説明

試料中の目標分子の検出

本発明は、試料中の目標分子の存在の検出に関する。ここで、試料は基板と接触させられ、基板はその後洗浄段階において洗浄される。具体的には、本発明は、試料中の目標分子の存在を検出する方法であって、(a)前記試料を、前記目標分子に特異的に結合するプローブ分子が固定されている基板と接触させる段階(37)と;(b)結合されていない目標分子を除去または希釈するために洗浄流体によって前記基板を洗浄する洗浄段階(38)と;(c)前記目標分子が前記試料中に存在するかどうかを判定するために、前記基板上における結果として得られる結合複合体の存在を検出する段階(39)とを有する。前記洗浄流体は、前記基板と、実質的に屈折率が一致している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中の目標分子の存在を検出する方法に、より詳細には、試料を基板と接触させ、基板がその後洗浄ステップで洗浄されることを含む方法に関する。さらに、本発明は検定物(assay)を用意するための装置、検定物中の目標分子を検出する光学的検出システム、前記方法に従って生産された基板、検定を実行するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の生物学的分子(生体分子)についての検出方法は多様で、多くの異なる手法が現在、当業者に利用可能である。特定の生物学的分子の検出は幅広い重要な実際的応用があり、それには診断目的での遺伝子識別も含まれる。
【0003】
一般に、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、細胞および抗体といった生物学的標本(「目標(target)」)の検出は、アレイ、たとえばバイオアレイ(bio-array)(またはマイクロアレイ(micro-array))と呼ばれるものの上で特に実行できる。アレイ上のさまざまな部位に、対応するプローブ分子が付着させられる。目標‐プローブの例は:DNA/RNA‐オリゴヌクレオチド、抗体‐抗原、細胞‐抗体/タンパク質、ホルモン受容体‐ホルモンなどを含む。目標が対応するプローブ分子に結合またはハイブリダイズされるとき、目標生体分子の検出は多様な光学的、電子的またさらには微小機械的方法によって実行されうる。
【0004】
バイオアレイ上の分子結合の検出に普通に使われる技法は、「ラベル〔標識〕」または「マーカー」としても知られる蛍光を発するラベル付けされた目標の光学的な検出である。一般に、ラベルは、その物理的分布および/またはそれが与える出ていく信号の強度に関して検出可能ないかなるエージェントでもよい。蛍光性エージェント(fluorescent agent)は幅広く使われているが、代替としては燐光性エージェント(phosphorescent agent)、電場ルミネセンス性エージェント(electroluminescent agent)、化学ルミネセンス性エージェント(chemoluminescent agent)、生物ルミネセンス性エージェント(bioluminescent agent)等が含まれる。
【0005】
一般に、ルミネセンス検出の問題は、低強度のルミネセンスによる光を、一般に高強度の、ルミネセンスではない照射光から分離することに関わる。したがって、ルミネセンス検出の信頼性は、分離プロセスにおいて使用されるスペクトル・フィルタの光学的特性に大いに依存する。スペクトル・フィルタ関数は二段階を含みうる:第一のフィルタ(「励起フィルタ」と呼ばれる)は好ましくはラベル物質の励起スペクトルと重なる波長をもつ光線を透過させ、検出窓のスペクトル内にある波長をもつすべての光線を遮る。第二のフィルタ(「放出体フィルタ」または「検出フィルタ」と呼ばれる)は好ましくは、すべての照射光を遮り、ルミネセンスの光線のみを透過させる。典型的なフィルタの減衰(遮る力)は10-6よりよい。この目的のため、物質の光学的属性が考慮されてもよい。
【0006】
US2005/0048571は、バイオアレイからの光学的検出との関連で自己蛍光を減らすための基板を開示している。この開示では、基板の多孔層が着色剤で色付けされる。しかしながら、基板の色付けの欠点は、基板がより高価になり、使用されうる基板の異なる型の数が制限されうるということである。
【0007】
