試料中のC反応性蛋白質の測定試薬、測定方法及び測定範囲の拡大方法
【課題】試料中のC反応性蛋白質と、担体粒子に固定化したC反応性蛋白質に結合する特異的結合物質との、特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のC反応性蛋白質を測定する測定試薬及び測定方法において、低濃度から高濃度までその測定範囲を拡げ、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のC反応性蛋白質を正確に測定することができる、新たな測定試薬及び測定方法を提供する。
【解決手段】試料中のC反応性蛋白質を測定する測定試薬及び測定方法において、モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩を含有又は存在させる。
【解決手段】試料中のC反応性蛋白質を測定する測定試薬及び測定方法において、モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩を含有又は存在させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中のC反応性蛋白質の測定試薬、測定方法及び測定範囲の拡大方法に関するものである。
本発明は、特に、化学、生命科学、分析化学及び臨床検査等の分野において有用なものである。
【背景技術】
【0002】
抗原と抗体、糖とレクチン、ヌクレオチド鎖とそれに相補的なヌクレオチド鎖、リガンドとレセプター等の特異的な親和性を有する物質間の反応を利用した、試料中に含まれる微量の測定対象物質の測定試薬又は測定方法は種々のものが知られている。
【0003】
これは、試料中に含まれる測定対象物質と、この測定対象物質に対して特異的に結合する特異的結合物質(測定対象物質に対する特異的結合物質)との結合の有無、又は結合の量を測ることにより、試料中に含まれる測定対象物質の有無の測定〔定性測定〕、又はその含有量(濃度)の測定〔定量測定〕を行うものである。
【0004】
例えば、抗原と抗体の間の抗原抗体反応(免疫反応、免疫学的反応)を利用した測定方法としては、酵素免疫測定法、発光免疫測定法、免疫比ろう法、免疫比濁法、ラテックス免疫比濁法、イムノクロマトグラフィー法等の多くの測定方法が知られている。
【0005】
特に、前述した測定方法のうち、免疫比濁法やラテックス免疫比濁法は、操作が簡便であり、測定の自動化が可能なことから広く普及している。
【0006】
また、免疫比濁法やラテックス免疫比濁法の普及に伴って、様々な測定対象物質が測定されるようになってきているが、この測定対象物質は、物質によって測定を必要とする濃度範囲が様々であることから、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度の測定対象物質を正確に測定することが要求されている。
【0007】
例えば、C反応性蛋白質;C−reactive protein(以下CRPと略すこともある)は、肺炎球菌菌体のC多糖体と沈降反応を示す蛋白であり、血中CRP濃度の上昇は、感染症に罹患していること、又は体内に炎症が生じていること等の証拠となる。
このためCRPは各種炎症のマーカーとして、感染症又は炎症等の疾患の診断のためにその測定が行われてきた。
【0008】
このCRPの測定法としては、C多糖体との特異的反応をみる方法、及びCRPに結合する抗体(抗CRP抗体)を試薬に用い、試料中のCRPと試薬中の抗CRP抗体との抗原抗体反応により、抗原抗体複合体を生成させる方法等を挙げることができる。
現在では、抗CRP抗体との抗原抗体複合体を生成させる方法である、免疫比ろう法、免疫比濁法、ラテックス免疫比濁法等が日常検査に広く利用されている。
【0009】
健常人の血清中(又は血漿中)のCRP濃度は一般に0.3mg/dL以下であるが、炎症や細菌感染に対して短時間に鋭敏に反応して上昇し2,000〜4,000倍にも達する。
CRP濃度は、炎症の大きさや程度、又はその改善と相関するため、その測定の臨床的意義は大きい。また、CRP濃度が正常域(0.3mg/dL以下)であっても、比較的高濃度の場合、冠動脈疾患を発症する可能性が高いことが報告され注目されている。
このため、試料中のCRPの測定においては、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することが要求されてきている。
【0010】
このような背景から、試料中のCRPの測定において、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定する方法として、例えば、平均粒径の異なる2種以上のラテックス粒子を混合し用いる方法(例えば、特許文献1参照)、測定試薬に塩酸グアニジンを添加する方法(例えば、特許文献2参照)、測定試薬に界面活性剤を添加する方法(例えば、特許文献3参照)、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体を組み合わせて使用する方法(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63−65369号公報
【特許文献2】特開平11−344493号公報
【特許文献3】特開2001−318099号公報
【特許文献4】特開2006−17745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の課題は、試料中のCRPと、担体粒子に固定化したCRPに結合する特異的結合物質との、特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、低濃度から高濃度までその測定範囲を拡げ、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる、新たな測定試薬及び測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題の解決を目指して鋭意検討を行った結果、CRPと、担体粒子に固定化したCRPに結合する特異的結合物質との、特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩を含有又は存在させることにより、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供する。
(1) 試料中のC反応性蛋白質に対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を含む測定試薬において、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有することを特徴とする測定試薬。
(2) 担体粒子がラテックス粒子又は金属コロイド粒子である、前記(1)記載の測定試薬。
(3) モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩から選択される少なくとも1種である前記(1)又は(2)に記載の測定試薬。
(4) 試料中のC反応性蛋白質に対する特異的結合物質を固定化した担体粒子と試料とを接触させ、該特異的結合物質と試料に含まれていたC反応性蛋白質との特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のC反応性蛋白質を測定する方法において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させることを特徴とする測定方法。
(5) 担体粒子が、ラテックス粒子又は金属コロイド粒子である、前記(4)記載の測定方法。
(6) モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩から選択される少なくとも1種である前記(4)又は(5)に記載の測定方法。
(7) 試料中のC反応性蛋白質に対する特異的結合物質を固定化した担体粒子と試料とを接触させ、該特異的結合物質と試料に含まれていたC反応性蛋白質との特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のC反応性蛋白質を測定する方法において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させることを特徴とする、C反応性蛋白質の測定における測定範囲の拡大方法。
(8) 担体粒子が、ラテックス粒子又は金属コロイド粒子である、前記(7)記載の測定範囲の拡大方法。
(9) モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩から選択される少なくとも1種である前記(7)又は(8)に記載の測定範囲の拡大方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、試料中のCRPと、担体粒子に固定化したCRPに結合する特異的結合物質との、特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩を含有又は存在させることにより、試料中のCRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができるものであり、そして、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】酢酸ナトリウムを含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図2】プロピオン酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図3】酪酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図4】乳酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図5】アクリル酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図6】メタクリル酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図7】酢酸ナトリウムを含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図8】プロピオン酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図9】酪酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図10】乳酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図11】アクリル酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図12】メタクリル酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔1〕C反応性蛋白質に対する特異的結合物質
本発明において、C反応性蛋白質に対する特異的結合物質とは、CRPに特異的な親和性を有し結合することができる物質であり、このようにCRPに特異的な親和性を有し結合することができる物質であれば特に限定はない。
【0018】
このCRPに対する特異的結合物質としては、例えば、CRPに結合することができる抗体(抗CRP抗体)、アプタマー(核酸アプタマー若しくはペプチドアプタマー)、アフィボディー、又はレセプター等を挙げることができる。
【0019】
そして、この抗CRP抗体としては、例えば、(CRPに結合することができる)モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ポリクローナル抗体を含む抗血清、キメラ抗体、ヒト化抗体又は一本鎖抗体(scFv)、及びこれらの抗体の断片〔Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv、sFv、dsFvなど〕等を挙げることができる。
また、前記の抗体又は抗体断片に、蛋白質又は低分子化合物を結合させた誘導体を使用することもできる。
【0020】
なお、抗CRP抗体の由来については特に限定はなく、抗CRP抗体の由来としては、例えば、哺乳動物(マウス、ウサギ、ラット、ヒツジ、ヤギ、若しくはウマなど)、又は鳥類(ニワトリ、ウズラ、キジ、ダチョウ、若しくはアヒルなど)等を挙げることができる。
【0021】
そして、CRPに対する特異的結合物質としては、CRPに結合することができる抗体(抗CRP抗体)が好ましく、当該抗体がモノクローナル抗体であることがより好ましい。
【0022】
また、本発明においては、2種以上の、CRPに対する特異的結合物質を用いても良い。この場合、CRPに対する特異的結合物質としては、例えば、カルシウムイオン依存的にCRPに結合する特異的結合物質や、カルシウムイオン非依存的にCRPに結合する特異的結合物質等を挙げることができる。
【0023】
〔2〕担体粒子
本発明において、担体粒子は、前記のCRPに対する特異的結合物質を固定化することができるものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0024】
すなわち、CRPと特異的結合物質との特異的な結合反応を利用して試料中のCRPの測定を行う測定試薬及び測定方法に使用されている担体粒子、又は使用することが可能な担体粒子であればよい。
【0025】
この担体粒子の材質は、特に限定はなく、例えば、ポリスチレン、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、ポリアクロレイン、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、ゼラチン、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、セラミックス又は磁性体等を挙げることができる。
【0026】
そして、この担体粒子としては、例えば、ラテックス粒子、金属コロイド粒子、リポソーム、マイクロカプセル、又は赤血球等の粒子等を挙げることができる。
また、本発明における担体粒子としては、ラテックス粒子又は金属コロイド粒子であることが好ましい。
【0027】
本発明において、CRPに対する特異的結合物質を担体粒子に固定化することは、物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法により行うことができる。
物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、CRPに対する特異的結合物質と、担体粒子とを、緩衝液等の溶液中で混合し接触させたり、或いは緩衝液等に溶解したCRPに対する特異的結合物質を、担体粒子に接触させること等により行うことができる。
【0028】
また、化学的結合法により行う場合は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、CRPに対する特異的結合物質と、担体粒子とを、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、CRPに対する特異的結合物質と、担体粒子の、それぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と前記の二価性の架橋試薬とを反応させること等により行うことができる。
【0029】
更に、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子の自然凝集や、非特異的反応等を抑制するために処理を行う必要があれば、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子の表面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミン若しくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、担体粒子のブロッキング処理(マスキング処理)を行ってもよい。
【0030】
また、本発明の担体粒子は、カルシウムイオン依存的にCRPに結合する特異的結合物質を固定化した担体粒子と、カルシウムイオン非依存的にCRPに結合する特異的結合物質を固定化した担体粒子との混合物であってもよい。
この場合のカルシウムイオン依存的にCRPに結合する特異的結合物質を固定化した担体と、カルシウムイオン非依存的にCRPに結合する特異的結合物質を固定化した担体との混合比率は、用いる各々の特異的結合物質や使用する担体の種類などの条件等により異なるため一概に言うことは出来ないが、例えば、両方の担体が同一濃度となるよう混合して用いること等を挙げることができる。
【0031】
なお、本発明における試料中のCRPの測定を、ラテックス免疫比濁法等の比濁法により測定を行う場合、ラテックス粒子等の担体粒子の大きさ(粒径)については、特に制限はない。
しかし、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子が、試料中に含まれていたCRPとの複合体凝集物(凝集塊)を生成する程度、及びこの生成した複合体凝集物の測定の容易さ等の理由より、担体粒子の大きさ(粒径)は、その平均径(平均粒径)が、0.01μm〜10μmであることが好ましく、0.04μm〜1μmであることがより好ましい。
また、本発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法において、担体粒子は、その大きさ(粒径)、材質、又は形状等が異なる2種類以上の担体を使用してもよい。
【0032】
なお、本発明における試料中のCRPの測定を、ラテックス免疫比濁法等の比濁法により測定を行う場合、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子の測定反応時における濃度は、前記の特異的結合物質の担体表面上での分布密度、担体粒子の大きさ(粒径)、試料と測定試薬の混合比率等の各種条件により最適な濃度は異なるので一概に言うことはできない。
しかし、通常は、試料と測定試薬が混合され、担体粒子に固定化されたCRPに対する特異的結合物質と、試料に含まれていたCRPとの、特異的結合反応が行われる測定反応時に、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子の濃度が、この測定反応時の反応混合液中において0.005〜1%(w/v)となるようにするのが一般的であり、この場合、反応混合液中においてこのような濃度になるような濃度のCRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を測定試薬に含有させることが好ましい。
【0033】
