
【0040】
従って、「FVII、かつFVIII、FIXまたはFXIから選択される少なくとも1個の因子が欠乏する血漿」という表現は、当業者に周知の分析方法によってそれらの濃度を測定したとき、当該血漿中のこれらの因子FVII、FVIII、FIXまたはFXIのそれぞれの濃度が検出閾値以下であることを意味する。分析方法として、例えば市販のキットまたは試薬(例えば、Diagnostica Stago社製、ASSERACHROM(登録商標)、VII:Ag(コード:00241)、またはKORDIA社製、VII因子ELISAセット(コード:FVII−EIA)を用いる分析方法を挙げることができる。
【0041】
血漿中のFVIIの検出閾値は、好適には約1mUI/ml(0.5ng/ml)であって、それ以下の濃度ではFVIIは検出されない。
【0042】
血漿中のFVIIIの検出閾値は、好適には約10mUI/ml(1ng/ml)であって、それ以下の濃度ではFVIIIは検出されない。
【0043】
血漿中のFIXの検出閾値は、好適には約0.2mUI/ml(1ng/ml)であって、それ以下の濃度ではFIXは検出されない。
【0044】
血漿中のFIXの検出閾値は、好適には約0.5mUI/ml(2.5ng/ml)、それ以下の濃度ではFIXは検出されない。
【0045】
血漿から当該因子を除去する技法には、当業者に周知の全ての技法が含まれる。除去技法の例として、特に免疫除去、化学的除去法及び化学的除去法の組み合わせが上げられる。
【0046】
免疫除去は、当該抗原における前記溶液をほぼ除去する目的で、溶液に含まれる抗原を特にターゲットとする抗体を用いることからなる。免疫除去を行うために使用する抗体としては、単一または幾つかの異なる細胞クローンを由来とする、多クローン性および/または単クローン性の抗体であってもよい。使用する抗体は、除去することが望ましい抗原を直接ターゲットとしてもよく、あるいはこの抗原に結びつくタンパク質をターゲットとしてもよい。
【0047】
FVII、FIXまたはFXIが欠失した血漿は、それぞれアンチFVII、アンチFIXまたはアンチFXI抗体をもちいて得ることができる。
【0048】
FVIIIが欠乏する血漿は、アンチFVIII抗体、ヴォン・ヴィルブランド因子をターゲットとする抗体、または血液中をFVIIIを搬送する血漿タンパク質を用いて得ることができる。
【0049】
FVIIIが欠失した血漿は、FVIIIがCa2+依存性因子の場合、EDTA(エチレン−ジアミン−四酢酸)を用いて化学的除去によっても得ることができる。この場合、EDTAは当業者に周知の方法、例えば透析法により除去する。
【0050】
本発明の実施に使用する血漿は、有利にはVII因子と少なくともFVIII、FIX及びFXIから選択されるその他の因子1つが欠乏する血漿である。
【0051】
本発明の実施に使用する血漿は、有利には生まれながらFVIIIが欠乏するタイプAの血友病から得た血漿、生まれながらFIXが欠乏するタイプB血友病から得た血漿、またはXI因子完全欠乏症を示す患者から得た血漿から作られる。生まれながらFVIII、FIまたはFXIが欠乏する前記血漿は、上記のような免疫学的または科学的方法によりFVIIが除去される。
【0052】
本発明の更に別の実施例においては、使用する血漿は、正常な血漿が用いられ、最初FVIIが除去され、つづいてFVIIIおよび/またはFIXおよび/またはFXIが除去される。
【0053】
本発明の意味において、用語「トロンビン生成反応開始成分」または「開始成分」は、プロトロンビンからトロンビン生成を開始する必須成分を意味する。
【0054】
トロンビン生成反応開始成分は、トロンビン生成反応を誘発するのに適度な濃度で、原則的にカルシウムイオンソース(Ca2+)、リン脂質作用物質及び組織因子(TF)からなる。
【0055】
本発明の文脈においてカルシウムイオンの適切なソースは、CaCl2等の生物学的に適合性のあるカルシウムイオンのソースとも対応する。Ca2+のソースは、下準備なしに他のトロンビン生成反応開始成分と、または他のトロンビン生成反応開始成分を添加した後に、試料/血漿の混合物に添加することができる。
【0056】
本発明の文脈においてカルシウムイオンの適度な濃度とは、試料+血漿+開始成分の混合物におけるカルシウムイオンの最終濃度、14から18ミリモルの範囲、特には16.7ミリモルを意味する。
【0057】
本発明において使用する適切なリン脂質作用物質は、濃縮またはフリーズドライ製品の形状でもよく、好適には大部分の量をホスファチジルコリンとホスファチジルセリンからなる混合物、またはホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンのみを含む混合物からなる。
【0058】
本発明の意味において、適度な濃度のリン脂質作用物質とは、試料+血漿+開始成分の混合物におけるリン脂質作用物質の最終濃度、0.1から5マイクロモル、具体的には0.5から2マイクロモル、更に具体的には1マイクロモルの範囲を意味する。
【0059】
本発明で使用する適切な組織因子(TF)は、いかなる天然、血漿、組み換えまたは遺伝子組み換え組織因子で構成されるグループ、またはVII因子からVIIa因子に活性化する機能を失ったいかなる切断組織因子を含むいかなる修飾組織因子から選択してもよいが、前記修飾組織因子は、特にVIIa因子の酵素活性補助因子として作用する能力を保存しているものとする。適切な修飾組織因子としては、例えば膜貫通ドメインが取り除かれたもので、Diagnostica Stago社から市販されるSTACLOTキット(コード番号:00281)の組織因子等でもよい。
【0060】
本発明の意味において、組織因子の適度な濃度とは、試料+血漿+開始成分の混合物における組織因子の最終濃度、1から10ピコモル、具体的には4から6ピコモル、更に具体的には5ピコモルを意味する。
【0061】
本発明の文脈において、テスト試料、標準試料、FVII及びVIII、FIXまたはFXIから選択された少なくとも1個の他の因子が欠乏する血漿および/またはトロンビン生成反応開始成分は、液状またはフリーズドライ状であってもよい。フリーズドライ状の場合は、これらの合成物は、本発明の方法を実施するに先立ち、注射精製水(WFI)等の適切な水性溶媒に懸濁状態に有利に保つことができる。
【0062】
本発明の出願者は、これにより、テスト試料に存在する非活性化FVII因子によって生じる不利な点を克服できる特定の実験条件に基づいて、テスト試料における活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法を開発した。
【0063】
本方法の第1のステップは、活性化VII因子レベルが未知のテスト試料を、FVIII、および/またはFIXおよび/またはFXIが欠乏する血漿と混合し、できた混合物のFVII+FVIIaの最終濃度が10ピコモルから80ピコモルの範囲とする。この血漿の性質に関わる特性と使用濃度の範囲との特定の組み合わせにより、本発明による活性化VII因子のレベルを測定する方法が実施可能となる。
【0064】
次に、血漿中に含まれるプロトロンビンからトロンビンの生成を導く切断反応を誘発する目的で、トロンビン生成反応開始成分をテスト試料+血漿の混合物に加える。ついで、トロンビン生成テストを行う。
【0065】
トロンビン生成テスト(TGT)は当業者に周知のテストである(トロンビン生成分析、臨床的関連文献:H.C・Hanker、R.Al・Dieri・&・S.Beguin、Curr.Opin.Hematol、2004、11、170−5)。これにより、連続的にトロンビンの生成量と、当該試料をトロンビン生成反応開始成分と接触させたときのトロンビンの生成に要する時間を測定することが可能となる。
【0066】
トロンビン生成テストは、当該試料が(または後者を含む溶液が)反応を開始させる成分と接触させると始まる。トロンビン生成テストの開始に対応する初期時間をt0とする。
【0067】
次に、生成トロンビンは、顕示剤は、好適にはトロンビンによる分解により蛍光合成物が現れる蛍光剤、色素剤を用いて顕示される。有利には、蛍光剤または色素剤は、トロンビン生成反応開始成分と同時に試料+血漿の混合物に添加する。
【0068】
新しく生成されたトロンビンによって分解される蛍光剤から生じる蛍光は、蛍光光度計等の測定装置によって検出される。使用する蛍光光度計は蛍光の経時変化を記録またはプロットする手段を備えることが好適である。蛍光光度計によって収集されたデータによりトロンボグラムと呼ばれる蛍光の経時変化曲線を得ることができる。
【0069】
トロンボグラムから次の4つのパラメータを測定することができる:
−ナノモルで表されるトロンビンのピーク高さ:反応の間時間tmaxに生成されるトロンビンの最高濃度に対応する;
−分で表される時間差:トロンビン生成テスト(t0)の開始からトロンビンの出現までの経過時間に対応する;
−分で表されるピークまでの時間:TGT(t0)の開始から最大トロンビンが生成される時間tmaxまでの経過時間に対応;
−ナノモル/分で表されるトロンビン生成速度:ピークまでの時間tmaxと時間差との差で割ったピークの高さに対応
【0070】
これらのパラメータはトロンビンの形成を測定するために使用する装置によって直接与えられることが有利である。
【0071】
当該試料におけるFVIIaレベルが高いほど、トロンビンはより速く生成され、ピークまでの時間がより短く、かつ速度がより速い。
【0072】
テスト試料の活性化VII因子のレベルを判断するために、既知の活性化VII因子レベルを含む標準試料から標準トロンボグラムを得る。上記のように、テスト試料として、異なるレベルの活性化VII因子を含む、少なくとも2つの標準試料を、FVIIと、FVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1個の因子が欠乏する血漿と混合する。トロンビン生成反応開始成分を標準試料+血漿の混合物に添加し、トロンビン生成テストを開始して各標準試料に対応する標準トロンボグラムを得る。
【0073】
標準試料+血漿の混合物のFVII+FVIIaの濃度は、10ピコモルから80ピコモルからなる。標準試料+血漿の混合物のFVII+FVIIaの濃度は、テスト試料+血漿の混合物のFVII+FVIIaの濃度とほぼ等しいことが好適である。標準試料と混合された血漿は、テスト試料と混合されたものと等しいことが望ましい。
【0074】
得られた標準トロンボグラムから、各標準試料に含まれる活性化VII因子のレベルと、トロンボグラムから抽出される1個のパラメータの間で補間を行う。
【0075】
行う補間は、直線、幾何学的、三次元、多項式、ラグランジュまたはニュートンタイプのいずれでもよい。
【0076】