本発明の発明者は、ルミネセンス検出のための改良された手段が有益であることを認識するに至り、その結果、本発明を案出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、生物検定の実行との関連などでルミネセンス検出を扱う改良された方法を提供しようとするものである。好ましくは、本発明は、上記またはその他の欠点を単独で、または任意の組み合わせにおいて軽減、緩和または解消する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は独立請求項によって定義される。従属請求項は有利な実施形態を定義する。
【0010】
本発明の第一の側面によれば、試料中における目標分子の存在を検出する方法が提供される。
【0011】
目標分子は、蛍光団(fluorophore)に接合された(conjugated)生体分子であってもよい。
【0012】
放射は典型的には可視または可視に近い波長帯、赤外(IR)または紫外(UV)波長帯の電磁放射である。
【0013】
本発明のコンテキストでは、「蛍光(fluorescence)」および「燐光(phosphorescence)」の用語は、広義で、ある波長で光が分子または原子によって吸収され、その後、問題となる励起分子/原子の寿命後に同じまたは他の波長で放出される過程から帰結する放出光として理解されるものとする。放出される光はしばしば、これに限定する必要はないが、可視光スペクトル(VIS: visible light spectrum)、UVスペクトルおよびIRスペクトルにある。
【0014】
ある実施形態では、目標分子は、放射ビームで基板を照射し、その後、帰結する基板からのルミネセンス・ビーム、すなわち目標分子のルミネセンスを検出することによって検出される。検出される放射のルミネセンス部分は、光ルミネセンス、特に蛍光または燐光であってもよい。
【0015】
プローブ分子を固定化するための基板は、生物学的目標の分析のために構成されたバイオアレイであってもよい。典型的には、バイオアレイは、目標分子が固定化される複数のスポットを有しうる。このコンテキストにおいて、スポットとは、ある広がりをもつ領域と理解されるものとする。スポットは2Dまたは3Dの構造をもちうる。バイオアレイはシリコン・ウェーハ、ガラス板、ナイロン、ニトロセルロースなどの多孔膜であってもよい。
【0016】
プローブ分子を固定化するのに使われる基板の光学的属性は、基板が非常に高い反射率を持つようなものであってもよい。散乱の量は、なかでも空気と基板の屈折率の差に依存する。高い反射率のため、入射放射はすんなりと基板に侵入しないことがありうる。これは基板に結合した、特に基板内の蛍光団を励起できる入射放射の量を減らす。さらに、高い反射率のため、構成によっては、反射光の大きな部分が、検出器のほうに反射されることがありうる。
【0017】
本発明は、排他的にではないが特に、基板の反射率を減らすために有利である。洗浄ステップの間に実質的に屈折率整合された流体を使うことにより、基板の反射率は大幅に低減できる。さらに、基板に侵入する光の量が増し、入射放射とルミネセンス放射の比の改善につながる。
【0018】
ある有利な実施形態では、洗浄流体の屈折率は、基板の屈折率の上下10%の範囲内である。原理的には、屈折率のできるだけよい整合を得ることが有利であるが、少なくとも所与のプローブおよび/または目標分子および/または基板のために特定の型の洗浄流体が要求される状況では、トレードオフが有利となりうる。基板の屈折率に対する洗浄流体の屈折率の整合は、上下8%、上下6%、上下4%、上下2%よりよいというものでよい。
【0019】
ある有利な実施形態では、洗浄流体は砂糖(蔗糖)の水溶液で、砂糖の重量百分率は50%ないし80%である。蔗糖の水溶液は、多くの蛍光団接合体(fluorophore-conjugates)はそのような流体に溶けやすいので、有利でありうる。
【0020】
本発明の諸実施形態は、多孔基板について有利に適用されうる。というのも、基板からの高い反射は、多孔性基板については孔の散乱のためより一層問題となりうるからである。
【0021】
本発明に基づく方法のある実施形態では、目標分子は蛍光団に接合された(conjugated)生体分子である。
【0022】
本発明に基づく方法のある実施形態では、基板はプローブ分子を用いて用意された生体検定物(bio-assay)であり、目標分子はプローブ分子に化学結合する。さまざまな有利な実施形態において、放射通過フィルタ、鏡および可能性のある他の光学的構成要素が放射源から検出器へのビーム経路に導入されてもよい。
【0023】
たとえば、目標分子は、基板を放射のビームで照射し、その後、帰結する基板からのビームを検出することによって検出される。