本発明の測定試薬及び測定方法においては、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、カゼイン若しくはその塩などのタンパク質;カルシウムイオンなどの各種金属イオン;カルシウム塩などの各種塩類;各種糖類;脱脂粉乳;正常ウサギ血清などの各種動物血清;アジ化ナトリウム若しくは抗生物質などの各種防腐剤;活性化物質;反応促進物質;ポリエチレングリコールなどの感度増加物質;非特異的反応抑制物質;又は、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤もしくは陰イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤等の1種又は2種以上と共存させてもよい。
【0034】
そして、上記の各物質を共存させる際の濃度は特に限定されるものではないが、0.001〜10%(W/V)が好ましく、特に0.01〜5%(W/V)が好ましい。
【0035】
〔3〕モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩
本発明の測定試薬及び測定方法においては、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有又は存在させる。ここで、モノカルボン酸とは、分子中にカルボキシル基(−COOH)を1個持つ有機化合物であり、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸(ブタン酸)、乳酸、吉草酸(ペンタン酸)、イソ吉草酸、ピバル酸、2−メチルブタン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、安息香酸、フェニル酢酸(芳香族)などの飽和モノカルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸などの不飽和モノカルボン酸等を挙げることができる。
【0036】
また、本発明においては、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、特に酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩であることが好ましい。
【0037】
そして、本発明におけるモノカルボン酸の誘導体とは、モノカルボン酸に小部分の構造上の変化があってできる化合物のことであり、例えば、前記のモノカルボン酸のエステル化物、酸無水物、酸ハロゲン化物、酸過酸化物、酸アジド、酸アミド、酸イミド並びにこれらのハロゲン化誘導体、スルホン化誘導体、ニトロ化誘導体及びニトロソ化誘導体等を挙げることができる。
【0038】
また、本発明におけるモノカルボン酸若しくはその誘導体の塩としては、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、アンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどのアンモニウム塩、アルミニウム塩及び亜鉛塩等を挙げることができる。
【0039】
なお、本発明において、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は、その1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0040】
本発明において、前記のモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩をCRPの測定試薬に存在させる濃度は、10mM以上であることが好ましく、100mM以上であることが更に好ましい。
【0041】
なお、前記のモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩をCRPの測定試薬に存在させる方法であるが、このモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を、担体粒子に固定化されたCRPに対する特異的結合物質と、試料に含まれていたCRPとの、特異的結合反応が行われる測定反応時に、前記のCRPの測定試薬に存在させることができればいかなる方法でも良い。
【0042】
例えば、前記のモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を緩衝液に含有させた試薬を調製し、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を含む試薬と混合することによって、担体粒子に固定化されたCRPに対する特異的結合物質と試料に含まれていたCRPとの、特異的結合反応が行われる測定反応時に、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させるようにすれば良い。
【0043】
〔4〕試料
本発明において、試料とは、CRPが存在する可能性があり、かつCRPの存在の有無、又は含有量(濃度)の測定を行おうとするものをいう。
このような試料としては、例えば、ヒト又は動物の血液、血清、血漿、髄液若しくは腹水などの体液、又は臓器、組織若しくは細胞などの抽出液等、CRPが含まれる可能性のあるものを挙げることができる。
【0044】
〔5〕測定試薬
本発明の測定試薬は、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を含むCRPの測定試薬において、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有することを特徴とするものである。
【0045】
これにより、試料中のCRPの測定において、低濃度から高濃度までその測定範囲を拡げ、そして、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができるものである。
【0046】
本発明の測定試薬は、一つの測定試薬よりなるものであってよい。この場合、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は、その一つの測定試薬に含有される。
【0047】
また、本発明の測定試薬は、二つ以上の測定試薬より構成されるものであってもよい。この場合、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は、二つ以上の測定試薬の内の一つの測定試薬に含有されるものであってもよく、また、二つ以上の測定試薬に含有されるものであってもよい。
【0048】
例えば、本発明の測定試薬が、第1試薬及び第2試薬の二つの測定試薬より構成されるものである場合、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は、第1試薬にのみ含有させてもよく、また、第2試薬にのみ含有させてもよく、更には、第1試薬と第2試薬の両方に含有させてもよい。
【0049】
本発明の測定試薬が二つの測定試薬より構成される場合、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は、第1試薬にのみ含有させることが好ましい。
【0050】
また、本発明の測定試薬が二つ以上の測定試薬より構成されるものである場合、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有しない方の試薬は、例えば、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を含む緩衝液等であってよい。
【0051】
なお、本発明の試料中のCRPの測定試薬の溶媒としては、各種の水系溶媒を用いることができる。
【0052】
この水系溶媒としては、例えば、精製水、生理食塩水、又は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液、リン酸緩衝液、若しくはリン酸緩衝生理食塩水などの各種緩衝液等を挙げることができる。
【0053】
この緩衝液のpHについては、適宜適当なpHを選択して用いればよく、特に制限はないものの、通常は、pH5〜10の範囲内のpHを選択して用いることが一般的である。
【0054】
また、本発明の試料中のCRPの測定試薬には、前記のCRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子、及び前記のモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩の他に、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、カゼイン若しくはその塩などの蛋白質;カルシウムイオンなどの各種塩類;各種糖類;脱脂粉乳;正常ウサギ血清などの各種動物血清;アジ化ナトリウム若しくは抗生物質などの各種防腐剤;活性化物質;反応促進物質;ポリエチレングリコールなどの感度増加物質;非特異的反応抑制物質;又は、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤若しくは陰イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤等の1種又は2種以上を適宜含有させてもよい。
【0055】
なお、本発明の試料中のCRPの測定試薬には、カルシウムイオン又はカルシウム塩を含有させることが好ましい。
そして、これらを本発明の試料中のCRPの測定試薬に含有させる際の濃度は特に限定されるものではないが、0.001〜10%(W/V)が好ましく、特に0.01〜5%(W/V)が好ましい。
【0056】
なお、前記の界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油若しくはポリオキシエチレンラノリンなどの非イオン性界面活性剤;酢酸ベタインなどの両性界面活性剤;又は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩などの陰イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0057】
なお、本発明の試料中のCRPの測定試薬は、そのもの単独にて、販売し、又は試料中のCRPの測定に使用することができる。
また、本発明の試料中のCRPの測定試薬は、他の試薬と組み合わせて、販売し、又は試料中のCRPの測定に使用することもできる。
【0058】
前記の他の試薬としては、例えば、緩衝液、試料希釈液、試薬希釈液、標識物質を含有する試薬、発色などのシグナルを生成する物質を含有する試薬、又は校正(キャリブレーション)を行うための物質を含有する物質の試薬等を挙げることができる。
【0059】
〔6〕測定方法
本発明における試料中のCRPの測定方法は、担体粒子に固定化された「CRPに対する特異的結合物質」と試料中に含まれていた「CRP」との特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のCRPを測定する方法において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させるものである。
【0060】
本発明の試料中のCRPの測定方法における測定操作は、公知の測定操作に従って行うことができる。
【0061】
この測定は、用手法により行ってもよいし、又は分析装置等の装置を用いて行ってもよい。
【0062】
また、この測定は、1ステップ法(1試薬法)により行ってもよいし、又は2ステップ法(2試薬法)等の複数の操作ステップにより行う方法によって実施してもよい。
【0063】
以下、ラテックス免疫比濁法を測定原理とする試料中のCRPの測定試薬を用いて、試料中のCRPの測定を行う場合を例にとって、具体的に説明を行う。
【0064】
(1)まず、試料中のCRPの測定試薬として、以下のものを準備する。
第1試薬:モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有する緩衝液
第2試薬:CRPを固定化したラテックス粒子を含有する緩衝液
【0065】
(2)血清等の試料の一定量と前記の第1試薬の一定量を混合し、一定温度下で一定時間静置する。
なお、試料と第1試薬の混合比率(量比)は、適宜選択すればよい。
また、前記の静置時の温度は、室温(1〜30℃)又は微温(30〜40℃)の範囲内の一定温度であることが好ましい(例えば、37℃等)。
【0066】
(3)一定時間後、前記の試料と第1試薬との混合液に、前記の第2試薬の一定量を添加、混合し、反応混合液として、一定温度下で一定時間静置する。
なお、第2試薬の添加量は、適宜選択すればよい。
また、前記の静置時の温度は、室温(1〜30℃)又は微温(30〜40℃)の範囲内の一定温度であることが好ましい(例えば、37℃等)。
そして、前記の静置の時間は、1分以上、10分以下の一定時間であることが好ましく、3分以上、5分以下の一定時間であることがより好ましい。
【0067】
試料と第1試薬との混合液への第2試薬の添加、混合により、ラテックス粒子に固定化した抗CRP抗体と、試料中に含まれていたCRPとの抗原抗体反応(測定反応)を行わせる。
【0068】
そして、この抗原抗体反応(測定反応)により、「…〔抗CRP抗体=ラテックス粒子=抗CRP抗体〕−〔CRP〕−〔抗CRP抗体=ラテックス粒子=抗CRP抗体〕…」の架橋が形成され、抗CRP抗体を固定化したラテックス粒子同士の複合体凝集物が生成する。
【0069】
(4)そして、分析装置又は分光光度計等において、反応混合液に光を照射して、生成したラテックス粒子同士の複合体凝集物により生ずるシグナルである適当な波長の透過光強度の減少(吸光度の増加)又は散乱光強度の増加を測定することにより、生成した前記複合体凝集物の量、すなわち、試料中に含まれていたCRPの量を求める。
【0070】
(5)そして、「試料の測定を行って得た測定値(透過光強度の減少(吸光度の増加)又は散乱光強度の増加の値)」と、「標準液、標準血清等の標準物質(既知濃度のCRPを含む試料)の測定を行って得た測定値(透過光強度の減少(吸光度の増加)又は散乱光強度の増加の値)」とを比較することにより、測定を行った試料中に含まれるCRPの量(濃度)の算出を行う。
【0071】
〔7〕測定範囲の拡大方法
本発明における、C反応性蛋白質の測定における測定範囲の拡大方法は、試料中のCRPと、担体粒子に固定化したCRPに結合する特異的結合物質との、特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することによる、試料中のCRPの測定において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させることによるものである。
この試料中のCRPの測定において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させることにより、その測定範囲を拡大し、試料中の低濃度から高濃度までのCRPを測定することができる。
また、本発明におけるC反応性蛋白質の測定における測定範囲の拡大方法を実施する際の試薬の構成成分や試料や条件等は、前記した通りである。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をより具体的に詳述するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0073】
〔実施例1〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−1)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、酢酸ナトリウムを含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0074】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、酢酸ナトリウム〔関東化学社〕を0mM、250mM、500mM及び1000mMの濃度となるように添加し、酢酸ナトリウム濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0075】
(2)第2試薬の調製
(a)抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液の調製
平均粒径0.192μmのラテックス粒子の10%懸濁液0.094mLに、抗ヒトCRPモノクローナル抗体を0.04g/dLの濃度で6.7mM
HEPES緩衝液〔pH7.0(20℃)〕に混和した液0.5098mLを加え、5℃にて一晩静置した。
次に、遠心分離により上清を除去した後、沈殿部に1.0%BSAを含む5mMグリシン緩衝液〔pH9.5(20℃)〕を加え懸濁し、37℃で7日間静置し、ブロッキング処理を行った。
次に、遠心分離により沈殿部を回収した後、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液で波長585nmにおける吸光度が25.0ODとなるように懸濁した。
そして、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液により希釈して、抗CRP抗体を固定化したラテックス粒子の0.800%懸濁液として調製した。
これを抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液とした。
なお、抗CRPモノクローナル抗体としては、市販のマウス抗CRPモノクローナル抗体(日本バイオテスト研究所社;クローン:CRB−019)を使用した。
【0076】
(b)第2試薬の調製
前記(a)で調製した抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液の1mLと、0.05%アジ化ナトリウム水溶液の9mLとを混合し、0.080%の「抗CRP抗体固定化ラテックス粒子」を含有する懸濁液を調製した。
これを第2試薬とした。
【0077】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
4%(w/v)BSA、2.7mM塩化カルシウム・2水和物、100mM塩化ナトリウム及び15mMアジ化ナトリウムを含有する50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH7.6〕を調製して、試料希釈液とした。
【0078】
(2)試料の調製
遺伝子組み換え体CRP(オリエンタル酵母工業社製)を、前記(1)の試料希釈液で希釈することにより、次のCRP濃度の試料をそれぞれ調製した。
また、前記(1)で調製した試料希釈液を、CRP濃度0mg/dLの試料とした。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0079】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