行われる補間は、標準試料における活性化VII因子レベルの関数としての時間差の変化、標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてのピークまでの時間の変化、または標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてのピークまでの速度の変化に対応することが望ましい。
【0077】
このテスト試料のトロンボグラムから抽出されたパラメータのうちの少なくとも1個を標準トロンボグラムから行う補間に移すことによってテスト試料に含まれる活性化VII因子のレベルが判断される。移動するパラメータが時間差の場合は、使用する補間は標準試料における活性化VII因子レベルの関数としての時間差の変化に対応する。移動するパラメータがピークまでの時間の場合は、使用する補間は標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてのピークまでの時間の変化に対応する。移動するパラメータが速度の場合は、使用する補間は標準試料における活性化VII因子レベルの関数としての速度に対応する。
【0078】
したがって、補間から判断されるVII因子のレベルはテスト試料の活性化凝固VII因子のレベルに対応する。
【0079】
本発明の方法は、補間によって判断される活性化凝固VII因子のレベルからテスト試料における活性化凝固VII因子の濃度を計算する別の方法によってもよい。この場合は、活性化凝固VII因子の濃度は、次の公式によって得られる:
FVIIaの濃度=FVIIaレベル×FVII+FVIIaの濃度
【0080】
以下の各例は、その対象を限定せず本発明を説明するものである。
(実施例)
【実施例1】
【0081】
実施例1:FVIIが欠乏する血漿の調整
精製ヒト血漿FVIIをターゲットとする、ウサギで作られる多クローン性抗体を、CNBr−活性化セファローズ(Pharmacia)と共役させ、ついで得られたゲル2mLをカラムに入れた。カラムは平衡化バッファ(NaCl0.15モル、クエン酸10ミリモル、pH7.4)25mLで平衡化した。続いて、ヒト血漿6mLを数回カラムを通した。係る条件下で、カラムに定着されて残ったFVII及び溶出液を回収した(FIIが欠乏する血漿)。カラムは、固定されたFVIIを再生バッファ20mL(NaCl50ミリモル;グリシン0.1モル、pH2.4)で溶離して再生され、ついで、カラムを平衡化バッファ(クエン酸10ミリモル;NaCl0.15モル、pH7.4)20mLで再度平衡処理した。
【実施例2】
【0082】
実施例2:FII及びFVIII、FIXまたはFXIが欠乏する血漿の調整
精製ヒト血漿FVIIをターゲットとする、ウサギで作られる多クローン性抗体を、CNBr−活性化セファローズ(Pharmacia)と共役させ、ついで得られたゲル2mLをカラムに入れた。カラムは平衡化バッファ(NaCl0.15モル、クエン酸10ミリモル、pH7.4)25mLで平衡化した。続いて、それぞれDiagnostica・Stago社より購入した予めFVIII、FIXまたはFXIが欠失した工業用血漿6mLを、数回カラムを通した。係る条件化で、カラムに定着されて残ったFVII及び溶出液を回収した(FVII及びFVIII、FIXまたはFXIを2倍欠乏する血漿)。カラムは、固定されたFVIIを再生バッファ20mL(NaCl50ミリモル;グリシン0.1モル、pH2.4)で溶離して再生され、ついで、カラムを平衡化バッファ(クエン酸10ミリモル;NaCl0.15モル、pH7.4)20mLで再度平衡処理した。
【実施例3】
【0083】
実施例3:濃度50ピコモルのFVII+FVIIa用として、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿から標準トロンボグラムの作成
NIBSC社製、国際標準FVII(SI−FVII)および/またはNIBSC社、国際標準FVIIa(SI−FVIIa)及びFVIII、(Diagnostica Stago社製のFIIIが欠乏する血漿または実施例2のようにFVIIを欠失したタイプAの血友病血漿)の適量の試料を取り、既知の活性化VII因子レベルを含む標準試料を得、それにFIIが欠乏する血漿80mL加え、濃度10ピコモルから80ピコモルからなるFVII+FVIIaとして0%から100%の固定活性化VII因子レベルからなる混合物を得た。血漿及びTF5ピコモルの最終濃度の時、リン脂質1マイクロモル、(Diagnostica Stago社製、86195 試薬1:4に希釈)及びCa216.7ミリモル及びトロンビン−特定蛍光剤20mL(Diagnostica Stago社製、86197、Flucaキット試薬)の試料の混合物に、トロンビン生成反応を開始させる20mLの因子(Ca2+、リン脂質及びTF)を加える。
【0084】
0%から100%の既知の固定活性化VII因子レベル用のTGT標準曲線(標準トロンボグラム)を作成し、各種パラメータ(時間差、ピーク高さ、ピークまでの時間及び速度)を提供する標準トロンボグラムを得た。トロンビン形成時間測定用、トロンボグラム(Thrombinoscope・BV)を作成するための、励起波長390nm、転送波長460nm用ソフトウェア付き蛍光検出器(Floroskan−Thermo Electron)を用いて、トロンボグラムを作成する。
【0085】
図1は、血漿/試料の混合物中、最終50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得た標準トロンボグラムと、0から100%の範囲の各活性化VII因子レベルを示す。試料中の活性化VII因子のレベル増加の関数として、ピーク時の時間差及びトロンビン形成時間の減少が観察される。ピークまでの時間は、100%の活性化因子レベルでは14分と見積もられる限界に達する。FVIまたはFVIIaを加えないFII及びFVIIIが欠乏する血漿FII及びFVIIIが欠乏する血漿はトロンビン形成を生じないことがわかる。
【0086】
図2及び2aは、試料中の活性化VII因子レベルの関数として、時間差及びピークまでの時間の変化をそれぞれ示す。
【0087】
得られた結果は、試料中の活性化VII因子のレベルと血漿/試料の混合物中の濃度50ピコモルのFVII+FVIIaの得られたトロンボグラムから推定される各パラメータとの相関関係を示す。
【実施例4】
【0088】
実施例4:濃度50ピコモルのFVII+FVIIa用、FVII及びFVIXが欠乏する血漿から標準トロンボグラムの作成
Diagnostica・Stago社製のFIXが欠乏する反応性血漿を用いて、実施例1及び2の手順に従いFVIIを削減した実施例3の実験を繰り返す。
【0089】
図3は、血漿/試料の混合物中、50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得たトロンボグラムを示し、前記血漿はFVII及びFIXが欠乏する。試料中の活性化VII因子のレベルが増加する関数として、ピーク時の時間差及びトロンビン形成時間の減少が見られる。活性化VII因子のレベルが100%の時、16分と推定されるピークまでの時間が限界に達する。FVIIまたはFVIIaを加えず、FII及びFVIXが欠乏する血漿はトロンビン形成を生じないことが分かる。
【0090】
図4、5、及び6はそれぞれ試料中の活性化VII因子のレベルの関数としての時間差、ピークまでの時間及び速度の変化を示す。
【0091】
得られた結果は、試料中の活性化VII因子のレベルと、血漿/試料の混合物中50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得られたトロンボグラムから推定される各パラメータとの間に相関関係が得られることを示し、前記血漿はFVII及びFIXが欠乏する。
【実施例5】
【0092】
実施例5:濃度50ピコモルのFVII+FVIIa用、FII及びFXIが欠乏する血漿から得た標準トロンボグラムの作成
Diagnostica Stago社製、FXIが欠乏する反応性血漿を用い実施例3の実験を繰り返し、実施例1及び2の手順に従いFVIIを削減した。
【0093】
図7は、血漿/試料の混合物中、50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得たトロンボグラムを示し、前記血漿は、FVII及びFXIが欠乏する。試料中の活性化VII因子レベルが増加する関数として、ピーク時の時間差及びトロンビン形成時間の減少が見られる。活性化VII因子のレベルが100%の時、12分と推定されるピークまでの時間が限界に達する。FIIまたはFVIIaを加えないFIIが及びFXI欠乏する血漿はトロンビン形成を生じないことがわかる。
【0094】
図8、9、10及び11は、それぞれ試料中の活性化VII因子レベルの関数として、時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化をしめす。
【0095】
得られた結果から、試料中の活性化VII因子のレベルと血漿/試料の混合物中50ピコモルのFII+FVIIaの存在下で得られたトロンボグラムから推定されるそれぞれのパラメータとの間に相関関係が確立されることが分かる。前記血漿は、FII及びFXIが欠乏する。
【実施例6】
【0096】
実施例6:濃度10ピコモルのFII+FVIIa用、FII及びFVIIIが欠乏する血漿から標準トロンボグラムの作成
最終濃度10ピコモルのFVII+FVIIaを使い、実施例3の実験を繰り返す。
【0097】
図12は、血漿/試料の混合物中、10ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得られたトロンボグラムを示し、前記血漿はFVII及びFVIIIが欠乏する。試料中の活性化VII因子レベルが増加する関数として、時間差及びピーク時のトロンビン形成時間の減少が観察される。活性化VII因子レベルが100%の時21分と見積もられるピークまでの時間が、限界に達する。FIIまたはFVIIaを加えないFII及びFVIIIが欠乏する血漿は、トロンビン形成を生じないことが分かる。
【0098】
図13、14、15及び16は、試料中の活性化VII因子レベルの関数として、時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度の変化をそれぞれ示す。得られた結果は、血漿/試料の混合物中、活性化VII因子レベルと、10ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得られたトロンボグラムから推定される各パラメータとの相関関係が確立できることを示す。前記血漿は、FVII及びFVIIIが欠乏する。
【実施例7】
【0099】
実施例7:濃度80ピコモルのFVII+FVIIa用、FII及びFVIIIが欠乏する血漿標準トロンボグラムの作成
最終濃度80ピコモルのFVII+FVIIaを用いて、実施例3の実験を繰り返す。
【0100】