【0024】
帰結するビームは、基板を透過してもよく、基板から反射されてもよい。
【0025】
ある実施形態では、第一の放射通過フィルタ(2)が放射源(36)と基板(3、30‐32)の間のビーム経路に導入される。
【0026】
ある実施形態では、第二の放射通過フィルタ(4)が基板(3、30‐32)と検出器(35)の間のビーム経路に導入される。
【0027】
ある実施形態では、ビーム経路はさらにダイクロイック・ミラー(5)を有する。
【0028】
本発明の方法は、有利には、少なくとも部分的に自動化されてもよい。自動化はたとえば、本方法を、本発明の他の側面に基づく装置または検出システムにおいて実装することによってでもよい。
【0029】
第二の側面では、本発明は、検定物を用意するための装置に関する。
【0030】
第三の側面では、本発明は、検定物中の目標分子を検出する光学的検出システムに関する。
【0031】
本発明の第二および第三の側面は、一つまたは複数の生物学的目標、すなわち試料中の目標分子の存在および任意的には量を検出する装置および検出システムを提供しうる。本システムは、これに限られないが、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、細胞および抗体を含む目標を検出しうる。生物学的検出システムはしばしばきわめて複雑であり、本発明は、収集されるデータの高い信頼性をもつシステムを提供することにおいて有利である。
【0032】
第四の側面では、本発明は、前記第一の側面の方法に従って生産される基板に関係する。
【0033】
第五の側面では、本発明は検定を実行するためのキットに関する。
【0034】
一般に、本発明のさまざまな側面は、本発明の範囲内で可能ないかなる仕方で組み合わされ、結合されてもよい。本発明のこれらおよびその他の側面、特徴および/または利点は、以下に記載される実施形態を参照することから明白となり、明快にされるであろう。
【0035】
本発明の実施形態について、あくまでも例として、図面を参照しつつ述べる。

【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】光学的セットアップの一般的な実施形態を概略的に示す図である。
【図1B】光学的セットアップの一般的な実施形態を概略的に示す図である。
【図2】図1Bのセットアップについてのスペクトル特性を、Cy5染料のスペクトルとともに示す図である。
【図3A】試料中の目標分子の存在を検出する方法のある実施形態である。
【図3B】試料中の目標分子の存在を検出する方法のある実施形態である。
【図3C】試料中の目標分子の存在を検出する方法のある実施形態である。
【図4】蔗糖水溶液の屈折率nの、重量パーセントpの関数としてのグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
生物学的研究および医学的診断において、多くのバイオマーカーが、取り付けられた蛍光ラベルを援用して検出される。一般に使用される装置は、蛍光スキャナまたは顕微鏡であるが、特定の用途のためには専用設備が同じ検出原理に基づいて作られる。
【0038】
本発明のある一般的な実施形態では、少なくとも二つのスペクトル・フィルタが適用される光学的セットアップが使用される。図1Aおよび1Bは、二つの一般的な実施形態を概略的に示している。図1Aは、結果として得られるビームが基板を透過するものである透過モードでの蛍光検出装置の概略図を示している。一方、図1Bは、結果として得られるビームが基板から反射される反射モードでの蛍光検出装置の概略図を示している。図1Aおよび1Bにおいて、光ビーム1A、1Bは基板3に向かって放出される。結果として得られる蛍光ビームを蛍光でない照射光から分離するために、スペクトル・フィルタが適用される。
【0039】
スペクトル・フィルタ関数は二段階からなる:第一の放射フィルタ2(「励起フィルタ(excitation filter)」と呼ばれる)は、放射(光)源と基板の間のビーム経路に導入される。励起フィルタは好ましくは、ラベルの励起スペクトルと重なる波長をもつ光線を透過させ、検出窓のスペクトル内にある波長をもつすべての光線を遮る。第二の放射フィルタ4(「放出体フィルタ(emitter filter)」または代替的に「検出フィルタ(detection filter)」と呼ばれる)はビーム経路に導入される。放出体フィルタは好ましくは、照射光を遮り、または実質的に抑制し、蛍光光線のみを透過させる。典型的なフィルタの減衰率(遮る力)は10-6よりよい。