(a)測定は、日立−7180形自動分析装置(日立製作所社製)を使用して行った。
まず、測定用セル(キュベット)に、前記2の(2)の試料1〜7の3μLを添加した。
次に、これらの測定用セル(キュベット)に、前記1の(1)の第1試薬の100μLを添加し、混合した。
そして、これらの測定用セル(キュベット)を、37℃で静置した。
【0080】
(b)前記の第1試薬の添加後4分34秒目(16ポイント目)に、これらの測定用セル(キュベット)内の混合液に、更に、前記1の(2)の(b)の第2試薬の100μLを添加し、混合した。
【0081】
(c)前記の第1試薬の添加後5分09秒目(18ポイント目)に、これらの測定用セル(キュベット)内の混合液の吸光度(主波長570nm、副波長800nm)を試料盲検として測定した。
そして、これらの測定用セル(キュベット)を、37℃で静置して、反応を行わせた。
これにより、前記のラテックス粒子に固定化された抗CRP抗体と、前記の試料に含まれていたCRPとの抗原抗体反応を行わせ、ラテックス粒子の凝集塊を生成させた。
【0082】
(d)前記の第1試薬の添加後9分54秒目(34ポイント目)に、この測定用セル(キュベット)内の反応混合液の吸光度(主波長570nm、副波長800nm)を、前記試料の測定値として測定した。
【0083】
(e)前記(d)において測定した吸光度(測定値)から前記(c)において測定した吸光度(試料盲検)を差し引き、吸光度差を得た。
なお、この吸光度差は試料に含まれるCRPの量(濃度)に比例したものである。
【0084】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図1に示した。
なお、この図1において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0085】
4.考察
図1から明らかなように、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0086】
これに対して、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させた場合(250mM、500mM及び1000mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0087】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、酢酸ナトリウム(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0088】
〔実施例2〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−2)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、プロピオン酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0089】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、プロピオン酸〔和光純薬社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、プロピオン酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0090】
(2)第2試薬の調製
前記実施例1の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0091】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0092】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0093】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0094】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図2に示した。
なお、この図2において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0095】
4.考察
図2から明らかなように、第1試薬にプロピオン酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度50mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬にプロピオン酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0096】
これに対して、第1試薬にプロピオン酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が50mg/dLを超えても吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にプロピオン酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0097】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、プロピオン酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0098】
〔実施例3〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−3)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、酪酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0099】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、酪酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、酪酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0100】
(2)第2試薬の調製
前記実施例1の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0101】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0102】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0103】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0104】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図3に示した。
なお、この図3において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0105】
4.考察
図3から明らかなように、第1試薬に酪酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に酪酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0106】
これに対して、第1試薬に酪酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が50mg/dLを超えても吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬に酪酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0107】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、酪酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0108】
〔実施例4〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−4)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、乳酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0109】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、乳酸〔和光純薬社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、乳酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0110】
(2)第2試薬の調製
前記実施例1の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0111】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0112】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0113】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0114】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図4に示した。
なお、この図4において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0115】
4.考察
図4から明らかなように、第1試薬に乳酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に乳酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0116】
これに対して、第1試薬に乳酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬に乳酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0117】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、乳酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0118】
〔実施例5〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−5)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、アクリル酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0119】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、アクリル酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、アクリル酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0120】
(2)第2試薬の調製
前記実施例1の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0121】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0122】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0123】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0124】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図5に示した。
なお、この図5において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0125】
4.考察
図5から明らかなように、第1試薬にアクリル酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬にアクリル酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0126】
これに対して、第1試薬にアクリル酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にアクリル酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0127】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、アクリル酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0128】
〔実施例6〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−6)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、メタクリル酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0129】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、メタクリル酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、メタクリル酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0130】
(2)第2試薬の調製
前記実施例1の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0131】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0132】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0133】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0134】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図6に示した。
なお、この図6において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0135】
4.考察
図6から明らかなように、第1試薬にメタクリル酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬にメタクリル酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0136】
これに対して、第1試薬にメタクリル酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にメタクリル酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0137】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、メタクリル酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0138】
〔実施例7〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−7)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、酢酸ナトリウムを含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0139】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、酢酸ナトリウム〔関東化学社〕を0mM、250mM、500mM及び1000mMの濃度となるように添加し、酢酸ナトリウム濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0140】
(2)第2試薬の調製
(a)抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液Aの調製
平均粒径0.192μmのラテックス粒子の10%懸濁液0.094mLに、抗ヒトCRPモノクローナル抗体を0.05g/dLの濃度で6.7mM
MMES緩衝液〔pH5.0(20℃)〕に混和した液0.5098mLを加え、5℃にて一晩静置した。
次に、遠心分離により上清を除去した後、沈殿部に1.0%BSAを含む5mMグリシン緩衝液〔pH9.5(20℃)〕を加え懸濁し、37℃で7日間静置し、ブロッキング処理を行った。
次に、遠心分離により沈殿部を回収した後、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液で波長585nmにおける吸光度が25.0ODとなるように懸濁した。
そして、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液により希釈して、抗CRP抗体を固定化したラテックス粒子の0.80%懸濁液として調製した。
これを抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液Aとした。
なお、抗CRPモノクローナル抗体としては、カルシウムイオン非依存的にCRPに結合する抗体である、市販のマウス抗CRPモノクローナル抗体(日本バイオテスト研究所社;クローン:CRB−030)を使用した。
【0141】
(b)抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液Bの調製
平均粒径0.192μmのラテックス粒子の10%懸濁液0.094mLに、抗ヒトCRPモノクローナル抗体を0.04g/dLの濃度で6.7mM
HEPES緩衝液〔pH7.0(20℃)〕に混和した液0.5098mLを加え、5℃にて一晩静置した。
次に、遠心分離により上清を除去した後、沈殿部に1.0%BSAを含む5mMグリシン緩衝液〔pH9.5(20℃)〕を加え懸濁し、37℃で7日間静置し、ブロッキング処理を行った。
次に、遠心分離により沈殿部を回収した後、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液で波長585nmにおける吸光度が25.0ODとなるように懸濁した。