図17は、血漿/試料の混合物中、80ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得たトロンボグラムを示し、前記血漿はFVII及びFVIIIが欠乏する。試料中の活性化VII因子レベルが増加する関数として、ピーク時のトロンビン形成時間の減少が観察される。ピークまでの時間は、活性化VII因子レベルが100%のとき12分と見積もられる限界に達する。FIIまたはFVIIaを加えない、FII及びFVIIIが欠乏する血漿はトロンビン形成を起こしえないことが分かる。
【0101】
図18及び19は、試料中の活性化VII因子レベルの関数としての時間差及びピークまでの時間の変化をそれぞれ示す。
【0102】
得られた結果は、試料中の活性化VII因子レベルと血漿/試料の混合物中、80ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得たトロンボグラムから推定される各パラメータとの相関関係が確立できることを示す。前記血漿は、FVII及びFVIIIが欠乏する。
【実施例8】
【0103】
実施例8:FVIIを含むウサギの母乳の試料の活性化VII因子レベルの測定
対象試料は、活性化VII因子のレベルが未知で、FVII+FVIIaの濃度が500ピコモルである。
【0104】
上記のように、8mLの対象試料とFII及びFVIIIが欠乏する血漿72mLと混合する。このようにして、体積80mL、濃度50ピコモルのFII+FVIIaのテスト用反応混合物が得られる。次に、TFの最終濃度5ピコモル、リン脂質1マイクロモル(Diagnostica Stago社、86195試薬、1:4希釈済み)、及びトロンビン−特定石灰質蛍光剤20mL(Ca2+、最終濃度16.7ミリモル)(Diagnostica Stago社、86197、Fulcraキット試薬)の時、トロンビン生成反応開始成分(リン脂質及びTF)を20mL加えた。
【0105】
トロンボグラム及び対応する各パラメータ:すなわち時間差及びピークまでの時間を得るためにTGTを行った。
【0106】
同時に、FVII及びFVIIaの試料(国際標準FVII及びFVIIa、NIBSC社製)を混合し、活性化VII因子レベルは既知であって、0%から100%からなる標準試料を得た。上記のように、これらの標準試料とFVII及びFVIIIが欠乏する血漿を混合し、濃度50ピコモルのFVII+FVIIaを得た。次に、トロンビン生成反応開始成分(リン脂質及びTF)を試料/血漿の混合物に加え、最終濃度5ピコモルのTF及び1マイクロモルのリン脂質を得た(Diagnostica Stago社、86195試薬、1:4希釈済み)。最後に、トロンビン−特定石灰質蛍光剤20mL(最終濃度16.7ミリモルのCa2+)(Diagnostica・Stago社、86197、Fulcraキット試薬)を先の混合物に加えた。標準トロンボグラムの各パラメータを測定し、活性化VII因子のレベルの−logの関数としての、各パラメータの標準曲線をプロットした(図2及び2a及び表1参照)。
【0107】
テスト対象の試料を含む混合物のトロンボグラムから得た各パラメータ値を各標準曲線に移し、テスト対象の試料中の活性化VII因子のレベルを測定値を推定できるようにした。時間差6分30秒、ピーク時間18分が得られ、これらの数値を各標準曲線に移動し、試料中の活性化VII因子のレベルの測定値、20%が推定される。
【実施例9】
【0108】
実施例9:トロンビン生成テストにたいするウサギ母乳の影響
実施例3の実験を繰り返す。ただし、予め希釈した標準試料は、ヒト血清アルブミン(OKバッファ−1%HSA)1%を含む、またはウサギ母乳を含むOKバッファ−1%HSAウォーレンコラーバッファー中に既知の活性化VII因子レベルを含む。
【0109】
図20は、0から100%の活性化VII因子レベルの、血漿/試料の混合物中、最終50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得た標準トロンボグラムウを示す。OKバッファ1%のHSAを予め希釈した試料、及びOKバッファ1%のHSA中にウサギ母乳を含む予め希釈した試料のトロンボグラムは、完全に重なることが観察でき、ウサギ母乳はTGTに何ら影響を与えないことが推定できる。FIIまたはFVIIaを加えずFII及びFVIIIが欠乏する血漿は、トロンビン形成を生じないことが分かる。
【0110】
図21、22及び23は、それぞれ0%から100%の既知の固定活性化VII因子レベル用の、ウサギ母乳を含む予め希釈した試料、TpOK1%のHSA中の活性化VII因子レベルの関数として、トロンボグラム、時間差における変化及びピークまでの時間を示す。
【0111】
得られた結果は、実施例3と同様、ウサギ母乳を含む試料中の活性化VII因子レベルと血漿/試料の混合物中、濃度50ピコモルのFVII+FVIIaのトロンボグラムから推定される各パラメータとの間の相関関係が確立できることを示す。
【0112】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、試料中の活性化凝固VII因子(FVIIa)のレベルを測定する方法に関し、血液凝固の活性化凝固因子の判定に応用できる。
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、VII因子及びFVIII因子(FVIII)、IX因子(FIX)及びXI因子(FXI)から選ばれる因子の1個が欠乏する血漿を用いて、試料中の活性化凝固VII因子(FVIIa)のレベルを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
血液凝固は、生物に血管病変が起こった時に、出血をコントロールしこれによって出血を防ぐ機序である。
【0003】
血液凝固は、血液中に存在したんぱく質分解性の酵素によって活性化した形態に変換される様々なプロ酵素及びプロ共同因子を含む多段階のカスケード反応に続いて起こる。凝固の多段階の連続(すなわちカスケード反応)において、外因性の凝固経路と内因性の凝固経路の2つの経路が区別される。両者とも活性化凝固因子(FXa)、活性化凝固V因子(FVa)、リン脂質及びカルシウムから構成されるプロトロンビナーゼと呼ばれる複合物の形成を導く。プロトロンビンをトロンビンに活性化し、可溶性のフィブリノゲンを、凝塊を形成する不溶性のフィブリンに変換できるようにするのはプロトロンビナーゼである。
【0004】
外因性の経路には、血漿中に存在するFVIIの介在が含まれる。しかし凝固カスケード反応を開始するためには、FVIIは予めFVIIaに活性化されている必要がある。(組織因子と複合していない)FVIIaだけが低いたんぱく質分解の活動性を示す。リン脂質と結合するタンパク質である組織因子(TF)とFVIIaが複合すると、この活動性が顕在化され血管病変が形成される間に始動される。FVIIa−TF複合物は、カルシウムイオンの存在下でX因子をXa因子に変換する。また、FVIIa−TF複合物はFIXをFIXaに変換する。
【0005】
翻って、IXa因子とXa因子は、FVIIを活性化してFVIIaに変える。Va因子及びリン脂質(プロトロンビナーゼ)と複合したXa因子は、プロトロンビンをトロンビンに変換する。トロンビンはフィブリノゲンに作用してフィブリンに変換し、他の活動もするが、なかでもV因子をVa因子に、FVIIIをFVIIaに変換する。また、トロンビンは、カルシウムの存在下でXIII因子を活性化してXIIIa因子に変換し、フィブリン凝塊の硬化を可能にする。
【0006】
外因性凝固の経路においては、FVIIa/TFの複合物によってFIXが活性化されFIXaになるが、内因性凝固の経路では、FIXaはFIXa自体によってFIXから生成されるが、内皮下層のような負の電荷をもった表面と血液が接触することで、それ自体が活性化したFII因子によって活性化される。
【0007】
FVIIaと糖たんぱく質はビタミンKに依存し、従って凝固機序のなかで重要な役割を果たし、血液凝塊を形成する。FVIIaは、VIII因子またはIX因子がなくても、組織が出血をともなう損傷をした時に放出される組織因子の存在下で局所的に作用できるという利点を有する。これが、出血が顕著なある種の凝固不良を改善するために、FVIIaが長年にわたって使用されてきた理由である。
【0008】
最初の方法は、血漿からFVIIaを得ることであった。しかし、血漿からFVIIaを作ることは、供給源の入手可能性の点で制限があり、また血漿の使用によって、例えばプリオンやウィルス等の病原性の作用物質が伝染する危険性がある。これらの問題は、Novo・Nordisk・Pharmaceuticals社が開発した、構造的に血漿FVIIaと同じ糖たんぱく質である組み換えFVIIa(rFVIIa)によって克服された。
【0009】
rFVIIaの主要な治療上に関する著作は、A型血友病における成長したアンチVIII因子抗体、またB型血友病における成長したアンチFVIX抗体など、自発性または外科的な出血の治療に関するものである(米国、EU及び日本)。また欧州においては、先天性FVII欠乏症の患者及びグランツマン血小板無力症の患者への使用に関する著作である。
【0010】
さらに、多くの刊行物において、先天性凝固因子欠乏症も血小板無力症もない患者にたいする外科的手術中の出血の制御におけるrFVIIaの有効性が報告されている。
【0011】
FVIIaの使用が次第に広がることによって、
(1)FVIIaの活動性の測定
(2)FVIIaの濃度の判断
(3)活性化VII因子レベルの測定
等の方法が改善につながった。
【0012】
FVIIの活動性を検出する方法で最も知られているのは、凝固時間、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、トロンボエラストログラフィ(TEG)及びトロンビン生成テスト(TGT)などの測定法である。これらの方法により、FVIIa活動性を検出することを可能にはしたが、試料における活性化VII因子のレベルを直接測定可能にしたものではなかった。
【0013】
FVIIaの免疫分析用の市販キット(IMUBIND VII因子・ELISAキット)は入手可能であるが、この技法を実施するための実験条件を習得することは難しい。事実、このキットは使用方法が複雑で、動的範囲が極めて狭く、直線的検出範囲が極めて限定され、そして最も重要な点は+4℃の温度で作業をしなければならないことである。
【0014】