【0040】
図1Bでは、ビームスプリッター5がさらに適用される。ビームスプリッターはたとえば、基板が透明でない状況において適用されうる。ある代替的な実施形態では、ビームスプリッターの代わりにダイクロイックミラーが適用されてもよい。ダイクロイックミラーは、ある波長より下の励起光は反射し、この波長より上の光は透過させる。したがって、ダイクロイックミラーは放出体フィルタ4としてもはたらく。それでも性能向上のために別個の放出体フィルタが使用されてもよいが、それは必須でなくてもよい。
【0041】
ある実施形態では、2ないし10個の赤色LEDのようないくつかの高出力LEDによって基板が照射されうる。暗視野(dark field)セットアップが適用されてもよい。結果として得られる光は、前面に放出体フィルタをマウントしたCCDカメラ(図示せず)によって検出される。蛍光団の一例として、染料Cy5が使用されてもよい。
【0042】
基板3は、生物検定における使用のための生物検定基板のような基板を用意するいかなる好適な方法で用意されてもよい。一つの典型的なアレイ検定方法は、基板上の離散的な位置にプローブ分子を固定化することを含む。取り付けられたプローブに結合する目標分子を含む溶液が、束縛されたプローブと接触させられる。接触は、溶液中の目標の、基板上の相補的プローブへの結合を促進して、基板の表面に束縛された結合複合体を形成するのに十分な条件のもとで行われる。バイオアレイは、マイクロメートル程度またさらにはミリメートル程度の大きさであってもよい。バイオアレイ上の明確なハイブリダイゼーション特性をもつ異なるスポットの数は、現行のアレイではmm2当たり約1から1000まで、またさらにはより高く、たとえばmm2当たり106スポットまで変化がありうる。アレイ上のあるスポット内には、典型的には、同一のプローブ分子が固定化される。
【0043】
図2は、図1Bのセットアップについての可能な関わるスペクトル特性の実施形態を、Cy5染料のスペクトルと一緒に示す。図2は、オメガ・オプティカル(Omega Optical)のウェブサイト(www.omegafilters.com)からアクセス可能なCurv-o-maticというオンライン・アプリケーションの使用により生成される。図2は、Omegaフィルタ・セットXF110-2について、パーセント単位の透過率Tを、関わるスペクトルのナノメートル単位の波長λの関数として示している。
【0044】
図2は、649nmに励起ピークをもつCy5の励起スペクトル20を、670nmに放出ピークをもつ対応する放出スペクトル21と一緒に示している。光子当たりの照射波長と蛍光波長との違いは「ストークス偏移」と呼ばれる。Cy5のストークス偏移は21nmである。
【0045】
励起フィルタは、22で示されるスペクトルを示すOmega 630AF50励起フィルタである(帯域幅50nm、中心630nm)。放出体フィルタは、23で示されるスペクトルを示すOmega 695AF55放出体フィルタである(帯域幅55nm、中心695nm)。ダイクロイックミラーは、24によって示されるように、励起光の波長において入射光を反射し、結果として得られるストークス偏移した光を透過させるようなミラーのスペクトルとなるよう選ばれる。特定的なフィルタ・セットおよびダイクロイックミラーは例として与えられており、すべての実施形態において必ず適用されるとは限らない。たとえば、図1Bとの関連で述べたように、ダイクロイックミラーを使うときは放出体フィルタはなしですませてもよい。
【0046】
表1は、多孔性ナイロン基板(Nytran NおよびNytran SPC)3について光学的属性を測定した実験結果を示す。実験は、入射波長650nmで基板を照射し、その後、結果として得られる基板からのビームを検出することによって実行された。二つの型の実験が実行された。乾いた基板での実験と、洗浄ステップにおいて水にさらされた基板での実験である。
【0047】
【表1】

表1に見られるように、基板は特に乾燥時に非常に高い反射率をもつ。この高い反射率の原因は、基板の高度な多孔性に起因する散乱である。散乱の量は、空気と基板の屈折率の差に依存する。空気に比べると、水の屈折率は基板の屈折率にずっと近い。濡れた基板が乾いた基板より低い屈折率をもつのはこのためである。
【0048】
本発明によれば、実質的に屈折率整合する流体が、検定の洗浄ステップの間に適用され、それにより基板の反射率が大幅に、典型的には5%の反射率という値にまで低減される。