そして、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液により希釈して、抗CRP抗体を固定化したラテックス粒子の0.80%懸濁液として調製した。
これを抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液Bとした。
なお、抗CRPモノクローナル抗体としては、カルシウムイオン依存的にCRPに結合する抗体である、市販のマウス抗CRPモノクローナル抗体(日本バイオテスト研究所社;クローン:CRB−019)を使用した。
【0142】
(c)第2試薬の調製
前記(a)で調製した抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液Aの0.25mLと、前記(b)で調製した抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液Bの1.0mLとを0.05%アジ化ナトリウム水溶液の8.75mLと混合した。
これを第2試薬とした。
【0143】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0144】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0145】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、第2試薬として前記1の(2)の第2試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0146】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図7に示した。
なお、この図7において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0147】
4.考察
図7から明らかなように、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0148】
これに対して、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させた場合(250mM、500mM及び1000mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にメタクリル酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0149】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、酢酸ナトリウム(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0150】
〔実施例8〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−8)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、プロピオン酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0151】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、プロピオン酸〔和光純薬社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、プロピオン酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0152】
(2)第2試薬の調製
前記実施例7の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0153】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0154】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0155】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例7の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0156】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図8に示した。
なお、この図8において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0157】
4.考察
図8から明らかなように、第1試薬にプロピオン酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬にプロピオン酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0158】
これに対して、第1試薬にプロピオン酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にプロピオン酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0159】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、プロピオン酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0160】
〔実施例9〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−9)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、酪酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0161】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、酪酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、酪酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0162】
(2)第2試薬の調製
前記実施例7の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0163】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0164】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0165】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例7の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0166】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図9に示した。
なお、この図9において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0167】
4.考察
図9から明らかなように、第1試薬に酪酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に酪酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0168】
これに対して、第1試薬に酪酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬に酪酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0169】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、酪酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0170】
〔実施例10〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−10)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、乳酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0171】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、乳酸〔和光純薬社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、乳酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0172】
(2)第2試薬の調製
前記実施例7の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0173】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0174】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0175】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例7の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0176】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図10に示した。
なお、この図10において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0177】
4.考察
図10から明らかなように、第1試薬に乳酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に乳酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0178】
これに対して、第1試薬に乳酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬に乳酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0179】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、乳酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0180】
〔実施例11〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−11)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、アクリル酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0181】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、アクリル酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、アクリル酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0182】
(2)第2試薬の調製
前記実施例7の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0183】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0184】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0185】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例7の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0186】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図11に示した。
なお、この図11において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0187】
4.考察
図11から明らかなように、第1試薬にアクリル酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬にアクリル酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0188】
これに対して、第1試薬にアクリル酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にアクリル酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0189】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、アクリル酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0190】
〔実施例12〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−12)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、メタクリル酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0191】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、メタクリル酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、メタクリル酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0192】
(2)第2試薬の調製
前記実施例7の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0193】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0194】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0195】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例7の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0196】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図12に示した。
なお、この図12において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0197】
4.考察
図12から明らかなように、第1試薬にメタクリル酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬にメタクリル酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0198】
これに対して、第1試薬にメタクリル酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にメタクリル酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0199】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、メタクリル酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中のC反応性蛋白質の測定試薬、測定方法及び測定範囲の拡大方法に関するものである。
本発明は、特に、化学、生命科学、分析化学及び臨床検査等の分野において有用なものである。
【背景技術】
【0002】
抗原と抗体、糖とレクチン、ヌクレオチド鎖とそれに相補的なヌクレオチド鎖、リガンドとレセプター等の特異的な親和性を有する物質間の反応を利用した、試料中に含まれる微量の測定対象物質の測定試薬又は測定方法は種々のものが知られている。
【0003】
これは、試料中に含まれる測定対象物質と、この測定対象物質に対して特異的に結合する特異的結合物質(測定対象物質に対する特異的結合物質)との結合の有無、又は結合の量を測ることにより、試料中に含まれる測定対象物質の有無の測定〔定性測定〕、又はその含有量(濃度)の測定〔定量測定〕を行うものである。
【0004】
例えば、抗原と抗体の間の抗原抗体反応(免疫反応、免疫学的反応)を利用した測定方法としては、酵素免疫測定法、発光免疫測定法、免疫比ろう法、免疫比濁法、ラテックス免疫比濁法、イムノクロマトグラフィー法等の多くの測定方法が知られている。
【0005】
特に、前述した測定方法のうち、免疫比濁法やラテックス免疫比濁法は、操作が簡便であり、測定の自動化が可能なことから広く普及している。
【0006】
また、免疫比濁法やラテックス免疫比濁法の普及に伴って、様々な測定対象物質が測定されるようになってきているが、この測定対象物質は、物質によって測定を必要とする濃度範囲が様々であることから、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度の測定対象物質を正確に測定することが要求されている。
【0007】
例えば、C反応性蛋白質;C−reactive protein(以下CRPと略すこともある)は、肺炎球菌菌体のC多糖体と沈降反応を示す蛋白であり、血中CRP濃度の上昇は、感染症に罹患していること、又は体内に炎症が生じていること等の証拠となる。
このためCRPは各種炎症のマーカーとして、感染症又は炎症等の疾患の診断のためにその測定が行われてきた。
【0008】
このCRPの測定法としては、C多糖体との特異的反応をみる方法、及びCRPに結合する抗体(抗CRP抗体)を試薬に用い、試料中のCRPと試薬中の抗CRP抗体との抗原抗体反応により、抗原抗体複合体を生成させる方法等を挙げることができる。
現在では、抗CRP抗体との抗原抗体複合体を生成させる方法である、免疫比ろう法、免疫比濁法、ラテックス免疫比濁法等が日常検査に広く利用されている。
【0009】