FVIIaの濃度を測定する他の方法が文献に記載されている。例えば切断組み換えTF(Starlet VIIa−rTF、Stago)を用いてたんぱく質分解の活動性を測定する方法(US5、472、850、US5、741、658、WO1992/018870、US5、750、358、US5、741、658、US5、472、850、EP0 641 443)、あるいはFVIIa−アンチトロンビン複合物の濃度を測定する方法(WO03/004694)など。これらの方法は極めて正確というわけでなく、また実施が難しい。事実、これらの方法は、FVIIaの濃度が低い場合は同時に処理できる試料の数が限られ、凝塊が形成されることは、この方法を正確に実施するには不適当である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、FVIIaによって生成されるFXaの蛍光発生法または色素分析法は、両者ともFVIIの作用とFVIIaの作用を区別することができないので、FVIIaの濃度を測定するのに適さないことがわかっている。
【0016】
FVIIaによる治療の効果を評価するために一部の生物学者に使われる方法の中で、しばしば血栓弾性描写法が使われる。この方法は、凝塊の形成を時間の関数として機械的に分析することによって、全血液の物理的特性を測定することからなる。血栓弾性描写法によって生成されるグラフ(thromboelastogramme(登録商標)と呼ばれる)から抽出されたパラメータによって、臨床医は患者の凝固能力を評価することができる。この方法は正確であるが、時間がかかりすぎて定期的、反復的分析には不向きで、また血液を採取してから1時間以内に実施する必要があるのでマルチ・サンプリングには応用できない。さらに、この方法は試料の活性化VII因子のレベルの測定はできない。
【0017】
このように、特に、試料が非活性化凝固VII因子と活性化凝固VII因子の混合物からなる場合には、試料中の活性化VII因子のレベルを測定するのが有効かつ簡単、入手可能な方法に対する切実な要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の概要)
出願者は、FII及びFVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1つの他の因子が欠乏する血漿を使用することによって、特に、試料が非活性化凝固VII因子及び活性化凝固VII因子を含む場合は、意外にも確実、再現可能、かつ実施が容易な方法で試料中の活性化VII因子のレベルが測定可能であることを発見した。
【0019】
したがって、本発明の方法において実施される実験条件は、試料中の活性化VII因子のレベルとトロンビン生成テスト(TGT)の特定のパラメータの特性及びそこから得られるトロンボグラムとの間の相関関係を確立することを可能とする。
【0020】
かかる相関関係により、前記試料のトロンボグラムのパラメータを既知の活性化VII因子のレベルを構成する合成物から得られる「標準」トロンボグラムのパラメータと比較することによって、テスト対象の試料中の活性化VII因子のレベルを判断することが可能となる。
【0021】
従って本発明は、テスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法であって、
a)前記テスト試料をVII因子(FVII)が欠乏しかつVIII因子(FVIII)、FVIX因子(FIX)及びXI因子(FXI)から選ばれた少なくとも他の1つの因子が欠乏する血漿と混合する工程であって、テスト試料+血漿はFVII+FVIIaの最終濃度が10ピコモルから80ピコモルの範囲となるように混合する工程と;
b)トロンビン生成反応開始成分を加える工程と;
c)工程b)の混合物にトロンビン生成テスト(TGT)を行いトロンボグラムを得る工程と;
d)工程c)のトロンボグラムのパラメータのうちの少なくとも1つを標準試料に基づいて作成した、活性化凝固VII因子のレベルが既知であって各標準試料間で異なる標準トロンボグラムの相同のパラメータと比較する工程と;
e)工程d)からテスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルの測定値を推定する工程とからなる、テスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法、に関する。
【0022】
本発明の方法は、選択的に工程e)で決まるレベルから前記テスト試料中の活性化凝固VII因子の濃度を計算する工程f)からなる。
好適には、標準トロンボグラムは、
(i)FVIIaのレベルが既知の標準試料、
(ii)FVII及び選択的にFVIII、FIX及びFXIが欠乏する血漿を用いて調製し、標準試料+減損血漿を含む得られる溶液中のFVII+FVIIaの最終濃度は、テスト試料+減損血漿を含む溶液中のFVII+FVIIaの最終濃度とほぼ等しい、
(iii) トロンビン生成反応開始成分
を含む混合物にトロンビン生成テストを行うことによって得られる。
【0023】
前記血漿がFVII及びFIXが欠乏する、またはFVII及びFXIが欠乏するときは、比較されるトロンボグラムのパラメータは、時間差、ピークまでの時間及び速度から選択され、前記血漿がFVII及びFVIIIが欠乏するときは、時間差及びピークまでの時間から選択されることが望ましい。
【0024】
テスト試料+血漿及び標準試料+血漿の混合は、FIIが欠乏しかつFVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1個のその他の因子が欠乏する同じ血漿を使って行われることが好ましい。
【0025】
トロンビン生成を開始する前記成分は、組織因子(TF)、リン脂質及びCa2からなり、試料+血漿+開始成分の混合物中の前記組織因子の最終濃度は1から10ピコモルの範囲内からなり、試料+血漿+開始成分の混合物中の前記リン脂質の最終濃度は、0.1から5マイクロモルの範囲からなり、試料+血漿+開始成分の混合物中のCa2+の最終濃度は14から18ミリモルの範囲内からなることが好ましい。
【0026】
レベルが測定される活性化FVII因子は、血漿由来(pFVIIa)、組み換え由来(aFVIIa)または遺伝子組み換え由来(TgFVIIa)であることが好ましい。
本発明の特定の実施例においては、テスト試料は遺伝子組み換え哺乳動物の母乳または無血清細胞培養基の試料である。
【0027】
また本発明は、テスト試料中の活性化VII因子のレベルを測定するための、FII及び、FVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1個の他の因子が欠乏する血漿の使用に関する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の方法において実施される実験条件は、試料中の活性化VII因子のレベルとトロンビン生成テスト(TGT)の特定のパラメータの特性及びそこから得られるトロンボグラムとの間の相関関係を確立することを可能とする。
かかる相関関係により、前記試料のトロンボグラムのパラメータを既知の活性化VII因子のレベルを構成する合成物から得られる「標準」トロンボグラムのパラメータと比較することによって、テスト対象の試料中の活性化VII因子のレベルを判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】標準試料/血漿の混合物において、最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で、活性化VII因子のレベルの範囲が0から100%(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用の、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて得た標準トロンボグラムである。
【図2】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用い、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、時間差及びピークまでの時間におけるそれぞれの変化を示す図である。
【図2a】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用い、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、時間差及びピークまでの時間におけるそれぞれの変化を示す図である。
【図3】標準試料/血漿の混合物において、最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)を用いて得た標準トロンボグラムである。
【図4】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間及び速度における変化を示す図である。
【図5】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間及び速度における変化を示す図である。
【図6】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間及び速度における変化を示す図である。
【図7】FVII及びFXIが欠乏する血漿(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)を用いて、標準試料/血漿の混合物において、濃度50ピコモルの最終FVII+FVIIaの存在下で得た、最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIaの標準トロンボグラムである。
【図8】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用の、FVII及びFXIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてそれぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図9】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用の、FVII及びFXIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてそれぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図10】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用の、FVII及びFXIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてそれぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図11】最終濃度50ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用の、FVII及びFXIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてそれぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図12】FVII及びFVIIIが欠乏する血漿(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)を用いて、標準試料/血漿の混合物において、濃度最終10ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得た標準トロンボグラムである。