【0049】
励起強度における改善は、洗浄流体としての水に比較して少なくとも3倍でありうるが、乾いた基板と比較すると20倍にもなりうる。
【0050】
励起と蛍光の放射比の改善は、水に比べて少なくとも14倍でありえ、乾いた基板と比べると19倍にもなりうる。
【0051】
図3A〜Cは、本発明に基づく、試料中の目標分子の存在を検出する方法の実施形態を示す。ここで、バイオアレイは洗浄ステップを使って用意される。図3Aないし3Cは、関わってくるステップの少なくともいくつかを示している。
【0052】
図3Aに先立つステップにおいて、試料流体が、蛍光団に接合された目標生体分子を用いて調製されている。図3Aのステップ37では、試料を基板30を通して流すことによって、試料6が基板30と接触させられ、蛍光団をもつ目標生体分子を基板上の個別の束縛位置に付着させる。目標分子が基板に代替的な仕方で、たとえばパルスジェットからの滴投下の適用によって、あるいは他の好適な手段によって接触させられてもよいことは理解されるものとする。
【0053】
用意ステップの間、すべての蛍光団がプローブ分子と結合するとは期待できない。これは、基板30に結合した蛍光団に加えて、基板に付着していないがまだ存在している未結合の蛍光団もあるということを意味する。洗浄ステップ38は、図3Bに示されるように未結合の蛍光団接合体があればそれを除去するか少なくとも希釈して、結合した蛍光団接合体のみを基板上に残すために適用される。このステップの間、洗浄液体7は基板31を通じて押し流される。本発明では、洗浄液体7は、基板31の屈折率と実質的に一致する洗浄流体の屈折率をもつよう選ばれる。
【0054】
図3Cは、結果として得られる基板上の結合複合体の存在を検出するための検出ステップ39を示す。検出ステップは、図1との関連で記述済みである。実質的に屈折率整合する流体が洗浄ステップ(図3B)の間に使われたので、基板32の反射率は著しく低下しており、検出ステップの感度が改善される。検出は典型的には、基板がまだ濡れているよう洗浄ステップの直接的な継続において適用される。
【0055】
本発明の種々の実施形態において、異なる屈折率整合流体が使用できる。ある実施形態では、油が使用されうる。好適な油の一例として、23°Cでn=1.518をもつツァイス・イメルゾル518Fが使用されうる。他の実施形態では、密な物質の水溶液が適用されてもよい。ある個別的な実施形態では、砂糖の水溶液が使用される。60%ないし70%の糖(蔗糖など)の溶液を使い、それにより屈折率1.45を達成することが有利でありうる(重量パーセントpの関数として蔗糖水溶液の屈折率nを示す図4を参照)。蔗糖水溶液が好ましい屈折率整合流体でありうる。蛍光団接合体はそのような流体に溶けやすく、その流体が洗浄ステップおよび検出ステップ両方について好適となるからである。
【0056】
代替的な実施形態では、追加的な洗浄ステップが適用されてもよいことは理解されるものとする。そのような追加的な洗浄ステップは、同じまたは異なる洗浄流体をもって適用されうる。異なる洗浄ステップについて異なる洗浄流体が使用される状況では、少なくとも最後の洗浄ステップが実質的に基板と屈折率整合された洗浄流体を使って実施される。
【0057】
図3Aないし3Cのステップおよび可能性としての追加的なステップは、可能性としては、検定物を用意するための装置および/または光学的検出システムにおいて自動化されたまたは半自動化された仕方で実行されうる。そのような装置およびシステムは、基板を受け取るためのハンドリング・ユニット33と、基板に対して洗浄ステップを実行するための洗浄ユニット34とを含みうる。ハンドリング・ユニットと洗浄ユニットは同じユニットにおいて具現されてもよい。あるいは試料がユニット間で移動されてもよい。光学的検出システムの諸実施形態は、一つまたは複数のレーザー・ダイオードのような放射源36およびCCDのような放射検出器35をも有する。
【0058】
目標検出検定において使用するためのキットも提供される。キットは少なくとも、基板と実質的に屈折率整合された洗浄流体と、洗浄流体を使うための説明書とを含む。キットはさらに、目標検出検定を実行するときに使用される、一つまたは複数の基板、試料調製試薬、緩衝液、ラベルなどといった一つまたは複数の追加的な構成要素を含んでいてもよい。使用説明書は紙の形で提供されてもよいし、好適な記録媒体上に記録されてもよいし、リモート・ソース、たとえばインターネット等を介して説明にアクセスする仕方についての案内の形で提供されてもよい。