健常人の血清中(又は血漿中)のCRP濃度は一般に0.3mg/dL以下であるが、炎症や細菌感染に対して短時間に鋭敏に反応して上昇し2,000〜4,000倍にも達する。
CRP濃度は、炎症の大きさや程度、又はその改善と相関するため、その測定の臨床的意義は大きい。また、CRP濃度が正常域(0.3mg/dL以下)であっても、比較的高濃度の場合、冠動脈疾患を発症する可能性が高いことが報告され注目されている。
このため、試料中のCRPの測定においては、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することが要求されてきている。
【0010】
このような背景から、試料中のCRPの測定において、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定する方法として、例えば、平均粒径の異なる2種以上のラテックス粒子を混合し用いる方法(例えば、特許文献1参照)、測定試薬に塩酸グアニジンを添加する方法(例えば、特許文献2参照)、測定試薬に界面活性剤を添加する方法(例えば、特許文献3参照)、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体を組み合わせて使用する方法(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭63−65369号公報
【特許文献2】特開平11−344493号公報
【特許文献3】特開2001−318099号公報
【特許文献4】特開2006−17745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の課題は、試料中のCRPと、担体粒子に固定化したCRPに結合する特異的結合物質との、特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、低濃度から高濃度までその測定範囲を拡げ、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる、新たな測定試薬及び測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題の解決を目指して鋭意検討を行った結果、CRPと、担体粒子に固定化したCRPに結合する特異的結合物質との、特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩を含有又は存在させることにより、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供する。
(1) 試料中のC反応性蛋白質に対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を含む測定試薬において、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有することを特徴とする測定試薬。
(2) 担体粒子がラテックス粒子又は金属コロイド粒子である、前記(1)記載の測定試薬。
(3) モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩から選択される少なくとも1種である前記(1)又は(2)に記載の測定試薬。
(4) 試料中のC反応性蛋白質に対する特異的結合物質を固定化した担体粒子と試料とを接触させ、該特異的結合物質と試料に含まれていたC反応性蛋白質との特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のC反応性蛋白質を測定する方法において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させることを特徴とする測定方法。
(5) 担体粒子が、ラテックス粒子又は金属コロイド粒子である、前記(4)記載の測定方法。
(6) モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩から選択される少なくとも1種である前記(4)又は(5)に記載の測定方法。
(7) 試料中のC反応性蛋白質に対する特異的結合物質を固定化した担体粒子と試料とを接触させ、該特異的結合物質と試料に含まれていたC反応性蛋白質との特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のC反応性蛋白質を測定する方法において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させることを特徴とする、C反応性蛋白質の測定における測定範囲の拡大方法。
(8) 担体粒子が、ラテックス粒子又は金属コロイド粒子である、前記(7)記載の測定範囲の拡大方法。
(9) モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩から選択される少なくとも1種である前記(7)又は(8)に記載の測定範囲の拡大方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、試料中のCRPと、担体粒子に固定化したCRPに結合する特異的結合物質との、特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩を含有又は存在させることにより、試料中のCRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができるものであり、そして、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】酢酸ナトリウムを含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図2】プロピオン酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図3】酪酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図4】乳酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図5】アクリル酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図6】メタクリル酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図7】酢酸ナトリウムを含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図8】プロピオン酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図9】酪酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図10】乳酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図11】アクリル酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【図12】メタクリル酸を含有する測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い得られた吸光度差を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
〔1〕C反応性蛋白質に対する特異的結合物質
本発明において、C反応性蛋白質に対する特異的結合物質とは、CRPに特異的な親和性を有し結合することができる物質であり、このようにCRPに特異的な親和性を有し結合することができる物質であれば特に限定はない。
【0018】
このCRPに対する特異的結合物質としては、例えば、CRPに結合することができる抗体(抗CRP抗体)、アプタマー(核酸アプタマー若しくはペプチドアプタマー)、アフィボディー、又はレセプター等を挙げることができる。
【0019】
そして、この抗CRP抗体としては、例えば、(CRPに結合することができる)モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ポリクローナル抗体を含む抗血清、キメラ抗体、ヒト化抗体又は一本鎖抗体(scFv)、及びこれらの抗体の断片〔Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv、sFv、dsFvなど〕等を挙げることができる。
また、前記の抗体又は抗体断片に、蛋白質又は低分子化合物を結合させた誘導体を使用することもできる。
【0020】
なお、抗CRP抗体の由来については特に限定はなく、抗CRP抗体の由来としては、例えば、哺乳動物(マウス、ウサギ、ラット、ヒツジ、ヤギ、若しくはウマなど)、又は鳥類(ニワトリ、ウズラ、キジ、ダチョウ、若しくはアヒルなど)等を挙げることができる。
【0021】
そして、CRPに対する特異的結合物質としては、CRPに結合することができる抗体(抗CRP抗体)が好ましく、当該抗体がモノクローナル抗体であることがより好ましい。
【0022】
また、本発明においては、2種以上の、CRPに対する特異的結合物質を用いても良い。この場合、CRPに対する特異的結合物質としては、例えば、カルシウムイオン依存的にCRPに結合する特異的結合物質や、カルシウムイオン非依存的にCRPに結合する特異的結合物質等を挙げることができる。
【0023】
〔2〕担体粒子
本発明において、担体粒子は、前記のCRPに対する特異的結合物質を固定化することができるものであれば、特に制限なく用いることができる。
【0024】
すなわち、CRPと特異的結合物質との特異的な結合反応を利用して試料中のCRPの測定を行う測定試薬及び測定方法に使用されている担体粒子、又は使用することが可能な担体粒子であればよい。
【0025】
この担体粒子の材質は、特に限定はなく、例えば、ポリスチレン、スチレン−スチレンスルホン酸塩共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、ポリアクロレイン、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−グリシジル(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸重合体、アクリル酸重合体、ゼラチン、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、セラミックス又は磁性体等を挙げることができる。
【0026】
そして、この担体粒子としては、例えば、ラテックス粒子、金属コロイド粒子、リポソーム、マイクロカプセル、又は赤血球等の粒子等を挙げることができる。
また、本発明における担体粒子としては、ラテックス粒子又は金属コロイド粒子であることが好ましい。
【0027】
本発明において、CRPに対する特異的結合物質を担体粒子に固定化することは、物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法により行うことができる。
物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、CRPに対する特異的結合物質と、担体粒子とを、緩衝液等の溶液中で混合し接触させたり、或いは緩衝液等に溶解したCRPに対する特異的結合物質を、担体粒子に接触させること等により行うことができる。
【0028】
また、化学的結合法により行う場合は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、CRPに対する特異的結合物質と、担体粒子とを、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、CRPに対する特異的結合物質と、担体粒子の、それぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と前記の二価性の架橋試薬とを反応させること等により行うことができる。
【0029】
更に、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子の自然凝集や、非特異的反応等を抑制するために処理を行う必要があれば、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子の表面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミン若しくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、担体粒子のブロッキング処理(マスキング処理)を行ってもよい。
【0030】
また、本発明の担体粒子は、カルシウムイオン依存的にCRPに結合する特異的結合物質を固定化した担体粒子と、カルシウムイオン非依存的にCRPに結合する特異的結合物質を固定化した担体粒子との混合物であってもよい。
この場合のカルシウムイオン依存的にCRPに結合する特異的結合物質を固定化した担体と、カルシウムイオン非依存的にCRPに結合する特異的結合物質を固定化した担体との混合比率は、用いる各々の特異的結合物質や使用する担体の種類などの条件等により異なるため一概に言うことは出来ないが、例えば、両方の担体が同一濃度となるよう混合して用いること等を挙げることができる。
【0031】
なお、本発明における試料中のCRPの測定を、ラテックス免疫比濁法等の比濁法により測定を行う場合、ラテックス粒子等の担体粒子の大きさ(粒径)については、特に制限はない。
しかし、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子が、試料中に含まれていたCRPとの複合体凝集物(凝集塊)を生成する程度、及びこの生成した複合体凝集物の測定の容易さ等の理由より、担体粒子の大きさ(粒径)は、その平均径(平均粒径)が、0.01μm〜10μmであることが好ましく、0.04μm〜1μmであることがより好ましい。
また、本発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法において、担体粒子は、その大きさ(粒径)、材質、又は形状等が異なる2種類以上の担体を使用してもよい。
【0032】
なお、本発明における試料中のCRPの測定を、ラテックス免疫比濁法等の比濁法により測定を行う場合、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子の測定反応時における濃度は、前記の特異的結合物質の担体表面上での分布密度、担体粒子の大きさ(粒径)、試料と測定試薬の混合比率等の各種条件により最適な濃度は異なるので一概に言うことはできない。
しかし、通常は、試料と測定試薬が混合され、担体粒子に固定化されたCRPに対する特異的結合物質と、試料に含まれていたCRPとの、特異的結合反応が行われる測定反応時に、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子の濃度が、この測定反応時の反応混合液中において0.005〜1%(w/v)となるようにするのが一般的であり、この場合、反応混合液中においてこのような濃度になるような濃度のCRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を測定試薬に含有させることが好ましい。
【0033】
本発明の測定試薬及び測定方法においては、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、カゼイン若しくはその塩などのタンパク質;カルシウムイオンなどの各種金属イオン;カルシウム塩などの各種塩類;各種糖類;脱脂粉乳;正常ウサギ血清などの各種動物血清;アジ化ナトリウム若しくは抗生物質などの各種防腐剤;活性化物質;反応促進物質;ポリエチレングリコールなどの感度増加物質;非特異的反応抑制物質;又は、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤もしくは陰イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤等の1種又は2種以上と共存させてもよい。
【0034】
そして、上記の各物質を共存させる際の濃度は特に限定されるものではないが、0.001〜10%(W/V)が好ましく、特に0.01〜5%(W/V)が好ましい。
【0035】
〔3〕モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩
本発明の測定試薬及び測定方法においては、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有又は存在させる。ここで、モノカルボン酸とは、分子中にカルボキシル基(−COOH)を1個持つ有機化合物であり、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸(ブタン酸)、乳酸、吉草酸(ペンタン酸)、イソ吉草酸、ピバル酸、2−メチルブタン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、安息香酸、フェニル酢酸(芳香族)などの飽和モノカルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸などの不飽和モノカルボン酸等を挙げることができる。
【0036】
また、本発明においては、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、特に酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩であることが好ましい。
【0037】
そして、本発明におけるモノカルボン酸の誘導体とは、モノカルボン酸に小部分の構造上の変化があってできる化合物のことであり、例えば、前記のモノカルボン酸のエステル化物、酸無水物、酸ハロゲン化物、酸過酸化物、酸アジド、酸アミド、酸イミド並びにこれらのハロゲン化誘導体、スルホン化誘導体、ニトロ化誘導体及びニトロソ化誘導体等を挙げることができる。
【0038】
また、本発明におけるモノカルボン酸若しくはその誘導体の塩としては、例えば、リチウム、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩、アンモニウム、テトラメチルアンモニウムなどのアンモニウム塩、アルミニウム塩及び亜鉛塩等を挙げることができる。
【0039】
なお、本発明において、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は、その1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0040】
本発明において、前記のモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩をCRPの測定試薬に存在させる濃度は、10mM以上であることが好ましく、100mM以上であることが更に好ましい。