【図13】濃度最終10ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図14】濃度最終10ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図15】濃度最終10ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図16】濃度最終10ピコモルのFVII+FVIIa(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化を示す図である。
【図17】FVII及びFVIIIが欠乏する血漿(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)を用いて、標準試料/血漿の混合物において濃度80ピコモルの最終FVII+FVIIaの存在下で、得た標準トロンボグラムである。
【図18】最終濃度80ピコモルのFVII+FVIIa用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差およびピークまでの時間における変化を示す図である。
【図19】最終濃度80ピコモルのFVII+FVIIa用、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿(組織因子:5ピコモル、リン脂質:1マイクロモル)を用いて、標準試料における活性化VII因子レベルの関数として、それぞれ時間差およびピークまでの時間における変化を示す図である。
【図20】0から100%の活性化VII因子レベルの、血漿/試料の混合物中、最終50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得た標準トロンボグラムウを示す図である。
【図21】それぞれ0%から100%の既知の固定活性化VII因子レベル用の、ウサギ母乳を含む予め希釈した試料、TpOK1%のHSA中の活性化VII因子レベルの関数として、トロンボグラム、時間差における変化及びピークまでの時間を示す図である。
【図22】それぞれ0%から100%の既知の固定活性化VII因子レベル用の、ウサギ母乳を含む予め希釈した試料、TpOK1%のHSA中の活性化VII因子レベルの関数として、トロンボグラム、時間差における変化及びピークまでの時間を示す図である。
【図23】それぞれ0%から100%の既知の固定活性化VII因子レベル用の、ウサギ母乳を含む予め希釈した試料、TpOK1%のHSA中の活性化VII因子レベルの関数として、トロンボグラム、時間差における変化及びピークまでの時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明の文脈において、用語「VII因子」すなわち「FVII」は、凝固を誘発することができない一本鎖プロ酵素に対応する非活性化凝固VII因子を意味する。
【0031】
用語「活性化凝固VII因子」または「活性化VII因子」すなわちFVIIaは、FVII(プロ酵素)の切断によって生じるジスルフィド架橋によって互いに結び付いた重鎖及び軽鎖からなる一本鎖タンパク質(酵素)を意味し、血液凝固を誘発する能力を有する。
【0032】
用語「FVII+FVIIa」は、当該試料に存在するFVII及びFVIIaの濃度または量の合計を意味する。FVII及びFVIIaの濃度または量の合計は、例えば、Diagnostica Stago社製、ASSERACHROM(登録商標)、VI:Ag(コード:00241)等の市販のキットを用いた免疫分析によって測定することができる。
【0033】
用語「活性化凝固VII因子レベル」または「FVIIaレベル」は、当該試料における活性化凝固VII因子(FVIIa)の量または濃度と、当該同試料におけるVII因子及び活性化凝固VII因子の量または濃度の合計(FVII+FVIIa)との割合を示す。FVIIaのみを含みFVIIを含まない試料の場合、活性化VII因子レベルは、1(すなわち、100%)となり;FVIIaとFVIIを同量の含む試料の場合、活性化VII因子レベルは、0.5(すなわち、50%)となり;FVIIのみを含む(FVIIaを含まない)試料の場合、活性化VII因子レベルは、0(すなわち、0%)となる。
【0034】
用語「テスト試料」は、FVII、活性化VII因子またはこれらの混合物を含み、その活性化VII因子のレベルが未知の試料を意味する。有利には、テスト試料は、血液または血漿から精製されるか、または例えば哺乳動物の母乳、培養基または細胞ホモジネート等の精製または非精製の体液から得られる。
【0035】
特定の実施例においては、テスト試料は哺乳動物の母乳の試料、特にその母乳においてFVIIおよび/またはFVIIaを作る遺伝子組み換え哺乳動物から得られる母乳の試料である。
【0036】
別の実施例においては、テスト試料は無血清細胞培養基である。
本発明の一実施例によれば、テスト対象の試料は、治療目的であるかどうかを問わず、液状またはフリーズドライ状の血漿(pFVIIa)、組み換え(rFVIIa)または遺伝子組み換え(TgFVIIa)及びFVII、またはそれらの混合物から得られるVIIaを含む試料である。
【0037】
「標準試料」とは、当該溶液において、活性化VII因子レベルが既知および/または選択され、例えば、国際標準FVII(血液凝固VII因子、濃縮、ヒト、NIBSCコード:97/592)または国際標準活性化VII因子(血液凝固VIIa因子、濃縮、ヒト、NIBSCコード:89/688)またはそれらの混合物が、活性化VII因子の望ましいレベルを得るために適切な量または濃度が組み込まれた、試料を意味する。また標準試料は、血液または血漿または、例えば、哺乳動物の母乳、培養基または細胞ホモジネート等の精製または非精製の体液から得ることもできる。
【0038】
本発明の文脈で用いられる血漿は、動物由来であって、好適には哺乳動物、及び好適にはヒトのものである。
【0039】
本発明の意味において、「〜が欠失した」または「〜が欠乏する」という表現は同じ意味を表し、合成物(例えば、血液凝固因子)の当該溶液(例えば血漿)の欠失を記述する目的で、合成物の存在が検出できなくなるまで代替語として使用することができる。
【0040】
従って、「FVII、かつFVIII、FIXまたはFXIから選択される少なくとも1個の因子が欠乏する血漿」という表現は、当業者に周知の分析方法によってそれらの濃度を測定したとき、当該血漿中のこれらの因子FVII、FVIII、FIXまたはFXIのそれぞれの濃度が検出閾値以下であることを意味する。分析方法として、例えば市販のキットまたは試薬(例えば、Diagnostica Stago社製、ASSERACHROM(登録商標)、VII:Ag(コード:00241)、またはKORDIA社製、VII因子ELISAセット(コード:FVII−EIA)を用いる分析方法を挙げることができる。
【0041】
血漿中のFVIIの検出閾値は、好適には約1mUI/ml(0.5ng/ml)であって、それ以下の濃度ではFVIIは検出されない。
【0042】
血漿中のFVIIIの検出閾値は、好適には約10mUI/ml(1ng/ml)であって、それ以下の濃度ではFVIIIは検出されない。
【0043】
血漿中のFIXの検出閾値は、好適には約0.2mUI/ml(1ng/ml)であって、それ以下の濃度ではFIXは検出されない。
【0044】
血漿中のFIXの検出閾値は、好適には約0.5mUI/ml(2.5ng/ml)、それ以下の濃度ではFIXは検出されない。
【0045】
血漿から当該因子を除去する技法には、当業者に周知の全ての技法が含まれる。除去技法の例として、特に免疫除去、化学的除去法及び化学的除去法の組み合わせが上げられる。
【0046】
免疫除去は、当該抗原における前記溶液をほぼ除去する目的で、溶液に含まれる抗原を特にターゲットとする抗体を用いることからなる。免疫除去を行うために使用する抗体としては、単一または幾つかの異なる細胞クローンを由来とする、多クローン性および/または単クローン性の抗体であってもよい。使用する抗体は、除去することが望ましい抗原を直接ターゲットとしてもよく、あるいはこの抗原に結びつくタンパク質をターゲットとしてもよい。
【0047】
FVII、FIXまたはFXIが欠失した血漿は、それぞれアンチFVII、アンチFIXまたはアンチFXI抗体をもちいて得ることができる。
【0048】
FVIIIが欠乏する血漿は、アンチFVIII抗体、ヴォン・ヴィルブランド因子をターゲットとする抗体、または血液中をFVIIIを搬送する血漿タンパク質を用いて得ることができる。
【0049】
FVIIIが欠失した血漿は、FVIIIがCa2+依存性因子の場合、EDTA(エチレン−ジアミン−四酢酸)を用いて化学的除去によっても得ることができる。この場合、EDTAは当業者に周知の方法、例えば透析法により除去する。
【0050】
本発明の実施に使用する血漿は、有利にはVII因子と少なくともFVIII、FIX及びFXIから選択されるその他の因子1つが欠乏する血漿である。
【0051】
本発明の実施に使用する血漿は、有利には生まれながらFVIIIが欠乏するタイプAの血友病から得た血漿、生まれながらFIXが欠乏するタイプB血友病から得た血漿、またはXI因子完全欠乏症を示す患者から得た血漿から作られる。生まれながらFVIII、FIまたはFXIが欠乏する前記血漿は、上記のような免疫学的または科学的方法によりFVIIが除去される。
【0052】
本発明の更に別の実施例においては、使用する血漿は、正常な血漿が用いられ、最初FVIIが除去され、つづいてFVIIIおよび/またはFIXおよび/またはFXIが除去される。
【0053】
本発明の意味において、用語「トロンビン生成反応開始成分」または「開始成分」は、プロトロンビンからトロンビン生成を開始する必須成分を意味する。
【0054】
トロンビン生成反応開始成分は、トロンビン生成反応を誘発するのに適度な濃度で、原則的にカルシウムイオンソース(Ca2+)、リン脂質作用物質及び組織因子(TF)からなる。
【0055】
本発明の文脈においてカルシウムイオンの適切なソースは、CaCl2等の生物学的に適合性のあるカルシウムイオンのソースとも対応する。Ca2+のソースは、下準備なしに他のトロンビン生成反応開始成分と、または他のトロンビン生成反応開始成分を添加した後に、試料/血漿の混合物に添加することができる。
【0056】
本発明の文脈においてカルシウムイオンの適度な濃度とは、試料+血漿+開始成分の混合物におけるカルシウムイオンの最終濃度、14から18ミリモルの範囲、特には16.7ミリモルを意味する。