【0059】
本発明は、個別的な実施形態との関連で記載されてきたが、本稿で記載されている個別的な形に限定されるとは意図されていない。むしろ、本発明の範囲は、付属の請求項によってのみ限定される。請求項において、「有する」の語は他の要素またはステップの存在を排除するものではない。さらに、個別的な特徴が異なる請求項に含められていることがあるが、それらの特徴は可能性としては有利に組み合わされうる。異なる請求項に含められていることは、特徴どうしの組み合わせが実現可能でないおよび/または有利でないことを含意するものではない。さらに、単数形での言及は複数を排除しない。よって、「ある」「第一の」「第二の」などの言及は複数を除外するものではない。さらに、請求項に参照符号があったとしても、請求項を限定するものと解釈してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の目標分子の存在を検出する方法であって:
(a)前記試料を、前記目標分子に特異的に結合するプローブ分子が固定されている基板と接触させる段階と;
(b)結合されていない目標分子を除去または希釈するために洗浄流体によって前記基板を洗浄する洗浄段階と;
(c)前記目標分子が前記試料中に存在するかどうかを判定するために、前記基板上における結果として得られる結合複合体の存在を検出する段階とを有し、
前記洗浄流体は、前記基板と、実質的に屈折率が整合されている、方法。
【請求項2】
前記洗浄流体の屈折率が、前記基板の屈折率の10%上から前記基板の屈折率の10%下までの範囲内である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記洗浄流体が糖の水溶液であり、糖の重量百分率が50%から80%までの間である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記洗浄段階(b)に先立って少なくとも一つの追加的な洗浄段階をさらに有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記基板が多孔性基板である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記目標分子が前記基板に存在するプローブ分子に化学結合する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記目標分子の存在が前記目標分子のルミネセンスを検出することによって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
検定物を用意する装置であって:
・目標分子に特異的に結合するプローブ分子が固定されている基板を受け入れ、前記基板に試料を接触させるハンドリング・ユニットと;
・結合されていない目標分子を除去または希釈するために洗浄流体を使って前記基板に対する洗浄段階を実行する洗浄ユニットとを有しており、前記洗浄流体が、前記基板と、実質的に屈折率が整合されている、装置。
【請求項9】
検定物中の目標分子を検出するための光学的検出システムであって:
・目標分子に特異的に結合するプローブ分子が固定されている基板を受け入れ、前記基板に試料を接触させるハンドリング・ユニットと;
・結合されていない目標分子を除去または希釈するために、前記基板と実質的に屈折率が整合された洗浄流体を使って前記基板に対する洗浄段階を実行する洗浄ユニットと;
・前記目標分子が前記試料中に存在するかどうかを判定するために、前記基板上における結果として得られる結合複合体の存在を検出する検出器とを有する、
システム。
【請求項10】
検定を実行するためのキットであって:
基板と実質的に屈折率が整合された洗浄流体と;
請求項1記載の方法において前記洗浄流体を使用するための説明書とを含む、
キット。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−507796(P2010−507796A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534001(P2009−534001)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/IB2007/054266
【国際公開番号】WO2008/050274
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】