【0041】
なお、前記のモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩をCRPの測定試薬に存在させる方法であるが、このモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を、担体粒子に固定化されたCRPに対する特異的結合物質と、試料に含まれていたCRPとの、特異的結合反応が行われる測定反応時に、前記のCRPの測定試薬に存在させることができればいかなる方法でも良い。
【0042】
例えば、前記のモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を緩衝液に含有させた試薬を調製し、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を含む試薬と混合することによって、担体粒子に固定化されたCRPに対する特異的結合物質と試料に含まれていたCRPとの、特異的結合反応が行われる測定反応時に、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させるようにすれば良い。
【0043】
〔4〕試料
本発明において、試料とは、CRPが存在する可能性があり、かつCRPの存在の有無、又は含有量(濃度)の測定を行おうとするものをいう。
このような試料としては、例えば、ヒト又は動物の血液、血清、血漿、髄液若しくは腹水などの体液、又は臓器、組織若しくは細胞などの抽出液等、CRPが含まれる可能性のあるものを挙げることができる。
【0044】
〔5〕測定試薬
本発明の測定試薬は、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を含むCRPの測定試薬において、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有することを特徴とするものである。
【0045】
これにより、試料中のCRPの測定において、低濃度から高濃度までその測定範囲を拡げ、そして、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができるものである。
【0046】
本発明の測定試薬は、一つの測定試薬よりなるものであってよい。この場合、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は、その一つの測定試薬に含有される。
【0047】
また、本発明の測定試薬は、二つ以上の測定試薬より構成されるものであってもよい。この場合、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は、二つ以上の測定試薬の内の一つの測定試薬に含有されるものであってもよく、また、二つ以上の測定試薬に含有されるものであってもよい。
【0048】
例えば、本発明の測定試薬が、第1試薬及び第2試薬の二つの測定試薬より構成されるものである場合、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は、第1試薬にのみ含有させてもよく、また、第2試薬にのみ含有させてもよく、更には、第1試薬と第2試薬の両方に含有させてもよい。
【0049】
本発明の測定試薬が二つの測定試薬より構成される場合、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩は、第1試薬にのみ含有させることが好ましい。
【0050】
また、本発明の測定試薬が二つ以上の測定試薬より構成されるものである場合、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有しない方の試薬は、例えば、CRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を含む緩衝液等であってよい。
【0051】
なお、本発明の試料中のCRPの測定試薬の溶媒としては、各種の水系溶媒を用いることができる。
【0052】
この水系溶媒としては、例えば、精製水、生理食塩水、又は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液、リン酸緩衝液、若しくはリン酸緩衝生理食塩水などの各種緩衝液等を挙げることができる。
【0053】
この緩衝液のpHについては、適宜適当なpHを選択して用いればよく、特に制限はないものの、通常は、pH5〜10の範囲内のpHを選択して用いることが一般的である。
【0054】
また、本発明の試料中のCRPの測定試薬には、前記のCRPに対する特異的結合物質を固定化した担体粒子、及び前記のモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩の他に、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヒト血清アルブミン(HSA)、カゼイン若しくはその塩などの蛋白質;カルシウムイオンなどの各種塩類;各種糖類;脱脂粉乳;正常ウサギ血清などの各種動物血清;アジ化ナトリウム若しくは抗生物質などの各種防腐剤;活性化物質;反応促進物質;ポリエチレングリコールなどの感度増加物質;非特異的反応抑制物質;又は、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤若しくは陰イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤等の1種又は2種以上を適宜含有させてもよい。
【0055】
なお、本発明の試料中のCRPの測定試薬には、カルシウムイオン又はカルシウム塩を含有させることが好ましい。
そして、これらを本発明の試料中のCRPの測定試薬に含有させる際の濃度は特に限定されるものではないが、0.001〜10%(W/V)が好ましく、特に0.01〜5%(W/V)が好ましい。
【0056】
なお、前記の界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油若しくはポリオキシエチレンラノリンなどの非イオン性界面活性剤;酢酸ベタインなどの両性界面活性剤;又は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩などの陰イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0057】
なお、本発明の試料中のCRPの測定試薬は、そのもの単独にて、販売し、又は試料中のCRPの測定に使用することができる。
また、本発明の試料中のCRPの測定試薬は、他の試薬と組み合わせて、販売し、又は試料中のCRPの測定に使用することもできる。
【0058】
前記の他の試薬としては、例えば、緩衝液、試料希釈液、試薬希釈液、標識物質を含有する試薬、発色などのシグナルを生成する物質を含有する試薬、又は校正(キャリブレーション)を行うための物質を含有する物質の試薬等を挙げることができる。
【0059】
〔6〕測定方法
本発明における試料中のCRPの測定方法は、担体粒子に固定化された「CRPに対する特異的結合物質」と試料中に含まれていた「CRP」との特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のCRPを測定する方法において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させるものである。
【0060】
本発明の試料中のCRPの測定方法における測定操作は、公知の測定操作に従って行うことができる。
【0061】
この測定は、用手法により行ってもよいし、又は分析装置等の装置を用いて行ってもよい。
【0062】
また、この測定は、1ステップ法(1試薬法)により行ってもよいし、又は2ステップ法(2試薬法)等の複数の操作ステップにより行う方法によって実施してもよい。
【0063】
以下、ラテックス免疫比濁法を測定原理とする試料中のCRPの測定試薬を用いて、試料中のCRPの測定を行う場合を例にとって、具体的に説明を行う。
【0064】
(1)まず、試料中のCRPの測定試薬として、以下のものを準備する。
第1試薬:モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有する緩衝液
第2試薬:CRPを固定化したラテックス粒子を含有する緩衝液
【0065】
(2)血清等の試料の一定量と前記の第1試薬の一定量を混合し、一定温度下で一定時間静置する。
なお、試料と第1試薬の混合比率(量比)は、適宜選択すればよい。
また、前記の静置時の温度は、室温(1〜30℃)又は微温(30〜40℃)の範囲内の一定温度であることが好ましい(例えば、37℃等)。
【0066】
(3)一定時間後、前記の試料と第1試薬との混合液に、前記の第2試薬の一定量を添加、混合し、反応混合液として、一定温度下で一定時間静置する。
なお、第2試薬の添加量は、適宜選択すればよい。
また、前記の静置時の温度は、室温(1〜30℃)又は微温(30〜40℃)の範囲内の一定温度であることが好ましい(例えば、37℃等)。
そして、前記の静置の時間は、1分以上、10分以下の一定時間であることが好ましく、3分以上、5分以下の一定時間であることがより好ましい。
【0067】
試料と第1試薬との混合液への第2試薬の添加、混合により、ラテックス粒子に固定化した抗CRP抗体と、試料中に含まれていたCRPとの抗原抗体反応(測定反応)を行わせる。
【0068】
そして、この抗原抗体反応(測定反応)により、「…〔抗CRP抗体=ラテックス粒子=抗CRP抗体〕−〔CRP〕−〔抗CRP抗体=ラテックス粒子=抗CRP抗体〕…」の架橋が形成され、抗CRP抗体を固定化したラテックス粒子同士の複合体凝集物が生成する。
【0069】
(4)そして、分析装置又は分光光度計等において、反応混合液に光を照射して、生成したラテックス粒子同士の複合体凝集物により生ずるシグナルである適当な波長の透過光強度の減少(吸光度の増加)又は散乱光強度の増加を測定することにより、生成した前記複合体凝集物の量、すなわち、試料中に含まれていたCRPの量を求める。
【0070】
(5)そして、「試料の測定を行って得た測定値(透過光強度の減少(吸光度の増加)又は散乱光強度の増加の値)」と、「標準液、標準血清等の標準物質(既知濃度のCRPを含む試料)の測定を行って得た測定値(透過光強度の減少(吸光度の増加)又は散乱光強度の増加の値)」とを比較することにより、測定を行った試料中に含まれるCRPの量(濃度)の算出を行う。
【0071】
〔7〕測定範囲の拡大方法
本発明における、C反応性蛋白質の測定における測定範囲の拡大方法は、試料中のCRPと、担体粒子に固定化したCRPに結合する特異的結合物質との、特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することによる、試料中のCRPの測定において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させることによるものである。
この試料中のCRPの測定において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させることにより、その測定範囲を拡大し、試料中の低濃度から高濃度までのCRPを測定することができる。
また、本発明におけるC反応性蛋白質の測定における測定範囲の拡大方法を実施する際の試薬の構成成分や試料や条件等は、前記した通りである。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をより具体的に詳述するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0073】
〔実施例1〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−1)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、酢酸ナトリウムを含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0074】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、酢酸ナトリウム〔関東化学社〕を0mM、250mM、500mM及び1000mMの濃度となるように添加し、酢酸ナトリウム濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0075】
(2)第2試薬の調製
(a)抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液の調製
平均粒径0.192μmのラテックス粒子の10%懸濁液0.094mLに、抗ヒトCRPモノクローナル抗体を0.04g/dLの濃度で6.7mM
HEPES緩衝液〔pH7.0(20℃)〕に混和した液0.5098mLを加え、5℃にて一晩静置した。
次に、遠心分離により上清を除去した後、沈殿部に1.0%BSAを含む5mMグリシン緩衝液〔pH9.5(20℃)〕を加え懸濁し、37℃で7日間静置し、ブロッキング処理を行った。
次に、遠心分離により沈殿部を回収した後、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液で波長585nmにおける吸光度が25.0ODとなるように懸濁した。
そして、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液により希釈して、抗CRP抗体を固定化したラテックス粒子の0.800%懸濁液として調製した。
これを抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液とした。
なお、抗CRPモノクローナル抗体としては、市販のマウス抗CRPモノクローナル抗体(日本バイオテスト研究所社;クローン:CRB−019)を使用した。
【0076】
(b)第2試薬の調製
前記(a)で調製した抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液の1mLと、0.05%アジ化ナトリウム水溶液の9mLとを混合し、0.080%の「抗CRP抗体固定化ラテックス粒子」を含有する懸濁液を調製した。
これを第2試薬とした。
【0077】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
4%(w/v)BSA、2.7mM塩化カルシウム・2水和物、100mM塩化ナトリウム及び15mMアジ化ナトリウムを含有する50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH7.6〕を調製して、試料希釈液とした。
【0078】
(2)試料の調製
遺伝子組み換え体CRP(オリエンタル酵母工業社製)を、前記(1)の試料希釈液で希釈することにより、次のCRP濃度の試料をそれぞれ調製した。
また、前記(1)で調製した試料希釈液を、CRP濃度0mg/dLの試料とした。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0079】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
(a)測定は、日立−7180形自動分析装置(日立製作所社製)を使用して行った。
まず、測定用セル(キュベット)に、前記2の(2)の試料1〜7の3μLを添加した。
次に、これらの測定用セル(キュベット)に、前記1の(1)の第1試薬の100μLを添加し、混合した。
そして、これらの測定用セル(キュベット)を、37℃で静置した。
【0080】
(b)前記の第1試薬の添加後4分34秒目(16ポイント目)に、これらの測定用セル(キュベット)内の混合液に、更に、前記1の(2)の(b)の第2試薬の100μLを添加し、混合した。
【0081】
(c)前記の第1試薬の添加後5分09秒目(18ポイント目)に、これらの測定用セル(キュベット)内の混合液の吸光度(主波長570nm、副波長800nm)を試料盲検として測定した。
そして、これらの測定用セル(キュベット)を、37℃で静置して、反応を行わせた。
これにより、前記のラテックス粒子に固定化された抗CRP抗体と、前記の試料に含まれていたCRPとの抗原抗体反応を行わせ、ラテックス粒子の凝集塊を生成させた。
【0082】
(d)前記の第1試薬の添加後9分54秒目(34ポイント目)に、この測定用セル(キュベット)内の反応混合液の吸光度(主波長570nm、副波長800nm)を、前記試料の測定値として測定した。
【0083】
(e)前記(d)において測定した吸光度(測定値)から前記(c)において測定した吸光度(試料盲検)を差し引き、吸光度差を得た。
なお、この吸光度差は試料に含まれるCRPの量(濃度)に比例したものである。
【0084】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図1に示した。
なお、この図1において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0085】
4.考察
図1から明らかなように、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0086】
これに対して、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させた場合(250mM、500mM及び1000mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0087】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、酢酸ナトリウム(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0088】
〔実施例2〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−2)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、プロピオン酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0089】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、プロピオン酸〔和光純薬社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、プロピオン酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0090】
(2)第2試薬の調製