【0057】
本発明において使用する適切なリン脂質作用物質は、濃縮またはフリーズドライ製品の形状でもよく、好適には大部分の量をホスファチジルコリンとホスファチジルセリンからなる混合物、またはホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンのみを含む混合物からなる。
【0058】
本発明の意味において、適度な濃度のリン脂質作用物質とは、試料+血漿+開始成分の混合物におけるリン脂質作用物質の最終濃度、0.1から5マイクロモル、具体的には0.5から2マイクロモル、更に具体的には1マイクロモルの範囲を意味する。
【0059】
本発明で使用する適切な組織因子(TF)は、いかなる天然、血漿、組み換えまたは遺伝子組み換え組織因子で構成されるグループ、またはVII因子からVIIa因子に活性化する機能を失ったいかなる切断組織因子を含むいかなる修飾組織因子から選択してもよいが、前記修飾組織因子は、特にVIIa因子の酵素活性補助因子として作用する能力を保存しているものとする。適切な修飾組織因子としては、例えば膜貫通ドメインが取り除かれたもので、Diagnostica Stago社から市販されるSTACLOTキット(コード番号:00281)の組織因子等でもよい。
【0060】
本発明の意味において、組織因子の適度な濃度とは、試料+血漿+開始成分の混合物における組織因子の最終濃度、1から10ピコモル、具体的には4から6ピコモル、更に具体的には5ピコモルを意味する。
【0061】
本発明の文脈において、テスト試料、標準試料、FVII及びVIII、FIXまたはFXIから選択された少なくとも1個の他の因子が欠乏する血漿および/またはトロンビン生成反応開始成分は、液状またはフリーズドライ状であってもよい。フリーズドライ状の場合は、これらの合成物は、本発明の方法を実施するに先立ち、注射精製水(WFI)等の適切な水性溶媒に懸濁状態に有利に保つことができる。
【0062】
本発明の出願者は、これにより、テスト試料に存在する非活性化FVII因子によって生じる不利な点を克服できる特定の実験条件に基づいて、テスト試料における活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法を開発した。
【0063】
本方法の第1のステップは、活性化VII因子レベルが未知のテスト試料を、FVIII、および/またはFIXおよび/またはFXIが欠乏する血漿と混合し、できた混合物のFVII+FVIIaの最終濃度が10ピコモルから80ピコモルの範囲とする。この血漿の性質に関わる特性と使用濃度の範囲との特定の組み合わせにより、本発明による活性化VII因子のレベルを測定する方法が実施可能となる。
【0064】
次に、血漿中に含まれるプロトロンビンからトロンビンの生成を導く切断反応を誘発する目的で、トロンビン生成反応開始成分をテスト試料+血漿の混合物に加える。ついで、トロンビン生成テストを行う。
【0065】
トロンビン生成テスト(TGT)は当業者に周知のテストである(トロンビン生成分析、臨床的関連文献:H.C・Hanker、R.Al・Dieri・&・S.Beguin、Curr.Opin.Hematol、2004、11、170−5)。これにより、連続的にトロンビンの生成量と、当該試料をトロンビン生成反応開始成分と接触させたときのトロンビンの生成に要する時間を測定することが可能となる。
【0066】
トロンビン生成テストは、当該試料が(または後者を含む溶液が)反応を開始させる成分と接触させると始まる。トロンビン生成テストの開始に対応する初期時間をt0とする。
【0067】
次に、生成トロンビンは、顕示剤は、好適にはトロンビンによる分解により蛍光合成物が現れる蛍光剤、色素剤を用いて顕示される。有利には、蛍光剤または色素剤は、トロンビン生成反応開始成分と同時に試料+血漿の混合物に添加する。
【0068】
新しく生成されたトロンビンによって分解される蛍光剤から生じる蛍光は、蛍光光度計等の測定装置によって検出される。使用する蛍光光度計は蛍光の経時変化を記録またはプロットする手段を備えることが好適である。蛍光光度計によって収集されたデータによりトロンボグラムと呼ばれる蛍光の経時変化曲線を得ることができる。
【0069】
トロンボグラムから次の4つのパラメータを測定することができる:
−ナノモルで表されるトロンビンのピーク高さ:反応の間時間tmaxに生成されるトロンビンの最高濃度に対応する;
−分で表される時間差:トロンビン生成テスト(t0)の開始からトロンビンの出現までの経過時間に対応する;
−分で表されるピークまでの時間:TGT(t0)の開始から最大トロンビンが生成される時間tmaxまでの経過時間に対応;
−ナノモル/分で表されるトロンビン生成速度:ピークまでの時間tmaxと時間差との差で割ったピークの高さに対応
【0070】
これらのパラメータはトロンビンの形成を測定するために使用する装置によって直接与えられることが有利である。
【0071】
当該試料におけるFVIIaレベルが高いほど、トロンビンはより速く生成され、ピークまでの時間がより短く、かつ速度がより速い。
【0072】
テスト試料の活性化VII因子のレベルを判断するために、既知の活性化VII因子レベルを含む標準試料から標準トロンボグラムを得る。上記のように、テスト試料として、異なるレベルの活性化VII因子を含む、少なくとも2つの標準試料を、FVIIと、FVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1個の因子が欠乏する血漿と混合する。トロンビン生成反応開始成分を標準試料+血漿の混合物に添加し、トロンビン生成テストを開始して各標準試料に対応する標準トロンボグラムを得る。
【0073】
標準試料+血漿の混合物のFVII+FVIIaの濃度は、10ピコモルから80ピコモルからなる。標準試料+血漿の混合物のFVII+FVIIaの濃度は、テスト試料+血漿の混合物のFVII+FVIIaの濃度とほぼ等しいことが好適である。標準試料と混合された血漿は、テスト試料と混合されたものと等しいことが望ましい。
【0074】
得られた標準トロンボグラムから、各標準試料に含まれる活性化VII因子のレベルと、トロンボグラムから抽出される1個のパラメータの間で補間を行う。
【0075】
行う補間は、直線、幾何学的、三次元、多項式、ラグランジュまたはニュートンタイプのいずれでもよい。
【0076】
行われる補間は、標準試料における活性化VII因子レベルの関数としての時間差の変化、標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてのピークまでの時間の変化、または標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてのピークまでの速度の変化に対応することが望ましい。
【0077】
このテスト試料のトロンボグラムから抽出されたパラメータのうちの少なくとも1個を標準トロンボグラムから行う補間に移すことによってテスト試料に含まれる活性化VII因子のレベルが判断される。移動するパラメータが時間差の場合は、使用する補間は標準試料における活性化VII因子レベルの関数としての時間差の変化に対応する。移動するパラメータがピークまでの時間の場合は、使用する補間は標準試料における活性化VII因子レベルの関数としてのピークまでの時間の変化に対応する。移動するパラメータが速度の場合は、使用する補間は標準試料における活性化VII因子レベルの関数としての速度に対応する。
【0078】
したがって、補間から判断されるVII因子のレベルはテスト試料の活性化凝固VII因子のレベルに対応する。
【0079】
本発明の方法は、補間によって判断される活性化凝固VII因子のレベルからテスト試料における活性化凝固VII因子の濃度を計算する別の方法によってもよい。この場合は、活性化凝固VII因子の濃度は、次の公式によって得られる:
FVIIaの濃度=FVIIaレベル×FVII+FVIIaの濃度
【0080】
以下の各例は、その対象を限定せず本発明を説明するものである。
(実施例)
【実施例1】
【0081】
実施例1:FVIIが欠乏する血漿の調整
精製ヒト血漿FVIIをターゲットとする、ウサギで作られる多クローン性抗体を、CNBr−活性化セファローズ(Pharmacia)と共役させ、ついで得られたゲル2mLをカラムに入れた。カラムは平衡化バッファ(NaCl0.15モル、クエン酸10ミリモル、pH7.4)25mLで平衡化した。続いて、ヒト血漿6mLを数回カラムを通した。係る条件下で、カラムに定着されて残ったFVII及び溶出液を回収した(FIIが欠乏する血漿)。カラムは、固定されたFVIIを再生バッファ20mL(NaCl50ミリモル;グリシン0.1モル、pH2.4)で溶離して再生され、ついで、カラムを平衡化バッファ(クエン酸10ミリモル;NaCl0.15モル、pH7.4)20mLで再度平衡処理した。
【実施例2】
【0082】
実施例2:FII及びFVIII、FIXまたはFXIが欠乏する血漿の調整
精製ヒト血漿FVIIをターゲットとする、ウサギで作られる多クローン性抗体を、CNBr−活性化セファローズ(Pharmacia)と共役させ、ついで得られたゲル2mLをカラムに入れた。カラムは平衡化バッファ(NaCl0.15モル、クエン酸10ミリモル、pH7.4)25mLで平衡化した。続いて、それぞれDiagnostica・Stago社より購入した予めFVIII、FIXまたはFXIが欠失した工業用血漿6mLを、数回カラムを通した。係る条件化で、カラムに定着されて残ったFVII及び溶出液を回収した(FVII及びFVIII、FIXまたはFXIを2倍欠乏する血漿)。カラムは、固定されたFVIIを再生バッファ20mL(NaCl50ミリモル;グリシン0.1モル、pH2.4)で溶離して再生され、ついで、カラムを平衡化バッファ(クエン酸10ミリモル;NaCl0.15モル、pH7.4)20mLで再度平衡処理した。
【実施例3】
【0083】
実施例3:濃度50ピコモルのFVII+FVIIa用として、FVII及びFVIIIが欠乏する血漿から標準トロンボグラムの作成
NIBSC社製、国際標準FVII(SI−FVII)および/またはNIBSC社、国際標準FVIIa(SI−FVIIa)及びFVIII、(Diagnostica Stago社製のFIIIが欠乏する血漿または実施例2のようにFVIIを欠失したタイプAの血友病血漿)の適量の試料を取り、既知の活性化VII因子レベルを含む標準試料を得、それにFIIが欠乏する血漿80mL加え、濃度10ピコモルから80ピコモルからなるFVII+FVIIaとして0%から100%の固定活性化VII因子レベルからなる混合物を得た。血漿及びTF5ピコモルの最終濃度の時、リン脂質1マイクロモル、(Diagnostica Stago社製、86195 試薬1:4に希釈)及びCa216.7ミリモル及びトロンビン−特定蛍光剤20mL(Diagnostica Stago社製、86197、Flucaキット試薬)の試料の混合物に、トロンビン生成反応を開始させる20mLの因子(Ca2+、リン脂質及びTF)を加える。