前記実施例1の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0091】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0092】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0093】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0094】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図2に示した。
なお、この図2において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0095】
4.考察
図2から明らかなように、第1試薬にプロピオン酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度50mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬にプロピオン酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0096】
これに対して、第1試薬にプロピオン酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が50mg/dLを超えても吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にプロピオン酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0097】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、プロピオン酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0098】
〔実施例3〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−3)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、酪酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0099】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、酪酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、酪酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0100】
(2)第2試薬の調製
前記実施例1の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0101】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0102】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0103】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0104】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図3に示した。
なお、この図3において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0105】
4.考察
図3から明らかなように、第1試薬に酪酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に酪酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0106】
これに対して、第1試薬に酪酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が50mg/dLを超えても吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬に酪酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0107】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、酪酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0108】
〔実施例4〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−4)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、乳酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0109】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、乳酸〔和光純薬社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、乳酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0110】
(2)第2試薬の調製
前記実施例1の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0111】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0112】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0113】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0114】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図4に示した。
なお、この図4において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0115】
4.考察
図4から明らかなように、第1試薬に乳酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に乳酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0116】
これに対して、第1試薬に乳酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬に乳酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0117】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、乳酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0118】
〔実施例5〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−5)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、アクリル酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0119】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、アクリル酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、アクリル酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0120】
(2)第2試薬の調製
前記実施例1の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0121】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0122】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0123】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0124】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図5に示した。
なお、この図5において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0125】
4.考察
図5から明らかなように、第1試薬にアクリル酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬にアクリル酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0126】
これに対して、第1試薬にアクリル酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にアクリル酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0127】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、アクリル酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0128】
〔実施例6〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−6)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、メタクリル酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0129】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、メタクリル酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、メタクリル酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0130】
(2)第2試薬の調製
前記実施例1の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0131】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0132】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0133】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0134】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図6に示した。
なお、この図6において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0135】
4.考察
図6から明らかなように、第1試薬にメタクリル酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬にメタクリル酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0136】
これに対して、第1試薬にメタクリル酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にメタクリル酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0137】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、メタクリル酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0138】
〔実施例7〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−7)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、酢酸ナトリウムを含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0139】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、酢酸ナトリウム〔関東化学社〕を0mM、250mM、500mM及び1000mMの濃度となるように添加し、酢酸ナトリウム濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0140】
(2)第2試薬の調製
(a)抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液Aの調製
平均粒径0.192μmのラテックス粒子の10%懸濁液0.094mLに、抗ヒトCRPモノクローナル抗体を0.05g/dLの濃度で6.7mM
MMES緩衝液〔pH5.0(20℃)〕に混和した液0.5098mLを加え、5℃にて一晩静置した。
次に、遠心分離により上清を除去した後、沈殿部に1.0%BSAを含む5mMグリシン緩衝液〔pH9.5(20℃)〕を加え懸濁し、37℃で7日間静置し、ブロッキング処理を行った。
次に、遠心分離により沈殿部を回収した後、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液で波長585nmにおける吸光度が25.0ODとなるように懸濁した。
そして、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液により希釈して、抗CRP抗体を固定化したラテックス粒子の0.80%懸濁液として調製した。
これを抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液Aとした。
なお、抗CRPモノクローナル抗体としては、カルシウムイオン非依存的にCRPに結合する抗体である、市販のマウス抗CRPモノクローナル抗体(日本バイオテスト研究所社;クローン:CRB−030)を使用した。
【0141】
(b)抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液Bの調製
平均粒径0.192μmのラテックス粒子の10%懸濁液0.094mLに、抗ヒトCRPモノクローナル抗体を0.04g/dLの濃度で6.7mM
HEPES緩衝液〔pH7.0(20℃)〕に混和した液0.5098mLを加え、5℃にて一晩静置した。
次に、遠心分離により上清を除去した後、沈殿部に1.0%BSAを含む5mMグリシン緩衝液〔pH9.5(20℃)〕を加え懸濁し、37℃で7日間静置し、ブロッキング処理を行った。
次に、遠心分離により沈殿部を回収した後、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液で波長585nmにおける吸光度が25.0ODとなるように懸濁した。
そして、これを0.05%アジ化ナトリウム水溶液により希釈して、抗CRP抗体を固定化したラテックス粒子の0.80%懸濁液として調製した。
これを抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液Bとした。
なお、抗CRPモノクローナル抗体としては、カルシウムイオン依存的にCRPに結合する抗体である、市販のマウス抗CRPモノクローナル抗体(日本バイオテスト研究所社;クローン:CRB−019)を使用した。
【0142】
(c)第2試薬の調製
前記(a)で調製した抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液Aの0.25mLと、前記(b)で調製した抗CRP抗体固定化ラテックス粒子懸濁液Bの1.0mLとを0.05%アジ化ナトリウム水溶液の8.75mLと混合した。
これを第2試薬とした。
【0143】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0144】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0145】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、第2試薬として前記1の(2)の第2試薬を用い、前記実施例2の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0146】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図7に示した。
なお、この図7において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0147】
4.考察
図7から明らかなように、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0148】
これに対して、第1試薬に酢酸ナトリウムを含有させた場合(250mM、500mM及び1000mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にメタクリル酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0149】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、酢酸ナトリウム(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0150】
〔実施例8〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−8)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、プロピオン酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0151】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、プロピオン酸〔和光純薬社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、プロピオン酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0152】
(2)第2試薬の調製
前記実施例7の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0153】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0154】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0155】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例7の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0156】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図8に示した。
なお、この図8において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0157】
4.考察
図8から明らかなように、第1試薬にプロピオン酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬にプロピオン酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0158】
これに対して、第1試薬にプロピオン酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にプロピオン酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0159】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、プロピオン酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0160】
〔実施例9〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−9)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、酪酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0161】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、酪酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、酪酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0162】
(2)第2試薬の調製
前記実施例7の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0163】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0164】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0165】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例7の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0166】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図9に示した。
なお、この図9において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0167】
4.考察
図9から明らかなように、第1試薬に酪酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に酪酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0168】
これに対して、第1試薬に酪酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬に酪酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0169】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、酪酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0170】
〔実施例10〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−10)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、乳酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0171】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、乳酸〔和光純薬社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、乳酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0172】
(2)第2試薬の調製
前記実施例7の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0173】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0174】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0175】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例7の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0176】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図10に示した。
なお、この図10において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0177】
4.考察
図10から明らかなように、第1試薬に乳酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬に乳酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0178】
これに対して、第1試薬に乳酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬に乳酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0179】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、乳酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0180】
〔実施例11〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−11)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、アクリル酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0181】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、アクリル酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、アクリル酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0182】
(2)第2試薬の調製
前記実施例7の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0183】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0184】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0185】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例7の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0186】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図11に示した。
なお、この図11において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0187】
4.考察
図11から明らかなように、第1試薬にアクリル酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬にアクリル酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0188】
これに対して、第1試薬にアクリル酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が直線的に上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にアクリル酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が直線的に上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0189】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、アクリル酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【0190】
〔実施例12〕
(本願発明の試料中のCRPの測定試薬及び測定方法の効果の確認−12)
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩として、メタクリル酸を含有する本願発明のCRPの測定試薬を用いて試料中のCRPの測定を行い、その効果を確認した。
【0191】
1.測定試薬
(1)第1試薬の調製
1%(w/v)BSA、250mM塩化ナトリウム、20mM塩化カルシウム・2水和物及び0.05%アジ化ナトリウムを含有する100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液〔pH8.0(20℃)〕を調製した。ここに、メタクリル酸〔ナカライ社〕を0mM、50mM、100mM及び200mMの濃度となるように添加し、メタクリル酸濃度の異なる4種類の第1試薬とした。
【0192】
(2)第2試薬の調製
前記実施例7の1の(2)の記載の通りに、第2試薬を調製した。
【0193】
2.試料
(1)試料希釈液の調製
前記実施例1の2の(1)の記載の通りに、試料希釈液を調製した。
【0194】
(2)試料の調製
前記実施例1の2の(2)の記載の通りに、次の各試料を調製した。
(a)試料1: 0mg/dL
(b)試料2: 0.08mg/dL
(c)試料3: 0.4mg/dL
(d)試料4: 2.0mg/dL
(e)試料5: 10.0mg/dL
(f)試料6: 50.0mg/dL
【0195】
3.試料中のCRPの測定
(1)測定手順
第1試薬として、前記1の(1)の第1試薬を用い、前記実施例7の3の(1)の記載の通りに試料中のCRPの測定を行い、各試料における測定値(吸光度差)を得た。
【0196】
(2)測定結果
前記(1)において、試料中のCRPの測定を行って得られた吸光度差を、図12に示した。
なお、この図12において、横軸は試料中のCRP濃度(mg/dL)を、縦軸は測定により得られた吸光度差の値〔吸光度差×10,000〕(主波長570nm、副波長800nm)を表す。
【0197】
4.考察
図12から明らかなように、第1試薬にメタクリル酸を含有させない場合(0mM)には、試料中のCRP濃度10mg/dLまでしか測定できていないことが分かる。つまり、第1試薬にメタクリル酸を含有させない場合には、試料中のCRP濃度が10mg/dL以上となると、それ以上濃度が上昇しても吸光度が直線的に上昇していかないため、検量線等を用いても測定を行うことができないことが分かる。
【0198】
これに対して、第1試薬にメタクリル酸を含有させた場合(50mM、100mM及び200mM)は、試料中のCRP濃度が10mg/dLを超えても更に吸光度が上昇し、CRP濃度50mg/dLまで測定できていることが分かる。すなわち、第1試薬にメタクリル酸を含有させた場合には、CRP濃度が10mg/dL以上となった場合でも、CRP濃度の上昇に応じて吸光度が上昇するため、CRPを測定することが可能であることが分かる。
【0199】
これらのことより、試料中のCRPを測定する測定試薬及び測定方法において、メタクリル酸(モノカルボン酸又はその誘導体あるいはそれらの塩)を含有又は存在させることにより、CRPの測定において、低濃度から高濃度まで測定範囲を拡げることができることが分かる。
すなわち、本発明は、低濃度から高濃度までの広範囲の濃度のCRPを正確に測定することができる測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のC反応性蛋白質に対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を含む測定試薬において、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有することを特徴とする測定試薬。
【請求項2】
担体粒子がラテックス粒子又は金属コロイド粒子である、請求項1記載の測定試薬。
【請求項3】
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の測定試薬。
【請求項4】
試料中のC反応性蛋白質に対する特異的結合物質を固定化した担体粒子と試料とを接触させ、該特異的結合物質と試料に含まれていたC反応性蛋白質との特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のC反応性蛋白質を測定する方法において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させることを特徴とする測定方法。
【請求項5】
担体粒子が、ラテックス粒子又は金属コロイド粒子である、請求項4記載の測定方法。
【請求項6】
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩から選択される少なくとも1種である請求項4又は5に記載の測定方法。
【請求項7】
試料中のC反応性蛋白質に対する特異的結合物質を固定化した担体粒子と試料とを接触させ、該特異的結合物質と試料に含まれていたC反応性蛋白質との特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のC反応性蛋白質を測定する方法において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させることを特徴とする、C反応性蛋白質の測定における測定範囲の拡大方法。
【請求項8】
担体粒子が、ラテックス粒子又は金属コロイド粒子である、請求項7記載の測定範囲の拡大方法。
【請求項9】
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩から選択される少なくとも1種である請求項7又は8に記載の測定範囲の拡大方法。
【請求項1】
試料中のC反応性蛋白質に対する特異的結合物質を固定化した担体粒子を含む測定試薬において、モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を含有することを特徴とする測定試薬。
【請求項2】
担体粒子がラテックス粒子又は金属コロイド粒子である、請求項1記載の測定試薬。
【請求項3】
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の測定試薬。
【請求項4】
試料中のC反応性蛋白質に対する特異的結合物質を固定化した担体粒子と試料とを接触させ、該特異的結合物質と試料に含まれていたC反応性蛋白質との特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のC反応性蛋白質を測定する方法において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させることを特徴とする測定方法。
【請求項5】
担体粒子が、ラテックス粒子又は金属コロイド粒子である、請求項4記載の測定方法。
【請求項6】
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩から選択される少なくとも1種である請求項4又は5に記載の測定方法。
【請求項7】
試料中のC反応性蛋白質に対する特異的結合物質を固定化した担体粒子と試料とを接触させ、該特異的結合物質と試料に含まれていたC反応性蛋白質との特異的結合反応により生成した複合体凝集物を測定することにより、試料中のC反応性蛋白質を測定する方法において、該特異的結合反応の反応時にモノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩を存在させることを特徴とする、C反応性蛋白質の測定における測定範囲の拡大方法。
【請求項8】
担体粒子が、ラテックス粒子又は金属コロイド粒子である、請求項7記載の測定範囲の拡大方法。
【請求項9】
モノカルボン酸若しくはその誘導体又はそれらの塩が、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、アクリル酸及びメタクリル酸若しくはその誘導体又はそれらの塩から選択される少なくとも1種である請求項7又は8に記載の測定範囲の拡大方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−257243(P2011−257243A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131417(P2010−131417)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000131474)株式会社シノテスト (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000131474)株式会社シノテスト (28)
【Fターム(参考)】
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