【0084】
0%から100%の既知の固定活性化VII因子レベル用のTGT標準曲線(標準トロンボグラム)を作成し、各種パラメータ(時間差、ピーク高さ、ピークまでの時間及び速度)を提供する標準トロンボグラムを得た。トロンビン形成時間測定用、トロンボグラム(Thrombinoscope・BV)を作成するための、励起波長390nm、転送波長460nm用ソフトウェア付き蛍光検出器(Floroskan−Thermo Electron)を用いて、トロンボグラムを作成する。
【0085】
図1は、血漿/試料の混合物中、最終50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得た標準トロンボグラムと、0から100%の範囲の各活性化VII因子レベルを示す。試料中の活性化VII因子のレベル増加の関数として、ピーク時の時間差及びトロンビン形成時間の減少が観察される。ピークまでの時間は、100%の活性化因子レベルでは14分と見積もられる限界に達する。FVIまたはFVIIaを加えないFII及びFVIIIが欠乏する血漿FII及びFVIIIが欠乏する血漿はトロンビン形成を生じないことがわかる。
【0086】
図2及び2aは、試料中の活性化VII因子レベルの関数として、時間差及びピークまでの時間の変化をそれぞれ示す。
【0087】
得られた結果は、試料中の活性化VII因子のレベルと血漿/試料の混合物中の濃度50ピコモルのFVII+FVIIaの得られたトロンボグラムから推定される各パラメータとの相関関係を示す。
【実施例4】
【0088】
実施例4:濃度50ピコモルのFVII+FVIIa用、FVII及びFVIXが欠乏する血漿から標準トロンボグラムの作成
Diagnostica・Stago社製のFIXが欠乏する反応性血漿を用いて、実施例1及び2の手順に従いFVIIを削減した実施例3の実験を繰り返す。
【0089】
図3は、血漿/試料の混合物中、50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得たトロンボグラムを示し、前記血漿はFVII及びFIXが欠乏する。試料中の活性化VII因子のレベルが増加する関数として、ピーク時の時間差及びトロンビン形成時間の減少が見られる。活性化VII因子のレベルが100%の時、16分と推定されるピークまでの時間が限界に達する。FVIIまたはFVIIaを加えず、FII及びFVIXが欠乏する血漿はトロンビン形成を生じないことが分かる。
【0090】
図4、5、及び6はそれぞれ試料中の活性化VII因子のレベルの関数としての時間差、ピークまでの時間及び速度の変化を示す。
【0091】
得られた結果は、試料中の活性化VII因子のレベルと、血漿/試料の混合物中50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得られたトロンボグラムから推定される各パラメータとの間に相関関係が得られることを示し、前記血漿はFVII及びFIXが欠乏する。
【実施例5】
【0092】
実施例5:濃度50ピコモルのFVII+FVIIa用、FII及びFXIが欠乏する血漿から得た標準トロンボグラムの作成
Diagnostica Stago社製、FXIが欠乏する反応性血漿を用い実施例3の実験を繰り返し、実施例1及び2の手順に従いFVIIを削減した。
【0093】
図7は、血漿/試料の混合物中、50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得たトロンボグラムを示し、前記血漿は、FVII及びFXIが欠乏する。試料中の活性化VII因子レベルが増加する関数として、ピーク時の時間差及びトロンビン形成時間の減少が見られる。活性化VII因子のレベルが100%の時、12分と推定されるピークまでの時間が限界に達する。FIIまたはFVIIaを加えないFIIが及びFXI欠乏する血漿はトロンビン形成を生じないことがわかる。
【0094】
図8、9、10及び11は、それぞれ試料中の活性化VII因子レベルの関数として、時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度における変化をしめす。
【0095】
得られた結果から、試料中の活性化VII因子のレベルと血漿/試料の混合物中50ピコモルのFII+FVIIaの存在下で得られたトロンボグラムから推定されるそれぞれのパラメータとの間に相関関係が確立されることが分かる。前記血漿は、FII及びFXIが欠乏する。
【実施例6】
【0096】
実施例6:濃度10ピコモルのFII+FVIIa用、FII及びFVIIIが欠乏する血漿から標準トロンボグラムの作成
最終濃度10ピコモルのFVII+FVIIaを使い、実施例3の実験を繰り返す。
【0097】
図12は、血漿/試料の混合物中、10ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得られたトロンボグラムを示し、前記血漿はFVII及びFVIIIが欠乏する。試料中の活性化VII因子レベルが増加する関数として、時間差及びピーク時のトロンビン形成時間の減少が観察される。活性化VII因子レベルが100%の時21分と見積もられるピークまでの時間が、限界に達する。FIIまたはFVIIaを加えないFII及びFVIIIが欠乏する血漿は、トロンビン形成を生じないことが分かる。
【0098】
図13、14、15及び16は、試料中の活性化VII因子レベルの関数として、時間差、ピークまでの時間、ピーク高さ及び速度の変化をそれぞれ示す。得られた結果は、血漿/試料の混合物中、活性化VII因子レベルと、10ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得られたトロンボグラムから推定される各パラメータとの相関関係が確立できることを示す。前記血漿は、FVII及びFVIIIが欠乏する。
【実施例7】
【0099】
実施例7:濃度80ピコモルのFVII+FVIIa用、FII及びFVIIIが欠乏する血漿標準トロンボグラムの作成
最終濃度80ピコモルのFVII+FVIIaを用いて、実施例3の実験を繰り返す。
【0100】
図17は、血漿/試料の混合物中、80ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得たトロンボグラムを示し、前記血漿はFVII及びFVIIIが欠乏する。試料中の活性化VII因子レベルが増加する関数として、ピーク時のトロンビン形成時間の減少が観察される。ピークまでの時間は、活性化VII因子レベルが100%のとき12分と見積もられる限界に達する。FIIまたはFVIIaを加えない、FII及びFVIIIが欠乏する血漿はトロンビン形成を起こしえないことが分かる。
【0101】
図18及び19は、試料中の活性化VII因子レベルの関数としての時間差及びピークまでの時間の変化をそれぞれ示す。
【0102】
得られた結果は、試料中の活性化VII因子レベルと血漿/試料の混合物中、80ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得たトロンボグラムから推定される各パラメータとの相関関係が確立できることを示す。前記血漿は、FVII及びFVIIIが欠乏する。
【実施例8】
【0103】
実施例8:FVIIを含むウサギの母乳の試料の活性化VII因子レベルの測定
対象試料は、活性化VII因子のレベルが未知で、FVII+FVIIaの濃度が500ピコモルである。
【0104】
上記のように、8mLの対象試料とFII及びFVIIIが欠乏する血漿72mLと混合する。このようにして、体積80mL、濃度50ピコモルのFII+FVIIaのテスト用反応混合物が得られる。次に、TFの最終濃度5ピコモル、リン脂質1マイクロモル(Diagnostica Stago社、86195試薬、1:4希釈済み)、及びトロンビン−特定石灰質蛍光剤20mL(Ca2+、最終濃度16.7ミリモル)(Diagnostica Stago社、86197、Fulcraキット試薬)の時、トロンビン生成反応開始成分(リン脂質及びTF)を20mL加えた。
【0105】
トロンボグラム及び対応する各パラメータ:すなわち時間差及びピークまでの時間を得るためにTGTを行った。
【0106】
同時に、FVII及びFVIIaの試料(国際標準FVII及びFVIIa、NIBSC社製)を混合し、活性化VII因子レベルは既知であって、0%から100%からなる標準試料を得た。上記のように、これらの標準試料とFVII及びFVIIIが欠乏する血漿を混合し、濃度50ピコモルのFVII+FVIIaを得た。次に、トロンビン生成反応開始成分(リン脂質及びTF)を試料/血漿の混合物に加え、最終濃度5ピコモルのTF及び1マイクロモルのリン脂質を得た(Diagnostica Stago社、86195試薬、1:4希釈済み)。最後に、トロンビン−特定石灰質蛍光剤20mL(最終濃度16.7ミリモルのCa2+)(Diagnostica・Stago社、86197、Fulcraキット試薬)を先の混合物に加えた。標準トロンボグラムの各パラメータを測定し、活性化VII因子のレベルの−logの関数としての、各パラメータの標準曲線をプロットした(図2及び2a及び表1参照)。
【0107】
テスト対象の試料を含む混合物のトロンボグラムから得た各パラメータ値を各標準曲線に移し、テスト対象の試料中の活性化VII因子のレベルを測定値を推定できるようにした。時間差6分30秒、ピーク時間18分が得られ、これらの数値を各標準曲線に移動し、試料中の活性化VII因子のレベルの測定値、20%が推定される。
【実施例9】
【0108】
実施例9:トロンビン生成テストにたいするウサギ母乳の影響
実施例3の実験を繰り返す。ただし、予め希釈した標準試料は、ヒト血清アルブミン(OKバッファ−1%HSA)1%を含む、またはウサギ母乳を含むOKバッファ−1%HSAウォーレンコラーバッファー中に既知の活性化VII因子レベルを含む。
【0109】
図20は、0から100%の活性化VII因子レベルの、血漿/試料の混合物中、最終50ピコモルのFVII+FVIIaの存在下で得た標準トロンボグラムウを示す。OKバッファ1%のHSAを予め希釈した試料、及びOKバッファ1%のHSA中にウサギ母乳を含む予め希釈した試料のトロンボグラムは、完全に重なることが観察でき、ウサギ母乳はTGTに何ら影響を与えないことが推定できる。FIIまたはFVIIaを加えずFII及びFVIIIが欠乏する血漿は、トロンビン形成を生じないことが分かる。
【0110】
図21、22及び23は、それぞれ0%から100%の既知の固定活性化VII因子レベル用の、ウサギ母乳を含む予め希釈した試料、TpOK1%のHSA中の活性化VII因子レベルの関数として、トロンボグラム、時間差における変化及びピークまでの時間を示す。
【0111】
得られた結果は、実施例3と同様、ウサギ母乳を含む試料中の活性化VII因子レベルと血漿/試料の混合物中、濃度50ピコモルのFVII+FVIIaのトロンボグラムから推定される各パラメータとの間の相関関係が確立できることを示す。
【0112】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、試料中の活性化凝固VII因子(FVIIa)のレベルを測定する方法に関し、血液凝固の活性化凝固因子の判定に応用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法であって、
a)前記テスト試料をVII因子(FVII)が欠乏しかつVIII因子(FVIII)、FVIX因子(FIX)及びXI因子(FXI)から選ばれた少なくとも他の1つの因子が欠乏する血漿と混合する工程であって、テスト試料+血漿の混合物はFVII+FVIIaの最終濃度が10ピコモルから80ピコモルの範囲となるように混合する工程と;
b)トロンビン生成反応開始成分を加える工程と;
c)工程b)の混合物にトロンビン生成テスト(TGT)を行いトロンボグラムを得る工程と;
d)工程c)のトロンボグラムのパラメータのうちの少なくとも1つを標準試料に基づいて作成した、活性化凝固VII因子のレベルが既知であって各標準試料間で異なる標準トロンボグラムから得た相同のパラメータと比較する工程と;
e)工程d)からテスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルの測定値を推定する工程とからなる、テスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法。
【請求項2】
各前記標準トロンボグラムは、
(i)活性化凝固VII因子のレベルが既知の標準試料、
(ii)FVIIが欠乏しかつFVIII、FIX及びFXIから選ばれた少なくとも他の1つの因子が欠乏する血漿であって、テスト試料+血漿の混合物はFVII+FVIIaの最終濃度が10ピコモルから80ピコモルの範囲となる混合物である、及び
(iii)トロンビン生成反応開始成分
を含む混合物にトロンビン生成テストを行うことによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)において、前記比較されるトロンボグラムのパラメータは、時間差、ピークまでの時間及び速度から選択される、請求項1及び2いずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記血漿はFVII及びFIXが欠乏、またはFVII及びFXIが欠乏する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程d)において、前記比較されるトロンボグラムのパラメータは時間差及びピークまでの時間から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記血漿はFVII及びFVIIIが欠乏する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
テスト試料+血漿及び標準試料+血漿の混合物は、FIIが欠乏しかつFVIII、FIX及びFXIから選択される少なくともその他1つの因子が欠乏する同じ血漿を使って作られる、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
トロンビン生成を開始する前記成分は組織因子(TF)、リン脂質及びCa2からなり、試料+血漿+開始成分の混合物中の前記組織因子の最終濃度は1から10ピコモルの範囲内からなり、試料+血漿+開始成分の混合物中の前記リン脂質の最終濃度は、0.1から5マイクロモルの範囲からなり、試料+血漿+開始成分の混合物中のCa2+の最終濃度は14から18ミリモルの範囲内からなる、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
テスト試料は遺伝子組み換え哺乳動物の母乳または無血清細胞培養基の試料である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
レベルが測定される活性化FVII因子は血漿由来(pFVIIa)、組み換え由来(rFVIIa)または遺伝子組み換え由来(TgFVIIa)である、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
更に、工程e)で決まるレベルから前記テスト試料中の活性化凝固VII因子の濃度を計算する工程f)からなる、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
テスト試料中の活性化VII因子のレベルを測定するための、FIIが欠乏する血漿及びFVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1個の他の因子の使用。
【請求項1】
テスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法であって、
a)前記テスト試料をVII因子(FVII)が欠乏しかつVIII因子(FVIII)、FVIX因子(FIX)及びXI因子(FXI)から選ばれた少なくとも他の1つの因子が欠乏する血漿と混合する工程であって、テスト試料+血漿の混合物はFVII+FVIIaの最終濃度が10ピコモルから80ピコモルの範囲となるように混合する工程と;
b)トロンビン生成反応開始成分を加える工程と;
c)工程b)の混合物にトロンビン生成テスト(TGT)を行いトロンボグラムを得る工程と;
d)工程c)のトロンボグラムのパラメータのうちの少なくとも1つを標準試料に基づいて作成した、活性化凝固VII因子のレベルが既知であって各標準試料間で異なる標準トロンボグラムから得た相同のパラメータと比較する工程と;
e)工程d)からテスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルの測定値を推定する工程とからなる、テスト試料中の活性化凝固VII因子のレベルを測定する方法。
【請求項2】
各前記標準トロンボグラムは、
(i)活性化凝固VII因子のレベルが既知の標準試料、
(ii)FVIIが欠乏しかつFVIII、FIX及びFXIから選ばれた少なくとも他の1つの因子が欠乏する血漿であって、テスト試料+血漿の混合物はFVII+FVIIaの最終濃度が10ピコモルから80ピコモルの範囲となる混合物である、及び
(iii)トロンビン生成反応開始成分
を含む混合物にトロンビン生成テストを行うことによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d)において、前記比較されるトロンボグラムのパラメータは、時間差、ピークまでの時間及び速度から選択される、請求項1及び2いずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記血漿はFVII及びFIXが欠乏、またはFVII及びFXIが欠乏する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程d)において、前記比較されるトロンボグラムのパラメータは時間差及びピークまでの時間から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記血漿はFVII及びFVIIIが欠乏する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
テスト試料+血漿及び標準試料+血漿の混合物は、FIIが欠乏しかつFVIII、FIX及びFXIから選択される少なくともその他1つの因子が欠乏する同じ血漿を使って作られる、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
トロンビン生成を開始する前記成分は組織因子(TF)、リン脂質及びCa2からなり、試料+血漿+開始成分の混合物中の前記組織因子の最終濃度は1から10ピコモルの範囲内からなり、試料+血漿+開始成分の混合物中の前記リン脂質の最終濃度は、0.1から5マイクロモルの範囲からなり、試料+血漿+開始成分の混合物中のCa2+の最終濃度は14から18ミリモルの範囲内からなる、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
テスト試料は遺伝子組み換え哺乳動物の母乳または無血清細胞培養基の試料である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
レベルが測定される活性化FVII因子は血漿由来(pFVIIa)、組み換え由来(rFVIIa)または遺伝子組み換え由来(TgFVIIa)である、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
更に、工程e)で決まるレベルから前記テスト試料中の活性化凝固VII因子の濃度を計算する工程f)からなる、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
テスト試料中の活性化VII因子のレベルを測定するための、FIIが欠乏する血漿及びFVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1個の他の因子の使用。
【図1】
【図2】
【図2a】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図2a】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2011−526691(P2011−526691A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515647(P2011−515647)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006099
【国際公開番号】WO2010/001219
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(508183139)エルエフビー バイオテクノロジース (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/IB2009/006099
【国際公開番号】WO2010/001219
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(508183139)エルエフビー バイオテクノロジース (7)
【Fターム(参考)】
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